説明

新規なジピリジル誘導体

【課題】医薬品、農薬、配位子、ハロゲン化銀感光材料、液晶、界面活性剤、電子写真及び有機エレクトロルミネッセンス分野において有用な物質または中間体として新規なジピリジル誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(B)又は(C)で表されるジピリジル誘導体。式中、各置換基は所定の原子又は置換基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬品、農薬、配位子、ハロゲン化銀感光材料、液晶、界面活性剤、電子写真及び有機エレクトロルミネッセンスの分野において、重要な中間体となる新規なジピリジル誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ピリジン誘導体は広い分野に亘って注目されている。医薬及び農薬品分野においては、例えばエンドセリン拮抗薬としてはエンドセリン受容体に対し、ピリジン誘導体が、高い親和性を有すること(特許文献1〜3)が開示されている。しかしながら、受容体の親和性は不十分であり、更に強力な受容体親和性を有するエンドセリン拮抗剤の創製が切望されている。また、脳梗塞後遺症治療剤のような脳神経保護作用を有する医薬品はその化学構造の中にジピリジル骨格を基本骨格とする化合物の研究開発が盛んである。例えば、特許文献4等が開示されている。
【0003】
配位子の分野においては、例えば、デンドリマー型の化合物類に含まれるデンドリマー型多核金属錯体は、サブユニット間の相互作用が強いと、多核金属錯体として新しい性質が現れるようになるので、研究が盛んに行われている。その1つにサブユニットに光やレドックス活性なルテニウム(II)ポリピリジン錯体を、そして架橋配位子に骨格間の電子相互作用のあるピラジン類を用いた多核錯体(非特許文献1、2)が合成され、その電気化学的性質が報告されている。このようなデンドリマー型多核金属錯体は太陽エネルギーの人工変換プロセスに用いられる可能性があり、大変有望視されている。
【0004】
また、各種反応触媒の配位子としてもその有用性が期待される。例えば、特許文献5、非特許文献3に記載のごとく、Ullmann類似反応における金属銅触媒の配位子として用いることにより、反応性の促進剤として働くことが期待される。
【0005】
ハロゲン化銀感光材料分野では、ピリジン誘導体及びそれらを4級化した各種のピリジニウム化合物が造核現像促進剤や晶癖制御剤等に広く応用されており、例えば、特許文献6,7等に開示されている。
【0006】
液晶の分野においては、液晶化合物の分子構造中にピリジン誘導体を含有することにより、各種優れた特徴の液晶の性質が得られるため、研究が盛んに行われている。例えば、特許文献8〜12等が開示されている。
【0007】
また、次世代のディスプレイ材料として注目を集めている有機エレクトロルミネッセンス(EL)の分野においては、有効な電子輸送性材料の欠如が問題になっている(電子輸送材料としては、高い電子受容性をもつπ電子系の導入が必須条件である)が、最近、最低空軌道(LUMO)が低く、高い電子受容性をもつシロール誘導体(シロール(シラシクロペンタジエン)は、シクロペンタジエンのケイ素同族体である)、中でも、2−ピリジル基をアリール基としてもつ2,5−ジピリジルシロールが極めて高い電子輸送性を有しており、この電気輸送特性は、これまで、最も良い電子輸送材料の1つとされているトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムAlqに勝るものであることが報告された(非特許文献4、5)。このようにシロールπ電子系、特に2,5−ジアリールシロール誘導体の更なる分子設計において、いかにその電子構造及び物性を制御するか(例えば、2,5位のアリール基上の置換基による制御)に注目が置かれている。
【0008】
電子写真の分野においては、例えば特許文献13、14に開示されているように記録材料の色素の一部として利用されている。色素中に2座の配座を形成可能な置換基を有することにより、画像の安定性、特に定着性や耐光性を改良する目的で使用され、研究が盛んである。近年、情報量の急速な増大に伴い、大容量の光記憶媒体が脚光を浴びており、大変有望視されている分野である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−162449号公報
【特許文献2】特開平10−194972号公報
【特許文献3】特開平11−92458号公報
【特許文献4】国際公開98/52922号
【特許文献5】英国特許第2328686号明細書
【特許文献6】特開平6−242534号公報
【特許文献7】特開平8−227117号公報
【特許文献8】特開平8−295884号公報
【特許文献9】特開平9−25567号公報
【特許文献10】特開平9−110856号公報
【特許文献11】特開平10−7596号公報
【特許文献12】特開平10−237002号公報
【特許文献13】特開平3−282478号公報
【特許文献14】特開平10−265690号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】化学と工業、52(7)890(1999)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,120,5480(1998)
【非特許文献3】有機合成化学協会誌,56(9)78(1998)
【非特許文献4】有機合成化学協会誌,56(6),50(1998)
【非特許文献5】J.Am.Chem.Soc.,118,11974(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、医薬品、農薬、配位子、ハロゲン化銀感光材料、液晶、界面活性剤、電子写真及び有機エレクトロルミネッセンス分野において有用な物質又は中間体として新規なジピリジル誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討の結果、医薬品、農薬、配位子、ハロゲン化銀感光材料、液晶、界面活性剤、電子写真及び有機エレクトロルミネッセンスの分野において有用な新規なジピリジル誘導体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【0013】
1.
下記一般式(B)で表されるジピリジル誘導体。
【化1】

