説明

新規ジアミノ芳香族カルボニル化合物

【課題】 本発明は、ポリアミド又はポリイミドとして従来公知の種々の用途に使用可能であり、特にイオン交換膜として優れた性質が期待される。中でも燃料電池用電解質膜として、高温下に使用可能なポリイミド製造用の原料をあたえる。
【解決手段】
ジアミノ芳香族カルボニル化合物であって、カルボニル基を介して、直接または間接的にスルホン酸基を置換した芳香族環を結合したジアミノ芳香族カルボニル化合物であり、特に該スルホン酸基を置換した芳香族環が酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、メチレン基等の原子又は2価の原子団を介して、或いは芳香族環同士が直接結合して複数個連なった置換基を有するジアミノ芳香族カルボニル化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重縮合可能な新規芳香族ジアミノ化合物に関する。特に側鎖にスルホン酸基を有するポリアミド又はポリイミドを製造するのに適した新規芳香族ジアミノ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジアミノ化合物は、ポリアミドやポリイミドなどの樹脂製造用の原料として用いられる。すでに種々のポリアミドやポリイミドがフィルム、シート、合成繊維、成形品、中空糸、ワニス等の一般材料、或いは電子材料分野で用いられており、更に種々の官能基を持つものは気体分離膜分野や医療器具材料分野などで利用されている。
なかでもスルホン酸基やリン酸基のようなイオン交換基を有するポリアミドやポリイミドは親水性が大きく、良好なイオン交換膜となり燃料電池の電解質膜などとして期待される。
【0003】
このようなポリアミドやポリイミドは、一般にジアミンとジカルボン酸又は、ピロメリット酸無水物のようなテトラカルボン酸の二無水物との重縮合により得られる。
【0004】
その場合、ジアミンとしては芳香核にイオン交換基その他の官能基を導入し得るため、一般に芳香族ジアミンが用いられる。
【0005】
例えば、スルホアルコキシ基を有する芳香族ジアミンを用いる例(特許文献1)、次記化学式(18)〜(20)で示されるジアミンの例(特許文献2)
【0006】
【化5】

【0007】
また特許文献3には、化学式(21)で示されるジアミン
【0008】
【化6】

(R1〜R8は、少なくとも一つがスルホン酸基であり、他にアルキル基、D1は−O−、−SO2−、−C(CF3)2−、アルキレン基)
及び化学式(22)で示されるジアミン
【0009】
【化7】

(D2はO、S、CH2、C(CF3)2、R4〜R7は水素原子、アルキル基、Arは1つ以上のスルホン酸基を有する芳香族炭化水素残基)
がそれぞれ記載されている。
【0010】
これらの芳香族ジアミンを一方の成分とするポリアミドやポリイミドは、前記のとおり、種々の特性を有するが、例えば電解用隔膜や燃料電池用電解質膜のように、酸性の溶液中で用いる場合、加水分解を受けやすい傾向にある。この傾向はポリアミドがポリイミドに比べて顕著である。しかし、ポリイミドにあっても、長期間使用すると、イミド環の加水分解が生じ、分子量が低下するため、膜は機械的特性を失うことがある。また、イオン交換基の脱離を生じ、使用中、経時的にイオン交換容量の低下を来たし、性能が低下するという現象が見られる。これらの現象は、特に高温時に顕著である。
【0011】
かかる現象が何故生ずるか、種々検討した結果、その原因の一つに主鎖を構成する芳香族環に直接スルホン酸基が結合していることによるものであることを見出した。
【0012】
他方、側鎖にスルホン酸基を有するものとして、主鎖の芳香族環にエーテル結合を介してスルホン化芳香族基を結合したポリイミド(特許文献4)や下記一般式(23)
【0013】
【化8】

