説明

新規なジブロック共重合体、及びそのジブロック共重合体の自己集合で形成される高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ

【課題】電子的又は光起電力的性質を有して高度に秩序化したナノ構造材料を、新規に調製したジブロック共重合体を自己集合させることによって調製することを目的とした。
【解決手段】高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤは、次の工程を含む方法によって作製された。
(i)下記の式(I)で示されるジブロック共重合体を有機溶媒に溶かす工程と、
(ii)均質な共重合体溶液を基板の上に堆積させる工程と、
(iii)溶媒を蒸発させ、基板の上に直接ナノワイヤを形成する工程。

【化1】


(Rはフェニル基、p及びqは1〜1000から選ばれる整数、Dは親水性供与体のポルフィリン含有基、そしてAは疎水性受容体のフラーレン含有基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なジブロック共重合体、そのジブロック共重合体の自己集合で形成される高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ、及び高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤの作製方法に関するものである。本発明は、また、親水性供与体のポルフィリン含有基で機能化されたシクロブテン含有化合物(モノマー)、及び疎水性受容体のフラーレン含有基で機能化されたシクロブテン含有化合物(モノマー)にも関する。
【背景技術】
【0002】
電荷担体の移動度の改善は、有機太陽電池の開発にとって非常に重要である。効果的な電荷発生をもたらすであろう供与体/受容体界面を発生させるため、及び瑣末でない(重要な)電荷移動のためのよく分かった経路をつくるために、制御された光活性成分のナノスケール超分子を秩序化させることが求められている。機能性ブロック共重合体は、通常、非相溶性ブロック間の物理的マクロフェーズの偏析から生じるナノ構造を持つ材料を調製するための魅力的候補である。事実、秩序化した機能性ポリマーフィルム(Stalmach, U. et al, 2000; Behl, M. et al, 2004; Lindner, S.M. et al, 2004)が最近いくつかの可能性をもつことが示されたが、もっとも、将来の光起電力デバイスにおける統合についてはなお制約がある(Lindner, S.M. et al, 2006)。
【0003】
広く研究された有機太陽電池は、典型的には、バルク−ヘテロ接合内に光活性成分として電子供与体共役系ポリマーと電子受容体C60部分(又は誘導体)とを含んでいる(非特許文献1〜3)。光照射の結果、ポリマー領域中に生じた励起子は、それらが解離する場所である供与体−受容体界面を通って移動し、自由電荷を発生させる。これらの自由電荷は一旦陽極及び陰極に到達すると、電流が生じることができる。これらのプロセスが効果的に生じるためには、ポリマー領域は励起子の拡散に都合が良いようにナノメータ・サイズであるべきであり(かくして、約10nmの大きさまでに制限される)(非特許文献4,5)、その層形態は各々の材料を通って効果的に電荷が浸透するため、偏析した供与体領域と受容体領域を含むべきである(非特許文献3)。
【0004】
先に我々は、よく制御された開環メタセシス重合(ROMP)のための新規な機能性モノマーの合成に成功している(非特許文献6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
〔発明の目的又は動機〕
機能性ブロック共重合体は、ナノ構造を持つ材料を調製するための魅力的候補である。正確・精密なナノ構造を持つ機能性材料を(ナノレベルの正確・精密さで)得るために、我々は自己集合のための離散的巨大分子対象としてブロック共重合体鎖を考えた。我々は、電子的及び光起電力的性質を有する高度に秩序化したナノ構造を持つ材料を、新規なジブロック共重合体を自己集合させることによって調製することを目標とした。我々は、一つのブロックに親水性供与体のポルフィリン側鎖がぶら下がり、他の一つのブロックに疎水性のフラーレン単位がぶら下がったロッド様のジブロック共重合体を、リビング開環メタセシス重合(ROMP)によって調製することを試みた。我々は、こうして親水性供与体のポルフィリン含有基を有するシクロブテン含有化合物(モノマー)と、疎水性受容体のフラーレン含有基を有するシクロブテン含有化合物(モノマー)とを設計し、調製した。我々は、制御可能な大きさ及び性質をもつ一次元の光伝導性ナノワイヤが、構成成分を形成するブロックの自己認識により、この新規なジブロック共重合体の自己集合を介して形成されることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明の要約〕
本発明は、次の式(I)で示されるジブロック共重合体を提供する。
【化1】

ここで、Rは重合に用いる触媒から誘導されるフェニル基であり、p及びqは1〜1000(更に好ましくは2〜100)から選ばれる整数であり、Dは親水性供与体のポルフィリン含有基であり、Aは疎水性受容体のフラーレン含有基である。
【0007】
本発明は、また本発明のジブロック共重合体より構成される高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤをも提供する。
【0008】
本発明は、更にまた高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ(又は複数のナノワイヤ)の作製方法をも提供し、その方法は次の工程を含んでいる。
(i)本発明のジブロック共重合体を有機溶媒に溶かす工程と、
(ii)均質な共重合体溶液を基板の上に堆積させる工程と、
(iii)溶媒を蒸発させ、基板の上に直接ナノワイヤを形成する工程。
【0009】
本発明は、また次の式(D1)又は式(D2)で示されるシクロブテン含有化合物(モノマー)をも提供する。
【化2】

【0010】
【化3】

ここで、m及びrは1〜50(更に好ましくは2〜20)から選ばれる整数であり、Mは、無し(配位金属なしのポルフィリン)又は金属である。
【0011】
本発明は、次の式(A1)又は式(A3)で示される別のシクロブテン含有化合物(モノマー)をも提供する。

