説明

新規のシランカップリング剤及びその製造方法

【課題】格納安定性が優秀であり、水酸基を有するマトリックス樹脂との結合力が優秀で幅広い用途に使われることができる有用なシランカップリング剤を提供すること。
【解決手段】下記化学式1で示されるシランカップリング剤を提供する。


(式中、R、及びRは水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、aは0〜3の整数であり、R、R、R及びRは水素または炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロアルキル基及びアルコキシアルキル基とからなる群から選ばれ、nは1〜3の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規したシランカップリング剤及びその製造方法に関するものである。より詳しくはウレタン(urethane)とピリジン(pyridine)有機官能基を有することによって貯蔵安定性が優秀であり、有機樹脂と無機フィラー(filler)の親和性を高めるため、またはマトリックス樹脂とからなるコーティング層と基材との間の接着性を高めるための目的のシランカップリング剤として多様に使われることができる新規したシランカップリング剤及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は分子中に2つ以上の他の反応基を持っていて、通常的にはよほど結付させにくい有機質材料と無機質材料とを連結する仲介役として作用している。反応基中の一方はガラス、金属、砂などの無機質材料と化学結合するメトキシまたはエトキシのような反応基であり、また他の一方は各種の合成樹脂のような有機質材料と化学結合するビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基またはメルカプト基などのような反応基である。このような特性を用いて、有機樹脂と無機フィラーとの親和性を高めるため、或いはマトリックス樹脂とからなるコーティング層と基材との間の接着性の発現のために多様なシランカップリング剤が使用されている。即ち、シランカップリング剤が有機樹脂と無機フィラーとの親和性を高め、または基材との間の接着性を高めるためには有機樹脂の官能基とシランカップリング剤の有機官能基との化学的な結合または物理的な相互作用がいなければならなく、シランカップリング剤のアルコキシシリル基と無機フィラーまたは基材との化学的な結合が必要である。従って、シランカップリング剤の有機官能基は樹脂の種類及び官能基によって多様な形態が使われている。
【0003】
現在多く使われているシランカップリング剤の中にはウレタン基を含むシランカップリング剤がある。イソシアネートシランとジエタノールアミンとを加熱処理してシランカップリング剤を製造する方法があり(例えば、特許文献1参照)、その他にアミノシランにビニルベンジルクロリド及びイソシアネートとを反応させシランカップリング剤を製造する方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、マトリックス樹脂内に水酸基(−OH)が存在する場合にはこれに対応する有機官能基を有したシランカップリング剤が不十分な実情である。
【特許文献1】日本特開平10−67787号
【特許文献2】日本特開平11−335378号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような問題点を解決するために、本発明は化合物内に水酸基を有するマトリックスと結合力のある有機グループをデザインして新規の有用なシランカップリング剤を合成し、新規のシランカップリング剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は下記化学式1で示されるシランカップリング剤を提供する。
【化1】