式中、
B1若しくはB2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。
B3、B4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、B3、B4が共に水素原子である場合は、B1又はB2が炭素数3以下のアルキル基の場合、及びB1がフェニル基の場合を除く。
また、B2が水素原子である場合、
(1)B1、B3(6位に置換)が共にフェニル基、及びB4が水素原子、
(2)B1、B3(2位に置換)、B4(6位に置換)が共にメチル基、
を同時に表すことはない。
2.
下記一般式(C)で表されるジピリジル誘導体。
【化2】

式中、
C1若しくはC2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。
C3、C4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、C3、C4が共に水素原子である場合は、C1又はC2はメチル基を表さない。
なお、本発明は上記1又は2に記載の構成を有するものであるが、以下、その他についても参考のため記載した。
(1)下記一般式(A)で表されるジピリジル誘導体。
【0014】
【化3】

【0015】
式中、A1及びA2は同一でも異なってもよく、アルキル基、アリール基を表す。またA1とA2は互いに結合して環を形成してもよい。A3は下記の構造を表す。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、A4及びA5は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
【0018】
(2)下記一般式(B)で表されるジピリジル誘導体。
【0019】
【化5】

【0020】
式中、B1若しくはB2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。B3、B4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、B3、B4が共に水素原子である場合は、B1又はB2が炭素数3以下のアルキル基の場合、及びB1がフェニル基の場合を除く。
また、B2が水素原子である場合、
(1)B1、B3(6位に置換)が共にフェニル基、及びB4が水素原子、
(2)B1、B3(2位に置換)、B4(6位に置換)が共にメチル基、
を同時に表すことはない。
【0021】
(3)下記一般式(C)で表されるジピリジル誘導体。
【0022】
【化6】

【0023】
式中、C1若しくはC2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。C3、C4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、C3、C4が共に水素原子である場合は、C1又はC2はメチル基を表さない。
【0024】
(4)下記一般式(D)で表されるジピリジル誘導体。
【0025】
【化7】

