説明

新規なインペインティング技術及び部分的収集のモザイク処理を介し虹彩スキャンを再構成する方法

虹彩認識のための虹彩スキャンを再構成する方法及びシステムが提供される。虹彩の複数の虹彩収集画像が受信される。虹彩の1つの虹彩画像が、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて再構成される。複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを1つの虹彩画像に合成するため、モザイク処理が利用されてもよい。PDEベース及び模範ベース技術を含むインペインティング方法が、虹彩画像の欠落情報のエリアを充填するのに利用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の構成は、バイオメトリックシステムに関し、より詳細には新規なインペインティング技術(inpainting technique)及び部分的な虹彩収集画像のモザイク処理を利用した虹彩スキャンの再構成に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオメトリックシステムは、個人に特有の特徴に基づき各個人を識別するのに利用される。バイオメトリックは、セキュリティや科学捜査を含む多数のアプリケーションにおいて有用である。いくつかの物理的なバイオメトリックマーカーは、顔の特徴、指紋、掌形、虹彩及び網膜スキャンを含む。バイオメトリックシステムは、データベースに照会することによってユーザを認証し、又はサンプリングデータの身元を決定することができる。
【0003】
バイオメトリックシステムの利用について多くの効果がある。大部分のバイオメトリックマーカーは、大部分の個人に存在し、個人間で一意的なものであり、個人の生涯の通じて永続的なものであり、容易に収集可能である。しかしながら、これらのファクタは保障されるものでない。例えば、外科的変更は、同一人から以前に収集されたものと一致しないように、バイオメトリック特徴を変更するのに利用される。さらに、異なるバイオメトリック特徴は、経時的に変化しうる。
【0004】
虹彩スキャンは、最適条件の下でスキャンが実行されるとき、バイオメトリック識別の非侵襲的でロウバストな形態であると考えられる。各虹彩は、胚発育中にランダムに形成される一意的な虹彩パターンを有する。虹彩パターンは、個人の生涯において安定的なものである。虹彩の特徴は、クリプトフックス(crypts fuchs)、乳頭ラフ(papillary ruff)、円形の収縮襞(circular contraction fold)及び虹彩の底部のクリプトを含む、支質(stroma)、瞳孔括約筋(sphincter of a pupil)、前縁層(anterior border layer)を含む。虹彩認識は、カメラ技術を用いて虹彩の詳細かつ複雑な構造の画像を生成する。虹彩スキャンは、眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正眼鏡類によってほとんど影響を受けない。
【0005】
虹彩スキャンは、1対多識別又は一対一照合において利用されてもよい。照合システムは、個人の主張された身元を確認又は拒絶する。識別システムでは、個人の身元が格納されているバイオメトリックデータのデータベースとバイオメトリックリーディングとを比較することによって決定される。
【0006】
構築されると、虹彩スキャンの解析のための多数の方法が存在する。典型的には、解析アルゴリズムは、キャプチャ画像の瞳孔と虹彩のほぼ同心の外側境界を特定する。その後、虹彩を構成する画像部分が処理され、識別に必要な情報を保持するデジタル表現を生成する。虹彩識別システムは、良好な虹彩スキャンとでさえ干渉しうる実際上の問題を処理する必要がある。例えば、まぶたやまつげは、処理された虹彩表現から排除される必要がある。さらに、目の球状の性質は、予測及び説明される必要がある鏡面反射を生じさせる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
個人を特定するため虹彩スキャンの有用性にも関わらず、その技術は制約を有している。特に、虹彩認識に適したクオリティの虹彩スキャンの収集は、それのアプリケーションを限定する。クオリティ虹彩スキャンの収集は、距離を置いて実行することが困難である。カメラを見る対象者の協力が、虹彩スキャンのクオリティに大きく影響を与える。虹彩スキャンは、非接触キャプチャ及び照会技術である。それらは、典型的には、協力的な対象者から取得されるが、空港などにおいて秘かに収集可能である。これらの虹彩スキャンは、かなり低いクオリティ、解像度及び情報コンテンツを有する可能性がある。さらに、これらの虹彩スキャンは、カメラに関して軸外で取得される可能性がある。ある照明状態は、角膜の反射面により生じるグレアを誇張し、虹彩解析に用いられる詳細を妨害する。さらに、一部の虹彩認識システムは、顔の高解像度写真を提示することによって通過することが可能である。虹彩スキャンがクオリティバイオメトリック識別を提供可能な状態の範囲を増加させ、確実な虹彩識別が以前に実現できなかった状況において利用することを可能にすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、虹彩認識のための虹彩スキャンを再構成する方法及びシステムに関する。虹彩の複数の虹彩収集画像が受信される。虹彩の1つの虹彩画像は、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて再構成される。虹彩収集画像は、虹彩のパーシャル画像を重ね合わしたものであってもよい。
【0009】
本発明の他の態様によると、虹彩の単一の虹彩画像の再構成はさらに、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを単一の虹彩画像にモザイク処理することを含む。モザイク処理は、虹彩の少なくとも1つの構造的特徴を用いて実行されてもよい。虹彩の少なくとも1つの構造的特徴は、瞳孔の構造、支質、括約筋、クリプトフックス、乳頭ラフ、円形の収縮襞及び前記虹彩の底部のクリプトからなる群から選ばれてもよい。少なくとも2つの虹彩収集画像がレジスタリングされる。レジスタリングされた画像は、虹彩の重複する構造的特徴に基づき合成されてもよい。
【0010】
本発明の他の態様によると、虹彩の単一の虹彩画像の再構成はさらに、少なくとも1つの虹彩収集画像における欠落情報の少なくとも1つのエリアを特定し、インペインティング技術を用いて、特定された欠落情報の少なくとも1つのエリアを充填することを含む。欠落情報のエリアは、鏡面反射、1以上のまつげ、ほこり、画像ノイズ、照明及びキャプチャされていないエリアにより隠蔽されるエリアを含むものであってもよい。
