説明

新規アセトフェノン化合物およびアセトフェノン類の製造方法

【課題】新規アセトフェノン化合物及びアセトフェノン類の新規製造方法の提供。
【解決手段】


式(1):[式中、XはBr等、Yはアルキル等、Zは、アミン等を表し、nは整数を表す。]で表される化合物に、式(2):で表されるビニルエーテル化合物又はエタナミド化合物を塩基、ホスフィン又は芳香族アミン配位子及び担持パラジウム触媒の存在下にアルコール溶液中で反応を行い、反応系内で得られる式(4):で表される中間体または式(5):式(5)中、で表される中間体を酸と反応させることによる式(6):で表されるアセトフェノン類の製造方法および(12)で表されるアセトフェノン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬および各種化学品の製造中間体として有用なアセトフェノン化合物及びアセトフェノン類の製造方法に関するものである。
ヘック反応を利用してアセトフェノン類を合成する場合、式(13)に示すように、その後の酸加水分解によりアセトフェノン類に誘導されるα−置換体、及び副生成物であるβ−置換体が生成するため、このα−選択性の向上が主要な研究課題となってきた。
【0002】
【化1】

【0003】
高いα−選択性を達成した例としては、非特許文献1〜5などが知られている。しかし、これらの反応では酢酸パラジウム等の均一系パラジウム触媒を用いており、その回収は容易ではなく工業的な製造方法として実用的ではない。不均一系パラジウム触媒での反応例として非特許文献6及び7が挙げられるが、α−置換体の収率は50%程度にとどまっており、高いα−選択性を達成した例はない。
【非特許文献1】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー,(2001年),第66巻(12),4340ページ
【非特許文献2】ジャーナル オブ モレキュラー キャタリシス A,(2002年),第187巻,189ページ
【非特許文献3】テトラへドロン,(2005年)第61巻,9902ページ
【非特許文献4】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー,(1992年),第57巻(5),1481ページ
【非特許文献5】アンゲバンテ ケミー インターナショナル エディション,(2006年),第45巻,4152ページ
【非特許文献6】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー,(1987年),第52巻(16),3529ページ
【非特許文献7】ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー,(2001年),第123巻(25),5990ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医農薬および各種化学品の製造中間体として有用な新規アセトフェノン化合物及びアセトフェノン類の工業的に適した新規製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、不均一系触媒である担持パラジウム触媒を用いて、高収率、高選択的にアセトフェノン類を製造できることを見いだし、発明に至った。
すなわち、本発明は、
式(1):
【0006】
【化2】



【0007】
[式中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフルオロメタンスルホニルオキシを表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cハロアルキルチオ、ホルミル、カルボキシル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cハロアルキルスルホニル、‐CH2N(R2)R1、‐CON(R2)R1又は‐N(R2)R1(ただし、Xが塩素原子のとき塩素原子を除く)を表し、nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
Zは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cハロアルキルチオ、ホルミル、カルボキシル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cハロアルキルスルホニル、‐CH2N(R2)R1、‐CON(R2)R1又は‐N(R2)R1(ただし、Xが塩素原子のとき塩素原子を除く)を表し、
R1は、水素原子、C〜Cアルキル、ホルミル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル又はC〜Cハロアルキルスルホニルを表し、
R2は、水素原子、C〜Cアルキル、ホルミル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル又はC〜Cアルコキシカルボニルを表し、R1及びR2は、互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
nは、0から4の整数を表す。]
で表される化合物と式(2):
【0008】
【化3】

【0009】
[式(2)中、Wは、‐OR、‐N(R) COR又は式(3):
【0010】
【化4】

【0011】
を表し、
Rは、C〜C12アルキル、C〜Cハロアルキル、ビニルオキシ(C〜C12)アルキル、ヒドロキシ(C〜C12)アルキル又はC〜Cアルコキシ(C〜C12)アルキルを表し、
RおよびRは、各々独立に、水素原子、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ又は、RおよびRが結合しているアミド基とともにC〜Cアルキルで形成する4〜7員環を表す。]
で表される化合物を塩基、ホスフィン又は芳香族アミン配位子及び担持パラジウム触媒の存在下で反応を行い、反応系内で得られる式(4):
【0012】
【化5】

【0013】
[式(4)中、W、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される中間体または式(5):
【0014】
【化6】

【0015】
[式(5)中、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表し、RはC〜C12アルキルを表す。]
で表される中間体を酸と反応させることによる式(6):
【0016】
【化7】

