説明

新規の効力のあるタキサンを含む細胞毒性物質、および、それらの治療用途

【課題】選択された細胞集団において細胞死を誘導するための、新規の細胞毒性物質を提供する。
【解決手段】タキサン2’(3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−7−(メチルジスルファニル−プロパノイル)−ドセタキセル)などの、7位に結合基を有する新規のタキサン類を含む細胞毒性物質。選択された細胞集団を標的とすることが可能な細胞結合性物質(抗体、またはそれらのフラグメント(特にモノクローナル抗体)、リンフォカイン、ホルモン、成長因子,ビタミン、栄養輸送分子(例えばトランスフェリン)など)に、7位の結合を介して、タキサンを化学的に結合させることによって、タキサンを選択された細胞集団に標的化様式で送達するため、これら新規の細胞毒性物質は選択的な治療用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2002年8月2日付で出願された米国出願第10/210,112号の一部継続出願であり、この参照により開示に含まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、新規の細胞毒性物質およびそれらの治療用途に関する。より特定には、本発明は、新規のタキサン、新規のタキサンを含む新規の細胞毒性物質、および、それらの治療用途に関する。選択された細胞集団を標的とすることが可能な細胞結合性物質にタキサンを化学的に結合させることによって、タキサンを選択された細胞集団に標的化様式で送達するため、これら新規の細胞毒性物質は治療用途を有する。
【0003】
発明の背景
細胞毒性物質の特異性は、細胞毒性物質を細胞結合性物質に結合させることによる標的化送達で大いに改善することができる。
【0004】
多くの報告に、モノクローナル抗体−薬物結合体を用いた計画された腫瘍細胞の特異的標的化が記載されている(Sela等の、Immunoconjugates 189〜216(C.Vogel編集,1987年);Ghose等の、Targeted Drugs 1〜22(E.Goldberg編集,1983);Diener等の、Antibody mediated delivery systems 1〜23(J.Rodwell編集,1988年);Pietersz等の、Antibody mediated deliver systems 25〜53(J.Rodwell編集,1988年);Bumol等の、Antibody mediated delivery
systems 55〜79(J.Rodwell編集,1988年))。本発明において引用される全ての参考文献および特許はこの参照により開示に含まれる。
【0005】
細胞毒性薬物、例えばメトトレキセート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、および、クロラムブシルを、多種多様なマウスのモノクローナル抗体に結合させている。いくつかの場合において、薬物分子は、血清アルブミンのような仲介的なキャリアー分子を介して抗体分子に結合させている(Garnett等,Cancer Res.46:−2412(1986年);Ohkawa等,Cancer Immunol.Immunother.23:86(1986年);Endo等,Cancer Res.47:1076〜1080(1980年))、デキストラン(Hurwitz等,Appl.Biochem.2:25〜35(1980年);Manabi等,Biochem.Pharmacol.34:289〜291(1985年);Dillman等,Cancer Res.46:4886〜4891(1986年);Shoval等,Proc.Nail.Acad.Sci.85:8276〜8280(1988年))、または、ポリグルタミン酸(Tsukada等,J.Natl.Canc.Inst.73:721〜729(1984年);Kato等,J.Med.Chem.27:1602〜1607(1984年);Tsukada等,Br.J.Cancer 52:111〜116(1985年))。
【0006】
このような免疫結合体の製造には多様なリンカー技術が用いられており、切断可能および切断不可能なリンカーの両方が研究されている。しかしながら、ほとんどの場合、標的部位が修飾されていない形態で薬物分子が結合体から放出され得る場合しか、十分な薬物の細胞毒性ポテンシャルが観察されていない。
【0007】
抗体−薬物結合体の製造に用いられている切断可能なリンカーの一種は、シス−アコニット酸に基づく酸不安定性のリンカーであり、これは、受容体を介したエンドサイトーシスの際に遭遇するエンドソームやリソソームのような、様々な細胞内区画の酸性環境をうまく利用したものである。ShenおよびRyserは、この方法を、ダウノルビシンと高分子キャリアーとの結合体の製造に導入している(Biochem.Biophys.Res.Commun.102:1048〜1054(1981年))。YangおよびReisfeldは、同じ技術を、ダウノルビシンと抗−黒色腫抗体とを結合するのに用いている(J.Natl.Canc.Inst.80:1154〜1159(1988年))。Dillman等はまた、酸不安定性のリンカーを、類似の様式で、ダウノルビシンと抗−T細胞抗体との結合体を製造するのに用いている(Cancer Res.48:6097〜6102(1988年))。
【0008】
ペプチドスペーサーアームを介したダウノルビシンと抗体との結合に関する代替アプローチが、Trouet等により研究されている(Proc.Natl.Acad.Sci.79:626〜629(1982年))。これは、遊離の薬物が、このような結合体から、リソソームペプチダーゼの作用によ放出され得るという前提下でなされている。しかしながら、インビトロでの細胞毒性試験によれば、抗体−薬物結合体は、遊離の結合していない薬物と同じ細胞毒性効力をまれにしか達成しないことを明らかにしている。これは、薬物分子が抗体から放出されるメカニズムは極めて非効率的であることを示唆している。
【0009】
免疫毒素の分野において、モノクローナル抗体と触媒活性タンパク質毒素とのジスルフィド架橋により形成された結合体が、その他のリンカーを含む結合体より高い細胞毒性を有することが示されている。Lambert等,J.Biol.Chem.260:12035〜12041(1985年);Lambert等の、Immunotoxins 175〜209(A.Frankel編集,1988年);Ghetie等,Cancer Res.48:2610〜2617(1988年)を参照。これは、抗体分子と毒素との間のジスルフィド結合の効率的な切断に役立つグルタチオンの細胞内濃度が高いためである。それにもかかわらず、薬物と高分子との結合の製造にジスルフィド架橋を使用した例はほんのわずかしか報告されていない。Shen等,J.Biol.Chem.260:10905〜10908(1985年)では、メトトレキセートのメルカプトエチルアミド誘導体への変換、それに続く、ジスルフィド結合を介したポリ−D−リシンとの結合が説明されている。その他の報告では、トリスルフィド含有毒性薬物カリケアマイシンと抗体との結合体の製造が説明されている(Hinman等,Cancer Res.53:3336〜3342(1993年))。
【0010】
ジスルフィド結合した抗体−薬物結合体が不足している一つの理由は、ジスルフィド架橋を介して薬物を抗体に結合させるのに容易に使用可能な硫黄原子含有成分を有する細胞毒性薬物が入手できないことである。その上、それらの細胞毒性ポテンシャルを減少させなければ、現存の薬物の化学修飾は困難である。
【0011】
現存の抗体−薬物結合体が有するその他の主要な欠点は、それらが十分な濃度の薬物を標的部位に送達できないことであり、これは、標的抗原の数が限られており、メトトレキセート、ダウノルビシン、および、ビンクリスチンのような抗ガン性薬物の細胞毒性は比較的穏かであることによる。顕著な細胞毒性を達成するためには、抗体への直接的な、または、ポリマーキャリアー分子を介した多数の薬物分子の結合が必要となる。しかしながら、このような大いに修飾された抗体はしばしば、標的抗原への結合の障害、および、インビボでの血流からの速いクリアランスを示す。
【0012】
上述の難点にもかかわらず、細胞結合成分を含む有用な細胞毒性物質、および、メイタンシノイドとして知られる細胞毒性薬物群が報告されている(米国特許第5,208,020号、米国特許第5,416,064号、および、R.V.J.Chari,Advanced Drug Deliver Reviews 31:89〜104(1998年))。同様に、細胞結合成分を含む有用な細胞毒性物質、ならびに、効能のある抗腫瘍抗生物質CC−1065の類似体および誘導体も報告されている(米国特許第5,475,092号、および、米国特許第5,585,499号)。
【0013】
また、ジスルフィド結合のような切断可能な結合を用いた高度に細胞毒性の薬物の抗体への結合により、十分な活性を有する薬物を細胞内で放出することを確実にし、このような結合体は、抗原特異的な方法で細胞毒性であることも示されている(R.V.J.Chari等,Cancer Res.52:127〜131(1992年);米国特許第5,475,092号;および、米国特許第5,416,064号)。
【0014】
タキサンは、細胞毒性天然産物のパクリタキセル(タキソールを含む)、および、半合成誘導体のドセタキセル(タキソテール)化合物ファミリーであり(図1および4を参照)、この2種の化合物は、ガン治療に広く用いられている(E.Baloglu、および、D.G.I.Kingston,J.Nat.Prod.62:1448〜1472(1999年))。タキサンは、チューブリンの脱重合を阻害し、細胞死を引き起こす紡錘体毒である。ドセタキセルおよびパクリタキセルはガン治療に有用な物質であるが、これらは正常な細胞に対して非特異的な毒性を有するため、その抗腫瘍活性は限定されている。さらに、パクリタキセルおよびドセタキセル様化合物は、それ自体、細胞結合性物質の結合体で用いるには効力が十分ではない。
【0015】
近年、ドセタキセルまたはパクリタキセルのいずれかより大きい効力を有する新規のドセタキセル類似体がいくつか説明されている(I.Ojima等,J.Med.Chem.,39:3889〜3896(1996年))。しかしながら、これら化合物は、切断可能な結合を介した細胞結合性物質への結合を可能にする適切な官能性がない(図1)。
【0016】
近年、高い細胞毒性を維持し、効果的に細胞結合性物質に結合させることが可能な新規のタキサンの合成が説明されている(米国特許第6,340,701号、米国特許第6,372,738号、および、米国特許第6,436,931号、ならびに、図2および4)。これらの開示において、タキサンは、化学成分で修飾されており、特に、適切な細胞結合性物質が結合可能なチオールまたはジスルフィド基を含む。その結果として、これら新規のタキサンは、既知のタキサンの細胞毒性効力を保持し、場合によっては高めることもある。
【0017】
上述の特許で説明されたタキサンにおいて、その結合基は、タキサンのC−10、C−7またはC−2’位に導入された。
結合基がC−7にある場合、C−10位は、遊離のヒドロキシル置換基ではなく、むしろエステル、エーテルまたはカルバメート置換基を有する。C−10にエステルまたはカルバメート置換基が存在すると、高い効力のタキソイドが生産されることがこれまでに示されている(I.Ojima等,J.Med Chem.,39:3889〜3896(1996年))。しかしながら、C−10に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有するタキサンの効力に関する研究はなされていない。
【0018】
本明細書中で説明するように、C−10に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有するタキサンの効力は、C−10にエステル、エーテルまたはカルバメート置換基、C−7に結合基を有するタキサンの効力と同等またはそれ以上であることがわかった。従って、第一の態様において、本発明は、このようなC−10に遊離のヒドロキシル基、C−7
に結合基を有し、効力のある細胞毒性活性を有する新規のタキサンを提供する。
【0019】
さらに、上述の特許で説明されたタキサンにおいて、その結合基は、タキサンのC−10、C−7またはC−2’位に導入されている。全てのタキサンにおいて、C−3’NおよびC−3’の置換基はそれぞれ、−NHCORおよびRと名付けられている。その上、C−3’Nの置換基である−NHCORは、ベンズアミド基(R=フェニル)(パクリタキセルに相当する)、または、tert−ブチルオキシカルボニルアミノ成分(−NH−t−BOC,R=t−ブトキシ)(ドセタキセルに類似)のいずれかである。公開データに基づいて、これら置換基を改変することにより、効力の損失が起こることが推測される。C−3’(R)の置換基は、アリール、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル基のいずれかである。公開データに基づいて、C−3’NおよびC−3’の置換基は、薬物活性を損なうことなく改変が可能であり、結合基は、常にタキサンの異なる位置、すなわちC−7、C−10またはC−2’に導入されることが考えられる。また、C−3’またはC−3’Nの置換基を変化できないことは、合成可能なジスルフィド含有タキサンの多様性を大いに限定する。
【0020】
第二の態様において、本発明はまた、C−3’およびC−3’Nの置換基はいずれも、既知のタキサンに存在する置換基に制限されることはない、という予想外の知見に基づいている。本明細書中で説明するように、多種多様な異なる置換基をC−3’Nに有するタキサンの効力は、この位置にベンズアミドまたは−NH−t−BOC置換基を有するタキサンの効力と同等またはそれ以上である。C−3’またはC−3’Nにおける新規の置換基はまた、細胞結合性物質への結合を可能にする結合基も含み得る。本発明は、これら新規の、高い効能を有する、C−3’およびC−3’Nに多種多様な異なる置換基を有するタキサンを開示する。ここで、前記結合基は、5つの位置:C−3’、C−3’N、C−10、C−7、または、C−2’のいずれか一つに取り込ませることができる。
【0021】
本発明の概要
本発明の一実施態様において、高い細胞毒性を有し、依然として多くの病気の治療に効果的に用いることができる新規のタキサンが開示される。
【0022】
本発明の第二の実施態様において、C−10位に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有し、それでも依然として高い効力を維持する新規のタキサンが開示される。
本発明の第三の実施態様において、C−3’NまたはC−3’に多種多様な異なる置換基、C−7、C−10、C−2’またはC−3’NもしくはC−3’に結合基を有し、それでも依然として高い効力を維持する新規のタキサンが開示される。
【0023】
本発明の第四の実施態様において、結合基を介して細胞結合性物質に共有結合した1以上の新規のタキサンを含む細胞毒性物質が開示される。
本発明の第五の実施態様において:
(a)細胞結合性物質に結合した治療上有効な量の1以上の新規のタキサン、および、
(b)製薬上許容できるキャリアー、希釈剤、または、賦形剤、
を含む治療用組成物が開示される。
【0024】
本発明の第六の実施態様において、標的細胞または標的細胞を含む組織と、細胞結合性物質に結合した1以上の新規のタキサンを含む細胞毒性物質の有効量とを接触させることを含む、選択された細胞集団において細胞死を誘導する方法が開示される。
【0025】
図面の簡単な説明
図1は、様々なタキサンの構造を示す化学式であり、上記のOjima等により説明されたより効能のあるタキサンのうちいくつかを示す。
【0026】
図2は、本発明に係る、C−10位に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有するジスルフィド含有タキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
図3は、3種のタキサンの構造を示す。タキサン1は、C−10にエステル基、C−7に結合基を有する。タキサン2’およびタキサン3’はいずれも、C−10に遊離のヒドロキシ基、C−7に結合基を有する。
【0027】
図4は、様々なタキサンの構造を示す化学式であり、米国特許第6,340,701号、米国特許第6,372,738号、および、米国特許第6,436,931号で説明されたより効力のあるタキサンのいくつかを示す。
【0028】
図5は、以前に説明されていない、Rおよび/またはRに置換基を有する本発明に係る新規のタキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
図6は、以前に説明されていない、Rおよび/またはRに置換基を有する本発明に係る新規のジスルフィド含有タキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
【0029】
図7は、タキサンを製造するための出発原料である10-デアセチルバッカチンIII
の構造を示す。
図8は、タキサン2’製造における合成工程を示す。
【0030】
図9は、タキサン3’製造における合成工程を示す。
図10は、タキサン1および2’のA431細胞に対するインビトロでの効力の比較を示す。
【0031】
図11は、A549およびMCF−7細胞に対するタキサン3’のインビトロでの細胞毒性を示す。
図12は、SCIDマウスにおける、抗−EGF受容体と抗体−タキサンとの結合体の、ヒト扁平上皮ガン(A431)異種移植片に対する抗腫瘍作用を示す。
【0032】
図13は、実施例8で説明される実験で用いられたSCIDマウスの体重変化を示す。
図14は、標的抗原陽性細胞系A431に対する抗EGF受容体−タキサン結合体の細胞毒性決定の結果と、標的抗原を発現しないA431細胞系に対するN901−タキサン結合体の細胞毒性決定の結果を示す。
【0033】
図15は、標的抗原陽性細胞系SK−BR−3、および、非標的抗原陰性細胞系A431における、TA1−タキサン結合体の細胞毒性効力と選択性を示す。
図16a、16bおよび16cは、本発明の第二の態様に係る新規のタキサンの製造における合成工程を示す。
【0034】
図17aおよび17bは、本発明の第二の態様に係る新規のジスルフィド含有タキサンの製造における合成工程を示す。
図18は、本発明の第二の態様に係る新規のタキサンのインビトロでの細胞毒性を示す。
【0035】
図19aおよび19bは、本発明の第二の態様に係るジスルフィド含有タキサンのインビトロでの細胞毒性を示す。
【0036】
発明の詳細な記述
本発明は、高い細胞毒性を保持し、細胞結合性物質に効果的に結合可能な新規のタキサンを説明する。これまでに、C−10に保護されたヒドロキシル基を有するタキサンが高
い効力を有することが示されている(米国特許第6,340,701号、米国特許第6,372,738号、および、米国特許第6,436,931号)。本発明の第一の態様は、C−10位が保護されていなくても高い効力を達成することができるという予想外の発見に基づいている。C−10に遊離のヒドロキシ基を有するタキサンは、それでも依然として、C−7に保護されたヒドロキシ基(例えば結合基)が存在する限り、高い効力を維持する。
【0037】
本発明はさらに、C−10に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有するタキサンの合成およびインビトロでの評価を説明する。
また、これまでに、C−3’N位にベンズアミドまたはtert−ブチルオキシカルボニルアミノ(−NH−t−BOC)置換基を、その他の置換基(アリールまたは直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基)と共に有するタキサンが、高い効力を有することが示されている。本発明の第二の態様は、C−3’Nの位置にベンズアミドまたは−NH−t−BOC基を有さなくても、高い効力を達成することができるという予想外の知見に基づいている。アルキル、アルケニルまたは複素環式側鎖を有する多数の様々なアミドまたはカルバメート置換基を、効力を少しも失うことなく用いることができる。結合基は、C−3’、C−3’Nの側鎖に、または、C−10、C−7またはC−2’位に導入することができる。
【0038】
タキサンを合成するための前駆体は、天然に存在する化合物10−デアセチルバッカチンIII(10−DAB)(図7)である。多種多様な結合基を有するタキサンを製造することができる。さらに、この化合物は、C−10位に遊離のヒドロキシル基を有する。それゆえに、本発明の第一の態様に係る細胞毒性タキサンの製造に必要な合成工程数は、ヒドロキシル基をエステル、エーテルまたはカルバメートに変換させなくてもよいため減らすことができる。結合基を有するタキサンの収率を高めることもできる。
【0039】
本発明はさらに、C−3’またはC−3’Nに新規の置換基を有する代表的なタキサン(C−7、C−10、C−2’に、または、C−3’、C−3’Nに結合基を含む、または、含まない)の合成およびインビトロでの評価を説明する。
【0040】
当業界において、現存の薬物を、それらの細胞毒性ポテンシャルを減少させることなく修飾することは極めて難しいということがわかっている。開示された発明は、開示されたタキサンを化学成分で修飾することによりこの問題を克服しており、例えば、適切な細胞結合性物質が結合可能なチオールまたはジスルフィド基含有タキサンである。その結果として、開示された新規のタキサンは、既知のタキサンの細胞毒性効力を保持し、場合によっては高めることもできる。細胞結合性物質−タキサン複合体は、標的化様式で適用され得るタキサンの最大限の細胞毒性作用を、不必要な細胞に対してのみに与え、それゆえに、非標的の健康な細胞に損傷を与えることによる副作用を回避する。本発明において、タキサンは、これまで不可能であった部位特異的な標的化が可能になる。従って、本発明は、殺すか、または溶解させるべき病気の細胞または異常な細胞、例えば腫瘍細胞(特に充実性腫瘍細胞)、ウイルス感染細胞、微生物感染細胞、寄生体感染細胞、自己免疫細胞(自己抗体を生産する細胞、または、自己抗体生産を調節する細胞)、活性化細胞(移植片拒絶反応または移植片対宿主疾患に関与する細胞)、または、その他のあらゆるタイプの病気の細胞または異常な細胞を除去し、一方で最小の副作用を示す有用な物質を提供する。
【0041】
本発明に係る細胞毒性物質は、結合基を介して細胞結合性物質に結合した1以上のタキサンを含む。この結合基は、従来の方法によってタキサンに共有結合した化学成分の一部である。好ましい実施態様において、細胞結合性物質は、ジスルフィドまたはチオエーテル結合を介して、タキサンに共有結合していてもよい。
【0042】
以下の実施態様(1)〜(9)の説明において、以下の通り適用する:
用語「アルキル」は、特に他の規定がない限り、直鎖状、分岐状または環状であることを意味する。
【0043】
直鎖状アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、および、ヘキシルが挙げられる。
分岐状アルキルの例としては、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、および、2−エチル−プロピルが挙げられる。
【0044】
環状アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、および、シクロヘキシルが挙げられる。
アルケニルおよびシクロアルケニルの例としては、イソブテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0045】
単純アリールの例としては、フェニル、および、ナフチルが挙げられる。
置換アリールの例としては、例えば、上述したような、アルキル基、ハロゲン(例えばCl、BrもしくはF)、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、または、アルコキシ基で置換されたアリールが挙げられる。
【0046】
複素環式は、ヘテロ原子がO、N、およびSから選択される化合物であって、例えば、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノ、ピロリル、ピリジル、フリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、チオフェンイル、インドリル、ベンゾフラニル、およびベンゾチオフェンイルが挙げられる。
【0047】
カルバメートの例としては、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアリール成分(例えばメチル、エチル、クロトニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、およびフェニル)から形成されたもの、ならびに、窒素含有複素環(例えばモルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、およびN−メチルピペラジノ)から形成されたものが挙げられる。
【0048】
アリールエステル、エーテル、および、カルバメートの例としては、フェニル、および、ナフチル、エーテル、エステル、および、カルバメートが挙げられる。
直鎖状、分岐状または環状アルキルまたはアルケニルエステルの例としては、メチル、エチル、イソプロピル、アリル、クロトニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルエステルが挙げられる。
【0049】
直鎖状、分岐状または環状アルキルまたはアルケニルエーテルの例としては、メチル、エチル、イソプロピル、アリル、クロトニル、および、シクロヘキシルエーテルが挙げられる。
【0050】
本発明において有用なタキサンは、下記の式(I)で示される:
【0051】
【化1】

