説明

新規な食品保存料およびその製造方法

【課題】穀類等から発酵により製造した食品保存資材を提供すること。
【解決手段】穀類等を原料として、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母を用いて、pHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は賞味期間の短い食品や農林水産物の賞味期間を延長する天然系保存資材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の賞味期間を延長する物質として、古来より塩化ナトリウムやエチルアルコール、酢酸や乳酸などの酸が用いられてきた。これらを含む保存資材として、清酒・酒粕・みりん・塩・味噌・醤油・醸造酢などが広く使用されてきた。
【0003】
また、東北地方では米麹に塩と蒸し米を混合した三五八の素や、甘酒に塩と酒類を混合した寒麹等が使用されている。さらに、近年では甘酒に塩を混合して味噌酵母で微発酵させた麹ペースト(2004年岩手県工業技術センター開発、未出願)がある。
【0004】
これら天然系の保存資材の他、チアミンラウリル硫酸塩やパラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸塩などの各種合成保存料を配合した保存資材類が上市されている。
【0005】
合成保存料が消費者より敬遠される傾向が強くなってきたことから、清澄な酒精調味液(特許文献1参照)や、簡便かつ多用途に活用できる酒精調味料(特許文献2参照)、酒粕漬物床(特許文献3参照)等の技術が提案されている。これらの技術は酒粕を調味したものである。
【0006】
また、熟成後の清酒諸味の物性を改良した液状酒粕(特許文献4参照)も提案されている。
【0007】
これら何れの従来からの天然系保存資材は、食品の品質を劣化させる微生物に対して殺菌的あるいは静菌的に作用し、食品の品質保持期間を延長するものであるが、大部分は表1に示すように、酸・エチルアルコール・塩化ナトリウムの抗菌三要素の中の1種類乃至2種類の要素を用いた資材である。
【0008】
この中で特許文献1及び特許文献2、3の技術は抗菌三要素を兼ね備えているが、特許文献1と特許文献2の技術は塩化ナトリウム濃度が低く、抗菌性は期待できない。また、文献番号3の技術は塩化ナトリウム濃度が高く抗菌性が期待できるが、酒粕と塩・甘味料を混合したものであり、発酵工程が全くなく、さらにエチルアルコール濃度が低下しているためエチルアルコールによる抗菌性が弱い調味系の資材である。
【0009】
【表1】

【0010】
【特許文献1】特開平8−297747号公報
【特許文献2】特開平10−117722号公報
【特許文献3】特開2006−223214号公報
【特許文献4】特開2002−223742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、従来技術では十分に考慮されていない抗菌三要素中のエチルアルコール濃度・塩化ナトリウム濃度・pH範囲に着目し、この観点から、微生物を駆使した発酵により添加物なしの天然系保存資材を開発することを課題とした。
従来の天然系保存資材は、酸・エチルアルコール・塩化ナトリウムの抗菌三要素の中の1種類乃至2種類の要素を用いた資材である。また、近年開発された新規技術では三要素を兼ね備えたものもあるが、三要素の濃度・範囲が抗菌性より調味に重点を置いた技術である。そのため、保存性を維持するためには漬け込み素材に対して配合量を多くしなければならなかった。
しかしながら、抗菌三要素のバランスが悪いため期待する食品の品質保持期間を達成するためには高配合となるので、素材の風味を損なう傾向があった。また、調味機能を付与した保存資材では、原料としてではなく、添加物として配合する場合が多く表示が複雑となる。そのため、添加物ではなく微生物の発酵による物質変換が考えられるが、本来、微生物汚染を防止するための資材であるため、微生物が活動出来難い環境であるので発酵法による保存資材の開発は行われてこなかった。また、このような環境に耐性の高い微生物は知られていなかった。
【0012】
本発明者らは、漬け込み素材の風味が残存する、抗菌三要素が最適バランスである微生物を用いた発酵による食品保存資材の開発を課題とした。
【0013】
そこで、本発明の第一の目的は、従来技術では解決し得なかった課題である、漬け込み素材の風味が残存する、抗菌三要素が最適バランスである食品保存資材を提供することである。
【0014】
本発明の第二の目的は、食品保存資材の抗菌三要素の中の二要素エチルアルコールとpH低下物質である酸を微生物の発酵により作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、清酒諸味が麹菌による微生物培養基材の生産と乳酸菌及び酵母による並式複発酵で微生物汚染に対して比較的安定な物質であることに着目し、この観点から塩化ナトリウムが加わった系で良好な発酵を示す微生物について鋭意研究した結果、乳酸菌として白神の乳酸菌「作々楽」(特許文献5参照)や白神乳酸菌3138aC(特許文献6参照)のような高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌と、白神こだま酵母(特許文献7参照)のような高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性である酵母を使用することによりバランスの取れた抗菌三要素を有する食品保存資材が製造可能であることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
【0016】
【特許文献5】特許第4041850号
【特許文献6】特開2007−236344号
【特許文献7】特許第3995183号
【0017】
本発明は以下の(1)から(6)を提供するものである。
