説明

新規受容体アンタゴニストおよびそれらの使用方法

本発明は、P2X7受容体と結合し、P2X7受容体でのATPの作用を妨げる能力を有する式(I)で示される新規イソオキサゾール誘導体;およびP2X7受容体により媒介される障害、例えば、疼痛、炎症および神経変性の治療におけるかかる化合物またはその医薬組成物の使用に関する:


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用をアンタゴナイズする能力を有する複素環アミド誘導体(P2X7受容体アンタゴニスト);それらの製造方法;それらを含有する医薬組成物;および治療におけるかかる化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
P2X7受容体は、造血系譜の細胞、例えば、マクロファージ、ミクログリア、マスト細胞、およびリンパ球(TおよびB)中にて発現されるリガンド開口型イオンチャネルであり(例えば、非特許文献1を参照)、細胞外ヌクレオチド、特にアデノシン三リン酸(ATP)により活性化される。P2X7受容体の活性化は、巨細胞形成、脱顆粒、細胞溶解性細胞死、CD62Lシェディング、細胞増殖の調節、ならびに、インターロイキン1ベータ(IL−1β)(例えば、非特許文献2)および腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)(例えば、非特許文献3)のような炎症誘発性サイトカインの放出に関与している。P2X7受容体はまた、抗原提示細胞、ケラチノサイト、耳下腺細胞、肝細胞、赤血球、赤白血病細胞、単球、線維芽細胞、骨髄細胞、ニューロン、および腎メサンギウム細胞上に位置している。さらにまた、P2X7受容体は、中枢神経系および末梢神経系におけるシナプス前終末によって発現され、グリア細胞におけるグルタミン酸放出を媒介することが示されている(非特許文献4)。
【0003】
免疫系の主要細胞へのP2X7受容体の局在化は、これらの細胞から重要な炎症メディエーターを放出するその能力と一体となって、疼痛および神経変性障害を包含する広範囲に及ぶ疾患の治療におけるP2X7受容体アンタゴニストの潜在的な役割を示唆する。最近の前臨床インビボ研究は、P2X7受容体が炎症性疼痛および神経因性疼痛の両者に直接関与していることを示しており(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)、一方、P2X7受容体がミクログリア細胞誘発性の皮質ニューロンの死を媒介することがインビトロで立証されている(非特許文献8)。加えて、トランスジェニックマウスのアルツハイマー病モデルにおいてβアミロイド斑の周囲でP2X7受容体のアップレギュレーションが観察された(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Collo, et al. Neuropharmacology, Vol.36, pp1277-1283 (1997)
【非特許文献2】Ferrari, et al., J. Immunol., Vol.176, pp3877-3883 (2006)
【非特許文献3】Hide, et al. Journal of Neurochemistry, Vol.75, pp965-972 (2000)
【非特許文献4】Anderson, C. et al. Drug. Dev. Res., Vol.50, page 92 (2000)
【非特許文献5】Dell'Antonio et al., Neurosci. Lett., Vol.327, pp87-90 (2002)
【非特許文献6】Chessell, IP., et al., Pain, Vol.114, pp386-396 (2005)
【非特許文献7】Honore et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., Vol.319, p1376-1385 (2006)
【非特許文献8】Skaper, S.D., et al., Glia, Vol.54, p234-242 (2006)
【非特許文献9】Parvathenani, L. et al. J. Biol. Chem., Vol.278 (15), pp13309-13317 (2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用をアンタゴナイズする能力を有する化合物(P2X7受容体アンタゴニスト)を提供する。第一の態様では、式(I):
【化1】

[式中、
1およびR2は、C1-6アルキル、フェニル、またはC3-6シクロアルキルを表し、これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよく;
3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルを表し、該C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよいか;または、R6およびR7は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン環を形成する;
ただし、R3およびR7がともに水素またはフッ素から選択される場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つはハロゲン原子であるか、またはR4、R5およびR6は、水素、メチルおよびCF3からなる群から選択され、かつ、R4、R5およびR6のうち1つ(2つ以上ではない)はメチルまたはCF3である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一の実施態様では、式(I):
【化2】

