説明

新規リチウムマンガン複合酸化物及びその製造方法並びにその用途

【課題】
新規なリチウムマンガン複合酸化物とその製造方法を提供する。さらに、このリチウムマンガン複合酸化物を正極活物質に用いることで、ハイレート充放電特性の優れたマンガン系リチウム二次電池を提供する。
【解決手段】
一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、平均粒子径が5〜20μm、BET比表面積が0.6m・g−1以下、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上1400オングストローム以下であるスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物と、リチウムマンガン複合酸化物の製造方法、並びにこのリチウムマンガン複合酸化物を正極に用いたリチウム二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は新規なリチウムマンガン酸化物に関するものであって、詳しくは、一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu,B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、平均粒子径が5〜20μm、BET比表面積が0.6m・g−1以下、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上のスピネル型結晶構造からなるリチウムマンガン複合酸化物とその製造方法及びそのリチウムマンガン酸化物を正極活物質に用いるリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
マンガン系材料は、安価で、原料のマンガンが資源的に豊富で、環境に対して優しい材料であることから、各種用途に対して有望な材料のひとつである。
【0003】
リチウム二次電池は、理論上、高いエネルギー密度の電池が構成可能であることから、次世代を担う新型二次電池として幅広い分野への適用が進められており、一部で既に実用化されたものも含めて、高性能化を目指した研究が進められている。
【背景技術】
【0004】
パーソナルユースのモバイル機器の普及に伴って、小型、軽量でエネルギー密度の高いリチウム二次電池の開発が強く望まれるようになり、負極にリチウムを吸蔵、放出可能な炭素質材料を用いたリチウムイオン電池が実用化された。
【0005】
現在のリチウムイオン電池の正極材料には、リチウムコバルト酸化物(以下LiCoOと表記)が主に使用されているが、コバルト原料が高価であることから代替材料の開発が望まれている。
【0006】
LiCoOに代わる4V級の起電力を示す正極材料としては、リチウムニッケル酸化物(以下LiNiOと表記)やリチウムマンガンスピネル(以下LiMnと表記)が挙げられるが、資源的に豊富で安価であることや環境への影響が小さいこと、電池にした場合の安全性が確保し易いことなどから、ハイブリッドタイプの電気自動車用の電池や燃料電池の補助電源としての適用に対してはLiMnが最も優れた正極材料と考えられており、適用の検討が鋭意進められ、一部で既に実用化に至っている。
【0007】
ハイブリッドタイプの電気自動車用電池では、自動車が発進する際や加速する際のパワーアシスト性能、および減速時の運動エネルギーの回生性能が重要であり、短時間で大きな電流を出し入れする能力(=ハイレート充放電特性)が要求される。このような要求に対しては、これまで電池構造や電極構造の最適化などによる対応が成されてきたが、更なる電池性能の向上に対しては正極材料自身の改良が重要である。また、LiMnの高温安定性は、LiCoOやLiNiOに比べて劣ることから、この点の改善も重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の目的は、優れたハイレート充放電特性と高温安定性を兼ね備えた新規なリチウムマンガン酸化物とその製造方法を提案し、さらに、この化合物を正極活物質に用いた高出力なリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
LiMnのハイレート充放電特性と高温安定性を同時に向上させることを目的に鋭意検討を行った結果、マンガンの平均酸化数が8/3以上のマンガン化合物と、リチウム化合物と、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の金属材料との混合物を所定の方法で焼成することで、一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、平均粒子径が5〜20μm、BET比表面積が0.6m・g−1以下、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上1400オングストローム以下である新規なスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物が合成可能であり、さらに、これをリチウム二次電池の正極活物質に用いることで、ハイレート充放電特性と高温安定性を兼ね備えたマンガン系リチウム二次電池が構成できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0010】
以下、本願発明を具体的に説明する。
【0011】
一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、スピネル型結晶構造を持つ酸化物である。本発明の化合物は、リチウム,マンガン,金属元素M(ここで、MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素),および酸素で構成され、立方密充填した酸素配列中の四面体位置の8aサイトをリチウムが、八面体位置の16dサイトをマンガンと金属元素M、又はリチウムとマンガン並びに金属元素Mが占有している。リチウム、マンガン、金属元素Mの各サイトの占有率は上記一般式の範囲であればスピネル型結晶構造の酸化物となる。
