説明

新規変異体EGIII様セルラーゼ組成物

【課題】熱および/または界面活性剤仲介ストレス存在下での安定性が改良された変異体、EGIIIまたはEGIII様セルラーゼを提供する。
【解決手段】動作感受性残基が改良された安定性を持つ新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼ。好適には修飾されるべきアミノ酸はトリコデルマレーセイからのEGIII中の残基T2、S3、A8、F10、S18、A24、S25、F30、G31、V36、L38、A42、A46、D47、Q49、Q61、Q64、I65、A66、Q69、A83、S86、S90、V109、T110、Y111、K123、D126、S133、Q134、G135、V139、T145、Q162、N164、T166、Y168、N174、R180、K183、N186、A188、G189、V192、L193、S205、G206、N209、A211、T214および/またはI217の位置に該当する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良された安定性を持つ新規突然変異体セルラーゼ組成物に関している。特に、本発明はトリコデルマ レーセイTrichoderma reesei)により産生される配列に相関しているが、例えば、温度ストレスに対する耐性を提供するある種の突然変異を持つ、真菌および細菌からの突然変異体セルラーゼ酵素ファミリーに関している。
【背景技術】
【0002】
セルラーゼはセルロースのβ−D−グルコシド結合を加水分解できる酵素である。セルロース分解酵素は伝統的に3つの主なクラス:エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼまたはセロビオヒドロラーゼおよびβ−グルコシダーゼに分類されており(Knowles,J.et al.,(1987),TIBTECH 5,255−261);多数の細菌、酵母および真菌により産生されることが知られている。
【0003】
セルロース分解酵素の使用のために開発されてきた応用の内で主たるものには、(生物)エタノール生産のための(木材)セルロースパルプの糖への分解、”ストーンウォッシング”および”生物研磨”のような、および洗浄剤成分としての織物処理が含まれている。従って、セルラーゼはメカニカルパルプの処理に有用であることが知られている(例えば、PCT出願番号WO92/16687を参照されたい)。さらに、セルラーゼは飼料添加物(例えば、PCT出願番号WO91/04673を参照されたい)としておよび穀物浸漬製粉に有用であることが知られている。
【0004】
しかしながら本来的に重要なことには、セルラーゼは織物の処理、即ち、ほこりまたは灰色がかった色の除去を助けるために洗浄剤組成物として(例えば、英国特許出願第2,075,028、2,095,275および2,094,826号を参照されたい、それらは洗浄剤にセルラーゼを取り込ませた場合の改良された洗浄性能を示している)、または織物の感触および外観を改良するための、販売に先立った織物の処理に有用である。従って、英国特許出願第1,358,599号は綿含有織物のざらざら感を減少させるための洗浄剤におけるセルラーゼの使用を例示しており、およびセルラーゼは中古織物の色をより力強くすることによる中古織物改良のため、織物の処理に使用されている(例えば、静岡県立浜松織物工業研究所レポート24巻、pp54−61を参照されたい(1986))。例えば、綿含有織物の繰り返し洗浄は織物に灰色がかった色を生じさせ、それは破壊されたおよび秩序が乱された織物によると信じられており、機械的作用により起こされた”ピル”としばしば称されている。この灰色がかった色は色の付いた織物で特に顕著である。そのため、秩序が乱された織物の最上層を除去し、織物の全体の外観を改良するセルラーゼの能力は価値がある。
【0005】
それ故、セルラーゼは多くの工業的過程で有効であることが示されてきた。従って、一つまたはそれ以上の特別の応用に関して特に有効な動作プロフィールを持つ特異的セルラーゼ組成物または構成要素を探求する趨勢が本分野に存在する。この見解から、真菌および細菌で産生(発現)されたセルラーゼが興味の対象になっている。例えば、トリコデルマspp.(特にトリコデルマ ロンギブラキアツム)のようなある種の真菌により産生されるセルラーゼは、セルロースの結晶形を崩壊させることができる完全セルラーゼ系が発酵法により大量に容易に産生されるので、より大きな注目を集めている。この特異的複合体は、その特異的成分の性質、および工業的過程において発揮されるこれらの構成要素の能力を決定するために広範囲に分析されてきた。例えば、Wood et al.,”Methods in Enzymology”,160,25,234ページ以下参照(1988)は、エキソ−セロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)(”CBH”)、エンドグルカナーゼ(EC3.2.1.4)(”EG”)およびβ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)(”BG”)として同定されたものを含んでいるいくつかの異なった酵素分類から成る完全真菌セルラーゼ系を記載している。CBH、EGおよびBGの真菌セルラーゼ分類はさらに拡大でき、各々の分類内に複数の構成要素が含まれている。米国特許第5,475,101号(Wardら)はトリコデルマ ロンギブラキアツムから誘導されたEGIIIと称される一つの特に有用な酵素の精製および分子クローニングを開示している。
【0006】
PCT出願番号WO 94/14953は、各々20のヌクレオチドを持っている一連のDNA配列の任意の一つから成る核酸によりコードされているエンドグルカナーゼを開示している。
【0007】
Ooi et al.,Curr.Genet.,Vol.18,pp.217−222(1990)、はアスペルギルス アクレアタスにより産生されるエンドグルカナーゼF1−CMCをコードしているcDNA配列を記載しており、それはアミノ酸列NNLWG、ELMIWおよびGTEPFTを含んでいる。Sakamoto et al.,Curr.Genet.,Vol.27,pp.435−439(1995)、はアスペルギルス カワキイ IFO4308からのエンドグルカナーゼCMCase−1をコード化しているcDNA配列を記載しており、それはアミノ酸列ELMIWおよびGTEPFTを含んでいる。Ward et al.はNNLWG、ELMIWおよびGTEPFTを含んでいるEGIIIの配列を記載している。さらに、二つのセルラーゼ配列、一つはエルウィニア カロトバラからおよびロドテルムス マリヌスから、がSaarilahti et al.,Gene,Vol.90,pp.9−14(1990)およびHreggvidsson et al.,Appl.Environ.Microb.,Vol.62,No.8,pp.3047−3049(1996)に記載されており、それはアミノ酸列ELMIWを含んでいる。
【0008】
前記領域のいくつかのまたはすべての応用を持っている多くのセルラーゼ組成物に関連する本分野での知識にもかかわらず、セルラーゼが有用である応用での条件下で(即ち、家庭用洗浄剤、ストーンウォッシング剤構成要素またはランドリー洗浄剤)改良された安定性を持つ新規セルラーゼ組成物が引き続いて求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT出願番号WO92/16687
【特許文献2】PCT出願番号WO91/04673
【特許文献3】英国特許出願第2,075,028号
【特許文献4】英国特許出願第2,095,275号
【特許文献5】英国特許出願第2,094,826号
【特許文献6】英国特許出願第1,358,599号
【特許文献7】米国特許第5,475,101号
【特許文献8】PCT出願番号WO 94/14953
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Knowles,J.et al.,(1987),TIBTECH 5,255−261
【非特許文献2】静岡県立浜松織物工業研究所レポート24巻、pp54−61(1986)
【非特許文献3】Wood et al.,”Methods in Enzymology”,160,25,(1988)
【非特許文献4】Ooi et al.,Curr.Genet.,Vol.18,pp.217−222(1990)
【非特許文献5】Sakamoto et al.,Curr.Genet.,Vol.27,pp.435−439(1995)
【非特許文献6】Saarilahti et al.,Gene,Vol.90,pp.9−14(1990)
【非特許文献7】Hreggvidsson et al.,Appl.Environ.Microb.,Vol.62,No.8,pp.3047−3049(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改良された安定性を持つ新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼ組成物を提供するのが本発明の目的である。
熱ストレス条件下で改良された性能を持つ新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼ組成物を提供するのが本発明のさらなる目的である。
【0012】
ランドリー洗浄剤を含む洗浄剤応用において優れた性能を提供するであろう組成物を含んでいる新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼを提供するのが本発明のさらなる目的である。
【0013】
織物処理分野での使用に寄与する改良された性能を持つ組成物を含んでいる新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼを提供するのが本発明のさらなる目的である。