【化4】

【0012】
【化5】

ここで、nは1〜50(更に好ましくは2〜10)から選ばれる整数であり、n’は0〜20(更に好ましくは0〜11)から選ばれる整数である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジブロック共重合体は、新規な共重合体である。
本発明の高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤは、本発明のジブロック共重合体の自己集合により得られる。
本発明の製造方法により、本発明の高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ(又は複数のナノワイヤ)を得ることができる。
本発明のシクロブテン含有化合物(モノマー)は、本発明のジブロック共重合体の出発物質である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】亜鉛ポルフィリンがぶら下がったシクロブテン含有モノマーD1=D’(m=3)、D2=D’ ’(m=3、r=6)、及びフラーレンがぶら下がったシクロブテン含有モノマーA1=A’(n=6、n’=0)、A2=A’(n=12、n’=0)、及びA3=A’ ’(n=3、n’=0)の化学構造。
【図2】調製・検討した供与体-受容体共重合体。
【図3】モノマー化合物D1合成の図解。
【図4】モノマー化合物D2合成の図解。
【図5】モノマー化合物A1及びA2合成の図解。
【図6】モノマー化合物A3合成の図解。
【図7】シリコン(110)表面上にP1のCHCl溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像。
【図8】シリコン(110)表面上にP1のテトラクロロエタン溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像。
【図9】P1のCHCl溶液を滴下して得られたナノワイヤのTEM像。
【図10】シリコン(110)表面上にP2のCHCl溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像。
【図11】P3のCHCl溶液を滴下して得られたナノワイヤのTEM像。
【図12】ガラス板上に形成されたP1、P2、P3及びP4からのナノワイヤの面内X線回折プロフィール。
【図13】P1からのナノワイヤの模式図。
【図14】白色光照射のオン−オフに応答するP1ナノワイヤのキャストフィルムの電流密度における変化。印加電力密度及び電圧は、各々20mW・m−2、及び+0.5Vとした。
【図15】P1ナノワイヤのキャストフィルムの電子吸収スペクトル(曲線)と光電流作用スペクトル(○)。
【図16】P1ナノワイヤ及びP3ナノワイヤについてのFP−TRMC過渡的電荷移動度プロフィール。
【図17】P1ナノワイヤ及びP3ナノワイヤについてのE1/2に対するTOF正孔ドリフト移動度(○)及び電子ドリフト移動度(□)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔発明の更に詳しい説明〕
更に本発明を詳細に説明する。上記式(I)におけるRは、重合に使用する触媒由来の有機基から選ばれる。研究されたモノマー構造の良く制御された重合反応が導かれ、従って組成の良く分かったブロック共重合体が得られるので、第一世代のグラブス(Grubbs)触媒が好ましく用いられる。第一世代のグラブス(Grubbs)触媒を用いるときには、Rはフェニル基である。
【0016】
上記式(I)におけるDは、好ましくは次の式(D’)又は式(D’ ’)で示されるポルフィリン含有基である。
【化6】

【0017】

【化7】

ここで、m及びrは、1〜50(更に好ましくは2〜20)から選ばれる整数であり、Mは、無し(配位金属なしのポルフィリン)又は金属である。
Mで表される金属としては、Fe、Mg、Zn、Ni、Co、Cu等の二価の金属が挙げられる。
【0018】
上記式(I)におけるAは、好ましくは次の式(A’)又は式(A’ ’)で示されるフラーレン含有基であるAである。
【化8】

【0019】
【化9】

ここで、nは1〜50(更に好ましくは2〜10)から選ばれる整数であり、n’ は0〜20(更に好ましくは0〜11)から選ばれる整数である。
【0020】
ポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A1)20(P1)の場合、このジブロック共重合体は、高温のクロロホルムやテトラクロロエタンには溶けるが、極性溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、及び芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン)には溶けない。
【0021】
上述したように、本発明では本発明のジブロック共重合体からつくられる高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤが提供される。
ここで、ジブロック共重合体の式(I)におけるDは、好ましくは式(D’)で示されるポルフィリン含有基であり、ジブロック共重合体の式(I)におけるAは、好ましくは式(A’)で示されるフラーレン含有基である。
【0022】
上述したように、本発明では高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ(又は複数のナノワイヤ)の製造方法も提供され、その方法は既に述べた工程(i)〜(iii)を含んでいる。
工程(i)において用いる有機溶媒として、ジブロック共重合体を溶かすため、高温のクロロホルムやテトラクロロエタンを使用できる。
工程(ii)において用いる基板として、シリコン、マイカ、HOPG、及びガラスを使用できる。
【0023】
ポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A1)20(P1)の場合、P1のクロロホルム/THF溶液を一晩冷蔵(−10℃)すると、自己集合したP1の赤色のサスペンジョンが定量的に生じる。この固体サスペンジョンをSEMで分析すると、直径が約16nmで、長さが数μmの均質な一次元ナノ構造の形成が見られる。面白いことに、P1のクロロホルム溶液を用いて、シリコン、マイカ、ガラス、又は高配向した熱分解グラファイト(HOPG)の表面にスピン・コート法又は滴下成形法で単に塗布しても、同様な一次元ナノ構造が形成される。
【0024】
このナノワイヤの直径はポリマーの鎖長を変化させることで制御でき、また、秩序化したポリマー鎖間の内部間隔は、フラーレン側鎖の長さを変化させることで調節できる。
【実施例】
【0025】
本発明で用いた溶媒及び試薬は、アルドリッチ社(Aldrich Chemical Co.)、東京化成社又は和光ケミカル社から入手した。NMR分光測定用溶媒は、ケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリー社(Cambridge Isotope Laboratories Inc.)から購入した。7,8−N−4−ヒドロキシフェニルスクシンイミドエンド−トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−3,9−ジエン(7,8-N-4-hydroxyphenylsuccinimide endo-tricyclo[4.2.2.02,5]deca-3,9-diene)は、文献(Charvet, R., Novak, B.M. : Macromolecules, vol. 37, 8808-8811, 2004)に記載された方法によって調製した。
図1に、亜鉛ポルフィリンがぶら下がったシクロブテン含有モノマーのD1、D2、及びフラーレンがぶら下がったシクロブテン含有モノマーのA1〜A3の化学構造を示す。図2に、調製し、調べた供与体−受容体共重合体を示す。
図3及び図4には、化合物D1及びD2の合成の概要を各々示している。図5及び図6には、化合物A1〜A2及びA3の合成の概要を各々示している。
【0026】
<実施例1>
(a)PZn−OHの合成
【化10】