[式中、
1およびR2は、C1-6アルキル、フェニル、またはC3-6シクロアルキルを表し、これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよく;
3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルを表し;該C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよい;
ただし、R3およびR7がともに水素を表す場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つはハロゲン原子である]
で示される化合物、または医薬上許容される塩が提供される。
【0007】
本明細書で使用される場合、「アルキル」なる用語(1つの基としてまたは1つの基の一部として使用される場合)は、指定された数の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状の炭化水素鎖をいう。例えば、C1-6アルキルは、少なくとも1個、多くて6個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状の炭化水素鎖を意味する。アルキルの例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、n−プロピル、i−プロピル、n−ヘキシルおよびi−ヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0008】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素−炭素結合が二重結合である、指定された数の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状の炭化水素鎖をいう。アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、i−ブテニル、n−ペンテニルおよびi−ペンテニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」なる用語は、少なくとも1つの炭素−炭素結合が三重結合である、指定された数の炭素原子を含有する直鎖状または分枝鎖状の炭化水素鎖をいう。アルキニルの例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、i−ペンチニル、n−ペンチニル、i−ヘキシニルおよびn−ヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
「シクロアルキル」なる用語は、特記しない限り、閉鎖された3〜8員非芳香環、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルを意味する。
【0011】
「ハロゲン」なる用語は、本明細書では、特記しない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択される基を記載するために使用される。
【0012】
本発明の特定の実施態様では、R1およびR2は、独立して、非置換C1-6アルキル、トリフルオロメチル、フェニルまたはC3-6シクロアルキルを表す。一の実施態様では、R1およびR2は、独立して、非置換C1-6アルキルまたはトリフルオロメチルを表す。別の実施態様では、R1およびR2は、独立して、メチルまたはトリフルオロメチルを表す。さらなる実施態様では、R1はトリフルオロメチルを表し、R2はメチルを表す。さらにさらなる実施態様では、R1およびR2はともにメチルを表す。
【0013】
本発明の特定の実施態様では、R3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または非置換C1-6アルキルを表す。さらなる実施態様では、R3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、メチルまたはトリフルオロメチルを表す。一の実施態様では、R3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、塩素、フッ素、臭素、メチルまたはトリフルオロメチルを表す。
【0014】
本発明の一の実施態様では、
1およびR2が、独立して、非置換C1-6アルキル、トリフルオロメチル、フェニルまたはC3-6シクロアルキルを表し;
3、R4、R5、R6およびR7が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたは非置換C1-6アルキルを表す;
ただし、R3およびR7がともに水素またはフッ素から選択される場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つがハロゲン原子であるか、または、R4、R5およびR6が水素、メチルおよびCF3からなる群から選択され、かつ、R4、R5およびR6のうち1つ(2つ以上ではない)がメチルまたはCF3である、
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0015】
さらなる実施態様では、
1およびR2が、独立して、メチルまたはトリフルオロメチルを表し;
3、R4、R5、R6およびR7が、独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはメチルを表す;
ただし、R3およびR7がともに水素またはフッ素から選択される場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つがハロゲン原子であるか、または、R4、R5およびR6が水素、メチルおよびCF3からなる群から選択され、かつ、R4、R5およびR6のうち1つ(2つ以上ではない)がメチルまたはCF3である、
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0016】
別の実施態様では、
1およびR2がともにメチルを表し;
3、R4、R5、R6およびR7が、独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチルまたはメチルを表す;
ただし、R3およびR7がともに水素またはフッ素から選択される場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つがハロゲン原子であるか、またはR4、R5およびR6が水素、メチルおよびCF3からなる群から選択され、かつ、R4、R5およびR6のうち1つ(2つ以上ではない)がメチルまたはCF3である、
式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩が提供される。
【0017】
本発明の特定の化合物としては、以下に示される実施例1〜38の化合物またはその医薬上許容される塩が挙げられる。
【0018】
P2X7のアンタゴニストは、様々な痛みの状態(例えば、神経因性疼痛、慢性炎症性疼痛、および内臓痛)、炎症および神経変性、特に、アルツハイマー病を予防、治療または寛解するのに有用であり得る。P2X7アンタゴニストはまた、関節リウマチおよび炎症性腸疾患の管理における有用な治療薬を構成することができる。
【0019】
P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用をアンタゴナイズする能力を有する本発明の化合物(P2X7受容体アンタゴニスト)は、受容体機能の競合アンタゴニスト、インバースアゴニスト、ネガティブアロステリック調節因子または間接的調節因子であり得る。
【0020】
式(I)で示される化合物には、その酸付加塩を形成することができるものがある。当然のことながら、医薬用について、式(I)で示される化合物は塩として使用することができ、その場合、該塩は医薬上許容されるべきである。医薬上許容される塩としては、Berge, Bighley and Monkhouse, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されているものが挙げられる。式(I)で示される塩基性化合物は、無機酸および有機酸を包含する医薬上許容される酸を用いて塩を形成することができる。かかる酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、および同類のものが挙げられる。
【0021】
医薬上許容される塩の例としては、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモン酸、コハク酸、塩酸、硫酸、ビスメチレンサリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、プロピオン酸、酒石酸、サリチル酸、クエン酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、リン酸および硝酸から形成されるものが挙げられる。
【0022】
式(I)で示される化合物は、結晶形または非結晶形で製造され得、結晶形の場合、例えば水和物として、溶媒和化されていてもよい。本発明は、その範囲内に、化学量論的溶媒和物(例えば、水和物)および可変量の溶媒(例えば、水)を含有する化合物を包含する。
【0023】
式(I)で示される化合物には、立体異性体(例えば、ジアステレオマーおよびエナンチオマー)で存在することができるものがあり、本発明は、これらの立体異性体の各々、およびラセミ化合物を包含するその混合物に及ぶ。異なる立体異性体は、常法によりお互いに分離し合うことができるか、または、立体特異的合成法または不斉合成法によって所定の異性体を得ることができる。本発明また、互変異性体およびその混合物に及ぶ。
【0024】
本発明はまた、同位体標識化合物を包含し、それは、1つまたはそれ以上の原子がほとんど一般的に自然に見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている以外は式(I)およびそれに伴うものにおいて記載されるものと同一である。本発明の化合物に取り込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体、例えば、3H、11C、14C、18F、123Iおよび125Iが挙げられる。
【0025】
上記同位体および/または他の原子の他の同位体を含有する本発明の化合物および該化合物の医薬上許容される塩は、本発明の範囲内である。本発明の同位体標識化合物、例えば、3H、14Cのような放射性同位体が取り込まれているものは、薬物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化同位体、すなわち、3H同位体、および炭素−14同位体、すなわち、14C同位体は、それらの製造し易さおよび検出性について特に好ましい。11C同位体および8F同位体は、PET(陽電子放射型断層撮影法)において特に有用であり、125I同位体は、SPECT(単一光子放射型コンピューター断層撮影法)において特に有用である。PETおよびSPECTは、脳画像診断において有用である。また、ジューテリウム、すなわち2Hのような重い同位体との置換は、より大きな代謝安定性から生じるある種の治療的利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要用量の減少をもたらすことができ、故に、状況によっては好ましいことがある。本発明の式(I)およびそれに伴うもので示される同位体標識化合物は、一般に、同位体標識されていない試薬の代わりに容易に入手可能な同位体標識試薬を用いることによって下記スキームおよび/または下記実施例に開示されている方法を実行することにより製造され得る。
【0026】
化合物の製造
【化3】

