説明

新規チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体及びその用途

【課題】既存抗癌剤との交叉耐性がない新規な抗癌剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、XおよびYはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基を示すか、XおよびYは結合して環状構造を形成するための炭素数3〜5のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基を示す。nは1〜3の整数を示す。Aは置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基などを示し、置換基としてはハロゲン原子などからなる群から選択される1個以上を示し、mは0〜3の整数を示す。)で表されるチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、およびその医薬としての用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗癌剤としては、非特許文献1および2に示されているように作用機序の異なる多くの薬剤が開発されている。アドリアマイシン、シスプラチン、タキソール、ビンクリスチン、ゲムシタビン等が広く臨床で使用されている。この中でアドリアマイシンを始めとするアンスラサイクリン系化合物は代表的な抗癌剤として広く臨床で使用されているが、心毒性、骨髄抑制等の副作用や薬剤耐性癌細胞の出現により十分な治療が施せないケースが増加しており、治療上の問題となっている。
【0002】
また、癌細胞の抗癌剤に対する耐性の獲得は非特許文献3に示されているように癌治療における大きな障害になっている。耐性の獲得の機序には薬剤を細胞外に排泄する機構や細胞内で解毒する機構、DNAに損傷が起こったときの修復機構などがあり、これらに対する阻害剤の開発が進められているなど、交叉耐性のない抗癌剤が渇望されている。
【0003】
一方、本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体の類似化合物は、特許文献1,2,3で示されているようにマイコバクテリアプロテインキナーゼG阻害、プリン受容体拮抗阻害、サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼ阻害といった生理活性が報告されている。また、非特許文献4にはチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オン誘導体の細胞増殖阻害活性が記載されているものの、ピペリジン、ピロリジン、アゼパンを置換基に持つチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体については開示がなく、薬剤耐性癌に対する交叉耐性についての報告はなされていない。
【非特許文献1】癌と化学療法 26 Supplement 1、p.23−31 (1999)
【非特許文献2】化学療法の領域 19 Supplement 1、p.9−15 (2003)
【非特許文献3】西条 長宏 癌の化学療法 56:Supplement p.525−535 (2001)
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15、p.3763−3766 (2005)
【特許文献1】国際公開第05/23818号公報
【特許文献2】国際公開第02/55524号公報
【特許文献3】特開平8−143571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、既存の抗癌剤に耐性を示す癌に対しても有効な新規の抗癌剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため合成化合物について種々検索した結果、新規なチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体が細胞増殖阻害作用を有し、抗癌剤耐性細胞に対しても同等の細胞増殖阻害作用を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は
【0007】
(1)下記一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、XおよびYはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基を示すか、XおよびYは結合して環状構造を形成するための炭素数3〜5のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基を示す。nは1〜3の整数を示す。Aは置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、mは0〜3の整数を示す。)で表されるチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(2)前記一般式(1)において、XおよびYが両方ともメチル基、もしくはXおよびYが結合して環状構造を形成するための炭素数4のアルキレン基を示す前記(1)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(3)前記一般式(1)において、nが2である、前記(2)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(4)前記一般式(1)において、Aがハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換された、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、テトラヒドロベンゾチエノ基、キノキサリル基、テトラヒドロフリル基、ピロリジニル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、ピラジル基、又はピラゾロピリミジル基である前記(1)もしくは(3)のいずれか一項に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(5)下記一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、A1は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m1は0〜3の整数を示す。)で表される前記(1)記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
【0012】
(6)一般式(2)において、m1が0であり、A1がハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、および低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、前記(5)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(7)一般式(2)において、m1が1又は2であり、A1が水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、前記(5)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(8)A1がイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、テトラヒドロフリル基、フェニル基、キノキサリル基又はチアジアゾリル基である前記(6)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(9)A1がピロリジニル基、オキソピロリジニル基、フェニル基、チエニル基、テトラゾリル基、ジオキソイミダゾリジル基又はフラザニル基である前記(7)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(10)下記一般式(3)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、A2は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m2は0〜3の整数を示す。)で表される、前記(1)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
【0015】
