説明

新規のポリアリレートおよびその製造方法

本発明は、2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、およびアリルビスフェノール誘導体を共重合させるステップを含む方法によって製造されたポリアリレートに関するものである。本発明に係るポリアリレートは新規のものであり、高分子の末端だけでなく高分子主鎖にも様々な官能基を付与することができ、その濃度もまた調節可能なだけでなく、この官能基によって、コーティング時に基材や保護層との化学的結合による接着力が向上するため、フィルムまたはコーティング組成物に用いるのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリアリレート、およびその製造方法に関するものである。より具体的には、高分子の末端だけでなく高分子主鎖にも様々な官能基を付与することができ、その官能基の濃度もまた調節可能なだけでなく、この官能基によって基材や保護層にコーティング時の接着力が向上し、コーティング組成物またはフィルムに用いるのに適する新規のポリアリレートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアリレートは、代表的にはビスフェノールA、イソフタレート、およびテレフタレートから構成された芳香族ポリエステルである。
【0003】
上記のようなポリアリレートの合成方法は界面重合、溶融重合、溶液重合等があって、導入される単量体の種類、性質、得ようとする分子量の程度により適切な方法を選択することができる。ポリアリレート合成についての従来技術として、米国特許第4,652,608号にはアルキルが置換されたフェノールフタレイン、およびビスフェノールAを重合して製造したポリアリレートに関するものとして、その重合方法が詳細に記載されている。
【0004】
従来知られているポリアリレートフィルムは、光透過度が高く、耐熱性、機械的な性質に非常に優れている。しかし、従来のポリアリレートフィルムは溶融温度と粘度が高く、加工過程で面方向に正の複屈折(positive birefringence)が発生するという問題点がある。
【0005】
これによってポリアリレートを光学フィルムとして用いるために、面方向の複屈折を調節する方法について持続的に研究されてきた。具体的には、高分子鎖に置換基を導入したり、他のポリマーと共重合したりして、ポリアリレートの物理的、機械的な性質を向上させる研究が行われている。
【0006】
例えば、米国特許第5,043,413号、米国特許第4,584,335号、米国特許第4,929,677号および米国特許第4,977,235号には、ビスフェノール単量体のアルキレンの部分を様々な置換体に変換してポリアリレートを合成する方法が記載されており、米国特許第4,853,457号、および米国特許公開番号第2002/45,715号には、他の高分子との合金、またはグラフトポリマー形成によるポリアリレートの物性を改善する方法が記載されている。また、ポリアリレートに第3の単量体を導入して物性を改善した技術として、米国特許第5,023,314号にはトリスフェノールを最高1.5%で混ぜて重合し、高分子量のポリアリレートを製造する方法が記載されている。
【0007】
しかし、前述した従来技術に記載された物性が改善されたポリアリレートは、延伸によって複屈折を付与する場合、複屈折の調節が難しく、延伸時にフィルムの厚さが減少して、所望する位相差を得にくいという問題点があった。また、ポリアリレートをポリカーボネートのような透明基材にコーティングする場合、接着力が良くないという問題点があった。
【0008】
米国特許第6,100,367号、および米国特許第6,174,966号にはポリカーボネート、あるいはポリアリレート合成時に、アルコキシシリル基(alkoxysilyl)を導入できる単量体を少量用いることによって、他の基材との接着力を増加させる方法が記載されている。また、米国特許第5,258,483号にはアルコキシシリル基の代わりにエポキシ基が導入されたポリアリレートについて記載されている。しかし、前記エポキシ基はポリアリレートの末端に導入され、その濃度が数十ppm程度に達するという問題点があった。
【特許文献1】米国特許第4,652、608号
【特許文献2】米国特許第5,043,413号
【特許文献3】米国特許第4,584,335号
【特許文献4】米国特許第4,929,677号
【特許文献5】米国特許第4,977,235号
【特許文献6】米国特許第4,853,457号
【特許文献7】米国特許公開番号第2002/45,715号
【特許文献8】米国特許第5,023,314号
【特許文献9】米国特許第6,100,367号
【特許文献10】米国特許第6,174,966号
【特許文献11】米国特許第5,258,483号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は高分子の末端だけでなく高分子主鎖にも様々な官能基を付与することができ、その濃度もまた調節可能なだけでなく、前記高分子主鎖に導入された官能基によって、基材や保護層へのコーティング時に、化学的結合によって接着力を向上させることができる新規のポリアリレート、およびその製造方法を提供することをその目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、前記新規のポリアリレートを含むコーティング組成物、およびそれらから形成されたフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は下記化学式1で示されるポリアリレートであって、前記ポリアリレートは2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、および下記化学式2のアリルビスフェノール誘導体を共重合させるステップを含む方法によって製造されたポリアリレートを提供する:
【0012】
【化1】