(Rは、アルキレン、ハロゲン化アルキレン、アリーレン及びハロゲン化アリーレン、又はエーテル結合を含むもの)
に示される側鎖にスルホン酸基を有するポリイミドが示されている(特許文献5)。
【0014】
これらポリイミド樹脂よりなる陽イオン交換樹脂膜の中には、100℃程度までの使用条件下では高分子電解質膜として有効に利用可能のものもあるが、更に高温、即ち100℃を超える温度下ではやはり経時的劣化を生じることが分かった。
そこで、100℃以上の温度下で用いても、長期耐久性と機械的強度を有し、特に幅広い温度領域で使用可能で、しかも低湿度下でのプロトン伝導性低下率の少ない燃料電池用の電解質膜として使用に耐え得る高分子電解質膜の開発が望まれている。
【0015】
本発明者は敍上の課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定のジアミノ化合物をモノマーとして用いた場合、極めて耐熱性の高いすなわち、100〜120℃の温度条件下でも高い機械的強度を保ち、しかも経時的劣化の少ない陽イオン交換樹脂、特に燃料電池用電解質膜に適するポリイミド樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明はスルホン酸基を側鎖に有するポリアミドやポリイミドを得るのに適する新規なジアミノ化合物に関する。
【0017】
【特許文献1】特開2004−155998号公報
【特許文献2】特開平8−33451号公報
【特許文献3】特開2003−64181号公報
【特許文献4】特開2004−35891号公報
【特許文献5】特開2004−107484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、上記技術背景に鑑み、高い機械的強度を有し、且つ、耐熱性、耐久性のあるポリアミド又はポリイミド系イオン交換体、すなわち側鎖にスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂を得る原料モノマーである特殊なジアミノ化合物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は下記一般式(1)で表されるジアミノ芳香族カルボニル化合物(以下単にジアミノ芳香族カルボニル化合物ともいう)である。
【0020】
【化9】

(但し、Xはスルホン酸基を有し、且つ、更に置換基を有することある芳香族炭化水素残基である)
【0021】
特に好適な芳香族炭化水素残基としては次の式(2)で示す構造のものが推奨される。
【0022】
【化10】

ここで、pは0又は1(但し、Yが水素原子又はハロゲン原子の時は1)であり、Yは水素原子、ハロゲン、スルホン酸基などの置換基であり、例えば次の式(3)〜(16)に示す官能基などが好適である。
【0023】
【化11】

(但し、nは1〜2の整数)
【0024】
また、イオン交換容量を大きくするために、前記一般式で示すジアミノ芳香族カルボニル化合物の「X」がスルホン酸基の置換されたポリフェニレン基、チオフェニレン基等、次の式(17)で示される基とするのも好ましい態様である。
【0025】
【化12】

(但し、Zは芳香族環が直接結合、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−CF2−、−C(CF3)2−を表す。またmは1〜30、nは1〜2の整数を表す)
中でもポリフェニレンオキサイドが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の新規ジアミノ芳香族カルボニル化合物は、これを一方の成分とするポリアミド又はポリイミドとすることにより、機械的強度が優れ、且つ、主鎖を構成する芳香族環に直接スルホン酸基が結合しているポリイミド等、或いは、前記エーテル結合又はアルキレン結合を介して、芳香族環にスルホン酸基が結合したポリイミド等に比べて、遥かに高温下での酸性溶液中など過酷な条件下で用いた場合の加水分解による高分子鎖の切断及びスルホン酸基の脱離等経時的劣化が少なく、しかも、低湿度下でのプロトン伝導性低下率が少なく、燃料電池電解質膜として使用した場合、燃料の水素ガス等とメタノール等の液体に対して高いバリヤー性を併せ持つ優れた電解質膜とすることができる新規スルホン化ジアミノ化合物である。すなわち、本発明はポリアミド又はポリイミドとした場合、主鎖を構成する部分に親水性の基であるスルホン酸基が存在せず、疎水性の主鎖部と親水性の側鎖基部がミクロ相分離した構造をとり、疎水性ドメインへの水収着量は少なく、電解質膜としての利用時に主鎖が加水分解を受け難くなるのである。
【0027】
更に、電子吸引性基であるカルボニル基を介して、スルホン酸基を有する芳香族環が結合されることにより、スルホン酸基の加水分解が起こり難いという特徴もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の新規ジアミノ芳香族カルボニル化合物は下記一般式(1)
【0029】
【化13】

