説明

新規な複素環シクロアルキル誘導体、その製造法およびそれを含有する薬学的組成物

本発明は、血糖降下剤または血中脂質降下剤としての式(I)[式中、R1は、C3〜C8シクロアルキル基を表し、R2は、明細書に定義された式(II)で示される基を表し、Xは、酸素原子またはN−OR'基(R'は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基、アリール基、または直鎖もしくは分枝鎖状アリールC1〜C6アルキル基を表す)を表す]で示される化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素環シクロアルキル化合物、その製造法およびそれを含有する薬学的組成物に関するものである。
【0002】
本発明に記載の化合物は、新規であり、優れた血糖降下剤および血中脂質降下剤であるという、特に関心が持たれる薬理学的特性を有する。
【0003】
インスリン非依存型のII型糖尿病の処置は、インスリンの分泌を容易にし、末梢標的組織におけるその作用を促進しようとする非常に多くの経口血糖降下化合物が市場に導入されているにも関わらず、不満足なままである。
【0004】
過去10年間に、チアゾリジンジオン構造を有する一群の化合物[米国特許第5,089,514号(US 5,089,514)、米国特許第5,306,726号(US 5,306,726)明細書]は、インスリン非依存型II型糖尿病を有する動物モデルの標的末梢組織(骨格筋、肝臓、脂肪組織)のインスリン感受性を促進することによって、顕著な抗糖尿活性を立証している。また、これらの化合物は、同じ動物モデルでインスリンレベルおよび脂質レベルを低下させ、前脂肪細胞系から脂肪細胞系へのin vitroでの分化を誘導する[A. Hiragun et al., J. Cell. Physiol., 1988, 134, 124-130;R.F. Kleitzen et al., Mol. Pharmacol., 1992, 41, 393-398]。
【0005】
チアゾリジンジオンであるロシグリタゾン(rosiglitazone)による前脂肪細胞系の処理は、脂質代謝に特異的な遺伝子、たとえばaP2およびアジプシンの発現、またグルコース輸送因子GLUT1およびGLUT4の発現の誘導をもたらし、in vivoで観察されたチアゾリジンジオンの効果が、脂肪組織を通じて仲介され得ることを示唆している。この特異的な効果は、核の転写因子、すなわち「ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγ」(PPARγ2)の刺激によって得られる。そのような化合物は、末梢組織、たとえば脂肪細胞または骨格筋のインスリン感受性を回復することができる[J.E. Gerich, New Engl. J. Med., 19, 321, 1231-1245]。
【0006】
しかしながら、チアゾリジンジオン構造を有する化合物(トログリタゾン(troglitazone)、ロシグリタゾン)は、ヒトでは懸念される副作用、特に肝臓問題を示している[原稿第2470号、1999年9月8日、第25回]。
【0007】
多数の血糖降下剤に、有意な副作用(肝臓、心臓、造血に関する)があって、インスリン非依存型II型糖尿病の処置におけるそれらの長期使用が限定される。
【0008】
より毒性が少なく、長期にわたって活性を有する新規な治療剤の開発が、この病状には絶対的に必要である。
【0009】
その上、糖尿病には、高脂質血症が観察されることが多い[Diabetes Care, 1995, 18 (Supplement 1), 86/8/93 ]。高血糖症と高脂質血症との結合は、糖尿病における心血管系疾患の危険性を高める。高血糖症、高脂質血症および肥満症は、大量の食物の摂取および運動の慢性的欠如が顕著な近代世界の病状になっている。
【0010】
これらの病状の頻度の増加は、そのような障害に活性を有する新たな治療剤の開発を要求する。すなわち、優れた血糖降下および血中脂質降下活性を有しつつ、チアゾリジンジオンで観察される副作用を回避する化合物は、結果的に、これらの病状の治療および/または予防に非常に有益であり、特にインスリン非依存型II型糖尿病の治療に、末梢インスリン抵抗性を低下させるために、そしてグルコース制御を正常化するために指示される。
【0011】
新規であることに加え、本発明の化合物は、上記の薬理学的基準を満たし、優れた血糖降下剤および血中脂質降下剤である。
【0012】
本発明は、より特別には、式(I):
【0013】
【化17】