【0013】
前記化学式1において、
〜Rは各々水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数7〜12のアリールアルキル、炭素数6〜12のアリール、ニトリル、炭素数2〜12のアルキレンニトリル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアシル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、炭素数8〜12のアリールアルケニルまたはハロゲンであるか、これらの中から選択される置換基のアルケニルにエポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち1以上の官能基が導入されたものであるが、R〜Rのうち少なくとも1つまたはR〜Rのうち少なくとも1つは、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、または炭素数8〜12のアリールアルケニルであるか、これらの中から選択される置換基のアルケニルにエポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち1以上の官能基が導入されるものであって、
WおよびW’は各々直接結合されるか、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、炭素数1〜30のアルキリデン、炭素数2〜30のアルキレン、炭素数3〜30のシクロアルキリデン、炭素数3〜30のシクロアルキレン、またはフェニルが置換された炭素数2〜30のアルキレンであり、
−OOCYCOO−および−OOCY’COO−は、各々芳香族基に炭素数1−8のアルキル、アリール、アルキルアリールおよびハロゲンからなる群から選択される置換基が置換され得る、テレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸またはナフタレンジカルボン酸である。
【0014】
【化2】

【0015】
〜R12は各々水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数7〜12のアリールアルキル、炭素数6〜12のアリール、ニトリル、炭素数2〜12のアルキレンニトリル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアシル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、炭素数8〜12のアリールアルケニル、またはハロゲンであるが、R〜R12のうち少なくとも1つは炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、または炭素数8〜12のアリールアルケニルであり、
Wは直接結合されるか、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、炭素数1〜30のアルキリデン、炭素数2〜30のアルキレン、炭素数3〜30のシクロアルキリデン、炭素数3〜30のシクロアルキレン、またはフェニルが置換された炭素数2〜30のアルキレンである。
【0016】
また本発明は、
a)2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、および前記化学式2のアリルビスフェノール誘導体を共重合させるステップと、
必要な場合、b)前記a)ステップで製造された共重合体にエポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち、1以上の官能基を導入するステップとを含むことを特徴とする、ポリアリレートの製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は前述した本発明に係るポリアリレートを含むコーティング組成物、およびこれによって形成されたフィルムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明のポリアリレートは、2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、および前記化学式2のアリルビスフェノール誘導体を共重合させるステップを含む方法によって製造されることを特徴とする。
【0020】
前記共重合ステップによって製造されたポリアリレートは、前記化学式2のアリルビスフェノール誘導体のアリル基によって、高分子主鎖に少なくとも1つの二重結合を含むようになる。例えば、前記化学式1の中でR〜Rのうち少なくとも1つ、またはR〜Rのうち少なくとも1つにアリル基を含むようになる。したがって、上記のようなポリアリレートは高分子主鎖に含まれている二重結合によって、高分子主鎖に多様な官能基が導入され得る。
【0021】
また、本発明ではポリアリレートの製造時に前記化学式2のアリルビスフェノール誘導体の使用量を調節したり、適切な数のアリル基を含むアリルビスフェノール誘導体を用いたりすることによって、本発明のポリアリレート主鎖中の二重結合、または官能基の濃度を調節することができる。また、前述した本発明に係るポリアリレートは、2価フェノールに対するアリルビスフェノール誘導体の含量によって他のポリアリレートと重合した後、官能基を導入することができる。
【0022】
上記のように高分子主鎖に二重結合を含む本発明に係るポリアリレートに導入できる官能基としては、エポキシド基、アルコキシ基、水酸基またはアミン基などがある。例えば、官能基が導入された本発明に係るポリアリレートとしては、二重結合がエポキシドで置換されたポリアリレート、二重結合がアルコキシとヒドロキシとで置換されたポリアリレート、二重結合がジヒドロキシで置換されたポリアリレート、二重結合がアルコキシとアミンとで置換されたポリアリレートなどがある。本発明に係るポリアリレートには、接着力を向上させるためにエポキシ基、または水酸基が導入されるのがより好ましい。
【0023】
上記のように本発明に係るポリアリレートに官能基を導入する方法では、例えばエポキシ化剤を用いて、アリル基をエポキシド基に置換する方法、エポキシ化されたポリアリレートにアルコールを添加して、アリル基をアルコキシ基と水酸基とに置換する方法、エポキシ化されたポリアリレートに水を添加して、アリル基をジヒドロキシ基に置換する方法などがある。
【0024】
本発明に係るポリアリレートの具体的な例としては、下記化学式3〜6から選択される単位体を含むものがあるが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
