説明

新規ジベンゾフルオレン化合物

【課題】耐熱性などに優れ、樹脂原料(ポリアミン成分)などとして有用な化合物を提供する。
【解決手段】前記化合物を、下記式(1)で表される新規なジベンゾフルオレン化合物(例えば、9,9−ビス(アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレンなど)で構成する。


(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、Rは同一又は異なって置換基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱性や高屈折率を有し、樹脂原料などとして有用な新規なジベンゾフルオレン化合物、その製造方法および前記ジベンゾフルオレン化合物を重合成分(ポリアミン成分)とする樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂や樹脂原料において、熱的特性(耐熱性など)、光学的特性(高屈折率など)などの重要な特性を付与又は改善するため、樹脂の重合成分を選択したり、樹脂を改質可能な化合物を添加するなどの方法がとられている。例えば、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現する方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスアニリンフルオレン、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。
【0003】
これらのフルオレン化合物のうち、特に、アミノ基を有するフルオレン化合物を用いた樹脂の例として、特開2004−339499号公報(特許文献2)には、ビスアミノフェニルフルオレンを重合成分とする樹脂(ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、アニリン系樹脂など)と、添加剤とを含有する組成物が開示されている。
【0004】
また、特開2001−335634号公報(特許文献2)には、少なくとも1つの芳香環を含む四塩基酸の残基と、芳香環がメチル置換されたジアミノベンゼン又は芳香環がメチル置換されたビスアミノフェニルフルオレンの残基とが結合したポリイミド単位を分子内に有する、架橋性ポリイミドが開示されている。
【0005】
このような状況の中、耐熱性、屈折率などにおいてさらに優れた材料の開発が求められている。
【特許文献1】特開2004−339499号公報(特許請求の範囲、段落番号[0032])
【特許文献2】特開2001−335634号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、優れた耐熱性、高屈折率などの特性を有する新規なジベンゾフルオレン化合物、その製造方法および前記化合物を重合成分とする樹脂を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、反応性やハンドリング性に優れる新規なジベンゾフルオレン化合物、その製造方法および前記化合物を重合成分とする樹脂を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、熱膨張性が低く、寸法精度が高い新規なジベンゾフルオレン化合物、その製造方法および前記化合物を重合成分とする樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ジベンゾフルオレン類(詳細には、2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類)の9位に、アミノ基を有する芳香族炭化水素環(フェノール骨格、ナフトール骨格など)が2つ結合した新規なジベンゾフルオレン化合物が、優れた耐熱性、高屈折率、低線膨張性などの特性を有していることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の新規な化合物(ジベンゾフルオレン化合物)は、下記式(1)で表される化合物である。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、RおよびRは、同一又は異なって、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示す。kは0〜2の整数、lは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
本発明の化合物は、前記式(1)において、環Zがベンゼン環であり、Rがアルキル基であり、かつmが0〜2であってもよい。
【0013】
また、本発明の化合物は、前記式(1)において、環Zがナフタレン環である化合物であってもよい。このような化合物は、Rがアリール基(フェニル基など)である化合物などに比べて、より一層耐熱性を向上できるとともに、熱膨張性又は線膨張性において低減できる。そのため、高い寸法安定性で、樹脂原料などとして用いることができる。
【0014】
前記化合物は、代表的には、9,9−ビス(アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン、および9,9−ビス(アミノナフチル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレンから選択された少なくとも1種であってもよい。
【0015】
本発明には、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させ、前記化合物を製造する方法も含まれる。
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Z、R、R、R、k、l、m、およびnは前記と同じ。)
また、本発明には、前記化合物をで構成されたポリアミン成分を重合成分とする樹脂も含まれる。このような樹脂は、例えば、下記式(A1)で表されるユニットを有するポリイミド樹脂であってもよい。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Aはテトラカルボン酸成分の残基を示し、Z、R、R、R、k、l、およびmは前記と同じ。)
【発明の効果】
【0020】
本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物は、優れた耐熱性、高い屈折率などの特性を有している。特に、ジベンゾフルオレン類の9位に結合する芳香族炭化水素環の種類をベンゼン環やクレゾール環などとすることにより、反応性およびハンドリング性に優れたジベンゾフルオレン化合物とすることができる。また、前記芳香族炭化水素環をナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環とすることにより、さらに、熱膨張性が低く、寸法精度が高いジベンゾフルオレン化合物とすることができる。このような本発明のジベンゾフルオレン化合物は、樹脂成分(ポリアミン成分)などとして好適に用いることができ、これらの優れた特性を樹脂に付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の化合物(ジベンゾフルオレン化合物などということがある)は、ジベンゾフルオレン類(詳細には2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類、単にジベンゾフルオレン、フルオレンなどということがある)の9位に、アミノ基を有する芳香族炭化水素環が置換した化合物であり、通常、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、R、RおよびRは同一又は異なって置換基を示す。kは0〜2の整数、lは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環(詳細には、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式炭化水素環)などが挙げられる。縮合多環式芳香族炭化水素環に対応する縮合多環式芳香族炭化水素としては、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素などが挙げられる。好ましい縮合多環式炭化水素としては、縮合多環式芳香族炭化水素(ナフタレン、アントラセンなど)が挙げられ、特にナフタレンが好ましい。なお、ジベンゾフルオレン類の9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0024】
好ましい環Zには、ベンゼン環およびナフタレン環(特にベンゼン環)が含まれる。なお、環Zが、縮合多環式芳香族炭化水素環である場合、ジベンゾフルオレン類の9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0025】
また、基Rおよび基Rで表される置換基としては、特に限定されず、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などであってもよく、特に、アルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)、などが例示できる。なお、k又はlが複数(2以上)である場合、基R又は基Rはそれぞれ互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、ジベンゾフルオレン(又はジベンゾフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R又は基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、ジベンゾフルオレンを構成するベンゼン環に対する基R又は基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kおよびlは、それぞれ、0又は1、特に0である。なお、ジベンゾフルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数k又はlは、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよい。
【0026】
環Zに置換する置換基Rとしては、例えば、不活性基又は非反応性基{例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基、好ましくはC6−8アリール基、特にフェニル基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)などのエーテル基;アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)など}などが挙げられる。
【0027】
好ましい置換基Rは、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)などの炭化水素基、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などであり、特に、C1−4アルキル基(特にメチル基)が好ましい。置換基Rは、同一の環Zにおいて、単独で又は2種以上組み合わせて置換していてもよい(すなわち、mが複数である場合、Rは同一又は異なっていてもよい)。また、異なる環Zに置換する置換基Rは互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0028】
置換基Rの置換数mは、環Zの種類などに応じて適宜選択でき、特に限定されず、例えば、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4程度であってもよい。特に、環Zが、ベンゼン環である場合には、置換数mは、例えば、0〜3、好ましくは0〜2、さらに好ましくは0又は1である。また、環Zが、ナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環である場合、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜4、さらに好ましくは0又は1、特に0であってもよい。なお、置換数mは、2つの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、置換基Rの置換位置は、特に限定されず、環Zに対するアミノ基の置換位置に応じて適宜選択できる。例えば、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位(例えば、3位、3,5−位など)の適当な位置に置換できる。
【0029】