【0014】
[式中、
1は、C3〜C8シクロアルキル基を表し、
2は、式(II):
【0015】
【化18】

【0016】
(式中、Rは、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)
で示される基を表し、
Xは、酸素原子またはN−OR'基(R'は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基、アリール基、またはアルキル部分が直鎖もしくは分枝鎖状であってもよいアリールC1〜C6アルキル基を表す)を表す]
で示される化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩に関するものであって、ここで、
【0017】
「幾何異性体」とは、XがN−OR'基を表すとき、オキシムR1−C(=N−OR')−がZまたはEの立体配置を有してもよいことを意味すると理解され、
「アリール」とは、フェニルまたはナフチル基を意味して、これらの基は、場合により、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6ポリハロアルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、ホルミル、アミノ(場合により一つまたは二つの直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル基で置換された)、エステル、アミド、ニトロ、シアノ、およびハロゲン原子から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいと理解される。
【0018】
薬学的に許容され得る酸のうちでは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、ホスホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、ショウノウ酸、シュウ酸等々を、いかなる限定も意味せずに列挙し得る。
【0019】
薬学的に許容され得る塩基のうちでは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、tert−ブチルアミン等々を、いかなる限定も意味せずに列挙し得る。
【0020】
本発明の好適化合物は、R1がシクロプロピル基を表す、式(I)の化合物である。
【0021】
Rは、好ましくは、水素原子またはエチル基を表す。
【0022】
本発明の式(I)の化合物の好適なR2基は、基−CH2−CH(OCH2CF3)(COOH)である。
【0023】
好都合には、R2基は、RまたはSの立体配置を有する。
【0024】
Xは、好ましくは、酸素原子を表す。
【0025】
Rが水素原子を表す本発明の式(I)の化合物は、塩、より特別にはナトリウム塩へと変換するのが好都合である。
【0026】
はるかに特別には、本発明は、下記の式(I)の化合物:
* 3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル、
* 3−{4−[2−(6−シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、
* 3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(ヒドロキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル、
* 3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(ヒドロキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、
* 3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(メトキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロメトキシ)プロパン酸エチル、
* 3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(メトキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、
* (S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、
* (R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、
* (S)−3−{4−[2−(6−シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]−フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム、
* (R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]−フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム、
* (S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸カリウム、
* (R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸カリウム
に関する。
【0027】
本発明の好適化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー、および酸または塩基との薬学的に許容され得る付加塩は、本発明の不可欠の部分を形成する。
【0028】
本発明は、式(I)の化合物を製造する方法であって、式(III):
【0029】
【化19】

【0030】
[式中、R1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、塩基性媒体中で、式(IV):
【0031】
【化20】

【0032】
[式中、R2は、式(I)について定義されたとおりであり、Halは、ハロゲン原子を表す]
で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/a):
【0033】
【化21】

【0034】
[式中、R1およびR2は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、場合により、これを式R'O−NH2[式中、R'は、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/b):
【0035】
【化22】

【0036】
[式中、R1、R2およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、この式(I/a)または(I/b)の化合物を、慣用の精製手法に従って精製してもよく、望みであれば、薬学的に許容され得る酸または塩基との付加塩に変換し、場合により、慣用の分離手法に従って異性体へと分離することを特徴とする方法にも関する。
【0037】
好都合な変化形は、式(I/b)の化合物を製造する方法であって、式(III):
【0038】
【化23】

【0039】
[式中、R1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、式R'O−NH2[式中、R'は、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物と縮合させて、式(V):
【0040】
【化24】

【0041】
[式中、R1およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩基性媒体中で、式(IV):
【0042】
【化25】

【0043】
[式中、R2は、式(I)について定義されたとおりであり、Halは、ハロゲン原子を表す]
で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/b):
【0044】
【化26】

【0045】
[式中、R1、R2およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、慣用の精製手法に従って精製してもよく、望みであれば、薬学的に許容され得る酸または塩基との付加塩に変換し、場合により、慣用の分離手法に従って異性体へと分離することを特徴とする方法に関する。
【0046】
式(III)の化合物は、商業製品であるか、または慣用の化学反応もしくは文献に記載された反応によって当業者が容易に得ることができる。
【0047】
本発明は、基R2がRまたはSの立体配置を有する式(I)の化合物を製造する方法であって、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/c):
【0048】
【化27】

【0049】
[式中、XおよびR1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、カップリング剤(S)−フェニルグリシノールの存在下で縮合させて、式(VI):
【0050】
【化28】

