説明

新規基質を使用したパーキン活性のモジュレーターのアッセイ方法

本発明は、26SプロテアソームのS5aサブユットのパーキンが媒介するユビキチン化が測定されるか、あるいはトロポニン1のユビキチン化が測定されるパーキン活性のインビトロおよび細胞に基づくアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法はパーキンタンパク質リガーゼ活性を調節する作用物質をスクリーニングするために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2007年1月31日に出願された特許文献1の利益を主張し、その内容は引用により全部、本明細書に編入される。
【0002】
発明の分野
本発明は、パーキン(Parkin)活性のアッセイ方法に関する。このアッセイ方法はパーキンソン病の処置に有用な作用物質の薬剤スクリーニングに使用することができる。本発明は、神経生物学、薬剤探索および医薬の分野における応用を見い出だす。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、黒質のドーパミンニューロンの喪失として神経病理学的に特徴付けられる神経学的障害である。このニューロン喪失は、運動緩徐、硬直および/または振せんのような運動における変調として臨床的に現れる(非特許文献1)。ヒトの遺伝子データで、PDの発生と結び付けられる遺伝子が同定された。これらの遺伝子の1つは、1群の若年発症患者のコホートを使用して染色体6に位置決定され、そしてパーキンタンパク質として特異的に同定された(非特許文献2)。パーキンタンパク質は、ユビキチン−プロテアソーム経路(UPS)において機能するE3リガーゼタンパク質である(非特許文献3)。UPSは、分解のためにタンパク質の標的化除去に関与する主要な細胞経路であり、そしてE3リガーゼは、細胞プロテアソーム(非特許文献4)またはリソソーム(非特許文献5)による分解のために基質を同定し、標識するために機能する。またはユビキチン化は分解せずにタンパク質機能を調節するために役立つことができる(非特許文献6)。
【0004】
パーキンソン病を処置するための新規治療薬に対する切迫したニーズが存在する。本発明は、そのような新規治療薬を同定し、かつ/または評価するために、ならびに他の用途に有用である新規方法および材料を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許仮出願第60/898,947号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Gelb et al.,1999,Arch.Neurol.56:33−39
【非特許文献2】Kitada et al.,1998,Nature 392:605−608
【非特許文献3】Shimura,2000,Nature Genetics 25:302−305
【非特許文献4】Hereshko and Cienchanover,1998,Ann.Rev.Biochem.67:425−479
【非特許文献5】Hicke,1999,Trends in Cell Biology 9:107−112
【非特許文献6】Zhang,2003,”Transcriptional regulation by histone ubiquitination and deubiquitination、”Gene Dev 17,2733−40
【発明の概要】
【0007】
発明の簡単な要約
1つの観点では、本発明は26SプロテアソームのS5aサブユニッとのパーキン媒介型ユビキチン化が測定されるパーキン活性に関するインビトロおよび細胞に基づくアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法は、パーキンタンパク質リガーゼ活性を調節する(modulate)作用物質をスクリーニングするために使用できる。
【0008】
別の観点では、本発明はトロポニン1のパーキン媒介型ユビキチン化を測定するパーキン活性に関するインビトロおよび細胞に基づくアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法は、パーキンタンパク質リガーゼ活性を調節する作用物質をスクリーニングするために使用できる。
【0009】
1つの観点では、本発明は(1)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がパーキンによりユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし、そして(2)S5aタンパク質のユビキチン化の速度または程度を測定することによりパーキン活性を測定するためのインビトロの方法を提供する。異なる観点では、この方法はS5aの代わりにトロポニン1を使用して行われる。パーキンおよび/またはS5aおよび/またはトロポニン1はヒト由来でよい。
【0010】
1つの観点では、本発明は、(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;そして(b)S5aのユビキチン化の速度もしくは程度を測定することによるパーキン活性を測定するための細胞に基づく方法を提供する。このアッセイ方法はパーキン活性に及ぼす細胞の環境の効果(例えば同時に発現されるタンパク質)を比較するために使用できる。このアッセイ方法はパーキンのバリアントの活性を比較するために使用できる。パーキンおよび/またはS5aは細胞に対して異種でよい。異なる観点では、この方法はS5aの代わりにトロポニン1を使用して行われる。パーキンおよび/またはS5aはヒト由来でよい。
【0011】
1つの観点では、本発明はパーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法には(1)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;(2)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を試験作用物質の存在下で(1)の条件下にてインキュベーションし;そして(3)試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質の不存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含み、ここで試験作用物質の不存在でのユビキチン化に比べて、試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示し、そして試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す。異なる観点では、この方法はS5aの代わりにトロポニン1を使用して行われる。パーキンおよび/またはS5aおよび/またはトロポニン1はヒト由来でよい。
【0012】
1つの観点では、本発明はパーキン活性のモジュレーターに関する細胞に基づくアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法は(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露されない対照細胞中でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含み、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性を強化することを示し、そして試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す。異なる観点では、この方法はS5aの代わりにトロポニン1を使用して行われる。
【0013】
1つの観点では、本発明はパーキン活性の正のモジュレーターの特異性を評価するためのインビトロの方法を提供する。この方法は、(a)パーキン以外のE3リガーゼタンパク質およびパーキン基質タンパク質を、基質がユビキチン化される条件下で一緒にインキュベーションし;(b)E3リガーゼタンパク質およびパーキン基質タンパク質を、パーキン活性の正のモジュレーターの存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;(c)正のモジュレーターの存在および不存在下でE3リガーゼのリガーゼ活性を比較することを含み、ここで正のモジュレーターが存在する時のE3リガーゼ活性の増加は、正のモジュレーターがパーキンに対して完全には特異的でないことを示し、そして増加の不存在は、正のモジュレーターがパーキンに対して完全に特異的であることを示す。
【0014】
1つの態様では、正のモジュレーターの存在下での基質のユビキチン化の増加は、正のモジュレーターがパーキンに対して完全には特異的ではないが、正のモジュレーターが部分的に特異的であることを示す。部分的特異性は非−パーキンE3に対して100マイクロモル以下であり、そしてパーキンに対するEC10よりも少なくとも4倍高いEC10と定められる。
【0015】
特異性アッセイ方法の1つの態様では、パーキンの基質はS5aである。1つの態様では、パーキンの基質はトロポニン1である。非パーキンE3リガーゼタンパク質はRING E3リガーゼでよい。非パーキンE3リガーゼタンパク質は、Mdm2、Nedd4、Murf1およびE6APからなる群から選択されることができる。
【0016】
幾つかの態様では、特異性が決定される正のモジュレーターは、(a)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;(b)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を試験作用物質の存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;(c)試験作用物質の存在および不存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される。幾つかの態様では、工程(a)および(b)の前に、パーキンタンパク質は、パーキン活性を試験作用物質の不存在下での40〜70%までに下げる熱的条件下にて試験作用物質の存在下でインキュベーションされる。
【0017】
幾つかの態様では、特異性が決定される正のモジュレーターは、(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露されない対照細胞中でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される。
【0018】
幾つかの態様では、特異性が決定される正のモジュレーターは、(a)パーキンを発現し、そしてトロポニン1を発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でトロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露されない対照細胞中でのトロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される。幾つかの態様では、特異性が決定される正のモジュレーターは、(a)パーキンを発現し、そしてトロポニン1を発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でトロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露されない対照細胞中で
のトロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でトロポニン1のユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】インビトロでのパーキンの自己ユビキチン化(autoubiquitination)が、pH8.0に比べてpH8.8で行われた時に強化されたことを示すウエスタンブロットである。図1Aは抗パーキン抗体で染色した反応生成物のウエスタンブロットを表す。図1Bはビオチン化−ユビキチンについて染色した反応生成物を示すウエスタンブロットを表す。
【図2】パーキンE3リガーゼ活性によるS5aのユビキチン化を示すウエスタンブロットである。
【図3】パーキンE3リガーゼ活性によるトロポニンのユビキチン化を示すウエスタンブロットである。
【図4】パーキンおよびmdm2E3リガーゼ活性に及ぼす化合物の効果を、基質としてS5aを使用して示すグラフである。化合物はパーキン活性を2.8uMのEC50で増加させたが、mdm2のE3リガーゼ活性を上げず、または阻害しなかった。
【0020】
発明の詳細な説明
遺伝データは、ヒトにおいてパーキンタンパク質の喪失が、黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの進行性喪失と、最終的にはパーキンソン病(「PD」)をもたらすことを確立した。パーキンタンパク質は、E1ユビキチン活性化酵素およびE2ユビキチン結合酵素と一緒に作動するE3(ユビキチン)リガーゼタンパク質である。E1酵素は、結合するためにATPを使用してユビキチンを活性化し、そしてそれをE2酵素に移す。パーキンはE2と相互作用し、そしてユビキチンをタンパク質基質上のリシンのε−アミノ基に移す。基質へのユビキチン部分の連続的付加でポリユビキチン鎖が生じる。パーキン活性は、ユビキチンの基質または「標的タンパク質」への転移の速度もしくは程度を測定することによりアッセイ方法できる。
【0021】
既知のパーキン基質には、アルファ−シヌクレインおよびパーキンタンパク質自体(自己ユビキチン化)を含む。ここで今、S5a(26Sプロテアソームのサブユニット)およびトロポニン1(「トロポニン」)がパーキンリガーゼの基質となり得ることが見いだされた。
【0022】
この知見に一部基づき、パーキン活性はS5aまたはトロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度を測定することによりアッセイ方法することができる。パーキンリガーゼ活性のアッセイ方法は、PDおよび他の神経学的疾患の処置に使用するための薬剤候補をスクリーニングし、そして評価するために価値がある。またアッセイ方法は生物学的サンプル中のパーキンの存在を検出し、組換え体の完全性または精製したパーキンタンパク質を評価し、修飾した、またはバリアントパーキンタンパク質のリガーゼ活性を評価し、そしてパーキンリガーゼ活性のモジュレーターをスクリーニングするために有用である。そのようなモジュレーターは治療薬として医薬に、および医学的研究に応用を有する。
【0023】
またアッセイ方法はパーキンタンパク質に対するパーキンのモジュレーターの特異性を決定するために(一般的にE3リガーゼのモジュレーターとは対照的に)も提供される。
【0024】
I.パーキンリガーゼ活性のインビトロアッセイ方法
1つの観点では、本発明は(1)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし、そして(2)S5aタンパク質のユビキチン化の速度または程度を測定することによりパーキン活性
を測定するためのインビトロの方法を提供する。
【0025】
1つの観点では本発明は、(1)パーキンタンパク質およびトロポニンタンパク質を、トロポニンタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし、そして(2)トロポニンタンパク質のユビキチン化の速度または程度を測定することによりパーキン活性を測定するためのインビトロの方法を提供する。
【0026】
パーキンおよび他のE3リガーゼによりユビキチン化を測定するための多くのアッセイ方法が知られている。本開示により導かれる(S5aがパーキン基質である教示を含む)当業者は、そのようなアッセイ方法をパーキンによるS5aのユビキチン化を測定するために適合させることができるだろう。例えばパーキンおよびS5aを組み合わせ、そしてE1(例えばUBA1[Genbank寄託番号X55386])、E2(例えばUbcH7)、Mg−ATP、ユビキチンおよび適切なバッファーの存在下でインキュベーションし、そしてユビキチンがS5aへ結合する速度または程度を測定することができる。本明細書で使用する「インキュベーションする」とは、成分を合わせ、そして通常は室温もしくは生理学的温度で酵素反応(1もしくは複数)が起こるようにする標準的意味を有する。パーキンにより基質タンパク質がユビキチン化される条件下で、パーキン(または他のE3リガーゼ)とS5a(または他のパーキン基質)とを一緒にインキュベーションすることは、E3および基質がユビキチン、E1、E2およびATPを含んでなるバッファー溶液中で合わせられ、そしてユビキチンの基質への転移を生じるための温度よび時間でインキュベーションされることを意味する。そのような条件は科学文献中に広く記載されている。例示的アッセイ方法条件を限定ではなく具体的説明のために以下に記載する。
【0027】
S5a(または他のパーキン基質)のユビキチン化の速度または程度は、様々な方法で測定できる。S5aのユビキチン化を測定するための1つの方法には、ユビキチン化反応、反応混合物から電気泳動によるタンパク質の分離、分離したタンパク質のウエスタンブロッティング、ウエスタンブロットの抗−S5a抗体によるプロービングおよびユビキチンのS5a基質への付加を反映するS5aの移動性の変化の検出を行うことが関与する(実施例2を参照されたい)。しかしユビキチン化を測定する任意の方法を使用でき、それには免疫学に基づくアッセイ方法(ELISA、免疫沈降、Harlow and Lane,1988,ANTIBODIES、A Laboratory Manual,コールドスプリングハーバー出版(Cold Spring Harbor Publications)、ニューヨーク、引用により本明細書に編入)、質量分析法、電磁気スペクトル分光法、クロマトグラフィー法、検出可能に標識されたユビキチンを使用したユビキチン化および当業者には明白な他の取り組みがある。
【0028】
本発明の実施には多くのインビトロアッセイ方法形式を使用することができる。例えばアッセイ方法成分は溶液状であることができ、あるいは1もしく複数を固定化してもよい。例えば1つの取り組みでは、エピトープタグ付S5aが、マイクロウェルもしくはビーズのような支持体上のタグを介して固定化される。パーキンおよび他の試薬を含むユビキチン化反応混合物がウェルに加えられ、そしてユビキチン化反応が起こる。生じたユビキチン化S5a(“uS5a”)のレベルは、免疫学的方法(例えば検出可能に標識された抗−ユビキチンもしくは抗−S5a抗体の複合体への結合)、他の結合法(例えば反応にビオチン化ユビキチンを使用し、そしてアビジン−連結プローブを使用してuS5aを検出する)、あるいは検出可能に標識されたユビキチンをアッセイ方法に使用して測定される。
【0029】
具体的説明のために、1つのアッセイ方法ではS5aが表面上(マイクロウェルプレート、球状ビーズ、磁気ビーズ;等)に固定化され、そしてパーキン、E1、E2、ユビキチンおよびATPを含むリガーゼ反応ミックスとインキュベーションされる。1つの態様
では、S5aが96ウェルもしくは386プレート(例えばイムロン:Immulon、ウォールサム、マサチューセッツ州;Maxisorb、ライフテクノロジーズ:Life Technologies、カールスルーエ、ドイツ;等)のウェルに固定化される。ユビキチン化を妨害しないS5aの固定化法を使用することができる。例えばS5aは、抗体がS5aエピトープを認識する抗体結合系を使用して固定化することができる。あるいは抗体はS5aタンパク質に融合したエピトープタグを認識することができる。1つの取り組みでは、固定化には非抗体媒介型の相互作用が関与する。例えば1つの取り組みでは、N−末端6xHisタグを含むS5aが、ニッケル被覆アッセイ方法プレートを使用して固定化される。1つの取り組みでは、ビオチン化成分がアビジンとの相互作用を介して固定化される。
【0030】
反応成分を加える前に、表面はタンパク質、特にE1のプレートへの非特異的結合を減らすためにブロッキング溶液で処理することができる。ブロッキング剤にはSuperBlock(ピアス ケミカル社:Pierce Chemical Company、ロックフォード、イリノイ州);SynBlock(セロテック:Serotec、ローリー、ノースカロライナ州);SeaBlock(カルビオケム:CalBiochem、ダームスタット、ドイツ);金属キレートブロック(ピアスケミカル社、ロックフォード、イリノイ州);1%カゼイン;1〜5%ウシ血清アルブミン(BSA);グルタチオン;およびこれらの様々な組み合わせを含む。ブロッキング工程後、ウェルはSuperBlockウォッシュ(ピアスケミカル社、ロックフォード、イリノイ州)またはリガーゼバッファーウォッシュ(50mM HEPES/50mM NaCl)で洗浄できる。1つの態様では、Immulon96または384ウェルプレートは50mM HEPES/50mM NaCl中の1%カゼインでブロッキングされ、そして50mM HEPES/50mM NaCl/4mM DTTを使用して洗浄される。
【0031】
ブロッキング工程後、E1(ユビキチン−活性化酵素)、E2(ユビキチン結合酵素)、ATP−Mgおよびユビキチン(通常は標識したユビキチン)を含むリガーゼ反応ミックスを、固定化パーキン(パーキンE3リガーゼ)および基質(例えばS5aもしくはトロポニン)と合わせる。場合によりE1はエピトープにタグが付けられる(例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼもしくはHisを用いて)。反応成分は任意の望ましい順序で加えられる。ATPは反応を開始するために所望により最後に加えられる。
【0032】
例示的な反応ミックスは:
・パーキンタンパク質(例えば0.01〜10ug)
・500nM 1:1 ビオチン:ユビキチン
・2〜6nM GST−E1
・300nM E2(UbcH7)
・S5a(200nM)
・10mM MgATP
・50mM HEPES/50mM NaCl pH8.8

反応成分、典型的にはATPは陰性対照のような特定のサンプルからは除くことができる。1つの態様では、アッセイ方法は96または384ウェルプレート形式で行われる。プレートはある期間(例えば室温で60分間、または37℃で10〜90分間)、インキュベーションされる。プレートは可溶性試薬を除去するために洗浄され、そしてユビキチンの存在または量(すなわちユビキチン化S5aのユビキチン成分)が測定される。洗浄溶液は50mM HEPES/50mM NaClでよい。