(11)一般式(3)において、m2が0であり、A2がハロゲン原子一個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、前記(10)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(12)一般式(3)において、m2が1であり、A2が低級アルコキシ基1個以上で置換されていてよい、ヘテロシクロアルキル基又はアリール基である、前記(10)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(13)A2がtert−ブチル基、シクロペンチル基、フェニル基、ピラジル基又はピラゾロピリミジル基である前記(11)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(14)A2がピロリジニル基又はフェニル基である前記(12)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(15)下記一般式(4)
【0016】
【化4】

【0017】
(式中、A3は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m3は0〜3の整数を示す。)で表される、前記(1)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
【0018】
(16)一般式(4)において、m3が0であり、A3が低級アルキル基1個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基又はヘテロアリール基である、前記(15)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(17)一般式(4)において、m3が1であり、A3がハロゲン原子、低級アルキル基及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、アリール基又はヘテロアリール基である、前記(15)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(18)A3がイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、フリル基又はチエニル基である前記(16)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(19)A3がフェニル基又はチエニル基である前記(17)に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩、
(20)前記(1)ないしは(19)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする哺乳動物の医薬品もしくは疾病の予防または治療剤、
(21)前記(1)ないしは(19)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする細胞増殖阻害剤、
(22)前記(1)ないしは(19)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗癌剤、
(23)癌が薬剤耐性癌である前記(22)の抗癌剤、
に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、細胞増殖抑制作用を有する、新規なチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体が提供される。更には本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体は多剤耐性細胞に対しても増殖抑制活性を有することが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、低級アルキル基とは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ジメチルプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基を挙げることができる。さらに好ましくはメチル基が挙げられる。
【0021】
本発明において、アリール基とは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を示し、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはフェニル基を挙げることができる。
【0022】
本発明において、ヘテロアリール基とはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子または硫黄原子を同一または異なるヘテロ原子として1〜4個含む複素芳香族を示し、例えばフリル基、チエニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、インドリル基、チアジアゾリル基、フラザニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノキサリル基、チアジアゾリル基、ピラゾロピリミジニル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはフラザニル基、チエニル基、キノキサリル基を挙げることができる。更に好ましくはキノキサリル基が挙げられる。
【0023】
本発明において、低級アルコキシ基とは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基を挙げることができる。更に好ましくはメトキシ基が挙げられる。
【0024】
本発明において、シクロアルキル基とは炭素数3〜8の飽和環状炭化水素基を示し、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはシクロペンチル基を挙げることができる。
【0025】
本発明において、ヘテロシクロアルキル基とはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子または硫黄原子を同一または異なるヘテロ原子として1〜4個含むシクロアルキル基を示し、例えばテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジニル基、オキソピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ジオキソイミダゾリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはテトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、オキソピロリジニル基、イミダゾリジニル基を挙げることができる。
【0026】
本発明において、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。これらのうち、好ましい原子としてはフッ素原子を挙げることができる。
【0027】
本発明において、−(CH2n−で表されるアルキレン鎖はnが1〜3の整数であり、構成される環の大きさとしては5〜7員環で、好ましくはnが2(エチレン基)の場合である。
【0028】
本発明において、XおよびYが結合して環状構造を形成する場合、炭素数は3〜5であり、アルキレン鎖、アルケニレン鎖、又はアルキニレン鎖のいずれでもとることができる。これらのうち好ましい鎖としては炭素数が4のアルキレン鎖を挙げることができる。
【0029】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3が低級アルキル基の場合、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ジメチルプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n-ヘキシル基等をとることができる。これらのうち、好ましい基としてはイソプロピル基、ジメチルプロピル基、イソブチル基を挙げることができる。
【0030】
上記一般式(1)〜(4)において、m〜m3は0〜3の整数であり、好ましくはm〜m3は0、1及び2の場合である。
【0031】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3はアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基をとることができる。
【0032】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3がアリール基の場合、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等をとることができる。これらのうち好ましい基としてはフェニル基を挙げることができる。。