(但し、Xはスルホン酸基を有し且つ更に置換基を有することある芳香族)で表される。
【0030】
本発明の最大の特徴は、アミノ基の結合した芳香族環にはスルホン酸基が存在せず、該芳香族環とカルボニル基(ケト基)を介して芳香族環が結合し、これにスルホン酸基が結合している点にある。
【0031】
特に好ましい形態は上記ジアミノ芳香族カルボニル基に結合する芳香族環としては、下記式(2)で示される、ベンゼン環またはナフタレン環である。
【0032】
【化14】

【0033】
これらの芳香族環に1個以上のスルホン酸基が結合していてもよいし、また該芳香族環に更に酸素原子、硫黄原子、メチレン基、プロピレン基等のアルキレン基又はパーフルオロアルキレン基或いはスルホニル基等を介して、芳香族環が結合しており、それらにスルホン酸基が結合していてもよい。その場合には前記式(2)中のpは0であってもよい。かかる基の好ましい例は、次の化学式(3)〜(16)または(17)等である。
【0034】
【化15】

(但し、mは2〜30の整数、nは1〜2の整数、zは直接結合、−O−、−S−、
−SO2−、−CO−、−CH2−、−CF2−、又は−C(CF3)2−、を表す)
【0035】
このように、アミノ基を結合したベンゾイル基などの芳香族カルボニル基に結合した芳香族環に更に芳香族環が結合する形態の場合、アミノ基を結合した芳香族カルボニル基に結合した芳香族環には、スルホン基は置換していないか又は1個だけ置換していることが好ましい。
【0036】
また、式(17)で示されるzが酸素であるポリフェニレンオキサイド等、重合鎖が存在する場合、該重合鎖があまり長くなると、ポリアミド又はポリイミド化する場合に支障を生じ、十分な重合度が得られないので、前記式(17)におけるmは30程度まで、好ましくは2〜8である。
【0037】
本発明の化合物の製造方法は、特に限定されないが、次に一般的製造方法のスキームの例を示す。
【0038】
【化16】