【0052】
これら新規のタキサンは、(1)〜(9)で示される9つの実施態様に分けることができる。実施態様(1)〜(4)の例を図2に示す。実施態様(5)〜(9)の例を図6に示す。
【0053】
実施態様(1)〜(4)
実施態様(1)〜(4)において、Rは、H、電子求引基、例えばF、NO、CN、Cl、CHFおよびCFであるか、または、電子供与基、例えば−OCH、−OCHCH、−NRおよび−ORである。R1’およびR1”は、同一または異なって、H、電子求引基、例えばF、NO、CN、Cl、CHF、および、CFであるか、または、電子供与基、例えば−OCH、−OCHCH、−NRおよび−ORである。
【0054】
およびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル基、または、単純または置換アリールである。好ましくは、RおよびRの炭素原子の数は、1〜4である。また、好ましくは、RおよびRは同一である。好ましい−NR基の例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ−イソプロピルアミノ、および、ジブチルアミノが挙げられ、ここでブチル成分は、第一ブチル、第二ブチル、第三ブチルまたはイソブチルのいずれかである。
【0055】
は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキルである。Rは、好ましくは−OCH、Cl、F、NO、および、CFである。
より好ましくは、Rは−OCHであり、メタ位に存在し、R’およびR”の一方は−OCHであり、他方はHである。
【0056】
実施態様(1)、(2)および(4)において、RはH、C−10位において酸素原子と一緒になって複素環式エーテルもしくはアリールエーテル、複素環式エステルもしくはアリールエステル、複素環式カルバメートもしくはアリール、または、アルキル中に1〜10個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル中に2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルケニルエステル、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルケニルエーテル、式−OCOXで示されるカルバメート(式中、Xは、窒素含有複素環であり、例えばピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノおよびN−メチル−ピペラジノである)、または、式−OCONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、単純アリールもしくは置換アリールで
ある)である。
【0057】
アリールエーテル、エステルおよびカルバメートの好ましい例としては、フェニルならびにナフチルエーテル、エステルおよびカルバメートが挙げられる。
アルキルおよびアルケニルエステルの好ましい例としては、−OCOCH,−OCOCHCH、クロトニル、および、ジメチルアクリロイルが挙げられる。アルキルおよびアルケニルエーテルの好ましい例としては、メチル、エチル、アリル、プロピル、プロペニル、および、イソブテニルエーテルが挙げられる。カルバメートの好ましい例としては、−OCONHCHCH、−OCONHCHCHCH、−OCO−モルホリノ、−OCO−ピペラジノ、−OCO−ピペリジノ、−OCO−N−メチルピペラジノが挙げられる。好ましくは、RはHである。
【0058】
実施態様(3)において、Rは結合基である。
実施態様(1)、(3)および(4)において、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基である。
【0059】
好ましくは、Rは、プロペニル、イソブテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、フリル、ピロリル、チオフェンイル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、オキサゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、または、ベンゾチオフェンイルである。
【0060】
より好ましくは、Rは、t−BOC、イソ−ブテニル、プロペニル、チオフェニル、チアゾリル、または、フリルである。
実施態様(2)において、Rは、−CH=C(CHである。
【0061】
実施態様(1)〜(4)において、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、複素環、−OC(CH、または、前記アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはシクロアルケニルのいずれかから形成されたカルバメート、アリール、または、窒素含有複素環である。
【0062】
好ましくは、Rは、クロトニル、ジメチルアクリロイル、イソブテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、フリル、ピロリル、チオフェンイル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、オキサゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、または、ベンゾチオフェンイルである。
【0063】
より好ましくは、Rは、t−BOC、イソ−ブテニル、クロトニル、ジメチルアクリロイル、チオフェニル、チアゾリル、または、フリルである。
実施態様(1)および(2)において、Rは結合基であり、Rは、上記の実施態様(1)、(2)および(4)に関するRと同じ定義を有する。
【0064】
実施態様(3)において、Rは、上記の実施態様(1)、(2)および(4)に関するRと同じ定義を有する。
実施態様(3)において、Rは、上記の実施態様(1)、(2)および(4)に関するRと同じ定義を有する。
【0065】
実施態様(4)において、Rは結合基であり、Rは、上記の実施態様(1)、(2)および(4)に関するRと同じ定義を有する。
適切な結合基は当業界周知であり、例えば、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、酸
不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合、および、エステラーゼ不安定性結合を形成し得る結合基が挙げられる。好ましくは、ジスルフィド基、および、チオエーテル基である。
【0066】
結合基がチオール−またはジスルフィド含有基である場合、チオールまたはジスルフィド基を有する側鎖は、直鎖状または分岐状、芳香族または複素環式が可能である。当業者であれば、容易に適切な側鎖を同定することができる。
【0067】
チオール−またはジスルフィド含有置換基の特定の例としては、以下が挙げられる:
−(CR1314)m(CR1516(OCHCHSZ、−CO(CR1314(CR1516(OCHCHSZ、−(CR1314(CR17=CR18)(CR1516(OCHCHSZ、−CO−(CR1314(CR17=CR18)(CR1516(OCHCHSZ、−CONR12(CR1314(CR1516(OCHCHSZ、フリル−XSZ、オキサゾリル−XSZ、チアゾリル−XSZ、チオフェンイル−XSZ、イミダゾリル−XSZ、モルホリノ−XSZ、−ピペラジノ−XSZ、ピペリジノ−XSZ、CO−フリル−XSZ、CO−チオフェンイル−XSZ、CO−チアゾリル−XSZ、および、−CO−N−メチルピペラジノ−XSZ、−CO−モルホリノ−XSZ、−CO−ピペラジノ−XSZ、−CO−ピペリジノ−XSZおよび−CO−N−メチルピペラジノ−XSZであり、式中:
Zは、HまたはSRであり、
Xは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状アルキルまたは分岐状アルキル、または、2〜20個の繰り返しエチレンオキシ単位を有するポリエチレングリコールスペーサーであり;
RおよびR12は、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状アルキル、分岐状アルキルまたは環状アルキル、または、単純または置換アリール、または、複素環式であり、加えてR12は、Hも可能であり、
13、R14、R15、および、R16は、同一または異なって、H、または、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキルであり、
17およびR18は、H、または、メチルであり、
nは、1〜10の整数であり、
mは、1〜10の整数であり、また、0でもよく、
yは、1〜20の整数であり、また、0でもよい。
【0068】
本発明の第一の態様の好ましいタキサンは、C−10(すなわちR)に遊離のヒドロキシル基、C−7(すなわちR)に結合基を有するタキサンである。本発明の最も好ましいタキサンは、図3に示すタキサン2’および3’である。
【0069】
実施態様(5)〜(9)
実施態様(5)〜(9)において、Rは、H、電子求引基、例えばF、NO、CN、Cl、CHF、および、CF、または、電子供与基、例えば−OCH、−OCHCH、−NRおよび−ORであり、R’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、例えばF、NO、CN、Cl、CHF、および、CF、または、電子供与基、例えば−OCH、−OCHCH、−NRおよび−ORである。
【0070】
およびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキル基、または、単純または置換アリールである。好ましくは、RおよびRの炭素原子の数は1〜4である。また、好ましくは、RおよびRは同一である。好ましい−NR基の例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピ
ルアミノ、ジ−イソプロピルアミノ、および、ジブチルアミノが挙げられ、ここで、ブチル成分は、第一ブチル、第二ブチル、第三ブチルおよびイソブチルのいずれかである。
【0071】
は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキルである。
好ましくは、Rは、−OCH、Cl、F、NO、および、CFである。
より好ましくは、Rは、−OCHであり、メタ位に存在し、R’およびR”の一方は−OCHであり、他方はHである。
【0072】
実施態様(5)、(6)および(7)において、RおよびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基であり、Rはさらに、−OC(CH、または、C−3’位の−CONH−と一緒になって前記アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはシクロアルケニル、アリール、または、窒素含有複素環式基のいずれかおよび酸素原子から形成されるカルバメートである。
【0073】
好ましくは、RおよびRの一方または両方は、プロペニル、イソブテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、フリル、ピロリル、チオフェンイル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、モルホリノ、ピペリジノ、ピペラジノ、オキサゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、または、ベンゾチオフェンイルである。
【0074】
より好ましくは、RおよびRの一方または両方は、t−BOC、イソ−ブテニル、プロペニル、チオフェニル、チアゾリル、または、フリルである。
実施態様(8)および(9)において、R、RおよびRは、同一または異なって、H、またはそれぞれC−10、C−7およびC−2’位の酸素原子と一緒になって複素環式エーテルもしくはアリールエーテル、複素環式エステルもしくはアリールエステル、または、複素環式カルバメートもしくはアリールカルバメート、アルキル基中に1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルエステル、アルケニル中に2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルケニルエステル、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルエーテル、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルケニルエーテル、または、式−OCOXで示されるカルバメート(式中、Xは、窒素含有複素環式基であり、例えばピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノおよびN−メチルピペラジノである)、または、式−OCONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【0075】
アリールエーテル、エステルおよびカルバメートの好ましい例としては、フェニルおよびナフチルエーテル、エステルおよびカルバメートが挙げられる。
アルキルおよびアルケニルエステルの好ましい例としては、−OCOCH、−OCOCHCH、クロトニル、および、ジメチルアクリロイルが挙げられる。アルキルおよびアルケニルエーテルの好ましい例としては、メチル、エチル、アリル、プロピル、プロペニルおよびイソブチルエーテルが挙げられる。カルバメートの好ましい例としては、−OCONHCHCH、−OCO−モルホリノ、−OCO−ピペラジノ、または−OCO−N−メチルピペラジノが挙げられる。
【0076】
好ましくは、RはHであり、RおよびRの1つはHである。
実施態様(5)において、Rは結合基であり、RおよびRは、実施態様(8)および(9)と同じ定義を有する。
【0077】
実施態様(6)において、Rは結合基であり、RおよびRは、実施態様(8)および(9)と同じ定義を有する。
実施態様(7)において、Rは、結合基またはHであり、RおよびRは、実施態様(8)および(9)と同じ定義を有する。
【0078】
実施態様(8)において、Rは結合基であり、Rは、実施態様(5)、(6)および(7)と同じ定義を有する。
実施態様(9)において、Rは結合基であり、Rは、実施態様(5)、(6)および(7)と同じ定義を有する。
【0079】
適切な結合基は当業界周知であり、例えば、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合およびエステラーゼ不安定性結合を形成し得る結合基が挙げられる。好ましくは、ジスルフィド結合およびチオエーテル結合を形成し得る結合基が挙げられる。結合基がチオール−またはジスルフィド含有基の場合、チオールまたはジスルフィド基を有する側鎖は、直鎖状または分岐状アルキル、アルケニル、シクロアルケニル、芳香族または複素環式、または、ポリエチレングリコールが可能である。当業者であれば、容易に適切な側鎖を同定することができる。
【0080】
チオール−またはジスルフィド含有置換基の特定の例としては、以下が挙げられる:
