説明

新規な9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、それよりなるホール輸送材料、発光材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】素子の低電圧駆動を可能にし、高効率な素子を提供するために必要な新規な9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、それよりなるホール輸送材料、発光材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の提供。
【解決手段】下記一般式(1)


で示されることを特徴とする9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、それよりなるホール輸送材料、発光材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、それよりなるホール輸送材料、発光材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子を効率よく発光させるには、機能にあった材料を積層させていくことが重要である。
このことに関して、有機エレクトロルミネッセンス素子を効率よく、また高信頼性を保つためにこれまで多くの材料が研究されてきた。
【0003】
ホール輸送材料についても、多くの材料が素子と組み合わせて検討が行われてきており、たとえばその研究の初期においては、下記式
【化1】

に示されるTPD(N,N′−diphenyl−N,N″−bis(3−methlphenyl)−1,1′−diphenyl−4,4′diamine)が広く用いられた(非特許文献1)。
しかしこの化合物はガラス転移温度が63℃と低く、再結晶化しやすいためその後の研究においては、下記式
【化2】

に示されるα−NPD(N,N′−diphenyl−N,N″−di(1−naphtalenyl)−1,1′−diphenyl−4,4′diamine)が用いられるようになった(特許文献1)。このもののガラス転移温度は、96℃と先のTPDに比べ30℃上昇し再結晶化が起こりにくくなった。
【0004】
一般的に、有機エレクトロルミネッセンス素子に適しているホール輸送材料のガラス転移温度は120〜130℃であるとされ、それに近いガラス転移温度を有する材料がその後開発されるようになった。
たとえば下記式
【化3】

に示されるNPTE−1(N,N′−diphenyl−N,N′−bis[N−phenyl−N−(2−naphtyl)−4′−aminobiphenyl−4−yl]−1,1′−biphenyl−4,4′−diamineは、ガラス転移温度が148℃と非常に高い温度を示している(特許文献2)。
しかしながらこのNPTE−1と電子輸送系発光材料Alq〔Tris(8−hydroxyquinolate)aluminum〕を用いた素子は、α−NPDとAlqを用いた素子に比べ信頼性に劣る。これは単にホール輸送材料はガラス転移温度が高いというだけでは有能ではないことの証明であり、陽極からのホール注入障壁の問題や、ホールの移動度による素子のキャリアバランスの問題が関与していることが考えられる。一般的にこれらを解消するには剛直置換基の導入で熱安定性をあげ、かつ広いπ共役でホールの移動度を改善することが必要である。
また、青色蛍光材料については、従来から発光色度の問題などから多くの材料について検討がなされ提案がされている。研究初期において下記式
【化4】

で表されるスチリル化合物の4,4′−Bis(2,2−diphenylethenyl)−1,1′−biphenyl(DPVBi)や4,4′−Bis(2,2−ditolylcthenyl)−1,1′−biphenyl(DTVBi)などがあり(特許文献3)、最近においては下記式

【化5】

で表される縮合環のアントラセン化合物〔3,7−Di(trimethylsilyl)−9,10−N,N′−di(p−tolyl)−9,10−N,N′−di(4−isopropylphenyl)anthracene〕などがある(特許文献4)。
これらの化合物はいずれも実績ある化合物ではあるが、青色ドーパントとしてはまだまだ絶対数が不足しておりさらなる新規青色ドーパントの開発が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2851185号
【特許文献2】特許第3180802号
【特許文献3】特開平4−31488号公報
【特許文献4】特開2007−137837号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C. Adachi, T.Tsutsui and S. Saito, Appl.Phys.Lett., 55, 1489 (1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、素子の低電圧駆動を可能にし、高効率な素子を提供するために必要な新規な9,10−ジフェニルアントラセン誘導体およびそれよりなるホール輸送材料、発光材料およびそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、下記一般式(1)
【化6】

(式中、R〜R16は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化7】

で示されたフェニル基およびナフチル基からなる群より選ばれた基であり、R17〜R28およびR30〜R36は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化8】

で示されたフェナントリル基、ピレニル基およびフルオレニル基、ジベンゾフラニル基およびジベンゾチオフェニル基よりなる群から選ばれた基であり、R37〜R63およびR66〜R100は、水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルキルアミノ基およびフッ素原子よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R64とR65は炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示されることを特徴とする9,10−ジフェニルアントラセン誘導体に関する。
本発明の第2は、請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体よりなるホール輸送材料に関する。
本発明の第3は、請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体よりなる発光材料に関する。
本発明の第4は、請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0009】
本発明のR〜R28およびR30〜R100における炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチルなどを挙げることができる。
また、R37〜R63、R66〜R100におけるアルコキシ基やアルキルアミノ基を構成しているアルキル基についても、上記のアルキル基を例示することができる。
【0010】
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体は、下記の反応により製造することができる。
【化9】

前記式中、R〜R16は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化10】

で示されたフェニル基およびナフチル基からなる群より選ばれた基であり、R17〜R28およびR30〜R36は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化11】