本発明において、ポリアリレートの製造に使用できる2価フェノール、およびアリルビスフェノール誘導体をはじめとする芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えばビス(4−ヒドロキシアリール)アルカンとして、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4−ジヒドロキシフェニル−1,1−m−ジイソプロピルベンゼン、4,4−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BHPF)、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BDMPF)、または9,9−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BFBPF)等があり;アルケニルが含まれている芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−(2−プロペニル)フェノール)等があって、これらは1種以上混合して使うことができる。また、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンを挙げられるが、例えば1,1−ビス(4,4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4,4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4−{1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル}フェノール、4,4−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキシリジル]ビスフェノール、または2,2,2,2−テトラヒドロ−3,3,3,3−テトラメチル−1,1−スピロビス−[1H]−インデン−6,6−ジオール等があって、これらは1種以上混合して用いることもできる。また、ジヒドロキシジアリールエーテルとして、例えばビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、または4,4−ジヒ
ドロキシ−3,3−ジメチルフェニルエーテル等があり、ジヒドロキシジアリールサルフェートとして、例えば4,4−ジヒドロキシジフェニルサルフェート、または4,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルサルフェートなどがあり、ジヒドロキシジアリールスルホキシドとして、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、または4,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルスルホキシドなどがあり、ジヒドロキシジアリールスルホンとして、例えば、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホンまたは4,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルジフェニルスルホンなどを挙げることができ、これらは単独で用いることもできるが、2種以上混合して用いることもできる。
【0030】
本発明において、ポリアリレートの製造に用いることができる2価の芳香族カルボン酸ハライドとしては、その種類は特に限定されないが、本発明においては、テレフタル酸ハライド、イソフタル酸ハライド、ジ安息香酸ハライド、ナフタレンジカルボン酸ハライド、またはこれら化合物中の芳香族基にC−Cアルキル、アリール、アリールアルキル、またはハロゲン基が置換された芳香族ジカルボン酸ハライドを用いることができ、これらは単独で用いるか、2種以上を混合して用いることができる。本発明ではイソフタル酸ハライド、またはテレフタル酸ハライドを単独または混合して用いることがより好ましい。
【0031】
本発明において、前記2価フェノールとアリルビスフェノール誘導体を含むジヒドロキシモノマーと2価の芳香族カルボン酸ハライドは、1:1のモル比で用いられることが好ましい。また、前記アリルビスフェノール誘導体は2価フェノール対比0.1mol%〜99.9mol%を用いることが好ましい。また、本発明のポリアリレートのうち、アリルビスフェノール誘導体は0.01〜49.9モル%で含まれることが好ましい。本発明に係るポリアリレートは10,000g/mol以上の分子量を有することが好ましい。
【0032】
上記のような成分以外に、本発明に係るポリアリレート製造時には、ポリアリレートによって製造されるフィルムの表面特性や接着力を向上させるために当技術分野で知られている添加剤をさらに用いることができる。
【0033】
本発明において、上記のような成分を共重合させる方法としては、特別な方法に限定されず、当技術分野で知られている方法を用いることができ、具体的な方法は後述する実施例において例示する。
【0034】
上記のように製造されたポリアリレートが固体、粉末、または溶液等の剤形で製造されるが、この用途、例えばコーティング組成物として用いる場合に適用されるコーティング方法により、いかなる形態にも製造され得る。
【0035】
本発明は、また上記のような化学式1で示される単位体を含むポリアリレートを含むコーティング組成物、または前記ポリアリレートから形成されたフィルムを提供する。本発明に係る前記コーティング組成物、またはフィルムは光学フィルムを製造するために、または光学フィルムに適用される。
【0036】
本発明に係るコーティング組成物は、例えば前述した本発明に係るポリアリレートに溶媒を添加して、溶液状態で製造され得る。また、本発明に係るフィルムは、例えば前記コーティング組成物を常温で基材、例えばガラス板、またはポリカーボネートフィルム上にコーティングして溶媒を段階的に揮発させることによって製造され得る。前記コーティング方法は特に限定されず、当技術分野で知られている方法を用いることができ、例えばバーコーティング等を用いることができる。本発明に係るフィルムの厚さは1〜100μmであることが好ましい。
【0037】
この時、前記溶媒としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジオキソラン(dioxalane)、テトラヒドロフラン等を用いることができる。上記のような溶媒を含むコーティング組成物は、5〜25重量%濃度の溶液であることが好ましい。
【0038】
上記のような本発明に係るポリアリレートは、高分子主鎖に導入された二重結合、または官能基によって、基材や保護層にコーティング時に、化学的結合によって接着力に優れているだけでなく、従来の光学フィルムとは異なり延伸工程なしで、ポリアリレートそのものだけでも光学フィルム、または光学フィルム製造用コーティング組成物として用いることができる。
【0039】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
以下の実施例において用いた試薬と溶媒はアルドリッチ(Aldrich)社とメルク(Merck)社で購入し、標準方法で精製して用いた。ポリアリレート合成法は、溶液重合も可能であるが、適宜な分子量のポリアリレートを得るために界面重合を実施した。合成されたポリアリレートの構造を立証するために400MHz核磁気共鳴器(NMR)を用いてスペクトルを得て、GPC(Viscotek、TriSEC Model 302)およびDSC(TA Instrument)を用いて分子量、およびガラス転移温度(Tg)を測定した。
【0041】