【0026】
式中、D1及びD2は水素原子を表す。D3は下記の構造を表す。
【0027】
【化8】

【0028】
式中、D4はアルキル基、アリール基、D5は水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、D3が一般式(DI)である場合は、
(1)D4が2位に置換したフェニル基、D5が水素原子、
(2)D4、D5の一方が5位に置換したメチル基、もう一方が6位に置換したメチル基、フェニル基
また、D3が一般式(DII)である場合は、
(3)D4が3位に置換されたメチル基、D5が水素原子、
(4)D4、D5の一方が2位、もう一方が6位に置換されたメチル基、
(5)D4、D5の一方が2位又は3位に置換されたメチル基、もう一方が6位に置換されたフェニル基、
の場合を除く。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、新規な化合物であるジピリジル誘導体を提供することにより、特に新規なピリジン核を有する医薬、農薬品、配位子、ハロゲン化銀感光材料、液晶、界面活性剤、電子写真及び有機エレクトロルミネッセンスの取得ルートが拡大され、これらの研究分野の研究開発、また、産業上及び実用化の上でも大変重要である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の化合物を更に詳しく説明すると、以下の通りである。
本明細書中、アルキル基としては炭素数1〜18の直鎖型あるいは分岐型のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基であり、より好ましくはカルボン酸やアルデヒドに誘導可能なメチル基、エチル基が挙げられる。
【0031】
本明細書中、アリール基は置換基を有していてもよく、具体的にはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ヒドロキシフェニル基、ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基、トリル基、ナフチル基であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基である。
【0032】
以下に本発明の一般式(A)〜(D)で表される化合物の好ましい具体例(I−1)〜(I−70)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
【化12】

【0037】
【化13】

【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
本発明の一般式(A)〜(D)で表されるジピリジル誘導体の製造方法を一般式(A)の置換基A3が一般式(AI)を表す場合を一例として下記に示す。しかし、本発明の内容が決してこれに限定されるものではない。
【0041】
【化16】

【0042】
式中、A1〜A2、A4〜A5は、前記と同じ意味を表す。
本発明における他の化合物も上記と同様に製造することができる。
次に各工程について説明する。
【0043】
工程A
一般式(II)で表されるシアノ複素環化合物とヒドラジンを反応させ、一般式(III)で表されるアミドラゾン化合物を得る。アミドラゾン化合物(III)は特願平11−167308号に記載の方法、又はそれに準じた方法で得ることができる。
【0044】
一般式(II)で表されるシアノ複素環化合物としては具体的に下記に示される一般式(II−1)及び(II−2)が挙げられる。
【0045】
【化17】

