新規なアルブミン
本発明は、ミュータントの由来となった天然アルブミンに対して金属結合及び/または他の特性の改変を示す血清アルブミンの突然変異型並びに医学分野あるいは培養における細胞の発育におけるミュータントアルブミンの利用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミュータントの由来となった天然アルブミンに対して金属結合及び/または他の特性の改変を示す血清アルブミンの突然変異型並びに医学分野あるいは培養における細胞の発育におけるミュータントアルブミンの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトアルブミンは血漿中に最も豊富に存在する蛋白である。一般に、約750μMの濃度で存在する。主として螺旋状のトリプルドメイン構造を有する585個のアミノ酸からなる1本のポリペプチド鎖である。ヒト血清アルブミンの遺伝子は想定される「キャッピング」部位からポリAの最初の付加部位まで16,961個のヌクレオチドからなる。
【0003】
アルブミンは血中の主な輸送蛋白で、脂肪酸、ホルモン及び薬物等の広範囲の小分子と可逆的に結合する。アルブミンはまた、多くの金属イオンの輸送と貯蔵にも関与している。現在、ヒトアルブミンは臨床的には、重度の火傷、ショックまたは失血状態にある患者の治療に用いられている。他の哺乳類のアルブミンはヒトアルブミンと構造などが非常に良く一致する。
【0004】
亜鉛と銅はそれぞれ3.4×107M-1および1.5×1016M-1の結合定数でアルブミンと結合することが知られている(非特許文献1:Masuoka et al.(1993)J.Biol.Chem.268,21533-21537)。Cu2+はアルブミンのN末端アミノ酸のAspl−Ala2−His3に最も強く結合し、分子上に他の結合部位が知られているにもかかわらず4個のNリガンドの正方形‐平面部位を供給する。
【0005】
血漿中Zn2+の約75%(約14μM)がアルブミンに結合している。これは血清中のZn2+の交換可能な画分の98%ほどを占める(非特許文献2:Giroux et al.(1976)J.Bioinorg.Chem.5,211-218;非特許文献3:Foote and Delves(1984)Analyst 109,709-711)。アルブミンは内皮細胞による亜鉛の取り込みを調整することが以前から知られており、一方内皮を透過するレセプターを介する小胞共輸送がアルブミン−亜鉛複合体によりインビトロで証明されている(非特許文献4:Bobilya et al.(1993)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.202,159-166;非特許文献5:Tibaduiza et al.(1996)J.Cell Physiol.167,539-547)。アルブミンは循環における主な亜鉛輸送蛋白と信じられているにもかかわらず、アルブミン上のZn2+の結合部位はこれまで明確に突きとめられていなかった。
【0006】
亜鉛は体内の必須元素であり、300以上の酵素中に存在する。亜鉛にはビタミンAの輸送、創傷の治癒、男性での精子産生を含む多くの重要な役割があり、炭疽菌致死因子や細菌腸毒素により取り込まれる。それ故血中亜鉛濃度の調節は生理的に非常に重要である。血液からのZn2+の取り込みは金属結合性を有する有機薬物、例えば、トリプシンのようなセリンプロテアーゼのベンズイミダゾール阻害剤の蛋白や酵素に対する親和力を高めるのに用い得ることが示唆されている(非特許文献6:Katz and Luong(1999)J.Mol.Biol.292,669-684;非特許文献7:Janc et al.(2000)Biochemistry 39,4792-4800;非特許文献8:Katz et al.(2001)Chem.&Biol.8,1107-1121;非特許文献9:Liang et al.(2002)J.Am.Chem.Soc.)。
【0007】
ReedとBurrington(非特許文献10:J.Biol.Chem.(1989),264,17, p9867-9872)はアルブミンの肝細胞への結合およびこのことがアルブミンに対する細胞の表面レセプターを必要とするか否かに関する。彼らの研究は肝細胞表面へのアルブミンの可逆的吸着を証明し、アルブミンと肝細胞表面との間の相互作用を促進させる立体配座の変化を伴うことを提唱した。しかしながら、どのような立体配座の変化が生じあるいはどのようにしてそれが調節されるかについての示唆はない。
Bosらは(非特許文献11:J.Biol.Chem.(1989),264,2,p953-959)ヒスチジン残基を介するCa2+の結合によるヒト血清アルブミンの中性−塩基遷移の分子メカニズムに関する。彼らの論文はN−B遷移が薬物の体内動態に役割を果たしている可能性を明らかにしているが、ミュータント血清アルブミンの創造を示唆してはおらず、そのようなミュータントが有するであろう効果についても何ら示唆していない。
【0008】
【非特許文献1】Masuoka et al., J.Biol.Chem. 268, 21533-21537(1993)
【非特許文献2】Giroux et al., J.Bioinorg.Chem., 5, 211-218(1976)
【非特許文献3】Foote and Delves, Analyst 109, 709-711(1984)
【非特許文献4】Bobilya et al., Proc.Soc.Exp.Biol.Med., 202, 159-166(1993)
【非特許文献5】Tibaduiza et al., J.Cell Physiol., 167, 539-547(1996)
【非特許文献6】Katz and Luong,J.Mol.Biol., 292, 669-684(1999)
【非特許文献7】Janc et al., Biochemistry, 39, 4792-4800(2000)
【非特許文献8】Katz et al., Chem.& Biol., 8, 1107-1121(2001)
【非特許文献9】Liang et al., J.Am.Chem.Soc.(2002)
【非特許文献10】J.Biol.Chem., 264, 17, p9867-9872(1989)
【非特許文献11】J.Biol.Chem., 264, 2, p953-959(1989)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は4個のアミノ酸(His67,Asn99,His247,Asp249)のクラスターが亜鉛、銅及び/またはカドミウムの結合部位(図1および2を参照)に含まれるドメインIとIIの間の界面に位置するという当初の発見に基づいている。これら4残基はすべて、現在までに配列決定された哺乳類アルブミンのいずれにおいても良く保存されている(表1を参照)。ここで言及したナンバリングは、プレプロ−アルブミン配列が翻訳に続き開裂された後のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列の特定の位置に見られるアミノ酸に関するものである(表1を参照)。この部位の同定は利用できる亜鉛及び/または他の金属イオンの血中濃度を調節するための治療用アルブミンの設計および標的組織へのそれらのデリバリーの原理を提供する。本発明はミュータントアルブミンが有する細胞接着に対する効果の観察結果にも基づいている。
【0010】
このように、第一に、ミュータントの由来となった天然アルブミンに対してミュータントが金属結合親和力及び/または他の生理学的特性の改変を示すように突然変異を生じた単離されたミュータント血清アルブミンが提供される。
金属結合及び/または他の生理学的特性の改変をもたらす天然アルブミン配列へのいかなる突然変異も、以下に定義するように本発明に包含されると認識される。特定のミュータントを産生させ、ここで述べられた実験に基づいてこのようなミュータントが金属結合及び/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを試験することは専門家にとっては比較的簡単な課題である。
突然変異され得る好ましい残基は、表1で明らかなように残基X1〜X11及び/または特定の血清アルブミンに対し測定された結晶構造から決定され得る残基のいずれかと水素結合できる残基として同定される。
【0011】
第二に実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミンが提供される:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲を通して慣用のアミノ酸の1文字表記を用いている。アミノ酸置換は他の天然アミノ酸,特にDNAにより直接コードされる20個のアミノ酸あるいは例えば専門家に知られている合成アミノ酸あるいは珍しいアミノ酸に対する。上記の配列はGenbankデータベースに見られるヒト血清アルブミンの配列に基づいている。ヒト血清アルブミンはX1がH、X2がN,X3がH,X4がD、X5がY、X6がL、X7がG、X8がE、X9がH、X10がHおよびX11がHである上記配列からなる。このように、本発明に従ってミュータント血清アルブミンは上述の位置に見られる特定の種の”アルブミン”の天然アミノ酸に関して、典型的には、残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる。それにもかかわらず、種の個体間で自然変動が存在するので配列に小さな変動が生じ得る。X1〜X7において明らかにされた変動以外のそのような小さな配列変動は本発明からはずれていないと理解される。配列中のこのような変動は置換、反転,欠失あるいは転移として現れる。しかしながら、このような変異体のアルブミン配列は図1で示されたいずれの配列ともかなり類似している。一般に変異体アルブミンの配列は同定された配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%あるいは99%の同一性(X位置を除く。)を示す。
【0013】
アミノ酸配列間の相同性(すなわち、同一性)は市販のアルゴリズムを用いて決定することができる。プログラムBLAST、gapped BLAST,BLASTN,PSI−BLASTおよびBLAST2配列(National Center for Biotechnology Informationにより提供された)はこの目的のために当該技術分野において広く用いられ、2つのアミノ酸配列の相同領域を整列させることができる。これらは構造の知られた蛋白とモデルとされた他の標的蛋白のアミノ酸間の相同性の程度を決定するためにデフォルトパラメータが使用される。
ミュータント血清アルブミンは生物体のプロテオームにおいて結合し得る他の蛋白を含まないあるいは実質的に含まないあるいは一部含む意味で単離され、それ故細胞あるいは生物体のプロテオーム内のいかなる天然アルブミンをも包含しない。
【0014】
上記配列はリーダー配列(すなわち、MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR (Met-Lys-Trp-Val-Thr-Phe-Ile-Ser-Leu-Leu-Phe-Leu-Phe-Ser-Ser-Ala-Tyr-Ser-Arg-Gly-Val-Phe-Arg-Arg)(配列番号13))が配列から開裂された後の血清アルブミンのヒト型に基づいている。本発明はこのようなリーダー配列を含むミュータント配列にも及ぶ。
上記のことはヒト血清アルブミンのミュータントに関連する一方、本発明はミュータントヒト血清アルブミンにのみ限定されない。すべての種に渡って血清アルブミンはかなり保存されており、他の種のアルブミンから上記配列中Xsで表された位置のアミノ酸を同定することおよび金属結合及び/または他の生理学的特性を改変するために上述のアミノ酸を変えることは十分に専門家の専門技術内である。表1は実際哺乳類の血清アルブミンポリペプチド配列の並びを示しており、本発明に従って突然変異を生じ得る残基が強調されている。ミュータント血清アルブミンを産生するために少なくとも前記残基の1つは同定された天然残基以外であるべきで、それは天然血清アルブミンに関して金属結合及び/または他の生理学的特性の改変を示す。
【0015】
多くの血清アルブミンの配列は知られており、例えば、National Center for Biotechnology Infomation:www.ncbi.nlm.gov.のGenbankデータベースから容易に入手できる。例えばヒトの配列はアクセッション番号P02768で見ることができる。他の配列(1文字符号)もwww.albumin.org.で見ることができる。
本発明のミュータントは特定の種の天然血清アルブミンの一般的な全体のフォールディングに関して大体は類似している。例えば、ミュータント血清アルブミンの円偏光二色バンドの符号と大きさが天然の血清アルブミンと類似しているかどうかを調べるために円偏光二色性の研究が行われる。もし類似しているなら、ミュータント血清アルブミンは天然の血清アルブミンに類似した二次構造を示す。
【0016】
本発明のミュータントはミュータントの由来となった天然アルブミンに関して金属結合親和力の改変あるいは他の改変された特性、例えば培養における細胞接着及び/または発育の改変を示す。金属結合親和力の改変は金属結合親和力(例えばKd)における低下あるいは増強及び/または金属の結合/解離の比率の増大あるいは低下を意味する。トグKd値に置き換えてKd値を求める時10あるいは100の係数のような好ましくは2,4、あるいは6の係数による増加あるいは減少が生理的条件(すなわち、約pH7.3)、適切な濃度、約20℃〜37℃の温度で測定される。そのようなミュータントアルブミンに対し結合親和力の改変を示す金属は亜鉛、銅、ニッケルおよびコバルトがある。好ましくはミュータントアルブミンは亜鉛に対して結合親和力の改変を示す。一般に、金属結合親和力の改変はZn2+,Cu2+などのような金属イオンに関する。適切な金属結合側鎖を持たない残基への金属結合に必要と考えられる残基の突然変異は金属結合親和力の低下をもたらすと考えられる。逆に金属への結合に必要と考えられる残基および結合を手助けし促進する残基の近傍に存在するが、金属/金属イオン結合に関連しない残基の突然変異は金属結合親和力を高めると期待される。
【0017】
例えば以下の突然変異体は金属結合親和力の低下をもたらすと仮定される:
X1 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X2 => A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X3 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X4 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
また、金属親和力の上昇と調節を生じさせる金属結合リガンドを導入する側鎖の突然変異は以下の変異体を含む:
X5 => C, D, E, H (これはブタアルブミンでは既にHis残基)
X6 => C, D, E, H
X7 => C, D, E, H
X2 => C, D, E, H
X4 => C, E, H
X1 => C, D, E
X3 => C, D, E
【0018】
提案部位の金属結合は脂肪酸結合により影響を受けることを本発明者らは見出した(A.J.Stewart,C.A.Blindauer,S.Berezenko,D.Sleep,P.J.Sadler,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100,3701-3706(2003))。脂肪酸フリーのアルブミンと5モルのミリステート(pdb 1bj5)と結合したアルブミンのX線構造の比較から、いわゆる結合部位2に脂肪酸のアニオンを提供するためにドメインIおよびIIベンドを結びつける長いヘリックスとリガンド配位していないrHAにおける2カ所のハーフサイトは10Å以上移動し連続した空洞を形成することが明らかである(Curry,S.,Mandelkow,H.,Brick,P.&Franks,N., Nat.Struct.Biol.5,827-835 (1998))。この脂肪酸結合は提案亜鉛部位(図X3e(a&b)を参照)における他の2残基、H67とN99から4〜6Å離れることにより残基H247とD249の移動をもたらす。D249はまたH67のN'に対するH結合を維持するために側鎖の立体配座を変化させ、さらにN99に対するH結合を形成する。アンリガンド構造においてN99にH結合しているH247は脂肪酸結合構造においてE100とH結合を形成する。ヒトアルブミンにおける脂肪酸結合による亜鉛部位の提案されたスイッチングは有機栄養素と必須金属イオンとの間のアロステリック相互作用の興味深い例である。H247−E100のH−結合は"switched"型を安定化させると期待されるので、E100の以下の突然変異体は相互作用する金属/脂肪酸結合に影響すると予測される。
X8 => C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【0019】
さらに、より最近の研究はH67A、N99DおよびN99Hの突然変異を有するアルブミンは、細胞培養培地で用いた時、野生型と劇的に異なる性質を示すことを明らかにした。細胞接着はH67AおよびN99Hミュータントの両方において傷害される。アルブミンから例えば脂肪酸の肝による取り込みは細胞表面へのアルブミンの非特異的結合とアルブミン分子の立体配座変化の誘導を必要とすることが知られている(R.G.Reed,C.M.Burrington,J.Biol.Chem.264,9867-9872, 1989)。突然変異残基はいずれもH結合を介したドメインI−ドメインII接触を安定化させるのに必要である。ドメインI/II界面における一ヶ所の突然変異は細胞に対する突然変異アルブミンの作用に大きな影響を与えるという知見はドメイン間のH結合に必要とされるドメインI/IIヒスチジン残基に関する以下の突然変異は細胞接着及び/または細胞発育に同様の影響を与える。
X9 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
なお、本明細書において標準的なアミノ酸の1文字表記が使用されている点に留意されたい。
【0020】
アルブミンに対するZn2+の性質は113Cd−NMRによる研究によって示された。哺乳類の幾つかのアルブミンはCd2+に対しN/O配位に特有のケミカルシフトを有する2個の強力な結合部位を有する(Sadler & Viles, Inorg.Chem., 35, 4490-4496 (1996))。ヒトアルブミンでの24ppmと114ppmの113Cdシフト(Cd(ClO4)に比して)はそれぞれ1個のイミダゾール窒素および2〜3個のイミダゾール窒素を含む部位を暗示している。Zn2+,Cu2+およびNi2+イオンはヒトアルブミンにおいてこれらの部位のCd2+を置換し得る。アルブミンの結晶構造に基づいた本発明者による分子モデリング(PDB 1AO6)は、多数の金属結合部位がHis67、Asn99、His247およびAsp249のクラスターを含むことを示唆した。本発明者らはHis67のアラニンへの部位特異的(site directed)突然変異誘発とそれに続く111Cd−NMRを用いる同位元素に富んだカドミウムによる金属競合研究によりこの部位の位置を立証した。月並みにこのことはアラニンに突然変異した位置67のヒスチジンをH67Aとして表される。このような表記は本願の他の部分でも用いる。
【0021】
他の残基、例えば、チロシン30(X5)およびグリシン248(X7)の突然変異は亜鉛結合に影響すると考えられる。チロシン30はそれ自身金属に結合しないが、金属に結合している残基99に水素結合する。このように、残基30の突然変異は金属結合部位に影響する。Gly248のバックボーンのカルボニルは残基99に水素結合する、それ故この残基の突然変異は金属結合部位に影響を与える。
【0022】
本発明の突然変異アルブミンは新たに合成されるが、好ましくは当該技術分野の専門家に良く知られている遺伝子組み換え法により産生される。例えば突然変異アルブミンは関連した遺伝子配列に対する部位特異的(site directed)突然変異誘発およびその後の蛋白発現により天然アルブミンから導かれる。このような技術は良く知られており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYに述べられている。
本発明はそれ故本発明に従ってミュータント血清アルブミンをコードする核酸配列にも拡張される
【0023】
宿主生物体でのミュータントアルブミンの遺伝子組み換えによる産生のために、ミュータントアルブミン蛋白をコードするヌクレオチド配列を選択宿主に対し設計されたDNA構築物を作成するために発現カセットに挿入し、宿主に導入する。選択宿主にとって適切なプロモーター、シグナル配列、5’および3’非翻訳配列、エンハンサーおよびターミネーターのような特異的な制御配列の選択は当該技術分野におけるルーチンワーカーの技術レベル内である。適切なリーディングフレームにリンクした個々の要素を含む結果として得られた分子は、リン酸カルシウム沈降法、エレクトロポレーション法、バイオリスティック導入法、ウイルス導入法などのような当該技術分野の専門家に良く知られている技術を用いて選択した細胞に導入することができる。トランスフェクション(Schenborn ET, Goiffon V. Methods Mol Bio. 2000; 130: 135-45, Schenborn ET, Oler J. Methods Mol Biol. 2000; 130: 155-64),エレクトロポレーション(Heiser WC. Methods Mol Biol. 2000; 130: 117-34)あるいは組み替えウイルス(Walther W. Stein U; Drugs 2000 Aug; 60 (2): 249-71)による適切な発現カセット、ベクターおよび蛋白の組み換え法は大腸菌(Studier and Moffatt, J. Mol. Biol. 189: 113 (1986); Brosius, DNA 8: 759 (1989))を参照)、酵母(Schneider and Guarente, Meth. Enzymol 194: 373 (1991)を参照)および昆虫の細胞(Luckow and Summers, Bio/Technol. 6: 47 (1988)を参照)のような宿主微生物および哺乳類の細胞(組織培養あるいは遺伝子療法)にとって良く知られている。
【0024】
微生物、特に酵母においてアルブミンを発現し、培養培地からそれを精製する技術は米国特許第5637504号、米国特許第6034221号及びWO00/44772に開示されており、いずれも言及により本願に組み込まれる。
それ故、発明はさらにここで述べたミュータントアルブミンをコードするここで述べたヌクレオチド配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセットを提供する。本発明に従って突然変異を生じ得る血清アルブミンをコードするヌクレオチド配列もGenbankデータベースから容易に入手できる。
【0025】
更に、発明はここで述べたミュータントアルブミンと医薬上許容される担体を含む医薬品組成を提供する。
医薬上許容される担体は当該技術分野の専門家に良く知られており、0.1Mおよび好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%の食塩水が挙げられる(但し、これらに限定されない。)。さらに、このような医薬上許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液および乳濁液のいずれでもよい。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、食塩水や緩衝剤媒体を含む乳濁液あるいは懸濁液が挙げられる。非経口投与賦形剤としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液のブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸添加リンゲル液あるいは不揮発性油が挙げられる。静脈内投与賦形剤としては、液体および栄養補給剤、リンゲル液のブドウ糖などに基づくものなど、電解質補給剤が挙げられる。防腐剤や他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどを含有させてもよい。
【0026】