(式中、R、及びRは水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、aは0〜3の整数であり、R、R、R及びRは水素または炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロアルキル基及びアルコキシアルキル基とからなる群から選ばれ、nは1〜3の整数である。)
【0006】
また、本発明は常温で触媒を使用してイソシアネート(isocyanate)とピリジノール(pyridinol)とを反応溶媒で反応させ前記化学式1の化合物を合成することを特徴とするシランカップリング剤の製造方法を提供する。
【0007】
前記イソシアネートは1−トリメトキシシリルメチルイソシアネート(1-trimethoxysilylmethylisocyanate)、2−トリメトキシシリルエチルイソシアネート(2-trimethoxysilylethylisocyanate)、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート(3-trimethoxysilylpropylisocyanate)、1−トリエトキシシリルメチルイソシアネート(1-triethoxysilylmethylisocyanate)、2−トリエトキシシリルエチルイソシアネート(2-triethoxysilylethylisocyanate)及び3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(3-triethoxysilylpropylisocyanate)とからなる群から選ばれることができる。
【0008】
前記ピリジノールは2−ヒドロキシピリジン(2-hydroxypyridine)、5−クロロ−2−ピリジノール(5-chloro-2-pyridinol)、4−メチル−2−ピリジノール(4-methyl-2-pyridinol)、5−トリフルオロメチル−2−ピリジノール(5-trifluoromethyl-2-pyridinol)及び4−メトキシメチル−2−ピリジノール(4-methoxymethyl-2-pyridinol)とからなる群から選ばれることができる。
【0009】
前記触媒はリードスタネート(lead stannate)、ジブチルチンジラウレート(dibutyltin dilaurate)、ジブチルチンマリエート(dibutyltin maleate)、ジブチルチンジアセテート(dibutyltin diacetate)、ジブチルチンジラウリルメルカプチド(dibutyltin dilauryl mercaptide)及びジメチルチンジクロリド(dimethyltin dichloride)とからなる群から選ばれることができる。
【0010】
前記反応溶媒はハロゲン化アルキル溶媒、サイクリックエーテル溶媒及びアロマチック有機溶媒とからなる群から選ばれることができる。
【0011】
前記ハロゲン化アルキル溶媒はクロロホルム、メチレンクロリド及びジクロロエタンとからなる群から選ばれ、前記シクリックエーテル溶媒はテトラヒドロフランまたはダイオキシンであり、前記アロマチック有機溶媒はベンゼン、トルエン及びキシレンとからなる群から選ばれることができる。
【0012】
前記イソシアネートと前記ピリジノールのモル比が1:1であり得る。
【0013】
以下、本発明に対して詳細に説明すれば、次の通りである。
【0014】
本発明は水酸基を有するマトリックス樹脂との結合力を増加させるためにシランカップリング剤内に水酸基と結合力の良いウレタン基とピリジン基とを導入して合成した。
【0015】
本発明のシランカップリング剤は2種類の反応基を含む。一方は有機物質と化学的結合を形成し、また他の一方は無機物質と化学的結合を形成するようになる。例えば、トリアルコキシシリル基は珪酸塩のような無機物の表面にあるシラノール(silanol)と反応して無機物質と化学的結合を形成する。また、結合させようとするマトリックス樹脂内に含まれた官能基によって相補する多様な有機官能基をシランカップリング剤内に導入することができる。この時、樹脂内の特定の官能基と選択的に化学結合を形成させるためにシランカップリング剤内に適合な構造の有機グループを導入して設計することが要点となっている。
【0016】
最終の生成物であるシランカップリング剤内にウレタン基を導入するためにイソシアネートとピリジノールとを反応させたが、この時触媒としてジブチルチンジラウレートのような有機金属触媒を使用すれば常温で2〜3時間内に高い収率で望む物質が得られる。触媒を使用しない場合には常温では反応がほとんど進行されず、温度を高めると生成物が若干生成され付随的な生成物が生成されるという傾向がある。
【0017】
本発明に使用されるイソシアネートは1−トリメトキシシリルメチルイソシアネート、2−トリメトキシシリルエチルイソシアネート、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、1−トリエトキシシリルメチルイソシアネート、2−トリエトキシシリルエチルイソシアネート、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネートなどがある。
【0018】
また、もう他の反応物であるピリジノールには2−ヒドロキシピリジン、5−クロロ−2−ピリジノール、4−メチル−2−ピリジノール、5−トリフルオロメチル−2−ピリジノール、4−メトキシメチル−2−ピリジノールなどがある。
【0019】
前記イソシアネートと前記ピリジノールとを1:1のモル比で反応させることが望ましい。この時、2つの化合物を同一のモル数で反応させることによって反応せずに残っている出発物質を減少させることができる。
【0020】
イソシアネートとピリジノールとを反応させる時使用できる触媒としてはリードスタネート、ジブチルチンラウレート、ジブチルチンマリエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウリルメルカプチド、ジメチルチンジクロリドなどがある。
【0021】
なお、前記反応はクロロホルム、メチレンクロリド、ジクロロエタンのようなハロゲン化されたアルキル溶媒、テトラヒドロフラン、ダイオキシンのようなサイクリックエーテル溶媒、そしてベンゼン、トルエン、キシレンのようなアロマチック有機溶媒内で行うことができる。
【0022】
このように合成されたシランカップリング剤がマトリックス樹脂の水酸基と結合してシランカップリング剤として有用に使用できるかを点検するために次の実験を実施する。詳しくは、合成されたシランカップリング剤が基材に対する接着力を向上させる添加剤(adhesion-promoting additive)として効果があるかを点検するために水酸基を有するマトリックス樹脂を合成してガラスに対する接着力の向上を検討した。
【0023】
本発明に使用されるアクリル系樹脂は炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと水酸基を含むビニル系モノマーとの共重合を通して得られる。炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーにはブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、またはイソノニル(メタ)アクリレートなどがある。これらのモノマーは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。水酸基を含むビニル系モノマーとしては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、または2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがある。
【0024】
なお、本発明においては合成されたシランカップリング剤による水酸基を含むマトリックス樹脂の接着力の変化を適応させるために樹脂にシランカップリング剤と共に架橋剤を添加する。使用される架橋剤の例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、またはトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物などを使用することができる。
【0025】
本発明において必要に応じてアクリル系樹脂に可塑剤、アクリル系オリゴマー、乳化剤、複屈折性低分子量体、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、調節剤、充填剤などを更に添加することができる。
【0026】
本発明のシランカップリング剤は化合物内に存在するウレタンとピリジン有機官能基と水酸基とを有するマトリックスとの結合力が良いため、このシランカップリング剤を添加剤として使用する場合無機フィラーとの親和性を高めることができ、或いは基材との接着性を高めることができる役割を遂行し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、実施例及び比較例を通して本発明をより詳しく説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実施例に限られるものではない。
【0028】
<実施例1>
シランカップリング剤Aの合成
2-ヒドロキシピリジン9.5gをTHF200mlに溶かした後、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート24.7gとジブチルチンジラウレート0.6gとを添加し、室温及び窒素雰囲気で2時間攪拌して反応させた。
【0029】
反応終了後減圧して溶媒を除去した後、真空乾燥して下記化学式2で示される化合物シランカップリング剤A32.5gを得り、収率は95%であった。
【化2】