【0027】
5,10,15,20−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−21H,23H−ポルフィン(5, 10, 15, 20-tetrakis(4-hydroxyphenyl)-21H,23H-porphine)(500mg、0.74mmol)、メチルエーテル−トリ(エチレングリコール)−p−トルエンスルフォネート(methylether-tri(ethyleneglycol)-p-toluenesulfonate)(726mg、2.28mmol)、KCO(306mg、2.21mmol)及び18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(19mg、0.07mmol)の混合物を無水1−メチル−2−ピロリドン(1-methyl-2-pyrrolidone)(NMP,10mL)に溶かし、これを窒素雰囲気下に80℃で24時間加熱した。冷却後、減圧蒸留にてNMPを取り除き、溶出混合液としてCHCl/MeOH(50:1)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって、紫色固体として所望の生成物を単離した。次に、その配位金属なしのポルフィリンをCHCl/MeOH混合液(50mL、容量比で5/1)に入れ、これにZn(OAc).2HO(219mg、0.5mmol)を加えた。室温で4時間撹拌したのち、その混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチルに入れ、水で洗い、有機相はNaSOで乾燥した。濃縮し、ヘキサンで洗って、純粋な紫色固体を得た(定量的に)。収量(収率)は413mg(48%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 3.39 (s, 6H, OCH3), 3.40 (s, 3H, OCH3), 3.59 (m, 6H, CH2OCH3), 3.70 (m, 6H, CH2CH2OCH3), 3.76 (m, 6H, CH2OCH2CH2OCH3), 3.85 (m, 6H, CH2CH2OCH2CH2OCH3), 4.02 (m, 6H, ArOCH2CH2), 4.39 (m, 6H, ArOCH2), 7.25 (m, 8H, Ar), 8.09 (d, J = 8.4 Hz, 8H, Ar), 8.96 (m, 8H, b-H). MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1180.40 ([M+2H]+), (M+ 1178.42, calcd for: C65H70N4O13Zn).
【0028】
(b)化合物1の合成(図3参照)
7,8−N−4−ヒドロキシフェニルスクシンイミドエンド−トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−3,9−ジエン(7,8-N-4-hydroxyphenylsuccinimide endo-tricyclo[4.2.2.02,5]deca-3,9-diene)(500 mg,1.71 mmol),KCO(594 mg,4.3 mmol)、18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(27mg,0.10mmol)及びトリ(エチレングリコール)ジ−p−トルエンスルフォネート(tri(ethyleneglycol) di-p-toluenesulfonate)(1.17mg,2.56mmol)の混合物を窒素ガスで乾燥・置換した。無水アセトン(30mL)を加え、その混合物を還流加熱した。その際の反応はTLC分析で追った。還流24時間後、その混合物を冷却・濾過し、濃縮した。目的の生成物は、溶出混合液としてヘキサン/酢酸エチル(1/1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、ガラス様固体として単離された。収量(収率)は642mg(65%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 2.44 (s, 3H, CH3), 2.88 (s, 2H, CH), 2.94 (t, J = 1.5 Hz, 2H, CH), 3.27 (s, 2H, CH), 3.60-3.67 (m, 4H, CH2), 3.70 (t, J = 5 Hz, 2H, CH2), 3.82 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2), 4.12 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2), 4.17 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2) 5.92 (s, 2H, CH), 6.01 (dd, J =1.6 Hz, CH), 6.95 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.10 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.33 (d, J = 7.8 Hz, 2H, Ar), 7.80 (d, J = 7.8 Hz, 2H, Ar). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 21.79, 37.20, 43.50, 44.32, 67.86, 68.92, 69.42, 69.83, 70.97 (2), 115.27, 125.01, 127.90, 128.14, 128.60, 129.99, 133.26, 138.17, 144.96, 158.83, 178.23.
【0029】
(c)化合物D1(m=3)の合成
無水NMP(5ml)中に溶かしたPZn−OH(150mg,0.13mmol)、KCO(44mg,0.32mmol),18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(3mg,0.013mmol)及び化合物1(81mg,0.14mmol)の混合物を、窒素下に80℃で24時間加熱した。室温で冷ました後、減圧蒸留にてNMPを取り除き、残渣を一晩乾燥させた。目的の化合物は、溶出混合液としてCHCl/MeOH(30/1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、メタノールを用いて再結晶させることで、紫色の輝く粉末として得られた。収量(収率)は153mg(76%)であった。
1H NMR (THF-d8) d: 2.65 (s, 2H, CH), 2.69 (s, 2H, CH), 3.01 (s, 2H, CH), 3.33 (s, 9H, OCH3), 3.51 (t, J = 4.8 Hz, 6H, CH2), 3.63-3.7 (m, 12H, CH2), 3.77 (m, 10H, CH2), 3.88 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2), 3.98 (t, J = 4.8 Hz, 8H, CH2), 4.17 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2), 4.38 (t, J = 4.8 Hz, 8H, CH2), 5.81-5.85 (m, 4H, CH), 6.95 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.05 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 8H, Ar), 8.06 (d, J = 8.4 Hz, 8H, Ar), 8.86(s, 8H, b-H). MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1587.90 ([M+H]+), (M+ 1585.6, calcd for: C89H95N5O18Zn). UV - vis (CHCl3, 25oC): 426 (5.27*105), 555 (1.95*104), 597 (8500).
【0030】
<実施例2>
(a)化合物2の合成(図4参照)