可変記号が上記で定義されている式(I)で示される化合物ならびにその塩および溶媒和物は、以下に記載される方法によって製造することができ、本発明のさらなる態様を構成する。
【0027】
式(I)で示される化合物を製造するための本発明の方法は、以下のことを含む:
(a)式(2)のカルボン酸(またはその活性誘導体)と式(3)のアミンとのカップリング(スキーム1を参照)(ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、上記で定義したとおりである)。化合物(2)および(3)は、保護されていてもよい;
(b)保護されている式(I)で示される化合物の脱保護。保護基の例およびそれらの除去手段は、T.W. Greene and P.G.M. Wuts ‘Protective Groups in Organic Synthesis’(J.Wiley and Sons, 3rd Ed. 1999)に見ることができる;または
(c)式(I)で示される化合物の式(I)で示される他の化合物への相互変換。慣用の相互変換法の例としては、エピマー化、酸化、還元、アルキル化、芳香族置換、求核置換、アミドカップリングおよびエステル加水分解が挙げられる。
【0028】
【化4】

【0029】
式(2)の酸および式(3)のアミンのカップリングは、典型的には、適当な温度(例えば、0℃〜室温)で適当な溶媒(例えば、DMFおよび/またはジクロロメタン)中での活性化剤(例えば、水溶性カルボジイミドもしくはポリマー担持カルボジイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt))および任意の適当な塩基(例えば、第3アルキルアミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン)またはピリジン)の使用を含む。別法として、(2)および(3)のカップリングは、適当な温度(例えば、室温)で適当な溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド)中でのヘキサフルオロリン酸O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウム、および適当な第3アルキルアミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)での処理により行うことができる。式(2)の化合物が活性誘導体(例えば、酸塩化物、混酸無水物、活性エステル(例えば、O−アシル−イソウレア))である場合、工程(a)は、典型的には、該活性誘導体をアミンで処理することを含む(Ogliaruso, M.A.; Wolfe, J.F. in The Chemistry of Functional Groups (Ed. Patai, S.) Suppl.B: The Chemistry of Acid Derivatives, Pt. 1 (John Wiley and Sons, 1979), pp442-8;Beckwith, A.L.J. in The Chemistry of Functional Groups (Ed. Patai, S.) Suppl.B: The Chemistry of Amides (Ed. Zabricky, J.) (John Wiley and Sons, 1970), pp 73 ff)。
【0030】
式(2)で示される化合物の製造のための代表的な方法が下記スキーム2に示される:
【化5】