本発明のミュータントアルブミンは、通常の方法により医薬品組成とするために医薬上許容される担体(例えば、結合剤、調整剤、矯味剤、崩壊剤、乳剤、賦形剤)、希釈剤あるいは安定剤と混合して医薬品製剤として供給され、それは例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、シロップ剤、懸濁液、溶液、注射剤、注入剤、デポ剤、坐剤に製剤化され、例えば経口あるいは非経口投与される。
【0027】
経口投与に錠剤を用いる場合、一般に用いられる担体としては、ショ糖、乳糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウムのような典型的な潤滑剤、パラベン、ソルビンのような防腐剤、アスコルビン酸、α−トコフェロール、システインのような抗酸化剤、崩壊剤あるいは結合剤が挙げられる。カプセル剤として経口投与する時には、有効な希釈剤としては、乳糖や乾燥コーンスターチが挙げられる。経口投与の液体としては、シロップ、懸濁液、溶液および乳濁液が挙げられ、それらはこの分野で用いられる水などの典型的な不活性希釈液を含有してもよい。さらに、甘味剤あるいは香料を含有させてもよい。
【0028】
皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射あるいは点滴のような非経口投与の場合には、活性成分の溶液のpHは適切に調整され、緩衝剤で処理されあるいは滅菌される。使用できる賦形剤あるいは溶剤の例としては、蒸留水、リンゲル水および等張の塩水が挙げられる。静脈内投与には、溶質の総濃度は溶液を等張とするように調整される。
坐剤は本発明化合物を正常温度で個体であるが腸内温度で液体となり直腸で融解し活性成分を放出するココアバターおよびポリエチレングリコールのような適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより作成できる。
【0029】
投与量は年齢、体重、投与時間、投与法、薬剤の組み合わせ、治療を行っている患者の健康状態のレベルおよび他の因子によって決定される。1日の投与量は患者の健康状態および体重、活性成分の種類および投与経路に依存して変わるが、経口投与の場合、1日投与量は約0.1〜100mg/人/日、好ましくは0.5〜30mg/人/日である。非経口投与の場合には、1日投与量は皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射および直腸内投与に対し望ましくは0.1〜50mg/人/日、好ましくは0.1〜30mg/人/日である。
【0030】
本発明のミュータントアルブミンは、例えば、欠損疾患および感染症の治療、金属過負荷の治療及び/または金属濃度の調節が別の金属イオンあるいは薬物あるいは天然分子のような有機分子の生理機能に結びついている病気に対するヒトあるいは動物の医薬品として使用される。
本発明のミュータントアルブミンを用いて血中亜鉛のような金属の量を調節したり亜鉛吸収に問題のある患者の治療を促進することも可能である。さらに、特に強力な金属結合力を示すミュータントアルブミンは環境中の金属を検出するバイオセンサーに用いられる。
【0031】
アルブミンに結合した亜鉛は塩素イオンに結合し得るZn2+の形であるというさらなる観察からは、亜鉛を結合したアルブミンが塩素センサーとして用いることができ、亜鉛への接触は血中塩素濃度によって制御され得る(このことは触媒作用をも調節する)という可能性が導かれる。
本発明者らは、本発明によるミュータントアルブミンは培養中細胞の発育に影響を及ぼすことも観察した。ミュータントは基質に結合したおよび培地中に見られる細胞の分布に影響を及ぼす。幾つかのミュータント、例えば、Asn99Aspは細胞発育を全体として促進させることも観察された。それ故、本発明は、本発明に従って培養における細胞の発育特性を変えるミュータント血清アルブミンの方法あるいは使用にも関連する。発育特性の改変は接着、生存力百分率及び/または細胞発育における変化例えば力価、基質が接着した細胞および培地中に分散した細胞間の細胞分布の変化あるいは接着したあるいは培地中の死細胞あるいは生存細胞間の違いを含む。
【0032】
アルブミンは一般に細胞培養培地、特に哺乳類の細胞培養および特に血清を含まない培地に含まれる。発明の修飾アルブミンが加えられる培養液は銅、亜鉛及び/またはカドミウムを含むかあるいは含まない。適切な例はイーグル(Eagle)培地、ダルベッコ(Dulbecco)改変イーグル培地(ダルベッコ最小培地)、ハム(Ham)F10およびF12培地、イスコーブ(Iscove)改変ダルベッコ培地およびRPMI培地を含む。普通にアルブミンを含むこのような培地の場合には、発明の修飾アルブミンは天然アルブミン(ヒトあるいはウシ)と一部あるいは完全に置き換えられるかあるいはアルブミンの通常量より過剰に加えられる。通常アルブミンを含まないような培地の場合には、発明の修飾アルブミンが加えられる。
【0033】
培地が用いられる細胞には動物細胞、特に鳥類(ニワトリのような)あるいはヒトのような哺乳類の細胞、他の霊長類(サルのような)あるいはげっ歯類(ハムスター、ラットあるいはマウスのような)の細胞がある。細胞型は例えば腎臓、卵巣あるいは肝臓のいずれかの組織由来で、内皮、上皮、皮膚、神経、リンパ球、幹細胞などである。ハイブリドーマのような人工細胞もある。適切な細胞の例には腫瘍形成性あるいは非腫瘍形成性ヒト肝細胞、Bリンパ球、ハイブリドーマ、胎仔ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞およびヒト胎児腎臓細胞がある。細胞は容器壁、多孔性のマトリックスあるいはビーズのような表面で培養されるかあるいは培地中に自由に懸濁される。
【0034】
培養細胞は特定の細胞により自然に産生される物質を産生するのに用いられるかあるいは治療用蛋白のような他の産物を発現させるために遺伝子工学により作成される。例はモノクローナル抗体およびそのアナログ(1本鎖可変領域フラグメントおよびヒト化IgGκ軽鎖のような)、血液凝固因子(第VII因子、第VIII因子、第XI因子および第XIII因子のような)、抗トロンビンIII、サイトカイン(インターロイキン、例えばインターロイキン‐2のような、およびインターフェロン‐αあるいはインターフェロン‐γのようなインターフェロン)、成長因子(インスリン様成長因子のような)、トロンボモジュリン、グルタミン合成酵素、プロウロキナーゼおよびプラスミノーゲンを含む。
【0035】
発明の修飾アルブミンは付着、発育及び/または発現および分泌の増強のような細胞に対する望ましい作用をもたらすために脊椎動物および無脊椎動物由来の培養細胞および組織と同様に、原核生物および酵母に対し作成された組織培養培地に含まれる。
【0036】
選択された培養培地における発明の修飾アルブミンの適切な濃度決定は当該技術分野において通常の技術内である。一つの具体例では、修飾アルブミンは約50μMから約30mMの濃度で細胞培養システムに加えられる。さらなる具体例では、ペプチドは約250μMから約20mMの濃度で細胞培養システムに加えられる。さらに、多様に修飾されたアルブミンは相乗作用を生じさせるために(もしこれらが細胞に対し同じ作用を有するなら)あるいは多様な作用を生じさせるために(もしそれぞれの修飾アルブミンが同じ細胞に異なる作用を有するなら)培養培地の表面に加えられる。
【0037】
細胞接着を促進させる発明の修飾アルブミンは組織培養基質をコーティングするための溶液あるいは固定型細胞の発育のための他の表面を作成するために水のような担体に溶解される。例えば、発明の上記修飾アルブミンを1個以上含む溶液は表面上に分布し逆空気流フードで乾燥され、その結果乾燥フィルムの形で表面に存在する上記修飾アルブミンを生じる。
【0038】
発明の上記修飾アルブミンの表面への吸着様式は非共有結合性の相互作用、非特異的吸着および共有結合を含む。発明の一つの具体例では、アルブミンは表面に直接吸着される。さらなる具体例では、ペプチドはキイホールリンペットヘモシアニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ポリリジン、細胞表面レセプター認識配列を持つペプチド、免疫グロブリン、ポリサッカライドあるいは成長因子に限定されないが、少なくともこのうちの1つで既に被覆された表面に吸着される。別の具体例では、アルブミンと上記蛋白の1つは、表面にフリーあるいは抱合体として同時に用いられる。
【0039】
本発明の成長促進修飾アルブミンは二次元あるいは三次元表面を含む表面において様々な固定依存性細胞の接着及び/または発育を促進するのに適している。例えば、その表面は細胞を3‐D配列に付着させるバイオリアクターの表面である。現在存在するよりも効率の良いバイオリアクターは発明ペプチドで修飾した3‐D表面に細胞を付着させることによって設計することができる。
【0040】
本発明の実施に際して用いられる表面のタイプに関して、適切な表面はこれに限定されないが、セラミック、金属あるいはポリマーの表面が含まれる。最も望ましくは、本発明はポリマーの表面およびセラミック、例えばガラス表面の処置に用いられる。本発明で用いられる適切な表面は、これに限定されないが、プラスチック皿、プラスチックフラスコ、プラスチックの微量滴定プレート、プラスチックチューブ、縫糸、膜、フィルム、バイオリアクターおよび微粒子を含む。ポリマー表面は、これに限定されないが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、フッ素化エチレン、ポリ(ジメチルシロキサン)およびその他のシリコンゴムを含む。ガラス表面はグリセロールポリシラン結合ガラスを含む。
本発明に従ってミュータント血清アルブミンからなる細胞培養培地も提供される。
【0041】
本発明は実施例の方法によりおよび添付図面を参照することによりさらに説明される。
材料と方法
a)分子モデリング
unliganded(アポ)アルブミン(PDB取得コード1AO6)の2.5Åでの報告された結晶構造をモデルの出発点として終止用いた。モデルはSybyl(TRIPOS Inc.,Version6.8)で構築し、ジオメトリーを最適化するためにエネルギー最小化を行った。以前の実行ではプログラムはジスルフィド結合の存在を無視したことにより、水素原子の追加とジスルフィド結合の開裂をもたらした。亜鉛部位それ自身に対してではないが蛋白の全体構造にわずかに影響を及ぼすこの問題は、現在最終モデリングの実行において修正されている。最小化において、亜鉛に対する特定の力場パラメーターを満たした後に、TRIPOS力場を用いた。ヒスチジン(2.00Å)、アスパルテートあるいはグルタメート(2.00Å)および水(2.06Å)に結合したZn2+の結合距離はHarding, M.M. Acta Cyst. D57, 401-411 (2001), http://tanna.bch.ed.ac.uk.から採用した。これらの値は金属蛋白のデータベースを用いたpdbの分析結果とも一致する(Castagnetto, J.M., Hennessy, S.W., Roberts, V.A., Getzoff, E.D., Tainer, J.A., Pique, M.E., Nucleic Acids Res., 30, 379-382 (2002)。力定数はTRIPOS力場から採用した。亜鉛周囲の結合角は不自然でなかった。最初のステップでは、Zn2+周囲のジオメトリーはZn2+イオン、4個の蛋白リガンド残基および水分子のみを考慮した100ステップのエネルギー最小化により最適化された。最初のステップにおける不適切なジオメトリーおよび原子運動を通して導入されたファンデルワールスの接触を除くために、さらに50ステップのエネルギー最小化が残基65−69、97−101および247−251およびZn2+イオンおよび水分子に適用された。最後に、同じ理由で30以上のステップが全蛋白に適用された。図のオーバーレイはrmsd値も与える"Fit monomers"ルーチンを用いてSyblで作成された。亜鉛フリーのミュータントアルブミンのモデリングに際し、N99側鎖をin silicoで望む側鎖(AspあるいはHis)に変異させ、全分子に30ステップのエネルギー最小化を適用することにより不適切な接触の可能性は軽減された。野生型モデルに用いられたと同じアプローチが用いられ、亜鉛を含むミュータントモデルのために、異なる金属−リガンド結合性を有する幾つかの可能な出発構造を探索した。
【0042】
コンピュータプログラムとデータベース
配列の並び替えはEntrez Protein, National Centre for Biotechnolgy Information (www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)から得られた配列よりClustal W, European Bioinformatics Institute (www.ebi.ac.uk/clustalw/)を用いて行われた。ヒトアルブミン(PDB 1AO6)に対する三次元配位(PDB 1AO6)はBrookhaven Protein Databank (www.rcsb.org/pdb/)から得られた。
【0043】
部位特異的突然変異誘発
オリゴヌクレオチド‐直接突然変異誘発はアルブミンのH67A変異型をコードするcDNAを作成するために用いられた。突然変異誘発性のオリゴヌクレオチド5'-gctgaaattgtgacaaatcacttgctaccctttttggagacaaattatgc-3'(配列番号11)と5'-gcataatttgtctccaaaaagggtagcaagtgatttgtcacaattttcagc-3'(配列番号12)はDelta Biotechnology Ltd., Nottinghamにより供給された。突然変異誘発はthe QuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて行われた。望む突然変異体を含むクローンはジデオキシ鎖終止配列により変異部位をヌクレオチド配列分析により同定した。変異cDNAはPUC9酵母発現ベクターに挿入され、エレクトロポレーションによりサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) DXY1細胞に形質転換された。
【0044】
発現と精製
30℃で4日間生育後S.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1細胞培養を3,000rpmで30分間遠心分離機にかけた。その後上清を除き、ろ過した。組み換え蛋白は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、上清から濃縮した。SP‐セファロースファーストフロー陽イオン交換カラム(カラム容積=225mL)は4倍のカラム容積量の30mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5で平衡に到達させた。ろ過上清は約3Lの2バッチに分けた。オクタン酸ナトリウム(2M溶液の7.5mL)をそれぞれのバッチに加え、pHを酢酸で4.5に調整し、カラムに充填する前に脱イオン水で伝導度を5.5mS cm-1に調整した。充填後、カラムを8倍のカラム容積量の50mM酢酸塩、80mMNaOH,pH4.0および4倍のカラム容積量の2MNaCl,pH4.0を含む27mM酢酸ナトリウム緩衝液で洗浄した。3度目の洗浄は10倍のカラム容積量の平衡緩衝液で行った。最後にカラムを2倍のカラム容積量の5mMのオクタン酸、pH5.5を含む85mMの酢酸ナトリウムで溶出した。
【0045】
SP‐セファロースファーストフロー溶出液はDEAEファーストフローカラム(カラム容積=167mL)で陰イオン交換クロマトグラフィーによりさらに精製した。カラムは15倍のカラム容積量の30mM酢酸塩、27mMNaOH,pH5.5で平衡に到達させた。SP‐セファロース溶出液の伝導度をカラムに充填する前に脱イオン水で3,0mS cm-1に調整した。充填後カラムを5倍のカラム容積量の15.7mM K2B4O7.4H2O,pH9.2で洗浄した。カラムを0.75倍のカラム容積量の85mM酢酸塩、110mM K2B4O7.4H2O,pH9.4で溶出した。
【0046】
DEAE溶出液をDelta Blue Agarose(Prometic Biosciences)カラム(カラム容積=423mL)でアフィニティクロマトグラフィーによりさらに精製した。カラムはDEAE溶出液を充填する前に2倍のカラム容積量の250mMの酢酸アンモニウム緩衝液、pH8.9で平衡に到達させた。充填後、5倍のカラム容積量の平衡緩衝液で洗浄した。カラムを2倍のカラム容積量の2MNaCl,pH6.9を含む50mMリン酸塩緩衝液で溶出した。
【0047】
Delta Blue溶出液は蠕動ポンプに連結した10kD MWCO Pall Filtron LU Centramate filterを用いて濃縮した。4.25gのH67Aアルブミンが回収された。精製産物からの濃縮溶液のサンプルを5mg mL-1に希釈し、10μLをSDS‐PAGEゲルに使用した。ゲルはLaemmli(1970)Nature 227, 680-685の標準法を用いて作成し使用した。ゲルをクマシーブルー染色および銀染色の両方で染色し、1%の濃度で存在する他の蛋白のないことを明らかにした(それ故蛋白の純度は約99%)。
【0048】
円偏光二色性分光分析
天然組み換えヒトアルブミン(rHA)(Delta Biotechnology Ltd., Nottingham)とH67Aミュータントアルブミンを200mMリン酸カリウム、pH7.4中約1.5mg mL-1に希釈した。両蛋白のスペクトルを測定した。機器はJASCO J‐600分光偏光計を用いた。二次構造の推定はSELCON法を用いて計算した。
1D111Cd-{1H}NMRスペクトル(106.04MHz,Bruker DMX500)は295Kで10mm BBO(直接観察)プローブヘッドおよび外部標準として0.1M Cd(ClO4)2(0ppm)を用いてごく普通に得られた。プロトンデカッップリングはGARPを用いる複合パルスデカップリングにより行った。蛋白のサンプルは一般に2モル当量の111CdCl2と共に50mMTris、pH7.1、100mMNaCl,10%重水中であった。111CdCl2
は適切な量の1MHClに111CdO(95.11%の同位元素純度、Oak Ridge National Laboratory, Tennessee, USA)を溶解することにより産生させた。
【0049】
111Cd-NMR研究は同じ濃度で1,5mMrHAあるいはHis67Alaミュータント蛋白を用いて行った。金属滴定実験のために様々な当量のZnCl2あるいはCuCl2を加え、pHはそれぞれを加えた後にチェックし、調整した(もし必要なら)。スペクトルは17.5μs(90°)の111Cdパルス幅、36k減衰シグナル,0.10sの補足時間および0.30sのリサイクルディレイを用いて30kHz(280ppm)の掃引幅に渡って4k複合データポイントにおいて得られた。フーリエ変換に先立ち、データは16kデータポイントにzero‐filledし、指数乗法によりアポディゼーションした(120Hzラインブロードニング)
【0050】
Asn99AspおよびAsn99HisミュータントrHAに関する111Cd-NMR研究はミュータントアルブミンの1mM溶液を用いて行った。ほとんどのスペクトルは17.5μs(90°)の111Cdパルス幅、36k減衰シグナル,0.13sの補足時間および0.24sのリサイクルディレイを用いて32kHz(300ppm)の掃引幅に渡って8k複合データポイントにおいて得られた。フーリエ変換に先立ち、データは32kデータポイントにzero‐filledし、指数乗法によりアポディゼーションした(150Hzライン‐ブロードニング)。
【0051】
d)1H-NMRスペクトル
NH共鳴を除くために、凍結乾燥サンプルを重水(99.9%の同位元素純度、Aldrich)に約50mg/mLに溶解し、296Kで48時間保ち、再度凍結乾燥しそれから50mMNaCl、50mMTrisを含む重水中1mM溶液となるように溶解した。1mMの濃度の蟻酸ナトリウムを内部キャリブレーション標準(sodium 3-(trimethylsilyl)propionate; TSPに比して8.48ppm)として加えた。pH*(pH計の読み)は6.9−7.0のpH(Glasoe, P.K. and Long, F.A. J. Phys. Chem., 64, 188 (1960))に相当する7.3−7.4に調整した。1D and 2D 1H-NMR実験はZ‐グラジエント三重共鳴(1H,13C,15N)プローブヘッドを用い599.82MHzで操作するBruker Avance 600 spectrometerを用い310Kでごく普通に行われた。残留水を抑えるために簡単なプレサチュレーションパルスシークエンスを用いた1Dスペクトル(90°励起パルス、9kHz掃引幅、8kタイムドメインデータポイント)に対して、512の減衰シグナルが一般に得られた。
【0052】
データは32kにzero‐filledし、分解能向上およびフーリエ変換のためsquared sine bellとGaussian functionの至適組み合わせによりアポディゼーションした。2DTOCSY実験に際し(90°励起パルス、8.4kHz掃引幅,ミキシング時間65ms、1.3s緩和ディレイ)、2x 512 t1インクレメントのそれぞれに対する48あるいは56の減衰シグナル(time‐proportional phase incrementation(TPPI)を用いた多次元取得)が残留水を抑えるために、感受性の向上した二重パルスフィールドグラジエントスピンエコーシークエンスを用いて4k複合データポイントにおいて得られた。データはsquared sinebell functionsを用いてアポディゼーションされ、実際のフーリエ変換は2k×2kデータポイントで行われた。
【0053】
野生型に対する幾つかのスペクトルも0.1Mのリン酸カリウム(KHP)緩衝液中で測定した。ヒスチジンHε1プロトンのケミカルシフトも緩衝液の同一性に依存する。一般に、シグナルはTris緩衝液中同じpH*(重水中で測定されたpD)で測定されたスペクトルに比べてKHP緩衝液では高磁場にシフトする。スペクトルの質は同様で、1mMの蛋白濃度は行われたほとんどの実験で最適であった。この濃度以上では、溶液はあまりにも粘性が高く、そのことはシグナルの線幅に対すると同様に明らかにシミングにとって不利であり、溶液の取り扱い(例えばpH調整、反応物との混合)を難しくする。
【0054】
e)UV‐Visスペクトロスコピー:銅滴定
アルブミンのサンプルは200mMリン酸カリウム、pH7.4中1mMあるいは2mMであった。700mMのCuCl2貯蔵溶液から、0.2μl(0.2モル当量に相当)を逐次追加した。サンプルを完全に混合し、5分後に400nmから800nmの間でShimadzu UV250IPC分光光度計を用いてUV‐Visスペクトルを測定した。最初、溶液はピンク色に変わり、一方後の追加は混濁をもたらし、スペクトルにおいて観察された吸収の全体的な増加が説明された。混濁の出現(Cu3(PO4)2の形成)は様々のアルブミンミュータントで明らかに異なる。
【0055】
f)細胞毒性を評価する細胞培養実験
発明者らの研究の間、亜鉛とアルブミンの細胞毒性を調べる2つのアプローチを開発した。最初の実験で用いたアプローチはトリパンブルーを用いる細胞生存力の測定により、2番目のアプローチは死亡細胞をプロピジウムアイオダイドで染色した後に、FACS(Fluorescence-activated cell sorting、フローサイトメトリーの応用)を用いた。2番目のアプローチは幾つかの利点がある;時間と材料の消費の両方に関してより効率がよい。
【0056】
i)標準的な培養条件
WRL‐68細胞を10%FCS(新生仔ウシ血清)、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび×1の濃縮NEAA(非必須アミノ酸)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)で培養した。細胞はインキュベーターにおいて80cm2の組織培養グレードフラスコで37℃、5%CO2で生育した。細胞に2〜3日毎に新鮮な培地を補給するかあるいはモニタリングにより必要な時には黄色により補給を示唆する重炭酸塩のカラー指示薬が培地に必要であった。フラスコ中生育した細胞はいったんコンフルーエントとなると、トリプシン+EDTAおよびPBSを用いて採取された。細胞懸濁液はペレットまでMSE Mistral1000遠心機で10分間1000rpmで遠心分離した。上清を除き細胞のペレットを培地中に再懸濁し、必要な時に用いた。
【0057】
ii)トリパンブルーを用いる細胞生存率の計測