【0030】
この化合物は無色の液体であって、NMR分析結果は次の通りである。
H NMR(CDCl、300MHz):0.72(t、2H)、1.24(t、9H)、1.76(m、2H)、3.43(m、2H)、3.83(q、6H)、6.34(t、1H)、6.60(d、1H)、7.42(m、1H)、8.43(m、1H)、10.64(s、1H)
13C NMR(CDCl3、300MHz):2.50、12.97、17.56、38.22、53.10、101.61、117.28、126.92、135.93、147.23、159.87
【0031】
<実施例2>
シランカップリング剤Bの合成
5-クロロ−2−ピリジノール13gをTHF200mlに溶かした後、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート24.7gとジブチルチンジラウレート0.6gとを添加し、室温及び窒素雰囲気で2時間攪拌して反応させた。
【0032】
反応終了後減圧して溶媒を除去した後、真空乾燥して下記化学式3で示される化合物シランカップリング剤B33gを得り、収率は88%であった。
【化3】

【0033】
この化合物は無色の液体であって、NMR分析結果は次の通りである。
H NMR(CDCl、300MHz): 0.72(t、2H)、1.24(t、9H)、1.76(m、2H)、3.43(m、2H)、3.83(q、6H)、6.45(d、1H)、7.51(d、1H)、7.67(s、1H)、10.64(s、1H)
13C NMR(CDCl、300MHz): 2.50、12.97、17.56、38.22、53.10、112.11、119.74、136.81、147.23、159.87、161.05
【0034】
<実施例3>
シランカップリング剤Cの合成
5-トリフルオロメチル−2−ピリジノール11gをTHF200mlに溶かした後、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート24.7gとジブチルチンジラウレート0.6gとを添加し、室温及び窒素雰囲気で2時間攪拌して反応させた。
【0035】
反応終了後減圧して溶媒を除去した後、真空乾燥して下記化学式4で示される化合物シランカップリング剤C33gを得り、収率は92%であった。
【化4】

【0036】
この化合物は無色の液体であって、NMR分析結果は次の通りである。
H NMR(CDCl、300MHz):0.72(t、2H)、1.24(t、9H)、1.76(m、2H)、3.43(m、2H)、3.83(q、6H)、6.45(t、1H)、6.72(d、1H)、8.39(m、1H)、10.64(s、1H)
13C NMR(CDCl、300MHz):2.50、12.97、17.56、38.22、42.55、53.10、101.43、116.28、126.67、135.13、145.11、159.87
【0037】
<実施例4>
シランカップリング剤Dの合成
4-メチル−2−ピリジノール10.9gをTHF200mlに溶かした後、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート24.7gとジブチルチンジラウレート0.6gとを添加し、室温及び窒素雰囲気で2時間攪拌して反応させた。
【0038】
反応終了後減圧して溶媒を除去した後、真空乾燥して下記化学式5で示される化合物シランカップリング剤D33gを得り、収率は93%であった。
【化5】