【0011】
本発明の他の態様によると、欠落情報のエリアは、模範ベースインペインティング技術を用いて充填される。欠落情報のエリアを含む不完全な領域が決定される。複数の虹彩収集画像の不完全な領域に対して、候補パッチング領域が決定される。不完全な領域と候補パッチング領域との間のグローバルな視覚的コヒーランスを最大化する候補パッチング領域が選択されてもよい。グローバルな視覚的コヒーランスは、候補パッチング領域の複数のローカルスペースパッチと不完全な領域における対応するローカルスペースパッチとの間の距離を比較することによって決定される。選択される候補パッチング領域は、欠落情報のエリアを充填し、不完全な領域を完全なものにするため利用される。
【0012】
本発明の他の態様によると、欠落情報のエリアは、偏微分方程式(PDE)ベースインペインティング技術を用いて充填される。PDEベースインペインティング技術は、曲率駆動拡散アプローチを含むものであってもよい。
【0013】
本発明の他の態様によると、欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング技術が、前記欠落情報のエリアのサイズ、前記欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つに基づき自動的に決定される。欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング技術が、前記欠落情報のエリアのサイズ、前記欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、及び模範充填候補の利用性のすべてに基づき自動的に決定される。
【0014】
本発明の他の態様によると、虹彩認識方法が提供される。虹彩の複数の虹彩収集画像が受け取られる。複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて、虹彩の単一の虹彩画像が再構成される。識別データが、単一の虹彩画像から抽出される。抽出された識別データは、一致を検索するため格納されている虹彩データと比較される。抽出された識別データは、虹彩コードであってもよい。
【0015】
本発明の他の態様によると、単一の虹彩画像の再構成は、少なくとも2つの虹彩収集画像をモザイク処理することを含むものであってもよい。単一の虹彩画像の再構成はまた、インペインティング技術を用いて、少なくとも1つの特定された欠落情報のエリアを充填することを含むものであってもよい。欠落情報のエリアは、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアのデータ周波数及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つに基づき、模範ベースインペインティング技術を用いて選択的に充填されてもよい。欠落情報のエリアは、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアのデータ周波数及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つに基づき、PDEベースインペインティング技術を用いて選択的に充填されてもよい。インペインティング技術は、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアのデータ周波数及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つに基づき、自動的に選択されてもよい。
【0016】
本発明の他の態様によると、虹彩認識システムは、受信要素、処理要素、記憶要素及びマッチング要素を有する。受信要素は、虹彩の複数の虹彩収集画像を受信する。処理要素は、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて虹彩の1つの虹彩画像を再構成する。記憶要素は、格納されている虹彩データを有するデータベースを格納する。マッチング要素は、単一の虹彩画像と格納されている虹彩データとの間の一致を決定する。
【0017】
本発明の他の態様によると、システムはさらに、虹彩収集画像をキャプチャする少なくとも1つの画像形成要素を有する。少なくとも1つの画像形成要素は、虹彩収集画像をひそかに収集するよう配置されてもよい。複数の画像形成要素は、虹彩収集画像が虹彩全体をキャプチャする重複したパーシャル虹彩収集画像となるように、戦略的に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例で利用可能なコンピュータシステムのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施例による虹彩スキャン再構成方法のフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施例による虹彩スキャン再構成のために実現されるようなモザイク処理のフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の実施例による虹彩スキャン再構成のために実現されるインペインティング処理のフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施例による虹彩認識方法のフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の実施例によるバイオメトリック識別システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、例示的な実施例が示される添付した図面を参照して、以降においてより十分に説明される。しかしながら、本発明は、多数の異なる形態により実現されてもよく、ここに与えられる実施例に限定されるものとして解釈されるべきでない。従って、本発明は、ハードウェアの実施例、ソフトウェアの実施例又はハードウェア/ソフトウェアの実施例としての形態をとりうる。
【0020】
本発明は、単一のコンピュータシステムにおいて実現可能である。あるいは、本発明は、複数の相互接続されたコンピュータシステムにより実現可能である。ここに開示される方法を実行するのに適した何れかの種類のコンピュータシステム又は他の装置が適合する。ハードウェアとソフトウェアとの典型的な組み合わせは、汎用コンピュータシステムとすることができる。汎用コンピュータシステムは、ここに開示された方法を実行するように、コンピュータシステムを制御可能なコンピュータプログラムを有することが可能である。