【0012】
本願発明のリチウムマンガン酸化物は、リチウム、マンガンおよび酸素の各元素以外にNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素を含むことが重要である。これらの元素を含有させることによって高温における安定性が改善される。
【0013】
本願発明のリチウムマンガン酸化物は、平均粒子径が5〜20μmであることが必須である。平均粒子径が5μm未満の場合、高温安定性の低下が顕著になり、加えて電極を作製する際の作業性が悪くなることから好ましくない。また、20μmを越えた場合にではハイレート充放電特性が著しく低下する。
【0014】
本願発明のリチウムマンガン酸化物は、BET比表面積が0.6m・g−1以下であることが必須である。BET比表面積が大きいほど電解液との接触や導電材料との接触が良好になりハイレート充放電性能に対しては有利になるが、高温安定性の低下や電極作製時の作業性が悪くなることからBET比表面積は0.6m・g−1以下が良い。
【0015】
本願発明のリチウムマンガン酸化物は、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上1400オングストローム以下であることが必須である。平均結晶子径が上記範囲であれば、本発明の平均粒子径およびBET比表面積の範囲においても良好なハイレート充放電特性が達成可能となる。
【0016】
スピネル構造を持つリチウムマンガン酸化物では、8aサイトのリチウムが空の16cサイトを介して固相内を拡散することで充放電反応が進む。リチウムイオンの移動のし易さ、即ちハイレート充放電性能は、固相内部のリチウム拡散経路の発達程度に影響を受けることが考えられ、従って、結晶構造の発達したものほどハイレート充放電性能が良好になると考えられる。ハイブリッドタイプの電気自動車用電池用途では、少なくとも5C(電池容量を1/5時間で充電あるいは放電する条件)以上での充放電が必要であり、詳細については不明だが、発明者の検討によれば、Hall方法で求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上1400オングストローム以下で著しいハイレート特性の改善が認められた。なお、平均結晶子径は単位格子の繰り返し発達程度を表わす指標で、この値が大きいものほど結晶が発達していることを表わす。本発明のHallの方法は、例えば、X線回折の手引改定第四版(理学電機株式会社)の75ページ以降に記載されているように、粉末X線回折測定によって得られる各回折ピークの回折位置と、ピークの広がり、すなわち半値幅から平均結晶子径を求める方法である。
【0017】
層状構造のLiCoOやLiNiOでは2次元のリチウム固相内拡散が起こることに対して、スピネル構造では3次元的に発達したリチウムの拡散経路によってリチウムの固相内拡散が起こるためにハイレート特性が優れることは容易に想定されるが、本発明のように、平均粒子径を5〜20μm、BET比表面積を0.6m・g−1以下、平均結晶子径を1000オングストローム以上1400オングストローム以下とすることで、電極作製の容易さとハイレート充放電特性の両方を両立することが初めて可能となる。
【0018】
本願発明のリチウムマンガン酸化物は、マンガンの平均酸化数が8/3以上のマンガン化合物と、リチウム化合物と、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の金属材料との混合物を、最初に500℃以下の温度で焼成を行った後に、500℃を超えて950℃以下の温度で第2の焼成を行い、その後の500℃までの冷却を1時間当たり20℃以下の速度で行うことで合成される。最初に500℃以下の温度で第1の焼成を行うことでマンガン化合物、リチウム化合物および金属元素Mとの複合化反応が均一に進み易くなり、500℃を超えて950℃以下の温度で第2の焼成を行うことによって、結晶構造が充分発達したリチウムマンガン複合酸化物が合成できる。さらに、リチウムマンガン酸化物は高温時に酸素を放出吸収する性質を示すことから、降温過程における酸素の再吸収を考慮して第2の焼成後の冷却を1時間当たり20℃以下の速度で行うことが、組成均一な結晶構造の発達したリチウムマンガン複合酸化物を合成する上で重要である。なお、焼成は大気中もしくは酸素含有量が18%以上の気体気流中で行うことが好ましく、特に、第2の焼成ではこの条件がより好ましい。
【0019】
本願発明のリチウムマンガン酸化物の合成において、マンガンの平均酸化数が8/3以上のマンガン化合物を用いることが重要である。合成に用いるマンガン化合物は、化合物中のマンガンの平均酸化数が8/3以上であればいかなるものを用いても良い。本発明を制限するものではないが、例えば、酸化物としては、各種結晶形態のいわゆる二酸化マンガン、三二酸化マンガン、水和酸化マンガン(MnOOH)、四三酸化マンガンなどの酸化物や、マンガン化合物を500℃以上の温度で熱処理して合成したマンガンの平均酸化数が8/3以上のマンガン酸化物が例示される。詳細については不明だが、これらの中でも、三二酸化マンガンを用いることで、組成の均一な結晶構造が発達したリチウムマンガン複合酸化物の合成が容易になる。
【0020】
合成に用いるリチウム化合物は、マンガンの平均酸化数が8/3以上の化合物と500℃以下の温度で複合化反応が始まる化合物であればいかなるものを用いても良い。本発明を制限するものではないが、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、ヨウ化リチウムなどが例示されるが、混合をより均一に行うためには、平均粒径が10μm以下のリチウム化合物を用いることが好ましい。