【0017】
[式(6)中、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表されるアセトフェノン類の製造方法及び式(12):
【0018】
【化8】

【0019】
[式(12)中、VはC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル又はC〜Cシクロアルキルを表す。]
で表されるアセトフェノン化合物。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、医農薬及び各種化学品の中間体として有用なアセトフェノン類を不均一系触媒用いて製造する、工業的生産に有益な方法を提供できる。また、本発明の新規なアセトフェノン化合物は、農医薬の中間体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
本明細書において、n-はノルマル、i-はイソ、s-はセカンダリー及びt-はターシャリーを各々意味する。
【0023】
本明細書中の「ハロ」の表記は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を表す。
【0024】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0025】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0026】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2-クロロ-2-フルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2-ブロモ-3-フルオロプロピル基、3-ブロモ-2-クロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロ-1-メチルエチル基、2-クロロ-1-メチルエチル基、2-ブロモ-1-メチルエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2-フルオロブチル基、2-クロロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、2-フルオロ-2-メチルプロピル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、2-クロロ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブロモ-1,1-ジメチルエチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0027】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0028】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0029】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-基を表し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0030】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-S-基を表し、例えばジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、クロロジフルオロメチルチオ基、ブロモジフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルチオ基、ヘプタフルオロプロピルチオ基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルチオ基、ノナフルオロブチルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0031】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-SO2-基を表し、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、i-プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、i-ブチルスルホニル基、s-ブチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0032】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-SO2-基を表し、例えばジフルオロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、クロロジフルオロメチルスルホニル基、ブロモジフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルスルホニル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0033】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-C(O)-基を表し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0034】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-C(O)-基を表し、例えばフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロジフルオロアセチル基、ブロモジフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、ヘプタフルオロブタノイル基、3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0035】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(O)-基を表し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、 n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0036】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(O)-基を表し、例えばメチルチオ-C(O)-基、エチルチオ-C(O)-基、n-プロピルチオ-C(O)-基、i-プロピルチオ-C(O)-基、n-ブチルチオ-C(O)-基、i-ブチルチオ-C(O)-基、t-ブチルチオ-C(O)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0037】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(S)-基を表し、例えばメトキシ-C(S)-基、エトキシ-C(S)-基、n-プロピルオキシ-C(S)-基、i-プロピルオキシ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0038】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルジチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(S)-基を表し、例えばメチルチオ-C(S)-基、エチルチオ-C(S)-基、n-プロピルチオ-C(S)-基、i-プロピルチオ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0039】
