説明

新規のプレバイオティクス

本発明は、シアリルオリゴ糖を含まないオリゴ糖、および遊離シアル酸を含んでなる組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新規のプレバイオティクス組成物の調製のための方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
[プレバイオティクス]
プレバイオティクは、結腸における限られた数の細菌の1つの増殖および/または活性を選択的に刺激することによって、宿主に有益な影響を及ぼし、それ故、健康を改善する非消化性食品成分である。一般に、哺乳動物、好ましくは、ヒトは、プレバイオティクスを利用することができる。プレバイオティクスは、ほとんどの場合、腸内菌叢の組成、または代謝を有益な様式で変更する短鎖炭水化物である。短鎖炭水化物はまた、オリゴ糖とも称され、そして通常、3〜10個の糖部分または単糖を含有する。オリゴ糖が消費される場合、消化されなかった部分は、腸内細菌の食物としての役割を果たす。オリゴ糖のタイプに依存して、異なる細菌のグループが刺激または抑制される。
【0003】
食品産業に使用するために調製されるオリゴ糖は、単一の成分ではなく、異なる程度のオリゴマー化を伴うオリゴ糖を含有する混合物であり、時々、親の二糖および単糖を含む(プラピュラ(Prapulla)ら(2000年)Adv Appl microbial47,299−343)。様々なタイプのオリゴ糖が、果実、野菜、乳、および蜂蜜を含む多くの一般的食物において天然の成分として見出されている。オリゴ糖の例には、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ラクトスクロース、フルクトオリゴ糖、パラチノースまたはイソマルトースオリゴ糖、グリコシルスクロース、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、シクロデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、ダイズオリゴ糖およびキシロオリゴ糖がある(プラピュラ(Prapulla)ら(2000年)Adv Appl microbial47,299−343)。
【0004】
プレバイオティクス能力があまり調べられていない候補オリゴ糖は、発芽オオムギ、デキストラン、ペクチン、ポリガラクツロナン、ラムノガラクツロナン、マンナン、ヘミセルロース、アラビノガラクタン、アラビナン、アラビノキシラン、難消化性デンプン、メリビオース、キトサン、アガロース、アルギン酸塩から誘導される(ヴァン・ロー(Van Loo)、2005年、Food Science and Technology Bulletin:Functional Foods 2:83−100;ヴァン・ラーレ(Van Laere)ら、2000年、J Agric Food Chem48,1644−1652;リー(Lee)ら2002年、Anaerobe8,319−324;フー(Hu)ら、2006年、Anaerobe12,260−266;ワング(Wang)ら、2006年、Nutrition Research26,597−603)。これらのオリゴ糖のすべては、多糖の加水分解、またはグリコシル転移反応を使用する類似の炭水化物から開始する合成のいずれかに関与する酵素プロセスを使用して生成される。場合によって、水熱処理または自動加水分解を適用して、キシランのようなリグノセルロース材料を脱重合する(バスケス(Vazquez)ら、2006年、Industrial Crops and Products,24,152−159)。
【0005】
3つのプレバイオティクス、オリゴフルクトース(イヌリン)、トランスガラクトオリゴ糖およびラクチュロースは、ビフィズス菌(Bifidobacteria)およびラクトバチルス(Lactobacillus)の数を増加することによって、大腸微生物叢の均衡を明確に変更する(A.シング(A.Singh)ら:The future aspects of prebiotics on human health,A review.www.pharmainfo.net;van Loon Food Sci Technol Bull:Functional Foods2,83−100)。食事において比較的少量(5〜20g/日)を摂取する場合、イヌリン、フルクト−オリゴ糖(FOS)、ガラクトオリゴ糖およびラクチュロースは、ヒト研究において、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する健康を促進する種の増殖を刺激することが明確に示されている。これらは、通常、授乳児を除いて、腸における最も多数の生物体ではない(A.シング(A.Singh)ら:The future aspects of prebiotics on human health,A review. www.pharmainfo.netおよびそれに位置する参考文献)。これまでのところ、これらの効果の確固とした定量化は存在しないが、プレバイオティクスによるビフィズス菌(Bifidobacteria)およびラクトバチルス(Lactobacilli)のこの選択的増殖刺激は、バクテロイデス(Bacteroides)、クロストリジウム(Clostridia)、真正細菌、腸内細菌、腸球菌などのような他の細菌の増殖を犠牲にしていると考えられる。
【0006】
ヒト腸管の微生物叢は、特に、腸の健康に対する食事の効果の多くを仲介することによって、健康に重要な役割を果たす。ヒト大腸は、主として嫌気性菌からなる密集したおよび複雑な群集によってコロニーが形成される。これらの生物体の活動は、栄養の供給、代謝物の変換および宿主細胞との相互作用を介して宿主の栄養摂取および健康に主な影響を及ぼす。大腸の微生物群集を支持するエネルギー源は、ムチンのような内因性生成物と共に、小腸管(upper intestinal tract)における分解に耐性である食事成分である。結腸における微生物群集による嫌気性菌は、二酸化炭素、水素およびメタンと共に短鎖脂肪酸を産生する。(フリント(Flint)ら、Env Microbiol(2007)9,1101−1111)。これらは、エネルギー源、遺伝子発現の調節因子、細胞分化および抗炎症剤として腸環境および宿主に有意な影響を及ぼす。大腸の細菌集団が、食事の変化、特に、食事炭水化物のタイプおよび量に応答するという証拠が増加している。(フリント(Flint)ら、Env Microbiol(2007)9,1101−1111)。ヒトの食事における非消化性炭水化物のタイプおよび量の変化は、消化管のより下部の領域において形成される代謝産物および排泄物において検出される細菌集団の両方に影響を及ぼす。イヌリン、フルクト−オリゴ糖およびガラクトオリゴ糖のような非消化性炭水化物は、腸内微生物叢の組成を操作するためのプレバイオティクスとして、現在広範に使用されている。広範な他の天然に存在するオリゴ糖、およびまた合成生成物が、インビトロで選択的効果を有する(マンダーソン(Manderson)ら、2005年、Appl Environ Microbiol71,8383−8389)。プレバイオティクス効果は、溶解度、鎖長の分布、分岐および置換を含む基質の多くの特徴によって特徴付けられるようである(ロッシ(Rossi)ら、2005年、Appl Environ Microbiol71、6150−6158)。単離された細菌が精製された炭水化物をインビトロで利用する能力の試験は、腸のような混合されたエコシステムにおいて、基質性能の予備的な指標を提供することができる。プレバイオティクスに対する応答は、食事状況および腸環境に依存し、そして個体間の種の組成および常在腸微生物叢における変動の影響を受けることが予想される。
【0007】
プレバイオティクスオリゴ糖は、多様な健康促進効果を付与することが示されている。それらのうちのすべてが十分に実証されているわけではないが、次の有益な効果が仮定されている(スウェンネン(Swennen)ら、Crit.Rev.Food Sci Nutr.2006年、46,459−471):便秘の軽減、ミネラル吸収の改善、脂質代謝の調節、大腸癌の危険性の減少、肝性脳症の治療の有益性、血糖症/インスリン血症に対するポジティブな効果および腸の免疫系のモジュレーション。プレバイオティクスオリゴ糖は、学習能力、記憶形成および脳発達に対してポジティブな効果を有することが実証されていなかった。
【0008】
[オリゴ糖の生成]
オリゴ糖の生成については、文献に記載されている。オリゴマーの糖の化学合成は困難であることが知られているため、オリゴ糖を調製するために、通常、酵素が使用される。例外は、例えば、ラクチュロース生成の場合に異性化を使用することができる状況である。酵素は、反応混合物の移動の制限を伴わない遊離の形態でも使用することができる。あるいは、酵素を適切なキャリアに固定化して、反応系におけるそれらの運動を制限することができる。固定化は、酵素のキャリア基体への共有結合または例えば、ゲルマトリックスにおける酵素の物理的封じ込めによって得ることができる。酵素を固定化する方法は、当該分野の専門家に公知である;この項目に対するレビューが認められる。(例えば、マテオ(Mateo)ら2007年、Enz.Micr.Technol.40,1451−1463を参照のこと)。また、酵素を架橋させて、ろ過により反応混合物から容易に分離することができる大きな凝集体を形成してもよい(レビューについて、例えば、マルゴリン(Margolin)ら、2001年、Angew.Chem.Int.Ed.40,2204−2222を参照のこと)。
【0009】
ガラクトオリゴ糖は、高ラクトース濃度でラクトース加水分解を支配するβ−ガラクトシダーゼのガラクトシルトランスフェラーゼ活性を使用して、ラクトースから商業的に生成される。この方法については、詳細に記載されており、そしてこの項目に対する優れたレビューが認められる(例えば、マホーニー(Mahoney)、1998年、Food Chem.63,147−154;ザラート(Zarate)ら1990年、J Food protection53,262−268を参照のこと)。オリゴマー化プロセスに使用することができる様々なβ−ガラクトシダーゼについて記載されており、そしていくつかの場合、反応性生物についても記載されている(例えば、バーバル(Burvall)ら1979年、Food Chem4,243−249;アスプ(Asp)ら1980年、Food Chem5,147−153を参照のこと)。
