説明

新脈管形成に関与する医学的状態の診断および治療のための組成物および方法

E−セレクチンの発現に付随する新脈管形成を含む、医学的状態の診断もしくは治療のため、または組織工学のための組成物および方法が提供される。より具体的には、P−セレクチンに有意に結合する能力がない、E−セレクチン結合に対して選択的な化合物が使用される。本発明の方法はまた、新脈管形成を必要とする状態または関連する状態をインビボでスクリーニングする方法を提供し、この方法は、(a)温血動物に対して診断有効量の図1の化合物1〜15のいずれか1つを投与する工程;および(b)該動物において該化合物を検出する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医学的状態の診断または治療、あるいは組織工学(E−セレクチンの発現に関連した新脈管形成を含む)のための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、P−セレクチンに対する有意な結合能力を持たずに、E−セレクチンに対して選択的に結合する化合物の使用に関連する。これらの化合物は、疾患の診断的介入または治療的介入のために有用な薬剤、あるいは、成功した組織工学を容易にするための薬剤と連結され得る。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の記載)
脈管系を含むか、または関連するヒト疾患または組織工学において、新脈管形成は、疾患の進行または組織工学への成功した適用に必要とされる。新脈管形成は、組織の修復またはリモデリングを行っている領域、または疾患が拡大している領域に対する新規の血管の発生および成長の生物学的プロセスである。新脈管形成応答としては、正常なプロセスおよび病理学的プロセスの両方が挙げられる。新脈管形成を含む正常な状態としては、創傷損傷に応答する新規な血管の成長(それによる、その後の治癒)、および虚血性損傷および血管の閉塞に関連する新生血管形成における新規の血管の成長が挙げられる。病理学的新脈管形成プロセスの例は、腫瘍増殖およびその後の転移のための新規の血管の発生である。固形腫瘍癌において、腫瘍は、その代謝を支持するために、別個の血管の供給を必要とすることなく、約1mmの直径に増殖し得る。直径1mmを超えると、腫瘍は、拡大した増殖を支持するために、それ自身の脈管系を必要とする。癌の進行のこの相の間、新生血管形成は、この新規に形成された脈管構造においてE−セレクチンの発現を有する腫瘍の部位にて、生じる。実際に、新脈管形成およびその関連する脈管発生速度は、腫瘍転移および生存のための予後徴候マーカーである。
【0003】
組織工学において、その目的は、罹患したかまたは損傷した組織および器官の生物学的置換物を設計および開発することである。これらの置換物は、構造的機能性(例えば、骨、軟骨、または皮膚の置換物)または代謝的機能性(例えば、肝臓、膵臓、腎臓)を提供し得る。このことは、細胞マトリクスおよび細胞外成分の生成を必要とし、この細胞マトリクスおよび細胞外成分は、置換されるべき組織または器官の機能を回復する適切な様式において組織化される。現在のアプローチとしては、患者における移植の前に、足場またはマトリクスに関連する細胞を播種することが挙げられる。これらの組織工学適用については、細胞を含む足場またはマトリクスへの新生血管形成は、新たな組織の操作された機能性を達成するために必要とされる。患者と適合性の生きたかつ機能的な脈管系を作製する、その新たな組織における新脈管形成を促進する能力は、組織工学の分野の努力目標である。
【0004】
セレクチンは、内皮細胞への接着を媒介するために重要な、構造的に関連する細胞表面レセプタータンパク質の群である。これらのタンパク質は、1型膜タンパク質であり、アミノ末端レクチンドメイン、内皮増殖因子(EGF)様ドメイン、可変数の補体レセプター関連反復、疎水性ドメインスパニング領域および細胞質ドメインから構成される。
【0005】
E−セレクチンおよびP−セレクチンは、血管系の内壁を内側から覆う活性化内皮細胞の表面で発現される。E−セレクチンは、炭水化物シアリル−Lewis(SLe)に結合し、これは、糖タンパク質または糖脂質として特定の白血球(単球および好中球)の表面に提示され、これらの細胞が、血管壁に接着することを助ける。E−セレクチンはまた、シアリル−Lewis(SLe)を結合し、これは、多くの腫瘍細胞上で発現される。P−セレクチンは、炎症した内皮細胞上で発現され、血小板上でも発現される。P−セレクチンは、SLeおよびSLeを認識するが、硫酸化チロシン含有タンパク質およびペプチドと相互作用する第2の部位もまた含む。E−セレクチンおよびP−セレクチンの発現は、一般に、毛細管に隣接した組織が感染または損傷する場合に増大される。
【0006】
脈管形成診断および治療の状況において、血管系の健康かつ正常に機能する領域には有害な副作用を与えることなく、新脈管形成の部位に非常に特異的な診断および有効な臨床的介入を開発する必要がある。現在のアプローチが困難であることに起因して、改善された組成物および方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡潔に述べると、本発明は、新脈管形成に関連する医学的状態の診断および治療のため、ならびに組織工学の適用のために新血管系において発現されるE−セレクチンを利用するための組成物および方法を提供する。本発明は、結合および阻害または促進のための標的として新血管系において、E−セレクチン(E−Selection)発現(例えば、アップレギュレートされる)の使用に焦点を絞ることによる効果的かつ非常に特異的なアプローチを開発する必要性を満たす。本発明において、E−セレクチンに非常に特異的な化合物は、新脈管形成を必要とするかまたはこれに関連する疾患のための診断および治療において使用され得る。E−セレクチンの特異的結合は、例えば、血小板上のP−セレクチン発現から生じる潜在的な副作用を避けるためにこれらの疾患における臨床的介入において重要である。
【0008】
本発明の一実施形態において、新脈管形成を必要とするかまたはこれらと関連する状態についてインビボでスクリーニングするための方法が提供され、この方法は以下の工程を包含する:(a)温血動物に診断有効量の図1の1〜15のいずれか1つの化合物を投与する工程;および(b)この動物において化合物を検出する工程。別の実施形態において、インビトロにおいて、新脈管形成を必要とする状態、または関連する状態について、スクリーニングする方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)生物学的調製物を、診断有効量の図1の化合物1〜15のいずれか1つと接触させる、工程;および(b)この調製物中の化合物を検出する工程。別の実施形態において、E−セレクチンを発現する細胞のインビトロにおける同定方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)生物学的調製物と、図1の化合物1〜15のいずれか1つとを接触させる工程;および(b)この調製物中の化合物を検出する工程。別の実施形態において、新脈管形成を必要とする状態または関連する状態を処置する方法を提供し、この方法は、温血動物に対して治療有効量の図1の化合物1〜15のいずれか1つを投与する工程を包含する。別の実施形態において、組織工学において新脈管形成を促進する方法を提供し、この方法は、細胞を図1の化合物1〜15のいずれか1つと接触させる工程を包含し、ここで、この化合物は、新脈管形成促進剤を保有する。