(1)並式複発酵により、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性の乳酸菌の産生する乳酸と高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の酵母の産生するエチルアルコールによりpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%であることを特徴とする食塩濃度が3〜20%の発酵諸味を提供するものである。
(2)発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(3)使用乳酸菌が高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性であることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(4)使用酵母が高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性であることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
(5)前記(1)の発酵諸味を固液分離した液体を提供するものである。
(6)アルコール発酵以前に塩化ナトリウム添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることを特徴とする前記(1)の発酵諸味製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、漬け込み素材の風味を損なうこと無く、バランスの取れた抗菌三要素を有する食品保存資材を発酵法により製造することが実現できた。
本発明によれば、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性と高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母を用いて、pHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味を製造が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
前記したように乳酸菌として高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌と、高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性である酵母を使用することによりバランスの取れた抗菌三要素を有する食品保存資材が製造可能であることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは乳酸菌及び酵母の発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを見いだして、本発明を完成するに至った。
次に本発明者らは、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌を使用することにより食品保存資材が製造できることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
さらに、高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性である酵母を使用することにより食品保存資材が製造できることを新規に見いだしたことで、本発明を完成するに至った。
またさらに、固液混合した食品保存資材を固液分離した液体だけでも抗菌三要素を有する食品保存資材となりうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
そして、酵母によるエチルアルコール発酵以前に塩化ナトリウムを添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることで安定的に食品保存資材を製造できることを新規に見いだして、本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明の食品保存資材は、並式複発酵により、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性の乳酸菌の産生する乳酸と高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の酵母の産生するエチルアルコールによりpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%であることを特徴とする食塩濃度が3〜20%であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明においては、乳酸菌と酵母の培養基として必要なぶどう糖供給源として穀類の麹単独あるいは加熱処理した穀類を混合したものを糖化して用いる。麹の替わりに発芽穀類を使用することが可能である。穀類としては、米・赤色米・小麦・大麦・粟・ひえ等や大豆等の豆類が使用可能である。糖化温度は麹又は発芽穀類の炭水化物分解酵素活性が発現する4〜65℃、好ましくは45〜60℃である。糖化した液は速やかに85℃以上に加温して殺菌することが望ましいが、酵素活性を残存させた状態で発酵を開始してもよい。また、発酵途中で麹や発芽穀類また加熱処理した穀類を追加してもよい。さらに二種類以上の穀類等を混合使用してもよい。
【0022】
本発明においては、上記糖化液に乳酸菌を添加して乳酸発酵を行わせる。添加乳酸菌の培養液としては上記の糖化液が好ましいが、その他の食品添加物資材を用いてもよい。また、使用乳酸菌は高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性であることが必要で、このような特性を有する乳酸菌であればよいが、白神の乳酸菌「作々楽」や白神乳酸菌3138aCが好ましい。
【0023】