【0021】
合成に用いる金属元素Mには、500℃以下の温度でマンガン原料、リチウム原料と複合化反応が始まる化合物であればいかなるものを用いても良い。本発明を制限するものではないが、例えば、Ni、Co、Fe、Cr、Cu,B、Al、Ga、Inの炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物などが例示される。
【0022】
本願発明のリチウム二次電池の負極としては、リチウム金属、リチウム合金、リチウムを予め吸蔵した、リチウムを吸蔵放出可能な化合物を用いることができる。
【0023】
リチウム合金としては、本発明を制限するものではないが、例えば、リチウム/スズ合金、リチウム/アルミニウム合金、リチウム/鉛合金等が例示される。
【0024】
リチウムを吸蔵放出可能な化合物としては、本発明を制限するものではないが、例えば、グラファイトや黒鉛等の炭素材料や、鉄の酸化物、コバルトの酸化物が例示される。
【0025】
また、本願発明のリチウム二次電池の電解質は、特に制限されないが、例えば、炭酸プロレン、炭酸ジエチル等のカーボネート類や、スルホラン、ジメチルスルホキシド等のスルホラン類、γブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド等のエーテル類の少なくとも1種類以上の有機溶媒に、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化リン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸等のリチウム塩の少なくとも1種類以上を溶解したものや、無機系および有機系のリチウムイオン導電性の固体電解質などを用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
マンガンの平均酸化数が8/3以上のマンガン化合物と、リチウム化合物と、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の金属材料との混合物を焼成することで、一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、平均粒子径が5〜20μm、BET比表面積が0.6m・g−1以下、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上である新規なスピネル型結晶構造のリチウムマンガン複合酸化物を合成することが可能となり、これをリチウム二次電池の正極活物質に用いることで、従来の材料では達成することができなかった、ハイレート充放電特性と高温安定性を兼ね備えたマンガン系リチウム二次電池が構成できることを見出した。
【0027】
ハイレート充放電特性の優れるリチウムマンガン複合酸化物を見出したことは、産業上有益な知見である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例及び比較例で構成した電池の実施態様を示す図である。
【実施例】
【0029】
以下に、本願発明の具体例として実施例を示すが、本願発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
【0030】
なお、本願発明の実施例および比較例における粉末X線回折測定、平均結晶子径εの算出は、以下に示す方法で行った。
【0031】
粉末X線回折測定
測定機種 マックサイエンス社製 MXP3
照射 Cu Kα線
測定モード ステップスキャン
スキャン条件 2θとして0.04°
計測時間 5秒
測定範囲 2θとして5°から80°
平均結晶子径の算出
Hallの方法:β・cosθ/λ=2・η・sinθ/λ+1/ε2本以上の回折線のプロファイルを測定して、β・cosθ/λをY軸に、2・η・sinθ/λをX軸にプロットして得られた直線のX軸との切片の値の逆数が平均結晶子径の値εになる。
【0032】
ここで、β:半値幅、λ:測定X線波長、θ:回折線のブラック角ε:結晶子径の平均の大きさ、η:結晶の不均一歪みの値を表わす。
【0033】
なお、BET比表面積は窒素吸着法によって、また、平均粒子径はマイクロトラックによって測定した。
【0034】
[リチウムマンガン複合酸化物の製造]
実施例1(LiMn1.8Al0.2の合成)
実施例1として、LiMn1.8Al0.2を以下の方法によって作成した。
【0035】
炭酸リチウム、水酸化アルミニウムと三二酸化マンガンをモル比でLi:Mn:Al比が1.0:1.8:0.2になるように混合した後に、第1の焼成として、大気中で450℃の温度で12時間焼成を行った。次に、これを室温まで降温した後に、粉砕・混合処理を行った後に、第2の焼成として大気中で800℃の温度で24時間焼成した。粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル構造を持つことが分かった。生成物の化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積を表1に示した。
【0036】
実施例2
(LiMn1.8Ni0.2の合成)
実施例2として、金属元素に水酸化コバルトを用いて、モル比でLi:Mn:Ni比が1.0:1.8:0.2になるように混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を合成した。粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル構造を持つことが分かった。得られた化合物の化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積を表1に示した。