7,8−N−4−ヒドロキシフェニルスクシンイミドエンド−トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−3,9−ジエン(7,8-N-4-hydroxyphenylsuccinimide endo-tricyclo[4.2.2.02,5]deca-3,9-diene)(500mg,1.7mmol)、KCO(585mg,4.25mmol)、及び18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(45mg,0.17mmol)の混合物に、窒素雰囲気下で無水アセトン(28mL)を加えた。次いで、反応混合物中へ窒素ガスを15分間バブリングさせ、1,6−ジブロモヘキサン(1,6-dibromohexane)(0.39mL,2.55mmol)を加えた。次いで、その混合物を加熱・還流させ、H NMR(DMSO−d−CDCl)を用いて反応させた。還流24時間後に、その混合物を冷却・濾過し、濃縮した。目的の生成物は、溶離液としてCHClを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、白色固体として単離した。収量(収率)は527mg(68%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.50 (m, 4H, CH2), 1.80 (m, 2H, CH2), 1.90 (m, 2H, CH2), 2.88 (s, 2H, CH), 2.94 (s, 2H, CH), 3.27 (s, 2H, CH), 3.43 (t, J = 7 Hz, 2H, BrCH2), 3.97 (t, J = 7 Hz, 2H, OCH2), 5.93 (s, 2H, CH), 6.01 (m, 2H, CH), 6.93 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.09 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 178.27, 159.13, 138.16, 128.57, 127.86, 124.60, 115.09, 68.10, 44.29, 43.47, 37.17, 33.94, 32.81, 29.13, 28.03, 25.41.
【0031】
(b)化合物D2(m=3、r=6)の合成
Zn−OH(140mg,0.119mmol)、KCO(41.1mg, 0.297mmol)及び18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(6.6mg,0.025mmol)の乾燥混合物に、窒素雰囲気下で無水THF(15mL)を加えた。凍結―乾燥サイクルを3回行なった後、化合物2(59.4mg、0.13mmol)を加えた。次いで、その混合物を加熱・還流させ、TLC分析を行なった。反応終了後、反応混合物を冷やし、濃縮した。目的の分子は、CHCl及び連続的に加えたMeOHを溶出混合液として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、紫色の輝く固体として単離した。収量(収率)は167mg(90%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.70 (m, 4H, CH2), 1.91 (m, 2H, CH2), 2.02 (m, 2H, CH2), 2.85 (s, 2H, CH), 2.89 (s, 2H, CH), 3.22 (s, 2H, CH), 3.42 (s, 9H, OCH3), 3.61 (m, 6H, CH2OCH3), 3.74 (m, 6H, CH2CH2OCH3), 3.79 (m, 6H, CH2OCH2CH2OCH3), 3.88 (m, 6H, CH2CH2OCH2CH2OCH3), 4.06 (m, 8H, ArOCH2CH2, ArOCH2), 4.29 (t, J = 6.3 Hz, 2H, ArOCH2), 4.44 (m, 6H, ArOCH2), 5.91 (s, 2H, CH), 5.97 (t, J = 3.9 Hz, CH), 6.98 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.30 (d, J = 8.4 Hz, 8H, Ar), 8.11 (d, J = 8.4 Hz, 8H, Ar), 8.97 (m, 8H, b-H). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 178.18, 159.17, 158.89, 158.52, 150.67, 150.60, 138.13, 135.77, 135.65, 135.58, 135.45, 132.02, 128.50, 127.78, 124.45, 120.95, 120.78, 115.11, 112.83, 71.86, 70.85, 70.64, 70.50, 69.89, 68.27, 67.71, 59.02, 44.25, 43.31, 37.07, 29.63, 29.35, 26.20, 26.13. MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1555.93 ([M+2H]+), (M+ 1553.61, calcd for: C89H95N6O16Zn).
【0032】
実施例3
(a)化合物3(n=6)の合成(図5参照)
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)(1g、8.19mmol)、KCO(2.76mg、20mmol)、18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(216mg、0.82mmol)及び1,6−ジブロモヘキサン(1,6-dibromohexane)(1.5mL、9.83mmol)の混合物を無水THF(50mL)中で、窒素下に24時間加熱・還流させた。濾過及び溶媒除去後に、残渣をCHCl中に入れ、水で洗った。有機相をNaSOで乾燥し、濃縮した。目的の化合物は、ヘキサン/EtOAc(4/1)を溶出混合物として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、白色固体として得られた。収量(収率)は914mg(39%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.53 (m, 4H, CH2), 1.85 (m, 2H, CH2), 1.91 (m, 2H, CH2), 3.44 (t, J = 6.6 Hz, 2H, CH2Br), 4.06 (t, J = 6.3 Hz, 2H, OCH2), 7.00 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.84 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 9.89 (s, 1H, CHO). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 25.40, 28.03, 29.07, 32.79, 33.88, 68.32, 114.93, 130.04, 132.16, 164.33,190.93.
【0033】
(b)化合物3(n=12)の合成(図5参照)
化合物3(n=12)は、化合物3(n=6)の場合と同様な方法で調製した。収量(収率)は1.59g(53%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.27-1.46 (m, 16H, CH2), 1.79 (m, 2H, CH2), 3.38 (t, J = 6.6 Hz, 2H, CH2Br), 4.01 (t, J = 6.6 Hz, 2H, OCH2), 6.97 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.80 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 9.85 (s, 1H, CHO). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 26.06, 28.27, 28.87, 29.44, 29.53, 29.61, 29.63 (2), 32.93, 34.17, 68.52, 114.84, 129.84, 132.07, 164.36, 190.84.
【0034】
(c)化合物4(n=6)の合成(図5参照)