環Zに置換するアミノ基(−NH)の置換数nは、1以上の整数であればよく、例えば、1〜8、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4、特に1〜3であってもよい。特に、環Zがベンゼン環である場合、nは、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2(特に1)であってもよい。なお、nは異なる環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0030】
環Zに置換するアミノ基の置換位置は、特に限定されず、nの数などに応じて、適宜選択できる。例えば、環Zに置換するアミノ基の置換位置は、環Zがベンゼン環であるとき、ジベンゾフルオレン類の9位に置換するフェニル基の2〜6位のいずれであってもよい。特に、少なくともフェニル基の4位にアミノ基が置換していてもよい。また、環Zがナフタレン環であるとき、アミノ基は、ジベンゾフルオレン類に置換するナフチル基(1又は2−ナフチル基)の置換位置などに応じて、5〜8位のいずれか(例えば、5位、6位)が環Zに少なくとも置換していてもよい。特に、ジベンゾフルオレン類の9位に2−ナフチル基(β−ナフチル基)が置換している場合には、ナフチル基の6位にアミノ基が置換している場合が多く、ジベンゾフルオレン類の9位に1−ナフチル基(α−ナフチル基)が置換している場合には、ナフチル基の5位又は8位(特に5位)にアミノ基が置換している場合が多いようである。
【0031】
代表的には、環Zに置換するアミノ基の置換位置は、(1)環Zがベンゼン環であり、nが1であるとき、ジベンゾフルオレン類の9位に置換するフェニル基の2〜6位(特に4位)であってもよく、(2)環Zがナフタレン環であり、nが1であるとき、ジベンゾフルオレン類の9位に置換するナフチル基(1−又は2−ナフチル基など)の置換位置などに応じて、5〜8位のいずれか(例えば、5位、6位など)に置換していてもよく、(3)環Zがベンゼン環であり、nが2であるとき、ジベンゾフルオレン類の9位に置換するフェニル基の2〜6位のうちの2つの置換位置(例えば、3位および4位;2位および4位;2位および5位など)であってもよく、(4)環Zがベンゼン環であり、nがいずれも3であるとき、ジベンゾフルオレン類の9位に置換するフェニル基の2〜6位のうちの3つの置換位置(例えば、2位、3位および4位;2位、4位および5位;3位、4位および5位;2位、4位および6位など)であってもよい。
【0032】
具体的なジベンゾフルオレン化合物としては、2つのアミノ基を有するジベンゾフルオレン化合物[例えば、9,9−ビス(アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類、9,9−ビス(アミノナフチル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類など]、3つ以上のアミノ基を有するベンゾフルオレン化合物{例えば、9,9−ビス(ポリアミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類、9,9−ビス(ポリアミノナフチル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン類など}が含まれる。
【0033】
なお、以下、ジベンゾフルオレン化合物において、「2,3:6,7−ジベンゾフルオレン」を、単に「ジベンゾフルオレン」という場合がある。
【0034】
9,9−ビス(アミノフェニル)ジベンゾフルオレン類(前記式(1)において、環Zがベンゼン環、nが1である化合物)としては、例えば、9,9−ビス(アミノフェニル)ジベンゾフルオレン[9,9−ビス(4−アミノフェニル)ジベンゾフルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−アミノフェニル)ジベンゾフルオレン[9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−2−メチルフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−2,6−ジメチルフェニル)ジベンゾフルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−アミノフェニル)ジベンゾフルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−アミノフェニル)ジベンゾフルオレン[例えば、9,9−ビス(4−アミノ−3−フェニルフェニル)ジベンゾフルオレンなど]などが挙げられる。
【0035】
9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレン類(前記式(1)において、環Zがナフタレン環、nが1である化合物)としては、例えば、9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレン類{例えば、9,9−ビス[6−(2−アミノナフチル)]ジベンゾフルオレン、9,9−ビス[1−(6−アミノナフチル)]ジベンゾフルオレン、9,9−ビス[1−(5−アミノナフチル)]ジベンゾフルオレンなどの置換基を有していてもよい9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレン}などが挙げられる。
【0036】
9,9−ビス(ポリアミノフェニル)ジベンゾフルオレン類としては、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリアミノフェニル)ジベンゾフルオレン類(前記式(1)において、環Zがベンゼン環、pが2又は3である化合物)としては、前記9,9−ビス(アミノフェニル)ジベンゾフルオレン類に対応し、式(1)においてnが2又は3である化合物、例えば、9,9−ビス(ジアミノフェニル)ジベンゾフルオレン[9,9−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(3,5−ジアミノフェニル)ジベンゾフルオレンなど]、9,9−ビス(トリアミノフェニル)ジベンゾフルオレン[例えば、9,9−ビス(2,4,6−又は2,4,5−又は3,4,5−トリアミノフェニル)ジベンゾフルオレンなど]が含まれる。
【0037】
9,9−ビス(ポリアミノナフチル)ジベンゾフルオレン類(前記式(1)において、環Zがナフタレン環、nが2以上である化合物)としては、前記9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレン類に対応する化合物、例えば、9,9−ビス(ジ又はトリアミノナフチル)ジベンゾフルオレンなどが含まれる。
【0038】
アミノ基を有するジベンゾフルオレン化合物のうち、好ましい2つのアミノ基を有する化合物としては、9,9−ビス(アミノフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(アルキル−アミノフェニル)ジベンゾフルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−アミノフェニル)ジベンゾフルオレン]、9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレンなどが挙げられる。
【0039】
これらの2つのアミノ基を有する化合物のうち、9,9−ビス(アルキル−アミノフェニル)ジベンゾフルオレンなどのジベンゾフルオレン化合物は、環Zに未置換のフェニル基が置換したジベンゾフルオレン化合物などに比べて、ハンドリング性の点で有利である。また、分子の立体障害が少ないためか、反応性においても優れている。さらに、環Zに未置換フェニル基が置換したジベンゾフルオレン化合物などに比べて製造しやすく、工業的にも有利である。
【0040】
また、9,9−ビス(アミノナフチル)ジベンゾフルオレンなどの環Zがナフタレン環などの縮合芳香族炭化水素環であるジベンゾフルオレン化合物は、耐熱性に優れていることに加え、さらに高いレベルで熱膨張性を低減できるため好ましい。しかも、このような化合物は、高い屈折率も付与できる。
【0041】
また、代表的な3以上のアミノ基を有するジベンゾフルオレン化合物としては、9,9−ビス(ジアミノフェニル)ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(トリアミノフェニル)ジベンゾフルオレンなどが含まれる。
【0042】
[ジベンゾフルオレン化合物の製造方法]
本発明のジベンゾフルオレン化合物の製造方法は、特に限定されないが、通常、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させる工程(工程(A))を少なくとも経て製造することができる。
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、Z、R、R、R、k、l、mおよびnは前記と同じ。)
上記式(2)で表される化合物は、前記式(1)で表される化合物においてジベンゾフルオレン類に対応する化合物(ジベンゾフルオレノン類)である。代表的なジベンゾフルオレノン類は、9−ジベンゾフルオレノン(詳細には、2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレノン)である。なお、使用するジベンゾフルオレノン類の純度は、特に限定されないが、通常、95重量%以上、好ましくは99重量%以上である。
【0045】
なお、ジベンゾフルオノン類は、市販品を用いてもよく、合成したものを使用してもよい。
【0046】
ジベンゾフルオレノン類を製造する方法としては、例えば、(1)t−ブトキシドの存在下、2−ホルミルベンジルスルホン酸フェニルとベンズ[f]インデノンとを反応させる方法)(Synthesis 2006, No.15, 2556−2562に記載の方法)、(2)α,α,α’,α’−テトラブロモ−o−キシレンと、2−シクロペンテン−1−オンとをヨウ化ナトリウムの存在下で反応させてベンズ[f]インダン−1−オンを得、得られたベンズ[f]インダン−1−オンをNBS(N−ブロモスクシンイミド)およびベンゾイルパーオキサイドの存在下で反応させ、ベンズ[f]インデン−1−オンを得、得られたベンズ[f]インデン−1−オンとα,α,α’,α’−テトラブロモ−o−キシレンとをヨウ化ナトリウムの存在下で反応させる方法(Journal of Organic Chemistry, Vol.59,No.21,1994 6484−6486(1994)に記載の方法)などが挙げられる。
【0047】
また、前記式(3)で表される化合物は、前記式(1)において、アミノ基を有する芳香族炭化水素環に対応している。すなわち、式(3)において、環Zは前記式(1)における環Zに対応しており、前記例示の芳香族炭化水素環(ベンゼン環、ナフタレン環)が挙げられる。また、前記式(3)において、置換基R、m、およびnは前記と同じであり、好ましい態様なども同じである。
【0048】
前記式(3A)で表される代表的な化合物としては、環Zがベンゼン環である化合物、環Zがナフタレン環である化合物が挙げられる。
【0049】
環Zがベンゼン環である化合物としては、アニリン類{例えば、アニリン、置換基を有するアニリン[例えば、アルキルアニリン(例えば、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,6−キシリジンなどのモノ又はジC1−4アルキル−アニリンなど)、アルコキシアニリン(o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジンなどのC1−4アルコキシ−アニリンなど)など]、ポリアミノベンゼン類{例えば、フェニレンジアミン(o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン)、アルキル−ジアミノベンゼン[ジアミノトルエン、ジアミノキシレンなどのモノ又はジC1−4アルキル−ジアミノベンゼンなど]などのジ又はトリアミノベンゼン類など}などが挙げられる。
【0050】
また、環Zがナフタレン環である化合物としては、アミノナフタレン類[例えば、ナフチルアミン(1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン)など]、これらのアミノナフタレン類に対応するポリヒドロキシナフタレン類(例えば、1,2−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレンなどのジ又はトリアミノナフタレン類)などが挙げられる。
【0051】
これらの前記式(3)で表される化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0052】
