説明

新規化合物およびその用途

【課題】周知のポルフィリンを主成分とした光力学的治療剤の利用には、それがほ乳類の宿主の組織細胞に及ぼす毒性の故に限度がある。すなわち、その化合物は標的の微生物の細胞と宿主の細胞とを区別することができない。さらに、周知のポルフィリンを主成分とした光力学的治療剤の利用は、標的の微生物細胞に対するそのかなり低い有効性により限度がある。
【解決手段】式(I)の化合物:式中X、X、X、X、Y、Y、Y、Y、Zが明細書に記載の意味を有する化合物および、このような化合物の金属化された形であって、光力学的化合物が指示される医療条件の治療に有用である。光力学的薬剤が指示される医療条件の治療用製薬調合剤および治療方法も開示されている。本発明の化合物を含有する殺菌用溶液およびその用途も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物とその用途に関するものであり、光力学的化合物が表示され、医学的徴候の治療、特に微生物の住みつきや感染の治療または予防処置に関して述べられる。
【背景技術】
【0002】
増え続ける微生物に関して発展した抗生物質に対する耐性は、世界的な健康問題であると認められている(タンジャーら、2000年,インターナショナル・ジャーナル・オブ・マイクロビアル・エイジェンツ15:131−135;ジョーゲンセンら、2000年,クリニカル・インフェクション・ディシーズ、30:799−808(Tunger et al., 2000, Int. J. Microb. Agents 15:131−135; Jorgensen et al., 2000, Clin. Infect. Dis. 30:799−808))。従って、抗生物質で治療できない感染を制御し、抗生物質に耐性を有する菌株が増え続けていくことを制限するために、非抗生物質による微生物を殺す手段の開発が緊急に必要とされている。
【0003】
光力学的療法(PDT)による微生物感染の治療は、ほとんどの抗生物質の典型的なものとは著しく異なるメカニズムを含んでおり、細菌を根絶させる方法として抗生物質に取って代わる価値あるものであることを示している。そのようなわけで、光力学的療法は、いったん光により活性化された後、細菌、マイコプラズマ、イーストを含む様々な種類の細胞核のない細胞や有核細胞に対する毒性を有する酸素反応性種を発生させる感光性分子の使用を基本としている(マリクら、1990,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカル・B・バイオロジイ5:281−293;バートリニら、1992,マイクロバイオス71:33−46(Malik et al., 1990, J. Photochem. Photobiol. B Biol. 5:281−293; Bertoloni et al., 1992, Microbios 71:33−46))。重要なことは、細菌に対する多くの光力学的薬剤の光増感活性は抗生物質に対する耐性によって損なわれることはないが、かわりに、主としてその化学的構造により左右されることである。(マリクら著、1992年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカル・B・バイオロジイ、14:262−266)。
【0004】
様々な種類の中性および陰性の光増感剤は、グラム陽性菌に対し明白な光毒性活性を示す。しかし、このような光増感剤は、グラム陰性菌の外側の膜の透過性がエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはポリカチオンの処理で変性されないと、グラム陰性菌に対して評価できるほどの細胞毒性活性を及ぼさない(ベルトロニら著、1990年,FEMSマイクロバイオロジイ・レターズ、71:149−156;ニッツァンら著、1992年,フォトケミカル・フォトバイオロジイ、55:89−87)。グラム陰性菌の細胞外皮はグラム陽性菌より複雑で厚みがあるので、光増感剤の効果的な結合を妨げ、あるいは光増感剤で光を発生した細胞毒性反応性種を妨害し、不活化する、と思われる(エーレンベルクら著、1985年,フォトケミカル・フォトバイオロジイ、41:429−435;ヴァルデュガら著、1993年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、21:81−86)。
【0005】
一方、ポルフィリンおよびフタロシアニンなどの陽電荷(カチオン)光増感剤は、細胞外皮の自然の構造を変性させる必要もなく、グラム陰性菌を効果的に不活性化促進する。(マーチャントら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、32:153−157;ミンノックら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、32:159−164)。陽電荷は、一旦光に曝されて損傷を受けると、細胞の生存力を消失させる決定的な細胞部位に光増感剤を結合させることを好むようである(マーチャントら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、35:149−157)。
【0006】
従って、大腸菌はカチオンの5,10,15,20−テロラキス−(4−N−メチルピリジル)−ポルフィン(TMPyP)で培養した後、可視光線により効果的に不活性化されることが報告されている(ヴァルデュガら著、1999年,バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニティ、256:84−88(Valduga et al., 1999, Biochem. Biophys. Res. Commun. 256:84−88))。このポルフィリンの光毒性活性は、DNAに結合することよりも、むしろ外皮と細胞質膜の両方の酵素機能および透過機能を損傷することにより主として媒介される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】タンジャーら、2000年,インターナショナル・ジャーナル・オブ・マイクロビアル・エイジェンツ15:131−135;ジョーゲンセンら、2000年,クリニカル・インフェクション・ディシーズ、30:799−808
【非特許文献2】マリクら、1990,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカル・B・バイオロジイ5:281−293;バートリニら、1992,マイクロバイオス71:33−46
【非特許文献3】マリクら著、1992年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカル・B・バイオロジイ、14:262−266
【非特許文献4】ベルトロニら著、1990年,FEMSマイクロバイオロジイ・レターズ、71:149−156;ニッツァンら著、1992年,フォトケミカル・フォトバイオロジイ、55:89−87
【非特許文献5】エーレンベルクら著、1985年,フォトケミカル・フォトバイオロジイ、41:429−435;ヴァルデュガら著、1993年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、21:81−86
【非特許文献6】マーチャントら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、32:153−157
【非特許文献7】ミンノックら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、32:159−164
【非特許文献8】マーチャントら著、1996年,ジャーナル・オブ・フォトケミカル・フォトバイオロジカルB.バイオロジイ、35:149−157
【非特許文献9】ヴァルデュガら著、1999年,バイオケミカル・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニティ、256:84−88
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、周知のポルフィリンを主成分とした光力学的治療剤の利用には、それがほ乳類の宿主の組織細胞に及ぼす毒性の故に限度がある。すなわち、その化合物は標的の微生物の細胞と宿主の細胞とを区別することができない。さらに、周知のポルフィリンを主成分とした光力学的治療剤の利用は、標的の微生物細胞に対するそのかなり低い有効性により限度がある。
【0009】
従って、ポルフィリンを主成分とした化合物は、毒性のプロフィールを改善してその有効性を高める必要があり、そうすれば優先的に微生物の細胞を殺すために光力学的療法で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一態様により、下記式Iの化合物が提供される:
【化1】

【0011】
式中X、X、X、およびXは、別個に(すなわち、同じかまたは異なる)、水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基、または下記式のカチオン基を表す:
【0012】
−L−R−N(R)(R)R
【0013】
式中Lは結合部分であるかまたは存在しない;
は低級アルキレン、低級アルケニレン、または低級アルキニレンを表し、低級アルキル、低級アルキレン(任意に、酸素で中断される)、フルオロ、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;
【0014】
、R、およびRは、別個に(すなわち、同じまたは異なる)、H、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、低級アルキレン(任意に酸素で中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;
【0015】
Zは−CHまたはNであり;
【0016】
、Y、Y、およびYは、欠けているかまたは別個に、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、低級アルキレン(任意に酸素で中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;
【0017】
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、別個に、Hまたは低級アルキルを表すが、
【0018】
ただし、X、X、X、およびXの少なくとも1個は上記に定義されたカチオン基であり、X、X、X、およびXの少なくとも1個は、水素原子、フェニル基、親油性部分、または低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】皮膚の構造の略図である。
【図2】(A)黄色ブドウ状球菌BAA−44細胞および(B)大腸菌ATCC25922細胞を、濃度3μMの試験化合物で5分間予備培養した後で白光(150mW/cm)を30分照射した場合と0照射(照射無し)の場合の成長阻害(%)を示す。
【図3】(A)黄色ブドウ状球菌BAA−44細胞および(B)大腸菌ATCC25922細胞を、濃度0.1μMの試験化合物で培養し、光を照射した(‘光毒性’、すなわち光力学的活性)または照射しない(‘光なし毒性’)場合の細菌の生存(細胞数)を示す。
【図4】黄色ブドウ状球菌BAA−44細胞に対する(A)‘化合物8’および(B)‘化合物10’の、様々な投与量における光力学的活性(空白の棒グラフ)および光無しの毒性(斜線付き棒グラフ)を示す。
【図5】化合物10で培養され、光源(236、ワルドマン)を使って照射した場合と照射しなかった場合のヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)に対するアジ化ナトリウム(50mM)とD2Oの影響を示す。三角形/連続線:化合物10+PBS緩衝液+光;正方形/連続線:化合物10+DO+光;円/連続線:化合物10+アジ化ナトリウム+光;三角形/点線:化合物10+PBS緩衝液w/o光;正方形/点線:化合物10+DO w/o光;円/点線:化合物10+アジ化ナトリウムw/o光(n=3,平均±Std)。
【図6】化合物10で繰り返し処理された後、黄色ブドウ状球菌BAA−44による耐性増強がないことを示す。データは95%信頼限界誤差棒グラフで平均として示される。
【図7】化合物10で光力学的療法に9回曝されたクローンと特定の処置を受けていない未処置のクローンとの生存の比較を示す。
【図8】ヒト繊維芽細胞(斜線の棒グラフ)と黄色ブドウ状球菌BAA−44細胞(空白の棒グラフ)に対する様々な投与量の‘化合物8’の毒性を示す。
【図9】236光源(ワルドマン)の寸法の図面である。
【図10】(A)15mW/cmおよび(B)150mW/cmの、青い光で何回も照射された10μM化合物10の光漂白を示す。
【図11】(A)固体として、(B)水で、(C)PBSで、調製された化合物10の化学安定性を示す。
【図12】21日間PBS緩衝液に浸けた化合物10の安定性(高速液体クロマトグラフィにより測定された)の3Dプロットを示す。
【図13】(A)化合物1、(B)化合物8、(C)化合物12、(D)化合物10の、様々な調合物の8週間に亘る安定性を示す。
【図14】(A)化合物10と(B)化合物8の、様々な調合物の17週間に亘る延長された安定性を示す。
【図15】(A)リゾゾーム特定染料リゾトラッカー・グリーン(緑色)および(B)ミトコンドリア特定染料ローダミンG6(赤色)で、共同染色した後、培養された正常ヒト線維芽細胞(NHDF)の細胞間の蛍光分布を示す。
【図16】(A)ミトコンドリア特定染料ローダミンG6および(B)リゾゾーム特定染料リゾトラッカー・グリーンで、共同染色した後、1μMの化合物10で1時間培養した正常ヒト線維芽細胞の細胞間蛍光分布を示す。化合物10蛍光は核外部に局在化しており、ミトコンドリア特定染料ローダミンG6での共同染色は化合物10の共同局在化とミトコンドリアの蛍光をもたらした。共同局在化は黄色の蛍光に合併されている。リゾゾーム特定染料リゾトラッカー・グリーンでの共同染色は化合物10(赤色)とリゾゾーム蛍光(緑色)の異なる局在化をもたらした(図16B)。共同局在化は黄色の蛍光により表される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
“低級アルキル”という用語は線状のまたは分枝の、環状または非環状のC−C20アルキルを包含するものとし、酸素により中断されてもよい(好ましくは、5個よりは多くない酸素原子が各アルキル鎖中に存在する)。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14が表す低級アルキル基としては、C−C18アルキル、C−C16アルキル、C−C14アルキル、C−C12アルキル、C−C10アルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、C−Cアルキル、およびC−Cアルキルが挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11が表す好ましい低級アルキル基としては、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、C14、C15、およびC16のアルキルが挙げられる。
【0021】
従って、RからR14まで(または、XからX)のどれでも1個以上が、例えば、
【化2】

の環式アミン/アンモニウム基を表す。
【0022】
環式アミン/アンモニウム基は、また、6員より少ないかまたは多い数から成り、例えば、このような部類としては4員環、5員環、7員環、8員環、9員環または10員環が含まれる。
【0023】
“低級アルキレン”という用語は同様に解釈されるべきである。
【0024】
“低級アルケニル”と“低級アルキニル”という用語はそれぞれ、線状のまたは分枝の、環状または非環状の、C−C20アルケニルとアルキニルを包含するものとし、それぞれが酸素により中断されてもよい(好ましくは5個よりは多くない酸素原子が各アルケニルまたはアルキニル鎖中に存在する)。
【0025】
“低級アルケニル”という用語はまた、シス形態とトランス形態の両方の異性体を包含する。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14が表す低級アルケニル基としては、C−C18アルケニル、C−C17アルケニル、C−C16アルケニル、C−C14アルケニル、C−C12アルケニル、C−C10アルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、C−Cアルケニル、およびC−Cアルケニルが挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11が表す好ましい低級アルケニル基としては、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、およびC14のアルケニルが挙げられる。
【0026】
“低級アルケニレン”という用語は同様に解釈されるべきである。
【0027】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14が表す“低級アルキニル”基としては、C−C18アルキニル、C−C16アルキニル、C−C14アルキニル、C−C12アルキニル、C−C10アルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキニル、およびC−Cアルキニルが挙げられる。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、およびR11が表す好ましい低級アルキニル基としては、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、C12、C13、およびC14のアルキニルが挙げられる。
【0028】
“低級アルキニレン”という用語は同様に解釈されるべきである。
【0029】
“アリール”という用語は、6員から10員までの炭環式芳香族基を包含し、例えばフェニル基やナフチル基が挙げられ、それらの基はフルオロ、シアノ、ニトロ、低級アルキル(すなわち、アルカリール)、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される。
【0030】
“アラルキル”という用語は、低級アルキル基によりポルフィリン環に結合されたアリール基を包含する。
【0031】
本発明の第二の態様は下記式IIの化合物を提供する:
【化3】

【0032】
式中Mは金属成分または半金属成分であり、X、X、X、X、Y、Y、Y、Y、およびZは上記定義と同じである。
【0033】
“金属成分”という用語は二価または三価の金属成分を包含するものとする。好ましくは、金属成分は反磁性である。更に好ましくは、金属成分は、Zn(II)、Cu(II)、La(III)、Lu(III)、Y(III)、In(III)、Cd(II)、Mg(II)、Al(III)、Ru、Ni(II)、Mn(III)、Fe(III)、およびPd(II)から選ばれる。最も好ましくは、金属成分はNi(II)、Mn(III)、Fe(III)またはPd(II)である。
【0034】
“半金属”という用語は、例えば電気を伝導する能力などの金属と非金属の両方の特性の中間の物理的および化学的特性を有する成分を包含するものとする。半金属成分という用語は任意に1つ以上の配位子と置換されるシリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)原子を包含する。
【0035】
金属成分および半金属成分という用語は、陽性酸化状態を有する金属成分または半金属成分を包含し、その全てがフルオロ、OH、OR15、ここで、R15は上記で定義されたとおり低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アラルキル、アリールまたはアルカリールである、から選ばれる1個以上の配位子により置換されてもよい(アリールとアルカリ−ルはモノ置換される)。
【0036】
式Iと式IIの化合物は少なくとも1個のカチオン基を含有する。従って、本発明の化合物は正味の陽電荷、例えば+1、+2、+3、+4、+5、+6以上の電荷を運ぶ。好ましい実施態様では、化合物は+4未満、例えば+1、+2、または+3の正味電荷を運ぶ。特に好ましい実施態様では、化合物は+2の正味電荷を運ぶ。
【0037】
式IとIIの化合物は対アニオンにより釣り合っているかもしれないことは、当該技術に精通した者なら十分理解できるであろう。対アニオンの例として、ハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物)、硫酸塩(例えば、硫酸デシル)、硝酸塩、過塩素酸塩、スルフォン酸塩(例えば、スルフォン酸メタン)、およびトリフルオロ酢酸塩が挙げられるが、それに限定されるものではない。他の好適な対アニオンは当該技術に精通した者にとって周知であろう。従って、式IとIIの化合物が製薬用および/または獣医学用に認められる誘導体、例えば塩類および溶剤なども本発明の範囲内に含まれる。前述の塩類としては、酸添加塩類、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、燐酸などの無機酸、カルボン酸または有機スルフォン酸を用いて形成された塩類;塩基添加塩類;塩基を用いて形成された金属塩類、例えばナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。
【0038】
式Iの化合物は互変異性を示すかもしれないことは、当該技術に精通した者なら更に十分理解できるであろう。全ての互変異性形およびその混合物は本発明の範囲内に包含される。
【0039】
式IとIIの化合物はまた1個以上の非対称的炭素原子を含有してもよく、従って光学的および/またはジアステレオ異性体(偏左右異性体)を示すかもしれない。ジアステレオ異性体は、従来の技術、例えばクロマトグラフィまたは分別結晶作用により分離されてもよい。様々な立体異性体が、例えば分別結晶作用またはHPLCなどの従来の技術を用いて化合物のラセミ混合物または他の混合物の分離により単離されてもよい。さもなければ、所望の光学異性体がラセミ化またはエピマー化を引き起こさない条件下で適切な光学活性出発材料を反応させることにより、あるいは例えばホモカイラル酸で誘導化し、その後で従来の方法(例えば、HPLC、シリカ上のクロマトグラフィ)で偏左右異性体エステルの分離により作成されてもよい。全ての立体異性体は本発明の範囲内に包含される。
【0040】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の好ましい実施態様において、Zは−CHである。
【0041】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の特徴は、置換基X、X、X、及びXの少なくとも1つが、上記に定義したように、式−L−R−N(R)(R)Rの第四級アンモニウムカチオン基であることである。好ましくは、X、X、X、及びXはいずれもアニリニウムまたはピリジニウムのカチオン基ではない。
【0042】
好ましい実施態様では、Rは置換されない低級アルキレン基、低級アルケニレン基または低級アルキニレン基である。
【0043】
は式:
−(CH
で表される直鎖低級アルキレン基であると有利である。
【0044】
好ましくは、‘m’は1から20までの整数である。更に好ましくは、‘m’は1から10まで、例えば、1から6まで、1から5まで、1から4まで、あるいは1から3までの整数である。Rが表す好ましい直鎖低級アルキレン基としては、上記式のmが2、3、4、5、6、7、8、9または10である場合の基が挙げられる。最も好ましくは、‘m’が2または3である。
【0045】
第四級アンモニウム部分の残りの3個の置換基、すなわちR、R、およびRは同じでも異なってもよく、H、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルから選ばれ、そのうちの後者の3個は低級アルキル、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される。
【0046】
好ましい実施態様では、R、R、および/またはRは低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基である。
【0047】
好ましくは、R、R、および/またはRは置換されない低級アルキル基である。
【0048】
任意に、R、R、およびRの少なくとも1個はアルキル基であり、第一級、第二級または第三級のアミン基、または第四級アンモニウム基で置換される。
【0049】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の好ましい実施態様は、Rが−(CH−であり、RおよびRがCHであり、Rが(CH−N(CHである。
【0050】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の代わりとなる好ましい実施態様は、Rが−(CH−であり、R、R、およびRがそれぞれCHである。
【0051】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の別の代わりとなる好ましい実施態様は、Rが−(CH−であり、R、R、およびRがそれぞれCである。
【0052】
有利には、X、X、X、およびXの少なくとも1つは上記定義の通りカチオン基であり、X、X、X、およびXの少なくとも一つは水素原子である。
【0053】
好ましくは、X、X、X、およびXのそれぞれが水素原子または上記定義の通りのカチオン基である。
【0054】
好都合なことに、第一級、第二級または第三級のアミン基いずれかが本発明の化合物中に含まれているなら、そのpK値が8以上であると、生理的環境にある場合にその基は陽子を加えられることが確かである。
【0055】
第四級アンモニウムカチオン基は任意に連結部分Lによりポルフィリン環に連結される。
【0056】
好ましい連結部分Lとしては、フェノキシ、フェニレン、スルフォニルアミド、アミノスルフォニル、スルフォニルイミノ、フェニルスルフォニルアミド、フェニルアミノスルフォニル、尿素、ウレタンおよびカーバメイト連結部分が挙げられる。
【0057】
好ましい実施態様では、第四級アンモニウムカチオン基がフェノキシ連結子によりポルフィリン環に結合される。
【0058】
従って、X、X、X、および/またはXは下記の式を有する:
【化4】

【0059】
式中Rは上記に定義されたとおりR−N(R)(R)Rであり、‘n’は1〜3の整数である。
【0060】
別の好ましい実施態様では、第四級アンモニウムカチオン基はフェニレン連結子によりポルフィリン環に結合される。
【0061】
従って、X、X、X、および/またはXは下記式を有する:
【化5】