【0009】
本発明の別の実施形態において、結合体が提供される。この結合体は、診断剤または治療剤に共有結合した、図1の化合物1〜15のいずれか1つを含む。好ましい治療剤としては、抗腫瘍性剤、新脈管形成促進剤および新脈管形成阻害剤が挙げられる。
【0010】
本明細書中に記載のE−セレクチン化合物またはその結合体は、種々の方法において使用され得る。このような使用には、以下が挙げられる:新脈管形成を必要とする状態またはそれと関連する状態(例えば、医学的状態)についてインビトロまたはインビボでスクリーニングする方法における使用;新脈管形成を必要とする状態またはそれと関連する状態を処置する方法における使用;新脈管形成を阻害する方法における使用;および新脈管形成を促進するための方法(例えば、組織工学)における使用。E−セレクチン化合物またはその結合体はまた、例えば、新脈管形成を必要とする状態またはそれと関連する状態を処置するため、新脈管形成を阻害するため、あるいは新脈管形成を促進するためのような医薬品の製造において使用され得る。
【0011】
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかになる。本明細書中で開示される全ての参考文献は、各々が個々に援用されるかのように、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0012】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明は、新脈管形成を含む医学的状態(ヒト疾患を含む)の診断および治療における使用のため、ならびに組織工学の適用のための、E−セレクチンに対して非常に特異的であるが、P−セレクチンに対して特異的ではない化合物を同定した。
【0013】
(E−セレクチン化合物)
用語「E−セレクチン化合物」とは、本明細書中で使用される場合、実施例6に記載されるELISAアッセイにより測定されるように、10mM未満のレベルでP−セレクチンに結合することなく、E−セレクチンに特異的に結合する分子をいう。本発明における使用のためのE−セレクチン化合物の構造は、図1に示される。本発明において有用な全ての化合物(例えば、E−セレクチン化合物またはその結合体)は、その生理学的に受容可能な塩を含む。
【0014】
特定の実施形態に関して、E−セレクチン化合物がさらなる成分または薬剤(例えば、検出可能な成分または治療剤)を保有することもまた、または代わりに有益である。本明細書中で使用される場合、用語「保有する(有する)」とは、1つ以上の他の分子を直接的または間接的に介して、検出可能な成分または治療剤がE−セレクチン化合物に共有結合または非共有結合され得ることを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」とは、疾患または他の所望でない状態を処置(予防を含む)するか、または組織工学治療の成功を高める温血動物に対する投与に関して意図される任意の生体活性剤をいう。治療剤としては、薬物、ホルモン、増殖因子、タンパク質、ペプチド、遺伝子、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターならびに他の化合物が挙げられる。(例えば、組織工学、または新脈管形成が低下されるかまたは存在しない医学的状態において)新脈管形成を促進するための一実施形態において、E−セレクチン化合物は、代表的には、新脈管形成促進剤を保有する。新脈管形成促進剤としては、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性および酸性の線維芽細胞増殖因子(bFGFおよびaFGF)、トランスホーミング増殖因子(TGF−β)、腫瘍壊死因子(TNF−α)、肝細胞増殖因子(HGF)、アンジオゲニン、インターーロイキン−8(IL−8)および血小板由来増殖因子(PDGF)が挙げられる。新脈管形成(例えば、新脈管形成が発生している腫瘍増殖または医学的適用において)を阻害するための一実施形態において、E−セレクチン化合物は、代表的には、新脈管形成阻害剤を保有する。新脈管形成阻害剤としては、ヘパリン、スラミン、アンジオスタチン、エンドスタチン、αインターフェロンおよびβインターフェロン、インターロイキン12、可溶性Flt−1、血小板因子−4、ならびにトロンボスポンジン−1およびトロンボスポンジン−2が挙げられる。
【0015】
さらなる成分または薬剤がE−セレクチン化合物に共有結合される場合、結合体が形成される。語句「共有結合された」とは、本明細書中で使用される場合、直接的結合および間接的結合(ここで1以上の原子がE−セレクチン化合物とさらなる成分または薬剤との間に介在する)の両方をいう。この1以上の介在した原子は、結合体の生物学的特性を(例えば、結合体の構成要素の空間的関係を変化させることによって)改善するか、または結合体を形成する構成成分の結合を容易にするように働き得る。
【0016】
成分または薬剤のE−セレクチン化合物への結合は、本発明の結合体を形成する種々の様式において達成され得る。最も単純な結合法は、E−セレクチン化合物の糖質還元末端に対する成分または薬剤の還元的アミノ化である。これは、その還元的糖質部分に対するその成分または薬剤の単純な反応、およびその後に形成されるイミンの還元によって達成される。反応される糖の環状の性質を失うことは、この方法の有用性を制限する。最も一般的なアプローチは、グリカンのアノマー位において、活性化リンカーを糖質部分にO、SもしくはNヘテロ原子(またはC連結グリコシドについてはC原子)に単純に結合することを包含する。このような結合の方法論は、広く研究されており、アノマー選択性は、方法論および/または保護基の適切な選択によって容易に達成される。潜在的グリコシド合成方法の例としては、ハロゲンもしくは過アセチル化糖(Koenigs Knorr)とのLewis酸触媒結合形成、トリクロロアセトアミデート結合形成、チオグリコシド活性化およびカップリング、グルカール(glucal)活性化およびカップリング、n-ペンテニルカップリング、ホスホネートエステル同族体化(Horner−Wadsworth−Emmons反応)などが挙げられる。