【0010】
ラクチュロースは、ラクトースのグルコース部分をフルクトース残基に変換するアルカリ異性化プロセスによって生成される。
【0011】
ラクトスクロースは、酵素β−フルクトフラノシダーゼのフルクトシル転移活性を使用して、ラクトースおよびスクロースの混合物から製造される。
【0012】
フルクトースオリゴ糖は、異なる2つの方法によって製造される。一方は、酵素β−フルクトフラノシダーゼのフルクトシル転移活性を使用する二糖のスクロース由来であり、他方は、イヌリナーゼによるイヌリンの制御された酵素加水分解を介する。
【0013】
パラチノースまたはイソマルチュロースオリゴ糖は、固定化されたイソマルトースシンターゼを使用してスクロースから生成される。
【0014】
グリコシルスクロースは、酵素シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを使用して、マルトースおよびスクロースから製造される。
【0015】
マルトオリゴ糖は、様々なα−アミラーゼによる加水分解と組み合わされたプルラナーゼおよびイソアミラーゼのような脱分枝酵素の作用によって、デンプンから生成される。
【0016】
イソマルトオリゴ糖、シクロデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、ダイズオリゴ糖およびキシロオリゴ糖の生成のための方法もまた、開発されている(参考として、プラピュラ(Prapulla)ら(2000年)Adv Appl Microbial47,299−343およびそれに位置する参考文献を参照のこと)。
【0017】
シアル酸は、N−アセチルノイラミン酸(Neu5AcまたはNANA)を意味する。遊離シアル酸は、結合しているか、または別の化合物の部分であるシアル酸を意味する。
【0018】
[シアリルオリゴ糖]
離乳前新生児は、比較的多い数のビフィズス菌(Bifidobacteria)を含有する微生物叢を有し、これは、それらの免疫系の重要なプライマーであり得る病原性微生物に対する乳児の防御の一部であると考えられる。この微生物叢は、本来のプレバイオティクスであると考えられ得る母乳中のオリゴ糖によって育成される。母乳が、比較的高いレベルのシアリルオリゴ糖を含有することは、特に興味深い。そのようなオリゴ糖の濃度は、幼児期栄養物を調製するためにしばしば使用される牛乳では、実質的により低い。いくつかの特許は、牛乳中のそのようなシアリルオリゴ糖のレベルをどのようにして増加することができるかについて説明している(例えば、米国特許第6,706,497号明細書;同第5,374,541号明細書;同第5,409,817号明細書)。シアリルラクトースは、大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、およびサルモネラ(Salmonella)を含む様々な病原性微生物のエンテロトキシンを中和することが記載されている(米国特許第5,330,975号明細書)。ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)によるコロニー形成への干渉を含むシアル酸含有オリゴ糖の腸集団に対する他の有益な効果についても記載されている(例えば、米国特許第5,514,660号明細書;米国特許第5,164,374号明細書を参照のこと)。従って、それらは、腸微生物叢に選択低に影響を及ぼすことによって、宿主に有益に影響を及ぼすため、これらのシアル酸含有炭水化物もまた、プレバイオティクス(prebiotcis)として分類することができる。シアリルオリゴ糖の同義語は、シアル酸富化オリゴ糖またはオリゴ糖結合シアル酸である。
【0019】
[シアル酸]
シアル酸は、9炭素糖のノイラミン酸の約40種類の誘導体のファミリーを含んでなる。それは、約2.2のpKを伴う強有機酸である。非置換型のノイラミン酸(neuraminic acic)は、天然には存在しない。アミノ基は、通常、アセチル化されて、最も普及した形のシアル酸であるN−アセチルノイラミン酸(N−acetylneuraminc acid)を産出するが、他の形も存在する(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)。シアル酸は、棘皮動物からヒトにまで至る動物界において見出されるが、一方、前口動物系統の下等動物または植物におけるそれらの存在については、示唆されていない。唯一の公知の例外は、昆虫のショウジョウバエ(Drosophila)の幼虫におけるポリシアル酸の存在である。さらに、いくつかの原生動物、ウイルスおよび細菌にもシアル酸が認められる。シアロ糖複合体は、細胞表面ならびに細胞内膜に存在する。高等動物では、それらはまた、血清および粘膜物質の重要な成分でもある。
【0020】
シアル酸は、多様な生物学的機能を有する。それらの負電荷により、シアル酸は、カルシウムイオンのような正に荷電した分子の結合および輸送、ならびに細胞と分子との間の誘引および反発現象に関与する。それらのサイズおよび負電荷に加えて、それらが暴露された炭水化物鎖の末端に位置することは、それらが分子または細胞のサブ末端部の保護シールドとして機能することを可能にする。それらは、例えば、グリコール−タンパク質(glycol−proteins)がプロテアーゼによって分解されるのを防ぐことができ、または呼吸器系の粘膜層を細菌感染から防ぐことができる。興味深い現象は、それらの負の電荷の間に作用する反発力によりシアル酸含有分子に対して及ぼされる延展効果である。これは、酵素または膜(糖)タンパク質の正確なコンホメーションを安定化し、そして粘液性(slimy)の性質ならびに眼の表面および粘膜上皮のような粘膜物質の滑走および保護機能に重要である(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)。
【0021】
シアル酸は、細胞と分子との間の多様な認識プロセスに関与する。それ故、免疫系は、それらのシアル酸パターンに従って、自己構造と非自己構造とを区別することができる。糖は、抗原決定基、例えば血液型物質を表し、そしてホルモンおよびサイトカインのような多くの内因性物質の受容体の必要な成分である。加えて、毒素(例えば、コレラ毒素)のような多くの病原因子、ウイルス(例えば、インフルエンザ)、細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))および原生動物(例えば、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosome cruzi)もまた、シアル酸含有受容体を介して宿主細胞に結合する。シアル酸認識分子の別の重要な基は、特定の糖残基に結合する植物、動物および無脊椎動物由来の通常オリゴマー糖タンパク質であるレクチンに属する。例には、コムギ胚芽アグルチニン、アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)アグルチニン、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)アグルチニンおよびカライヌエンジュ(Maackia amurensis)アグルチニンがある。これらのレクチンは、植物を、シアル酸含有微生物または草食哺乳動物に対するその防御において援助するようである。レクチンの哺乳動物対応物は、セレクチンおよびシグレックを含み(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)、そして多様な生理学的役割を有する。シアル酸はまた、細胞および分子の遮蔽を補助することができる。赤血球は、シアル酸分子の防御層に覆われ、これは、血液細胞の生活環中に段階的に取り出される。次いで(than)、分解のためのシグナルを表す最後から2番目のガラクトース残基が晒され、次いで(than)、遮蔽されていない血液細胞がマクロファージに結合し、そして貪食される。そのような遮蔽ストラテジーの他のいくつかの例は公知である。遮蔽はまた、有害な影響を有し得るが、これは、対応する組織よりもかなり高い程度でシアル酸付加される腫瘍のいくつかから認められ得る。結果的に、遮蔽された細胞は免疫防御系に晒されず、そして高シアル酸含有量もまた、さらなる細胞増殖の阻害の欠如および拡大に役割を果たし得る。シアル酸の遮蔽効果はまた、寄生体細胞上の抗原部位を隠すのに役立ち、それらを系に晒されないようにする。これは、所定の大腸菌(E coli)株および淋菌(Neisneria gonorrhoeae)のような微生物種の場合に当てはまる。
【0022】
[新興のプレバイオティクとしてのシアル酸]
感染の防止に関してグリコマクロペプチド(GMP)から誘導されるシアル酸に基づくオリゴ糖の重要性が、それを新興のプレバイオティクスとして使用する場合に示された(K.M.トゥーイ(K.M.Tuohy)G.C.M.ルゾー(G.C.M.Rouzaud)Current Pharmaceutical Design,2005年、11,75−90)。さらに、ヒト乳汁から誘導されるシアル酸含有GMPは、ビフィズス菌の有効な増殖促進因子であり、そしていくつかの抗病原性特質を有することが報告された(W.M.ブルック(W.M.Bruck)FEMS Microbial Ecol2002年;41:231−7)。最近のレビュー記事(ササキ・ケン(Sakaki Ken)ら、Food Style21(2002年),6(1),64−67)では、シアル酸ならびに卵から誘導されるシアリル−オリゴ糖の特徴および用途が記載されている。文献データから、シアル酸は、適切なオリゴ糖との組み合わせで、首尾良いプレバイオティクスとして使用することができると結論付けることができる。記載の調製物は、常に、シアル酸およびシアル酸含有オリゴ糖の混合物である。遊離シアル酸および非シアリル化オリゴ糖を含有する調製物については、本発明者らが知る限り、記載されていない。
【0023】