7,8−N−4−ヒドロキシフェニルスクシンイミドエンド−トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−3,9−ジエン(7,8-N-4-hydroxyphenylsuccinimide endo-tricyclo[4.2.2.02,5]deca-3,9-diene)(300mg、1.02mmol)、KCO(352mg、2.55mmol)、18−クラウン−6エーテル(18-crown-6 ether)(27mg、0.10mmol)及び化合物3(n=6)(307mg、1.08mmol)の混合物を、無水THF(25mL)に溶かし、窒素下に72時間、加熱・還流した。濾過及び溶媒除去後に、残渣をCHClに入れ、水で洗った。有機相をNaSOで乾燥させ、濃縮した。目的の化合物は、ヘキサン/EtOAc(2/1)を溶出混合物として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、ベージュ色固体として得られた。収量(収率)は256mg(51%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.55 (m, 4H, CH2), 1.85 (m, 4H, CH2), 2.87 (s, 2H, CH), 2.95 (t, J = 1.44 Hz, 2H, CH), 3.27 (sh, 2H, CH), 3.98 (t, J = 6 Hz, 2H, OCH2), 4.06 (t, J = 6.3 Hz, 2H, OCH2), 5.93 (s, 2H, CH), 6.01 (dd, J = 4.65, 3.2 Hz, 2H, CH), 6.94 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.00 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ar), 7.09 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.83 (d, J = 8.8 Hz, 2H, Ar), 9.89 (s, 1H, CHO). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 25.91, 25.96, 37.20, 43.51, 44.32, 68.14, 68.39, 114.94, 115.12, 124.63, 127.90, 128.60, 129.99, 132.17, 138.17, 159.17, 164.38, 178.31, 190.99.
【0035】
(d)化合物4(n=12)の合成(図5参照)
化合物4(n=12)は、化合物4(n=6)の場合と同様な方法で調製した。収量(収率)は0.24g(35%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.28 (m, 12H, CH2), 1.45 (m, 4H, CH2), 1.80 (m, 2H, CH2), 2.87 (s, 2H, CH), 2.94 (t, J = 1.4 Hz, 2H, CH), 3.27 (s, 2H, CH), 3.95 (t, J = 6.3 Hz, 2H, CH2Br), 4.04 (t, J = 6.3 Hz, 2H, OCH2), 5.92 (s, 2H, CH), 6.00 (m, 2H, CH), 6.93 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 6.99 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.83 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 9.89 (s, 1H, CHO). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 26.11, 26.15, 29.21, 29.30, 29.49, 29.69 (2), 37.17, 43.47, 44.29, 68.34, 68.58, 114.91, 115.09, 124.47, 127.84, 128.58, 129.88, 132.15, 138.16, 159.23, 164.43, 178.33, 191.00.
【0036】
(e)化合物A1(n=6、n’=0)の合成(図5参照)
化合物4(n=6)(176mg、0.35mmol)、C60(280mg、0.39 mmol)及びサルコシン(312mg、3.5mmol)の混合物を無水o−ジクロロベンゼン(100mL)に溶かし、窒素下に120℃で2時間加熱した。減圧蒸留によりo−ジクロロベンゼンを除去後、目的の分子をトルエン及びトルエン/EtOAc(20/1)を溶出混合液とするシリカゲル・カラムクロマトグラフィーで分離し、淡褐色固体として単離した。収量(収率)は183mg(42%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.53 (m, 4H, CH2), 1.81 (m, 4H, CH2), 2.80 (s, 3H, CH3), 2.88 (s, 2H, CH), 2.94 (t, J = 1.5 Hz, 2H, CH), 3.27 (sh, 2H, CH), 3.96 (t, J = 6.3 Hz, 2H, OCH2), 3.98 (t, J = 6.3 Hz, 2H, OCH2), 4.25 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 4.89 (s, 1H, NCH), 4.98 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 5.92 (s, 2H, CH), 6.00 (dd, J = 4.65, 3.2 Hz, 2H, CH), 6.93 (m, 4H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.71 (sh, 2H, Ar). MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1247.24 ([M+H]+), (M+ 1244.91, calcd for: C96H36N2O4).
【0037】
<実施例4>
化合物A2の合成(図5参照)
化合物4(12)(200mg、0.34mmol)、C60(272mg、0.38 mmol)及びサルコシン(307mg、3.44mmol)の混合物を無水o−ジクロロベンゼン(100mL)に溶かし、これを窒素下に120℃で3時間加熱した。減圧蒸留によりo−ジクロロベンゼンを除去後、目的の分子をトルエン及びトルエン/EtOAc(30/1)を溶出混合液として用いたシリカゲル・カラムクロマトグラフィーで分離し、続いてメタノールを用いたクロロホルムから沈殿させて、淡褐色固体として単離した。収量(収率)は207mg(45%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 1.28 (m, 12H, CH2), 1.57 (m, 4H, CH2), 1.77 (m, 4H, CH2), 2.80 (s, 3H, CH3), 2.87 (s, 2H, CH), 2.95 (s, 2H, CH), 3.27 (sh, 2H, CH), 3.95 (m, 4H, OCH2), 4.24 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 4.88 (s, 1H, NCH), 4.98 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 5.92 (s, 2H, CH), 6.00 (t, J = 4 Hz, 2H, CH), 6.94 (m, 4H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.71 (sh, 2H, Ar). MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1331.1 ([M+H]+), (M+ 1328.37, calcd for: C99H48N2O4).
【0038】
<実施例5>
化合物5の合成(図6参照)
化合物1(200mg、0.345mmol)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(4-hydroxybenzaldehyde)(55mg、0.45mmol)及びKCO(119mg、0.86mmol)の混合物を無水DMF(5mL)に溶かし、窒素下に80℃で24時間加熱した。次いで、DMFを減圧蒸留により除き、得られた固体残渣を減圧乾燥した。目的の化合物は、シリカゲル・カラムクロマトグラフィー(3%MeOHを含むCHCl)によりガラス様固体として得られた。収量(収率)は190mg(99%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 2.88 (s, 2H, CH), 2.94 (t, J = 1.5 Hz, 2H, CH), 3.27 (s, 2H, CH), 3.76 (s, CH2, 4H), 3.84-3.94 (m, 4H, CH2), 4.13 (t, J = 5 Hz, 2H, CH2), 4.21 (t, J = 4.8 Hz, 2H, CH2), 5.92 (s, 2H, CH), 6.01 (dd, J =1.6 Hz, CH), 6.95 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.02 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.82 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 9.88 (s, 1H, CHO). 13C {1H} NMR (CDCl3) d: 25.91, 25.96, 37.20, 43.51, 44.32, 68.14, 68.39, 114.94, 115.12, 124.63, 127.90, 128.60, 129.99, 132.17, 138.17, 159.17, 164.38, 178.31, 190.99. MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z ([M+2H]+), (M+ 529.21, calcd for: C31H31NO7).