動物試料添加物として、デンプン処理およびベーキング応用において、バイオマスを減少させるための改良された特性を持つ新規変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼ組成物を提供するのが本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従うと、熱および/または界面活性剤仲介ストレス存在下での安定性を含む改良された性能を与えるため、一つまたはそれ以上のアミノ酸が修飾または欠失されている変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼが提供される。好適には修飾されるべきアミノ酸はトリコデルマ レーセイからのEGIII中の残基T2、S3、A8、F10、S18、A24、S25、F30、G31、V36、L38、A42、A46、D47、Q49、Q61、Q64、I65、A66、Q69、A83、S86、S90、V109、T110、Y111、K123、D126、S133、Q134、G135、V139、T145、Q162、N164、T166、Y168、N174、R180、K183、N186、A188、G189、V192、L193、S205、G206、N209、A211、T214および/またはI217の位置に該当する。別の好適な態様において、修飾されるべきアミノ酸は残基T2S、S3(L/F)、A8(S/D/G)、F10(Y/E/A/W)、S18(N/Y/L)、A24(R/K/Q)、S25(N/T)、F30(N/E/S/W)、G31Q、V36(Y/E/G)、L38(S/N)、A42(V/I)、A46(V/T)、D47(N/E/T/A)、Q49(N/S/E)、Q61(P/A)、Q64(G/V/A、I65(R/V/Y/K)、A66(Q/E)、Q69(T/E/R)、A83(V/W)、S86(N/T/Q)、S90(N/T)、V109(P/E/A)、T110(N/S/G)、Y111(S/G/W)、K123(R/A)、D126(N/G)、S133(Q/D/T/F)、Q134(V/G/H)、G135(A/S)、V139(I/L)、T145(N/K/S/D)、Q162(P/E/S)、N164(Q/D/T)、T166(N/E/R)、Y168F/W、N174D、R180(Q/V/A/E)、K183(R/H/Q)、N186(P/S)、A188(D/R)、G189(S/E)、V192L、L193(I/Q/T)、S205(N/D/P)、G206A、N209T、A211(R/S/N)、T214(S/H/R)および/または1217(Q/V/L)の位置に該当する。最も好適には、修飾されたアミノ酸はA24(K/Q/R)、G31Q、Q64(G/V/A)、V139L、Y168F、N174D、V192L、G206Aおよび/またはN209Tに該当する。
【0015】
別の態様において、ここに提供されるEGIIIまたはEGIII様セルラーゼよりも悪い安定性を持ち、変更のためにここで同定された任意の残基にEGIIIとの相同性を持つ変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼを本発明は提供する。
【0016】
さらに別の態様において、EGIII中の33および34位に該当する位置、またはEGIII様酵素中の同等の位置の間でのチロシン、アスパラギンまたはアスパラギン酸から成る残基の挿入、または204および205位間でのグリシン、グルタミンまたはスレオニンから成る残基の挿入が置換に含まれている。
【0017】
本発明の好適な態様において、変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼはエンドグルカナーゼである。また好適には、酵素は真菌または細菌源から、最も好適には糸状菌から誘導される。
【0018】
本発明の別の態様において、本発明に従った変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼをコード化しているDNAが提供される。また、そのDNAを含んでいる発現ベクター、そのような発現ベクターで形質転換された宿主細胞、およびそのような宿主細胞により産生された変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼが提供される。
【0019】
以下により詳細に示されるように、本明細書で同定された置換は、EGIIIまたはEGIII様酵素の安定性(特に熱ストレス下での)に重要である。従って、EGIIIまたはEGIII様酵素を織物処理(例えば、ランドリー洗浄剤またはストーンウォッシング成分)、バイオマスの減少、飼料添加物の生産または飼料の処理、紙またはパルプに基づいた製品生産のための木材パルプの処理、およびグルコース、高フルクトースコーンシロップおよび/またはアルコールの生成を容易にするための穀物浸漬製粉または乾燥製粉間のデンプンの処理に使用することは本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、トリコデルマ ロンギブラキアツムからの成熟EGIIIタンパク質アミノ酸配列を示しており、本発明に従って説明された残基が示されている。
【図2】図2は、イントロン無しのトリコデルマ ロンギブラキアツムからのEGIIIのDNA配列を示している。
【図3A】図3Aは、EGIIIでのアラインメントにおける20のEGIII様セルラーゼの完全長配列のアラインメントを示しており、一次構造モデル化に基づいた等価な残基が示されており、ヒポクレア シュベイニッツイアスペルギルス アクレアタスアスペルギルス カワキイ(1)、アスペルギルス カワキイ(2)、アスペルギルス オリゼフミコーラ グリセアフミコーラ インソレンスケトミウム ブラシリエンスフザリウム エキセチフザリウム ジャパニクム(1)、フザリウム ジャパニクム(2)、グリオクラジウム ロゼウム(1)、グリオクラジウム ロゼウム(2)、グリオクラジウム ロゼウム(3)、グリオクラジウム ロゼウム(4)、メンノニエラ エキナータ、放線菌11AG8、ストレプトマイセス リビダンス CelBロドテルムス マリヌスエメリセラ デセルトルおよびエルウィニア カロトボーラから誘導されたものが含まれている。
【図3B】図3Bは、図3Aの続きである。
【図3C】図3Cは、図3Bの続きである。
【図3D】図3Dは、図3Cの続きである。
【図3E】図3Eは、図3Dの続きである。
【図3F】図3Fは、図3Eの続きである。
【図3G】図3Gは、図3Fの続きである。
【図4A】図4Aは、EGIIIでのアラインメントにおける7つのEGIII様セルラーゼの完全長配列のアラインメントを示しており、一次構造モデル化に基づいた等価な残基が示されており、フミコーラ インソレンスフミコーラ グリセアトリコデルマ レーセイヒポクレア シュベイニッツイメンノニエラ エキナータフザリウム ジャパニクムおよびエメリセラ デセルトルから誘導されたものが含まれている。
【図4B】図4Bは、図4Aの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
出願者はトリコデルマ レーセイからのEGIIIと相同性を持つセルラーゼファミリーの新規酵素を単離した。これらのセルラーゼの分析により、著しい相同性にもかかわらず、セルラーゼ間で異なった性能を生じる結果となった。特に、フミコーラ インソレンスフミコーラ グリセアメムノレラ エキナータフサリウム ジャバニクムおよびエメリセラ デセルトルからのEGIII様セルラーゼは熱ストレス条件下で優れた性能を持っていることが発見された。これらのより高い性能を持つEGIII様セルラーゼ中の残基をEGIII中の残基を比較することにより、より安定なセルラーゼおよびEGIII間の残基の相違を同定することが可能であり、より安定なEGIII様セルラーゼの改良された熱安定性に重要である残基が同定される。従って、EGIIIと異なったEGIII様セルラーゼ中の残基を最適化することにより、EGIII様セルラーゼの熱安定性をさらに改良することが可能であろう。同様に、これらの比較的より安定なEGIII様セルラーゼ中の残基とEGIIIまたはより不安定な類似体の残基を比較することにより、より安定なセルラーゼおよびEGIIIまたはより不安定なEGIII様セルラーゼ間における残基の相違を同定することが可能であり、従って、より安定なEGIII様セルラーゼの熱安定性を改良するために重要である残基が同定される。従って、EGIIIまたは他のより不安定なEGIII様セルラーゼ中のこれらの残基を変更することにより、EGIIIの熱安定性をさらに改良することが可能であろう。それ故、本発明は安定性データならびにEGIII様セルラーゼの配列比較により可能になるすべてのそのような修飾を包含している。配列アラインメントは異なったEGIII様セルラーゼを使用して得られるであろうが、配列の数および相同性の程度に依存して一つのアラインメントと別のアラインメントはわずかに異なっているであろう。適切な修飾を決定するために適した実験は、本開示に関係する当業者には日常的なものである。
【0022】
従って、本発明は改良された安定性を持っている変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼに関しており、そのセルラーゼはEGIIIまたはEGIII様セルラーゼを産生する生物体から得られる。特に好適な態様において、変異体は本明細書で同定されるような一つまたはそれ以上の残基が、その部位で改良された安定性を与える残基で置き換えられていることにより特徴付けられる。好適には、修飾されるべきアミノ酸はトリコデルマ レーセイからのEGIII中の残基2、8、10、18、24、25、30、31、36、38、42、46、47、49、61、64、65、66、69、83、86、90、109、110、111、123、126、133、134、135、139、145、162、164、166、168、174、180、183、186、188、189、192、193、304、205、206、209、211、214および/または217の位置に該当する。別の好適な態様において、修飾されるべきアミノ酸はEGIII中の残基T2S、S3(L/F)、A8(S/D/G)、F10(Y/E/A/W)、S18(N/Y/L)、A24(R/K/Q)、S25(N/T)、F30(N/E/S/W)、G31Q、V36(Y/E/G)、L38(S/N)、A42(V/I)、A46(V/T)、D47(N/E/T/A)、Q49(N/S/E)、Q61(P/A)、Q64(G/V/A、I65(R/V/Y/K)、A66(Q/E)、Q69(T/E/R)、A83(V/W)、S86(N/T/Q)、S90(N/T)、V109(P/E/A)、T110(N/S/G)、Y111(S/G/W)、K123(R/A)、D126(N/G)、S133(Q/D/T/F)、Q134(V/G/H)、G135(A/S)、V139(I/L)、T145(N/K/S/D)、Q162(P/E/S)、N164(Q/D/T)、T166(N/E/R)、Y168F/W、N174D、R180(Q/V/A/E)、K183(R/H/Q)、N186(P/S)、A188(D/R)、G189(S/E)、V192L、L193(I/Q/T)、S205(N/D/P)、G206A、N209T、A211(R/S/N)、T214(S/H/R)および/または1217(Q/V/L)の位置に該当する。最も好適には、修飾されたアミノ酸はA24(K/Q/R)、G31Q、Q64(G/V/A)、V139L、Y168F、N174D、V192L、G206Aおよび/またはN209Tに該当する。
【0023】
別の態様において、ここに提供されるEGIIIまたはEGIII様セルラーゼよりも悪い安定性を持ち、変更のためにここで同定された任意の残基にEGIIIとの相同性を持つ変異体EGIIIまたはEGIII様セルラーゼを本発明は提供する。
【0024】
さらに別の態様において、EGIII中の33および34位に該当する位置、またはEGIII様酵素中の同等の位置の間でのチロシン、アスパラギンまたはアスパラギン酸から成る残基の挿入、または204および205位間でのグリシン、グルタミンまたはスレオニンから成る残基の挿入が置換に含まれている。
【0025】
