説明

新規カテキン誘導体、その製造方法および抗インフルエンザウイルス剤

【課題】現在抗インフルエンザ薬として使用されている治療剤は、小児における安全性や副作用の危険、および耐性ウイルスの出現の可能性があることから、インフルエンザウイルスに対して有効でありかつ安全性の高い別の薬剤を提供する。
【解決手段】カテキン類やテアフラビン類について、その構造と抗インフルエンザウイルス活性との相関を研究し、一般式(I):


で表される化合物、この化合物を製造する方法、ならびにこの化合物を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規カテキン誘導体、その製造方法、ならびにかかるカテキン誘導体を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザはインフルエンザウイルスにより引き起こされる急性の伝染性の病気であり,症状としては、気道の炎症,発熱,悪寒,筋肉痛,衰弱および倦怠感等を特徴とする。インフルエンザは、健常な成人であれば7〜10日間程度で治癒するが、乳幼児や高齢者、あるいは慢性疾患を有する患者では、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して死亡につながる場合もありうる。
【0003】
インフルエンザの感染予防のために毎年ワクチン接種が行われているが、インフルエンザウイルスは抗原性が変化しやすく、ワクチン接種のみでは流行を防止することが難しい。現在抗インフルエンザ薬として使用されている治療剤には、アマンタジン、リン酸オセルタミビル、およびザナミビルがある。しかし、小児における安全性や副作用の危険、および耐性ウイルスの出現の可能性があることから、インフルエンザウイルスに対して有効でありかつ安全性の高い別の薬剤の開発が求められている。
【0004】
特開平3−101623には、茶ポリフェノールを有効成分とするインフルエンザウイルス感染予防剤が開示されている。また、本発明者らは先に、ある種のカテキン誘導体が強い抗インフルエンザウイルス作用を有することを見いだした(特開2008−156324)。
【特許文献1】特開平3−101623
【特許文献2】特開2008−156324
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、茶の成分であるカテキン類やテアフラビン類について、その構造と抗インフルエンザウイルス活性との相関を研究するために各種の誘導体を化学合成してその活性を測定したところ、驚くべきことに、ある種のカテキン誘導体が高い抗インフルエンザウイルス活性を有することを見いだして、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(I):
【化15】

[nは3〜10である]
で表される化合物を提供する。
【0007】
本発明はまた、式(I):
【化16】

[nは3〜10である]
で表される化合物を製造する方法を提供する。この方法は、
(a) 式(II):
【化17】

[式中、Rは水酸基の保護基であり、Xはハロゲンである]
で表される化合物を、式(III):
【化18】

[式中、Rは水酸基の保護基である]
で表される化合物と反応させて、式(IV):
【化19】

[式中、X、RおよびRは上で定義したとおりである]
で表される化合物を形成し;
(b) 式(IV)の化合物を、式(V):
【化20】

[式中、nは上で定義したとおりであり、Rは水酸基の保護基である]
の化合物と反応させて、式(VI):
【化21】

の化合物を形成し;
(c) 式(VI)の化合物から保護基Rを除去して、式(VII):
【化22】

の化合物を形成し;
(d) 式(VII)の化合物から保護基Rを除去するとともに、窒素原子を導入して、式(VIII):
【化23】

[式中、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、アミノ基の保護基である]
の化合物を形成し;
(e) 式(VIII)の化合物を閉環させて、式(IX):
【化24】

の化合物を形成し;
(f) 式(IX)の化合物を、式(X):
【化25】

の化合物と反応させて、式(XI):
【化26】

の化合物を形成し、
(g) 式(XI)の化合物を、脱保護して、式(I):
【化27】

の化合物を形成する、
の各工程を含む。
【0008】
上記の各式において、R、RおよびRは水酸基の保護基であり、水酸基の保護基として一般に使用されるいずれの基を用いてもよい。例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、直鎖または分枝鎖のC1−4アルキル基、ベンジル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。これらの保護基は、工程cにおいてRを脱保護する条件下でRおよびRが脱保護されないように、かつ工程dにおいてRを脱保護する条件下でRが脱保護されないように選択する。
【0009】
また、上記の各式において、RおよびRはアミノ基の保護基であって、同一であっても異なっていてもよい。RおよびRの例としては、例えば、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トルエンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0010】
さらに別の観点においては、本発明は、一般式(I):
【化28】