−(CR1314(CR1516(OCHCHSZ、−CO(CR1314(CR1516(OCHCHSZ、−(CR1314(CR17=CR18)(CR1516(OCHCHSZ、−CO−(CR1314(CR17=CR18)(CR1516(OCHCHSZ、−CONR12(CR1314(CR1516(OCHCHSZ、フリル−XSZ、オキサゾリル−XSZ、チアゾリル−XSZ、チオフェンイル−XSZ、イミダゾリル−XSZ、モルホリノ−XSZ、−ピペラジノ−XSZ、ピペリジノ−XSZ、CO−フリル−XSZ、CO−チオフェンイル−XSZ、CO−チアゾリル−XSZ、および、−CO−N−メチルピペラジノ−XSZ、−CO−モルホリノ−XSZ、−CO−ピペラジノ−XSZ、−CO−ピペリジノ−XSZ、および−CO−N−メチルピペラジノ−XSZであり、
式中:
Zは、HまたはSRであり、
Xは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状アルキルまたは分岐状アルキル、または、2〜20個の繰り返しエチレンオキシ単位を有するポリエチレングリコールスペーサーであり;
RおよびR12は、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状アルキル、分岐状アルキルまたは環状アルキル、または、単純または置換アリール、または、複素環式であり、加えてR12は、Hも可能であり、
13、R14、R15、および、R16は、同一または異なって、H、または、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状アルキルであり、
17およびR18は、H、または、メチルであり、
nは、1〜10の整数であり、
mは、1〜10の整数であり、また、0でもよく、
yは、1〜20の整数であり、また、0でもよい。
【0081】
本発明のタキサンは、既知の方法に従って合成することができる。合成の出発原料は、図7に示す市販の10−デアセチルバッカチンIIIである。様々な置換基を導入する化学的方法は、数種の出版物で説明されている(Ojima等,J.Med.Chem.39:3889〜3896(1996年),Ojima等,J.Med.Chem.40:267〜278(1997年);I.Ojima等,Proc.Natl.Acad.S
ci.,96:4256〜4261(1999年);I.Ojima等の、米国特許第5,475,011号、および、米国特許第5,811,452号)。本発明の代表的なタキサンの製造は、以下の実施例で説明される。
【0082】
フェニル環上の置換基Rと、置換基Rの位置は、望ましい毒性を有する化合物が得られるまで、変動できる。その上、フェニル環の置換度を様々に変えて、望ましい毒性を達成することができる。すなわち、フェニル環は、望ましい毒性を達成するためのその他の手段を提供する1以上の置換基を有し得る(例えば、フェニル環の一置換、二置換または三置換)。高い細胞毒性とは、インビトロで培養ガン細胞を72時間薬物に晒して測定した場合、IC50が1×10−12〜3×10−9Mの範囲である毒性を示すこと、と定義される。当業者であれば、日常的な実験のみを使用してRに適した化学成分とRの適切な位置を決定することができる。
【0083】
例えば、メタ位の電子供与基は、細胞毒性効力を増加させること期待されるが、パラ位の置換は、親となるタキサンと比較して効力を増加させることは期待されない。典型的には、異なる位置(オルソ、メタおよびパラ)に置換基を有する代表的なタキサンを先ず少量製造し、インビトロでの細胞毒性を評価する。
【0084】
図5および16に記載の新規のタキソイドは、β−ラクタムシントン方法(Ojima,I.;Habus,I.;Zhao,M.;Zucco,M.;Park,Y.H.;Sun,C.M.;Brigaud,T.Tetrahedron,48:6985(1992年);Holton,R.A.;Biediger,R.J.;Boatman,P.D.の、Taxol:Science and Applications;Suffness,M.,Ed.;CRC:Boca Raton,1995年,97頁)で、出発原料として適切に誘導体化されたバッカチンIII類似体(7)およびβ−ラクタムを用いて製造することができる。β−ラクタム4−6d、19−25、および、38−44は、前述した方法で製造することができる(Brieva,R.Crich,J.Z.;Sih,C.J.J.Org.Chem.,58:1068(1993年);Palomo,C.;Arrieta,A.;Cossio,F.;Aizpurua,J.M.;Mielgo,A.;Aurrekoetxea,N.Tetrahedron Lett.,1990年,31.6429)。バッカチンIII類似体(7)は、出発原料として市販の10−デアセチルバッカチンIII(10−DAB)(図7)を用いて製造することができる。
【0085】
β−ラクタム6a−d、21−25、および、40−44は、NaHまたはLiHMDSの存在下でバッカチンIII類似体(7)とカップリングさせ、保護されたタキソイド8−11,26−30、および、45−49を得ることができる。最終的に、シリル保護基を、HF−ピリジンの存在下で脱保護し、望ましいタキサン12−15、31−35、および、50−54(図16a、16bおよび16c)を得ることができる。
【0086】
本発明のジスルフィド含有タキソイド(図6および17)は、前述した中間体(8−11,26−30,45−49)から合成することができる。C−10アセテートは、ヒドラジン一水和物を用いてうまく除去することができる。次に、C−10位の再エステル化は、EDC(1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル−3−エチルカルボジイミド塩酸塩])の存在下で、必要なカルボン酸のジスルフィド誘導体を用いたカルボジイミドベースのカップリングプロトコールを用いて行うことができる。カップリングされた生成物をHF−ピリジンで脱保護し、望ましいジスルフィド含有タキソイド(図17aおよび17b)を得ることができる。
【0087】
ジスルフィドまたはチオール含有置換基はまた、ヒドロキシル基がすでに存在するその
他の位置のうちの1ヶ所に導入することもできる。様々なヒドロキシル基を保護し、その間に望ましいヒドロキシ基を反応させる化学は、前で記載した(例えば、上掲で引用した参考文献を参照)。置換基は、遊離のヒドロキシル基を、ジスルフィド含有エーテル、ジスルフィド含有エステル、または、ジスルフィド含有カルバメートに単に変換することにより導入される。あるいは、ジスルフィドまたはチオール置換基と、誘導体化されているヒドロキシ基との間にポリエチレングリコールスペーサーを導入してもよい(例えば、2002年5月14日付で出願された米国出願第10/144,042号を参照)。このトランスフォーメーションは、以下のように達成される。上掲のI.Ojima等に記載されているように、テトラヒドロフラン中で、−40℃で、市販の試薬のリチウムヘキサメチルジシラザン(1.2当量)で処理することによって、望ましいヒドロキシル基を脱プロトン化する。次に、得られたアルコキシドアニオンを過量のジハロ化合物(例えばジブロモエタン)と反応させ、ハロエーテルを得る。ハロゲンのチオールでの置換(チオ酢酸カリウムとの反応、および、弱塩基(mild base)またはヒドロキシルアミンでの処理によ
る)は、望ましいチオール含有タキサンを提供し得る。チオール基は、チオスルホン酸メチルメタンまたはジチオジピリジンとの反応により、それぞれメチルまたはピリジルジスルフィドに変換することができる。この方法は、米国特許第5,416,064号に記載されている。
【0088】
望ましいヒドロキシル基はまた、3−ブロモプロピオニル塩化物のようなアシルハライドとの反応により直接エステル化し、ブロモエステルを得ることもできる。チオ酢酸カリウムでの処理によるブロモ基の置換と、上述のようなさらなる加工により、チオールまたはジスルフィド含有タキサンエステルが提供され得る。ジスルフィド含有カルバメートを製造するために、ヒドロキシル基をパラ−ニトロフェニルクロロホルメートのような商業的に入手できるクロロホルメートと反応させ、続いて、アミノアルキルジスルフィド(例えば、メチルジチオシステアミン)と反応させてもよい。
【0089】
あるいは、チオールまたはジスルフィド置換基は、β−ラクタムサブユニットに取り込ませることもでき、次に、これを、適切に保護された10−デアセチルバッカチンIIIと反応させ、C−3’位にチオールまたはジスルフィド結合基を有する望ましいタキサンを得ることができる。
【0090】
本発明の新規のタキサン、および、ジスルフィド含有タキサン薬物を、インビトロでヒト腫瘍細胞系の増殖を抑制するそれらの能力に関して評価することができる。ヒト腫瘍細胞系A−549(ヒト肺ガン)、および、MCF−7(ヒト乳房腫瘍)が、これら化合物の細胞毒性の判断に用いられる。細胞を化合物に72時間晒し、生存する細胞フラクションを直接プレート効率分析で前述した通りに測定し(Goldmacher等,J.Cell.Biol.102:1312〜1319(1986年))、次に、IC50値をこのデータから計算する。
【0091】
本発明に係るの第二の態様によるタキソイドおよびジスルフィド含有タキソイドのインビトロでの細胞毒性測定の結果を図18および19に示す。図18は、本発明の12種の新規のタキサンの細胞毒性決定の結果を示す。Rにフェニル置換基を有するタキサン52を除き、その他全ての新規のタキサンは、A−549およびMCF−7細胞系両方に対して極めて高い効力を有していた(IC50値は10−10〜10−11Mの範囲)。タキサン52の試験した両方の細胞系に対する細胞毒性は低かった(IC50値は3×10−9M)。同様に、本発明のジスルフィド含有タキソイドもまた、A−549およびMCF−7細胞両方に対して極めて高い効力を有しており、急勾配の死滅曲線を示した(図19)。
【0092】
本発明の化合物の治療剤としての有効性は、適切な細胞結合性物質の慎重な選択に依存
する。細胞結合性物質としては、これまで知られている、または、知られるようになるあらゆる種類のものが可能であり、例えば、ペプチドおよび非ペプチドが挙げられる。一般的に、これらは、抗体、またはそれらのフラグメント(特にモノクローナル抗体)、リンフォカイン、ホルモン、成長因子,ビタミン、栄養輸送分子(例えばトランスフェリン)、または、その他のあらゆる細胞結合分子または物質であり得る。
【0093】
使用可能な細胞結合性物質のより特定の例としては、以下が挙げられる:
−抗体フラグメント、例えばsFv、Fab、Fab’、および、F(ab’)(Parham,J.Immunol.131:2895〜2902(1983年);Spring等,J.Immunol.113:470〜478(1974);Nisonoff等,Arch.Biochem.Biophys.89:230〜244(1960年));
−インターフェロン(例えばα、β、γ);
−リンフォカイン、例えばIL−2、IL−3、IL−4、IL−6;
−ホルモン、例えばインスリン、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン),MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)、ステロイドホルモン、例えばアンドロゲンおよびエストロゲン;
−ビタミン、例えば葉酸;
−成長因子、および、コロニー刺激因子、例えばEGP、TGF−α、G−CSF、M−CSF、および、GM−CSF(Burgess,Immunology Today 5:155〜158(1984年));および、
−トランスフェリン(O’Keefe等,J.Biol.Chem.260:932〜937(1985年))等である。
【0094】
モノクローナル抗体技術により、特異的モノクローナル抗体またはそれらのフラグメントの態様の極めて特異的な細胞結合性物質の製造が可能である。特に、マウス、ラット、ハムスターまたはその他のあらゆる哺乳動物を、対象の抗原、例えば無傷標的細胞、無傷標的細胞から単離された抗原、ウイルス全体、弱毒化したウイルス全体、および、ウイルスコートタンパク質のようなウイルスタンパク質で免疫化することによって、モノクローナル抗体またはそれらのフラグメントを作製する技術が、当業界周知である。ヒト感作細胞を用いてもよい。モノクローナル抗体またはそれらのフラグメントを作製するその他の方法は、sFv(単鎖可変領域)のファージライブラリー、特定にはヒトsFvのファージライブラリーの使用である。(例えば、Griffiths等、米国特許第5,885,793号;McCafferty等,WO92/01047;Liming等,WO99/06587を参照)。
【0095】
適切な細胞結合性物質の選択は、標的となり得る特定の細胞集団に応じた選択の問題であるが、一般的に、適切なモノクローナル抗体が入手できる場合は、モノクローナル抗体が好ましい。
【0096】
例えば、モノクローナル抗体MY9は、CD33抗原に特異的に結合するマウスIgG抗体であり(J.D.Griffin等,Leukemia Res.,8:521(1984年))、この抗体は、例えば急性骨髄性白血病(AML)において標的細胞がCD33を発現する場合に用いることができる。同様に、モノクローナル抗体の抗−B4は、B細胞上でCD19抗原に結合するマウスIgGであり(Nadler等,J.Immunol.131:244〜250(1983))、例えば非ホジキンリンパ腫または慢性リンパ芽球性リンパ腫において標的細胞がB細胞であるか、または、この抗原を発現する病気の細胞である場合に用いることができる。同様に、抗体N901は、小細胞肺ガン細胞や神経内分泌由来のその他の腫瘍細胞上で見出されるCD56に結合するマウスモノクローナルIgG抗体である(Roy等,J.Nat.Cancer Inst.8
8:1136〜1145(1996年))。
【0097】
固形腫瘍を標的とする抗体も有用であり、例えば以下が挙げられる:C242抗体、これは、膵臓および結腸直腸の腫瘍に存在するMUC1で見出される炭水化物抗原に結合する(米国特許第5,552,293号);抗体J591,これは、前立腺ガン細胞におよび腫瘍の新生血管系の内皮細胞に発現されるPSMA(前立腺特異的膜抗原)に結合する(米国特許第6,107,090号,He Liu等,Cancer Res.57:3629〜3634(1997年);および、HER−2に対する抗体、これは、特定の乳房腫瘍で過剰発現される。抗HER−2抗体の例は、TA1抗体(L.A.Maier等,Cancer Res.51:5361〜5369(1991年))、および、4D5抗体(米国特許第6,387,371号、および、第6,399,063号)である。
【0098】
加えて、GM−CSFは、骨髄細胞に結合するものであるが、急性骨髄性白血病由来の病気の細胞に対する細胞結合性物質として用いることができる。IL−2は、活性化T細胞に結合するものであるが、移植片拒絶反応の予防、移植片対宿主疾患の治療および予防、および、急性T細胞性白血病の治療に用いることができる。MSHは、メラニン細胞に結合するものであるが、黒色腫の治療用いることができる。また葉酸は、卵巣ガンおよびその他のガンで発現される葉酸受容体を標的とするものであるが、適切な細胞結合性物質でもある。
【0099】
乳房ガンおよび精巣ガンは、細胞結合性物質として、エストロゲン(または、エストロゲン類似体)またはアンドロゲン(またはアンドロゲン類似体)それぞれを用いてうまく標的化することができる。
【0100】