【0033】
ユビキチン化S5aの検出法は、使用する標識またはタグに依存する。例えばプレートアッセイ方法では、蛍光タグを付けたユビキチンが蛍光プレートリーダーを使用して直接検出でき、ビオチンタグを付したユビキチンは標識したストレプトアビジンを使用して検
出でき(例えばストレプトアビジン−HRPもしくは1:5000のNeutravidin−HRP[ピアスケミカル社、ロックフォード、イリノイ州])、そしてエピトープタグを付したユビキチンは抗−タグ抗体を使用したイムノアッセイ方法で検出できる。
【0034】
別の取り組みでは、ユビキチン化アッセイ方法を溶液中で行い、そして溶液(またはアリコート)を捕捉プレートに移すことができる。例となる反応では、反応成分を50マイクロリットル容量とし、そしてアッセイ方法を37℃で10〜90分間(例えば60分間)行う。アッセイ方法の終わり、および/またはアッセイ方法の種々の時点で、反応ミックスまたはそのアリコートを、S5aに結合する固定化部分(例えば抗−S5a抗体、またはHis−タグ付きS5aにはニッケル)、あるいはユビキチンに結合する固定化部分(例えば抗−ユビキチン抗体、His−タグ付きユビキチンにはニッケル、またはエピトープタグ付きユビキチンには抗−エピトープタグまたは抗体)を含む捕捉プレート(例えば96もしくは384ウェルプレート)に移す。本発明で使用するタンパク質を標識するための一般的なエピトープタグには、FLAG、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン(His)、Myc、マルトース結合タンパク質(MBP)、ビオチンおよびその他がある。
【0035】
アッセイ方法は特定の終点でS5aの単位質量あたりの総ユビキチン化を測定するために(ユビキチン化の「程度」)、かつ/またはS5a分子のポリユビキチン化を程度を測定するために(すなわちユビキチン鎖の長さ)設計することができる。アッセイ方法は様々な時点でのユビキチン化を測定して(例えば実施例2を参照にされたい)、単位時間あたりの(ユビキチン化の「速度」)、または変動する条件下のユビキチン化のレベルを決定するために設計することができる。
【0036】
上記のように、代替的態様ではアッセイ方法にS5aの代わりにトロポニンが使用される。例となる反応ミックスは:
・パーキンタンパク質(例えば0.01〜10ug)
・500nM 1:1 ビオチン:ユビキチン
・2〜6nM GST−E1
・300nM E2(UbcH7)
・トロポニン1(200nM)
・10mM MgATP
・50mM HEPES/50mM NaCl pH8.8
【0037】
一般に本発明のインビトロアッセイ方法には、パーキン、S5a、E1(例えば、UBA1、UBA2)、E2(例えばUbcH7、UbcH6、UbcH8、UbcH13)、Mg−ATPおよびユビキチンをバッファー溶液中に含む。アッセイ方法成分は当該技術分野で知られている方法、または以下に記載する方法を使用して作成でき、あるいは購入してもよい。例えば精製したユビキチン経路の酵素はボストン バイオケム社(Boston Biochem Inc)から得ることができる(840 Memorial Drive、ケンブリッジ、マサチューセッツ州02139)。また、Wee et al.,2000,J.Protein Chemistry19:489−98を参照にされたい。トロポニンは購入することができる(例えばアブカム:Abcam、ケンブリッジ、マサチューセッツ州)。限定ではなく具体的説明のために、アッセイ方法成分をさらに以下に記載する。パーキン、トロポニン、S5a、E1、E2およびユビキチンは精製され、かつ/または組換え体であることができ、そしてヒト、哺乳動物、マウスもしくは他の真核生物起源であり得る。様々なアッセイ方法の中には、反応成分が同種(例えばヒトのパーキン、S5a、E1、E2およびユビキチン、またはマウスのパーキン、S5a、E1、E2およびユビキチン)に由来する。
【0038】
a)パーキン
アッセイ方法で使用するパーキンタンパク質は、ほとんどがヒトのパーキンと実質的に同じ配列を有する。ヒトのパーキンタンパク質の例示的配列は、NCBI寄託番号BAA25751で見いだされる。あるいはヒト以外の哺乳動物(例えばマウス)のパーキンタンパク質を使用してもよい。マウスのパーキンタンパク質に関する例示的配列は、NCBI寄託番号AAI13205で見いだされる。パーキンタンパク質は典型的には科学文献に広く記載されている方法を使用して組換え発現により得られる。パーキンは真核細胞培養で、大腸菌(E.coli)で(例えばUS2007/0212679号明細書を参照にされたい)、または当該技術分野で知られている他のタンパク質発現系で生産され得る。読者の便宜のため、パーキン配列を配列番号2および4として提供する。あるいはこのアッセイ方法で使用するパーキンは、1もしくは複数の残基の置換、挿入または欠失により配列番号2または配列番号4から派生するバリアントであることができるが(マウスまたはヒトのパーキンを使用する場合)、少なくとも幾らかのリガーゼ活性を保持する。幾つかの変更体では、野生型とは異なる活性を有するパーキンバリアントを使用できる(例えば167位でセリンの代わりにアスパラギンを有するバリアント;212位でシステインの代わりにチロシンを有するバリアント;240位でトレオニンの代わりにメチオニンを有するバリアント;275位でアルギニンの代わりにトリプトファンを有するバリアント;289位でシステインの代わりにグリシンを有するバリアント;437位でプロリンの代わりにロイシンを有するバリアント)。場合により、細胞または微生物中で発現した時、野生型パーキンとは異なる表現型を与えるバリアントが使用される。さらにごく僅かなリガーゼ活性を保持するパーキンフラグメントを使用することができる。
【0039】
パーキンは融合タンパク質として発現でき、そして例えばエピトープタグを含んで精製および/またはマイクロタイターウェルのような基質への結合を促進することができる。パーキンは大腸菌(E.coli)または他の細菌中で組換え的に発現され、そして公開された特許出願であるUS2007/0212679号明細書に記載されているように精製され得る。この精製法にはアルギニンを含有する溶液中でタンパク質がリフォールディングされる透析工程を含む。
【0040】
本アッセイ方法に適するパーキン形は、一般に同じモル量の野生型ヒトパーキンのリガーゼ活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、多くの場合は少なくとも80%、そしてたいていは少なくとも90%を保持する。リガーゼ活性を保持するパーキンフラグメントを使用できる。典型的にはそのようなフラグメントは、自然に存在するパーキン配列の少なくとも200個の連続する残基、そして多くの場合は少なくとも400個の連続する残基を含んでなる。幾つかの態様では、本発明で使用するパーキンのバリアントは自然に存在するパーキンの形態と少なくとも90%の配列同一性、時に少なくとも95%の配列同一性、そして多くの場合は少なくとも98%の配列同一性を共有する。2つのタンパク質間の配列同一性は、2つのタンパク質配列を最適に並べることにより決定できる。タンパク質はマニュアルで、またはデフォルトパラメーターを使用したClustalWおよびNCBIアライメントプログラムのようなコンピューター実行型のアルゴリズムを使用して並べることができる。
【0041】
b)S5a
S5aはパーキンの基質である。S5aはマルチユビキチン−結合タンパク質であり、ポリ−ユビキチン鎖にそのユビキチン相互作用モチーフを介して結合する。S5aはFerrell et al.,1996、「ヒト26Sプロテアーゼのマルチユビキチン鎖結合サブユニットのモレキュラークローニングおよび発現(Molecular cloning and expression of a multiubiquitin chain binding subunit of the human 26S protease)」、FEBS Lett.381(1−2),143−148;Cou
x et al.,「20Sおよび26Sプロテアソームの構造および機能(Structure and functions of the 20S and 26S proteasomes)」Annu.Rev.Biochem.65,801−847(1996);Wang et al.,2005,J.Mol Biol.348(3):727−39;van Nocker,1996,Mol Cell Biol 16:6020−28;Katzmann et al.,2002,Nat Rev Mol.Cell Biol.3:893;およびYoung et al.,1998,J.Biol.Chem.273:5461に記載されている。ヒトS5aの配列は、NCIタンパク質データベース中で寄託番号NP 002801を有する。
【0042】
S5a基質はアッセイ方法に使用するために修飾され得る。例えばS5aは融合タンパク質として発現されることができ、そして例えばGSTもしくはHisのようなエピトープタグを含むことができる。GST−タグ付きS5aはバイオモル社(BioMol,Inc.)(プリマスミーティング、ペンシルバニア州)から購入できる。His−タグ付きS5aはWalters et al.,2002 Biochemistry 41:1767−77に記載されているように調製できる。パーキンによりユビキチン化され得る能力を保持する、典型的には自然に存在するS5a配列の少なくとも200個の連続する残基、多くの場合は少なくとも300個の連続する残基、多くの場合は少なくとも350個の連続する残基、時に少なくとも370個の連続する残基を含んでなる短縮形もしくはフラグメントを使用できる。幾つかの態様では、自然に存在するヒトのタンパク質(NP 002801)と少なくとも90%の配列同一性、時に少なくとも95%の配列同一性、そして多くの場合は少なくとも98%の配列同一性を有するS5aのバリアントが使用される。2つのタンパク質間の配列同一性は、2つのタンパク質配列を最適に並べることにより決定することができる。タンパク質はマニュアルで、またはデフォルトパラメーターを使用したClustalWおよびNCBIアライメントプログラムのようなコンピューター実行型ノアルゴリズムを使用して並べることができる。
【0043】
c)トロポニン1
トロポニン1はパーキンの基質であり、そして以下に記載するリガーゼ特異性アッセイ方法を含む本発明のアッセイ方法に使用できる。ヒトのトロポニン1は配列(Genbank寄託番号NP 000354)を有するが、任意の哺乳動物由来の形態を使用できる。トロポニン1がパーキンの基質として使用される場合、タンパク質はアッセイ方法に使用するために修飾してもよい。例えばトロポニン1は融合タンパク質として発現されることができ、そして例えばGSTもしくはHisのようなエピトープタグを含むことができる。トロポニン1は市販されており、または周知のプロトコールを使用して調製できる。パーキンによりユビキチン化される能力を保持する、典型的には自然に存在するトロポニン配列の少なくとも150個の連続する残基、多くの場合は少なくとも180個の連続する残基、多くの場合は少なくとも200個の連続する残基、時に少なくとも205個の連続する残基を含んでなるトロポニン1の短縮形もしくはフラグメントを使用できる。幾つかの態様では、自然に存在するヒトのタンパク質(NCIタンパク質データベース寄託番号NP 000354)と少なくとも90%の配列同一性、時に少なくとも95%の配列同一性、そして多くの場合は少なくとも98%の配列同一性を有するトロポニン1のバリアントが使用される。2つのタンパク質間の配列同一性は、2つのタンパク質配列を最適に並べることにより決定することができる。タンパク質はマニュアルで、またはデフォルトパラメーターを使用したClustalWおよびNCBIアライメントプログラムのようなコンピューター実行型のアルゴリズムを使用して並べることができる。