シアル酸の別の極めて重要な特徴は、動物研究における脳発達、学習能力および記憶形成に対するその効果である。人工乳のシアル酸含有量の変動は、初期の学習行動、およびシアル酸代謝に関与する酵素の遺伝子発現に明らかに影響を及ぼすことが報告された(B.ワング(B.Wang)らAm.J.Clin Nutr,2007,85,561−569)。同時に、脳ガンクリコシド(ganclicosides)および糖タンパク質におけるシアル酸の濃度は、ラット幼獣に給餌した遊離シアル酸の量に直接関連した(S.E.カールソン(S.E.Carlson)、S.G.ハウス(S.G.House)The Jornal of nutrition,1986年、881−886)。
【0024】
ヒト乳汁はシアル酸の豊富な供給源であり、そしてヒト研究から、授乳児の脳前頭皮質におけるシアル酸の濃度は、人工栄養児と比較して、有意に高かったことが見出された。(B.ワング(B.Wang)らAm.J.Clin Nutr,2003年、78,1024−1029)。ならびに、授乳児の唾液におけるシアル酸含有量は、人工栄養児より2倍高かった。(H.T.トラム(H.T.Tram)らArch.Dis.Child..1997年、77,315−318)。
【0025】
[シアリル化オリゴ糖の生成]
シアル酸生成に関する産業的用途のために開発された方法のもっとも豊富および特許出願されたグループの1つは、シアル酸を含有するオリゴ糖の生成である。異なるトランス−シアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼを使用して、シアリル化オリゴ糖を酵素的に生成するための多様な方法が存在し、そしてそれらのほとんどは、酪農供給源を使用する。米国特許第5374541号明細書は、シアリルオリゴ糖を生成するための方法について記載している。この方法に従って、β−ガラクトシダーゼを使用して、CMP−シアル酸およびα(2−3)−またはα(2−6)−CMP−シアリルトランスフェラーゼの存在下でβ−ガラクトシルグリコシドを形成させて、シアリル化オリゴ糖を形成させる。米国特許第5409817号明細書は、α(2−3)−シアリルガラクトシドを生成するための3つの酵素プロセスについて開示している。このプロセスに従えば、CMP−シアリルトランスフェラーゼは、シアル酸をCMP−シアル酸からアクセプター分子へ転移し、これらのアクセプター分子は、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)α(2−3)トランス−シアリダーゼのドナー分子になり、そしてCMP−シアル酸は、CMP−シアル酸シンテターゼおよび添加された遊離シアル酸の作用を介して系において再生される。米国特許第5409817号明細書に記載の方法は、特に、遊離シアル酸の添加を必要とする。遊離シアル酸は、CMP−シアル酸シンテターゼによってCMP−シアル酸に変換され、そしてシアル酸部分は、CMP−シアリルトランスフェラーゼによってドナー分子に転移される。開示内容に従えば、これらのシアリル化アクセプター分子の形成は、α(2−3)トランス−シアリダーゼ反応を進行させるのに必要である。遊離シアル酸に加えて、この方法はまた、CMP−シアル酸シンテターゼおよびCMP−シアリルトランスフェラーゼを含む3つの酵素の存在を必要とする。さらに、酪農供給源およびチーズ加工廃水は、CMP−シアル酸シンテターゼを含有しない。
【0026】
トランス−シアリダーゼを使用してα(2−3)−シアリル化複合体を合成するより容易な方法は、加国特許第2096923号明細書に記載されている。
【0027】
米国特許第6323008号明細書および米国特許第6706497号明細書は、酪農供給源またはチーズ加工廃水と触媒量の少なくとも1つのα(2−3)トランス−シアリダーゼとを接触させることによって、酪農供給源またはチーズ加工廃水においてα(2−3)シアリルオリゴ糖を生成するための方法に関する。好適な実施形態では、本発明の方法は、酪農供給源またはチーズ加工廃水においてα(2−3)−シアリルラクトースを生成するために適用される。本発明に従って生成されるα(2−3)シアリルオリゴ糖を単離するための方法もまた、提供される。
【0028】
米国特許第5908766号明細書は、シアル酸を含有する糖類の生成の方法について記載しており、ここで、β−ガラクトシド−α2,6−シアリルトランスフェラーゼは、糖複合体の糖鎖におけるガラクトース残基の6位または遊離の糖鎖におけるガラクトース残基の6位、または6位の炭素上に水酸基を有する単糖の6位にシアル酸を連結するために使用され、そしてオリゴ糖または糖複合体を形成することが可能である。
【0029】
シアル酸含有オリゴ糖の生成のための方法の別の重要なグループは、シアル酸複合体の異なる供給源、ならびに他のタイプの関与する酵素反応を含む。
【0030】
例えば、典型的に、α(2−3)−シアリルラクトースは、トランス−シアリダーゼ触媒化反応におけるシアル酸ドナーとして使用される。しかし、可逆性および費用のような制限のため、代替的シアル酸ドナーが必要とされる。S.Gリー(S.G Lee)ら(Enzyme and Microbial Technology,2002年、31(6)742−746)は、フェチュイン、そのオリゴ糖の末端において豊富なシアル酸を含有する糖タンパク質を、トランス−シアリダーゼ触媒化反応におけるシアル酸ドナーとして使用することができることを示した。数ミリグラムのフェチュインにおいて166nmolの全シアル酸のうち、125nmolのシアル酸が、トランス−シアリダーゼ反応のために消費された。フェチュインを使用するトランス−シアリダーゼ反応は、可逆的であった。フェチュインのGalβ(1,4)GlcNAcへのシアリル転移速度は、α(2−3)−シアリルラクトンのそれに類似し、そして4−メチルウンベリフェリル(methylumbelliferryl)−α−シアル酸のそれより約30〜40倍大きかった。トランス−シアリダーゼ反応は、ドナーおよびアクセプターとして、それぞれ200mgのフェチュインおよび34mgのラクトースを使用して実施し、そして8mgの生成物、即ち、α(2−3)−シリアルラクトースを、ゲルろ過カラムによって精製した。精製工程を簡単にするために、トランス−シアリダーゼ反応を、フェチュインおよびトランス−シアリダーゼを含有する透析袋をラクトース溶液に沈め、そして撹拌することによって、行った。
【0031】
加えて、卵黄をシアル酸の供給源として使用する多くの特許が利用可能である。
【0032】
米国特許第5233033号明細書は、脱脂卵黄の加水分解を含んでなる粗シアル酸を精製するための方法、および脱脂卵黄を加水分解することによって入手可能なシアル酸を含有する溶液を脱塩し、シアル酸をイオン交換樹脂に吸着させ、次いで、前記シアル酸を溶出させることを含んでなる、高純度のシアル酸を生成する方法に関する。
【0033】
日本特許第08266255号公報では、シアル酸含有オリゴ糖誘導体は、プロテアーゼによる加水分解時にニワトリ卵黄から得られる。プロテアーゼ処理は、オリゴ糖を明らかに放出する;すべてのアミノ酸がオリゴ糖から取り出されるか、または残留するアミノ酸がなお存在するかどうかは明らかではない。
【0034】
別の特許、日本特許第06245784号公報は、シアル酸およびその誘導体を含有する組成物の酵素的生成について紹介している。それらの組成物は、酵素(例えば、プロテアーゼ)による脱脂卵黄の処理、水溶性画分の限外ろ過によるポリマー成分の取り出し、および化合物の脱塩によって、製造される。卵黄粉末を、EtOHと共に撹拌して、脱脂卵黄を得た。HO中、50℃で8時間のプロテアーゼA(プロテアーゼ)による1トンの脱脂卵黄の処理、それに続く、限外ろ過および脱塩により、遊離シアル酸7.5、ペプチド25、およびシアロオリゴ糖75%を含有する300kgの組成物を得た。
【0035】
米国特許第1523031号明細書は、乳清シアル酸の産業規模での抽出および生成のための方法に関し、そして前記方法は、次の工程を含む:加水分解工程、乳清粉末および水を使用して、タンパク質を取り出し、pH値を調節し、次いで、加熱およびろ過すること;超ろ過(superfiltering)不純物取り出し工程、捕捉分子量が6000〜8000である膜を採用して、ろ過を行うこと;イオン交換工程、5〜15Lのアルカリ樹脂を使用して、1〜3mの線速度に従ってろ過物を吸着させ、水洗浄後、pH勾配を使用して、溶出を行うこと;ならびに濃度結晶化工程、濃縮物を回収し、結晶化し、乾燥または凍結乾燥して、発明された生成物を得ること。
【0036】
日本特許第11180993号公報は、乳清またはラクトース結晶化後の母液からのシアル酸化合物の調製について記載している。シアル酸化合物は、乳清またはラクトース結晶化後の母液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂カラムに通過させ、次いで、吸着したシアル酸を溶出させることによって、調製する。乳清または母液は、陰イオン交換樹脂による処理の前に、陽イオン交換樹脂に通過させてもよい。乳清または母液の塩強度は、例えば、電気透析により、≦3.0mS/cmの導電率で予め調整してもよい。チーズ乳清(固体含有量6%)を、電気透析装置によって、1.25mS/cmの導電率まで脱塩し、そしてIR120B強酸性陽イオン交換カラム、次いでDiaion WA10弱塩基性陰イオン交換カラムに通過させた。陰イオン交換カラムを、AcONa水溶液で処理して、1.3g/Lシアル酸(シアリルラクトース中0.5g/L、グリコマクロペプチド中0.4g/L)を含有する溶出物を得た。
【0037】
家禽卵を包括的に加工および使用するための方法は、中国特許第1511465号明細書に提示されており、そして家禽卵によって、シアル酸、卵白タンパク質、卵黄アミノ酸、レシチン、リゾチームなどのような様々な製品を生成する技術に関連する。この発明は、家禽卵を洗浄し、破砕し、そして分離して、卵殻、卵白および卵黄を入手すること;卵黄から、水との混合、pH調節、加水分解、イオン交換、噴霧乾燥、相分離および他の工程を介してシアル酸およびレシチンを生成すること;ならびに卵白から、pH調節、陽イオン交換および他の工程を介して、リゾチームおよび卵白タンパク質を生成することを特徴とする。
【0038】
乳清からの糖タンパク質およびシアル酸の抽出のための別の方法については、若干の変更を伴う2つの特許、米国特許第4042576号明細書および米国特許第4042575号明細書に記載されている。それは、酪農場またはカゼイン製造所の乳清からのシアル酸および糖タンパク質の分離のための方法の開発を含む。タンパク質を熱処理によって凝集させ、上清を限外ろ過し、そして限外ろ過留保物を加水分解によって処理し、次いで、シアル酸を、加水分解上清から抽出する。