で示されたフェナントリル基、ピレニル基およびフルオレニル基、ジベンゾフラニル基およびジベンゾチオフェニル基よりなる群から選ばれた基であり、R37〜R63およびR66〜R100は、水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルキルアミノ基およびフッ素原子よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R64とR65は炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Xはハロゲンである。
【0011】
前記反応で使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリンなどの芳香族炭化水素系の溶媒で、原料のアミノ化合物と反応するハロゲンを含有しないものであれば特に限定されるものではない。好ましくは、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンであり、より好ましくはキシレンである。キシレンに関しては、o−,m−,p−の3種類の異性体が存在するが、これらが必ずしも分離されている必要はなく単一のものでも2種類以上の異性体が混合していても構わない。
Arに付くハロゲンは、クロロ体、ブロモ体あるいはヨード体のいずれでも構わないがより好ましくは、ブロモ体またはヨード体である。
触媒のアルコキシドについては、使用する芳香族炭化水素系の溶媒にとけるものであれば、特に限定されるものではない。アルコキシドに付加するアルカリ金属については、周期律表に掲げられているIA族のものであれば特に限定されるものではない。ナトリウム、カリウム、ストロンチウムあるいはセシウムのいずれでも構わないが、より好ましくはナトリウムである。またアルキル基についてもメチル基、エチル基、プロピル基あるいはブチル基など特に限定されるものではない。反応性を考慮すればブチル基が好ましく、より好ましくはtert−ブチル基である。
助触媒のホスフィン化合物については、第3アルキルホスフィンであれば特にアルキル基については限定されるものではない。反応性を考慮すれば、トリ−tert−ブチルホスフィンがより好ましい。またホスフィン化合物と同時に使われるパラジウム化合物については、0価のパラジウムであれば特に限定されるものではない。反応性を考慮すればトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム〔Pd(dba)〕が好ましい。
【0012】
本発明の化合物の具体例を以下に例示する。なお、下記例示化合物において、C〜C13は、直鎖の場合や分岐の場合を包含している。Arに対応する芳香族基における置換基であるCHなどにかえて、Fを用いる化合物も、本発明化合物の具体例として挙げることができる。
【0013】
【化12】

【0014】
【化13】

【0015】
【化14】

【0016】
【化15】

【0017】
【化16】

【0018】
【化17】

【0019】
【化18】

【0020】
【化19】

【0021】
【化20】

【0022】
【化21】

【0023】
【化22】

【0024】
【化23】

【0025】
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【0026】
【化25】

【0027】
【化26】

【0028】
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【0029】
【化28】

【0030】
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【0031】
【化30】

【0032】
【化31】

【0033】
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【0034】
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【0035】
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【0037】
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【0070】
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【化71】

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【化90】

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【0102】
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【0103】
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【0109】
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【0110】
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【0113】
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【0114】
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【0118】
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【0123】
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【0126】
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【0127】
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【0128】
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【0129】
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【0130】
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【0131】
【化130】

【0132】
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【0133】
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【0134】
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【0135】
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【0136】
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【0137】
【化136】

【0138】
【化137】

【0139】
【化138】

【0140】
【化139】

【0141】
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体は高いホール輸送性能を有する。従って、ホール輸送材料として使用することができる。本発明の化合物は蒸着により層形成を行うのが望ましい。
【0142】
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を有機エレクトロルミネッセンス素子に使用する場合、それ自体を発光材料として使用できるし、他の適当な発光材料と組み合わせて使用することもできる。
【0143】
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を発光層に用いる場合、本発明の化合物は発光材料として使用できる。また他の発光材料と組み合わせて使用することもできる。
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体をホール輸送層(正孔輸送層)に用いる場合、本発明の化合物はホール輸送材料として使用できる。また他のホール輸送材料と組み合わせて使用することができる。
【0144】
次に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極間に複数層の有機化合物を積層した素子であり、該有機化合物層の少なくとも一層が本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を含有することができる。とくに、発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入したホールもしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送するのが目的で、本発明の化合物もしくは本発明の化合物と既存のホール輸送材料もしくは電子輸送材料とを含有させることができる。多層型の有機EL素子の構成例としては、例えば陽極(例えばITO)/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層(正孔ブロック層)/電子輸送層/陰極、ITO/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、ITO/ホール注入層(正孔注入層)/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極等の多層構成で積層したものが挙げられる。また、必要に応じて陰極上に封止層を有していても良い。
【0145】
ホール輸送層、電子輸送層、および発光層のそれぞれの層は、一層構造であっても、多層構造であっても良い。またホール輸送層、電子輸送層はそれぞれの層で注入機能を受け持つ層(ホール注入層および電子注入層)と輸送機能を受け持つ層(ホール輸送層および電子輸送層)を別々に設けることもできる。
【0146】
本発明の有機EL素子は、上記構成例に限らず、種々の構成とすることができる。必要に応じて、ホール輸送成分と発光成分、あるいは電子輸送成分と発光成分を混合した層を設けても良い。
【0147】
以下本発明の有機EL素子の構成要素に関して、陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極からなる素子構成を例として取り上げて説明する。本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。
【0148】
基板の素材については特に制限はなく、例えば、従来の有機EL素子に慣用されているものが使用でき、例えば、ガラス、石英ガラス、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。
【0149】
本発明の有機EL素子の陽極としては、仕事関数の大きな金属単体(4eV以上)、仕事関数の大きな金属同士の合金(4eV以上)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、金、銀、銅等の金属、ITO(インジウム−スズオキサイド)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性透明材料、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子材料が挙げられる。陽極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリング、塗布などの方法により形成することができる。陽極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。
【0150】
陰極としては、仕事関数の小さな金属単体(4eV以下)、仕事関数の小さい金属同士の合金(4eV以下)または導電性物質およびこれらの混合物を電極材料とすることが好ましい。このような電極材料の具体例としては、リチウム、リチウム−インジウム合金、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−マグネシウム合金などが挙げられる。陰極はこれらの電極材料を、例えば蒸着、スパッタリングなどの方法により、薄膜を形成させることにより作成することができる。陰極のシート電気抵抗は数百Ω/cm以下が好ましい。陰極の膜厚は材料にもよるが、一般に5〜1,000nm程度、好ましくは10〜500nmである。本発明の有機EL素子の発光を効率よく取り出すために、陽極または陰極の少なくとも一方の電極は透明もしくは半透明であることが好ましい。
【0151】
本発明の有機EL素子の電子輸送層は、電子輸送材料からなるもので、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有している。電界が与えた2つの電極の間に電子輸送材料が配置されて陰極から電子が注入された場合、少なくとも10−6cm/V・秒以上の電子移動度を有する電子輸送材料が好ましい。本発明の有機EL素子に使用する電子輸送層に使用する電子輸送材料は、前記の好ましい性能を有するものであれば特に制限はない。従来から光導電材料において電子の電荷注入材料として慣用されているものや有機EL素子の電子輸送層に使用されている公知の材料の中から任意のものを選択して用いることができる。
【0152】
前記の電子輸送材料としては、たとえばトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)のようなキノリン錯体、1−N−フェニル−2−(p−ビフェニルイル)−5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(TAZ)のようなトリアジン誘導体、1,4−ジ(1,10フェナントロリン−2−イル)ベンゼン(DPB)のようなフェナントロリン誘導体、フッ化リチウムのようなハロゲン化アルカリ金属などが挙げられる。電子輸送層は、これらの他の電子輸送材料の一種または二種以上からなる一層で構成されたものでよく、前記の電子輸送材料とは別の化合物からなる電子輸送層を積層したものでも良い。
電子注入材料としては、下記化学式に示されるフッ化リチウム(LiF)や8−ヒドロキシキノリノラトリチウム錯体(Liq)などを挙げることができるが、本出願人の特願2006−292032号にかかげるフェナントロリン誘導体のリチウム錯体(LiPB)や特願2007−29695号に掲げるフェノキシピリジンのリチウム錯体(LiPP)を用いることもできる。
【化140】