なお、前記式(3)で表される化合物として、アミノ基の水素原子の一部又は全部が置換されたN−置換体[例えば、N−モノアルキル置換体(例えば、N−メチルアニリンなどのN−モノC1−4アルキル−アニリン類など)など]を用いてもよい。そして、本発明には、このようなN−置換体を用いて得られる化合物(すなわち、前記式(3)で表される化合物において、アミノ基の水素原子がアルキル基などで置換された化合物)なども含まれる。
【0053】
原料として使用する前記式(3)で表される化合物(例えば、アニリン類など)の純度は特に限定されないが、通常、95重量%以上であり、好ましくは99重量%以上である。
【0054】
反応において、前記式(3)で表される化合物の割合(使用割合)は、前記式(2)で表される化合物(ジベンゾフルオレノン類)1モルに対して、例えば、2〜100モル(例えば、2.3〜80モル)、好ましくは2.5〜70モル(例えば、2.7〜60モル)、さらに好ましくは3〜50モル程度であってもよい。
【0055】
なお、前記式(2)で表される化合物と前記式(3)で表される化合物との反応(縮合反応)は、必要に応じて、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、例えば、プロトン酸{無機酸(硫酸、塩化水素、硝酸、塩酸、リン酸など)、有機酸[例えば、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸アルカンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸)など]、ルイス酸[金属ハロゲン化物(塩化アルミニウム、塩化鉄(III)など)、ハロゲン化ホウ素(フッ化ホウ素など)など]、固体酸(例えば、金属酸化物などの無機固体酸、イオン交換樹脂などの有機固体酸)などの酸触媒などが挙げられる。なお、酸触媒は、前記式(3)で表される化合物との塩の形態で使用してもよい。触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0056】
縮合反応は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。溶媒(反応溶媒)は、ジベンゾフルオレノン類および前記式(3)で表される化合物に対して不活性であれば特に限定されず、幅広い範囲で使用できる。代表的な溶媒(有機溶媒)としては、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類)、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アニソールなど)などが挙げられる。また、過剰の前記式(3)で表される化合物を溶媒として使用してもよい。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0057】
溶媒の使用量は、ジベンゾフルオレノン類1重量部に対して、0〜50重量部(例えば、0.1〜30重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部程度であってもよい。
【0058】
縮合反応は、使用する原料や触媒などの種類に応じて異なるが、通常、30〜220℃、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜180℃(例えば、100〜170℃)程度で行う場合が多い。また、反応時間は、原料の種類、反応温度や溶媒中の濃度などに応じて調整でき、例えば、30分〜48時間、通常、1〜20時間、好ましくは1〜10時間程度である。また、反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中又は不活性雰囲気(窒素、希ガスなど)中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。
【0059】
反応終了後の反応混合物には、通常、生成した前記式(1)で表される化合物以外に、未反応のジベンゾフルオレノン類、未反応の前記式(3)で表される化合物、触媒、副反応生成物などが含まれている。そのため、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、再沈殿などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0060】
[ジベンゾフルオレン化合物の用途]
本発明のジベンゾフルオレン化合物は、ジベンゾフルオレン骨格を有しているとともに、芳香族炭化水素骨格(ベンゼン骨格、ナフタレン骨格など)を有しており、種々の特性(光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械特性、寸法安定性など)に優れており、種々の用途においてこれらの特性を向上又は改善するのに有用である。また、前記骨格により、高い屈折率も有している。さらに、前記のように、芳香族炭化水素骨格の種類を選択することにより、ハンドリング性や反応性をより一層改善したり、線膨張性の低減により寸法安定性を向上することもできる。このため、このようなジベンゾフルオレン化合物は、添加剤、樹脂原料(モノマーなど)などとして好適に用いることができ、前記のような優れた特性を効率よく付与するための化合物として用いることができる。
【0061】
(添加剤用途および樹脂組成物)
添加剤としては、樹脂用添加剤(又は樹脂添加剤)、硬化剤(例えば、エポキシ樹脂用硬化剤などの樹脂用硬化剤など)などが挙げられる。添加剤として用いる場合、樹脂および前記ジベンゾフルオレン化合物(例えば、ヒドロキシル基を有するジベンゾフルオレン化合物)を含む樹脂組成物(熱可塑性樹脂組成物、熱又は光硬化性樹脂組成物)を構成できる。このような樹脂組成物において、樹脂としては、特に限定されず、幅広い範囲の樹脂(熱可塑性樹脂、熱又は光硬化性樹脂など)を使用できる。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、フッ化樹脂など)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂[例えば、ポリアルキレンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなど)、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアリレート系樹脂(例えば、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸など)と芳香族ジオール(ビフェノール、ビスフェノールA、キシリレングリコール、これらのアルキレンオキシド付加体など)を重合成分として用いたポリアリレート系樹脂など)など]、ポリアセタール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0063】
これらの熱可塑性樹脂のうち、芳香環(ベンゼン環など)を含有する熱可塑性樹脂、例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、芳香族ポリエステル系樹脂(前記ポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂などが好ましい。前記ジベンゾフルオレン化合物は、これらの芳香環含有樹脂との相溶性が高く、そのため、樹脂に対する分散性が高い。
【0064】
また、熱硬化性樹脂(又は光硬化性樹脂)としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂(シリコーン樹脂、ポリシランなど)、光重合性モノマー又はオリゴマー(例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート系化合物)などが例示できる。熱硬化性樹脂は初期縮合物であってもよい。熱硬化性樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
なお、熱硬化性樹脂とジベンゾフルオレン化合物とを組み合わせる場合、ジベンゾフルオレン化合物は硬化剤(又は硬化促進剤)として作用してもよい。前記樹脂のうち、ジベンゾフルオレン化合物を硬化剤として用いることができる代表的な樹脂としては、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂(例えば、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールAなどのビスフェノール類とエピクロロヒドロリンとの反応物(縮合物)、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂など)、ノボラック型エポキシ樹脂[フェノールノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型グリシジルエーテルなど)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(クレゾールノボラック型グリシジルエーテルなど)など]などが含まれる。エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0066】
ジベンゾフルオレン化合物の割合は、樹脂(特に、芳香環を有する熱可塑性樹脂などの熱可塑性樹脂)100重量部に対して、例えば、1〜700重量部、好ましくは50〜600重量部、さらに好ましくは100〜500重量部(例えば、200〜300重量部)程度であってもよい。また、ジベンゾフルオレン化合物を硬化剤として使用する場合、樹脂(エポキシ樹脂など)の官能基(又は硬化性官能基、例えば、エポキシ基)1当量に対して、ジベンゾフルオレン化合物の官能基(例えば、フェノール性水酸基などのヒドロキシル基)が、0.1〜4.0当量、好ましくは、0.3〜2.0当量、さらに好ましくは、0.5〜1.5当量となるように、両成分の割合を調整してもよい。
【0067】
前記樹脂組成物は、用途に応じて種々の添加剤、例えば、充填剤、難燃剤、強化剤、可塑剤、重合開始剤、触媒、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、着色剤(染顔料)、消泡剤、レベリング剤、分散剤、流動調整剤、カーボン材料(カーボンブラック、黒鉛、カーボン繊維、活性炭、フラーレン、カーボンナノチューブなど)などを含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、前記樹脂組成物は、樹脂の種類などに応じて溶媒を含む組成物(コーティング組成物など)であってもよい。
【0068】
(樹脂原料用途および樹脂)
本発明のジベンゾフルオレン化合物は、樹脂原料として用いることができる。例えば、本発明のジベンゾフルオレン化合物は、官能基として、複数のアミノ基を有しているため、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のポリアミン成分として用いることができる。すなわち、本発明の樹脂は、前記ジベンゾフルオレン化合物(又はその誘導体)を重合成分(ポリアミン成分)とする樹脂である。詳細には、本発明の樹脂は、ポリアミンを重合成分とする樹脂において、前記ポリアミン成分の一部又は全部が前記ジベンゾフルオレン化合物(又はその誘導体)で構成された樹脂である。
【0069】
このような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂など)、熱硬化性樹脂(ポリイミド系樹脂、アニリン樹脂など)などが挙げられる。これらの樹脂において、ポリアミン成分を構成する成分としての前記ジベンゾフルオレン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0070】
なお、これらの樹脂(特に熱可塑性樹脂)において、ポリアミン成分の少なくとも一部に、前記ジベンゾフルオレン化合物を使用すればよく、ポリアミン成分の一部又は全部を前記ジベンゾフルオレン化合物で構成してもよい。以下、代表的な樹脂として、ポリイミド系樹脂(ポリイミド樹脂)について詳述する。
【0071】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂は、例えば、ジベンゾフルオレン化合物(前記式(1)で表される化合物)で少なくとも構成されたジアミン成分(a)と、テトラカルボン酸成分とを重合成分とするポリイミド樹脂である。このようなポリイミド系樹脂において、ジベンゾフルオレン化合物は、通常、前記式(1)においてnが1である化合物であってもよい。すなわち、代表的なポリイミド樹脂は、下記式(A1)で表されるユニットを有するポリイミド樹脂であってもよい。
【0072】
【化6】