【0062】
式中Rは上記に定義されたとおりR−N(R)(R)Rであり、‘m’は1〜3の整数である。
【0063】
好ましくは、‘m’は2であり、最も好ましくは1である。
【0064】
代わりの好ましい実施態様では、X、X、X、および/またはXは下記の式を有する:
【化6】

【0065】
式中Rは上記に定義されたとおりR−N(R)(R)Rであり、‘n’と‘m’は上記定義の通りであり、‘n+m’は1〜3の整数である。
【0066】
有利には、Lはパラ位置でモノ置換されたベンゼン環(例えば、フェノキシ、フェニレン、フェニルスルフォニルアミドまたはフェニルアミノ−スルフォニル)から成る。さもなければ、Lはメタ位置あるいはオルト位置でモノ置換またはジ置換されてよい。Lはまたパラ置換およびオルト置換の両方でもよい。
【0067】
代わりの好ましい実施態様では、第四級アンモニウムカチオン基はポルフィリン環に直接結合される、すなわちLは欠けることになる。
【0068】
本発明の第一態様と第二態様の好ましい実施態様では、化合物はポルフィリン環の反対側に、すなわち環の位置5と15、あるいは環の位置10と20で、上記定義されたとおりに2つのカチオン基を有する。例えば、XとXは水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基であり、XとXはカチオン基である、あるいはその逆でもよい。好ましくは、XとXは両方とも水素原子であり、XとXは両方ともカチオン基である、あるいはその逆でもよい。
【0069】
さもなければ、本発明の化合物はポルフィリン環の隣の位置、すなわち環の位置5と10、または環の位置10と15、または環の位置15と20、または環の位置20と5で、上記定義の通り、2つのカチオン基を有してもよい。例えば、XとXが水素で、XとXがカチオン基でもよい、またはXとXが水素で、XとXがカチオン基などでもよい。
【0070】
Zが窒素を表すとき、別の異性体構造の可能性が発生することは、当該技術に精通した者には容易に理解できる。このような可能性は本発明の範囲内に包含される。
【0071】
本発明の第一態様と第二態様の化合物のさらに好ましい実施態様は、化合物がその構成成分ピッロール環の1つ以上において置換される。従って、Y、Y、Y、およびYは、欠けている、あるいは別個に、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、そのうちの後者の3個は低級アルキル、低級アルキレン(任意に酸素で中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される。Y、Y、Y、および/またはYは環式基からなり、飽和されてもよいし芳香族でもよいことは、当該技術に精通した者には十分理解されるであろう。例えば、ピッロール環の1個以上は置換されてイソ−インドール基を形成してよい、すなわちY、Y、Y、および/またはYは、それらが結びつくピッロール環と共に環状でもよい。
【0072】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の代わりの好ましい実施態様では、Y、Y、Y、およびYは欠けている。従って、ポルフィリン環は好ましくは5、10、15、または20の位置の1個以上の位置だけで置換される。
【0073】
本発明の第一態様と第二態様の化合物の更に好ましい実施態様では、X、X、X、およびXの少なくとも1個が親油性部分である、または親油性部分を包含する。
【0074】
“親油性部分”に関しては、1−n−オクタノールと水の間の分割係数が、25℃のとき生理的pHで1.0以上の対数Pで表される部分を包含する。
【0075】
好都合なことには、親油性部分は式−(CHCHの飽和された直鎖アルキル基であるか、または式−(CH−の当量のアルキレン基であり、式中‘p’は1〜22、例えば、1〜18の整数である。好ましくは、‘p’が1〜18、更に好ましくは2〜16、4〜16、6〜18、8〜16、または4〜12である。最も好ましくは、‘p’は10〜12である。
【0076】
、X、X、および/またはXは上記に定義されたとおりカチオン基でもよく、また親油性部分を含有することは理解される。
【0077】
本発明の第一態様と第二態様の代わりの好ましい実施態様では、X、X、X、およびXのいずれも親油性部分ではない。
【0078】
有利には、本発明の化合物は水溶性である。好ましくは、化合物は水に溶解されて少なくとも5μg/Lの濃度、例えば少なくとも10μg/Lの濃度、15μg/Lの濃度、または20μg/Lの濃度にしてよい。更に好ましくは、化合物は水に溶解されて少なくとも100μg/Lの濃度、例えば、200μg/Lの濃度、300μg/Lの濃度、400μg/Lの濃度、500μg/Lの濃度、1mg/mlの濃度、5mg/mlの濃度、10mg/Lの濃度、20mg/mlの濃度、50mg/mlの濃度、50mg/mlの濃度または100mg/mlの濃度にしてよい。
【0079】
好都合なことに、本発明の化合物は、活性化の照射/放射がない場合よりも照射/放射に曝された場合に標的の微生物(すなわち、細菌)に対する毒性が増加することを示している。すなわち、暗がりでの毒性より光力学的活性(“光毒性”)が増大することを示している(下記参照)。このような毒性は細胞培養を使って測定してもよいことは理解されよう。好ましくは、化合物の光力学的活性はその化合物の暗がり毒性より少なくとも2倍増大し、更に好ましくは少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、あるいは少なくとも20倍に増大する。最も好ましくは、本発明の化合物は照射/放射がない場合は実質的に非毒性である。
【0080】
好ましい実施態様では、本発明の化合物は標的の微生物(例えば、細菌の細胞)に対して低投与量で毒性を示す。好ましくは、該化合物は10μM未満の濃度、例えば、1μM未満、0.1μM未満、0.01μM未満、0.005μM未満、または0.001μM未満の濃度で標的の微生物に対して毒性を示す(実施例B参照)。
【0081】
本発明の好ましい化合物としては、下記のものが挙げられる:
【0082】
(a)5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピロキシ}−フェニル)−二塩化ポルフィリン(“化合物8”)
【化7】

【0083】
好ましくは、この化合物は二塩化塩または三塩化塩として提供される。
【0084】
(b)5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−二塩化ポルフィリン(“化合物9”);
【化8】

【0085】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0086】
(c)5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−二塩化ポルフィリン(“化合物12”);
【化9】

【0087】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0088】
(d)5,15−ビス−(4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル)−二塩化ポルフィリン(“化合物10”);
【化10】

【0089】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0090】
(e)5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−二塩化ポルフィリン(“化合物6”);
【化11】

【0091】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0092】
(f)5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−塩化ポルフィリン(“化合物23“);
【化12】

【0093】
好ましくは、この化合物は塩化物塩または二塩化塩として提供される。
【0094】
(g)3−[({3−[3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−三塩化アンモニウム(“化合物25”);
【化13】

【0095】
好ましくは、この化合物は三塩化塩として提供される。
【0096】
(h)5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−二塩化ポルフィリン(“化合物28”);
【化14】

【0097】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0098】
(i)5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−二塩化ポルフィリン(“化合物31”);
【化15】

【0099】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0100】
(j)5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−二塩化ポルフィリン(“化合物32”)。
【化16】

