説明

新規な活性白土及び動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤

【課題】従来公知の活性白土に比しても優れた脱色性能を有する新規な活性白土及び該活性白土からなる動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤を提供する。
【解決手段】窒素吸着法で測定して、1.7乃至100nmでの細孔径における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gの範囲にあり、且つ1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.75乃至1.5の範囲にあるとともに、Ho≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/gの範囲にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造を有する動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤に関するものであり、より詳細には、活性白土からなる脱色剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオクタヘドラル型スメクタイトを主成分とする粘土が脱色性能を有していることは古くから知られており、英国ではフラーズアース或いはブリーチングアースとも呼ばれている。
【0003】
このようなジオクタヘドラル型スメクタイトを主成分とする粘土を酸処理することにより比表面積等を増大して活性化した活性白土を、動植物の油脂類や鉱物油の脱色剤として使用することも知られており、例えば、特許文献1には、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物を酸処理して得られ、結晶子径が所定の範囲に調整された活性白土を動植物の油脂類や鉱物油の脱色剤として用いることが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ジオクタヘドラル型スメクタイト粘土鉱物に属するモンモリロナイト系粘土鉱物を酸処理することにより得られた、細孔の大半が細孔径30〜50Å(3.0〜5.0nm)の範囲にあるシャープな細孔分布を有する無機質多孔体が開示されている。
【0005】
一方、本発明者等は先に、17〜3000Å(1.7〜300nm)での細孔径における細孔容積が0.35乃至0.40cm/gの範囲にある活性白土からなる脱色剤を提案した(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−157829号公報
【特許文献2】特開平6−340413号公報
【特許文献3】特開2008−31411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジオクタヘドラル型スメクタイトを主成分とする粘土を酸処理して得られた活性白土が動植物の油脂類や鉱物油に対する脱色性能に優れているのは、酸処理によって、粘土中のAl分やFe分などが溶出し、細孔容積や比表面積が増大し、この結果、クロロフィルなどの色素成分に対する物理的吸着性能が増大するためである。特に大きな細孔の細孔容積の増大は脱色性能の向上に大きく寄与する。
【0008】
また、脱色性能を示す要因としては、細孔容積や比表面積以外に、固体酸量があり、この固体酸量が多いほど、色素成分に対する反応性が向上し、化学的吸着性能が高くなり、脱色性能が向上する。
【0009】
しかしながら、上記のような酸処理により得られる活性白土においては、酸処理の進行に伴ってAl分やFe分が溶出して除かれるため、細孔容積やBET比表面積は増大するものの、固体酸量の減少を伴う。このため、特許文献1〜3のように、酸処理による細孔容積等の増大のみで脱色性能を向上させるには限界があり、脱色性能の観点から、大きな径の細孔の容積が多く、しかも固体酸量の多い活性白土が求められているが、このような特性を有する活性白土は知られていない。
【0010】
従って、本発明の目的は、従来公知の活性白土に比して、優れた脱色性能を有する新規な活性白土及び該活性白土からなる動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、活性白土の脱色性能について多くの実験を行った結果、これを適度にアルカリ処理し、続いて酸洗浄することにより、脱色性能が著しく向上した新規な活性白土が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明によれば、窒素吸着法で測定して、1.7乃至100nmでの細孔径における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gの範囲にあり、且つ1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.75乃至1.5の範囲にあるとともに、Ho≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/gの範囲にあることを特徴とする活性白土が提供される。