【0046】
上記式中、R'及びR''は同一でも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
【0047】
以下に好ましい例を挙げるが、アルキル基においては、直鎖及び分岐状のものを含む。
3−ピリジルシアニド、2−メチル−3−ピリジルシアニド、4−メチル−3−ピリジルシアニド、5−メチル−3−ピリジルシアニド、6−メチル−3−ピリジルシアニド、2−エチル−3−ピリジルシアニド、4−エチル−3−ピリジルシアニド、5−エチル−3−ピリジルシアニド、6−エチル−3−ピリジルシアニド、2−プロピル−3−ピリジルシアニド、4−プロピル−3−ピリジルシアニド、5−プロピル−3−ピリジルシアニド、6−プロピル−3−ピリジルシアニド、2−ブチル−3−ピリジルシアニド、4−ブチル−3−ピリジルシアニド、5−ブチル−3−ピリジルシアニド、6−ブチル−3−ピリジルシアニド、2−フェニル−3−ピリジルシアニド、4−フェニル−3−ピリジルシアニド、5−フェニル−3−ピリジルシアニド、6−フェニル−3−ピリジルシアニド、
【0048】
2,4−ジメチル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジメチル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジメチル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、2,4−ジエチル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジエチル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジエチル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジエチル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジエチル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジエチル−3−ピリジルシアニド、2,4−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジプロピル−3−ピリジルシアニド、2,4−ジブチル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジブチル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジブチル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジブチル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジブチル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジブチル−3−ピリジルシアニド、2,4−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジフェニル−3−ピリジルシアニド、
【0049】
4−ピリジルシアニド、2−メチル−4−ピリジルシアニド、3−メチル−4−ピリジルシアニド、2−エチル−4−ピリジルシアニド、3−エチル−4−ピリジルシアニド、2−プロピル−4−ピリジルシアニド、3−プロピル−4−ピリジルシアニド、2−ブチル−4−ピリジルシアニド、3−ブチル−4−ピリジルシアニド、2−フェニル−4−ピリジルシアニド、3−フェニル−4−ピリジルシアニド、
【0050】
2,3−ジメチル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジメチル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジメチル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジメチル−4−ピリジルシアニド、2,3−ジエチル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジエチル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジエチル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジエチル−4−ピリジルシアニド、2,3−ジプロピル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジプロピル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジプロピル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジプロピル−4−ピリジルシアニド、2,3−ジブチル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジブチル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジブチル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジブチル−4−ピリジルシアニド、2,3−ジフェニル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジフェニル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジフェニル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジフェニル−4−ピリジルシアニド、
【0051】
2,3,5−トリメチル−4−ピリジルシアニド、2,3,6−トリメチル−4−ピリジルシアニド、2,3,5−トリエチル−4−ピリジルシアニド、2,3,6−トリエチル−4−ピリジルシアニド、2,3,5−トリプロピル−4−ピリジルシアニド、2,3,6−トリプロピル−4−ピリジルシアニド、2,3,5−トリブチル−4−ピリジルシアニド、2,3,6−トリブチル−4−ピリジルシアニド、2,3,5−トリフェニル−4−ピリジルシアニド、2,3,6−トリフェニル−4−ピリジルシアニドである。
【0052】
特に好ましくは、3−ピリジルシアニド、2−メチル−3−ピリジルシアニド、4−メチル−3−ピリジルシアニド、5−メチル−3−ピリジルシアニド、6−メチル−3−ピリジルシアニド、2,4−ジメチル−3−ピリジルシアニド、2,5−ジメチル−3−ピリジルシアニド、2,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、4,5−ジメチル−3−ピリジルシアニド、4,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、5,6−ジメチル−3−ピリジルシアニド、4−ピリジルシアニド、2−メチル−4−ピリジルシアニド、3−メチル−4−ピリジルシアニド、2−フェニル−3−ピリジルシアニド、4−フェニル−3−ピリジルシアニド、5−フェニル−3−ピリジルシアニド、6−フェニル−3−ピリジルシアニド、2−フェニル−4−ピリジルシアニド、3−フェニル−4−ピリジルシアニド、2,3−ジメチル−4−ピリジルシアニド、2,5−ジメチル−4−ピリジルシアニド、2,6−ジメチル−4−ピリジルシアニド、3,5−ジメチル−4−ピリジルシアニドである。
【0053】
上記のシアノ複素環化合物は市販品を容易に入手することが可能である。また、定法に従い、各種カルボン酸から酸アミドへ誘導し、次いでこの酸アミドを脱水するか、あるいは各種アルデヒドからアルドキシムへ誘導してこのアルドキシムを脱水しても得ることも可能である。
【0054】
工程B
アミドラゾン化合物(III)と一般式(IV)で表されるジケトン化合物を反応させ、一般式(V)で表される1,2,4−トリアジン化合物を得る。1,2,4−トリアジン化合物(V)は特願平11−167308号、TetrahedronLett.,39,8817、8821、8825(1998)等に記載の方法、又はそれに準じた方法で得ることができる。
【0055】
一般式(IV)で表されるジケトン化合物としては以下のものを挙げることができる。
(i)対称ジケトン化合物(A1及びA2が同一のアルキル基又はアリール基の場合)