【0039】
この化合物は無色の液体であって、NMR分析結果は次の通りである。
H NMR(CDCl、300MHz):0.72(t、2H)、1.24(t、9H)、1.76(m、2H)、2.45(s、3H)、3.43(m、2H)、3.83(q、6H)、6.45(t、1H)、7.42(d、1H)、8.43(m、1H)、10.64(s、1H)
13C NMR(CDCl、300MHz):2.50、12.97、17.56、20.05、38.22、53.10、101.64、117.27、126.87、135.33、147.11、159.87
【0040】
<実施例5>
シランカップリング剤Eの合成
4-メトキシ−2−ピリジノール12.5gをTHF200mlに溶かした後、3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート24.7gとジブチルチンジラウレート0.6gとを添加し、室温及び窒素雰囲気で2時間攪拌して反応させた。
【0041】
反応終了後減圧して溶媒を除去した後、真空乾燥して下記化学式6で示される化合物シランカップリング剤E34gを得り、収率は91%であった。
【化6】

【0042】
この化合物は無色の液体であって、NMR分析結果は次の通りである。
H NMR(CDCl、300MHz):0.72(t、2H)、1.24(t、9H)、1.76(m、2H)、3.43(m、2H)、3.59(s、3H)、3.83(q、6H)、6.45(t、1H)、7.42(d、1H)、8.43(m、1H)、10.64(s、1H)
13C NMR(CDCl、300MHz):2.50、12.97、17.56、38.22、53.10、55.21、101.64、117.27、126.87、135.33、147.11、160.82
【0043】
<実施例6>
アクリル系共重合体の製造
窒素ガスが還流され温度調節が容易であるように冷却装置を設けた1000cc反応器にn−エチルアクリレート(n-ethylacrylate, EA)98重量部、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate, 2-HEMA)2重量部とから構成される単量体混合物を投入し、溶剤としてエチルアセテート(ethylacetate, EAc)230重量部を投入した。その次、酸素を除去するために窒素ガスを20分間パージング(purging)した後、70℃に保持した。これを均一にした後、反応開始剤としてエチルアセテートに50%の濃度で希釈させたアゾビスイソブチロニトリル( azobisisobutyronitrile, AIBN)0.03重量部を投入した。これを7時間反応させ分子量(ポリスチレン標準サンプルを用いて測定)が90万であるアクリル系共重合体を製造した。
【0044】
接着力テストのためのアクリル系樹脂組成物の製造
前記製造したアクリル系共重合体100重量部に対して多官能性イソシアネート系架橋剤としてトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(TDI−1)1.5重量部と実施例1で合成したシランカップリング剤Aを0.1重量部添加した。この組成物を適正の濃度で希釈して均一に混合した後、加圧ローラを使用してガラスとPETフィルムとの間にコーティングした。
【0045】
<実施例7>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aを実施例2で合成したシランカップリング剤Bに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0046】
<実施例8>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aを実施例3で合成したシランカップリング剤Cに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0047】
<実施例9>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aを実施例4で合成したシランカップリング剤Dに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0048】
<実施例10>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aを実施例5で合成したシランカップリング剤Eに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0049】
<比較例1>
前記実施例6において、シランカップリング剤を添加しないことを除いては実施例6と同一の方法で実施した。
【0050】
<比較例2>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aをethyl−3−(triethoxysilyl)propylcarbamateに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0051】
<比較例3>
前記実施例6において、実施例1で合成したシランカップリング剤Aを2−(dimethylamino)ethyl−3−(triethoxysilyl)propylcarbamateに取り替えたことを除いては同一の方法で実施した。
【0052】
<実験例>
前記実施例6乃至10及び比較例で製造したアクリル系樹脂組成物のガラスに対する接着力は次のような方法で評価し、その結果を下記表1に示した。
【0053】
ガラス接着力(180°剥離強度)測定
前記実施例6乃至10及び比較例で製造したアクリル系樹脂がコーティングされたガラス板を常温で1時間保管した後、60℃の温度の乾式(dry)条件と60℃及び90%の相対湿度の湿式(wet)条件で10時間放置する。そして、常温で再び2時間保管した後、引張試験機を用いて300mm/minの速度、180°の角度でガラス接着力を測定した。
【表1】

