説明

新規なペプチド及びこれの用途

本発明は新規なペプチド及びこれの用途に関するものであり、より詳しくは配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチド及び前記ペプチドをこれを必要とする個体に有効な量で投与することを含む、繊維芽細胞の増殖促進方法及び創傷治癒促進方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なペプチド及びこれの用途に関する。より具体的には、本発明は繊維芽細胞の増殖を促進して創傷治癒を促進する活性を有するペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治癒(wound healing)は皮膚、筋肉、神経組織、骨、軟組織(soft tissue)、内部器官又は血管組織を含む損傷された組織の復元(repair)又は復位(replacement)をいう。このような創傷治癒は、急性及び慢性炎症、細胞の移動、新たな血管の形成及び細胞間質(extracellular matrix:ECM)の蓄積等のような組織反応が順次的に起こることによりなされる。創傷が発生すると、周囲組織の血管に損傷を与えるようになり、病所に出血を引起こす。出血した血塊(blood clot)の中にあるフィブリノーゲン(fibrinogen)がフィブリンゲル(fibrin gel)を形成すると、フィブロネクチン(fibronectin)のような血漿の中の蛋白質がゲルに入るようになる。この他にも炎症細胞、繊維芽細胞及び新たな血管形成細胞等がこのようなゲルの中に入ってきて、コラーゲン、プロテオグリカン(proteoglycan)等のようなECM成分等を傷の周囲組織に蓄積させる。これにより、最初に存在していたフィブリンマトリックスが肉芽組織(granulation tissue)に代置され、時間が経つと、その場に斑痕を形成するようになる。さらに、ECMの蓄積と共に、角質細胞(keratinocyte)が移動して上皮膜を形成することにより、水分の損失と細菌の侵入を防止してくれる。このような創傷治癒に関連した一連の過程等は、損傷部位組織の免疫細胞、炎症細胞及び間葉細胞等の細胞、TGF-β(transforming growth factor-β)、PDGF(platelet-derived growth factor)、EGF(epidermal growth factor)、FGF(fibroblast growth factor)及びFAF(fibroblast activation factor)等の多様な種類のサイトカイン(cytokine)及びコラーゲン、フィブロネクチン、テナシン(tenascin)及びプロテオグリカン等のようなECM等の相互作用によりなされている。
【0003】
最近では、創傷治癒を促進する為の薬剤として上述した創傷治癒と関連したサイトカインを含む組成物等が開発されている。例えば、Jonhshon & Jonhshon社では、遺伝工学的に製造されたPDGFであるビカプロミン(Becaplermin)を創傷治療剤として販売しており、ヨーロッパ特許第0575484号にはPDGFとデキサメタソン(dexamethasone)を含む哺乳動物の組織再生及び治療の為の薬学的組成物が開示されている。さらに、米国特許第5981606号にはTGF-βを含む創傷治療剤が開示されている。
特に、前記創傷治癒と関連したサイトカインのうち、FGFは繊維芽細胞の増殖を促進することにより、創傷治癒を促進するものとして知られており、これを利用した創傷治療剤が開発されている。つまり、米国特許第6800286号には創傷治癒促進活性を有するキメリックFGFが開示されており、米国特許第5155214号にはFGFを含む創傷治療剤が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、一般的に、多数のアミノ酸からなるペプチドは生体内に投与すれば、代謝され、ペプチド結合が切断され、医薬として製剤化する段階で分解され易い短所がある。従って、薬剤として使用する為には、ペプチドの長さをなるべく短くするのが好ましいものの、薬理活性は維持されなければならないので、長鎖ペプチドの最小活性発現単位を究明することは医薬品開発において重要な課題である。
ここに、本発明者等は新たな創傷治療剤を開発しようと研究を重ねて行くうち、公知のAIMP1蛋白質のN-末端領域のアミノ酸配列の一部を含むペプチドが、繊維芽細胞の増殖を促進して創傷治癒を促進する活性があることを確認することにより本発明を完成した。
従って、本発明の目的は配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチド及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記のような目的を達成する為に、本発明は配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
さらに、本発明は前記ペプチドを含む組成物を提供する。
さらに、本発明は前記ペプチドを必要とする個体に有効な量で投与することを含む繊維芽細胞の増殖促進方法を提供する。
さらに、本発明は前記ペプチドを必要とする個体に有効な量で投与することを含む創傷治癒促進方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
用語の定義
他の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、当業者等により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