【0051】
[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、クロマトグラフィーによって精製して、式(VIIa)および(VIIb):
【0052】
【化29】

【0053】
[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これらの式(VIIa)および(VIIb)の化合物を、酸性媒体中で加水分解に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/d(a))および(I/d(b)):
【0054】
【化30】

【0055】
[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、
これらの式(I/d(a))および(I/d(b))の化合物を、場合により、式RaOH[式中、Raは、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す]で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/e(a))および(I/e(b)):
【0056】
【化31】

【0057】
[式中、X、RaおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得るか、または
これらの式(I/d(a))および(I/d(b))の化合物を、場合により、RbOH[式中、Rbは、NaまたはKを表す]の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/f(a))および(I/f(b)):
【0058】
【化32】

【0059】
[式中、X、RbおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、式(I/d(a))、(I/d(b))、(I/e(a))、(I/e(b))、(I/f(a))および(I/f(b))で示される化合物を、慣用の精製手法に従って精製してもよいことを特徴とする方法にも関する。
【0060】
本発明の化合物は、非常に価値ある薬理学的特性を有する。
【0061】
該化合物は、血糖レベルを降下させるのに特に優れた活性を示す。そのような特性の結果として、それらは、高血糖症、異常脂質血症の治療および/または予防に、より特別にはインスリン非依存型II型糖尿病、グルコース不耐性、X症候群に付随する障害(高血圧、肥満症、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、高脂血症を包含する)、冠動脈疾患およびその他の心血管系疾患(動脈性高血圧、心不全、静脈不全を包含する)、腎障害(糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症を包含する)、網膜症、内皮細胞の活性化に付随する障害、乾癬、多嚢胞性卵巣症候群、痴呆症、糖尿病併発症および骨粗鬆症の治療において、治療手段として用いることができる。
【0062】
それらは、痴呆症における認知機能の改善のため、および糖尿病の併発症、腸炎症性障害、筋強直性ジストロフィー、膵炎、動脈硬化症、黄色腫のための、アルドース還元酵素インヒビターとして用いることができる。
【0063】
これらの化合物の活性は、I型糖尿病、高トリグリセリド血症、X症候群、インスリン抵抗性、糖尿病における異常脂質血症、高脂質血症、高コレステロール血症、動脈性高血圧、心不全、および心血管系疾患、特にアテローム性動脈硬化症をはじめとする、その他の疾患の治療および/または予防にも推奨される。
【0064】
更に、該化合物は、食欲の調節に、特に肥満症、食欲不振、過食症および神経性無食欲症などの障害に罹患した対象者の食物摂取の調節に用いるために指示される。
【0065】
したがって、該化合物は、高コレステロール血症、肥満症の予防または治療に、高脂質血症、高血糖症、骨粗鬆症、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、またはインスリン抵抗性が二次的な生理学的機序となる障害に対する好都合な効果とともに用いることができる。
【0066】
これらの化合物の使用は、総コレステロール、体重、レプチン抵抗性、血漿グルコース、トリグリセリド、LDL、VLDLおよび血漿遊離脂肪酸の低減を可能にする。
【0067】
該化合物は、HMGCoA還元酵素インヒビター、フィブラート、ニコチン酸、コレスチラミン、コレスチポール、プロブコール、GLP1、メトホルミン、ビグアニドまたはグルコース再吸収インヒビターと結び付けて用いることができ、処置しようとする患者に、相乗的に作用するように、一緒かまたは異なる時点で投与することができる。
【0068】
更に、それらは、癌の病状、特にホルモン依存性の癌、たとえば乳癌および結腸癌に活性を示し、またこれらの病状に関係する血管形成過程にも阻害効果を有する。
【0069】
本発明の薬学的組成物のうちでも、より特別には、経口、非経口、経鼻、経皮もしくは貫皮、直腸、舌下、眼内、または呼吸器投与に適切であるもの、特に錠剤もしくは糖衣錠、舌下錠、サシェー剤、パケット(paquet)、ゼラチンカプセル剤、グロセット(glossette)、トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、経皮ゲル、および飲用または注射用アンプル剤が列挙され得る。
【0070】
投与量は、患者の性別、年齢および体重、投与経路、治療適応症または関係するいかなる処置の性質にも応じて変化し、1回またはそれ以上の投与で24時間あたり0.1mg〜1gの範囲にわたる。
【0071】
本発明は、先に定義されたとおりの式(I)の複素環化合物と抗酸化剤との間の新規な結合であって、肥満症、ならびに25より大きい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防に用いるための薬学的組成物を得るための結合にも関する。
【0072】