【0039】
すなわち上記スキームの例におけるビフェニルエーテルにかえて、ベンゼンやナフタレン或いはその誘導体、ビフェニルチオエーテル、ポリフェニレンオキサイド、ビフェニルスルホン、ジフェニルメチレンなどを用いれば、それぞれ対応するジアミノ芳香族カルボニル化合物が得られるのである。
【0040】
以下に実施例を示すが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
(1)4-(3,5-ジニトロベンゾイル)フェニルエーテル(a)の合成
【0042】
十分乾燥した100mlの四つ口フラスコにAlCl3(7g,0.0525モル)及びジクロロメタン25mlを加え、この混合物を−10℃に冷却した後、その温度に冷却状態を保ち3.5-ジニトロベンゾイルクロライド(11.528g,0.05モル)を加えた。ジクロロメタン(5ml)に(8.50g,0.05モル)のジフェニルエーテルを溶解し滴下漏斗を用いて前記混合物中に1時間以上かけてゆっくりと滴下した。その間攪拌しながら0℃以下に保った。滴下後、該混合物は室温下に攪拌しながら一夜放置した。反応溶液を大量の氷(約100gに数滴の塩酸を加えたもの)に注ぎ入れた。混合物を濾過し、固体分を中性になるまで大量の水で洗浄し、10時間60℃で真空乾燥して、粗製品が12.5g得られた。400mlのエタノール中に加え、還流温度で2時間加熱した後、加温下で固体を濾別し、60℃で6時間真空乾燥して、11.9g(収率65.4%)の純粋な淡白色の固体生成物を得た。このものは、1HNMR(270MHz,DMSO-d6)で確認したところ、δ:7.10-7.13(2H),7.14-7.21(2H),7.24-7.30(1H),7.31-7.53(2H),7.88-7.92(2H),
8.77(2H),9.02-9.04(1H)にピークを有し、更に、FT-IR及びDSC(m=159.8℃)で確認した結果、4-(3.5-ジニトロベンゾイル)フェニルエーテルであることが確認された。この化合物を(a)という。
【0043】
(2)4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼン-1,3-ジスルホン酸の合成
【0044】
マグネチックスターラーを装備した100ml三つ口フラスコに4-(3,5-ジニトロベンゾイル)フェニルエーテル(a)(3.64g,10ミリモル)を入れ、アイスバスで冷却した後、4mlの濃硫酸を攪拌しながらゆっくりと添加した。硫酸を完全に添加した後、混合物を攪拌しつつ30℃で30分間室温までゆっくりと加温し、(a)を完全に溶解させた。該混合物を再びアイスバスで冷却し、4mlの発煙硫酸(60%,55.2ミリモル)をゆっくりと添加した。発煙硫酸を完全に添加した後、該混合物を攪拌しつつ0℃で1時間保持した。次いでゆっくりと60℃まで加温し、60℃で8時間保った。その後室温まで冷却した後、混合物を破砕した100gの氷中に注いだ。次いで混合物をpHが中性を示すまで10%NaOHで中和し、濾過した。濾液を濃縮して固体を得た。50mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、不溶性の固体を濾別した。次いで濾液を濃縮し得られた固体を濾別し、10時間80℃で真空乾燥して6.3g(収率94%)の淡黄色の固体生成物を得た。
このものは、1HNMR(270MHz,DMSO-d6)により、δ:6.77-6.80(1H),6.87-6.90(1H),
7.64-7.81(1H),8.14-8.15(1H),8.29-8.30(1H),8.78-8.80(2H),9.03-9.05(1H)のピークを示し、またFT-IRにより、4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼン-1,3-ジスルホン酸であることが確認された。この化合物を(b)という。
【0045】
(3)4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼン-1,3-ジスルホン酸の合成
【0046】
マグネチックスターラーを装備した100mlの四つ口フラスコに4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼン-1,3-ジスルホン酸(b)(3.35g,5ミリモル)、塩化第一スズ2水塩(11.633g,50ミリモル)、50mlのエタノール及び10mlの水を入れ、窒素雰囲気下で濃塩酸(8.75ml,50ミリモル)を加えた。この反応混合物を4時間室温で攪拌した後、濾過し、濾過物をエタノール/水(v/v=3/2)で再結晶し、60℃で10時間真空乾燥して、2.1g(収率77.3%)のグレーの固体生成物を得た。このものは1HNMR(270MHz,DMSO-d6)によりδ:6.06-6.08(1H),6.12-6.79(2H),6.79-6.85(2H),7.58-7.67(2H),8.14-8.16(2H)のピークを示した。またFT-IRにより4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼン-1,3-ジスルホン酸であることが確認された。
【実施例2】
【0047】
(1)4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼンスルホン酸の合成
【0048】
