説明

新規なRANKL−グリコサミノグリカン結合体、及び該活性調節剤。

【課題】本発明は、RANKL分子とデルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eと結合体並びに該結合体を精製するための担体、方法等を提供し、RANKL分子、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eの活性の調節方法を提供することを課題とする。
【解決手段】デルマタン硫酸及び/又はコンドロイチン硫酸EとRANKL分子とから構成される結合体を提供する。また、RANKL分子を固定化した担体を提供する。また、該担体を用いること特徴とする、該結合体、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eを分離、精製及び/又は検出する方法を提供する。さらに該結合体又はRANKL分子を、分離、精製及び/又は検出するための、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eを固定化した担体を提供する。また、該担体を用いることを特徴とする、該結合体又はRANKL分子を分離、精製及び/又は検出する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なRANKL−グリコサミノグリカン結合体、RANKL活性調整剤及びグリコサミノグリカン活性調節剤に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、本出願書類において用いる略号を説明する。
CH:コンドロイチン
CS:コンドロイチン硫酸
CS−A:コンドロイチン硫酸A
DS:デルマタン硫酸(CS−B:コンドロイチン硫酸ともいう)
CS−C:コンドロイチン硫酸C
CS−D:コンドロイチン硫酸D
CS−E:コンドロイチン硫酸E
GAG:グリコサミノグリカン
GAGは、細胞外マトリクスの構成成分の一つとして生体内に存在しており、その中のCSは、関節領域において、サプリメント、関節内治療薬として既に臨床応用されている。最近の研究においては、その動的な生体活性が注目されおり、DS、CS−E及びヘパラン硫酸は、L−セレクチン、P−セレクチン及びCD44に特異的に結合し生体活性を発現すること(非特許文献1)や硫酸化多糖類がBMPと結合して、その生理活性を増強すること(非特許文献2)等の報告がある。また、骨質を溶かす酵素の破骨細胞による放出や骨表面の硫酸化を阻害することに基づく骨吸収の抑制作用を有する物質についての報告や、硫酸化GAGのカルシウム塩を含有する口腔用組成物が歯周病原性細菌の内毒素刺激による骨のカルシウム遊離量に抑制効果を示すこと(特許文献1)や硫酸化GAGナトリウムとカルシウム化合物を併用する骨代謝改善剤が内毒素やヒト副甲状腺ホルモン等による骨のカルシウム遊離量に抑制効果を示すこと(特許文献2)及びインシュリン、プロタミン及びGAGから選択される少なくとも1種を含む石灰化促進剤と骨補填剤からなる骨疾患治療剤(特許文献3)等の報告がある。
【0003】
一方、RANKL(Receptor activatior of NF−κB ligand)は、ヤスダら及びPenningerらのグループによって破骨細胞の分化を制御する中心的なサイトカインであることが報告されたが(非特許文献3,4)、既にT細胞上に発現する樹状細胞活性化因子としてクローニングされていた分子であった。
【0004】
RANKLは、骨生物学における不可欠なサイトカインであり、単球−マクロファージ前駆体からの破骨細胞への分化を媒介し、かつ成熟破骨細胞の生存及び機能を調節する(非特許文献5)。またRANKLは免疫生物学的にも重要な役割を果たし、T細胞、樹状細胞及びそれらの前駆体上で発現されることにより、T及びBリンパ球の分化並びに免疫系における樹状細胞の生存を媒介する。
【0005】
またRANKLは、破骨細胞及びその前駆細胞の細胞表面に発現するRANK(Receptor activatior of NF−κB)と結合することによって、破骨細胞及びその前駆細胞を活性化し、それらの細胞の分化・成熟、寿命延長、骨吸収亢進を誘発することが知られている(非特許文献6)。
【0006】
しかしながら、特定の構造を持ったGAGがRANKLと結合体を形成すること、及びその結合体の生物学的活性を制御する方法は知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開平6−80546号公報
【特許文献2】特開平7−53388号公報
【特許文献3】特開昭62−201825号公報
【非特許文献1】カワシマ、H(Kawashima, H.)ら、2000年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第275巻、第45号、p.35448−35456
【非特許文献2】タカダ、T(Takada, T.)ら、2003年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第278巻、第44号、p.43229−43235
【非特許文献3】ヤスダ、H(Yasuda, H.)ら、1998年、プロシーディング ナショナル アカデミック サイエンス ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、第95巻、p3597−3602
【非特許文献4】レイシー、D. L.(Lacey D. L.)ら、1998年、セル(Cell)、第93巻、p165−176