[nは3〜10である]
で表される化合物を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により抗インフルエンザウイルス活性を示す新規カテキン誘導体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、一般式(I):
【化29】

で表される化合物を提供する。本発明においては、式(I)のカテキン誘導体は、高い抗インフルエンザウイルス剤を有することが見いだされた。式(I)のカテキン誘導体は、天然のカテキン類と異なり、A環に水酸基を有さないことを特徴とする。本発明者らは先に、A環の3位および5位に水酸基を有するカテキン誘導体:
【化30】

が、天然のエピガロカテキンガレート:
【化31】

と同等の抗インフルエンザウイルス活性を有することを見いだした(特許文献2)。この結果から、A環の構造は抗ウイルス活性には大きな影響を及ぼさないと考えられていた。したがって、本発明における発見は驚くべきものである。
【0013】
また、本発明の化合物は、末端のアミノ基を利用して他の化合物とカップリングさせたり、担体に固定化することが容易である。したがって、本発明の化合物から各種の誘導体を合成して、抗インフルエンザウイルス活性を測定し、より抗力の強い化合物を探索することが可能である。さらに、本発明の化合物は、カテキン類と相互作用する物質をスクリーニングしたり、生理活性発現のメカニズムを解明するためのプローブとして用いることができる。
【0014】
本発明の化合物は、以下のスキーム1〜8にしたがって製造することができる。
【化32】

まず、臭素原子を導入した A 環に対応するアルデヒドを合成する。例えば、市販の 3-ブロモフェノールを出発原料とし、アリルブロミド、炭酸カリウムの条件にて水酸基にアリル基を導入し、続いてジエチルアニリン中 200 ℃ で Claisen 転位を行うことで 1へと導く。得られた 1 の遊離の水酸基を TBS 基で保護し、2 へと変換した後、オレフィン部分をオゾン分解によりアルデヒドへ変換することで 3 を合成する。
【0015】
【化33】

B環に対応するユニットとして、例えば、フェニルテトラゾールスルホン 6は次のようにして合成することができる。メチルガレートを出発原料とし、水酸基をベンジル基で保護した後、LiAlH4 を用いてメチルエステル部分を還元し、アルコール 4 を合成する。続いて、4 をフェニルメルカプトテトラゾール、トリフェニルホスフィン、DEAD を用いた光延反応条件により、スルフィド 5 を合成する。続いて(NH4)6Mo7O24 19) を用いてスルフィドを酸化して、スルホン 6 を得る。
【0016】
【化34】

次に合成した A 環アナログ 3 と B 環アナログ 6 を用いて Julia-Kocienski 反応 20) を行うことにより、優れた立体選択性で cis オレフィン 7 (2,3 位プロトンのカップリング定数; J = 11 Hz ) が得られる。
【0017】
【化35】

炭素数 5 の側鎖となる有機ホウ素試薬 9 は 4-ペンテン-1-オールを MOM 基で保護した後、9-BBN ダイマー を用いたハイドロボレーションにより合成することができる。
【0018】
【化36】

次に、7 に対し、有機ホウ素試薬 9 と PdCl2(dppf)・CH2Cl2、3M NaOH aq. を用いて鈴木−宮浦カップリングを行って、オレフィン10 を得る。続いて、TBS 基を TBAF を用いて脱保護し、11 へと変換する。
【0019】
【化37】

オレフィン 11 に対し濃 HCl を用いて MOM 基の脱保護をし、12 へと変換し、NsNHCbz、トリフェニルホスフィン、DMEAD を用いた光延反応を行って、13 を得る。得られた 13 を、四酸化オスミウムと NMO を用いてジオール化し、トリオール14 を得る。続いて、14 を酸性条件下加熱することで閉環反応を行い、閉環体 (±)-15 を得る。
【0020】
【化38】

得られた (±)-15 に対し、没食子酸誘導体、WSCI、DMAP を用いた縮合反応を行うことにより、カテキンガレート誘導体 (±)-16 を合成する。
【0021】
【化39】