【0073】
(式中、Aはテトラカルボン酸成分の残基を示し、Z、R、R、R、k、l、およびmは前記と同じ。)
上記式(A1)において、残基Rを除く部分のユニットは、前記式(1)で表される化合物に対応しており、Z、R、R、R、k、l、およびm、さらにこれらの好ましい態様は前記と同様である。
【0074】
なお、前記ジアミン成分(a)は、前記式(1)で表されるジベンゾフルオレン化合物(a1)で構成されている限り、他のジアミン成分(ジベンゾフルオレン化合物(a1)以外のジアミン成分)を含んでいてもよい。
【0075】
このような他のジアミン成分(ジアミン成分(a2))は、例えば、脂肪族ジアミン(ヘキサメチレンジアミンなどの鎖状脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミンなどの環状脂肪族ジアミン)であってもよいが、特に芳香族ジアミンであってもよい。芳香族ジアミンとしては、ジアミノアレーン類{例えば、フェニレンジアミン(p−フェニレンジアミン)、アルキル−ジアミノベンゼン[ジアミノトルエン、ジアミノキシレンなどのモノ又はジC1−4アルキル−ジアミノベンゼンなど]などのジアミノベンゼン類;ジアミノナフタレン(例えば、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレンなど)などのジアミノナフタレン類などのジアミノC6−20アレーン類、好ましくはジアミノC6−14アレーン類}、ジアミノジアリール類[例えば、ジアミノビフェニル類(4,4’−ジアミノビフェニルなど)などのジアミノジC6−10アリール類など]、ジアミノジアリールアルカン類[例えば、ジアミノジフェニルアルカン(4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス(アニリノ)エタンなどのジアミノジフェニルC1−10アルカン)などのジアミノジC6−10アリールアルカン、好ましくはジアミノジC6−10アリールC1−10アルカン]、ジ(アミノアリール)エーテル類[例えば、ジ(アミノフェニル)エーテル類(4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなど)などのジ(アミノC6−10アリール)エーテル類など]、ジ(アミノアリール)スルフィド類[例えば、ジ(アミノフェニル)スルフィド類(2,2’−ジアミノジフェニルスルフィドなど)などのジ(アミノC6−10アリール)スルフィド類など]、ジ(アミノアリール)スルホン類[例えば、ジ(アミノフェニル)スルホン類(3,3’−ジアミノジフェニルスルホンど)などのジ(アミノC6−10アリール)スルホン類など]などが挙げられる。なお、これらのジアミン成分には、置換基として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子などに)などを有する化合物も含まれる。他のジアミン成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0076】
ジアミン成分(a)において、ジベンゾフルオレン化合物(a1)の割合は、ジアミン成分(a)全体に対して、例えば、30モル%以上(例えば、40〜100モル%程度)、好ましくは50モル%以上(例えば、60〜99モル%程度)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば、80〜95モル%程度)であってもよく、通常90モル%以上(例えば、95モル%以上)であってもよい。
【0077】
なお、必要に応じて、ジアミン成分に加えて、3以上のアミノ基を有するポリアミン成分を少量使用してもよい。
【0078】
また、前記イミド樹脂において、テトラカルボン酸成分(又はテトラカルボン酸成分の残基に対応する化合物)としては、脂肪族テトラカルボン酸成分、芳香族テトラカルボン酸成分(又は芳香族骨格を有するテトラカルボン酸成分)などが挙げられる。
【0079】
脂肪族テトラカルボン酸成分としては、鎖状脂肪族テトラカルボン酸(ブタンテトラカルボン酸などのアルカンカルボン酸など)、環状脂肪族テトラカルボン酸{又は脂環族テトラカルボン酸、例えば、シクロアルカンテトラカルボン酸(シクロペンタンテトラカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−テトラカルボン酸)、ジ(カルボキシアルキル)シクロアルケンジカルボン酸[例えば、5−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、5−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸など]など}、これらのカルボン酸の誘導体[酸無水物(特に二酸無水物)、酸ハライドなど]などが挙げられる。
【0080】
芳香族テトラカルボン酸成分としては、例えば、アレーンテトラカルボン酸(例えば、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸などのC6−20アレーン−テトラカルボン酸、好ましくはC6−14アレーン−テトラカルボン酸)、ジアリールテトラカルボン酸[例えば、ビフェニル類(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸など)などのジC6−10アリールテトラカルボン酸など]、ビス(ジカルボキシアリール)アルカン[例えば、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンなどのビス(ジカルボキシC6−10アリール)C1−10アルカンなど]、ビス(ジカルボキシアリール)エーテル[例えば、4,4’−オキシジフタル酸などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)エーテルなど]、ビス(ジカルボキシアリール)ケトン[例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸)などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)ケトンなど]、ビス(ジカルボキシアリール)スルホン[例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸)などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)スルホンなど]、ビス(ジカルボキシアリールオキシアリール)[例えば、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン、2,2’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビス(ジカルボキシC6−10アリールオキシC6−10アリール)C1−10アルカンなど]、フルオレン骨格を有するテトラカルボン酸{例えば、9,9−ビス(トリメリトオキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類とトリメリト酸とのエステルなど}、これらのカルボン酸の誘導体[酸無水物(特に二酸無水物)、酸ハライドなど]などが挙げられる。
【0081】
なお、これらのテトラカルボン酸成分には、置換基として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子などに)などを有する化合物も含まれる。
【0082】
テトラカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。
【0083】
前記ポリイミド樹脂(又は後述のポリアミド酸)の重量平均分子量は、例えば、3000〜1000000程度の範囲から選択でき、例えば、5000〜800000、好ましくは8000〜500000、さらに好ましくは10000〜300000(例えば、12000〜100000)程度であってもよく、通常5000〜50000程度であってもよい。なお、上記、重量平均分子量は、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより評価した値であってもよい。
【0084】
また、前記ポリイミド樹脂は、耐熱性に優れている。例えば、ポリイミド樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、200〜450℃、好ましくは230〜400℃、さらに好ましくは250〜350℃程度であってもよい。
【0085】
なお、前記ポリイミド樹脂は、前記ジアミン成分(a)と前記テトラカルボン酸成分(b)とを、慣用の方法を利用して反応させることにより得ることができる。すなわち、前記ジアミン成分(a)と前記テトラカルボン酸成分(b)とを反応(縮合反応)させて、対応するポリアミド酸を得る工程(1)、得られたポリアミド酸を脱水閉環させる工程(2)を経て製造できる。なお、対応するポリアミド酸は、下記式(A2)で表されるユニットを有する樹脂(化合物)であり、本発明にはこのポリアミド酸(ポリアミック酸)も含まれる。
【0086】
【化7】