本発明のタキサンと細胞結合性物質との結合体は、これまでに知られている、または、今後開発されるあらゆる技術を用いて形成することができる。多数の結合方法が、米国特許第5,416,064号、および、米国特許第5,475,092号で教示されている。遊離のアミノ基を得るようにタキサンエステルを修飾し、次に、抗体またはその他の細胞結合性物質に酸不安定性のリンカーまたは光不安定性のリンカーを介して結合させることができる。タキサンエステルをペプチドと縮合し、続いて細胞結合性物質に結合させ、ペプチダーゼ不安定性のリンカーを製造することもできる。タキサンエステル上のヒドロキシル基をサクシニル化し、細胞結合性物質に結合させ、細胞内エステラーゼにより切断されて遊離の薬物を解放することができる結合体を製造することもできる。最も好ましくは、タキサンエーテル、エステル、または、カルバメートを、遊離または保護チオール基を生成するように処理し、次に、ジスルフィド−またはチオール含有タキサンを、ジスルフィド結合を介して細胞結合性物質に結合させる。
【0101】
本発明の代表的な結合体は、抗体−タキサン、抗体フラグメント−タキサン上皮成長因子(EGF)−タキサン、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)−タキサン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)−タキサン、エストロゲン−タキサン、エストロゲン類似体−タキサン、アンドロゲン−タキサン、アンドロゲン類似体−タキサン、および、葉酸−タキサンである。
【0102】
抗体、抗体フラグメント、タンパク質またはペプチドホルモン、タンパク質またはペプチド成長因子およびその他のタンパク質のタキサン結合体は、既知の方法による同じ方法で作製される。例えば、ペプチドと抗体は、架橋用試薬、例えばN−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジル ジチオ)−トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SDPB)、2−イミノチオラン、または、S−
アセチル無水コハク酸と、既知の方法により修飾することができる。Carlsson等,Biochem.J.173:723〜737(1978);Blattler等,Biochem.24:1517〜1524(1985年);Lambert等,Biochem.22:3913〜3920(1983);Klotz等,Arch.Biochem.Biophys.96:605(1962年);および、Liu等,Biochem.18:690(1979年),Blakey and Thorpe,Antibody,Immunoconjugates & Radiopharmaceuticals,1:1〜16(1988年),Worrell等,Anti−Cancer Drug Design 1:179〜184(1986年)を参照。次に、このようにして誘導された遊離または保護されたチオールを含む細胞結合性物質を、ジスルフィド−またはチオール含有タキサンと反応させ、結合体を生産することができる。このような結合体は、HPLCまたはゲルろ過で精製することができる。
【0103】
同様に、例えば、エストラジオールおよびアンドロスタンジオールのようなエストロゲンおよびアンドロゲン細胞結合性物質は、C−17のヒドロキシ基で、適切なジスルフィド含有カルボン酸と、縮合剤として例えばジシクロヘキシルカルボジイミドを用いてエステル化することができる。使用可能なこのようなカルボン酸の例は、3−(2−ピリジルジチオ)プロパン酸、3−メチルジチオプロパン酸、4−(2−ピリジルジチオ)ペンタン酸、および、3−フェニルジチオプロパン酸である。C−17のヒドロキシ基のエステル化はまた、適切に保護されたチオール基を含むカルボン酸の塩化物(例えば3−S−アセチルプロパノイル塩化物)と反応させることによって達成することもできる。その他のエステル化方法を、文献に記載されている通りに用いてもよい(Haslam,Tetrahedron 36:2409〜2433(1980年))。次に、保護された、または遊離のチオール含有アンドロゲンまたはエストロゲンは、ジスルフィド−またはチオール含有タキサンと反応させ、結合体を生産することができる。結合体は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーまたはHPLCで精製することができる。葉酸を、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド)の存在下で、適切なヒドラジド(例えば4−(2−ピリジルジチオ)ペンタン酸ヒドラジド)と縮合し、活性ジスルフィド含有ヒドラゾンを得ることができる。次に、ジスルフィド含有葉酸を、チオール含有タキサンと反応させ、結合体を生産することができ、このような結合体は、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーまたはHPLCで精製することができる。
【0104】
好ましくは、モノクローナル抗体−または細胞結合性物質−タキサン結合体は、タキサン分子を送達可能な、上述のようにジスルフィド結合を介して結合した結合体である。このような細胞結合結合体は、既知の方法で製造され、例えば、モノクローナル抗体をスクシンイミジルピリジル−ジチオプロピオネート(SPDP)で修飾することによって製造される(Carlsson等,Biochem,J.173:723〜737(1978年))。次に、得られたチオピリジル基を、チオール含有タキサンを用いた処理で置換し、ジスルフィドが結合した結合体を生産することができる。あるいは、アリールジチオ−タキサンの場合、細胞結合結合体の形成は、タキサンのアリール−チオールを、予め抗体分子に導入されたスルフヒドリル基で直接置換することによって達成される。ジスルフィド架橋を介して結合した1〜10個のタキサン薬物を含む結合体は、どちらかの方法によって容易に製造される。
【0105】
より具体的には、1mM EDTAを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中、1mg/mlの濃度のジチオピリジルで修飾された抗体溶液を、チオール含有タキサン(1.25モル当量/ジチオピリジル基)で処理する。修飾された抗体からのチオピリジンの放出を分光光度法により343nmでモニターし、約20時間で完了する。抗体−タキサン結合体は、精製し、セファデックス(Sephadex)G−25カラムまたはセファクリル(Sephacryl)S300カラムを用いたゲルろ過して未反応の薬
物およびその他の低分子量材料を除去する。抗体分子1つあたりに結合するタキサン成分の数は、230nmでの吸光度と275nmでの吸光度との割合を測定することにより決定することができる。平均1〜10個のタキサン分子/抗体分子が、この方法によってジスルフィド結合を介して結合することができる。
【0106】
また、切断不可能な結合を有する抗体−タキサン結合体を製造することもできる。このような抗体は、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、スルホ−SMCC、N−スクシンイミジル4−マレイミドブチレート(SMB)、スルホ−SMB、N−スクシンイミジル6−マレイミドカプロエート(SMC)、スルホ−SMC、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、スルホ−MBS、または、スクシンイミジル−ヨード酢酸のような架橋試薬で、文献に記載されているように修飾して、1〜10個の反応性基を導入することができる。Yoshitake等,Eur.J.Biochem.101:395〜399(1979年);Hashida等,J.Applied Biochem.6:56〜63(1984年);および、Liu等,Biochem.18:690〜697(1979年)を参照。次に、修飾された抗体をチオール含有タキサン誘導体と反応させ、結合体を生産することができる。このような結合体は、セファデックスG−25カラムを用いたゲルろ過によりを通過させてで精製することができる。
【0107】
修飾された抗体またはそれらのフラグメントは、チオール含有タキサン(1.25モル当量/マレイミド基)で処理される。この混合物を、約4℃で一晩インキュベートした。抗体−タキサン結合体を、セファデックスG−25カラムを用いたゲルろ過により精製する。典型的には、抗体1つあたり平均1〜10個のタキサンが結合する。
【0108】
好ましい方法は、抗体またはそれらのフラグメントを、スクシンイミジル−4−(マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)で修飾して、マレイミド基を導入し、続いて、修飾された抗体またはフラグメントとチオール含有タキサンとを反応させて、チオエーテルが結合した結合体を得ることである。再度、抗体分子1つあたりに1〜10個の薬物分子を有する結合体が生じる。
【0109】
抗体とこれらタキソイドとの結合体の、非接着細胞系に対する(例えばNemalwaおよびHL−60)細胞毒性は、Goldmacher等,J.Immunol.135:3648〜3651(1985年)に記載されているように、細胞増殖曲線を自動補正(back-extrapolation)することによって測定することができる。これら化合物の、接着細胞系(例えばSKBR3およびA431)に対する細胞毒性は、Goldmacher等,J.Cell Biol.102:1312〜1319(1986年)に記載されているようなクローン形成分析で決定することができる。
【0110】
本発明は:
(a)有効量の、細胞結合性物質に結合した1以上のタキサン、および、
(b)製薬上許容できるキャリアー、希釈剤、または、賦形剤
を含む治療用組成物も提供する。
【0111】
同様に、本発明は、選択された細胞集団において細胞死を誘導する方法を提供し、本方法は、標的細胞または標的細胞を含む組織と、有効量の、細胞結合性物質に結合した1以上のタキサンを含む細胞毒性物質とを接触させることを含む。
【0112】
この細胞毒性物質は、上述のように製造される。
適切な製薬上許容できるキャリアー、希釈剤、および、賦形剤は周知であり、当業者によって、臨床的な状況の根拠に基づき決定することができる。
【0113】
適切なキャリアー、希釈剤および/または賦形剤の例としては:(1)ダルベッコリン酸緩衝塩類溶液(pH約7.4)、約1mg/ml〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含む、または、含まない、(2)0.9%塩類溶液(0.9%w/vのNaCl)、および、(3)5%(w/v)デキストロース挙げられ、トリプタミンのような抗酸化剤や、トウィーン(Tween)20のような安定剤を含んでもよい。
【0114】
選択された細胞集団において細胞死を誘導する方法は、インビトロ,インビボ、またはエクスビボで実施することができる。
インビトロでの使用例としては、自家骨髄を処理し、その後の同じ患者にそれらを移植することにより、病気の細胞または悪性細胞を殺すこと:骨髄を処理し、その後それらを移植することにより、コンピテントT細胞を殺して移植片対宿主疾患(GVHD)を防ぐこと;細胞培養を処理することにより、標的抗原を発現しない望ましい変異体を除く全ての細胞を殺すこと;または、望ましくない抗原を発現する変異体を殺すこと、が挙げられる。
【0115】
非臨床的なインビトロでの使用の条件は、当業者により容易に決定することができる。
臨床的なエクスビボでの使用の例は、ガン治療における自家移植もしくは自己免疫疾患における治療の前に、腫瘍細胞または骨髄由来のリンパ系細胞を除去すること、または、移植の前に、T細胞およびその他の自己由来のリンパ系細胞または同種骨髄もしくは組織を除去することによりGVHDを防ぐこと、である。治療は、以下のように行うことができる。骨髄を患者またはその他の個体から回収し、次に、本発明の細胞毒性物質を濃度約10μM〜1pMの範囲で添加した血清含有培地で、約37℃で約30分間〜約48時間インキュベートする。インキュベーション濃度および時間の正確な条件、すなわち投与量は、当業者により容易に決定される。インキュベーションの後、骨髄細胞を血清含有培地で洗浄し、既知の方法に従って患者の静脈内に戻す。患者が、その他の治療(例えば骨髄回収時と、処理した細胞の自己輸血との間の外科的化学療法または全身照射の過程)を受けているような環境では、処理した骨髄細胞は、標準的な医療器具を用いて液体窒素中で凍結保存される。
【0116】
臨床的なインビボでの使用に関しては、本発明の細胞毒性物質を、溶液または凍結乾燥粉末として供給し、その無菌と内毒素のレベルを試験することができる。結合体投与の適切なプロトコールの例は以下の通りである。結合体は、4週間の間、毎週1回、静脈内ボーラスとして投与される。ボーラス投与量は、50〜100mlの通常の塩類溶液中に添加され、そこに5〜10mlのヒト血清アルブミンを加えてもよい。用量は、1回の静脈内投与あたり10μg〜2000mgであり得る(1日あたり100ng〜20mg/kgの範囲)。処理後4週間で、患者は、週単位で治療を受け続けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、用量、時間などに関する特定の臨床的なプロトコールは、臨床的な状況の根拠に基づき、当業者により決定することができる。
【0117】
インビボまたはエクスビボでの、選択された細胞集団において細胞死を誘導する方法に従って処理することができる医学的な状態の例としては、以下が挙げられる:あらゆるタイプの悪性病変、例えば、肺、乳房、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣およびリンパ系臓器のガン;自己免疫疾患、例えば全身性ループス、リウマチ様関節炎、および、多発性硬化症;移植片拒絶反応、例えば、腎臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、および、骨髄移植拒絶反応;移植片対宿主疾患;ウイルス感染、例えばCMV感染、HIV感染、ADDSなど;および、寄生体感染、例えばランブル鞭毛虫症、アメーバ症,住血吸虫症およびその他の当業者により決定されたものがある。
【0118】
実施例
以下、本発明を非限定的な実施例を参照して説明する。特に指定がない限り、全てのパーセント、割合、部などは、重量で示される。
【0119】
実施例1
タキサン2’の製造
タキサン2’(3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−7−(メチルジスルホニル−プロパノイル)−ドセタキセル)を、市販の10−デアセチルバッカチンIII(図7)から、図8に示すスキームに従って製造した。
【0120】
化合物4〜6’を、Greene等の、J.Am.Chem.Soc.110:5917〜5919(1988年)、および、Ojima等,J.Med.Chem.39:3889〜3896(1996年)、および、本明細書に引用される参考文献に記載されているようにして製造した。
【0121】
化合物7’(7−(トリエチルシリル)−2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−ドセタキセル)を、室温で、ヒドラジン一水和物(1mL)を、6’(65mg,0.059mmol)のエタノール(2mL)溶液に加えることによりで製造した。この反応液を室温で撹拌し、ヘキサン中の40%酢酸エチルを用いた薄層クロマトグラフィーでモニターした。1時間後、この反応を薄層クロマトグラフィーで完了させ、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)で急冷した。水層を酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の40%酢酸エチルを用いて精製し、生成物7’を白色固体として得た(42mg,69%):
【0122】
【化2】