【0021】
本発明は、コンピュータが使用可能な記憶媒体(ハードディスクやCD−ROMなど)上のコンピュータプログラムプロダクトの形態をとりうる。コンピュータにより使用可能な記憶媒体は、媒体に実現されるコンピュータにより使用可能なプログラムコードを有することが可能である。ここで用いられるコンピュータプログラムプロダクトという用語は、ここに開示される方法の実現を可能にするすべての特徴から構成される装置を表す。本開示において、コンピュータプログラム、ソフトウェアアプリケーション、コンピュータソフトウェアルーチン及び/又はこれらの用語の他の変形は、情報処理能力を有するシステムに、a)他の言語、コード又は表記への変換、又はb)異なる物質形態における再生の何れか又は両方の後に特定の機能を実行させることを意図する命令セットの何れかの言語、コード又は表記による何れかの表現を意味する。
【0022】
図1のコンピュータシステム100は、サーバコンピュータ、クライアントユーザコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、制御システム、ネットワークルータ、スイッチ若しくはブリッジ又は実行されるアクションを指定する命令セット(シーケンシャル又はその他)を実行可能な他の何れかの装置を含む各種タイプの計算システム及び装置から構成可能である。本開示の装置はまた、音声、ビデオ又はデータ通信を提供する何れかの電子装置を含むことが理解されるべきである。さらに、単一のコンピュータが示されているが、“コンピュータシステム”という用語は、ここに開示される方法の1以上を実行するための命令セット(又は複数のセット)を個別に又は一緒に実行する計算装置の何れかの集まりを含むよう理解される。
【0023】
コンピュータシステム100は、プロセッサ102(CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又はその両方など)、メインメモリ104及びスタティックメモリ106を有することが可能であり、これらが互いにバス108を介し通信する。コンピュータシステム100はさらに、ビデオディスプレイ(液晶ディスプレイ(LCD)など)、フラットパネル、ソリッドステートディスプレイ又はCRT(Cathode Ray Tube)などの表示部110を有することが可能である。コンピュータシステム100は、入力デバイス112(キーボードなど)、カーソルコントロールデバイス114(マウスなど)、ディスクドライブ部116、信号生成装置118(スピーカーやリモコンなど)、及びネットワークインタフェースデバイス120を有することが可能である。
【0024】
ディスクドライブ部116は、ここに開示される方法、処理又は機能の1以上を実現するよう構成される1以上の命令セット124(ソフトウェアコードなど)を格納するコンピュータ可読記憶媒体122を有することが可能である。命令124はまた、コンピュータシステム100による実行中、メインメモリ104、スタティックメモリ106及び/又はプロセッサ102の内部に完全に又は少なくとも部分的に配置することが可能である。メインメモリ104とプロセッサ102とはまた、マシーン可読媒体を構成しうる。
【0025】
以下に限定することなく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブルロジックアレイ及び他のハードウェアデバイスを含む専用のハードウェア実現形態はまた、ここに開示される方法を実現するよう構成可能である。各種実施例の装置及びシステムを有することが可能なアプリケーションは、広範には各種電子及びコンピュータシステムを含む。一部の実施例は、モジュール間で通信される関連する制御及びデータ信号による2以上の特定の相互接続されたハードウェアモジュール若しくはデバイス、又はASICの一部として各機能を実現する。従って、一例となるシステムは、ソフトウェア、ファームウェア及びハードウェアの実現形態に適用可能である。
【0026】
本発明の各種実施例によると、後述される方法は、コンピュータ可読記憶媒体にソフトウェアプログラムとして格納可能であり、コンピュータプロセッサ上で実行されるように構成可能である。さらに、ソフトウェアによる実現形態は、以下に限定することなく、ここに開示される方法を実現するため構成可能な分散処理、コンポーネント/オブジェクト分散処理、パラレル処理、バーチャルマシーン処理を含むことが可能である。
【0027】
本発明の各種実施例では、命令124を含むか、又は伝搬信号からの命令124を受信及び実行し、これにより、ネットワーク環境126に接続される装置は音声及び/又はビデオデータを送受信可能であり、命令124を用いてネットワーク126と通信可能である。命令124はさらに、ネットワークインタフェースデバイス120を介しネットワーク126上で送受信可能である。
【0028】
コンピュータ可読記憶媒体122は、一実施例では単一の記憶媒体であるように示されているが、“コンピュータ可読記憶媒体”という用語は、1以上の命令セットを格納する1以上の媒体(中央若しくは分散データベース並びに/又は関連するキャッシュ及びサーバなど)を含むように解釈されるべきである。“コンピュータ可読記憶媒体”という用語はまた、マシーンによる実行のため、本開示の方法の何れか1以上をマシーンに実行させる命令セットを格納、符号化又は担持可能な何れかの媒体を含むよう解釈されるべきである。
【0029】
“コンピュータ可読媒体”という用語は、1以上の読み出し専用(不揮発性)メモリ、ランダムアクセスメモリ、又は他の書き換え可能な(揮発性)メモリを収容するメモリカード若しくは他のパッケージなどのソリッドステートメモリ、ディスクやテープなどの光磁気若しくは光媒体、伝送媒体によりコンピュータ命令を実現する信号などの搬送波信号、及び/又は有形の記憶媒体に等価な配布媒体とみなされる電子メールや他の自己完結的な情報アーカイブ若しくはアーカイブセットへのデジタルファイルアタッチメントを含むよう解釈される。従って、本開示は、ここに列記されるようなコンピュータ可読媒体若しくは配布媒体の1以上を含み、さらにここでのソフトウェアによる実現形態が格納される認識された等価な次世代の媒体を含むものとみなされる。
【0030】
当業者は、図1に示されるコンピュータシステムアーキテクチャがコンピュータシステムの1つの可能な具体例であることを理解するであろう。しかしながら、本発明はこれに限定されず、他の何れか適切なコンピュータシステムアーキテクチャがまた、限定することなく利用可能である。