【0101】
好ましくは、この化合物は二塩化塩として提供される。
【0102】
上記化合物は代わりになるべきものとして金属化された形でもよい、すなわちポルフィリン環の内部にキレート化金属成分または半金属成分を含有してもよい。
【0103】
本発明の第三態様は選択的光力学的治療剤として使用する、すなわち選択的に微生物を殺すために使用する化合物を提供するが、その化合物は本発明の第一態様または第二態様に準じる化合物である。
【0104】
“選択的”という意味は、光力学的治療剤が、ほ乳類、例えばヒトなどの宿主の細胞に対するより1種類以上の微生物(例えば、細菌、マイコプラズマ、イースト、菌類および/またはウイルスなど)に対して優先的に毒性を示すことを意味する。好ましくは、標的の微生物に対する化合物の毒性がほ乳類の細胞(例えば、人の皮膚細胞)に対するその化合物の毒性より少なくとも2倍強い、更に好ましくは少なくとも3倍強い、少なくとも4倍強い、少なくとも5倍強い、少なくとも6倍強い、少なくとも8倍強い、少なくとも10倍強い、少なくとも15倍強い、または少なくとも20倍強いのが好ましい。最も好ましくは、発明の化合物がほ乳類の細胞に対して実質的に非毒性であることである。
【0105】
このように、本発明の化合物を細菌感染を治療するために使用する場合、例えば、投与量は健康な宿主の組織(例えば、皮膚の細胞)に与える損傷は最小限で、細菌の細胞は破壊されるように選択することができる。従って、光力学的治療剤は好ましくは‘治療の窓口’を示す。
【0106】
本発明の第四の態様は本発明の第一または第二態様による化合物を製薬的または獣医学的に認められる補助剤、希釈剤、または担体と混合してなる製薬調合剤を提供する。
【0107】
本発明の化合物は、使用される化合物の効能/毒性および使用される指示次第で、様々な濃度で調合することができる。好ましくは、調合剤が含有する本発明の化合物の濃度は0.1μM〜1mM,更に好ましくは1μM〜100μM、5μM〜50μM、10μM〜50μM、20μM〜40μM、最も好ましくは約30μMである。生体外の適用では、調合剤は本発明の化合物を低濃度で、例えば0.0025μM〜1μMの範囲内で含有してよい。
【0108】
当該技術に精通した者なら、本発明の化合物が一般的に意図する投与方法や標準的な製薬の実際に関して選択された適切な製薬用賦形剤、希釈剤あるいは担体と混合して投与されることは十分理解されよう(例えば、レミントン著:“薬学の科学と実際”、19版、1995年、編集アルフォンソ・ジェンナロ、マック出版会社、ペンシルヴァニア州、アメリカ合衆国を参照せよ)。
【0109】
例えば、局所的に皮膚または傷口に塗布するために、本発明の化合物はローション、溶液、クリーム、ゲル、軟膏、または粉剤などの形で投与できる(例えば、レミントン著、同上、1586〜1597頁を参照せよ)。従って、本発明の化合物は、例えば、1種類以上の下記のもの:鉱油、液体ペトロラタム、白色ペトロラタム、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン化合物、ワックスと水の乳化剤などの混合物に活性化合物を懸濁または溶解したものを含有する適切な軟膏として調製できる。さもなければ、例えば、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール、液体パラフィン、ポリソルベート60,セチルエステルワックス、e−ラウリルスルフェート、アルコール(例えば、エタノール、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールなど)および水のうちの1種類以上の混合物にそれらを懸濁または溶解した好適なローションまたはクリームとして調製できる。
【0110】
好ましい実施態様においては、調製剤(例えば、ローション、溶液、クリーム、ゲル、または軟膏)は水を主成分としている。
【0111】
口内の局所的投与に適する調製剤としては、更に、通常はスクロースやアカシアまたはトラガカントなどの香味料基剤に活性成分を加えてなるトローチ;例えばゼラチンやグリセリン、またはスクロースやアカシアなどの不活性基剤に活性成分を加えてなる錠剤;適当な液体担体に活性成分を加えてなる口腔洗浄剤などが挙げられる。
【0112】
本発明の化合物はまた鼻腔内に投与あるいは吸入により投与でき、圧縮容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーから、適切な推進薬、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンなど、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134A)または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA227EA)などのハイドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適当なガスなどを使って乾燥粉末吸入器またはエアゾールスプレー噴霧器の形で射出されると便利である。圧縮されたエアゾールの場合は、投薬量単位は計量された量を射出するバルブを提供することにより測定されてもよい。圧縮された容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、例えば溶剤としてエタノールと推進薬の混合物を用いて、活性化合物の溶液または懸濁液を含有してもよいが、さらにソルビタン・トリオリエートなどの潤滑剤を含有してもよい。吸入器または吹き込み器で使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えばゼラチン製)が調製され、本発明の化合物と例えばラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有してもよい。
【0113】
エアゾールまたは乾燥粉末調製物は、患者に投与されるために計量された各投薬量または各ひと吹きの量に本発明の化合物の少なくとも1mgが含有されるように配合されるのが好ましい。エアゾールで投薬される全投与量は患者ごとに指示ごとに変わり、1回の投薬量で投与されてもよいし、更に通常は一日を通して分けて投薬してもよい。
【0114】
さもなければ、当該技術で周知の従来からある他の投与方法を用いてもよい。例えば、本発明の化合物は経口的に、口内から、または舌下から錠剤、カプセル、小卵、エリキシル、溶液または懸濁液の形で投与されてもよく、即時放出用、放出を遅らせる用、あるいは放出をコントロールする用に香味料または着色料を含有させてもよい。本発明の化合物はまた眼球内に(以下参照)、耳の中に、または鼻腔中に注射することにより投与されてもよい。
【0115】
本発明の化合物はまた非経口的に投与されてもよく、例えば静脈注射、動脈注射、腹膜内注射、包膜内注射、心室内注射、胸骨内注射、頭蓋内注射、筋肉内注射、または皮下注射(細い注射を複数配列したものまたは針を使わないパウダージェクト(Powderject(登録商標))技術を用いることも含む)が挙げられる。あるいは点滴の方法によって投与してもよい。血液と等浸透圧の溶液を作るために充分な塩類またはグルコースなど他の物質を含有する無菌の水溶液の形で使用されるのが最も良い。その水溶液は必要ならば適切に緩衝剤で処理されるべきである(好ましくは、3〜9のpHに調整される)。無菌の状態の適切な非経口調合物の調製は当該技術に精通した者に周知の標準的製薬技法により簡単に達成される。
【0116】
非経口的投与に適する調合物としては、調合物を受けようとする人の血液と等浸透圧にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、溶質を含有する水溶性および非水溶性無菌注射溶液;および懸濁剤や濃厚化剤を含む水溶性および非水溶性無菌懸濁液が挙げられる。この調合物は単位投与量または多投与量の容器、例えば、密封されたアンプルおよび小瓶で与えられてもよいし、例えば注射用の水など無菌の液体担体を使用直前に加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席の注射溶液および懸濁液が先に述べた種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
【0117】
本発明の化合物は特に眼病を治療するために目から投与されてもよい。眼に使用するために、本発明の化合物は等浸透圧のpH調整された無菌の食塩水に微粉懸濁液として、あるいは好ましくは等浸透圧のpH調整された無菌食塩水の溶液として、任意に例えば塩化ベンジルアルコニウムなどの保存料と組み合わせて調製することができる。さもなければ、ペトロラタムなどの軟膏に調製されてもよい。
【0118】
獣医学用には、本発明の化合物は正常な獣医学的実際に従って適切に受け入れられる調合物として投与され、獣医学外科医は特別な動物に最も適した投与量と投与方法を決定する。
【0119】
本発明の化合物および/または調合物は当該技術で周知の適当な容器または器に保存してもよい。当該技術に精通した者なら、容器または器は好ましくは気密性であり、および/または滅菌されているべきであることは理解されるであろう。有利には、容器または器は、例えばポリエチレンなどのプラスチック材料から作られる。
【0120】
本発明の第五態様は、薬剤で使用するために、特に細菌感染の治療および/または予防処置で使用するために、本発明の第一態様または第二態様による化合物を提供する。
【0121】
本発明の化合物は、酸素の存在下で適当な波長の光(例えば一般的に400nmから800nmまで、下記参照)を用いて照射/放射した後、単一の酸素または酸素遊離基など反応性酸素種を放出するので感光性(光力学的)である。従って、本発明の化合物は、光力学的薬剤が示す医療条件の治療および/または予防処置において光力学的治療剤として使用するのに好適である(例えば、スミス著、2002年、カレント・プロブレム・キャンサー. 26(2):67−108;ホッパー著、2000年、ランセット・オンコロジー、1:212−9;ドーティ著、2002年、ジャーナル・クリニカル・レイザー・メディカル・サージェリ、20(1)3−7;セブルコフとゴルニック著、2000年、ヨーロッパジャーナル・オブ・ダーマトロジ、10(7):568−75参照)。
【0122】
好ましくは、本発明の化合物は細菌感染の治療および/または予防処置において使用するためのものであり、例えばグラム陽性球菌(例えば、ストレプトコッカス)、グラム陰性球菌(例えば、ナイセリア)、グラム陽性バチルス(例えば、コルネバクテリウム種)、グラム陰性バチルス(例えば、大腸菌)、抗酸性バチルス(例えば、典型的なマイコバクテリウム)などの細菌感染、および膿瘍や嚢包を引き起こす感染、皮膚感染、傷感染、関節炎、尿路感染、膵炎、骨盤炎症疾患、腹膜炎、前立腺炎を引き起こす感染;膣、口腔(歯科感染を含む)、眼および/または耳の感染;潰瘍および他の局所的感染;アクチノミセス属感染;カンジダアルビカンス、アスペルギルス、ブラストマイセスなどのカビの感染;HIV、脳炎、胃腸炎、出血性熱病、ハンタウィルス、ウイルス性肝炎、ヘルペスウイルス(例えば、巨細胞ウイルス、エプスタイン・バー、サルヘルペスウイルス、単純疱疹および水痘・帯状疱疹)などのウイルス感染;アメーバ症、バベシア病、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、ジアルジア症、リーシュマニア症、トリコモナス症、トキソプラズマ症、マラリアなどの原生動物感染;線虫、条虫、吸虫により引き起こされるぜん虫感染、例えば回虫症、十二指腸虫、リンパ腺糸状虫症、オンコセルカ症、住血吸虫症、トキソカラ症など;および柔組織リュウマチ、骨関節症、慢性関節リュウマチ、椎骨関節症などの炎症性疾患などの治療および/または予防処置に使用するためのものである。
【0123】
更に好ましくは、本発明の化合物はグラム陽性細菌および/またはグラム陰性細菌による感染の治療および/または予防処置に使用されるためのものである。最も好ましくは、本発明の化合物はグラム陽性細菌による感染の治療および/または予防治療に使用されるためのものである。
【0124】
本発明の化合物は好ましくは微生物、例えば細菌、マイコプラズマ、イースト、カビ、ウイルスなどを殺すために使用される。本発明の化合物は従来の抗生物質治療に対する耐性を発達させた細菌、例えばメチシリンに耐性を示す黄色ブドウ球菌(MRSA)を殺すのに特に適している。
【0125】
本発明の化合物は、標的の微生物が光を受けやすい表面または光を受けやすい区域(例えば、表皮、口腔、鼻孔、副鼻胴、耳、眼、肺、尿生殖路、胃腸内路など)に発見できる場合の全ての感染を治療するのに適している。さらに、本発明の化合物は、例えば外科的処置の間に一時的に露出された感染した骨など、光に接近できる表面または区域における感染を治療するのに適している。破裂した虫垂炎から起こった感染など腹膜腔の感染は少なくとも腹腔鏡装置により光に接近できる。
【0126】
本発明の化合物の投与量は、使用された特別な化合物、調合、投与方法、化合物が使用されるための指示などいくつかの因子により左右される。しかし、一般的に、投与量は体重1kg当たり0.01〜20mgの範囲であり、好ましくは0.1〜15mg/kg、例えば1〜10mg/kgである。
【0127】
好ましい実施態様では、本発明の化合物は従来の抗菌薬と組み合わせて使用される。例えば、該化合物は下記の従来の抗生物質の1種類以上と組み合わせて使用してよい:すなわち、抗細菌剤、例えば天然および合成のペニシリンやセファロスポリン、スルフォンアミド、エリスロマイシン、カノマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシンとゲンタマイシン、アンピシリン、ベンジペニシリン、ベネタミンペニシリン、ベンザチンペニシリン、フェネチシリン、フェノキシメチルペニシリン、プロカインペニシリン、クロクサシリン、フルオロクサシリン、メチシリンナトリウム、アモキシシリン、バカンピシリン塩酸塩、シクラシリン、メズロシン、ピバンピシリン、タランピシリン塩酸塩、カルフェシリンナトリウム、ピペラシリン、チカルシリン、メシリナム、ピルメシリナン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフォキシチン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セファゾリン、セフラジン、ラタモクセフジナトリウム、アズトレオナム、クロルテトラサイクリン塩酸塩、クロモサイクリンナトリウム、デメクロサイクリン塩酸塩、ドキシサイクリン、リムサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、アミカシン、フラマイセチン硫酸塩、ネオマイシン硫酸塩、ネチルマイシン、トブラマイシン、コリスチン、ナトリウムフシデート、ポリミキシンB硫酸塩、スペクチノマイシン、ヴァンコマイシン、カルシウムスルファロクサート、スルファメトピラジン、スルファジアジン、スルファジミジン、スルファグアニジン、スルファユリア、カプレオマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、シノキサシン、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、ヘキサミン、ストレプトマイシン、カルベニシリン、コリスチメタート、ポリミキシンB、フラゾリドン、ナリジクス酸、トリメトプリム−スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、リンコマイシン、サイクロセリン、イソニアジド、エタンブトール、エチオンアミド、ピラジンアミドなど;抗菌剤、例えばマイコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンフォテリシン、フルシトシン、グリセオフルヴィン、ナタマイシン、ニスタチンなど;および抗ウイルス剤、例えばアシクロビル、AZT、ddI、アマンタジン塩酸塩、イノシンプラノベックス、ヴィダラビンなどが挙げられる。
【0128】
更に好ましい実施態様において、本発明の化合物は、例えばポリ(エチレンイミン)などの浸透増大剤あるいはこのような浸透増大性能を示す抗菌剤(例えばポリミシンまたはコリスチン)と共に投与される。
【0129】
本発明の化合物は下記の指示の1つ以上の治療または予防処置で使用するのに特に適している:
【0130】
インペチゴ(膿痂疹)
【0131】
インペチゴ(膿痂疹)は伝染性の強い感染である。子供に最もよく見られる感染である。
【0132】
インペチゴは非水疱性と水疱性の2種類の古典的な形がある。非水疱性のインペチゴは伝染性インペチゴとも呼ばれ、症例の約70%を占める。傷は通常は治療しないでも2〜3週間で治癒する。インペチゴはまた他の皮膚病、例えば疥癬、水痘、アトピー性皮膚炎、ダリエール病などを悪化させる。
【0133】
(a)非水疱性インペチゴ(膿痂疹)
【0134】
細菌の型
非水疱性は主としてグループAのβ型溶血連鎖球菌(化膿連鎖球菌)、黄色ブドウ球菌、またはこれら2つの微生物の組み合わせにより引き起こされる感染である(皮膚のアンドリュー病;クリニカル・ダーマトロジイ、9版、(2000)、オドムRBにより編集、編集者サウンダース、312−4頁参照)。非グループA(グループB、C,G)連鎖球菌はインペチゴの希な症例の原因かもしれないし、グループB連鎖球菌は新生児のインペチゴに関連がある。
【0135】
傷の型
非水疱性は表面上の、表皮内の、単房の水疱膿疱性感染である。
【0136】
非水疱性インペチゴの傷は一般に顔の皮膚上または先端に始まり、外傷となる。通例として、無傷の皮膚は膿痂疹化に耐性がある。
【0137】
インペチゴの臨床上の所見は通常は小さな水疱または膿疱から発展し、蜂蜜色の外皮のあるプラクに進行する。傷は通常は直径が2cm未満である。傷は乾燥する傾向があり、瘢痕を残さずに細かい外皮を残す。傷は通常は最小限の徴候となる。まれに、軽い痛みまたは僅かな痒みを伴う紅班があるかもしれない。感染は他の引っ掻き傷の接種により接触する末端の区域に広がる。
【0138】
細菌の部位
非水疱性インペチゴは表面上の連鎖球菌またはブドウ状球菌の感染であり、皮膚の角質下層(角質層の直ぐ下)に局在化している(図1参照)。更に具体的には、インペチゴの感染は組織病理学的には高度に区別される上部皮膚ケラチン生成細胞に閉じこめられる。一旦細菌が皮膚の傷に侵入すると、増殖し始める。
【0139】
組織病理学は毛包脂腺の濾胞のじょうご形の上部に関する極めて表層的な炎症を示す。角質下の膿疱性水疱が形成され、少数の散乱した球菌を多形核白血球と表皮細胞の残骸と共に含んでいる。残骸の中には、軽い炎症性反応、すなわち血管の膨張、浮腫、多形核白血球の浸潤がある(皮膚のアンドリュウの疾患、上記、312−4頁)。
【0140】
(b)水疱性インペチゴ
【0141】
細菌の型
水疱性インペチゴは主として黄色ブドウ状球菌の菌株により引き起こされ、剥落性毒素を産出する(サディックら著、1997年、ダーマトロジック・クリニック、15(2):341−9)。
【0142】
傷の型
水疱性インペチゴは組織学的に角質下開裂の特徴を有し、多形核白血球と共に浸潤し、表皮中に移動し、顆粒層と角質皮膚層の間に蓄積する。小さいまたは大きい表面上の脆い水疱が体幹と手足に現れる。
【0143】
弛緩した水疱と湿った糜爛と周りの紅班がこの角質下感染の特徴である。しばしば、破裂した水疱の残存物が見られる。表皮の分離は黄色ブドウ状球菌により産出された外毒素に依るものである。
【0144】
細菌の部位
水疱性インペチゴは角質層の中と直ぐ下に起こる表面上のブドウ状球菌の感染である(図1参照)。水疱性インペチゴは角質層細胞に付着した黄色ブドウ状球菌により産出された剥落性毒素によるものと考えられる。
【0145】
アトピー性皮膚病(AD)
【0146】
アトピー性皮膚病はアトピー性湿疹とも呼ばれ、皮膚の慢性炎症でかゆい発疹であり、特に膝の後ろとか、肘、手首、首、まぶたの前とか、曲がるところに現れる。発疹の感染はよくあることで、更に炎症を広げ、痒みを増す。
【0147】
湿疹は一般に1〜6ヶ月の赤ん坊に現れる。患者の約60%は1歳までに突然発生し、90%は5歳までに発生する。青年期以後にアトピー性皮膚病が発生するのはまれであり、別の診断を直ぐ考えるべきである。疾患の発現は歳と共に変化する。
【0148】
細菌の型
細菌およびその超抗原はアトピー性皮膚病の病原の一因である。
【0149】
黄色ブドウ状球菌はAD患者(慢性湿疹性障害)の90%の皮膚にコロニーを作っており、非アトピー患者の場合はたった5%である。アトピー性皮膚病患者に感染の徴候が臨床的になくても黄色ブドウ状球菌のコロニーの密度は10コロニー形成単位cm−2にまで達することができる。更に、アトピー性患者の明らかに正常な傷のない皮膚には黄色ブドウ状球菌の数が増加している。
【0150】
乾癬などの疾患ではそれほど酷くないかまたは全くないにもかかわらず、アトピー性皮膚病の場合において黄色ブドウ状球菌の過剰な成長があるという理由は不明である。蛋白質Aは正常な場合または乾癬の場合よりアトピーの場合に活発な反応がずっと少ないことを明らかにしているが、これはコロニー化の原因よりもむしろその結果であるかもしれない。最近、皮膚の脂質に注目が集まっており、ブドウ状球菌のコロニー化を制御するかもしれない脂肪酸がアトピーには欠けているという証拠がある。
【0151】
超抗原は従来の抗原仲介免疫の筋道の或る成分を回避する細菌やウイルスによって生成される蛋白質の独特なグループである。従来の抗原は身体のT細胞の約0.01%〜0.1%までを活性化させるのに対して、超抗原はT細胞の母集団の5%〜30%を刺激する能力を有する。黄色ブドウ状球菌は超抗原として作用する一群の菌体外毒素を分泌することによりアトピー性皮膚病の皮膚炎症を一層悪化させるかまたはその状態を維持するかもしれない。アトピー性皮膚病の患者は角質層の中のセラミドが不充分であることにより皮膚のバリアーが変えられている。これらの菌体外毒素が皮膚を透過して、T細胞、マクロファージ、LC、マスト細胞の活性化を引き起こし、それによってサイトカインおよびマスト細胞媒介物の放出をもたらすことが提案されてきた。これらの出来事は慢性のアトピー性皮膚病の炎症の根拠を提供することが考えられる。黄色ブドウ状球菌のコロニー化および局所的超抗原の分泌がアトピー性皮膚病における一次的または二次的現象であるかどうかという推測が残っている(アンドリュウの皮膚疾患、5章、アトピー性皮膚病、湿疹、および非感染性免疫不全障害、69−76頁)。
【0152】
皮膚のウイルス、菌、細菌の感染はアトピー性患者に普通以上に発生する。ウイルス感染はT細胞の欠陥と一致しており、単純ヘルペス(局所的または全身性、すなわちヘルペス性湿疹)、伝染性軟属腫、およびヒト乳頭腫ウイルスが挙げられる。紅色白癬菌およびピチロスポルム・オヴァレによる表面菌感染もしばしば発生する。細菌の感染、特に黄色ブドウ状球菌による感染は極めて一般的である。重感染は蜂蜜色の硬い外皮、広範囲の重症の滲出または小胞を生ずる。
【0153】
傷の型
急性の外傷は紅班性丘疹、小胞,糜爛として現れ、慢性疾患は線維症丘疹、肥厚苔癬化した皮膚から成る。
【0154】
病原性のブドウ状球菌の数が増加すると、その所見は、しばしば滲出、硬い外皮、小胞、アデノパシーと関連がある。二次的連鎖球菌感染はしばしば局所的浮腫であり、アトピー性皮膚病の間は局所のアデノパシーがよく発生する。インペチゴはアトピー性皮膚病の二次的感染の一種である可能性がある。
【0155】
アトピー性皮膚病の組織構造は、生検された皮膚の傷の形態次第で、急性の海綿状皮膚病から苔癬様の単純な慢性病までの範囲を網羅する。
【0156】
細菌の部位
黄色ブドウ状球菌の細胞壁は表皮および皮膚のフィブロネクチンおよびフィブリノーゲンの受容体、いわゆる付着因子を示す。黄色ブドウ状球菌の結合はアトピー性皮膚炎の患者においてはフィブリノーゲンおよびフィブロネクチンにより媒介されたことが実証された。アトピー性皮膚病患者の皮膚は無傷の角質層が欠けているので、皮膚のフィブロネクチンが露出され、黄色ブドウ状球菌の粘着性を増すかもしれない。繊維性無定形の構造が黄色ブドウ状球菌細胞と角質細胞との間に突き止められたので、細菌の生体膜が発生する結果となるかもしれない。黄色ブドウ状球菌は細胞間の隙間に浸透することが観察されたので、皮膚の表面の脂質がアトピー性皮膚病患者においては劣化することを示唆している(ブリュウアーKら著、2002年、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ダーマトロジー、147:55−61)。
【0157】
潰瘍
【0158】
糖尿病患者の足の潰瘍、圧迫性潰瘍、慢性静脈潰瘍などの皮膚の潰瘍は組織がすり切れることを特徴とする皮膚の破れた傷または外傷であり、時々膿の形成を伴う。皮膚の潰瘍は様々な原因があるかもしれないし、様々な母集団に影響を与えるかもしれないが、あったとしても全て非常にゆっくりと治癒する傾向にあり、治療するのは極めて困難であり費用がかかる。
【0159】
細菌の型
表面上の圧迫性潰瘍は主要な感染問題に関連していない。低濃度の好気性微生物は圧迫性潰瘍を汚染するが、時期を得て治癒することを妨げない。しかし、深い完全な深さの圧迫潰瘍は二次感染して、骨髄炎が発生する可能性がある。壊疽組織を伴うこれらの圧迫性潰瘍は非壊疽性潰瘍に比べて好気性および嫌気性の微生物を高濃度に含有している。嫌気性菌が組織を侵すと通常は悪臭がする。従って、治療の作戦は傷口から壊疽組織をきれいに取り除き、嫌気性菌を減少させることである。
【0160】
圧迫性潰瘍の感染は典型的には多種類の細菌によるものであり、化膿連鎖球菌、腸球菌、嫌気性連鎖球菌、腸内細菌、緑膿菌、バクテロイデス・フラジリス、黄色ブドウ状球菌が挙げられる。
【0161】
傷の型
第一段階圧迫性潰瘍:無傷の皮膚の白くならない紅班は皮膚の潰瘍化の前触れの傷であると見なされる。
【0162】
第二段階の圧迫性潰瘍:表皮および/または真皮を含む部分的厚みの皮膚の消失。潰瘍は表面的であり、臨床的には表皮の剥脱、水疱、または浅い窪みとして現れる。表皮は剥脱、水疱または浅い窪みにより途切れさせられるかもしれないので、潰瘍は二次的感染の徴候と評価されるべきである。
【0163】
第三段階:下層の筋膜まで延びているが、貫通はしない皮下組織の損傷または壊死を含む完全な厚みの皮膚の消失。潰瘍は隣接する組織を傷つけるあるいは傷つけずに深い窪みとして臨床的に現れる。
【0164】
第四段階:広範な破壊、組織の壊死、または筋肉、骨、または支える構造、例えば腱または関節被膜などに対する損傷を伴う完全な厚さの皮膚の消失。
【0165】
細菌の部位
傷には3つの微生物学的状態がある、すなわち汚染、コロニー化、感染である。汚染は傷に微生物が単に存在するだけで増殖はしていないことを特徴としている。原因には関わらず、全ての傷は汚染されていることは一般的に認められている。コロニー化は傷に微生物が存在し増殖しているが、宿主の反応はないことを特徴としている。コロニー化は静脈の潰瘍や圧迫性潰瘍などの慢性の傷の一般的な状態であり、必ずしも治癒経過を遅らせるものではない。細菌が健康な組織を侵し、それらの存在や副生成物が宿主の免疫反応を引き出しあるいは圧倒する程度までに増殖し続ける場合、この微生物の状態は感染として知られる。感染の古典的痕跡や徴候としては、局所的赤色、痛みと膨張、熱と傷の滲出物の量と特徴の変化が挙げられる。
【0166】
肺の感染
【0167】
本発明の化合物はまた患者に本発明の化合物を投与し、化合物に抗微生物効果を発生させる波長の光を肺に放射(すなわち照射)することにより、肺の感染疾患を有する患者を治療するのに適している。肺感染は様々な細菌の部類や種で発生する可能性があり、例えばマイコバクレリウム・チュバーキュロシス(ヒト結核菌)、シュードモナス(膿疱性線維症患者の死の第一原因)、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス・ニュウモニエ(ブドウ球菌属)、クレブシエラ属、トキソプラズマなどが挙げられる。肺の感染はまた様々なウイルス菌株や日和見主義的病原体(菌、寄生体)で発生する。肺の病原体は古典的抗生物質治療に対する耐性を増すので、光力学的治療はこれらの有害な微生物を取り除くための代換えの方法を提供する。
【0168】
本発明の化合物は様々な方法で肺に投与することができる。例えば、該化合物は呼吸器系(すなわち、気管内、気管支内、または肺胞内)または胸郭の体壁を通して投与することができる。光源は同じくこれらのルートを通して、例えば柔軟な繊維状光学部品の助けを借りて適用することができる。照射/放射は肺の基部、肺の頂、または両方へ向けることができる。
【0169】
追加の指示
【0170】
本発明の化合物は下記の治療および/または予防処置にも適している。やけどと皮膚移植;耳炎(耳感染)、細菌性結膜炎と他の眼の感染;歯周炎と他の歯の感染、外科手術の間に露出された骨の感染。
【0171】
従って、本発明のさらに別の態様は以下のものを提供する:
(i)光力学的療法で使用する薬剤の調製に本発明の化合物を使用すること;
(ii)細菌、イースト、菌、ウイルスなどの微生物を殺すおよび/または成長を妨げるための薬剤の調製に本発明の化合物を使用すること(例えば、その薬剤はその病原体を他の被験者、例えば患者、健康管理者などに広げるまたは移すことを妨げるまたは減らすために使用されてもよい);
(iii)皮膚科の感染の治療および/または予防処置のための薬剤の調製に本発明の化合物を使用すること;
(iv)肺の感染の治療および/または予防処置のための薬剤の調製に本発明の化合物を使用すること;
(v)傷の感染および/または潰瘍の治療および/または予防処置のための薬剤の調製に本発明の化合物を使用すること;
(vi)光力学的治療で治療する必要のある患者に本発明の化合物を投与し、その化合物に照射/放射することからなる患者の治療方法;および
(vii)傷に本発明の化合物を接触させ、(反応性酸素種が発生されるように)その化合物に照射/放射することからなる傷の感染を防ぐための方法。
【0172】
使用に際して、本発明の感光性化合物は光力学的治療の分野において周知の従来の技術により照射/放射され、すなわち活性化される。好ましくは、該化合物は400nmから800nmまでの範囲の波長で照射/放射される。更に好ましくは、該化合物は約417nm(ソレー帯)、485nm、515nm、550nm、590、650nmにあるポルフィリンの吸収ウィンドの1個以上に対応する波長で照射/放射される。最も好ましくは、該化合物は約417nmの波長で照射/放射される。
【0173】
最適の波長は、特別な化合物および使用される指示次第で決められる。例えば、インペチゴについて、510から560nmまでの波長が傷の色の故に好ましい。開口した傷については、560から700までの波長が好ましいが、ヘモグロビンの活性を最小限にするために、更に高い波長が好ましい(690nmで最小)。
【0174】
当該技術に精通した者なら、本発明の化合物を塗布した後、様々な時点で照射/放射が起こってもよいことは十分に理解されよう。大体、該化合物は塗布後5分から24時間までの間に、例えば5分から2時間まで、または10分から1時間までの間に照射/放射される。最適の照射時間は実験により決定されてもよい。
【0175】
本発明の化合物が皮膚に塗布されると、光の波長は透過の深さを制御するように選択することができる。例えば、深い透過のために、波長が長い方が好ましい。光の強度や総合的光投与量はまた透過の深さを制御するために変えられてもよい。
【0176】
好ましくは、光力学的治療剤は角質層を透過するだけである。
【0177】
同様に、該化合物が照射/放射に曝される最適期間は特別な化合物および使用される指示次第である。しかしながら、典型的には、照射/放射時間は1〜30分間であり、更に好ましくは5〜20分であり、例えば10分である。
【0178】
照射/放射の合計量は処理される組織の治療と局在化により変化する。一般に、照射/放射の量は10〜1000J/cmの範囲であり、好ましくは10〜350J/cmの範囲である。
【0179】
好適な光源としては、ドイツのワルドマン有限会社製のPDT450L、PDT650L、PDT1200ランプが挙げられる。さもなければ、白光が化合物の活性用に使用されてもよい。
【0180】
本発明の化合物はまた生体外の微生物を殺すために使用されてもよい。従って、本発明の別の態様は本発明の第一および/または第二態様による化合物からなる殺菌用溶液を提供する。該溶液はまた手洗い液または使用前に希釈される濃縮液の形を取ってもよい。
【0181】
好ましくは、本発明の化合物は溶液中1〜100μg/mlの濃度で含まれている。
【0182】
好ましくは、溶液は更に表面活性剤または界面活性剤を含有する。好適な界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤(例えば、脂肪族スルフォン酸塩)、両性および/または双性イオン界面活性剤(例えば、脂肪族第四級アンモニウム、ホスホニウム、スルフォニウム化合物)および非イオン性界面活性剤(例えば、脂肪族アルコール、酸、アミドまたはアルキルフェノールとアルキレン酸化物)が挙げられる。
【0183】
表面活性剤の濃度は0.5から5重量%であるのが便利である。
【0184】
本発明の殺菌溶液は病院の環境で使用するのに特に適している。例えば、殺菌溶液は外科用器具および外科円形臨床講堂の表面ばかりでなく、講堂の職員の手や手袋を殺菌するために使用されてよい。さらに、殺菌溶液は外科手術の間に例えば露出された骨などを殺菌するために使用されてもよい。全ての場合に、溶液は殺菌されるべき表面に塗布され、次に照射/放射されて反応性酸素種を生成する(上記参照)。
【0185】
従って、本発明の別の態様は殺されるべき微生物を本発明の化合物と接触させ、その化合物を照射/放射することからなる生体外で微生物を殺す方法を提供する。
【実施例】
【0186】
実施例A:典型的な化合物の合成
【0187】
材料と方法
【0188】
核磁気共鳴(NMR)測定値
プロトンNMRスペクトルは内部基準としてTMSを使ってBruker B−ACS60(300MHz)上に記録された。化学変遷はppmで表され、結合係数は指示された溶剤においてHzで表される。NMR用の省略:一重線(s);広い一重線(bs);二重線(d);三重線(t);四重線(q);五重線(quint);多重線(m)。
【0189】
化学薬品
全ての溶剤および試薬はアルドリッチ、フルカ、メルク、ランカスターから購入され、さらに精製しないで使用された。
ジピロルメタンは「C.ブルッカーら著、ジャーナル・オブ・ポルフィリン・フタロシアニン、2 455(1998)」に説明されている通りに調製された。
【0190】
クロマトグラフィ
カラム・クロマトグラフィがシリカゲル(メルク・シリカゲル60、フルカ60、0.040−0.063mm)およびセファデクスLH−20(ファーマシア)を使って行われた。クロマトグラフィ用の全ての溶剤(シノファーム)は工業用純粋等級であった。
【0191】
略語
DDQ=2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン
DMF=N,N−ジメチルフォルムアミド
TFA=トリフルオロ酢酸
【0192】
試験化合物の合成方法
【0193】
下記の試験化合物を合成した:
本発明の典型的な化合物は、化合物6、8−10、12、23、25、28、31、32である。
参考化合物(比較対照として使用するためのもの)は、化合物1、3、16、19、26、29、33、36、37、39、41、46−51である。
化学中間生成物は、化合物2、4、5、7、11、13−15、17、18、20−22、24、27、30、34、35、38、40、42−45である。
【0194】
化合物1
5,10,15,20−テトラキス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル)−四塩化ポルフィリン
【化17】