【0044】
d)セプチン4
セプチン4(“Sept4”)はパーキンの基質であり、そして以下に記載するリガーゼ特異性アッセイ方法を含む本発明のアッセイ方法に使用できる。Sept4は細胞分裂
で機能をもつ保存されたタンパク質ファミリーのメンバーである。セプチン4の3種のスプライスバリアントが今日までに同定された:Sept4var1(NCBI寄託番号NP 004565)、Sept4var2(“ARTS”としても知られている)(NP
536340)およびSept4var3(NP 536341)。Sept4var1およびSept4var3は、Sept4var1がN末端にさらに21個のアミノ酸を含むことを除いて同じ配列を有する。Sept4var2(ARTS)はバリアント1および3と残基1〜247については配列同一性を共有し、そしてアミノ酸247〜274については配列に多様性がある(Larisch et al.,2000 Nature Cell Biol2:915−20を参照にされたい。これは引用により本明細書に編入する)。またChance et al.,2006、「遺伝的局所性偶発的ニューロパシー:圧迫麻痺に罹り易い遺伝的ニューロパシーおよび遺伝的神経痛性筋萎縮症(Inherited focal,episodic neuropathies:hereditary neuropathy with liability to pressure palsies and hereditary neuralgic amyotrophy)」、Neuromolecular Med.8(1−2):159−74;Spiliotis et al.,2006「ここに挙るセプチン:細胞内の機能および組織を調和させる新規ポリマー(Here come the septins:novel polymers that coordinate intracellular functions and organization)」、J Cell Sci.119(Pt 1):4−10;Hall et al.,2004「セプチン遺伝子ファミリーの病理生物学(The pathobiology of the septin gene family)」、J Pathol.204(4):489−505を参照にされたい;各々、引用により本明細書に編入する。Sept4var3はパーキンの基質であることが示された(データは示さず)。引用により本明細書に編入する同時係属出願である60/939,335号明細書を参照にされたい。
【0045】
本発明のアッセイ方法では、Sept4タンパク質はSept4var3でよい。あるいはSept4タンパク質はSept4var1でよい。あるいはSept4タンパク質はSept4var2でよい。アイソフォームのバリアント、フラグメントおよび混合物も使用できる。Sept4のアイソフォーム1およびアイソフォーム3は、ただアミノ末端の21アミノ酸残基が異なるだけで、パーキンとの等価の相互作用を有すると考えられる。Sept4var2(ARTS)はアミノ末端1〜247残基に相同性を有する。Sept4var2はユビキチン化され、そして神経細胞からの共免疫沈降実験ではSept4var2およびパーキンが互いに相互作用することが示された。
【0046】
幾つかの実験では、Sept4の短縮形を本発明の方法で使用できる。例えば以下の実験的実施例で示されるように、N末端から最高117個のアミノ酸を欠いているSept4バリアントは、パーキンによりユビキチン化されるそれらの能力を保持し、そして本発明のアッセイ方法で使用することができる。幾つかの態様では、Sept4の他のバリアント、例えば挿入、欠失もしくは置換により異なるSept4バリアントを使用して本発明の方法を実施することができる。有用なバリアントはパーキンユビキチン化基質となる特性を保持し、これは当該技術分野で知られ、そして本明細書に記載するアッセイ方法を使用して試験することができる。本発明で使用できるSept4の他のバリアントには、Sept4タンパク質と90%の配列同一性、好ましくは少なくとも95%の配列同一性、好ましくは少なくとも98%の配列同一性を共有するバリアントを含む。当業者は2つのタンパク質配列を最適に並べることにより、バリアントが共有する元のタンパク質との相同性を容易に決定することができる。ClustalWおよびNCBIアライメントプログラムのようなアライメントプログラムは、2つのタンパク質を最適に並べるために使用できるプログラムの例である。
【0047】
e)ユビキチン、ユビキチン−活性化酵素(E1)およびユビキチン−キャリアータンパク質(E2)
ユビキチン、ユビキチン−活性化酵素(E1)およびユビキチン−キャリアータンパク質は市販されており、または日常的な組換え法を使用して作成することができる。ユビキチンは例えばボストンバイオケム社から市販されている(840 Memorial Drive、ケンブリッジ、MA02139)。ビオチン化ユビキチンは1mMの29.2ulを使用して50ugのビオチン−ユビキチン(UB−560、ボストンバイオケム)に再懸濁し、約17%ビオチン化された約1.17mMの30ulのユビキチンを得ることにより調製することができる。ユビキチンにタグが付される場合(例えばエピトープタグ)、タグはユビキチンのN末端に融合されるか、またはそうでなければユビキチン化を妨害しないように付される。
【0048】
f)抗体
パーキン、S5aおよびユビキチンに対する抗体は市販されている(例えばABR−Affinity BioReagents,4620 Technology Drive,Suite 600、ゴールデン、コロラド州80403)か、または日常的な方法を使用して作成できる。アッセイ方法の幾つかの変形では、エピトープにタグを付けたタンパク質はタグを認識する抗体を使用して認識される。
【0049】
アッセイ方法法の選択を上に記載したが、uS5aを作成し、そして検出するための多くの可能な取り組みがあり、そして上記アッセイ方法の多くの変形を同定することは当業者の通常の十分に可能な技術範囲内であると認識される。
【0050】
II.パーキンリガーゼ活性のモジュレーターのインビトロスクリーニング
上に注記したように、本発明のアッセイ方法はパーキンタンパク質活性のモジュレーター、特に正のモジュレーターのスクリーニングに応用を提供する。特定のメカニズムに結び付けられることは望まないが、正のモジュレーターはパーキンアゴニスト(これはパーキンリガーゼ活性を上げる)、またはパーキンタンパク質の安定化物(これは変性条件の存在下でのパーキン構造を維持する)であることができる。パーキンタンパク質を安定化する化学シャペロンのような化合物は、パーキンソン病の処置に有力な作用物質である。1つの態様では、候補の作用物質がパーキンソン病を処置するために有用であるかどうかを決定するためにインビトロアッセイ方法が使用され、これは化合物の存在下での精製した(または部分精製した)パーキンタンパク質のS5aユビキチン化活性を測定し、そして化合物の存在下でのパーキンタンパク質のユビキチン化活性を、化合物の不存在下での精製したパーキンタンパク質のユビキチン化活性と比較することを含むことができる。ユビキチン化活性を上げる作用物質の能力は、パーキンソン病の処置に有用である作用物質およびさらなる試験の候補を示す。
【0051】
反応成分は任意の順序で合わせてよい。試験作用物質は、ライゲーション反応の開始(例えばATPの付加)の前に加えてもよく、またはライゲーション反応が始まった後に加えてもよい。
【0052】
このように、本発明の1つの観点では、パーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法を提供する。このアッセイ方法には(1)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;(2)パーキンタンパク質、S5aタンパク質および試験作用物質を(1)の条件下にて一緒にインキュベーションし;(3)試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質の不存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含むことができ、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性を強化し、そして試験作用物質の
存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す。通常、反応は試験作用物質の存在および不存在下で並行して行われる。しかし対照反応を異なる時期に行うことも可能である。例えば1つの変法ではアッセイ方法には(1)パーキンタンパク質、S5aタンパク質および試験作用物質を、パーキンタンパク質がS5aをユビキチン化できる条件下で一緒にインキュベーションし、そして(2)試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質の不存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度(例えば予め測定された値)と比較することを含み、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性を強化することを示し、そして試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す。またアッセイ方法は、多数の作用物質を同じ反応、バッチで、または組み合わせてアッセイ方法することが可能である。
【0053】
幾つかの変形では、パーキンはリガーゼアッセイ方法の開始前に熱で破壊される。熱変性アッセイ方法では、パーキン活性の正のモジュレーターである作用物質(パーキンのアゴニストもしくは安定化剤)が同定される。パーキンは熱的な不安定化条件(すなわち天然のパーキンタンパク質のリガーゼ活性を少なくとも40%、通常は対照の約40%〜70%まで下げるのに十分高い温度)で、作用物質(1もしくは複数)の存在もしくは不存在下でインキュベーションされ、そして次いでパーキンリガーゼ活性が測定される。パーキン構造を保存する(パーキン安定化剤)またはパーキンの酵素的活性のアゴニストとして作用する作用物質の両方が、試験作用物質が含まれる場合に、より高いユビキチン化のレベルにより同定される(安定化剤に関しては最大100%まで)。熱変性アッセイ方法は、同時係属出願第60/025,231号明細書に記載されている(これは引用により本明細書に編入する)。
【0054】
パーキンの不安定化に関する条件は、通常、45〜60℃の範囲の温度でのインキュベーション、および30分から3時間の範囲のインキュベーション温度を含む。例となる熱不安定化条件は、57℃で90分である。他の例となる熱不安定化条件は、60℃で150分である。1つの態様では、パーキン(0.5mg/ml)および試験作用物質(10μM)を、50mM HEPES pH8.8、1mM DTT、0.005%Tween(商標)20(場合により0.1%Pluronic(商標)F−127を含む)中でインキュベーションする。