ここで、R1およびR2は、上記で定義したとおりであり、P2は、C1-6アルキルのような適当な保護基を表し、L1は、ハロゲン原子(例えば、ヨウ素、塩素または臭素)のような適当な脱離基を表す。
【0031】
工程(i)は、典型的には、適当な温度(例えば、0℃〜室温)での適当な溶媒(例えば、ジオキサン/水の混合物またはジメチルホルムアミド)および適当な塩基(例えば、水酸化カリウムまたは水素化ナトリウム)の使用を含む。
【0032】
工程(ii)は、典型的には、適当な溶媒(例えば、エタノール)中でのヒドロキシルアミン(7)またはその塩(例えば、HCl)の使用を含む。該反応混合物は、典型的には、好適な温度(例えば、65℃)で加熱される。
【0033】
工程(iii)は、典型的には、カルボン酸エステルの酸への変換のための標準的な方法、例えば、好適な温度(例えば、50℃)で適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフランおよび水の混合物)中での適当な水酸化物塩(例えば、水酸化リチウム)の使用、または好適な温度(例えば、室温)で適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン)中での適当な酸(例えば、トリフルオロ酢酸)の使用を含む。
【0034】
式(3)、(4)、(5)および(7)で示される化合物は、典型的には、商業的供給源から入手可能であるか、または、化学文献に記載されている方法を使用して(または類似の方法を使用して)当業者により製造され得る。
【0035】
医薬上許容される塩は、慣用的には、適当な酸または酸誘導体との反応によって製造され得る。
【0036】
臨床的適応
本発明の化合物は、P2X7受容体機能を調節し、P2X7受容体でのATPの作用をアンタゴナイズする能力を有するので、それらは、急性痛、慢性痛、慢性関節痛、筋骨格痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、内臓痛、癌に伴う痛み、偏頭痛に伴う痛み、緊張型頭痛および群発頭痛、機能性腸障害に伴う痛み、腰部頚部痛、捻挫および筋挫傷に伴う痛み、交感神経的に維持されている痛み;筋炎、インフルエンザまたは感冒のような他のウイルス感染症に伴う痛み、リウマチ熱に伴う痛み、心筋虚血に伴う痛み、術後痛、癌化学療法、頭痛、歯痛および月経困難症を包含する痛みの治療に有用であり得ると考えられる。
【0037】
慢性関節痛状態としては、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ様脊椎炎、痛風関節炎および若年性関節炎が挙げられる。
【0038】
機能性腸障害に伴う痛みとしては、非潰瘍性胃腸障害、非心臓性胸痛および過敏性腸症候群が挙げられる。
【0039】
神経因性疼痛症候群としては、糖尿病性ニューロパシー、坐骨神経痛、非特異的腰痛、三叉神経痛、多発性硬化症痛、線維筋痛症、HIV関連ニューロパシー、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、および、身体外傷、切断、幻肢症候群、脊髄手術、癌、毒または慢性炎症性症状により生じる痛みが挙げられる。加えて、神経因性疼痛状態としては、「ピリピリした感覚(pins and needles)」のような通常は無痛の感覚に伴う痛み(知覚異常および異常感覚)、触れられた時の感受性の増大(知覚過敏)、無害な刺激後の痛い感覚(動的、静的、熱的または冷感異痛症)、侵害性刺激に対する感受性の増大(熱的、冷感、機械的痛覚過敏症)、刺激の除去後の痛みの感覚の継続(痛覚過敏)または選択的感覚経路の不在または欠損(痛覚鈍麻)が挙げられる。
【0040】
P2X7受容体と結合する本発明の化合物により処置される可能性のある他の症状としては、発熱、炎症、免疫疾患、血小板機能異常疾患(例えば、閉塞性血管疾患)、インポテンスまたは勃起不全;異常な骨代謝または吸収を特徴とする骨疾患;非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)およびシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤の血行動態的副作用、心血管疾患;神経変性疾患および神経変性、外傷後神経変性、耳鳴、オピオイド(例えば、モルヒネ)、CNS抑制剤(例えば、エタノール)、覚醒剤(例えば、コカイン)およびニコチンのような依存症誘発性薬剤に対する依存症;I型糖尿病の合併症、腎機能障害、肝機能障害(例えば、肝炎、肝硬変)、胃腸障害(例えば、下痢)、結腸癌、過活動膀胱および切迫性尿失禁が挙げられる。鬱病およびアルコール依存症もまた、P2X7受容体と結合する本発明の化合物によって治療される可能性がある。
【0041】
炎症および該炎症に伴う炎症性症状としては、皮膚症状(例えば、日焼け、火傷、湿疹、皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、乾癬)、髄膜炎、眼病、例えば、緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、および眼組織に対する急性損傷(例えば、結膜炎)、炎症性肺障害(例えば、喘息、気管支炎、肺気腫、アレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、ハト愛好家病、農夫肺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道過敏症);胃腸管障害(例えば、アフタ性潰瘍、クローン病、アトピー性胃炎、疣状胃炎(gastritis varialoforme)、潰瘍性大腸炎、セリアック病、限局性回腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、胃腸逆流症);臓器移植、ならびに血管疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、強皮症、重症無筋力症、多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、歯肉炎、心筋虚血、発熱、全身性紅斑性狼瘡、多発性筋炎、腱炎、滑液包炎およびシェーグレン症候群のような炎症性要素を有する他の症状が挙げられる。
【0042】
免疫疾患としては、自己免疫疾患、免疫不全疾患または臓器移植が挙げられる。
【0043】
異常な骨代謝または骨吸収を特徴とする骨疾患としては、骨粗鬆症(特に、閉経後骨粗鬆症)、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進、骨パジェット病、骨溶解症、骨転移を伴うか伴わない悪性高カルシウム血症、関節リウマチ、歯周炎、変形性関節症、骨痛、骨減少症、癌性悪液質、結石症(calculosis)、結石症(lithiasis)(特に、尿路結石症)、固形癌、痛風および強直性脊椎炎、腱炎および滑液包炎が挙げられる。
【0044】
心臓血管疾患としては、高血圧または心筋虚血;アテローム性動脈硬化症;機能性または器質性静脈不全;静脈瘤療法;痔;および動脈圧の著しい低下に伴うショック状態(例えば、敗血症性ショック)が挙げられる。
【0045】
神経変性疾患としては、認知症、特に、変性認知症(老人性認知症、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病およびクロイツフェルト・ヤコブ病、ALS、運動ニューロン疾患を含む);血管性認知症(多発脳梗塞性認知症を含む);ならびに、頭蓋内占拠性病変、外傷、感染症および関連症状(HIV感染症、髄膜炎および帯状疱疹を含む)、代謝、毒素、無酸素症およびビタミン欠乏症に伴う認知症;および加齢に伴う軽度認知機能障害、特に加齢に伴う記憶障害が挙げられる。
【0046】
式(I)で示される化合物はまた、神経保護薬として、および、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳障害、脊髄損傷または同様のもののような外傷後の神経変性の治療において有用であり得る。
【0047】
P2X7受容体と結合する本発明の化合物はまた、悪性細胞増殖および/または転移、ならびに筋芽細胞性白血病の治療に有用であり得る。