[実施例1]ジヒドロキシビスフェノールモノマーのうち、アリルビスフェノール誘導体が3mol%であるポリアリレートの合成
攪拌器が取付けられた反応器に2価フェノールとして2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン37.0g、アリルビスフェノール誘導体として2,2−ビス(3−(2−プロペニル)−4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.8g、NaOH14.9g、および蒸溜水357gを混合した後、攪拌して溶かした。以後、反応器の温度を20℃に維持しながら、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド0.6gを塩化メチレン35.7gに溶かした溶液を添加した後に強く攪拌した。その次に分子量調節剤として4−t−ブチルフェノール1.5gとNaOH0.4gを10gの水に溶かした溶液とを入れて、混合水溶液を製造した。
【0042】
これとは別に、イソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドとが同一モル数で混合された34gの芳香族カルボン酸混合物を、塩化メチレン452gに溶かした。この溶液を予め製造した前記混合水溶液に添加した。1時間、速度500rpmで攪拌して重合した後に、安息香酸0.9gを9.4gの塩化メチレンに溶かして添加し、10分間さらに攪拌した。その後に酢酸15mLを付加して反応を終結し、その後1倍体積の塩化メチレンと、2倍体積の蒸溜水とを添加して、何回も洗浄した。余液の伝導度が20μs/cm以下になるまで繰り返し洗浄し、この溶液をメタノールに添加して、ポリマーを沈殿させた。
【0043】
合成されたポリアリレートのうち、ジヒドロキシビスフェノールモノマーの組成は2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)が97mol%で、アリルビスフェノール誘導体は3mol%であった。合成されたポリアリレートのガラス転移温度は190℃であり、質量平均分子量は46,500g/molであった。(表1の5)
【0044】
[実施例2]ジヒドロキシビスフェノールモノマーのうち、アリルビスフェノール誘導体が5mol%であるポリアリレートの合成
重合時、攪拌速度を700rpmにしたことを除いては、前記実施例1と同一の方法でポリアリレートを合成した。合成されたポリアリレートのジヒドロキシビスフェノールモノマーの組成は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)が95mol%であり、アリルビスフェノール誘導体は5mol%であった。合成されたポリアリレートのガラス転移温度は194℃であり、質量平均分子量は104,000g/molであった。合成されたポリアリレートのNMRスペクトルを図1に示した。(表1の11)
【0045】
[実施例3]ジヒドロキシビスフェノールモノマーのうち、アリルビスフェノール誘導体が5mol%であり、エポキシド基が導入されたポリアリレートの合成
実施例2のような方法で製造されたポリアリレートに、エポキシ化剤としてm−CPBA(meta chloro perbenzoic acid)を添加して、塩化メチレン中で一日攪拌して、ポリアリレートにエポキシド基を導入した。具体的には、実施例2のような方法で製造されたポリアリレート7.5gにメタクロロ過安息香酸(m−CPBA)を1.2g混ぜて、空気を除去した。ここに無水塩化メチレンを300mL加えた後、24時間室温で攪拌した。NMRとしてエポキシド基が導入されたのを確認し、塩化メチレンを加えて適当量薄めた後、メタノールで沈殿させ、メタノールで洗浄した後、乾かした。合成されたポリアリレートのガラス転移温度は200℃であり、質量平均分子量は96,000g/molであった。合成されたポリアリレートのNMRスペクトルを図2に示した。(表1の13b)
【0046】
[実施例4]ジヒドロキシビスフェノールモノマーのうち、アリルビスフェノール誘導体が5mol%であり、メトキシ−水酸基が導入されたポリアリレートの合成
実施例3のような方法で製造されたエポキシド基が導入されたポリアリレートに、酸触媒(硫酸1%)下で無水メタノールを入れて、メトキシ−水酸基を導入した。
【0047】
具体的には、10gのエポキシド基が導入されたポリアリレートを無水THF200mLに溶かした後、硫酸0.5mLと無水メタノールを3mL入れ、室温で2時間攪拌した。NMRで反応が完了したことを確認した。ここに適当量のTHFを入れて薄めた後、メタノールで沈殿させた。ここで得られるポリアリレートは、メトキシとアルコール官能基を有する。合成されたポリアリレートのガラス転移温度は198℃であり、質量平均分子量は115000g/molであった。合成されたポリアリレートのNMRスペクトルを図3に示した。(表1の12a)
【0048】
[実施例5]ジヒドロキシビスフェノールモノマーのうち、アリルビスフェノール誘導体が5mol%であり、ジヒドロキシ基が導入されたポリアリレートの合成
実施例3で得たエポキシ基が導入されたポリアリレート10gを、無水THF200mLに溶かした後、硫酸0.5mLと水3mLを入れて室温で1時間攪拌して酸加水分解させ、ジオールを官能基として有するポリアリレートを得た。合成されたポリアリレートのガラス転移温度は194℃であり、質量平均分子量は94900g/molであった。合成されたポリアリレートのNMRスペクトルを図4に示した。(表1の17c)
【0049】
さらに、前記実施例1〜5のような方法で、2価フェノール、芳香族ジカルボン酸ハライド、およびアリルビスフェノール誘導体の組成を異にしてポリアリレートを製造し、製造されたポリアリレートの組成および物理的性質を下記表1に示した。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るポリアリレートは、2価フェノールおよび芳香族ジカルボン酸以外に、第3のモノマーであるアリルビスフェノール誘導体を共重合させて製造された新規のポリアリレートであって、前記アリルビスフェノール誘導体によって、高分子の末端だけでなく高分子主鎖にも様々な官能基を付与することができ、その濃度もまた調節可能である。また、前記高分子主鎖に導入された二重結合、または官能基によって、基材や保護層へのコーティング時に、化学的結合によって接着力を向上させることができる。したがって、本発明に係るポリアリレートはコーティング組成物またはフィルムの成分として用いられるのに役に立つ。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例により製造したポリアリレートのNMRスペクトルを示す図である。
【図2】本発明の一実施例により製造したエポキシド基が導入されたポリアリレートのNMRスペクトルを示す図である。
【図3】本発明の一実施例により製造した水酸基が導入されたポリアリレートのNMRスペクトルを示す図である。
【図4】本発明の一実施例により製造したジヒドロキシ基が導入されたポリアリレートのNMRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1:
【化1】