【0087】
(式中、A、Z、R、R、R、k、l、およびmは前記と同じ。)
反応において、ジアミン成分(a)と、テトラカルボン酸成分(b)との割合は、これら成分の当量比をベースに適宜選択でき、例えば、ジアミン成分(a)の割合は、テトラカルボン酸成分(b)1モルに対して、0.7〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モル、さらに好ましくは0.95〜1.05モル程度であってもよく、通常約1モル程度である。
【0088】
反応(縮合反応、重合反応)は、溶媒の非存在下で行ってもよく、溶媒の存在下で行ってもよい。なお、溶媒は、反応温度において液体である成分であればよい。例えば、常温において固体であっても、反応温度において液状となる成分であってもよい。代表的な溶媒(有機溶媒)としては、エーテル系溶媒[ジフェニルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など]、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、トリクロロビフェニルなどのハロゲン化芳香族炭化水素類)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、複素環化合物(N−メチル−2−ピロリドンなど)、スルホン系溶媒(スルホラン、ジメチルスルホンなどの脂肪族スルホン、ジフェニルスルホンなどの芳香族スルホンなど)などが挙げられる。前記溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0089】
なお、反応(縮合反応、重合反応)は、必要に応じて、触媒の存在下で行ってもよい。
【0090】
重合温度は、例えば、10〜200℃、好ましくは20〜150℃、さらに好ましくは30〜100℃(例えば、170〜250℃)程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜72時間、好ましくは1〜48時間、さらに好ましくは3〜36時間程度であってもよい。
【0091】
反応は、空気中で行ってもよいが、不活性ガス(ヘリウム、窒素、アルゴンなど)の雰囲気下又は流通下で行ってもよい。また、反応は、常圧下、加圧下、又は減圧下で行ってもよい。
【0092】
また、工程(2)において、脱水閉環させる方法としては、特に限定されず、脱水剤(例えば、無水酢酸などの酸無水物)を使用する方法、高温で加熱する方法、これらを組み合わせる方法などが挙げられる。
【0093】
なお、反応終了後、生成物であるポリイミド樹脂は、慣用の分離方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有しており、樹脂添加剤、樹脂原料などとして好適に用いることができる。また、本発明のジベンゾフルオレン化合物は、低線膨張性を有しており、樹脂などに適用しても高い寸法精度で成形できる。さらに、本発明のジベンゾフルオレン化合物は、添加剤分散性にも優れ、各種添加剤を含む成形材料としても好適である。例えば、本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂)は、カーボンなどの添加剤を効率よく分散させることができる。そのため、樹脂などに適用すると、前記のような優れた特性を有するとともに、高強度又は高硬度を有する成形体(膜やフィルムなどを含む)を効率よく得ることができる。
【0095】
そのため、本発明の新規なジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂、例えば、ポリイミド樹脂)は、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明のジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂)又はその成形体(例えば、機能発現剤(色素など)を含有する樹脂組成物およびその成形体)は、感光性樹脂(又は感光性樹脂組成物)、塗料、帯電防止材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザー、感熱記録材料、ホログラム記録材料、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子、有機感光体、カラーフィルタ、摺動部材、自動車部品材料、航空・宇宙材料、キャリア輸送剤、インキ、接着剤、粘着剤、建材、内装材、樹脂充填材、着色ガラス、発光体、センサーなどに好適に利用できる。
【0096】
特に、本発明のジベンゾフルオレン化合物(又はジベンゾフルオレン化合物を重合成分とする樹脂)は、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような光学用成形体としては、光学フィルムなどが挙げられる。光学フィルムとしては、偏光フィルム(及びそれを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム)、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。とりわけ、前記フィルムは、機器のディスプレイに用いる光学フィルムとして有用である。このような前記光学フィルムを備えたディスプレイ用部材(又はディスプレイ)としては、具体的には、パーソナル・コンピュータのモニタ、テレビジョン、携帯電話、カー・ナビゲーション、タッチパネルなどのFPD装置(例えば、LCD、PDPなど)などが挙げられる。
【実施例】
【0097】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0098】
なお、実施例において、化合物又はポリマーの特性は以下の方法により測定又は評価した。
【0099】
(1)ガラス転移温度(Tg)測定
示差走査熱量計(島津製作所(株)製、「DSC−60」)を用い、50mL/分の窒素流下、10℃/分の昇温条件で測定した。
【0100】
(2)熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、島津製作所(株)製、「TGA−50」装置を用いて、窒素雰囲気下(Tdpa)及び空気雰囲気(Tdpb)(流量50ml/分)中、加熱速度10℃/分で行い、熱分解温度を測定した。
【0101】
(3)H−NMRスペクトル
H−NMRスペクトルは、内標準としてテトラメチルシランを用い、JEOL GTX−400分光計によって記録した。
【0102】
(4)MALDI−TOF−MASS
MALDI−TOF−MSスペクトルは、Shimadzu AXIMA−CFR質量分析計によって得た。
【0103】
(5)屈折率測定
ポリマーを塩化メチルに溶解させ、0.2μmのメンブランフィルタにて不溶分を除去した後、スピンコーターにて1000〜3000rpmにて良く研磨したシリコン上に薄膜を製膜した後に、光学式薄膜測定装置F20(フィルメトリクス社製)にてλ=589nmおよびλ=632.4nmにおける屈折率を測定した。ただし、実施例4および5については、塩化メチルにポリマーが溶解しなかったため、N,N−ジメチルアセトアミドに溶解させた。
【0104】
(合成例1)
(1)ベンズ[f]インダン−1−オンの合成
α,α,α’,α’−テトラブロモ−o−キシレン30.0g(0.0710mol)および2−シクロペンテン−1−オン5.83g(0.0710mol)を、270mLのDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解させた。さらに、ヨウ化ナトリウム(69.7g、0.465mol)を添加し、得られた混合物を80℃まで加熱して一晩攪拌して反応させた。冷却した反応混合物を、氷水(500mL)に注ぎ、そして亜硫酸水素ナトリウム水溶液を徐々に添加することによってヨウ素に起因する褐色を除去した。ろ過によって、黄色沈殿を得、この沈殿物を95%エタノールから再結晶して、ベンズ[f]インダン−1−オンを収率35%で得た。融点は、144〜146℃であった。
【0105】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:2.79−2.82(t,2H),3.31−3.34(t,2H),7.48−8.33(m,6H)
反応式を下記に示す。
【0106】
【化8】