【0048】
1型糖尿病の合併症としては、糖尿病性微小血管症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、黄斑変性症、緑内障、ネフローゼ症候群、再生不良性貧血、ブドウ膜炎、川崎病およびサルコイドーシスが挙げられる。
【0049】
腎機能障害としては、腎炎、糸球体腎炎、特に、メサンギウム増殖性糸球体腎炎および腎炎症候群が挙げられる。
【0050】
治療への言及は、他に明示的に記載しない限り、確立された症状の治療および予防的治療の両方を包含すると解されるべきである。
【0051】
したがって、本発明のさらなる態様によると、本発明は、ヒトまたは獣医学において使用するための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0052】
本発明の別の態様によると、P2X7受容体によって媒介される症状の治療において使用するための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を提供する。
【0053】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、P2X7受容体によって媒介される症状に罹患しているヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0054】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、疼痛、炎症または神経変性疾患に罹患しているヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0055】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛に苦しむヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0056】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、アルツハイマー病に罹患している対象体(例えば、ヒト対象体)を治療する方法であって、該対象体に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0057】
本発明の別の態様によると、本発明は、P2X7受容体の作用によって媒介される症状の治療用薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0058】
本発明の別の態様によると、本発明は、疼痛、炎症または神経変性疾患の治療または予防用薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0059】
本発明の別の態様によると、本発明は、炎症性疼痛、神経因性疼痛または内臓痛の治療または予防用薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0060】
本発明の一の態様では、本発明は、アルツハイマー病の治療または予防用薬剤の製造のための式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の使用を提供する。
【0061】
ヒトおよび他の哺乳動物の治療に式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を使用するためには、通常、標準的な製薬業務に従って医薬組成物として製剤化される。したがって、本発明の別の態様では、ヒトまたは獣医学における使用に適した式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を含む医薬組成物が提供される。
【0062】
治療に式(I)で示される化合物を使用するためには、それらは、通常、標準的な製薬業務に従って医薬組成物に製剤化されるであろう。本発明はまた、式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を含んでおり、医薬上許容される担体を含んでいてもよい、医薬組成物を提供する。
【0063】
適当には周囲温度および大気圧での混合によって調製され得る本発明の医薬組成物は、通常、経口投与、非経口投与または直腸投与に適しており、それ自体、錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、復元用散剤、注射用もしくは注入用液剤もしくは懸濁剤、または坐剤の剤形であり得る。経口投与用組成物が一般に好ましい。
【0064】
経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、単位投与形態であってもよく、慣用の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、錠剤化用滑沢剤、崩壊剤および許容される湿潤剤を含有することができる。錠剤は、通常の製薬業務における周知の方法に従って被覆され得る。
【0065】
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁剤、液剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤の剤形であってもよく、または、使用前に水または他の好適なビヒクルで復元するための乾燥製剤の剤形であってもよい。かかる液体製剤は、慣用の添加剤、例えば、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含むことができる)、保存剤、および必要に応じて慣用の香味剤または着色料を含有することができる。
【0066】
非経口投与について、流動性の単位投与剤形は、本発明の化合物またはその医薬上許容される塩および滅菌ビヒクルを使用して調製される。該化合物は、ビヒクルおよび使用濃度に依存して、ビヒクルに懸濁または溶解され得る。液剤を調製する際には、該化合物を注射用に溶解し、濾過滅菌した後、適当なバイアルまたはアンプルに充填し、密封することができる。有利には、補助剤、例えば、局所麻酔剤、保存剤および緩衝剤がビヒクルに溶解される。安定性を増強するために、該組成物をバイアルに充填した後に冷凍し、水分を真空除去することができる。非経口懸濁剤は、化合物がビヒクルに溶解されるのではなく懸濁されることおよび滅菌が濾過によっては行えないこと以外は実質的に同一の方法で調製される。該化合物は、滅菌ビヒクルに懸濁させる前にエチレンオキシドへの暴露によって滅菌され得る。有利には、化合物の均一な分布を促進するために該組成物に界面活性剤または湿潤剤が含まれる。
【0067】
該組成物は、投与方法に依存して、活性物質を0.1重量%〜99重量%、好ましくは、10〜60重量%含有することができる。
【0068】
上記障害の治療に使用される化合物の投与量は、通常通り、障害の重篤度、患者の体重および他の同様のファクターによって異なるであろう。しかしながら、一般的なガイドとして、適当な単位投与量は、0.05〜1000mg、より好適には、0.05〜200mg、例えば、20〜40mgであってよく;かかる単位投与量は、好ましくは、1日1回投与されるが、1日2回以上の投与を要することもある;かかる治療は、数週間または数ヶ月に及ぶこともできる。
【0069】
本明細書にて引用した特許および特許出願を包含するがこれらに限定されない全ての刊行物は、個々の刊行物が十分に記載されているのと同様に参照することにより本明細書の一部を構成することを具体的かつ個別に明示されているのと同様に参照することにより本明細書の一部を構成する。
【0070】
以下の記述および実施例は、本発明の化合物の製造法を例示するが、それを限定しようとするものではない。
【実施例】
【0071】
本発明の化合物の製造についての一般的な方法(a)〜(c)を、上記スキーム1〜2にて概略記載した合成方法に加えて以下の実施例により説明する。
【0072】
実施例1 N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミド(E1)
【化6】