A1及びA2が同一のアルキル基又はアリール基である一般式(IV)で表される化合物を示す。また、A1とA2は互いに結合して環を形成しても良い。好ましくは、アルキル基としては炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基としてはフェニル基、4−メチルフェニル基が挙げられる。具体的には1,2−シクロヘキサンジオン、2,3−ブタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、4,5−オクタンジオン、5,6−デカンジオン、2,5−ジメチル−3,4−ヘキサンジオン、2,7−ジメチル−4,5−オクタンジオン、3,6−ジメチル−4,5−オクタンジオン、2,2,5,5−テトラメチル−3,4−ヘキサンジオン、ベンジル(Benzil)、4,4'−ジメチルベンジル、ジ−α−ナフチルエタンジオン、ジ−β−ナフチルエタンジオン等が挙げられる。特に好ましくは1,2−シクロヘキサンジオン、2,3−ブタンジオン、3,4−ヘキサンジオン、ベンジル、4,4'−ジメチルベンジルである。
【0056】
(ii)非対称ジケトン化合物(A1及びA2が異なるアルキル基又はアリール基の場合)
A1及びA2が各々異なるアルキル基又はアリール基である一般式(IV)で表される化合物を示す。好ましくはアルキル基としては炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基としてはフェニル基、4−メチルフェニル基が挙げられる。具体的には2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、4−メチル−2,3−ペンタンジオン、4−メチル−2,3−ヘキサンジオン、5−メチル−2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘプタンジオン、3,4−オクタンジオン、2−メチル−3,4−ヘキサンジオン、4,4−ジメチル−2,3−ペンタンジオン、5−メチル−3,4−ヘプタンジオン、6−メチル−3,4−ヘプタンジオン、2,2−ジメチル−3,4−ヘキサンジオン、4,5−ノナンジオン、3−メチル−4,5−オクタンジオン、2−メチル−4,5−オクタンジオン、2,2−ジメチル−3,4−ヘプタンジオン、2−メチル−3,4−へプタンジオン、2−メチル−3,4−オクタンジオン、2,5−ジメチル−3,4−ヘプタンジオン、2,6−ジメチル−3,4−ヘプタンジオン、2,2,5−トリメチル−3,4−ヘキサンジオン、2−メチル−3,4−オクタンジオン、3−メチル−4,5−ノナンジオン、
【0057】
2−メチル−4,5−ノナンジオン、2,2−ジメチル−3,4−オクタンジオン、2,5−ジメチル−3,4−ヘプタンジオン、2,6−ジメチル−4,5−オクタンジオン、2,2,5−トリメチル−ヘプタンジオン、2,5−ジメチル−3,4−ヘキサンジオン、2,6−ジメチル−4,5−オクタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,4−ヘプタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,4−ヘキサンジオン、2,2,5−トリメチル−3,4−ヘプタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,4−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン、1−フェニル−1,2−ヘプタンジオン、3−メチル−1−フェニル−1,2−ブタンジオン、1−フェニル−1,2−ヘキサンジオン、3−メチル−1−フェニル−1,2−ヘプタンジオン、4−メチル−1−フェニル−1,2−ヘプタンジオン、3,3−ジメチル−1−フェニル−1,2−ブタンジオン等が挙げられる。特に好ましくは、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,2−プロパンジオンである。
【0058】
(iii)ジアルデヒド化合物(A1及びA2が水素原子の場合)
具体的にはグリオキサール水溶液、グリオキサル二(亜硫酸水素ナトリウム)、グリオキサール等価体である1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、グリオキサールトリメリックジヒドラート等が挙げられる。好ましくはグリオキサール水溶液、1,4−ジオキサン−2,3−ジオールであり、より好ましくは安価で入手及び取り扱いの容易なグリオキサール水溶液である。
【0059】
(iv)ケトアルデヒド化合物(A1及びA2の一方が水素原子、もう一方がアルキル基の場合)
A1及びA2の一方が水素原子、もう一方がアルキル基又はアリール基を表す一般式(IV)で表される化合物を示す。好ましくはアルキル基が炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基がフェニル基であり、具体的にはメチルグリオキサール(ピルビックアルデヒド)、エチルグリオキサール、プロピルグリオキサール、イソプロピルグリオキサール、ブチルグリオキサール、t−ブチルグリオキサール、イソブチルグリオキサール、sec−ブチルグリオキサール、フェニルグリオキサール等が挙げられる。特に好ましくはメチルグリオキサール、フェニルグリオキサールである。
【0060】
また、一般式(V)で表される1,2,4−トリアジン化合物はTetrahedronLett.,25,2315(1971)、Tetrahedron,33,1043(1977)記載の方法、又はそれに準じた方法のように酸ヒドラジドとα−ハロケトンを用いても得ることができる。
【0061】
工程C
一般式(V)で表される1,2,4−トリアジン化合物と2,5−ノルボルナジエンを反応させて一般式(I)で表されるピリジン誘導体を得る。一般式(I)で表されるピリジン誘導体はTetrahedronLett.,39,8817、8821、8825(1998)等に記載の方法、又はそれに準じた方法で得ることができる。
【実施例1】
【0062】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、純度の評価は高速液体クロマトグラフィー(HPLCと略記する)によった。
【0063】
参考例1
3−(5,6−ジフェニル−2−ピリジル)ピリジン(A−4)の合成
50mlのナスフラスコに、水1.0ml、3−シアノピリジン0.99g(9.5mmol)、ヒドラジン一水和物5.5g(0.095mol)を仕込み、攪拌下30℃で3時間反応した。原料消失をHPLC分析で確認した後、トルエン10mlを添加し、減圧下、水及び過剰のヒドラジンを留去し、この操作を計3回繰り返した。残さに水5.5ml及びエタノール5.5mlを添加し、次いでベンジル2.0g(9.5mmol)を加え、外温100℃で2時間反応した。トルエン10mlを添加し、減圧下溶媒を留去した。2,5−ノルボナジエン8.8g(0.095mol)をキシレン10mlに溶解し、これを残さに加え、還流下24時間反応した。反応終了後、減圧下、キシレン及び過剰の2,5−ノルボルナジエンを留去し、更に、トルエン10mlを加えて2,5−ノルボルナジエンを完全に留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサンから再結晶して、淡黄色結晶として目的物を1.8g(収率63.2%)得た。純度は99.3%であった。
【0064】
実施例及び参考例2〜27
参考例1と同様の方法でA−1〜A−3、A−5〜A−27の化合物を合成した。これらの構造及び性質を下記表1〜6に示す。
なお、A−1〜A−14、A−17〜A−20、A−26、A−27に関しては参考例である。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
実施例及び参考例28〜44
参考例1と同様の方法で下記に示す構造のA−28〜A−44の化合物を合成でき、上記と同様に同定できた。
なお、A−28〜A−33、A−37、A−40、A−42〜A−44に関しては参考例である。
【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
(応用例)
次に、本発明による新規なピリジン誘導体を用いた応用例の一例を挙げる。しかし、本発明の内容が決してこれに限定されるものではない。この応用例は特開平11−130738号及び特開平11−199549号記載のごとく、Ullmann類似反応における金属銅触媒の助触媒(配位子)として用いた。基質は以下のものを用いた。
なお、応用例1〜3、5(化合物B−1)、7(化合物B−3)、8(化合物B−4)は参考例である。
【0075】
【化20】