本発明に記載の結合の抗酸化剤は、より特別には、抗フリーラジカル剤もしくはフリーラジカル捕捉剤、抗リポペルオキシダント剤、キレート剤、またはグルタチオン、ビタミンCもしくはビタミンVなどの内因性抗酸化剤を再生できる薬剤、ならびに薬学的に許容され得る酸または塩基とのその酸付加塩である。
【0073】
本発明に記載の結合の抗酸化剤は、より好ましくは、ユビキノンまたは補酵素Q10などの、フリーラジカル捕捉剤として作用するが、ビタミンEを再生することもできるキノン化合物によって代表される。
【0074】
本発明に記載の好適な結合は、3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、その鏡像異性体、および薬学的に許容され得る塩基とのその付加塩と、補酵素Q10とである。
【0075】
更に、本発明の結合は、全く予想外の薬理学的特性を有する。すなわち、本出願人は、該結合の二つの化合物間に、体脂肪の非常に有意な減少が達成されるのを許す相乗効果が存在して、肥満症、ならびに25より大きい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防に役立たせることを立証した。
【0076】
米国では、肥満症は、男性の20%および女性の25%に発症する。体格指数[BMI=体重(kg)/身長2(m2)]が30以上である患者は、肥満していると見なされる[Int. J. Obes., 1998, 22, 39-47;Obesity Lancet, 1997, 350, 423-426]。肥満症(BMI≧30)および過体重(25<BMI<30)は、様々な起源を有する。それは、食物摂取の統制解除の後、ホルモン障害の後、または処置の投与後に発生することがあって、スルホニル尿素によるII型糖尿病の処置は、患者に体重増加を生起する。同様にI型(インスリン依存型)糖尿病では、インスリン療法も、患者の体重増加の原因となる[in Progress in Obesity Research, 8th International Congress on Obesity, 1999, 739-746;Annals of Internal Medicine, 1998, 128, 165-175])。
【0077】
肥満症および過体重は、心血管系疾患に対する充分確立された危険因子であって、インスリン抵抗性、異常脂質血症、および大血管性障害(腎症、網膜症、血管障害)の出現の傾向を生じさせるため、脳−血管系事故およびインスリン非依存型糖尿病の危険率の有意な上昇に関連する。
【0078】
更なる病状は、肥満症および過体重の結果であって、特に膀胱結石、呼吸器不全、癌のいくつかの形態、および非常に重篤な肥満症の場合は早死にが列挙され得る[New Engl. J. Med., 1995, 333, 677-385;JAMA, 1993, 270, 2207-2212]。
【0079】
本発明の結合は、体重減少が達成されるのを許して、それは、たとえ程々であっても、肥満症に付随するすべての危険因子を有意に減少させる[Int. J. Obes., 1997, 21, 55-9;Int. J. Oes., 1992, 21, S5-9]。
【0080】
そのため、本発明の結合は、肥満症、ならびに25より大きい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防に役立つことが判明する。
【0081】
上記により、本発明は、式(I)の化合物と抗酸化剤との間の結合の使用であって、肥満症、ならびに25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用に関する。
【0082】
より特別には、本発明の結合は、治療処置、たとえばI型またはII型糖尿病の処置によって誘発された、肥満症、ならびに25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防に役立つ。
【0083】
上記により、本発明は、式(I)の化合物と抗酸化剤との間の結合の使用であって、治療処置、たとえばI型またはII型糖尿病の処置によって誘発された、肥満症、ならびに25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用に関する。
【0084】
本発明は、先に定義されたとおりの式(I)の化合物と抗酸化剤との間の結合を、薬学的に許容され得る一つまたはそれ以上の賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物にも関する。
【0085】
本発明の薬学的組成物のうちでも、より特別には、経口、非経口もしくは経鼻投与に適切であるもの、錠剤もしくは糖衣錠、舌下錠、ゼラチンカプセル剤、トローチ剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、経皮ゲル等が列挙され得る。
【0086】
より特別には、本発明は、先に定義されたとおりの式(I)の化合物、および抗酸化剤、たとえば補酵素Q10またはビタミンEを、薬学的に許容され得る一つまたはそれ以上の賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物に関する。
【0087】
投与量は、患者の性別、年齢および体重、投与経路、治療適応症または関係するいかなる処置の性質にも応じて変化し、1回またはそれ以上の投与で24時間あたり該結合の各成分0.1mg〜1gの範囲にわたる。
【0088】
下記の実施例は、本発明を例示するが、いかなる方途でもそれを限定しない。
【0089】
実施例1:
3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル
炭酸カリウム(0.01044mol)、次いで6−(シクロプロピルカルボニル)−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−オン(0.00453mol)を、ジメチルホルムアミド20mlに加えた。100℃で1時間加熱した。3−[4−(2−クロロエトキシ)フェニル]−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル(0.00348mol)を加え、150℃で16時間加熱した。ジメチルホルムアミドを蒸発し去った。残渣を水50mlに溶解し、次いでそれぞれ50mlのジクロロメタンで2回抽出した。有機相をMgSO4上で乾燥し、次いで蒸発させた。残渣をメタノールから再結晶刺せ、標記生成物を白色粉末の形態で得た。