本発明によれば、さらに、活性白土からなる動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤が提供される。
【0013】
本発明の活性白土においては、
(1)5重量%水性懸濁液でのpH(25℃)が2.5乃至5.0の範囲にあること、
(2)150乃至300m/gのBET比表面積を有していること、
が好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性白土は、1.7乃至100nmでの細孔径(細孔直径)における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gの範囲にあり、このような細孔容積を有している活性白土は、従来から知られている。しかるに、本発明においては、このような細孔容積を有していると同時に、1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.75乃至1.5の範囲にあり、しかもHo≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/gの範囲にある点に顕著な特徴を有している。
【0015】
即ち、細孔容積比(B/A)が上記範囲内にあることは、大きな径の細孔を多く含んでいることを意味し、また、上記の固体酸量は、比較的強い固体酸を多く含んでいることを意味している。このことから理解されるように、本発明の活性白土は、従来公知の活性白土と同様に大きな細孔容積を有しているが、従来公知の活性白土より大きな径の細孔を多く含み、且つ、比較的強い固体酸を多く含んでいることから、色素に対して細孔による物理的吸着性能と固体酸による化学的吸着性能の何れもが高められており、この結果、後述する実施例にも示されているように、従来公知の活性白土に比して、著しく優れた脱色性能を示す。
【0016】
例えば、従来公知の活性白土は、単に酸処理により細孔容積の増大化を図っているに過ぎないため、固体酸量の減少が生じており、仮に上記のような細孔容積比(B/A)を満足していたとしても、固体酸量は、本発明の活性白土に比して低く、従って、細孔による色素吸着性能は高められていたとしても、固体酸による色素吸着性能が低下しており、本発明のような優れた脱色性能を示すことはない。
【0017】
このように、本発明の活性白土は、脱色性能が著しく向上しているため、油脂や鉱油に対する脱色剤として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の活性白土(実施例1)及び従来の活性白土(比較例1)の細孔分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<活性白土の製造>
本発明の活性白土は、ジオクタヘドラル型スメクタイトを主成分とする粘土の酸処理物(従来公知の活性白土に相当)を出発原料とし、これを、アルカリ処理し、次いで酸洗浄により付着しているアルカリを除去することにより得られる。
【0020】
原料として用いる粘土の酸処理物は、該粘土をそれ自体公知の条件で酸処理することにより製造される。
【0021】
上記のジオクタヘドラル型スメクタイトを主成分とする粘土は、火山岩や溶岩等が海水の影響下で変成したものと考えられており、SiO四面体シート−AlO八面体シート−SiO四面体シートからなる単位層を基本構造としている。基本構造の八面体シート中のAlの一部がMgやFe(II)に置換し、四面体シート中のSiの一部がAlに同型置換しているため、単位層はマイナスの電荷を有しており、このマイナスの電荷が単位層の積層層間に存在するCa,K,Na等の金属陽イオンや水素イオンにより中和されている。このようなスメクタイト系粘土には、酸性白土、ベントナイト、フラーズアースなどがあり、層間に存在する陽イオンの種類や量、及び水素イオン量などによってそれぞれ異なる特性を示す。例えば、ベントナイトでは、基本層間に存在するNaイオン量が多く、このため、水に懸濁させた分散液のpHが高く、一般に高アルカリサイドにあり、また、水に対して高い膨潤性を示し、さらにはゲル化して固結するという性質を示す。一方、酸性白土では、単位層の積層層間に存在する水素イオン量が多く、このため、水に懸濁させた分散液のpHが低く、一般に酸性サイドにあり、また、水に対して膨潤性を示すものの、ベントナイトと比較すると、その膨潤性は総じて低く、ゲル化には至らない。
【0022】
上記のようなジオクタヘドラル型スメクタイト系粘土の酸処理には種々の鉱酸を使用することができるが、入手が容易であり、しかも酸による腐食などの装置に対する負荷をかけることなく、迅速に酸処理を行うことができるという観点から、硫酸が好適である。