本明細書におけるビニルオキシ(Ca〜Cb)アルキルの表記は、炭素数がa〜b個よりなる前記の意味であるビニル-O-アルキル基を表し、例えば2-(ビニルオキシ)エチル基、3-(ビニルオキシ)-n-プロピル基、4-(ビニルオキシ)-n-ブチル基、5-(ビニルオキシ)-n-ペンチル基、6-(ビニルオキシ)-n-ヘキシル基等があげられ、各々の指定の炭素数の範囲内で選択される。
【0040】
本明細書におけるヒドロキシ(Ca〜Cb)アルキルの表記は、炭素数がa〜b個よりなる前記の意味である炭素原子に置換した水素原子が、水酸基によって任意に置換された、炭素数がa〜b個よりなる直鎖状または分岐状の炭化水素基を表し、例えば2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、2-ヒドロキシ-n-プロピル基、4-ヒドロキシ-n-ブチル基、5-ヒドロキシ-n-ペンチル基、6-ヒドロキシ-n-ヘキシル基等があげられ、各々の指定の炭素数の範囲内で選択される。
【0041】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシ (C〜C)アルキルの表記は、それぞれ前記の意味である任意のCa〜Cbアルコキシ基によって炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された炭素原子数がd〜e個よりなる前記の意味であるアルキル基を表し、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-プロピル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基等があげられ、各々の指定の炭素数の範囲内で選択される。
【0042】
本発明の反応に使用できる担持パラジウム触媒としては、活性炭担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、ゼオライト担持パラジウム、ペロブスカイト酸化物担持パラジウム等が挙げられる。このうち活性炭担持パラジウムが特に好ましい。
【0043】
本発明の反応に使用する担持パラジウム触媒の使用量は、原料である一般式(1)で表される化合物1gに対して0.00001〜0.5g、好ましくは0.0001から0.10gである。0.00001gよりも少ないと反応の進行が遅く実用的でないので好ましくなく、また、0.5gより多いことは反応の点では問題ないが経済的に不利であるので好ましくない。
【0044】
本発明の反応に使用できるホスフィン配位子としては、例えば、トリ-t-ブチルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-i-プロピルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン、トリパラメチルフェニルホスフィン、トリオルソメチルフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン類、1,1-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,1-ビス(ジエチルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、1,4-ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン等のビス(ジアルキルホスフィノ)アルカン類、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等のビス(ジフェニルホスフィノ)アルカン類、トリフェニルホスファイト等のホスファイト類、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、芳香族アミン配位子としては、1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン等が挙げられる。これらのうち1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンが特に好ましい。
【0045】
本発明の反応に使用するホスフィン又は芳香族アミン配位子の使用量は、パラジウム1モルに対して1モル以上使用し、1〜10モル程度でよく、好ましくは2〜5モル程度を使用する。
【0046】
本発明の反応に使用できる溶媒は、反応に不活性であれば特に制限はないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、2-メトキシエタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒、水が挙げられ、これらの混合溶媒も使用できる。これらのうち、アルコール類またはアルコール類と他の溶媒の混合溶媒が特に好ましい。
【0047】
本発明の反応に使用する溶媒の量は、原料である一般式(1)で表される化合物1重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用し、好ましくは1.0〜10.0重量部の範囲で使用する。
【0048】
本発明の反応温度は20℃以上200℃以下が好ましく、80℃以上150℃以下が更に好ましい。
【0049】
本発明の反応は、1〜50気圧の範囲内で行うことが好ましい。
【0050】
本発明の反応は、窒素、アルゴン、キセノン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0051】
本発明の反応に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリブチルアミン等の有機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びt-ブトキシカリウム等のアルカリ金属アルコキシド類等が挙げられる。
【0052】
本発明の反応に使用する、式(2)で表される化合物の使用量は、式(1)で表される化合物1モルに対して1モル以上使用し、1.0〜20モル程度でよく、好ましくは1.0〜5.0モル程度を使用する。
【0053】
反応液中に相間移動触媒を加えると好ましい場合がある。用いる相間移動触媒としては、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド及びベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩並びにテトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルホスホニウムクロライド等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0054】
本発明の反応に用いる酸としては、例えば硫酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等を使用することができる。
【0055】
本発明の反応に用いる酸の使用量は反応系が酸性を示すのに必要な程度でよい。
【0056】
本発明の酸添加後の反応温度は0℃以上100℃以下の範囲から選択できる。
【0057】
本発明のアセチル化反応に使用することができるアセチル化剤としては、無水酢酸及び塩化アセチルがあげられる。
【0058】
本発明のアセチル化反応に用いるアセチル化剤の使用量はアニリン類1モルに対して1.0〜5.0モルの範囲で使用し、好ましくは1.0〜2.0モルの範囲で使用する。
