説明

新規ポリマー、および耐衝撃性ポリマー組成物の製造におけるその使用

特定のアリルグリシジルエーテルもしくは特定のアリルハロシランもしくはそれらの組合せと反応したリビングポリマーまたは擬似リビングポリマーである末端官能化ポリマーおよび末端官能化ポリマーの製造方法。末端官能化ポリマーを含むゴム変性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は新規ポリマー、および耐衝撃性ポリマー組成物の製造におけるその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブタジエンまたはBRゴムおよびブタジエン‐スチレンブロックポリマーは、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびアクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンコポリマー(ABS)を生成するためにスチレンポリマー産業で広く使用されている。ゴム上のスチレンのグラフトレベルが高いほど良好なHIPS特性が得られることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,008,899号明細書
【特許文献2】米国特許第6,699,813号明細書
【特許文献3】米国特許第3,652,516号明細書
【特許文献4】米国特許第5,552,483号明細書
【特許文献5】米国特許第5,332,810号明細書
【特許文献6】米国特許第5,329,005号明細書
【特許文献7】米国特許第5,578,542号明細書
【特許文献8】米国特許第5,393,721号明細書
【特許文献9】米国特許第5,698,646号明細書
【特許文献10】米国特許第5,491,230号明細書
【特許文献11】米国特許第5,521,309号明細書
【特許文献12】米国特許第5,496,940号明細書
【特許文献13】米国特許第5,574,109号明細書
【特許文献14】米国特許第5,786,441号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2006/0030657号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2006/0264590号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2006/0264589号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0241241号明細書
【特許文献19】米国特許第3,426,006号明細書
【特許文献20】米国特許第5,268,439号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2005/0197474号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kuran, W., Principles of Coordination Polymerization; John Wiley & Sons: New York, 2001
【非特許文献2】Mulhaupt, R., Macromolecular Chemistry and Physics 2003, volume 204, pages 289-327
【非特許文献3】Hsieh, H. L.; Quirk, R. P. Anionic Polymerization: Principles and Practical Applications; Marcel Dekker: New York, 1996
【非特許文献4】Hadjichristidis, N.; Pitsikalis, M.; Pispas, S.; Iatrou, H.; Chem. Rev. 2001, 101(12), 3747-3792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改良型の耐衝撃性ポリマー組成物を製造することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は新規な末端官能化ポリマーに関するものである。この末端官能化ポリマーは、特定のアリルグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つ、もしくは特定のアリルハロシランのうちの少なくとも1つ、もしくは該アリルグリシジルエーテルと該アリルハロシランの組合せと反応した、ジエンモノマーもしくはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーの混合物を、アニオン重合させることによって得られるリビングポリマーもしくは配位重合させることによって得られる擬似リビングポリマーを含む。
【0007】
本発明で使用するのに適したアリルグリシジルエーテルは、一般式:CH=CHCHOCH‐Xを有する[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、水素または一価の有機基から選択される]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0010】
本発明で使用するのに適したアリルハロシランは、一般式:CH=CHCHSi(R)‐Xを有する[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、一価の有機基から選択される]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができ、Xは塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物である。
【0011】
本開示は、本明細書に開示する末端官能化ポリマーを含む、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)やABSのような耐衝撃性ポリマー組成物に関するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は新規な末端官能化ポリマーに関するものである。この末端官能化ポリマーは、特定のアリルグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つ、もしくは特定のアリルハロシランのうちの少なくとも1つ、もしくは該アリルグリシジルエーテルと該アリルハロシランの組合せと反応した、ジエンモノマーもしくはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーの混合物を、アニオン重合させることによって得られるリビングポリマーもしくは配位重合させることによって得られる擬似リビングポリマーを含む。
【0013】
本発明で使用するのに適したアリルグリシジルエーテルは、一般式:CH=CHCHOCH‐Xを有する[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、R、RおよびRは、同じまたは異なるものであり、水素または一価の有機基から選択される]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、シリコン原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0016】
本発明で使用するのに適したアリルハロシランは、一般式:CH=CHCHSi(R)‐Xを有する[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、一価の有機基から選択される]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができ、Xは塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物である。
【0017】
本開示は、本明細書に開示する末端官能化ポリマーを含む、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)やABSのような耐衝撃性ポリマー組成物に関するものでもある。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体にわたって使用する「リビングポリマー」という用語は、有機リチウム化合物のような開始剤を使用してジエンモノマーもしくはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーの混合物をアニオン重合させることによって調製されるポリマーを指す。結果として得られるポリマーは、反応の停止に関与させ得る活性末端(例えばリチウム末端)を含む。
【0019】
本明細書で使用する「擬似リビングポリマー」という用語は、配位触媒系を使用してモノマーを重合させる配位重合によって調製されるポリマーを指す。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、配位触媒系を使用してモノマーを重合させる配位重合により反応性ポリマーが調製される。配位重合の重要な機械的特徴は、書籍(例えば、Kuran, W., Principles of Coordination Polymerization; John Wiley & Sons: New York, 2001)および総説(例えば、Mulhaupt, R., Macromolecular Chemistry and Physics 2003, volume 204, pages 289-327)で論じられている。配位触媒は、グローイングポリマー鎖にモノマーを挿入する前に活性金属中心にモノマーを配位または錯体形成する機構により、モノマーの重合を開始すると考えられている。配位触媒の有利な特徴は、重合の立体化学制御をもたらし、それにより立体規則性のポリマーを生成する配位触媒の能力である。当業界で知られているように、配位触媒を作製する方法には様々なものが存在するが、これらの方法はすべてモノマーに配位し且つモノマーを活性金属中心と成長しているポリマー鎖との間に挿入して共有結合させることができる活性中間体を最終的に生成するものである。共役ジエンの配位重合は、中間体としてのπ‐アリル錯体を経て進むと考えられている。配位触媒は、1、2、3または多成分系とすることができる。1つまたは複数の実施形態において、配位触媒は、重金属化合物(例えば、遷移金属化合物またはランタニド化合物)と、アルキル化剤(例えば、有機アルミニウム化合物)と、任意選択で他の共触媒構成成分(例えば、ルイス酸またはルイス塩基)とを混合することによって形成することができる。
【0021】
配位触媒を調製するには様々な手順を使用することができる。1つまたは複数の実施形態において、配位触媒は、重合すべきモノマーに個々の触媒構成成分を段階的にまたは同時に添加することによりインサイチュ(in situ)で形成することができる。他の実施形態では、配位触媒を予形成することができる。すなわち、触媒構成成分は、モノマーの不存在下または少量のモノマーの存在下において重合系の外側で予混合される。結果として得られる予形成触媒組成物は、必要に応じて熟成した後に重合すべきモノマーに添加することができる。
【0022】
有用な配位触媒系としてはランタニド系触媒系が挙げられる。これらの触媒系は、有利なことに冷却前に反応性鎖末端を有し、擬似リビングポリマーと呼ばれることもあるシス‐1,4‐ポリジエンを作製する。他の配位触媒系も利用可能であるが、ランタニド系触媒が特に有利であることが見出されており、したがって以下ではこの触媒について更に詳しく記述するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
本発明の1つまたは複数の実施形態の実施は、特定のランタニド系触媒の選択によって限定されるものではない。1つまたは複数の実施形態において、触媒組成物は、ランタニド化合物と、アルキル化剤と、1つまたは複数の不安定なハロゲン原子を有するハロゲン含有化合物とを含むことができる。ランタニド化合物および/またはアルキル化剤が1つまたは複数の不安定なハロゲン原子を有する場合、触媒は必ずしも個別のハロゲン含有化合物を含む必要はない。例えば、触媒は単にハロゲン化ランタニド化合物およびアルキル化剤を含む可能性がある。特定の実施形態では、アルキル化剤がアルミノキサンと少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物の両方を含むこともある。更に他の実施形態では、ハロゲン含有化合物の代わりに、非配位性アニオンまたは非配位性アニオン前駆体、すなわち化学反応を受けて非配位性アニオンを形成し得る化合物を含む化合物を使用することもできる。一実施形態では、アルキル化剤が有機アルミニウム水素化物を含む場合、ハロゲン含有化合物は、参照により本明細書に援用する米国特許第7,008,899号に開示されているようなハロゲン化スズとすることができる。上記または他の実施形態では、他の有機金属化合物、ルイス塩基および/または触媒変性剤を上記で説明した成分または構成成分に加えて利用することもできる。例えば、一実施形態では、参照により本明細書に援用する米国特許第6,699,813号に開示されているような分子量調整剤としてニッケル含有化合物を使用することができる。