【0039】
(b)化合物A3(n=3、n’=0)の合成(図6参照)
化合物5(140mg、0.26mmol)、C60(228mg、0.32mmol)及びサルコシン(235mg、2.64mmol)の混合物を無水o−ジクロロベンゼン(80mL)に溶かし、これを窒素雰囲気下に120℃で2時間加熱した。減圧蒸留によりo−ジクロロベンゼンを除去後、目的の分子をトルエン及びトルエン/EtOAc(容量比で20/1、10/1、5/1)を溶出混合物とするシリカゲル・カラムクロマトグラフィーで分離し、続いてメタノールを含むジクロロメタンから再沈殿させて淡褐色固体として単離した。収量(収率)は131mg(39%)であった。
1H NMR (CDCl3) d: 2.79 (s, 3H, NCH3), 2.87 (s, 2H, CH), 2.94 (s, 2H, CH), 3.27 (s, 2H, CH), 3.73 (m, 4H, CH2), 3.95 (m, 4H, CH2), 4.12 (m, 4H, CH2), 4.24 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 4.88 (s, 1H, NCH), 4.98 (d, J = 9.5 Hz, 1H, NCH2), 5.92 (s, 2H, CH), 6.00 (dd, J =1.6 Hz, CH), 6.90-6.98 (m, 4H, Ar), 7.02 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.08 (d, J = 9 Hz, 2H, Ar), 7.60 (sh, 2H, Ar). MS (MALDI-TOF, dithranol): m/z 1277.54 ([M+H]+), (M+ 1276.27, calcd for: C93H36N2O6).
【0040】
<比較例1>
ホモポリマーの合成(ポリ(D1)20の調製)
窒素下、無水CHCl(0.2mL)に溶かしたD1(29.8mg、0.019mmol)に対して、無水CHCl(0.09mL)に溶かしたGrubbsの第一世代触媒ClRu(CHPh)(PCyを加えた。この条件では、[D1]=0.06Mで、[D1]:[触媒]=20である。その溶液を窒素下に室温で17時間撹拌した。エチルビニルエーテルで反応を止めたアリコートのH NMR分析は反応が終了したことを示していた。撹拌24時間後、次にエチルビニルエーテル(30μL)を加え、その溶液を更に1時間撹拌した。その反応混合物を、次いでMeOH(400mL)中へ滴下しつつ加え、沈殿した固体は濾過により回収した。それを少量のCHClに再び溶かし、得られた溶液をヘキサン(200mL)に加えた。この操作を2回繰り返した。沈殿物を濾過により回収し、MeOHで洗い、真空で一晩乾燥し、輝紫色の固体を得た。収量(収率)は26mg(87%)であった。
1H NMR (THF-d8) d: 2.5-4.3 (br, 55 H), 5.1 (sh, CH), 6.2 (sh, CH), 6.7-7.4 (br, 12H, Ar), 7.94 (br, 8H, Ar), 8.78 (br, 8H, b-H). SEC (system A): Mn = 19823, PDI = 1.34.
【0041】
<実施例6〜10>
ブロック共重合体の合成(P1、P2、P3、P4、P6の調製)(図2参照)
窒素下に無水CHCl(0.15mL)に溶かしたD1(20mg、0.013mmol)に対して、無水CHCl(0.05mL)に溶かしたGrubbsの第一世代触媒ClRu(CHPh)(PCyを加えた。この条件では、[D1]=0.06Mで、[D1]:[触媒]=20である。室温で24時間撹拌した後、無水CHCl(0.2mL)に溶かしたA1(15.8mg、0.013mmol)を窒素下に加え、その溶液を24時間、激しく撹拌した。得られた粘性の混合物にエチルビニルエーテル(30μL)及び無水CHCl(0.4mL)を加え、これを更に1時間撹拌した。次いで、その反応混合物をMeOH(400mL)へ滴下しつつ加え、生じた沈殿固形物を濾過により回収した。これをCHClに溶かし、再びMeOH(400mL)中で沈殿させた。回収した固体をCHClに入れ、ヘキサン(200mL)中で沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、MeOH、ヘキサンで洗い、真空で一晩乾燥し、暗紫色固体を得た。収量(収率)は33mg(93%)であった。
同様な操作により、それぞれ収量(収率)で、P2(22mg、86%)、P3(33mg、89%)、P4(20mg、75%)及びP6(34mg、93%)が得られた。
【0042】
<比較例2>
ランダム共重合体の合成(P5の調製)(図2参照)
窒素下に無水CHCl(0.25mL)に溶かしたD1(18mg、0.011mmol)及びA2(15mg、0.011mmol)へ、無水CHCl(0.05mL)に溶かしたGrubbsの第一世代触媒ClRu(CHPh)(PCyを加えた。この条件では、[D1]=[A2]=0.04Mで、[D1]:[触媒]=[A2]:[触媒]=20である。室温で24時間撹拌の後に、エチルビニルエーテル(30μL)を加え、混合物を更に1時間撹拌した。次いで、これをMeOH(200mL)中へ滴下しつつ加え、生じた沈殿固形物を濾過により回収した。回収された沈殿固形物を少量のCHClに溶かし、MeOH(200mL)中で再沈殿させた。沈殿物を濾過により回収し、MeOH、ヘキサンで洗い、真空中で一晩乾燥し、輝紫色の固体を得た。収量(収率)は31mg(94%)であった。
1H NMR (CDCl3, 50℃) d: 1.2-1.5 (m, 16H, CH2, A2 units), 1.7 (br s, 4H, CH2, A2 units), 2.56 (br s, 4H), 2.7-4.6 (m, 75 H), 5.1 (sh, CH), 6.37 (sh, CH), 6.7-7.6 (m, 20H, Ar), 8.02 (br, 8H, Ar, D1 units), 8.88 (s, 8H, b-H, D1 units).
【0043】
<実施例11〜14>
P1、P2、P3、P4から自己集合したナノワイヤの調製と、それらのキャラクタリゼーション
所望のブロック共重合体(P1又はP2)を、P2の場合には少し撹拌することにより、またP1の場合には加熱と超音波処理することにより、直接クロロホルムに溶かした(それらの濃度は、0.1〜1%wt./vol.)。次に、冷却された均質なポリマー溶液をシリコン(基板)の上に一滴堆積させた。溶媒が揮散するにつれて、基板上に均質なナノワイヤが形成された。
【0044】
図7は、シリコン(110)表面上にポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A1)20(P1)のCHCl溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像を示し、またこれは直径が16nm、長さが数μmの均質な一次元ナノ構造の形成を示している。図8は、シリコン(110)表面上に、P1のテトラクロロエタン溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像を示している。これらSEM像から、これらのナノ構造が長さが数μmまでの、直径分布のシャープなナノワイヤから構成されていることを示している。
【0045】
図9はP1のCHCl溶液を滴下して得られたナノワイヤのTEM像を示している。このTEM像は、一次元のナノ物体が直径16nmであり、上記SEM像と一致していることを示している。加えて、このナノワイヤは各々のナノワイヤの長軸に対して周期的に垂直に配列された交互の離散的領域から成っており、これは長軸に沿う好ましい成長方向を示唆している。この顕著な内部組織の周期性は、面内X線回折法(図12)によって確かめられた。領域は幅が5.38nmであり、この数字はTEM像から計算される5.45nm幅とよく一致している。
【0046】
図10はシリコン(110)表面上にポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A1)(P2)のCHCl溶液を滴下成形して生じたナノワイヤのSEM像を示している。P2のクロロホルム溶液からの簡単な滴下成形法によって、直径がより小さい11nmであること以外は類似している一次元ナノ構造を得ることができるが、このことは(ナノワイヤの)直径分布を制御していることを示している。ポリマー鎖長の変動はナノワイヤの直径に影響を与えるけれども、内部領域の間隔はP1の場合で測定した値と同じ値(5.36nm)を維持している。