【0031】
本発明の実施例は、虹彩スキャンを再構成する方法に関する。再構成された虹彩スキャンは、虹彩認識のために利用されてもよい。図2は、本発明の実施例による虹彩スキャン再構成を理解するのに有用なフローチャートである。処理200は、ステップ202から始まり、ステップ204に続く。ステップ204において、複数の虹彩収集画像が受信される。ここで用いられる“虹彩収集画像(iris collection image)”という用語は、虹彩の部分的な画像を少なくとも含む画像を表す。本発明の一実施例では、複数の虹彩収集画像は、虹彩の重複した部分画像を有する。好ましくは、重複した部分画像は、虹彩全体をキャプチャする。本発明の一実施例では、重複した部分画像は、画像解像度を低下させることなく虹彩の各部分の画像を送信するのに必要とされる帯域幅を減少させるために意図的に取得される。虹彩収集画像は、画像が取得されるとリアルタイムに受信されるようにしてもよい。あるいは、受信される虹彩収集画像は、以前に取得された画像であってもよい。虹彩収集画像は、デジタル形式で取得されてもよいし、又はスキャニング又は他の何れかの手段によってデジタル形式に変換されてもよい。
【0032】
当該処理は、ステップ206に続き、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて単一の虹彩画像が再構成される。再構成は、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つをモザイク処理することから構成されてもよい。図3において、本発明の一実施例のモザイク処理が詳細に説明される。再構成はまた、インペインティング技術を利用して、虹彩画像に欠落情報の少なくとも1つのエリアを充填することからなる。ここで用いられる“インペインティング(inpainting)”という用語は、周囲のエリアからの情報及び/又は類似する画像若しくは写真を利用して、画像又はビデオの一部を充填するための何れかの方法を示す。図4において、本発明の一実施例によるインペインティングが詳細に説明される。本発明の好適な実施例では、モザイク及びインペインティング技術の双方が、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて虹彩スキャンを再構成するのに利用される。
【0033】
当該処理は、ステップ208に続き、単一の虹彩画像が提供される。好ましくは、単一の虹彩画像は、複数の虹彩収集画像の何れか個々のものより多くの情報を含む。単一の虹彩画像は、虹彩収集画像が取得された個々の画像に関する虹彩データとして検証、識別又は格納に有用な識別情報を抽出するシステムに提供される。ステップ210において、当該処理は終了する。
【0034】
図3は、本発明の実施例による虹彩収集画像のモザイク処理を理解するのに有用なフローチャートである。当該処理300は、ステップ302において始まり、ステップ304に続く。ステップ304において、少なくとも2つの虹彩収集画像が、モザイク処理のため複数の虹彩画像から選択される。これらの画像は、画像により虹彩全体のカバレッジ、重複量、画質又は虹彩スキャンの再構成に適した選択された画像を生成する他の何れかの特徴に基づき選択されてもよい。
【0035】
当該処理は、ステップ306に続き、選択された虹彩収集画像がレジスタリングされる。画像レジストレーションのための方法は、当該分野において知られている。本発明の一実施例では、各画像は、カバレッジ、重複、画質又は順序を決定するのに有用な他の何れかの特徴に基づき決定される順序によりペア毎にレジスタリングされてもよい。
【0036】
当該処理は、ステップ308に続き、レジスタリングされた虹彩収集画像が合成される。少なくとも2つの虹彩収集画像は、1つのステップにおいて、又は各繰り返しにおいて画像が追加及び合成される繰り返しステップを介してレジスタリング及び合成されてもよい。虹彩収集画像は、レジストレーションステップ306において生成される回転、変換及び他の情報を用いて合成されてもよい。
【0037】
当該処理は、任意的なステップ310に続き、合成された虹彩画像は、瞳孔、支質、括約筋、クリプトフックス、乳頭ラフ、円形の収縮襞及び虹彩の底部のクリプトの少なくとも1つの構造的特徴を用いて合成される。合成は、レジスタリングされた虹彩収集画像の重複領域において実行されてもよい。このような構造的特徴の一般的な性質の知識が、再構成された虹彩画像の精度を向上させるため、レジスタリングされた画像の合成に含まれてもよい。例えば、レジスタリングされた画像は、画像の重複する構造的特徴が当該特徴の既知の一般的性質に従うように生成されるように合成されてもよい。本発明の一実施例では、構造的特徴は、虹彩収集画像のレジストレーション及び合成を微調整するのに利用される。ステップ312において、当該処理は終了する。
【0038】
図4は、本発明の実施例による虹彩スキャン再構成を理解するのに有用なフローチャートである。当該処理400は、ステップ402において始まり、ステップ404に続く。ステップ404において、欠落情報の少なくとも1つのエリアが特定される。当該エリアは、虹彩収集画像内で特定されてもよい。また、当該エリアは、少なくとも2つの虹彩収集画像のモザイク内で特定されてもよい。欠落情報の各エリアは、鏡面反射、1以上のまつげ、ほこり、画像ノイズ、照明、キャプチャされていないエリア及び他の何れかの理由に対して不完全であるとみなされる画像の部分によって塞がれたエリアを含むものであってもよい。
【0039】
当該処理は、ステップ406に続き、欠落情報のエリアが選択される。少なくとも1つのインペインティング技術が、欠落情報の選択されたエリアを充填するのに利用される。例えば、インペインティング技術は、偏微分方程式(PDE)ベースインペインティング技術、模範(exemplar)ベースインペインティング技術及び欠落情報のエリアにおいて欠落情報を再構成するための他の何れかの方法を含むものであってもよい。
【0040】
当該処理は、ステップ408に続き、欠落情報の選択されたエリアが、模範ベースインペインティング技術を利用した充填が適しているか決定するため評価される。本発明の一実施例では、模範ベースインペインティング技術が適しているか否かの決定は、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つを評価することに関する。本発明の一実施例では、サイズ、予想されるデータ周波数及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つの所定のレベルは、欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング方法を自動的に決定するのに利用されてもよい。例えば、所定のサイズより大きなサイズの欠落情報のエリアは、模範ベースインペインティング技術を用いて充填されてもよい。本発明の他の実施例では、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数及び模範充填候補の利用性の3つすべてが、利用すべき適切なインペインティング技術を決定するため評価される。