電子輸送材料としては、下記化学式に示すAlq、TAZ、DPBなどを挙げることができる。
【化141】

【0153】
本発明の有機EL素子の発光層に用いられる発光材料については、本発明のアントラセ誘導体を使用できるが、それ以外のものでも特に制限はなく、任意のものを選択して用いることができる。
【0154】
本発明のアントラセン誘導体以外の発光材料としては、ペリレン誘導体、ナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体(例えばクマリン1、クマリン540、クマリン545など)、ピラン誘導体(例えばDCM−1、DCM−2、DCJTBなど)、有機金属錯体、例えばトリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、トリス(4−メチル−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム錯体(Almq)等の蛍光材料や[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′]イリジウム(III)ピコリレート(FIrpic)、トリス{1−〔4−(トリフルオロメチル)フェニル〕−1H−ピラゾラート−N,C2′}イリジウム(III)(Irtfmppz)、ビス〔2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2′〕イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(FIr6)、トリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)〔Ir(ppy)〕などのリン光材料などを挙げることができる。
【0155】
発光層は、ホスト材料とゲスト材料(ドーパント)から形成することもできる〔Appl. Phys. Lett.,65 3610(1989)〕。特にリン光材料を発光層に使用する場合、ホスト材料の使用が必要であり、この時使用されるホスト材料としては4,4′−ジ(N−カルバゾリル)−1,1′−ビフェニル(CBP)、1,4−ジ(N−カルバゾリル)ベンゼン−2,2′−ジ〔4″−(N−カルバゾリル)フェニル〕−1,1′−ビフェニル(4CzPBP)等が挙げられる。
【0156】
ゲスト材料は、ホスト材料に対して好ましくは0.01〜40重量%であり、より好ましくは0.1〜20重量%である。ゲスト材料としては、下記に示す従来公知のFIrpic、Ir(ppy)、FIr6等を挙げることができる。
【化142】

【0157】
本発明の有機EL素子のホール輸送層に用いる、ホール輸送材料としては、本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を用いることができる。このものは単独で使用できるが他のホール輸送材料と併用しても構わない。併用できるホール輸送材料としては、下記式のα−NPDやTAPCを挙げることができる。
【化143】