【0047】
自己集合のメカニズムをよりよく理解するために、我々はポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A2)20(P3)及びポリ(D1)20−ブロック−ポリ(A2)(P4)を調製した。これらはP1及びP2と同様なポルフィリン/C60含量を有するブロック共重合体であるが、長いC12アルキルスペーサーを使ってフラーレン単位がぶら下がったモノマーA2を含んでいる。類似の均質なナノワイヤが、P3及びP4のクロロホルム溶液からも、また簡単な滴下成形法で得ることができた。図11はP3のCHCl溶液を滴下して得られたナノワイヤのTEM像を示している。
これらのナノワイヤは、直径の大きさの変動の点でP1及びP2で観察されたものと同様な傾向であるが、しかしながら内部領域間の間隔は大きめの6.24nmである(図11、図12)。供与体のポルフィリン単位と受容体のフラーレン単位の同様なブロックを含むナノワイヤの両ファミリーを比較するときに、ポリマー骨格とC60単位の間のスペーサーの増加は、内部領域の間隔が5.36nmから6.24nmへ変化する結果になっているが、これはナノワイヤ領域の間隔の制御を示唆している。このことは、共重合体を形成するブロックは特異的なブロックの認識によって自然に集合し、図13に示すようにナノワイヤを生じることを示唆している。このナノワイヤの直径は共重合体鎖の長さによって決定され、一方ポリマーを形成するブロックの幅は内部領域のサイズを定める。
【0048】
提案した自己集合メカニズムを確認するために、我々はP3と同様な側鎖量を含むD1及びA2のモノマーから調製したランダム共重合体(P5)を調べた。シリコン表面へP5のクロロホルム溶液の滴下成形法によっては一次元ナノ構造を得ることができず、これは更に自己集合プロセスにおけるブロックの形態の重要性を示している。
【0049】
自己集合プロセスは、大きさ、及びよく分かった合成して形成されたブロック間の顕著な自己認識プロセスを明白に伴っている化学構造に関して高度に選択的である。P1とP2の1:1混合物をシリコンへ滴下成形したときに、直径が16nm及び11nmのナノワイヤだけが、すなわち各ブロックの自己集合からのナノワイヤだけが観察された(図示せず)。更には、P1とP3の1:1混合物を滴下成形したときに、内部領域が5.38nm又は6.24nmのナノワイヤだけが得られ、両方のナノサイズの領域を含む混合物は得られなかった(図示せず)。
【0050】
各々のナノワイヤの中で、長距離相互作用は、類似している物のブロック間、よく分かった界面によって分離された電子供与体又は電子受容体間で起こりうる。従って、各々のナノワイヤは超分子のp−nヘテロ接合とみなすことができる。その研究したモノマーの相対エネルギーダイアグラムを考慮すると、光で誘起された電子移動がポルフィリン発色団からフラーレン部位へ起こっており、このことは、P1及びP3のナノ構造膜におけるポルフィリン蛍光放射が、(ポリ(D1)20ホモポリマーからのアモルファス膜からの蛍光放射に比べ)各々77%及び72%弱まっていることによっても示されている。2プローブ方法を用いて、我々はシリコン基板上に作製した間隔1μm、長さ1mmの金電極間にポリマーを滴下成形して形成させた自己集合構造物の光伝導性の性質を調べた。自己集合ナノワイヤは、白色光の照射で鋭い(応答時間が1秒未満)かつ再現性のある光応答を示した(図14)。入射光に対して発生した光電流に関係する光作用スペクトルは、超分子構造の中に(ポルフィリン単位が)含まれるときに、ポルフィリン単位の特性吸収帯と重なることが分かった(図15)が、これは、ポルフィリン単位からC60部位へ光で誘起された電子移動が、実際に観察された光応答の原因となっていることを示している。P3膜に比べてP1膜からは、より高い光電流が得られた一方で、いずれのナノ構造膜に対しても、電流−電圧特性は、オーミックな性質であった。
【0051】
我々は、非接触のフラッシュ光分解時間分解マイクロ波伝導(FP−TRMC)を用いて電荷輸送の性質を検討した。355nmのレーザーパルスで励起したとき、P1ナノワイヤで測定された総括伝導度(φΣμ)は6.4×10−4cm−1−1で、P3ナノワイヤの場合の大きさの2倍の応答であった。一方、堆積させたP5からの伝導度は驚くべきことに一桁以上小さかった(図示せず)。これらの結果は、電流−電圧データ(図示せず)とよく一致している。355nmでの電荷分離の量子収量を考慮すると、P1ナノワイヤで得られた総括電荷移動度の0.26cm−1−1(図16)は、P3ナノワイヤ(0.01cm−1−1)に比べて一桁以上高かった。これらポリマーのナノ構造における光発生電荷に対する移動度の水準は、従来の有機太陽電池において観察されている水準に比べて著しく高いものであり、有機ディスコチック材料の高度に秩序化した円柱状集合物から通常得られる移動度の範囲内である。
【0052】
P1及びP3のナノ構造膜における両極電荷輸送の性質を明らかにするために、電流モード飛行時間(TOF)法を用いた。いずれの材料も同様な電子移動度(約3×10−3cm−1−1)を示す一方で、正孔移動度はP1については4×10Vm−1の電界で3.7×10−2cm−1−1に達し、一方、P3についての正孔移動度は一桁低い値(3.7×10−3cm−1−1)であった(図17)。驚くべきことに、P1ナノワイヤは従来のポリマー(PCBM)膜に比べて二桁高い正孔移動度を示した。P1ナノワイヤとP3ナノワイヤの違いは、それらのナノワイヤ内におけるポリマー鎖のパッキングを考慮して合理的に説明できる。P1におけるポルフィリン側鎖とフラーレン側鎖とは同程度の大きさを持っており、そのためにナノワイヤの構造中で各々のポルフィリン単位とフラーレン単位の間で密なパッキングが起こりうる。P3ナノワイヤにおいては、より長いC12アルキルスペーサーがぶら下がったフラーレン単位は、ナノワイヤの両ファミリー間で同様な電子移動度により示されるように、尚、相互に密に作用し合うことができるが、ポルフィリン単位の鎖間のパッキングはP1ナノワイヤ構造におけるほど密ではなく、そのために正孔移動度がより低いという結果になっている。我々の結果は、電荷担体の移動度と機能的部分の効果的パッキングの間に密な関係があることを例証している。
【0053】
設計を柔軟にし、かつ電荷輸送性を精密に制御しながら、自己集合したナノワイヤを上手に長い範囲に亘って配列させること(図示せず)は、強化された電子的及び光伝導的性質を持つナノ構造を有する有機ヘテロ接合材料を調製する上で重要なブレークスルーとなるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0054】
【非特許文献1】Sariciftci, N.S. et al., “Photoinduced electron transfer from a conducting polymer to buckminsterfullerene.” Science, vol.258, 1474-1476 (1992).
【非特許文献2】Yu, G. et al., “Polymer photovoltaic cells: enhanced efficiencies via a network of internal donor-acceptor heterojunctions.” Science, vol.270, 1789-1791 (1995).
【非特許文献3】Halls, J.J.M. et al., “Exciton diffusion and dissociation in a poly(p-phenylenevinylene)/C60 heterojunction photovoltaic cell.” Appl. Phys. Lett., vol.68, 3120-3122 (1996).
【非特許文献4】Hoppe, H. et al., “Organic solar cells: an overview.” J. Mater. Res., vol.19, 1924-1945 (2004).
【非特許文献5】Haugeneder, A., et al. “Exciton diffusion and dissociation in conjugated polymer/fullerene blends and heterostructures.” Phys. Rev., B 59, 15346-15351 (1999).
【非特許文献6】Charvet, R., Novak, B.M. “New functional monomers for well-controlled ROMP polymerization. ”Macromolecules, vol.34, 7680-7685 (2001).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(I)で示されるジブロック共重合体であって、
【化1】