あるいは、リンカーは、アノマー以外の糖質部分の位置に結合され得る。結合に最も利用しやすい部位は、糖の6ヒドロキシル(6−OH)位置(一級アルコール)である。6−OHでのリンカーの結合は、種々の手段によって容易に達成され得る。例としては、オキシ−アニオン(塩基での脱プロトン化により形成されるアルコールアニオン)と、適切な求核剤(例えば、アルキル/アシルブロミドエステル、アルキル/アシルクロリドエステルあるいはアルキル/アシルスルホネートエステルとの反応、スルホネートエステルクロリドまたはPOClとの反応によるアルコールの活性化およびその後の求核剤との置換、アルコールを、アルデヒドまたはカルボン酸へ酸化してカップリングすること、あるいはさらにMitsunobu反応を使用して、異なる官能基を導入することが挙げられる。一旦結合されると、糖質リンカーは、E−セレクチン化合物上の適切な求核剤との反応のために官能化される(逆もまた同様)。これは、しばしば、チオホスゲンおよびアミンを使用して、チオ尿素結合ヘテロ二官能性リガンド、ジエチルスクアレート結合および/または単純なアルキル/アシル化反応を形成することによって達成される。利用され得るさらなる方法としては、糖質およびペプチドカップリング技術および化学−酵素的合成技術(おそらく、グリコシル/フコシルトランスフェラーゼおよび/またはオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OST)を利用する)に反応しやすいFMOC固相合成または液相合成技術が挙げられる。
【0017】
E−セレクチン化合物(その使用などを含む)に関する本明細書中での議論はまた、その結合体にも適用される。
【0018】
(E−セレクチン化合物の式)
本明細書中に記載のE−セレクチン化合物または結合体は、薬学的組成物内に存在し得る。薬学的組成物は、1つ以上のE−セレクチン化合物または結合体を、1以上の薬学的または生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含有する。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝化生理食塩水またはリン酸緩衝化生理食塩水)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン、抗酸化剤、キレート化剤(例えば、EDTAもしくはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)または保存剤を含み得る。なお他の実施形態において、本発明の組成物は、凍結乾燥物に処方され得る。本発明の化合物は、例えば、局所的、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下または筋肉内の投与を含む、任意の適切な投与様式のために処方され得る。
【0019】
薬学的組成物はまた、または代わりに、1以上の活性剤(例えば、薬物)を含み得る。これは、E−セレクチン化合物に連結されてもよいし、組成物内で遊離していてもよい。
【0020】
本明細書中に記載される組成物は、徐放性処方物(すなわち、投与後に調節剤をゆっくりと放出するカプセル剤またはスポンジのような処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は、一般に、周知の技術を使用して調製され得、そして例えば、経口、直腸または皮下移植によって、または所望の標的部位における移植によって、投与され得る。このような処方物に使用するためのキャリアは、生体適合性であり、そしてまた、生分解性であり得る;好ましくは、この処方物は、比較的一定のレベルの調節剤の放出を提供する。徐放性処方物に含まれるE−セレクチン化合物または結合体の量は、移植部位、放出の速度および推定持続時間、ならびに処置または予防される状態の性質に依存する。
【0021】
E−セレクチン化合物または結合体は、一般に、治療的有効量で、薬学的組成物中に存在する。治療的有効量は、以下に記載されるように、認識可能な患者の利益(例えば、脈管形成に関連する状態の測定または観察される応答)を生じる量である。
【0022】
(E−セレクチン化合物の使用方法)
一般に、本明細書中に記載されるE−セレクチン化合物または結合体は、ヒトの疾患を含む状態、または新脈管形成を含む組織工学適用における診断結果または治療結果を達成するために使用され得る。このような診断結果または治療結果は、好ましくは、ヒトのような温血動物においてインビトロまたはインビボで達成され得るが、ただし、E−セレクチンは、最終的には、認識可能な診断結果または治療結果を達成するのに十分な量および時間で、E−セレクチン化合物または結合体と接触される。本発明の状況において、治療結果は、脈管形成プロセスの制御に関連する。いくつかの状態において、治療結果は、新脈管形成の阻害に関連する。他の状態において、治療結果は、新脈管形成の促進を必要とし、そしてさらに、所望の治療的利益が達成された場合、新血管形成を制限する能力と関連し得る。
【0023】
本明細書中で使用される場合、状態がE−セレクチンの発現によって特徴付けられる場合、この状態は「新脈管形成を必要とするかまたは新脈管形成と関連する」。このような状態としては、例えば、癌、慢性関節リウマチ、創傷治癒、乾癬、黄斑変性および糖尿病性網膜症、または組織工学の適用が挙げられる。
【0024】
本発明のE−セレクチン化合物または結合体は、新脈管形成を必要とするかまたは脈管形成に関連する状態をスクリーニングするために使用され得る。診断有効量のE−セレクチン化合物または結合体が、患者に投与される。次いで、このE−セレクチン化合物または結合体は、認識可能な診断結果を達成するのに十分な時間の後に、検出される。一実施形態において、この化合物または結合体は、検出可能な成分(すなわち、人または機械によって検出可能)を有する。上記のように、この検出可能な成分は、E−セレクチン化合物に直接的または間接的(すなわち、1つ以上の他の分子を介して)結合され得る。あるいは、E−セレクチン化合物は、検出可能な成分を含む化合物に結合し得る成分を含み得る。このことにより、E−セレクチン化合物は、検出可能な成分から独立して投与され得る。例えば、多数の予備標的化法が、当該分野で周知であり(例えば、Goodwinらの米国特許第4,863,713号、および他者によるその後の改良)、ここで、細胞上の分子に対する結合パートナー(本発明において、これは細胞上のE−セレクチンに対するE−セレクチン化合物である)は、検出可能な成分または治療剤の導入前に、細胞に送達される。一般に、リガンド/抗リガンド対(ここで、リガンドが結合パートナーに結合され、そして抗リガンドが検出可能な成分または治療剤に結合されている)が利用される。代表的なリガンド/抗リガンド対は、アビジン(またはストレプトアビジン)およびビオチンである。予備標的化法は、一般に、2工程プロセスまたは3工程プロセスで使用され、そして標的(例えば、E−セレクチン)に結合されていない結合パートナー−リガンド(例えば、E−セレクチン化合物-リガンド)を除去するために、抗リガンド以外の除去剤(clearing agent)をさらに含み得る。好ましい実施形態において、検出可能な成分は、放射性同位体である。この放射性同位体は、例えば、E−セレクチン化合物に直接結合され得るか、またはE−セレクチン化合物に間接的に結合され得る(例えば、金属放射性核種は、E−セレクチン化合物に結合したキレート化合物に結合する)。あるいは、予備標的化法と同様に、この放射性核種は、抗リガンド(およびE−セレクチン化合物に結合したリガンド)に、直接的または間接的に結合され得る。