【0023】
このような酸処理により、粘土中のAl成分やFe成分の一部が除去され、この除去に伴って非晶質のシリカが生成すると同時に、細孔容積や比表面積の増大がもたらされ、さらに固体酸量は減少していく。
【0024】
得られる酸処理物は、ろ過、水洗され、必要により乾燥された後、本発明の活性白土の出発原料として供される。
【0025】
本発明の活性白土は、上記のようなスメクタイト系粘土の酸処理物(即ち、従来公知の活性白土に相当)をアルカリ処理及び酸洗浄により得られるものであるが、特に原料として用いる酸処理物としては、窒素吸着法で測定して、1.7乃至100nmでの細孔径(細孔直径)における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gとなり、Ho≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/gの範囲となるように酸処理されているものが使用される。即ち、上記のアルカリ処理及び酸洗浄は、固体酸量を減少させずに、大きな径の細孔を増大させるための処理であり、基本的に細孔容積の増大や固体酸量の増大をもたらすものではないからである。
【0026】
尚、上記のような細孔容積及び固体酸量を有する酸処理物は、酸処理によって細孔容積の増大と固体酸量の減少をもたらすことを利用して、原料粘土の組成に応じて、酸処理条件(例えば、酸濃度や酸処理時間など)を調整することにより得られる。
【0027】
また、上記のような酸処理によってBET比表面積の増大がもたらされる。このため、上記のような酸処理物のBET比表面積は、一般に、250m/g以上の範囲にある。
【0028】
さらに、上記のような細孔容積及び固体酸量を得るための酸処理によって小さな径の細孔と大きな径の細孔が生成し、1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.70以下の範囲にあり、小さな径の細孔が多く生成している。
【0029】
ところで、脱色性能を考慮すると、例えばクロロフィルのように大きな色素分子の吸着には、大きな径の細孔が寄与する。従って、大きな径の細孔が少ない上記の酸処理物(即ち、従来の活性白土)では、脱色性能が未だ不十分である。従って、本発明では、以下に述べるアルカリ処理と酸洗浄とによって、固体酸量を減少させることなく、大きな径の細孔を増大させるわけである。
【0030】
本発明においては上記の酸処理物のアルカリ処理は、大きな径の細孔を増大させるための処理である。即ち、このアルカリ処理によって、前述した酸処理物の1.7乃至100nmにおける細孔容積はほとんど変動しないが、酸処理物中に含まれる非晶質シリカ(原料粘土を酸処理することにより粘土粒子表面に生成したシリカ)のうち、より小さな細孔を構成するシリカが溶解することによって大きな径の細孔の量が増大すると同時に小さな細孔が閉じられ、この結果、上記の細孔容積比(B/A)の値は大きくなる。また、表面に存在するシリカの溶解脱離により、粒子表面の凹凸が平坦化され、比表面積は小さくなる。
【0031】
また、上記のアルカリ処理によって酸処理物に含まれる固体酸は、中和される。従って、上記のアルカリ処理後に酸洗浄を行い、固体酸を中和しているアルカリを除去することにより、固体酸量が、原料のスメクタイト酸処理物と同程度に復活されることとなる。
【0032】
本発明において、上記のアルカリ処理は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ水溶液を用い、このようなアルカリ水溶液とスメクタイト酸処理物とを混合攪拌することにより行われるが、アルカリ処理を過度に行うと、非晶質シリカが必要以上に溶出してしまい、非晶質シリカが全て脱離してしまうと、酸処理に用いたスメクタイト粘土に戻ってしまい、細孔が消失してしまう。従って、このアルカリ処理は、適度に行うことが必要であり、酸処理物の細孔容積を前述した範囲内に維持しながら、上記の細孔容積比(B/A)がもたらされる程度に行なう。その具体的な条件は、用いる酸処理物の組成(例えば酸処理の程度等)によっても異なり、一概に規定することはできないが、一般的には、懸濁液濃度が10乃至25重量%程度の酸処理物の水性懸濁液にアルカリ水溶液を添加混合して加熱処理し、pHが7乃至11程度となるようにアルカリ処理を行えばよい。
【0033】
さらに、アルカリ処理後に行われる酸洗浄は、固体酸を中和しているアルカリを除去できる程度のものであり、例えば0.1乃至1.0重量%程度の希硫酸を用いてのシャワー等によってアルカリ処理物を洗浄することにより行なわれる。
【0034】
酸洗浄後、水洗及び乾燥し、必要により焼成や粒度調整を行なうことにより、目的とする本発明の活性白土が得られる。
【0035】
<活性白土>
上記のようにして得られる活性白土は、スメクタイト粘土の酸処理物から得られることから、一般的には、酸化物換算で以下のような組成を有している。