【0024】
様々なランタニド化合物またはそれらの混合物を使用することができる。1つまたは複数の実施形態において、これらの化合物は例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素等の炭化水素溶媒に可溶であってよい。他の実施形態では、重合媒体中に懸濁して触媒活性種を形成し得る炭化水素不溶性のランタニド化合物も有用である。
【0025】
ランタニド化合物は、ランタン、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムおよびジジムの少なくとも1つの原子を含み得る。ジジムは、モナズ砂から得られる希土類元素の市販の混合物を含んでもよい。
【0026】
ランタニド化合物中のランタニド原子は、必ずしもそれだけに限定されるわけではないが、0、+2、+3および+4酸化状態を含めた様々な酸化状態をとることができる。ランタニド化合物としては、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィネート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ‐ジケトネート、ランタニドアルコキシドまたはランタニドアリールオキシド、ランタニドハロゲン化物、ランタニド擬似ハロゲン化物、ランタニドオキシハライドおよび有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
以下の論述ではネオジム化合物に焦点を当てるが、本発明の実施をこれに限定するものではなく、当業者なら他のランタニド金属に基づく同様の化合物を選択することができるだろう。
【0028】
ネオジムカルボキシレートとしては、ネオジムホルマート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2‐エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(ネオジムバーサテートとしても知られる)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエートおよびネオジムピコリネートが挙げられる。
【0029】
ネオジム有機ホスフェートとしては、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1‐メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2‐エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p‐ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2‐エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)(2‐エチルヘキシル)ホスフェートおよびネオジム(2‐エチルヘキシル)(p‐ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられる。
【0030】
ネオジム有機ホスホネートとしては、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p‐ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)(1‐メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)(2‐エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p‐ノニルフェニル)(p‐ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2‐エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)(2‐エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)(1‐メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)(p‐ノニルフェニル)ホスホネートおよびネオジム(p‐ノニルフェニル)(2‐エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられる。
【0031】
ネオジム有機ホスフィネートとしては、ネオジムブチルホスフィネート、ネオジムペンチルホスフィネート、ネオジムヘキシルホスフィネート、ネオジムヘプチルホスフィネート、ネオジムオクチルホスフィネート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジム(2‐エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムデシルホスフィネート、ネオジムドデシルホスフィネート、ネオジムオクタデシルホスフィネート、ネオジムオレイルホスフィネート、ネオジムフェニルホスフィネート、ネオジム(p‐ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムジブチルホスフィネート、ネオムジペンチルホスフィネート、ネオジムジヘキシルホスフィネート、ネオジムジヘプチルホスフィネート、ネオジムジオクチルホスフィネート、ネオジムビス(1‐メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジムビス(2‐エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムジデシルホスフィネート、ネオジムジドデシルホスフィネート、ネオジムジオクタデシルホスフィネート、ネオジムジオレイルホスフィネート、ネオジムジフェニルホスフィネート、ネオジムビス(p‐ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムブチル(2‐エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジム(1‐メチルヘプチル)(2‐エチルヘキシル)ホスフィネートおよびネオジム(2‐エチルヘキシル)(p‐ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられる。
【0032】
ネオジムカルバメートとしては、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメートおよびネオジムジベンジルカルバメートが挙げられる。
【0033】
ネオジムジチオカルバメートとしては、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメートおよびネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられる。
【0034】
ネオジムキサンテートとしては、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテートおよびネオジムベンジルキサンテートが挙げられる。
【0035】
ネオジムβ‐ジケトネートとしては、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネートおよびネオジム2,2,6,6‐テトラメチル‐3,5‐ヘプタンジオネートが挙げられる。
【0036】
ネオジムアルコキシドまたはネオジムアリールオキシドとしては、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2‐エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシドおよびネオジムナフトキシドが挙げられる。
【0037】
ネオジムハロゲン化物としては、ネオジムフッ化物、ネオジム塩化物、ネオジム臭化物およびネオジムヨウ化物が挙げられる。適切なネオジム擬似ハロゲン化物としては、ネオジムシアン化物、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジドおよびネオジムフェロシアン化物が挙げられる。適切なネオジムオキシハライドとしては、ネオジムオキシフルオライド、ネオジムオキシクロライドおよびネオジムオキシブロマイドが挙げられる。ネオジムハロゲン化物、ネオジムオキシハライド、または不安定なハロゲン原子を含む他のネオジム化合物を使用する場合、ネオジム含有化合物はハロゲン含有化合物として作用することもできる。テトラヒドロフラン(THF)等のルイス塩基は、不活性な有機溶媒中でこのクラスのネオジム化合物を可溶化するための助剤として利用することができる。
【0038】
「有機ランタニド化合物」という用語は、少なくとも1つのランタニド‐炭素結合を含む任意のランタニド化合物を指すことがある。これらの化合物は、それだけに限らないが、主にシクロペンタジエニル(Cp)配位子、置換シクロペンタジエニル配位子、アリル配位子および置換アリル配位子を含む化合物である。適切な有機ランタニド化合物としては、CpLn、CpLnR、CpLnCl、CpLnCl、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(CMeLnR、LnR、Ln(アリル)およびLn(アリル)Clが挙げられる[式中、Lnはランタニド原子を表し、Rはヒドロカルビル基を表す]。
【0039】
様々なアルキル化剤またはそれらの混合物を使用することができる。ヒドロカルビル化剤と呼ばれることもあるアルキル化剤は、ヒドロカルビル基を別の金属に転移可能な有機金属化合物を含む。一般に、これらの作用物質は1族、2族、3族金属(IA族、IIA族およびIIIA族金属)のような陽性金属の有機金属化合物を含む。1つまたは複数の実施形態において、アルキル化剤は、有機アルミニウム化合物および有機マグネシウム化合物を含む。アルキル化剤が不安定なハロゲン原子を含む場合、それらのアルキル化剤はハロゲン含有化合物としても作用することができる。
【0040】
「有機アルミニウム化合物」という用語は、少なくとも1つのアルミニウム‐炭素結合を含む任意のアルミニウム化合物を指すことがある。1つまたは複数の実施形態において、有機アルミニウム化合物は炭化水素溶媒に可溶であってよい。
【0041】
1つまたは複数の実施形態において、有機アルミニウム化合物としては、一般式:AlR3‐nで表される化合物が挙げられる[式中、Rはそれぞれ炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であり、互いに同じであることも異なることもあり、Xはそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基であり、互いに同じであることも異なることもあり、nは1〜3の整数である]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、アリル基、アルキニル基等のヒドロカルビル基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらのヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0042】
有機アルミニウム化合物としては、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムハイドライド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハイドライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート化合物、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド化合物およびヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
トリヒドロカルビルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ‐n‐プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ‐n‐ブチルアルミニウム、トリ‐t‐ブチルアルミニウム、トリ‐n‐ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ‐n‐ヘキシルアルミニウム、トリ‐n‐オクチルアルミニウム、トリス(2‐エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1‐メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ‐p‐トリルアルミニウム、トリス(2,6‐ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル‐p‐トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ‐p‐トリルアルミニウムおよびエチルジベンジルアルミニウムが挙げられる。
【0044】
ジヒドロカルビルアルミニウムハイドライド化合物としては、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジ‐n‐プロピルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ‐n‐ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジ‐n‐オクチルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジ‐p‐トリルアルミニウムハイドライド、ジベンジルアルミニウムハイドライド、フェニルエチルアルミニウムハイドライド、フェニル‐n‐プロピルアルミニウムハイドライド、フェニルイソプロピルアルミニウムハイドライド、フェニル‐n‐ブチルアルミニウムハイドライド、フェニルイソブチルアルミニウムハイドライド、フェニル‐n‐オクチルアルミニウムハイドライド、p‐トリルエチルアルミニウムハイドライド、p‐トリル‐n‐プロピルアルミニウムハイドライド、p‐トリルイソプロピルアルミニウムハイドライド、p‐トリル‐n‐ブチルアルミニウムハイドライド、p‐トリルイソブチルアルミニウムハイドライド、p‐トリル‐n‐オクチルアルミニウムハイドライド、ベンジルエチルアルミニウムハイドライド、ベンジル‐n‐プロピルアルミニウムハイドライド、ベンジルイソプロピルアルミニウムハイドライド、ベンジル‐n‐ブチルアルミニウムハイドライド、ベンジルイソブチルアルミニウムハイドライドおよびベンジル‐n‐オクチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
【0045】
ヒドロカルビルアルミニウムジハイドライドとしては、エチルアルミニウムジハイドライド、n‐プロピルアルミニウムジハイドライド、イソプロピルアルミニウムジハイドライド、n‐ブチルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライドおよびn‐オクチルアルミニウムジハイドライドが挙げられる。
【0046】
ジヒドロカルビルアルミニウムクロライド化合物としては、ジエチルアルミニウムクロライド、ジ‐n‐プロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジ‐n‐ブチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジ‐n‐オクチルアルミニウムクロライド、ジフェニルアルミニウムクロライド、ジ‐p‐トリルアルミニウムクロライド、ジベンジルアルミニウムクロライド、フェニルエチルアルミニウムクロライド、フェニル‐n‐プロピルアルミニウムクロライド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロライド、フェニル‐n‐ブチルアルミニウムクロライド、フェニルイソブチルアルミニウムクロライド、フェニル‐n‐オクチルアルミニウムクロライド、p‐トリルエチルアルミニウムクロライド、p‐トリル‐n‐プロピルアルミニウムクロライド、p‐トリルイソプロピルアルミニウムクロライド、p‐トリル‐n‐ブチルアルミニウムクロライド、p‐トリルイソブチルアルミニウムクロライド、p‐トリル‐n‐オクチルアルミニウムクロライド、ベンジルエチルアルミニウムクロライド、ベンジル‐n‐プロピルアルミニウムクロライド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロライド、ベンジル‐n‐ブチルアルミニウムクロライド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロライドおよびベンジル‐n‐オクチルアルミニウムクロライドが挙げられる。
【0047】
ヒドロカルビルアルミニウムジクロライド化合物としては、エチルアルミニウムジクロライド、n‐プロピルアルミニウムジクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、n‐ブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライドおよびn‐オクチルアルミニウムジクロライドが挙げられる。
【0048】
他の有機アルミニウム化合物としては、例えばジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2‐エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2‐エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、イソブチルアルミニウムジフェノキシドおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0049】
他のクラスの有機アルミニウム化合物としてはアルミノキサンが挙げられる。アルミノキサンとしては、一般式:
【0050】
【化3】

【0051】
で表されるオリゴマー状の直鎖アルミノキサン、および一般式:
【0052】
【化4】

【0053】
で表されるオリゴマー状の環式アルミノキサンが挙げられる[式中、xは1〜約100の整数であってよく、他の実施形態では約10〜約50の整数であってもよく、yは2〜約100の整数であってよく、他の実施形態では約3〜約20の整数であってもよく、Rはそれぞれ炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する一価の有機基であってよく、互いに同じであることも異なることもある]。一価の有機基は上記で定義したとおりである。本願で使用するアルミノキサンのモル数は、オリゴマー状のアルミノキサン分子のモル数ではなくアルミニウム原子のモル数を指すことに留意されたい。この慣行はアルミノキサンを利用する触媒の技術分野で一般に採用されている。
【0054】
アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物と水を反応させることによって調製できる。この反応は、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒に溶解させ、その後水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩中に含まれる結晶水、または、無機化合物もしくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合すべきモノマーまたはモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法等、既知の方法に従って実施することができる。
【0055】
アルミノキサン化合物としては、例えばメチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n‐プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n‐ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n‐ヘキシルアルミノキサン、n‐オクチルアルミノキサン、2‐エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1‐メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、2,6‐ジメチルフェニルアルミノキサンおよびそれらの混合物が挙げられる。変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンの約20〜80%のメチル基を、当業者に既知の技法を使用してC〜C12のヒドロカルビル基、好ましくはイソブチル基で置換することによって形成され得る。
【0056】
アルミノキサンは、単独で使用することも他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて使用することもできる。一実施形態では、メチルアルミノキサンと、ジイソブチルアルミニウムハイドライドのような少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物(例えばAlR3‐n)とを組み合わせて使用する。
【0057】
「有機マグネシウム化合物」という用語は、少なくとも1つのマグネシウム‐炭素結合を含む任意のマグネシウム化合物を指すことがある。有機マグネシウム化合物は、炭化水素溶媒に可溶であってよい。利用可能な1つのクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式:MgRで表すことができる[式中、Rはそれぞれ一価の有機基(ただし、該基は炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している)であり、互いに同じであることも異なることもある]。1つまたは複数の実施形態において、Rはそれぞれヒドロカルビル基であってよく、結果として得られる有機マグネシウム化合物は、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物である。ヒドロカルビル基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基およびアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0058】
適切なジヒドロカルビルマグネシウム化合物の例としては、ジエチルマグネシウム、ジ‐n‐プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウムおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0059】
利用可能な別のクラスの有機マグネシウム化合物としては、一般式:RMgXで表すことができる有機マグネシウム化合物が挙げられる[式中、Rは一価の有機基(ただし、該基は炭素原子を介してマグネシウム原子に結合している)であり、Xは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基である]。一価の有機基は上記で定義したとおりである。1つまたは複数の実施形態において、Xはカルボキシレート基、アルコキシド基またはアリールオキシド基である。
【0060】
一般式:RMgXで表すことができる例示的なタイプの有機マグネシウム化合物としては、ヒドロカルビルマグネシウムハイドライド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、ヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
一般式:RMgXで表すことができる有機マグネシウム化合物の具体例としては、例えばメチルマグネシウムハイドライド、エチルマグネシウムハイドライド、ブチルマグネシウムハイドライド、ヘキシルマグネシウムハイドライド、フェニルマグネシウムハイドライド、ベンジルマグネシウムハイドライド、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムブロマイド、ヘキシルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、ベンジルマグネシウムフェノキシドおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