本発明で使用される用語“創傷(wound)”は生体が損傷した状態であり、生体内部又は外部表面をなす組織、例えば、皮膚、筋肉、神経組織、骨、軟組織、内部器官又は血管組織が分断又は破壊された病理学的状態を包括する。創傷の例としてはこれらに限定されるものではなく、挫傷(contusion or bruise)、非治癒外傷性創傷、放射線照射による組織の破壊、擦過傷(abrasion)、骨塊疽、裂傷(laceration)、剥離傷(avulsion)、貫通傷(penetrated wound)、銃傷(gun shot wound)、切傷、火傷、凍傷、皮膚壊瘍、皮膚乾燥、皮膚角化症、ひび、裂け目、皮膚炎、皮膚糸状菌腫による痛症、手術傷、血管疾患創傷、角膜創傷等の創傷、じょく瘡(pressure sore)、床ずれ(bed sore)、糖尿性皮膚びらん(diabetic skin erosion)のような糖尿病及び循環不良と関連した状態、慢性壊瘍、整形手術後縫合部位、脊椎傷害性創傷、婦人科的創傷、化学的創傷及びニキビを含み、個体のいずれの部分に対する損傷も全て含まれる。
【0007】
本発明で使用される用語“創傷治癒促進”とは、個体の損傷した組織を復元(repair)、復位(replacement)、好転、加速化又は完治させることをいう。
本発明で使用される用語“有効な量”とは、試験管内又は生体内で繊維芽細胞の増殖を促進するか又は、創傷治癒を促進するに効果的な量をいう。
本発明で使用される用語“個体(subject)”とは、哺乳動物、特に人間を含む動物又は前記動物の皮膚細胞、皮膚組織を意味する。前記個体は治療が必要な患者(patient)の場合もあり得る。さらに前記皮膚細胞は好ましくは、繊維芽細胞の場合もあり得る。
【0008】
本発明のペプチドはAIMP1蛋白質のN-末端アミノ酸配列の一部を含む。一方、AIMP1(ARS-interacting multi-functional protein 1)蛋白質は、従来からp43蛋白質として知られたものであって、本発明者等により再命名されたものである(Sang Gyu Park, et al., Trends in Biochemical Sciences 30:569-574, 2005)。
前記AIMP1蛋白質は、312個のアミノ酸からなる蛋白質であり、多重tRNA合成酵素複合体(mult-tRNA synthetase complex)に結合して、前記多重tRNA合成酵素の触媒的活性(catalytic activity)を増進させる蛋白質である。AIMP1蛋白質は前立腺癌、免疫及び形質転換細胞を含む多様な形態の細胞から分泌され、AIMP1は単核球/マクロファージィ、内皮細胞及び繊維芽細胞のような多様な標的細胞に作用することが知られている。前記AIMP1蛋白質は3ヶ所のSNPが知られている(NCBIのSNPデータベース参照)。つまり、全長AIMP1蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)のうち79番目アミノ酸であるアラニン(Ala)がプロリン(Pro)に置換された場合(SNP accession no. rs3133166)、104番目アミノ酸であるトレオニン(Thr)がアラニン(Ala)に置換された場合(SNP accesion no. rs17036670)、117番目アミノ酸であるトレオニンがアラニン(SNP accesion no. rs2230255)に置換された場合が知られている。
【0009】
一方、本発明者等は前記AIMP1蛋白質がそれぞれ異なる多様な標的細胞に対して多様で複雑な活性を有していることから、AIMP1は各活性を表す為に、それぞれ異なる構造的モチーフ又はドメイン等を使用するであろうと仮定した。このような可能性を確認する為に、AIMP1蛋白質をプロテアーゼを利用して切断(cleave)し、切断された断片が活性を有しているか否かを調査した(実施例1参照)。その結果、AIMP1をエラスターゼ2(elastase 2)で切断した場合、小さい断片に分かれ(図1参照)、エラスターゼ2により切断された断片が内皮細胞に対するプロアポトチック(pro-apoptotic)活性(細胞増殖抑制活性)は維持するものの、繊維芽細胞に対する増殖-促進(growth-stimulatory)活性はなくしたことを発見した(図2参照)。
【0010】
ここに、本発明者等は繊維芽細胞増殖促進と関連したAIMP1蛋白質の機能ドメインを決定する為に、エラスターゼ2により切断されるAIMP1の切断サイトを同定し(図3参照)、これを基にしてAIMP1の一連の欠損断片等を製造し(図4及び図5参照)、各断片等の繊維芽細胞の増殖に及ぼす活性を調査した(実施例2参照)。その結果、AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域が繊維芽細胞の増殖を促進する活性を有するドメインであることを推定することができた(図6参照)。
本発明者等はこのような推定を立証する為に、AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域に該当するペプチドを製造し(実施例<3-1>参照)、これの繊維芽細胞増殖促進活性を測定した(実施例<3-2>参照)。その結果、AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域は濃度依存的に繊維芽細胞の増殖を促進することを確認することができた(図7参照)。
【0011】