以上のようにして得られる (±)-16 に対し、アセトニトリル中、チオフェノール、炭酸セシウムを用いた条件で Ns 基を脱保護し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて (±)-17 (cis) と (±)-18 (trans) を分離する。最後に触媒的水素化を行うことで、Cbz 基と全てのベンジル基を脱保護し、A 環部に含窒素リンカーを有する本発明のカテキン誘導体 (±)-19 (cis), (±)-20 (trans) をそれぞれ得ることができる。
【0022】
本発明の化合物の抗インフルエンザウイルス活性は、定法にしたがって測定することができる。一例としては、試験化合物の希釈列溶液とインフルエンザウイルス懸濁液とを混合し、一定時間インキュベーションした後、MDCK細胞などの被検細胞を培養したプレートに加える。一定時間インキュベーションした後、細胞を洗浄し、ウイルスに感染した細胞の数または割合を、プラークアッセイ法、免疫染色法、酵素活性測定法などにより測定する。
【0023】
本発明において、抗インフルエンザウイルス剤とは、本発明にしたがうカテキン誘導体または薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤とともに含む医薬組成物を表す。本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザウイルスの感染に関連する疾患を予防および/または治療することができ、例えば、インフルエンザウイルスの感染に伴う疾患の症状を軽減または排除すること、感染患者中のインフルエンザウイルスの増殖を阻害すること、ウイルスの活性を低下させること、および/またはウイルスを消滅もしくは減少させることができる。
【0024】
薬学的に許容しうる塩としては、薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等の塩、アンモニアや各種有機塩基等の塩類を挙げることができる。
【0025】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、当業者に公知の方法で製剤化することができる。例えば、薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。
【0026】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤の適当な投与経路には、限定されないが、経口、直腸内、経粘膜、または腸内投与、または筋肉内、皮下、骨髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が含まれる。投与経路および投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。経口または経鼻投与が好ましい。経口投与用には,例えば,化合物をカプセル剤,錠剤および液体製剤(シロップ剤,エリキシル剤および濃縮ドロップ剤など)のような慣用の経口投与形に製剤することができる。吸入用には,本発明の化合物を乾燥粉体または適当な溶液,懸濁液,またはエアロゾルとして製剤することができる。粉体および溶液は,当該技術分野において知られる適当な添加物とともに製剤することができる。非経口投与用には、本発明の化合物またはその塩を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうるベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0027】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、患者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
実施例1 カテキン誘導体の製造方法
(2-アリル-4-ブロモフェノキシ)-tert-ブチルジメチルシラン(2)の合成
【化40】

Ar 雰囲気下、0 °C で 1 (7.0 g, 32.9 mmol) に DMF (50 mL)、塩化tert-ブチルジメチルシリル(5.69 g, 39.5 mmol)、イミダゾール(2.7 g, 39.5 mmol) を加え、室温で 3 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 7 : 1) により精製し、無色油状の (2-アリル-4-ブロモフェノキシ)-tert-ブチルジメチルシラン(2) (10 g, 93%) を得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) :δ7.24 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.17 (dd, J = 2.6, 8.6 Hz, 1H), 6.65 (d, J = 8.6 Hz, 1H) 5.84 - 5.99 (m, 1H), 5.01 - 5.09 (m, 2H), 3.32 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 1.00 (s, 9H), 0.21 (s, 6H).
【0030】
[5-ブロモ-2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)フェニル]アセトアルデヒド(3)の合成
【化41】

O3 雰囲気下、- 78 °C で 2 (6.24 g, 19.1 mmol) に MeOH/CH2Cl2 (5 : 1, 24 mL) を加え、12 時間攪拌した。攪拌後、反応液に Me2S (1.56 mL, 22.9 mmol) を加え、室温で 11 時間攪拌した。減圧下濃縮した後、10% TFA を加え、室温で 12 時間攪拌した。水を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、MgSO4 乾燥、減圧下濃縮し、黄色油状の [5-ブロモ-2-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)フェニル]アセトアルデヒド(3) (5.99 g, 95%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ9.67 (s, 1H), 7.27 - 7.29 (m, 2H), 6.74 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 3.60 (d, J = 2.4 Hz, 2H), 0.97 (s, 9H), 0.24 (s, 6H).
【0031】
1-フェニル-5-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシ-ベンジルスルファニル)-1H-テトラゾール(5)の合成
【化42】