【0025】
本発明のE−セレクチン化合物または結合体は、処置されるべき疾患または組織工学治療に適切な様式で投与され得る。本明細書中で使用される場合、用語「処置する(treat)」は、細胞増殖の停止、細胞の殺傷、細胞増殖の防止、細胞増殖の開始の遅延、または生物体の生存の延長を含み得る。適切な投薬量、ならびに投与の適切な持続時間および頻度は、患者の状態、患者の疾患の型および重篤度、ならびに投与方法のような要因によって決定され得る。一般に、適切な投薬量および治療レジメンは、治療的または予防的利益を提供するのに十分な量の化合物または結合体を提供する。本発明の特に好ましい実施形態において、E−セレクチン化合物または結合体は、約0.001〜1000mg/kg体重の範囲の投薬量で、単回一日用量または複数回一日用量のレジメンで投与され得る。適切な投与量は、一般に、実験モデルまたは臨床試験を使用して決定され得る。一般に、有効な治療を提供するのに十分な最小の投薬量を使用することが好ましい。患者は一般に、処置(予防を含む)される状態に適切なアッセイ(これは、当業者に周知である)を使用して、治療効果についてモニタリングされ得る。
【0026】
E−セレクチン化合物はまた、E−セレクチンを発現する細胞に物質を標的化するために使用され得る。このような物質としては、治療剤および診断剤が挙げられる。治療剤は、分子、ウイルス、ウイルス成分、遺伝子、細胞、細胞成分または標的細胞の特性を改変して、障害を処置もしくは予防するか、または患者の生理学的状態を調節するための利益を提供することが証明され得る任意の他の物質であり得る。治療剤はまた、インビボで生物学的活性を有する薬剤を生成するプロドラッグであり得る。治療剤であり得る分子は、例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸、ポリヌクレオチド、ステロイド、多糖類または無機化合物であり得る。このような分子は、種々の様式のいずれかで機能し得、酵素、酵素インヒビター、ホルモン、レセプター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、触媒性ポリヌクレオチド、抗ウイルス剤、抗腫瘍剤、抗細菌剤、免疫調節剤および細胞傷害性剤(例えば、ヨウ素、臭素、鉛、パラジウムまたは銅のような放射性核種)を含む。可能性のある治療剤の例としては、抗腫瘍剤(例えば、5−フルオロウラシルおよびジスタマイシン)、インテグリンアゴニスト/アンタゴニスト(例えば、環状RGDペプチド)、サイトカインアゴニスト/アンタゴニスト、ヒスタミンアゴニスト/アンタゴニスト(例えば、ジフェンヒドラミンおよびクロルフェニラミン)、抗生物質(例えば、アミノグリコシドおよびセファロスポリン)、および酸化還元活性生物学的因子(例えば、グルタチオンおよびチオレドキシン)が挙げられる。この治療剤は、新脈管形成を阻害し得るか、または新脈管形成を促進し得る。診断剤としては、画像化剤(例えば、金属)、および放射性薬剤(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素およびリン含有化合物)、造影剤、色素(例えば、蛍光色素および発色団)、および比色反応または蛍光反応を触媒する酵素が挙げられる。一般に、診断剤または治療剤のE−セレクチン化合物による保持は、上記のような種々の技術を使用して達成され得る。あるいは、予備標的化アプローチ(上で考察される)が、使用され得る(例えば、E−セレクチン化合物が、リガンド/抗リガンド対の1つのメンバーに結合され、そして診断剤または治療剤が他のメンバーに結合される)。標的化の目的のために、E−セレクチン化合物または結合体は、本明細書中に記載されるようにして、患者に投与され得る。
【0027】
E−セレクチン化合物または結合体はまた、診断方法において、インビトロで使用され得るか、または種々の周知の細胞培養法および細胞分離法で使用され得る。例えば、E−セレクチン化合物または結合体は、培養物におけるスクリーニング、アッセイおよび増殖のためにE−セレクチン発現細胞を固定するのに使用するための組織培養プレートまたは他の細胞培養支持体の内面に結合され得る。このような結合は、任意の適切な技術(例えば、上記の方法)、および他の標準的な技術によって実施され得る。E−セレクチン化合物または結合体はまた、インビトロにおける細胞の同定および識別を容易にして、E−セレクチンを発現する細胞(または、異なるE−セレクチンレベル)の選択を可能にするために使用され得る。好ましくは、このような方法で使用するためのE−セレクチン化合物は、検出可能マーカーを有する。適切なマーカーは、当該分野で周知であり、これには、放射性核種、発光基、蛍光基、酵素、色素、免疫グロブリン定常ドメインおよびビオチンが挙げられる。1つの好ましい実施形態において、蛍光マーカー(例えば、フルオレセイン)を有するE−セレクチン化合物が、細胞と接触され、これは次いで、蛍光細胞分析分離装置(FACS)によって分析される。
【0028】
このようなインビトロの方法は、一般に、生物学的調製物と図1の化合物1〜15の任意の1つとを接触させる工程、およびこの調製物中の化合物を検出する工程を包含する。所望の場合、1回以上の洗浄工程が、方法に加えられ得る。例えば、生物学的調製物とE−セレクチン化合物を接触した後だが、この化合物を検出する前に、この調製物は洗浄され得る(すなわち、流体と接触させ、その後、未結合のE−セレクチン化合物を除去するために、この流体を除去する)あるいは、またははさらに、洗浄工程は、検出プロセスの間に加えられ得る。例えば、E−セレクチン化合物が検出可能な物質に結合され得るマーカーを有する場合、生物学的調製物を検出可能な物質を接触させた後だが、検出の前に、この調製物を洗浄することが望まれ得る。本明細書中で使用される場合、成句「調製物中の化合物を検出する」は、化合物が調製物に結合したままで、この化合物を検出すること、または化合物が調製物に結合しているが、この化合物がこの調製物から分離された後にこの化合物を検出することを含む。