【0158】
本発明の有機EL素子は、ホール注入性をさらに向上させる目的で陽極と有機化合物の層の間に有機導電体から構成されるホール注入層をさらに設けても良い。ここで使用されるホール注入材料としては、本発明の化合物の他に銅フタロシアニンなどのフタロシアニン誘導体、ポリフェニレンジアミン誘導体、ポリチオフェン誘導体、およびPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)などが挙げられる。
【0159】
本発明の化合物を含むホール注入層、ホール輸送層の形成方法については特に限定されるものではない。例えば乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)、湿式製膜法[溶媒塗布法(例えばスピンコート法、キャスト法、インクジェット法など)]を使用することができる。本発明のアントラセン誘導体は乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)が好ましい。電子輸送層の製膜については、湿式製膜法で行うと下層が溶出する恐れがあるため乾式製膜法(例えば真空蒸着法、イオン化蒸着法など)に限定される。素子の作成については上記の製膜法を併用しても構わない。
【0160】
真空蒸着法によりホール輸送層、発光層、電子輸送層などの各層を形成する場合、真空蒸着条件は特に限定されるものではない。通常10−5Torr程度以下の真空下で50〜500℃程度のボート温度(蒸着原温度)、−50〜300℃程度の基板温度で、0.01〜50nm/sec.程度蒸着することが好ましい。正孔輸送層、発光層、電子輸送層の各層を複数の化合物を使用して形成する場合、化合物を入れたボートをそれぞれ温度制御しながら共蒸着することが好ましい。
【0161】
ホール注入層、ホール輸送層を溶媒塗布法で形成する場合、各層を構成する成分を溶媒に溶解または分散させて塗布液とする。溶媒としては、炭化水素系溶媒(例えばヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等)、ケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ハロゲン系溶媒(例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等)、エステル系溶媒(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、エーテル系溶媒(例えばジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、非プロトン性溶媒(例えばN,N′−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等)、水等が挙げられる。溶媒は単独で使用しても良いが、複数の溶媒を併用しても良い。
【0162】
ホール輸送層、発光層、電子輸送層等の各層の膜厚は、特に限定されるものではないが、通常5〜5,000nmになるようにする。
【0163】
本発明の有機EL素子は、酸素や水分等の接触を遮断する目的で保護層(封止層)を設けたり、不活性物質中に素子を封入して保護することができる。不活性物質としては、パラフィン、シリコンオイル、フルオロカーボン等が挙げられる。保護層に使用する材料としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、光硬化性樹脂等がある。
【0164】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常直流駆動の素子として使用できる。直流電圧を印加する場合、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として通常1.5〜20V程度印加すると発光が観察される。また本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は交流駆動の素子としても使用できる。交流電圧を印加する場合には、陽極がプラス、陰極がマイナスの状態になった時に発光する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、例えば電子写真感光体、フラットパネルディスプレイなどの平面発光体、複写機、プリンター、液晶ディスプレイのバックライト、計器等の光源、各種発光素子、各種表示装置、各種標識、各種センサー、各種アクセサリーなどに使用することができる。
【0165】
図74〜83に、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の好ましい例を示す。
【0166】
図74は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の1例を示す断面図である。図74は、基板1上に陽極2、正孔(ホール)輸送層5、発光層3および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合発光層は電子輸送性の機能を有している場合に有用である。
【0167】
図75は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図75は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。これはキャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、材料選択の自由度が増すために、発光の高効率化や発光色の自由度が増すことになる。
【0168】
図76は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図76は、基板1上に陽極2、正孔注入層7、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、正孔注入層7を設けることにより、陽極2と正孔輸送層5の密着性を高めたり、陽極からの正孔の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0169】
図77は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図77は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、電子注入層8を設けたことにより陰極4から電子の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0170】
図78は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図78は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合も、陰極4から電子の注入を良くし、発光素子の低電圧化に効果がある。
【0171】
図79は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における他の例を示す断面図である。図79は、基板1上に陽極2、正孔注入層7、正孔輸送層5、発光層3、電子輸送層6、電子注入層8および陰極4を順次設けた構成のものである。この場合、陽極2から正孔の注入を良くし、陰極4から電子注入を良くし、最も低電圧駆動に効果がある構成である。
【0172】
図80〜83は素子の中に正孔ブロック層9を挿入したものの断面図である。正孔ブロック層は、陽極から注入された正孔、あるいは発光層3で再結合により生成した励起子が、陰極4に抜けることを防止する効果があり、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率の向上に効果がある。正孔ブロック層9については、発光層3と陰極4の間もしくは発光層3と電子輸送層6の間あるいは発光層3と電子注入層8の間に挿入することができる。より好ましいものは発光層3と電子輸送層6の間である。
【0173】
図80〜83で、正孔輸送層5、正孔注入層7、電子輸送層6、電子注入層8、発光層3、正孔ブロック層9のそれぞれの層は、一層構造であっても多層構造であっても良い。
【0174】
図74〜83は、あくまでも基本的な素子構成であり、本発明の化合物を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の構成はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0175】
本発明の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、例えば4,4′−(9,10−アントラセンジイル)−ビス−〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチルフルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミンは、ガラス転移温度が136℃と高く実用的なレベルの熱特性を有している。またこのものをホール輸送層に用いた素子は、輝度−電流特性、電流密度−電圧特性がα−NPD(以下、単にNPDと略す場合がある)に比べて良好で、長時間素子を点灯させても電圧上昇も少ないことからホール輸送性が高いと考えられる。
よって本発明の化合物は、素子を高効率化させるために必要なものであり、工業的に極めて重要なものである。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を示す。
【図2】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)の質量分析の結果を示す。
【図3】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)の熱分解測定(TGA)の結果を示す。
【図4】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を示す。
【図5】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)の励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
【図6】実施例1の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADP)の理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【図7】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を示す。
【図8】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の質量分析の結果を示す。
【図9】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の熱分解測定(TGA)の結果を示す。
【図10】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を示す。
【図11】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
【図12】実施例2の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【図13】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を示す。
【図14】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の質量分析の結果を示す。
【図15】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の熱分解測定(TGA)の結果を示す。
【図16】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を示す。
【図17】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
【図18】実施例3の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【図19】実施例4および比較例1のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図20】実施例4および比較例1の輝度−電圧特性を示す。
【図21】実施例4および比較例1の電流密度−電圧特性を示す。
【図22】実施例4および比較例1の電流効率−電圧特性を示す。
【図23】実施例4および比較例1の輝度−電流密度特性を示す。
【図24】実施例4および比較例1の電力効率−電圧特性を示す。
【図25】実施例5および比較例2のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図26】実施例5および比較例2の輝度−電圧特性を示す。
【図27】実施例5および比較例2の電流密度−電圧特性を示す。
【図28】実施例5および比較例2の電流効率−電圧特性を示す。
【図29】実施例5および比較例2の輝度−電流密度特性を示す。
【図30】実施例5および比較例2の電力効率−電圧特性を示す。
【図31】実施例6および比較例3のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図32】実施例6および比較例3の輝度−電圧特性を示す。
【図33】実施例6および比較例3の電流密度−電圧特性を示す。
【図34】実施例6および比較例3の電流効率−電圧特性を示す。
【図35】実施例6および比較例3の輝度−電流密度特性を示す。
【図36】実施例6および比較例3の電力効率−電圧特性を示す。
【図37】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を示す。
【図38】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の質量分析の結果を示す。
【図39】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の示差熱量分析(DSC)の結果を示す。
【図40】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の熱分解測定(TGA)の結果を示す。
【図41】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を示す。
【図42】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
【図43】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【図44】実施例7の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の移動度の測定結果を示す。
【図45】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)のH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を示す。
【図46】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の質量分析の結果を示す。
【図47】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の示差熱量分析(DSC)の結果を示す。
【図48】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の熱分解測定(TGA)の結果を示す。
【図49】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を示す。
【図50】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
【図51】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【図52】実施例8の4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の移動度の測定結果を示す。
【図53】実施例9および比較例4のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図54】実施例9および比較例4の輝度−電圧特性を示す。
【図55】実施例9および比較例4の電流密度−電圧特性を示す。
【図56】実施例9および比較例4の電流効率−電圧特性を示す。
【図57】実施例9および比較例4の輝度−電流密度特性を示す。
【図58】実施例9および比較例4の電力効率−電圧特性を示す。
【図59】実施例10のポリメチルメタクリレート(PMMA)溶液中でのDPADFUの蛍光量子収率の結果を示す。
【図60】実施例11の2−メチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)にドープしたDPADFUの蛍光量子収率の結果を示す。
【図61】実施例12のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図62】比較例6のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図63】実施例12および比較例6の輝度−電圧特性を示す。
【図64】実施例12および比較例6の電流密度−電圧特性を示す。
【図65】実施例12および比較例6の電流効率−電圧特性を示す。
【図66】実施例12および比較例6の電力効率−電圧特性を示す。
【図67】実施例13および比較例7エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す。
【図68】実施例13および比較例7の輝度−電圧特性を示す。
【図69】実施例13および比較例7の電流密度−電圧特性を示す。
【図70】実施例13および比較例7の電流効率−電圧特性を示す。
【図71】実施例13および比較例7の輝度−電流密度特性示す。
【図72】実施例13および比較例7の電力効率−電圧特性性示す。
【図73】実施例14のポリメチルメタクリレート(PMMA)溶液中でのDPADTの蛍光量子収率の結果を示す。
【図74】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図75】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図76】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図77】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図78】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図79】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図80】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図81】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図82】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【図83】本発明における有機エレクトロルミネッセンス素子の一例を示す断面図である。
【実施例】
【0177】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0178】
実施例1
4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ピレン−1−イル)〕ベンゼンアミン(DPADP)の合成
【化144】