【非特許文献5】リ、J.(Li J.)ら、2000年、プロシーディング ナショナル アカデミック サイエンス ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)、第97巻、p1566−1571
【非特許文献6】アンダーソン(Anderson)ら、1997年、ネイチャー(Nature)、第390巻、p25190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、RANKL分子とDS又はCS−Eとの新規な結合体並びにRANKL,DS又はCS−Eを固定化した担体、該担体を用いたRANKL、DS又はCS−Eを分離、精製及び/又は検出する方法、該担体を用いたキット、該結合体の生物学的活性の促進又は阻害方法、並びに該結合体を含有する医療用材料等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、RANKL分子がDS及び/又はCS−Eと特異的に結合することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、DS及び/又はCS−EとRANKL分子とから構成される結合体(以下、「本発明結合体」という。)を提供する。
【0011】
また本発明は、RANKL分子を固定化した担体(以下、「本発明担体1」という。)を提供する。
【0012】
また本発明は、本発明結合体又はRANKL分子を、分離、精製及び/又は検出するための、DS又はCS−Eを固定化した担体(以下、「本発明担体2」という。)を提供する。
【0013】
以下、本発明担体1及び2をあわせて単に「本発明担体」ともいう。
【0014】
また本発明は、本発明担体1を用いることを特徴とする、本発明結合体、DS又はCS−Eを分離、精製及び/又は検出する方法(以下、「本発明方法1」という。)を提供する。
【0015】
また本発明は、本発明担体2を用いることを特徴とする、本発明結合体又はRANKL分子を、分離、精製及び/又は検出する方法(以下、「本発明方法2」という。)を提供する。
【0016】
また本発明は、本発明担体1を含むキット(以下、「本発明キット1」という。)を提供する。
【0017】
また本発明は、本発明担体2を含むキット(以下、「本発明キット2」という。)を提供する。
【0018】
以下、本発明キット1及び2を単に「本発明キット」ともいう。
【0019】
また本発明は、DS又はCS−EによりRANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する方法(以下、「本発明方法3」という。)を提供する。
【0020】
また本発明は、RANKL分子により、DS又はCS−Eの生物学的活性を促進又は阻害する方法(以下、「本発明方法4」という。)を提供する。
【0021】
以下、本発明方法1〜4をあわせて単に「本発明方法」ともいう。
【0022】
また本発明は、DS又はCS−Eを含有する、RANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する組成物(以下、「本発明組成物1」という。)を提供する。
【0023】
また本発明は、RANKL分子を含有するDS又はCS−Eの生物学的活性を促進又は阻害する組成物(以下、「本発明組成物2」という。)を提供する。
【0024】
また本発明は、本発明組成物1又は2を含有する医療用材料(以下、「本発明医療用材料2」という。)を提供する。
また本発明は、本発明結合体を含有する医療用材料(以下、「本発明医療用材料2」という。)を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、新規物質としての本発明結合体が提供されるとともに、本発明担体、本発明方法並びに本発明キットが提供される。
【0026】
また、生体内におけるRANKL分子の生理的機能を、外部から与えるDS又はCS−Eによって、正・負の方向に制御できる可能性があり、それらRANKL分子結合性のDS及び/又はCS−Eは医療への適用が期待され、DS及び/又はCS−Eを含有する、RANKL分子の活性調整剤並びに調整方法が提供される。
【0027】
また、実施例の結果からコンドロイチン硫酸の硫酸基の位置に活性に依存することから、DS又はCS−Eの活性を、RANKL分子によって制御できる可能性があり、RANKL分子を含有する、DS及び/又はCS−Eの活性調整剤並びに調節方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
<1>本発明結合体
本発明結合体は、DS及び/又はCS−EとRANKL分子とから構成される結合体である。
【0029】
本発明結合体に使用される「DS」、「CS−E」は広く市販されているもの(例えば生化学工業(株)社製等)を用いることができる。またDSはウシ腎、CS−Eはイカ脊索等から公知の方法により調整することもでき、化学的に合成することもできる。また「RANKL分子」も同様に市販されているものを用いることができ、遺伝子工学的及び生化学的に常用される方法を用いて製造することもできる。また発明の実施例におけるAffinixQを用いた相互作用実験によりDSとRANKLの結合性を示した。
【0030】
また、本発明結合体とは、RANKLとDS又はRANKLとCS−Eとが結合しているものであればよく、上に記載されているようにRANKL、DS及びCS−Eの由来等も特に限定されない。また本発明結合体を製造するには、RANKL分子とDS又はCS−Eとを共存させればよく、その共存方法も特に限定されない。例えば、RANKL分子を有する細胞が含まれる培地にDS又はCS−Eを添加し共存することにより得ることもできる。