【0039】
[シアル酸の生成]
一般に、シアル酸は、酵素的合成および化学合成から供給することができる。化学合成は、容易な作業ではなく、そしてそれは明らかに、市販の合成的に生成されるシアル酸の価格に反映する。Neu5Acは、牛乳中全シアル酸の約95%を表し、そして明らかに、ヒト乳汁における最も豊富なシアル酸であるため、それは、特に興味深い。また、シアル酸にかかわる文献に記載のほとんどの研究は、Neu5Acを使用して行われる。
【0040】
シアル酸の生合成は、N−アセチルマンノサミオン(acetylmannosamione)またはマンノースおよびピルビン酸のアルドール縮合を介して進行する(F.キミオ(F.Kimio)、Trends in Glycoscience and Glycotechnology,2004年、16(89)143−169、K.ヴィシュワナータン(K.Viswanathan)、S.ローレンス(S.Lawrence)、S.ヒンダーリッヒ(S.Hinderlich)、K.J.ヤレマ(K.J.Yarema)、Y.C.リー(Y.C.Lee)、M.J.ベテンバアウヒ(M.J.Betenbaugh)、Biochemistry,42(51),15215−15225,2003年)。昆虫細胞は、操作して、シアリル化基質を生成することができ、そして特に、シアル酸、例えば、Neu5Acの生成に使用し得ることが実証された。特定の経路遺伝子ならびに関与する基質を変動することによって、特定のプロセシング工程が、シアル酸の生成を制限することができることが決定された。さらに加えて、基質供給代替物および様々な遺伝子の発現の適切な組み合わせを使用して、シアル酸のレベルならびに形成されるシアル酸のタイプを制御することができる。外因的に供給されたManNAcの存在下で、シアル酸9−リン酸シンターゼの遺伝子を担持するバキュロウイルスに感染させた場合、Sf9細胞はNeu5AcおよびKDNを合成することが報告された。Neu5Acのレベルは、20mM供給ManNAcまでのManNAc補充により増加することが観察された。Neu5Ac生成におけるこの増加は、明らかに、Sf9細胞におけるNeu5Ac合成に利用可能なManNAcに限界があることを示す。しかし、50mMのManNAcの添加は、20mMのManNAcで得られるレベルより、Neu5Acの合成の12%の増加しか生じなかった。それ故、昆虫細胞では、培地に存在するManNAcのレベルを20mMを超えて増加させると、作製されるNeu5Acの量に有意な増強が生じないように、シアル酸経路において隘路が存在する。この隘路は、細胞へのManNAc輸送に関与する工程またはシアル酸合成酵素によって利用され得る基質へのManNAcの代謝変換のいずれかにおいて存在し得る。それにもかかわらず、細胞内Neu5Ac含有量はなお、コントロールの培養溶解物と比較して、AcSAS感染溶解物では、100を超えて高かった。しかし、コントロール培養物における検出可能なNeu5Acの存在は、昆虫細胞が、極めて低い内因性レベルのシアル酸合成のための酵素を含有し得ることを示唆する。内因性酵素活性は、シュナイダー(Schneider)S2細胞系統では検出不能であったが、実際、シアル酸合成の遺伝子は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において検出されている。KDN、代替的シアル酸もまた、AcSAS感染後に作製された。KDN対Neu5Acの比は、Neu5Acの合成の迅速な増加によるManNAc供給後に劇的に減少し、ManNAc−6−PがSASの好適な基質であることが示された。昆虫細胞によるNeuAc生成が明確に示されているにもかかわらず、本発明者らの知る限り、この方法は商業的に使用されていない。これは、プロセス費用が非常に高いことにより生じているのかもしれない。
【0041】
シアル酸含有化合物の生成のための方法のいくつかは、酵素反応を使用せず、むしろ化学的方法が適用される。それらの方法のいくつかは、特許文献に記載されている。米国特許第5270462号明細書は、シアル酸を含有する化合物を製造するための方法に関する。この方法は、次の工程を含んでなる:(a)チーズ乳清またはレンネット乳清を2〜5のpHに調整すること;(b)乳清と陽イオン交換体とを接触させて、交換体通過溶液を生成する;(c)交換体通過溶液のpHを4もしくはそれ以下のpHに調整すること;および次いで、(d)交換体通過溶液を濃縮および/または脱塩すること。高度のシアル酸を有する組成物を生成する可能性が、特許請求された。
【0042】
[シアリダーゼ]
シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ、EC3.2.1.18)は、糖タンパク質、糖脂質、ガングリオシド、多糖および合成分子における末端の非還元シアル酸結合を加水分解する。トランスシアリダーゼと呼ばれるシアリダーゼはまた、シアル酸残基を1つの分子から別の分子に転移する転移反応を実施することも可能である。シアリダーゼは、新口動物系統(棘皮動物(Echinodermata)から哺乳動物(Mammalia))の動物およびまた動物の共生生物または病原体として最も多く存在する多様な微生物において一般的に認められる。シアリダーゼ、およびそれらのシアリル基質は、植物および他のほとんどの後生動物には存在しないと思われる。細菌の間であっても、シアリダーゼは、関連する種または1つの種の株であってもこの特性が異なるように、不規則に見出される。シアリダーゼはまた、ウイルスおよび原生動物においても見出されており(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)、シアリダーゼ活性はまた、真菌においても見出されている(ウチダ(Uchida)ら 1974年,Biochim Biophys Acta 350,425−431)。シアリダーゼを含有する微生物は、しばしば、例えば、寄生体として、宿主としての高等動物と接触しながら生存する。ここで、それらは、栄養機能を有し得、それらの所有者が宿主のシアル酸を炭素源として使用するためにスカベンジすることを可能にする。いくつかの微生物病原体では、シアリダーゼがビルレンス因子として作用すると考えられる。なお、病原性における因子としてのシアリダーゼの役割については、議論の余地がある。一方では、それらは、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)のような病原性微生物種の影響を裏付けている。他方では、これらの酵素は、高等動物を含む多くの非病原性種の炭水化物異化に共通の因子である。しかし、それらは、直接的な毒性効果を発揮しない(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)。その代わり、それらの有害な影響は、非生理学的条件下での宿主シアル酸による誘導時に他の毒性因子と共に宿主に放出される大量の酵素に依存する。
【0043】
哺乳動物シアリダーゼは、通常、約40〜45kDaのサイズである。哺乳動物シアリダーゼを過剰発現させ、そして産業的に関心のある量にまで産生させる試みについては、報告されていない。ヒトシアリダーゼは、リソソーム酵素、サイトゾル酵素または膜結合酵素であり得る(エイカイウタン(Achyuthan)およびエイカイウタン(Achyuthan)(2001年)Comp.Biochem.Phys.B部、129,29−64)。リソソームシアリダーゼは、グリコシル化酵素である。シアリダーゼは、保存されたモチーフを含有する。最も顕著な保存されたモチーフは、一般式−S−X−D−X−G−X−T−W−[式中、Xは可変の残基を表す]のアミノ酸のストレッチであるいわゆるAspボックスである。このモチーフが僅か1回もしくは2回しか見出されないかまたは存在さえしないウイルスシアリダーゼを例外として、このモチーフは、すべての微生物配列をとおして4〜5回見出される。第3のAspボックスは、Aspボックス2および4より強度に保存されている。連続的な2つのAspボックスの間の空間もまた、異なる一次構造の間で保存される(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)。Aspボックスは、おそらく構造的役割を果たし、そしておそらく触媒に関与しない。Aspボックスとは対照的に、FRIP−モチーフは、アミノ酸配列のN末端部分に局在する。それは、絶対的に保存されたアルギニンおよびプロリン残基を伴うアミノ酸−X−R−X−P−を包含する。アルギニンは、基質分子の結合によって触媒に直接関与する。aspボックス3および4の間のグルタミン酸リッチ領域、ならびにさらなる2つのアルギニン残基もまた、触媒作用に重要である(トラビング(Traving)ら Cell Mol Life Sci(1998年)54,1330−1349)。
【0044】
微生物シアリダーゼは、それらのサイズに従って、2つのグループ、すなわち、約42kDaの小さなタンパク質および60〜70kDaの大きなタンパク質に分類することができる。大きなシアリダーゼの一次構造は、N末端と第2のAspボックスとの間、ならびに第5のAspボックスとC末端との間にアミノ酸の追加のストレッチを含有する。それらは大きなシアリダーゼのより広範な基質特異性に寄与すると考えられる。哺乳動物シアリダーゼと同様に、細菌対応物は、F/YRIPモチーフおよびいくつかのAspボックスを含有する。細菌シアリダーゼは、しばしば、粘膜感染およびビルレンス(virulance)に関係している。このため、大きい方の細菌シアリダーゼは、食品または製薬用途における加工助剤としての使用に適切であるとは認識されていない。小さなシアリダーゼ(哺乳動物シアリダーゼと同じサイズ)は、上記に示す細菌において同定されている。即ち、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)は、他の細菌のシアリダーゼに共通の伸長部を伴わない約40kDaのサイズを伴う小さなシアリダーゼを含有する。しかし、このクロストリジウム(Clostridium)シアリダーゼは、細菌によって分泌されず、従ってまた、ビルレンス(virulance)に関与しない(ロッグゲンチン(Roggentin)ら(1995年)Biol Chem Hoppe Seyler 376,569−575)。追加の伸長部を伴う細菌シアリダーゼのみが病原性に関与することは、大変興味深い。大腸菌(E.coli)における細菌シアリダーゼの過剰発現は、一般的に、低い産生率をもたらし;小さなクロストリジウム(Clostridium)シアリダーゼは、大腸菌(E.coli)における細胞内タンパク質として1mg/lまでしか産生され得ない(クルーゼ(Kruse)ら(1996年)Protein Expr Purif.7,415−422)。従って、食品および製薬における用途のための良好に産生される小さな非ビルレントなシアリダーゼが明らかに必要である。