【0055】
パーキン活性を調節(阻害または増加)させる能力についてスクリーニングすることができる作用物質の種類に特定の限定はない。種々のクラスの試験作用物質を使用できる。例えば多数の天然および合成の化合物のライブラリーを使用できる(NCI公開合成化合物コレクションライブラリー(Open Synthetic Compound Collection library)、ベセスダ、メリーランド州;Fodor et al.1991,Science 251:767−73に記載されている化学的に合成されたライブラリー;Medynski,1994,BioTechnology 12:709−710;Ohlmeyer et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:10922−10926;Erb et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:11422−11426;Jayawickreme et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:1614−1618;およびSalmon et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:11708−11712を参照にされたい)。1つの態様では、作用物質は1000未満、多くの場合は500未満の分子量をもつ分子のような低分子である。好ましくは作用物質は血液−脳関門を通過でき、または血液−脳関門を通過できるように修飾され得る。1つの態様では、「化学シャペロン」は、パーキンを安定化でき(すなわち過剰に発現された場合でも、パーキンの活性
なコンフォメーションを維持する)、またはミスフォールドしたパーキンバリアントの正しいフォールディングを誘導する作用物質である。
【0056】
本明細書で使用するように、「パーキンソン病を処置するために有用な作用物質」または「パーキンソン病を処置するための候補化合物」とは、他の化合物よりもパーキンソン病の患者に治療的または予防的利益を表す見込みが高いと同定される化合物、すなわち薬剤候補を指すと理解される。薬剤探査に精通している人は、薬剤候補が患者に投与される前にさらなる試験(例えば動物でのインビボ試験)を受けることができると理解している。また、ヒトへの投与が認可された作用物質は、薬剤候補の誘導体または化学的に修飾された形でよいと理解している。
【0057】
III.リガーゼの特異性スクリーニング
パーキン媒介型のS5aのユビキチン化を上げると同定された作用物質(今後、時に「パーキンの正のモジュレーター」と呼ぶ)は、S5aがパーキンの基質となる上記スクリーニングアッセイ方法を使用して同定できる。追加のスクリーニング工程を使用して、本発明の方法を使用して同定された任意のパーキンの正のモジュレーターの特異性を特性決定することができる。「特異性」とは、正のモジュレーターが試験した複数のE3リガーゼのアゴニストもしくは安定化物質ではないが、パーキンを排他的に調節するか、またはそれが他のE3リガーゼを調節するよりも効果的に調節することを意味する。
【0058】
また本明細書で開示する特異性のスクリーニングは、上記方法を使用して元々同定されたパーキンの正のモジュレーターの特異性を評価するためにも使用できる(パーキンの基質としてS5aを使用して)。また本明細書に開示する特異性のスクリーニングは、他の方法(例えばS5a以外のパーキンの基質、例えば限定するわけではないがトロポニン1およびセプチン4を使用したスクリーニング)により同定されたモジュレーターの特異性を特性決定するためにも使用できる。
【0059】
以下の実施例3に示すように、S5aは数種のE3リガーゼの基質である。本発明はパーキン以外のE3リガーゼによるS5aのライゲーションに及ぼす、パーキン活性の正のモジュレーターが評価される、特異性を決定するためのインビトロの方法を提供する。1つの態様では、このアッセイ方法には(1)パーキン以外のE3リガーゼタンパク質、およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化される条件下で一緒にインキュベーションし;(2)E3タンパク質およびS5aタンパク質を、パーキンの正のモジュレーターの存在下で(1)の条件下にて一緒にインキュベーションし;(3)パーキンの正のモジュレーターの存在でのS5aのユビキチン化の速度または程度を、パーキンの正のモジュレーターの不存在下でのS5aのユビキチン化の速度または程度と比較することを含み、ここでパーキン活性のモジュレーターの存在下でのS5aユビキチン化の相対的増加は、パーキン活性のモジュレーターが非パーキンE3リガーゼ活性の活性を正に調節する(例えば非−パーキンE3リガーゼのアゴニストである)ことを示す。パーキンのS5aユビキチン化を調節するが、S5aの非−パーキンE3ユビキチン化を検出可能に調節しないパーキン活性のモジュレーターは、特異的なパーキンの正の調節活性を有すると同定される。通常、試験は数種の濃度のモジュレーターを使用して行われる。用量依存的曲線は、当該技術分野で周知な方法を使用して作成できる。典型的には、連続的な2倍もしくは3倍の希釈が使用される。通常、試験濃度は100マイクロモルから50ピコモルの範囲内である。以下の実施例4を参照にされたい。またアッセイ方法は種々のパーキン基質、例えばトロポニン1、またはE1、E2および上に記載した他の反応成分の存在下でユビキチン化され得る他のパーキン基質を使用しても行うことができる。
【0060】
S5aの非パーキンE3ユビキチン化も調節するが、パーキン活性を調節するほど効果的ではないパーキンの正のモジュレーターは、パーキンに部分的に特異的であるパーキン
の正のモジュレーター活性を有すると同定される。この内容において、「それほど効果的ではない(less effectively)」とは、10%までパーキン活性を上げるために必要な化合物の量(濃度)(“EC10”)が、パーキンよりも非パーキンE3で高いことを意味する。このアッセイ方法では、100%は化合物の不存在下でE3リガーゼの完全な活性(すなわち弱められたり、変性されたりしていない)の全活性と定める。非パーキンE3に関するEC10が100マイクロモル以下ならば、パーキンよりも2倍より大きい非パーキンE3に関するEC10は、部分的特異性を表す。好ましくはEC10は少なくとも5倍、10倍、20倍、または100倍高い。このようにパーキン活性を1マイクロモルの濃度で100%から110%に上げ、そして25マイクロモル濃度で100%から110%に上げる化合物は、部分的特異性を表す。このアッセイ方法の幾つかの変形では、パーキンおよび非パーキンE3が部分的に弱められ、そして完全に活性なリガーゼの100%の活性よりも低い活性を有する可能性がある。そのような例では、弱められたパーキン活性を1マイクロモルの濃度で50%から60%へ上げる化合物、および弱められた非パーキン活性を25マイクロモルの濃度で55%から65%へ上げる化合物が、部分的特異性を表す。非パーキンE3(1もしくは複数)に関するEC10が100マイクロモルより大きく、そしてパーキンに対するEC10よりも少なくとも4倍高い場合、化合物はパーキンに完全に特異的であると考えられる。
【0061】
非パーキンE3のリガーゼ活性に関するアッセイ方法条件は、結果が比較されるパーキンアッセイ方法で使用される条件と必ずとは限らないが同じでよい。例えば修飾は、最適な反応条件またはコファクターで、種々のE3間の差異を説明するように作成できる。例えばE3がMdm2またはMurf1である場合、E2タンパク質はUbcH5でよく、一方、対応するパーキンアッセイ方法では、好適なE2タンパク質はUbcH7でよい。特異性はアッセイ方法の反応条件および/または非パーキンE3リガーゼ(1もしくは複数)に関して報告できる。例えば実施例4に記載する実験では、試験する化合物はMdm2に比してパーキンに特異的である。
【0062】
熱的な不安定化アッセイ方法が使用される場合、変性の条件は異なるE3リガーゼで変動するが、実施例に記載するように測定することができる。以下に示すように、E3 E6APは41℃で1時間のプレインキュベーション後に、その活性の50%を失うようであった。E3 Murf1は60℃で1時間のプレインキュベーション後に、その活性の50%を失うようであった。所定のE3リガーゼに関して、活性を40〜70%まで下げる熱的変性条件を決定することは、この開示により導かれる熟練者の技術の範囲内である。
【0063】
パーキンの基質をユビキチン化できる任意の哺乳動物のE3リガーゼを、その基質を使用する特異性のアッセイ方法に使用できる。例えば実施例4に示すように、CHIP、Nedd4、Murf1、E6AP、Mdm2およびSiah2はS5aをユビキチン化できる。CHIP(Hsp70−相互作用タンパク質のカルボキシル末端)は、熱ショックタンパク質と相互作用するテトラトリコペプチド反復含有タンパク質であり、そしてシャペロン機能を負に調節する(例えばBallinger et al.,1999,Mol.Cell.Biol.19:4535−45;Connell et al.,2001,Nat.Cell Biol.3:93−96を参照にされたい)。Nedd4(神経前駆体細胞が発現した発生的にダウンレギュレートされたタンパク質4)は、N末端にC2ドメイン、タンパク質中央に2から4つのWWドメインおよびC末端に触媒的HECTドメインを有するE3ユビキチンリガーゼのファミリー中の原型タンパク質である(例えばIngham et al.,2004,Oncogene 23:1972−1984を参照にされたい)。Murf1(筋肉特異的RINGフィンガータンパク質1)は、筋肉の萎縮の発生に重要なタンパク質である(例えばAttaix et al.,2005,Essays Biochem.41:173−186を参照にされたい)。
Mdm2(p53結合タンパク質Mdm2)は、p53腫瘍サプレッサートランス活性化ドメインに結合する発癌タンパク質である(Kussie et al.,1996,Science 274:948−953)。E6AP(ヒト乳頭腫ウイルスE6−随伴タンパク質)は、ヒト乳頭腫ウイルスE6発癌タンパク質とp53との相互作用を媒介する(Huibregtse et al.,1993,Mol.Cell.Biol.13:775−784を参照にされたい)。Siah2(Seven in absentia homolog2)は、低酸素に対する細胞応答の調節に結び付けられた(例えばNakayama et al.,2004,Cell 117:941−952)。他の哺乳動物のE3リガーゼは、医学文献を参照にすることにより当業者により容易に同定される。限定するのではなく、具体的な例として、E3ユビキチンリガーゼアトロフィン(atrophin)−相互作用タンパク質4(AIP4);EDD(またはHYD);Smurf2;アトロギン(atrogin)−1/MAFbx;RNF8;c−IAP1;SCf−Cdc4;Herc4;gp78;RINCK;Pirh2;Phr1;Triad1;RNF125/TRAC−1;Ufd2p;リガンド−オブ−Numbタンパク質X1;Cullin4B;HRD−1;DDB2;BRCA1 RING;c−Cb1;HACE1:RNF5;Skp2;mind bomb1;およびHuwelがある。