Ar 雰囲気下、0 °C で 4 (14.0 g, 32 mmol) に トルエン (300 mL)、5-メルカプト-1-フェニルテトラゾール(8.8 g, 49 mmol)、PPh3 (11 g, 42 mmol)、DEAD (17 mL, 38 mmol, 2.2M 、トルエン中) を加え、室温で 4 時間攪拌した。減圧下濃縮し、再結晶 (EtOAc) により精製し、白色結晶の (17.7 g, 94%) を得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) : δ7.51 - 7.53 (m, 5H), 7.24 - 7.42 (m, 15H), 6.70 (s, 2H), 5.07 (s, 4H), 5.03 (s, 2H), 4.52 (s, 2H).
【0032】
1-フェニル-5-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニルメタンスルホニル)-1H-テトラゾール (6)の合成
【化43】

Ar 雰囲気下、室温で 5 (17.6 g, 30 mmol) に CH3CN (500 mL)、(NH4)6Mo7O24・4H2O (11 g, 9.0 mmol)、30% 過酸化水素水溶液 (102 g, 0.90 mol) を加え、60 °C で 24 時間攪拌した。減圧下濃縮し、飽和食塩水を加えた後、CHCl3 で三回抽出した。有機層を MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮し、白色固体の 1-フェニル-5-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニルメタンスルホニル)-1H-テトラゾール (6) (18.5 g, quant.) を得た。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) : δ7.49 - 7.54 (m, 3H), 7.24 - 7.39 (m 17H), 6.55 (s, 2H), 5.04 (s, 2H), 4.97 (s, 4H), 4.77 (s, 2H).
【0033】
{4-ブロモ-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル] フェノキシ}-tert-ブチルジメチルシラン(7)の合成
【化44】

Ar 雰囲気下、0 °C で 6 (481 mg, 0.778 mmol) に THF (8 mL)、LHMDS (1.56 mL, 1.56 mmol) を加え、30 分間攪拌した。攪拌後、反応液に、3 (233 mg, 0.707 mmol) を加え、室温で 2 時間攪拌した。水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 4 : 1) により精製し、黄色油状の{4-ブロモ-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル] フェノキシ}-tert-ブチルジメチルシラン(7) (445 mg, 87%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ7.19 - 7.43 (m, 17H), 6.67 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.55 (s, 2H), 6.47 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 5.72 (dt, J = 5.8, 11.6 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 5.04 (s, 4H), 3.47 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 0.94 (s, 9H), 0.18 (s, 6H,).
【0034】
有機ホウ素試薬の合成
【化45】

Ar 雰囲気下、室温で 5-メトキシメトキシ-ペント-1-エン(4.0 mL, 4.02 mmol, 1 M 溶液、THF) に、9-BBN ダイマー(721 mg, 2.41 mmol) を加え、1 時間攪拌し、未精製の 9 (4.0 mL, THF中1 M溶液) を得た。
【0035】
tert-ブチル-{4-(5-メトキシ- メトキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノキシ}ジメチルシラン(10)の合成
【化46】

Ar 雰囲気下、室温で 9 (4.0 mL, 1 M 溶液、THF) に、7 (970 mg, 1.34 mmol)、3 M 水酸化ナトリウム水溶液 (1.3 mL, 4.02 mmol)、PdCl2(dppf)・CH2Cl2(109 mg, 0.134 mmol) を加え、3.5 時間還流した。水を加えた後、エーテルで三回抽出し、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 9 : 1) により精製し、黄色油状のtert-ブチル-{4-(5-メトキシ- メトキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノキシ}ジメチルシラン(10) (756 mg, 73%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ7.25 - 7.44 (m, 15H), 6.95 (s, 1H), 6.90 (dd, J = 7.9, 2.4 Hz, 1H), 6.71 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.61 (s, 2H), 6.44 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 5.78 (dt, J = 11.6, 5.8 Hz, 1H), 5.06 (s, 2H), 5.02 (s, 4H), 4.59 (s, 2H), 3.53 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 3.49 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.33 (s, 3H), 2.52 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.57 - 1.63 (m, 4H), 1.37 - 1.42 (m, 2H), 0.94 (s, 9H), 0.18 (s, 6H).
【0036】
4-(5-メトキシ-メトキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノール (11)の合成
【化47】