200mlの4つ口フラスコに4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル〕ベンゼンアミン(DPADA)、1−ブロモピレン、ナトリウムターシャリーブトキシド(NaOBu)、トリス(ジベンジリデンアセトナト)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、トリ(ターシャリーブチル)ホスフィン〔P(t−Bu)〕、o−キシレンを表1に示す割合で入れ、一時間窒素バブリングを行い、窒素雰囲気下100℃で14時間撹拌させた。反応終了後、吸引濾過し、固体を回収した。精製は昇華精製を行った。
DPADPを製造するための反応条件と収率を表1に示す。また昇華精製して得られたDPADPの元素分析値を表2に示す。

【表1】

収率はDPADAのモル数を基準にしている。
【表2】

得られたDPADPのH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を図1に、質量分析の結果を図2に示す。またこの化合物の熱分解測定(TGA)の結果を図3に示す。
また、この化合物の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を図4に、図5に励起スペクトル(Ex)と発光スペクトル(Em)の結果を示す。
表3にDPADPのイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)とエネルギーギャップ(Eg)の測定結果を示す。また図6に理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【表3】

a:Determained by AC−3
b:Ea=Ip − energy gap
c:Energy gap was estimate from the
absorption
Ip:イオン化ポテンシャル
Eg:エネルギーギャップ
Ea:エネルギーアフィニティ(電子親和力)
エネルギーギャップ(Eg)については、蒸着機で作成した薄膜を紫外−可視吸光度計で薄膜の吸収曲線を測定する。その薄膜の短波長側の立ち上がりのところに接線を引き、求まった交点の波長W(nm)を次の式に代入し目的の値を求める。それによって得た値がEgになる。
Eg=1240÷W
例えば接線を引いて求めた値W(nm)が470nmだったとしたらこの時のEgの値は
Eg=1240÷470=2.63(eV)
と言うことになる。
IP(イオン化ポテンシャル)はイオン化ポテンシャル測定装置(例えば理研計器AC−3)を使用して測定し、測定するサンプルがイオン化を開始したところの電圧(eV)の値を読む。
Ea(電子親和力)は、IpからEgを引いた値である。
【0179】
実施例2
4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(フェナントレン−1−イル)〕ベンゼンアミド(DPADPH)の合成
【化145】

200ml4つ口フラスコに、DPADA、1−ブロモフェナントレン、ナトリウムターシャリーブトキシド(NaOBu)、トリス(ジベンジリデンアセトナト)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、トリ(ターシャリーブチル)ホスフィン〔P(t−Bu)〕、o−キシレンを入れ、一時間窒素バブリングを行い、窒素雰囲気下100℃で14時間撹拌させた。反応終了後、吸引濾過し、液体を回収し洗浄(イオン交換水2回、飽和食塩水1回)を行った。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:n−ヘキサン=1:2)と昇華精製を行った。
DPADPHを製造するための反応条件と収率を表4に示す。また昇華精製して得られたDPADPHの元素分析値を表5に示す。
【表4】