【0041】
模範ベースインペインティング技術は、欠落情報のエリアのサイズが大きい場合に好適である。これは、欠落情報のエリアのサイズが増大すると、PDEベースインペインティング技術の精度が低下するためである。模範ベースインペインティング技術はまた、欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数が高いときに好適である。高いデータ周波数は、画像における構造とテクスチャとの複雑さに対応する。詳細さとテクスチャの大きなエリアは、より高いデータ周波数を有する。PDEベースインペインティング技術は、低データ周波数(スムースさなど)が充填対象のエリアに予想されるとき最も良好に機能する。模範ベースインペインティング技術はまた、模範充填候補が利用可能であるときに好適である。模範ベースインペインティング技術は、欠落情報のエリアを含む不完全な領域に密接に一致する模範充填候補が存在するとき、より効果的である。同じ虹彩の画像からの模範充填候補は、欠落情報のエリアのものと類似したパターンを有する確率が高い。さらに、同一領域からの模範充填候補は、複数の虹彩収集画像が取得され、一部の虹彩収集画像が重複するときに求められてもよい。本発明の一実施例では、この評価に基づき、インペインティング技術が自動的に選択される。
【0042】
本発明の好適な実施例では、動的な判定処理が、欠落情報のエリアを充填するのに利用されるインペインティング方法を自動的に決定するのに利用される。動的判定処理は、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、模範充填候補の利用性及び適切なインペインティング方法を決定するのに有用な他の何れかのファクタの少なくとも1つを評価するようにしてもよい。例えば、欠落情報のエリアは、PDEベースインペインティング方法に適したエリアの典型的なサイズを有してもよい。しかしながら、エリアの予想されるデータ周波数が高く、多数の模範充填候補が利用可能である場合、動的判定処理が、模範ベースインペインティング技術が欠落情報のエリアを充填するのに適していると判断してもよい。本発明の一実施例では、判定アルゴリズムは、欠落情報のエリアを充填するのに利用されるインペインティング技術を選択する。例えば、サイズ、予想されるデータ周波数及び利用可能な模範充填候補に関するルールを有する判定テーブルが、欠落情報のエリアを充填するため、インペインティング技術を決定するのに利用されてもよい。あるいは、サイズ、予想されるデータ周波数及び利用可能な模範充填候補に基づき欠落情報のエリアを充填するためのインペインティング技術を決定するため、重み付けされた関数が利用されてもよい。本発明の実施例では、判定アルゴリズムは、統計的方法又はニューラルネットワークルール抽出を利用して収集されたデータに関するものであってもよい。
【0043】
当該処理は、判定ブロック410に続き、評価ステップ408に基づき模範ベースインペインティング技術が利用されるか決定される。模範ベースインペインティングが適している場合、当該処理はステップ412に続く。そうでない場合、当該処理はステップ420に続く。
【0044】
ステップ412において、欠落情報の選択されたエリアを含む不完全な領域が決定される。本発明の一実施例では、不完全な領域の全体は、欠落情報の選択されたエリアを含む。好ましくは、不完全な領域は、適切な模範充填候補を選択するため、欠落情報の選択されたエリアを画成するのに十分なエリアを含む。ローカルスペースパッチは、画像における何れかのピクセルpの周囲の小さな領域である。不完全な領域のローカルスペースパッチは、不完全な領域のローカルスペースパッチと模範充填候補のローカルスペースパッチとを比較することによって、欠落情報のエリアを充填するための良好な模範充填候補を検索するのに利用される。不完全な領域では、比較のために有用なローカルスペースパッチは、欠落情報のエリアの外部にある。
【0045】
当該処理は、ステップ414に続き、不完全な領域の候補となるパッチング領域が決定される。好ましくは、候補となるパッチング領域は、虹彩の虹彩収集画像又は同じ虹彩の他の画像から決定される。
【0046】
当該処理は、ステップ416に続き、候補パッチング領域の1つが欠落情報のエリアをパッチング処理又は継ぎ当て処理するため選択される。本発明の一実施例では、この選択は、不完全な領域と候補パッチング領域との間のグローバルな視覚的コヒーレンスの最大化に基づく。グローバルな視覚的コヒーレンスは、候補パッチング領域の複数のローカルスペースパッチと不完全な領域の対応するローカルスペースパッチとの間の距離を比較することによって決定される。欠落情報のエリアを含む不完全な領域Mは、Mのすべてのローカルスペースパッチが領域Fにおいて検出可能である場合、領域Fとグローバルな視覚的コヒーレンスを有する。本発明の一実施例では、ローカルスペースパッチは、画像の何れかのピクセルの周囲の小さな領域として規定され、不完全な領域に含まれる欠落情報のエリアを除く不完全な領域内の各ピクセルpに対して、ローカルスペースパッチが存在する。候補パッチング領域の各ピクセルqに対して、ローカルスペースパッチがまた存在する。欠落情報のエリアは、結果として得られる領域MがFとグローバルな視覚的コヒーレンス状態になるように、新たなデータにより補充されるべきである。グローバルな視覚的コヒーレンスを最大化するため、以下の目的関数
【数1】

を最大化する候補パッチング領域Fが選択される。ここで、p及びqは、画像の何れか対応する空間位置とすることができる。W及びWは、領域Mのポイントpと領域Fのポイントqとの周囲の小さなローカルスペースパッチを表す。
【0047】
【数2】

は、パッチ類似度を表し、
【数3】

は、2つのローカルスペースパッチの間の平方されたローカル距離の和である。
【0048】