<2>本発明担体1
本発明担体1は、RANKL分子を固定化した担体である。
【0031】
本発明担体1のRANKL分子の担体への固定化は、代用的には組換えポリペプチドを少なくとも水不溶性担体に固定して行われる。固定化方法としては、(1)担体結合法、(2)包括法等、及びそれらを組み合わせた複合法が挙げられる。該固定化には、当該分野で汎用されている方法を用いることができる。
【0032】
前記担体結合法としては、例えばイオン相互作用、疎水相互作用、物理的吸着などを利用する方法、共有結合などの化学的結合により行うことができる。
【0033】
前記イオン相互作用を利用する担体結合方法では、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類のイオン交換体、例えばDEAE基、TEAE基、CM基、スルホン酸アルキル基などを持つ誘導体、イオン交換樹脂などを担体として用いることができる。
【0034】
前記疎水相互作用を利用する担体結合方法では、ポリスチレンビーズやガラスビーズ、さらに、ブチル基やフェニル基などの疎水性官能基が結合された一般的な担体などを担体として用いることができる。
【0035】
前記物理的な吸着を利用する担体結合方法では、例えば活性炭、酸性白土、漂白土、カオリナイト、アルミナ、シリカゲル、ベントナイト、金属酸化物、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムなどの無機物質、デンプン、キチン、グルテン、セルロース、アガロース、タンニンなどの天然高分子、ポリスチレンなどの合成高分子、疎水性基を持ったアガロース誘導体などを担体として用いることができる。
【0036】
前記共有結合などの化学的結合による担体結合方法としては、ペプチド法、ジアゾ法、アルキル化法、臭化シアン活性化法、架橋試薬による結合法、ユギ(Ugi)反応を利用した固定化法、チオール・ジスルフィド交換反応を利用した固定化法、シッフ塩基形成法、キレート結合法、トシルクロリド法、生化学的特異結合法などが挙げられる。好ましくは、共有結合などのより安定した結合には、チオール基とマレイミド基の反応、ピリジルジスルフィド基とチオール基の反応、アミノ基とアルデヒド基の反応等を利用して行うことができ、公知の方法或いは当該分野の当業者が容易になしうる方法、さらにはそれらを修飾した方法の中から適宜選択して適用できる。好ましくは共有結合などのより安定した結合を形成できる化学的結合材・架橋剤などが使用される。
【0037】
前記化学的結合材剤・架橋剤としては、カルボジイミド、イソシアネート、ジアゾ化合物、ベンゾキノン、アルデヒド、過ヨウ素酸、マレイミド化合物、ピリジルスルフィド化合物などが挙げられる。好ましい試薬としては、例えばホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、N,N‘−ポリメチレンビスヨードアセトアミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、エチレングリコールビススクシニミジルスクシネート、ビスジアゾベンジジン、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、N−スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート、N−スクシンイミジル4−(1−マレイミドフェニル)ブチレート、N−(ε−マレイミドカプロイルオキシ)コハクサンイミド(EMCS)、イミノチオラン、S−アセチルメルカプトコハク酸無水物、メチル−3−(4’−ジチオピリジル)プロピオンイミデート、メチル−4−メルカプトブチリルイミデート、メチル−3−メルカプトプロピオンイミデート、N−スクシンイミジル−S−アセチルメルカプトアセテートなどが挙げられる。
【0038】
前記ペプチド法では担体と所要のポリペプチドの間にペプチド結合を形成させて固定化される。例えばカルボキシル基を持つ担体をアジド、クロリド、イソシアネートなどの誘導体とし、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基との間でペプチド結合を形成させる。ペプチド合成に用いられる試薬、例えばカルボジイミド試薬、ウッドワード試薬K(N−エチル−5−フェニルイソキサリウム−3’−スルホナート)などが用いられる。担体のアミノ基及びカルボキシル基と所要のポリペプチド中のアミノ基及びカルボキシル基との間でペプチド結合を形成させることもできる。
【0039】
前記ジアゾ法は、芳香族アミノ基を持つ担体をジアゾニウム化合物とし、これと所要のポリペプチドとをジアゾカップリングさせて固定化するものである。遊離アミノ基、ヒスチジンのイミダゾール基、チロシンのフェノール性水酸基などを持つ当該ポリペプチドに好適に適用できる。担体としては、多糖類、アミノ酸共重合物、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂、エチレン・マレイン酸共重合物、多孔性ガラス、芳香族アミド誘導体などが挙げられる。
【0040】
前記アルキル化法は、当該ポリペプチド中の遊離アミノ基、フェノール性水酸基、スルフヒドリル基をハロゲンの様な反応性官能基を持つ担体によりアルキル化して固定化する方法である。担体としては、ハロゲン化アセチル誘導体、トリアジニル誘導体、ハロゲン化メタクリル誘導体などが挙げられる。