Ar 雰囲気下、0 °C で 10 (4.4 g, 5.69 mmol) に、THF (20 mL)、TBAF (7.4 mL, 7.4 mmol, 1M 溶液、THF) を加え、室温で 10 分間攪拌した。飽和食塩水を加えた後、EtOAc で三回抽出し、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 9 : 1 から EtOAc) により精製し、黄色油状の4-(5-メトキシ-メトキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノール (11) (3.18 g, 85%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ7.23 - 7.42 (m, 15H), 6.90 - 6.91 (m, 2H), 6.68 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.61 (s, 2H), 6.48 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 5.75 (dt, J = 11.6, 5.8 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 5.04 (s, 4H), 4.60 (s, 2H), 3.50 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.47 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 3.34 (s, 3H), 2.52 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 1.58 - 1.61 (m, 4H), 1.36 - 1.42 (m, 2H).
【0037】
4-(5-ヒドロキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノール (12) (9.0 mg, 73%) (12)の合成
【化48】

室温で 11 (13.2 mg, 0.020 mmol) に、MeOH (0.5 mL)、濃塩酸 (3 滴) を加え、60 °C で 45 分間攪拌した。減圧下濃縮した後、調製用TLC (n-ヘキサン : EtOAc = 1 : 1) により精製し、4-(5-ヒドロキシペンチル)-2-[3-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)アリル]フェノール (12) (9.0 mg, 73%) (12) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ7.26 - 7.46 (m, 15H), 6.92 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 6.70 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 6.61 (s, 2H), 6.49 (d, J = 11.0 Hz, 1H) 5.76 (dt, J = 11.0, 5.8 Hz, 1H), 5.07 (s, 2H), 5.05 (s, 4H), 3.61 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 3.47 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.53 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.56 - 1.60 (m, 4H), 1.34 - 1.40 (m, 2H).
【0038】
(Z)-ベンジル-5-(4-ヒドロキシ-3-(3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェニル)ペンチル(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート(13)の合成
【化49】

Ar 雰囲気下、0 °Cで 12 (48 mg, 0.078 mmol) に、トルエン/THF (3:1, 0.8 mL)、NsNHCbz (79 mg, 0.23 mmol)、PPh3 (60 mg, 0.23 mmol)、DMEAD (54 mg, 0.23 mmol) を加え、室温で 10 分間攪拌した。飽和食塩水を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 3 : 1 - 1 : 1) により精製し、黄色油状の (Z)-ベンジル-5-(4-ヒドロキシ-3-(3-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェニル)ペンチル(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート(13) (58 mg, 80%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ8.11 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.65 - 7.68 (m, 2H), 7.20 - 7.47 (m, 21H), 6.91 - 6.92 (m, 2H), 6.70 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.62 (s, 2H), 6.50 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 5.76 (dt, J = 11.0, 5.6 Hz, 1H), 5.10 (s, 2H), 5.08 (s, 2H), 5.07 (s, 4H), 3.84 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.47 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 2.51 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 1.77- 1.80 (m, 2H), 1.59 - 1.62 (m, 2H), 1.40 - 1.42 (m, 2H).
【0039】
ベンジル-5-(3-(2,3-ジヒドロキシ-3-(3,4,5-トリス-(ベンジルオキシ)フェニル)プロピル)-4-ヒドロキシフェニル)-ペンチル(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート(14)の合成
【化50】