Rは重合に用いる触媒由来のフェニル基であり、
p及びqは、1〜1000から選ばれる整数であり、
Dは親水性供与体のポルフィリン含有基であり、
Aは疎水性受容体のフラーレン含有基である。
【請求項2】
請求項1のジブロック共重合体において、
前記Dは、次の式(D’)又は式(D’ ’)で示されるポルフィリン含有基であるジブロック共重合体。
【化2】


【化3】



ここで、m及びrは、1〜50から選ばれる整数であり、
Mは、無し(すなわち、配位金属なしのポルフィリン)又は金属である。
【請求項3】
請求項1又は2のジブロック共重合体において、
前記Aは、次の式(A’)又は式(A’ ’)で示されるフラーレン含有基であるジブロック共重合体。
【化4】




【化5】



ここで、nは1〜50から選ばれる整数であり、
n’は0〜20から選ばれる整数である。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれか1つのジブロック共重合体を含んでなる高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ。
【請求項5】
請求項4の高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤにおいて、
前記Dは、前記式(D’)で示したポルフィリン含有基であり、
前記Aは、前記式(A’)で示したフラーレン含有基である高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤ。
【請求項6】
次の工程を含んでなる高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤの作製方法であって、
(i)請求項1、2、3のいずれか1つのジブロック共重合体を有機溶媒に溶かす工程と、
(ii)均質な共重合体溶液を基板の上に配する工程と、
(iii)前記溶媒を蒸発させ、前記基板の上に直接ナノワイヤを形成する工程
とを備えたことを特徴とする高移動度・光伝導性異方性ナノワイヤの作製方法。
【請求項7】
請求項6の作製方法は、
工程(i)で用いるジブロック共重合体が、次の式(I)で示されるジブロック共重合体である作製方法:
【化6】



ここで、前記Dは前記式(D’)で示されるポルフィリン含有基であり、
前記Aは前記式(A’)で示されるフラーレン含有基である。
【請求項8】
次の式(D1)又は式(D2)で示されるシクロブテン含有化合物(モノマー)。
【化7】




【化8】



ここで、m及びrは、1〜50から選ばれる整数であり、
Mは、無し(すなわち、配位金属なしのポルフィリン)又は金属である。
【請求項9】
次の式(A1)又は式(A3)で示されるシクロブテン含有化合物(モノマー)。

【化9】



【化10】



ここで、nは1〜50から選ばれる整数であり、
n’は0〜20から選ばれる整数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−195918(P2010−195918A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−41732(P2009−41732)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】