本発明においては、糖化液が乳酸菌の産生する乳酸によりpHが5.5以下になった時点で酵母を添加するが、好ましくは乳酸発酵が十分に行われたpH4.8以下がよい。添加する酵母は、市販生酵母・市販乾燥酵母が使用できるが糖化液等で自家培養した酵母でもよい。用いる酵母としては高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の両特性を兼ね備えていればよいが、白神こだま酵母が好ましい。エチルアルコール発酵途中で酵母を追加添加してもよい。
【0024】
本発明においては、酵母添加以前に糖化液あるいは乳酸発酵糖化液に塩化ナトリウムを添加する。添加する塩化ナトリウムは添加後の濃度が3%以上あればよいが、5%以上であることが好ましい。添加塩化ナトリウムとしては、天然塩の他精製塩等があげられる。
【0025】
本発明においては、発酵熟成終了で食品保存資材の完成となるが、本品を固液分離して液体部分を食品保存資材として用いることが出来る。
【実施例】
【0026】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0027】
実施例1(米麹を用いた殺菌・酵素失活した食品保存資材の調製)
麹菌と高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母による発酵でpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%で、食塩濃度が3〜20%の穀類からの発酵諸味が製造可能かどうかを次の方法により検討した。
蒸煮した精米1kgに水2リットルと米麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。甘酒の濃度はBx.29.5であった。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した上記甘酒と同一製法の甘酒で培養した白神乳酸菌3138aC培養液500mlを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは4.1であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、30℃で20日間時々撹拌して発酵させた。発酵後に62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味の成分はエチルアルコール10.9%、pH4.1、塩化ナトリウム濃度5.1%であった。
【0028】
実施例2(実施例1で製造した諸味の保存性試験)
実施例1で製造した諸味に天然塩150gを添加して諸味の塩化ナトリウム濃度を
8.1%としたものを適宜蒸留水で希釈して30℃での保存試験を行った。希釈諸味の
pHは4.1であった。保存性はpHを測定して判定した。その結果を表2に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
表2においてpHが±0.2変化した時点を保存期間とした場合、2.5倍希釈(塩化ナトリウム濃度3.2%)では60日間保存可能であることが観察され、これ以上の高濃度では安全に保存できることが確認された。また、3.3倍希釈(塩化ナトリウム濃度2.4%)でも28日間、5倍希釈(塩化ナトリウム濃度1.6%)・10倍希釈(塩化ナトリウム濃度0.8%)では30℃で3日間は保存可能であることが判った。
【0031】
実施例1,2の結果より、麹菌と高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母による発酵で食品保存性資材の製造が可能であることが明らかとなった。
【0032】
実施例3(米麹を用いた生菌・酵素活性が残存した食品保存資材の調製)
実施例1より高塩化ナトリウム濃度での発酵諸味の製造と、乳酸菌・酵母の殺菌を行わない場合の諸味の保存性について次の方法により検討した。
蒸煮した精米10kgに水30リットルと米麹10kgさらに天然塩4.7kgを加えた。この諸味に予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神の乳酸菌作々楽培養液5リットルを添加し、20℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の諸味のpHは4.7であった。この乳酸発酵諸味に製パン用として市販されている白神こだま酵母を
100g添加し、5日後にさらに蒸煮した精米10kgと米麹10kg・水30リットル・天然塩4.7kg・白神こだま酵母100gを加えた。この後20℃で30日間発酵を行わせたところ、諸味のpHは4.6、エチルアルコール濃度は10.5%となった。
【0033】
実施例3の結果から、食品保存資材の製法として実施例1のような甘酒仕込みの他、清酒同様の段仕込みでも食品保存資材が製造可能であることが確認された。また、実施例3で製造した食品保存資材は、発酵終了後未加熱であったが、その後、25℃で60日間風味の変化は観察されず、未加熱であっても高い保存性を有することが判った。さらに、この諸味に天然塩を追加又は蒸留水を追加して塩化ナトリウム濃度3〜20%の諸味を調製したところ、何れの塩化ナトリウム濃度においても30℃で30日間風味の変化は観察されず、本発明品は、その用途により製品の塩化ナトリウム濃度を3〜20%と出来ることが確認された。
【0034】
実施例4(米麹及び赤色米を用いた殺菌・酵素失活した食品保存資材の調製)
製造する食品保存資材の天然系色素による有色化の可能性を次の方法により検討した。
蒸煮した赤色米1kgに水2リットルとうるち精米麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神乳酸菌3138aC培養液1リットルを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは3.7であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、5日後にさらに蒸煮した有色米1kgとうるち精米麹1kg・水3リットル・白神こだま酵母20g・天然塩227gを加えた。この後30℃で30日間発酵を行わせた。発酵後に62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味のpHは3.7、エチルアルコール濃度は11.5%であった。