1つまたは複数の不安定なハロゲン原子を含む様々なハロゲン含有化合物またはそれらの混合物を利用することができる。ハロゲン原子の例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられるが、これらに限定されるものではない。異なるハロゲン原子を有する二種以上のハロゲン含有化合物の組合せも利用可能である。1つまたは複数の実施形態において、これらのハロゲン含有化合物は炭化水素溶媒に可溶であってよい。他の実施形態では、重合媒体中に懸濁して触媒活性種を形成し得る炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物も有用である。
【0063】
適切なタイプのハロゲン含有化合物としては、元素状態のハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハロゲン化物、無機ハロゲン化物、金属ハロゲン化物、有機金属ハロゲン化物およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
元素状態のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。混合ハロゲンとしては、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素および五フッ化ヨウ素が挙げられる。
【0065】
ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素が挙げられる。
【0066】
有機ハロゲン化物としては、t‐ブチルクロライド、t‐ブチルブロマイド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、クロロ‐ジ‐フェニルメタン、ブロモ‐ジ‐フェニルメタン、トリフェニルメチルクロライド、トリフェニルメチルブロマイド、ベンジリデンクロライド、ベンジリデンブロマイド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロライド、ベンゾイルブロマイド、プロピオニルクロライド、プロピオニルブロマイド、メチルクロロホルマートおよびメチルブロモホルマートが挙げられる。
【0067】
無機ハロゲン化物としては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、三ヨウ化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルルおよび四ヨウ化テルルが挙げられる。
【0068】
金属ハロゲン化物としては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三ヨウ化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三ヨウ化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二ヨウ化亜鉛および二フッ化亜鉛が挙げられる。
【0069】
有機金属ハロゲン化物としては、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムフルオライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジフルオライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、イソブチルアルミニウムセスキクロライド、メチルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、ブチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイド、ベンジルマグネシウムクロライド、トリメチルスズクロライド、トリメチルスズブロマイド、トリエチルスズクロライド、トリエチルスズブロマイド、ジ‐t‐ブチルスズジクロライド、ジ‐t‐ブチルスズジブロマイド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジブロマイド、トリブチルスズクロライドおよびトリブチルスズブロマイドが挙げられる。
【0070】
当技術分野では非配位性アニオンを含む化合物が知られている。一般に、非配位性アニオンは、立体障害の故に例えば触媒系の活性中心と配位結合を形成しない立体的にかさ高いアニオンである。典型的な非配位性アニオンとしては、テトラアリールボレートアニオンおよびフッ化テトラアリールボレートアニオンが挙げられる。非配位性アニオンを含む化合物は、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等のカウンターカチオンも含む。典型的なカウンターカチオンとしては、トリアリールカルボニウムカチオンおよびN,N‐ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられる。非配位性アニオンおよびカウンターカチオンを含む化合物の例としては、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートおよびN,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられる。
【0071】
非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンを形成し得る化合物が挙げられる。典型的な非配位性アニオン前駆体としては、トリアリールボロン化合物BRが挙げられる[式中、Rはペンタフルオロフェニル基や3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等の強電子求引性アリール基である]。
【0072】
本発明で使用するランタニド系触媒組成物は、上述の触媒成分を組み合わせてまたは混合して形成することができる。1つまたは複数の活性触媒種がランタニド系触媒成分の組合せに由来すると考えられているが、様々な触媒成分または構成成分間の相互作用または反応の度合いについてはあまり確実なことが知られていない。したがって、「触媒組成物」という用語は、成分の単純な混合物、物理的引力もしくは化学的引力によって生じる様々な成分の複合体、成分の化学反応生成物またはこれらの組合せを包含するために使用する。
【0073】
上述のランタニド系触媒組成物は、幅広い触媒濃度および触媒成分の比率にわたり、共役ジエンを重合してシス‐1,4‐ポリジエンにするための高い触媒活性を有し得る。いくつかの因子は触媒成分のうちのいずれか1つの最適濃度に影響を及ぼす可能性がある。例えば、触媒成分は活性種を形成するために相互作用し得るので、いずれか1つの触媒成分の最適濃度が他の触媒成分の濃度に依存する可能性がある。
【0074】
1つまたは複数の実施形態において、アルキル化剤のランタニド化合物に対するモル比(アルキル化剤/Ln)は約1:1〜約1000:1の範囲とすることができ、他の実施形態では約2:1〜約500:1、また他の形態では約5:1〜約200:1の範囲とすることができる。
【0075】
アルミノキサンと少なくとも1つの他の有機アルミニウム剤の両方をアルキル化剤として使用する実施形態では、アルミノキサンのランタニド化合物に対するモル比(アルミノキサン/Ln)を5:1〜約1000:1の範囲とすることができ、他の実施形態では約10:1〜約700:1、また他の形態では約20:1〜約500:1の範囲とすることができ、少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物のランタニド化合物に対するモル比(Al/Ln)を約1:1〜約200:1の範囲とすることができ、他の実施形態では約2:1〜約150:1、また他の形態では約5:1〜約100:1の範囲とすることができる。
【0076】
ハロゲン含有化合物のランタニド化合物に対するモル比は、ハロゲン含有化合物中のハロゲン原子のモル数の、ランタニド化合物中のランタニド原子のモル数に対する比(ハロゲン/Ln)で表すのが説明上最良である。1つまたは複数の実施形態では、ハロゲン/Lnモル比を約0.5:1〜約20:1の範囲とすることができ、他の実施形態では約1:1〜約10:1、また他の形態では約2:1〜約6:1の範囲とすることができる。
【0077】
また別の実施形態では、非配位性アニオンまたは非配位性アニオン前駆体のランタニド化合物に対するモル比(An/Ln)を約0.5:1〜約20:1の範囲とすることができ、他の実施形態では約0.75:1〜約10:1、また他の形態では約1:1〜約6:1の範囲とすることができる。
【0078】
ランタニド系触媒組成物は様々な方法で形成することができる。
【0079】
一実施形態において、ランタニド系触媒組成物は、モノマーおよび溶媒を含む溶液またはバルクモノマーに触媒成分を段階的にまたは同時に添加することによりインサイチュで形成することができる。一実施形態では、最初にアルキル化剤を添加し、続いてランタニド化合物を添加し、その後(使用する場合は)ハロゲン含有化合物または非配位性アニオンもしくは非配位性アニオン前駆体を含む化合物を添加することができる。
【0080】
他の実施形態では、ランタニド系触媒組成物を予形成することができる。すなわち、触媒成分は、モノマーの不存在下または少量の少なくとも1つの共役ジエンモノマーの存在下で、約−20℃〜約80℃であり得る適切な温度において重合系の外側で予混合することができる。触媒の予形成に使用可能な共役ジエンモノマーの量は、ランタニド化合物1モル当たり約1〜約500モルとすることができ、他の実施形態ではランタニド化合物1モル当たり約5〜約250モル、また他の実施形態ではランタニド化合物1モル当たり約10〜約100モルとすることができる。結果として得られる触媒組成物は、必要に応じて熟成した後に重合すべきモノマーに添加することができる。
【0081】
また別の実施形態では、ランタニド系触媒組成物を2段階の手順を使用して形成することができる。第1段階は、モノマーの不存在下または少量の少なくとも1つの共役ジエンモノマーの存在下で、約−20℃〜約80℃であり得る適切な温度においてアルキル化剤をランタニド化合物と混合することを含むことができる。第1段階で使用するモノマーの量は、触媒の予形成に関して先に説明した量と同様であってよい。第2段階では、第1段階で形成した混合物と、ハロゲン含有化合物、非配位性アニオンまたは非配位性アニオン前駆体とを、重合すべきモノマーに段階的にまたは同時に投入することができる。
【0082】
1つまたは複数の実施形態において、溶媒は、重合系に対する触媒または触媒成分の送達を容易にするためにランタニド系触媒または触媒成分を溶解または懸濁させる担体として使用することができる。他の実施形態では、共役ジエンモノマーを触媒担体として使用することができる。また他の実施形態では、溶媒を用いずに触媒成分をそのままの状態(neat state)で使用することができる。
【0083】
1つまたは複数の実施形態において、適切な溶媒は、触媒の存在下でモノマーの重合中に重合しないまたは生長ポリマー鎖に組み込まれない有機化合物を含む。1つまたは複数の実施形態において、これらの有機種は周囲温度および圧力で液体である。1つまたは複数の実施形態において、これらの有機溶媒は触媒に対して不活性である。例示的な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素のような低沸点または比較的低沸点の炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンおよびメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n‐ペンタン、n‐ヘキサン、n‐ヘプタン、n‐オクタン、n‐ノナン、n‐デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2‐ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシンおよび石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンおよびメチルシクロヘキサンが挙げられる。また、上記炭化水素の混合物も使用することができる。当業界で知られているように、脂肪族炭化水素および脂環式炭化水素は環境上の理由から利用が望まれる可能性がある。低沸点の炭化水素溶媒は、典型的には重合が終了するとポリマーから分離される。
【0084】