修飾されるべき残基は、酵素に追加の安定性を与える残基へ変更されなければならない。本発明に従って改良されたタンパク質は前駆体タンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含んでいる。前駆体タンパク質は天然に存在するタンパク質または組換え体タンパク質であろう。改良されたタンパク質のアミノ酸配列は、前駆体アミノ酸配列の一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入により前駆体タンパク質のアミノ酸配列から誘導される。そのような修飾は一般に、前駆体タンパク質それ自体の操作というよりもむしろ前駆体タンパク質のアミノ酸配列をコード化している前駆体DNA配列に行われる。前駆体DNA配列のそのような操作に適した方法には、本明細書に開示されている、および米国特許第4,760,025および5,185,258号(本明細書において援用される)で共通して所有されている方法が含まれる。
【0026】
本明細書において、ある種の用語が述べられているが、それは特許請求された発明の性質を明確にするために以下に定義されている。
”セルラーゼ”は本分野の酵素ではよく分類された種類であり、セルロースポリマーをより短いセロオリゴ糖オリゴマー、セロビオースおよび/またはグルコースへ加水分解できる酵素が含まれる。セルラーゼ酵素の共通の例にはエキソ−セロビオヒドロラーゼおよびエンドグルカナーゼが含まれ、セルロース分解性生物(特に真菌および細菌を含んで)の多くの種から得ることが可能である。
【0027】
”EGIII”セルラーゼとはWard et al.,米国特許第5,475,101号およびトリコデルマ レーセイ セルラーゼおよびその他のヒドロラーゼに関する第2回TRICELシンポジウム抄録、Suominen & Reinikainen編,Espoo Finland(1993),pp.153−158(Foundation for Biotechnical and Industrial Fermentation Research,Vol.8)に記載されているエンドグルカナーゼ成分を意味している。そこに議論されているように、EGIIIはトリコデルマ レーセイ(ロンギブラキアツム)から誘導され、約5.8の至適pH、約7.4の等電点(pl)および約25kDの分子量により特徴付けられている。トリコデルマ レーセイからのEGIIとして通常呼ばれている酵素は、以前は幾人かの著者により分献ではEGIIIの命名がなされていたが、その酵素は本明細書でEGIIIと定義された酵素とは、分子量、plおよび至適pHの点で実質的に異なっている。
【0028】
本発明に従った”EGIII様酵素”、”EGIII様タンパク質”または”EGIII様セルラーゼ”とはEGIIIと共通したある種のアミノ酸列を持っていることによりEGIIIと関係付けられる酵素を意味している。本明細書で使用する場合、EGIII様セルラーゼはまたトリコデルマ レーセイからのEGIIIも包含されることが意図されている。それ故、EGIII様セルラーゼには:
(a)Asn−Asn−(Leu/Phe/Lys/IIe)−Trp−Gly
(b)Glu−(Leu/Phe/IIe)−Met−IIe−Trp
(c)Gly−Thr−Glu−Pro−Phe−Thr;
(d)(Ser/Tyr/Cys/Trp/Thr/Asn/Lys/Arg)−(Val/Pro)−(Lys/Ala)−(Ser/Ala)−(Tyr/Phe);および
(e)Lys−Asn−Phe−Phe−Asn−Tyr
の一つまたはそれ以上から成る群より選択されるアミノ酸列を含んでいるアミノ酸配列から成る、セルロース分解活性を持っている酵素が含まれる。一つの態様において、本発明の酵素はさらにEGIIIに対する有意な構造および/または配列相同性を持っている。それ故、本発明の具体化での一つの態様において、酵素はEGIIIに対して少なくとも30%、好適には少なくとも40%および最も好適には少なくとも60%のアミノ酸同一性を持っている。しかしながら、相同性単独では、本明細書に記載された方法により同定された特定の酵素がEGIII様酵素を意味するかどうかの適切な尺度ではないことを認識しなければならない。従って、相同的酵素が実際にここに記載および例示した方法により検出されるが、相同性の程度を本発明の範囲を制限するものとしてみてはならない。
【0029】
本発明のEGIII様セルラーゼは、セルラーゼを産生する多くの生物体で観察されるであろうことが期待される。しかしながら、EGIII様セルラーゼの適当な供給源としては、細菌または真菌源からの、特に放線菌類、バチルスまたは糸状菌に由来するものが挙げられる。好適な態様において、セルラーゼは糸状菌ファミリー後生動物、好適には真正子嚢菌類から誘導される。後生動物の内、EGIII様セルラーゼを産生する真菌系統発生的分類では、栄養胞子性核菌類(アクレモニウム属を含んで)、ソルダリア目(チエラビア属を含んで)、ボタンタケ目(フザリウム属、ネシチア属、バーティシリウム属、ミロテシウム属およびグリオクラディウム属のようなアカツブタケ属;およびボタンタケ属)およびユーロチウム目(アスペルギルス属およびペニシリウム属のような栄養胞子性トリココーマ科)が含まれる。
【0030】
真正子嚢菌類は好適にはジアポルタ類、ハロスフェリア類、ミクロアスカ類、オフィオストマータ類、フィラコーラ類、ソルダリア類またはマメザヤタケ類に属している。また好適には、真正子嚢菌類はバッカクキン科、メラノスポラ科、ネクトリア科または栄養胞子性ボタンタケ類から成るボタンタケ類に属している。さらに好適には、真正子嚢菌類はボタンタケ科に属しているが、該ボタンタケ科はトリコデルマを含んでいない。最も好適には、真正子嚢菌類はグリオクラディウムspp.、フザリウムspp.、アクレモニウムspp.、ミセリオフトラspp.、ベルチシリウムspp.、ミロセシウムspp.、ペニシリウムspp.、ケトミウムspp.、エメルセラspp.およびファネロカエテspp.である。EGIII様セルラーゼを所有しているとして企図された特別の生物体にはケトミウム サーモフィウム変異体therm.、ケトミウム アトロブルンネウムケトミウム ブラシリエンスケトミウム グロボスムケトミウム ヴィテリウムペシロマイセス リラシヌスケトミウム サーモフィウム変異体ジシツムフミコーラ インソレンスメムノニエラ エキナータフザリウム エキセチフザリウム オキシスポルムフザリウム スチボイデスメセリオフトラ サーモフィラフザリウム ジャパニクムフミコーラ グリセア変異体サーモイデアスチベラ サーモフィラメラノカルプス アルボマイセスアルスロボトリス スペルバミセリオフソラ ヒヌニレアケトミウム パチポジオデスミロセシウム ヴェルカリアペニシリウム クリソゲヌムマルブランケア スルフレアエメリセラ デセルトルムアクレモニウム ストリクムシリンドロカルポン ヘテロネマおよびウロクラディウム カルタルムが含まれている。放射菌内では、ストレプトマイセスがEGIII様セルラーゼを持っているようである。
【0031】
本発明に従ったEGIII様セルラーゼは以下の方法に従って得られるであろう。
(a)Asn−Asn−(Leu/Phe/Lys/IIe)−Trp−Gly
(b)Glu−(Leu/Phe/IIe)−Met−IIe−Trp
(c)Gly−Thr−Glu−Pro−Phe−Thr;
(d)(Ser/Tyr/Cys/Trp/Thr/Asn/Lys/Arg)−(Val/Pro)−(Lys/Ala)−(Ser/Ala)−(Tyr/Phe);および
(e)Lys−Asn−Phe−Phe−Asn−Tyr
の一つまたはそれ以上から成る群より選択されるアミノ酸列をコードしているDNAプライマーが構築され、確立された方法に従ってセルラーゼ活性を持っている酵素をコード化しているDNA、および遺伝子、を得るために使用された。加えて、本発明のEGIIIは、EGIII様セルラーゼと本明細書同定されたセルラーゼ主鎖の一つを使用して、分子生物学での通常の方法(例えば、PCRクローニング)により得られるであろう。
【0032】
本発明のこの面での好適な態様において、一つまたはそれ以上の上記ペプチドに対応している縮重したプライマーが製造された。ペプチドは、標準PCR反応を開始させるのに適した条件下、標的生物体(即ち、その中でEGIII様セルラーゼを得ようとする生物体)からのゲノムDNAと混合した。この態様において、ペプチド(a)および/または(d)に対応する縮重プライマーとともに(c)および/または(e)に対応するプライマーを選択し、これらのプライマーでPCRを実施するのが都合がよい。PCR反応を実行した後、得られたDNAはポリアクリルアミドゲルにかけ、ペプチド(a)および/または(d)に加えて(c)および/または(e)を含むEGIII断片のサイズに対応するバンド(即ち、400−1000塩基対の範囲にあるもの)を選抜する。これらの断片をプールし、ペプチド(a)および/または(d)に対応するプライマーとともにペプチド(b)に対応するプライマーを用いて、もしくはペプチド(c)および/または(e)に対応するプライマーとともにペプチド(b)に対応するプライマーを用いて、再増幅する。期待されるサイズ(EGIII様セルラーゼの場合、バンドは約250−500塩基対範囲に対応するであろう)の強いバンドを切り出して配列決定する。この配列は次に正確に一致したプライマーを設計するために使用され、これらのプライマーはゲノムDNA末端の迅速増幅と称されている技術で使用して完全長遺伝子を得る、例えば、Mizobuchi et al.,BioTechniques,Vol.15,No.2,pp.215−216(1993)を参照されたい。
【0033】
しかしながら、得られた断片が標的生物体中の同様の配列に関連しているかどうかを分析するため、標的生物体から得られたゲノムライブラリーに対するハイブリダイゼーションプローブとして縮重DNAを使用することも可能である。有用なハイブリダイゼーションアッセイは以下のようである:特定の標的源からのゲノムDNAを製造元の使用説明書に従って、制限酵素、例えば、EcoRI、HindIII、BamHI、ClaI、KpnI、MluI、SpeI、BglII、NcoI、XbaI、XhoIおよびXmaI(New England Biolabs,Inc.,Beverly,MAおよびBoehringer Mannheimにより供給された)による分解により断片化する。試料は次に、DNA断片の分離がサイズで可視化できるようにアガロースゲル(例えば、0.7%アガロースのような)で電気泳動する。ゲルは蒸留H2Oで簡単にすすぎ、次に穏やかに振とうしながら適当な溶液(例えば、0.25M HClのような)で脱プリンし、続いて30分間変性された(例えば、0.4M NaOH中で)。復元工程では、穏やかに振とうしながらゲルを1.5M NaCl、1Mトリス、pH7.0、中に30分間置いた。次にDNAは適当な陽性に荷電したメンブラン、例えば、Maximum Strength Nytran Plusメンブラン(Schleicher & Schuell,Keene,N.H.)上に移動溶液(例えば、6XSSC(900mM NaCl、90mMクエン酸三ナトリウム)のような)を使用して移さなければならない。完全に移し終わったら(一般的に約2時間またはそれ以上)、洗浄液(例えば、2X SSC[2X SSC=300mM NaCl、30mMクエン酸三ナトリウム])のような)を使用してメンブランをすすぎ、室温で風乾する。メンブランは次に適したプリハイブリダイゼーション溶液(例えば、100ml中:30−50mlのホルムアミド、25mlの20X SSPE(1X SSPE=0.18M NaCl、1mM EDTA、10mM NaH2PO4、pH7.7)、2.5mlの20%SDS、1mlの10mg/ml切断ニシン精子DNA)中でプリハイブリダイズする。