室温で、13 (0.81 mg, 0.868 mmol) に、アセトン/H2O (4:1, 10 mL)、OsO4 (0.77 mg, 0.043 mmol)、NMO (0.20 mg, 1.73 mmol) を加え、2.5 時間攪拌した。EtOAc、10% 飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、室温で 10 分間攪拌した。反応液をEtOAc で三回抽出し、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 2 : 1 - 1 : 1) により精製し、黄色油状のベンジル-5-(3-(2,3-ジヒドロキシ-3-(3,4,5-トリス-(ベンジルオキシ)フェニル)プロピル)-4-ヒドロキシフェニル)-ペンチル(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート(14) (605 mg, 72%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ7.99 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.58 - 7.63 (m, 2H), 7.18 - 7.41 (m, 20H), 6.95 (dd, J = 7.9, 2.1 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.65 (s, 2H), 5.07 (s, 2H), 5.05 (s, 4H), 5.02 (s, 2H), 4.34 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.90 - 3.91 (m, 1H), 3.83 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.87 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 2.57 (s, 1H), 2.51 - 2.53 (m, 1H), 2.39 (s, 1H), 1.73 - 1.79 (m, 2H), 1.58 - 1.64 (m, 2H), 1.36 - 1.42 (m, 2H).
【0040】
ベンジル-5-(3-ヒドロキシ-2-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-6-イル)ペンチル-(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート(15)の合成
【化51】

Ar 雰囲気下、室温で 14 (8.1 mg, 8.3 μmol) に、トルエン (0.2 mL)、TsOH (0.8 mg, 4.2 μmol) を加え、60 °C で 1 時間攪拌した。その後、調製用TLC (n-ヘキサン : EtOAc = 1 : 1) により精製し、黄色結晶の (±)-ベンジル-5-(3-ヒドロキシ-2-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-6-イル)ペンチル-(2-ニトロフェニルスルホニル)カルバメート((±)-15) (5.6 mg, 71%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ8.12 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.65 - 7.70 (m, 2H), 7.21 - 7.48 (m, 22H), 6.89 - 6.95 (m, 2H), 6.82 (s, 1H), 6.75 (s, 1H), 5.14 (s, 2H), 5.12 (s, 1H), 5.11 (s, 3H), 5.06 (s, 2H), 4.94 (s, 1H, cis), 4.62 (d, J = 8.5 Hz, 1H, trans), 4.21 - 4.23 (m, 1H, cis), 3.97 - 4.02 (m, 1H, trans), 3.85 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.22 (dd, J = 16.8, 4.0 Hz, 1H, cis), 3.06 (dd, J = 16.1, 5.5 Hz, 1H, trans), 2.93 (dd, J = 16.8, 1.8 Hz, 1H, cis), 2.88 (dd, J = 16.1, 9.4 Hz, 1H, trans) 2.54 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 1.79 - 1.81 (m, 2H), 1.60 - 1.64 (m, 2H), 1.40 - 1.44 (m, 2H).
【0041】
6-(5-(N-(ベンジルオキシカルボニル)-2-ニトロフェニルスルホンアミド)-ペンチル)-2-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-フェニル)- クロマン-3-イル-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)ベンゾエート(16)の合成
【化52】

(±)-15 (186 mg, 0.195 mmol) に、3,4,5-トリス(フェニルメトキシ)安息香酸 (258 mg, 0.587 mmol)、WSC (224 mg, 1.17 mmol)、DMAP (2.3 mg, 18.8 μmol)、CH2Cl2 (6.0 mL) を加え、75 °C で 17.5 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、MgSO4で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 5 : 1 から 7 : 3) により精製し、黄色結晶の(±)-6-(5-(N-(ベンジルオキシカルボニル)-2-ニトロフェニルスルホンアミド)-ペンチル)-2-(3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-フェニル)- クロマン-3-イル-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)ベンゾエート((±)-16) (179 mg, 67%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) : δ8.12 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.64 - 7.71 (m, 2H), 7.21 - 7.37 (m, 38H), 7.00 (t, J = 7.3 Hz, 1H), 6.92 (q, J = 8.1 Hz, 2H), 6.74 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 5.65 (s, 1H, cis), 5.45 (q, J = 5.9 Hz, 1H, trans), 4.95 - 5.14 (m, 9H, cis, 15H, trans), 4.90 (s, 1H, cis), 4.81 (d, J = 11.6 Hz, 1H, cis), 4.68 (d, J = 11.6 Hz, 1H, cis), 3.85 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.39 (dd, J = 17.1, 3.7 Hz, 1H, cis), 3.09 (dd, J = 16.8, 4.6 Hz, 1H, trans), 3.03 (s, 1H, cis), 2.94 (dd, J = 16.4, 4.6 Hz, 1H, trans), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.78 - 1.80 (m, 2H), 1.61 - 1.67 (m, 2H), 1.40 - 1.46 (m, 2H).
【0042】
3,4,5-トリス-ベンジルオキシ安息香酸 6-(5-ベンジルオキシ-カルボニルアミノペンチル)-2-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)- クロマン-3-イル エステル (17, 18)の合成
【化53】