【0107】
(2)2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレノンの合成
得られたベンズ[f]インダン−1−オン8.08g(0.0444mol)、NBS(N−ブロモスクシンイミド)8.68g(0.0596mol)、および過酸化ベンゾイル40mgを、120mLの乾燥CCl中で2時間還流させた。還流後の溶液を冷却し、ろ過によってNBSを除去し、得られた粗生成物を次の工程に直接使用した。CCl中の粗臭化生成物を氷浴にて冷却し、次いで7.72mL(5.64g、0.056mol)のトリエチルアミン(EtN)をゆっくり添加した。得られた混合物を室温まで温め、一晩攪拌した。その後、得られた沈澱を取り出し、減圧乾燥した。得られた乾燥物(ベンズ[f]インデン−1−オン)を、さらに精製することなく使用した。
【0108】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:6.11−6.14(d,2H)、7.30−7.95(m,6H)
反応式を以下に示す。
【0109】
【化9】

【0110】
そして、α,α,α’,α’−テトラブロモ−o−キシレン18.72g(44.4mmol)および得られたベンズ[f]インデン−1−オン(8.0g、44.4mmol)を350mLのDMFに溶解させた。ヨウ化ナトリウム43.6g(290.8mmol)を添加し、得られた混合物を80℃で一晩攪拌して反応させた。氷水中でこの反応を止め、亜硫酸水素ナトリウムで脱色した。得られた黄色沈澱をろ過し、氷酢酸から再結晶、次いでキシレンから再結晶し、昇華して淡黄色針状の2,3:6,7−ジベンゾフルオレノンを48%の収率で得た。融点は、270〜273℃であった。
【0111】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:7.45−7.58(m,4H)、7.85−7.91(t,4H)、8.07(s,2H)、8.25(s,2H)
IR:1706.2cm−3
MALDI−TOF−MASS:280(M)。
【0112】
反応式を以下に示す。
【0113】
【化10】