【0033】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3がシクロアルキル基の場合、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等をとることができる。これらのうち好ましい基としてはシクロペンチル基を挙げることができる。
【0034】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3がヘテロシクロアルキル基の場合、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジニル基、オキソピロリジニル基、イミダゾリジン基、ピペリジニル基、モルホリル基等をとることができる。これらのうち好ましい基としてはテトラヒドロフラニル基、ピロリジニル基、オキソピロリジニル基、イミダゾリジニル基を挙げることができる。
【0035】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3がヘテロアリール基の場合、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、インドリル基、チアジアゾリル基、フラザニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノキサリル基、チアジアゾリル基、ピラゾロピリミジニル基等をとることができるが、中でも、チエニル基、テトラゾリル基、キノキサリル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、ピラゾロピリミジニル基、フリル基、ピラジニル基をとることができる。
【0036】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、又は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は低級アルコキシ基をとることができる。
【0037】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3の置換基がハロゲン原子をとる場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子をとることができる。これらのうち好ましい原子としてはフッ素原子を挙げることができる。
【0038】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3の置換基が低級アルキル基の場合、メチル基、エチル基,n−プロピル基、イソプロピル基、ジメチルプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n-ヘキシル基等をとることができる。これらのうち好ましい基としてはメチル基を挙げることができる。
【0039】
上記一般式(1)〜(4)において、A〜A3の置換基が低級アルコキシ基の場合、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等をとることができる。これらのうち好ましい基としてはメトキシ基を挙げることができる。
【0040】
一般式(1)〜(4)で表される化合物は不斉炭素を有することにより、単一の光学活性体、ラセミ体あるいは光学異性体の混合物として存在する。そのような化合物は光学活性体、ラセミ体または光学異性体の混合物として得られる。本発明の化合物は、これら光学活性体、ラセミ体もしくは光学異性体の混合物のいずれも包含することとして理解されるべきである。
【0041】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る水和物としては、水分子1分子以上と会合又は結合した状態のものが挙げられる。また、本発明化合物の水和物には、上記本発明化合物の薬理学的に許容しうる塩の水和物も含まれる。
【0042】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る溶媒和物としては、例えば、エタノールもしくはプロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸等の有機酸、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン若しくはジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等の溶媒和物が挙げられる。溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。また、本発明化合物の溶媒和物には、上記本発明化合物の薬理学的に許容しうる塩の溶媒和物も含まれる。
【0043】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る塩としては、塩酸、硫酸等の鉱酸との塩、酢酸、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩、などが挙げられる。これらの塩は常法に従って製造することができる。
【0044】
一般式(1)で表される化合物としては以下のような化合物が挙げられる。
(1)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(2)2−(1−(3−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(3)2−(1−(2−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(4)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(5)2−(1−イソブチリルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(6)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(7)2−(1−(3,5−ジクロロベンゾイル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(8)2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(9)2−(1−(4−ヒドロキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(10)2−(1−(3−チオフェンアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0045】
(11)2−(1−(3−(テトラゾリルテトラゾール−1−イル)プロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(12)2−(1−(テトラゾール−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(13)2−(1−(5−キノキサロイル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(14)2−(1−(テトラヒドロフラン−2−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(15)2−(1−(ピロリジン−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(16)2−(1−(4−メチルフラザン−3−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(17)2−(1−(2−オキソピロリジン−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(18)2−(1−(3−(2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル)プロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(19)2−(1−(4−メチル−[1,2,3]チアジアゾール−5−カルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(20)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0046】