【0123】
化合物8’(2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。化合物7’(35mg,0.029mmol)溶液を、0.1N HClのエタノール(5mL)溶液を0℃で加えることにより作製した。この溶液をゆるやかに室温に温めながら撹拌し、16時間撹拌を続けた。この反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)で急冷し、水層を酢酸エチル(15ml×3)で抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の50%酢酸エチルを用いて精製し、生成物8’を白色固体として得た(20mg,64%):
【0124】
【化3】

【0125】
化合物9’(2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−7−(メチルジスルファミル−プロパノイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。8’(20mg,0.020mmol)の塩化メチレン(3mL)溶液に、DMAP(3mg,0.02mmol)、ジチオ酸(3mg,0.018mmol)、および、EDC(8mg,0.042mmol)を加えた。得られた混合物を一晩撹拌した。ヘキサン中の25%酢酸エチルを用いた薄層クロマトグラフィー分析により、実質的に全ての出発原料が消費され、新しいスポットが生じたことが明らかになった。この反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)で急冷し、塩化メチレン(10ml×3)に抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の25%酢酸エチルを用いて精製し、9’を白色固体として得た(9mg,41%):
【0126】
【化4】

【0127】
タキサン2’(3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−7−(メチルジスルホニル−プロパノイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。9’(9mg,0.008mmol)のピリジン−アセトニトリル(1/1,2mL)溶液に、HF/ピリジン(70:30,0.1mL)を0℃加え、この混合物を室温に温めながら24時間撹拌した。この反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で急冷した。次に、この反応混合物を酢酸エチル(5ml×2)で希釈した。合わせた有機層を水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の60%酢酸エチルを用いて精製し、最終生成物2’を白色固体として得た(5mg,64%):
【0128】
【化5】

【0129】
実施例2
タキサン3’の製造
タキサン3’(3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−2−デベンゾイル−2−(2,5−ジメトキシベンゾイル)−7−(メチルジスルホニル−プロパノイル)−ドセタキセル)を、化合物10’から図9に示すスキームに従って製造した。
【0130】
化合物10’(7−(トリエチルシリル)−2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−2−デベンゾイル−2−(2,5−ジメトキシベンゾイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。9’(36mg,0.031mmol)のエタノール(1.5mL)溶液に、ヒドラジン一水和物(1mL)を室温で加えた。この反応液を室温で撹拌し、薄層クロマトグラフィーでヘキサン中の40%酢酸エチルを用いて(2回展開させた)モニターした。1時間後、反応を薄層クロマトグラフィーで完了させ、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)で急冷した。水層を酢酸エチル(10ml×3)で抽出した。合わせた抽出物を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の35%酢酸エチルを用いて精製し、脱アセチル化した生成物10’を白色固体としてを得た(19mg,57%):
【0131】
【化6】

【0132】
化合物11’(2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−2−デベンゾイル−2−(2,5−ジメトキシベンゾイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。5%塩酸エタノール(9.0mL)溶液を、10’(86.4mg,0.0774mmol)に0℃で加えた。この混合物を、N下で室温に温めながら撹拌した。5時間後、この反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で急冷し、酢酸エチル(25ml×2)に抽出した。次に、合わせた酢酸エチル層を水(25ml×2)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。粗残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の50%酢酸エチルを用いて精製した。生成物11’を白色固体として単離した(61.5mg,79%):
【0133】
【化7】

【0134】
化合物12’(2’−(トリイソプロピルシリルオキシ)−3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−2−デベンゾイル−2−(2,5−ジメトキシベンゾイル)−7−(メチルジスルホニル−プロパノイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。11’(25mg,0.025mmol)、EDC(10mg,0.05mmol)およびDMAP(3mg,0.025mmol)の塩化メチレン(0.8mL)の溶液に、メチルジチオジチオプロピオン酸(3.6mg,0.024mmol)の塩化メチレン(4.0mL)溶液を加えた。この反応液を、N下で、室温で5時間撹拌した。この反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液で急冷し、塩化メチレン(25ml×2)に抽出した。合わせた
有機層を水(15ml×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の30%酢酸エチルを用いて精製し、生成物12’(21.3mg,75%)を得た:
【0135】
【化8】