【0114】
(実施例1)
9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレンの合成
マグネチックスターラー、ディーン・スターク・トラップおよび冷却器を備えた3口丸底フラスコに、合成例1で得た2,3:6,7−ジベンゾフルオレノン6.0g(0.021mol)、アニリン40g(0.430mol)、アニリン塩酸塩13.5g(0.101mol)およびベンゼン10mLを仕込み、アルゴン流下で150℃まで加温し4時間反応させた。その後、反応混合物を60℃まで冷却したのち、10%の水酸化ナトリウム水溶液を100mL添加し、1時間攪拌した。室温まで冷却した後、混合液を100mLの酢酸エチルで抽出する操作を4回行った。そして、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒成分を減圧下で乾燥するまで除去した。得られた固体状の粗生成物を50mLのトルエンを用い、80℃で20分間攪拌しつつ洗浄し、再度濾過する工程を3回繰り返し、乾燥することにより黄色固体の9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレンを59%の収率(5.7g)で得た。融点は、311〜312℃であった。
【0115】
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:4.87(s,2H),6.45(d,J=8,4H),6.90(d,J=8,4H),7.43−7.51(m,4H),7.83(s,2H),7.88(d,J=8,2H),8.00(d,J=8,2H),8.52(s,2H)
MALDI−TOF−MASS:450.8(M
反応式を以下に示す。
【0116】
【化11】