さらに、本発明者等は、AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域が繊維芽細胞の増殖を促進することにより、創傷治癒が促進できるか否かを生体内実験を通じて検証した。この際、前記AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域を任意に切断して21個のアミノ酸からなる小断片を製造し、これらの創傷治癒促進活性も共に調査した(実施例4参照)。その結果、AIMP1蛋白質の6-46番アミノ酸領域のみならず、これらから製造した小断片等も創傷治癒を促進する活性のあることが確認できた(図8参照)。
従って、本発明は配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。
NH2-AVLKRLEQKGAEADQIIEYLKQQVSLLKEKAILQATLREEK-COOH(配列番号1)
【0012】
本発明で使用される略字の定義は下記の通りである。A(アラニン);D(アスパラギン酸);E(グルタミン酸);G(グリシン);I(イソロイシン);K(リシン);L(ロイシン);Q(グルタミン);R(アルギニン);S(セリン);T(トレオニン);V(バリン);Y(チロシン)。
好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号1乃至配列番号7及び配列番号32乃至配列番号37からなるグループの内で選ばれた、いずれか一つのアミノ酸配列からなるものとし得る。前記配列番号32乃至配列番号37のアミノ酸配列は、前記配列番号4又は配列番号5のアミノ酸配列の公知のSNPである。最も好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列からなるものとすることができる。
【0013】
さらに、本発明のペプチドの範囲には、配列番号1のアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチドの機能的同等物、さらに好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチドの機能的同等物及びそれらの塩を含む。前記“機能的同等物”とは、アミノ酸の付加、置換又は欠失の結果、配列番号1のペプチドと少なくとも80%以上の、好ましくは、90%、さらに好ましくは95%以上の配列相同性(即ち、同一性)を有するものであって、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するものを含み、配列番号1のペプチドと実質的に同質の生理活性を表すペプチドをいう。本明細書では配列相同性及び同質性は配列番号1のアミノ酸配列と候補配列を整列し、ギャップ(gaps)を導入した後配列番号1のアミノ酸配列に対する候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。必要な場合、最大百分率配列同質性を得る為に、配列同質性の部分として保存的置換は考慮しない。配列番号1のアミノ酸配列のN-末端、C-末端又は内部伸張、欠損又は挿入は配列同質性又は相同性に影響を与える配列として解釈されない。また、前記配列同質性は二つのポリペプチドのアミノ酸配列の類似した部分を比較する為に使用される一般的な標準方法により決定できる。BLAST又はFASTAのようなコンピュータープログラムは二つのポリペプチドを各アミノ酸に最適にマッチング(matching)されるように整列する(一つ又は二つの配列の全長配列に従って、又は、一つ又は二つの配列の予測された部分に従って)。前記プログラムはデフォルトオープニングペナルティー(default opening penalty)及びデフォルトギャップペナルティー(default gap penalty)を提供し、コンピュータープログラムと共に使用され得るPAM250(標準スコアリングマトリックス; Dayhoff et al., in Atlas of Protein Sequence and Structure, vol 5, supp. 3, 1978)のようなスコアリングマトリックスを提供する。例えば、百分率同質性は次のように計算できる:一致する配列(identical matches)の総数に100をかけた後、これを対応するスパン(machted span)内のより長い配列の長さと、二つの配列を整列する為により長い配列内に導入されたギャップ(gaps)の和の合計で割る。
【0014】
前記において“実質的に同質の生理活性”とは、繊維芽細胞に作用して繊維芽細胞の増殖を促進し、創傷治癒効果を促進する活性をいう。本発明の“機能的同等物”の範囲には、配列番号1のペプチドの基本骨格と、繊維芽細胞増殖及び創傷治癒促進活性を維持しながらペプチドの一部化学構造が変形された誘導体が含まれる。例えば、ペプチドの安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変更させる為の構造変更がこれに含まれる。