トリパンブルーは母集団における生存細胞の割合を評価するために用いられる。染料の反応性は発色団が陰性に電荷を帯びており膜が傷害されていなければ細胞と反応しないという事実に基づいている。生存細胞は色素を取り込まないが死亡細胞は取り込む。一般に細胞は15.2x105cells/ml(Kerry Bunyanでこの値をチェックする必要がある)の0.5mlを用いて小さな細胞培養フラスコに接種した。これらを終夜放置して平衡に到達させた。培地を除きPBSで細胞を洗浄した。それから細胞を組み替えヒトアルブミン(rHA)単独(40mg/ml)、H67Aヒトアルブミン(H67A)(40mg/ml)、rHAおよびh67Aと0.1、0.5および1.0モル当量の亜鉛とで処理し、同じ濃度で亜鉛単独で処理した。いずれの処理も補充DMEMで行った。対照には培地のみを加えた。処理後フラスコを2晩放置した。アルブミンと亜鉛でインキュベーション後培地を除き分析のために保存した。細胞層はPBSで2回洗浄し、この洗浄液を集めた培地に加えた。細胞層はトリプシン+EDTAを用いてフラスコから除いた。再びフラスコをPBSで洗浄し、この洗浄液を細胞の懸濁液に加えた。培地と細胞懸濁液のすべてのサンプルを遠心分離した。一度遠心した上清を吸引して除きペレットをPBSに再度懸濁させた。集めた培地と細胞層の生存細胞の濃度と総細胞数を評価するために、200μlの良く混合したサンプル、300μlのPBSおよび500μlの0.4%トリパンブルー(シグマ)を混合し、2〜3分間室温に放置した。懸濁液を血球計に移し、オリンパス倒立位相差光学顕微鏡を用いて観察し、4×4の正方形格子内の死亡細胞(青)と生存細胞(無色)の数を数えた。全部で10個の正方形格子の数をカウントした。これらの細胞数は以下の式に従って総細胞数および生存細胞数を評価するのに用いた:
細胞/ml=平均細胞数×5(希釈係数)×1×104(血球計のチェンバー係数)
生存細胞/ml=生存細胞数×5(希釈係数)×1×104(血球計のチェンバー係数)
細胞生存力(%)=(総生存/総生存および非生存)×100
これらの数字は培地と細胞層に認められる総細胞数およびこれら細胞の生存力を示すために図の形で示した。
【0058】
iii)フローサイトメトリーと蛍光活性化細胞選別器(FACS)による分析
細胞を0.5ml/穴の12穴プレート上0.0995x106cells/mlで培養した。平衡にするためプレートを終夜放置した。それから培地を吸引で除き細胞層をPBSで洗浄した。その後野生型アルブミンあるいはHis67Ala、Asn99AspあるいはAsn99Hisミュータントアルブミンの有無下、0、60,300あるいは600μMのZnCl2を補充した培地で細胞を処理した。培地のみで処理した細胞を対照とした。48時間インキュベーション後フローサイトメトリーを用いてプレートを分析した。このために培地を除き細胞層をPBSで2回洗浄した。前に除いていた培地にこの洗浄液を加えた。それから細胞層をトリプシン+EDTAを用いて除き、PBSで2回洗浄し、これらの洗浄液を細胞懸濁液に加えた。細胞選別に先立ちすべてのサンプルに10%FCSを加えた。細胞死を検出するためにカウント前にすぐにサンプルにプロピジウムアイオダイド(1μg/ml)を加えた。それからBeckman Coulter EPICSセルカウンターを用いてサンプルを測定した。群間比較のために細胞数を測定するべく60秒後イベントの総数を記録した。
【実施例】
【0059】
分子モデリングによる亜鉛結合部位の同定
NMRの研究はアルブミンへの結合に関し113Cdケミカルシフトは2ヶ所での蛋白への金属配位を示唆することを明らかにした(Sadler and Viles(1996)Inorg. Chem. 35, 4490-4496)。Zn2+がCd2+を置換する部位におけるケミカルシフトは2−3個のイミダゾール窒素原子を含む蛋白に対する金属の配位の範囲内である(Oez et al. (1998) Biochem. Cell Biol. 76, 223-234)。
【0060】
ヒトアルブミンの結晶構造配位はBrookhaven Protein Databank (PDB 1AO6)から得、WebLab Viewer Pro v4.0(Accelrys)を用いて調べた。ヒスチジン残基に焦点を当て(これらは金属配位にとって蛋白における主な窒素供与残基であるので)、それぞれの間の距離を測定した。本発明者らは分子上1ヶ所のみがお互いから5Å以内の2本のヒスチジン側鎖を与えることを見出した。このことからHis67とHis247が亜鉛結合部位に含まれると発明者らには信じられた。この部位周辺の他の残基の同定から、Asn99とAsp99も金属結合に対する酸素リガンドを与えるのに十分接近していることが明らかとなった。Asnはその側鎖のアミド基から窒素リガンドを与え得る可能性もある。
【0061】
蛋白における金属に配位するアミノ酸側鎖のデータベース(Harding (2001) Acta Cyst. D57, 401-411;http://tanna.bch.ed.ac.uk)は他の3種の蛋白(ヒトカルシニューリン、大腸菌の5'-エンドヌクレオチダーゼおよびインゲンマメパープルホスファターゼ)が2個のHis,1個のAspおよび1個のAsn残基に結合する亜鉛を含むことを明らかにし、さらにこれが亜鉛結合にとって適切な部位であることを示唆した。本発明者らにより決定されたように金属結合の予測領域を示す図1と2を参照せよ。
【0062】
提案された結合部位への亜鉛のモデリング
亜鉛を含むアルブミンの最初のモデルは報告された結晶構造(pdb取得コード1AO6)に基づいてWeblabviewer(Accelrys)を用いて構築した。本発明者らの1D111CdNMR研究において生理条件下塩素の結合をおおいにありそうなこととするCl-濃度に共鳴シフトが依存することを認めていたので、5番目のリガンドとしてCl-を含む5配位として亜鉛部位のモデルを構築した。5番目のリガンドとして水にもう一つの可能性がある。
【0063】
亜鉛に対し幾つかの特定のパラメーターを定義した後に、TRIPOS力場を用いてジオメトリーを最適化するためエネルギー最小化のモデルをSybyl v6.8(TRIPOS Inc.)に取り込んだ。ヒスチジン(2.00Å)およびアスパルテート(2.00Å)(および水、2.06Å)に結合したZn2+に対する結合距離はHarding (2001)Acta Cyst. D57, 401-411から採用し、Asn-Zn2+相互作用に対する結合距離(2.15Å)はBrookhaven Protein Databank (pdb取得コード4KPB、IAUIおよび1TCO)から得たカルシニューリン、5'-エンドヌクレオチダーゼ、およびインゲンマメパープル酸ホスファターゼの結晶構造に基づいて推定した。Zn‐Cl結合距離に対する値はCambridge structural database (Allen and Kennard (1993) Chem. Design Autom. News 8, 31-37)から引用した。力定数はTRIPOS力場から採用した。配位数5のZn2+にとって、一定の均一な角度は期待できないので、亜鉛周辺の結合角は少しも制約されなかった。
最初のステップにおいて、亜鉛周辺のジオメトリーは亜鉛原子、4個の蛋白リガンド残基および塩素イオンのみのエネルギー最小化の200ステップによって最適化された。不適切なジオメトリーと最初のステップにおける原子運動を介して導入されたファンデルワールス接触を除くために全蛋白にエネルギー最小化の10ステップをさらに用いた。元の蛋白構造と修飾モデル間の二乗平均偏差(rmsd)値(構造差の表示である)はいずれの原子も0.13Å、リガンド残基原子のみに対して1.21Åである。
【0064】
図3は水素の無い元の構造(黒色)と亜鉛結合部位を合わせるのに比較的わずかな移動のみが必要であったことを立証している本発明者らのモデル(灰色)との間のオーバーレイを示す。その部位はアキシャル位において2個のヒスチジンとねじれた三方晶系のビピラミダルジオメトリーを示す。塩素リガンドは蛋白の外側の方向を指す。異なる出発構造を用いた追加のモデリングの試みは同様のジオメトリー部位をもたらしたが、亜鉛の反対側に塩素イオンを有する部位をもたらした。
【0065】
蛋白リガンドのみを含む四面体部位のモデルを構築する試みは、角度のねじれの適用にもかかわらず、5配位モデルに見られたねじれた三方晶系のビピラミッドに類似した、Cl-が存在していた空のエカトリアル結合部位を持つジオメトリーをもたらした。
モデリング理論を支持する実験証拠
【0066】
本発明者らはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) DXY1細胞でミュータントH67Aを発現し、イオン交換およびアフィニティクロマトグラフィーにより>95%に精製した。円偏光二色性はH67Aミュータントと野生型蛋白との間で二次構造に大きな変更のないことを明らかにした(図4)。50mMTris、pH7.1中で2モル当量の111CdCl2を用いた1.5mM組み替えヒトアルブミン(rHA)に関する111Cd-NMR研究によりそれぞれ27ppmおよび131ppm(Cd(ClO4)に比して)にピークを有する2ヶ所(AおよびB)での結合を確認した。同様の条件下でH67Aミュータントは29ppmに1本のピークを生じた(図5)。2モル当量の111Cd2+の存在下rHAへの0.5および1モル当量のZnCl2の添加は131ppmのピーク強度を低下させた(図6a)。2モル当量の111CdCl2の存在下rHAへの2および3モル当量のCuCl2の添加は部位BでのCd2+結合に影響し、37ppmに新しい111Cdピークの生成をもたらした(図6b)。CuCl21モル当量の添加はCd2+結合に影響しなかった。これはこの部位での結合飽和後にのみ生じるCd2+の置換によるN末端に対するCu2+の高い親和力によるのが最も本当らしい。これらの結果は部位BはCd2+に対するよりもZn2+に対しより高い親和力を有し、Cu2+もこの部位に競合的に結合することを示し、金属配位に対するHis67の関与をも示唆している。
【0067】
図4は天然型およびH67Aに対する円偏光二色性バンドのサインと大きさが同様なことを示している。このことは天然アルブミンと同様の二次構造を有するH67ArHAを示している。
【0068】
ペプチドと蛋白においてCu2+に配位する窒素リガンド数はこれら複合体のd‐d吸収バンドの波長に影響することが知られている。CuCl2の一部を200mMリン酸カリウム、pH7.4中rHAおよびH67Aミュータントの2mM溶液に加えた。CuCl2の最初の添加後525nmに吸収バンドが出現し、Cu2+への4N配位の特徴であるCu2+による蛋白のN末端荷重を示す。しかしながら吸収の著しい違いはそれぞれの蛋白に1モル当量のCuCl2を更に加えた後に観察された。天然蛋白は625nmに2番目の吸収バンドを生じ、ミュータントはより広いバンドを750nmに生じた(図7)。これらのバンドはそれぞれ2Nおよび1NへのCu2+の配位を示唆する(Pettit et al., J. Chem. Soc. Dalton. Trans., 3565-3570(1990))。このことはCu2+イオンがなおこの部位に結合するか(His67の関与なしに)あるいは蛋白の他の部位に結合するかどうかに関し情報を提供しないにもかかわらず、His67残基がZn2+同様Cu2+結合にとって重要なことを示している。
ミュータントアルブミンにおける金属部位のさらなる分子モデリング
【0069】
本発明者らはエネルギー最小化プロトコールを最適化し、異なる出発構造を探究することによりモデリングの方法論を改善することができた:それ故発明者らは様々なモデル間で意味のある比較を行うために野生型アルブミンについて提案された亜鉛(II)部位の再モデリングを行った。以下に結果を要約する。
【0070】
a)野生型アルブミン
新しいモデルの全体のジオメトリーは5番目のリガンドとして現在水を用いていることを別にすれば、以前のモデル(図3a)とは大きく異なっていない(全原子のrmsd:0.05Å;亜鉛部位のrmsd:0.25Å)。元の構造(pdb登録1AO6;[図3])とモデル間のrmsdは亜鉛部位の原子のみに対し0.67Åで、このことは本質的にアルブミンにおける亜鉛部位は前もって配置されていることを示唆している。
【0071】
b)モデリング研究はAsn99HisミュータントおよびAsn99Aspミュータントについても行われた
ミュータントモデルは図3c、3dおよび3eに示されている。金属フリー形での提案部位を示す図19は立体配座動態およびアロステリック相互作用において役割を果たす可能性のあるドメイン間水素結合に対する突然変異の影響を立証している。
【0072】
要約すると、モデリング研究は野生型アルブミンに関して様々な親和力で金属例えば亜鉛を結合できる及び/または他の生理学的特性を発揮できるミュータント血清アルブミンを産生できるアイデアを支持する。
【0073】
突然変異金属部位の検出
Zn(II)イオンが大抵の分光技術にとって目に見えないので、蛋白における亜鉛結合の評価は難しい。この本来の問題を回避するための最も一般的なアプローチは比較的Zn(II)に類似するCo(II)(UV/Visスペクトルスコピー)あるいはCd(II)(NMRスペクトルスコピー)のような他の金属を用いることである。別のアプローチは着色したZn(II)指示薬を使用する。発明者らは111CdNMRスペクトロスコピーおよびCu(II)を用いた滴定により得られた新しいミュータントアルブミンに関する結果を以下に述べる。
【0074】
a)ミュータントアルブミンの111CdNMR
111Cd(あるいは113Cd;両方の核が用いられる)NMR実験は、もし金属荷重蛋白が同位元素に富んだCd(II)で作ることができるなら、蛋白における金属結合を検出する比較的直接的な方法である。本研究の結果は両ミュータントの金属結合性質の興味ある改変を明らかにしている。
【0075】
i)Asn99Hisミュータント
図9と10は同じ条件下で野生型およびAsn99Aspミュータントアルブミンの1D111Cdスペクトルを比較している。
野生型rHAの場合のように、Asn99Hisミュータントの1D111Cdスペクトルにおいて2当量の111Cd2+が容易に結合することを示唆する2本のピークが観察されることを図は明らかに示している。野生型およびミュータントrHAのスペクトルにおいてピークの線幅は同等であることに注目される。ピークのケミカルシフトは80mM塩素の存在下122ppm(ピークA)と28ppm(ピークB)である。野生型rHA(131ppmと27ppm)と比較すると、金属結合部位Bは突然変異により影響されないが、一方ミュータント部位AにおけるCd(II)イオンは野生型におけるよりもやや遮蔽されていることを意味する。
【0076】
酸素の窒素ドナーによる置換が脱遮蔽をもたらすことが予測されるが、ミュータントにおけるN‐Cd結合が野生型におけるO‐Cd結合よりも短いと仮定するなら、観察された低いppm値へのピークAの移動は定性的に理解される。Asnは非常に弱いリガンドなのでこのことは合理的な仮定であり、発明者らは以前にZn‐N(His)結合に対する1.95−2.00Åに比べてO‐Zn結合は約2.15Åと推定していた。同様の傾向がCdに対しても期待される。
【0077】
発明者らはCd2rHAサンプルにZn2+を加えることによりCd2+とZn2+間の競合をも検出した。Zn2+の添加は明らかにピークAに影響するが、3当量の添加後でさえも、111CdピークAはなおスペクトルにみられる。対照的に、野生型rHAのスペクトルにおいて1モル当量のZn2+はピークAを完全に消去するのに十分であり、Cd2+は完全に置換されたことを示唆する。この知見はハード酸、ソフト酸および塩基の原理を考慮することによりある程度解釈することができる。Cd2+はZn2+よりもよりソフトな金属イオンであり、窒素は酸素よりもよりソフトなリガンドである。結合部位をよりソフトにすることは野生型rHAにおけるよりもCd2+結合を好都合にするであろう。本質的に、実験はAsn99が野生型rHAの亜鉛部位に寄与し、変異部位は実際にCd2+とZn2+に結合し得ることを示している。
【0078】
ii)Asn99Aspミュータント
図10に野生型rHAと比較したAsn99AspミュータントrHAに関する111Cd2+結合研究の結果を要約する。
Cd2+部位Bの再度の占有は突然変異により影響されないことは明らかである(野生型のスペクトルにおける27ppmに比べた28ppm)。部位Bは未だ同定されていないが、蛋白のこの特定部分の折りたたみに突然変異は影響しないと結論される。
驚くことに、111Cdスペクトル(図10の説明を参照)に対する発明者らの通常の条件においてピークAは検出されなかった。ケミカルシフトスケールの拡張は何らそれ以上のピークを示さなかった。十分な111Cdが利用できることを保証するために、2モル当量の111Cdを加えた。このサンプルのスペクトルにおいて、さらに2本のピークが示唆されるが、上昇温度(310K)においてのみ2本の新しい非常に幅の広い共鳴(ピークBに対する約150−200Hzに比べ、ほぼ2000Hzの線幅を持つ)が確かに検出された。このことは化学的な交換現象がスペクトルに影響することを示唆している。過剰のCd(II)にもかかわらず、おそらくTrisがCd2+に結合しそれを溶解させる事実によりNMRチューブ中に沈殿は見られなかった。Cd/Tris複合体に対するケミカルシフトは106ppm(295Kで)で、これは図10のピークCに対して観察された値でもある。310KのスペクトルにおけるピークA'は十分に1個の窒素を持つ111Cd部位の範囲および3個と5個の酸素ドナー間の67ppmのシフトを有する(Coleman, J.A., Methods Enzymol. 227, 16-43 (1993); Oez, G.L., Pountney, D.L. & Armitage, I.M. Biochem. Cell Biol.-Biochim. Biol. Cell. 76, 223-234 (1998)。発明者らは利用可能な111Cdは変異結合部位A'とTris(あるいは二者択一的に蛋白上の非特異的部位)間の中間の(295K)あるいは遅い交換(310K)にあると仮定を立てている。
【0079】
b)UV‐Visスペクトロスコピーによりモニターした銅(II)の結合
野生型rHAへのCu2+の添加はin vitroのCu2+がこの亜鉛部位に結合できることをも示す111CdピークAの消失をもたらすことを以前に示した(図6bも参照)。
発明者らはUV‐Visスペクトロスコピーにより野生型およびミュータントアルブミンのアポ型でCu2+の滴定を行った、なぜなら定量的評価は直接的でないにもかかわらず、このような実験は金属結合について迅速な定性的情報を与えるからである。図11に示す実験はAsn99ミュータントへのCu2+結合は野生型への結合とは異なることを示している。それらはHis67AlaミュータントrHAとの比較から判るように第二の部位でCu2+と結合することは明らかである。両ミュータントの吸収プロフィールはお互いに異なり、変異リガンドの関与を意味する。
このように、突然変異は主たるZn2+部位であると知られている第二のCu2+部位に実際に影響を及ぼす。
【0080】
5.ミュータントアルブミンの1H-NMR
発明者らは1D and 2D 1H-NMRスペクトルを得、図14は検討したミュータントすべての1D 1Hスペクトルの芳香族化合物の領域を比較した。図15は亜鉛の有無による野生型の2D TOCSYスペクトルの関連部分を含む。検討したすべてのミュータントに対し同様のスペクトルが得られた(データは示していない)。いずれのスペクトルも全体として比較的野生型のスペクトルに類似している。このことはいかなる突然変異も少なくともアポ型における蛋白の折りたたみに対して劇的な影響を及ぼしていないを示している。しかしながら解釈し得る微妙な変化がある。
【0081】
特に、野生型NMRスペクトルのピーク1と3は考慮した突然変異(His67Ala,Asn99AspおよびAsn99His)のどれによっても影響を受ける。それ故これらは残基His67とHis247に帰属することができるとの仮説が立てられる。
結論:野生型およびHis67Ala,Asn99Asp,およびAsn99HisミュータントrHAの1D and 2D 1H-NMRスペクトルの分析は残基His67、Asn99、His247およびAsp249により形成される提案結合部位と矛盾しない。His67Alaの突然変異は野生型のスペクトルにおける2本の交差ピークに影響を及ぼし、変異残基は別のHis(His247)の近くにあるとの考えと矛盾しない。Asn99の突然変異も同じ2本の野生型交差ピークに影響を及ぼし、上に述べた3残基が実際に互いに密接に接していることを示唆する。交差ピーク1とAはHis247に交差ピーク3とBはHis67に帰属される。
【0082】
6.1H-NMR:結合イベントに対する実態分析プローブとしてのヒスチジンHε1共鳴
His67とHis247に相当する2本のピークを帰属した後に、亜鉛結合に関しこれら残基に影響があるかどうかを調べることが重要である。
a)亜鉛結合
野生型アルブミンへの1モル当量のZn2+の添加は1Dおよび2Dスペクトルから判断されるようにHis残基の動態に劇的な結果をもたらす。
幾つかのピークは大きく影響され、一方ピーク4,6,7,8および11は未変化のままである。ピーク1と3はもはや観察されないが、ピーク5も消失し、ピーク2および9/10は強度が低下する。
【0083】
ピークがシフトするよりもむしろ消失する事実はZn2+結合の2つの影響による可能性がある。残基が亜鉛結合の際より硬くなる、それは線幅の広がりをもたらすであろう、あるいは亜鉛(およびこのようにそのリガンド)がフリーと結合状態の間で交換する、そしてこの化学的な交換現象も線幅の広がりをもたらす。いずれの場合においても、亜鉛結合は1H-NMRによりモニターでき、残基His67とHis247への影響、直接あるいは間接に他の未だ同定されていないヒスチジン残基に対する影響をも確認することができる。
Asn99AspおよびAsn99Hisに対する亜鉛結合
1モル当量のZn(II)を含む1mMNMRの両サンプルは約30分間(1Dスペクトルを取るのに要する時間)310Kに保った後沈殿を生じた。サンプルを磁石に導入する前に沈殿物は観察されなかった、そしてサンプルを終夜279Kに保った後、沈殿物は再び溶解した。観察された影響はAsn99Hisミュータントに対するよりもAsn99Aspミュータントで大きかった。現在発明者らはおそらくドメイン間の相互作用に関連した立体配座動態に亜鉛が深く影響すると推測できるだけである。この考えは野生型で得られた観察とも矛盾しない。Asn99Aspミュータントサンプルも数時間310Kに保ったが、111Cdサンプルによる沈殿は観察されなかった。
【0084】
b)野生型rHAに対する脂肪酸結合の影響
アルブミンは血漿中他の不溶の長鎖脂肪酸の輸送に重要な役割を演じている。正常な条件下で、1−2の脂肪酸分子はアルブミンに結合するが、運動中,この数は4に上昇する(Peters, T., Jr. All About Albumin: Biochemistry, Genetics, and Medical Applications. Academic Press, New Your (1995))。アルブミンのX線構造は5(Curry, S., M,andelkow, H., Brick, P. & Franks, N. Nat. Struct. Biol. 5, 827-835(1998)と10(Bhattacharya, A.A., Groene, T. & Curry, S. J. Mol. Biol. 303, 721-732(2000)の間の脂肪酸結合部位を示すが、in vivoで観察された最大数は6である。アルブミンへの脂肪酸の結合は13C (Hamilton, J.A., Era, S., Bhamidipati, S.P. & Reed, R.G. Proc. Natl. Acd. Sci. U.S.A. 88, 2051-4 (1991)および1H-NMR(Oida, T. J. Biochem. (Japan) 100, 1533-42 (1986)を含む種々の技術を用いて過去に広く研究された。
多数のHis Hε1ピークは大体は脂肪酸結合により影響されることが直接図17で見られる。このことは相互に作用する亜鉛と脂肪酸結合の影響をモニタリングする手がかりを与える。
【0085】
7.相互に作用する金属/脂肪酸結合のプローブとしての111Cd-NMR
オクタノエート飽和rHAサンプルを用いた最初の111Cd-NMRスペクトロスコピー実験はそのようなサンプルのスペクトルにピークAがないことを明らかにした。
2モル当量の111Cd2+を含む徹底的に透析したサンプル(発明者らはそのような透析サンプルあるいはChen‐脱脂標品の1D 111Cd-NMRスペクトル間で認識し得る差のないことを確認もしていた)で始め、オクタン酸カリウムの当量を加えた。図Xは滴定研究の結果を示す。