融点:113〜115℃。
【0090】
実施例2:
3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
実施例1で得た化合物0.9gを、テトラヒドロフラン/水(12/8ml)混合物に溶解した。次いで、最小量の水中の水酸化リチウム0.12gを加えた。反応混合物を50℃で一晩撹拌した。次いで、テトラヒドロフランを蒸発し去り、溶液を加水分解し、次いで3NHClで酸性化した。反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次いで減圧下で蒸発させた。得られた残渣を、ジクロロメタン/エタノール(95/5)の溶離剤を用いたシリカゲル上で精製して、標記生成物を白色粉末の形態で得た。
融点:124〜128℃。
元素の微量分析:
C% H% N%
計算値:56.58 4.35 2.75
実測値:56.53 4.31 2.44
【0091】
実施例3:
3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(ヒドロキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル
実施例1で得た化合物(0.00198mol)、塩酸ヒドロキシルアミン(0.00594mol)およびピリジン(0.00594mol)を、メタノール30mlに溶解した。溶液を、機械的に撹拌しつつ還流にて5時間加熱した。蒸発乾固し、残渣を水100ml中で加水分解し、1N塩酸でpH1まで酸性化した。吸引濾取し、得られた沈澱を石油エーテルで洗浄した。酢酸エチル/シクロヘキサン(3/7)の溶離剤を用いたシリカゲル上で精製して、標記生成物を白色粉末の形態で得た。
融点:105〜107℃。
元素の微量分析:
C% H% N%
計算値:56.52 4.93 5.07
実測値:56.53 5.31 5.34
【0092】
実施例4:
3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(ヒドロキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
手順は、実施例2のとおりであって、実施例3で得た化合物から出発した。標記生成物を、帯緑色粉末の形態で得た。
融点:88〜90℃
【0093】
実施例5:
3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(メトキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸エチル
手順は、実施例3のとおりであって、塩酸ヒドロキシルアミンを塩酸O−メチルヒドロキシルアミンに置き換えた。標記生成物を油の形態で得た。
元素の微量分析:
C% H% N%
計算値:57.24 5.16 4.94
実測値:57.34 5.38 4.85
【0094】
実施例6:
3−{4−[2−(6−[シクロプロピル(メトキシイミノ)メチル]−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
手順は、実施例2のとおりであって、実施例5で得た化合物から出発した。標記生成物を黄色粉末の形態で得た。
融点:33〜34℃。
元素の微量分析:
C% H% N%
計算値:55.76 4.68 5.20
実測値:55.93 5.04 4.84
【0095】
実施例7:
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
工程A:(2S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパンアミド
実施例2で得た化合物(1g)を、無水ジクロロメタン90mlに溶解し、トリエチルアミン330μlを加えた。温度を0℃に下げ、HOBt320mg、次いでEDCI450mgを加えた。15分間撹拌した後、(S)−フェニルグリシノール290mgを加えた。混合物を環境温度で20時間撹拌した。混合物を、加水分解し、次いでジクロロメタンで抽出した。有機相を、乾燥し、蒸発させ、残渣を半分取カラム(溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル=35/65)で精製して、標記生成物を白色固体の形態で得た。
融点:198〜202℃。
【0096】
工程B:(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
工程Aで得た化合物1.5gを、ジオキサン60mlに溶解し、次いで水60mlを加えた。その後、4.6M硫酸52.3mlを加え、混合物を、ジオキサンとともに、還流にて4時間加熱した。混合物を、大量の水中で加水分解し、ジクロロメタンで抽出した。有機相を、乾燥し、蒸発させ、残渣をシリカゲル上のクロマトグラフィー(溶離剤:ジクロロメタン、次いでジクロロメタン/メタノール=98/2)によって精製して、標記生成物を白色固体の形態で得た。
融点:126〜130℃。
【0097】
実施例8:
(R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
工程A:(2R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−N−[(1S)−2−ヒドロキシ−1−フェニルエチル]−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパンアミド
手順は、実施例7の工程Aのとおりであって、半分取クロマトグラフィーの終点で他方のジアステレオマーを単離した。
融点:150〜154℃。
【0098】
工程B:(R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸
手順は、実施例7の工程Bのとおりであって、工程Aで得た化合物から出発した。
【0099】
実施例9:
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム
0.1N水酸化ナトリウム溶液3.88mlを、実施例7で得た化合物200mgに加えた。溶液を環境温度で4時間撹拌し、次いで水を凍結乾燥によって蒸発し去って、標記生成物を白色固体の形態で得た。
元素の微量分析:
C% H% N% S%
計算値:54.24 3.98 2.64 6.03
実測値:54.28 4.67 2.50 5.17
【0100】
実施例10:
(R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム
手順は、実施例9のとおりであって、実施例8で得た化合物から出発した。
凍結乾燥生成物。
元素の微量分析:
C% H% N%
計算値:54.24 3.98 2.64
実測値:53.61 4.92 2.77
【0101】
実施例11:
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸カリウム
手順は、実施例9のとおりであって、水酸化ナトリウムを水酸化カリウムに置き換えた。凍結乾燥生成物。
【0102】
実施例12:
(R)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸カリウム
手順は、実施例9のとおりであって、実施例8で得た化合物から出発し、水酸化ナトリウムを水酸化カリウムに置換えた。凍結乾燥生成物。
【0103】
薬理学的研究
実施例A:
急性毒性の研究
それぞれ8匹のマウス(26±2g)を含む群に経口投与した後の、急性毒性を評価した。第1日の経過の間、および処置後2週間は毎日、動物を定期的に観察した。LD50(動物の50%の死を引き起こす用量)を評価し、本発明の化合物の低い毒性を立証した。
【0104】
実施例B:
遺伝学的モデルにおける有効性
実験動物における突然変異、および食餌摂取様式に対する異なる感受性は、インスリン非依存型糖尿病、ならびに肥満症およびインスリン抵抗性に関連する高脂質血症を有する動物モデルの開発を許している。これらの疾患の生理病理学を理解するため、また新規な抗糖尿病化合物の有効性を試験するために、マウスの遺伝学的モデル(ob/ob)[Diabetes, 1982, 31(1), 1-6]およびZucker(fa/fa)ラットが、様々な研究室によって開発されている[Diabetes, 1983, 32, 830-838]。
【0105】
ob/obマウスにおける抗糖尿病および血中脂質降下効果
10週齢のob/obマウスの雄(Harlan)を、in vivo試験に用いた。動物は、25℃、12時間の明暗周期の中で飼育した。このマウスには、2g/lの基礎高血糖症があった。動物を、その血糖について無作為に選別して、8匹の群を形成した。経口経路によって試験される化合物は、ヒドロキシエチルセルロースの混合物(HEC1%)に溶解して、3mg/kgを10ml/kgの体積として1日1回、4週間投与した。対照群には、処置群と同じ条件下で溶媒を与えた。生成物の活性は、最終投与の24時間後に血糖、血中インスリンおよび血中トリグリセリドを測定すること、ならびに毎日体重を測定することによって評価した。
【0106】
本発明の化合物は、参照物質として用いたロシグリタゾンで得られた効果に匹敵する、非常に優れた血糖降下能力を示した。
【0107】
例示すると、3mg/kgの用量でob/obマウスに経口経路で投与されて、実施例2の化合物は、血糖、血中インスリンおよび血中トリグリセリドを正常化し、それぞれ、対照マウスで観察された値の42%、71%および45%の減少であった。1mg/kgの用量で投与すると、実施例9の化合物は、血糖の39%の減少、血中インスリンの41%の減少、および血中トリグリセリドの52%の減少を示した。加えて、対照ob/obマウスで観察された体重増加の14%の低下が観察された。
【0108】
更に、このin vivo試験の間、副作用は全く観察されなかった。
【0109】
実施例C:
薬学的組成物
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム5mgの用量をそれぞれ含有する1,000錠。
(実施例9) 5g
コムギ澱粉 20g
トウモロコシ澱粉 20g
乳糖 30g
ステアリン酸マグネシウム 2g
シリカ 1g
ヒドロキシプロピルセルロース 2g
【0110】
実施例D:
体重の変動
8〜12週齢のC57Black系6ob/obマウスの雄を用いた。1週間隔離した後、計量し、次いで体重の関数として無作為に選別し、均等な6群(出発体重に有意差はなし)を形成した。動物を計量した後、試験しようとする式(I)の化合物と抗酸化剤との本発明の異なる結合を、1日1回7日間腹腔内注射した。分子は、充分な溶解を確保するために65℃に加熱した、5%DMSO/15%Solutol/適量のH2Oの溶液として注射した。加えて、溶液を注射前に予熱した。マウスは、毎日計量し、処置の7日後に得られた体重を記録した。
【0111】
得られた結果は、以下のことを明瞭に立証した:
−式(I)の化合物と抗酸化剤との本発明の結合は、肥満したマウスの体重の有意な減少が達成されるのを可能にすること、
−該結合の2成分間の相乗効果が存在して、確認された体重減少は、該結合を用いた方が、それ自体で投与される各成分を用いたときよりはるかに大きいこと。
【0112】
実施例E:
薬学的組成物
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム(実施例9)5mg、および補酵素Q1010mgの用量をそれぞれ含有する100錠。
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウム(実施例9) 3g
補酵素Q10 1g
コムギ澱粉 20g
トウモロコシ澱粉 20g
乳糖 30g
ステアリン酸マグネシウム 2g
シリカ 1g
ヒドロキシプロピルセルロース 2g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