【0136】
タキサン3’(3’−デフェニル−3’−(イソブテニル)−2−デベンゾイル−2−(2,5−ジメトキシベンゾイル)−7−(メチルジスルホニル−プロパノイル)−ドセタキセル)を以下の工程で製造した。N下で、化合物12’(27.6mg,0.0243mmol)をピリジン−アセトニトリル(1/1,2.0mL)に溶解させた。HF/ピリジン(70:30,0.28mL)を0℃で加え、この反応液を室温に温めながら24時間撹拌した。この反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で急冷し、酢酸エチル(30ml×3)に抽出した。合わせた有機層をさらなる飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(25ml×1)で洗浄し、続いて飽和硫酸銅水溶液(25ml×3)で洗浄した。合わせた有機層を水(25ml×1)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空中で濃縮した。粗残留物を、シリカゲルカラムで溶離液としてヘキサン中の50%酢酸エチルを用いて精製し、3’(19.7mg,82.8%)を得た:
【0137】
【化9】

【0138】
実施例3
インビトロでの細胞毒性分析
本発明のスルフィド、ジスルフィドおよびスルフヒドリル含有タキサン薬物を、インビ
トロで様々なヒト腫瘍細胞系の増殖を抑制するそれらの能力に関して評価することができる。4種の接着細胞系、A431(ヒト類表皮ガン)、SKBR3(ヒト乳房腫瘍)、A549(ヒト肺ガン)、および、MCF−7(ヒト乳房腫瘍)、ならびに、非接着細胞系、Nemalwa(バーキットリンパ腫)がこれら化合物の細胞毒性の判断に用いられる。細胞を化合物に72時間晒し、生存する細胞フラクションを直接的な分析で測定する。A431、SKBR3、A549、および、MCF−7を、プレート効率に関して分析し(Goldmacher等,J.Cell.Biol.102:1312〜1319(1986年))、さらに、Nemalwaを分析は、成長を自動補正することによってなされる(Goldmacher等,J.Immunol.135:3648〜3651(1985年)。次に、このデータからIC50値を計算する。
【0139】
タキサン2’および3’の細胞毒性を以下のように測定した。
A431、A549およびMCF−7細胞を、6−ウェル組織培養プレート中で、10%ウシ胎仔血清が添加されたDMEM培地中で、様々な密度でプレーティングした。タキサン2’を、様々な濃度で加え、37℃、6%COの加湿した雰囲気で約20細胞またはそれ以上のコロニーが形成されるまで(6〜10日間)細胞を維持した。コントロールプレートには、タキサンを加えなかった。次に、細胞をホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、低倍率顕微鏡下でカウントした。次に、プレート効率をコロニー数から決定し、生存細胞フラクションを、処理したサンプルのプレート効率と、コントロールのプレート効率との割合として計算した。
【0140】
図10は、細胞毒性決定の結果を示す。C−10に遊離のヒドロキシ基、C−7に結合基を有するタキサン2’は、A431細胞に対して高い効力を有する(IC50値は8×10−10M)。それに対して、対応するC−10にエステル基を有するタキサン1’(図3)は、3×10−9Mであっても、これら細胞に対して非毒性である。これらの結果は、タキサンのC−10位は、保護されていなくても高い効力を維持することができることを示す。
【0141】
同様に、タキサン3’の細胞毒性効力を確認した。A549およびMCF−7細胞を、6−ウェル組織培養プレート中で、10%ウシ胎仔血清が添加されたDMEM培地中で、様々な密度でプレーティングした。タキサン2’を様々な濃度で加え、37℃、6%COの加湿した雰囲気で約20細胞またはそれ以上のコロニーが形成されるまで(6〜10日間)細胞を維持した。コントロールプレートには、タキサンを加えなかった。次に、細胞をホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、低倍率顕微鏡下でカウントした。次に、プレート効率をコロニー数から決定し、生存細胞フラクションを、処理したサンプルのプレート効率と、コントロールのプレート効率との割合として計算した。
【0142】
図11は、細胞毒性決定の結果を示す。C−10に遊離のヒドロキシ基、C−7に結合基を有するタキサン3’は、試験された2種の腫瘍細胞系に対してより高い効力を示し、IC50値は、A549およびMCF−7細胞それぞれに対して、1.8×10−10M、および、6.3×10−11Mである。これらの結果により、タキサンのC−10位が保護されていなくても、高い効力を維持することができることが確認される。
【0143】
実施例4
抗体への結合
チオール含有タキサンの抗体へのジスルフィド結合を介した結合
チオール含有タキサンの、抗体またはそれらのフラグメントへの、ジスルフィド結合を介した結合は、2段階で行われる。第一工程において、Carlsson等で説明されたように、スクシンイミジルピリジルジチオペンタノエート(SPP)を用いて、ジチオピ
リジル基が抗体または抗体フラグメントに導入される。次に、チオール含有タキサンとの反応によりチオピリジル基を置換し、結合体を生成する。
【0144】
抗体−SS−タキサン結合体の製造
抗体抗−B4、抗−EGF受容体、および、N901またはそれらのフラグメントを、文献に記載されているようにSPDPまたはSPPで修飾する。抗体分子1個あたり平均1〜10個のジチオピリジル基を導入する。
【0145】
25℃で、1mM EDTAを含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中、濃度1mg/mlの、ジチオピリジルで修飾された抗体の溶液を、チオール含有タキサン(1.25モル当量/ジチオピリジル基)で処理する。修飾された抗体またはそれらのフラグメントからのチオピリジンの放出を、343nmでの分光光度法によりモニターし、約20時間で完了することを見出す。抗体−タキサン結合体を精製し、未反応の薬物およびその他の低分子量材料をセファデックスG−25カラムを用いたゲルろ過により除去する。抗体分子1個あたりに結合するタキサン分子の数を、230nmの吸光度と275nmの吸光度との比率を測定することにより決定する。この方法により、抗体分子1個あたり平均1〜10個のタキサン分子を、ジスルフィド結合を介して結合させることができる。
【0146】
チオール含有タキサンの、抗体への、切断不可能なチオエーテル結合を介した結合
チオール含有タキサンの結合は、2段階で行われる。まず、抗体またはそれらのフラグメントを、スクシンイミジルマレイミドメチルシクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)と反応させ、マレイミド基を導入する。次に、修飾された抗体をチオール含有タキサンと反応させ、チオエーテル結合を形成する。
【0147】
抗体−タキサン結合体(切断不可能)の製造
抗体、抗−B4、抗−EGP受容体、および、N901またはそれらのフラグメントを、文献で説明されたようにSMCCで修飾する。
【0148】
修飾された抗体または抗体フラグメントを、チオール含有タキサン(1.25モル当量/マレイミド基)で処理する。この混合物を、4℃で一晩インキュベートする。抗体−タキサン結合体を上述のように精製する。典型的には、抗体分子1個あたり平均1〜10個のタキサン分子が結合する。
【0149】
実施例5
抗体−タキサン結合体の特定の製造
ヒトEGF受容体(EGFR)に対して作られたマウスのモノクローナル抗体を製造した。EGF受容体は、数種のヒト扁平上皮細胞ガン(例えば、頭および首、肺および乳房のガン)において過剰発現されることがわかっている。4種の異なる抗体、KS−61(IgG2a)、KS−77(IgG1)、KS−78(Ig2a)、および、KS−62(IgG2a)を、ジスルフィド結合を介してタキサンに結合させた。ヒト乳房および卵巣ガンで過剰発現されるneuガン遺伝子に対して作られたマウスのモノクローナル抗体TA1をTA1−タキサン結合体の製造に用いた。これら特定の結合体の製造を以下で説明する。
【0150】
抗−EGFR抗体KS−61−タキサン結合体の製造
まず、抗−EGFR抗体KS−61をN−スクシンイミジル−4−[2−ピリジルジチオ]ペンタノエート(SPP)で修飾し、ジチオピリジル基を導入した。NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中の抗体(2.3mg/mL)を、SPP(11モル当量,エタノール中)で処理した。最
終エタノール濃度は、1.4%(v/v)であった。周囲温度で90分間後、リシン(50mM)を加え、全ての非共有結合で結合したSPPの除去を促進した。反応を2時間進行させ、次に、上記緩衝液中で平衡化したセファデックスG25カラムを用いたゲルろ過で精製した。抗体含有フラクションをプールし、サンプルをジチオスレイトールで処理し、343nmでの吸光度変化を測定することにより修飾度を決定した(ピリジン−2−チオンの放出は、ε343=8,080M−1cm−1)。抗体分子1個あたり5.0個のピリジルジチオ基が結合した抗体の回収率は約90%であった。
【0151】
修飾された抗体を、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、最終濃度を1.28mg/mLにした。次に、タキサン−SH(ジチオピリジル基あたり1.7当量)のエタノール溶液(最終反応混合物中、10%v/v)を、修飾された抗体溶液に加えた。周囲温度で、アルゴン下で24時間反応を進行させた。343nmでの分光光度法で、抗体上のタキサン−SHとジチオピリジル基との間のジスルフィド交換により生じたピリジン−2−チオンの放出に関して反応の進行をモニターした。343nmでの吸光度の増加は、タキサンが抗体に結合したことを示した。次に、反応混合物を、20%プロピレングリコールを含むリン酸緩衝塩類溶液(PBS,pH6.5)平衡化したセファデックスG25SPゲルろ過カラムに添加した。主要なピークは、単量体KS−61−タキサンを含んでいた。280nmでの吸光度を測定することにより、結合体の濃度を決定した。この結合体を、トウィーン80(0.05%)と、ヒト血清アルブミン(HSA,1mg/mL)と共に配合した。
【0152】
抗−EGFR抗体KS−77−タキサン結合体の製造
抗−EGFR抗体KS−77を、N−スクシンイミジル4−[2−ピリジルジチオ]ペンタノエート(SPP)で修飾し、ジチオピリジル基を導入した。抗体(5.0mg/mL)の50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)溶液を、SPP(11モル当量,エタノール中)で処理した。最終エタノール濃度は、2%(v/v)であった。周囲温度で90分間後、リシン(50mM)を加えて、全ての非共有結合で結合したSPPの除去を促進した。反応混合物を2時間インキュベートし、次に、上記緩衝液中で平衡化したセファデックスG25カラムを用いたゲルろ過で精製した。抗体を含むフラクションをプールし、サンプルをジチオスレイトールで処理し、343nmでの吸光度変化を測定することにより修飾度を決定した(2−メルカプトピリジンの放出は、ε343=8,080M−1cm−1)。抗体分子1個あたり4.24個のピリジルジチオ基が結合した抗体の回収率は約90%であった。
【0153】
修飾された抗体を、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、最終濃度を1.4mg/mLにした。次に、タキサン−SH(ジチオピリジル基あたり1.7当量)のエタノール溶液(最終反応混合物中、10%v/v)を修飾された抗体溶液に加えた。周囲温度で、アルゴン下で24時間反応を進行させた。343nmでの吸光度の増加を記録したところ、ピリジン−2−チオンが放出され、タキサンが抗体に結合していることが示された。次に、反応混合物を、リン酸緩衝塩類溶液(PBS,pH6.5)で平衡化したセファクリルS300HRゲルろ過カラムに添加した。主要なピークは、単量体KS−77−タキサンを含んでいた。280nmでの吸光度を測定することにより、抗体KS−77の濃度を決定した。この結合体を、トウィーン80(0.06%)と、HSA(1mg/mL)と共に配合した。
【0154】
抗−EGFR抗体KS−62−タキサン結合体の製造
抗EGF抗体−タキサン結合体(KS−62−タキサン)を、上記の抗EGPR抗体KS−77−タキサン結合体の製造に関して記載されているのと類似した方法で製造した。修飾した抗体を、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、最終濃度を2.5mg/mLにした。抗体を、
SPPで修飾し、抗体分子1個あたりに5.25個のピリジルジチオ基を導入した。次に、タキサン−SH(1.7当量)のエタノール溶液(最終反応混合物中、10%v/v)を、修飾された抗体溶液に加えた。周囲温度で、アルゴン下で24時間反応を進行させた。この結合体を、リン酸緩衝塩類溶液(PBS,pH6.5)で平衡化したセファクリルS300HRゲルろ過カラムを通過させて精製した。主要なピークは、単量体KS−62−タキサンを含んでいた。この結合体を、トウィーン80(0.01%,w/v)、および、HSA(1mg/mL)を含むPBSに配合した。
【0155】
抗EGFR抗体KS−78−タキサン結合体の製造
抗EGFR抗体−タキサン結合体、KS−78−タキサンを、上記の抗EGPR抗体KS−77−タキサン結合体の製造に関して記載されているのと類似した方法で製造した。修飾した抗体を、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、最終濃度を1.6mg/mLにした。抗体をSPPで修飾し、抗体分子1個あたり4.0個のピリジルジチオ基を導入した。次に、タキサン−SH(1.7当量)のエタノール溶液(最終反応混合物中、15%v/v)を、修飾した抗体溶液に加えた。周囲温度で、アルゴン下で24時間反応を進行させた。次に、この溶液を2つのバッチ(バッチAおよびバッチB)に分け、これらを別々に処理した。バッチAを、2mM CHAPS(3−[(コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、および、20%(v/v)プロピレングリコールを含むPBS(pH6.5)に対して透析した。最終溶液のpHは6.0であった。バッチBを、20%(v/v)プロピレングリコールを含むPBS(pH6.5)に透析した。透析の後、HSA(1mg/mL)を、両方のバッチに加えた。バッチBをさらに、トウィーン80(0.05%,w/v)で処理した。
【0156】
TA1−タキサン結合体の製造
乳房および卵巣腫瘍で発現されたneuガン遺伝子に結合するマウスのモノクローナル抗体TA1を、タキサン結合体の製造に用いた。TA1(3.2mg/mL)の、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)の溶液を、SPP(8.0モル当量、エタノール中)で処理した。最終エタノール濃度は、5%(v/v)であった。周囲温度で90分間後、リシン(50mM)を加えて、全ての非共有結合で結合したSPPの除去を促進した。反応混合物を2時間インキュベートし、次に、上記緩衝液中で平衡化したセファデックスG25カラムを用いてゲルろ過した。抗体含有フラクションをプールし、サンプルをジチオスレイトールで処理し、343nmでの吸光度変化を測定することにより修飾度を決定した(ピリジン−2−チオンの放出は、ε343=8,080M−1cm−1)。抗体分子1個あたり4.9個のピリジルジチオ基が結合した抗体の回収率は約90%であった。