【0117】
(実施例2)
実施例1において、アニリン40g(0.430mol)に代えて、2−アミノナフタレン61.4g(0.43mol)を使用したこと以外は、実施例1と同様に反応および回収し、黄色固体の9,9−ビス[6−(2−アミノナフチル)]−2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレンを42%の収率(4.7g)で得た。
【0118】
MALDI−TOF−MASS:549.6(M)。
【0119】
(合成例2)
無水トリメリット酸クロライド42.11g(0.2mol)、ピリジン23.73g(0.3mol)およびベンゼン130gを、メカニカルスターラー、乾燥管で保護された還流冷却器、および粉末添加用漏斗(a powder addition funnel)を取り付けた300mLの3口フラスコに入れた。そして、その混合物に、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン22.83g(0.1mol)を0.5時間かけて、少しずつ添加した。そして、混合物を還流下で3時間攪拌し、室温まで放冷した。生成したピリジン塩酸塩を濾過により除去し、濾液を600mLのヘキサンに注いだ。そして、生成した沈殿物を濾過により回収し、60℃で真空乾燥し、粗生成物を得た。粗生成物28.82g(0.05mol)、無水酢酸20.42g(0.2mol)およびベンゼン45gを、メカニカルスターラーおよび還流冷却器を備えた300mLの3口フラスコに入れ、還流下で1時間攪拌し、室温まで放冷した。得られた混合物を600mLのヘキサンに注ぎ、生成した沈殿物を濾過により回収し、150℃で真空乾燥し、目的化合物である、2,2−ビス(p−トリメリトキシフェニル)フルオレン二無水物を収率62%(17.89g)で得た。融点は、289〜291℃であった。
【0120】
H−NMR(400MHz,アセトン−d)δ:7.30−7.46(m,12H),7.57(d,J=8,2H),7.94(d,J=8,2H),8.28(d,J=8,2H),8.70−8.74(m,4H)
MALDI−TOF−MASS:670.1(M
反応式を以下に示す。
【0121】
【化12】

【0122】
(実施例3)
ポリイミドの合成1
実施例1で得られた9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾ−9−フルオレン0.8971g(2.0mmol)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)5mLに溶解した溶液に、攪拌下で、合成例2で得られた二無水物を1.397g(2.0mmol)を徐々に添加した。そして、混合物をアルゴン雰囲気下、50℃で24時間攪拌し、対応するポリアミド酸(ポリアミック酸)を得た。次いで、このポリアミド酸を含む混合液に、無水酢酸1.5mLおよびピリジン0.8mLを添加し、室温で一晩中攪拌しつつ、化学的環化脱水を行った。そして、ポリマー混合液をメタノールに注ぎ、得られたポリマー生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、80℃で真空乾燥した。収率は95%であった。得られたポリイミドのTgは304.8℃、Tdpaは571℃、Tdpbは551℃、λ=589nmにおける屈折率は1.6665、λ=632.4nmにおける屈折率は1.6591であった。
【0123】
(実施例4)
ポリイミドの合成2
実施例3において、合成例2で得られた二無水物1.397g(2.0mmol)に代えて、下記式で表される化合物(シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物)を0.420g(2.0mmol)使用したこと以外は、実施例3と同様にしてポリイミドを得た。収率は91%であった。得られたポリイミドのTgは308.7℃、Tdpaは509℃、Tdpbは456℃、λ=589nmにおける屈折率は1.6881、λ=632.4nmにおける屈折率は1.6827であった。
【0124】
【化13】

【0125】
(実施例5)
ポリイミドの合成3
実施例3において、合成例2で得られた二無水物1.397g(2.0mmol)に代えて、下記式で表される化合物[5−(1,2−ジカルボキシエチル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物]を0.528g(2.0mmol)使用したこと以外は、実施例3と同様にしてポリイミドを得た。収率は93%であった。得られたポリイミドのTgは309.3℃、Tdpaは529℃、Tdpbは413℃、λ=589nmにおける屈折率は1.6495、λ=632.4nmにおける屈折率は1.6375であった。
【0126】
【化14】

【0127】
(実施例4)
ポリイミドの合成4
実施例3において、合成例2で得られた二無水物1.397g(2.0mmol)に代えて、下記式で表される化合物(ジフェニルエーテル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物)を0.620g(2.0mmol)使用したこと以外は、実施例3と同様にしてポリイミドを得た。収率は90%であった。得られたポリイミドのTgは287.9℃、Tdpaは621℃、Tdpbは545℃、λ=589nmにおける屈折率は1.6711、λ=632.4nmにおける屈折率は1.6666であった。
【0128】
【化15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、RおよびRは、同一又は異なって、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基、Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又は置換アミノ基を示す。kは0〜2の整数、lは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数である。)
【請求項2】
式(1)において、環Zがベンゼン環であり、Rがアルキル基であり、かつmが0〜2である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、環Zがナフタレン環である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
9,9−ビス(アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−アミノフェニル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレン、および9,9−ビス(アミノナフチル)−2,3:6,7−ジベンゾフルオレンから選択された少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを反応させ、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物を製造する方法。
【化2】

(式中、Z、R、R、R、k、l、m、およびnは前記と同じ。)
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物で構成されたポリアミン成分を重合成分とする樹脂。
【請求項7】
下記式(A1)で表されるユニットを有するポリイミド樹脂である請求項6記載の樹脂。
【化3】

(式中、Aはテトラカルボン酸成分の残基を示し、Z、R、R、R、k、l、およびmは前記と同じ。)

【公開番号】特開2009−57323(P2009−57323A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226437(P2007−226437)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】