収率はDPADAのモル数を基準にしている。
【表5】

得られたDPADPHのH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を図7に、質量分析の結果を図8に示す。またこの化合物の熱分解測定(TGA)の結果を図9に示す。
また、この化合物の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を図10に、図11に励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
表6にDPADPHのイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)とエネルギーギャップ(Eg)の測定結果を示す。また図12に理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【表6】

【0180】
実施例3
4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(9,9−ジエチル−フルオレン−2−イル)〕ベンゼンアミド(DPADF)の合成
【化146】

200ml4つ口フラスコに、DPADA、9,9−ジエチル−2−ブロモフルオレン(BDEF)、ナトリウムターシャリーブトキシド(NaOBu)、トリス(ジベンジリデンアセトナト)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、トリ(ターシャリーブチル)ホスフィン〔P(t−Bu)〕、o−キシレンを入れ、一時間窒素バブリングを行い、窒素雰囲気下100℃で14時間撹拌させた。反応終了後、吸引濾過し、液体を回収し洗浄(イオン交換水2回、飽和食塩水1回)を行った。精製はシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 クロロホルム:n−ヘキサン=1:2)と昇華精製を行った。
DPADFを製造するための反応条件と収率を表7に示す。
【表7】

収率はDPADAのモル数を基準にしている。
得られたDPADFのH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を図13に、質量分析の結果を図14に示す。またこの化合物の熱分解測定(TGA)のグラフを図15に示す。ガラス転移温度の測定結果と熱分解測定(TGA)の結果を表8に示す。
【表8】

また、この化合物の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を図16に、図17に励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
表9にDPADFのイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)とエネルギーギャップ(Eg)の測定結果を示す。また図18に理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【表9】

【0181】
実施例4および比較例1
実施例1で合成したホール輸送材料DPADPを用いた素子を作成した。またこの素子と比較するためα−NPDをホール輸送材料に用いた素子を比較例1として作成した。
素子の構成
実施例4
Device1.[ITO(陽極)/DPADP(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層・この層は電子輸送層も兼ねる)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
比較例1
Ref1..[ITO/α―NPD(40nm)/Alq(60nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)]
これらの素子の
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図19に、
輝 度 −電圧特性は図20に、
電流密度−電圧特性は図21に、
電流効率−電圧特性は図22に、
輝 度 −電流密度特性は図23に、
電力効率−電圧特性は図24に、
それぞれ示す。
【0182】
実施例5および比較例2
実施例2で合成したホール輸送材料DPADPHを用いた素子を作成した。またこの素子と比較するためα−NPDをホール輸送材料に用いた素子を比較例2として作成した。
素子の構成
実施例5
Device2.[ITO/DPADPH(40nm)/Alq(60nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)]
比較例2
Ref2..[ITO/α―NPD(40nm)/Alq(60nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)]
これらの素子の
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図25に、
輝 度 −電圧特性は図26に、
電流密度−電圧特性は図27に、
電流効率−電圧特性は図28に、
輝 度 −電流密度特性は図29に、
電力効率−電圧特性は図30に、
それぞれ示す。
【0183】
実施例6および比較例3
実施例3で合成したホール輸送材料DPADFを用いた素子を作成した。またこの素子と比較するためα−NPDをホール輸送材料に用いた素子を比較例3として作成した。
素子の構成
実施例6
Device3.[ITO/DPADF(40nm)/Alq(60nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)]
比較例3
Ref3..[ITO/α―NPD(40nm)/Alq(60nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm)]
これらの素子の
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図31に、
輝度−電圧特性は図32に、
電流密度−電圧特性は図33に、
電流効率−電圧特性は図34に、
輝度−電流密度特性は図35に、
電力効率−電圧特性は図36に、
それぞれ示す。
【0184】
実施例7
4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾフラン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADFU)の合成
【化147】

300ml4つ口フラスコにDPADA、3−ヨードジベンゾフラン、ナトリウムターシャリーブトキシド(NaOBu)、トリス(ジベンジリデンアセトナト)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、トリ(ターシャリーブチル)ホスフィン〔P(t−Bu)〕、o−キシレンを入れ一時間窒素バブリングを行い、窒素雰囲気下100℃で14時間撹拌させた。反応終了後、吸引濾過した。精製はカラム(展開溶媒クロロホルム:n−ヘキサン=2:3)、高真空昇華精製(高温側:330℃、低温側:310℃)にて行なった。
DPADFUを製造するための反応条件と収率を表10に示す。
【表10】

収率はDPADAのモル数を基準にしている。

得られたDPADFUのH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を図37に、質量分析の結果を図38に示す。またこの化合物の示差熱量分析(DSC)の結果を図39に、熱分解測定(TGA)の結果を図40に示す。図39の示差熱量分析は、加熱−冷却を3回繰り返し行っているが、1回目が一番下のライン、2回目がその上のライン、3回目が一番上のラインである。
またこの化合物の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を図41に、図42に励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
表11にDPADFUのイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)とエネルギーギャップ(Eg)の測定結果を示す。また図43に理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【表11】

さらにこの化合物の移動度の測定を行った。その結果を図44に示す。図44では、DPADFUの移動度をNPDのそれと比較している。DPADFUのプロットがすべてNPDのプロットよりも上にあるということは、DPADFUの方がNPDよりも常に移動度が大きいということであり、DPADFUの方がNPDより有効であることを示している。
【0185】
実施例8
4,4′−(9,10−アントラセンジイル)ビス〔N−フェニル−N−(ジベンゾチオフェン−4−イル)〕ベンゼンアミド(DPADT)の合成
【化148】