1つまたは複数の実施形態では、アニオン開始剤を使用してモノマーが重合されるアニオン重合により反応性ポリマーを調製する。アニオン重合の重要な機械的特徴は、書籍(例えば、Hsieh, H. L.; Quirk, R. P. Anionic Polymerization: Principles and Practical Applications; Marcel Dekker: New York, 1996)および総説(例えば、Hadjichristidis, N.; Pitsikalis, M.; Pispas, S.; Iatrou, H.; Chem. Rev. 2001, 101(12), 3747-3792)に記載されている。アニオン開始剤は、失活の前に、更なる鎖成長のために追加のモノマーと反応することまたは特定の官能化剤と反応して官能化ポリマーをもたらすことが可能なリビングポリマーを有利に製造することができる。
【0085】
本発明の実施は、何らかの特定のアニオン開始剤の選択によって限定されるものではない。1つまたは複数の実施形態において、使用するアニオン開始剤は、ポリマー鎖の先端(すなわち、ポリマー鎖の開始位置)に官能基を付与する官能性開始剤である。特定の実施形態において、官能基としては1つまたは複数のヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、スズ原子およびリン原子)または複素環基が挙げられる。
【0086】
典型的なアニオン開始剤としては有機リチウム化合物が挙げられる。1つまたは複数の実施形態において、有機リチウム化合物はヘテロ原子を含むことができる。上記または他の実施形態において、有機リチウム化合物は1つまたは複数の複素環基を含むことができる。
【0087】
有機リチウム化合物のタイプとしては、アルキルリチウム化合物、アリールリチウム化合物およびシクロアルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n‐プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n‐ブチルリチウム、sec‐ブチルリチウム、t‐ブチルリチウム、n‐アミルリチウム、イソアミルリチウムおよびフェニルリチウムが挙げられる。更に他のアニオン開始剤としては、フェニルナトリウムや2,4,6‐トリメチルフェニルナトリウム等の有機ナトリウム化合物が挙げられる。ポリマー鎖の両端がリビング状態であるジ‐リビングポリマー(di-living polymers)をもたらすアニオン開始剤も考えられる。このような開始剤の例としては、例えば1,3‐ジイソプロペニルベンゼンとsec‐ブチルリチウムとを反応させることにより生成されるジリチオ開始剤が挙げられる。これらのおよび関連する二官能性開始剤は、参照により本明細書に援用する米国特許第3,652,516号に開示されている。参照により本明細書に援用する米国特許第5,552,483号に開示されているものを含めたラジカルアニオン開始剤も利用することができる。
【0088】
特定の実施形態において、有機リチウム化合物としてはリチオヘキサメチレンイミン等の環状アミン含有化合物が挙げられる。これらのおよび関連する有用な開始剤は、参照により本明細書に援用する米国特許第5,332,810号、同第5,329,005号、同第5,578,542号、同第5,393,721号、同第5,698,646号、同第5,491,230号、同第5,521,309号、同第5,496,940号、同第5,574,109号および同第5,786,441号に開示されている。他の実施形態において、有機リチウム化合物としては2‐リチオ‐2‐メチル‐1,3‐ジチアン等のアルキルチオアセタールが挙げられる。これらのおよび関連する有用な開始剤は、参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/0030657号、同第2006/0264590号および同第2006/0264589号に開示されている。更に他の実施形態において、有機リチウム化合物としてはリチオ化t‐ブチルジメチルプロポキシシラン等のアルコキシシリル含有開始剤が挙げられる。これらのおよび関連する有用な開始剤は、参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第2006/0241241号に開示されている。
【0089】
1つまたは複数の実施形態において、使用するアニオン開始剤はトリ‐n‐ブチルスズリチウム等のトリアルキルスズリチウム化合物である。これらのおよび関連する有用な開始剤は、参照により本明細書に援用する米国特許第3,426,006号および同第5,268,439号に開示されている。
【0090】
アニオン重合は極性溶媒、非極性溶媒およびそれらの混合物において実施することができる。例示的な溶媒は上記で説明したとおりである。共役ジエンモノマーやビニル置換芳香族モノマーを含有する弾性コポリマー等を調製する場合、共役ジエンモノマーとビニル置換芳香族モノマーとは、95:5〜50:50、他の実施形態では95:5〜65:35の比率で使用することができる。
【0091】
反応性ポリマーを配位重合法によって調製するのかアニオン重合法によって調製するのかに関わらず、反応性ポリマーの製造は、共役ジエンモノマーを、任意選択で共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーと一緒に、触媒的に効果的な量の触媒または開始剤の存在下で重合させることによって達成することができる。触媒または開始剤と、共役ジエンモノマーと、任意選択でコモノマーと、利用する場合は任意の溶媒も導入することにより重合混合物を形成し、その内部で反応性ポリマーを形成させる。利用する触媒または開始剤の量は、利用する触媒または開始剤のタイプ、成分の純度、重合温度、重合速度および所望の転換率、所望の分子量、他の多くの因子といった様々な因子の相互作用に依存する。したがって、「触媒的に効果的な量の触媒または開始剤を使用し得る」と言う以外には、触媒または開始剤の具体的な量を明示することができない。
【0092】
配位触媒(例えばランタニド系触媒)を使用する1つまたは複数の実施形態では、使用する配位金属化合物(例えばランタニド化合物)の量をモノマー100g当たり約0.001〜約2ミリモル、他の実施形態では約0.005〜約1ミリモル、また他の形態では約0.01〜約0.2ミリモルの範囲とすることができる。
【0093】
アニオン開始剤(例えば、アルキルリチウム化合物)を使用する他の実施形態では、開始剤の添加量をモノマー100g当たり約0.05〜約100ミリモル、他の実施形態では約0.1〜約50ミリモル、また他の形態では約0.2〜約5ミリモルの範囲とすることができる。
【0094】
1つまたは複数の実施形態において、相当量の溶媒を含む重合系の中で重合を実施することができる。一実施形態では、重合すべきモノマーと形成されるポリマーの両方が溶媒に可溶となる溶液重合系を使用することができる。他の実施形態では、形成されるポリマーが不溶となる溶媒を選択することにより、沈殿重合系を使用することができる。いずれの場合も、通常は触媒の調製に使用可能な量の溶媒に加えて一定量の溶媒も重合系に添加される。添加溶媒は、触媒または開始剤の調製に使用する溶媒と同じであっても異なっていてもよい。典型的な溶媒は上記で説明したとおりである。1つまたは複数の実施形態において、重合混合物の溶媒量は重合混合物の総質量に対して20質量%超とすることができ、他の実施形態では50質量%超、また他の形態では80質量%超とすることができる。
【0095】
他の実施形態では一般に、利用する重合系は実質的に溶媒を含まないまたは最低限量の溶媒を含むバルク重合系と考えることができる。当業者ならバルク重合法(すなわち、モノマーが溶媒として作用する工程)の利点を理解するであろう。したがって、この重合系は、バルク重合の実施によってもたらされる利点に悪影響が及ぶ量よりも少ない量の溶媒を含む。1つまたは複数の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量を、重合混合物の総質量に対して約20質量%未満とすることができ、他の実施形態では約10質量%未満、また他の実施形態では約5質量%未満とすることができる。また別の実施形態では、重合混合物が溶媒を実質的に欠いている。つまり、重合工程に顕著な影響を及ぼす量の溶媒が存在しない。溶媒を実質的に欠く重合系は、「溶媒を実質的に含まない」と表現することもある。特定の実施形態では、重合混合物が溶媒を欠いている。
【0096】
重合は、当業界で知られる任意の従来型重合容器内で実施することができる。1つまたは複数の実施形態では、溶液重合を従来の攪拌槽反応器内で実施することができる。他の実施形態では、特にモノマー転換率が約60%未満であれば、バルク重合を従来の攪拌槽反応器内で実施することができる。他の実施形態では、特にバルク重合法におけるモノマー転換率が典型的に粘性の高いセメントを生じる約60%を上回る場合は、重合下の粘性のあるセメントを細長い反応器内でピストン駆動または実質的にピストン駆動して該反応器内を移動させ、これによってバルク重合を実施することができる。例えば、自己洗浄式一軸スクリューまたは二軸スクリュー攪拌機に沿ってセメントを押し出す押出機がこの目的に適している。有用なバルク重合法の例は、参照により本明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0197474号に開示されている。
【0097】
1つまたは複数の実施形態では、重合に使用するすべての成分を単一の容器(例えば、従来の攪拌槽反応器)内で混合することができ、該容器内で重合工程のすべてのステップを実施することができる。他の実施形態では、これらの成分のうちの2つ以上を1つの容器内で予混合し、その後別の容器に移してモノマー(または少なくともその主要部分)の重合を実施することもできる。
【0098】
重合は、バッチ法、連続法または半連続法で実施することができる。半連続法では、必要に応じてモノマーを断続的に投入して既に重合したモノマーと置き換えることができる。1つまたは複数の実施形態において、重合を進める条件は、重合混合物の温度を約−10℃〜約200℃、他の実施形態では約0℃〜約150℃、また他の実施形態では約20℃〜約100℃の範囲内に維持するように制御することができる。1つまたは複数の実施形態において、重合熱は、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流冷却器を使用したモノマーの気化および凝縮による内部冷却、またはこれら2つの方法の組合せによって除去することができる。また、約0.1気圧〜約50気圧、他の実施形態では約0.5気圧〜約20気圧、また他の実施形態では約1気圧〜約10気圧の圧力下で重合が実施されるように条件を制御することもできる。1つまたは複数の実施形態において、重合が実施される圧力としては、モノマーの大部分が液相であることを保証する圧力が挙げられる。これらのまたは他の実施形態において、重合混合物は嫌気性条件下で保持することができる。
【0099】
重合が触媒作用によるものであれ配位触媒系(例えばランタニド系触媒系)もしくはアニオン開始剤(例えばアルキルリチウム開始剤)で開始されるものであれ、結果として得られるポリマー鎖の一部または全部は、重合混合物が冷却前に擬似リビング状態またはリビング状態の反応性末端を有する。上述のとおり、反応性ポリマーは、配位触媒を利用する場合には擬似リビングポリマーと呼ぶことができ、アニオン開始剤を利用する場合にはリビングポリマーと呼ぶことができる。1つまたは複数の実施形態では、反応性ポリマーを含む重合混合物を活性重合混合物と呼ぶことができる。反応性末端を有するポリマー鎖の割合は、触媒または開始剤のタイプ、モノマーのタイプ、成分の純度、重合温度、モノマーの転換率、他の多くの因子といった様々な因子に依存する。1つまたは複数の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約20%が反応性末端を有し、他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約50%が反応性末端を有し、また他の実施形態ではポリマー鎖の少なくとも約80%が反応性末端を有する。
【0100】
本発明では任意の共役ジエンを使用することができる。例えば、リビングおよび擬似リビングポリマーならびにリビングおよび擬似リビング共重合体を調製するのに利用可能な適切な共役ジエンとしては、例えば1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐1,3‐ブタジエン(イソプレン)、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエン、1,3‐ヘキサジエン等およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、ジエンは1,3‐ブタジエンである。