【0195】
5,10,15,20−テトラキス−[4−ヒドロキシ−フェニル]−ポルフィリン(50mg,0.07mmol)とKCO(230mg、1.7mmol)をDMF(20mL)中に激しく攪拌してなる懸濁液に、(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(0.27g、1.05mmol)をDMF(5mL)中に溶解した溶液を50℃で30分間滴下した。混合物は50℃で15時間攪拌した。減圧下でDMFを除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチール・フリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドを通して濾過した。メタノール(1L)で洗浄した後、そのパッドを酢酸で溶出した。その溶出液から溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をセファデクスLH−20のカラム(2.5x40cm)のクロマトグラフィにより精製し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出する。回収された材料を最小限度の容量のメタノールに溶解し、その溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物の形)の短いカラム(3.5x20cm)の中に通す。回収された四塩化物塩は高真空下で乾燥され、紫色の結晶として得られる。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):2.35−2. 50 (bs, 8 H), 3.25−3. 35 (bs, 36 H), 3.65− 3.75 (bs, 8 H), 4.35 (m, 8 H), 7.30, 8.10 (2 x d, J 8. 5 Hz, 16 H), 8.80− 9.00 (bs, 8 H).
【0196】
化合物2
5,10,15−トリス−[4−ヒドロキシ−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化18】

【0197】
5,10,15,20−テトラキス−[4−ヒドロキシ−フェニル]−ポルフィリン(400mg、0.59mmol)とKCO(1.0g、7.1mmol)をDMF(75mL)に激しく攪拌して得られた懸濁液に、1−ブロモウンデカン(0.1mL、0.45mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50℃で30分間滴下し、その混合物を同じ温度で1.5時間攪拌した。DMFの減圧下でKCOを濾過して除去した後、得られた残留物をジクロロメタン(200mL)に溶解し、水(3x150mL)で洗浄し、その溶液を乾燥した(Na2SO4)。減圧下で溶剤を蒸発させ、得られた残留物をトルエン:エタノール(5:1容量、約10mL)に溶解し、シリカゲル(メルク60)のカラム(5x50cm)を使ってクロマトグラフィにより精製した。カラムをトルエンで溶出し、次にトルエン:酢酸エチル(2:1容量)で溶出し、適切な分別から溶剤を蒸発させることにより回収された所望の材料を高真空下で乾燥させる。生成物は紫色の結晶として得られる。
H−NMR:δ (300Mz, d6−アセトン):0.95 (t, J 7. 5 Hz, 3 H), 1.25−1.55 (m, 14 H), 1.58 (quint, J 7. 5 Hz, 2 H), 1.85 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 4.16 (t, J 7. 5 Hz, 2 H), 7.20 (d, J 8. 1 Hz, 2 H), 7.25 (d, J 8. 2 Hz, 6 H), 8.00−8.15 (m, 8 H), 8.80−9.10(m, 8H).
【0198】
化合物3
5,10,15−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化19】

【0199】
化合物2(100mg、0.12mmol)とKCO(230mg、1.7mmol)をDMF(30mL)に激しく攪拌して得られた懸濁液に、(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(0.3g、16.6mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50℃で添加し、混合物を同じ温度で12時間攪拌する。減圧下でDMFを除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドにより濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、そのパッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。減圧下で溶出液から溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でn−ブタノール:水:酢酸(5:4:1容量、上相)で溶出してクロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶出液の適切な留分から溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、その溶液を陰イオン交換樹脂(アンバ−ライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通過させる。溶剤を除去し、高真空下で乾燥した後、最終生成物、三塩化塩が紫色の結晶として得られる。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.80 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.15−1.45 (m, 16 H), 1.50−1. 60 (bs, 2 H), 2.25−2. 45 (bs, 6 H), 3.25−3. 35 (bs, 27 H), 3.75−3. 85 (bs, 6 H), 4.18 (t, J7. 5 Hz, 2 H), 4.40−4. 45 (bs, 6 H), 7.20−7. 40,7. 95− 8. 15 (2 x m, 16 H), 8.60−9.00 (bs, 8 H).
【0200】
化合物4
5−(3,5−ジメトキシ−フェニル)−15−ウンデシル−ポルフィリン
【化20】

【0201】
ジピロールメタン(0.62g、4.2mmol)をジクロロメタン(5mL)に攪拌した溶液に、3,5−ジメトキシベンズアルデヒド(0.35g、2.1mmol)とドデカナール(0.464g、2.52mmol)を脱気したジクロロメタン(1L)に溶解したものを加える。TFA(0.07mL、3.0mmol)を滴下する。得られた溶液を光のない状態において、17時間、アルゴン下、室温で攪拌する。DDQ(2.7g、12mmol)を添加した後、混合物を室温で更に1時間攪拌する。減圧下で溶剤を除去した後に回収された物質を溶出用のトルエンでシリカゲル(メルク60)のカラム(400g)でクロマトグラフィにより精製したところ、得られた生成物は紫色の結晶である。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):0.80(t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.10−1. 25 (m, 12 H), 1.40 (m, 2H), 1.75 (quint,, 3J 7. 5 Hz, 2 H), 2.45 (quint, J 7. 5 Hz, 2 H), 3.90 (s, 6H), 4.90 (t, J7. 5Hz, 2H), 6.80 (m, 1 H), 7.35 (m, 2 H), 9.00, 9.25, 9.30, 9.50 (4 x d, J4.7 Hz, 4 x 2 H), 10.15 (s, 2H).
【0202】
化合物5
5−(15−ウンデシル−ポルフィリン−5−イル)−ベンゼン−1,3−ジオール
【化21】

【0203】
化合物4(80mg、0.133mmol)を無水ジクロロメタン(80mL)にアルゴン雰囲気下で溶解した溶液に、BBr(5mL、ジクロロメタン中1M)を−70℃で滴下し、混合物をこの温度で1時間攪拌し、次に室温まで暖め、一晩中攪拌する。混合物を−10℃まで冷却し、水(2mL)を添加して、1間攪拌して加水分解する。NaHCO(3g)を中和のために直接添加する。混合物を更に12時間攪拌し、NaHCOを濾過し、ジクロロメタンを真空下で除去した後、得られた残留物をジクロロメタンで溶出しシリカゲルを使ってカラム・クロマトグラフィにより精製する。適切な組み合わせ留分から溶剤を蒸発させ、高真空下で得られた残留物を乾燥させた後、得られた生成物は紫色の結晶である。
H−NMR:δ (300Mz, d6−アセトン):0.75 (t, J 7.5 Hz, 3H), 1.05−1.25(m, 12H), 1.30−1.40 (m, 2H), 1.45−1.50 (m, 2 H), 2.40 (quint, J 7.5 Hz, 2H), 4.90 (t, J 7.5 Hz, 2H), 6.65 (m, 1 H), 7.18(m, 2H), 8.60−8.65, 9.00−9.05, 9.35−9.40, 9.55−9. 60 (4 x m, 8 H), 10.25 (s, 2H)
【0204】
化合物6
5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−二塩化ポルフィリン
【化22】

【0205】
化合物5(80mg、0.14mmol)とKCO(230mg、1.7mmol)をDMF(30mL)中に溶解して激しく攪拌した懸濁液に、(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(0.3g、16.6mmol)を50℃で添加する。混合物をこの温度で18時間攪拌する。減圧下でDMFを除去した後で、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドを通して濾過する。パッドをメタノール(約1L)で洗浄した後、粗生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。適切な留分を集め、減圧下で溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をn−ブタノール:水:酢酸(5:4:1容量、上相)で溶出して、セファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で適切な留分から溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)の中に通す。溶出液を集めた後、減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物を高真空下で乾燥し、二塩化塩を紫色の結晶として産出する。
H−NMR:δ (300Mz, CDOD):0.75(t, J7.5 Hz, 3H), 1.05−1.20 (m, 14 H), 1.45− 1.50 (m, 2 H), 2.05−2.15 (m, 4H), 2.15−2.20 (m, 2H), 2.95 (s, 18 H), 3.35−3.45 (m, 4 H), 3.95 (t, J7.5 Hz, 4 H), 4.55 (t, J7.5Hz, 2H), 6.85 (m, 1H), 7.35 (m, 2 H), 8.85−8.90, 9.15−9.20, (3 x m, 8 H), 10.10 (s, 2 H).
【0206】
化合物7
5,15−ビス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【化23】

【0207】
ジピロールメタン(0.61g、4.1mmol)と4−(3−ブロモプロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(1.03g、4.2mmol)を脱気したジクロロメタン(1L)に攪拌した溶液に、TFA(0.07mL、1.5mmol)を滴下する。その溶液を室温で光なしでアルゴン下、17時間、攪拌する.DDQ(2.76g、0.012mol)を添加した後、混合物を室温で更に1時間攪拌する。溶出のためにジクロロメタンを使ってシリカゲル(フルカ60、100g)により濾過して、原料生成物が得られ、ジクロロメタン:n−ヘキサンから再結晶化した後に、純粋な生成物を紫色の結晶として産出する。
H−NMR:δ (300Mz, C):−3.15 (2 H, s), 2.00 (quint, J7.5 Hz, 4H), 3.30 (t, J 7.5 Hz, 4H), 3.90 (t, J7.5Hz, 4H), 7.15−7.18, 7 95−8.15 (2 x m, 2 x 4H), 9.15−9.20, (m, 8H), 10.05 (s, 2H).
【0208】
化合物8
5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピルオキシ}−フェニル)−二塩化ポルフィリン
【化24】

【0209】
化合物7(200mg、0.27mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(5mL、13.9mmol)と共に無水DMF(40mL)に溶解し、得られた溶液を50℃でアルゴン下、一晩中攪拌する。減圧下で溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、その溶液をスチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドを通して濾過する。そのパッドをメタノール(約1L)で溶出し、次に酢酸:メタノール:水(3:2:1,容量)で溶出する。適切な留分から溶剤を蒸発させた後、得られた原料生成物をメタノール(5mL)に溶解し、更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)を展開相として使用し、セファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより更に精製される。溶出された最初の留分が所望の生成物である。減圧下で溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)の中に通す。溶出物から減圧下で溶剤を除去した後、残留物をジエチルエーテルから結晶化し、高真空下で乾燥し、紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δH(300MHz, CDOD):2.20−2.35 (m, 4 H), 2.40−2.50 (m, 4H), 2.80 (s, 12 H), 3.05 (4 H, t, J 7.8, 2 H), 3.25 (s, 12 H), 3.45−3. 55 (bs, 4H), 3.65− 3.75 (m, 4 H), 4.30 (t, J4.2 Hz, 4H), 7.40, 8, 10 (2xd, J 7.5 Hz, 2 x 4H), 8.95, 9.45 (2x d, J 4.2 Hz, 8 H), 10.40 (s, 2 H).
【0210】
化合物9
5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−二塩化ポルフィリン
【化25】

【0211】
化合物7(50mg、0.068mmol)を無水DMF(20mL)に溶解した溶液に、トリエチルアミン(4.7mL、0.034mol、500当量)を加える。混合物を60℃で24時間攪拌する。溶剤を減圧下で除去し、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲルのパッド(深さ2cm)の中に通過させ濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶出された留分から溶剤を蒸発させた後、得られた原料生成物をメタノール(5mL)に溶解し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1,容量、上相)で溶出して、セファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で適切な留分から溶剤を除去し、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通過させ、溶剤を蒸発させた後で紫色の固体として生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, CD0D):1.25 (m, 18H), 2.13 (m, 4H), CHNCH (16H)の信号は 溶剤信号によって包含された多重線の一部として領域3.00−3. 40に存在する、4.15 (t, 4H, J = 7.5 Hz), 7. 36 (d, 4H, J = 7.5 Hz), 8. 15 (d, 4H, J = 7.5 Hz), 9.05 (d, 4H, J = 7.5 Hz), 9.54 (d, 4H, J= 7. 5 Hz), 10.45 (s, 2H)
【0212】
化合物10
5,15−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−二塩化ポルフィリン
【化26】

【0213】
化合物7(300mg、0.41mmol)を無水DMF(50mL)に溶解した溶液を100mLのオートクレーブに移す。トリメチルアミン(4.5g)を加えた後、混合物を50℃で16時間攪拌する。溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、その溶液をスチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドに通して濾過する。メタノール(約1L)で洗浄した後、パッドを酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。適切な留分から溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出し、セファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製される。2つの留分が得られ、最初に溶出されたものが所望の生成物である。溶剤は減圧下で除去され、得られた残留物はメタノール(5mL)に再び溶解され、溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通過させる。減圧下で溶剤を蒸発させた後、残留物をメタノール:ジエチルエーテルから結晶化し、高真空下で乾燥させ、生成物を紫色の結晶として産出する。
H−NMR:δ (300Mz, CD0D):2.40−2.60 (m, 4H), 3.30−3. 25 (bs, 18 H), 3.75−3.80 (m, 4 H), 4.40 (t, J 7. 5 Hz, 4 H), 7.40, 8.20 (2 x d, J 8.5 Hz, 8 H), 9.05, 9.50 (2 x d, J4.5Hz, 8 H), 10.45 (s, 2 H).
【0214】
化合物11
5,15−ビス−[3−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−ポルフィリン
【化27】

【0215】
ジピロールメタン(1.22g、8.2mmol)と3−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−ベンズアルデヒド(2.06g、8.2mmol)を脱気ジクロロメタン(2L)に攪拌した溶液に、TFA(0.14mL、3mmol)を滴下する。溶液を室温で光のない状態で17時間、アルゴン下で攪拌する。DDQ(5.4g、0.024mol)を添加した後、混合物を室温で更に1時間攪拌する。減圧下で溶剤を除去した後、得られた残留物をジクロロメタン(5mL)に溶解し、溶離剤としてジクロロメタンを使ってシリカ(フルカ60)のカラム(300g)の中を通して原料生成物が得られ、これをジクロロメタン:メタノールから結晶化して純粋な物質を紫色の結晶として産出する。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):−3.20 (2 H, s), 2.40 (quint, J7.5 Hz, 4 H), 3.65 (t, J 7.5 Hz, 4 H), 4.25 (t, J7.5 Hz, 4 H), 7.20−7.25, 7.60−7.65, 7.75−7.80 (3 x m, 8H), 9.05, 9.25, (2 x d, J4.2 Hz, 8H), 10.25 (s, 2H).
【0216】
化合物12
5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−二塩化ポルフィリン
【化28】

【0217】
化合物11(400mg、0.543mmol)をDMF(50mL)に溶解した溶液を100mLのオートクレーブに移す。トリメリルアミン(6.3g)を添加した後、混合物を50℃で8時間攪拌する。減圧下で溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、その溶液をスチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドの中に通して濾過する。そのパッドをメタノール(約1L)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出して留分を産出し、減圧下で溶剤を蒸発させた後、固体残留物を得る。これをメタノール(5mL)に溶解し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出し、セファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製される。2つの留分がカラムから溶出され、最初に溶出されたものが所望の生成物である。溶剤は減圧下で除去され、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解する。溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通過させる。減圧下で溶剤を除去した後、粗生成物をメタノール:ジエチルエーテルから結晶化し、高真空下で乾燥させ、紫色の結晶を産出する。
H−NMR:δ (300Mz, CD0D):2.30−2.35 (m, 4H), 3.15 (s, 18 H), 3.95−4.05 (m, 4 H), 4.20−4.25 (m, 4 H), 7.40−7. 45,7. 65−7.70, 7.80−7.85 (3 x m, 8 H), 9.00−9.05, 9.40−9.45, (2 x m, 8 H), 10.40 (m, 2 H).
【0218】
化合物13
5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−10,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化29】

【0219】
化合物2の合成について記載されているクロマトグラフィ分離の間にカラムから溶出された第三留分は5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−10,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンとしての特性を有する。
H−NMR:δ(300MHz, CDC1):−2.88 (2 H, s), 0.85 (t, J 7.5 Hz, 6 H), 1.20−1.40 (m, 28 H), 1.55 (br m, 4H), 1.80 (quint, J 7.5 Hz, 4 H), 4.15 (t, J 7.5 Hz, 4 H), 6.65, 7.15 (d, J 8.1 Hz, 8 H), 7.80, 8.00 (d, J 8.1 Hz, 8 H), 8.75−8.80 (m, 8H).
トランス−レジオイソマー外面的形態はd−酢酸におけるH−13C−2D−NMRにより割り当てられる。
【0220】
化合物14
5,10−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化30】

【0221】
化合物2の合成について記載されているクロマトグラフィ分離の間にカラムから溶出された第四留分は5,10−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリンとしての特性を有する。
H−NMR:δ(300MHz, CDCl):−2.80 (2 H, s), 0.90 (t, J 7.5 Hz, 6 H), 1.20−1. 60 (m, 28 H), 1.65 (quint, J 7.5 Hz, 4 H), 2.00 (quint, J 7.5 Hz, 4 H), 4.22 (t, J 7. 5 Hz, 4 H), 7.15 (d, J8. 1 Hz, 4 H), 7.25 (d, J8. 2 Hz, 4 H), 8.10 (d, J 8.2 Hz, 4 H), 8.15 (d, J 8.2 Hz, 4 H), 8.80−8.90 (m, 8 H).
シス−レジオイソマー外面的形態はd−酢酸におけるH−13C−2D−NMRにより割り当てられる。
【0222】
化合物15
5,10,15−トリス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化31】

【0223】
アルゴンの雰囲気下で、化合物2(200mg、0.24mmol)をKCO(500mg)と1,3−ジブロモプロパン(1.02mL、10mmol)の存在下で無水DMF(40mL)に溶解する。その混合物を一晩80℃に加熱する。仕上げは上記化合物2について記載されている方法と同じである。生成物をヘキサン:酢酸エチル(5:1,容量)で溶出し、シリカゲル(メルク60)上でカラム・クロマトグラフィにより精製する。
H−NMR:δ(300MHz, CDC1):−2.75 (2 H, s), 0.85 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.45 (m, 14 H), 1.50 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 1.90 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 2.40 (quint, J 7.4 Hz, 6 H), 3.65 (t, J 7.4 Hz, 6 H), 4.16 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.25 (t, J7.5 Hz, 6H), 7.18−7.20 (m, 8H), 8.00−8.05 (m, 8 H), 8.75−8.85 (m, 8 H)
【0224】
化合物16
5,10,15−トリス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化32】

【0225】
化合物15(200mg,0.17mmol)をトリエチルアミン(5mL、34.5mmol、208当量)と共に無水DMF(40mL)に溶解する。混合物を50℃で48時間加熱する。DMFを真空下で除去した後、得られた残留物をメタノールに溶解し、メタノール:水:酢酸(2:1:3,容量)で溶出し、次に酢酸:ピリジン(1:1容量)で溶出するシリカゲル(メルク60)を使って、カラム・クロマトグラフィにより精製する。真空下で適切な留分から溶剤を除去して粗生成物を得、これをメタノール:水性NaCl(1M)(5mL、1:1、容量)に溶解する。混合物を30分間攪拌し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドに通して濾過する。パッドをメタノール(200mL)で洗浄した後、メタノール:水:酢酸(2:1:3、容量)で溶出する。適切な組み合わせた留分から溶剤を蒸発させ、得られた残留物をメタノール(2mL)に溶解し、ジクロロメタン(5mL)を滴下する。沈殿させた白色ゲルを濾過して収集し、高真空下で溶剤を除去する。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.90 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.20−1. 45 (m, 43H), 1.45− 1.65 (bs, 2 H), 2.25−2. 40 (bs, 6 H), 3.35−3. 45 (bs, 24 H), 3.50−3. 60 (bs, , 6 H), 4.25 (t, J7. 5 Hz, 2 H), 4.40−4. 45 (bs, 6 H), 7.25−7. 40,8. 10−8.20 (m, 16 H), 8.80−9. 10 (bs, 8 H).
【0226】
化合物17
5−[4−(3−ヒドロキシ−フェニル)]−15−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化33】