SiO;65乃至85重量%
Al;6乃至12重量%
Fe;1乃至8重量%
MgO;1乃至3重量%
CaO;0.1乃至2重量%
NaO;0.1乃至1重量%
O;0.1乃至1重量%
その他の酸化物(TiOなど);1重量%以下
Ig−loss(1050℃);4乃至8重量%
【0036】
さらに、窒素吸着法で測定して、1.7乃至100nmでの細孔径(細孔直径)における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gの範囲にあり、これは、原料として用いたスメクタイト系粘土の酸処理物と同程度であり、また、Ho≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/g、好ましくは、0.18乃至0.35mmol/gの範囲にあり、これも、原料として用いたスメクタイト粘土の酸処理物と同程度である。
【0037】
また、前述したアルカリ処理により、大きな径の細孔が増大しており、この結果、1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.75乃至1.5、好ましくは、0.8乃至1.4の範囲にある。
【0038】
即ち、上記のような細孔容積比(B/A)を有しており、大きな径の細孔が増大していると同時に、上記のような固体酸量を有しているため、細孔による吸着性能と固体酸による吸着性能が向上しており、クロロフィル等の巨大な色素分子に対しての吸着性能が高く、動植物の油脂類や鉱物油に対する脱色剤として、極めて好適な特性を示すのである。
【0039】
さらに、アルカリ処理によって原料のスメクタイト系粘土の酸処理物に比してBET比表面積は低下しており、例えば、そのBET比表面積は150乃至300m/g、好ましくは150乃至250m/gの範囲にある。この場合、前述したアルカリ処理は、少なくともBET比表面積が上記範囲に維持される程度で行なわれることが好適である。BET比表面積が上記範囲よりも低下してしまうと、吸着に必要な場が少なくなるため、色素分子に対する吸着性能が低下し、脱色性能が低下してしまうおそれがあるからである。
【0040】
また、上記のようにして得られる活性白土は、酸洗浄によって固体酸を中和しているアルカリ分が除去されているため、5重量%水性懸濁液でのpH(25℃)が2.5乃至5.0の範囲にある。
【0041】
このように、本発明の活性白土は、巨大色素分子に対する吸着性が従来公知の活性白土に比して著しく向上しているため、動植物の油脂類や鉱物油の脱色剤として好適に使用される。
【0042】
脱色処理する動植物の油脂類としては、植物油脂、動物油脂及び鉱物油の少なくとも1種が挙げられる。原料の油脂は、天然の動植物界に広く存在し、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とするものであり、例えばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ベニ花油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などの植物性油脂及びイワシ油、ニシン油、イカ油、サンマ油などの魚油、肝油、鯨油、牛脂、牛酪脂、馬油、豚脂、羊脂などの動物性油脂の単独またはそれらを組み合わせたものが挙げられる。
【0043】
一方、鉱物油としては、各種潤滑油、例えばスピンドル油、冷凍機油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、船用内燃機関潤滑油、ガソリンエンジン潤滑油、ディーゼルエンジン潤滑油、シリンダー油、マリンエンジン油、ギヤー油、切削油、絶縁油、自動変速機油、圧縮機油、油圧作動油、圧延油等が挙げられる。
【0044】
脱色処理に際しては、脱色すべき油脂或いは鉱物油に、適当な粒度(一般的には、レーザ回折法により測定した体積基準での中位径が18乃至30μm程度)に調整された本発明の活性白土の粉末を添加し、両者を均一に撹拌することにより、油脂或いは鉱物油中に含有される着色成分や不純物成分を白土粒子中に吸着させることにより、脱色が行なわれる。
【0045】
動植物の油脂類或いは鉱物油類の脱色処理は、それ自体公知の条件であり、例えば油脂或いは鉱物油当たり重量基準で5%以下の脱色剤を添加し、90乃至150℃の温度で5乃至30分間、両者の組成物を攪拌することにより、脱色処理を完了することができる。
【0046】
脱色処理を終えた混合物は、これを任意の濾過機、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、オリバフィルター、アメリカンフィルター、遠心濾過機等の減圧乃至は加圧式濾過機に供給して、脱色された油脂或いは鉱物油と使用済みの脱色剤である所謂廃白土とに分離される。
【0047】