【0064】
幾つかの態様では、非パーキンE3はRINGファミリーのメンバーである。幾つかの態様では、E3リガーゼはMdm2、Nedd4、Murf1およびE6APから選択される。1つの態様ではE3リガーゼはMurf1またはE6APである。1つの態様では、E3リガーゼはMurf1である。幾つかの変更態様では、特異性アッセイ方法はS5a以外のパーキン基質、例えばトロポニン1を使用する。
【0065】
IV.パーキンリガーゼ活性の細胞に基づくアッセイ方法
1つの観点では、本発明は(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;そして(b)S5aのユビキチン化の速度もしくは程度を測定することにより、パーキン活性を測定するための細胞に基づく方法を提供する。関連する観点では、本発明は(a)パーキンを発現し、そしてトロポニン1を発現する哺乳動物細胞を準備し;そして(b)トロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度を測定することにより、パーキン活性を測定するための細胞に基づく方法を提供する。このアッセイ方法は細胞の環境(例えば同時に発現されるタンパク質)がパーキン活性に及ぼす効果を比較し、パーキンバリアントの活性を比較するために、薬剤スクリーニングアッセイ方法に、および他の用途に使用することができる。
【0066】
パーキンおよびS5aまたはトロポニンを発現する細胞は、そのタンパク質の1つまたは両方を自然に発現する細胞であることができる。様々な細胞を使用でき、それらにはHEK293細胞(ATCC CRL−1573)、SHSY−5Y細胞(ATCC−2266)、COS細胞(CRL−1651);CHO細胞(ATCC−CCL−61)または他の哺乳動物細胞株を含む。1つの態様では、細胞は内因性のS5aおよび内因性のパーキンを発現する。あるいはタンパク質の一方または両方が細胞に対して外因性であり、そして組換え的に発現され得る。細胞は安定に、または一時的にトランスフェクトされ得る。好ましくは細胞は多数のアッセイ方法を通して一貫性があるような安定なトタンスフェクタントである。1つの態様では、細胞は内因性のS5aおよび外因性のパーキンを発現する。1つの態様では、細胞は内因性のパーキンおよび外因性のS5aを発現する。幾つかの態様では、細胞が1つの種に由来するものであり、そしてパーキンおよび/またはS5aは外因性であり、そして別の種に由来する。例えばパーキンおよびS5aはヒトに由来し、そして細胞はヒト以外の哺乳動物に由来することができる。
【0067】
また細胞は、マウスまたはラットの神経細胞培養物のような初代培養物でよい。マウス
の皮質性培養物をSwiss−Webster、C56BL/6WTまたは他のマウスから調製することができる。ヒトのタンパク質を発現するトランジェニックマウスを使用できる。ラットの腹側中脳(RVM)培養物は、E15Wistarラットまたは他のラットから調製できる。
【0068】
組換えパーキンを発現している細胞を使用する場合、パーキンは発現ベクターを使用して発現することができる。1つの態様では、発現ベクターは野生型パーキンをコードする。例えばヒトのパーキンに関するcDNA(NM004562)は、本アッセイ方法で使用するためにベクターpcDNA3.1(インビトロジェン:Invitrogen、サンディエゴ、カリフォルニア州)のHindIII/XbaI部位中に挿入することができる。他の態様では、パーキン変異体をコードする発現ベクターが使用される。米国特許公開第20070212679号明細書に記載されるように、ある種のパーキン変異体の発現はプロテアソーム機能の抑制をもたらす。例となるパーキン変異体には、S167N、C212Y、T240M、R275W、C289G、P437Lがあり、好ましくはR275W、C212YまたはC289Gが使用される。パーキン変異体を使用するアッセイ方法は、野生型パーキンを使用するアッセイ方法の代わりとして、またはそれと組み合わせて使用できる。幾つかの態様では、パーキンおよび/またはS5aタンパク質はバリアントおよび/または融合タンパク質である。
【0069】
組換え発現の方法は知られている。発現ベクター、一過性のトランスフェクションのための方法、および本発明の実行のために適当な細胞培養の方法は、当該技術分野において周知であり、そして本明細書ではごく簡単に記述する。周知のように、発現ベクターは、典型的にはコーディング配列(例えば、パーキンの)に操作可能に連結された真核生物の発現制御要素を含む組み換えポリヌクレオチド構築物である。発現制御要素は、プロモーター、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写ターミネーター配列を含むことができる。発現ベクターは、典型的には、エピソームか、または宿主染色体DNAの組み込み部分のいずれかとして宿主生物において複製可能である。哺乳動物発現ベクターの例は、pcDNA3.1(インビトロジェン、サンディエゴ、カリフォルニア州);pEAK(エッジバイオシステムズ:Edge Biosystems、マウンテンビュー、カリフォルニア州)およびその他(2005を通じて補遺されたようなAusubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley−Interscience,ニューヨークを参照にされたい)を含む。通常は、発現ベクターは、所望のDNA配列により形質転換された細胞の検出を可能にするための選別マーカー、例えばアンピシリン耐性またはハイグロマイシン耐性を含有する。トランスフェクションおよび細胞の培養に関する方法も周知である。例えばSambrook
et al.,1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press;およびAusubel,1989、同上を参照にされたい。
【0070】
V.パーキンリガーゼ活性のモジュレーターの細胞に基づくスクリーニング
本発明の細胞に基づくアッセイ方法は、パーキンソン病を処置する候補化合物を同定するために、パーキンタンパク質活性のモジュレーターのスクリーニングに有用である。1つの観点では、パーキン活性に及ぼす作用物質の効果が、(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露しない対照細胞中でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含む細胞に基づくアッセイ方法で評価することができ、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性を強化すること
を示し、そして試験作用物の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物がパーキン活性を阻害することを示す。関連する観点では、パーキン活性に及ぼす作用物質の効果が、(a)パーキンを発現し、そしてトロポニンを発現する哺乳動物細胞を準備し;(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;(c)試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露しない対照細胞中でのトロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含む細胞に基づくアッセイ方法で評価することができ、ここで試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性を強化することを示し、そして試験作用物の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物がパーキン活性を阻害することを示す。
【0071】
細胞は、作用物質を細胞培養基に加えることにより試験作用物質に暴露することができる。1つの取り組みでは、S5aを発現する細胞はパーキンをコードする発現構築物でトランスフェクトされる。細胞は1〜10日間、好ましくは2〜5日間(例えば3日間)培養され、次いで試験作用物に暴露される。暴露期間は変動し得るが、通常、1〜24時間、好ましくは4〜16時間である。同様に様々な濃度の作用物質を試験できる。この濃度は作用物質の性質に応じて変えることができるが、典型的には1nM〜5uMの範囲内であると思われる。典型的には、数種の異なる濃度の試験作用物質が、ゼロ濃度の対照と共にアッセイ方法される(例えば、1nM、10nM、100nM、1μM、10μMおよび100μM)。
【0072】
本発明の1つの実施態様では、HEK293細胞は、6ウェル細胞培養プレートの培養ウェル(例えば、各ウェル直径約30mm)中で75%密度まで増殖される。細胞は、1ウェル当たり約2.5ugのプラスミドを用いて上記のパーキン発現ベクターでトランスフェクトされ、そして細胞は試験作用物質による分析前に約3日間(例えば、2〜5日)培養される。
【0073】
VI.化合物および使用法
1つの観点では、本発明は上記方法により同定されるパーキン活性の正のモジュレーターを提供する。作用物質は1000未満、しばしば500未満の分子量を持つ分子のような低分子でよい。1つの態様では、作用物質はパーキンを安定化できる(すなわちたとえ過剰に発現された場合でも、パーキンを活性なコンフォメーションに維持する)「化学シャペロン」であるか、またはミスフォールドしたパーキンバリアントの正しいフォールディングを誘導する。本発明はさらに、治療に有効な量の化合物を投与することにより、パーキンソン病と診断された個体の処置法を提供する。さらに本発明は予防に有効な量の化合物を投与することにより、パーキンソン病を発症する危険が平均より高いと決定された個体の処置法を提供する。
【実施例】
【0074】
VII.実施例
実施例1:パーキンの自己ユビキチン化アッセイ方法
図1に示すように、インビトロのパーキン自己ユビキチン化は、pH8.0に比べてpH8.8で強化された。自己ユビキチン化アッセイ方法は以下の反応条件を使用して行った:
50mM HEPES pH=8.0または8.8
50mM NaCl
200uM E1(UBA1)
2mM E2(UbcH7)
10ug パーキン
200uM ユビキチン
1mM Mg−ATP
【0075】
反応は、0、30および60分に取り出したアリコートを用いて37℃で進行させた。アッセイ方法混合物の15μlアリコートは、12%ポリアクリルアミドゲルの電気泳動にかけ、そしてウエスタンブロットのためにポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜に移した。膜は2時間、5%BSAまたは5%無脂肪ミルクを加えたTris−緩衝化生理食塩水−Tween20(TBST)中でブロッキングし、次いで室温で1時間、抗−S5a抗体(バイオモル社:BioMol,Inc.;プリマスミーティング、ペンシルバニア州)と共に、3%BSAまたは5%無脂肪ミルクを加えたTBST中でインキュベーションした(室温で1時間)。TBSTは25mM Tris、140mM NaCl、3mM KCl、0.05%Tween−20である。膜は4x15分、室温のTBSTで洗浄した。次いで膜は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合したヤギ抗−マウスIgGと室温で1時間インキュベーションした。膜は4X15分、室温のTBSTで洗浄し、次いでアマシャム(Amersham)のECLプラス化学発光試薬(アマシャムバイオサイエンス)中で2分間、製造元の指示に従いインキュベーションした。次いでPVDFは時間の長さを変えてフィルムに暴露して、図1のデータを得た。このアッセイ方法では、パーキンはUS2007/0212679に記載されているように大腸菌(E.coli)中で組換えにより生産され、そして精製された。