【0045】
[発明の概要]
本発明は、以下を含んでなる組成物に関する:
− オリゴ糖、
− 存在するオリゴ糖の合計量の0〜1wt%、好ましくは、0.1wt%未満の量のシアリルオリゴ糖、
− 遊離シアル酸。
【0046】
好ましくは、この組成物は、存在するオリゴ糖の合計量の1wt%未満、好ましくは、0.1wt%未満の量でシアリルオリゴ糖を含んでなり、そして最も好ましくは、シアリルオリゴ糖を実質的に含まない。
【0047】
本発明の組成物は、好ましくは、存在するオリゴ糖および遊離シアル酸の合計量の0.001wt%超、好ましくは、0.01wt%超、なおより好ましくは、0.1wt%超、および最も好ましくは、1wt%超の量で遊離シアル酸を含んでなる。
【0048】
本発明の組成物は、好ましくは、0.5wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる、より好ましくは、0.1wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる、そして最も好ましくは、0.01wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる。
【0049】
組成物は、有利には、ヒトの消費のために適切なプレバイオティクス組成物である。
【0050】
本発明の組成物は、以下を含んでなる方法において生成され得る
− 第1の適切な基質を適切な酵素に供して、オリゴ糖を生成させること、および
− 第2の適切な基質をシアリダーゼに供して、遊離シアル酸を生成させること。
【0051】
本発明の方法は、いくつかの方法で行うことができ、例えば、第1および第2の基質は同一であり、そして両方の工程が1つのリアクター内で生じ得る。別の実施形態では、工程は、相互の後に生じる。なお別の実施形態では、工程は個別に生じ、そしてシアル酸およびオリゴ糖が合わせられる。
【0052】
本発明の別の態様に従えば、固定化されたシアリダーゼが開示され、そしてシアル酸を生成するための方法であって、それによって、使用するシアリダーゼが固定化される方法が開示される。
【0053】
また、本発明は、本発明の組成物、または本発明の方法によって生成される組成物を含んでなる飲料、もしくは飼料を含む食品に関する。
【0054】
本発明は、プレバイオティクスオリゴ糖および遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物を調製するために、新規のシアリダーゼを使用する酵素的方法に関する。プレバイオティクス組成物は、以下の組成物によって特徴付けられる:
・それは、シアリルオリゴ糖を含まない(調製物中の全オリゴ糖の<1.0wt%、好ましくは、<0.1wt%)。
・遊離シアル酸の量は、好ましくは、プレバイオティクス組成物中シアル酸およびオリゴマープレバイオティクスの合わせた重量の>0.001%、より好ましくは、プレバイオティクス組成物中シアル酸およびオリゴマープレバイオティクスの合わせた重量の0.01%、さらにより好ましくは、プレバイオティクス組成物中シアル酸およびオリゴマープレバイオティクスの合わせた重量の0.1%、ならびに最も好ましくは、プレバイオティクス組成物中シアル酸およびオリゴマープレバイオティクスの合わせた重量の>1%である。
【0055】
本方法は、プレバイオティクスオリゴ糖が形成され得る基質を、シアル酸が放出され得る基質との組み合わせで含有する溶液を接触させることよりなる。
【0056】
プレバイオティクスオリゴ糖に対する基質は、次の基質の1つまたは組み合わせであり得る:酪農組成物、ラクトース、スクロース、イヌリン、マルトース、ダイズ、デンプン、グルコースシロップ、またはキシラン、好ましくは、酪農組成物。オリゴ糖の生成は当該分野において公知であり、そして例えば、発明の背景に記載の方法を使用することができる。
【0057】
シアル酸に対する基質は、次の基質の1つまたは組み合わせであり得る:酪農組成物、卵黄または脱脂卵黄、好ましくは、酪農組成物。
【0058】
シアル酸の放出は、シアリダーゼ酵素、好ましくは、本出願に記載の酵素を使用して、実施される。プレバイオティクスオリゴ糖の形成は、選択された基質に有用な任意の酵素によって実施され得る。
【0059】
[発明の詳細な説明]
本発明のプレバイオティクス組成物は、プレバイオティクスオリゴ糖の有益な効果と遊離シアル酸のそれらとを組み合わせるため、それは、産業的に魅力的である。現在利用可能および記載のシアリルオリゴ糖およびトランスシアリダーゼを使用するそれらの調製物より有利な点は、本発明において、遊離シアル酸対プレバイオティクスオリゴ糖の比が好適に選択することができることである。加えて、シアル酸を、任意のタイプの好適なプレバイオティクスオリゴ糖と組み合わせることができるが、一方、シアリルオリゴ糖の調製では、トランスシアリダーゼの基質として機能することができるそれらのオリゴ糖のみを使用することができる。
【0060】
本発明は、プレバイオティクス組成物がシアル酸ならびにオリゴ糖を含んでなるという本発明者らの見識に基づく。それに対する先行技術では、シアル酸がオリゴ糖に備え付けられた。これは、両方のエレメントを含んでなるシアリルオリゴ糖の生成を生じた。これらのシアリルオリゴ糖は、極めて有用な生成物であるが、それらの生成はまた、複雑であることは別としても極めて高価であり、そして現在、経済的に魅力的な経路は知られていない。本発明に従えば、シアリルオリゴ糖のすべてのポジティブな効果を有し、そして簡単かつ経済的に魅力的な方法で生成することができる安価な代替物が付与される。すべての場合において、先行技術に記載のオリゴ糖調製物は、それ自体としてか、または遊離シアル酸およびシアル酸含有オリゴ糖の組み合わせとして記載されている。トランスシアリダーゼが使用されるいくつかの場合では、本方法は、シアリルオリゴ糖におけるシアル酸の取り込みに有利であるであるようにできるだけ遊離シアル酸のレベルを減少するように最適化されるようである。本発明は、シアリルオリゴ糖を含まないオリゴ糖と遊離シアル酸との組み合わせが、ヒトまたは他の哺乳動物のシアリルオリゴ糖と同じ有益性を有するという見識に基づく。
【0061】
現在まで、植物および真菌において、シアリダーゼは、分子レベルで同定されていない(即ち、アミノ酸配列または遺伝子配列について記載されていない)が、シアリダーゼ活性は、真菌において実証されている(ウチダ(Uchida)ら1974年、Biochim Biophys Act350,425−431)。
【0062】
特に、分泌型酵素は容易に過剰発現され、そして真菌培養物から大量に精製され得るため、分泌型真菌シアリダーゼの所見は有益であることが見出される。これは、シアリダーゼの産生のための原価を劇的に減少する。加えて、それは、例えば、酪農組成物および卵黄からのシアル酸の費用高価の高い生成を可能にする。これは、非シアリル化プレバイオティクスオリゴ糖と遊離シアル酸との組み合わせを含有する新世代のプレバイオティクス組成物の生成のための方法を開く。遊離シアル酸と非シアリル化プレバイオティクスオリゴ糖との組み合わせについては、本発明者らが知る限り、記載されていない。
【0063】
[新規シアリダーゼ]
本発明は、遊離シアル酸、ならびに限定されないが、ガラクトオリゴ糖、フルクト−オリゴ糖およびラクチュロースのようなプレバイオティクスオリゴ糖を含有するプレバイオティクス組成物を生成するための方法に関する。シアル酸の酵素的、費用効果の高い生成は、良好に生成されたシアリダーゼの能力を必要とする。シアリダーゼは、商業的には、高い価格で少量でしか利用可能ではない。Sigma社は、シアリダーゼを、mg量の酵素について15.20ユーロ〜約1500ユーロの価格で提供するか、この酵素は、天然の供給源からのシアル酸の費用効果の高い生成を可能にしない。本出願では、本発明者らは、真菌ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)において同定された新たな真菌シアリダーゼの同定について記載する。
【0064】
有利なことに、本発明は、多量に産生され得るシアリダーゼの需要を満たす。好ましくは、そのようなシアリダーゼは宿主細胞から分泌される。能動的分泌は、面倒な精製プロセスを経験することなく、ほとんど純粋な形の酵素の回収を可能にするため、それは、経済的な産生プロセスに最も重要である。アスペルギルス(Aspergillus)のような食品級真菌宿主によるそのような能動的に分泌されるシアリダーゼの過剰発現は、食品級酵素および費用効果の高い産生プロセスを生み出し、従って、好適である。本分泌型シアリダーゼは、糸状菌においてはじめて見出されたものである。食品級産生宿主アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)による大量のシアリダーゼの産生のための方法について開示する。
【0065】
経済的観点から、哺乳動物および細菌シアリダーゼの低い産生率と比較して、多量かつ比較的純粋な形でシアリダーゼを産生させる改善された方法が明らかに必要である。これを行うための好適な方法は、組み換えDNA技術を使用するそのようなシアリダーゼの過剰産生を介することである。これを行うための特に好適な方法は、真菌由来のシアリダーゼの過剰産生を介することであり、そしてこれを行うための最も好適な方法は、ペニシリウム(Penicillium)由来シアリダーゼの過剰産生を介することである。後者の産生経路を可能にするためには、ペニシリウム(Penicillium)由来シアリダーゼの独特な配列情報が必須である。より好適には、コーディング遺伝子のヌクレオチド配列全体が利用可能でなければならない。本発明者らは、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)のゲノムにおいてそのようなシアリダーゼ酵素を同定した。そのアミノ酸配列は、配列番号3として与えられ、その対応するゲノムヌクレオチド配列は配列番号1に、そしてそのコーディング配列は配列番号2に示される。新規の酵素は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)において良好に産生され、そしてシアリダーゼ活性を有する。