【0029】
以下の実施例は、限定のためではなく、例示のために提供される。
【実施例】
【0030】
本発明のE−セレクチン活性化合物およびP−セレクチン活性化合物の合成が、以下の参考文献に例示される:Helvetica Chemica Acta Vol.83,pp.2893−2907(2000)およびAngew.Chem.Int.Ed.Vol.40,No.19,pp.3644−3647(2001)。
【0031】
(実施例1)
(化合物3の合成(図3))
(中間体Cの形成)
化合物A(5.00g,12.74mmol)および化合物B(4.50g,19.11mmol)およびNIS(3.58g,15.93mmol)を、CHCl(50ml)に溶解し、0℃に冷却する。トリフルオロメタンスルホン酸の溶液(CHCl中0.15M)を、撹拌しながら滴下した。溶液の色がオレンジ色から暗い茶色に変わった後、TMS−OHの添加を止める。次いで、この溶液を飽和NaHCO(30ml)で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。得られたシロップを、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/エーテル,1:1)により精製し、次の工程で使用する。
【0032】
前に得られた化合物を、THF(40ml)に溶解し、Pd(10%)/C(質量で1/10)を加える。出発物質の消失をTLCで確認するまで、室温でこの反応を続ける。この溶液をセライト床を通して濾過し、濾液を真空中で濃縮して、4および6OH化合物を得る。次いで、この化合物を、ピリジン(25ml)中に溶解し、0℃に冷却する。PhCCl(1.2当量)を滴下し、反応を室温で6時間続ける。次いで、酢酸エチル(50ml)を加え、この溶液を0.1N HCl(2×50ml)、飽和NaHCO(1×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。中間体Cを、シリカゲルクロマトグラフィーにより得る。
【0033】
(化合物20の形成:)
化合物C(800mg,1.41mmol)およびEtNBr(353mg,1.69mmol)を、DMF/CHCl(10ml,1:1,モルキュラーシーブを含む)中に溶解し、0℃に冷却する。Br(298mg,1.86mmol,CHCl中)を0℃で化合物D(808mg,1.69mmol)の別個のCHCl溶液に加える。30分後、Br/D溶液をシクロヘキサン(0.2ml)でクエンチし、直後(10分以内)にC溶液に加える。この混合物を室温で65時間反応させる。酢酸エチル(100ml)を加え、この溶液を濾過し、そして濾液を飽和NaS(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。次いで、生じるシロップを、エーテル(50ml)および蟻酸(10ml)に溶解し、撹拌しながら加える。反応の完了する際に(TLCにより確かめられる)、この溶液を、飽和NaHCO(2×50ml)および飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、次いで、乾燥するまで蒸発する。次いで、化合物20を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0034】
(中間体Fの形成:)
化合物20(1g,1.02mmol)をMeOH/ジオキサン(10ml,20:1)中に溶解し、NaOMe(0.10mmol)を撹拌しながら加える。反応を20時間50℃で続け、次いで、2滴の酢酸を加える。この溶液を、乾燥するまで蒸発し、酢酸エチル(25ml)に溶解し、飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。最終生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。生成物(0.980mmol)およびBuSn(1.08mmol)を、MeOH中に懸濁し、2時間加熱して還流させる。次いで、生じる透明な溶液を、乾燥するまで蒸発し、ペンタン(10ml)に溶解し、そして蒸発させて無色の発泡体を得る。この発泡体を、1,2−ジメトキシエタン(DME,15ml)に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、この反応物を室温で2時間撹拌する。2時間後、1M KHPO(50ml)およびKF(1g)を撹拌しながら加え、次いで酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を、10%KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で乾燥するまで蒸発する。化合物Fを、シリカゲルクロマトグラフィーによって得る。
【0035】
(化合物3の形成:)
化合物Fを、CHOH(50ml)に溶解し、Pd(10%)/C(質量に対して1/10)を加える。溶液を脱気し、H雰囲気が生成される。開始物質の消失をTLCで確認するまで、室温で反応を続ける。溶液をセライト床を介して濾過し、濾液を真空中で濃縮して化合物3を得る。
【0036】
(実施例2)
(化合物21の合成(図4))
(中間体Hの形成:)
化合物G(15.0g,66.9mmol)およびBuSnO(20.0g,80.3mmol)を、MeOH(450ml)中に懸濁し、2時間加熱して還流させる。次いで、生じる透明な溶液を、乾燥するまで蒸発し、ペンタンに溶解し、そして蒸発させて、無色の発泡体を得る。この発泡体を、1,2−ジメトキシエタン(DME,120ml)に溶解し、E(39.6g,100.3mmol)およびCsF(12.2g,80.3mmol)を加え、この反応物を室温で2時間撹拌する。2時間後、1M KHPO(700ml)およびKF(25g)を撹拌しながら加え、次いで酢酸エチル(3×250ml)で抽出する。有機層を、10%KF(2×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で乾燥するまで蒸発する。この化合物(19.3g,41.2mmol)を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、直後に結晶DMAPと共にピリジン(210ml)中に溶解する。この溶液を0℃に冷却し、ベンゾイルクロリド(52.1g,370.3mmol)を、撹拌しながら滴下する。この溶液を室温までゆっくりと温め、この反応を室温で20分間続ける。この溶液を乾燥するまで蒸発し、酢酸エチル(500ml)に溶解し、0.1M HCl(2×250ml)、飽和NaHCO(2×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)溶液で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。Hを、シリカゲルクロマトグラフィーによって得る。