(21)2−(1−(2−ピラジンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(22)2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(23)2−(1−((ピロリジン−1−イル)アセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(24)2−(1−(ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(25)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(26)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(27)2−(1−(3−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(28)2−(1−(2−チオフェンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(29)2−(1−イソブチリルピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(30)2−(1−フロイルピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0047】
(31)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(32)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(33)2−(1−(2−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(34)2−(1−(4−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(35)2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(36)2−(1−(3−チオフェンアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(37)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(38)2−(1−(3−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(39)2−(1−(2−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(40)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0048】
(41)2−(1−イソブチリルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(42)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(43)2−(1−(3,5−ジクロロベンゾイル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(44)2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(45)2−(1−(4−ヒドロキシフェニルアセチル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(46)2−(1−(3−チオフェンアセチル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(47)2−(1−(3−(テトラゾール−1−イル)プロピオニル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(48)2−(1−(テトラゾール1−イル)アセチルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(49)2−(1−(5-キノキサロイル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(50)2−(1−(テトラヒドロフラン−2−イル)アセチルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0049】
(51)2−(1−(ピロリジン−1−イル)アセチルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(52)2−(1−(4−メチルフラザン−3−イル)アセチルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(53)2−(1−(2−オキソピロリジン−1−イル)アセチルピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(54)2−(1−(3−(2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル)プロピオニル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(55)2−(1−(4−メチル−[1,2,3]チアジアゾール−5−カルボニル)ピロリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(56)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(57)2−(1−(3−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(58)2−(1−(2−メトキシフェニルアセチル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(59)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(60)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0050】
(61)2−(1−(5−キノキサロイル)ピロリジン−2−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(62)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(63)2−(1−(3−メトキシフェニルアセチル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(64)2−(1−(2−メトキシフェニルアセチル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(65)2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(66)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
(67)2−(1−(5−キノキサロイル)アゼパン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
【0051】
本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体は以下の方法で合成することができる。下記一般式(5)
【0052】
【化5】

(式中、XおよびYは前記に記載の通りである。)で表される化合物、イソプロポキシナトリウムなどの強塩基性試薬を溶解した溶液に、下記一般式(6)
【0053】
【化6】

(式中、(CH2nは前記に記載の通りである。また、Protはアミノ基の保護基を示す。)で表される化合物を添加し、必要に応じて加熱し反応させることによって、下記一般式(7)
【0054】
【化7】

(式中、X、Y、(CH2nおよびProtは前記に記載の通りである。)で表される化合物を得ることができる。このときアミノ基の保護基としては、「Protective Group in Organic Synthesis,Green and Wuts著、John Wiley & Sons,Inc.1999」に記載されている保護基が用いられ、好ましくはカルバメート型の保護基であり、より好ましくはt−ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0055】
次いで、一般式(7)で表される化合物のアミノ基の保護基を前記した非特許文献の方法に従って、脱保護することにより、下記一般式(8)
【0056】
【化8】

(式中、X、Yおよび(CH2nは前記に記載の通りである。)で表される化合物を得ることができる。
【0057】
更に一般式(12)で表される化合物を対応するカルボン酸クロリド、カルボン酸無水物およびカルボン酸活性エステルを作用させ、アミノ基をアミド化することにより、下記一般式(1)
【0058】
【化9】