【0041】
前記臭化シアン活性化法は、デキストラン、セルロース、アガロース、デンプンなどの多糖類、多孔性ガラスなどを臭化シアンで活性化した後、当該ポリペプチドを固定化するものである。架橋試薬による結合法のうち、特にグルタルアルデヒドなどの二官能性試薬を用いた場合、セルロース、アガロース、アルブミン、ゼラチン、キトサンなどのアミノ基を導入されたあるいは有する天然高分子、合成高分子、多孔性ガラス、多孔性セラミックスなどの無機担体のアミノシラン誘導体などが挙げられる。
【0042】
前記ユギ反応とは、カルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、イソニトリル基が共存していて反応させると縮合反応が起こることを利用するものである。カルボキシル基又はアミノ基を持つ担体と当該ポリペプチドとを混合した中にアセトアルデヒド及び3−ジメチルアミノプロピルイソシアニドを加えることで反応させるものが挙げられる。担体としては、多糖類、ポリアクリルアミドのアミノ誘導体、ナイロンのイソニトリル誘導体などが挙げられる。
【0043】
前記生化学的特異結合法においては、特異的結合反応ペア同志の生化学的特異結合反応を利用するもので、例えば抗原とそれに対する抗体、抗体とハプテン、エフェクターとレセプター、酵素と酵素インヒビター、酵素基質、補酵素類、複合蛋白質における補欠分子団、レクチンと糖鎖含有物質、酵素と酵素基質、核酸とその相補的な核酸などが挙げられ、それらは公知のものの中から選んでよい。
【0044】
前記包括法とは、多糖類や蛋白質などの天然高分子や合成高分子の細いゲル・マトリックスの中に当該ポリペプチドを閉じ込めることによる高分子ゲルを用いる方法と、膜で区切られた空間に当該ポリペプチドを閉じ込める方法とに大別できる。膜包括法には、半透性の固体膜に包み込むマイクロカプセル型膜包括法、半透膜性のホロー・ファイバーや限外濾過膜による空間に包み込む方法、液体状の膜に包み込むリポソーム型などの方法が挙げられる。
【0045】
前記高分子ゲルを用いる方法は、網目構造を持つ高分子ゲルのマトリックスの中に当該ポリペプチドを閉じ込めて固定化するもので、固定時にゲルを球状、フィルム状、チューブ状、膜状に自由に成形できる。当該ゲルの調製法としては、モノマーと架橋剤を重合させて高分子ゲルを形成させる方法、プレポリマーあるいはオリゴマーを重合させる方法、高分子を可溶性の状態から不溶の状態に変化させることによりゲルを形成させる方法などが挙げられる。当該ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、光硬化性樹脂、ウレタンポリマーなどの合成高分子、κ−カラギーナン、アルギン酸、ペクチン、キトサン、デンプン、コラーゲンなどの天然高分子などが挙げられる。
【0046】
前記ポリアクリルアミドを用いる場合、アクリルアミドモノマー、架橋剤N、N’−メチレンビスアクリルアミド、重合促進剤N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、重合開始剤過硫酸カリウムを用いてゲル化させたり、γ線又はX線のような放射線を用いたりできる。アルギン酸カルシウムを利用する場合、アルギン酸ナトリウムは水に可溶であるが、そのカルシウム塩やアルミニウム塩は水に不溶であることを利用している。まずアルギン酸ナトリウム水溶液と当該ポリペプチドとを混合し、塩化カルシウム水溶液と接触させる。
【0047】
前記κ−カラギーナンを用いる場合、κ−カラギーナンは加熱すると水に溶解するが、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、脂肪族アミンなどが存在するとゲル化するので、こうして得られたゲルをグルタルアルデヒドやヘキサメチレンジアミンなどで架橋して安定化させる。
【0048】
前記光硬化性樹脂を用いる場合、適度な重合度のポリエチレングリコール(PEG)あるいはポリプロピレングリコール(PPG)を主鎖とし、その末端にアクリロイル基、メタクリロイル基、シンナモイル基などの光感応性基を組み込んだプレポリマーを用いることができる。該プレポリマーは光増感剤ベンゾインエチルエーテル又はベンゾインイソブチルエーテル存在下、当該ポリペプチドを含む溶液と混合し、紫外線を照射してゲル化させることができる。ウレタンプレポリマーは当該ポリペプチドを含む水溶液と混合するだけでゲル化させることができる。
【0049】
前記マイクロカプセル型膜包括法は、例えば親水性モノマーと疎水性モノマーとをその界面で重合させる際、当該ポリペプチドを被覆して固定化したり、液中乾燥法で例えばベンゼン、ヘキサン、クロロホルムなどの揮発性の高い有機溶媒にポリマーを溶解し、その中に当該ポリペプチドを含む水溶液を分散させ一次乳化液とし、次にこの一次乳化液をゼラチン、ポリビニル又は界面活性剤などの保護コロイド物質を含む水溶液中に分散させ、得られた二次乳化液から有機溶媒を除去することによりカプセルを形成させるものである。
【0050】
前記ホロー・ファイバーや限外濾過膜に当該ポリペプチドを固定化する方法では、複数の当該ポリペプチドを固定化することも可能で、さらに膜に結合すること無く遊離状態で固定化することができる。
【0051】
参考となる文献としては、例えば文献〔米国特許第4,003,988号;B. K. Van Weemen 及び A. H. A. Schuurs, Febs Letters, Vol. 15, No. 15:232−235(1971);P. Leinikk