本発明に伴うペプチドは、これを暗号化する組換核酸の発現による遺伝工学的方法により組み換えることができる。例えば、前記本発明のペプチドは本発明のペプチドを暗号化する核酸配列又はその断片を前記核酸配列に作動可能に連結され(operatively linked)、その発現を調節する一つ又はそれ以上の発現調節配列(expression control sequence)を含むベクトルに挿入させ、それより形成された組換発現ベクトルで宿主を形質転換させ、生成された形質転換体を前記核酸配列が発現されるようにする為、適切な培地及び条件下で培養し、培養物から実質的に純粋な蛋白質を分離及び精製する段階を含む遺伝工学的方法により製造できる。遺伝工学的にペプチドを製造する方法は当業界において既に知られている(Maniatis et al., Molecula Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1982); Sambrook et al., supra; Gene Expression Technology, Method in Enzymology, Genetics and Molecular Biology, Methods in Enzymology, Guthrie & Fink (eds.), Academic Press, San Diego, Calif. (1991); Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255, 12073-12080 (1980))。
【0015】
さらに、本発明のペプチドは当分野の公知技術で化学的に合成することができる(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman and Co., NY (1983))。つまり、本発明のペプチドは通常の段階的な液体又は固体状合成、断片凝縮、F-MOC又はT-BOC化学法を利用して製造できる(Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, Williams et al., Eds., CRC Press, Boca Raton Florida, (1997); A Practical Approach, Atherton & Sheppard, Eds., IRL Press, Oxford, England, (1989))。
特に、好ましい製造方法は固体状合成方法(solid phase synthesis)を利用することである。本発明のペプチドは保護されたアミノ酸間の凝縮反応(condensation reaction)により、通常の固体状方法でC−末端から開始して究明されたアミノ酸配列により、連続的に進行しながら合成できる。凝縮反応後保護基及びC−末端アミノ酸が連結された担体を酸分解(acid decomposition)又はアミノリシス(aminolysis)のような公知の方法により除去できる。前記言及されたペプチド合成法は関連書籍に詳細に記述されている(Gross and Meienhofer's, The Peptides, vol 2., Academic Press, 1980)。
【0016】
本発明のペプチドの合成の為に使用できる固体状の担体はこの分野で通常使用される担体であり、例えば、置換されたベンジル形態のポリスチレンレジン(polystyrene resins of substituted benzyl type)、ヒドロキシメチルフェニルアセチックアミド形態のポリスチレンレジン、置換されたベンズヒドリルポリスチレンレジン、ペプチドに結合できる機能基を有するポリアクリルアミドレジン等を使用することができる。アミノ酸凝縮又は通常の方法でも良く、例えば、ジシクロヘキシルカボジイミド(DDC)、酸無水物(acid anhydride)及び活性化エステル(activated ester)方法を使用することもできる。
【0017】
本発明のペプチド合成に使用された保護基は、通常のペプチド合成に使用されるものであり、酸分解、還元又はアミノリシスのような通常の方法により容易に除去されるものが含まれる。アミノ保護基の具体例としてはホルミル;トリフルオロアセチル;ベンジルオキシカルボニル;(オルソ-又はパラ-)クロロベンジルオキシカルボニル及び(オルソ-又はパラ-)ブロモベンジルオキシカルボニルのような置換されたベンジルオキシカルボニル;t-ブトキシカボニル及びt-アミロキシカボニルのような脂肪族オキシカボニル等がある。アミノ酸のカルボキシル基等はエステル基に転換させることにより保護することができる。エステル基にはベンジルエステル、メトキシベンジルエステルのような置換されたベンジルエステル;シクロヘキシルエステル、シクロヘプチルエステル又はt-ブチルエステルのようなアルキルエステル等がある。グアニジノ基は保護基が不要であるが、ニトロ;又はトシル、メトキシベンゼンスルホニル又はメシチレンスルホニルのようなアリルスルホニルにより保護できる。イミダゾルの保護基としては、トシル、ベンジル及びジニトロフェリル等がある。トリプトファンのインドール基は保護基が無くても良くホルミル等で保護基を付けることもできる。
【0018】
脱保護及び担体からペプチドを分離することは、種々なスカベンジャ(scavenger)存在下に無水ヒドロフルオライドを用いて行える。スカベンジャの例にはアニソル、(オルソ-、メタ-、パラ-)クレゾール、ジメチルスルフィド、チオクレゾール、エタンエンジオール及びメルカプトピリジン等を挙げることができる。これらはペプチド合成において通常使用されるものである。
遺伝工学的方法により、製造された組換ペプチド又は化学的に合成されたペプチドは、例えば、抽出法、再結晶法、多様なクロマトグラフィー(ゲル濾過法、イオン交換、沈殿、吸着、逆相)、電気泳動、逆流分配法等の当業界に公知の方法で分離及び精製することができる。
【0019】