(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)酢酸(0.100g、0.64mmol、商業的供給源から購入)を無水ジメチルホルムアミド(3ml)に溶解し、これに水溶性カルボジイミド(0.148g、0.773mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.104g、0.77mmol)、N−エチルモルホリン(0.246ml、1.93mmol)、および[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アミン(0.117g)を添加した。該混合物を室温(22℃)で18時間撹拌し、次いで、蒸発させて粗生成物を得た。該粗物質を質量向け自動HPLCによって精製して、純粋なN−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミド(0.135g)を白色固体として得た。LC/MS [M+H]+=297、保持時間=2.46分。
【0073】
実施例2 N−[(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミド(E2)
【化7】

(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)酢酸(0.051g、0.33mmol)をジクロロメタン(4ml)に溶解し、これに水溶性カルボジイミド(0.059g、0.31mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.041g、0.31mmol)、N−エチルモルホリン(0.156ml、1.24mmol)、および[(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)メチル]アミン(0.075g、0.31mmol)を添加した。該混合物を室温で5時間撹拌し、次いで、該混合物を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液および2N塩化水素水溶液で連続して洗浄した。有機層を疎水性フリットで濾過し、蒸発させて、粗生成物を得た。該粗物質を質量向け自動HPLCによって精製して、純粋なN−[(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジメチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミド(0.061g)を白色固体として得た。LC/MS [M+H]+=341、保持時間=2.57分。
【0074】
実施例3〜36
上記実施例2について記載した方法と同様の方法で、上記製造方法で使用した[[(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)メチル]アミンの代わりに適当なアミンを用いることによって、下記表(表1)に示される化合物を製造した。表1に記載される実施例化合物を製造するために必要なアミンは、全て、商業的供給源から入手可能であるか、または、従前に化学文献に記載されている経路を使用して製造することができる。
【0075】
【表1−1】

【0076】
【表1−2】

【0077】
【表1−3】

【0078】
【表1−4】

【0079】
【表1−5】

【0080】
【表1−6】

【0081】
実施例37 2−[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アセトアミド(E37)
【化8】