(式中、A、X、Y、(CH2mおよび(CH2nは前記に記載の通りである。)で表される目的の化合物を得ることができる。このとき対応するカルボン酸活性エステルは対応するカルボン酸、ジシクロヘキシルアミノカルボジイミドなどの縮合剤、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールもしくはN−ヒドロキシスクシンイミドによって合成できる。
【0059】
上記の各合成法により得た反応混合物から目的物を単離および精製するには、常法による溶媒抽出、濃縮、結晶化、蒸留、懸濁精製、各種クロマトグラフィーなどを、必要に応じて用いることができる。
【0060】
本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体を医薬品として使用する場合の製剤化および投与方法は従来公知の種々の方法が適用できる。すなわち、投与方法としては例えば注射、経口、経皮又は直腸投与等が可能である。
【0061】
製剤化の際に本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩に悪影響を与えない限り、医薬用に用いられる種々の医薬用添加剤、すなわち、担体やその他の助剤、例えば安定剤、防腐剤、無痛化剤、乳化剤等を使用してもよい。製剤において、チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩の含量は製剤形態等により広範囲に変えることが可能であり、一般には0.01〜100%(重量)、好ましくは0.1〜70%(重量)含有する。経口剤の場合には添加剤と共に錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、ドライシロップ剤等の形態で用いられる。カプセル剤、錠剤、顆粒、散剤は一般に5〜100%(重量)、好ましくは25〜98%(重量)の有効成分を含む。
【0062】
本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする医薬品は、好ましくは細胞増殖阻害剤として使用できる。あるいは、好ましくは抗癌剤として使用される。
【0063】
本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体の抗癌剤としての使用としては、例えば、腎癌、脳腫瘍、大腸癌、膵臓癌、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、白血病等の治療が挙げられる。
【0064】
本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩の投与量は適応症、症状、投与方法等により異なるが、成人1人1日あたり0.01〜800mg程度である。
【実施例】
【0065】
次に実施例として本発明化合物の合成例及び薬理実験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下で室温とは10〜30℃を示す。また、LCMSは島津製作所製LCMS2010Aにて分析し、LCはカラムにInertsil ODS−3(φ2.1×100mm)を用い、溶出液Aに0.1%ギ酸水溶液、溶出液Bにアセトニトリルをそれぞれ用い、溶出液Bの濃度が20(0min)−90%(5.5min)−90%(6.5min)−20%(6.51min)−20%(10min)のグラジエントで流速0.3mL/minで溶出した。保持時間(Rt)はUV検出器までの時間とし、MSはESI(Positive)モードで測定した。
【0066】
実施例1
2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
(第1工程)2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
2−プロパノール(200mL)に金属ナトリウム(4.6g、0.2mmol)を加えた溶液に2−アミノ−3−シアノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン(8.9g、0.05mmol)およびN−t−ブトキシカルボニルイソニペコチン酸エチルエステル(18.0g、0.07mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、溶媒を結晶が析出するまで留去した。残渣に水(500mL)を加えた後、反応液に塩酸を加え、pHを4にした。析出した結晶を濾取し、水で洗浄した後、2−プロパノール−水(1:5)で再結晶を行った。
【0067】
(第2工程)2−(ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第1工程で得られた2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールを塩酸で飽和したジオキサン溶液に加え、50℃に加温した後、室温まで冷却した。析出した結晶を濾取した後、2−プロパノ−ルついでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥することにより目的の化合物(3.7g)を得た。収率は、2工程23%であった。
【0068】
(第3工程)2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第2工程で得られた2−(ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール(326mg、1.0mmol)を水(10mL)に溶解した溶液に炭酸カリウム(0.28g、1.0mmol)を加えた後、4−メトキシフェニルアセチルクロリド(0.185g、1.0mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解した溶液を加え、ジクロロメタンが消失するまで、弱加温下で攪拌した。反応液に塩酸を加えて酸性にした後に冷却した。上澄み液を除いた後、結晶を水で洗浄、メタノールから再結晶することにより目的化合物を得た。
【0069】
1H−NMR(DMSO−d6,ppm):1.1(2H,m)、1.7(6H,m)、2.3−2.6(5H,m)、2.7(1H,m)、2.9(1H,m)、3.6(2H,s)、3.7(3H,s)、3.9(1H,m)、4.4(1H,m)、6.8(2H,m)、7.1(2H,m)、11.4(1H,brs)
LCMS:Rt=6.757min,m/z:438(M+H)+
【0070】
実施例2〜18の化合物の合成は、実施例1の化合物の合成法に準じて行い、第3工程の4−メトキシフェニルアセチルクロリドの代わりに対応するアシル化試薬を用いて実施した。実施例2〜18について得られた各々の化合物の理化学的性質を以下に示す。
【0071】
実施例2
2−(1−(2−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.834min,m/z:438(M+H)+
【0072】
実施例3
2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.835min,m/z:374(M+H)+
【0073】
実施例4
2−(1−イソブチリルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.349min,m/z:360(M+H)+
【0074】
実施例5
2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.945min,m/z:430(M+H)+
【0075】
実施例6
2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.939min,m/z:386(M+H)+
【0076】
実施例7
2−(1−(4−ヒドロキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.846min,m/z:424(M+H)+
【0077】
実施例8
2−(1−(3−チオフェンアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.598min,m/z:414(M+H)+
【0078】
実施例9
2−(1−(3−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.683min,m/z:438(M+H)+
【0079】
実施例10
2−(1−(3−(テトラゾール−1−イル)プロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.619min,m/z:414(M+H)+
【0080】
実施例11
2−(1−(テトラゾール−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.607min,m/z:400(M+H)+
【0081】
実施例12