前記本発明のペプチドは組成物の形態で提供できる。さらに、本発明の組成物は本発明のペプチドの薬学的に許容される塩を、有効成分として含有することができる。薬学的に許容される塩としては、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩及び塩基性又は酸性アミノ酸との塩が含まれる。無機塩基との塩は、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩及びアンモニウム塩が含まれる。有機塩基との塩には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N'-ジベンジルエチレンジアミンとの塩を例に挙げられる。無機酸との塩の例としては塩酸、ホウ酸、硝酸、硫酸及びリン酸との塩を挙げられる。有機酸との塩を例に挙げれば、蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、タルタル酸、マレイン酸、シトロ酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸との塩が含まれる。塩基性アミノ酸との塩は例えば、アルギニン、ロイシン、オルニチンが含まれる。酸性アミノ酸との塩の例にはアスパラギン酸及びグルタミン酸との塩を挙げれる。適切な塩の目録は本明細書でその全文を参考に引用した文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, p1418, 1985]に開示されている。
【0020】
一方、前記組成物は薬学的に許容される担体を追加して含有することにより、当業界に公知の方法により、どのような剤形にでも製造することができる。好ましくは、外用剤の形態で製造することができる。製剤の形態としはこれに限定はされず、例えば、液状塗布剤、噴霧剤、ローション剤、ゲル剤、パスタ剤、軟膏剤、エアロゾル、粉末剤、経皮吸収剤等がある。
【0021】
本発明の外用剤において薬学的に許容される担体としては、その剤形によって異なるが、ワセリン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスティベース)らの炭化水素類;中鎖脂肪酸トリグリセライド、豚脂、ハードファット、カカオ脂等の動植物性オイル;セタノール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル等の高級脂肪酸アルコール及び脂肪酸及びそのエステル類;ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセロール、ゼラチン、白糖、糖アルコール等の水溶性基剤;グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の乳化剤;アクリル酸エステル、アルギン酸ナトリウム等の粘着剤;液化石油ガス、二酸化炭素等の噴射剤;パラオキシ安息香酸エステル類等の防腐剤等が挙げられる。さらに、これらの他にも安定剤、香料、着色剤、pH調整剤、希釈剤、界面活性剤、保存剤、硫酸化剤等を必要に応じて配合することができる。本発明の外用剤の使用は通常の方法により局所創傷部に塗布するのが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の外用剤は、一般的な絆創膏の創傷剥離カバーのような固体支持体上に粘着され、使用することができる。粘着は本発明の組成物を固体支持体に飽和させた後、脱水して、達成することができる。好ましくは、固体支持体を先に粘着剤で被覆し、固体支持体への本発明の組成物の付着を向上させることができる。粘着剤の例としてはポリアクリルレート及びシアノアクリレート等がある。このような形態の剤形は市販されているものが多く、その例には穿孔されたプラスチックフィルム形態の非付着性傷剥離カバーを有する絆創膏(Smith & Nephew Ltd);Johnson & Johnsonの薄いストリップ(strip)、パッチ(patch)、スポット(spot)、可塑性ストリップ形態のバンドエイド(登録商標);Colgate-Palmolive Co.(Kendall)のキュリティキュラドアウチレス(Curity CURAD Ouchless)絆創膏;及びAmerican White Cross Laboratories Inc.のスティックタイト(STIK-TITE)弾性ストリップが挙げられる。本発明のペプチドはこのような形態の剤形に有効成分として適用され得る。
【0023】
さらに、本発明の組成物は経口投与用剤形にも製造できる。経口投与用の場合、本発明のペプチドは適宜な担体と混合され、摂取型錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、サスペンション、シロップ及びウェハー等の形態で剤形化することができる。これらの剤形は有効成分以外に希釈剤(例:ラクトース、テキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/又はグリシン)と潤滑剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸及びマグネシウム又はカルシウム塩及び/又はポリエチレングリコール)を含み得る。多くの剤形のうち、特に精剤はマグネシウムアルミニウムシリケート、澱粉ペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び/又は、ポリビニルピロリドンのような結合剤を含むことができ、場合によっては澱粉、寒天、アルギン酸又はそれのナトリウム塩のような崩解剤、吸収剤、着色剤、香味剤及び/又は甘味剤を追加して含み得る。
【0024】