【0101】
本発明では任意のビニル芳香族炭化水素を使用することができる。例えば、リビングおよび擬似リビング共重合体を調製するのに利用できる適切なビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、ビニルトルエン、α‐メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等が挙げられる。一実施形態において、ビニル芳香族炭化水素はスチレンである。
【0102】
本開示の末端官能化ポリマーは、上記のリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーを、本明細書に記載した特定のアリルグリシジルエーテルもしくは特定のアリルハロシランもしくはそれらの組合せと反応させることによって調製される。
【0103】
利用可能なアリルグリシジルエーテルは、一般式:CH=CHCHOCH‐Xを有する[式中、Xは下記のエポキシ基である]。
【0104】
【化5】

【0105】
[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、水素または一価の有機基から選択される。]1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができる。
【0106】
利用可能なアリルハロシランは、一般式:CH=CHCHSi(R)‐Xを有する[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、一価の有機基から選択される。]1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を含むことができ、Xは塩化物、臭化物またはヨウ化物からなる群から選択されるハロゲン化物である。
【0107】
溶液中のリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーと停止剤との反応は、単純に必要に応じて停止剤をポリマー溶液に添加することによって実施することができる。しかしながら、一実施形態において、停止剤は扱い易いように適切な溶媒中の溶液の形態で添加される。
【0108】
リビングポリマーに添加する停止剤の量は、リビングポリマー中に存在する活性な有機アルカリ金属末端基(例えば活性なリチウム末端基)の量および最終的なポリマーにおいて停止剤の量に依存する。なお、リビングポリマー中の活性なアルカリ金属末端基のモル数は、重合に利用される有機アルカリ金属開始剤中に存在するアルカリ金属基のモル数と同等であると仮定する。一般に、本発明においてリビングポリマーの活性アルカリ金属基との反応に利用する停止剤の量は、(i)化学式どおりの量未満、すなわち活性なアルカリ金属末端基1モル当たり停止剤0.75モルから、(ii)化学式どおりの量、すなわち活性なアルカリ金属末端基1モル当たり停止剤約1モル、(iii)更には化学式どおりの量を大きく上回る量に至る範囲とすることができる。しかしながら、一実施形態ではアルカリ金属末端基1モル当たり約0.9〜2.0モルの停止剤を使用する。
【0109】
擬似リビングポリマーに関しては、一実施形態において、添加する停止剤の量は擬似リビングポリマーの金属1モル当たり停止剤約10〜約200モルとすることができる。別の実施形態において、停止剤のモル比は、擬似リビングポリマーの金属1モル当たり停止剤約30モルとすることができ、また別の実施形態では擬似リビングポリマーの金属1モル当たり停止剤約50〜約100モルとすることができる。
【0110】
リビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーと停止剤とを反応させる際に利用する温度はかなり広い範囲で変動する可能性があり、一実施形態では約0℃〜約100℃、別の実施形態では約30℃〜約100℃、また別の実施形態では50℃〜80℃の範囲とすることができる。反応時間もかなり広い範囲で変動する可能性があり、一般には反応温度に依存する。それ故、一実施形態では反応時間が約15分〜約24時間となることもある。
【0111】
結果として得られる末端官能化ポリマーは、従来の手順を使用してポリマー溶液から回収し乾燥させることができる。したがって、溶液からのポリマーの回収を、例えば直接ドラム乾燥、押出機乾燥、空気乾燥によって実施することができ、またはポリマーにとって十分な体積の非溶媒液(例えばアルコール)を溶液に加えることによる凝固、もしくは代替的にポリマー溶液を十分な量の非溶媒に加えることによる凝固を利用して実施することができる。このような回収は通常、ポリマーに適した酸化防止剤を非溶媒に含める凝固手順を実行する際に望ましい。回収したポリマーはその後、ドラム乾燥、真空乾燥、押出機乾燥、トンネル乾燥、オーブン乾燥のような従来のポリマー乾燥手順を使用して乾燥させることができる。
【0112】
本明細書に示した特定のアリルグリシジルエーテルのうちの少なくとも1つ、もしくは特定のアリルハロシランのうちの少なくとも1つ、もしくはそれらの組合せと反応した、ジエンモノマーもしくはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーの混合物を、アニオン重合させることによって得られるリビングポリマーもしくは配位重合させることによって得られる擬似リビングポリマーを含む本開示の末端官能化ポリマーは、耐衝撃性スチレン系樹脂の製造に有用である。典型的な耐衝撃性スチレン系樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)が挙げられる。周知のとおり、このような耐衝撃性スチレン系ポリマーまたはゴム変性ポリマーは、ゴム構成成分が存在する場合はそのゴム構成成分がスチレン系ポリマー構成成分中に分散するようにスチレン構成成分を重合させることによって調製することができる。
【0113】
この耐衝撃性スチレン系樹脂またはポリマー組成物を調製する際は、ビニル芳香族モノマーから生成される任意のポリマーを使用することができる。モノマーとしては、例えばスチレン系モノマーのホモポリマーまたは共重合体、スチレン系モノマーの共重合体、共重合性ビニルモノマー等を挙げることができる。
【0114】
スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、アルキルスチレン[例えば、ビニルトルエン(例えばo‐、m‐、p‐メチルスチレン)、ビニルキシレン(例えば2,4‐ジメチルスチレン)、エチルスチレン、p‐イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p‐t‐ブチルスチレンのようなアルキル置換スチレン(例えばC1‐4アルキルスチレン)等のモノアルキルスチレン;ジアルキルスチレン(2,4‐ジメチルスチレンのようなジC1‐4アルキルスチレン);α‐アルキル置換スチレン(例えばα‐メチルスチレンやα‐メチル‐p‐メチルスチレンのようなα‐C1‐2アルキルスチレン)]、アルコキシスチレン(例えばo‐メトキシスチレン、m‐メトキシスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐t‐ブトキシスチレンのようなC1‐4アルコキシスチレン)、ハロスチレン(例えばo‐、m‐、p‐クロロスチレン、p‐ブロモスチレン)を挙げることができる。これらのスチレン系モノマーは単独で使用することも組み合わせて使用することもできる。いくつかの実施形態において、スチレン系モノマーにはスチレン、ビニルトルエンおよびα‐メチルスチレンが含まれ、一実施形態においてモノマーはスチレンである。
【0115】
共重合性ビニルモノマーとしては例えば下記のものを利用することができる。α,β‐不飽和ニトリル[例えば、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化(メチル)アクリロニトリル(クロロ(メタ)アクリルニトリル等)などのビニルシアン化物]、α,β‐不飽和カルボキシレート(特にアルキルエステル)[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸C5‐7シクロアルキルエステル;フェニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸C6‐12アリールエステル;ベンジル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸C7‐14アラルキル(arakyl)エステル;またはマレイン酸モノもしくはジアルキルエステル、フマル酸モノもしくはジアルキルエステル、およびこれらの(メタ)アクリル酸エステルに対応するイタコン酸モノもしくはジアルキルエステル]、ビニルエステル系モノマー[例えば、ビニルホルマート、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート(特にC1‐6カルボン酸ビニルエステル)に代表されるC1‐10カルボキシビニルエステルのようなカルボン酸ビニルエステル]、ヒドロキシル基含有モノマー[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(例えばヒドロキシC1‐10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC1‐4アルキル(メタ)アクリレート)のようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート]、グリシジル基含有モノマー[例えば、グリシジル(メチル)アクリレート]、カルボキシル基含有モノマー[例えば、(メタ)アクリル酸のようなα,β‐不飽和モノカルボン酸);マレイン酸、フマル酸、イタコン酸のようなα,β‐不飽和ポリカルボン酸;またはそれらの酸無水物(例えば無水マレイン酸、無水フマル酸)]、アミノ基含有モノマー[例えばN,N‐ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N‐ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート]、アミド系モノマー[例えば、(メタ)アクリルアミド、またはその誘導体(例えば、Nメチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド)、またはそれらに対応するフマル酸アミド(例えばフマルアミド、フマルアミド酸(fumaramic acid)もしくはそれらの誘導体)]、イミド系モノマー(例えばマレイミド、N‐C1‐4アルキルマレイミド(N‐メチルマレイミドやN‐フェニルマレイミド等))、共役ジエン系モノマー[例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ネオプレン、1,3‐ペンタジエン、1‐クロロブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、3‐ブチル‐1,3‐オクタジエン、フェニル‐1,3‐ブタジエン(好ましくはC4‐10ジエン)のようなC4‐16ジエン]、オレフィンモノマー[例えば、エチレン、プロピレン、ブテン(例えばイソブテン)のようなC2‐10アルケン]、ビニルハロゲン化物(例えばビニルフッ化物、ビニル塩化物、ビニル臭化物、ビニルヨウ化物)およびビニリデンハロゲン化物(例えばビニリデンフッ化物、ビニリデン塩化物、ビニリデン臭化物、ビニリデンヨウ化物)。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート(好ましくは(メタ)アクリル酸C1‐14アルキルエステル)のような(メタ)アクリル酸C1‐20アルキルエステル、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0116】
本開示の耐衝撃性またはゴム変性ポリマー組成物のゴム構成成分は、本明細書に記載した末端官能化ポリマーのうちの少なくとも1つまたは複数を含む。これらのポリマーは、一般式:CH=CHCHOCH‐X[式中、Xは下記のエポキシ基である]を有する少なくとも1つのアリルグリシジルエーテルと反応した、ジエンモノマーもしくはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーの混合物を、アニオン重合させることによって得られるリビングポリマーもしくは配位重合させることによって得られる擬似リビングポリマーを含む末端官能化ポリマーである
【0117】
【化6】