当該処理は、ステップ418に続き、選択された候補パッチング領域が、欠落情報のエリアを充填することによって、不完全な領域を完全にするため利用される。本発明の一実施例では、PDEベースインペインティング技術などの他のインペインティング技術が、欠落情報のエリアの充填を完成させるのに利用されてもよい。例えば、PDEベースインペインティング技術は、欠落情報のエリアの境界において模範ベースインペインティング技術を向上させるのに利用されてもよい。当該処理は、判定ブロック422に続く。
【0049】
判定ブロック410に戻って、模範ベースインペインティング技術が欠落情報の選択されたエリアを充填するのに適していない場合、当該処理は、ステップ420に続く。ステップ420において、欠落情報の選択されたエリアは、PDEベースインペインティング技術を用いて充填される。本発明の一実施例では、PDEベースインペインティング技術は、異方性拡散を利用する。異方性拡散は、流体力学の基礎に従う空間的に可変なフィルタである。異方性核酸は、虹彩のパターンを保持しながら、ノイズを軽減するのに利用可能である。本発明の一実施例では、熱方程式の変形が、欠落情報のエリアの境界からの情報を内部に伝搬するのに利用される。その解析的な方程式は、
【数4】

の形式を有する。ここで、境界条件は、
【数5】

であり、Hは初期画像である。ラプラシアンの変化レートΔHは、最小変化方向に伝搬される。異方性拡散項
【数6】

が、伝搬項と結合される。異方性拡散は、コネクティビティ(connectivity)原理と非隠蔽又はディスオクルージョン(disocclusion)に関する。コネクティビティ原理は、人間の脳が非隠蔽オブジェクトにどのように接続するか記述する視覚心理学の用語である。虹彩パターンの亀裂又は切断は、ディスオクルージョンとみなすことができる。曲率駆動拡散(CDD)アプローチは、インペインティングに対して全変分法を修正する。一般的なCDDインペインティングモデルは、
【数7】

の形式を有する。ただし、Dは欠落情報のエリアであり、
【数8】

は、ウェイト式
【数9】

の拡張である。この結果、インペインティングは、曲率方向に強制される。当該処理は、判定ブロック422に続く。
【0050】
判定ブロック422において、欠落情報のエリアがさらに存在する場合、当該処理はステップ406に続く。そうでない場合、当該処理はステップ424において終了する。インペインティング方法を自動的に選択することは、PDEベースインペインティングと模範ベースインペインティングとの間の相違及び利益を活用する。本発明の一実施例では、模範ベースインペインティング技術がまず、欠落情報のエリアのサイズ、欠落データの予想される周波数及び模範充填候補の利用性の評価に基づき、模範ベースインペインティング技術が適している欠落情報のエリアを充填するのに利用される。その後、PDEベースインペインティング技術が、欠落情報の残りのエリアを充填するのに利用される。本発明の他の実施例では、PDEベースインペインティング技術は、模範ベースインペインティング方法を利用してすでに実質的に充填された欠落情報のエリアの境界上で利用される。ステップ404において決定された欠落情報のエリアの一部のみが、評価後のインペインティングのために選択される。エリアのサイズ、エリアのデータ周波数、エリアの形状、模範充填候補の利用性、エリアを充填する際の困難さ、予想される精度、計算リソースの利用又は他の何れか関連するファクタを含む各ファクタが、欠落情報のエリアが充填されるか決定するのに評価されてもよい。あるいは、当該処理は、ステップ404において決定された欠落情報のすべてのエリアを充填しようとするものであってもよい。
【0051】
本発明の実施例はまた、再構成された虹彩スキャンを利用したバイオメトリック識別方法に関する。図5は、本発明の実施例による虹彩認識を理解するのに有用なフローチャートである。虹彩認識は、ユーザの身元の検証と、ユーザの身元が決定される識別とを含む。処理500は、ステップ502において開始され、ステップ504に続く。ステップ504において、複数の虹彩収集画像が受信される。虹彩収集画像は、画像が取得されるとリアルタイムにより受信されてもよい。あるいは、受信される虹彩収集画像は、以前の時点に取得された画像であってもよい。
【0052】
当該処理は、ステップ506に続き、単一の虹彩画像が、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて再構成される。本発明の一実施例では、再構成ステップは、少なくとも2つの虹彩収集画像をモザイク処理することから構成される。本発明の他の実施例では、再構成ステップは、欠落情報のエリアを特定し、インペインティング技術を利用して欠落情報の少なくとも1つのエリアを充填することから構成される。欠落情報のエリアを充填するため、模範ベースインペインティング技術及び/又はPDEベースインペインティング技術が利用されてもよい。本発明の一実施例では、欠落情報のエリアを充填するのに利用されるインペインティング技術は、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアのデータ周波数、及び模範充填候補の利用性に基づき自動的に選択される。インペインティング技術とモザイク技術との双方が、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて1つの虹彩画像を再構成するのに利用されてもよい。
【0053】
当該処理は、ステップ508に続き、単一の虹彩画像から識別データが抽出される。本発明の一実施例では、単一の虹彩画像から抽出された識別データは、虹彩コードを有する。ここで用いられる“虹彩コード”という用語は、虹彩の2値表現を意味する。虹彩コードは、実部と虚部とを有してもよい。典型的には、虹彩コードを生成するため、虹彩画像がデカルト座標にマッピングされ、“展開された(unrolled)”虹彩画像が生成される。虹彩画像はまた、瞳孔の中央を中心とする極座標形を用いて処理されてもよい。Gaborフィルタなどのフィルタが、展開された虹彩画像に適用されてもよい。Gaborフィルタが利用されるとき、その結果は実部と虚部とを有する。この結果は2値化され、識別のための重要なパターン情報を保持しながらデータのサイズを低減する。
【0054】