【0227】
5−15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)ポルフィリン(ウイーエ,A.,シモネンコ,E.J.,センゲ,M.O.及びレーダー,B.著、“ジャーナル・オブ・ポルフィリンズ・アンド・フタロシアニンズ”、5,758−761(2001)(Wiehe, A., Simonenko, E.J., Senge, M.O. and Roeder, B. Journal of Porphyrins and Phthalocyanines 5, 758−761(2001))(86mg、0.17mmol))を溶解し、KCO(250mg、7.1mmol)をDMF(40mL)に懸濁する。激しく攪拌した混合物に、1−ブロモウンデカン(0.04mL、0.17mmol)をDMF(5mL)に溶解した溶液を50℃で30分間滴下し、混合物を同じ温度で1時間加熱する。KCOを濾過して除去した後、DMFを高真空下で除去する。得られた残留物をnーヘキサン:酢酸エチル(10:1、容量)で溶出するシリカゲル(メルク60)を使ってカラム・クロマトグラフィにより精製する。第二の留分を集め、高真空下で乾燥して、生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):−3.15 (2 H, s), 0.75 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.10−1.30 (m, 14 H), 1.35 (m, 2 H), 1.80 (quint, J7. 5 Hz, 2 H), 4.05 (t, J7.5 Hz, 2 H), 6.85−6. 90,7. 20−7. 25, 7.35−7. 45,7. 50−7.65, 7.75−7. 80 (5 x m, 8 H), 8.85, 8. 95, 9. 10, 9.20 (4 x d, J4. 9 Hz, 4 x 2 H), 10.15 (s, 2 H).
【0228】
化合物18
5,10,15−トリス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−20−(3−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0229】
3−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.8g、14.8mmol、3当量)と3−ドデシルオキシベンズアルデヒド(1.35g、4.9mmol、1当量)を酢酸(145mL)とニトロベンゼン(98mL、960mmol)との混合物に溶解し、120℃に加熱する。ピロール(1.35mL、19.6mmol、4当量)を一度で添加し、混合物を120度で1時間攪拌する。室温に冷却した後、溶剤を真空中50℃で除去する。溶離剤としてトルエンを使ってシリカのカラム(500g)上でクロマトグラフィにより生成物を単離する。カラムから第五留分として所望の生成物が得られ、トルエンで溶出される更に小型のシリカカラム(200g)を使って再度クロマトグラフィで精製される。溶剤を蒸発させた後、生成物は紫色の固体として得られる。
H−NMR:δ(300MHz, CDC1):0.64 (t, 3 H, J 6.8 Hz), 0.94−1. 15 (m, 16 H), 1.25 (bs, 2 H), 1.62 (bs, 2 H), 3.90 (bs, 2 H), 6.33−6.95 (m, 8 H), 7.08−7.60 (m, 8 H), 8.20−8.47 (m, 4 H), 8.51−8. 70 (m, 4 H)
【0230】
化合物19
5−{3−[ビス−(2−ジエチルアミノ−エチル)−アミノプロピルオキシ]−フェニル}−15−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化34】

【0231】
化合物17(50mg、0.065mmol)をN,N,N’,N’−テトラエチルジエチレントリアミン(1mL、39mmol)と共にTHF(10mL)に溶解し、混合物を室温で4日間攪拌する。溶剤を蒸発させた後、残留物をジエチルエーテル(20mL)に溶解し、溶液を水で洗浄する(5x30mL)。有機層を乾燥させ(NaSO)、高真空下で濃縮する。混合物をn−ヘキサン:酢酸エチル(5:1、容量)で溶出し、次にn−ヘキサン:酢酸エチル:トリエチルアミン(10:10:1、容量)で溶出するカラム・クロマトグラフィ(シリカゲル、メルク60)により精製する。適切な留分を集め、減圧下で溶剤を除去した後、ジエチルエーテル:メタノールから残留物を結晶化することにより純粋な生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):0.80 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 0.9 (t, J 7.5 Hz, 12 H), 1.20−1.40 (m, 14 H), 1.45 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 1.80 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 1.95 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 2.40−2.60 (m, 16 H), 2.65 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.10 (t, J7.5 Hz, 2H), 4.20 (t, J7.5 Hz, 2H), 7.30−7.40, 7.55−7.65, 7.75−7.80 (3 x m, 8H), 9.10−9.15, 9.20−9.25 (2 x m, 2 x 4 H), 10.15 (s, 2 H)
【0232】
化合物20
5−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化35】

【0233】
ジピロールメタン(0.31g、2.1mmol)、4−(3−ブロモ−プロイルオキシ)−ベンズアルデヒド(0.27g、1.1mmol)、4−ドデシルオキシ−ベンズアルデヒド(0.32g、1.1mmol)を脱気ジクロロメタン(500mL)に攪拌してなる溶液に、TFA(0.035mL、1.5mmol)を滴下する。溶液を室温で光なしで17時間アルゴン下で攪拌する。DDQ(1.38g、6mmol)を添加した後、混合物を室温で更に1時間攪拌する。溶離剤としてトルエンと共にシリカゲル(メルク60、400g)を使ってカラム・クロマトグラフィにより精製し、生成物(第二留分)を化合物7(第三留分)と共に得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):−3.15 (2 H, s), 0.90 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.40 (m, 16 H), 1.55 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 1.90 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 2.40 (quint, J 7.5Hz, 2H), 3.75 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.20 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.35 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 7.20−7. 30,8. 10−8.15 (2 x m, 8 H), 9.10−9.15, 9.25−9.30 (2 x m, 2 x 4 H), 10.20 (s, 2 H).
【0234】
化合物21
5,10,15,20−テトラキス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【0235】
3−ヒドロキシベンズアルデヒド(0.910g、7.45mmol)をプロピオン酸(50mL)に溶解し、140℃まで加熱する。ピロール(0.52mL、7.45mmol)を一度に添加し、混合物を環流して2時間加熱する。室温で更に12時間攪拌を続ける。真空下でプロピオン酸を除去し、残留物をアセトンに溶解し、酢酸エチルの割合を連続的に増加させながら含有するトルエンで溶出するシリカのカラム(250g)上でクロマトグラフィにより精製する。生成物をトルエン:酢酸エチル(6:1容量)で溶出する。溶剤を真空下で除去し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ(300MHz, d6−アセトン):7.18 (d, 4H, J= 8.25 Hz), 7.49 (t, 4H, J= 8.25 Hz), 7.56−7. 62 (m, 8H), 8.81 (m, 8 H)
【0236】
化合物22
5,10,15−トリス−[4−(3−ブロモ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化36】

【0237】
ピロール(0.7ml、10mmol)、4−(3−ブロモプロイルオキシ)−ベンズアルデヒド(1.8g、7.5mmol)、4−(n−ドデシルオキシ)−ベンズアルデヒド(0.725g、2.5mmol)を脱気ジクロロメタン(1L)に攪拌してなる溶液に、TFA(0.085ml、10mmol)を滴下する。反応溶液をアルゴン下、室温で光なしで17時間攪拌する。DDQ(6.9g、30mmol)を添加した後、反応混合物を室温で更に1時間攪拌する。減圧下で溶剤を除去し、残留物をトルエンに再溶解する。離溶剤としてトルエン−ヘキサン(1:4容量)を使うシリカゲル(メルク60)のカラム(3.5x30cm)上でクロマトグラフィに依る精製を行い、得られた生成物をメタノール:ジクロロメタンから再結晶することにより精製して、紫色の結晶を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CDC1):0.90 (t, J7. 5 Hz, 3 H), 1.20−1.45 (m, 16 H), 1.60 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 1.90 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 2.50 (quint, J 7.4 Hz, 6 H), 3.75 (t, J 7.4 Hz, 6 H), 4.20 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.35 (t, J 7.5 Hz, 6 H), 7.25−7.30 (m, 8 H), 8.15−8.30 (m, 8 H), 8.80−8.85 (m, 8 H).
【0238】
化合物23
5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−塩化ポルフィリン
【化37】

【0239】
化合物20(30mg、0.038mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(156mg、1.2mmol)と共にTHF:DMF(1:1容量、20mL)に溶解し、50℃で18時間攪拌する。減圧下で溶剤を蒸発させた後、残留物をジクロロメタンに溶解し、酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出するカラム・クロマトグラフィ(シリカゲル、メルク60)により精製する。適切な留分を組み合わせ、減圧下で溶剤を除去し、残留物をジクロロメタン:ヘキサンから結晶化して生成物を紫色結晶として得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1+1 %酢酸):0.85 (m, 3 H), 1.20−1.40 (m, 18 H), 1.55−1.60 (m, 2 H), 1.60−1.65 (m, 4H), 2.10−2. 20 (bs, 8 H), 3.15−3. 25 (m, 8 H), 3.75 (bs, 2 H), 4.20 (bs, 2 H), 4.35 (bs, 2 H), 7.15−7. 20,8. 10−8.15 (2 x m, 8 H), 8.95−9.00, 9.10−9. 15,9. 25−9.30 (3 x bs, 8 H), 10.20 (s, 2H).
【0240】
化合物24
5,15−ビス−(3−メトキシ−フェニル)−10−ウンデシル−ポルフィリン
【化38】

【0241】
リチウム(500mg、71mmol)を入れた50mLのフラスコにアルゴン雰囲気下で新たに蒸留したジエチルエーテル(15mL)を加える。懸隔液を1時間環流させ、15℃に冷却し、n−ウンデシルブロマイド(6.58g、71mmol)をエーテル(6mL)に溶解した溶液を注射器により滴下して処理する。混合物を7〜10℃に冷却し、5分後に懸濁液が僅かに曇り、明るい点がリチウム金属上に現れたら、n−ウンデシルブロマイド溶液の残りを30分間に亘り等しい速度で添加し、同時に内部温度を10℃以下に維持する。添加が完了したら、混合物を更に1時間10℃で攪拌する。懸濁液をアルゴン下で濾過して、過剰のリチウムと臭化リチウムを除去する。
5,15−ビス−(3−メトキシ−フェニル)−ポルフリン(100mg、0.19mmol)を無水THF(30mL)に−50℃でアルゴン雰囲気下において溶解する。上記有機リチウム試薬(5mL)を混合物に滴下する。5分後に、冷却浴を除去し、混合物を室温まで暖める。室温で15分間攪拌した後、水(2mL)をゆっくり添加して反応を抑える。15分後、DDQ(4mL、0.4mmol、THF中0.1M)を添加して混合物を酸化し、更に15分間攪拌する。混合物をアルミナ(中性、ブロックマン級+)により濾過し、ヘキサン:ジクロロメタン(4:1容量)で溶出するシリカゲル上のカラム・クロマトグラフィにより精製する。最初の留分を集め、メタノール:ジクロロメタンから結晶化する。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):−3.05 (bs, 2 H, s), 0.80 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.10−1.20 (m, 12 H), 1.25 (m, 2 H), 1.70 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 2.40 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 3.85 (s, 6H), 4.95 (t, J7.5 Hz, 2 H), 7.20−7.23, 7.50−7.60, 7.65− 7.75 (3x m, 8 H), 8.85−8.90, 9.10−9.15, 9.35−9.40 (3 x m, 8 H), 9.95 (s, 1H).
【0242】
化合物25
3−「({3−[(3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−三塩化アンモニウム
【化39】

【0243】
化合物23(20mg、0.022mmol)と(1−ブロモプロピル)−トリメチル−臭化アンモニウム(26mg、0.1mmol)をDMF(15ml)に溶解し、一晩50℃で攪拌する。減圧下で溶剤を蒸発させた後、残留物をメタノール(5ml)に溶解し、メタノール(500ml)で洗浄された後に酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で洗浄されるシリカゲルのパッド(3cm深さ)に通す。溶剤を蒸発させた後、残留物を、最初に酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で、次にピリジン:酢酸(1:1容量)を使ってカラム・クロマトグラフィ(シリカゲルメルク60)により精製する。溶出された第二留分を集め、真空下で乾燥する。残留物をメタノール(2ml)に溶解し、n−ブタノール:酢酸:水(5:1:4、容量、上相)で溶出されるセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶剤を除去した後、残留物を真空下で80℃で乾燥する。NMR分光法は、生成物が少量の除去生成物で汚染されていることを示している。
【0244】
化合物26
5,10,15−トリス−[4−(3−ジエチルアミノ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化40】

【0245】
化合物22(50mg、0.06mmol)と新たに蒸留したジエチルアミン(5ml)を無水DMF(30ml)にアルゴン下で溶解する。反応混合物を室温で20時間攪拌し、酢酸エチル(50ml)に注ぎ込む。混合物を水(4x50ml)で洗浄し、組み合わされた有機相(NaSO)を乾燥した後、溶剤を蒸発させて残留物を得て、これを酢酸エチル:n−ヘキサン:トリエチルアミン(10:10:1、容量)で溶出されるシリカ(メルク60)のカラム(2.5x30cm)上でクロマトグラフィにより精製する。留分を適切に組み合わせ、減圧下で溶剤を蒸発させ、残留物を高真空下で乾燥させる。ジクロロメタン:n−ヘキサンから再結晶化して純粋な生成物を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CDC1):0.85 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.05 (m, 18 H), 1.20−1.45 (m, 18 H), 1.55 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 2.15 (quint, J7.5 Hz, 6 H), 2.75 (quint, J 7.4 Hz, 6 H), 3.15−3.25 (m, 12 H), 4.15 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 4.25 (t, J7.5 Hz, 6 H), 7.15−7.20 (m, 8 H), 8.00−8. 05 (m, 8 H), 7.95−8. 05 (m, 8 H).
【0246】
化合物27
5,15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−10−ウンデシル−ポルフィリン
【化41】

【0247】
化合物24(95mg、0.14mmol)を無水ジクロロメタン(80ml)にアルゴン雰囲気で溶解した溶液に、BBr(6mL、ジクロロメタン中1M)を−70℃で滴下し、混合物を1時間攪拌する。混合物を室温まで暖め、一晩攪拌し、次に−10℃まで冷却し、2mLの水を加えて1時間加水分解する。NaHCO(3g)を直接中和のために添加する。混合物を更に12時間攪拌する。NaHCOを濾過により、ジクロロメタンを真空下で除去した後、得られた残留物をジクロロメタンで溶出するシリカゲルを使ってカラム・クロマトグラフィにより精製する。適切な組み合わされた留分から溶剤を除去し、高真空下で乾燥した後、生成物を紫色の結晶として得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):−3.05 (bs, 2 H, s), 0.85 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.40 (m, 12 H), 1.50 (m, 2 H), 1.80 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 2.55 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 5.00 (t, J7.5 Hz, 2 H), 7.15−7.25, 7.50−7.60, 7.80−7. 90 (3x m, 8 H), 8.95−9. 00,9. 20−9.25, 9.50−9.60 (3 x m, 8 H), 10.15 (s, 1H).
【0248】
化合物28
5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−二塩化ポルフィリン
【化42】

【0249】
化合物27(50mg、0.08mmol)をDMF(20mL)にアルゴン雰囲気下で溶解してなる溶液に、KCO(100mg、0.72mmol)と(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(300mg、1.2mmol)を加え、混合物を50℃で18時間攪拌する。高真空下で溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドにより濾過する。そのパッドをメタノール(500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。高真空下で適切な組み合わせた留分を乾燥させた後、残留物をメタノールに溶解し、n−ブタノール:酢酸:水(5:1:4、容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム・クロマトグラフィにより精製する。溶媒を蒸発させた後、溶出された最初の留分から得られた残留物をメタノールに溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラムを通過させ、溶剤を蒸発させた後、純粋な生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, CD0D):0.85 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.20−1. 40 (m, 12 H), 1.50 (m, 2 H), 1.80 (m, 2 H), 2.40 (bs, 4 H), 2.55 (m, 2 H), 3.20 (bs, 18 H), 3.65 (bs, 4 H), 4.35 (bs, 4 H), 5.10 (m, 2 H), 7.50−7. 55,7. 70−7.85 (2 x m, 8 H), 8.95−9. 00,9. 25−9.24, 9.50−9. 70 (3 x bs, 8 H), 10.15 (bs, 1H).
【0250】
化合物29
5,10−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15,20−ビス−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−二塩化ポルフィリン
【化43】

【0251】
化合物14(50mg、0.05mmol)をDMF(30mL)に溶解し、KCO(150mg、1.1mmol)を懸濁する。激しく攪拌した混合物に、(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(0.3g、16.6mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50℃で滴下し、混合物を18時間加熱する。高真空下でDMFを除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドを通して濾過する。パッドをメタノール(約500ml)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切な組み合わせた留分から溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をn−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上のクロマトグラフィにより精製して、更に過剰のアンモニウム塩と他の副生成物を分離する。減圧下で溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノールに溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)を通過させる。減圧下で溶剤を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥する。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.80 (t, J 7.5 Hz, 6 H), 1.15−1.35 (m, 28 H), 1.35−1.45 (bs, 4 H), 1.70−1.80 (bs, 4 H), 2.30−2.40 (bs, 4 H), 3.15−3.30 (bs, 18 H), 3.65−3.75 (bs, 4 H), 4.00−4.05 (m, 4 H), 4.30−4.40 (bs, 4 H), 7.00−7.15, 7.20−7.30, 7.80−95, 7.95−8.15 (4 x m, 4 x 4 H), 8.60−9.00 (bs, 8 H).
【0252】
化合物30
5,10,15−トリス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−20−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化44】

【0253】
3−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.8g、14.8mmol)と3−ウンデシルオキシベンズアルデヒド(1.36g、4.9mmol)を酢酸(145mL)とニトロベンゼン(118g、960mmol)に溶解して、130℃まで予め加熱した混合物にピロール(1.31g、19.6mmol)を一度に加え、その混合物を120℃で1時間攪拌する。混合物を冷却し、高真空下で溶媒を除去する。残留物をジクロロメタン(5mL)に溶解し、ヘキサン:トルエン(4:1、容量)で溶出するシリカゲル(メルク60)を使うカラム・クロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶出液から溶剤を除去して、得られた残留物を真空下で乾燥した後、生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, CDC1):0.75−0.80 (m, 3 H), 1.05−1.35 (m, 14 H), 1.40−1.50 (m, 2 H), 1.75−1.85 (m, 2 H), 3.90−4.10 (m, 2 H), 690−7.70 (m, 16 H), 8.45−8.80 (m, 8 H).
【0254】
化合物31
5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−二塩化ポルフィリン
【化45】

【0255】
化合物23(50mg、0.055mmol)をヨウ化メチル(5mL、80mmol)と共に無水DMF(30mL)に溶解し、その混合物を40℃で3時間攪拌する。溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドにより濾過する。そのパッドをメタノール(約1L)で洗浄した後、ジクロロメタン:メタノール(2:3容量、500mL)で溶出し、次に酢酸:水:メタノール(3:1:2、容量)で溶出する。適切なプールされた留分から溶剤を除去した後、得られた残留物を酢酸に溶解し、酢酸で溶出するセファデックスLH−20のカラム・クロマトグラフィにより精製する。適切なプールされた留分から溶剤を蒸発させ、高真空下で得られた残留物を乾燥させた後、残留物をメタノールに溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の小さなカラム(3.5x20cm)の中を通過させる。溶出液から溶剤を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥させる。
【0256】
化合物32
5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−二塩化ポルフィリン
【化46】

【0257】
化合物23(50mg、0.068mmol)をN,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン(354mg、1.36mmol)とN,N−ジメチルデシルアミン(1g、2.72mmol)と共にDMF:THF(30mL、1:1、容量)に溶解し、混合物を一晩50℃で攪拌する。減圧下で溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノール(10mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドにより濾過する。そのパッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶出された最初の2つの留分を合体し、減圧下で溶剤を蒸発させた後、得られた残留物をメタノールに溶解し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶出された第二留分から溶剤を除去した後、残留物をメタノール(5mL)に溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)の中に通過させる。溶出液を蒸発させて乾燥し、得られた残留物を高真空下で乾燥させ、生成物を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.80 (m, 3 H), 1.05−1.25 (m, 10 H), 1.25−1. 40 (bs, 2 H), 1.80−1. 90 (bs, 4 H), 2.15−2. 30 (bs, 2 H), 2.80−3. 60 (m, 20 H), 3.80− 3.95 (bs, 4 H), 7.05−7.15, 7.85−8.00 (2 x m, 2 x 4 H), 8.75−8.90, 9. 20−9.35 (2 x bs, 2 x 4 H), 10.15 (bs, 2H).
【0258】
化合物33
5,10,15−トリス[3−(3−トリメチル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−20−(3−ウンデシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化47】