【0118】
[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、水素または一価の有機基から選択される]。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、
窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子;または
一般式:CH=CHCHSi(R)‐Xを有する少なくとも1つのアリルハロシラン[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、一価の有機基から選択される。]
を含むことができる。1つまたは複数の実施形態において、一価の有機基は、それだけに限らないが、アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、アルカリール等、それぞれ炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基または置換ヒドロカルビル基を含むことができる。ヒドロカルビル基は、それだけに限らないが、
窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子[Xは塩化物、臭化物またはヨウ化物から選択されるハロゲン化物である。];または
アリルグリシジルエーテルおよびアリルハロシランの組合せ
を含むことができる。
【0119】
ゴム構成成分は上記で説明したとおりである。
【0120】
ゴム変性スチレン系樹脂の例は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン‐ブタジエン‐スチレン(SBS樹脂)、スチレン‐イソプレン‐スチレン(SIS樹脂)、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンコポリマー(ABS樹脂)、アクリロニトリル‐アクリルゴム‐スチレンコポリマー(AAS樹脂)、アクリロニトリル‐(エチレン‐プロピレン‐ゴム)‐スチレンコポリマー、アクリロニトリル‐EPDM‐スチレンコポリマー(AES樹脂)およびメチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレンコポリマー(MBS樹脂)である。いくつかの実施形態において、HIPSおよびABS樹脂はゴム変性樹脂である。
【0121】
耐衝撃性スチレン系樹脂は既知の任意の手順によって調製することができる。これらの方法としては、バルク重合、溶液重合、懸濁液重合、エマルション重合等が挙げられる。重合は圧力下で実施することができる。重合は約80℃〜約230℃等の温度範囲で実施することができる。重合はバッチ重合であっても連続重合であってもよい。本明細書に記載した耐衝撃性スチレン系樹脂を調製する際は、一実施形態ではゴム構成成分の約3〜約40質量%の量を使用することができ、別の実施形態ではゴムの約5〜約20%を使用することができる。更に、ビニル芳香族の構成成分は、一実施形態では約60〜97質量%の量で使用することができ、別の実施形態では約80〜95質量%の量で使用することができる。
【0122】
本開示では以下、耐衝撃性またはゴム変性スチレン系樹脂組成物の製造方法について説明する。この製造方法は本発明の実施例9〜16で利用した。
【0123】
HIPS調製:まず、表I(後掲)に示す約48グラムのブタジエンポリマーまたはブタジエンスチレンブロックポリマーを752グラムのスチレンに加えて総質量800グラムの溶液を作製し、該ポリマーを溶解させることによってHIPSバッチを調製した。次いで、この溶液を、底部に溶液の入口となる2つの穴を有し、頂部に溶液の出口となる2つの穴を有する中空軸を備えた螺旋状攪拌器を収容したジャケット付ガラス反応器(1.5リットル)に加え、スチレンゴム液を混合させた。約141グラムのエチルベンゼンと共に、20グラムの鉱油、10%ヘキサン溶液に入れた0.64グラムのCiba社製IRGANOX 1076酸化防止剤および0.15ミリリットルのtert‐ブチルペルベンゾエートを加えた。次いで、この混合物を100℃まで加熱してスチレンモノマーの重合を開始させた。混合物を更に6時間にわたって130〜160℃まで加熱した。この間に転相が発生し、ポリスチレンと存在する不溶性ブタジエンポリマーゴム粒子との連続相が得られた。次いで、混合物を反応器から240℃の真空オーブンに移して残留スチレンやエチルベンゼンのような揮発性成分を除去し、その結果共役ジエン相の架橋が生じた。次いで、適切な試験法を使用してブタジエンポリマーまたはコポリマーゴム粒子を含む乾燥ポリスチレンの評価を行った。
【0124】
以下、本開示の末端官能化ポリマーの典型的な製造方法について説明する。
【0125】
ブタジエンポリマーまたはブタジエン‐スチレンブロックコポリマーの合成:窒素雰囲気下で、ブタジエンのヘキサン溶液に一定量のn‐ブチルリチウム溶液を加えた。重合を一定の温度でしばらく継続すると、結果として得られたリビングポリブタジエンポリマーがイソプロパノールまたはターミネータによって終端され、変性ブタジエンポリマーが得られた。このリビングポリブタジエンポリマー溶液に一定量のスチレン溶液を加えた。重合は、スチレンがなくなりリビングブタジエンスチレンブロックコポリマーが生成されるまで継続した。このリビングポリマーをイソプロパノールまたはターミネータで終端して変性ブタジエンスチレンブロックコポリマーを生成した。
【0126】
下記の実施例は本発明の性質の更なる例示として提示するものであり、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。各実施例に示す部およびパーセントは、特に明記しない限り質量部および質量パーセントである。
【実施例】
【0127】
後述の実施例を実施する際は下記の試験手順を使用した。
【0128】
分子量:ポリマーの数平均分子量(M)および質量平均分子量(M)は、ポリスチレン標準およびポリブタジエンの鎖長特性を補正するマルク‐ハウインク定数(Mark Houwink constant)を使用してゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって決定した。(M)および(M)の分子量値を決定する際は、テトラヒドロフランのポリマー希釈溶液(約0.1質量%)をサイズ排除カラム(LC/SEC)による液体クロマトグラフに注入し、既知のポリスチレン標準と突き合わせて較正を行い、次いでポリマー構造、すなわちブタジエン、スチレン、ビニル含有量に従って文献記載のマルクハウインク定数で補正した。
【0129】
ビニル含有量:ポリマーのH NMRスペクトルをバリアン社製300 Spectrometerに記録した。ポリマー中のビニル含有率は、総ブタジエン含有量に基づいてスペクトルから計算した。H NMRは、周知の陽子核磁気共鳴法(Proton Nuclear Magnetic Resonance Technique)である。
【0130】
メルトインデックス:メルトインデックスは、200℃の温度および5kgの荷重を必要とするASTM D 1238(条件g)に従って決定した。メルトインデックスはg/10分単位で示す。
【0131】
ゴム含有量(%):ゴム含有量(%)は、ビニル芳香族の熱可塑性ポリマーを含むゴム中の総ブタジエンポリマーまたはブタジエンスチレンブロックコポリマーを指す。
【0132】
アイゾット衝撃:アイゾット衝撃をASTM D‐256に従って決定した。結果はft‐lbs/in(フィート‐ポンド/インチ)単位で示す。
【0133】
60°光沢:60°光沢は、ASTM D‐2457に従って60°の角度で決定した。
【0134】
本明細書の下記の実施例1〜8のすべてにおいて、使用した化学薬品はすべて乾燥させ窒素雰囲気下に保持した。
【0135】
実施例1では、終端されていないリビングポリブタジエンの調製について説明する。実施例2では、実施例1に示すポリブタジエンがその後アリルグリシジルエーテル(本明細書ではAGE)で終端される調製について説明する。実施例3では、実施例1に示すポリブタジエンがその後アリルクロロジメチルシラン(本明細書ではACDMS)で終端される調製について説明する。実施例4では、実施例1に示すポリブタジエンがその後AGEとACDMSの両方で終端される調製について説明する。
【0136】
実施例5では、リビングポリ(ブタジエン‐ブロック‐スチレン)、本明細書では終端されていないポリ(Bd‐b‐St)の調製について説明する。実施例6では、実施例5に示すポリ(Bd‐b‐St)がその後AGEで終端される調製について説明する。実施例7では、実施例5に示すポリ(Bd‐b‐St)がその後ACDMSで終端される調製について説明する。実施例8では、実施例5に示すポリ(Bd‐b‐St)がその後ACDMSで終端される調製について説明する。実施例8では、実施例5に示すポリ(Bd‐b‐St)がその後AGEとACDMSの両方で終端される調製について説明する。
【0137】
[実施例1]
(ポリブタジエンの調製)
窒素下でドライ2ガロン反応器に4128gの15.0%ブタジエンヘキサン溶液を充填し、続いて3.87mlの1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液を充填した。重合を60℃で2.0時間実施した後、酸化防止剤としてのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有するイソプロパノールにリビングポリブタジエンアニオン溶液を注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。ポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=92,587、Mw=97,796、Mw/Mn=1.10であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.7%と判定された。
【0138】
[実施例2]
(AGE末端ポリブタジエンの調製)
リビングポリブタジエンアニオン溶液を実施例1の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0M AGE溶液を加えた。この溶液を50℃で60分間攪拌してから酸化防止剤としてのBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。AGE末端ポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=114,091、Mw=117,343、Mw/Mn=1.03であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.6%と判定された。
【0139】
[実施例3]
(ACDMS末端ポリブタジエンの調製)
リビングポリブタジエンアニオン溶液を実施例1の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0Mアリルクロロジメチルシラン(ACDMS)溶液を加えた。この溶液を50℃で60分間攪拌してからBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。アリルジメチルシリル末端ポリブタジエンの分子量をGPCによって決定した。Mn=92,040、Mw=97,325、Mw/Mn=1.06であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.4%と判定された。
【0140】
[実施例4]
(AGEおよびACDMSで終端されるポリブタジエンの調製)
リビングポリブタジエンアニオン溶液を実施例1の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0M AGE溶液を加え、60℃で40分間攪拌した。次いで、同じ当量の1.0M ACDMS溶液を加え、この溶液を50℃で60分間攪拌した。このポリマー溶液をBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。終端されたポリブタジエンの分子量をGPCによって決定した。Mn=87,199、Mw=91,455、Mw/Mn=1.05であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.7%と判定された。
【0141】
[実施例5]
(ポリ(ブタジエンスチレンブロックポリマー)の調製)