[式中、
1は、C3〜C8シクロアルキル基を表し、
2は、式(II):
【化2】


(式中、Rは、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)
で示される基を表し、
Xは、酸素原子またはN−OR'基(R'は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基、アリール基、またはアルキル部分が直鎖もしくは分枝鎖状であってもよいアリールC1〜C6アルキル基を表す)を表す]
で示される化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩[ここで、
「幾何異性体」とは、XがN−OR'基を表すとき、オキシムR1−C(=N−OR')−がZまたはEの立体配置を有してもよいことを意味すると理解され、
「アリール」とは、フェニルまたはナフチル基を意味して、これらの基は、場合により、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6ポリハロアルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、ホルミル、アミノ(場合により一つまたは二つの直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル基で置換されている)、エステル、アミド、ニトロ、シアノ、およびハロゲン原子から選ばれる1〜3個の基で置換されていてもよいと理解される]。
【請求項2】
1がシクロプロピル基を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項3】
Rが水素原子またはエチル基を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項4】
2が基−CH2−CH(OCH2CF3)(COOH)を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項5】
2がRまたはSの立体配置を有する、請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項6】
Xが酸素原子を表す、請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項7】
3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸である請求項1記載の式(I)の化合物、その幾何異性体、鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項8】
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸である請求項1記載の式(I)の化合物、および塩基との薬学的に許容され得るその付加塩。
【請求項9】
(S)−3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸ナトリウムである、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
請求項1記載の式(I)の化合物を製造する方法であって、式(III):
【化3】


[式中、R1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、塩基性媒体中で、式(IV):
【化4】


[式中、R2は、式(I)について定義されたとおりであり、Halは、ハロゲン原子を表す]
で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/a):
【化5】


[式中、R1およびR2は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、場合により、これを式R'O−NH2[式中、R'は、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/b):
【化6】


[式中、R1、R2およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、この式(I/a)または(I/b)の化合物を、慣用の精製手法に従って精製してもよく、望みであれば、薬学的に許容され得る酸または塩基との付加塩に変換し、場合により、慣用の分離手法に従って異性体へと分離する
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10記載の式(I/b)の化合物を製造する方法であって、式(III):
【化7】