【0034】
前記ペプチド配列に対応するDNAプローブがアガロースゲルでの電気泳動により単離され、ゲルから断片が切り出され、および切り出されたゲルから回収されなければならない。この精製DNA断片は次に標識される(例えば、Megaprime標識システムを使用説明書に従って使用すると、DNA中にP32が取り込まれる(Amersham International plc,Buckinghamshire,England))。標識されたプローブは95℃で5分間加熱することにより変性し、すぐにメンブランを含んでいる前記プリハイブリダイゼーション溶液を加える。ハイブリダイゼーション反応は適当な時間および適当な条件下、例えば、穏やかに振とうしながら37℃で18時間進行させるべきであろう。メンブランをすすぎ(例えば、2X SSC/0.3%SDS中で)、次に穏やかにかき混ぜながら適当な洗浄液で洗浄する。望まれるストリンジェシーはメンブラン(フィルター)が洗浄される条件を反映するであろう。
【0035】
特に、反応のストリンジェシー(即ち、ハイブリダイゼーションがうまくゆくのに必要な相同性の程度)はハイブリダイゼーション後にサザンブロットからのフィルターが洗浄される洗浄条件に大きく依存するであろう。本明細書で定義される”低ストリンジェシー”とはサザンブロットからのフィルター洗浄が20℃で15分間、0.2X SSC/0.1%SDS溶液での洗浄から成っていることであろう。標準ストリンジェシー条件は、37℃で30分間、0.2X SSC/0.1%SDS溶液での二回目の洗浄をさらに含む洗浄工程から成っている。
【0036】
上に概述されたDNAプライマーとハイブリダイズし、およびこの方法により対応しているEGIIIコード化遺伝子と同定されたDNAは、日常の方法により単離され、日常の技術に従って、対応するEGIII様セルラーゼを発現するために使用されるであろう。好適なクローニング法には、例えば、Mizobuchi et al.,BioTechniques,Vol.15,No.2,pp.215−216(1993)に記載されているゲノムDNA末端の迅速増幅法が含まれる。クローン化遺伝子を得た後、ベクター内へのDNA挿入(ベクターは続いて適した宿主細胞を形質転換できる)のための日常的な方法が使用される。形質転換された宿主細胞を適当な条件下で培養すると、EGIII様セルラーゼの産生が生じ、それは特定の応用のために必要なように採取、精製および調製できる。
【0037】
本発明のEGIII様セルラーゼは好適に単離または精製される。本発明の文脈において、精製または単離とは一般的に、本来的に(例えば、起源生物体)付随しているいくつかまたはすべての天然に存在する置換基、またはEGIIIセルラーゼに関連して起源生物体により発現される他のセルラーゼまたは酵素からEGIII様セルラーゼを単離したせいでその天然の状態からEGIII様セルラーゼが変えられたことを意味している。同様に、本発明のEGIII様セルラーゼを、天然の状態では本来存在しない他の成分と結合させてもよい。単離または精製はイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性分離、透析、プロテアーゼ処理、硫酸アンモニウム沈殿または他のタンパク質塩沈殿技術、遠心分離、サイズ排除クロマトグラフィー、濾過、マイクロフィルトレーション、ゲル電気泳動または濃度勾配での分離のような本分野で認められている分離技術により達成され、最終組成物では望まれない全細胞、細胞破片、不純物、外来性タンパク質または酵素が除かれる。
【0038】
EGIIIに存在する残基と”対応する”または”等価である”EGIII様セルラーゼ中の残基とは、一次配列相同性、三次構造相同性(結晶構造またはコンピューターモデル化により示されるよな)または機能的等価性により示される、EGIIIの位置と等価な位置に存在する残基を意味している。変異体EGIII様セルラーゼは前駆体EGIII様セルラーゼのアミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を持っている。前駆体セルラーゼは天然に存在するセルラーゼおよび組換え体セルラーゼ(本明細書で説明されるような)を含んでいる。EGIII様セルラーゼ変異体のアミノ酸配列は、前駆体アミノ酸配列の一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失または挿入により前駆体EGIII様セルラーゼアミノ酸配列から誘導される。そのような修飾は一般に、前駆体タンパク質それ自体の操作というよりもむしろ前駆体タンパク質のアミノ酸配列をコード化している前駆体DNA配列に行われる。前駆体DNA配列のそのような操作に適した方法には、本明細書に開示されている、および米国特許第4,760,025および5,185,258号(本明細書において援用される)で共通して所有されている方法が含まれる。置換または欠失のために、界面活性剤存在下での不安定性の原因となる位置に対応する特異的残基が本明細書で同定された。アミノ酸位置番号(即ち、+11)は図1に示された成熟トリコデルマ レーセイEGIII配列に割り当てられた番号を示している。本発明はトリコデルマ レーセイEGIIIで特に同定された残基と等価である位置のアミノ酸残基を含むEGIII様セルラーゼの突然変異に関している。前駆体セルラーゼの残基(アミノ酸)はトリコデルマ レーセイEGIIIの残基と等価である(もしそれが相同的であるか(即ち、一次かまたは三次構造での位置が対応している)、またはトリコデルマ レーセイEGIII中の特異的残基またはその残基の一部と機能的に類似していれば(即ち、同一または類似の化学的または構造的に結合する、反応するまたは相互作用するための機能的能力を持っている))。本明細書で使用される場合、番号付けは図2に示されているように、成熟EGIIIアミノ酸配列の番号に対応するように意図されている。
【0039】
”セルロース含有織物”とはセルロースを含んでいる、または天然セルロース系材料および合成セルロース系材料(ジュート、アマ、ラミー、レーヨンおよびリオセル)からなるセルロース混紡物含有の綿または非綿から作られた、任意の縫製されたまたは縫製されていない織物、織り糸または繊維を意味している。合成セルロース含有織物の項目の下に含まれるのはレーヨンのような本分野でよく知られている再生織物である。他の合成セルロース含有織物には化学的に修飾されたセルロース繊維(例えば、酢酸で誘導体化されたセルロース)および溶媒で紡がれたセルロース繊維(例えば、リオセル)が含まれる。特に、セルロース含有織物の定義内に含まれるものは、そのような材料で作られた織り糸または繊維である。セルロース含有材料はしばしば、合成繊維および羊毛および絹のような天然の非セルロース系材料と混紡物内へ組み込まれる。
【0040】
”綿含有織物”とは純粋な綿または綿混紡物から作られた、任意の縫製されたまたは縫製されていない織物、織り糸または繊維を意味しており、綿織物、綿ニット、綿デニム、綿織糸、原料綿などが含まれる。綿混紡物が用いられた場合、織物中の綿の量は好適には綿重量で少なくとも約35%である。混紡物として用いられた場合、織物中で用いられる相手の材料は、ポリアミド繊維(例えば、ナイロン6およびナイロン66)、アクリル繊維(例えば、ポリアクリロニトリル繊維)およびポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタラート)、ポリビニルアルコール繊維(例えば、ビニロン)、塩化ポリビニル繊維、塩化ポリビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ポリウレア繊維およびアラミド繊維のようなセルロース系材料または合成繊維を含む一つまたはそれ以上の非綿繊維を含むことができる。
【0041】
”ストーンウォッシング成分”とは、セルロース含有織物のストーンウォッシングで使用するための処方を意味している。ストーンウォッシング成分は消費者販売のための展示に先立って(即ち、製造過程の間に)、セルロース含有織物を変形するために使用される。対照的に、洗浄剤成分は汚れた衣類のクリーニングが意図されている。
【0042】
”ストーンウォッシング”とは、デニムに”ストーンウォッシングした”外観を与えるため、撹拌およびカスケード条件下(即ち、回転ドラム洗浄機)、セルロース含有織物のセルラーゼ溶液での処理を意味している。本発明に従ったセルラーゼ溶液はそのような分野で認められている方法でのストーン使用を完全にまたは部分的に、機能的に置き換えていくであろう。デニムに”ストーンウォッシングした”外観を与えるための方法は米国特許第4,832,864号(全体が本明細書において援用される)に開示されている。一般に、ストーンウォッシング技術はインジゴ染色綿デニムに応用されてきた。
【0043】
”洗浄剤組成物”とはよごれたセルロース含有織物の洗濯のための洗浄媒質に使用することが意図された混合物である。本明細書の文脈において、そのような組成物はセルラーゼおよび界面活性剤に加えて、追加の加水分解酵素、ビルダー、漂白剤、漂白活性化剤、青味剤および蛍光色素、ケーキング阻害剤、マスキング剤、セルラーゼ活性化剤、抗酸化剤、および可溶化剤を含んでいてもよい。そのような組成物は一般に汚れた衣類のクリーニングのために使用され、ストーンウォッシング組成物とは対照的に製造過程の間には使用されない。セルラーゼを含んでいる洗浄剤組成物は、例えば、Clarkson et al.,米国特許第5,290,474号および欧州特許出願第271004号(本明細書において援用される)に開示されている。
【0044】
”変異体”とは、C−およびN−末端のどちらかまたは両方への一つまたはそれ以上のアミノ酸の付加、アミノ酸配列中の一つまたは多数の異なった部位での一つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、タンパク質のどちらかまたは両方の末端またはアミノ酸配列中の一つまたはそれ以上の部位における一つまたはそれ以上のアミノ酸の欠失、またはアミノ酸配列中の一つまたはそれ以上の部位における一つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入により、前駆体タンパク質(例えば、天然のタンパク質)から誘導されるタンパク質を意味している。天然のタンパク質をコード化しているDNA配列を修飾し、適した宿主内でそのDNA配列を形質転換し、および修飾したDNA配列を発現させて誘導体化酵素を形成させることにより酵素変異体の製造が達成される。本発明の変異体EGIII様酵素は、前駆体酵素アミノ酸配列と比較すると改変されたアミノ酸配列から成るペプチドを含んでおり、変異体EGIII様酵素は前駆体酵素に特徴的なセルロース分解特性を保持しているが、いくつかの特異的な点において改変された特性を持っている。例えば、変異体EGIII様酵素は広範囲のpH至適性、または高い温度または酸化的安定性を持っているが、その特徴的セルロース分解活性は保持している。本発明に従った変異体はセルラーゼ変異体EGIII様酵素をコード化しているDNA断片から誘導されるが、そこで発現されたセルラーゼ誘導体の機能的活性は保持されている。例えば、セルラーゼをコード化しているDNA断片はさらに、コード化されているセルラーゼドメインの機能的活性は保持されるように、セルラーゼDNA末端の5’かまたは3’末端に結合されたヒンジまたはリンカーをコード化しているDNA配列またはその一部を含んでいてもよい。