【0259】
化合物30(100mg、0.12mmol)をDMF(30mL)に溶解し、KCO(230mg,1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌した混合物に、(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(0.3g、16.6mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50度で30分間滴下し、混合物を18時間加熱する。減圧下でDMFを除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドに通して濾過する。そのパッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。減圧下で適切な組み合わせた留分から溶剤を蒸発させた後、残留物をn−ブタノール:水:酢酸(5:4:1、容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。溶出液から減圧下で溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノールに溶解し、溶液を陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通す。溶出液から溶剤を蒸発させて、高真空下で乾燥させて生成物を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.75−0.80 (m, 3 H), 1.00−1. 40 (m, 18 H), 1.60− 1.80 (bs, 2 H), 2.25−2. 40 (bs, 6 H), 3.29 (bs, 27 H), 3.40−3.60 (m, 6 H), 3.90−4.00 (m, 2 H), 4.05−4.25 (m, 6 H), 7.10−7.20, 7.25−7.40, 7.60−7.80, 7.80−7.90 (4 x m, 16H), 8.70−9.00 (bs, 8 H).
【0260】
化合物34
5,15−ビス−(3−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化48】

【0261】
これは、ウイーエ,A.,シモネンコ,E.J.,センゲ,M.O.及びレーダー,B.著、“ジャーナル・オブ・ポルフィリンズ・アンド・フタロシアニンズ”、5,758−761(2001)(Wiehe, A., Simonenko, E.J., Senge, M.O. and Roeder, B. Journal of Porphyrins and Phthalocyanines 5, 758−761(2001))に記載されている通りに調製される。
【0262】
化合物35
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−テトラデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化49】

【0263】
DMF(30mL)に5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(170mg、0.25mmol)を溶解し、KCO(0.65g、mmol)を懸濁する。激しく攪拌した反応混合物に、1−ブロモテトラデカン(0.1mL、0.45mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50℃で30分間滴下し、混合物を1.5時間加熱する。溶剤を蒸発させた後、残留物をトルエン:エタノール(1:1、容量、約5mL)に溶解し、トルエンで洗浄するシリカゲル(メルク60)のカラム(5x25cm)を使うクロマトグラフィにより精製する。最初の3つの留分を溶出した後、トルエン:酢酸エチル(2:1、容量)を使って溶出を続ける。溶出された5番目の化合物を集め、溶剤を蒸発させ、高真空下で残留物を乾燥させて、紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δ(300MHz, d6−アセトン):0.85 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.15−1.55 (m, 20 H), 1.45 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 1.75 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 4.10 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 7.20 (d, J 8.5 Hz, 2 H), 7.25 (d, J 8.5 Hz, 6 H), 8.00−8.15 (m, 8 H), 8.80−9.10 (m, 8 H).
【0264】
化合物36
5,10,15−トリス−[4−(3−トリメチル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−テトラデシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化50】

【0265】
1−ブロモウンデカンの代わりに1−ブロモテトラデカンを使って化合物2について記載されたと同様に調製された化合物2のn−テトラデシルオキシ類似体(50mg、0.057mmol)と(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶解し、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌した混合物をこの温度で18時間攪拌する。減圧下でDMFを除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、スチールフリット(直径3.5cm)上に支えられたシリカゲル(深さ2cm)のパッドを通して濾過する。そのパッドをメタノール(約500mL)で洗浄した後、酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。適切に組み合わされた留分から溶剤を蒸発させた後、過剰のアンモニウム塩と他の汚染物質から分離するために、得られた残留物をn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。溶出し、適切な留分から溶剤を除去した後、得られた残留物をメタノール(5mL)に溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の短いカラム(3.5x20cm)に通過させる。減圧下で溶剤を除去し、得られた残留物を高真空下で乾燥させ、紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.75 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 0.95−1.25 (m, 22 H), 1.50−1.65 (bs, 2 H), 2.20−2. 40 (bs, 6 H), 3.05−3. 15 (bs, 27 H), 3.45−3. 60 (bs, 6 H), 3.60−3. 80 (bs, 2 H), 4.05−4. 25 (bs, 6 H), 6.80−7.25, 7.65−8.05, (2 x m, 16 H), 8.45−8.95 (bs, 8 H).
【0266】
化合物37
5−(4−{3−[2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェニルオキシ]−プロピルオキシ}−フェニル)−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化51】

【0267】
2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)−フェノール(1mL、3.7mmol)の存在下でDMF(20mL)に化合物20(50mg,0.063mmol)を溶解し、50℃で一晩攪拌する。溶剤を蒸発させた後、残留物をジクロロメタン:メタノールから結晶化して過剰のアミンを除去する。濾過した後、そのポルフィリンをジクロロメタンに再び溶解し、ジクロロメタンで洗浄されるシリカゲル(メルク60)のカラム上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶剤を蒸発させ、残留物をジクロロメタン:メタノールから再結晶化して紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δ(300Mz, CDC1):−3.15 (2 H, s), 0.85 (t, J4.5 Hz, 3 H), 1.20−1.40 (m, 18H), 1.55 (quint, J4.5 Hz, 2 H), 1.90 (quint, J4.5 Hz, 2 H), 2.20 (s, 18 H), 2.55 (t, J5.2 Hz, 2 H), 3.45 (s, 6 H), 4.15 (t, J5.5 Hz, 2 H), 4.20 (t, J 5.5 Hz, 2 H), 4.35 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 6.85 (2 x s, 2 H), 7.20−7.30, 8.10−8.15 (2 x m, 8 H), 9.00−9.05, 9.25−9.30 (2 x m, 2 x 4 H), 10.20 (s, 2 H).
【0268】
化合物38
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−デシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化52】

【0269】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(100mg、0.15mmol)をDMF(30mL)に溶解し、KCO(230mg)を懸濁する。激しく懸濁した反応混合物に、1−ブロモデカン(0.016mL,0.11mmol)をDMF(10mL)に溶解してなる溶液を70℃で30分間滴下し、混合物を1.5時間攪拌する。溶剤を蒸発させた後、残留物をトルエン:エタノール(1:1容量、約3mL)に溶解し、トルエンを溶離剤として使ってシリカゲル(メルク60)のカラム(150guramu)上でクロマトグラフィにより精製する。最初の3つの留分を溶出した後、そのカラムをトルエン:酢酸エチル(2:1容量)で溶出し、溶出された5番目の留分を集め、溶剤を除去し、残留物を高真空下で乾燥して、紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, d6−アセトン):0.95 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.25−1.55 (m, 12 H), 1.55 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 1.85 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 4.15 (t, J 7.5 Hz, 2 H), 7.20 (d, J8.5Hz, 2H), 7.25 (d, J8.5Hz, 6H), 8.00−8.15 (m, 8 H), 8.80−9.10 (m, 8 H).
【0270】
化合物39
5,10,15−トリス−[4(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−20−(4−デシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化53】

【0271】
化合物38(50mg、0.061mmol)と(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶解し、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌した反応混合物を50℃で18時間加熱する。溶剤を蒸発させた後、粗生成物をメタノールに溶解し、n−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出し、セファデックスのカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を除去した後、残留物をメタノールに溶解し、アンバーライトIRA400(塩化物形)のカラム(3.5x20cm)の中に通過させる。溶剤を蒸発させた後、生成物を高真空下で乾燥し、紫色の結晶を産出する。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.90 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.40 (m, 12 H), 1.45−1. 60 (bs, 2 H), 1.80−1. 90 (bs, 2 H), 2.45−2. 55 (bs, 6 H), 3.25−3.35 (bs, 27 H), 3.75−3. 85 (bs, , 6 H), 4.05−4.25 (m, 2 H), 4.35−4.40 (bs, 6 H), 7.10−7. 40, 7.95−8. 15 (2 x m, 16 H), 8.60−9. 00 (bs, 8 H).
【0272】
化合物40
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−トリデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化54】

【0273】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(400mg、0.59mmol)をDMF(75mL)に溶解し、KCO(1.0g、7.1mmol)を懸濁する。激しく攪拌された反応混合物に、1−ブロモトリデカン(0.1mL、0.45mmol)をDMF(10mL)に溶解した溶液を50℃で30分間滴下し、次に混合物を1.5時間加熱する。反応混合物を室温に冷却し、水(150mL)に注ぐ。ポルフィリンを酢酸エチル(100mL)で抽出し、抽出物を塩水(3x50mL)で洗浄し乾燥する(NaSO)。溶剤を蒸発させた後、残留物をトルエン:エタノール(1:1、容量、約10mL)に溶解し、溶離剤としてトルエンでシリカゲル(メルク60)のカラム(200g)を使ってクロマトグラフィにより精製する。最初の3つの化合物を溶出した後、溶離剤をトルエン:酢酸エチル(2:1容量)に変える。溶出された5番目の化合物を集め、高真空下で乾燥させ、紫色の結晶として生成物を得る。
H−NMR:δ (300Mz, d6−アセトン):0.85 (t, J7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.60 (m, 18 H), 1.50 (quint, J 7.5 Hz, 2 H), 1.80 (quint, J7.5 Hz, 2 H), 4.14 (t, J7.5 Hz, 2 H), 7.20 (d, J 8.5 Hz, 2 H), 7.25 (d, J 8.5 Hz, 6 H), 8.00−8.15 (m, 8 H), 8.80−9.10 (m, 8 H).
【0274】
化合物41
5−(4−トリデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−三塩化ポルフィリン
【化55】

【0275】
化合物40(50mg、0.057mmol)と(1−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(210mg、0.8mmol)をDMF(20mL)に溶解し、KCO(230mg、1.7mmol)を懸濁する。激しく攪拌した反応混合物を50℃で18時間加熱する。DMFを除去した後、残留物をメタノール(5mL)に溶解し、メタノール(約1000mL)で洗浄されるシリカゲルのパッド(2cmの深さ)に通し、次に酢酸:メタノール:水(3:2:1、容量)で溶出する。溶剤を蒸発させた後、残留物をメタノールに溶解し、更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1、容量、上相)で溶出されるセファデックスLH−20のカラム(2.5x40cm)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を除去した後、残留物をメタノールに溶解し、陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)に通す。溶剤を蒸発させた後、高真空下で生成物を乾燥し、紫色の結晶を得る。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.90 (t, J 7.5 Hz, 3 H), 1.20−1.40 (m, 18 H), 1.45−1.60 (m, 2 H), 1.80−1. 90 (bs, 2 H), 2.40−2. 55 (bs, 6 H), 3.25−3. 35 (bs, 27 H), 3.75−3. 85 (bs, 6 H), 4.05−4.25 (m, 2 H), 4.35−4. 40 (bs, 6 H), 7.10−7. 40,7. 90−8.15 (2 x m, 16 H), 8.60−9. 00 (bs, 8 H).
【0276】
化合物42
5,15−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化56】

【0277】
これは、メータ、ゴヴァーダン;ムスサミ、センゴダゴウンダー、マイヤ、バスカーG,;アロウナグイリ、S.著、ジャーナル.ケミカル.ソサイエティ.パーキン トランス.(Mehta, Goverdhan;Muthusamy,Sengodagounder, Maiya, Bhaskar G.;Arounaguiri,S., “J.Chem. Soc. Perkin Trans.)1;2177−2182(1999)の記載通りに調製される。
【0278】
化合物43
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−オクチルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化57】

【0279】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)を溶解し、炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)をアルゴン下で無水DMF(50mL)に懸濁し、混合物を55℃に加熱する。臭化オクチル(35.8μl、0.206mmol、0.7当量)を無水DMF(10mL)に溶解してなる溶液を30分間滴下し、混合物を55℃で2時間攪拌する。溶剤を真空下50℃で除去し、水(80mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3x40mL)で抽出する。組み合わせた有機留分を乾燥し(NaSO)、溶剤を蒸発させる。残留物をシリカゲルのカラム(300g)上でクロマトグラフィにより精製する。テトラ−アルキル化とトリ−アルキル化された化合物をトルエン:酢酸エチル(30:1容量)で溶出する。第3番目の留分(ジ置換された化合物、トランス異性体)をトルエン:酢酸エチル(15:1容量)で溶出する。第4番目の留分(ジ置換された化合物、シス異性体)をトルエン:酢酸エチル(10:1容量)で溶出し、所望の生成物(モノアルキル化化合物)をトルエン:酢酸エチル(5:1容量)で溶出する。溶媒を減圧下で除去し、残留物を高真空下で乾燥し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ(300 MHz, d6−アセトン):0.75 (t, 3H, J= 6. 8 Hz), 1.13−1. 25 (m, 8H), 1.43 (quint, 2H, J= 7.5 Hz), 1.73 (quint, 2 H, J= 7.5 Hz), 3.50 (t, 2H, J = 8 Hz), 7.11 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 7.16 (d, 6 H, J= 7.5 Hz), 7.90−7. 94 (m, 8H), 8.80−8. 90 (m, 8 H)
【0280】
化合物44
5−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化58】

【0281】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)を無水DMF(50mL)中にアルゴン下で溶解し、炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)を懸濁し、混合物を55℃まで加熱する。臭化ドデシル(49.4μl、0.206mmol、0.7当量)を無水DMF(10mL)に溶解した溶液を30分間滴下する。混合物を55℃で2時間攪拌する。溶剤を真空下50℃で除去し、水(80mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3x40mL)で抽出する。組み合わせた有機留分を乾燥し(NaSO)、溶剤を蒸発させる。生成物をシリカのカラム(300g)上でクロマトグラフィにより単離する。テトラアルキル化化合物とトリアルキル化化合物をトルエン:酢酸エチル(30:1容量)で溶出し、ジ置換化合物(トランス異性体)をトルエン:酢酸エチル(15:1容量)で溶出し、ジ置換化合物(シス異性体)をトルエン:酢酸エチル(10:1容量)で溶出し、所望の生成物(モノ−アルキル化化合物)をトルエン:酢酸エチル(5:1容量)で溶出する。真空中で溶剤を除去し、残留物を高真空で乾燥し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ (300 MHz, d6−アセトン):0.75 (t, 3H, J= 6.8 Hz), 1.13−1. 25 (m, 16H), 1.41 (quint, 2H, J= 7.5 Hz), 1.63 (quint, 2 H, J= 7.5 Hz), 3.89 (t, 2H, J = 6 Hz), 7.11 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 7.16 (d, 6H, J = 7.5 Hz), 7.9−7. 94 (m, 8H), 8.78−8, 83 (m, 8 H)
【0282】
化合物45
5,10,15−トリス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−20−(4−ノニルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化59】

【0283】
5,10,15,20−テトラキス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ポルフィリン(200mg、0.294mmol)を溶解し、炭酸カリウム(487mg、3.53mmol、12当量)をアルゴン下で無水DMF(50mL)に懸濁し、混合物を55℃まで加熱する。臭化ノニル(49.4μl、0.206mmol、0.7当量)を無水DMF(10mL)に溶解した溶液を30分間滴下する。混合物を55℃で2時間攪拌する。溶媒を真空中50℃で除去し、水(80ml)を添加し、混合物を酢酸エチル(3x40mL)で抽出する。組み合わされた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、溶剤を減圧下で除去する。生成物をシリカのカラム(300g)上でクロマトグラフィにより単離する。テトラアルキル化およびトリアルキル化された化合物をトルエン:酢酸エチル(30:1容量)で溶出し、ジ置換化合物(トランス異性体)をトルエン:酢酸エチル(15:1容量)で溶出し、ジ置換化合物(シス異性体)をトルエン:酢酸エチル(10:1容量)で溶出し、所望の生成物(モノ−アルキル化化合物)をトルエン:酢酸エチル(5:1容量)で溶出する。減圧下で溶剤を除去し、残留物を高真空で乾燥し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ(300 MHz, d6−アセトン):0.87 (t, 3H, J= 7.5 Hz), 1.14−1. 26 (m, 10H), 1.41 (quint, 2H), 1.70 (quint, 2H, J = 7.5 Hz), 3.92 (t, 2H, J= 7.5 Hz), 7.02 (d, 2H, J = 8.25 Hz, ), 7.15 (d, 6H, J = 7.5 Hz, ), 7.85 (d, 2H, J = 8.25 Hz), 7.91 (d, J= 7. 5Hz), 8.76−8, 84 (m, 8 H)
【0284】
化合物46
5−(4−オクチルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−三塩化ポルフィリン
【化60】

【0285】
化合物43(50mg、0.063mmol)と(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(164mg、0.63mmol、10当量)を無水DMF(30mL)にアルゴン下で溶解し、炭酸カリウム(130mg、0.95mmol、15当量)を懸濁し、混合物を55℃で12時間攪拌する。溶剤を真空中50℃で除去し、残留物をシリカのパッド(2cm深さ)に通す。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い流し、生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶剤を減圧下で除去し、残留物を溶離剤としてn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1容量、上相)を使うセファデックスLH−20のカラム(100g)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を減圧下で除去し、残留物をメタノールに溶解し、溶離剤としてメタノールを使う陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA400、塩化物形)の小さなカラムを通過させる。溶剤を蒸発させた後、粗生成物をメタノールとジエチルエーテルの最小の添加量(50mL)に溶解する。溶液を15分間遠心分離する。上澄みの液を蒸発させて乾燥し、残留物を高真空で乾燥し、紫色の固体として生成物を得る。
H−NMR:δ (300MHz, CD0D):0.90 (t, 3H, J= 7.5 Hz), 1.25−1. 41 (m, 8H), 1.45 (bs, 2H), 1.87 (bs, 2H), 2.38 (bs, 6H), 3,29(bs, 27H), 3.67 (t, 6H, J= 7. 5 Hz), 4.01 (t, 2H, J= 7. 5 Hz), 4.30 (t, 6H, J= 7.5 Hz), 7.11 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 7. 38 (d, 6H, J= 7.5 Hz), 7.95 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 8.11 (d, 6H, J= 7. 5 Hz), 8.93 (bs, 8H)
【0286】
化合物47
5−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−三塩化ポルフィリン
【化61】

【0287】
化合物44(50mg、0.059mmol)と(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(154mg、0.59mmol、10当量)をアルゴン下で無水DMF(30mL)に溶解し、炭酸カリウム(122mg、0.885mmol、15当量)を懸濁し、混合物を55℃で12時間攪拌する。溶剤を真空中50℃で除去し、残留物を少量のメタノールに再び溶解し、シリカのパッド(2cmの深さ)に通す。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い流す。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶剤を減圧下で除去し、粗生成物を更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1容量、上相)を溶離剤として使ってセファデックスLH−20のカラム(100g)上でクロマトグラフィにより精製する。減圧下で溶剤を除去し、残留物を少量のメタノールに再び溶解し、その溶液を溶離剤としてメタノールを使う陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、塩化物形)の短いカラムに通す。溶剤を除去した後、粗生成物を、最小量(50mL)加えられるメタノールとジエチルエーテルに再び溶解する。溶液を15分間遠心分離にかける。上澄みの液体を蒸発させて乾燥させ、高真空で乾燥させて生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ (300MHz, CD0D):0.88 (t, 3H, J= 7.5 Hz), 1.25−1. 37 (m, 16H), 1.48 (bs, 2H), 1.93 (bs, 2H), 2.42 (bs, 6H), 3,28 (bs, 27H), 3.68−3. 75 (m, 6H), 4.05 (t, 2H), 4.33 (t, 6H), 7.17 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 7.33 (d, 6H, J= 7. 5 Hz), 7.99 (d, 2H, J=7. 5Hz), 8.08 (d, 6H, J=7. 5Hz), 8.85 (bs, 8H)
【0288】
化合物48
5−(4−ノニルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−三塩化ポルフィリン
【化62】

【0289】
化合物45(50mg、0.062mmol)と(3−ブロモプロピル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(162mg、0.62mmol、10当量)をアルゴン下で無水DMF(30mL)に溶解し、炭酸カリウム(128mg、0.93mmol、15当量)を懸濁し、混合物を55℃で12時間攪拌する。溶剤を真空中50℃で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、シリカのパッド(2cm深さ)に通す。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い流す。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶剤を減圧下で除去し、生成物を更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(100g)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を減圧下で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、溶液を溶離剤としてメタノールを使う陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、塩化物形)の短いカラムに通す。溶剤を除去した後、生成物を高真空で乾燥し、紫色の固体を得る。
H−NMR:δ (300MHz, CD0D):0. 89 (t, 3H, J= 7.5 Hz), 1.18−1. 34 (m, lOH), 1.41 (bs, 2H), 1.73 (quint, 2H, J= 7.5 Hz), 2.30−2. 44 (m, 6H), 3,31 (bs, 27H), 3.65−3. 73 (m, 6H), 3.93 (t, 2H, J= 7.5 Hz), 4.25−4. 42 (m, 6H), 7.08 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 7. 30 (d, 6H, J= 7.5 Hz), 7.93 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 8.05 (d, 6H, J= 7.5 Hz), 8.94 (bs, 8H)
【0290】
化合物49
5−(4−オクチルオキシ−フェニル)−10,15,20−トリス−[4−(5−トリメチルアンモニオ−ペンチルオキシ)−フェニル]−三塩化ポルフィリン
【化63】