【0035】
実施例4の結果より、通常のうるち精米の他、赤色米を使用しても食品保存資材の製造は可能であり、この手法により天然系の色素で食品保存資材の有色化が達成できることが明らかとなった。
【0036】
実施例5(粟麹を用いた殺菌・酵素失活した食品保存資材の調製)
製造する食品保存資材の米以外の素材による発酵の可能性を次の方法により検討した。
蒸煮したひえ1kgに水2リットルと蒸煮した粟より製造した粟麹1kgを加え、60℃で2時間加熱し甘酒を調製した。この甘酒に天然塩227gを加え冷却後に、予め調製した実施例1で記載した甘酒で培養した白神の乳酸菌作々楽培養液1リットルを添加し、30℃で24時間乳酸発酵をさせた。乳酸発酵後の甘酒のpHは4.6であった。この乳酸発酵甘酒に製パン用として市販されている白神こだま酵母を20g添加し、30℃で20日間時々撹拌して発酵させた。発酵後に天然塩150gを加えてミキサーにより残存する粗粒を粉砕してから62℃・5分の加熱処理を行い、諸味中に残存する乳酸菌及び酵母の殺菌と酵素の失活を行った。加熱処理後の諸味の成分はエチルアルコール11.8%、pH4.6、塩化ナトリウム濃度8.0%であった。
【0037】
実施例5の結果より、本食品保存資材は米以外の穀類でも製造可能であり、さらに製麹が可能な大豆等の豆類でも製造できることが明らかとなった。また、粉砕によりペースト化しても風味・保存性に影響はなく、さらにこのペーストを遠心分離等で固液分離した液体でも風味・保存性が保たれていることを確認した。
【0038】
また、この食品保存資材のエチルアルコール濃度は十分な乳酸発酵後にエチルアルコール発酵を開始させることから、発酵途中で発酵を中止して加熱処理することにより保存性が発揮する4〜12%の任意のエチルアルコール濃度の食品保存資材の製造が可能である。
【0039】
さらに、エチルアルコール発酵を行う白神こだま酵母はエチルアルコール濃度25%でも高い耐性を示すことが知られていることから、このエチルアルコール濃度までの諸味製造が可能と予測される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、穀類等から発酵により製造した食品保存資材を提供するものである。高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性である乳酸菌及び高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性を兼ね備えた酵母という特性を持った微生物の利用により可能となったものである。大昔より、人類は生鮮品を保存してきたが、保存により素材の風味の低下は避けられなかった。近代では生鮮品の保存の他、加工食品の保存に関して各種の合成保存料や従来の保存資材の組み合わせで賞味期間の延長を図ってきた。近年、安全・安心への関心が高まるにつれて合成保存料の使用は消費者より敬遠される傾向が強くなってきており、また、従来の天然系の保存資材では未だに保存素材の風味の変化が大きいことから、安心・安全で保存素材の風味が残存する方法や資材が求められている。その物理的方法として冷蔵や冷凍といった低温、レトルト加工といった短時間加熱処理等が開発利用されているが、製造・流通コスト面や大きなエネルギーを使用することからの環境面でよりよい手法・資材の開発が期待されている。本発明は、それらの需要に応えるものである。原料は穀類だけであり、それを麹菌・乳酸菌・酵母の力で食品保存資材に変換する。さらに、本発明の食品保存資材の有する酸・エチルアルコール・塩化ナトリウムの抗菌三要素の相乗効果により低配合で高い保存性が発揮できることから、低配合化が可能であり、素材の風味の残存性が高い。
本発明による食品保存資材は、塩化ナトリウムを含有していることから、本食品保存資材は、塩化ナトリウムが含有されていても風味上影響の少ない生鮮食品・加工食品全てで利用が可能であり、その範囲は非常に広く、また、これまで賞味期間の問題で流通が不可能であった食品の広域流通が可能になるとともに、新規な食品や加工方法の開発にも繋がる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並式複発酵により、高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性の乳酸菌の産生する乳酸と高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性の酵母の産生するエチルアルコールによりpHが2.5〜5.0且つエチルアルコール濃度が4〜25%であることを特徴とする食塩濃度が3〜20%の発酵諸味
【請求項2】
発酵基材として穀類又は発芽穀類とこれらを原料とする麹を用いることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
【請求項3】
使用乳酸菌が高浸透圧耐性且つ高塩化ナトリウム耐性であることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
【請求項4】
使用酵母が高塩化ナトリウム耐性且つ高エチルアルコール耐性であることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法
【請求項5】
請求項1記載の発酵諸味を固液分離した液体
【請求項6】
アルコール発酵以前に塩化ナトリウム添加して諸味塩化ナトリウム濃度3%以上とすることを特徴とする請求項1記載の発酵諸味製造方法

【公開番号】特開2010−110222(P2010−110222A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−282865(P2008−282865)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【出願人】(508074882)
【出願人】(308034246)八峰白神自然食品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】