【0086】
最も著しい知見はピークAは始めに減少するが、数時間後に再び出現することである。脂肪酸と金属イオンの再分配に導く遅い平衡によると思われる。ピーク強度の低下がサンプルの混合後直接観察できるように(少なくとも2あるいは3当量の追加に対し;その後の追加において動態は明らかにスローダウンする)、部位F2への脂肪酸の最初の結合は比較的早いことは明らかである。ピークAが再出現するので、その後脂肪酸分子は熱力学的により好ましい結合部位へ移動すると推測できる。部位F2から脂肪酸の解離は金属結合部位の再形成をもたらすと期待され、利用可能なCd2+は再び結合できる。この方法は4当量まで繰り返すことができるので、部位F2よりも高い熱力学的安定性を有するすべての脂肪酸結合部位は明らかに飽和される。5当量のオクタノエートを含むサンプルの最終スペクトルにおいて、ピークAはもはや存在しない。
本研究の重要な結果は脂肪酸の結合が金属結合を妨げるのみならず、金属と脂肪酸の結合は相互に作用する過程であり、脂肪酸陰イオンの結合は結局結合した金属イオンの解離を導くと思われる結論である。
【0087】
8.細胞の発現
アルブミンは虚血および低酸素による肝傷害に対して肝組織を保護することが知られており、その効果はアルブミンの金属結合能に起因する(Strubelt, O., Younes, M., Li, Y. Pharmacology and Toxicology 75, 280-284(1994)。発明者らは肝細胞の培養に際し亜鉛、組み換えヒト血清アルブミンおよびミュータントアルブミンの効果を探究するためにin vitro実験を開発した。
【0088】
ヒト肝細胞株WRL‐68を用いた。その細胞はDulbecco's最小培地で生育した。His67AlaミュータントアルブミンのrHAの効果を研究するために、600μMのrHAあるいはHis67Alaミュータントを培地に加えた。Zn(II)の効果は培地に60,300、ならびに600μMのZnCl2を加えることにより調べた。
これらの最初の実験は細胞数を数えることおよびトリパンブルーを用いて細胞の生存力を評価することにより行った。それらは細胞の生存力と接着に対する亜鉛濃度上昇の明瞭なネガティブな効果を示唆した、それは野生型アルブミンの添加によって救われたが、His67Alaミュータントは細胞毒であり細胞接着を阻害することも示唆した。
【0089】
その後、アルブミン添加に先立ち細胞層を生成するために、野生型あるはミュータントアルブミン(600μM)の有無下様々な用量(60, 300, and 600μM)のZnを追加したダルベッコ最小イーグル培養液で48時間インキュベートする前にヒトWRL‐68肝細胞を18時間培養した。他に、生育条件(37C,5%CO2)は以前の実験と同じであった。発明者らは2つの新しいミュータント、Asn99AspとAsn99Hisにも研究を拡張した。
【0090】
図18のグラフはヒト肝細胞の亜鉛と様々なミュータントアルブミンを組み合わせて用いた効果を要約している。肝細胞は12穴プレートの層で生育し、細胞数と生存力は層と培養液の両方において測定した。いずれの実験も3回行い、誤差のバーは個々の実験間の標準偏差に相当する。
【0091】
図18a〜18dに示した結果から以下の結論を引き出すことができる。
a)Zn2+濃度の上昇は細胞死と接着の喪失をもたらすことが確認された。
b)野生型rHAは細胞により非常に良く許容される;対照における細胞数と野生型rHAを含む細胞数との間に生育あるいは接着の有意な差はない。
c)Zn2+の有害な効果は600μMの野生型rHAによって逆転される。
d)Zn2+の追加なしにHis67Alaミュータントは細胞接着に対し劇的な効果があり、細胞の生存力は層あるいは培養液のいずれにおいても傷害されているようには見えないが、大多数の細胞の培養液中での浮遊をもたらす。
e)驚くことにZn2+の追加は細胞接着に関しHis67Alaのネガティブ効果を明らかに逆転させ,もし単独ならば同じ傷害効果を発揮することはない。
f)Asn99Aspミュータントアルブミンの添加はZn2+の追加量とは無関係に、生育細胞の増加(約+20%)をもたらす。
g)Asn99HisミュータントrHAの添加は最も劇的な接着の喪失を誘発する。His67AlaミュータントrHAとは逆に、Zn2+の追加に有益な効果はない。細胞の生存力は影響されないようである。
要約すると、発明者らは亜鉛部位リガンドに対する突然変異は蛋白の物理化学的性質および生存細胞に対しても影響が及ぶことを示した。観察された様々な効果に対する理由は未だ立証されていないが、発明者らは理論に結びつけることを望むことなく、立体配座の動態、ドメイン/ドメイン相互作用、蛋白/蛋白相互作用ならびにおそらく蛋白/膜相互作用が本観察のほとんどの原因であると推測する。
【0092】
これらの研究結果として金属部位の周辺の残基の突然変異によりZn2+のような金属イオンに対する親和力の低下したあるいは増強した新規なミュータントアルブミンを作ることが可能である。これらは金属に結合できない(あるいは弱くしか結合できない)および金属親和力の低下を生じている側鎖に金属を結合させることができる側鎖の突然変異を含む。
なお、下表は、哺乳類アルブミン間のアミノ酸配列の比較である。突然変異を起こしている残基を強調している。N末端アミノ酸(残基番号1)前の枠内のアミノ酸はプレアルブミン配列の一部で、翻訳後開裂されアルブミン自身を与える。配列のアクセッション番号はヒト、P02768(配列番号2);アカゲザル、M90463(配列番号3);イヌ、CAB64867(配列番号4);ネコ、P49064(配列番号5);ウシ、P02769(配列番号6);ヒツジ、P14639(配列番号7);ブタ、ABPGS(配列番号8);ウサギ、P49065(配列番号9)およびラット、P02770(配列番号10)である。
【0093】
【表1(a)】
【表1(b)】
【表1(c)】
【表1(d)】
【表1(e)】
【表1(f)】
【表1(g)】
【表1(h)】
【表1(i)】
【表1(j)】
【表1(k)】
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】PDB 1AO6で報告されているように、ここで明らかにされ、強調された金属結合部位を有するヒト血清アルブミンの三次元構造のモデルを示す模式図。
【図2】図2は提案した亜鉛結合部位内および周辺に位置するより詳細なアミノ酸側鎖を示す模式図。
【図3(a)】野生型アルブミンにおける亜鉛部位の最初のモデルをアポ‐rHA(1AO6)と比較して示す模式図。
【図3(b)】野生型ヒト血清アルブミンの亜鉛部位の再計算した、改良モデルをアポ‐rHA(1AO6)と比較して示す模式図(亜鉛部位の力場エネルギー:59.1kcal/mol。)。
【図3(c)】Asn99Hisミュータントの金属部位モデルを野生型ZnrHA(緑色)と比較して示す模式図(亜鉛部位に対する力場エネルギーは野生型アポ:0.54Å;野生型Znアルブミン:0.56Åに対し83.2kcal/mol.rmsdである。)。
【図3(d)】Asn99Aspミュータントの金属部位モデルを示す模式図。
【図3(e)】亜鉛フリー野生型およびミュータントアルブミンのモデルにおける可能な亜鉛部位でのドメイン間H結合を示す。a:野生型;b:脂肪酸を負荷した野生型;c:Asn99Hisミュータントモデル;d:Asn99Aspミュータントモデルを示す模式図。
【図4】野生型(実線)およびH67Aアルブミン(点線)の円偏光二色スペクトルを示すグラフ。
【図5】2モル当量の111CdCl2による野生rHAおよびH67ArHAの111Cd-NMRを示すチャート。
【図6】a)亜鉛およびb)銅の存在下2モル当量の111CdCl2によるrHAの111Cd-NMRを示すチャート。
【図7】0.2当量ステップで(ボトムからトップ)0.2から2モル当量のCuCl2による(a)天然rHAおよび(b)H67ArHAのUV‐可視吸収スペクトルを示すグラフ。
【図8】亜鉛結合の無いasn99asnミュータントにおける可能な亜鉛結合部位を示す模式図(右側のオーバーレイにおいて赤紫色で示したのが野生型構造である、変異部位の力場エネルギー(101.4kcal/mol)は野生型(55.6kcal/mol)およびasn99his部位(75.6kcal/mol)のそれよりわずかに大きい。)。
【図9】2モル当量の111Cd2+(条件:1mM蛋白、50mMTris-Cl、50mMNaCl、295K)による組み換えアルブミン(野生型およびAsn99Hisミュータント)の1D111Cd-NMRスペクトルを示すチャート。
【図10】2モル当量の111Cd2+(条件:1mM蛋白、50mMTris-Cl、50mMNaCl、もし他に述べなければ295K)による組み換えアルブミン(野生型およびAsn99Aspミュータント)の1D111Cd-NMRスペクトルを示すチャート。
【図11】銅(II)による1mMrHAの滴定を示すグラフ(pH7.4、0.2Mリン酸カリウム。CuCl2はそれぞれのケースで0.2当量部に加えられた。アルブミンの吸収に対し補正した差スペクトルを示す。)。
【図12】野生型およびミュータントアルブミンのUV‐Vis差スペクトルに対する様々な量のCu2+の影響の直接比較を示すグラフ。
【図13】野生型rHAのdeconvoluted FT-ICR-MSスペクトル(8 mM NH4Ac、25%メタノール、1%酢酸中20μM。小分子付加体の検出を可能にする狭い線形(half‐height幅約25Da)に注目。)。
【図14】組み替えアルブミンミュータントの高分解能1D 1H-NMRスペクトルの測定結果を示すチャート(順に、組み替えアルブミンミュータントの高分解能1D 1H-NMRスペクトルの測定結果、HisHδ2/Hε1交差ピークを示す野生型、His67Ala,Asn99AspおよびAsn99AsprHAそれぞれの2DTOCSY NMRスペクトルの一部を示す。いずれのサンプルも50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl中1mMで、いずれの実験も310Kで行われた。pH値は7.28(N99H)と7.40(H67A)の間で変化し、個々のプロトンに対するケミカルシフトのわずかな違いを説明する。観察できるHε1プロトンは数字を付し、ケミカルスフトの標準として加えた蟻酸塩を表す)。
【図15】ヒスチジンHδ2/Hε1交差ピークを示す1モルの当量Zn2+を加えた(pH*= 7.37)1Dおよび2DTOCSYスペクトルの一部を示すグラフ。
【図16】オクタノエートの量を変えた野生型rHA(50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, pH* = 7.26中1mM)の高分解能1DNMRスペクトルの一部を示すチャート(右図はヒスチジンHε1プロトンのケミカルシフトに対するオクタノエートの増量効果を示す)。
【図17(a)】オクタノエートによるCd2rHAの滴定を示すチャート(条件:1mMrHA、2モル当量111CdCl2, 50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, 10% D2O, pH 7.1, 298 K, 10 mm BBOプローブ。1スペクトルの取得に一般に4時間を要する。
【図17(b)】オクタノエートによるCd2rHAの滴定を示すチャート(条件:1mMrHA、2モル当量111CdCl2, 50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, 10% D2O, pH 7.1, 298 K, 10 mm BBOプローブ。1スペクトルの取得に一般に4時間を要する。図17bのグラフは4当量に対する時間経過を示す[各スペクトルの取得に4時間かかるので、各スペクトルの中間点(すなわち、実験開始後2時間)は平均タイムポイントとして取得される]。
【図18(a)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた層中の細胞数を示すグラフ。
【図18(b)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた層中の死亡細胞の百分率を示すグラフ。
【図18(c)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた培地中の細胞数を示すグラフ。
【図18(d)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた培地中の死亡細胞の百分率を示すグラフ。
【図19】H結合を介するドメインI‐ドメインII接触面に含まれると同定された突然変異体を示す模式図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミュータントの由来となった天然アルブミンに対して金属結合及び/または他の特性の改変を示す血清アルブミンの突然変異型並びに医学分野あるいは培養における細胞の発育におけるミュータントアルブミンの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトアルブミンは血漿中に最も豊富に存在する蛋白である。一般に、約750μMの濃度で存在する。主として螺旋状のトリプルドメイン構造を有する585個のアミノ酸からなる1本のポリペプチド鎖である。ヒト血清アルブミンの遺伝子は想定される「キャッピング」部位からポリAの最初の付加部位まで16,961個のヌクレオチドからなる。
【0003】
アルブミンは血中の主な輸送蛋白で、脂肪酸、ホルモン及び薬物等の広範囲の小分子と可逆的に結合する。アルブミンはまた、多くの金属イオンの輸送と貯蔵にも関与している。現在、ヒトアルブミンは臨床的には、重度の火傷、ショックまたは失血状態にある患者の治療に用いられている。他の哺乳類のアルブミンはヒトアルブミンと構造などが非常に良く一致する。
【0004】
亜鉛と銅はそれぞれ3.4×107M-1および1.5×1016M-1の結合定数でアルブミンと結合することが知られている(非特許文献1:Masuoka et al.(1993)J.Biol.Chem.268,21533-21537)。Cu2+はアルブミンのN末端アミノ酸のAspl−Ala2−His3に最も強く結合し、分子上に他の結合部位が知られているにもかかわらず4個のNリガンドの正方形‐平面部位を供給する。
【0005】
血漿中Zn2+の約75%(約14μM)がアルブミンに結合している。これは血清中のZn2+の交換可能な画分の98%ほどを占める(非特許文献2:Giroux et al.(1976)J.Bioinorg.Chem.5,211-218;非特許文献3:Foote and Delves(1984)Analyst 109,709-711)。アルブミンは内皮細胞による亜鉛の取り込みを調整することが以前から知られており、一方内皮を透過するレセプターを介する小胞共輸送がアルブミン−亜鉛複合体によりインビトロで証明されている(非特許文献4:Bobilya et al.(1993)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.202,159-166;非特許文献5:Tibaduiza et al.(1996)J.Cell Physiol.167,539-547)。アルブミンは循環における主な亜鉛輸送蛋白と信じられているにもかかわらず、アルブミン上のZn2+の結合部位はこれまで明確に突きとめられていなかった。
【0006】
亜鉛は体内の必須元素であり、300以上の酵素中に存在する。亜鉛にはビタミンAの輸送、創傷の治癒、男性での精子産生を含む多くの重要な役割があり、炭疽菌致死因子や細菌腸毒素により取り込まれる。それ故血中亜鉛濃度の調節は生理的に非常に重要である。血液からのZn2+の取り込みは金属結合性を有する有機薬物、例えば、トリプシンのようなセリンプロテアーゼのベンズイミダゾール阻害剤の蛋白や酵素に対する親和力を高めるのに用い得ることが示唆されている(非特許文献6:Katz and Luong(1999)J.Mol.Biol.292,669-684;非特許文献7:Janc et al.(2000)Biochemistry 39,4792-4800;非特許文献8:Katz et al.(2001)Chem.&Biol.8,1107-1121;非特許文献9:Liang et al.(2002)J.Am.Chem.Soc.)。
【0007】
ReedとBurrington(非特許文献10:J.Biol.Chem.(1989),264,17, p9867-9872)はアルブミンの肝細胞への結合およびこのことがアルブミンに対する細胞の表面レセプターを必要とするか否かに関する。彼らの研究は肝細胞表面へのアルブミンの可逆的吸着を証明し、アルブミンと肝細胞表面との間の相互作用を促進させる立体配座の変化を伴うことを提唱した。しかしながら、どのような立体配座の変化が生じあるいはどのようにしてそれが調節されるかについての示唆はない。
Bosらは(非特許文献11:J.Biol.Chem.(1989),264,2,p953-959)ヒスチジン残基を介するCa2+の結合によるヒト血清アルブミンの中性−塩基遷移の分子メカニズムに関する。彼らの論文はN−B遷移が薬物の体内動態に役割を果たしている可能性を明らかにしているが、ミュータント血清アルブミンの創造を示唆してはおらず、そのようなミュータントが有するであろう効果についても何ら示唆していない。
【0008】
【非特許文献1】Masuoka et al., J.Biol.Chem. 268, 21533-21537(1993)
【非特許文献2】Giroux et al., J.Bioinorg.Chem., 5, 211-218(1976)
【非特許文献3】Foote and Delves, Analyst 109, 709-711(1984)
【非特許文献4】Bobilya et al., Proc.Soc.Exp.Biol.Med., 202, 159-166(1993)
【非特許文献5】Tibaduiza et al., J.Cell Physiol., 167, 539-547(1996)
【非特許文献6】Katz and Luong,J.Mol.Biol., 292, 669-684(1999)
【非特許文献7】Janc et al., Biochemistry, 39, 4792-4800(2000)
【非特許文献8】Katz et al., Chem.& Biol., 8, 1107-1121(2001)
【非特許文献9】Liang et al., J.Am.Chem.Soc.(2002)
【非特許文献10】J.Biol.Chem., 264, 17, p9867-9872(1989)
【非特許文献11】J.Biol.Chem., 264, 2, p953-959(1989)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は4個のアミノ酸(His67,Asn99,His247,Asp249)のクラスターが亜鉛、銅及び/またはカドミウムの結合部位(図1および2を参照)に含まれるドメインIとIIの間の界面に位置するという当初の発見に基づいている。これら4残基はすべて、現在までに配列決定された哺乳類アルブミンのいずれにおいても良く保存されている(表1を参照)。ここで言及したナンバリングは、プレプロ−アルブミン配列が翻訳に続き開裂された後のヒト血清アルブミンのアミノ酸配列の特定の位置に見られるアミノ酸に関するものである(表1を参照)。この部位の同定は利用できる亜鉛及び/または他の金属イオンの血中濃度を調節するための治療用アルブミンの設計および標的組織へのそれらのデリバリーの原理を提供する。本発明はミュータントアルブミンが有する細胞接着に対する効果の観察結果にも基づいている。
【0010】
このように、第一に、ミュータントの由来となった天然アルブミンに対してミュータントが金属結合親和力及び/または他の生理学的特性の改変を示すように突然変異を生じた単離されたミュータント血清アルブミンが提供される。
金属結合及び/または他の生理学的特性の改変をもたらす天然アルブミン配列へのいかなる突然変異も、以下に定義するように本発明に包含されると認識される。特定のミュータントを産生させ、ここで述べられた実験に基づいてこのようなミュータントが金属結合及び/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを試験することは専門家にとっては比較的簡単な課題である。
突然変異され得る好ましい残基は、表1で明らかなように残基X1〜X11及び/または特定の血清アルブミンに対し測定された結晶構造から決定され得る残基のいずれかと水素結合できる残基として同定される。
【0011】
第二に実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミンが提供される:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲を通して慣用のアミノ酸の1文字表記を用いている。アミノ酸置換は他の天然アミノ酸,特にDNAにより直接コードされる20個のアミノ酸あるいは例えば専門家に知られている合成アミノ酸あるいは珍しいアミノ酸に対する。上記の配列はGenbankデータベースに見られるヒト血清アルブミンの配列に基づいている。ヒト血清アルブミンはX1がH、X2がN,X3がH,X4がD、X5がY、X6がL、X7がG、X8がE、X9がH、X10がHおよびX11がHである上記配列からなる。このように、本発明に従ってミュータント血清アルブミンは上述の位置に見られる特定の種の”アルブミン”の天然アミノ酸に関して、典型的には、残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる。それにもかかわらず、種の個体間で自然変動が存在するので配列に小さな変動が生じ得る。X1〜X7において明らかにされた変動以外のそのような小さな配列変動は本発明からはずれていないと理解される。配列中のこのような変動は置換、反転,欠失あるいは転移として現れる。しかしながら、このような変異体のアルブミン配列は図1で示されたいずれの配列ともかなり類似している。一般に変異体アルブミンの配列は同定された配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%あるいは99%の同一性(X位置を除く。)を示す。
【0013】
アミノ酸配列間の相同性(すなわち、同一性)は市販のアルゴリズムを用いて決定することができる。プログラムBLAST、gapped BLAST,BLASTN,PSI−BLASTおよびBLAST2配列(National Center for Biotechnology Informationにより提供された)はこの目的のために当該技術分野において広く用いられ、2つのアミノ酸配列の相同領域を整列させることができる。これらは構造の知られた蛋白とモデルとされた他の標的蛋白のアミノ酸間の相同性の程度を決定するためにデフォルトパラメータが使用される。
ミュータント血清アルブミンは生物体のプロテオームにおいて結合し得る他の蛋白を含まないあるいは実質的に含まないあるいは一部含む意味で単離され、それ故細胞あるいは生物体のプロテオーム内のいかなる天然アルブミンをも包含しない。
【0014】
上記配列はリーダー配列(すなわち、MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRR (Met-Lys-Trp-Val-Thr-Phe-Ile-Ser-Leu-Leu-Phe-Leu-Phe-Ser-Ser-Ala-Tyr-Ser-Arg-Gly-Val-Phe-Arg-Arg)(配列番号13))が配列から開裂された後の血清アルブミンのヒト型に基づいている。本発明はこのようなリーダー配列を含むミュータント配列にも及ぶ。
上記のことはヒト血清アルブミンのミュータントに関連する一方、本発明はミュータントヒト血清アルブミンにのみ限定されない。すべての種に渡って血清アルブミンはかなり保存されており、他の種のアルブミンから上記配列中Xsで表された位置のアミノ酸を同定することおよび金属結合及び/または他の生理学的特性を改変するために上述のアミノ酸を変えることは十分に専門家の専門技術内である。表1は実際哺乳類の血清アルブミンポリペプチド配列の並びを示しており、本発明に従って突然変異を生じ得る残基が強調されている。ミュータント血清アルブミンを産生するために少なくとも前記残基の1つは同定された天然残基以外であるべきで、それは天然血清アルブミンに関して金属結合及び/または他の生理学的特性の改変を示す。
【0015】
多くの血清アルブミンの配列は知られており、例えば、National Center for Biotechnology Infomation:www.ncbi.nlm.gov.のGenbankデータベースから容易に入手できる。例えばヒトの配列はアクセッション番号P02768で見ることができる。他の配列(1文字符号)もwww.albumin.org.で見ることができる。