【0291】
化合物43(23mg、0.03mmol)と(5−ブロモペンチル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(84mg、0.3mmol、10当量)をアルゴン下で無水DMF(15mL)に溶解し、炭酸カリウム(62mg、0.45mmol、15当量)を懸濁し、混合物を55℃で12時間攪拌する。溶剤を真空で50℃で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、シリカのパッド(2cm深さ)に通す。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い流す。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶剤を減圧下で除去し、生成物を更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1容量、上相)を溶離剤として使用するセファデックスLH−20のカラム(100g)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を減圧下で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、溶液を溶離剤としてメタノールを使う陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、塩化物形)の短いカラムに通す。生成物に不純物が残っている場合は、完全な精製過程を繰り返す。溶剤を除去した後、残留物を高真空で乾燥し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ(300MHz, CD0D):0.78 (bs, 3H), 1.08−1.35 (m, lOH), 1.45−1.59 (m, 6H), 1.63−1. 93 (m, 14H), 3.17−3. 32 (m, 6H), 3,31 (bs, 33H), 3.84 (bs, 2H), 4.07 (bs, 6H), 6. 93 (bs, 2H), 7.09 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 7.74 (bs, 2H), 7.88 (d, 2H, J= 7.5 Hz), 8.71 (bs, 8H)
【0292】
化合物50
5,10,15−トリス−[4−(5−トリメチルアンモニオ−ペンチルオキシ)−フェニル]−20−(4−ウンデシルオキシ−フェニル)−三塩化ポルフィリン
【化64】

【0293】
化合物2(50mg、0.06mmol)と(5−ブロモペンチル)−トリメチルアンモニウムブロマイド(174mg、0.6mmol、10当量)をアルゴン下で無水DMF(30mL)に溶解し、炭酸カリウム(124mg、0.9mmol、15当量)を懸濁し、混合物を55℃で12時間攪拌する。溶剤を真空中50℃で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、シリカのパッド(2cm深さ)に通す。未反応のアンモニウム塩をメタノール(1000mL)で洗い流す。生成物を酢酸:メタノール:水(3:2:1容量)で溶出する。溶剤を減圧下で除去し、生成物を更にn−ブタノール:水:酢酸(4:5:1容量、上相)で溶出するセファデックスLH−20のカラム(100g)上でクロマトグラフィにより精製する。溶剤を減圧下で除去し、残留物を少量のメタノールに再溶解し、溶液を溶離剤としてメタノールを使う陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRC400、塩化物形)の短いカラムに通す。生成物に不純物が残っている場合は、完全な精製過程を繰り返す。溶剤を除去した後、残留物を高真空で乾燥し、生成物を紫色の固体として得る。
H−NMR:δ (300MHz, MeOD):0.71−0, 88 (m, 13H), 0.91−1. 38 (m, 14H), 1.48− 1.81 (m, 12H), CHNCH 及び OCHの長いアルキル鎖の信号は下記区域の溶剤の信号と共に多重線の一部である:2.8−3. 3, 3.91 (bs, 6H), 6.33 (bs, 2H), 6.86 (bs, 6H), 7.35 (bs, 2H), 7.70 (bs, 6H), 8.65 (bs, 8H)
【0294】
化合物51
5,10,15,20−テトラキス−(3−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン
【化65】

【0295】
ピロール(0.7mL、10mmol)と3−ドデシルオキシベンズアルデヒド(2.91g、10mmol)を脱気ジクロロメタン(1000mL)に溶解し、TFA(0.77mL、10mmol)を滴下する。混合物を光なしで室温で17時間攪拌する。DDQ(6.81g、30mmol)を一度に添加し、混合物を室温で更に1時間攪拌する。混合物を、溶離剤としてジクロロメタンを使い、次にジクロロメタンを使ってシリカゲルのカラム(400g)に通して濾過し、トリエチルアミンを添加して、pH値を8に調整する。生成物に不純物が残っている場合、純粋な生成物が得られるまで、この精製方法を繰り返す。
H−NMR:δ (300 MHz, d6−アセトン):0.80 (bs, 12H), 1.03−1. 45 (m, 80H), 1.78 (quint. , 8H, J= 7.5 Hz), 4.05 (t, 8H, J= 7. 5 Hz), 7.24 (d, 4H, J= 7.5 Hz), 7.49−7.55 (m, 4H), 7.68−7 71 (m, 8H), 8.80 (m, 8 H)
【0296】
実施例B:細菌の細胞に対する実施例化合物の非特効(光のない毒性)概略および光力学的活性(光毒性)概略
【0297】
方法論
二種類の細菌の菌株、グラム陰性細菌である大腸菌(菌株ATCC 25922)とグラム陽性細菌である黄色ブドウ球菌(メシチリン耐性菌ATCC BAA−44)に対する本発明の実施例化合物の毒性効果を、光のない状態と光に曝した場合において、成長阻害(静菌効果)と成長阻害(細胞破壊効果)の程度を測定することにより評価した。最初の化合物の精査は、白光[390〜740nm](150mW/cm)を使って、様々な時点で、濃度3μMで行われた(表1参照)。この最初の精査から確認されたこれらの化合物について、波長417〜420nmで、15.2mW/cm、13.68J/cmで光を発する光源(ワルドマン・エクレラージ・エスエイ社製、フランス)を使って、更に別の実験を行った。(表2参照)。
【0298】
下記の実験計画は実施例化合物の最初の精査のために使われた(表1)(レッディら著、2002、フォトケミカル・フォトバイオロジー(Photochem. Photobiol.)、75(5):462−470参照):
(i)大腸菌と黄色ブドウ球菌を脳心臓浸出液寒天上で一晩成長させ、脳心臓滲出肉汁に再び懸濁し、遠心分離(3000g、15分間)により収穫し、pH7.4で2.7mMのKClと0.14MのNaClを含有するリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で1回洗浄した。
(ii)次に、その細胞を再びPBSに650nmで0.7の光学密度となるまで懸濁したが、これは10〜10細胞/mLの密度に相当する。
(iii)次に、試験化合物3.0μMを使って、5分間、光のない状態でPBS中で細胞を培養した。
(iv)光なしの培養後に、細胞に白光(波長:390〜740nm)(150mW/cm)を30分間まで照射した。照射の間、細胞を37℃に保ち、磁気を用いて攪拌した。
(v)最後に、処理した細胞と未処理の細胞(対照)を脳心臓滲出肉汁に希釈し37℃に維持したが、同時に成長曲線を測定するために予め決められた時点で懸濁液の吸光度を650nmで監視した。
【0299】
処理細胞の成長阻害の百分率を下記の方程式で計算した:
[1−(A−A)/(A−A)]x100
式中AXは処理細胞の懸濁液について3時間培養した後に測定した吸光度であり、ACは対照細胞の懸濁液について3時間培養した後に測定した吸光度であり、A0は最初の吸光度を示す。
【0300】
実施例化合物(表2)を更に調べるために、下記の実験計画が採用された:
(i)細菌(黄色ブドウ球菌BAA−44と大腸菌25922)を成長の静止相に達するまで脳心臓浸出液(BHI)肉汁で成長させた。
(ii)菌の細胞をテーブル遠心機で遠心分離(3000g、15分間)して収穫し、2.7mMのKClと0.14MのNaClを含有するpH7.4の10mMのPBSで洗浄し、10〜10細胞/mLの密度に相当する650nmの光学密度0.7でPBSに懸濁した。
(iii)細菌を所望の細胞密度(約108細胞/ml)で5分間、光なしで、実施例の化合物の様々な濃度で培養した。
(iv)培養期間の終わりに、細胞を3回PBSで洗浄し、PBSに懸濁し、96個の窪みのマイクロ滴定量プレート(200μl/窪み)に移し、15分間ワルドマンの光源(15.2mW/cm;13.7J/cm)で照射した。ランプのガラス蓋の上にプレートを置いて、プレートの底から細胞を照射した。
(v)照射した後、脳心臓寒天(BHA)上に、処理された細胞と未処理の(すなわち実施例の化合物も光も存在しない)細胞の連続的に希釈されたアリコートを平らに延ばし、37℃で18〜24時間培養した後に、コロニーの数を数えることにより細胞の生存率を測定した。
【0301】
【表1】

【0302】
結果
大腸菌および黄色ブドウ球菌における毒性研究の結果を表1と表2および図2と図3に示す(化合物構造については実施例A参照)。
【0303】
【表2】

【表3】

【0304】
結論
結果は、本発明の化合物は光を照射されると低い検査濃度でグラム陽性細菌とグラム陰性細菌の両方の細胞を殺すことが出来ることを示している。
【0305】
低投与量の化合物10の活性
上記コロニー形成単位(CFU)実験計画は、また、本発明の化合物の非常に低い濃度の光力学的活性を調べるために使用された。例えば、図4は光の存在下(光力学的特性)および光のない場合(固有の毒性特性)にいて、(A)化合物8と(B)化合物10を使って得られた結果を示している。
【0306】
結果
(i)化合物8と10は両方とも試験濃度でBAA−44に対して光のない場合の毒性が否定的であることを示した。
(ii)化合物8は0.01μMほどに低い濃度で強い抗細菌効果を示し、BAA−44における3対数減少が達成された。
(iii)化合物10は更に強い抗細菌効果を示し、濃度0.005μMでBAA−44における3対数減少をもたらし、0.0025μMで細菌の90%を殺すことができた。
【0307】
結論
化合物8と10は非常に低い投与量でさえも細菌の細胞に対して投与量依存および光依存の毒性を示す。
【0308】
抗微生物活性の範囲
【0309】
化合物10の抗細菌活性試験が一定の範囲の細菌菌株に対して行われた:
黄色ブドウ球菌ATCC BAA−44(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
緑膿菌ATCC 25668
表皮ブドウ球菌ATCC 700565
化膿連鎖球菌ATCC 49117
大腸菌ATCC 25922
【0310】
【表4】

【0311】
結論
化合物10はグラム陽性およびグラム陰性の細菌に対して広い範囲の光力学的活性(すなわち、光毒性)を示す。
【0312】
生体外ブタの皮膚上のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する化合物10の光力学的活性
【0313】
削り取られたブタの皮膚を無菌状態で3(4)x3(4)cmの切片に切り分け、コロニー化した細菌の背景を減らすために70%エタノール中に5分間放置した。ブタの皮膚切片をPBSで3回洗浄した後、ヘペス寒天と共にペトリ皿に固定した。次に、表皮(角質層)を黄色ブドウ球菌ATCC BAA−44(約10,容量:100μl)と共に培養し、肉眼で乾燥が分かるまで層流キャビネットの下で皮膚の表面を乾燥させた。関心の領域を“パップ”ペン(直径1cm)を使って測定した。化合物10の無菌溶液(10μM)を10分間ブタの皮膚に塗布した。塗布した後、生体外のブタの皮膚をワルドマン光源236の下に置き、15分間照射した(15.2mW/cm,13.7J/cm)。角質層から細菌を除去するために無菌の綿棒を用いて、照射直後に生存能力のある細菌の細胞数を測定するために、コロニー形成単位分析検査が行われた。無菌の綿棒を試料の溶液(0.1%ツイーン80を0.0075Mリン酸塩緩衝液pH7.9に溶解したもの)で湿らせてから皮膚の表面に(3回)塗りつけ、試料の溶液中でかき回してから連続希釈を行い、細菌の回復を測定した。
【0314】
化合物10(10μM)で培養し、15分間照射したのち、3.2log10の成長減少(3標的区域の平均値)が得られた。それに対して、対照実験(化合物10の培養なしで、塗布された細菌の照射)は細菌の細胞数の減少を示さなかった。
【0315】
従って、これらのデータは、皮膚の脂質および酵素の存在下でさえも、ブタの皮膚の表面上にあるMRSAに対する化合物10の光力学的活性を実証している。
【0316】
アジ化ナトリウムとDOを使う光力学的特性の確認
【0317】
Oとアジ化物を用いる消光研究が生体外でケラチン生成細胞に対して化合物10と光を使って行われた。正常ヒト線維芽細胞(NHDF)、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)、細菌に対する試験化合物の光毒性が光・酸化型IIの結果として起こるかどうかを調査するために、単一線の酸素の物理的消光剤アジ化ナトリウムばかりでなく反応性酸素種の強化剤DOを使用した(リンら著、1991年、キャンサー・リサーチ51:1109−1116; モーンら著1979年、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー39:398−407)。
【0318】
図5は化合物10と消光剤または化合物10とDOで培養し照射した後の効果を示す。化合物10により細胞を殺すことは、細胞の生存力の増加により示されるように、アジ化ナトリウムの存在下で減少しているが、DOの添加は細胞生存力の劇的な減少を現している。
【0319】
結局、正常ヒト線維芽細胞(NHDF)を化合物10と照射で殺すことは、主として単一線の酸素により仲介され、化合物自体によるものではないようである。
【0320】
化合物10の急性毒性試験
【0321】
標準的急性毒性試験において、原則的調合物に百万倍の抗菌投与量(3.2mM)で化合物10を使用し、その化合物に臨床的あるいは組織学的毒性が検出されるかどうかを測定した。その化合物を無傷のラットの皮膚とすりむいたラットの皮膚に24時間塗布した。
【0322】
急性毒性実験計画は化学品の試験に関するOECDガイドライン/セクション4−健康影響試験番号402:急性皮膚毒性を根拠としている。
【0323】
結果と結論
臨床的観察、肉眼観察、顕微鏡観察の後で、臨床的毒物学は観察されなかった。主要な器官(皮膚を含む)の組織学的毒物学は観察されなかった。マスト細胞を含めて全ての細胞の浸潤も見られず、刺激もなかった。
【0324】
結論として、化合物10は何ら急性毒性またはアレルギー性影響も示さなかった。事実、その物質およびその担体の塗布に関して重大な臨床的または病理学的徴候は観察されなかった。
【0325】
化合物10の光毒性試験
【0326】
光毒性実験計画は化合物の試験に関するOECDガイドライン/セクション4−健康影響−試験番号406:皮膚の感作を根拠としている。
【0327】
予備的な実験により、30分の光曝露は光源によって皮膚の表面に何ら損傷が引き起こされないことを測定した。同様に、対照実験により、化合物10は光がない場合に32μMの濃度で塗布されても皮膚の表面に何ら損傷を引き起こさないことが実証された。局所的調合物における化合物10の光毒性は、14匹のモルモットの皮膚に(無傷と擦り傷)24時間塗布し、その後30分間光に曝した場合について調査した。化合物10を2種類の濃度32μMと0.32μMで試験した。皮膚の試験部位の臨床的および組織学的検査が古典的な光毒性試験方法で照射後24時間と72時間で行われた。傷の縫い合わせの場合の相互作用を防ぐために、隣接する部位からの生検は行われなかった。生検の瞬間には肉眼の所見が評価された。各終点(紅班、浮腫、炎症)に対する点数を付ける前に、各被験者のデータを他の動物のデータおよび対照データと比較した。0〜4の点数がドレイズ・スケール(Draize Scale)に従って各部位および各終点に対して与えられた(炎症について、全ての皮膚の部分を顕微鏡で観察した後、正常な皮膚と工程1の所見とを比較して、ドレイズ・スケールに類似の計りが造り出された)。次に、平均の点数を各動物について、各試料時点について計算した。
【0328】
その結果を分析し、その実験データを対照動物のデータと比較したところ、化合物10の光毒性の可能性を示唆する臨床的信号または徴候または組織学的所見が全くないことが結論づけられた。
【0329】
実施例C:本発明の実施例化合物と細菌の細胞との結合
【0330】
化合物8、10および12と大腸菌の結合
【0331】
大腸菌を様々な濃度(1〜7.5μM)の化合物8,10または12で5分間培養した。培養時間の終わりに、細胞を遠心分離により沈殿させて結合されなかった試験化合物の留分を除去し、細胞のペレットを2mLの2%SDSに再び懸濁し、細胞の溶解物を得た。SDSで一晩培養した後、細胞の結合した試験化合物の量を細胞溶解物の分光蛍光計分析により評価した。細胞溶解物中の化合物の濃度は放射蛍光スペクトルの最大値における強度を測定し、そのデータを目盛りプロットに外捜して計算された。細胞に結合した試験化合物の量は細胞の蛋白質の1mg当たりの化合物のnモルとして表された。蛋白質濃度はロウリーの方法により測定された(ロウリーら著、1951年、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、193:265−275)。
【0332】
全ての実験は3回行って、結果を3回の測定値の平均に標準偏差を付けて表している。
細胞から回収されたポルフィリンの量を表4に示す。
【0333】
【表5】

【0334】
表4に示される結果は、3つの試験化合物が同様の効能を伴って大腸菌に結合しており、培養時間(5分間)の終わりに細胞と連結している化合物の約50%がPBSで3回洗浄することにより除去されることを示している。
【0335】
実施例D:PDTランプに対する細菌の耐性の出現に関する実施例化合物の試験
【0336】
(メチシリンを含めて)多数の薬に耐性を有するグラム陽性細菌黄色ブドウ球菌BAA−44において、本発明実施例化合物に対する細菌細胞の耐性の潜在的蓄積が、光力学的薬剤として化合物10を用いて試験された。第二処理を施した後の黄色ブドウ球菌BAA−44の生存率をPDTランプで処理されなかった黄色ブドウ球菌BAA−44の生存率と再び比較した。PDTランプに対する黄色ブドウ球菌BAA−44の感受性が一定のままであったかどうか、あるいは繰り返し処理された後いくらかの耐性の発現が観察されたかどうかを検査するために合計10回同じ処理を繰り返した。別の実験では、上記方法論によりPDTランプ処理に9回曝されたクローンに10回目の処理を施し、その結果と、未処理の培養細胞(すなわち、PDTランプに曝されなかったもの)を、正確に同じ条件で、PDTランプ処理を受けさせた場合の平衡実験において観察された細胞の死滅とを比較した。10回のPDTランプ処理の後で得られた結果を図6に示す。
【0337】
未処理の培養細胞(すなわち、PDTランプに曝されなかった細胞)と10回連続的PDT処理に曝した培養細胞から得られた細胞死滅とを比較して得られた結果を図7に示す。生存率は対数N/Nとして表されるが、式中NとNは未処理と処理の細胞の懸濁液のコロニー形成単位CFU/mlの数を示す。T試験による統計的分析は、2つの値の差は有意ではないことを実証した(P>10%):
【0338】
結論
化合物10による黄色ブドウ球菌ATCC BAA−44の感光性は評価できるほどには耐性を発達させなかった。事実、前の処理で光に曝された細菌の細胞が培養され、化合物10と光に再び曝されたとしても、化合物10の光力学的活性の効能の変化は10回連続する光力学的連続期間に見られなかった。従って、多数の薬剤の耐性が重大な問題である場合に、抗生物質の治療とは異なり、光力学的方法で化合物10を使う細菌の処理は、細菌の耐性を誘導することが全くないので更に評価が高められる。
【0339】
実施例E:毒性の概略 − 細菌に対する実施例化合物の選択性
【0340】
方法論
ドイツのセルシステムズ・バイオテクノロジーGmbHから購入した正常なヒト表皮角化細胞(NHEK)およびヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を使って培養されたヒト皮膚細胞に対する毒性について試験化合物を精査した。
【0341】
NHEKとNHDFの細胞をパッセージ(passage)3と10の間で使用した。細胞は7.5および/または15x10細胞/窪み(マイクロ滴定皿)を接種され、培養器(37℃、5%CO)の中で一晩接触させたままにしておいた。様々な濃度の選ばれた感光剤で培養したのち、細胞は15分間照射され(光源236、ワルドマン;15.2mW/cm, 13.7J/cm)、次に光なしで24時間培養された。
【0342】
光毒性は標準MTT分析検査により試験された(モッスマンら著、1983年、イミューノロジカル・メソッド65:55−63)。MTTは代謝が活性な細胞の標識である。ミトコンドリアの酵素活性に依存して、色の反応が視覚化でき、ELISA読み取り機により測定することができる(540nm)。細胞の生存力データが標準化される、すなわち感光剤を使わないでPDTランプ処理した後の細胞のOD値が一つに調整された。それぞれの実験は3回繰り返された。
【0343】
結果
角化細胞と線維芽細胞における毒性研究の結果が表5に示される。
【0344】
【表6】