【0037】
(中間体Iの形成:)
中間体H(10.0g,12.82mmol)および中間体B(6.05g,25.64mmol)を、CHCl(75ml)中に溶解し、0.15M CFSOH(CHCl中)を、撹拌しながら−10℃で滴下する。オレンジ色の溶液が茶色に変化するとき、添加を止める。酢酸エチル(500ml)を添加し、この溶液を飽和NaHCO(4×250ml)および飽和NaClで洗浄する。次いで、有機層を、NaSOで乾燥し、減圧下で蒸発する。次いで、化合物(7.96g,9.19mmol)を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、次いでDMF(55ml)に溶解する。次いで、TBDMS−Cl(1.52g,10.1mmol)およびイミダゾール(0.94g,13.8mmol)を添加し、この反応を、室温で1時間続ける。酢酸エチル(250ml)を加え、この溶液を飽和NaHCO(5×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。次いで、有機層を、NaSOで乾燥し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製されて、中間体Iを与える。
【0038】
(中間体Jの形成:)
化合物I(7.71g,7.87mmol)およびEtNBr(2.00g,9.45mmol)を、DMF/CHCl(60ml,1:1,モルキュラーシーブ−12gを含む)中に溶解し、0℃に冷却する。CHCl(11ml)中のBr(1.90g,11.8mmol)を0℃で化合物D(4.5g,9.45mmol)の別個のCHCl溶液に滴下する。30分後、Br/D溶液をシクロヘキサン(2.5ml)でクエンチし、直後(10分以内)にI溶液に加える。この混合物を室温で65時間反応させる。CHCl(250ml)を加え、溶液を濾過し、そして濾液を飽和NaHCO(2×50ml)、0.5M HCl(2×250ml)および飽和NaCl(2×250ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。この混合物を、室温でMeCN(85ml)に溶解し、EtCNおよびHSiF(1.3ml,35%)のMeCN溶液(17ml)を加え、2時間撹拌する。CHCl(250ml)を加え、この溶液を飽和NaHCO(3×250ml)および飽和NaCl(1×250ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発し、そしてJを、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0039】
(中間体Kの形成:)
中間体J(12.5g,9.75mmol)を、ピリジン(80ml)中に溶解し、メタンスルホニルクロリド(3.35g,29.2mmol)を、5分かけて撹拌しながら滴下する。この反応を30分間続け、次いで酢酸エチル(500ml)を加える。この溶液を、1N HCl(250ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、蒸発する。生じるシロップ(12.95g,9.52mmol)を、DMF(40ml)中に溶解し、NaN(4.64g,74.4mmol)を加える。この反応をアルゴン雰囲気下で65℃で35時間続ける。溶液を酢酸エチル(500ml)で希釈し、HO(300ml)および飽和NaCl(150ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。化合物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。次いで、精製した生成物(12.2g,9.33mmol)を、MeOH/HO(200ml/20ml)溶液中に懸濁させ、LiOH−HO(5.1g,121.3mmol)を加える。この反応を、20時間65℃で続ける。酢酸エチル(500ml)を加え、溶液を飽和NaCl(200ml)で洗浄する。有機層を、NaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発する。化合物Kを、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。
【0040】
(化合物21の形成:)
化合物K(8.45g、9.33mmol)をジオキサン/HO(250ml/50ml)中に溶解し、Pd(10%)/C(3.4g)を加える。この溶液を脱気して、H雰囲気を生成する。出発物質の消失がTLCによって確認されるまで、この反応を室温で進行させる。この溶液をセライトのベッドを通して濾過し、この濾液を減圧下で濃縮して化合物21を得る。
【0041】
(実施例3)
(化合物15の合成(図5))
(中間体Lの形成:)
化合物20(10mmol)をCHCl(30ml)中に溶解し、DMSO(20mmol)を加え、この溶液を−60℃まで冷却する。塩化オキサリル(11mmol)を20の攪拌溶液にゆっくり加える。反応をN雰囲気下で30分間進行させる。この反応物を0.1M HCl、飽和NaHCO、および飽和NaClで洗浄する。有機層をNaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発させる。得られるシロップをt−BuOH(20ml)および2−メチル−2−ブテン(10ml)中に置き、NaHPO(20mmol)を攪拌しながら加える。この反応を3時間進行させ、次いで、蒸発させてCHClに溶解し、0.1M HCl、飽和NaHCO、および飽和NaClで洗浄する。得られる化合物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物Lを得る。
【0042】
(中間体Nの形成:)
化合物L(10mmol)をDMF(15ml)中に溶解し、化合物M(10mmol)、HBTU(12mmol)およびEtN(20mmol)を攪拌しながら加える。この反応を室温で24時間進行させる。酢酸エチル(100ml)を加え、この溶液を0.1M HCl(1×100ml)、飽和NaHCO(1×100ml)、および飽和NaCl(1×100ml)で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発させる。化合物Nをシリカゲルクロマトグラフィーにより単離する。
【0043】
(中間体Oの形成:)