i;Suvi Passila, J. Clin. Path., 29:116−120(1976);B. R. Brodeur, F. E. Ashton及び B.B. Diena, The Journal of Medical Microbiology, Vol. 15, No. 1:1−9(1981);J. Clin. Path., 29:150−153(1976);石川栄治、他編「酵素免疫測定法」株式会社医学書院、1978年〕などを挙げることができる。
【0052】
前記水不溶性担体とは、固定化、保存、測定などにおいて用いられる液体媒質に実質的に不溶性である担体を指す。当該担体としては、特異的結合反応に使用されるものが種々知られており、本発明においてもこれらの公知のものの中から選んで使用できる。特に好適に使用されるものとしては、例えば架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、架橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、架橋デキストラン、ポリアクリルアミド、架橋ポリアクリルアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体などのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ポリエポキシ樹脂などの有機高分子物質を乳化重合して得られたものなどの有機高分子物質、ガラス、例えば活性化ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナなどの無機材料などからなるもので、必要に応じ、シランカップリング剤などで官能性基を導入してあるものが挙げられる。
【0053】
本発明担体1は、本発明結合体、DS又はCS−Eを、分離精製及び/又は検出するために、用いることができる。
【0054】
また、本発明担体1で用いる「RANKL」、「DS」及び「CS−E」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<3>本発明担体2
本発明担体2は、本発明結合体又はRANKLを、分離、精製及び/又は検出するための、DS又はCS−Eを固定化した担体である。
【0055】
本発明担体2におけるDS又はCS−Eの担体への固定化は本発明担体1で例示された方法で固定化することができる。
【0056】
また、本発明担体2で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<4> 本発明方法1
本発明方法1は、本発明担体1を用いることを特徴とする、本発明結合体、DS又はCS−Eを分離、精製及び/又は検出する方法である。
【0057】
本発明方法1は、RANKL分子を固定化した担体をカラムなどに詰めて、被検試料を該カラムに通すことによって、該結合体、DS又はCS−Eの分離、精製及び/又は検出することができる。
【0058】
前記RANKL分子を固定化した担体に、RANKL分子を介して結合したDS又はCS−E並びに形成されたRANKL−DS結合体又はRANKL−CS−E結合体の検出は、該DS又は該CS−Eに特異的に結合する物質を用いて行うことが好ましい。当該物質としては、例えば該DS又はCS−Eに対する抗体等が親和性の強さから好ましい。
【0059】
前記抗体としてはポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を用いることが可能であり特に限定はされない。前記検出において、上記DS又はCS−Eに対する抗体を用いる場合は、当該抗体又は当該抗体に対する二次抗体を標識物質により標識することが、より正確なDS又はCS−Eの検出が可能となるため好ましい。
【0060】
前記標識物質としては、例えば特異的結合対(例えばビオチンとストレプトアビジン等のアビジン類、又はレクチンとそのレクチンが認識する糖鎖等)の一方の物質;FITC、フィコエリトン、ユーロピウム、フィコシアニン、ローダミン、テキサスレッド、ウンベリフェロン、トリカラー、シアニン又は7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)等の蛍光物質;ルミノール、アクリジニウム又はルシゲニン等の発光物質類、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ又はグルコースオキシダーゼ等の酵素類;ジニトロフルオロベンゼン、AMP(アデノシン一リン酸)又は2,4−ジニトロアニリン等のハプテン類;及び125I、131I、H等のラジオアイソトープ類を用いることができる。
【0061】
前記標識物質の検出は、使用する標識物質に適した通常実施される方法により行うことが可能である。例えば、標識物質として上記酵素に分類されるペルオキシダーゼを用いた場合は、テトラメチルベンゼン(TMB)等の酸素受容体と過酸化水素(H)などの酸素供与体を反応させることにより、溶液の着色により検出することが可能である。
【0062】
また、本発明方法1で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
【0063】
また本発明方法1は、例えば後述する本発明キット1に応用することができる。
<5>本発明方法2
本発明方法2は、本発明担体2を用いることを特徴とする、本発明結合体又はRANKL分子を分離、精製及び/又は検出する方法である。
【0064】