【0076】
応用例1
N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(VI)の合成N、N'−ジフェニル−N,N'−p−フェニレンジアミン31.2g(0.12mol)、m−ヨードトルエン54.5g(0.25mol)、t−ブトキシナトリウム32.6g(0.34mol)、塩化銅(I)59.0mg(0.6mmol)、2−(5,6−ジフェニル−4−ピリジル)ピリジン(A−8)185mg(0.6mmol)、α−ピネン87.6mlの混合物を窒素気流下、125〜130℃で5時間反応した。反応終了後、トルエン66mlと水66mlを添加し分液後トルエンを減圧濃縮した。酢酸エチル39mlとイソプロパノール253mlを添加して晶析し、淡黄色粗結晶として目的物47.8g(収率90.5%)を得た。融点170〜171℃、HPLC含量(カラムYMC−A−002、検出UV 310nm、流量1.1ml/min溶離液)は99.5%であった。
【0077】
応用例2〜4
応用例1において、2−(5,6−ジフェニル−2−ピリジル)ピリジン(A−8)の代わりに下記表2に示す助触媒を用いた以外は、応用例1と同様に操作し、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンを合成し、収率及びHPLCのより純度を評価した。
【0078】
比較例1〜6
応用例1において、2−(5,6−ジフェニル−2−ピリジル)ピリジン(A−8)の代わりに下記表6に示す助触媒を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、N,N'−ジフェニル−N,N'−ジ(3−メチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミンを合成し、反応時間による促進効果、収率及びHPLCによる純度を評価した。なお、応用例と比較例3〜6では、反応の進行が認められなくなった時点を反応の終点とし、その時点で評価を行った。以上の結果を表7に示す。
【0079】
【表7】