2−(1−(5−キノキサロイル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.938min,m/z:446(M+H)+
【0082】
実施例13
2−(1−(テトラヒドロフラン−2−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.847min,m/z:388(M+H)+
【0083】
実施例14
2−(1−(ピロリジン−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=3.690min,m/z:401(M+H)+
【0084】
実施例15
2−(1−(4−メチルフラザン−3−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.389min,m/z:414(M+H)+
【0085】
実施例16
2−(1−(2−オキソピロリジン−1−イル)アセチルピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.331min,m/z:415(M+H)+
【0086】
実施例17
2−(1−(3−(2,5−ジオキソイミダゾリジン−4−イル)プロピオニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=4.996min,m/z:444(M+H)+
【0087】
実施例18
2−(1−(4−メチル−[1,2,3]チアジアゾール−5−カルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.362min,m/z:416(M+H)+
【0088】
実施例19
2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
(第1工程)2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
2−プロパノール(200mL)に金属ナトリウム(4.6g、0.2mmol)を加えた溶液に2−アミノ−3−シアノ−4,5,6,7−テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン(8.9g、0.05mmol)およびN−t−ブトキシカルボニルニペコチン酸エチルエステル(18.0g、0.07mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、溶媒を結晶が析出するまで留去した。残渣に水(500mL)を加えて溶解した後、不要物を濾去した。濾液のpHが4になるまで塩酸を加え、結晶を析出させた。濾液を除去し、結晶を温水で洗浄した後、2−プロパノール−水(1:5)で再結晶を行った。
【0089】
(第2工程)2−(ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第1工程で得られた2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールを塩酸で飽和したジオキサン溶液に加え、50℃に加温した後、室温まで冷却した。析出した結晶を濾取した後、2−プロパノ−ルついでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥することにより目的の化合物(3.5g)を得た。収率は、2工程21.5%であった。
【0090】
(第3工程)2−(1−(3,5−ジフルオロベンゾイル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第2工程で得られた2−(ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール(326mg、1.0mmol)を水(10mL)に溶解した溶液に、炭酸カリウム(0.28g、2.0mmol)、ジクロロメタン(15mL)および3,5−ジフルオロベンゾイルクロリド(0.177g、1.0mmol)を加え、ジクロロメタンが消失するまで、弱加温下で攪拌した。反応液に塩酸を加えて酸性にした後に冷却した。上澄み液を除いた後、結晶を冷水で洗浄、メタノールから再結晶することにより目的化合物を得た。
【0091】
1H−NMR(DMSO−d6,ppm):1.5(1H,m)、1.7(6H,m)、2.0(1H,m)、2.6(2H,m)、2.8(2H,m)、3.0(1H,m)、3.6−4.2(4H,m)、7.0(2H,m)、7.2(1H,m)、11.9(1H,brs)。
LCMS:Rt=5.368min,m/z:430(M+H)+
【0092】
実施例20〜25の化合物の合成は、実施例19の化合物の合成法に準じて行い、第3工程の3,5−ジフルオロベンゾイルクロリドの代わりに対応するアシル化試薬を用いて実施した。実施例20〜25について得られた各々の化合物の理化学的性質を以下に示す。
実施例20
2−(1−(2−ピラジンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.434min,m/z:396(M+H)+
【0093】
実施例21
2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.946min,m/z:386(M+H)+
【0094】
実施例22
2−(1−((ピロリジン−1−イル)アセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=3.509min,m/z:401(M+H)+
【0095】
実施例23
2−(1−(ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.374min,m/z:435(M+H)+
【0096】
実施例24
2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.945min,m/z:374(M+H)+
【0097】
実施例25
2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.656min,m/z:438(M+H)+
【0098】
実施例26
2−(1−(3−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
(第1工程)2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
2−プロパノール(200mL)に金属ナトリウム(4.6g、0.2mmol)を加えた溶液に、2−アミノ−3−シアノ−4,5−ジメチルチオフェン(7.6g、0.05mmol)およびN−t−ブトキシカルボニルニペコチン酸エチルエステル(18.0g、0.07mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、溶媒を結晶が析出するまで留去した。残渣に水(500mL)を加えて溶解した後、不要物を濾去した。濾液のpHが4になるまで塩酸を加え、結晶を析出させた。濾液を除去し、結晶を温水で洗浄した後、2−プロパノール−水(1:5)で再結晶を行った。
【0099】
(第2工程)2−(ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第1工程で得られた2−(1−(t−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールを塩酸で飽和したジオキサン溶液に加え、50℃に加温した後、室温まで冷却した。析出した結晶を濾取した後、2−プロパノ−ルついでn−ヘキサンで洗浄し、乾燥することにより目的の化合物(3.6g)を得た。収率、2工程24%であった。
【0100】
(第3工程)2−(1−(3−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オールの合成
前記第2工程で得られた2−(ピペリジン−4−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール(300mg、1.0mmol)を水(10mL)に溶解した溶液に、炭酸カリウム(0.28g、2.0mmol)、ジクロロメタン(15mL)および3−フルオロフェニルアセチルクロリド(0.173g、1.0mmol)を加え、ジクロロメタンが消失するまで、弱加温下で攪拌した。反応液に塩酸を加えて酸性にした後に冷却した。上澄み液を除いた後、結晶を冷水で洗浄、メタノールから再結晶することにより目的化合物を得た。
【0101】
1H−NMR(DMSO−d6,ppm):1.4(1H,m)、1.7(2H,m)、1.9(1H,m)、2.3(3H,s)、2.4(3H,s)、2.7(2H,m)、2.9−3.3(3H,m)、3.8(2H,m)、7.0(3H,m)、7.35(1H,m)、12.0(1H,brs).