本発明方法2は、DS又はCS−Eを固定化した担体はカラムなどに詰めて被検試料を該カラムに通すことによって、該結合体又はRANKL分子の分離、精製及び/又は検出することができる。
【0065】
前記DS又はCS−Eを固定化した担体にDS又はCS−Eを介して結合したRANKL分子又は形成されたRANKL−DS結合体又はRANKL−CS−E結合体の検出は、該RANKL分子に特異的に結合する物質を用いて行うことが好ましい。当該物質としては、例えばRANKL分子に対する抗体等が親和性の強さから好ましい。
【0066】
前記抗体としては、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を用いることが可能であり特に限定されない。前記検出において、上記RANKL分子に対する抗体を用いる場合は、当該抗体又は当該抗体に対する二次抗体を標識物質により標識することが、より正確なRANKL分子の検出が可能となるため好ましい。
【0067】
前記標識物質及び標識物質の検出方法等としては、本発明方法1に例示したものが例示される。
【0068】
また、本発明方法2で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
【0069】
また本発明方法2は、例えば後述する本発明キット2に応用できる。
<6>本発明キット1
本発明キット1は、本発明担体1を含むキットであり、本発明方法1によりDS又はCS−Eを分離、精製及び/又は検出することができる。
【0070】
本発明キット1で好ましい標識物質や検出方法は前記本発明方法1のものと同じである。
<7>本発明キット2
本発明キット2は、本発明担体2を含むキットであり、本発明方法2によりRANKL分子を分離、精製及び/又は検出することができる。
【0071】
本発明キットで好ましい標識物質や検出方法等は前記本発明方法2のものと同じである。
<8>本発明方法3
本発明方法3は、DS又はCS−Eにより、RANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する方法である。
【0072】
本明細書の実施例によるとRANKL分子はDS又はCS−Eと結合することにより破骨細胞の分化誘導が阻害されていることがわかる。また、その阻害効果はDS又はCS−Eの濃度に依存することがわかる。このことからRANKL分子の機能は、外部から加えたDS又はCS−Eにより促進又は阻害することができる。
【0073】
また、本発明方法3で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<9>本発明方法4
本発明方法4は、RANKL分子により、DS又はCS−Eの生物学的活性を抑制又は阻害する方法である。
【0074】
本明細書の実施例によると、GAGの種類により(硫酸基の位置により)RANKLとの結合能が異なることから、硫酸基の位置に依存してRANKL分子が結合していることがわかる。また、GAGはその硫酸基の位置及びその割合により薬理活性等が異なることが知られている。このことからDS又はCS−Eの機能はRANKL分子を添加することにより促進又は阻害することができる。
【0075】
また、本発明方法4で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<10>本発明組成物1
本発明組成物1は、DS又はCS−Eを含有する、RANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する組成物である。
【0076】
本明細書の実施例によると、RANKL分子による破骨細胞の分化誘導はDS又はCS−Eの濃度依存的に阻害されていることがわかる。このことからRANKL分子の生物学的活性は該結合体の組成により異なることがわかる。
【0077】
また、本発明組成物1で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<11>本発明組成物2
本発明組成物2は、RANKL分子を含有する、DS又はCS−Eの生物学的活性を促進又は阻害する組成物である。
【0078】
また、本発明組成物2で用いる「DS」、「CS−E」及び「RANKL」等は本発明結合体で用いられるものと同じ意味で用いられる。
<12>本発明医療用材料1
本発明医療用材料1は、本発明組成物1又は本発明組成物2を含有する医療用材料である。当該組成物は、各種疾病の予防及び/又は治療の為の種々の医療用材料として用いることが可能である。
<13>本発明医療用材料2
本発明医療材料2は、本発明結合体を含有する医療材料である。本発明に係るRANKL−DS結合体及びRANKL−CS−E結合体は、各種疾病の予防及び/又は治療のための種々の医療用材料として用いることが可能である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例により更に具体的に詳説するが、本発明は以下の具体例に限定されるものではない。
実施例1