本発明のミュータントは特定の種の天然血清アルブミンの一般的な全体のフォールディングに関して大体は類似している。例えば、ミュータント血清アルブミンの円偏光二色バンドの符号と大きさが天然の血清アルブミンと類似しているかどうかを調べるために円偏光二色性の研究が行われる。もし類似しているなら、ミュータント血清アルブミンは天然の血清アルブミンに類似した二次構造を示す。
【0016】
本発明のミュータントはミュータントの由来となった天然アルブミンに関して金属結合親和力の改変あるいは他の改変された特性、例えば培養における細胞接着及び/または発育の改変を示す。金属結合親和力の改変は金属結合親和力(例えばKd)における低下あるいは増強及び/または金属の結合/解離の比率の増大あるいは低下を意味する。トグKd値に置き換えてKd値を求める時10あるいは100の係数のような好ましくは2,4、あるいは6の係数による増加あるいは減少が生理的条件(すなわち、約pH7.3)、適切な濃度、約20℃〜37℃の温度で測定される。そのようなミュータントアルブミンに対し結合親和力の改変を示す金属は亜鉛、銅、ニッケルおよびコバルトがある。好ましくはミュータントアルブミンは亜鉛に対して結合親和力の改変を示す。一般に、金属結合親和力の改変はZn2+,Cu2+などのような金属イオンに関する。適切な金属結合側鎖を持たない残基への金属結合に必要と考えられる残基の突然変異は金属結合親和力の低下をもたらすと考えられる。逆に金属への結合に必要と考えられる残基および結合を手助けし促進する残基の近傍に存在するが、金属/金属イオン結合に関連しない残基の突然変異は金属結合親和力を高めると期待される。
【0017】
例えば以下の突然変異体は金属結合親和力の低下をもたらすと仮定される:
X1 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X2 => A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X3 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X4 => A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
また、金属親和力の上昇と調節を生じさせる金属結合リガンドを導入する側鎖の突然変異は以下の変異体を含む:
X5 => C, D, E, H (これはブタアルブミンでは既にHis残基)
X6 => C, D, E, H
X7 => C, D, E, H
X2 => C, D, E, H
X4 => C, E, H
X1 => C, D, E
X3 => C, D, E
【0018】
提案部位の金属結合は脂肪酸結合により影響を受けることを本発明者らは見出した(A.J.Stewart,C.A.Blindauer,S.Berezenko,D.Sleep,P.J.Sadler,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100,3701-3706(2003))。脂肪酸フリーのアルブミンと5モルのミリステート(pdb 1bj5)と結合したアルブミンのX線構造の比較から、いわゆる結合部位2に脂肪酸のアニオンを提供するためにドメインIおよびIIベンドを結びつける長いヘリックスとリガンド配位していないrHAにおける2カ所のハーフサイトは10Å以上移動し連続した空洞を形成することが明らかである(Curry,S.,Mandelkow,H.,Brick,P.&Franks,N., Nat.Struct.Biol.5,827-835 (1998))。この脂肪酸結合は提案亜鉛部位(図X3e(a&b)を参照)における他の2残基、H67とN99から4〜6Å離れることにより残基H247とD249の移動をもたらす。D249はまたH67のN'に対するH結合を維持するために側鎖の立体配座を変化させ、さらにN99に対するH結合を形成する。アンリガンド構造においてN99にH結合しているH247は脂肪酸結合構造においてE100とH結合を形成する。ヒトアルブミンにおける脂肪酸結合による亜鉛部位の提案されたスイッチングは有機栄養素と必須金属イオンとの間のアロステリック相互作用の興味深い例である。H247−E100のH−結合は"switched"型を安定化させると期待されるので、E100の以下の突然変異体は相互作用する金属/脂肪酸結合に影響すると予測される。
X8 => C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【0019】
さらに、より最近の研究はH67A、N99DおよびN99Hの突然変異を有するアルブミンは、細胞培養培地で用いた時、野生型と劇的に異なる性質を示すことを明らかにした。細胞接着はH67AおよびN99Hミュータントの両方において傷害される。アルブミンから例えば脂肪酸の肝による取り込みは細胞表面へのアルブミンの非特異的結合とアルブミン分子の立体配座変化の誘導を必要とすることが知られている(R.G.Reed,C.M.Burrington,J.Biol.Chem.264,9867-9872, 1989)。突然変異残基はいずれもH結合を介したドメインI−ドメインII接触を安定化させるのに必要である。ドメインI/II界面における一ヶ所の突然変異は細胞に対する突然変異アルブミンの作用に大きな影響を与えるという知見はドメイン間のH結合に必要とされるドメインI/IIヒスチジン残基に関する以下の突然変異は細胞接着及び/または細胞発育に同様の影響を与える。
X9 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11 => A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
なお、本明細書において標準的なアミノ酸の1文字表記が使用されている点に留意されたい。
【0020】
アルブミンに対するZn2+の性質は113Cd−NMRによる研究によって示された。哺乳類の幾つかのアルブミンはCd2+に対しN/O配位に特有のケミカルシフトを有する2個の強力な結合部位を有する(Sadler & Viles, Inorg.Chem., 35, 4490-4496 (1996))。ヒトアルブミンでの24ppmと114ppmの113Cdシフト(Cd(ClO4)に比して)はそれぞれ1個のイミダゾール窒素および2〜3個のイミダゾール窒素を含む部位を暗示している。Zn2+,Cu2+およびNi2+イオンはヒトアルブミンにおいてこれらの部位のCd2+を置換し得る。アルブミンの結晶構造に基づいた本発明者による分子モデリング(PDB 1AO6)は、多数の金属結合部位がHis67、Asn99、His247およびAsp249のクラスターを含むことを示唆した。本発明者らはHis67のアラニンへの部位特異的(site directed)突然変異誘発とそれに続く111Cd−NMRを用いる同位元素に富んだカドミウムによる金属競合研究によりこの部位の位置を立証した。月並みにこのことはアラニンに突然変異した位置67のヒスチジンをH67Aとして表される。このような表記は本願の他の部分でも用いる。
【0021】
他の残基、例えば、チロシン30(X5)およびグリシン248(X7)の突然変異は亜鉛結合に影響すると考えられる。チロシン30はそれ自身金属に結合しないが、金属に結合している残基99に水素結合する。このように、残基30の突然変異は金属結合部位に影響する。Gly248のバックボーンのカルボニルは残基99に水素結合する、それ故この残基の突然変異は金属結合部位に影響を与える。
【0022】
本発明の突然変異アルブミンは新たに合成されるが、好ましくは当該技術分野の専門家に良く知られている遺伝子組み換え法により産生される。例えば突然変異アルブミンは関連した遺伝子配列に対する部位特異的(site directed)突然変異誘発およびその後の蛋白発現により天然アルブミンから導かれる。このような技術は良く知られており、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual (1989), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYに述べられている。
本発明はそれ故本発明に従ってミュータント血清アルブミンをコードする核酸配列にも拡張される
【0023】
宿主生物体でのミュータントアルブミンの遺伝子組み換えによる産生のために、ミュータントアルブミン蛋白をコードするヌクレオチド配列を選択宿主に対し設計されたDNA構築物を作成するために発現カセットに挿入し、宿主に導入する。選択宿主にとって適切なプロモーター、シグナル配列、5’および3’非翻訳配列、エンハンサーおよびターミネーターのような特異的な制御配列の選択は当該技術分野におけるルーチンワーカーの技術レベル内である。適切なリーディングフレームにリンクした個々の要素を含む結果として得られた分子は、リン酸カルシウム沈降法、エレクトロポレーション法、バイオリスティック導入法、ウイルス導入法などのような当該技術分野の専門家に良く知られている技術を用いて選択した細胞に導入することができる。トランスフェクション(Schenborn ET, Goiffon V. Methods Mol Bio. 2000; 130: 135-45, Schenborn ET, Oler J. Methods Mol Biol. 2000; 130: 155-64),エレクトロポレーション(Heiser WC. Methods Mol Biol. 2000; 130: 117-34)あるいは組み替えウイルス(Walther W. Stein U; Drugs 2000 Aug; 60 (2): 249-71)による適切な発現カセット、ベクターおよび蛋白の組み換え法は大腸菌(Studier and Moffatt, J. Mol. Biol. 189: 113 (1986); Brosius, DNA 8: 759 (1989))を参照)、酵母(Schneider and Guarente, Meth. Enzymol 194: 373 (1991)を参照)および昆虫の細胞(Luckow and Summers, Bio/Technol. 6: 47 (1988)を参照)のような宿主微生物および哺乳類の細胞(組織培養あるいは遺伝子療法)にとって良く知られている。
【0024】
微生物、特に酵母においてアルブミンを発現し、培養培地からそれを精製する技術は米国特許第5637504号、米国特許第6034221号及びWO00/44772に開示されており、いずれも言及により本願に組み込まれる。
それ故、発明はさらにここで述べたミュータントアルブミンをコードするここで述べたヌクレオチド配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセットを提供する。本発明に従って突然変異を生じ得る血清アルブミンをコードするヌクレオチド配列もGenbankデータベースから容易に入手できる。
【0025】
更に、発明はここで述べたミュータントアルブミンと医薬上許容される担体を含む医薬品組成を提供する。
医薬上許容される担体は当該技術分野の専門家に良く知られており、0.1Mおよび好ましくは0.05Mリン酸緩衝液または0.8%の食塩水が挙げられる(但し、これらに限定されない。)。さらに、このような医薬上許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液および乳濁液のいずれでもよい。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油およびオレイン酸エチルのような注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、食塩水や緩衝剤媒体を含む乳濁液あるいは懸濁液が挙げられる。非経口投与賦形剤としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液のブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸添加リンゲル液あるいは不揮発性油が挙げられる。静脈内投与賦形剤としては、液体および栄養補給剤、リンゲル液のブドウ糖などに基づくものなど、電解質補給剤が挙げられる。防腐剤や他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどを含有させてもよい。
【0026】
本発明のミュータントアルブミンは、通常の方法により医薬品組成とするために医薬上許容される担体(例えば、結合剤、調整剤、矯味剤、崩壊剤、乳剤、賦形剤)、希釈剤あるいは安定剤と混合して医薬品製剤として供給され、それは例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤、シロップ剤、懸濁液、溶液、注射剤、注入剤、デポ剤、坐剤に製剤化され、例えば経口あるいは非経口投与される。
【0027】
経口投与に錠剤を用いる場合、一般に用いられる担体としては、ショ糖、乳糖、マンニトール、マルチトール、デキストラン、コーンスターチ、ステアリン酸マグネシウムのような典型的な潤滑剤、パラベン、ソルビンのような防腐剤、アスコルビン酸、α−トコフェロール、システインのような抗酸化剤、崩壊剤あるいは結合剤が挙げられる。カプセル剤として経口投与する時には、有効な希釈剤としては、乳糖や乾燥コーンスターチが挙げられる。経口投与の液体としては、シロップ、懸濁液、溶液および乳濁液が挙げられ、それらはこの分野で用いられる水などの典型的な不活性希釈液を含有してもよい。さらに、甘味剤あるいは香料を含有させてもよい。
【0028】
皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射あるいは点滴のような非経口投与の場合には、活性成分の溶液のpHは適切に調整され、緩衝剤で処理されあるいは滅菌される。使用できる賦形剤あるいは溶剤の例としては、蒸留水、リンゲル水および等張の塩水が挙げられる。静脈内投与には、溶質の総濃度は溶液を等張とするように調整される。
坐剤は本発明化合物を正常温度で個体であるが腸内温度で液体となり直腸で融解し活性成分を放出するココアバターおよびポリエチレングリコールのような適切な非刺激性の賦形剤と混合することにより作成できる。
【0029】
投与量は年齢、体重、投与時間、投与法、薬剤の組み合わせ、治療を行っている患者の健康状態のレベルおよび他の因子によって決定される。1日の投与量は患者の健康状態および体重、活性成分の種類および投与経路に依存して変わるが、経口投与の場合、1日投与量は約0.1〜100mg/人/日、好ましくは0.5〜30mg/人/日である。非経口投与の場合には、1日投与量は皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射および直腸内投与に対し望ましくは0.1〜50mg/人/日、好ましくは0.1〜30mg/人/日である。
【0030】
本発明のミュータントアルブミンは、例えば、欠損疾患および感染症の治療、金属過負荷の治療及び/または金属濃度の調節が別の金属イオンあるいは薬物あるいは天然分子のような有機分子の生理機能に結びついている病気に対するヒトあるいは動物の医薬品として使用される。
本発明のミュータントアルブミンを用いて血中亜鉛のような金属の量を調節したり亜鉛吸収に問題のある患者の治療を促進することも可能である。さらに、特に強力な金属結合力を示すミュータントアルブミンは環境中の金属を検出するバイオセンサーに用いられる。
【0031】
アルブミンに結合した亜鉛は塩素イオンに結合し得るZn2+の形であるというさらなる観察からは、亜鉛を結合したアルブミンが塩素センサーとして用いることができ、亜鉛への接触は血中塩素濃度によって制御され得る(このことは触媒作用をも調節する)という可能性が導かれる。
本発明者らは、本発明によるミュータントアルブミンは培養中細胞の発育に影響を及ぼすことも観察した。ミュータントは基質に結合したおよび培地中に見られる細胞の分布に影響を及ぼす。幾つかのミュータント、例えば、Asn99Aspは細胞発育を全体として促進させることも観察された。それ故、本発明は、本発明に従って培養における細胞の発育特性を変えるミュータント血清アルブミンの方法あるいは使用にも関連する。発育特性の改変は接着、生存力百分率及び/または細胞発育における変化例えば力価、基質が接着した細胞および培地中に分散した細胞間の細胞分布の変化あるいは接着したあるいは培地中の死細胞あるいは生存細胞間の違いを含む。
【0032】
アルブミンは一般に細胞培養培地、特に哺乳類の細胞培養および特に血清を含まない培地に含まれる。発明の修飾アルブミンが加えられる培養液は銅、亜鉛及び/またはカドミウムを含むかあるいは含まない。適切な例はイーグル(Eagle)培地、ダルベッコ(Dulbecco)改変イーグル培地(ダルベッコ最小培地)、ハム(Ham)F10およびF12培地、イスコーブ(Iscove)改変ダルベッコ培地およびRPMI培地を含む。普通にアルブミンを含むこのような培地の場合には、発明の修飾アルブミンは天然アルブミン(ヒトあるいはウシ)と一部あるいは完全に置き換えられるかあるいはアルブミンの通常量より過剰に加えられる。通常アルブミンを含まないような培地の場合には、発明の修飾アルブミンが加えられる。
【0033】
培地が用いられる細胞には動物細胞、特に鳥類(ニワトリのような)あるいはヒトのような哺乳類の細胞、他の霊長類(サルのような)あるいはげっ歯類(ハムスター、ラットあるいはマウスのような)の細胞がある。細胞型は例えば腎臓、卵巣あるいは肝臓のいずれかの組織由来で、内皮、上皮、皮膚、神経、リンパ球、幹細胞などである。ハイブリドーマのような人工細胞もある。適切な細胞の例には腫瘍形成性あるいは非腫瘍形成性ヒト肝細胞、Bリンパ球、ハイブリドーマ、胎仔ハムスター腎臓細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞およびヒト胎児腎臓細胞がある。細胞は容器壁、多孔性のマトリックスあるいはビーズのような表面で培養されるかあるいは培地中に自由に懸濁される。
【0034】
培養細胞は特定の細胞により自然に産生される物質を産生するのに用いられるかあるいは治療用蛋白のような他の産物を発現させるために遺伝子工学により作成される。例はモノクローナル抗体およびそのアナログ(1本鎖可変領域フラグメントおよびヒト化IgGκ軽鎖のような)、血液凝固因子(第VII因子、第VIII因子、第XI因子および第XIII因子のような)、抗トロンビンIII、サイトカイン(インターロイキン、例えばインターロイキン‐2のような、およびインターフェロン‐αあるいはインターフェロン‐γのようなインターフェロン)、成長因子(インスリン様成長因子のような)、トロンボモジュリン、グルタミン合成酵素、プロウロキナーゼおよびプラスミノーゲンを含む。
【0035】
発明の修飾アルブミンは付着、発育及び/または発現および分泌の増強のような細胞に対する望ましい作用をもたらすために脊椎動物および無脊椎動物由来の培養細胞および組織と同様に、原核生物および酵母に対し作成された組織培養培地に含まれる。
【0036】
選択された培養培地における発明の修飾アルブミンの適切な濃度決定は当該技術分野において通常の技術内である。一つの具体例では、修飾アルブミンは約50μMから約30mMの濃度で細胞培養システムに加えられる。さらなる具体例では、ペプチドは約250μMから約20mMの濃度で細胞培養システムに加えられる。さらに、多様に修飾されたアルブミンは相乗作用を生じさせるために(もしこれらが細胞に対し同じ作用を有するなら)あるいは多様な作用を生じさせるために(もしそれぞれの修飾アルブミンが同じ細胞に異なる作用を有するなら)培養培地の表面に加えられる。
【0037】
細胞接着を促進させる発明の修飾アルブミンは組織培養基質をコーティングするための溶液あるいは固定型細胞の発育のための他の表面を作成するために水のような担体に溶解される。例えば、発明の上記修飾アルブミンを1個以上含む溶液は表面上に分布し逆空気流フードで乾燥され、その結果乾燥フィルムの形で表面に存在する上記修飾アルブミンを生じる。
【0038】
発明の上記修飾アルブミンの表面への吸着様式は非共有結合性の相互作用、非特異的吸着および共有結合を含む。発明の一つの具体例では、アルブミンは表面に直接吸着される。さらなる具体例では、ペプチドはキイホールリンペットヘモシアニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ポリリジン、細胞表面レセプター認識配列を持つペプチド、免疫グロブリン、ポリサッカライドあるいは成長因子に限定されないが、少なくともこのうちの1つで既に被覆された表面に吸着される。別の具体例では、アルブミンと上記蛋白の1つは、表面にフリーあるいは抱合体として同時に用いられる。
【0039】
本発明の成長促進修飾アルブミンは二次元あるいは三次元表面を含む表面において様々な固定依存性細胞の接着及び/または発育を促進するのに適している。例えば、その表面は細胞を3‐D配列に付着させるバイオリアクターの表面である。現在存在するよりも効率の良いバイオリアクターは発明ペプチドで修飾した3‐D表面に細胞を付着させることによって設計することができる。
【0040】
本発明の実施に際して用いられる表面のタイプに関して、適切な表面はこれに限定されないが、セラミック、金属あるいはポリマーの表面が含まれる。最も望ましくは、本発明はポリマーの表面およびセラミック、例えばガラス表面の処置に用いられる。本発明で用いられる適切な表面は、これに限定されないが、プラスチック皿、プラスチックフラスコ、プラスチックの微量滴定プレート、プラスチックチューブ、縫糸、膜、フィルム、バイオリアクターおよび微粒子を含む。ポリマー表面は、これに限定されないが、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、フッ素化エチレン、ポリ(ジメチルシロキサン)およびその他のシリコンゴムを含む。ガラス表面はグリセロールポリシラン結合ガラスを含む。
本発明に従ってミュータント血清アルブミンからなる細胞培養培地も提供される。
【0041】
本発明は実施例の方法によりおよび添付図面を参照することによりさらに説明される。
材料と方法
a)分子モデリング
unliganded(アポ)アルブミン(PDB取得コード1AO6)の2.5Åでの報告された結晶構造をモデルの出発点として終止用いた。モデルはSybyl(TRIPOS Inc.,Version6.8)で構築し、ジオメトリーを最適化するためにエネルギー最小化を行った。以前の実行ではプログラムはジスルフィド結合の存在を無視したことにより、水素原子の追加とジスルフィド結合の開裂をもたらした。亜鉛部位それ自身に対してではないが蛋白の全体構造にわずかに影響を及ぼすこの問題は、現在最終モデリングの実行において修正されている。最小化において、亜鉛に対する特定の力場パラメーターを満たした後に、TRIPOS力場を用いた。ヒスチジン(2.00Å)、アスパルテートあるいはグルタメート(2.00Å)および水(2.06Å)に結合したZn2+の結合距離はHarding, M.M. Acta Cyst. D57, 401-411 (2001), http://tanna.bch.ed.ac.uk.から採用した。これらの値は金属蛋白のデータベースを用いたpdbの分析結果とも一致する(Castagnetto, J.M., Hennessy, S.W., Roberts, V.A., Getzoff, E.D., Tainer, J.A., Pique, M.E., Nucleic Acids Res., 30, 379-382 (2002)。力定数はTRIPOS力場から採用した。亜鉛周囲の結合角は不自然でなかった。最初のステップでは、Zn2+周囲のジオメトリーはZn2+イオン、4個の蛋白リガンド残基および水分子のみを考慮した100ステップのエネルギー最小化により最適化された。最初のステップにおける不適切なジオメトリーおよび原子運動を通して導入されたファンデルワールスの接触を除くために、さらに50ステップのエネルギー最小化が残基65−69、97−101および247−251およびZn2+イオンおよび水分子に適用された。最後に、同じ理由で30以上のステップが全蛋白に適用された。図のオーバーレイはrmsd値も与える"Fit monomers"ルーチンを用いてSyblで作成された。亜鉛フリーのミュータントアルブミンのモデリングに際し、N99側鎖をin silicoで望む側鎖(AspあるいはHis)に変異させ、全分子に30ステップのエネルギー最小化を適用することにより不適切な接触の可能性は軽減された。野生型モデルに用いられたと同じアプローチが用いられ、亜鉛を含むミュータントモデルのために、異なる金属−リガンド結合性を有する幾つかの可能な出発構造を探索した。