【0080】
表7から明らかなように、従来のように銅触媒のみ、あるいは、ピリジン、2−フェニルピリジン及び2,4'−ジピリジルのような助触媒を添加して反応を行うよりも、本発明で提供されるジピリジル誘導体を助触媒(配位子)として添加した方が反応が著しく促進されかつ高収率及び高純度な目的化合物を得ることができる。また、比較例1及び2のように、原料が残存している状態で反応を中止した場合、精製が困難なため純度は著しく低下する。比較例4〜6のような助触媒を加えた場合も同様である。
【0081】
また、これらの新規なジピリジル誘導体を中間体として、下記に示すような構造のB−1〜B−5の化合物に誘導することにより、特開平6−242534号、特開平8−227117号に記載されている造核促進剤や晶癖制御剤等の写真用ハロゲン化乳化剤へも応用可能であり、産業上大変有用である。以下に合成法を挙げる。
【0082】
応用例5
1−ベンジル−4−(5−メチル−6−(α−ナフチル)−2−ピリジル)ピリジニウム塩化物(B−1)の合成
3−メチル−2−(α−ナフチル)−6−(4−ピリジル)ピリジン1.6g(5.4mmol)、イソプロピルアルコール5mlにベンジルクロリド0.82g(6.5mmol)を滴下し、3時間加熱還流した。反応終了後、酢酸エチル12mlを加えて10℃まで冷却後、ろ過して目的物2.2g(収率96.5%)を得た。1H−NMR、MS、IR、元素分析より目的物であることを確認した。
【0083】
応用例6〜9
応用例5と各種対応する同様の方法で下記に示す構造のB−2〜B−5の化合物を合成でき、1H−NMR、MS、IR、元素分析より同定できた。
【0084】
【化21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(B)で表されるジピリジル誘導体。
【化1】

式中、
B1若しくはB2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。
B3、B4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、B3、B4が共に水素原子である場合は、B1又はB2が炭素数3以下のアルキル基の場合、及びB1がフェニル基の場合を除く。
また、B2が水素原子である場合、
(1)B1、B3(6位に置換)が共にフェニル基、及びB4が水素原子、
(2)B1、B3(2位に置換)、B4(6位に置換)が共にメチル基、
を同時に表すことはない。
【請求項2】
下記一般式(C)で表されるジピリジル誘導体。
【化2】

式中、
C1若しくはC2のどちらか一方は水素原子、もう一方はアルキル基、アリール基を表す。
C3、C4は同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基、アリール基を表す。
但し、C3、C4が共に水素原子である場合は、C1又はC2はメチル基を表さない。

【公開番号】特開2010−275315(P2010−275315A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173177(P2010−173177)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願平11−324451の分割
【原出願日】平成11年11月15日(1999.11.15)
【出願人】(000175607)富士フイルムファインケミカルズ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】