300ml4つ口フラスコにDPADA、3−ヨードジベンゾチオフェン、ナトリウムターシャリーブトキシド(NaOBu)、トリス(ジベンジリデンアセトナト)ジパラジウム〔Pd(dba)〕、トリ(ターシャリーブチル)ホスフィン〔P(t−Bu)〕、o−キシレン、を入れ一時間窒素バブリングを行い窒素雰囲気下100℃で14時間撹拌させた。
反応終了後、吸引濾過した。精製はカラム(展開溶媒クロロホルム:n−ヘキサン=2:3)、高真空昇華精製(高温側:340℃、低温側:324℃)にて行なった。
DPADTを製造するための反応条件と収率を表12に示す。
【表12】

収率はDPADAのモル数を基準にしている。
得られたDPADTのH−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒中、内部標準テトラメチルシラン使用、400MNz)を図45に、質量分析の結果を図46に示す。またこの化合物の示差熱量分析(DSC)の結果を図47に、熱分解測定(TGA)の結果を図48に示す。図47の3つのラインは、図39のケースと同様である。
またこの化合物の溶液状(10−5mol/l クロロホルム溶媒)と薄膜状(500Å)での紫外−可視吸収曲線の結果を図49に、図50に励起スペクトルと発光スペクトルの結果を示す。
表13にDPADTのイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)とエネルギーギャップ(Eg)の測定結果を示す。また図51に理研計器AC−3で測定したイオン化ポテンシャルの結果を示す。
【表13】

さらにこの化合物の移動度の測定を行った。その結果を図52に示す。図52も、図44のケースと同様にDPADTがNPDより移動度の点で有効性が高いことを示している。
【0186】
実施例9および比較例4
実施例7で合成したホール輸送材料DPADFUを用いた素子を作成した。またこの素子と比較するためα−NPDをホール輸送材料に用いた素子を比較例4として作成した。
素子の構成
実施例9
Device4.[ITO(陽極)/DPADFU(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層兼電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
比較例4
Ref.4.[ITO(陽極)/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層兼電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
これらの素子の
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図53に、
輝 度 −電圧特性は図54に、
電流密度−電圧特性は図55に、
電流効率−電圧特性は図56に、
輝 度 −電流密度特性は図57に、
電力効率−電圧特性は図58に、
それぞれ示す。
【0187】
実施例10および比較例5
実施例7で合成したDPADFUのポリメチルメタクリレート(PMMA)溶液中でのいろいろの分散濃度における蛍光量子収率を測定した。分散濃度は、1wt%、3wt%、5wt%とした。また比較例としてポリメチルメタクリレートを使用しない(Neat)で測定した。実施例10のNeatでの測定は、真空蒸着を用いて薄膜を形成し、蛍光量子収率を測定している。
ここではPMMAへの分散膜を作成し、分散濃度と蛍光量子収率の関係を求めている。発光材料は濃度が濃くなると分子凝集を起こし発光しなくなる。発光材料をホストに混ぜて使用する理由の1つは分子凝集を防ぐためである。
ゆえに分子凝集を抑えてやれば蛍光量子収率は向上することになる。Neatの蛍光量子収率が1wt%よりも悪いのは分子凝集をしているからである。
PMMA分散膜は、PMMAと用いているPMMAのそれぞれの重量%に対応するドーパントとが混合しているものを均一溶液になるのに必要最小限度のクロロホルム量で溶かしたクロロホルム溶液をスピンコートして作成している。
【化149】

測定結果を表14および図59に示す。

【表14】

図59には山が左右2つ存在し、左は吸収、右は発光強度を表している。Absの場合は、ドーパントを含んでいないので、吸収エネルギーを発光エネルギーに変える必要がない。そのためDPADFUを加えた例に比べて大きく吸収エネルギーが出ている。
Neatについては、真空蒸着で薄膜を作成している。故にDPADFU以外に含まれているものはない。
図59は、吸収エネルギーがDPADFUの発光エネルギーにどれだけ置き換わっているかを表す図である。よって右の山が高いものほど吸収エネルギーが発光エネルギーに多く置き換わっていることを表す。
図59中のAbsについては、PMMA単独での蛍光量子収率を表すものである。
ここでは、DPADFUの蛍光量子収率の測定を行っているが、PMMAに分散しない比較例5(Neat)では、分子凝集をおこし、45%のエネルギーだけが蛍光に用いられたことを示している。これに対して、PMMAに分散させた実施例のものは87〜91%のエネルギーが蛍光に用いられたことを示しており、量子効率が向上していることを示している。したがって、分子凝集をおこさない状態で使用することは大変重要なことである。
【0188】
実施例11
実施例7で合成したDPADFUを2−メチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(MADN)にドープした膜での蛍光量子収率を測定した。ドープ濃度は1重量%、3重量%、5重量%、10重量%、15重量%および20重量%とした。
測定結果を表15および図60に示す。
【化150】

図60のRef.は無蛍光ガラスの吸収エネルギーの大きさを表している。この場合もRef.はドーパントが含まれていないため発光エネルギーに変換する必要がないため吸収エネルギーの山が大きく現れる。図60も吸収エネルギーが、DPADFUの発光エネルギーにどれだけ置き換わっているかを表す図である。
【表15】

【0189】
実施例12および比較例6
実施例7で合成したDPADFUをホール輸送層および青色ドーパントとして発光層で用いた素子を作成した。比較のためにホール輸送層にα−NPDを用いた素子を比較例6として作成した。