さらに、本発明の組成物は本発明のペプチドの活性をさらに強化させる為に、繊維芽細胞増殖及び創傷治癒促進活性を有する公知の活性成分を追加して含み得る。例えば、本発明の組成物は本発明のペプチドの活性をさらに強化させる為に、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ゲンタマイシン、硫酸、ネオマイシン、バシトラシン及び硫酸ポリミキシンBのような抗生剤(antibiotics);ジペンヒドラミン、プロメタジン、トリペレナミン、フェノチアジン、クロロペニラミン、アンタゾリン及びパントリン等の抗ヒスタミン剤(anti-histamines);抗炎剤(anti-inflammatory drugs);抗ウィルス剤(anti-viral drugs);抗真菌剤(anti-fungal agents);PDGF(platelet-derived growth factor)、PDAF、PDEGF、TGF-β、PF-4、αFGF、bFGF(basic fibroblast growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、GH(growth hormone)、EGF(epidermal growth factor)及びIGF(insulin-like growth factor) 等の成長因子(growth factor)等を追加して含み得る。
本発明の別の観点として、本発明は本発明のペプチドを、それを必要とする個体に有効な量で投与することを含む繊維芽細胞の増殖促進方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明は本発明のペプチドを、これを必要とする個体に有効な量で投与することを含む創傷治癒促進方法を提供する。
前記本発明のペプチドはそれ自体をそのまま投与するか、又は上述したような多様な剤形で製造して投与することができ、好ましくは望む効果、つまり、繊維芽細胞の増殖及び/又は創傷治癒促進効果が得られるまで投与することができる。
さらに、本発明のペプチドは当業界に公知の方法により、多様な経路で投与することができる。つまり、経口又は非経口投与することができ、非経口投与には、例えば、局所的に皮膚に塗布するか、又は、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、骨髄内、境膜内、腹腔内、脾腔内、腟内、直腸内、舌下又は皮下投与されるか又は、胃腸管、粘膜、又は、呼吸器に投与することができる。好ましくは、本発明のペプチドは皮膚に直接塗布する方法により投与することができる。
【0026】
本発明のペプチドの有効量は、投与経路、治療回数、治療を必要とする個体の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等の多様な要因を考慮して、当業者が詳述した特定用途による適切な有効投与量を決定することができる。本発明のペプチドの有効量は、1乃至10000μg/体重kg/dayとすることが好ましく、10乃至1000μg/体重kg/dayとすることがより好ましい。
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳しく説明する。
下記実施例は、本発明を例示するものにして、本発明の内容がこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
<実験例1>
エラスターゼ2により切断されたAIMP1断片の活性測定
<1-1>エラスターゼ2の処理
312個のアミノ酸からなるAIMP1蛋白質(配列番号8)は当業界に公知の方法(Park S. G. et al., J. Biol. Chem., 277:45243-45248, 2002)により製造した。前記AIMP1蛋白質にエラスターゼ2を処理し、切断されたAIMP1断片を多様な細胞に処理して、細胞増殖活性を測定した。つまり、AIMP1蛋白質(4μg)をエラスターゼ2(1 unit/ml)と共に37℃で4時間培養した。培養完了後収得した断片等を15%SDS-PAGEで分析し、クマシブルーで染色して視覚化した。
実験結果、エラスターゼ2の処理により、AIMP1蛋白質は小さい断片等に分離されることを確認することができた(図1参照)。
【0028】
<1-2>エラスターゼ2により切断されたAIMP1断片等の細胞増殖活性
前記実験例<1-1>でエラスターゼ2により、切断されたAIMP1断片等を人間の包皮繊維芽細胞(foreskin fibroblast)(MIT社より入手したMC1232)、U2OS細胞(ATCC HTB-96)及び牛の大動脈内皮細胞(Bovine aorta endotheilial cells;以下BAECsと称す)に処理して、前記AIMP1断片等が前記細胞の増殖に及ぼす影響を調査した。前記U2OS細胞は骨肉腫細胞(Osteosarcoma)であり、AIMP1による細胞増殖が起こらないことと知られているので、対照群として使用した。
BAECs(Bovine aorta endothelial cells)は牛の胸部大動脈から分離し、20%FBS(fetal bovine serum)を含有したDMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)で37℃、5% CO2の条件で培養した。包皮繊維芽細胞及びU2OS細胞は10%FBS及び1%抗生剤が含有されたDMEMで培養した。培養された各細胞(5x103 cells)を24-ウェルプレートで12時間培養した後、3時間血清飢餓培養した。その後各ウェルに100nMの全長AIMP1蛋白質又は酵素により切断されたAIMP1断片を添加し、12時間培養した。対照群には何等の処理もしなかった。培養が完了した後、トリチウム表示された[3H]チミジン(tritium-labeled thymidine, 1μCi/well)を各ウェルに添加し、細胞を37℃でさらに4時間培養した。培養した細胞をPBSで3回洗浄した後、5%TCAで10分間固定した後、PBSで再び3回洗浄した。細胞を0.5N NaOHで溶解し、取り込まれたチミジンの量を液体閃光計数機(liquid scintillation counter)で定量した。