【0059】
本発明のアセチル化反応では、塩基を加えた方が好ましい場合がある。その際用いる塩基としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリブチルアミン等の有機塩基、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びt-ブトキシカリウム等のアルカリ金属アルコキシド類等が挙げられる。
【0060】
本発明のアセチル化反応において塩基を用いる場合の使用量はアセチル化剤1モルに対して0.001〜5.0モルの範囲で使用し、好ましくは0.01〜2.0モルの範囲で使用する。
【0061】
本発明のアセチル化反応の温度は0℃以上150℃以下の範囲から選択できる。
【0062】
本発明の臭素化反応に使用することができる臭化剤としては、臭素、次亜臭素酸ナトリウム、N‐ブロモスクシンイミド、臭化水素酸−ジメチルスルホキシド、臭化水素酸−過酸化水素水、臭化ナトリウム−過酸化水素水、臭化カリウム−過酸化水素水及びベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド等が挙げられる。
【0063】
本発明の臭素化反応に用いる臭化剤の使用量はアセトアニリド類1モルに対して1.0〜2.0モルの範囲で使用する。
【0064】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に述べるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
4’-ブロモ-2’-メチルアセトアニリド25.0g(110ミリモル)にn-ブタノール100g、炭酸カリウム18.2g(132ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル38.3g(330ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.437g(1.06ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム1.57g(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で10時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、n-ブタノール125g、1N塩酸125gを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離した。有機層を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリドの含有量は19.8g(収率94%)であった。
〔実施例2〕
4’-ブロモ-2’-メチルアセトアニリド11.4g(50ミリモル)にn-ブタノール45.6g、炭酸カリウム8.48g(60ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル14.5g(125ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.20g(0.49ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム0.717g(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で8時間還流させた。反応終了後、50℃まで冷却し、n-ブタノール57g及び水57gを加え、30分間攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離した。有機層に酢酸3g(50ミリモル)を加え、50℃にて3時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、トルエン34.2gを加え0℃に冷却し、30分間攪拌した。得られたスラリーから濾取した固体を減圧下乾燥し、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリド7.70g(収率81%)を白色結晶として得た。
〔実施例3〕
p-ブロモトルエン0.684g(4.0ミリモル)にn-ブタノール5.0ml、炭酸カリウム0.66g(4.8ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル1.39g(12ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.0165g(0.04ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)0.0574gを加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で6時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、1N塩酸10gを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、アセトニトリルを加え均一にした溶液をHPLCを用いた定量分析法で分析したところ、4’-メチルアセトフェノンの含有量は0.42g(収率78%)であった。
〔実施例4〕
o-ブロモトルエンをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、2’-メチルアセトフェノンを収率85%で得た。
〔実施例5〕
m-ブロモトルエンをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、3’-メチルアセトフェノンを収率93%で得た。
〔実施例6〕
p-ブロモアニソールをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、4’-メトキシアセトフェノンを収率86%で得た。
〔実施例7〕
p-フルオロブロモベンゼンをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、4’-フルオロアセトフェノンを収率39%で得た。
〔実施例8〕
p-クロロブロモベンゼンをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、4’-クロロアセトフェノンを収率20%で得た。
〔実施例9〕
p-ブロモベンゾニトリルをp-ブロモトルエンの代わりに用い、実施例3と同様の操作を行い、4’-シアノアセトフェノンを収率17%で得た。
〔実施例10〕
4-ブロモ-2-メチル安息香酸0.860g(4.0ミリモル)にn-ブタノール5.0ml、炭酸カリウム0.66g(4.8ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル1.39g(12.0ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.0154g(0.04ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム(含水率53.67重量%、NEケムキャット社製)0.0557gを加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で6時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、1N塩酸10g及び酢酸エチル30mlを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離した。減圧下溶媒を留去し、クロロホルム30ml、5%NaOH水溶液30mlを加え、有機層を分離して得られた水層を1N塩酸で中和し、酢酸エチル30mlで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去し、4-アセチル-2-メチル安息香酸0.44g(収率61%)を白色結晶として得た。