[前記化学式1において、
〜Rは各々水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数7〜12のアリールアルキル、炭素数6〜12のアリール、ニトリル、炭素数2〜12のアルキレンニトリル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアシル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、炭素数8〜12のアリールアルケニルまたはハロゲンであるか、これらの中から選択される置換基のアルケニルにエポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち、1以上の官能基が導入されたものであるが、R〜Rのうち少なくとも1つまたはR〜Rのうち少なくとも1つは、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、または炭素数8〜12のアリールアルケニルであるか、これらの中から選択される置換基のアルケニルにエポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち、1以上の官能基が導入されたものであり、
WおよびW’は各々直接結合されるか、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、炭素数1〜30のアルキリデン、炭素数2〜30のアルキレン、炭素数3〜30のシクロアルキリデン、炭素数3〜30のシクロアルキレン、またはフェニルが置換された炭素数2〜30のアルキレンであり、
−OOCYCOO−および−OOCY’COO−は各々芳香族基に炭素数1−8のアルキル、アリール、アルキルアリール、およびハロゲンからなる群から選択される置換基が置換され得る、テレフタル酸、イソフタル酸、ジ安息香酸またはナフタレンジカルボン酸である]
で示されるポリアリレートであって、前記ポリアリレートは2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、および下記化学式2:
【化2】