【0066】
[酪農組成物]
酪農組成物は、牛乳構成分を含んでなる任意の組成物であり得る。乳構成分は、乳脂肪、乳タンパク質、カゼイン、乳清タンパク質およびラクトースのような乳汁(水以外)の任意の構成分であり得る。乳汁画分は、例えば、スキムミルク、バターミルク、乳清、クリーム、粉乳、全粉乳、脱脂粉乳のような乳汁の任意の画分であり得る。本発明の好適な実施形態では、酪農組成物は、乳汁、スキムミルク、バターミルク、全乳、乳清、クリーム、またはそれらの任意の組み合わせを含んでなる。より好適な実施形態では、酪農組成物は、スキムミルク、全乳、クリームまたはそれらの任意の組み合わせのような乳汁からなる。
【0067】
本発明のさらなる実施形態では、酪農組成物は、例えば、全粉乳、脱脂粉乳、カゼイン、カゼイン塩、総乳タンパク質もしくは加糖粉乳、またはそれらの任意の組み合わせのような乾燥乳汁画分から全体的または部分的に調製される。酪農組成物はまた、それらがチーズ製造中に作製される場合、乳清溶液を含む。任意のチーズ製造プロセスは乳清溶液を作製し、そして組成物は、チーズ製造プロトコルによって変動する。
【0068】
本発明のなお別の実施形態では、酪農組成物は、乳汁、または乳汁タンパク質加水分解物を調製するためにタンパク質分解に供された乳汁画分から全体的もしくは部分的に調製される。これらの乳汁タンパク質加水分解物を、乳汁または乳汁画分と組み合わせて、酪農組成物を形成させてもよい。
【0069】
本発明に従えば、酪農組成物は、牛乳およびまたは1つもしくはそれ以上の牛乳画分を含んでなる。牛乳画分は、ウシの任意の品種(ウシ(Bos taurus taurus)、コブウシ(Bos indicus taurus)およびこれらの交雑種由来であり得る。一実施形態では酪農組成物は、ウシの2つもしくはそれ以上の品種由来の牛乳および/または牛乳画分を含んでなる。酪農組成物はまた、ヤギ、スイギュウまたはラクダ由来の乳汁のようなチーズ調製物に使用される他の哺乳動物由来の乳汁を含んでなる。
【0070】
チーズの調製のための酪農組成物は、生乳汁成分のすべてもしくは一部の取り出しによって、および/またはそれにさらなる量のそのような成分を添加することによって、所望される組成物に標準化され得る。これは、例えば、乳製品製造所到着時の乳汁のクリームと乳汁とへの分離によって行われ得る。それ故、酪農組成物は、乳汁を分画し、そして酪農組成物の所望される最終組成物が得られるように、画分を再度組み合わせることによって、簡便に行われるように、調製され得る。分離は、連続遠心分離において行ってもよく、極めて低い脂肪含有量(即ち<0.5%)を伴うスキムミルク画分および例えば、>35%脂肪を伴うクリームがもたらされる。酪農組成物は、クリームおよびスキムミルクを混合することによって調製してもよい。別の実施形態では、タンパク質および/またはカゼイン含有量は、限外ろ過の使用によって標準化され得る。酪農組成物は、本発明の方法によって生成されるべきチーズに適切であることが認められる任意の全脂肪含有量を有し得る。
【0071】
本発明の一実施形態において、カルシウムが酪農組成物に添加される。カルシウムは、スターターカルチャーの添加の前、同時、または後のようなチーズ作製前および/または最中に任意の適切な段階で酪農組成物に添加され得る。好適な実施形態では、カルシウムは、加熱処理の前および後の両方に添加される。カルシウムは、適切ないずれの形で添加してもよい。好適な実施形態では、カルシウムは、カルシウム塩、例えば、CaClとして添加される。適切な任意の量のカルシウムが、酪農組成物に添加され得る。添加されるカルシウムの濃度は、通常、1〜3mMの間のような0.1〜5.0mMの範囲である。CaClを酪農組成物に添加する場合、量は、通常、100リットルの酪農組成物あたり1〜50gの範囲、例えば、1000リットル酪農組成物あたり5〜30gの範囲、好ましくは、100リットル酪農組成物あたり10〜20gの範囲にある。
【0072】
[プロバイオティクス]
本発明の組成物はまた、好ましくは、プロバイオティクを含んでなる。
【0073】
プロバイオティクスまたはプロバイオティクス組成物は、適切な量で投与された場合、宿主に対して健康的便益性を与える生の微生物食品成分として定義される。プロバイオティクまたはプロバイオティクス組成物の基準は次のとおりである:消化管を通して生存、非毒性、非病原性、正確な分類学的同定、消化管において増殖し、そして代謝活性である能力、免疫モジュレーションのような実証可能な健康的便益、消化管における細菌の均衡の改善、加工中の株の安定性、貯蔵および送達、高い細胞密度での産生および生存能。
【0074】
[固定化酵素]
固定化酵素は、不活、不溶性材料に付着される酵素である。
【0075】
食品または食品成分の加工では、酵素は、穏やかな条件の温度およびpH下での基質特異性および活性が最も顕著である化学触媒を凌ぐ異なる利点を有する。しかし、可溶性酵素を使用する費用が欠点である。その理由のため、固定化酵素の使用が興味深い。これらの固定化酵素は、それらの触媒活性の保持を伴いながら、所定の定義された領域の空間に物理的に拘束または局在され、そしてそれらは、反復および継続的に使用することができる。酵素固定化の利点は、以下を含む:
・触媒の再使用または継続使用であって、それによって、主要および再帰プロセス費用の両方を減少する
・製品由来の酵素の不在であって、それ故、潜在的に、食品において通常許容される酵素より広範な酵素を容認する
・熱変性または極度のpHのような劇的手段を伴わずに反応を終結し易いこと
・場合によって、より高い熱およびpH安定性、プロテアーゼによる自己消化の防止、ならびにその三次構造の安定化であって、その有用な寿命を潜在低に延長する
・より低い製品阻害、および連続プロセスによるより高い基質枯渇であって、より早い変換を生じる
【0076】
主な欠点は、支持体の費用を含む固定化酵素を生成する費用、ならびにしばしば、拡散の制限、pHシフト、および分配から生じる変更された反応速度論である。さらに加えて、完全な、普遍的固定化方法は存在せず、各末端用途は、固定化、活性、安定性、単純化、および経済的実効性の目的のような基準に従って個々の工程の評価を必要とする。
【0077】
酵素固定化のための異なる多くの方法が存在し、主に、不溶性酵素のための方法および可溶性酵素のための方法に分類される。不溶性酵素のための方法のさらなる分類は、酵素の結合または捕捉である。これらの方法のそれぞれについて、異なる技術が存在する。酵素のキャリアへの結合については、以下の技術が公知である:
・物理的吸着:酵素は、ファンデルワールス力、水素結合、または親水的−疎水的効果のような物理的相互作用によって、支持体の表面に粘着する
・イオン結合:結合力は、単純な物理的吸着より強いイオン−イオン間相互作用である
・キレート結合:チタンまたはジルコニウムのような遷移金属のキレート特性を用いて、酵素を有機材料または無機支持体に結合させる
・生物特異的結合:酵素と他の分子種(例えば、レクチン、または抗体との間の生物特異的相互作用が、酵素への結合のために使用される。
・共有結合:水不溶性キャリアは、活性部位または基質の結合部位と会合しないアミノ酸残基の反応側鎖(例えば、アミノ、ヒドロキシル、チオール、もしくはフェノール基)を介して、酵素に共有結合させることができる。
【0078】
酵素に結合する他の技術は、架橋および酵素共重合である。架橋では、酵素は、それを他の酵素分子、またはアルブミンのような不活なタンパク質に架橋させ、そして得られる凝集体を沈殿させることによって固定化される。この方法はまた、膜のようなキャリアとの組み合わせで使用することができ、ここで、物理的に吸着された酵素は、膜表面上において架橋される。酵素共重合では、酵素は、ポリマーマトリックスと共に共重合され、例えば、酵素を、アシル化またはアルキル化モノマーでビニル化し、そして他のモノマーと共に共重合する。
【0079】
酵素の捕捉は、酵素が保持されるのに十分緊密でなければならないが、基質および生成物の透過を可能にしなければならない半透過性マトリックスにおける酵素の物理的拘束とみなすことができる。捕捉技術は:
・ゲル捕捉:遊離の酵素は、架橋された水不溶性ポリマーゲル(例えば、アルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン)の間隙空間(interstatial spaces)内に捕捉される。
・マイクロカプセル化:酵素は、基質および生成物に透過性である膜にそれらを封入することによって固定化され、通常、界面活性剤の存在下で有機相および水性酵素含有相のエマルジョンを調製し、次いで、膜形成ポリマーを添加するが、得られるマイクロカプセルは、一般的に、1〜100μmの直径を有する。
・逆ミセル:両親媒性界面活性剤分子は、炭化水素溶媒において逆ミセルを形成することができ、酵素は、ミセルの水プールに含有され、そしてそれらは、界面活性剤外被による有機溶媒からの保護から生じるそれらの生物活性を保持する。
【0080】
可溶性酵素の固定化のための方法は、酵素が、酵素活性の減少を生じないその生来の状態および環境にあるという利点を有する。これは、基質および生成物拡散を可能にし、そしてより大きな酵素分子を物理的に拘束することを可能にする半透膜により、酵素溶液を基質および生成物から分離することによって、達成することができる。これは、フラットシートの限外ろ過もしくは精密ろ過膜または中空線維膜によって達成することができる。この場合、膜を介して拡散することが可能な補因子は、それをより大きな分子に結合させることによって、反応区域内に保持させることができる。固定化の最終的方法は、可溶性〜不溶性固定化酵素として公知の異なる条件下での固定化酵素の可変の溶解度の使用である。例は、ポリ(L−グルタミン酸)上に固定化されたセルラーゼであって、これは、中性およびアルカリ性溶液に可溶性であるが、酵素活性の消失を伴うことなく、pHを低下させることによって沈殿させることができる(クレミングス(Clemmings)ら、1999年、Wiley Encyclopedia of Food Science and Technology(第2版)第1−4巻、John Wiley & Sons,1342−1345頁;プレノシル(Prenosil)ら、2007年、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(第7版))。