化合物N(10mmol)をMeOH(35ml)中に溶解し、NaOMe(1mmol)を攪拌しながら加える。この反応を室温で20時間進行させる。この溶液を乾燥するまで蒸発させ、エチルエーテル(50ml)に溶解し、飽和NaCl(1×50ml)で洗浄する。有機層をNaSOで乾燥し、乾燥するまで蒸発させる。最終生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。生成物(0.980mmol)およびBuSn(1.08mmol)をMeOH(15ml)中に懸濁し、2時間加熱還流する。次いで、得られる透明の溶液を乾燥するまで蒸発させ、ペンタン(10ml)に溶解し、そして蒸発させて無色の発泡体を得る。この発泡体を1,2−ジメトキシエタン(DME、15ml)中に溶解し、化合物E(1.96mmol)およびCsF(1.18mmol)を加え、この反応物を室温で2時間攪拌する。2時間後、1M KHPO(50ml)およびKF(1g)を攪拌しながら加え、その後、酢酸エチル(2×25ml)で抽出する。有機層を10% KF(2×50ml)および飽和NaCl(2×50ml)で洗浄し、NaSOで乾燥し、減圧下で乾燥するまで蒸発させる。化合物Oをシリカゲルクロマトグラフィーにより得る。
【0044】
(化合物15の形成:)
化合物O(9mmol)をMeOH(200ml)中に溶解し、Pd(10%)/C(3g)を加える。この溶液を脱気し、H雰囲気を生成する。出発物質の消失がTLCによって確認されるまで、この反応を室温で進行する。この溶液をセライトのベッドを通して濾過し、この濾液を減圧下で濃縮して化合物15を得る。
【0045】
(実施例4)
(化合物21のアシル化(図6))
(化合物21と酸クロリドとの反応)
化合物21(20mg、0.033mmol)を1N NaOH(pHを8〜10に調節する)を含むTHF/HO(2ml、1:1)溶液中に溶解し、0℃まで冷却する。次いで、シクロヘキシル−カルボニルクロリド(0.049mmol)を攪拌しながら滴下する。この反応を0℃で3時間進行させる。この溶液を氷でクエンチし、乾燥するまで蒸発させる。化合物1を逆相クロマトグラフィーにより精製する。
【0046】
(化合物21とイソシアネートとの反応)
化合物21(30mg、0.049mmol)を0.5N NaOH水溶液(1ml)に溶解し、0℃まで冷却する。次いで、エチルイソシアネート(1.2当量)を攪拌しながら滴下する。この反応を室温で3時間続ける。この溶液を氷でクエンチし、乾燥するまで蒸発させる。化合物2を逆相クロマトグラフィーにより精製する。
【0047】
(化合物21とクロロオルソホルメートとの反応)
化合物21(20mg、0.033mmol)をNaOH(pHを8〜10に調節する)を含むTHF/HO(2ml、1:1)溶液中に溶解し、0℃まで冷却する。次いで、ベンジルクロロオルソホルメート(0.049mmol)を攪拌しながら滴下する。この反応を0℃で3時間続ける。この溶液を氷でクエンチし、乾燥するまで蒸発させる。化合物11を逆相クロマトグラフィーにより精製する。
【0048】
(化合物21と塩化スルホニルとの反応)
化合物21(20mg、0.033mmol)を飽和NaHCO水溶液/トルエン(2ml、1:1)溶液に溶解し、0℃まで冷却する。次いで、塩化p−トルエンスルホニル(0.049mmol)を攪拌しながら滴下する。この反応を0℃で3時間続ける。この溶液を氷でクエンチし、乾燥するまで蒸発させる。化合物9を逆相クロマトグラフィーにより精製する。
【0049】
(実施例5)
(E−セレクチンアンタゴニスト活性についてのアッセイ)
マイクロタイタープレート(プレート1)のウェルをE−セレクチン/hIgキメラ(GlycoTech Corp.、Rockville、MD)により、37℃で2時間インキュベートすることによってコーティングする。50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM CaCl、pH7.4(Tris−Ca)によってプレートを5回洗浄した後、Tris−Ca/Stabilcoat(SurModics、Eden Prarie、MN)(1:1、v/v)中の1% BSA(100μl)を、非特異的結合をブロックするために各ウェルに加える。第2の低結合丸底プレート(プレート2)においてTris−Ca(60μl/ウェル)中、連続的に希釈する。ストレプトアビジン−HRP(Sigma、St.Louis、MO)と混合されたSLea−PAA−ビオチン(GlycoTech Corp.、Rockville、MD)の予備形成された結合体をプレート2の各ウェル(60μl/ウェルの1μg/ml)に加える。プレート1をTris−Caで数回洗浄し、100μl/ウェルをプレート2からプレート1に移す。正確に2時間室温でインキュベートした後、プレートを洗浄し、100μl/ウェルのTMB試薬(KPL labs、Gaithersburg、MD)を各ウェルに加える。3分間室温でインキュベートした後、この反応を100μl/ウェルの1M HPOを加えることによって停止し、450nmでの吸光度をマイクロタイタープレートリーダーによって決定する。
【0050】
(実施例6)
(P−セレクチンアンタゴニスト活性についてのアッセイ)
ネオ糖タンパク質(neoglycoprotein)であるシアリルLe−HSA(Isosep AB、Sweden)をマイクロタイタープレート(プレート1)のウェル上にコーティングし、次いで、これらのウェルをDulbeccoのリン酸緩衝化生理食塩水(DPBS)中に希釈した2%のウシ血清アルブミン(BSA)を添加することによってブロックする。第2のマイクロタイタープレート(プレート2)において、試験アンタゴニストをDPBS中の1% BSAにおいて連続的に希釈する。ブロックした後、プレート1を洗浄し、プレート2の内容物をプレート1に移す。Pセレクチン/hIg組換えキメラタンパク質(GlycoTech Corp.、Rockville、MD)をさらにプレート1における各ウェルに加え、この結合プロセスを2時間室温でインキュベートする。次いで、プレート1をDPBSで洗浄し、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIg(γ)(KPL Labs、Gaithersburg、MD)を1μg/mlで各ウェルに加える。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをDBPSで洗浄し、次いで、TMB基質(KPL Labs)を各ウェルに加える。5分後、反応を1M HPOの添加によって停止する。次いで、450nmでの吸光度をマイクロタイタープレートリーダーを使用して決定する。
【0051】
本明細書中で参照され、かつ/または出願データシートに列挙される、上記全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0052】
前述のことから、本発明の特定の実施形態が例示の目的のために本明細書中に記載されているが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】図1Aは、E−セレクチン特異的化合物の構造を示す。