【0042】
コンピュータプログラムとデータベース
配列の並び替えはEntrez Protein, National Centre for Biotechnolgy Information (www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)から得られた配列よりClustal W, European Bioinformatics Institute (www.ebi.ac.uk/clustalw/)を用いて行われた。ヒトアルブミン(PDB 1AO6)に対する三次元配位(PDB 1AO6)はBrookhaven Protein Databank (www.rcsb.org/pdb/)から得られた。
【0043】
部位特異的突然変異誘発
オリゴヌクレオチド‐直接突然変異誘発はアルブミンのH67A変異型をコードするcDNAを作成するために用いられた。突然変異誘発性のオリゴヌクレオチド5'-gctgaaattgtgacaaatcacttgctaccctttttggagacaaattatgc-3'(配列番号11)と5'-gcataatttgtctccaaaaagggtagcaagtgatttgtcacaattttcagc-3'(配列番号12)はDelta Biotechnology Ltd., Nottinghamにより供給された。突然変異誘発はthe QuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いて行われた。望む突然変異体を含むクローンはジデオキシ鎖終止配列により変異部位をヌクレオチド配列分析により同定した。変異cDNAはPUC9酵母発現ベクターに挿入され、エレクトロポレーションによりサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) DXY1細胞に形質転換された。
【0044】
発現と精製
30℃で4日間生育後S.セレビシエ(S. cerevisiae)DXY1細胞培養を3,000rpmで30分間遠心分離機にかけた。その後上清を除き、ろ過した。組み換え蛋白は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、上清から濃縮した。SP‐セファロースファーストフロー陽イオン交換カラム(カラム容積=225mL)は4倍のカラム容積量の30mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5で平衡に到達させた。ろ過上清は約3Lの2バッチに分けた。オクタン酸ナトリウム(2M溶液の7.5mL)をそれぞれのバッチに加え、pHを酢酸で4.5に調整し、カラムに充填する前に脱イオン水で伝導度を5.5mS cm-1に調整した。充填後、カラムを8倍のカラム容積量の50mM酢酸塩、80mMNaOH,pH4.0および4倍のカラム容積量の2MNaCl,pH4.0を含む27mM酢酸ナトリウム緩衝液で洗浄した。3度目の洗浄は10倍のカラム容積量の平衡緩衝液で行った。最後にカラムを2倍のカラム容積量の5mMのオクタン酸、pH5.5を含む85mMの酢酸ナトリウムで溶出した。
【0045】
SP‐セファロースファーストフロー溶出液はDEAEファーストフローカラム(カラム容積=167mL)で陰イオン交換クロマトグラフィーによりさらに精製した。カラムは15倍のカラム容積量の30mM酢酸塩、27mMNaOH,pH5.5で平衡に到達させた。SP‐セファロース溶出液の伝導度をカラムに充填する前に脱イオン水で3,0mS cm-1に調整した。充填後カラムを5倍のカラム容積量の15.7mM K2B4O7.4H2O,pH9.2で洗浄した。カラムを0.75倍のカラム容積量の85mM酢酸塩、110mM K2B4O7.4H2O,pH9.4で溶出した。
【0046】
DEAE溶出液をDelta Blue Agarose(Prometic Biosciences)カラム(カラム容積=423mL)でアフィニティクロマトグラフィーによりさらに精製した。カラムはDEAE溶出液を充填する前に2倍のカラム容積量の250mMの酢酸アンモニウム緩衝液、pH8.9で平衡に到達させた。充填後、5倍のカラム容積量の平衡緩衝液で洗浄した。カラムを2倍のカラム容積量の2MNaCl,pH6.9を含む50mMリン酸塩緩衝液で溶出した。
【0047】
Delta Blue溶出液は蠕動ポンプに連結した10kD MWCO Pall Filtron LU Centramate filterを用いて濃縮した。4.25gのH67Aアルブミンが回収された。精製産物からの濃縮溶液のサンプルを5mg mL-1に希釈し、10μLをSDS‐PAGEゲルに使用した。ゲルはLaemmli(1970)Nature 227, 680-685の標準法を用いて作成し使用した。ゲルをクマシーブルー染色および銀染色の両方で染色し、1%の濃度で存在する他の蛋白のないことを明らかにした(それ故蛋白の純度は約99%)。
【0048】
円偏光二色性分光分析
天然組み換えヒトアルブミン(rHA)(Delta Biotechnology Ltd., Nottingham)とH67Aミュータントアルブミンを200mMリン酸カリウム、pH7.4中約1.5mg mL-1に希釈した。両蛋白のスペクトルを測定した。機器はJASCO J‐600分光偏光計を用いた。二次構造の推定はSELCON法を用いて計算した。
1D111Cd-{1H}NMRスペクトル(106.04MHz,Bruker DMX500)は295Kで10mm BBO(直接観察)プローブヘッドおよび外部標準として0.1M Cd(ClO4)2(0ppm)を用いてごく普通に得られた。プロトンデカッップリングはGARPを用いる複合パルスデカップリングにより行った。蛋白のサンプルは一般に2モル当量の111CdCl2と共に50mMTris、pH7.1、100mMNaCl,10%重水中であった。111CdCl2
は適切な量の1MHClに111CdO(95.11%の同位元素純度、Oak Ridge National Laboratory, Tennessee, USA)を溶解することにより産生させた。
【0049】
111Cd-NMR研究は同じ濃度で1,5mMrHAあるいはHis67Alaミュータント蛋白を用いて行った。金属滴定実験のために様々な当量のZnCl2あるいはCuCl2を加え、pHはそれぞれを加えた後にチェックし、調整した(もし必要なら)。スペクトルは17.5μs(90°)の111Cdパルス幅、36k減衰シグナル,0.10sの補足時間および0.30sのリサイクルディレイを用いて30kHz(280ppm)の掃引幅に渡って4k複合データポイントにおいて得られた。フーリエ変換に先立ち、データは16kデータポイントにzero‐filledし、指数乗法によりアポディゼーションした(120Hzラインブロードニング)
【0050】
Asn99AspおよびAsn99HisミュータントrHAに関する111Cd-NMR研究はミュータントアルブミンの1mM溶液を用いて行った。ほとんどのスペクトルは17.5μs(90°)の111Cdパルス幅、36k減衰シグナル,0.13sの補足時間および0.24sのリサイクルディレイを用いて32kHz(300ppm)の掃引幅に渡って8k複合データポイントにおいて得られた。フーリエ変換に先立ち、データは32kデータポイントにzero‐filledし、指数乗法によりアポディゼーションした(150Hzライン‐ブロードニング)。
【0051】
d)1H-NMRスペクトル
NH共鳴を除くために、凍結乾燥サンプルを重水(99.9%の同位元素純度、Aldrich)に約50mg/mLに溶解し、296Kで48時間保ち、再度凍結乾燥しそれから50mMNaCl、50mMTrisを含む重水中1mM溶液となるように溶解した。1mMの濃度の蟻酸ナトリウムを内部キャリブレーション標準(sodium 3-(trimethylsilyl)propionate; TSPに比して8.48ppm)として加えた。pH*(pH計の読み)は6.9−7.0のpH(Glasoe, P.K. and Long, F.A. J. Phys. Chem., 64, 188 (1960))に相当する7.3−7.4に調整した。1D and 2D 1H-NMR実験はZ‐グラジエント三重共鳴(1H,13C,15N)プローブヘッドを用い599.82MHzで操作するBruker Avance 600 spectrometerを用い310Kでごく普通に行われた。残留水を抑えるために簡単なプレサチュレーションパルスシークエンスを用いた1Dスペクトル(90°励起パルス、9kHz掃引幅、8kタイムドメインデータポイント)に対して、512の減衰シグナルが一般に得られた。
【0052】
データは32kにzero‐filledし、分解能向上およびフーリエ変換のためsquared sine bellとGaussian functionの至適組み合わせによりアポディゼーションした。2DTOCSY実験に際し(90°励起パルス、8.4kHz掃引幅,ミキシング時間65ms、1.3s緩和ディレイ)、2x 512 t1インクレメントのそれぞれに対する48あるいは56の減衰シグナル(time‐proportional phase incrementation(TPPI)を用いた多次元取得)が残留水を抑えるために、感受性の向上した二重パルスフィールドグラジエントスピンエコーシークエンスを用いて4k複合データポイントにおいて得られた。データはsquared sinebell functionsを用いてアポディゼーションされ、実際のフーリエ変換は2k×2kデータポイントで行われた。
【0053】
野生型に対する幾つかのスペクトルも0.1Mのリン酸カリウム(KHP)緩衝液中で測定した。ヒスチジンHε1プロトンのケミカルシフトも緩衝液の同一性に依存する。一般に、シグナルはTris緩衝液中同じpH*(重水中で測定されたpD)で測定されたスペクトルに比べてKHP緩衝液では高磁場にシフトする。スペクトルの質は同様で、1mMの蛋白濃度は行われたほとんどの実験で最適であった。この濃度以上では、溶液はあまりにも粘性が高く、そのことはシグナルの線幅に対すると同様に明らかにシミングにとって不利であり、溶液の取り扱い(例えばpH調整、反応物との混合)を難しくする。
【0054】
e)UV‐Visスペクトロスコピー:銅滴定
アルブミンのサンプルは200mMリン酸カリウム、pH7.4中1mMあるいは2mMであった。700mMのCuCl2貯蔵溶液から、0.2μl(0.2モル当量に相当)を逐次追加した。サンプルを完全に混合し、5分後に400nmから800nmの間でShimadzu UV250IPC分光光度計を用いてUV‐Visスペクトルを測定した。最初、溶液はピンク色に変わり、一方後の追加は混濁をもたらし、スペクトルにおいて観察された吸収の全体的な増加が説明された。混濁の出現(Cu3(PO4)2の形成)は様々のアルブミンミュータントで明らかに異なる。
【0055】
f)細胞毒性を評価する細胞培養実験
発明者らの研究の間、亜鉛とアルブミンの細胞毒性を調べる2つのアプローチを開発した。最初の実験で用いたアプローチはトリパンブルーを用いる細胞生存力の測定により、2番目のアプローチは死亡細胞をプロピジウムアイオダイドで染色した後に、FACS(Fluorescence-activated cell sorting、フローサイトメトリーの応用)を用いた。2番目のアプローチは幾つかの利点がある;時間と材料の消費の両方に関してより効率がよい。
【0056】
i)標準的な培養条件
WRL‐68細胞を10%FCS(新生仔ウシ血清)、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび×1の濃縮NEAA(非必須アミノ酸)を補充したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)で培養した。細胞はインキュベーターにおいて80cm2の組織培養グレードフラスコで37℃、5%CO2で生育した。細胞に2〜3日毎に新鮮な培地を補給するかあるいはモニタリングにより必要な時には黄色により補給を示唆する重炭酸塩のカラー指示薬が培地に必要であった。フラスコ中生育した細胞はいったんコンフルーエントとなると、トリプシン+EDTAおよびPBSを用いて採取された。細胞懸濁液はペレットまでMSE Mistral1000遠心機で10分間1000rpmで遠心分離した。上清を除き細胞のペレットを培地中に再懸濁し、必要な時に用いた。
【0057】
ii)トリパンブルーを用いる細胞生存率の計測
トリパンブルーは母集団における生存細胞の割合を評価するために用いられる。染料の反応性は発色団が陰性に電荷を帯びており膜が傷害されていなければ細胞と反応しないという事実に基づいている。生存細胞は色素を取り込まないが死亡細胞は取り込む。一般に細胞は15.2x105cells/ml(Kerry Bunyanでこの値をチェックする必要がある)の0.5mlを用いて小さな細胞培養フラスコに接種した。これらを終夜放置して平衡に到達させた。培地を除きPBSで細胞を洗浄した。それから細胞を組み替えヒトアルブミン(rHA)単独(40mg/ml)、H67Aヒトアルブミン(H67A)(40mg/ml)、rHAおよびh67Aと0.1、0.5および1.0モル当量の亜鉛とで処理し、同じ濃度で亜鉛単独で処理した。いずれの処理も補充DMEMで行った。対照には培地のみを加えた。処理後フラスコを2晩放置した。アルブミンと亜鉛でインキュベーション後培地を除き分析のために保存した。細胞層はPBSで2回洗浄し、この洗浄液を集めた培地に加えた。細胞層はトリプシン+EDTAを用いてフラスコから除いた。再びフラスコをPBSで洗浄し、この洗浄液を細胞の懸濁液に加えた。培地と細胞懸濁液のすべてのサンプルを遠心分離した。一度遠心した上清を吸引して除きペレットをPBSに再度懸濁させた。集めた培地と細胞層の生存細胞の濃度と総細胞数を評価するために、200μlの良く混合したサンプル、300μlのPBSおよび500μlの0.4%トリパンブルー(シグマ)を混合し、2〜3分間室温に放置した。懸濁液を血球計に移し、オリンパス倒立位相差光学顕微鏡を用いて観察し、4×4の正方形格子内の死亡細胞(青)と生存細胞(無色)の数を数えた。全部で10個の正方形格子の数をカウントした。これらの細胞数は以下の式に従って総細胞数および生存細胞数を評価するのに用いた:
細胞/ml=平均細胞数×5(希釈係数)×1×104(血球計のチェンバー係数)
生存細胞/ml=生存細胞数×5(希釈係数)×1×104(血球計のチェンバー係数)
細胞生存力(%)=(総生存/総生存および非生存)×100
これらの数字は培地と細胞層に認められる総細胞数およびこれら細胞の生存力を示すために図の形で示した。
【0058】
iii)フローサイトメトリーと蛍光活性化細胞選別器(FACS)による分析
細胞を0.5ml/穴の12穴プレート上0.0995x106cells/mlで培養した。平衡にするためプレートを終夜放置した。それから培地を吸引で除き細胞層をPBSで洗浄した。その後野生型アルブミンあるいはHis67Ala、Asn99AspあるいはAsn99Hisミュータントアルブミンの有無下、0、60,300あるいは600μMのZnCl2を補充した培地で細胞を処理した。培地のみで処理した細胞を対照とした。48時間インキュベーション後フローサイトメトリーを用いてプレートを分析した。このために培地を除き細胞層をPBSで2回洗浄した。前に除いていた培地にこの洗浄液を加えた。それから細胞層をトリプシン+EDTAを用いて除き、PBSで2回洗浄し、これらの洗浄液を細胞懸濁液に加えた。細胞選別に先立ちすべてのサンプルに10%FCSを加えた。細胞死を検出するためにカウント前にすぐにサンプルにプロピジウムアイオダイド(1μg/ml)を加えた。それからBeckman Coulter EPICSセルカウンターを用いてサンプルを測定した。群間比較のために細胞数を測定するべく60秒後イベントの総数を記録した。
【実施例】
【0059】
分子モデリングによる亜鉛結合部位の同定
NMRの研究はアルブミンへの結合に関し113Cdケミカルシフトは2ヶ所での蛋白への金属配位を示唆することを明らかにした(Sadler and Viles(1996)Inorg. Chem. 35, 4490-4496)。Zn2+がCd2+を置換する部位におけるケミカルシフトは2−3個のイミダゾール窒素原子を含む蛋白に対する金属の配位の範囲内である(Oez et al. (1998) Biochem. Cell Biol. 76, 223-234)。
【0060】
ヒトアルブミンの結晶構造配位はBrookhaven Protein Databank (PDB 1AO6)から得、WebLab Viewer Pro v4.0(Accelrys)を用いて調べた。ヒスチジン残基に焦点を当て(これらは金属配位にとって蛋白における主な窒素供与残基であるので)、それぞれの間の距離を測定した。本発明者らは分子上1ヶ所のみがお互いから5Å以内の2本のヒスチジン側鎖を与えることを見出した。このことからHis67とHis247が亜鉛結合部位に含まれると発明者らには信じられた。この部位周辺の他の残基の同定から、Asn99とAsp99も金属結合に対する酸素リガンドを与えるのに十分接近していることが明らかとなった。Asnはその側鎖のアミド基から窒素リガンドを与え得る可能性もある。
【0061】
蛋白における金属に配位するアミノ酸側鎖のデータベース(Harding (2001) Acta Cyst. D57, 401-411;http://tanna.bch.ed.ac.uk)は他の3種の蛋白(ヒトカルシニューリン、大腸菌の5'-エンドヌクレオチダーゼおよびインゲンマメパープルホスファターゼ)が2個のHis,1個のAspおよび1個のAsn残基に結合する亜鉛を含むことを明らかにし、さらにこれが亜鉛結合にとって適切な部位であることを示唆した。本発明者らにより決定されたように金属結合の予測領域を示す図1と2を参照せよ。
【0062】
提案された結合部位への亜鉛のモデリング
亜鉛を含むアルブミンの最初のモデルは報告された結晶構造(pdb取得コード1AO6)に基づいてWeblabviewer(Accelrys)を用いて構築した。本発明者らの1D111CdNMR研究において生理条件下塩素の結合をおおいにありそうなこととするCl-濃度に共鳴シフトが依存することを認めていたので、5番目のリガンドとしてCl-を含む5配位として亜鉛部位のモデルを構築した。5番目のリガンドとして水にもう一つの可能性がある。
【0063】
亜鉛に対し幾つかの特定のパラメーターを定義した後に、TRIPOS力場を用いてジオメトリーを最適化するためエネルギー最小化のモデルをSybyl v6.8(TRIPOS Inc.)に取り込んだ。ヒスチジン(2.00Å)およびアスパルテート(2.00Å)(および水、2.06Å)に結合したZn2+に対する結合距離はHarding (2001)Acta Cyst. D57, 401-411から採用し、Asn-Zn2+相互作用に対する結合距離(2.15Å)はBrookhaven Protein Databank (pdb取得コード4KPB、IAUIおよび1TCO)から得たカルシニューリン、5'-エンドヌクレオチダーゼ、およびインゲンマメパープル酸ホスファターゼの結晶構造に基づいて推定した。Zn‐Cl結合距離に対する値はCambridge structural database (Allen and Kennard (1993) Chem. Design Autom. News 8, 31-37)から引用した。力定数はTRIPOS力場から採用した。配位数5のZn2+にとって、一定の均一な角度は期待できないので、亜鉛周辺の結合角は少しも制約されなかった。
最初のステップにおいて、亜鉛周辺のジオメトリーは亜鉛原子、4個の蛋白リガンド残基および塩素イオンのみのエネルギー最小化の200ステップによって最適化された。不適切なジオメトリーと最初のステップにおける原子運動を介して導入されたファンデルワールス接触を除くために全蛋白にエネルギー最小化の10ステップをさらに用いた。元の蛋白構造と修飾モデル間の二乗平均偏差(rmsd)値(構造差の表示である)はいずれの原子も0.13Å、リガンド残基原子のみに対して1.21Åである。
【0064】
図3は水素の無い元の構造(黒色)と亜鉛結合部位を合わせるのに比較的わずかな移動のみが必要であったことを立証している本発明者らのモデル(灰色)との間のオーバーレイを示す。その部位はアキシャル位において2個のヒスチジンとねじれた三方晶系のビピラミダルジオメトリーを示す。塩素リガンドは蛋白の外側の方向を指す。異なる出発構造を用いた追加のモデリングの試みは同様のジオメトリー部位をもたらしたが、亜鉛の反対側に塩素イオンを有する部位をもたらした。
【0065】
蛋白リガンドのみを含む四面体部位のモデルを構築する試みは、角度のねじれの適用にもかかわらず、5配位モデルに見られたねじれた三方晶系のビピラミッドに類似した、Cl-が存在していた空のエカトリアル結合部位を持つジオメトリーをもたらした。
モデリング理論を支持する実験証拠
【0066】
本発明者らはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) DXY1細胞でミュータントH67Aを発現し、イオン交換およびアフィニティクロマトグラフィーにより>95%に精製した。円偏光二色性はH67Aミュータントと野生型蛋白との間で二次構造に大きな変更のないことを明らかにした(図4)。50mMTris、pH7.1中で2モル当量の111CdCl2を用いた1.5mM組み替えヒトアルブミン(rHA)に関する111Cd-NMR研究によりそれぞれ27ppmおよび131ppm(Cd(ClO4)に比して)にピークを有する2ヶ所(AおよびB)での結合を確認した。同様の条件下でH67Aミュータントは29ppmに1本のピークを生じた(図5)。2モル当量の111Cd2+の存在下rHAへの0.5および1モル当量のZnCl2の添加は131ppmのピーク強度を低下させた(図6a)。2モル当量の111CdCl2の存在下rHAへの2および3モル当量のCuCl2の添加は部位BでのCd2+結合に影響し、37ppmに新しい111Cdピークの生成をもたらした(図6b)。CuCl21モル当量の添加はCd2+結合に影響しなかった。これはこの部位での結合飽和後にのみ生じるCd2+の置換によるN末端に対するCu2+の高い親和力によるのが最も本当らしい。これらの結果は部位BはCd2+に対するよりもZn2+に対しより高い親和力を有し、Cu2+もこの部位に競合的に結合することを示し、金属配位に対するHis67の関与をも示唆している。
【0067】
図4は天然型およびH67Aに対する円偏光二色性バンドのサインと大きさが同様なことを示している。このことは天然アルブミンと同様の二次構造を有するH67ArHAを示している。
【0068】
ペプチドと蛋白においてCu2+に配位する窒素リガンド数はこれら複合体のd‐d吸収バンドの波長に影響することが知られている。CuCl2の一部を200mMリン酸カリウム、pH7.4中rHAおよびH67Aミュータントの2mM溶液に加えた。CuCl2の最初の添加後525nmに吸収バンドが出現し、Cu2+への4N配位の特徴であるCu2+による蛋白のN末端荷重を示す。しかしながら吸収の著しい違いはそれぞれの蛋白に1モル当量のCuCl2を更に加えた後に観察された。天然蛋白は625nmに2番目の吸収バンドを生じ、ミュータントはより広いバンドを750nmに生じた(図7)。これらのバンドはそれぞれ2Nおよび1NへのCu2+の配位を示唆する(Pettit et al., J. Chem. Soc. Dalton. Trans., 3565-3570(1990))。このことはCu2+イオンがなおこの部位に結合するか(His67の関与なしに)あるいは蛋白の他の部位に結合するかどうかに関し情報を提供しないにもかかわらず、His67残基がZn2+同様Cu2+結合にとって重要なことを示している。
ミュータントアルブミンにおける金属部位のさらなる分子モデリング
【0069】
本発明者らはエネルギー最小化プロトコールを最適化し、異なる出発構造を探究することによりモデリングの方法論を改善することができた:それ故発明者らは様々なモデル間で意味のある比較を行うために野生型アルブミンについて提案された亜鉛(II)部位の再モデリングを行った。以下に結果を要約する。
【0070】
a)野生型アルブミン
新しいモデルの全体のジオメトリーは5番目のリガンドとして現在水を用いていることを別にすれば、以前のモデル(図3a)とは大きく異なっていない(全原子のrmsd:0.05Å;亜鉛部位のrmsd:0.25Å)。元の構造(pdb登録1AO6;[図3])とモデル間のrmsdは亜鉛部位の原子のみに対し0.67Åで、このことは本質的にアルブミンにおける亜鉛部位は前もって配置されていることを示唆している。
【0071】
b)モデリング研究はAsn99HisミュータントおよびAsn99Aspミュータントについても行われた