【0081】
[遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物の調製]
プレバイオティクスオリゴ糖の酵素触媒調製のための方法については、本出願において既に記載した。遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物の調製物は、先に記載の同じ技術(但し、1つもしくはそれ以上のシアル酸含有基質を補充した)を使用して、同じ出発物質から開始して、調製することができる。そのような基質については、本出願において既に記載しており、そして酪農組成物および卵タンパク質調製物を含む。遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物は、好ましくは、一工程プロセスで調製され、ここで、プレバイオティクスオリゴ糖(oligosacchrides)の調製物の基質およびシアル酸を混合し、そして酵素の組み合わせ(ここで、酵素の1つはシアリダーゼである)で処理した。好適な実施形態では、遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物は、β−ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼを使用して、酪農組成物から調製される。酵素を基質に添加し、酵素および基質の両方を含有する均質な溶液を得てもよい。適切な反応時間後、遊離シアル酸、オリゴ糖が形成された場合、例えば、熱処理、または酵素を不活化するための当業者に公知の他の方法を使用して、酵素を不活化することができる。遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス調製物をさらにプロセスして、反応混合物を濃縮するか、または所望されない成分を取り出してもよい。適切な技術は、当業者に公知であり、そして限外ろ過、噴霧乾燥およびクロマトグラフィー技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
なお別の実施形態では、シアル酸の酵素的形成および酵素的オリゴ糖が、以後の反応であってもよい。シアル酸の形成は、オリゴ糖の形成の前に実施してもよく、あるいはシアル酸は、オリゴ糖の形成後にのみ放出させてもよい。
【0083】
固定化酵素はまた、遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物の酵素的調製に使用してもよい。固定化酵素を、反応混合物に懸濁して、プレバイオティクス組成物の所望される形成を達成することができる。次いで、酵素は、ろ過によって容易に取り出され、その後、それらは、再使用することができる。あるいは、固定化酵素をカラムにパックすることができ、次いで基質溶液が、カラムに圧送される。カラム中の基質の残留時間を調整して、遊離シアル酸を含有するプレバイオティクス組成物の所望される形成を得ることができる。そのような方法については、例えば、ガラクトオリゴ糖の調製が記載されている(例えば、エクハルト(Ekhart)ら、J Food Protection53,262−268を参照のこと)。また、固定化酵素の場合、酵素処理は、先に記載のように、時間をずらして別個にしてもよい。
【0084】
好適な実施形態では、基質は、プレバイオティクスオリゴ糖およびシアル酸の両方の関連する前駆体を含有する混合物である。別の実施形態では、オリゴ糖形成およびシアル酸形成のための基質は、個別の容器またはバイアルに存在してもよい。これは、オリゴ糖およびシアル酸の酵素的作製を個別に可能にし、続いて、2つの反応性生物を混合して、遊離シアル酸を伴うプレバイオティクスオリゴ糖を含有する組成物がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】pGBFINZJWと命名されたZJW発現ベクター。
【図2】乳清(四角)および乳汁(円)基質を、0.04μ/mlのシアリダーゼ酵素と共にインキュベーションした後のそれらからのシアル酸の放出。点線は、シアリダーゼの代わりにmilliQ水を添加したバックグランド測定値に対応する。
【0086】
[実施例]
[実施例1]
[シアリダーゼ遺伝子ZJWのクローニングおよび発現]
ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)株CBS 455.95を、3日間、30℃、PDB(ポテトデキストロースブロス、Difco)中で増殖させ、そして染色体DNAを、供給者の取扱説明書を使用し、Q−Biogeneキット(カタログ番号6540−600;Omnilabo International BV,Breda、蘭国)を使用して、菌糸体から単離した。染色体DNAを、PCRを使用するシアリダーゼ遺伝子のコーディング配列の増幅に使用した。
【0087】
ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)株CBS 455.95の染色体DNAからシアリダーゼ遺伝子ZJWを特異的に増幅するために、2つのPCRプライマーを設計した。プライマー配列を、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)CBS 455.95のゲノムDNAにおいて見出された配列から部分的に入手したが、これを配列番号1に示す。本発明者らは、この配列は、アクチノマイセス(Actinomyces)およびアルスロバクター(Arthrobacter)のシアリダーゼ配列と相同性を有することを見出した。しかし、相同な真菌シアリダーゼについての記載はまだ認められていない。従って、本発明者らが、真菌から分泌型シアリダーゼをコードする遺伝子を見出すことができたことは、意外である。本発明者らは、本明細書において、分泌型真菌シアリダーゼの効率的な発現および特徴付けについてはじめて説明する。潜在的なプレ−およびプロ−配列を含んでなる完全なシアリダーゼタンパク質のタンパク質配列を配列番号3に示す。細菌相同体と比較した真菌酵素の利点は、真菌酵素が容易に過剰発現され、そして食物産業におけるアプリケーションに関連する量で分泌され得ることである。
【化1】



【0088】
第1の直接PCRプライマー(ZJW−dir)は、ATG開始コドンから開始する23ヌクレオチドZJWコーディング配列、およびそれより前方のPacI制限部位を含む23ヌクレオチド配列を含有する(配列番号4)。第2の逆方向プライマー(ZJW−rev)は、ZJWコーディング配列の下流の領域の逆方向鎖に相補的なヌクレオチド、およびそれより前方のAscI制限部位を含有する(配列番号5)。これらのプライマーを使用して、本発明者らは、テンプレートとしてペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)株CBS 455.95由来の染色体DNAを伴う1.4kbのサイズのフラグメントを増幅することができた。このようにして得られた1.4kbサイズのフラグメントを単離し、PacIおよびAscIで消化し、そして精製した。ZJWコーディング配列を含んでなるPacI/AscIフラグメントを、pGBFIN−5(国際公開第99/32617号パンフレット)由来のPacI/AscI phyAフラグメントと交換した。得られたプラスミドは、pGBFINZJWと命名したZJW発現ベクターである(図1を参照のこと)。発現ベクターpGBFINZJWを、NotIによる消化によって線状化した(これは、発現ベクターからすべての大腸菌(E.coli)由来の配列を取り出す)。消化したDNAを、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(24:23:1)抽出を使用して精製し、そしてエタノールで沈殿させた。これらのベクターを使用して、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)CBS513.88を形質転換した。アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)形質転換手順ついては、国際公開第98/46772号パンフレットに広範に記載されている。アセトアミドを含有する寒天プレート上で形質転換体を選択し、そして標的化されたマルチコピー組込み体を選択する仕方についても記載されている。好ましくは、複数コピーの発現カセットを含有するA.ニガー(A.niger)形質転換体を、サンプル材料のさらなる作製のために選択する。pGBFINZJW発現ベクターについて、まず、個々の形質転換体を選択倍地上にプレート化し、続いて、単一のコロニーを、PDA(ポテトデキストロース寒天:PDB+1.5%寒天)プレートにプレート化することによって、30個のA.ニガー(A.niger)形質転換体を精製した。1週間、30℃での増殖後、個々の形質転換体の胞子を回収した。胞子を冷蔵庫に貯蔵し、そして液体培地の播種のために使用した。
【0089】
複数コピーの発現カセットを含有するA.ニガー(A.niger)株を、振盪フラスコ培養における株の培養によってサンプル材料の作製に使用した。A.ニガー(A.niger)株の培養および培養ブロスからの菌糸体の分離のための有用な方法についても、国際公開第98/46772号パンフレットに記載されている。培養培地は、CSM−MES(1リットル培地あたり150gマルトース、60gのSoytone(Difco)、15gの(NHSO、1gのNaHPO・HO、1gのMgSO・7HO、1gのL−アルギニン、80mgのTween−80、20gのMES、pH6.2)であった。発酵の4〜8日目に5mlサンプルを採取し、10分間、5000rpm、Hereaus labofuge RF中で遠心分離し、そしてさらなる分析まで、上清を−20℃で貯蔵した。
【0090】