【0076】
図1Aは、抗−パーキン抗体により染色した反応生成物のウエスタンブロットを表す。1つの矢印は単量体パーキンを示す。二重の矢印はユビキチン化パーキンのラダーを示す。pH8.8で行った時、ラダーは30分で有意により強い(robust)。図1Bはビオチン化ユビキチンについて染色した反応生成物のウエスタンブロットを表す。1つの矢印は単量体パーキンを示す。二重の矢印はユビキチン化パーキンのラダーを示す。pH8.8で行った時、ビオチン−ユビキチンシグナルにより視覚化されるように、ラダーは30分で有意により強い。
【0077】
実施例2.S5aはパーキン基質である
S5aはパーキンE3リガーゼの基質であることが見い出された。S5aを加えた、または加えなかった標準反応中のパーキンタンパク質を用いた実験の結果は、図2に示す。S5aは精製を容易にするために、アミノ末端Hisエピトープタグを包含した。アッセイ方法は以下の反応条件を使用して行った:
50mM HEPES pH=8.8;
50mM NaCl;
200uM E1;
2mM E2;
10ug パーキン(組換え体)
200uM ユビキチン;
Mg−ATP 1mM
+/−200nM S5a
【0078】
反応は、実施例1に記載したように0、30および60分に取り出した時点で行い、電気泳動にかけ、そしてウエスタンブロットに供した。ブロットは抗−S5a抗体で染色した(図2)。図では、1つの矢印は単量体S5aを示す;二重の矢印はユビキチン化S5aを示す。0分では、より高分子量形のS5aは無い。より高分子量形のS5aは30分で出現し、そして60分で増加する(図上の二重頭矢印を参照にされたい)。
【0079】
これらのデータは、パーキンタンパク質、E1、UbcH7、ATP、S5aおよびユビキチンのみを含有する精製した反応混合物中、ユビキチンはS5aタンパク質へ時間依存的様式で移されることを明らかに示す。試験管には他のユビキチンリガーゼは無く、そ
してS5aは自身をユビキチン化できないので、示される活性はS5aと相互作用し、そしてユビキチンをS5aへ移すことができるパーキンタンパク質による可能性のみである。
【0080】
実施例3.トロポニン1はパーキン基質である
トロポニンを基質として使用した標準的反応で、パーキンタンパク質を使用した実験の結果を図3に示す。このアッセイ方法は以下の反応条件を使用して行った:
50mM HEPES pH=8.8;
50mM NaCl;
50nM E1;
50uM E2(UbcH7)
パーキン(以下参照)
200nM ユビキチン;
1mM Mg−ATP
200nM トロポニン
【0081】
図に示すように、2種のパーキン調製物を使用した:His6タグ付きパーキン(0.2mg/ml)およびGSTタグ付きパーキン(0.03mg/ml)。反応は0、30および60分に取り出した時点で行い、電気泳動にかけ、そしてウエスタンブロットに供した。ブロットは抗−トロポニン1抗体(アビカム:AbCam)、Cat.No.ab8288)で染色した。0分で、より高分子量形のトロポニンは無い。より高分子量形のユビキチン化トロポニンは30分で出現し、そして60分で増加する。
【0082】
実施例4.選択性スクリーニングのための代用E3リガーゼ
パーキンE3リガーゼ活性を阻害または強化する作用物質(今後、時に「パーキンモジュレーター」と呼ぶ)は、S5aがパーキン基質であるアッセイ方法を使用して同定することができる。本明細書に開示する追加のスクリーニング法を使用して、パーキン−S5a相互作用に関するパーキンモジュレーターの特異性を確認することができる。
【0083】
E3リガーゼはユビキチン化酵素の最大のファミリーを表し、現在、数百の推定配列が同定されている。E3リガーゼの構造および作用機構に基づきグループ分けされた3つのE3ファミリーがある:(1)6APカルボキシ末端に相同的(HECT)(omologous to 6AP arboxy erminus)、(2)真に興味深い新規遺伝子(eally nteresting ew ene)(RING)および(3)UFD2相同体(U−box)。本発明のアッセイ方法は例えばRING E3、U−box E3またはHECT E3であることができる。パーキンはRINGファミリーのメンバーであるので、化合物のスクリーニングには代用のリガーゼとして別のRINGファミリーE3を利用することが最も価値があるだろう。しかしE3リガーゼは歴史的に発現が難しい。したがって我々はS5aをユビキチン化する能力について試験するために、各ファミリーからE3リガーゼを選択した。第2のスクリーニングに使用するために理想的なE3リガーゼは十分に発現し、パーキンに使用されるユビキチン化アッセイ方法で使用する反応条件下で高い活性を有し、そして熱変性アッセイ方法でパーキンを破壊するために使用するものと類似の条件下で熱変性することができる。パーキンは45〜60℃の変性温度を有することが見いだされた。特異性のスクリーニングに理想的なE3リガーゼは、パーキンのスクリーニングに開発された熱ストレスアッセイ方法で使用するために、45〜60℃の範囲の熱的変性温度を有する。
【0084】
我々は6種のE3リガーゼ(CHIP、Nedd4、Murf1、Mdm2、E6APおよびSiah2)を下記のように発現させ、そして精製した(B章)。Siah2を除
いて、すべてのE3リガーゼが高い活性でS5aをユビキチン化することができた。Siah2は大変低い活性でS5aをユビキチン化した。以下のC章を参照にされたい。
【0085】
次いで我々はE3リガーゼが4℃から60℃の温度範囲でプレインキュベーションされた後に、S5aをユビキチン化する能力について試験した。熱的変性温度は、CHIPおよびSiah2を除いてすべてのE3について評価した。以下のC章を参照にされたい。約50%の活性が失われた温度を、試験した各E3について表1に列挙する。
【0086】
【表1】

【0087】
これらの実験に基づき、我々はNedd4、E6APおよびMurf1がすべて良好な発現、精製およびS5aに対する活性を示すと結論付けた。CHIPは良く発現し、そしてS5aに対して合理的な活性を有したが、それほど純粋なサンプルではなかった。Siah2は良く発現そして精製されたが、S5aに対して大変低い活性を示した。Nedd4、E6AP,Murf1およびMdm2の熱的変性特性を評価した。Nedd4は4℃より高い温度でプレインキュベーションした時に、いかなる活性も示さず、そしてMdm2は60℃でプレインキュベーションした後でも完全な活性を有した。E6APは41℃で熱的変性を示し、そしてMurf1は60℃で熱的変性を示す。
【0088】
これらすべての結果を考慮して、熱変性に基づく特異性のスクリーニングに使用するために、最も有望な2種のE3リガーゼはE6APおよびMurf1であった。Murf1はパーキンのようにRING E3であるので、Murf1がリガーゼの第2スクリーニングに特に良く適している。
【0089】
A.E3リガーゼの発現および精製
E3リガーゼのGST融合物をコードする発現プラスミドは、BL21 DE3 pLysS細胞に形質転換され、そしてアンピシリン耐性に基づき選択された。細胞は選択培地で一晩生育させ、そして翌朝、1:10倍に希釈した。OD600により測定した時、細胞密度が対数増殖期に達した時、発現を1mM IPTGで誘導した。発現は温度および時間で異なり、そして以下の表2に列挙する。またE3タンパク質を精製するために使用したアフィニティカラムの種類、およびタンパク質を透析した最終的なバッファーも与
える。
【0090】
【表2】

【0091】
発現および精製はPAGEによりクマーシー染色を使用してモニタリングして、目的タンパク質を含有する溶出画分を同定した。
【0092】
B.基質としてS5aを使用する能力
各E3リガーゼに関して、基質としてS5aを使用したユビキチン化アッセイ方法を行った。簡単に説明すると、ユビキチン化反応物は50nM E1、1mM MgATP、5μM UbcH7、0.2mg/mL E3、200nM ユビキチンおよび200nM S5aを含んだ。ユビキチン化反応は37℃で1時間インキュベーションし、そしてサンプルを0、30’および60’に取った。サンプルをSDS−PAGEで泳動し、イモビロン(immobilon)に移し、そしてS5aに対するモノクローナル抗体(バイオモル:BioMol)を使用してウエスタンブロッティングした。
【0093】
C.E3リガーゼの熱変性
E3リガーゼの熱変性特性を特性決定するために、E3を4℃〜60℃の温度範囲で90分間、プレインキュベーションした(Mdm2およびNedd4は4、37、45、50および60℃で;Murf1は4、37、50、60、70および80℃で;E6APは37、39、41、43および45℃で)。90分で、50nM E1、1mM Mg−ATP、5μM UbcH7(Mdm2およびMurf1にはUbcH5a)、200nMユビキチンおよび200nM S5aを含有するプレミックスを作成した。プレミックスを0.2mg/mLのE3リガーゼに加え、そして37℃で60分間インキュベーションした。サンプルはSDS−PAGEで泳動し、そしてS5aに対するモノクローナル抗体(バイオモル)を使用してウエスタンブロッティングにより評価した。
【0094】
パーキンはその活性の約50%を45℃から50℃の間で失い、これは以前の実験と一致する。Mdm2は60℃でプレインキュベーションした後でも活性を保持するようである。Nedd4は試験した条件下で4℃を除く任意の温度でプレインキュベーションした後に活性を失うようであった。E6APは41℃でのプレインキュベーション後にその活
性の50%を失うようであるので、E6APが熱変性を受けるさらに特異的な温度を決定するために、我々はこの実験を37℃〜45℃の温度範囲を使用して繰り返した。Murf1は60℃でその活性の50%を失うようであった。
【0095】
実施例4.リガーゼの選択性スクリーニング
パーキンE3リガーゼ活性を阻害または強化する作用物質(今後、時に「正のモジュレーター」と呼ぶ)は、S5aがパーキンの基質であるアッセイ方法を使用して同定することができる。本明細書に開示するさらなるスクリーニング法を使用して、パーキン−S5aの相互作用に関する正のモジュレーターの特異性を確認することができる。パーキンによるS5aのユビキチン化を調節するが、異なるE3リガーゼによるS5aのユビキチン化は調節しない作用物質は、パーキンに特異的な調節活性を有すると同定される。
【0096】
図4では、パーキン活性の正のモジュレーター(GST−パーキン PS/UbcH7を使用してEC50=2.8uM)が、E3リガーゼMdm2に及ぼすその効果を試験する実験を表す。GST−Mdm2は100nMのUbcH5aを含む0.005mg/mlの濃度で1,536ウェル形式で使用した。図に示すように、パーキン活性の正のモジュレーターはMdm2の活性を上げず、正のモジュレーターがパーキンに特異性を有することが示された。