【0157】
修飾された抗体を、NaCl(50mM)およびEDTA(2mM)を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で希釈し、最終濃度を1.0mg/mLにした。タキサン−SH(取り込まれたピリジルジチオ基あたり1.7当量)のエタノール溶液(最終反応混合物中、10%v/v)を、次に、修飾された抗体溶液に加えた。周囲温度で、アルゴン下で24時間反応を進行させた。ピリジン−2−チオンの放出(343nmでモニターした)により、抗体上のタキサン−SHとピリジルジチオ置換基とのジスルフィド交換が完了したことが示された。次に、反応混合物の一部(4.0mg)を、リン酸緩衝塩類溶液(PBS,pH6.5)で平衡化したセファクリルS300HRゲルろ過カラムに添加した。主要なピークは、単量体TA1−タキサンを含んでいた。残存した結合体を0.5mg/mLに希釈し、NaCl(50mM)、EDTA(2mM)および20%プロピレングリコールを含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に透析した。抗体TA1の濃度を、280nmでの吸光度を測定することにより両方の種類で決定した。この結合体を、トウィーン80(0.01%)、および、HSA(1mg/mL)を含むP
BSに配合した。
【0158】
実施例6
タキサンと酸不安定性のリンカーとを結合させるその他の方法
タキサンは、ジシクロヘキシル−カルボジイミドとジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下で、化学文献に記載されている標準的な方法で、N−保護アミノ酸(例えばN−tboc−1−アラニン)でエステル化することができる。t−boc保護基のトリフルオロ酢酸での切断により、末端アミノ基含有タキサンエステルを得ることができる。このアミノ基含有タキサンは、前に記載した通り、抗体またはそれらのフラグメントおよびその他の細胞結合性物質へ、酸不安定性のリンカーを介して結合させることができる(Blattler等,Biochemistry,24:1517〜1524(1985年
)、米国特許第4,542,225号、第4,569,789号および第4,764,368号)。
【0159】
光不安定性のリンカー
上述したアミノ基含有タキサン誘導体は、前に記載した通り、細胞結合性物質に、光不安定性のリンカーを介して結合させることができる。(Senter等,Photochemistry and Photobiology,42:231〜237(1985年)、米国特許第4,625,014号)。
【0160】
ペプチダーゼ不安定性のリンカー
上述したアミノ基含有タキサンはまた、細胞結合性物質に、ペプチドスペーサーリンカーを介して結合させることもできる。これまでに、薬物と高分子タンパク質キャリアーとの間の短いペプチドスペーサーが血清中で安定であるが、細胞内リソソームペプチダーゼにより容易に加水分解されることが示されている(Trouet等,Proc.Nat’l.Acad.Sci,79:626〜629(1982年))。アミノ基含有タキサンは、1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド−HClのような縮合剤を用いて、Ala−Leu、Leu−Ala−LeuまたはAla−Leuの二量体のようなペプチドと縮合し、タキサンのペプチド誘導体を得ることができ、次に、これを細胞結合性物質に結合させることができる。
【0161】
エステラーゼ不安定性のリンカー
タキサンは、ヒドロキシル基と無水コハク酸との反応でエステル化し、次に、細胞結合性物質に結合させ、細胞内エステラーゼにより切断され遊離の薬物を解放することができる結合体を製造することができる。(例えば:Aboud−Pirak等,Biochem.Pharmacol.,38:641〜648(1989年),Laguzza等,J.Med.Chem.,32:549〜555(1989年)を参照)。
【0162】
実施例7
インビボでの抗腫瘍活性
SCIDマウスにおけるヒト扁平上皮ガン(A431)異種移植片に対する抗EGF受容体と抗体−タキサンとの結合体の抗腫瘍作用を以下のように確立した。2種の異なる抗−ヒト上皮成長因子受容体−タキサン結合体(抗EGFR−タキサン結合体)、KS−61−タキサン、および、KS−77−タキサンの抗腫瘍作用を、SCIDマウスで、ヒト腫瘍の異種移植片モデルを用いて評価した。
【0163】
5週齢の雌SCIDマウス(25匹)の右脇腹の皮下に、0.1mLの無血清培地中のA−431ヒト扁平上皮ガン細胞(1.5×10細胞/マウス)を接種させた。腫瘍を、平均サイズが100.0mm(54−145mmの範囲)になるまで11日間増殖させた。次に、これらの動物を、それらの腫瘍サイズに従って、ランダムに4つの群に分
けた(1群あたり3〜5匹の動物)。第一群には、KS−61−タキサン結合体(10mg/kg,1日5回)を静脈内投与した。第二群には、KS−77−タキサン結合体(10mg/kg,1日5回)を静脈内投与した。第三群には、無(結合していない)タキサン(0.24mg/kg,1日5回,静脈内に)を、結合体に存在する量と同じ投与量で投与した。第四群(コントロール動物群)には、第一群〜第三群と同じ治療スケジュールを用いてPBSを投与した。
【0164】
腫瘍サイズを毎週2回測定し、腫瘍の容積を、式:1/2(長さ×幅×高さ) を用いて計算した。動物の重量も毎週2回測定した。結果を図12、および、13に示す。コントロールマウス群の腫瘍は、31日で、ほぼ1000mmのサイズに成長した。遊離のタキサンでの処理は治療効果を示さず、この群の腫瘍は、PBSを投与されたコントロール動物群と実質的に同じ速度で成長した。
【0165】
対照的に、抗EGFR−タキサン結合体はいずれも、顕著な抗腫瘍活性を示し、実験期間中(KS−61−タキサン結合体は34日間、KS−77−タキサン結合体は27日間)、全ての処理動物で腫瘍成長の完全な阻害が起こった。また、このデータによれば、このモデルにおいて、腫瘍特異的抗体を用いたタキサンの標的化送達は、結合していないタキサンを同等の投与量で用いても抗腫瘍効果が示されなかったため、抗腫瘍活性にとって極めて重要であることも示される。重要なことは、体重損失が少しも起こらなかったことで実証されたように、用いられた抗体−タキサン結合体の投与量は、動物に対して非毒性であったことである(図13を参照)。
【0166】
実施例8
抗体−タキサン結合体のインビトロでの細胞毒性
抗EGFR−タキサン結合体、KS−78−タキサンの細胞毒性を、EGF−受容体陽性ヒトA431細胞系(ATCC CRL1555)を用いたクローン形成分析で測定した。N901−タキサン結合体(ヒトCD56に対するマウスモノクローナル抗体N901で作製された類似の結合体)は、A431細胞がその標的抗原であるCD56を発現しないため、特異性コントロールとして試験された。TA1−タキサン結合体(ヒトNeu抗原に対するマウスモノクローナル抗体TA1を用いて作製された結合体)の細胞毒性を、抗原陽性ヒト細胞系SK−BR−3(ATCC HTB30)、および、抗原陰性A431細胞系で測定した。細胞を、6−ウェル組織培養プレート中で、10%ウシ胎仔血清が添加されたDMEM培地中で、様々な密度でプレーティングした。免疫結合体を様々な濃度で加え、37℃、6%COの加湿した雰囲気で約20細胞またはそれ以上のコロニーが形成されるまで(6〜10日間)細胞を維持した。コントロールプレートには、免疫結合体を加えなかった。次に、細胞をホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、低倍率顕微鏡下でカウントした。次に、プレート効率をコロニー数から決定し、生存細胞フラクションを、処理したサンプルのプレート効率と、コントロールのプレート効率との割合として計算した。
【0167】
図14は、標的抗原陽性細胞系A431における、KS−78−タキサン結合体の2つのバッチに関する細胞毒性決定の結果を示す。両方のバッチからの結合体は、標的細胞に対して類似の毒性を示す;濃度10−8Mでの6日間の処理により、10−2未満(1%未満の生存細胞)の生存するフラクションが達成された。コントロール結合体であるN901−タキサンは(A431細胞の表面にその抗原が存在しない)、3×10−8Mまでの濃度では細胞毒性を示さない。また、結合していないKS−78抗体も、極めてわずかな細胞毒性効果しか示さない。これらの結果は、KS−78−タキサン結合体の標的抗原特異的細胞毒性を実証している。
【0168】
TA1−タキサン結合体の細胞毒性効力と選択性を、標的抗原陽性細胞系SK−BR−
3、および、標的抗原陰性の細胞系A431を用いて分析した。結果を図15に示す。10−9Mの結合体濃度で、90%超の標的SK−BR−3細胞が死滅した(生存するフラクションは0.1未満)、同時に、非標的A431細胞に対する毒性は観察されなかった。これらの結果は、抗原陽性細胞を選択的に死滅させること、および、結合体の細胞毒性効果は、その抗体成分を介した特異的結合に依存することを実証している。
【0169】
実施例9および10
一般的な方法
化学物質は、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)またはその他の市販先から得て、特に他の規定がない限り、それ以上精製しないで用いた。全ての無水の反応は、アルゴン下で、オーブンで乾燥したガラス製品中で行われた。テトラヒドロフラン(THF)をナトリウム/ベンゾフェノンで蒸留した。全ての反応を、E.メルク(E.Merck)の分析用薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート(シリカゲル60GF,アルミニウム板上)でモニターし、254nmのUV光、および/または、バニリン/硫酸噴霧、および/または、リンモリブデン酸/エタノール噴霧で分析した。カラムクロマトグラフィー用のシリカゲルをE.メルクから購入した(230〜400メッシュ)。分離用薄層クロマトグラフィー(PTLC)プレート(シリカゲル60GP)を、アナルテック(Analtech)から購入した。Hおよび13CNMRスペクトルを、ブルカー(Bruker)400MHzスペクトロメーターでのCDClで得て、化学シフトとカップリング定数を関連化合物のものと比較することによって割り当てた。化学シフトはδ値で報告され、カップリング定数ヘルツで報告される。アジレント(Agilent)のエスクワイア(Esquire)3000エレクトロスプレーマススペクトロメーターで、マススペクトルを得た。成句「通常の方法で得た(worked-up
in the usual way)」とは、特に他の規定がない限り、反応混合物を過量の有機溶媒で希釈し、水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で溶媒を蒸発させることを意味する。β−ラクタム4,19、および、38、バッカチンIII誘導体7を、文献で報告された方法に従って製造した(Brieva,R.Crich,J.Z.;Sih,C.J.J.Org.Chem.,58:1068〜1075(1993年);Holton,R.A.;Zhang,Z.;Clarke,P.A.;Nadizadeh,H.;Procter,J.D.Tetrahedron Lett.39:2883〜2886(1998年);Chen,S−H.;Vittorio,F.;Wei,J−M.;Long,B.;Fairchild,C.;Mamber,S.W.;Kadow,J.F.;Vyas,D.;Doyle,T.W.Bioorganic Med.Chem.Lett,4(3):479〜482(1994年))。これら化合物のNMRデータは文献に記載のデータと同一であった。
【0170】
実施例9
本発明の新規のタキソイド12−15、31−35、および、50−54の合成(図5および16)を以下に説明する。
【0171】
バッカチンIII誘導体7と、β−ラクタム6a−d、21−25および40−44とのカップリングの一般的な方法
シリルで保護されたタキソイド8−11、26−30、および、45−49の合成である。バッカチン誘導体7(0.04mmol)のTHF(2mL)の撹拌溶液に、NaH(2mmol)を加えた。反応混合物を15分間撹拌し、β−ラクタム(例えば6a−d、21−25、または、40−44;0.08mmol)を導入し、反応混合物をさらに4〜6時間撹拌した。この反応液をEtOAcで希釈し、酢酸で急冷し、通常の方法で得た。最終的に、粗生成物をPTLCプレートにアプライし(30%のEtOAc/ヘキサン)、目的生成物を単離した。
【0172】
シリル保護基の除去の一般的な方法;タキソイド12−15、31−35、および、50−54の合成
それぞれ10mgの保護されたタキソイド8−11、26−30、または、45−49)のTHF(0.5mL)の撹拌溶液に、0.15mLのピリジンを0℃で加えた。次に、5分にわたり、この撹拌溶液に0.15mLのHF−ピリジンを導入した。反応混合物を室温にし、さらに24時間撹拌した。次に、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、通常の方法で得た。最終的に、粗生成物をPTLCプレートにアプライし(60%のEtOAc/ヘキサン)、目的生成物を単離した。
【0173】
本発明の代表的なジスルフィド含有タキソイド(図6,17)の合成
C−10アセテート基の除去。16の合成。
タキソイド10(〜70mg)の、エタノール(1.5mL)の撹拌溶液に、ヒドラジン一水和物(0.6mL)を室温で加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次に、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、通常の方法で得た。粗生成物をPTLCプレートにアプライし(10%のEtOAc/CHCl)、目的生成物を単離した。
【0174】
タキソイドのC−10ヒドロキシル基のエステル化。17および36の合成。
カルボン酸のジクロロメタン(酸30mgごとに2mL)の撹拌溶液に、室温で、EDC(l−[3−(ジメチルアミノ)プロピル−3−エチルカルボジイミド塩酸塩](1当量)を加え、反応混合物を15分間撹拌した。次に、DMAP(4−(ジメチルアミノ)ピリジン)(触媒的な量)を加え、反応混合物をさらに5分間撹拌した。次に、C−10脱アセチルタキソイド16(1/15当量)を室温で導入し、反応混合物をさらに4時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、通常の方法で得た。最終的に、粗生成物をPTLCプレートにアプライし(10%のEtOAc/ヘキサン)、目的生成物を単離した。
【0175】
ビスルフィド含有タキソイド18および37の合成
それぞれ10mgの保護されたタキソイド17または36のTHF(0.5mL)の撹拌溶液に、0℃で、0.15mLのピリジンを加えた。次に、5分間にわたって、0.15mLのHF−ピリジンを撹拌溶液に導入した。反応混合物を室温にし、さらに24時間撹拌した。次に、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、通常の方法で得た。最終的に、粗生成物をPTLCプレートにアプライし(60%のEtOAc/ヘキサン)、目的生成物18および37を得た。
【0176】
化合物6a
【0177】
【化10】