室温で(±)-16 (460 mg, 0.33 mmol) に、CH3CN (8.0 mL)、Cs2CO3 (325 mg, 1.00 mmol)、PhSH (0.1 mL, 1.00 mol) を加え、60 °C で 15 時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、MgSO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー (n-ヘキサン : EtOAc = 5 : 1 から 2 : 1) により精製し、黄色結晶の(±)-3,4,5-トリス-ベンジルオキシ安息香酸 6-(5-ベンジルオキシ-カルボニルアミノペンチル)-2-(3,4,5-トリス-ベンジルオキシフェニル)- クロマン-3-イル エステル ((±)-17) (100 mg, 26%, cis), ((±)-18) (159 mg, 41%, trans) を得た。
(±)-17 (cis)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ7.19 - 7.36 (m, 37H), 7.01 (q, J = 8.1 Hz, 2H), 6.92 (s, 1H), 6.74 (s, 2H), 5.63 (s, 1H), 5.13 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.08 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 4.97 (dd, J = 11.6, 5.5 Hz, 6H), 4.90 (s, 2H), 4.81, (d, J = 11.6 Hz, 2H), 4.69 (d, J = 11.6 Hz, 2H), 3.36 (dd, J = 17.1, 4.3 Hz, 1H), 3.18 (q, J = 6.7 Hz, 1H), 3.03 (dd, J = 17.1, 8.8 Hz, 1H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.59 - 1.65 (m, 2H), 1.50 - 1.56 (m, 2H), 1.33 - 1.39 (m, 2H).
(±)-18 (trans)
1H NMR (500 MHz, CDCl3) :δ7.20 -7.37 (m, 37H), 7.01 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.91, (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.87 (s, 1H), 6.70 (s, 2H), 5.43 (q, J = 5.9 Hz, 1H), 5.14 (s, 1H), 5.09 (s, 1H), 5.03 (s, 6H), 4.99 (s, 2H), 4.97 (s, 4H), 4.68 (s, 1H), 3.17 (q, J = 6.7 Hz, 2H), 3.06 (dd, J = 16.4, 4.6 Hz, 1H), 2.91 (dd, J = 16.4, 6.7 Hz, 1H), 2.56 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.58 - 1.64 (m, 2H), 1.48 - 1.53 (m, 2H), 1.32 - 1.38 (m, 2H).
【0043】
3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸 6-(5-アミノペンチル)-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)クロマン-3-イル エステル (cis, 19)の合成
【化54】

H2雰囲気下、室温で (±)-17 (100 mg, 0.084 mmol) に THF/MeOH (1 : 1, 4.0 mL)、20% Pd(OH)2 (30 mg) を加え、4 時間攪拌した。反応液を Celite 及び、メンブランフィルターで濾過した後、減圧下濃縮し、無色結晶の(±)-3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸6-(5-アミノペンチル)-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)クロマン-3-イル エステル ((±)-19) (38 mg, 89%, cis) を得た。
1H NMR (270 MHz, CD3OD) :δ6.97 (dd, J = 7.9, 2.0 Hz, 1H), 6.91 (s, 3H), 6.84 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.53 (s, 2H), 5.52 (s, 1H), 5.04 (s, 1H), 2.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.86 - 2.89 (m, 3H), 2.55 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.58 - 1.68 (m, 4H), 1.36 - 1.44 (m, 2H).
【0044】
3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸 6-(5-アミノペンチル)-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)クロマン-3-イル エステル (trans, 20)の合成
【化55】