【0045】
”発現ベクター”とは、適した宿主中でDNAの発現を達成できる適した調節配列へ作動可能なように結合されているDNA配列を含んでいるDNA構築物を意味している。そのような調節配列は転写を達成するためのプロモーター、転写を調節するための随意のオペレーター配列、mRNA上に適したリボソーム結合部位をコード化している配列、および転写および翻訳の終結を調節する配列を含んでいる。枯草菌で使用されるベクターのために好適なプロモーターはAprEであり;大腸菌で使用される好適なプロモーターはLacプロモーターであり;サッカロマイセス セレビジエで使用される好適なプロモーターはPGK1プロモーターであり;黒色アスペルギルスで使用される好適なプロモーターはglaAであり;およびトリコデルマ レーセイのための好適なプロモーターはcbhlである。ベクターはプラスミド、ファージ粒子または単純に潜在性ゲノム挿入物であろう。適した宿主内に形質転換されたら、ベクターは宿主ゲノムとは独立して複製および機能するであろうし、または適した条件下、ゲノムそれ自身内へ組み込まれるであろう。本明細書において、プラスミドおよびベクターはしばしば相互交換的に使用される。しかしながら、本発明は等価な機能を果たしおよび本分野で既知である(または既知になる)発現ベクターの他の形を包含することを意図している。従って、広範囲な宿主/発現ベクターの組み合わせが、本発明のDNA配列の発現に用いられるであろう。有用な発現ベクターは、例えば、種々の既知のSV40誘導体、および細菌プラスミド、例えば、colE1、pCR1、pBR322、pMb9、pUC19およびそれらの誘導体を含む大腸菌からのプラスミド、より広い宿主幅のプラスミド、例えば、RP4、ファージDNA、例えば、ファージλの多くの誘導体(例えば、NM989)および他のDNAファージ(例えば、M13および糸状一本鎖DNAファージ)、2μプラスミドまたはそれらの誘導体のような酵母プラスミド、真核細胞で有用なベクター、動物細胞で有用なベクターおよびプラスミドおよびファージDNAの組み合わせから誘導されたベクター、ファージDNAまたは他の発現調節配列を用いて修飾されているプラスミドのような、染色体、非染色体および合成DNA配列から成っている。本発明の発現ベクターを用いる発現技術は本分野では知られており、一般的には、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第二版,Cold Spring Harbor Press(1989)に記載されている。しばしば、本発明のDNA配列を含んでいるそのような発現ベクターは、組み込みを通しての特定の種のゲノム内への直接挿入により単細胞宿主内へ形質転換される(例えば、Bennett & Lasure,More Gene Manipulations in Fungi,Academic Press,San Diego,pp.70−76(1991)および真菌宿主内の標的化ゲノム挿入を説明している引用論文を参照されたい、本明細書において援用される)。
【0046】
”宿主株”または”宿主細胞”とは本発明に従ったDNAを含んでいる発現ベクターのための適した宿主を意味している。本発明に有用な宿主細胞は一般的には原核生物または真核生物宿主であり、発現が達成できる任意の形質転換可能な微生物が含まれる。特には、宿主株は枯草菌、大腸菌、トリコデルマ レーセイサッカロマイセス セレビジエまたは黒色アスペルギルスであろう。宿主細胞は組換えDNA技術を使用して、構築されたベクターにより形質転換またはトランスフェクトされる。そのような形質転換宿主細胞は変異体EGIII様酵素をコード化しているベクターを複製または所望のペプチド産物を発現できる。本発明に従った好適な態様において、”宿主細胞”はトリコデルマ sp.の細胞から作製された細胞およびプロトプラストを意味している。
【0047】
”シグナル配列”とは細胞の外側へのタンパク質の成熟形の分泌を容易にする、タンパク質のN末端部分に結合されたアミノ酸の配列を意味している。シグナル配列のこの定義は機能的なものである。細胞外タンパク質の成熟形は、分泌過程間に切断されるシグナル配列を持っていない。
【0048】
”DNAベクター”とは、前記EGIII様セルラーゼまたは変異体をコード化している一つまたはそれ以上のDNA断片またはDNA変異体断片を含んでいるヌクレオチド配列を意味しており、それは適当な宿主細胞内への形質転換により変異体EGIII様セルラーゼの発現を起こすために使用できる。
【0049】
”機能的に結合されている”とは、プロモーター、ターミネーター、分泌シグナルまたはエンハンサー領域のような制御領域が構造遺伝子に結合され、その遺伝子の発現を調節していることを意味している。
【0050】
本発明は変異体EGIII様セルラーゼの発現、精製および/または単離、および使用に関している。これらの酵素は好適には、前記の方法に従って同定および単離された遺伝子を利用する組換え法により調製される。しかしながら、本発明に使用するための酵素は、天然の単離物からの精製のような他の認知された手段によっても得られる。
【0051】
本発明に従ったEGIII様セルラーゼを発現するための目的で形質転換されるべき微生物はトリコデルマ sp.に由来する株を含むことが都合がよいことが本発明により想像される。従って、本発明に従ったEGIII様セルラーゼを調製するための好適な様式は、前記のように検出されたEGIII様セルラーゼの一部またはすべてをコード化しているDNAの少なくとも断片を含んでいるDNA構築物でトリコデルマ sp.宿主細胞を形質転換することを含んでいる。DNA構築物は一般的には機能的にプロモーターに結合されるであろう。形質転換された宿主細胞は次に、所望のタンパク質を発現するような条件下で増殖させる。続いて、所望のタンパク質産物は実質的に均一になるように精製される。
【0052】
しかしながら、変異体EGIII様セルラーゼをコード化している与えられたDNAのための最良の発現担体は異なっていることも事実であろう。従って、変異体EGIII様セルラーゼの起源生物体と系統発生的に類似している形質転換宿主中でタンパク質を発現させるのが最も都合がよいであろう。従って、トリコデルマsp.発現システムのここでの説明は例示の目的でのみ提供されており、本発明の変異体EGIII様セルラーゼを発現するための一つの選択である。しかしながら、当業者はもし適切なら異なった宿主細胞中で変異体EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAを発現したいと思うであろうが、変異体EGIII様セルラーゼの起源が最適な発現宿主を決定していると考えられるべきことを理解しなければならない。さらに、当業者は、本分野で利用可能なツールを利用して日常の技術を通して特定の遺伝子のための最良の発現システムを選択できるであろう。
【0053】
一つの態様において、過剰発現されたタンパク質を得るための有用な株であるT.レーセイロンギブラキアツム)が該株に含まれている。例えば、Sheir−Neiss et al.Appl.Microbiol.Biotechnology,20(1984)pp.46−53、に記載されているRL−P37は高められた量のセルラーゼ酵素を分泌することが知られている。RL−P37の機能的等価物には、トリコデルマ レーセイロンギブラキアツム)株RUT−C30(ATCC番号56765)および株QM9414(ATCC番号26921)が含まれる。これらの株はまた、EGIII様セルラーゼの過剰発現にも有用であろうことが期待される。
【0054】
有害な可能性のある天然のセルロース分解活性を持たないEGIII様セルラーゼを得ることを望む場合、EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAを含んでいるDNA構築物またはプラスミドの導入に先立って、一つまたはそれ以上のセルラーゼ遺伝子が欠失されているトリコデルマ宿主細胞株を得るのが有用である。そのような株は米国特許第5,246,853号およびWO92/06209に開示されている方法により調製される(それらの開示は本明細書において援用される)。一つまたはそれ以上のセルラーゼ遺伝子が失われた宿主微生物中でEGIII様セルラーゼを発現することにより、同定および続いての精製法が単純化される。クローン化されているトリコデルマ sp.から任意の遺伝子が欠失できる、例えば、cbh1cbh2egl1およびegl3遺伝子ならびにEGIIIおよび/またはEGVタンパク質をコード化している遺伝子(例えば、各々米国特許第5,475,101号およびWO94/28117を参照されたい)。
【0055】
遺伝子欠失は、欠失または破壊されるべき所望の遺伝子の枠組みを本分野では既知の方法によりプラスミド内へ挿入することにより達成される。欠失プラスミドは次に適当な制限酵素部位で切断され(所望の遺伝子コード領域に内部で)、遺伝子コード配列またはその一部は選択可能マーカーにより置換される。欠失または破壊されるべき遺伝子座位に隣接するDNA配列(好適には約0.5から2.0kb)は選択可能マーカー遺伝子の両側に残存する。適切な欠失プラスミドは一般的に、隣接DNA配列および除去されるべき選択可能マーカー遺伝子を一つの直線状断片として含んでいる遺伝子が欠失された断片を得ることが可能なように、特有の制限酵素部位を持っている。
【0056】
形質転換された真菌の検出を可能にするように、選択可能マーカーを選択しなければならない。選択された微生物中で発現される選択可能マーカー遺伝子が適している。例えば、トリコデルマ sp.に関して、形質転換体中での選択可能マーカーの存在がその特性に有意に影響しないように選択可能マーカーが選択される。そのような選択可能マーカーはアッセイ可能産物をコード化している遺伝子である。例えば、宿主株中での欠損が宿主株において栄養要求性表現型を示すトリコデルマ sp.遺伝子の機能性コピーが使用される。
【0057】