また、本発明の活性白土は、動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤だけでなく、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)等の芳香族炭化水素の精製処理に使用することもできる。さらに本発明の活性白土に、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどを添着することも出来る。
【実施例】
【0048】
本発明を、次の実施例で説明する。なお、実施例における測定方法は、以下の通りである。
【0049】
(1)固体酸量(A)
n−ブチルアミン滴定法にてHo≦−3.0の固体酸量を測定した。試料は、予め、150℃で3時間乾燥したものについて測定を行った。
[参考文献:「触媒」Vol.11,No6,P210-216(1969)]
【0050】
(2)細孔容積及び細孔容積比
Micromeritics社製Tri Star 3000を用いて窒素吸着法により測定を行い、吸着データから、BJH法により細孔直径1.7〜100nmまでの細孔容積を求めた。
また、1.7〜11.5nmの細孔直径における細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔直径における細孔容積(B)の比(B/A)より、細孔容積比を求めた。
【0051】
(3)細孔分布
Micromeritics社製Tri Star 3000を用いて窒素吸着法により測定を行い、吸着データから、BJH法により細孔分布を求めた。
【0052】
(4)BET比表面積
Micromeritics社製Tri Star 3000を用いて窒素吸着法により測定を行い、BET法により解析した。
【0053】
(5)中位径(D50
Malvern社製Mastersizer2000を使用し、溶媒に水を用いてレーザ回折散乱法で体積基準での中位径(D50)を測定した。
【0054】
(6)pH
JIS K 5101−17−1:2004に準拠して調製した5重量%水性懸濁液のpH値を測定した。
【0055】
(7)脱色試験法
脱色剤の性能を試験には、粘土ハンドブック第二版 日本粘土学会編(技報堂出版)p917の図に示す脱色試験機を用いた。
この脱色試験機には8本の硬質ガラス製大型試験管(容量200ml)が油浴にセットできる。各試験管には、下端が丸くなった波形の撹拌棒を入れ、その下端は試験管の底部に常に接触するようにゴム管で調節する。8本の撹拌棒は中央の親歯車から分かれた子歯車によって回転するので、その回転速度は全く等しく保たれる。中央の親歯車の下には油浴を撹拌する撹拌羽根がついていて、油浴内の温度を均一に保っている。脱色試験は最大8個まで、任意の数で試験できる。各試験管に脱酸処理済みの菜種油を50gずつ採取し、各脱色剤サンプルを0.75gずつ(油に対して1.5%)加えて脱色試験用の撹拌棒でよく混ぜる。各試験管を110℃に保たれた前記の脱色試験機にセットし、20分間撹拌を行った後脱色試験機から取り出し、油と脱色剤の混合懸濁液をろ過することにより各脱色油を得る。
各脱色油の白色光線透過率(蒸留水の透過率を100%としたときの相対値)を(株)平間理化研究所製光電比色計2C型で測定し、その数値をもって各脱色剤の脱色性能とする。透過率の数値が高いほど用いた脱色剤の脱色性能も高いことを表している。
【0056】
(比較例1)
新潟県胎内市産のスメクタイト系粘土を原料として用い、この原料を粗砕、混練し5mm径に造粒した。得られた造粒物の水分は37%であった。
この造粒物1500gを処理槽に充填し、そこに35重量%硫酸水溶液2000mlを循環させ酸処理を行った。その時の処理温度は90℃、処理時間は7時間であった。酸処理終了後、酸処理物に洗浄水を循環して水洗を行った後110℃で乾燥、粉砕、分級して活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について、各種物性測定を行い、その結果を表2に示した。
【0057】
(実施例1)
比較例1における水洗終了後の酸処理物(乾燥前の含水物)を原料として用いた。この酸処理物に水を加え、家庭用ミキサーで解砕することにより、固形分濃度20重量%の水性懸濁液を得た。
この懸濁液1250gに7.5重量%のNaOH水溶液66gを加え、90℃で5時間攪拌することによりアルカリ処理を行った。この懸濁液をろ過し、ろ過ケーキを1重量%の希硫酸に分散させ、デカンテーション法により酸洗浄を行った後、水洗した。
水洗後の懸濁液をろ過し、ろ過ケーキを110℃で乾燥、粉砕、分級して活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について、各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
なお、サンプルの細孔分布を比較例1のサンプルと対比して図1に示した。図1より、細孔直径5nm前後の細孔がアルカリ処理により10nm以上の大きな径の細孔に変化しているのがわかる。