【0097】
本明細書に引用するすべての刊行物および特許明細書(特許、公開された特許出願および未公開特許出願)は、そのような各刊行物もしくは明細書が具体的および個別に参照により本明細書に編入されることが示されているように、参照により本明細書に編入する。刊行物および特許明細書の引用は、いずれかのそのような明細書が先行技術に関していることの是認を意図せず、またそれが同明細書の内容または期日に関するいかなる是認をも構成しない。本発明は今、記述された説明および実施例により記載してきたが、当業者は、本発明が種々の実施態様で実行でき、そして前述の説明および実施例が具体的に説明することを目的とし、以下を特許請求の範囲を限定するものではないことを認識するであろう。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンE3リガーゼ活性のインビトロでの測定方法であって:
(a)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がパーキンによりユビキチン化される条件下で一緒にインキュベーションし、そして
(b)S5aタンパク質のユビキチン化の速度または程度を測定する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項2】
パーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法であって、
(a)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;
(b)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を試験作用物質の存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示し、そして試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す、上記アッセイ方法。
【請求項3】
パーキンおよびS5aがヒト由来である請求項1に記載のアッセイ方法。
【請求項4】
パーキンおよびS5aがヒト由来である請求項2に記載のアッセイ方法。
【請求項5】
細胞に基づくパーキン活性の測定方法であって:
(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;
(b)S5aのユビキチン化の速度もしくは程度を測定する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項6】
パーキンおよびS5aの少なくとも1つが細胞に対して異種である、請求項5に記載のアッセイ方法。
【請求項7】
パーキンおよびS5aがヒト由来である請求項5に記載のアッセイ方法。
【請求項8】
細胞に基づくパーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法であって、
(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;
(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示し、そして試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す、上記アッセイ方法。
【請求項9】
パーキンおよびS5aの少なくとも1つが細胞に対して異種である、請求項8に記載のアッセイ方法。
【請求項10】
パーキンE3リガーゼ活性のインビトロでの測定方法であって:
(a)パーキンタンパク質およびトロポニンタンパク質を、トロポニンタンパク質がパーキンによりユビキチン化される条件下で一緒にインキュベーションし、そして
(b)トロポニンタンパク質のユビキチン化の速度または程度を測定する、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項11】
パーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法であって、
(a)パーキンタンパク質およびトロポニンタンパク質を、トロポニンタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;
(b)パーキンタンパク質およびトロポニンタンパク質を試験作用物質の存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でトロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示し、そして試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す、上記アッセイ方法。
【請求項12】
細胞に基づくパーキン活性の測定方法であって:
(a)パーキンを発現し、そしてトロポニンを発現する哺乳動物細胞を準備し;
(b)トロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度を測定することを含んでなる、
上記方法。
【請求項13】
パーキンおよびトロポニンの少なくとも1つが細胞に対して異種である、請求項12に記載のアッセイ方法。
【請求項14】
細胞に基づくパーキン活性のモジュレーターに関するアッセイ方法であって、
(a)パーキンを発現し、そしてトロポニンを発現する哺乳動物細胞を準備し;
(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でトロポニンのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示し、そして試験作用物質の存在下でのトロポニンのユビキチン化の相対的減少は、試験作用物質がパーキン活性を阻害することを示す、上記アッセイ方法。
【請求項15】
パーキンおよびトロポニンの少なくとも1つが細胞に対して異種である、請求項14に記載のアッセイ方法。
【請求項16】
パーキン活性の正のモジュレーターの特異性のインビトロでの評価方法であって:
(a) パーキン以外のE3リガーゼタンパク質およびパーキン基質タンパク質を、基質がユビキチン化される条件下で一緒にインキュベーションし;
(b)E3リガーゼタンパク質およびパーキン基質タンパク質を、パーキン活性の正のモジュレーターの存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;
(c)正のモジュレーターの存在および不存在下でE3リガーゼのリガーゼ活性を比較することを含んでなり、ここで正のモジュレーターが存在する場合にE3リガーゼ活性の増加は、正のモジュレーターがパーキンに対して完全には特異的でないことを示し、そして増加の不存在は正のモジュレーターがパーキンに対して完全に特異的であることを示す、上記方法。
【請求項17】
正のモジュレーターの存在下での基質のユビキチン化の増加は、正のモジュレーターがパーキンに対して完全に特異的ではないことを示すが、正のモジュレーターが部分的に特異的であると決定される請求項16に記載のインビトロアッセイ方法であって、部分的特異性は非−パーキンE3に対して100マイクロモル以下であり、そしてパーキンに対するEC10よりも少なくとも4倍高いEC10と定められる上記アッセイ方法。
【請求項18】
パーキンの基質がS5aである請求項16に記載の方法。
【請求項19】
パーキンの基質がトロポニン1である請求項16に記載の方法。
【請求項20】
E3リガーゼタンパク質がRING E3リガーゼである請求項16に記載の方法。
【請求項21】
E3リガーゼタンパク質がMdm2、Nedd4、Murf1およびE6APからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
E3リガーゼタンパク質がRING E3リガーゼである請求項22に記載の方法。
【請求項23】
E3リガーゼタンパク質がMdm2、Nedd4、Murf1およびE6APからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
E3リガーゼタンパク質がMurf1である請求項22に記載の方法。
【請求項25】
パーキン活性の正のモジュレーターが:
(a)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を、S5aタンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;
(b)パーキンタンパク質およびS5aタンパク質を試験作用物質の存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
工程(a)および(b)の前に、パーキンタンパク質が、パーキン活性を試験作用物質の不存在下での40〜70%まで下げる熱的条件下にて試験作用物質の存在下でインキュベーションされる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
パーキン活性の正のモジュレーターが:
(a)パーキンを発現し、そしてS5aを発現する哺乳動物細胞を準備し;
(b)細胞を試験作用物質に対して暴露し;
(c)試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の速度もしくは程度を、試験作用物質に暴露しない対照細胞でのS5aのユビキチン化の速度もしくは程度と比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でS5aのユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
パーキン活性の正のモジュレーターが:
(a)パーキンタンパク質およびトロポニン1タンパク質を、トロポニン1タンパク質がユビキチン化され得る条件下で一緒にインキュベーションし;
(b)パーキンタンパク質およびトロポニン1タンパク質を試験作用物質の存在下で(a)の条件下にて一緒にインキュベーションし;
(c)試験作用物質の存在および不存在下でトロポニン1のユビキチン化の速度もしくは程度を比較することを含んでなり、ここで試験作用物質の存在下でのトロポニン1のユビキチン化の相対的増加は、試験作用物質がパーキン活性の正のモジュレーターであることを示すアッセイ方法で同定される、請求項25に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−517535(P2010−517535A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548455(P2009−548455)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/052700
【国際公開番号】WO2008/095126
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509216119)エラン・フアルマ・インターナシヨナル・リミテツド (1)
【Fターム(参考)】