[R〜R12は各々水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数7〜12のアリールアルキル、炭素数6〜12のアリール、ニトリル、炭素数2〜12のアルキレンニトリル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアシル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、炭素数8〜12のアリールアルケニルまたはハロゲンであるが、R〜R12のうち少なくとも1つは炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、または炭素数8〜12のアリールアルケニルであり、
Wは直接結合されるか、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、炭素数1〜30のアルキリデン、炭素数2〜30のアルキレン、炭素数3〜30のシクロアルキリデン、炭素数3〜30のシクロアルキレン、またはフェニルが置換された炭素数2〜30のアルキレンである]
のアリルビスフェノール誘導体0.01〜49.9モル%を共重合させるステップを含む方法によって製造されたポリアリレート。
【請求項2】
前記ポリアリレートが下記化学式3:
【化3】

で示される単位体を含む、請求項1に記載のポリアリレート。
【請求項3】
前記ポリアリレートが下記化学式4:
【化4】

で示される単位体を含む、請求項1に記載のポリアリレート。
【請求項4】
前記ポリアリレートが下記化学式5:
【化5】

で示される単位体を含む、請求項1に記載のポリアリレート。
【請求項5】
前記ポリアリレートが下記化学式6:
【化6】

で示される単位体を含む、請求項1に記載のポリアリレート。
【請求項6】
2価フェノール、2価の芳香族カルボン酸ハライド、および下記式:
【化7】

[R〜R12は各々水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数7〜12のアリールアルキル、炭素数6〜12のアリール、ニトリル、炭素数2〜12のアルキレンニトリル、炭素数1〜12のアルコキシ、炭素数1〜12のアシル、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、炭素数8〜12のアリールアルケニル、またはハロゲンであるが、R〜R12のうち少なくとも1つは、炭素数2〜12のアルケニル、炭素数3〜12のアルキルアルケニル、または炭素数8〜12のアリールアルケニルであり、
Wは直接結合されるか、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、炭素数1〜30のアルキリデン、炭素数2〜30のアルキレン、炭素数3〜30のシクロアルキリデン、炭素数3〜30のシクロアルキレン、またはフェニルが置換された炭素数2〜30のアルキレンである]
のアリルビスフェノール誘導体を共重合させるステップを含むことを特徴とする、請求項1のポリアリレートの製造方法。
【請求項7】
前記共重合ステップによって製造された共重合体に、エポキシド基、アルコキシ基、水酸基およびアミン基のうち、1以上の官能基を導入するステップをさらに含む、請求項6に記載のポリアリレートの製造方法。
【請求項8】
10,000g/mol以上の分子量を有する、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のポリアリレートを含むコーティング組成物。
【請求項9】
10,000g/mol以上の分子量を有する、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載のポリアリレートで形成されたフィルム。
【請求項10】
前記フィルムは光学フィルムである、請求項9に記載のフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−503223(P2009−503223A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524912(P2008−524912)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003630
【国際公開番号】WO2007/032637
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】