好適な態様において、のpyr4−誘導株が機能性pyr4遺伝子で形質転換され、従ってそれは形質転換の選択可能マーカーを提供する。pyr4−誘導株はフルオロオロチン酸(FOA)に耐性であるトリコデルマ sp.株の選択により得られるであろう。pyr4遺伝子はウリジンの生合成に必要とされる酵素であるオロチジン−5’−一リン酸脱炭酸酵素をコード化している。無損傷のpyr4遺伝子を持つ株はウリジンを欠く培地中で増殖するが、フルオロオロチン酸に感受性を持っている。機能性オロチジン一リン酸脱炭酸酵素を欠きおよび増殖にウリジンを必要とするpyr4−誘導株はFOA耐性で選択することにより選択可能である。FOA選択技術を使用すると、機能性ピロホスホリボシル オロチン酸トランスフェラーゼを欠くウリジン要求株を得ることも可能である。これらの細胞をこの酵素をコード化している遺伝子の機能性コピーで形質転換することが可能である(Berges and Barreau,Curr.Genet.,19,1991,pp.359−365)。誘導株の選択は前記を参照し、FOA耐性技術を使用して容易に実行され、従って、pyr4遺伝子が選択可能マーカーとして好適に用いられる。
【0058】
一つまたはそれ以上のセルラーゼ遺伝子を発現する能力が欠けるようにpyr4− トリコデルマ sp.を形質転換するため、破壊されたまたは欠失したセルラーゼ遺伝子を含んでいる一つのDNA断片が欠失プラスミドから単離され、適当なpyr4− トリコデルマ宿主の形質転換に使用された。形質転換体が次にpyr4遺伝子産物を発現するおよびそれ故に宿主株のウリジン栄養要求性を捕捉するその能力に基づいて同定および選択される。次に得られた形質転換体についてサザンブロッティングが実施され、欠失されるべき遺伝子のゲノムコピーコード領域の一部またはすべてをpyr4選択可能マーカーで置き換える二重交差組込みを同定および確認する。
【0059】
上で説明された特異的プラスミドベクターがpyr−形質転換体の調製に関係しているが、本発明はこれらのベクターに限定されるわけではない。上の技術を使用して、トリコデルマ sp.株において種々の遺伝子が欠失および置き換えできる。加えて、上で議論したような任意の選択可能マーカーが使用できる。実際、クローン化され、同定された任意のトリコデルマ sp.遺伝子が上記の戦略を使用してゲノムから欠失できる。
【0060】
上で述べたように、使用された宿主株は非機能的遺伝子または選択された選択可能マーカーに対応する遺伝子を欠くかまたは持っているトリコデルマ sp.の誘導体である。例えば、もしpyr4の選択可能マーカーが選択されたとしたら、形質転換過程においては特異的pyr4−誘導体株が受容体として使用される。同様に、アスペルギルス ニデュランス遺伝子amdSargBtrpCniaDと等価なトリコデルマ sp.遺伝子を含んでいる選択可能マーカーを使用してもよい。対応する受容体株はそれ故、各々amdS−argB−trpC−niaD−のような誘導体株でなければならない。
【0061】
EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAが次に適切な微生物内へ挿入するために調製される。本発明に従うと、EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAは機能的セルロース分解活性を持つタンパク質をコード化するのに必要なすべてのDNAを含んでいる。EGIII様セルラーゼまたは誘導体をコード化しているDNA断片またはDNA変異体断片は、真菌プロモーター配列(例えば、cbh1またはegl1遺伝子のプロモーター)に機能的に結合されている。
【0062】
過剰発現を容易にするため、EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAの一つ以上のコピーが株内へ組換えられることも企図される。EGIII様セルラーゼをコード化しているDNAは、セルラーゼをコード化しているDNAを運んでいる発現ベクターの構築により調製されるであろう。EGIII様セルラーゼをコード化している挿入されたDNA断片を運んでいる発現ベクターは、与えられた宿主生物体中で自発的に複製できるか、または宿主のDNA(典型的にはプラスミド)内へ組み込むことができる任意のベクターである。好適な態様において、遺伝子の発現を得るために二つの型の発現ベクターが企図された。第一のものは、プロモーター、遺伝子コード領域およびターミネーター配列がすべて発現されるべき遺伝子に起源を発するDNA配列を含んでいる。遺伝子切断は望まれる場所で望まれないDNA配列(例えば、望まれないドメインをコード化している)を欠失させ、それ自身の転写および翻訳調節配列の制御下で発現されるべきドメインを残すことにより得られる。選択可能マーカーもまたベクター上に含まれており、新規遺伝子配列の多数のコピーの、宿主内への組込みのための選択を可能にしている。
【0063】
第二の型の発現ベクターは前もって組み立てられ、高レベル転写および選択可能マーカーに必要な配列を含んでいる。遺伝子またはその一部のコード領域が、発現カセットプロモーターおよびターミネーター配列の転写調節下にあるように、この一般目的発現ベクター内へ挿入できる。例えば、pTEXはそのような一般目的発現ベクターである。遺伝子またはその一部は強力なcbh1プロモーターの下流に挿入できる。
【0064】
ベクター内で、本発明のEGIII様セルラーゼをコード化しているDNA配列は転写および翻訳配列へ作動可能なように結合されなければならない、即ち、構造遺伝子の読み枠内の適したプロモーター配列およびシグナル配列。プロモーターは宿主細胞中で転写活性を示すDNA配列であり、宿主細胞に対して同種のまたは異種のタンパク質をコード化している遺伝子から誘導されるであろう。シグナルペプチドはEGIII様セルラーゼまたはその誘導体の細胞外産生を提供する。シグナル配列をコード化しているDNAは好適には発現されるべき遺伝子に天然に付随するものであるが、任意の適した起源(例えば、トリコデルマからのエキソ−セロビオヒドロラーゼまたはエンドグルカナーゼ)からのシグナル配列が本発明で企図される。
【0065】
本発明のEGIII様セルラーゼをコード化しているDNA配列とプロモーターを結合するために使用された方法および適したベクター内への挿入は本分野ではよく知られている。
【0066】
前記のDNAベクターまたは構築物は、形質転換、トランスフェクション、マイクロインジェクション、マイクロポレーション、生物分解性ボンバードメントなどのような既知の技術に従って宿主細胞内へ導入されるであろう。
【0067】
好適な形質転換技術において、トリコデルマ sp.においてはDNAに対する細胞壁の透過性は非常に低いことを考えに入れなければならない。従って、所望のDNA配列、遺伝子または遺伝子断片の取り込みは最も少ない。形質転換過程に先立って、誘導体株(即ち、機能性遺伝子を欠き、使用された選択可能マーカーが対応している)中のトリコデルマ sp.細胞壁の透過性を増加させる多くの方法が存在する。
【0068】
形質転換のためにトリコデルマ sp.を調製する本発明の好適な方法には、真菌菌糸からのプロトプラストの調製が挙げられる。菌糸は発芽した栄養胞子から得ることができる。菌糸を、細胞壁を消化する酵素で処理するとプロトプラストが得られる。プロトプラストは次に懸濁培地中、浸透圧安定化剤の存在により保護される。これらの安定化剤にはソルビトール、マンニトール、塩化カリウム、硫酸マグネシウムなどが含まれる。通常、これらの安定化剤の濃度は0.8Mから1.2Mの間で変化する。懸濁培地中、約1.2Mのソルビトールを使用するのが好適である。
【0069】
宿主トリコデルマ sp.株内へのDNAの取り込みはカルシウムイオン濃度に依存している。一般的に、約10mM CaCl2および50mM CaCl2の間の濃度が取り込み溶液で使用される。取り込み溶液ではカルシウムイオンに対する要求のほかに、他の成分としてTE緩衝液(10mMトリス、pH7.4;1mM EDTA)または10mM MOPS、pH6.0緩衝液(モルホリンプロパンスルホン酸)のような緩衝化系およびポリエチレングリコール(PEG)が一般的に含まれている。ポリエチレングリコールは細胞膜を融合させるように作用することが信じられており、それ故、培地内容物は宿主トリコデルマ sp.株の細胞質内へ送達され、プラスミドDNAが核へ輸送されるのを可能にすると信じられている。この融合はしばしば宿主染色体内へそっと組み込まれたプラスミドDNAの多数のコピーを残す。
【0070】
通常、透過処理にかけられたプロトプラストまたは細胞を、108から109/ml、好適には2x108/mlの密度で含んでいる懸濁液が形質転換に使用された。適当な溶液(例えば、1.2Mソルビトール;50mM CaCl2)に懸濁したこれらのプロトプラストまたは細胞の100マイクロリットル量が所望のDNAと混合される。一般的に、高濃度のPEGが取り込み溶液へ加えられる。0.1から1容量の25%PEG4000をプロトプラスト懸濁液へ加えることができる。しかしながら、約0.25容量をプロトプラスト懸濁液へ加えるのが好適である。ジメチルスルホキシド、ヘパリン、スペルミジン、塩化カリウムなどのような添加物が取り込み溶液へ加えられ、形質転換を助ける。
【0071】
一般に、混合物は約0℃で10から30分の間インキュベートする。所望の遺伝子またはDNA配列の取り込みを促進するために追加のPEGが混合物に加えられる。25%PEG4000は一般に形質転換混合物の5から15倍の容量で加えられる;しかしながら、より多いまたはより少ない容量が適しているであろう。25%PEG4000は形質転換混合物の約10倍の容量が好適である。PEGを加えた後、形質転換混合物は次にソルビトールおよびCaCl2溶液を加える前に室温でインキュベートする。プロトプラスト懸濁液はさらに次に増殖培地の融解物を加える。この増殖培地は形質転換体の増殖のみを許している。所望の形質転換体の増殖に適した任意の増殖培地が本発明で使用できる。しかしながら、もしPyr+形質転換体が選択されていたら、ウリジンを含んでいない増殖培地を使用するのが好適である。続いて起こるコロニーはウリジンを枯渇させた増殖培地上に移し、精製する。
【0072】
この段階において、より速い増殖速度およびウリジンを欠く固形培養培地上でギザギザしたよりもなめらかな輪郭を持つ環状コロニーの形成により、不安定な形質転換体から安定な形質転換体が区別される。加えて、いくつかの場合には、固形非選択的培地(即ち、ウリジンを含んでいる)上で形質転換体を増殖させ、この培養培地から胞子を採取し、およびウリジンを欠く選択培地上で芽吹くおよび増殖するであろうこれらの胞子のパーセントを決定することにより安定性の更なる試験が行われるであろう。
【0073】
上記の方法の特別の態様において,EGIII様セルラーゼまたはその誘導体が、新規EGIII様セルラーゼまたはその誘導体の適した翻訳後プロセッシングの結果として、液体培地中での増殖後に宿主細胞から活性な形で回収される。
【0074】
発現されたEGIII様セルラーゼは、遠心分離、濾過および上清または濾液中の塩(例えば、硫酸アンモニウム)によるタンパク質沈殿による培地からの細胞の分離を含む通常の技術により培地から回収される。さらに、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーのようなクロマトグラフィー法が使用される。抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)は天然の精製EGIII様セルラーゼに対して高められ、または合成ペプチドがEGIII様セルラーゼ分子の一部から調製され、ポリクローナル抗体を高めるのに使用された。