ミュータントモデルは図3c、3dおよび3eに示されている。金属フリー形での提案部位を示す図19は立体配座動態およびアロステリック相互作用において役割を果たす可能性のあるドメイン間水素結合に対する突然変異の影響を立証している。
【0072】
要約すると、モデリング研究は野生型アルブミンに関して様々な親和力で金属例えば亜鉛を結合できる及び/または他の生理学的特性を発揮できるミュータント血清アルブミンを産生できるアイデアを支持する。
【0073】
突然変異金属部位の検出
Zn(II)イオンが大抵の分光技術にとって目に見えないので、蛋白における亜鉛結合の評価は難しい。この本来の問題を回避するための最も一般的なアプローチは比較的Zn(II)に類似するCo(II)(UV/Visスペクトルスコピー)あるいはCd(II)(NMRスペクトルスコピー)のような他の金属を用いることである。別のアプローチは着色したZn(II)指示薬を使用する。発明者らは111CdNMRスペクトロスコピーおよびCu(II)を用いた滴定により得られた新しいミュータントアルブミンに関する結果を以下に述べる。
【0074】
a)ミュータントアルブミンの111CdNMR
111Cd(あるいは113Cd;両方の核が用いられる)NMR実験は、もし金属荷重蛋白が同位元素に富んだCd(II)で作ることができるなら、蛋白における金属結合を検出する比較的直接的な方法である。本研究の結果は両ミュータントの金属結合性質の興味ある改変を明らかにしている。
【0075】
i)Asn99Hisミュータント
図9と10は同じ条件下で野生型およびAsn99Aspミュータントアルブミンの1D111Cdスペクトルを比較している。
野生型rHAの場合のように、Asn99Hisミュータントの1D111Cdスペクトルにおいて2当量の111Cd2+が容易に結合することを示唆する2本のピークが観察されることを図は明らかに示している。野生型およびミュータントrHAのスペクトルにおいてピークの線幅は同等であることに注目される。ピークのケミカルシフトは80mM塩素の存在下122ppm(ピークA)と28ppm(ピークB)である。野生型rHA(131ppmと27ppm)と比較すると、金属結合部位Bは突然変異により影響されないが、一方ミュータント部位AにおけるCd(II)イオンは野生型におけるよりもやや遮蔽されていることを意味する。
【0076】
酸素の窒素ドナーによる置換が脱遮蔽をもたらすことが予測されるが、ミュータントにおけるN‐Cd結合が野生型におけるO‐Cd結合よりも短いと仮定するなら、観察された低いppm値へのピークAの移動は定性的に理解される。Asnは非常に弱いリガンドなのでこのことは合理的な仮定であり、発明者らは以前にZn‐N(His)結合に対する1.95−2.00Åに比べてO‐Zn結合は約2.15Åと推定していた。同様の傾向がCdに対しても期待される。
【0077】
発明者らはCd2rHAサンプルにZn2+を加えることによりCd2+とZn2+間の競合をも検出した。Zn2+の添加は明らかにピークAに影響するが、3当量の添加後でさえも、111CdピークAはなおスペクトルにみられる。対照的に、野生型rHAのスペクトルにおいて1モル当量のZn2+はピークAを完全に消去するのに十分であり、Cd2+は完全に置換されたことを示唆する。この知見はハード酸、ソフト酸および塩基の原理を考慮することによりある程度解釈することができる。Cd2+はZn2+よりもよりソフトな金属イオンであり、窒素は酸素よりもよりソフトなリガンドである。結合部位をよりソフトにすることは野生型rHAにおけるよりもCd2+結合を好都合にするであろう。本質的に、実験はAsn99が野生型rHAの亜鉛部位に寄与し、変異部位は実際にCd2+とZn2+に結合し得ることを示している。
【0078】
ii)Asn99Aspミュータント
図10に野生型rHAと比較したAsn99AspミュータントrHAに関する111Cd2+結合研究の結果を要約する。
Cd2+部位Bの再度の占有は突然変異により影響されないことは明らかである(野生型のスペクトルにおける27ppmに比べた28ppm)。部位Bは未だ同定されていないが、蛋白のこの特定部分の折りたたみに突然変異は影響しないと結論される。
驚くことに、111Cdスペクトル(図10の説明を参照)に対する発明者らの通常の条件においてピークAは検出されなかった。ケミカルシフトスケールの拡張は何らそれ以上のピークを示さなかった。十分な111Cdが利用できることを保証するために、2モル当量の111Cdを加えた。このサンプルのスペクトルにおいて、さらに2本のピークが示唆されるが、上昇温度(310K)においてのみ2本の新しい非常に幅の広い共鳴(ピークBに対する約150−200Hzに比べ、ほぼ2000Hzの線幅を持つ)が確かに検出された。このことは化学的な交換現象がスペクトルに影響することを示唆している。過剰のCd(II)にもかかわらず、おそらくTrisがCd2+に結合しそれを溶解させる事実によりNMRチューブ中に沈殿は見られなかった。Cd/Tris複合体に対するケミカルシフトは106ppm(295Kで)で、これは図10のピークCに対して観察された値でもある。310KのスペクトルにおけるピークA'は十分に1個の窒素を持つ111Cd部位の範囲および3個と5個の酸素ドナー間の67ppmのシフトを有する(Coleman, J.A., Methods Enzymol. 227, 16-43 (1993); Oez, G.L., Pountney, D.L. & Armitage, I.M. Biochem. Cell Biol.-Biochim. Biol. Cell. 76, 223-234 (1998)。発明者らは利用可能な111Cdは変異結合部位A'とTris(あるいは二者択一的に蛋白上の非特異的部位)間の中間の(295K)あるいは遅い交換(310K)にあると仮定を立てている。
【0079】
b)UV‐Visスペクトロスコピーによりモニターした銅(II)の結合
野生型rHAへのCu2+の添加はin vitroのCu2+がこの亜鉛部位に結合できることをも示す111CdピークAの消失をもたらすことを以前に示した(図6bも参照)。
発明者らはUV‐Visスペクトロスコピーにより野生型およびミュータントアルブミンのアポ型でCu2+の滴定を行った、なぜなら定量的評価は直接的でないにもかかわらず、このような実験は金属結合について迅速な定性的情報を与えるからである。図11に示す実験はAsn99ミュータントへのCu2+結合は野生型への結合とは異なることを示している。それらはHis67AlaミュータントrHAとの比較から判るように第二の部位でCu2+と結合することは明らかである。両ミュータントの吸収プロフィールはお互いに異なり、変異リガンドの関与を意味する。
このように、突然変異は主たるZn2+部位であると知られている第二のCu2+部位に実際に影響を及ぼす。
【0080】
5.ミュータントアルブミンの1H-NMR
発明者らは1D and 2D 1H-NMRスペクトルを得、図14は検討したミュータントすべての1D 1Hスペクトルの芳香族化合物の領域を比較した。図15は亜鉛の有無による野生型の2D TOCSYスペクトルの関連部分を含む。検討したすべてのミュータントに対し同様のスペクトルが得られた(データは示していない)。いずれのスペクトルも全体として比較的野生型のスペクトルに類似している。このことはいかなる突然変異も少なくともアポ型における蛋白の折りたたみに対して劇的な影響を及ぼしていないを示している。しかしながら解釈し得る微妙な変化がある。
【0081】
特に、野生型NMRスペクトルのピーク1と3は考慮した突然変異(His67Ala,Asn99AspおよびAsn99His)のどれによっても影響を受ける。それ故これらは残基His67とHis247に帰属することができるとの仮説が立てられる。
結論:野生型およびHis67Ala,Asn99Asp,およびAsn99HisミュータントrHAの1D and 2D 1H-NMRスペクトルの分析は残基His67、Asn99、His247およびAsp249により形成される提案結合部位と矛盾しない。His67Alaの突然変異は野生型のスペクトルにおける2本の交差ピークに影響を及ぼし、変異残基は別のHis(His247)の近くにあるとの考えと矛盾しない。Asn99の突然変異も同じ2本の野生型交差ピークに影響を及ぼし、上に述べた3残基が実際に互いに密接に接していることを示唆する。交差ピーク1とAはHis247に交差ピーク3とBはHis67に帰属される。
【0082】
6.1H-NMR:結合イベントに対する実態分析プローブとしてのヒスチジンHε1共鳴
His67とHis247に相当する2本のピークを帰属した後に、亜鉛結合に関しこれら残基に影響があるかどうかを調べることが重要である。
a)亜鉛結合
野生型アルブミンへの1モル当量のZn2+の添加は1Dおよび2Dスペクトルから判断されるようにHis残基の動態に劇的な結果をもたらす。
幾つかのピークは大きく影響され、一方ピーク4,6,7,8および11は未変化のままである。ピーク1と3はもはや観察されないが、ピーク5も消失し、ピーク2および9/10は強度が低下する。
【0083】
ピークがシフトするよりもむしろ消失する事実はZn2+結合の2つの影響による可能性がある。残基が亜鉛結合の際より硬くなる、それは線幅の広がりをもたらすであろう、あるいは亜鉛(およびこのようにそのリガンド)がフリーと結合状態の間で交換する、そしてこの化学的な交換現象も線幅の広がりをもたらす。いずれの場合においても、亜鉛結合は1H-NMRによりモニターでき、残基His67とHis247への影響、直接あるいは間接に他の未だ同定されていないヒスチジン残基に対する影響をも確認することができる。
Asn99AspおよびAsn99Hisに対する亜鉛結合
1モル当量のZn(II)を含む1mMNMRの両サンプルは約30分間(1Dスペクトルを取るのに要する時間)310Kに保った後沈殿を生じた。サンプルを磁石に導入する前に沈殿物は観察されなかった、そしてサンプルを終夜279Kに保った後、沈殿物は再び溶解した。観察された影響はAsn99Hisミュータントに対するよりもAsn99Aspミュータントで大きかった。現在発明者らはおそらくドメイン間の相互作用に関連した立体配座動態に亜鉛が深く影響すると推測できるだけである。この考えは野生型で得られた観察とも矛盾しない。Asn99Aspミュータントサンプルも数時間310Kに保ったが、111Cdサンプルによる沈殿は観察されなかった。
【0084】
b)野生型rHAに対する脂肪酸結合の影響
アルブミンは血漿中他の不溶の長鎖脂肪酸の輸送に重要な役割を演じている。正常な条件下で、1−2の脂肪酸分子はアルブミンに結合するが、運動中,この数は4に上昇する(Peters, T., Jr. All About Albumin: Biochemistry, Genetics, and Medical Applications. Academic Press, New Your (1995))。アルブミンのX線構造は5(Curry, S., M,andelkow, H., Brick, P. & Franks, N. Nat. Struct. Biol. 5, 827-835(1998)と10(Bhattacharya, A.A., Groene, T. & Curry, S. J. Mol. Biol. 303, 721-732(2000)の間の脂肪酸結合部位を示すが、in vivoで観察された最大数は6である。アルブミンへの脂肪酸の結合は13C (Hamilton, J.A., Era, S., Bhamidipati, S.P. & Reed, R.G. Proc. Natl. Acd. Sci. U.S.A. 88, 2051-4 (1991)および1H-NMR(Oida, T. J. Biochem. (Japan) 100, 1533-42 (1986)を含む種々の技術を用いて過去に広く研究された。
多数のHis Hε1ピークは大体は脂肪酸結合により影響されることが直接図17で見られる。このことは相互に作用する亜鉛と脂肪酸結合の影響をモニタリングする手がかりを与える。
【0085】
7.相互に作用する金属/脂肪酸結合のプローブとしての111Cd-NMR
オクタノエート飽和rHAサンプルを用いた最初の111Cd-NMRスペクトロスコピー実験はそのようなサンプルのスペクトルにピークAがないことを明らかにした。
2モル当量の111Cd2+を含む徹底的に透析したサンプル(発明者らはそのような透析サンプルあるいはChen‐脱脂標品の1D 111Cd-NMRスペクトル間で認識し得る差のないことを確認もしていた)で始め、オクタン酸カリウムの当量を加えた。図Xは滴定研究の結果を示す。
【0086】
最も著しい知見はピークAは始めに減少するが、数時間後に再び出現することである。脂肪酸と金属イオンの再分配に導く遅い平衡によると思われる。ピーク強度の低下がサンプルの混合後直接観察できるように(少なくとも2あるいは3当量の追加に対し;その後の追加において動態は明らかにスローダウンする)、部位F2への脂肪酸の最初の結合は比較的早いことは明らかである。ピークAが再出現するので、その後脂肪酸分子は熱力学的により好ましい結合部位へ移動すると推測できる。部位F2から脂肪酸の解離は金属結合部位の再形成をもたらすと期待され、利用可能なCd2+は再び結合できる。この方法は4当量まで繰り返すことができるので、部位F2よりも高い熱力学的安定性を有するすべての脂肪酸結合部位は明らかに飽和される。5当量のオクタノエートを含むサンプルの最終スペクトルにおいて、ピークAはもはや存在しない。
本研究の重要な結果は脂肪酸の結合が金属結合を妨げるのみならず、金属と脂肪酸の結合は相互に作用する過程であり、脂肪酸陰イオンの結合は結局結合した金属イオンの解離を導くと思われる結論である。
【0087】
8.細胞の発現
アルブミンは虚血および低酸素による肝傷害に対して肝組織を保護することが知られており、その効果はアルブミンの金属結合能に起因する(Strubelt, O., Younes, M., Li, Y. Pharmacology and Toxicology 75, 280-284(1994)。発明者らは肝細胞の培養に際し亜鉛、組み換えヒト血清アルブミンおよびミュータントアルブミンの効果を探究するためにin vitro実験を開発した。
【0088】
ヒト肝細胞株WRL‐68を用いた。その細胞はDulbecco's最小培地で生育した。His67AlaミュータントアルブミンのrHAの効果を研究するために、600μMのrHAあるいはHis67Alaミュータントを培地に加えた。Zn(II)の効果は培地に60,300、ならびに600μMのZnCl2を加えることにより調べた。
これらの最初の実験は細胞数を数えることおよびトリパンブルーを用いて細胞の生存力を評価することにより行った。それらは細胞の生存力と接着に対する亜鉛濃度上昇の明瞭なネガティブな効果を示唆した、それは野生型アルブミンの添加によって救われたが、His67Alaミュータントは細胞毒であり細胞接着を阻害することも示唆した。
【0089】
その後、アルブミン添加に先立ち細胞層を生成するために、野生型あるはミュータントアルブミン(600μM)の有無下様々な用量(60, 300, and 600μM)のZnを追加したダルベッコ最小イーグル培養液で48時間インキュベートする前にヒトWRL‐68肝細胞を18時間培養した。他に、生育条件(37C,5%CO2)は以前の実験と同じであった。発明者らは2つの新しいミュータント、Asn99AspとAsn99Hisにも研究を拡張した。
【0090】
図18のグラフはヒト肝細胞の亜鉛と様々なミュータントアルブミンを組み合わせて用いた効果を要約している。肝細胞は12穴プレートの層で生育し、細胞数と生存力は層と培養液の両方において測定した。いずれの実験も3回行い、誤差のバーは個々の実験間の標準偏差に相当する。
【0091】
図18a〜18dに示した結果から以下の結論を引き出すことができる。
a)Zn2+濃度の上昇は細胞死と接着の喪失をもたらすことが確認された。
b)野生型rHAは細胞により非常に良く許容される;対照における細胞数と野生型rHAを含む細胞数との間に生育あるいは接着の有意な差はない。
c)Zn2+の有害な効果は600μMの野生型rHAによって逆転される。
d)Zn2+の追加なしにHis67Alaミュータントは細胞接着に対し劇的な効果があり、細胞の生存力は層あるいは培養液のいずれにおいても傷害されているようには見えないが、大多数の細胞の培養液中での浮遊をもたらす。
e)驚くことにZn2+の追加は細胞接着に関しHis67Alaのネガティブ効果を明らかに逆転させ,もし単独ならば同じ傷害効果を発揮することはない。
f)Asn99Aspミュータントアルブミンの添加はZn2+の追加量とは無関係に、生育細胞の増加(約+20%)をもたらす。
g)Asn99HisミュータントrHAの添加は最も劇的な接着の喪失を誘発する。His67AlaミュータントrHAとは逆に、Zn2+の追加に有益な効果はない。細胞の生存力は影響されないようである。
要約すると、発明者らは亜鉛部位リガンドに対する突然変異は蛋白の物理化学的性質および生存細胞に対しても影響が及ぶことを示した。観察された様々な効果に対する理由は未だ立証されていないが、発明者らは理論に結びつけることを望むことなく、立体配座の動態、ドメイン/ドメイン相互作用、蛋白/蛋白相互作用ならびにおそらく蛋白/膜相互作用が本観察のほとんどの原因であると推測する。
【0092】
これらの研究結果として金属部位の周辺の残基の突然変異によりZn2+のような金属イオンに対する親和力の低下したあるいは増強した新規なミュータントアルブミンを作ることが可能である。これらは金属に結合できない(あるいは弱くしか結合できない)および金属親和力の低下を生じている側鎖に金属を結合させることができる側鎖の突然変異を含む。
なお、下表は、哺乳類アルブミン間のアミノ酸配列の比較である。突然変異を起こしている残基を強調している。N末端アミノ酸(残基番号1)前の枠内のアミノ酸はプレアルブミン配列の一部で、翻訳後開裂されアルブミン自身を与える。配列のアクセッション番号はヒト、P02768(配列番号2);アカゲザル、M90463(配列番号3);イヌ、CAB64867(配列番号4);ネコ、P49064(配列番号5);ウシ、P02769(配列番号6);ヒツジ、P14639(配列番号7);ブタ、ABPGS(配列番号8);ウサギ、P49065(配列番号9)およびラット、P02770(配列番号10)である。
【0093】
【表1(a)】
【表1(b)】
【表1(c)】
【表1(d)】
【表1(e)】
【表1(f)】
【表1(g)】
【表1(h)】
【表1(i)】
【表1(j)】
【表1(k)】
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】PDB 1AO6で報告されているように、ここで明らかにされ、強調された金属結合部位を有するヒト血清アルブミンの三次元構造のモデルを示す模式図。
【図2】図2は提案した亜鉛結合部位内および周辺に位置するより詳細なアミノ酸側鎖を示す模式図。
【図3(a)】野生型アルブミンにおける亜鉛部位の最初のモデルをアポ‐rHA(1AO6)と比較して示す模式図。
【図3(b)】野生型ヒト血清アルブミンの亜鉛部位の再計算した、改良モデルをアポ‐rHA(1AO6)と比較して示す模式図(亜鉛部位の力場エネルギー:59.1kcal/mol。)。
【図3(c)】Asn99Hisミュータントの金属部位モデルを野生型ZnrHA(緑色)と比較して示す模式図(亜鉛部位に対する力場エネルギーは野生型アポ:0.54Å;野生型Znアルブミン:0.56Åに対し83.2kcal/mol.rmsdである。)。
【図3(d)】Asn99Aspミュータントの金属部位モデルを示す模式図。
【図3(e)】亜鉛フリー野生型およびミュータントアルブミンのモデルにおける可能な亜鉛部位でのドメイン間H結合を示す。a:野生型;b:脂肪酸を負荷した野生型;c:Asn99Hisミュータントモデル;d:Asn99Aspミュータントモデルを示す模式図。
【図4】野生型(実線)およびH67Aアルブミン(点線)の円偏光二色スペクトルを示すグラフ。
【図5】2モル当量の111CdCl2による野生rHAおよびH67ArHAの111Cd-NMRを示すチャート。
【図6】a)亜鉛およびb)銅の存在下2モル当量の111CdCl2によるrHAの111Cd-NMRを示すチャート。
【図7】0.2当量ステップで(ボトムからトップ)0.2から2モル当量のCuCl2による(a)天然rHAおよび(b)H67ArHAのUV‐可視吸収スペクトルを示すグラフ。
【図8】亜鉛結合の無いasn99asnミュータントにおける可能な亜鉛結合部位を示す模式図(右側のオーバーレイにおいて赤紫色で示したのが野生型構造である、変異部位の力場エネルギー(101.4kcal/mol)は野生型(55.6kcal/mol)およびasn99his部位(75.6kcal/mol)のそれよりわずかに大きい。)。
【図9】2モル当量の111Cd2+(条件:1mM蛋白、50mMTris-Cl、50mMNaCl、295K)による組み換えアルブミン(野生型およびAsn99Hisミュータント)の1D111Cd-NMRスペクトルを示すチャート。
【図10】2モル当量の111Cd2+(条件:1mM蛋白、50mMTris-Cl、50mMNaCl、もし他に述べなければ295K)による組み換えアルブミン(野生型およびAsn99Aspミュータント)の1D111Cd-NMRスペクトルを示すチャート。
【図11】銅(II)による1mMrHAの滴定を示すグラフ(pH7.4、0.2Mリン酸カリウム。CuCl2はそれぞれのケースで0.2当量部に加えられた。アルブミンの吸収に対し補正した差スペクトルを示す。)。
【図12】野生型およびミュータントアルブミンのUV‐Vis差スペクトルに対する様々な量のCu2+の影響の直接比較を示すグラフ。
【図13】野生型rHAのdeconvoluted FT-ICR-MSスペクトル(8 mM NH4Ac、25%メタノール、1%酢酸中20μM。小分子付加体の検出を可能にする狭い線形(half‐height幅約25Da)に注目。)。
【図14】組み替えアルブミンミュータントの高分解能1D 1H-NMRスペクトルの測定結果を示すチャート(順に、組み替えアルブミンミュータントの高分解能1D 1H-NMRスペクトルの測定結果、HisHδ2/Hε1交差ピークを示す野生型、His67Ala,Asn99AspおよびAsn99AsprHAそれぞれの2DTOCSY NMRスペクトルの一部を示す。いずれのサンプルも50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl中1mMで、いずれの実験も310Kで行われた。pH値は7.28(N99H)と7.40(H67A)の間で変化し、個々のプロトンに対するケミカルシフトのわずかな違いを説明する。観察できるHε1プロトンは数字を付し、ケミカルスフトの標準として加えた蟻酸塩を表す)。
【図15】ヒスチジンHδ2/Hε1交差ピークを示す1モルの当量Zn2+を加えた(pH*= 7.37)1Dおよび2DTOCSYスペクトルの一部を示すグラフ。
【図16】オクタノエートの量を変えた野生型rHA(50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, pH* = 7.26中1mM)の高分解能1DNMRスペクトルの一部を示すチャート(右図はヒスチジンHε1プロトンのケミカルシフトに対するオクタノエートの増量効果を示す)。
【図17(a)】オクタノエートによるCd2rHAの滴定を示すチャート(条件:1mMrHA、2モル当量111CdCl2, 50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, 10% D2O, pH 7.1, 298 K, 10 mm BBOプローブ。1スペクトルの取得に一般に4時間を要する。
【図17(b)】オクタノエートによるCd2rHAの滴定を示すチャート(条件:1mMrHA、2モル当量111CdCl2, 50 mM Tris-Cl, 50 mM NaCl, 10% D2O, pH 7.1, 298 K, 10 mm BBOプローブ。1スペクトルの取得に一般に4時間を要する。図17bのグラフは4当量に対する時間経過を示す[各スペクトルの取得に4時間かかるので、各スペクトルの中間点(すなわち、実験開始後2時間)は平均タイムポイントとして取得される]。
【図18(a)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた層中の細胞数を示すグラフ。
【図18(b)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた層中の死亡細胞の百分率を示すグラフ。
【図18(c)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた培地中の細胞数を示すグラフ。