窒素下でドライ2ガロン反応器に1364gのヘキサン、2410gの21.6%ブタジエンヘキサン溶液を加え、続いて3.83mlの1.6Mブチルリチウムヘキサン溶液を加えた。重合を60℃で2時間実施した後、この溶液に3.83mLの1.6M 2,2‐ビス(2’‐テトラヒドロフリル)プロパンヘキサン溶液を加え、続いて278gの33.0%スチレンヘキサン溶液を加えた。1時間後、ポリマーセメントをBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。(Bd‐b‐Stブロック)ポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=101,291、Mw=107,745、Mw/Mn=1.06であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.8%(Bd=100%)、スチレン含有量は15.1%と判定された。ビニル含有量は100%と等しいBdに基づく。
【0142】
[実施例6]
(AGE終端ポリ(Bd‐b‐St)の調製)
リビングブタジエンスチレンブロックポリマー溶液を実施例5の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0M AGE溶液を加えた。この溶液を50℃で40分間攪拌してからBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。AGE末端(Bd‐b‐St)ブロックポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=101,529、Mw=108,602、Mw/Mn=1.07であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.7%(Bd=100%)、スチレン含有量は14.4%と判定された。ビニル含有量は100%と等しいBdに基づく。
【0143】
[実施例7]
(ACDMS末端ポリ(Bd‐b‐St)の調製)
リビングブタジエンスチレンブロックポリマー溶液を実施例5の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0Mアリルクロロジメチルシラン(ACDMS)溶液を加えた。この溶液を50℃で60分間攪拌してからBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。アリルジメチルシリル末端Bd‐b‐Stブロックポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=96,401、Mw=102,129、Mw/Mn=1.06であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.7%(Bd=100%)、スチレン含有量は15.2%と判定された。ビニル含有量は100%と等しいBdに基づく。
【0144】
[実施例8]
(AGEおよびACDMSで終端されたポリ(Bd‐b‐St)の調製)
リビングブタジエンスチレンブロックポリマー溶液を実施例5の場合と同様に調製し、これを乾燥無酸素瓶に分けて入れた。重合アニオン溶液にブチルリチウムと当量の1.0M AGE溶液を加えた。この溶液を50℃で40分間攪拌した。その後、同じ当量の1.0Mアリルクロロジメチルシラン(ACDMS)溶液を加え、この溶液を50℃で30分間攪拌した。ポリマーセメントをBHTを含有するイソプロパノールに注入し、凝固したポリマーをドラム乾燥機で乾燥させた。終端されたBd‐b‐Stブロックポリマーの分子量をGPCによって決定した。Mn=101,936、Mw=109,469、Mw/Mn=1.07であることが分かった。H NMRによりビニル含有量は8.7%(Bd=100%)、スチレン含有量は14.4%と判定された。ビニル含有量は100%と等しいBdに基づく。
【0145】
[実施例9〜16]
下記の実施例9〜16では、実施例1〜8のポリマーを利用したHIPSバッチの調製を開示する。実施例1および5のポリマーは終端されていない。実施例2、3、4のポリマーは、それぞれAGE、ACDMS、AGEとACDMSの両方で終端されたポリブタジエンである。実施例6、7、8のポリマーは、それぞれAGE、ACDMS、AGEとACDMSの両方で終端されたポリ(Bd‐b‐St)ポリマーである。
【0146】
実施例9〜16のHIPSバッチの調製方法は上記で説明したとおりである。
【0147】
実施例9〜16のHIPSバッチおよびそれらの特性を表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1のデータから、これらの終端ポリマーをHIPS製品の製造時に使用することにより、終端されていない同じポリマーを使用して製造したHIPS製品と比較してHIPS製品の光沢レベルが増加することが分かるであろう。
【0150】
更に、表1のデータからは、本開示に特有の終端ポリマーを使用して製造されたHIPS製品が耐衝撃性スチレン樹脂として様々な用途に適していることも分かるはずである。
【0151】
本明細書に記載した本発明の形態は単なる例示であって本発明の範囲を限定するものではないことを明確に理解されたい。本発明は添付の特許請求の範囲に含まれるすべての修正形態を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リビングポリマーと、下記からなる群から選択される少なくとも1つの構成成分との反応生成物を含むことを特徴とする末端官能化ポリマー:
(a)式(I):CH=CHCHOCH‐Xを有するアリルグリシジルエーテル
[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【化1】

[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30の水素基、アルキル基またはアリール基から選択される]、
(b)式(II):CH=CHCHSi(R)‐Xを有するアリルハロシラン
[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアリール基から選択され、Xは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物である]、および
(c)(a)と(b)の組合せ。
【請求項2】
擬似リビングポリマーと、下記からなる群から選択される少なくとも1つの構成成分との反応生成物を含むことを特徴とする末端官能化ポリマー:
(a)式(I):CH=CHCHOCH‐Xを有するアリルグリシジルエーテル
[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【化2】

[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30の水素基、アルキル基またはアリール基から選択される]、
(b)式(II):CH=CHCHSi(R)‐Xを有するアリルハロシラン
[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアリール基から選択され、Xは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物である]、および
(c)(a)と(b)の組合せ。
【請求項3】
前記リビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーは、ジエンモノマーのリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマー、またはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーのリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の末端官能化ポリマー。
【請求項4】
前記構成成分がアリルグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の末端官能化ポリマー。
【請求項5】
前記構成成分がアリルクロロジメチルシランであることを特徴とする、請求項1または2に記載の末端官能化ポリマー。
【請求項6】
前記構成成分がアリルグリシジルエーテルとアリルクロロジメチルシランの組合せであることを特徴とする、請求項1または2に記載の末端官能化ポリマー。
【請求項7】
リビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーと下記からなる群から選択される少なくとも1つの構成成分とを反応させるステップを含むことを特徴とする末端官能化ポリマーの製造方法:
(a)式(I):CH=CHCHOCH‐Xを有するアリルグリシジルエーテル
[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【化3】

[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30の水素基、アルキル基またはアリール基から選択される]、
(b)式(II):CH=CHCHSi(R)‐Xを有するアリルハロシラン
[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアリール基から選択され、Xは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物である]、および
(b)(a)と(b)の組合せ。
【請求項8】
前記リビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーは、ジエンモノマーのリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマー、またはジエンモノマーとビニル芳香族炭化水素モノマーのリビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記構成成分は、アリルグリシジルエーテル、アリルクロロジメチルシランおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ビニル芳香族モノマーおよび前記ビニル芳香族ポリマー中に分散するゴムからなるポリマーを含むゴム変性ポリマー組成物であり、前記ゴムは、リビングポリマーもしくは擬似リビングポリマーと、下記からなる群から選択される少なくとも1つの構成成分との反応生成物を含む末端官能化ポリマーであることを特徴とする、ゴム変性ポリマー組成物:
(a)式(I):CH=CHCHOCH‐Xを有するアリルグリシジルエーテル
[式中、Xは下記のエポキシ基である]
【化4】

[式中、R、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30の水素基、アルキル基またはアリール基から選択される]、
(b)式(II):CH=CHCHSi(R)‐Xを有するアリルハロシラン
[式中、RおよびRは同じまたは異なるものであり、炭素原子数1〜30のアルキル基またはアリール基から選択され、Xは塩化物、臭化物およびヨウ化物から選択されるハロゲン化物である]、および
(c)(a)と(b)の組合せ。
【請求項11】
前記構成成分は、アリルグリシジルエーテル、アリルクロロジメチルシランおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載のゴム変性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記ゴムは前記組成物の総質量に基づいて約3〜約40質量%の量で存在することを特徴とする、請求項13および14のいずれか一項に記載のゴム変性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ビニル芳香族モノマーからなる前記ポリマーはスチレンとアクリロニトリルの共重合体であることを特徴とする、請求項13および14のいずれか一項に記載のゴム変性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記ビニル芳香族モノマーからなる前記ポリマーはスチレンのホモポリマーであることを特徴とする、請求項13および14のいずれか一項に記載のゴム変性ポリマー組成物。

【公表番号】特表2012−505956(P2012−505956A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532182(P2011−532182)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/060500
【国際公開番号】WO2010/045230
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】