【図1B】図1Bは、E−セレクチン特異的化合物の構造を示す。
【図1C】図1Cは、E−セレクチン特異的化合物の構造を示す。
【図1D】図1Dは、E−セレクチン特異的化合物の構造を示す。
【図2】図2は、ELISAアッセイにおいてP−セレクチン結合を示すセレクチン化合物の構造(これは、図1における構造と関連する)を示す。
【図3】図3は、代表的なE−セレクチン化合物3の合成を示す。
【図4】図4は、化合物21の合成を示す。
【図5】図5は、代表的なE−セレクチン化合物15の合成を示す。
【図6】図6は、種々の代表的E−セレクチン化合物を与える化合物21のアシル化を示す。
【図7】図7は、ELISAアッセイにおいてE−セレクチンおよびP−セレクチンについての図1および図2の化合物全ての活性を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新脈管形成を必要とする状態または関連する状態をインビボでスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)温血動物に対して診断有効量の図1の化合物1〜15のいずれか1つを投与する工程;および
(b)該動物において該化合物を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記化合物が、検出可能な成分を保有する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記検出可能な化合物が、放射性同位元素である、方法。
【請求項4】
インビトロにおいて、新脈管形成を必要とする状態、または関連する状態について、スクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)生物学的調製物を、図1の化合物1〜15のいずれか1つの診断有効量と接触させる、工程;および
(b)該調製物中の該化合物を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記化合物が、検出可能な成分を保有する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記検出可能な成分が、蛍光基である、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記蛍光基が、蛍光細胞分析分離装置によって検出される、方法。
【請求項8】
E−セレクチンを発現する細胞のインビトロにおける同定方法であって、以下の工程:
(a)生物学的調製物を、図1の化合物1〜15のいずれか1つと接触させる工程;および、
(b)該調製物中の該化合物を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記化合物が、検出可能な成分を保有する、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記検出可能な成分が、蛍光基である、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記蛍光基が、蛍光細胞分析分離装置によって検出される、方法。
【請求項12】
新脈管形成を必要とする状態または関連する状態を処置する方法であって、温血動物に対して治療有効量の図1の化合物1〜15のいずれか1つを投与する工程、を包含する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記化合物が、治療剤を保有する、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、該治療剤が、新脈管形成を阻害する、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、該治療剤が、新脈管形成を促進する、方法。
【請求項16】
組織工学において新脈管形成を促進する方法であって、該方法は、細胞を図1の化合物1〜15のいずれか1つと接触させる工程を包含し、ここで、該化合物は、新脈管形成促進剤を保有する、方法。
【請求項17】
診断剤または治療剤に共有結合した、図1の化合物1〜15のいずれか1つを含む、結合体。
【請求項18】
請求項17に記載の結合体であって、ここで、前記治療剤が、抗腫瘍性剤である、結合体。
【請求項19】
請求項17に記載の結合体であって、ここで、前記治療剤が、新脈管形成促進剤である、結合体。
【請求項20】
請求項17に記載の結合体であって、ここで、前記治療剤が、新脈管形成阻害剤である、結合体。
【請求項21】
新脈管形成を必要とする状態または関連する状態を、インビトロまたはインビボにおいてスクリーニングするための方法における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項22】
新脈管形成を必要とする状態または関連する状態の処置方法における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項23】
新脈管形成の阻害方法における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項24】
新脈管形成の促進方法における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項25】
新脈管形成を必要とする状態または関連する状態を処置するための医薬の製造における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項26】
新脈管形成を阻害するための医薬の製造における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。
【請求項27】
新脈管形成を促進するための医薬の製造における使用のための、図1の化合物1〜15のいずれか1つ、または請求項17に記載の結合体。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−502986(P2006−502986A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519616(P2004−519616)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/019429
【国際公開番号】WO2004/004636
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(503443681)グリコミメティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】