【0037】
実施例3
(LiMn1.9Co0.1の合成)
実施例3として、金属元素に硝酸鉄の9水和物を用いて、モル比でLi:Mn:Fe比が1.0:1.9:0.1になるように混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を合成した。粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル構造を持つことが分かった。化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積を表1に示した。
【0038】
実施例4
(LiMn1.8Cr0.2の合成)
実施例4として、金属元素に三二酸化クロムを用いて、モル比でLi:Mn:Cr比が1.0:1.8:0.2になるように混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を合成した。粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル結晶構造を持つことが分かった。得られた化合物の化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積の値を表1に示した。
【0039】
実施例5
(LiMn1.8Cu0.2の合成)
実施例5として、金属材料に硝酸銅の3水和物を用いて、モル比でLi:Mn:Cu比が1.0:1.8:0.2になるように混合した以外は、実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を合成した。粉末X線回折測定の結果から、粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル結晶構造を持つことが分かった。得られた化合物の化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積の値を表1に示した。
【0040】
比較例1
比較例1として、第2の焼成後の冷却速度を1時間あたり100℃とした以外は、実施例1と同様にしてLiMn1.8Al0.2を合成した。粉末X線回折測定の結果から、得られた化合物はスピネル単相であることが分かった。化学組成分析の結果、εの値、平均粒子径およびBET比表面積の値を表1に示した。
【0041】
[電池の構成]
実施例1〜5及び比較例1で製造したリチウムマンガン複合酸化物を、導電剤のポリテトラフルオロエチレンとアセチレンブラックとの混合物(商品名:TAB−2)を重量比で2:1になるように混合した。混合物の75mgを1ton・cm−2の圧力で、16mmφのメッシュ(SUS 316)上にペレット状に成形した後に、200℃で5時間、減圧乾燥処理を行った。
【0042】
これを、図1の3の正極に用いて、図1の5の負極には、リチウム箔(厚さ0.2mm)から切り抜いたリチウム片を用いて、電解液には、プロピレンカーボネートと炭酸ジメチルの体積比1:2の混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol・dm−3の濃度に溶解した有機電解液を図1の4のセパレータに含浸させて、断面積2cmの図1に示した電池を構成した。
【0043】
[レート特性の評価]
上記方法で作成した電池を用いて、はじめに0.4mA・cm−2の一定電流で、電池電圧が4.5Vから3.5Vの間で5サイクル充放電を繰り返した。次に、0.4mA・cm−2の一定電流で電池電圧が4.5Vになるまで充電を行った後、5mA・cm−2の一定電流で3.5Vまで放電を行った。表1に、5サイクル目の0.4mA・cm−2での放電容量に対する5mA・cm−2での放電容量の割合、すなわち容量維持率を示した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜5で合成したリチウムマンガン酸化物は、いずれも95%程度の高い容量維持率を示した。一方、比較例で合成したリチウムマンガン複合酸化物の容量維持率は、90%であった。
【符号の説明】
【0046】
1:正極リード線
2:正極集電用メッシュ
3:正極
4:セパレータ
5:負極
6:負極集電用メッシュ
7:負極用リード線
8:容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Li1+XMn2−Y−Z4+δ(式中MはNi、Co、Fe、Cr、Cu、B、Al、Ga、Inから選ばれる少なくとも一種類以上の元素であり、0≦X≦1/3,0≦Y≦1/3,0<Z≦0.25,−0.14≦δ≦0.5)で表され、平均粒子径が5〜20μm、BET比表面積が0.6m・g−1以下であり、且つ、Hallの方法から求めた平均結晶子径が1000オングストローム以上1400オングストローム以下であることを特徴とするスピネル型結晶構造からなるリチウムマンガン複合酸化物。
【請求項2】
リチウム、リチウム合金及びリチウムを吸蔵放出可能な化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の物質を負極に、非水電解質を電解質に、請求項1のリチウムマンガン複合酸化物を正極に用いたリチウム二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36085(P2012−36085A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205225(P2011−205225)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2001−19023(P2001−19023)の分割
【原出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】