【0178】
化合物6b
【0179】
【化11】

【0180】
化合物6c
【0181】
【化12】

【0182】
化合物6d
【0183】
【化13】

【0184】
化合物8
【0185】
【化14】

【0186】
化合物9
【0187】
【化15】

【0188】
化合物10
【0189】
【化16】

【0190】
化合物11
【0191】
【化17】

【0192】
化合物12
【0193】
【化18】

【0194】
化合物13
【0195】
【化19】

【0196】
化合物14
【0197】
【化20】

【0198】
化合物15
【0199】
【化21】

【0200】
化合物16
【0201】
【化22】

【0202】
化合物17
【0203】
【化23】

【0204】
化合物18
【0205】
【化24】

【0206】
化合物19
【0207】
【化25】

【0208】
化合物20
【0209】
【化26】

【0210】
化合物21
【0211】
【化27】

【0212】
化合物22
【0213】
【化28】

【0214】
化合物23
【0215】
【化29】

【0216】
化合物24
【0217】
【化30】

【0218】
化合物25
【0219】
【化31】

【0220】
化合物26
【0221】
【化32】

【0222】
化合物27
【0223】
【化33】

【0224】
化合物28
【0225】
【化34】

【0226】
化合物29
【0227】
【化35】

【0228】
化合物30
【0229】
【化36】

【0230】
化合物31
【0231】
【化37】

【0232】
化合物32
【0233】
【化38】

【0234】
化合物33
【0235】
【化39】

【0236】
化合物34
【0237】
【化40】

【0238】
化合物35
【0239】
【化41】

【0240】
化合物36
【0241】
【化42】

【0242】
化合物37
【0243】
【化43】

【0244】
化合物38
【0245】
【化44】

【0246】
化合物40
【0247】
【化45】

【0248】
化合物41
【0249】
【化46】

【0250】
化合物42
【0251】
【化47】

【0252】
化合物43
【0253】
【化48】

【0254】
化合物44
【0255】
【化49】

【0256】
化合物45
【0257】
【化50】

【0258】
化合物46
【0259】
【化51】

【0260】
化合物47
【0261】
【化52】

【0262】
化合物48
【0263】
【化53】

【0264】
化合物49
【0265】
【化54】

【0266】
化合物50
【0267】
【化55】

【0268】
化合物51
【0269】
【化56】

【0270】
化合物52
【0271】
【化57】

【0272】
化合物53
【0273】
【化58】

【0274】
化合物54
【0275】
【化59】

【0276】
実施例10
インビトロでの細胞毒性分析
本発明の新規のタキソイド、および、ジスルフィド含有タキサン薬物を、インビトロでヒト腫瘍細胞系の増殖を抑制するそれらの能力に関して評価した。これら化合物の細胞毒性の判断に、ヒト腫瘍細胞系A−549(ヒト肺ガン)、および、MCF−7(ヒト乳房腫瘍)を用いる。細胞をこれら化合物に72時間晒し、直接的な分析で生存する細胞フラクションを測定する。A549およびMCF−7を、プレート効率に関して分析し(Goldmacher等,J.Cell.Biol.102:1312〜1319(1986年)、次に、このデータからIC50値を計算する。
【0277】
タキソイド14、15、31-35、50-54、および、ジスルフィド含有タキソイドの細胞毒性
18および37を以下のように測定した。A549およびMCF−7細胞を、6−ウェル組織培養プレート中で、10%ウシ胎仔血清が添加されたDMEM培地中で、様々な密度でプレーティングした。タキサンを様々な濃度で加え、37℃、6%COの加湿した雰囲気で約20細胞またはそれ以上のコロニーが形成されるまで(6〜10日間)細胞を
維持した。コントロールプレートには、タキサンを加えなかった。次に、細胞をホルムアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色し、低倍率顕微鏡下でカウントした。次に、プレート効率をコロニー数から決定し、生存細胞フラクションを、処理したサンプルのプレート効率と、コントロールのプレート効率との割合として計算した。
【0278】
図10は、本発明の12種の新規のタキソイドの細胞毒性決定の結果を示す。フェニル置換基をRに有するタキサン52を除き、その他全ての新規のタキソイドは、A−549およびMCF−7細胞系両方に対して極めて高い効力を有していた(IC50値は、10−10〜10−11Mの範囲)。タキサン52の試験された両方の細胞系に対する細胞毒性は、より低かった(IC50値は、3×10−9M)。
【0279】
図11は、本発明の代表的なジスルフィド含有タキソイドに関する細胞毒性曲線を示す。ビスルフィド含有タキソイド18および37はいずれも、A−549およびMCF−7細胞の両方に対して極めて高い効能を有し、急勾配の死滅曲線を示す。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】様々なタキサンの構造を示す化学式であり、上記のOjima等により説明されたより効能のあるタキサンのうちいくつかを示す。
【図2】本発明に係る、C−10位に遊離のヒドロキシル基、C−7に結合基を有するジスルフィド含有タキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
【図3】3種のタキサンの構造を示す。タキサン1は、C−10にエステル基、C−7に結合基を有する。タキサン2’およびタキサン3’はいずれも、C−10に遊離のヒドロキシ基、C−7に結合基を有する。
【図4】様々なタキサンの構造を示す化学式であり、米国特許第6,340,701号、米国特許第6,372,738号、および、米国特許第6,436,931号で説明されたより効力のあるタキサンのいくつかを示す。
【図5】以前に説明されていない、Rおよび/またはRに置換基を有する本発明に係る新規のタキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
【図6】以前に説明されていない、Rおよび/またはRに置換基を有する本発明に係る新規のジスルフィド含有タキサンのいくつかの構造を示す化学式である。
【図7】タキサンを製造するための出発原料である10-デアセチルバッカチンIIIの構造を示す。
【図8】タキサン2’製造における合成工程を示す。
【図9】タキサン3’製造における合成工程を示す。
【図10】タキサン1および2’のA431細胞に対するインビトロでの効力の比較を示す。
【図11】A549およびMCF−7細胞に対するタキサン3’のインビトロでの細胞毒性を示す。
【図12】SCIDマウスにおける、抗−EGF受容体と抗体−タキサンとの結合体の、ヒト扁平上皮ガン(A431)異種移植片に対する抗腫瘍作用を示す。
【図13】実施例8で説明された実験で用いられたSCIDマウスの体重変化を示す。
【図14】標的抗原陽性細胞系A431に対する抗EGF受容体−タキサン結合体の細胞毒性決定の結果と、標的抗原を発現しないA431細胞系に対するN901−タキサン結合体の細胞毒性決定の結果を示す。
【図15】標的抗原陽性細胞系SK−BR−3、および、非標的抗原陰性細胞系A431における、TA1−タキサン結合体の細胞毒性効力と選択性を示す。
【図16a】本発明の第二の態様に係る新規のタキサンの製造における合成工程を示す。
【図16b】本発明の第二の態様に係る新規のタキサンの製造における合成工程を示す。
【図16c】本発明の第二の態様に係る新規のタキサンの製造における合成工程を示す。
【図17a】本発明の第二の態様に係る新規のジスルフィド含有タキサンの製造における合成工程を示す。
【図17b】本発明の第二の態様に係る新規のジスルフィド含有タキサンの製造における合成工程を示す。
【図18】本発明の第二の態様に係る新規のタキサンのインビトロでの細胞毒性を示す。
【図19a】本発明の第二の態様に係るジスルフィド含有タキサンのインビトロでの細胞毒性を示す。
【図19b】本発明の第二の態様に係るジスルフィド含有タキサンのインビトロでの細胞毒性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物:
【化1】

式中:
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
は、Hであり;
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基であり;
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、複素環式基、−OC(CH、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または、複素環のいずれかから形成されたカルバメートであり;
は、結合基であり;および、
は、H、複素環式基もしくはアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルもしくはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは窒素含有複素環式基である)、または、式−CONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【請求項2】
は、−CH=C(CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)で示される化合物:
【化2】

式中:
は、結合基であり;
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
およびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環であり、Rはさらに、−OC(CH、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリールもしくは複素環のいずれかから形成されたカルバメートであり;
およびRは、同一または異なって、H、複素環式もしくはアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルもしくはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは窒素含有複素環である)、または、式−CONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【請求項4】
式(I)で示される化合物;
【化3】

式中:
は、結合基であり;
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
およびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環であり、Rはさらに、−OC(CH、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリールもしくは複素環式基のいずれかから形成されたカルバメートであり;
およびRは、同一または異なって、H、複素環式もしくはアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルもしくはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは窒素含有複素環である)、または、式−CONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【請求項5】
式(I)で示される化合物:
【化4】

式中:
は、結合基であり;
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
およびRは、同一または異なって、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基であり、Rはさらに、−OC(CH、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または、複素環式基のいずれかから形成されたカルバメートであり;
およびRは、同一または異なって、H、複素環式基もしくはアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルもしくはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは、窒素含有複素環式基であり、例えばピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノである)、または、式−CONR10
11で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【請求項6】
式(I)で示される化合物:
【化5】

式中:
は、結合基であり;
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基であり、Rはさらに、−OC(CH3)、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または、複素環のいずれかから形成されたカルバメートであり;
、RおよびRは、同一または異なって、H、複素環式基もしくはアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状アルキルまたはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは、窒素含有複素環であり、例えばピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノである)、または、式−CONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールもしくは置換アリールである)である。
【請求項7】
式(I)で示される化合物:
【化6】

式中:
は、結合基であり;
は、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
’およびR”は、同一または異なって、H、電子求引基、または、電子供与基であり;
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキルもしくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキルもしくはシクロアルケニル、アリール、または、複素環式基であり、Rはさらに、−OC(CH、または、3〜10個の炭素原子を有する前記アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、または、複素環のいずれかから形成されたカルバメートであり;
、RおよびRは、同一または異なって、H、複素環式基もしくははアリールエーテル、エステルもしくはカルバメート、または、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキルもしくはアルケニルエステルもしくはエーテル、または、式−COXで示されるカルバメート(式中、Xは、窒素含有複素環式基であり、例えばピペリジノ、モルホリノ、ピペラジノ、N−メチルピペラジノである)、または、式−CONR1011で示されるカルバメート(式中、R10およびR11は、同一または異なって、H、1〜10個の原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、または、1〜10個の炭素原子を有する単純アリールまたは置換アリールである)である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図17a】
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【図17b】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【公開番号】特開2010−106040(P2010−106040A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4372(P2010−4372)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2004−526000(P2004−526000)の分割
【原出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】