各GAG(CH、CS、CS−A,DS、CS−C、CS−D、CS−E)を10μg/mL、300μg/mLとなるように調製し、それぞれ24穴細胞培養用プレートに添加した。10−6MプロスタグランジンE(以下、PEGという。SIGMA社製)をさらに添加し、CO(5%)、37℃で3時間静置した。その後、ddYマウス(6週齢雌)の腓骨、大腿骨を摘出し、両骨の遠心端より骨髄細胞を採取した。骨髄細胞は24穴細胞培養用プレートに5×10細胞/穴となる様に播種し、10%牛胎児血清(ベーリンガー社製、以下FCSという。)含有Minimum Essential Medium Alpha Medium(GIBCO社製、以下αMEMという。)培地にて8日間37℃、COインキュベーター内で培養した。8日間の培養の後、破骨細胞のマーカーである酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(以下、TRAPという。)をナフトールAS−BIフォスフェート及びfast garnet GBC saltを含有するアゾ色素法を用いた染色測定キット「Acid Phosphatase Leukocyte」(SIGMA社製)を用いて染色し、形成された破骨細胞の数を顕微鏡下で計測した。
【0080】
結果を図1〜3に示す。図1の写真は各GAGの濃度は300μg/mLである。図1〜3より、マウス骨髄細胞を用いたPEG刺激下における破骨細胞形成実験系において、DS及びCS−Eは容量依存的に破骨細胞の形成を有意に抑制することが判明した。
実施例2
破骨細胞の骨破壊・吸収活性はピットアッセイにて測定した。ddYマウス(六週齢雌)の腓骨、大腿骨を摘出し、両骨の遠心端より骨髄細胞を採取した。骨髄細胞はOsteologicTMプレートに4×10細胞/穴となるように播種した。10−6M PEG刺激下において300μg/mLのDS及びCS−Eを各プレートへ添加した。10日間の培養の後、プレート上の細胞を除去し顕微鏡にてピットを計測した。
図4及び5からわかるように、PEG刺激下においてDS及びCS−Eは骨吸収を顕著に減少させることがわかる。
実施例3
破骨細胞の前駆細胞であるRANKL誘導性の単核細胞RAW−264.7(以下「RAW細胞」という)及び破骨細胞支持細胞であるST−2細胞を96ウェルプレートに2×10個となるように播種した。その後DS及びCS−Eを0〜300μg/mL(0、0.29、1.17、4.68、18.8、75、300μg/mL)をそれぞれ各プレートへ添加した。GAGを添加した後、1,3,6日目に540〜620nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、それぞれの細胞の生細胞の指標とした。
【0081】
図6〜9からわかるようにDS及びCS−Eの破骨細胞分化誘導抑制の効果は破骨細胞支持細胞及び前駆細胞の細胞増殖活性には影響を及ぼさないことがわかる。
【0082】
続いて、上記RAW細胞にRANKLを添加する際に高発現P−p38及びP−ERKについて、DS添加による変化をウエスタンブロッティングにより確認した。RANKLにDS又はCHを加え、α−MEM中にて、37℃、5%CO下で3時間インキュベートした後、RAW細胞に作用させた。15、30及び60分後のサンプルを回収し、常法に従いウエスタンブロッティングを行った。
【0083】
その結果を図10,11に示す。図中の各レーンの条件としては、レーン1はそれぞれコントロール、レーン2はRANKL(40 ng/mL)、レーン3はRANKL(40 ng/mL)及びDS(300 μg/mL)、レーン4はRANKL(40 ng/mL)及びCH(300 μg/mL)である。これらの結果からDSを共存させることによって、P−P38やP−ERKの発現を抑制することがわかった。
実施例4
DS及びCS−E300μg/mLをそれぞれ24穴細胞培養用プレートに添加した。RANKL(40μg/mL)及びM−CSF(50μg/mL)をさらに添加し、CO(5%)、37℃で3三時間静置した。その後、ddYマウス(6週齢雌)の腓骨、大腿骨を摘出し、両骨の遠心端より骨髄細胞を採取した。骨髄細胞は24穴細胞培養用プレートに5×10細胞/穴となる様に播種し、10%FCS含有αMEM培地にて8日間37℃、COインキュベーター内で培養した。コントロールとしては骨髄細胞のみを培養したもの及びRANKL(40μg/mL)及びM−CSF(50μg/mL)のみを骨髄細胞に添加したものを用いた。8日間の培養の後、TRAPをAcid Phosphatase Leukocyteを用いて染色し、形成された破骨細胞の数を顕微鏡下で計測した。
【0084】
図12より、RANKL及びM−CFS刺激下においてDS及びCS−E添加群においては顕著な破骨細胞分化誘導抑制効果が見られた。その効果はDSの方がより顕著であった。
【0085】
そこで、DSについて 0〜50μg/mLにおける濃度の依存性を調べ、その結果図13に示す。図からわかるように、RANKL及びM−CFS刺激下においてもDSの濃度の上昇に伴い抑制効果も上昇することがわかる。
実施例5
次にウエスタンブロッティングによりDS及びCS−EのRANKの抑制効果を調べた。
【0086】
10cmシャーレ上にRANKL(40μg/mL)及びDS(300μg/mL)をα−MEM中に添加し、5%CO、37℃の条件下、3時間静置した。RAW細胞をシャーレに1×10個ずつ播種し、24時間後及び48時間後にサンプルを回収した。各サンプルを10%ゲル上で電気泳動し、転写膜に転写した。コントロールとしてはDS未添加のものを用いた。1次抗体として、抗RANK抗体及び抗βアクチン抗体(タンパク質の標準化)を反応させた後、二次抗体として抗マウス抗体を添加した。なお、バンドの検出はEnhanced chemiluminescence (ECL plus:アマシャム・ファーマシア・バイオテック社製)を用いてフイルムに感光させ行った。
【0087】
その結果を図14に示す。図より、培養時間に依存してRANKの発現が低下すること及びDSの存在下でRANKの発現が抑制されることがわかる。
実施例6