〔実施例11〕
耐圧性の反応容器に、4’-ブロモ-2’-メチルアセトアニリド0.456g(2ミリモル)、n-ブタノール3.0ml、炭酸カリウム0.33g(2.4ミリモル)、n-ブチルビニルエーテル1.0g(10ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.0133g(0.032ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム0.0478g(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち、窒素ガスにより1MPaに加圧し、140℃にて6時間反応させた。室温まで冷却後、大気圧まで減圧し、1N塩酸10gを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、アセトニトリルを加え均一にした溶液をHPLCを用いた定量分析法で分析したところ、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリドの含有量は0.336g(収率88%)であった。
〔実施例12〕
耐圧性の反応容器に、4’-ブロモ-2’-メチルアセトアニリド5.7g(25ミリモル)、n-ブタノール20g、ジメチルホルムアミド10g、炭酸カリウム4.14g(30ミリモル)、n-ブチルビニルエーテル12.5g(125ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.10g(0.24ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム0.358g(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち、窒素ガスにより1MPaに加圧し、120℃にて6時間反応させた。室温まで冷却後、大気圧まで減圧し、n-ブタノール30g、1N塩酸30gを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離した。有機層を高速液体クロマトグラフィーを用いた定量分析法で分析したところ、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリドの含有量は4.51g(収率95%)であった。
〔実施例13〕
窒素雰囲気下、4-ブロモ-2-メチルアニリン0.372g(2ミリモル)のn-ブタノール2ml及びジメチルスルホキシド1mlの混合溶液に室温にて無水酢酸2.14g(2.1ミリモル)を滴下した。2時間攪拌したのち、炭酸カリウム0.61g(4.4ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル0.70g(6ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.008g(0.02ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム0.0287g(含水率52.27重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で7時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、1N塩酸10gを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、アセトニトリルを加え均一にした溶液をHPLCを用いた定量分析法で分析したところ、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリドの含有量は0.344g(収率90%)であった。
〔実施例14〕
窒素雰囲気下、2-メチルアニリン21.4g(200ミリモル)にn-ブタノール128.4gを加え、50℃まで加熱し、無水酢酸21.4g(210ミリモル)を滴下した。50℃にて2時間反応させた後、30℃まで冷却し、n-ブタノール85.6g、47%臭化水素酸41.4g(240ミリモル)を加え、30%過酸化水素水26.1g(230ミリモル)を滴下した。30℃にて3時間反応させた後、水107g、n-ブタノール214g及び亜硫酸ナトリウム5.04g(40ミリモル)を加え、30分攪拌した後、水層を分離し、4’-ブロモ-2’-メチルアセトアニリドのn-ブタノール溶液550.3gを得た。n-ブタノール334gを減圧下留去し、炭酸カリウム31.4g(228ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル55.1g(474ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.503g(0.406ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム1.87g(含水率53.67重量%、NEケムキャット社製)を加え、反応系内を脱気したのち窒素雰囲気下で8時間還流させた。反応終了後、50℃まで冷却し、n-ブタノール87g及び水173gを加え、30分間攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離した。有機層に酢酸12.0g(200ミリモル)を加え、50℃にて3時間攪拌した後、室温まで冷却した溶液をHPLCを用いた定量分析法で分析したところ、4’-アセチル-2’-メチルアセトアニリドの含有量は36.4g(収率95%)であった。
〔実施例15〕
4-ブロモ-2-メチル安息香酸エチル0.486g(2.0ミリモル)にn-ブタノール3.0ml、ジシクロヘキシルメチルアミン0.47g(2.4ミリモル)、1,4-ブタンジオールモノビニルエーテル0.70g(6.0ミリモル)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン0.0165g(0.04ミリモル)及び活性炭担持5%パラジウム(含水率55.95重量%、NEケムキャット社製)0.033gを加え、反応系内を脱気したのち、窒素雰囲気下で30時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、1N塩酸10g及び酢酸エチル20mlを加え、30分攪拌した後、セライトろ過し、水層を分離して得られた溶液を減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン酢酸エチル=5:1)により精製し、4-アセチル-2-メチル安息香酸エチル0.38gを淡黄色液体として得た。(収率92%、H-NMR(CDCl3):δ(ppm)[7.96(d, 1H, 8.0Hz), 7.95-7.78(m, 2H), 4.39(q, 2H, 7.2Hz), 2.65(s, 3H), 2.62(s, 3H), 1.41(t, 3H, 7.2Hz)])
〔実施例16〕
4-ブロモ-2-メチル安息香酸エチルの代わりに4-ブロモ-2-メチル安息香酸メチルを用い、実施例15と同様の操作を行い、4-アセチル-2-メチル安息香酸メチル0.14gを淡黄色液体として得た。(収率37%、H-NMR(CDCl3):δ(ppm)[7.97(d, 1H, 8.0Hz), 7.82-7.78(m, 2H), 3.93(s, 3H), 2.65(s, 3H), 2.62(s, 3H)])
【産業上の利用可能性】
【0065】