【0058】
(実施例2)
実施例1において7.5重量%のNaOH水溶液66gに変えて、7.5重量%のNaOH水溶液50gを使用した他は、実施例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0059】
(実施例3)
実施例1において7.5重量%のNaOH水溶液66gに変えて、7.5重量%のNaOH水溶液98gを使用した他は、実施例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0060】
(実施例4)
実施例1において7.5重量%のNaOH水溶液66gに変えて、7.0重量%のCa(OH)懸濁液66gを使用した他は、実施例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0061】
(実施例5)
比較例1で得られた活性白土粉末を原料として用いた。この粉末250gを0.5重量%のNaOH水溶液1000g中に分散させ、90℃で5時間攪拌することによりアルカリ処理を行った。以下、実施例1と同様にして酸洗浄、水洗、ろ過を行い、ろ過ケーキを110℃で乾燥して活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0062】
(比較例2)
比較例1において35重量%硫酸水溶液に変えて、30重量%硫酸水溶液を用い、90℃で5時間酸処理した他は、比較例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表2に示した。
【0063】
(実施例6)
比較例2における水洗終了後の酸処理物(乾燥前の含水物)を原料として用いた他は、実施例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表1に示した。
【0064】
(比較例3)
比較例1において35重量%硫酸水溶液に変えて、45重量%硫酸水溶液を用い、90℃で12時間酸処理した他は、比較例1と同様にして行い活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表2に示した。
【0065】
(比較例4)
比較例1と同様のスメクタイト系粘土を水に分散させ、水簸により粗粒分を除去した後ろ過し、110℃で乾燥した。ビーカーに15重量%硫酸水溶液920gを採り、この乾燥粘土360gを加え、ヒーター上で攪拌しながら70℃で12時間酸処理を行った。
酸処理終了後、酸処理物に水を加えてデカンテーション法により洗浄した後ろ過し、ろ過ケーキを110℃で乾燥、粉砕、分級して活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表2に示した。
【0066】
(比較例5)
実施例1と同様にしてアルカリ処理を行った。アルカリ処理後の懸濁液をろ過し、ろ過ケーキを水に分散させてデカンテーション法により水洗を行った(実施例1における1%硫酸による酸洗浄を省いた)。以下、実施例1と同様にして活性白土粉末を得た。
得られた活性白土粉末について各種物性測定を行い、その結果を表2に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素吸着法で測定して、1.7乃至100nmでの細孔径における細孔容積が0.40乃至0.60cm/gの範囲にあり、且つ1.7乃至11.5nmの細孔径での細孔容積(A)と11.5nmより大で100nm以下の細孔径における細孔容積(B)との細孔容積比(B/A)が0.75乃至1.5の範囲にあるとともに、Ho≦−3.0の固体酸量が0.15乃至0.40mmol/gの範囲にあることを特徴とする活性白土。
【請求項2】
5重量%水性懸濁液でのpH(25℃)が2.5乃至5.0の範囲にある請求項1に記載の活性白土。
【請求項3】
150乃至300m/gのBET比表面積を有している請求項1または2に記載の活性白土。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の活性白土からなる動植物の油脂類もしくは鉱物油の脱色剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95436(P2010−95436A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185714(P2009−185714)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【特許番号】特許第4393579号(P4393579)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000193601)水澤化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】