実験の結果、エラスターゼ2により切断されたAIMP1断片は全長AIMP1蛋白質のように、内皮細胞の増殖を抑制する活性は維持されているものの、繊維芽細胞の増殖を誘導する活性は失われていた(図2参照)。これよりAIMP1の多様な活性は、AIMP1に存在するそれぞれ異なるドメインにより表れるものであることが分かり、エラスターゼ2により切断されたAIMP1の領域が繊維芽細胞の増殖に重要な役割をするということを推定することができた。
【0029】
<実施例1>
エラスターゼ2によるAIMP1切断サイトの同定及びAIMP1欠損断片の製造
エラスターゼ2により切断されたAIMP1の領域を同定する為に、前記<1-1>のエラスターゼ2、切断されたAIMP1断片等のN−末端アミノ酸配列をエドマン分解法及び自動配列分析器を利用したN−末端アミノ酸シーケンシングにより決定して切断サイトを同定した(図3参照)。
上記のように決定した配列情報により、AIMP1の幾つかの欠損断片、つまり、
AIMP1-(1-192)、AIMP1-(6-192)、AIMP1-(30-192)、AIMP1-(47-192)、
AIMP1-(54-192)、AIMP1-(101-192)、AIMP1-(114-192)、AIMP1-(1-46)、
AIMP1-(1-53)及びAIMP1-(193-312)断片をそれぞれ製造した(図4)。前記各断片はAIMP1のcDNA(配列番号9)を鋳型とし、各断片に対する特異的なプライマーセット(表1)を利用してPCR増幅することにより製造した。PCR増幅の条件は次の通りである。95℃2分間、95℃30秒、56℃30秒、72℃1分間30サイクル及び;72℃5分間。
【0030】
【表1】

【0031】
前記PCR産物等をEcoRI及びXhoIで切断し、同一の酵素で切断したpGEX4T3ベクター(Amersham Biosciences)にライゲートした。前記ベクターでE coli BL21(DE3)を形質転換し、これを培養してペプチドの発現を誘導した。各ペプチドはGST-tag融合蛋白質に発現され、これをGSHアガロースにより精製した。リポポリサッカライドを除去する為に、蛋白質溶液をパイロゼン無添加緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液, pH6.0, 100mM NaCl)より透析した。透析後、蛋白質を同一な緩衝液で平衡させたポリマイシン樹脂(Bio-Rad)にローディングして20分間培養した後溶出した。精製した各ペプチドをSDS-PAGEで分析した(図5参照)。
【0032】
<実施例2>
AIMP1の繊維芽細胞増殖促進活性を有するドメインの同定
前記実施例1で製造した組換蛋白質の繊維芽細胞増殖活性を調査する為に、実施例<1-2>と同一の方法でそれぞれの組換蛋白質を包皮繊維芽細胞に処理して細胞増殖程度を調査した。
実験の結果、AIMP1のN−末端領域が繊維芽細胞の増殖を促進することが分かった。つまり、AIMP1-(1-312)(配列番号8)、AIMP1-(1-192)(配列番号5)、AIMP1-(1-46)(配列番号2)、AIMP1-(1-53)(配列番号3)及びAIMP1-(6-192)(配列番号4)は繊維芽細胞の増殖を誘導する活性が高く表れたものの、AIMP1-(30-192)、-(47-192)、-(54-192)、-(101-192)、-(114-192)、及び-(193-312)は活性を示さなかった(図6参照)。このような結果は、AIMP1のN-末端領域が、特にAIMP1-(6-46)が繊維芽細胞の増殖を誘導するドメインであることを提示してくれる。
【0033】
<実施例3>
AIMP1-(6-46)断片の繊維芽細胞増殖促進活性
AIMP1-(6-46)が繊維芽細胞の増殖を誘導するドメインであるという推定を確認する為に、AIMP1-(6-46)断片を製造して、その繊維芽細胞増殖促進活性を調査した。
【0034】
<3-1> AIMP1-(6-46)断片を製造
AIMP1の6-46アミノ酸に相応するペプチド(配列番号1)を合成して、繊維芽細胞増殖に及ぼす前記ペプチドの影響を分析した。AIMP1-(6-46)はAIMP1のcDNAを鋳型にし、下記の特異的なプライマーセット(配列番号30及び配列番号31)を利用してPCRにより合成した。PCR増幅の条件は次の通りである:95℃2分;95℃30秒、56℃30秒、72℃1分間30サイクル及び;72℃5分。
【0035】
AIMP1-(6-46)のセンスプライマー(配列番号30)
5’-CGG ATT TCG CTG TTC TGA AGA GAC TGG AGC AG-3’
AIMP1-(6-46)のアンチセンスプライマー(配列番号31)
5’-GTC TCG AGT TAC TTC TCT TCC CTC AAA GTT GCC TG-3’
【0036】
増幅されたPCR産物等をEcoRI及びXhoIで切断し、同一の酵素で切断したpGEX4T3ベクター(Amercham Biosciences)にライゲートした。前記ベクターでE Coli BL21(DE3)を形質転換し、これを培養して、前記実施例1と同一の方法でペプチドの発現を誘導した後、分離及び精製した。