【0075】
本発明に従った織物の処理は、セルラーゼを含んでいる組成物での織物の加工またはクリーニングが企図された。そのような処理にはストーンウォッシング、セルロース含有織物の質感、感触および/または外観の改良、またはセルロース含有織物の製造またはクリーニング/再コンディショニング間に使用されるその他の技術が含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、本発明の文脈内で、処理するとはセルロース性織物または繊維からの”未熟な”または”死んだ”綿の除去も企図している。未熟な綿は成熟綿よりも著しく無定形であり、存在した場合、例えば、染斑のため織物の質が落ちる。本発明で企図された組成物はさらに、汚れて製造されたセルロース含有織物の洗浄で使用するためのセルラーゼ成分を含んでいる。例えば、セルラーゼはランドリー洗浄のための洗浄剤組成物にも使用される。本発明に従った有用な洗浄剤組成物には、前洗浄、前浸漬および家庭用色回復組成物のような特別の処方を含んでいる。そのような処理組成物は、本明細書で説明するように、希釈を必要とする濃縮液の形でまたは希釈溶液の形で、またはセルロース含有織物へ直接的に応用できる形であろう。織物のセルラーゼ処理の一般的処理技術は、例えば、EP出願第220 016号およびGB出願第1,368,599および2,095,275号に記載されている。
【0076】
本発明に従ったセルロース性物質の処理にはさらに、動物飼料、パルプおよび/または紙、食品および穀物の本分野で既知の目的のための処理が含まれる。例えば、セルラーゼは動物飼料の価値を高め、木材パルプの廃棄率を改良し、食品生産物の価値を高め、および穀物浸漬製粉または乾式製粉過程間に穀物の繊維を減少させることが知られている。
【0077】
本発明に従った処理は、例えば、緩衝液、界面活性剤および/または擦り磨き剤を含む他の追加の成分と一緒に有効量のセルラーゼを含んでいる水性溶液を調製することを含んでいる。セルラーゼ酵素組成物の有効量は、意図する目的に十分なセルラーゼ酵素の濃度である。従って、例えば、本発明に従ったストーンウォッシング組成物におけるセルラーゼの”有効量”は所望の効果(例えば、継ぎ目および織物の一画に摩損したおよび色あせた外観を生み出す)を提供するであろう量である。同様に、セルロース含有織物の感触および/または外観を改良することが意図された組成物における”有効量”とは感触(例えば、織物の滑らかさの改良)または外観(例えば、織物外観の鮮明さを減少させがちであるピルおよび小繊維を除去する)に観察できる改良を生み出すであろう量である。用いられるセルラーゼの量はまた、使用される装置、用いられるプロセスパラメーター(セルラーゼ処理溶液の温度、セルラーゼへの暴露時間など)、およびセルラーゼ活性(例えば、特定の溶液はより低い濃度を必要とするであろうが、そこではより活性の低いセルラーゼ組成物と比較してより活性なセルラーゼ組成物が使用される)にも依存している。処理されるべき織物が加えられる水性処理溶液におけるセルラーゼの正確な濃度は、上記の因子ならびに所望の結果に基づいて、当業者は容易に決定できる。ストーンウォッシング過程においては、約0.5から5,000ppmおよび最も好適には約10から200ppm総タンパク質の濃度で水性処理溶液中にセルラーゼが存在するのが一般的に好適である。セルロース含有織物の感触および/または外観の改良のための組成物においては、約0.1から2,000ppmおよび最も好適には約0.5から200ppm総タンパク質の濃度で水性処理溶液中にセルラーゼが存在するのが一般的に好適である。
【0078】
好適な処理態様において、用いられたセルラーゼが活性を示す範囲内に(用いられたセルラーゼの性質に依存している)溶液のpHを保つのに十分である緩衝液濃度であるように緩衝液が処理組成物に用いられる。用いられる緩衝液の正確な濃度は、当業者が容易に考えに入れられるいくつかの因子に依存するであろう。例えば、好適な態様において、緩衝液ならびに緩衝液濃度は、至適セルラーゼ活性に必要とされるpH範囲内に最終セルラーゼ溶液のpHが維持されるように選択される。本発明のセルラーゼの至適pH範囲の決定はよく知られた技術に従って確認できる。セルラーゼの活性範囲内pHの適した緩衝液は当業者にはよく知られている。
【0079】
セルラーゼおよび緩衝液に加え、処理組成物は随意に界面活性剤を含んでいる。適した界面活性剤にはセルラーゼおよび織物に合致した任意の界面活性剤が含まれ、例えば、陰イオン性、非イオン性および両性界面活性剤が含まれる。ここで使用するための適した陰イオン性界面活性剤には、直鎖または分岐鎖アルキルベンゼンスルホナート;直鎖または分岐鎖アルキル基またはアルケニル基を持っているアルキルまたはアルケニルエーテルスルファート;アルキルまたはアルケニルスルファート;オレフィンスルホナート;アルカンスルホナートなどが含まれる。陰イオン性界面活性剤のために適した対イオンにはナトリウムおよびカリウムのようなアルカリ金属イオン;カルシウムおよびマグネシウムのようなアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;および炭素数2または3のアルカノール基を1から3持っているアルカノールアミンが含まれる。両性界面活性剤には四級アンモニウム塩スルホナートおよびベタイン型両性界面活性剤が含まれる。そのような両性界面活性剤は同一の分子中に陽性および陰性の両方の荷電基を持っている。非イオン性界面活性剤は一般にポリオキシアルキレンエーテル、ならびにその高級脂肪酸アルカノールアミドまたはアルキレンオキシド付加物、および脂肪酸グリセリンモノエステルを含んでいる。界面活性剤の混合物もまた当業者には既知の様式で用いることができる。
【0080】
濃縮セルラーゼ組成物が以下に説明する方法で使用するために調製できる。そのような濃縮物は前記のセルラーゼ組成物、緩衝液および界面活性剤の濃縮量を、好適には水溶液として含んでいる。そのように処方された場合、必要な各々の成分濃度を持っているセルラーゼ調製物を迅速におよび正確に調製できるように、セルラーゼ濃縮物は水で容易に希釈できる。水性濃縮物が処方された場合、これらの濃縮物は上に示したようにセルラーゼ溶液中の成分の必要とされる濃度に達するように希釈できる。容易に明らかなように、そのような濃縮物はセルラーゼ溶液の容易な処方を可能にし、ならびに組成物が使用されるであろう場所への組成物の容易な輸送を可能にする。処理濃縮液は本分野で容認された任意の形状(例えば、液体、乳液、ゲルまたはペーストなど)にできる。
【0081】
固形セルラーゼ濃縮物が用いられた場合、セルラーゼ組成物は顆粒、粉末、塊状または固形円盤であろう。顆粒は、洗浄媒質への顆粒の溶解速度を減少させるための物質を含ませるように処方できる。そのような物質および顆粒は米国特許第5,254,283号(全体が本明細書において援用される)に開示されている。
【0082】
他の物質もまた望まれると本発明のセルラーゼ組成物とともにまたは配合されて使用でき、組成物の最終的使用に依存して石、軽石、充填剤、溶媒、酵素活性化剤、および抗析出剤が含まれる。
【0083】
例示のため、ストーンウォッシング法が詳細に説明されるが、記載されたパラメーターは他の応用(即ち、織物の感触および/または外観の改良)のために容易に修正される。処理組成物とストーンウォッシング組成物を混ぜ合わせることにより、セルロース含有織物と有効量のセルラーゼを含んでいるセルラーゼ含有ストーンウォッシング組成物接触させ、それによりセルラーゼ酵素を織物の近傍に持っていく。続いて、セルラーゼおよび織物を含んでいる水性溶液をかき混ぜる。もし処理組成物が水性溶液であれば、織物は溶液に直接浸漬する。同様に、ストーンウォッシング組成物が濃縮物である場合は、濃縮物はセルロース含有織物とともにウォーターバス内で希釈される。ストーンウォッシング組成物が固体形の場合(例えば、前洗浄ゲルまたは固形の棒)、ストーンウォッシング組成物は、組成物を織物または洗浄液へ直接加えることにより接触させる。
【0084】
セルロース含有織物は、酵素的作用を可能にし、セルロース含有織物にストーンウォッシングされた外観を与えるのに有効な条件下、ストーンウォッシング溶液とインキュベートする。例えば、ストーンウォッシングの間、pH、溶液比、温度および反応時間は、ストーンウォッシング組成物が働く条件を最適にするように調節される。”有効な条件”とは必然的にセルラーゼ酵素がセルロース含有織物と有効に反応する(この場合、ストーンウォッシング効果を生み出す)pH、溶液比および温度を意味している。しかしながら、そのような条件は容易に当業者により容易に確認される。本発明のストーンウォッシング組成物に有効な反応条件は、対応する従来の技術のセルラーゼ組成物で使用された既知の方法と実質的に類似している。従って、本発明のストーンウォッシング組成物を使用するための条件を最高にすることは当業者の範囲内である。
【0085】
ここで用いられたストーンウォッシング間の溶液比、即ち、織物の重量に対するストーンウォッシング組成物溶液(即ち、洗浄溶液)の重量の比は一般的には、デニム織物で所望のストーンウォッシング効果を達成するのに十分な量であり、使用される方法に依存する。好適には、溶液比は約4:1から約50:1;より好適には約5:1から約20:1;および最も好適には約10:1から約15:1である。
【0086】
本ストーンウォッシング組成物によるストーンウォッシング間の反応温度は二つの競合する因子により支配されている。第一に、より高い温度は一般的に反応動力学に対応しており(即ち、より速い反応)、それはより低い温度で必要とされる反応時間と比較すると反応時間の減少を可能にする。従って、反応温度は一般的に低くとも10℃およびそれ以上である。第二に、セルラーゼはタンパク質であり、ある反応温度を超えると活性を失い、その温度は使用されるセルラーゼの性質に依存している。従って、反応温度が許容されるよりも非常に高かったら、セルラーゼが変性する結果としてセルロース分解活性が失われる。本分野におけるセルラーゼ使用の標準温度は一般に35℃から65℃の範囲であり、その条件は本発明のセルラーゼにも適していると期待されるが、至適温度条件は使用された特異的セルラーゼに関し、よく知られた技術に従って確認されなければならない。
【0087】
反応時間は、ストーンウォッシングが起こる特異的条件に依存している。例えば、pH、温度およびセルラーゼの濃度すべてが最適反応時間に影響するであろう。一般的に、反応時間は約5分から約5時間、好適には約10分から約3時間、およびより好適には約20分から約1時間である。
【0088】
本発明のさらに別の好適な態様に従うと、本発明のセルラーゼは洗浄剤組成物に用いられるであろう。本発明に従った洗浄剤組成物は前洗浄組成物、前浸漬組成物または通常の洗浄またはすすぎサイクル間のクリーニングのために有用である。好適には、本発明の洗浄剤組成物は、有効量のセルラーゼ、界面活性剤および随意に以下に記載するような他の成分を含んでいる。