まず前記化合物(a)を用い、スルホン化を行う。すなわち、マグネティクスターラーを装備した100mlの三つ口フラスコに4-(3,5-ジニトロベンゾイル)フェニルエーテル(a)(3.64g,10ミリモル)をいれ、アイスバスで冷却して濃硫酸4mlを攪拌しながらゆっくりと加えた。該混合物を30分間0℃で攪拌しながら保持した。その後、(a)が完全に溶解するよう室温まで少し加熱した。混合物を再びアイスバスで冷却し、2mlの発煙硫酸(60%、27.6ミリモル)をゆっくりと加え、発煙硫酸を完全に加え終わった後、更に0.5時間0℃で攪拌し続けた、次いで40℃にゆっくりと昇温して4.5時間その温度を保った後、室温まで冷却し、混合物を50gの破砕した氷中に注ぎ、pHが中性になるまで10%NaOHで中和した後、濾過した。得られた溶液を濃縮した後、50mlのDMSOを加えた。不溶性の固体を濾別し、濾液を濃縮し、得られた固体を濾別し、10時間80℃で真空乾燥し、淡黄色の固体生成物5.0g(88%)を得た。これを1HNMR(270MHz,DMSO-d6)で確認したところ、δ:6.87-6.90(1H),6.97-7.07(2H),7.68-7.70(2H),7.76-7.84(1H),8.31-8.32(1H),8.76-8.80(2H),9.02-9.04(1H)にピークがあり、4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼンスルホン酸であることが確認された。
【0049】
(2)4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼンスルホン酸の合成
【0050】
前記(1)で得られた4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼンスルホン酸を用い、実施例1の(3)項と同様にし、ニトロ基の還元を行う。収率80%であり、
1HNMR(270MHz,DMSO-d6)によりδ:6.07-6.07(1H),6.13(2H)6.83-6.86(1H),
6.95-6.98(2H),7.62-7.69(3H),8.15-8.18(1H)のピークより
4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)-2-スルホフェノキシ]ベンゼンスルホン酸であることが確認された。
【実施例3】
【0051】
4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸の合成
【0052】
まず、前記化合物(a)を用い、スルホン化を行う。化合物(b)を得るのと同様に行うが、(a)の10ミリモルに対して、60%発煙硫酸を28ミリモル用い、スルホン化の反応条件を0℃、1時間とする。
【0053】
かくして得られた4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸を用いてニトロ基を還元する。
【0054】
すなわちマグネチックスターラーを装備した100mlの四つ口フラスコに4-[4-(3,5-ジニトロベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸2.33g(5ミリモル)、塩化第一スズ二水塩(11.633g,50ミリモル)、50mlのエタノール及び10mlの水を入れ、窒素ガス雰囲気下で濃塩酸(8.75ml,50mモル)を加えた。反応混合物は4時間室温で攪拌した後、得られた混合物を濾過した。濾過物をエタノールで十分に洗浄し、10時間60℃で真空乾燥した。黄色の固体状生成物を2.0g(95%)得た。このものは1HNMR(270MHz,DMSO-d6)により、δ:6.07-6.14(1H),6.15(2H),7.05-7.10(4H),7.67-7.76(4H)のピークを示し、4-[4-(3,5-ジアミノベンゾイル)フェノキシ]ベンゼンスルホン酸であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のジアミノ化合物は、ポリアミド又はポリイミドの一方の成分として用いられ、優れた陽イオン交換体となり、特にこのモノマーを用いたポリイミドは高温下での劣化が少ないことから優れた燃料電池の電解質膜を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジアミノ芳香族カルボニル化合物。
【化1】

(但し、Xはスルホン酸基を有し、且つ更に置換基を有することある芳香族炭化水素残基)
【請求項2】
Xが下記式(2)で示される請求項1に記載のジアミノ芳香族カルボニル化合物。
【化2】

[但し、pは0又は1、(但し、Yが水素原子又はハロゲン原子の時は1)Yは水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸基又は下記式(3)〜(16)に示す基のいずれか1つの基である]
【化3】

(但し(3)〜(16)におけるnは1〜2の整数を表す)
【請求項3】
Xが下記式(17)で示される基である請求項1に記載のジアミノ芳香族カルボニル化合物。
【化4】

(但し、Zは直接芳香族環が結合したもの、−O−、−S−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−CF2−、又は−C(CF3)2−、を表す。またmは1〜30、nは1〜2の整数を表す)
【請求項4】
Xがスルホン酸基の置換されたポリフェニレンオキサイド鎖よりなる請求項1に記載のジアミノ芳香族カルボニル化合物。

【公開番号】特開2006−69900(P2006−69900A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251388(P2004−251388)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】