AffinixQ(イニシャム社製)のセンサーセルを用いて相互作用実験を行った。まず、センサーチップ上にRANKL(10μg/mL)を2μg乗せ、4時間乾燥させ固着した。チャンバーにブロッキング剤として0.1%BSAを添加し、1%PBSを10mL注入後、センサーチップをPBS中に浸漬し、水晶の振動数が安定するまで静置した。水晶の振動数の安定後、PBS中にDSを100μg/mL又は300μg/mLとなるように添加し、振動数を測定した。PBS及びRANK(モル比でRANKL:RANK=2:1)をコントロールとして用いた。
【0088】
その結果、図15に見られるようにRANKLがDSに結合することがAffinixQによる実験で明らかになった。また、図からわかるようにRANKLに飽和するまでの時間(グラフがプラトーになるまでの時間)がRANKに比べ早いこともわかる。
【0089】
これらの実施例よりDS及びCS−EがRANKLと高いアフィニティーを示すことが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
上記に述べたように、本発明により新規物質としてRANKL−DS結合体又はRANKL−CS−E結合体が提供されるとともに、RANKL分子、DS又はCS−Eの分離、精製、検出ツールが提供される。また、RANKL分子結合性のDS及びCS−Eは生体内における該RANKL分子の生理的機能の調節に利用できる可能性があり、医療への適用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】PEG刺激下における各GAGを添加したときのTRAP染色を示す顕微鏡写真である。
【図2】PEG刺激下における破骨細胞形成時のGAGによる影響を示す図である。
【図3】PEG刺激下における破骨細胞形成時のDS及びCS−Eの濃度依存性を示す図である。
【図4】ピットアッセイの結果を示す顕微鏡写真である。
【図5】破骨細胞の機能に対するDS及びCS−Eの影響を示す図である。
【図6】PEG刺激下におけるDSを添加したときのRAW264.7細胞の増殖効果を示す図である。
【図7】PEG刺激下におけるDSを添加したときのST−2細胞の増殖効果を示す図である。
【図8】PEG刺激下におけるCS−Eを添加したときのRAW264.7細胞の増殖効果を示す図である。
【図9】PEG刺激下におけるCS−Eを添加したときのST−2細胞の増殖効果を示す図である。
【図10】RANKLによるP−P38の発現へのDS及びCHの効果を示す図である。
【図11】RANKLによるP−ERKの発現へのDS及びCHの効果を示す図である。
【図12】RANKL及びM−CSF存在下におけるDS及びCS−Eを添加したときの破骨細胞の分化に及ぼす影響を示す図である。
【図13】破骨細胞形成のDS濃度依存性を示す図である。
【図14】ウエスタンブロッティング分析を行った結果を示す図である。
【図15】RANKLに対するアフィニティーアッセイの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デルマタン硫酸及び/又はコンドロイチン硫酸EとRANKL分子とから構成される結合体。
【請求項2】
RANKL分子を固定化した担体。
【請求項3】
請求項1に記載の結合体又はRANKL分子を、分離、精製及び/又は検出するための、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eを固定化した担体。
【請求項4】
請求項2に記載の担体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の結合体、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eを分離、精製及び/又は検出する方法。
【請求項5】
請求項3に記載の担体を用いることを特徴とする、請求項1に記載の結合体又はRANKL分子を、分離、精製及び/又は検出する方法。
【請求項6】
請求項2に記載の担体を含むキット。
【請求項7】
請求項3に記載の担体を含むキット。
【請求項8】
デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸EによりRANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する方法。
【請求項9】
RANKL分子により、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eの生物学的活性を促進又は阻害する方法。
【請求項10】
デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eを含有する、RANKL分子の生物学的活性を促進又は阻害する組成物。
【請求項11】
RANKL分子を含有する、デルマタン硫酸又はコンドロイチン硫酸Eの生物学的活性を促進又は阻害する組成物。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の組成物を含有する医療用材料。
【請求項13】
請求項1に記載の結合体を含有する医療用材料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−74731(P2008−74731A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253573(P2006−253573)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】