[式中、R1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、式R'O−NH2[式中、R'は、式(I)について定義されたとおりである]で示される化合物と縮合させて、式(V):
【化8】


[式中、R1およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩基性媒体中で、式(IV):
【化9】


[式中、R2は、式(I)について定義されたとおりであり、Halは、ハロゲン原子を表す]
で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/b):
【化10】


[式中、R1、R2およびR'は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、慣用の精製手法に従って精製してもよく、望みであれば、薬学的に許容され得る酸または塩基との付加塩に変換し、場合により、慣用の分離手法に従って異性体へと分離する
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
基R2がRまたはSの立体配置を有する、請求項1記載の式(I)の化合物を製造する方法であって、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/c):
【化11】


[式中、XおよびR1は、式(I)について定義されたとおりである]
で示される化合物を出発材料として用いて、これを、カップリング剤(S)−フェニルグリシノールの存在下で縮合させて、式(VI):
【化12】


[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、クロマトグラフィーによって精製して、式(VIIa)および(VIIb):
【化13】


[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これらの式(VIIa)および(VIIb)の化合物を、酸性媒体中で加水分解に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/d(a))および(I/d(b)):
【化14】


[式中、XおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、
これらの式(I/d(a))および(I/d(b))の化合物を、場合により、式RaOH[式中、Raは、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す]で示される化合物と縮合させて、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/e(a))および(I/e(b)):
【化15】


[式中、X、RaおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得るか、または
これらの式(I/d(a))および(I/d(b))の化合物を、場合により、RbOH[式中、Rbは、NaまたはKを表す]の作用に付して、式(I)の化合物の特定の場合である式(I/f(a))および(I/f(b)):
【化16】


[式中、X、RbおよびR1は、先に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、式(I/d(a))、(I/d(b))、(I/e(a))、(I/e(b))、(I/f(a))および(I/f(b))で示される化合物を、慣用の精製手法に従って精製してもよい
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
活性成分として請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも一つの化合物、または酸もしくは塩基との薬学的に許容され得るその付加塩を、単独でかまたは薬学的に許容され得る一つもしくはそれ以上の賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項14】
請求項13記載の薬学的組成物であって、高血糖症、異常脂質血症の治療および/または予防のための、より特別にはインスリン非依存型のII型糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、X症候群に付随する障害、冠動脈疾患およびその他の心血管系疾患、腎障害、網膜症、内皮細胞の活性化に付随する障害、乾癬、多嚢胞性卵巣症候群、痴呆症、骨粗鬆症、腸炎症性障害、筋強直性ジストロフィー、膵炎、動脈硬化症、黄色腫の治療における、またI型糖尿病、肥満症、食欲調節、食欲不振、過食症、神経性無食欲症はもとより、癌の病状、特にホルモン依存性の癌、たとえば乳癌および結腸癌の治療または予防における、ならびに血管形成インヒビターとしての使用のための、医薬の製造に用いるための薬学的組成物。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と抗酸化剤とを含有する結合。
【請求項16】
式(I)の化合物が3−{4−[2−(6−(シクロプロピルカルボニル)−2−オキソ−1,3−ベンゾチアゾール−3(2H)−イル)エトキシ]フェニル}−2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン酸、その鏡像異性体およびジアステレオマー、ならびに酸または塩基との薬学的に許容され得るその付加塩である、請求項15記載の結合。
【請求項17】
抗酸化剤が補酵素Q10である、請求項15記載の結合。
【請求項18】
活性成分としての請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合を、単独でかまたは薬学的に許容され得る一つもしくはそれ以上の賦形剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項19】
肥満症の治療および/または予防のための医薬の製造に用いるための請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防のための医薬の製造に用いるための請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項21】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、肥満症の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。
【請求項22】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、治療処置によって誘発された肥満症の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。
【請求項23】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、I型またはII型糖尿病の処置によって誘発された肥満症の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。
【請求項24】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。
【請求項25】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、治療処置によって誘発された、25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。
【請求項26】
請求項15〜17のいずれか一項に記載の結合の使用であって、I型またはII型糖尿病の処置によって誘発された、25より大きく、30より小さい体格指数によって特徴付けられる過体重の治療および/または予防を目的とする薬学的組成物を得る際の使用。

【公表番号】特表2009−529026(P2009−529026A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557793(P2008−557793)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000384
【国際公開番号】WO2007/101935
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】