[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アミン(0.073g、0.46mmol)のジクロロメタン(1ml)中溶液を[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]酢酸(0.100g、0.47mmol、下記のように製造)、水溶性カルボジイミド(0.087g、0.46mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.061g、0.46mmol)、およびN−エチルモルホリン(0.240ml、1.88mmol)のジクロロメタン(4ml)中溶液に添加した。該混合物を室温で一夜撹拌し、次いで、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、疎水性フリットで濾過することにより有機相を分取した。蒸発させて、粗生成物を得、これを質量向け自動HPLCによって精製し、回収した生成物フラクションを凍結乾燥させた後、純粋な2−[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アセトアミドを白色固体として得た(0.067g)。
LC/MS [M+H]+=353.11、保持時間=3.03分。
【0082】
上記方法で使用した[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]酢酸は、以下のとおり製造した:
(i)2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン(2.34ml、15.0mmol)をジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、氷浴を使用して0℃に冷却した。次いで、水素化ナトリウム(油中60%、0.630g、15.75mmol)を数回に分けてゆっくりと添加し、次いで、該混合物を室温に加温し、約30分間撹拌した。次いで、該混合物をブロモ酢酸t−ブチル(2.21ml、15.0mmol)で処理し、室温で一夜(約18時間)撹拌した。該混合物を濃縮し、トルエンと一緒に共沸して、できる限りジメチルホルムアミドを除去し、次いで、残留物を水(約20ml)と酢酸エチル(約20ml)との間で分配させた。有機層を分取し、水性相を、2N塩化水素水溶液を使用してpH約5に酸性化し、次いで、酢酸エチル(2×20ml)で抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して、黄色油状物を得た。該油状物を自動(Biotage SP4)フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチルのヘキサン中0〜10%勾配液で溶離して、純粋な5−メチル−3−(2−メチルプロパノイル)−4−オキソヘキサン酸1,1−ジメチルエチル(3.17g)を黄色油状物として得た。
【0083】
(ii)5−メチル−3−(2−メチルプロパノイル)−4−オキソヘキサン酸1,1−ジメチルエチル(1.52g、5.63mmol)および炭酸カリウム(1.55g、11.26mmol)のエタノール(75ml)中混合物をヒドロキシルアミン・塩酸塩(0.582g、8.45mmol)で処理し、次いで、得られた混合物を65℃で合計3時間加熱した。エタノールを真空蒸発させ、残留物をジクロロメタンと水との間で分配させた。水性層を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の添加により僅かに塩基性にし、次いで、疎水性フリットを使用して有機層を分取した。溶媒を蒸発させて、粗生成物を得、これをフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、酢酸エチルのヘキサン中0〜8%勾配液で溶離して、純粋な[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]酢酸1,1−ジメチルエチル(0.567g)を透明な油状物として得た。
【0084】
(iii)[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]酢酸1,1−ジメチルエチル(0.567g、2.1mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(5ml)で処理した。該混合物を室温で2.5時間撹拌し、次いで、真空蒸発させ、トルエンと一緒に共沸させてトリフルオロ酢酸をすべて除去して、[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]酢酸(0.447g)を得、これをそれ以上の精製は行わずに使用した。
LC/MS [M+H]+=212.04、保持時間=2.23分。
【0085】
実施例38 N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジエチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミド(E38)
【化9】

2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオンの代わりに3,5−ヘプタンジオンを使用する以外は上記の2−[3,5−ビス(1−メチルエチル)−4−イソオキサゾリル]−N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]アセトアミド(実施例37)の合成について記載した方法と同様の方法で、N−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)メチル]−2−(3,5−ジエチル−4−イソオキサゾリル)アセトアミドを製造した。
LC/MS [M+H]+=325.22、保持時間=2.77分。
【0086】
質量向け自動HPLC
質量向け自動HPLCによる精製は、以下の装置および条件を使用して行われた:
【0087】
ハードウェア
Waters 2525 Binary Gradient Module
Waters 515 Makeup Pump
Waters Pump Control Module
Waters 2767 Inject Collect
Waters Column Fluidics Manager
Waters 2996 Photodiode Array Detector
Waters ZQ Mass Spectrometer
Gilson 202 fraction collector
Gilson Aspec waste collector
【0088】
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4 SP2
【0089】
カラム
使用したカラムは、Waters Atlantisであり、その寸法は、19mm×100mm(小規模)および30mm×100mm(大規模)である。固定相粒径は5μmである。
【0090】
溶媒
A: 水性溶媒=水+0.1%ギ酸
B: 有機溶媒=アセトニトリル+0.1%ギ酸
調製溶媒=メタノール:水(80:20)
ニードル洗浄溶媒=メタノール
【0091】
方法
目的化合物の分析的保持時間に依存して使用される5つの方法がある。それらは、13.5分の実行時間を有しており、該実行時間は、10分間の勾配、次いで、3.5分間のカラムフラッシュおよび再平衡化工程を含む。
大規模/小規模 1.0−1.5=B 5〜30%
大規模/小規模 1.5−2.2=B 15〜55%
大規模/小規模 2.2−2.9=B 30〜85%
大規模/小規模 2.9−3.6=B 50〜99%
大規模/小規模 3.6−5.0=B 80〜99%(6分間、次いで、7.5分間のフラッシュおよび再平衡化)
【0092】
流速
上記方法は、全て、20ml/分(小規模)または40ml/分(大規模)の流速を有する。
【0093】
液体クロマトグラフィー/質量分析法
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)による上記実施例の分析は、以下の装置および条件を用いて行われた:
【0094】
ハードウェア
Agilent 1100 Gradient Pump
Agilent 1100 Autosampler
Agilent 1100 DAD Detector
Agilent 1100 Degasser
Agilent 1100 Oven
Agilent 1100 Controller
Waters ZQ Mass Spectrometer
Sedere Sedex 85
【0095】
ソフトウェア
Waters MassLynx version 4.0 SP2
【0096】
カラム
使用したカラムは、Waters Atlantisであり、その寸法は4.6mm×50mmである。固定相粒径は、3μmである。
【0097】
溶媒
A: 水性溶媒=水+0.05%ギ酸
B: 有機溶媒=アセトニトリル+0.05%ギ酸
【0098】
方法
使用した一般的な方法は5分間の実行時間を有する。
【表2】