LCMS:Rt=6.306min,m/z:400(M+H)+
【0102】
実施例27〜35の化合物の合成は、実施例26の化合物の合成法に準じて行い、第3工程の3−フルオロフェニルアセチルクロリドの代わりに対応するアシル化試薬を用いて実施した。実施例27〜35について得られた各々の化合物の理化学的性質を以下に示す。
【0103】
実施例27
2−(1−(2−チオフェンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.979min,m/z:374(M+H)+
【0104】
実施例28
2−(1−イソブチリルピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.744min,m/z:334(M+H)+
【0105】
実施例29
2−(1−フロイルピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=5.649min,m/z:358(M+H)+
【0106】
実施例30
2−(1−(2,2−ジメチルプロピオニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.294min,m/z:348(M+H)+
【0107】
実施例31
2−(1−(4−メトキシフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.156min,m/z:412(M+H)+
【0108】
実施例32
2−(1−(2−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.312min,m/z:400(M+H)+
【0109】
実施例33
2−(1−(4−フルオロフェニルアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.287min,m/z:400(M+H)+
【0110】
実施例34
2−(1−(シクロペンタンカルボニル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.398min,m/z:360(M+H)+
【0111】
実施例35
2−(1−(3−チオフェンアセチル)ピペリジン−3−イル)−5,6−ジメチルチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール
LCMS:Rt=6.034min,m/z:388(M+H)+
【0112】
試験例1 細胞増殖阻害作用
10%牛胎児血清(Moregate社製)を添加したRPMI1640培地(イワキ社製)を用いて、ヒト腎癌細胞UO−31(NCI)、ヒト脳腫瘍細胞U251、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231(ATCC)を37℃、5%CO2下で培養した。これらの細胞を96穴プレートへ播種し、1日間培養した後、種々の濃度の本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体を添加した。更に3日間培養した後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸にて抽出し、660nmの吸光度を測定した。
【0113】
増殖阻害活性は、化合物を添加しない細胞の吸光度に対する化合物添加群の吸光度の減少率から、濃度−増殖阻害曲線を作成した。該曲線から増殖率が50%のときの濃度を求めIC50値とし、その値を表1に示した。
【0114】
表1
チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体の細胞増殖阻害作用
IC50(μM)
化合物 UO−31 U251 MDA−MB−231
実施例1 1.62 1.36 2.04
実施例2 11.7 7.27 12.5
実施例3 >20 13.5 >20
実施例5 8.74 43.8 31.5
実施例6 41.9 12.7 24.0
実施例7 12.5 6.69 11.5
実施例8 25.6 24.4 24.8
実施例9 >20 13.9 25.9
実施例12 6.49 27.4 21.2
実施例13 >20 38.9 37.1
実施例14 42.3 48.3 >20
実施例19 4.01 33.8 24.8
実施例21 7.48 23.2 25.8
実施例23 8.73 36.9 >20
実施例24 10.6 6.48 11.4
実施例25 18.0 32.9 29.9
実施例26 8.02 >20 >20
実施例27 11.0 41.3 >20
実施例30 14.7 46.0 >20
実施例32 15.1 >20 >20
実施例34 8.74 40.7 >20
実施例35 9.05 >20 >20
(下線は外挿値)
【0115】
表1から明らかなように、チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体は、哺乳動物の癌細胞に対する細胞増殖阻害作用を示した。
【0116】
試験例2
10%牛胎児血清を添加したRPMI1640培地を用いて、マウスリンパ性白血病細胞P388又はそのアドリアマイシン耐性株P388/ADRを、37℃、5%CO2下で培養した。この細胞を96穴プレートへ播種し、1日間培養した後、種々の濃度の本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体またはアドリアマイシン(協和発酵社製)を添加した。更に2日間培養した後、WST−1(同仁堂社製) 0.16mg/mL及び1−methoxy−5−methyl phenazinium methylsulfate 3.3μg/mLを培養液に加え、4時間培養した。450nmの吸光度から660nmの吸光度を減じた値を求め、試験例1と同じようにIC50値を求めた。
【0117】
表2
チエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体の細胞増殖抑制作用
IC50(μM)
化合物 P388 P388/ADR
実施例1 0.25 0.39
実施例2 0.62 1.48
アドリアマイシン 0.015 2.82
【0118】
表2から明らかな通り、本発明のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体は、哺乳動物の癌細胞に対する細胞増殖阻害作用を有し、アドリアマイシン耐性細胞(P388/ADR)に対しても感受性細胞(P388)とほぼ同程度の細胞増殖阻害作用を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、シクロアルキル基を示すか、XおよびYは結合して環状構造を形成するための炭素数3〜5のアルキレン基、アルケニレン基又はアルキニレン基を示す。nは1〜3の整数を示す。Aは置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、mは0〜3の整数を示す。)で表されるチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