本発明の製造方法は、医農薬及び各種化学品の中間体として有用なアセトフェノン類の工業的製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】



[式中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子又はトリフルオロメタンスルホニルオキシを表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cハロアルキルチオ、ホルミル、カルボキシル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cハロアルキルスルホニル、‐CH2N(R2)R1、‐CON(R2)R1又は‐N(R2)R1(ただし、Xが塩素原子のとき塩素原子を除く)を表し、nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
Zは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cハロアルキルチオ、ホルミル、カルボキシル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cハロアルキルスルホニル、‐CH2N(R2)R1、‐CON(R2)R1又は‐N(R2)R1(ただし、Xが塩素原子のとき塩素原子を除く)を表し、
R1は、水素原子、C〜Cアルキル、ホルミル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルチオカルボニル、C〜Cアルコキシチオカルボニル、C〜Cアルキルジチオカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル又はC〜Cハロアルキルスルホニルを表し、
R2は、水素原子、C〜Cアルキル、ホルミル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル又はC〜Cアルコキシカルボニルを表し、R1及びR2は、互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
nは、0から4の整数を表す。]
で表される化合物と式(2):
【化2】


[式(2)中、Wは、‐OR、‐N(R) COR又は式(3):
【化3】


を表し、
Rは、C〜C12アルキル、C〜Cハロアルキル、ビニルオキシ(C〜C12)アルキル、ヒドロキシ(C〜C12)アルキル又はC〜Cアルコキシ(C〜C12)アルキルを表し、
RおよびRは、各々独立に、水素原子、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルキル又は、RおよびRが結合しているアミド基とともにC〜Cアルキルで形成する4〜7員環を表す。]
で表される化合物を塩基、ホスフィン又は芳香族アミン配位子及び担持パラジウム触媒の存在下で反応を行い、反応系内で得られる式(4):
【化4】


[式(4)中、W、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表される中間体または式(5):
【化5】


[式(5)中、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表し、RはC〜C12アルキルを表す。]
で表される中間体を酸と反応させることによる式(6):
【化6】


[式(6)中、Y、Z及びnは前記と同じ意味を表す。]
で表されるアセトフェノン類の製造方法。
【請求項2】
Xは、臭素原子を表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cハロアルコキシ、ホルミル、カルボキシル、C〜Cアルキルカルボニル、C〜Cハロアルキルカルボニル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cハロアルキルスルホニル、‐CH2N(R2)R1、‐CON(R2)R1又は‐N(R2)R1を表し、nが2以上を表すとき、各々のYは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、Zは、‐N(R2)R1、フッ素原子、塩素原子、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル又はカルボキシルを表す、請求項1記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項3】
Xは、臭素原子を表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル又はC〜Cアルコキシを表し、Zは、‐N(R2)R1又はカルボキシルを表し、Rは、水素原子、C〜Cアルキルカルボニル又はC〜Cアルコキシカルボニル、Rは、水素原子、ホルミル又はC〜Cアルキルカルボニル、nは、0から4の整数を表し、
Wは、‐OR3、‐N(R4) COR5又は式(3)を表し、R3は、C〜C12アルキル、ビニルオキシ(C〜C)アルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキルを表し、R4およびR5は、各々独立に、水素原子、C〜Cアルキル又は、R4およびR5が結合しているアミド基とともにC〜Cアルキルで形成する4〜7員環を表し、
RはC〜Cアルキルを表す、請求項1記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項4】
Xは、臭素原子を表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル、メチル又はエチルを表し、Zは、‐N(R2)R1を表し、Rは、アセチルを表し、Rは、水素原子を表し、nは、0から4の整数を表し、
Wは‐ORを表し、Rは、C〜C12アルキル、ビニルオキシ(C〜C)アルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキルを表し、
RはC〜Cアルキルを表す、請求項1記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項5】
式(7):
【化7】


[式(7)中、X、Y及びnは請求項4と同じ意味を表す。]
で表される化合物をアセチル化して得られる、式(8):
【化8】


[式(8)中、X、Y及びnは請求項4と同じ意味を表す。]
で表される化合物を出発原料として用いる、請求項4記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項6】
式(7)で表される化合物をアセチル化して得られる、式(8)で表される化合物を単離することなく含有する溶液を出発原料として用いる、請求項4記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項7】
式(9):
【化9】


[式(9)中、Y及びnは請求項4と同じ意味を表す。]
で表される化合物をアセチル化して得られる、式(10):
【化10】


[式(10)中、Y及びnは請求項4と同じ意味を表す。]
で表される化合物を臭素化して得られる、式(11):
【化11】


[式(11)中、Y及びnは請求項4と同じ意味を表す。]
で表される化合物を出発原料として用いる、請求項4記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項8】
式(9)で表される化合物をアセチル化して得られる、式(10)で表される化合物を臭素化して得られる、式(11)で表される化合物を単離することなく含有する溶液を出発原料として用いる、請求項4記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項9】
Xは、臭素原子を表し、
Yは、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル、メチル又はエチルを表し、Zは、カルボキシルまたはC〜Cアルコキシカルボニルを表し、Rは、アセチルを表し、Rは、水素原子を表し、nは、0から4の整数を表し、
Wは‐ORを表し、Rは、C〜C12アルキル、ビニルオキシ(C〜C)アルキル、ヒドロキシ(C〜C)アルキルを表し、
RはC〜Cアルキルを表す、請求項1記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項10】
用いるパラジウム触媒が活性炭担持パラジウム触媒である、請求項1〜9記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項11】
用いる溶媒がアルコール類またはアルコール類と他の溶媒の混合溶媒である、請求項1〜10記載のアセトフェノン類の製造方法。
【請求項12】
式(12)
【化12】


[式(12)中、VはC〜Cアルキルを表す。]
で表されるアセトフェノン化合物。

【公開番号】特開2008−156347(P2008−156347A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309255(P2007−309255)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】