【0099】
上記方法は、3ml/分の流速を有する。
一般的な方法についての注入量は、5μlである。
カラム温度は、30度である。
UV検出範囲は、220〜330nmである。
【0100】
薬理データ
以下の研究に従って、P2X7受容体でのインビトロ生物活性について本発明の化合物を試験することができる。
【0101】
エチジウム蓄積アッセイ
以下の組成(mM)のNaClアッセイバッファーを使用して研究を行った:NaCl 140、HEPES 10、N−メチル−D−グルカミン 5、KCl 5.6、D−グルコース 10、CaCl2 0.5(pH7.4)。ヒト組換えP2X7受容体を発現しているHEK293細胞をポリ−L−リジン前処理96ウェルプレート中にて18〜24時間増殖させた。(ヒトP2X7受容体のクローニングは、米国特許第6,133,434に記載されている)。該細胞をアッセイバッファー350μlで2回洗浄した後、試験化合物50μlを添加した。次いで、該細胞を室温(19〜21℃)で30分間インキュベートした後、ATPおよびエチジウム(最終アッセイ濃度100μM)を添加した。ATP濃度は、該受容体のタイプについてのEC80に近くなるように選択され、ヒトP2X7受容体に対する研究については1mMであった。インキュベーションを8分間または16分間続け、5mMのP2X7受容体アンタゴニスト・リアクティブ・ブラック5(Aldrich)を含有する1.3Mのシュークロース25μlの添加により停止させた。Canberra Packard Fluorocount(Pangbourne、イギリス国)またはFlexstation.II(Molecular Devices)を用いてプレートの下からの蛍光(励起波長530nmおよび発光波長620nm)を測定することにより、エチジウムの細胞内蓄積を決定した。反復曲線適合法を使用して、ATP応答を遮断するためのアンタゴニストpIC50値を決定した。
【0102】
蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)Caアッセイ
以下の組成(mM)のNaClアッセイバッファーを使用してヒトP2X7についての研究を行った:NaCl 137;HEPES 20;KCl 5.37;NaHCO3 4.17;CaCl2 1;MgSO4 0.5;および1g/LのD−グルコース(pH7.4)。ヒト組換えP2X7受容体を発現しているHEK293細胞をポリ−L−リジン前処理384ウェルプレートにて42〜48時間増殖させた。(ヒトP2X7受容体のクローニングは、米国特許第6,133,434号に記載されている)。該細胞をアッセイバッファー80μlで3回洗浄し、2μMのFluo4(Teflabs)を37℃で1時間添加し、再度3回洗浄し、バッファー30μlを残した後、4倍濃縮した試験化合物10μlを加えた。次いで、細胞を室温で30分間インキュベートした後、最終アッセイ濃度60μMのBenzoylbenzoyl−ATP(BzATP)を添加した(オンライン、FLIPR384またはFLIPR3装置(Molecular Devices))。該BzATP濃度は、該受容体のタイプについてのEC80に近くなるように選択された。インキュベーションおよびリーディングを90秒間続け、FLIPR CCDカメラを使用して、プレートの下からの蛍光(励起波長488nmおよび発光波長516nm)を測定することにより、細胞内カルシウム増加を決定することができる。反復曲線適合法を使用して、BzATP応答を遮断するためのアンタゴニストpIC50値を決定した。
【0103】
実施例1〜38の化合物は、ヒトP2X7受容体アンタゴニスト活性についてFLIPR Caアッセイおよび/またはエチジウム蓄積アッセイにて試験され、FLIPR Caアッセイでは>4.7のpIC50値を有し、および/またはエチジウム蓄積アッセイでは>5.5のpIC50値を有したことが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
1およびR2は、C1-6アルキル、フェニル、またはC3-6シクロアルキルを表し、これらはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよく;
3、R4、R5、R6およびR7は、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルを表し、該C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキルまたはフェニルはいずれも、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよいか;または、R6およびR7は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1、2または3個のハロゲン原子で置換されていてもよいベンゼン環を形成する;
ただし、R3およびR7がともに水素またはフッ素から選択される場合、R4、R5およびR6のうち少なくとも1つはハロゲン原子であるか、またはR4、R5およびR6が水素、メチルおよびCF3からなる群から選択され、かつ、R4、R5およびR6のうちの1つ(2つ以上ではない)はメチルまたはCF3である]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項2】
1およびR2が、独立して、非置換C1-6アルキルまたはC3-6シクロアルキルを表す、請求項1記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項3】
3、R4、R5、R6およびR7が、独立して、水素、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチルまたはメチルを表す、請求項1または2記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項4】
実施例1〜38の化合物またはその医薬上許容される塩である、請求項1記載の式(I)で示される化合物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩および医薬上許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項6】
治療に用いるための請求項1〜4いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩。
【請求項7】
疼痛、炎症または神経変性疾患に罹患しているヒトまたは動物対象体を治療する方法であって、該対象体に請求項1〜4いずれか1項記載の式(I)で示される化合物またはその医薬上許容される塩の有効量を投与することを含む方法。
【請求項8】
疼痛、炎症または神経変性疾患の治療用の薬剤の製造のための請求項1〜4いずれか1項記載の化合物またはその医薬上許容される塩の使用。

【公表番号】特表2009−539796(P2009−539796A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513676(P2009−513676)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055521
【国際公開番号】WO2007/141269
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】