一般式(1)において、XおよびYが両方ともメチル基、もしくはXおよびYが結合して環状構造を形成するための炭素数4のアルキレン基を示す請求項1に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
一般式(1)において、nが2である、請求項2に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
一般式(1)において、Aがハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換された、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、テトラヒドロベンゾチエノ基、キノキサリル基、テトラヒドロフリル基、ピロリジニル基、フラザニル基、チアジアゾリル基、ピラジル基、又はピラゾロピリミジル基である請求項1もしくは請求項3のいずれか一項に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
一般式(2)
【化2】

(式中、A1は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m1は0〜3の整数を示す。)で表される請求項1記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
一般式(2)において、m1が0であり、A1がハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、および低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、請求項5に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
一般式(2)において、m1が1又は2であり、A1が水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、ヘテロシクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、請求項5に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
1がイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、テトラヒドロフリル基、フェニル基、キノキサリル基又はチアジアゾリル基である請求項6に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
1がピロリジニル基、オキソピロリジニル基、フェニル基、チエニル基、テトラゾリル基、ジオキソイミダゾリジル基又はフラザニル基である請求項7に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項10】
一般式(3)
【化3】

(式中、A2は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m2は0〜3の整数を示す。)で表される、請求項1に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項11】
一般式(3)において、m2が0であり、A2がハロゲン原子一個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である、請求項10に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項12】
一般式(3)において、m2が1であり、A2が低級アルコキシ基1個以上で置換されていてよい、ヘテロシクロアルキル基又はアリール基である、請求項10に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項13】
2がtert−ブチル基、シクロペンチル基、フェニル基、ピラジル基又はピラゾロピリミジル基である請求項11に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項14】
2がピロリジニル基又はフェニル基である請求項12に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項15】
一般式(4)
【化4】

(式中、A3は置換基を有していてもよい低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を示し、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、低級アルキル基、及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上を示し、m3は0〜3の整数を示す。)で表される、請求項1に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項16】
一般式(4)において、m3が0であり、A3が低級アルキル基1個以上で置換されていてよい、低級アルキル基、シクロアルキル基又はヘテロアリール基である、請求項15に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項17】
一般式(4)において、m3が1であり、A3がハロゲン原子、低級アルキル基及び低級アルコキシ基からなる群から選択される1個以上で置換されていてよい、アリール基又はヘテロアリール基である、請求項15に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項18】
3がイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、フリル基又はチエニル基である請求項16に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項19】
3がフェニル基又はチエニル基である請求項17に記載のチエノ[2,3−d]ピリミジン−4−オール誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩。
【請求項20】
請求項1ないしは19のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする哺乳動物の医薬品もしくは疾病の予防または治療剤。
【請求項21】
請求項1ないしは19のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする細胞増殖阻害剤。
【請求項22】
請求項1ないしは19のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗癌剤。
【請求項23】
癌が薬剤耐性癌である請求項22の抗癌剤。

【公開番号】特開2007−119417(P2007−119417A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315778(P2005−315778)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】