素子の構成
実施例12
Device5.[ITO(陽極)/DPADFU(50nm)(ホール輸送層)/MADN:DPADFU(10wt%)(30nm)(発光層)/DPB(20nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
比較例6
Ref.5.[ITO(陽極)/α−NPD(50nm)(ホール輸送層)/MADN:DPADFU(10wt%)(30nm)(発光層)/DPB(20nm)(電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
これらの素子の
実施例12のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図61に、
比較例6のエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図62に、
輝 度 −電圧特性は図63に、
電流密度−電圧特性は図64に、
電流効率−電圧特性は図65に、
電力効率−電圧特性は図66に、
それぞれ示す。
また、ここではDPADFUは、ホール輸送材料としてだけではなく、青色ドーパントとしても機能しており、そのため、α−NPDを用いた素子より明るく光る結果を示していることが図63からも明らかである。
図61〜66はDPADFUをホール輸送材料に使用した素子を作成し、ホール輸送性を評価したものである。図64の電流密度−電圧特性が高いことからホールを輸送する能力がα−NPDよりも高いことを意味している。図65、図66のデータが劣るのは、ホールがα−NPDを用いた素子よりも過剰に素子に入りすぎてホール過多な素子になっている可能性を示す。このため電流効率−電圧特性、電力効率−電圧特性が劣ってしまっている。いずれにしてもDPADFUのホール輸送性はα−NPDよりも高いものと考えられる。
【0190】
実施例13および比較例7
実施例8で合成したホール輸送材料DPADTを用いた素子を作成した。またこの素子と比較するためα−NPDをホール輸送材料に用いた素子を比較例7として作成した。
素子の構成
実施例13
Device6.[ITO(陽極)/DPADT(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層兼電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
比較例7
Ref.6.[ITO(陽極)/α−NPD(40nm)(ホール輸送層)/Alq(60nm)(発光層兼電子輸送層)/LiF(0.5nm)(電子注入層)/Al(100nm)(陰極)]
これらの素子の
エレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルは図67に、
輝 度 −電圧特性は図68に、
電流密度−電圧特性は図69に、
電流効率−電圧特性は図70に、
輝 度 −電流密度特性は図71に、
電力効率−電圧特性は図72に、
それぞれ示す。
図67〜71はDPADTをホール輸送材料に用いた素子を作成し、ホール輸送性を評価している。図69で電流密度−電圧特性が高いことからホールを輸送する能力がα−NPDよりも高いことを示す。図70の電流効率−電圧特性もα−NPDに比べて良い特性を示しているのは、ホールと電子のバランスがとれているからである。図71のデータでα−NPDの方が高い値を示してるのは、一部のホールが再結合せず漏れてしまっている可能性を示す。
これらのデータから、DPADTをホール輸送層に用いた素子は、輝度、電流密度の点で極めて高い特性を発揮していることがわかる。
【0191】
実施例14および比較例8
実施例8で合成したDPADTのポリメチルメタクリレート溶液中での蛍光量子効率を測定した。分散濃度は、1wt%、3wt%、5wt%とした。また比較例8としてポリメチルメタクリレートを使用しない(Neat)で測定した。
測定結果を表16および図73に示す。
これらのケースは、実施例10と比較例5のケースと同様に、DPADTをPMMA溶液中に分散させて蛍光量子収率を測定している。PMMA溶液中に分散させていないNeatの場合は、60%だけのエネルギーが蛍光発生に用いられているが、DPADTをPMMA溶液中に分散させた場合は、DPADTの分子凝集がおさえられ、84〜86%のエネルギーが蛍光発生に貢献している。
【表16】

表14および表16からは、ドーパントを高濃度ドープをすると発光効率が下がること類推される。発光材料を5%前後で適当なホストにドープしてやるのが効率よく発光させるポイントである。
実施例14ではPMMAからの励起エネルギーがDPADTの発光エネルギーにうまく重なってDPADTを発光させていると考えられる。ここではポリマーに分散させてDPADTの発光効率を調べている。EDPADTはPMMA中での濃度を考慮すれば効率よく青色に発光するドーパントになる。
【符号の説明】
【0192】
1 基板
2 陽極(ITO)
3 発光層
4 陰極
5 ホール(正孔)輸送層
6 電子輸送層
7 ホール(正孔)注入層
8 電子注入層
9 ホール(正孔)ブロック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化151】

(式中、R〜R16は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化152】

で示されたフェニル基およびナフチル基からなる群より選ばれた基であり、R17〜R28およびR30〜R36は、水素および炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Arは、下記式
【化153】

で示されたフェナントリル基、ピレニル基およびフルオレニル基、ジベンゾフラニル基およびジベンゾチオフェニル基よりなる群から選ばれた基であり、R37〜R63およびR66〜R100は、水素、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルコキシ基、炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基を含有するアルキルアミノ基およびフッ素原子よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、R64とR65は炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基よりなる群からそれぞれ独立して選ばれた基である)
で示されることを特徴とする9,10−ジフェニルアントラセン誘導体。
【請求項2】
請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体よりなるホール輸送材料。
【請求項3】
請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体よりなるよりなる発光材料。
【請求項4】
請求項1記載の9,10−ジフェニルアントラセン誘導体を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【図74】
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【図75】
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【図76】
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【図77】
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【図78】
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【図79】
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【図80】
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【図81】
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【図82】
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【図83】
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【公開番号】特開2009−292806(P2009−292806A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34439(P2009−34439)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(394013644)ケミプロ化成株式会社 (63)
【Fターム(参考)】