H2 雰囲気下、室温で (±)-18 (167 mg, 0.14 mmol) に THF/MeOH (1 : 1, 6.0 mL)、20% Pd(OH)2 (40 mg) を加え、5 時間攪拌した。反応液をセライト及びメンブランフィルターで濾過した後、減圧下濃縮し、無色結晶の(±)-3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸 6-(5-アミノペンチル)-2-(3,4,5-トリヒドロキシフェニル)クロマン-3-イル エステル ((±)-20) (69 mg, 96%, trans) を得た。
1H NMR (270 MHz, CD3OD) :δ 6.99 (dd, J = 8.2, 2.3 Hz, 1H), 6.94 (s, 2H), 6.89 (d, J = 2.3, 1H), 6.84 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.39 (s, 2H), 5.41 (q, J = 4.8 Hz, 1H), 5.14 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 3.02 (dd, J = 17.1, 4.6 Hz, 1H), 2.81 - 2.93 (m, 3H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.63 - 1.69 (m, 4H), 1.37 - 1.44 (m, 2H).
【0045】
実施例2 カテキン誘導体の抗インフルエンザウイルス活性試験
無血清培地(hybridoma-SFM complete DPM, Invitrogen Corp. NY, USA)に溶解した各化合物(1mg/ml)を連続2倍希釈した。各希釈液75μlにインフルエンザウイルス(A/Memphis/1/71(H1N1))懸濁液(100 FFU)75μlを混合し、4℃で1時間反応した。
【0046】
96ウエルマイクロタイタープレート(Corning Costar Corporation, Cambridge, MA)に単層培養したMDCK(Madine-Darby canine kidney)細胞に、試験化合物とインフルエンザウイルスの混合液100μlを室温で加え、34℃で1時間反応後、上清を取り除き、PBSで3回洗浄した。次いで、100μlのSFMを加え、34℃で16時間培養した。培養細胞をPBSで3回洗浄後、MeOHを加えて室温下で5分間固定した。PBSで3回洗浄後、ウイルス感染細胞を抗NPモノクローナル抗体と、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M(IgG+M)抗体を用いる酵素抗体法により検出した。ウイルス感染細胞は、1ウエル中で青色に染色された細胞数を三重測定した平均値として算出した。ウイルス感染の50%阻害濃度は、サンプル濃度に対して、阻害パーセントをプロットしたグラフから求めた。
【0047】
その結果、IC50(μM)の値は、化合物19(cis)では0.59μM、化合物20(cis)では0.38μMであった。これに対し、天然物質であるエピガロカテキンガレートでは20.8μM、A環の3位および5位の水酸基を欠失したデオキシエピガロカテキンガレートでは7.42Mであった。すなわち、A環にアルキルアミノ基を導入することにより、高い抗インフルエンザウイルス活性を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[nは3〜10である]
で表される化合物。
【請求項2】
式(I):
【化2】

[nは3〜10である]
で表される化合物を製造する方法であって、式(II):
【化3】

[式中、Rは水酸基の保護基であり、Xはハロゲンである]
で表される化合物を、式(III):
【化4】

[式中、Rは水酸基の保護基である]
で表される化合物と反応させて、式(IV):
【化5】

[式中、X、RおよびRは上で定義したとおりである]
で表される化合物を形成し;
式(IV)の化合物を、式(V):
【化6】

[式中、nは上で定義したとおりであり、Rは水酸基の保護基である]
の化合物と反応させて、式(VI):
【化7】

の化合物を形成し;
式(VI)の化合物から保護基Rを除去して、式(VII):
【化8】

の化合物を形成し;
式(VII)の化合物から保護基Rを除去するとともに、窒素原子を導入して、式(VIII):
【化9】

[式中、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、アミノ基の保護基である]
の化合物を形成し;
式(VIII)の化合物を閉環させて、式(IX):
【化10】

の化合物を形成し;
式(IX)の化合物を、式(X):
【化11】

の化合物と反応させて、式(XI):
【化12】

の化合物を形成し、
式(XI)の化合物を、脱保護して、式(I):
【化13】

の化合物を形成する、
の各工程を含む方法。
【請求項3】
一般式(I):
【化14】

[nは3〜10である]
で表される化合物を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤。

【公開番号】特開2010−53066(P2010−53066A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219285(P2008−219285)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 学会名 日本薬学会第128年会 主催 社団法人日本薬学会 会期 平成20年3月26日〜28日
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】