当該処理は、ステップ510に続き、抽出された識別データが、一致を検索するため格納されている虹彩データと比較される。本発明の一実施例では、虹彩認識処理は、ユーザの身元を検証するのに利用され、格納されている虹彩データは、ユーザから以前に収集された虹彩データからなる。本発明の他の実施例では、虹彩認識処理が識別のために利用される。この場合、抽出された識別データと複数の既知の個人に対応する虹彩データを有する格納されている虹彩データとを比較することによって、身元が決定される。本発明の一実施例では、格納されている虹彩データは、既知の個人と虹彩データとを関連付けるデータベースに格納される。格納されている虹彩データは、有線ネットワーク、無線ネットワーク、ローカルエリアネットワーク又はインターネットなどのネットワークを介しアクセス可能であってもよいし、又はローカルにアクセス可能であってもよい。本発明の一実施例では、格納されている虹彩データは、既知の個人の虹彩コードを有する。この比較は、抽出された虹彩コードと格納されている虹彩コードとの間の差分を計算することに関するものであってもよい。例えば、抽出された虹彩コードと格納されている虹彩コードとの間の差分は、ハミング距離を計算することによって定量化されてもよい。同一サイズの2つのバイナリデータセットの間のハミング距離を計算するため、異なっているビット位置の個数が、ビットによるデータのサイズによって除される。ユーザの身元の検証又は一致を検索するための虹彩コードを比較する方法は、当該分野において散られている。ステップ512において、当該処理は終了する。
【0055】
本発明の実施例はまた、本発明の実施例による識別システムに関する。図6は、本発明の実施例によるバイオメトリック識別システムを理解するのに有用なブロック図である。システム600は、受信要素602、画像処理要素604、記憶要素606及びマッチング要素608を有する。受信要素602、画像処理要素604、記憶要素606及びマッチング要素608は、同一のマシーン又はコンピュータシステム上にあってもよい。あるいは、受信要素602、画像処理要素604、記憶要素606及びマッチング要素608の一部又はすべてが、異なるマシーン又はコンピュータシステム上にあってもよい。さらに、受信要素602、画像処理要素604、記憶要素606及びマッチング要素608の一部又はすべてが、同一のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。
【0056】
受信要素602、画像処理要素604、記憶要素606及びマッチング要素608は、通信チャネル616を介し通信する。通信チャネル616は、マシーンとの直接的な通信、ソフトウェアプロセスの間の直接的な通信、又は有線ネットワーク、無線ネットワーク、通信ネットワーク、ローカルエリアネットワーク及びインターネットを含むネットワーク又はネットワーク系列を介した通信などの何れかの通信手段から構成される。
【0057】
受信要素602は、虹彩の複数の虹彩収集画像を受信するよう構成される。虹彩収集画像は、直接的な接続又は有線若しくは無線ネットワークを含む通信チャネル616を介し受信されてもよい。受信要素602は、虹彩収集画像を通信チャネル616を介し画像処理要素604に利用可能にする。例えば、虹彩収集画像は、受信要素602及び画像処理要素604にアクセス可能なコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。あるいは、受信要素602は、有線又は無線ネットワークを介し又は直接的に画像処理要素604に虹彩収集画像を提供するようにしてもよい。
【0058】
画像処理要素604は、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを利用して、虹彩の1つの虹彩画像を再構成するよう構成される。本発明の一実施例では、画像処理要素604は、少なくとも2つの虹彩収集画像をモザイク処理する。本発明の他の実施例では、画像処理要素604は、欠落情報のエリアを特定し、インペインティング技術を用いて欠落情報の少なくとも1つのエリアを充填する。模範ベースペインティング技術及び/又はPDEベースインペインティング技術が、欠落情報のエリアを充填するのに利用されてもよい。本発明の一実施例では、欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング技術は、欠落情報のエリアのサイズ、欠落情報のエリアのデータ周波数及び模範充填候補の利用性に基づき自動的に選択される。インペインティング技術とモザイク技術とは共に、複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて1つの虹彩画像を再構成するのに利用されてもよい。画像処理要素604は、通信チャネル616によって単一の虹彩画像をマッチング要素608に利用可能にする。例えば、単一の虹彩画像は、画像処理要素604及びマッチング要素608にアクセス可能なコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。あるいは、画像処理要素604は、有線又は無線ネットワークを介し又は直接的にマッチング要素608に虹彩収集画像を提供してもよい。
【0059】
記憶要素606は、虹彩データを格納するよう構成される。本発明の一実施例では、虹彩データは、既知の個人と虹彩データとを関連付けるデータベースに格納される。例えば、格納されている虹彩データは、既知の個人の虹彩コードから構成されてもよい。本発明の一実施例では、記憶要素606は、新たな虹彩データを格納されている虹彩データに追加可能であるよう構成される。新たな虹彩データは、既知の個人の更新された虹彩データ、既知の個人の第2の虹彩の虹彩データ、又は以前に格納された虹彩データのない個人の虹彩データを含むものであってもよい。記憶要素606は、通信チャネル616により格納されている虹彩データをマッチング要素608に利用可能にする。例えば、虹彩データは、マッチング要素608にアクセス可能なコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。あるいは、記憶要素606は、有線又は無線ネットワークを介し又は直接的にマッチング要素608に虹彩収集画像を提供してもよい。
【0060】
マッチング要素808は、単一の虹彩画像と格納されている虹彩データとの間の一致を決定するよう構成される。本発明の一実施例では、識別データは単一の虹彩画像から抽出される。好ましくは、識別データは、記憶要素606により提供される格納されている虹彩データと比較されるフォーマットにより抽出される。本発明の一実施例では、単一の虹彩画像から抽出された識別データは、虹彩コードから構成される。抽出された識別データは、一致を検索するため、記憶要素606からの格納されている虹彩データと比較される。この比較は、抽出された虹彩コードと格納されている虹彩コードとの間の距離の計算に関するものであってもよい。一致を検索するための虹彩コードを比較する方法は、当該分野において知られている。本発明の一実施例では、虹彩認識処理は、ユーザの身元を検証するのに利用され、格納されている虹彩データは、ユーザから以前に収集された虹彩データから構成される。本発明の他の実施例では、虹彩認識処理は識別のために利用される。この場合、抽出された識別データと複数の既知の個人の虹彩データから構成される格納されている虹彩データとを比較することによって、身元が決定される。