SDS−PAGEで分析する場合、pGBFINZJWベクターを含有する形質転換体は、約50kDaの見かけの分子量のタンパク質を分泌したことが明らかになった。これは、タンパク質配列から推定される分子量よりわずかに大きいため、本発明者らは、シグナル配列の取り出し後、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)シアリダーゼZJWがアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から分泌される場合、いくつかのグリコシル化が生じると推定している。
【0091】
発酵および下流のプロセシングが大規模化される場合、選択された株は、より大量の真菌シアリダーゼの単離および精製のために使用することができる。次いで、この酵素を、さらなる分析、および多様な個々のアプリケーションにおける使用のために使用することができる。
【0092】
[実施例2]
[シアリダーゼZJWの精製および特徴付け]
シアリダーゼを、実施例1に記載のような発酵を介して産生させた。酵素活性を、Amplex Redノイラミニダーゼアッセイキット(Invitrogenから入手した)を使用して、測定した。培養ろ過物(100ml)を、milliQ−水で、4.8mS/cmの導電率に希釈し、そしてBiomax−10膜(Milliporeから入手した)を使用する限外ろ過によって、70mlまで濃縮した。pHを、NaOHを使用して6.0に調整し、そしてサンプルを、5mlのHiTrapQイオン交換カラム(Amershamから入手した、5ml/分)上に充填し、20mMクエン酸ナトリウム(pH6.0)において平衡化した。シアリダーゼを含有するカラムのフロースルーを回収し、そして25mMのTris,HCl(pH7.0)に対して透析し、そして5mlのHiTrap Q FF(5ml/分)上に充填し、同じ緩衝液において平衡化した。シアリダーゼはフロースルー画分に存在し、そして回収した。次いで、酵素溶液を30mMクエン酸ナトリウム(pH4.0、緩衝液A)に対して透析し、そして5mlのHiTrap SPカラム(Amershamから入手した、5ml/分)上に適用し、緩衝液Aにおいて平衡化した。酵素を充填した後、カラムを3カラム容積の緩衝液Aで洗浄し、そして酵素を、直線勾配で20カラム容積の緩衝液Aから緩衝液B(緩衝液B:1MのNaClを含有する30mMナトリウム−クエン酸、pH4.0)により溶出させた。シアリダーゼ含有画分を同定し、そしてプールした。タンパク質濃度を、対照タンパク質としてウシ血清アルブミンを使用するBradford試薬(Sigmaから入手した)によって決定した。タンパク質は、ナトリウム−ドデシルポリアクリルアミドゲル電気泳動上で夾雑するバンドが認められなかったことから、>95%純粋であると判断した。シアリダーゼは、47kDの見かけの分子量まで泳動し、これは、推定されたアミノ酸配列に基づいて算出される42.7kDの分子量より僅かに大きい。酵素調製物は、一連の基質ZAAXpNA(Z=ベンゾイル基、A=アラニン、X=任意のアミノ酸残基、pNA=パラ−パラニトロアニリド)に対してタンパク質分解活性を示さず、エンド−プロテアーゼ活性の不在を示す。
【0093】
[実施例3]
[乳汁および乳清からの遊離シアル酸の放出]
遊離シアル酸は、DMB化合物による標識後、310nmでの励起および蛍光448nmを伴う蛍光検出を使用する逆相HPLCによって分析することができる。この方法は、文献において最近記載され(M.J.マーティン(M.J.Martin)らAnal.Bional.Chem,2007年、387,2943−29−49)、そしてサンプル中の遊離シアル酸含有量の迅速かつ正確な決定を可能にした。
【0094】
[サンプル調製]
乳汁は、NILAC低加熱脱脂乳末(NIZO,蘭国)を使用して再構成した;乳清は、地方のチェダーチーズ(cheddar)製造所から入手した。乳汁および乳清サンプルを、次のとおりに処理した:乳汁および乳清を、個別に、シアリダーゼZJW(0.4U/ml)と共に、室温で(20〜21℃)でインキュベートし、そして水浴中、95℃で5分間、サンプルを加熱することによって、異なる時間で反応を終結させた。一連のいくつかのシアリダーゼZJW濃度およびインキュベーション時間を実施した。HPLC分析に使用するサンプルは、タンパク質を含まないことが必要がある。従って、サンプルを、Nanosep限外ろ過エッペンドルフ(10KD)により、15分間、14000gでの遠心分離を使用して、ろ過した。遠心分離後、遊離タンパク質上清を回収し、そして適切な範囲の濃度でシアル酸を測定するために、milliQ水で100倍希釈した(RP HPLC方法を使用する測定範囲は、シアル酸の5fmol〜5nmolである)。
【0095】
[標識手順]
標識は、希釈した上清の25μLをエッペンドルフチューブに移して、そしてウェルと100μLの反応混合物(DMB:カップリング溶液:milliQ=1:5:4)とを混合することによって、行った。サンプルを、遮光下、サーモミキサ中50℃で、2.5時間、500rpmでの連続混合を伴って、インキュベートした。氷上で冷却することによって、反応を停止した。反応混合物から、10μLを、分析のためにHPLCシステムに注入した。
【0096】
[HPLCシステム]
インジェクター:Waters2690分離モジュール。検出器:Waters474Scanning Fluorocence検出器(Ex:310nm.Em:448nm)。カラム:寸法(L×ID)250×4.6mm、流速:0.9ml/分のTAKARA BIO INC製PALPAK Type R。稼働時間:30分間。溶媒:アセトニトリル/メタノール/milliQ=9/7/84(v/v/v)。注入容積:10μL。カラム温度:40℃。
【0097】
遊離シアル酸レベルは、経時的に増加し、4時間のインジケーティング(indicating)後、約220mg/Lの濃度に到達し;20時間のインキュベーション後、遊離シアル酸のレベルが250mg/mlに到達し、本質的にすべてのシアル酸が放出されたことを示す(参考文献として:タケウチ(Takeuchi)ら、1985年、Agric Biol Chem49,2269−2276)。明らかに、シアリダーゼZJWは、乳汁中のκ−カゼインおよび乳清中GMP−タンパク質から利用可能なすべてのシアル酸を効果的かつ迅速に放出することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− オリゴ糖、
− 0〜1wt%の量のシアリルオリゴ糖、および
− 遊離シアル酸
を含んでなる組成物。
【請求項2】
存在するオリゴ糖の合計量の0.1wt%未満の量でシアリルオリゴ糖を含んでなるか、または好ましくは、実質的にシアリルオリゴ糖を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
存在するオリゴ糖および遊離シアル酸の合計量の0.001wt%超、好ましくは、0.01wt%超、なおより好ましくは、0.1wt%超、および最も好ましくは、1wt%超の量で遊離シアル酸を含んでなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
0.5wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる、より好ましくは、0.1wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる、および最も好ましくは、0.01wt%(乾燥物)未満のフコースを含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
プレバイオティクス組成物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
− 第1の適切な基質を適切な酵素に供して、オリゴ糖を生成させること、および
− 第2の適切な基質をシアリダーゼに供して、遊離シアル酸を生成させること、
を含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物を生成するための方法。
【請求項7】
前記第1および第2の基質は同一である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
− 第1の適切な基質を適切な酵素に供して、オリゴ糖を生成させること、および
− 第2の適切な基質をシアリダーゼに供して、遊離シアル酸を生成させること
が1つのリアクター内で生じる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
− 第1の適切な基質を適切な酵素に供して、オリゴ糖を生成させること、および
− 第2の適切な基質をシアリダーゼに供して、遊離シアル酸を生成させること
が個別に生じ、その後、前記オリゴ糖および遊離シアル酸が組み合わされる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
− 第1の適切な基質を適切な酵素に供して、オリゴ糖を生成させること、および
− 第2の適切な基質をシアリダーゼに供して、遊離シアル酸を生成させること
が1つのリアクター内で続いて生じる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
前記シアリダーゼが固定化される、シアル酸を生成する方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物、または請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法で生成される組成物を含んでなる、飲料、もしくは飼料を含む食品。
【請求項13】
− 請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物または請求項6〜10のいずれか一項に従って生成される組成物;および
− プロバイオティクス
を含んでなる組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−531141(P2010−531141A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512713(P2010−512713)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057948
【国際公開番号】WO2009/000803
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】