【表7】

【0345】
図8はヒト線維芽細胞と黄色ブドウ球菌BAA−44に対する化合物8の様々投与量における毒性を示す。
【0346】
結論
上記データは、本発明の化合物、例えば化合物8(0.01μMの投与量で)、化合物12(0.1μM)、化合物10(0.01μMの投与量で)は、人の皮膚細胞に比べて細菌の細胞に対して優先的に毒性を示す事を実証している。
対照的に、参考化合物1は細菌の細胞とヒトの細胞に対して等しい毒性を示している。
【0347】
実施例F:安定性の研究
【0348】
方法論
適切な波長(417nm)の光を放射することのできる注文の光源が試験化合物を活性化するために開発された(ワルドマン光源236)。この光源は室温(25℃)で3分後に15mW/cmの光強度を有し、光投与量14J/cmを産出する。それは光の箱(長さ493mmx幅278mmx高さ93.3mm)からなり、試験される試料が光の箱の上部表面に置かれ、下から照射される。
【0349】
化合物10の光安定性
【0350】
実施例化合物の光安定性は標準光力学的手法を使って調べた。化合物10の10μM溶液を上記で説明したように、リン酸塩緩衝食塩水/エタノールに溶解して調製し、最大の吸光度417nmを有する光源を使って青い光(15mW/cm)を照射した。その溶液を様々な時間:10分、20分、30分間照射した。それぞれの予め決められた照射時間の後、化合物の最大吸収ピークに相当する404nmでの吸光度を測定した。平衡実験を行い、照射時間と同じ時間光のない状態に保たれた化合物10溶液の吸光度を測定した。照射時間30分以上で、404nmで吸光度の値に僅かに低下が観察された(図10A参照)。
【0351】
更に高い感化率(150mW/cm;例えば正常に使用された場合の10倍)の光に曝された場合の光漂白に対する化合物10の感受性を調べた。この照射方法で、その溶液を照射する間は石英のキュベットに保存し、同時に当量の溶液を光のない状態に保存する。光漂白により引き起こされた吸光度は、10μMの濃度で30分照射した後、約15−20%の減少を示すことが判明した(図10B参照)。
【0352】
以上の結果は、化合物10は、文献(例えば、レッディら著、2002年、フォトケミカル−フォトバイオロジー、75:462−470)で周知の、他のポルフィリンより遙かに少ない光漂白を受ける事を示している。
【0353】
化学安定性
【0354】
本発明の実施例化合物の分析のために、下記の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)方法論を確立した。
【0355】
その方法は、これらの化合物にとって非常に特有である420nmの波長でUVに依る検出を行うものである。確実な実験では、ポルフィリン構造に関係のない(従って、420nmで吸収しない)不純物をモニターするために、全クロマトグラムのUVスペクトルもDAD(ダイオード配列検出器)により実験では200nm〜700nmの範囲で記録された。
カラム ゾルバックス・フェニル、250x4.6mm、5μm
溶離剤A:1.5gのドデシル硫酸ナトリウム+1000mLの水に1mLの蟻酸
溶離剤B:1.5gのドデシル硫酸ナトリウム+200mLの水に1mLの蟻酸
+800mLのテトラヒドロフラン
勾配図表:
【表8】

流速:0.4mL/分
検出:420nm
カラム温度:25℃
注射容量:10μL
溶液:ポルフィリン誘導体を溶離剤Aに溶解し、約0.3mg/mlの最終濃度を得る。
実施例化合物の典型的な保持時間は約8分(18分の実施時間)であった。
【0356】
本発明の実施例化合物について、定性応力試験を行った。分析はHPLCおよびLC−MSにより行った。化合物を固形、水溶液、燐酸塩緩衝食塩水緩衝液で作られた溶液で応力試験を行った。試料を最初7日間50℃で培養し、試験のために試料を取り出した。次に試料を更に7日間70℃で培養し、前と同様に試料を取り出し、その試料を更に7日間90℃で培養した。新たに用意された溶液のHPLC分析を行って、7日培養後、14日培養後、21日培養後の試料と比較した。次に、クロマトグラムの肉眼による比較を行い、主な生成物と副生成物の内容を区域の百分率の値として測定した(図11参照)。
【0357】
クロマトグラムの3Dプロットは、破片の追加形成について何も表示しない(更に低い波長でも何の徴候も示さない)。
【0358】
図12のプロットはPBS緩衝液に21日間浸けた後の試料を示しているが、それは最も大きな劣化効果を示した。その結果は、数週間80℃に加熱された固形薬剤および溶液薬剤の分析で最小の劣化を実証した。
【0359】
結論
化合物10と12は両方とも優れた安定性を示すことが判明し、試験実験計画の応力を加えた条件下でさえも非常に安定だった。化合物8は化合物10と12より少し安定性に欠けたが、実証された安定性は実用的に満足であることが判明した。
【0360】
調合物中の実施例化合物の安定性
本発明の3つの実施例化合物(化合物8,10,12)および1つの参考化合物(化合物1)を40℃で光なしの状態で8週間以上ポリエチレンの小瓶に様々な水溶性調合物として貯蔵した場合の安定性を下記のように評価した:
− 硫酸ラウレスナトリウム(SLES)+水
− 9:1水:エタノール
− SLES+9:1水:エタノール
紫外線スペクトルを350−700nmの範囲で7週間に亘り記録し、8週間で試料を肉眼で評価した。
【0361】
結果は、試験した全ての化合物は8週間にわたり優れた安定性を示したことを指摘している。
【0362】
化合物8と10について、安定性の研究を17週間まで延長した(図14参照)。
【0363】
実施例G:分布研究
【0364】
ヒト皮膚分布
【0365】
フランツ細胞システムの人の皮膚(無傷)を使って、高濃度で22時間培養した後の皮膚の区画内における化合物10と12の分布を調べた。調合物当たり3つの別々の実験を行ったが、各実験で一つの皮膚の試料(同じ提供者から取った皮膚)を使った。各調合物250μlを閉鎖下で塗布され、22時間後に除去された。皮膚を分離し、角質層、表皮、真皮中の化合物含有量および受容体溶液をHPLCで測定した。
【0366】
以下の高速液体クロマトグラフィ(HPLC)方法論を本発明の実施例化合物の分析のために設定した:
HPLCシステムの詳細:TSP SCM1000脱気用膜、P4000四基ポンプ、AS3000オートサンプラ、UV6000LP UV/Vis PDA検出器、SN4000コントローラ、PC1000 Ver. 3.5.1ソフトウエア。ゾルバックスSB−フェニル、5μm、250x4.6mmカラム+フェニル・セキュリティ・ガード・カートリッジ(フェノメネックス)。移動相:550mL水、450mLテトラヒドロフラン;1.5gドデシル硫酸ナトリウム、および1mL蟻酸、流速0.8mL/分。注入容量は50μL(フル・ループ注入)で、作業温度は25℃であった。検出器を波長409nm+UV/Visスキャン(240−752nm、ステップ4nm)に設定した。実施例化合物の代表的保持時間は約8分(18分実施時間)。
【0367】
皮膚に結合された化合物の大部分は角質層に存在することが判明した。表皮では低濃度(約0.01μM)、すなわち抗細菌の可能性の濃度が検出された。真皮で検出された濃度は更に低かった(約0.002μM)。受容体液の中には化合物は検出されなかった。
【0368】
【表9】

【0369】
【表10】

【0370】
結果と結論
ヒト皮膚分布研究の結果を上記表6と表7に示す。
【0371】
重要な所見は下記の通りである:
(i)化合物10の大部分は角質層の表面から回収された。
(ii)濃度はずっと低いが、抗細菌の可能性のある濃度の化合物10が角質層内で回収された。
(iii)エタノールがない場合、治療性がやや低い濃度の化合物10が表皮と真皮に見られた。
(iv)エタノールの存在下で、更に高い濃度の化合物10が表皮に見られた。
(v)真皮に達する抗細菌の可能性のある濃度の化合物10をもたらす調合物はなかった。
(vi)受容体相において非常に低い濃度の化合物10が検出された唯一の調合物は硫酸ラウレスナトリウム(SLES)を含有するものだけだった。
(vii)皮膚における化合物10の分布は或る程度まで使用された調合物によって操作された。
【0372】
ヒト皮膚細胞の分布:イメージング研究
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)と正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)における染料の細胞下分布を調べた。NHDFは一晩顕微鏡のスライド上で成長させ、次に、その細胞を化合物10で5分間、1時間、4時間、単独で培養した、あるいは培養された細胞を細胞小器官特定の染料で同時染色した。リソソームとミトコンドリアに標識を付けるために、リソトラッカーグリーン(モレキュラー・ブローベス(分子探査))とローダミンG6(シグマ)をそれぞれ使用した。培養直後に、細胞下の位置測定を蛍光顕微鏡(ドイツのザイス・ファリオ・アクシオテック社製)により励起と放射のために適切な二重帯フィルターセット(オメガ・オプチカル)を使って検査した。適切なソフトウエア・アプリケーションを使って、光顕微鏡写真上にディジタルの写真(蛍光)を透明に重ねることができる。従って、染料の分布を一つの画像により位置測定できる。更に、様々なカラ−画像を使っていくつかのディジタル写真を重ねることも可能である。
【0373】
NHDF細胞を一晩顕微鏡のスライド上で成長させた。その後で、細胞を1μMの化合物10(グリーンの蛍光)で1時間培養し、(A)ミトコンドリア用細胞小器官特定染料(ローダミンG6;50ng/ml、5分;赤色蛍光)と核用細胞小器官特定の染料(ヘキスト33342:青色蛍光)、または(B)リソソーム用細胞小器官特定染料(リソトラッカーグリーン;10μM、2時間;緑色蛍光)および核用細胞小器官特定染料(ヘキスト33342;青色蛍光)で同時染色した。細胞下の位置測定を蛍光顕微鏡(ドイツのザイス・ファリオ・アクシオテック社製)により励起と放射のために適切な二重帯フィルターセット(オメガ・オプチカル)を使って検査した。同時配置を黄色蛍光に合流させた。
【0374】
(A)リゾチームと(B)ミトコンドリアの同時染色でない染色を図15に示す。
【0375】
図16は1時間1μMの化合物10で培養されたNHDFの細胞内蛍光分布を示す。
【0376】
化合物10蛍光は核外に局在化され、ミトコンドリア特定ローダマインG6での同時染色により化合物10(緑色)とミトコンドリアの蛍光(赤色)の同時位置測定が得られた。同時配置を黄色蛍光に合流させた(図16)。
【0377】
リソソーム特定染料(リソトラッカーグリーン)での同時染色により、化合物10(赤色)とリソソームの蛍光(緑色)の異なる位置測定が得られた(図16)。
【0378】
結論
これらの研究では、化合物10の核結合は核材料に観察されなかったが、それはDNAに対する化合物活性の可能性が低いことを示しているかもしれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物であって:
【化1】

式中X、X、X、Xは、別個に、水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル、アルカリールまたはアラルキル基、または下記式のカチオン基を表す:
−L−R−N(R)(R)R
式中Lは結合部分であるかまたは存在しない;
は低級アルキレン、低級アルケニレンまたは低級アルキニレンを表し、低級アルキル、低級アルキレン(任意に、酸素で中断される)、フルオロ、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;そして、
、R、Rは別個に、H、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、低級アルキレン(任意に酸素で中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;
Zは−CHまたはNであり;
、Y、Y、Yは、欠けている、または別個に、アリール、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、後者の3つは低級アルキル、低級アルキレン(任意に酸素で中断される)、アリール、OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NR1011、N121314から選ばれた1個以上の置換基により任意に置換される;そして
、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14は別個に、Hまたは低級アルキルを表すが、
ただし、X、X、X、Xの少なくとも1個は上記に定義されたカチオン基であり、X、X、X、Xの少なくとも1個は水素原子であることを特徴とする化合物。
【請求項2】
下記式IIの化合物であって:
【化2】

式中Mは金属成分または半金属成分であり、
、X、X、X、Y、Y、Y、Y、Zは請求項1に定義されている通りであることを特徴とする化合物。
【請求項3】
Mが二価または三価の金属成分であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Mが、Zn(II)、Cu(II)、La(III)、Lu(III)、Y(III)、In(III)、Cd(II)、Mg(II)、Al(III)、Ru、Ni(II)、Mn(III)、Fe(III)、Pd(II)から選ばれることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Mが半金属成分、例えばシリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
、Y、Y、Yが存在しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項7】
Zが−CHであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項8】
が置換されない低級アルキレン基、低級アルケニレン基または低級アルキニレン基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項9】
が−(CH−であり、‘m’が1から20までの整数であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項10】
‘m’が1から10まで、例えば1から6まで、1から5まで、1から4まで、または1から3までの整数であることを特徴とする請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
‘m’が3であることを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
,Rおよび/またはRが低級アルキル基、低級アルケニル基または低級アルキニル基であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項13】
,Rおよび/またはRが置換されない低級アルキル基であることを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
、RおよびRの少なくとも1つが第一、第二または第三アミン基または第四アンモニウム基で置換されるアルキル基であることを特徴とする請求項12または13に記載の化合物。
【請求項15】
が−(CH−であり、RとRがCHであり、Rが−(CH−N(CHであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項16】
が−(CH−であり、RとRとRがそれぞれCHであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項17】
が−(CH−であり、RとRとRがそれぞれCであることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項18】
Lがフェノキシ、フェニレン、スルホニルアミド、アミノスルホニル、スルホニルイミド、フェニルスルホニルアミド、フェニルアミノスルホニル、尿素、ウレタン、カルバミン酸塩の結合部分から成る部類から選ばれることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項19】
、X、X、および/またはXが下記式で表され:
【化3】

式中Rは請求項1に定義されている通りに−R−N(R)(R)Rであり、‘n’は1から3までの整数であることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
、X、X、および/またはXが下記式で表され:
【化4】

式中Rは請求項1に定義されている通りに−R−N(R)(R)Rであり、‘m’は1から3までの整数であることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
、X、X、および/またはXが下記式で表され:
【化5】

式中Rはそれぞれ請求項1に定義されている通りに−R−N(R)(R)Rであり、‘n’と‘m’は1から3までの整数であり、‘n’と‘m’の合計が1から3までの整数であることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
‘n’または‘m’が3であることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項23】
‘n’または‘m’が2であることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項24】
‘n’および/または‘m’が1であることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つ、または請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
Lがパラ位置でモノ置換されていることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項26】
Lがメタ位置でモノ置換またはジ置換されていることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項27】
Lがオルト位置でモノ置換またはジ置換されていることを特徴とする請求項19〜21のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項28】
化合物が、請求項1に定義されている通りに、ポルフィリン環の両側、すなわち環の位置5と15または環の位置10と20に2つのカチオン基を有することを特徴とする請求項1〜27のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項29】
とXが水素原子、親油性部分、フェニル基、低級アルキル基、アルカリール基またはアラルキル基であり、XとXがカチオン基、またはその逆であることを特徴とする請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
化合物が、請求項1に定義されている通りに、ポルフィリン環の隣接する位置、すなわち環の位置5と10、または環の位置10と15、または環の位置15と20または環の位置20と5に2つのカチオン基を有することを特徴とする請求項1〜28のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項31】
とXが水素であり、XとXがカチオン基である、あるいはXとXが水素であり、XとXがカチオン基であることを特徴とする請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
、X、X、Xの少なくとも1つが親油性部分であることを特徴とする請求項1〜30のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項33】
親油性部分が式−(CHCHで表され、式中‘p’は1から22までの整数である飽和直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
‘p’が1から18まで、例えば2から16まで、または4から12までであることを特徴とする請求項30に記載の化合物。
【請求項35】
、X、X、Xのいずれも親油性部分ではないことを特徴とする請求項1〜32のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項36】
、X、X、Xのいずれもフェニル基ではないことを特徴とする請求項1〜35のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項37】
化合物が水溶性であることを特徴とする請求項1〜36のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項38】
化合物が5,15−ビス−(4−{3−[(3−ジメチルアミノ−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル−オキシ}−フェニル)−二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項39】
化合物が5,15−ビス−[4−(3−トリエチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項40】
化合物が5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項41】
化合物が5,15−ビス−[4−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項42】
化合物が5−[3,5−ビス−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−15−ウンデシル−二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項43】
化合物が5−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオ−プロピル−オキシ]フェニル}−15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項44】
化合物が3−[({3−[(3−{4−[15−(4−ドデシルオキシ−フェニル)−ポルフィリン−5−イル]−フェノキシ}−プロピル)−ジメチル−アンモニオ]−プロピル}−ジメチル−アンモニオ)−プロピル]−トリメチル−三塩化アンモニウムであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
化合物が5,15−ビス−[3−(3−トリメチルアンモニオ−プロピルオキシ)−フェニル]−10−ウンデシル−二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項46】
化合物が5−{4−[3−ジメチル−(3−トリメチルアンモニオ−プロピル)−アンモニオ−プロピルオキシ]−フェニル}−15−(4ドデシルオキシ−フェニル)−二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項47】
化合物が5−[4−(3−ジメチルデシル−アンモニオプロピルオキシ)−フェニル]−15−{4−[3−ジメチル−(3−ジメチルアミノプロピル)−アンモニオプロピルオキシ]−フェニル}−二塩化ポルフィリンであることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項48】
化合物が金属化の形をしていることを特徴とする請求項38〜47のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項49】
選択的光力学的治療剤として使用することを特徴とする請求項1〜48のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項50】
標的の微生物に対する化合物の毒性がほ乳類の細胞に対する該化合物の毒性の少なくとも2倍である、例えば、少なくとも3倍である、少なくとも4倍である、少なくとも5倍である、少なくとも6倍である、少なくとも8倍である、少なくとも10倍である、少なくとも15倍である、あるいは少なくとも20倍であることを特徴とする請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
化合物がほ乳類の細胞に対して実質的に非毒性であることを特徴とする請求項50に記載の化合物。
【請求項52】
製薬用または獣医学用に認められる補助剤、希釈剤または担体と混合したことを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物を含有する製薬調合剤。
【請求項53】
薬に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項54】
光力学的治療に使用するための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項55】
微生物感染の治療および/または予防処置で使用するための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項56】
微生物を殺すための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項57】
微生物が細菌、マイコプラズマ、イースト、カビ、ウイルスから成る部類から選ばれることを特徴とする請求項55または請求項56に記載の使用。
【請求項58】
微生物が1つ以上の従来の抗生剤に耐性を有する細菌であることを特徴とする請求項55または請求項56に記載の使用。
【請求項59】
皮膚科感染を予防および/または治療するための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項60】
肺の感染を予防および/または治療するための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項61】
傷感染および/または潰瘍を予防および/または治療するための薬の調製に使用することを特徴とする請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項62】
請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物を患者に投与し、該化合物に照射することからなる光力学的治療剤で治療する必要のある患者を治療する方法。
【請求項63】
患者が皮膚科感染症または肺感染症にかかっていることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
患者が傷感染症にかかっていることを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項65】
請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物を傷に接触させ、該化合物に照射することからなることを特徴とする傷感染を予防する方法。
【請求項66】
請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物を含有する殺菌用溶液。
【請求項67】
更に表面活性剤を含有することを特徴とする請求項66に記載の殺菌用溶液。
【請求項68】
請求項1〜51のいずれか一つに記載の化合物を微生物に接触させ、該化合物に照射して微生物を殺すことによる生体外で微生物を殺す方法。
【請求項69】
明細書に言及してここにおいて実質的に記載されている化合物。
【請求項70】
明細書に言及してここにおいて実質的に記載されている化合物の使用。
【請求項71】
明細書に言及してここにおいて実質的に記載されている製薬用調合剤。
【請求項72】
明細書に言及してここにおいて実質的に記載されている殺菌用溶液。
【請求項73】
明細書に言及してここにおいて実質的に記載されている微生物を殺す方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2011−116766(P2011−116766A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37116(P2011−37116)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【分割の表示】特願2004−561687(P2004−561687)の分割
【原出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【出願人】(501082842)デスティニー ファーマ リミテッド (5)
【出願人】(505235495)ソルビアス アーゲー (4)
【Fターム(参考)】