【0037】
<3-2> 繊維芽細胞の増殖促進活性
前記<3-1>で製造したAIMP1-(6-46)断片が繊維芽細胞の増殖を促進するか否かを実験例<1-2>と同一の方法で調査した。この際、AIMP1-(6-46)断片の処理濃度を色々の濃度(0, 50, 100, 200nM)にし、対照群としては全長AIMP1蛋白質(AIMP1-(1-132))100nMを使用した。
実験の結果、AIMP1-(6-46)断片は濃度依存的に繊維芽細胞の増殖を誘導することが示され、同一の濃度で全長AIMP1蛋白質(AIMP1-(1-312))とほぼ類似する活性を示した(図7参照)。
【0038】
<実施例4>
AIMP1欠損断片の創傷治癒促進活性
前記実施例3で製造したAIMP1-(6-46)断片よりさらに小さいサイズの小断片、つまり、AIMP1-(14-34)(配列番号6)及びAIMP1-(26-46)(配列番号7)断片をペプトロン社(Peptron, http://peptron.co.kr)に依頼し、それぞれ化学的合成方法で製造し、これらの創傷治癒促進活性を生体内(in vivo)で調査した。創傷治癒活性は8週齢のC57BL/6マウスを利用して行った。前記マウスに2.5%アバチン(Avertin)(100μl/10g)を腹腔内に注射し、麻酔させた後背中部位を剃り、70%アルコールで皮膚を消毒した。背中部位の皮膚に0.5cm直径の円を表示し、はさみを利用して皮膚及び肉上層筋肉(panniculus carnosus muscle)を除去することにより、創傷を誘導した。前記創傷部位をドレッシングせずに放置した。マウス当たり一つの創傷を誘導し、20%グリセロールが含有されたPBS(Phosphate-buffered saline)に溶解させたAIMP1-(14-34)、AIMP1-(26-46)及びAIMP1-(6-46)断片200nMずつを創傷部位に8日間12時間置きに一日に2回ずつそれぞれ処理した。対照群には20%グリセロールが含まれたPBSのみを処理した。その後創傷治癒程度(wound closure)を、イメージ-プロソフトウェア(Image-pro Plus software)を利用して毎日観察し、初期の創傷範囲に対する百分率を計算することにより示した。
実験の結果、AIMP1-(14-34)、AIMP1-(26-46)及びAIMP1-(6-46)断片は創傷治癒を促進する活性があることが確認できた。また、これらの創傷治癒促進活性は全て類似した程度であることが示された(図8参照)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上記の通り、本発明のペプチドは繊維芽細胞の増殖を測定して創傷治癒を促進する活性がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】エラスターゼ2を処理したAIMP1蛋白質のSDS-PAGE結果である。 -:エラスターゼ2を処理していない +:エラスターゼ2を処理した
【図2】エラスターゼ2により切断されたAIMP1断片の多様な細胞に対する細胞増殖活性を分析した結果である。
【図3】エラスターゼ2により切断されたAIMP1断片のN-末端アミノ酸をN-末端アミノ酸シーケンシングにより決定して、切断サイトを同定した結果である。 矢印:切断サイト
【図4】本発明によるAIMP1の欠損突然変異断片の模式図である。
【図5】本発明によるAIMP1の欠損突然変異組換体をSDS-PAGEで分析した結果である。
【図6】本発明によるAIMP1の欠損突然変異断片の繊維芽細胞増殖促進活性の測定結果である。
【図7】本発明によるAIMP1-(6-46)断片の繊維芽細胞増殖促進活性の測定結果である。
【図8】本発明によるAIMP1欠損突然変異断片の創傷治癒促進活性を生体内で測定した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
配列番号1乃至配列番号7、及び配列番号32乃至配列番号37からなるグループの内で選ばれたアミノ酸配列からなる第1項記載のペプチド。
【請求項3】
配列番号1のアミノ酸配列からなる第2項記載のペプチド。
【請求項4】
第1項のペプチドを含む組成物。
【請求項5】
薬学的に許容される担体を追加して含む第4項記載の組成物。
【請求項6】
第1項のペプチドをこれを必要とする個体に有効な量で投与することを含む繊維芽細胞の増殖促進方法。
【請求項7】
第1項のペプチドをこれを必要とする個体に有効な量で投与することを含む創傷治癒促進方法。
【請求項8】
薬剤として利用する為の、配列番号1のアミノ酸配列又は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列のうち、連続する21個乃至41個のアミノ酸配列を含むペプチド。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−523844(P2009−523844A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552205(P2008−552205)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/KR2006/000252
【国際公開番号】WO2007/083853
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507256429)イマジェネ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】