【0061】
システム600はまた、任意的には画像形成要素610を有する。システム600はまた、さらなる画像形成要素612〜614を有してもよい。画像形成要素610〜614は、虹彩収集画像をキャプチャし、キャプチャされた画像を受信要素602に提供するよう構成される。画像形成要素610〜614は、カメラ技術とビデオ録画技術との双方を含むものであってもよい。画像形成要素610〜614は、通信チャネル616を介し受信要素602と通信してもよい。例えば、画像形成要素610〜614は、受信要素602に直接接続されてもよいし、又は有線若しくは無線ネットワークを介し通信するようにしてもよい。
【0062】
画像形成要素610〜614は、虹彩収集画像をひそかに収集するよう構成されてもよい。ここで用いられる“ひそかな収集(covert collection)”という用語は、個人に知られることなく個人の虹彩の虹彩収集画像を取得することを意味する。虹彩スキャンの再構成はより良好な画質をもたらすため、あまり理想的でない状態で取得された虹彩収集画像が利用可能であってもよく、画像形成要素610〜614の配置のフレキシビリティを増大させることが可能である。これは、屋外エリア、パブリックエリア及び虹彩スキャンのためのサブ最適な状態の他のエリアを含むより多くの状態でのひそかな収集を可能にする。本発明の一実施例では、画像形成要素610〜614は、虹彩収集画像が取得されると、それを受信要素602にリアルタイムに提供する。本発明の他の実施例では、画像形成要素610〜614を用いて取得された虹彩収集画像が、以降において提供される。例えば、画像形成要素610〜614を用いて取得された虹彩収集画像は、コンピュータ可読媒体やビデオメディアを含む画像媒体に格納され、以前に画像形成要素610〜614により記録された対象となる個人の識別が可能とされてもよい。
【0063】
画像形成要素610〜614は、虹彩収集画像の品質を最大化するよう戦略的に配置されてもよい。本発明の一実施例では、画像形成要素610〜614は、虹彩収集画像がパーシャル虹彩収集画像であり、パーシャル虹彩収集画像が重複するように、戦略的に配置及び構成される。本発明の一実施例では、システムに提供されるフラットな2次元画像が個人の顔及び虹彩と対向するようなフラットな写真として検出可能となるように、画像形成要素610〜614が配置される。好ましくは、虹彩収集画像は、虹彩全体をキャプチャする。本発明の一実施例では、1つの画像形成要素610は、虹彩全体をキャプチャし、重複する複数のパーシャル虹彩収集画像をキャプチャするよう構成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
虹彩認識のための虹彩スキャンを再構成する方法であって、
虹彩の複数の虹彩収集画像を受け取るステップと、
前記複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを用いて、前記虹彩の単一の虹彩画像を再構成するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記再構成するステップはさらに、前記複数の虹彩収集画像の少なくとも2つを前記単一の虹彩画像にモザイク処理するステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記モザイク処理は、瞳孔の構造、支質、括約筋、クリプトフックス、乳頭ラフ、円形の収縮襞及び前記虹彩の底部のクリプトからなる群から選ばれた少なくとも1つの前記虹彩の構造的特徴を用いて実行される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記モザイク処理は、
前記少なくとも2つの虹彩収集画像のレジストレーションと、
前記虹彩の構造的特徴に基づく前記少なくとも2つの虹彩収集画像の合成と、
から構成される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記再構成するステップはさらに、
前記虹彩収集画像の少なくとも1つにおいて少なくとも1つの欠落情報のエリアを特定するステップと、
インペインティング技術を用いて、前記特定された少なくとも1つの欠落情報のエリアを充填するステップと、
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
欠落情報のエリアは、鏡面反射、1以上のまつげ、ほこり、画像ノイズ、照明及びキャプチャされていないエリアにより隠蔽されるエリアを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記欠落情報のエリアは、模範ベースインペインティング技術を用いて充填される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記欠落情報のエリアは、偏微分方程式(PDE)ベースインペインティング技術を用いて充填される、請求項5記載の方法。
【請求項9】
欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング技術を、前記欠落情報のエリアのサイズ、前記欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、及び模範充填候補の利用性の少なくとも1つに基づき自動的に決定するステップをさらに有する、請求項5記載の方法。
【請求項10】
欠落情報のエリアを充填するのに用いられるインペインティング技術を、前記欠落情報のエリアのサイズ、前記欠落情報のエリアの予想されるデータ周波数、及び模範充填候補の利用性に基づき自動的に決定するステップをさらに有する、請求項5記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−519927(P2012−519927A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554127(P2011−554127)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026684
【国際公開番号】WO2010/104870
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】