【図18(d)】天然およびミュータント血清アルブミンを用いた培地中の死亡細胞の百分率を示すグラフ。
【図19】H結合を介するドメインI‐ドメインII接触面に含まれると同定された突然変異体を示す模式図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミュータントの由来となった天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すように突然変異を生じた単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項2】
他の生理学的特性が、培養における基質に対する細胞接着、細胞の生存力の百分率および/あるいは細胞の発育における変化である請求項1に記載のミュータント。
【請求項3】
実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミン:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【請求項4】
ミュータントが誘導される天然配列に関して上記ミュータント血清アルブミンが金属結合親和力または他の生理学的特性の改変を示すように灰色の濃淡により識別された残基の少なくとも1つが突然変異した実質上表1に示される配列の1つからなる単離された哺乳類のミュータント血清アルブミン。
【請求項5】
ミュータントが誘導される天然配列と少なくとも90%同一である請求項3または4に記載の単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項6】
それが誘導される天然血清アルブミンに関して全体の折りたたみが実質上同様のものである先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項7】
金属結合親和力の改変が金属結合親和力の減少または増強である先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項8】
金属が亜鉛である先行する請求項に記載のミュータント。
【請求項9】
最後に以下の突然変異の1つからなる請求項3〜8のいずれか1つに記載のミュータント:
X1:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X2:A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D E, H
X3:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X4:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, E, H
X5:C, D, E, H
X6:C, D, E, H
X7:C, D, E, H
X8:A, C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X9:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【請求項10】
X1,X2,X3あるいはX4の少なくとも1つの突然変異からなる請求項3〜8のいずれか1つに記載のミュータント。
【請求項11】
突然変異体Asn99His、Asn99AspまたはHis67Alaからなるミュータントヒト血清アルブミン。
【請求項12】
先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミンをコードすることができる核酸配列。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセット。
【請求項14】
先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセット及びその医薬上許容される担体からなる医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセットからなる細胞培養液。
【請求項16】
細胞接着および/または細胞発育特性へ影響を及ぼすための細胞培養における請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミン、核酸あるいは発現カセットの使用。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミンの存在下細胞培養における培養細胞工程からなる細胞培養における細胞の発育特性を改変する方法。
【請求項18】
下記の工程からなるミュータントが誘導された天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すミュータント血清アルブミンを得る方法:
a)核アルブミンポリペプチドをコードする核酸配列を用意する工程;
b)前記核酸を改変し、前記改変核酸配列が前記天然アルブミンに関して少なくとも1つの突然変異からなるミュータントアルブミンポリペプチドをコードするように前記核酸に対する突然変異誘発反応を実施する工程;
c)前記上記ミュータントアルブミンポリペプチドの発現および前記ュータントアルブミンが金属結合および/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを検出する工程。
【請求項19】
ミュータントアルブミンが表1に示される残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる請求項18に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミン:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【請求項2】
他の生理学的特性が培養における基質に対する細胞接着、細胞の生存力の百分率および/またはは細胞の成育における変化であ請求項1に記載のミュータント。
【請求項3】
ミュータントが誘導される天然配列に関して上記ミュータント血清アルブミンが金属結合親和力または他の生理学的特性の改変を示すように灰色の濃淡により識別された残基の少なくとも1つが突然変異した実質上表1に示される配列の1つからなる単離された哺乳類のミュータント血清アルブミン。
【請求項4】
ミュータントが誘導される天然配列と少なくとも90%同一である先行するいずれかの請求項に記載の単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項5】
それが誘導される天然血清アルブミンに関して全体の折りたたみが実質上同様のものである先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項6】
金属結合親和力の改変が金属結合親和力の減少または増強である先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項7】
金属が亜鉛である先行するいずれかの請求項に記載のミュータント。
【請求項8】
最後に以下の突然変異の1つからなる先行するいずれかの請求項に記載のミュータント:
X1:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X2:A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D E, H
X3:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X4:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, E, H
X5:C, D, E, H
X6:C, D, E, H
X7:C, D, E, H
X8:A, C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X9:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【請求項9】
X1, X2, X3あるいはX4の少なくとも1つの突然変異からなる先行するいずれかの請求項に記載のミュータント。
【請求項10】
突然変異体Asn99His、Asn99AspまたはHis67Alaからなるミュータントヒト血清アルブミン。
【請求項11】
先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミンをコードすることができる核酸配列。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセット。
【請求項13】
先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセット及びそれらの医薬上許容される担体からなる医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセットからなる細胞培養液。
【請求項15】
細胞接着及び/または細胞発育特性へ影響を及ぼすための細胞培養における請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸あるいは発現カセットの使用。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミンの存在下、細胞培養における培養細胞工程からなる細胞培養における細胞の発育特性を改変する方法。
【請求項17】
下記の工程からなるミュータントが誘導された天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すミュータント血清アルブミンを得る方法:
a)核アルブミンポリペプチドをコードする核酸配列を用意する工程;
b)前記核酸を改変し、前記改変核酸配列が前記天然アルブミンに関して少なくとも1つの突然変異からなるミュータントアルブミンポリペプチドをコードするように前記核酸に対する突然変異誘発反応を実施する工程;
c)前記上記ミュータントアルブミンポリペプチドの発現および前記ミュータントアルブミンが金属結合および/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを検出する工程。
【請求項18】
ミュータントアルブミンが表1に示される残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる請求項17に記載の方法。
【請求項1】
ミュータントの由来となった天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すように突然変異を生じた単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項2】
他の生理学的特性が、培養における基質に対する細胞接着、細胞の生存力の百分率および/あるいは細胞の発育における変化である請求項1に記載のミュータント。
【請求項3】
実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミン:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【請求項4】
ミュータントが誘導される天然配列に関して上記ミュータント血清アルブミンが金属結合親和力または他の生理学的特性の改変を示すように灰色の濃淡により識別された残基の少なくとも1つが突然変異した実質上表1に示される配列の1つからなる単離された哺乳類のミュータント血清アルブミン。
【請求項5】
ミュータントが誘導される天然配列と少なくとも90%同一である請求項3または4に記載の単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項6】
それが誘導される天然血清アルブミンに関して全体の折りたたみが実質上同様のものである先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項7】
金属結合親和力の改変が金属結合親和力の減少または増強である先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項8】
金属が亜鉛である先行する請求項に記載のミュータント。
【請求項9】
最後に以下の突然変異の1つからなる請求項3〜8のいずれか1つに記載のミュータント:
X1:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X2:A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D E, H
X3:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X4:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, E, H
X5:C, D, E, H
X6:C, D, E, H
X7:C, D, E, H
X8:A, C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X9:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【請求項10】
X1,X2,X3あるいはX4の少なくとも1つの突然変異からなる請求項3〜8のいずれか1つに記載のミュータント。
【請求項11】
突然変異体Asn99His、Asn99AspまたはHis67Alaからなるミュータントヒト血清アルブミン。
【請求項12】
先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミンをコードすることができる核酸配列。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセット。
【請求項14】
先行する請求項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセット及びその医薬上許容される担体からなる医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセットからなる細胞培養液。
【請求項16】
細胞接着および/または細胞発育特性へ影響を及ぼすための細胞培養における請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミン、核酸あるいは発現カセットの使用。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1つに記載のミュータント血清アルブミンの存在下細胞培養における培養細胞工程からなる細胞培養における細胞の発育特性を改変する方法。
【請求項18】
下記の工程からなるミュータントが誘導された天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すミュータント血清アルブミンを得る方法:
a)核アルブミンポリペプチドをコードする核酸配列を用意する工程;
b)前記核酸を改変し、前記改変核酸配列が前記天然アルブミンに関して少なくとも1つの突然変異からなるミュータントアルブミンポリペプチドをコードするように前記核酸に対する突然変異誘発反応を実施する工程;
c)前記上記ミュータントアルブミンポリペプチドの発現および前記ュータントアルブミンが金属結合および/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを検出する工程。
【請求項19】
ミュータントアルブミンが表1に示される残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる請求項18に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に以下のアミノ酸配列(配列番号1)からなる単離されたミュータントヒト血清アルブミン:
DahksevahrfkdlgeenfkalvliafaqX5lqqcpfedhvkLvnevtefaktcvadesaencdkslX1tlfgdklctvatlretygemadccakqeperx2X8cfX6qhkddnpnlprlvrpevdvmctafhdneetflkkylyeiarrX9pyfyapellffakrykaafteccqaadkaacllpkldelrdegkassakqrlkcaslqkfgerafkawavarlsqrfpkaefaevsklvtdltkvX10TEccX3X7X4llecaddradlakyicenqdsissklkeccekplleksX11ciaevendempadlpslaadfveskdvcknyaeakdvflgmflyeyarrhpdysvvlllrlaktyettlekccaaadphecyakvfdefkplveepqnlikqncelfeqlgeykfqnallvrytkkvpqvstptlvevsrnlgkvgskcckhpeakrmpcaedylsvvlnqlcvlhektpvsdrvtkccteslvnrrpcfsalevdetyvpkefnaetftfhadictlsekerqikkqtalvelvkhkpkatkeqlkavmddfaafvekcckaddketcfaeegkklvaasqaalgl
(上記配列中、X1はH以外;X2はN以外、X3はH以外、X4はD以外;X5はY以外;X6はL以外;X7はG以外、X8はE以外、X9はH以外、X10はH以外およびX11はH以外であり、前記ミュータントは天然ヒト血清アルブミンに関して金属結合親和力の改変を示す)。
【請求項2】
他の生理学的特性が培養における基質に対する細胞接着、細胞の生存力の百分率および/またはは細胞の成育における変化であ請求項1に記載のミュータント。
【請求項3】
ミュータントが誘導される天然配列に関して上記ミュータント血清アルブミンが金属結合親和力または他の生理学的特性の改変を示すように灰色の濃淡により識別された残基の少なくとも1つが突然変異した実質上表1に示される配列の1つからなる単離された哺乳類のミュータント血清アルブミン。
【請求項4】
ミュータントが誘導される天然配列と少なくとも90%同一である先行するいずれかの請求項に記載の単離されたミュータント血清アルブミン。
【請求項5】
それが誘導される天然血清アルブミンに関して全体の折りたたみが実質上同様のものである先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項6】
金属結合親和力の改変が金属結合親和力の減少または増強である先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン。
【請求項7】
金属が亜鉛である先行するいずれかの請求項に記載のミュータント。
【請求項8】
最後に以下の突然変異の1つからなる先行するいずれかの請求項に記載のミュータント:
X1:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X2:A, F, G, I, K, L, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D E, H
X3:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, D, E
X4:A, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y, C, E, H
X5:C, D, E, H
X6:C, D, E, H
X7:C, D, E, H
X8:A, C, F, G, H, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X9:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X10:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
X11:A, D, E, F, G, I, K, L, N, P, Q, R, S, T, V, W, Y
【請求項9】
X1, X2, X3あるいはX4の少なくとも1つの突然変異からなる先行するいずれかの請求項に記載のミュータント。
【請求項10】
突然変異体Asn99His、Asn99AspまたはHis67Alaからなるミュータントヒト血清アルブミン。
【請求項11】
先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミンをコードすることができる核酸配列。
【請求項12】
請求項11に記載の核酸配列に機能的にリンクしたプロモーターからなる発現カセット。
【請求項13】
先行するいずれかの請求項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセット及びそれらの医薬上許容される担体からなる医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸配列または発現カセットからなる細胞培養液。
【請求項15】
細胞接着及び/または細胞発育特性へ影響を及ぼすための細胞培養における請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミン、核酸あるいは発現カセットの使用。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のミュータント血清アルブミンの存在下、細胞培養における培養細胞工程からなる細胞培養における細胞の発育特性を改変する方法。
【請求項17】
下記の工程からなるミュータントが誘導された天然アルブミンに関して金属結合親和力および/または他の生理学的特性の改変を示すミュータント血清アルブミンを得る方法:
a)核アルブミンポリペプチドをコードする核酸配列を用意する工程;
b)前記核酸を改変し、前記改変核酸配列が前記天然アルブミンに関して少なくとも1つの突然変異からなるミュータントアルブミンポリペプチドをコードするように前記核酸に対する突然変異誘発反応を実施する工程;
c)前記上記ミュータントアルブミンポリペプチドの発現および前記ミュータントアルブミンが金属結合および/または他の生理学的特性の改変を示すか否かを検出する工程。
【請求項18】
ミュータントアルブミンが表1に示される残基X1〜X11に対する少なくとも1ヶ所の突然変異からなる請求項17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図3(e)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図18(c)】
【図18(d)】
【図19】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図3(d)】
【図3(e)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17(a)】
【図17(b)】
【図18(a)】
【図18(b)】
【図18(c)】
【図18(d)】
【図19】
【公表番号】特表2006−515156(P2006−515156A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−523941(P2004−523941)
【出願日】平成15年7月28日(2003.7.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003199
【国際公開番号】WO2004/011499
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(505066349)ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・エディンバラ (6)
【出願人】(505066350)デルタ・バイオテクノロジー・リミテイッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月28日(2003.7.28)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003199
【国際公開番号】WO2004/011499
【国際公開日】平成16年2月5日(2004.2.5)
【出願人】(505066349)ユニバーシティ・コート・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・エディンバラ (6)
【出願人】(505066350)デルタ・バイオテクノロジー・リミテイッド (1)
【Fターム(参考)】
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