【0054】
前記表1から分かるように、実施例6乃至実施例10によるシランカップリング剤を添加したアクリル系樹脂組成物はシランカップリング剤を添加しない比較例1とウレタン基のみが存在するシランカップリング剤を添加した比較例2乃至3に比べて乾式及び湿式条件の両方で卓越なガラス接着力を有することで現した。従って、水分安定性が優秀であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上で説明したように、本発明による化合物内のウレタンとピリジン基は水酸基を有するマトリックス樹脂との結合力を向上させる。このため、本発明によるシランカップリング剤は、貯蔵安定性が優秀であり、有機樹脂と無機フィラーとの親和性を高めるための目的で、或いはマトリックス樹脂からなるコーティング層と基材との間の接着性を高めるための目的のシランカップリング剤として多様な用途で使用されることができる。
【0056】
前記本発明は記載された具体例を中心に詳細に説明されたが、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が添付した特許請求の範囲に属することも当然なことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示されるシランカップリング剤。
【化1】

(式中、R、及びRは水素または炭素数1〜3のアルキル基であり、aは0〜3の整数であり、R、R、R及びRは水素または炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロアルキル基及びアルコキシアルキル基とからなる群から選ばれ、nは1〜3の整数である。)
【請求項2】
常温で触媒を使用してイソシアネート(isocyanate)とピリジノール(pyridinol)とを反応溶媒で反応させ化学式1の化合物を合成することを特徴とするシランカップリング剤の製造方法。
【請求項3】
前記イソシアネートは1−トリメトキシシリルメチルイソシアネート(1-trimethoxysilylmethylisocyanate)、2−トリメトキシシリルエチルイソシアネート(2-trimethoxysilylethylisocyanate)、3−トリメトキシシリルプロピルイソシアネート(3-trimethoxysilylpropylisocyanate)、1−トリエトキシシリルメチルイソシアネート(1-triethoxysilylmethylisocyanate)、2−トリエトキシシリルエチルイソシアネート(2-triethoxysilylethylisocyanate)及び3−トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(3-triethoxysilylpropylisocyanate)とからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項4】
前記ピリジノールは2−ヒドロキシピリジン(2-hydroxypyridine)、5−クロロ−2−ピリジノール(5-chloro-2-pyridinol)、4−メチル−2−ピリジノール(4-methyl-2-pyridinol)、5−トリフルオロメチル−2−ピリジノール(5-trifluoromethyl-2-pyridinol)及び4−メトキシメチル−2−ピリジノール(4-methoxymethyl-2-pyridinol)とからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項5】
前記触媒はリードスタネート(lead stannate)、ジブチルチンジラウレート(dibutyltin dilaurate)、ジブチルチンマリエート(dibutyltin maleate)、ジブチルチンジアセテート(dibutyltin diacetate)、 ジブチルチンジラウリルメルカプチド(dibutyltin dilauryl mercaptide)及びジメチルチンジクロリド(dimethyltin dichloride)とからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項6】
前記反応溶媒はハロゲン化アルキル溶媒、サイクリックエーテル(cyclic ether)溶媒及びアロマチック有機溶媒とからなる群から選ばれることを特徴とする請求項2に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化アルキル溶媒はクロロホルム、メチレンクロリド及びジクロロエタンとからなる群から選ばれ、前記サイクリックエーテル溶媒はテトラヒドロフランまたはダイオキシンであり、前記アロマチック有機溶媒はベンゼン、トルエン及びキシレンとからなる群から選ばれることを特徴とする請求項6に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項8】
前記イソシアネートと前記ピリジノールのモル比が1:1であることを特徴とする請求項2に記載のシランカップリング剤の製造方法。

【公表番号】特表2006−524713(P2006−524713A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521014(P2006−521014)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001549
【国際公開番号】WO2005/123751
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】