【0089】
本発明の洗浄剤組成物中に用いられるセルラーゼの有効量はセルロース含有織物に対してセルラーゼにより生み出されることが知られている所望の効果、例えば、脱ピリング、柔軟化、抗ピリング、表面繊維除去、抗灰色化およびクリーニング、を与えるのに十分な量である。好適には、洗浄剤組成物中のセルラーゼは洗浄剤の約10ppmから約20,000ppmの濃度で用いられる。
【0090】
洗浄剤組成物中に用いられるセルラーゼ酵素の濃度は好適には、洗浄媒質での希釈により、セルラーゼ酵素の濃度が約0.01から約1000ppm、好適には約0.02ppmから約500ppm、および最も好適には約0.5ppmから約250ppm総タンパク質の範囲である。洗浄剤組成物中に用いられるセルラーゼ酵素の量は洗浄溶液を形成するために水の添加により洗浄剤が希釈されるであろう程度に依存するであろう。
【0091】
本発明の洗浄剤組成物は容認されている任意の形、例えば、液体、顆粒、乳液、ゲルまたはペーストであろう。そのような形は当業者にはよく知られている。固形洗浄組成物が用いられる場合、セルラーゼは顆粒として好適に処方される。好適には、顆粒はセルラーゼ保護剤を追加で含むように処方できる。顆粒は、洗浄媒質への顆粒の溶解速度を減少させる物質を含むように処方できる。そのような物質および顆粒は米国特許第5,254,283号(全体が本明細書において援用される)に開示されている。
【0092】
本発明の洗浄剤組成物は表面活性剤(即ち、界面活性剤)を用いており、洗浄剤組成物での使用がよく知られている陰イオン性、非イオン性および両性界面活性剤が含まれる。セルラーゼ組成物および界面活性剤に加え、本発明の洗浄剤組成物は随意に一つまたはそれ以上の下記の成分を含むことができる:
セルラーゼを除いた加水分解酵素
適した加水分解酵素には、エステル結合に作用するカルボン酸エステル加水分解酵素、チオエステル加水分解酵素、リン酸モノエステル加水分解酵素、およびリン酸ジエステル加水分解酵素;グリコシル化合物に作用するグリコシド加水分解酵素;N−グリコシル化合物を加水分解する酵素;エーテル結合に作用するチオエーテル加水分解酵素;およびペプチド結合に作用するa−アミノ−アシル−ペプチド加水分解酵素、ペプチジル−アミノ酸加水分解酵素、アシル−アミノ酸加水分解酵素、ジペプチド加水分解酵素およびペプチジル−ペプチド加水分解酵素が含まれる。これらの中で好適であるのはカルボン酸エステル加水分解酵素、グリコシド加水分解酵素およびペプチジル−ペプチド加水分解酵素である。適した加水分解酵素には以下のものが含まれる:(1)ペプシン、ペプシンB、レニン、トリプシン、キモトリプシンA、キモトリプシンB、エラスターゼ、エンテロキナーゼ、カテプシンC、パパイン、キモパパイン、フィシン、トロンビン、フィブリノシン、サブチリシン、アスペルギロペプチダーゼA、コラゲナーゼ、クロストリジオペプチダーゼB、カリクレイン、ガストリシン、カテプシンD、ブロメリン、ケラチナーゼ、キモトリプシンC、ペプシンC、アスペルギロペプチダーゼB、ウロキナーゼ、カルボキシペプチダーゼAおよびBおよびアミノペプチダーゼのようなペプチジル−ペプチド加水分解酵素に属しているプロテアーゼ;(2)グリコシド加水分解酵素(必須の構成要素であるセルラーゼはこの群から除かれている)α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、インベルターゼ、リゾチーム、ペクチナーゼ、キチナーゼおよびデキストラーゼ。これらは酸から中性系で機能するが、細菌から得られたものはアルカリ性系で高い活性を示す;(3)カルボキシルエステラーゼ、リパーゼ、ペクチンエステラーゼおよびクロロフィラーゼを含むカルボン酸エステル加水分解酵素。これらの中で特に有効なのはリパーゼである。
【0093】
セルラーゼ以外の加水分解酵素は目的に従って必要とされるだけ洗浄剤組成物内へ取り込まれる。0.001から5重量パーセント、およびより好適には0.02から3重量パーセント(精製されたタンパク質として)の量を好適に組み込むべきである。この酵素は洗浄剤組成物中、粗酵素単独または他の成分と組み合わせて作られた顆粒の形で使用すべきである。粗酵素の顆粒は、顆粒中で精製された酵素が0.001から50重量パーセントである量で使用される。顆粒は0.002から20および好適には0.1から10重量パーセントの量で使用される。セルラーゼでは、これらの顆粒は酵素保護剤および溶解遅延物質を含むように処方できる。
ビルダー
A.二価金属イオン封鎖剤
組成物は以下の化合物のアルカリ金属塩およびアルカノールアミン塩から成る群より選択される一つまたはそれ以上のビルダー成分を約0から約50重量パーセント含んでいるであろう:リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスホノカルボン酸塩、アミノ酸の塩、アミノポリ酢酸塩高分子量電解質、非解離性ポリマー、二カルボン酸の塩およびアルミノケイ酸塩。適した二価金属イオン封鎖剤は英国特許出願第2 094 826 Aに開示されている(その開示は本明細書において援用される)。
B.アルカリまたは無機電解質
組成物は、下記の化合物の一つまたはそれ以上のアルカリ金属塩の組成に基づいて、約1から約50重量パーセント、好適には約5から約30重量パーセント、アルカリまたは無機電解質として含んでいるであろう:ケイ酸塩、炭酸塩および硫酸塩ならびにトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンおよびトリイソプロパノールアミンのような有機アルカリ。
抗再沈殿剤
組成物は一つまたはそれ以上の下記の化合物を約0.1から約5重量パーセント、抗再沈殿剤として含んでいるであろう:ポリエチレングリコ−ル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロース。
【0094】
これらの内、カルボキシメチルセルロースおよび/またはポリエチレングリコ−ルと本発明のセルラーゼ組成物の組み合わせは特に有用なごみ除去組成物を提供した。
漂白剤
一過硫酸カリウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム/過酸化水素付加体および塩化ナトリウム/過酸化水素付加体または/およびスルホン酸化フタロシアニンの亜鉛またはアルミニウム塩のような光感受性漂白色素のような漂白剤と組み合わされた本発明のセルラーゼの使用は洗浄効果をさらに改良する。同様に、EP683 304に開示されているような漂白剤および漂白触媒を使用してもよい。
青味剤および蛍光色素
種々の青味剤および蛍光色素が必要に応じ、組成物へ組み込まれるであろう。適した青味剤および蛍光色素は英国特許出願第2 094 826 Aに開示されている(その開示は本明細書において援用される)。
ケーキング阻害剤
以下のケーキング阻害剤が粉末状洗浄剤に組み込まれるであろう:p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酢酸塩、スルホコハク酸塩、タルク、細かく微粉状にしたシリカ、無定形シリカ、粘土、ケイ酸カルシウム(Johns Manville Co.のMicro−Cellのような)、炭酸カルシウムおよび酸化マグネシウム。
セルラーゼ活性を阻害する因子のためのマスキング剤
本発明のセルラーゼ組成物はいくつかの場合、銅、亜鉛、クロム、水銀、鉛、マンガン、または銀イオンまたはそれらの化合物の存在で不活性化される。種々の金属キレート剤および金属沈殿剤がこれらの阻害剤に対して有効である。それらには、例えば、追加の添加物に関して前に掲げたような二価金属イオン封鎖剤ならびにケイ酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウムが含まれる。
【0095】
セロビオース、グルコースおよびグルコノラクトンは時には阻害剤として作用する。可能な限りこれらのサッカリドとセルラーゼの共存は避ける方が好適である。共存が避けられない場合、サッカリドとセルラーゼの直接接触を避ける必要があり、例えば、それらをコーティングする。
【0096】
長鎖脂肪酸塩および陽イオン性界面活性剤はある場合には阻害剤として作用する。しかしながら、これらの物質とセルラーゼの共存は、もしそれらの直接的接触が錠剤化またはコーティングのようないくつかの手段により防止されていれば可能である。
【0097】
上記のマスキング剤および方法は、必要に応じ、本発明において用いられるであろう。
セルラーゼ活性化剤
活性化剤は特定のセルラーゼに依存して変化するであろう。タンパク質、コバルトおよびその塩、マグネシウムおよびその塩、カルシウムおよびその塩、カリウムおよびその塩、ナトリウムおよびその塩、またはマンノースおよびキシロースのようなモノサッカリドの存在下、多くのセルラーゼは活性化され、それらの洗浄力は顕著に改良される。
抗酸化剤
抗酸化剤には、例えば、tert−ブチル−ヒドロキシトルエン、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、一スチレン化クレゾール、一スチレン化フェノール、二スチレン化フェノールおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)シクロヘキサンが含まれる。
可溶化剤
可溶化剤には、例えば、エタノールのような低級アルコール、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のような低級アルキルベンゼンスルホン酸塩、プロピレングリコールのようなグリコール、アセチルベンゼンスルホン酸塩、アセトアミド、ピリジンカルボン酸アミド、安息香酸塩および尿素が含まれる。
【0098】
本発明の洗浄剤組成物は酸性からアルカリ性pHの広いpH範囲で使用できる。好適な態様において、本発明の洗浄剤組成物は約5から約12を超えないpHを持っている弱酸性、中性またはアルカリ性洗浄剤洗浄媒質中で使用できる。
【0099】
上記の成分の他に、香料、緩衝剤、保存剤、色素などが、必要に応じて本発明の洗浄剤組成物とともに使用できる。そのような成分は本分野でこれまで使用されてきた量で都合よく用いられる。
【0100】
本発明において洗浄剤基剤が粉末の形である場合、噴霧乾燥法および顆粒化法を含む既知の製造法により製造されるであろう。噴霧乾燥法、凝塊形成法、乾燥混合法または非塔式経路法により得られた洗浄剤基剤が特に好適である。噴霧乾燥法により得られた洗浄剤基剤は製造状態に関して制限を受けない。噴霧乾燥法により得られた洗浄剤基剤は中空の顆粒であり、表面活性剤およびビルダーのような熱耐性成分の水性スラリーを熱空間へ噴霧することにより得られる。噴霧乾燥後、香料、酵素、漂白剤、無機アルカリビルダーが加えられる。噴霧−乾燥−顆粒化または凝塊形成法のようにして得られた高密度、顆粒性洗浄剤基剤でも、基剤の製造後に種々の成分が加えられるであろう。
【0101】
洗浄剤基剤が液体である場合、それは均質な溶液かまたは不均一な分散液であろう。洗浄剤中でのセルラーゼによるカルボキシメチルセルロースの分解を起こさないために、カルボキシメチルセルロースは組成物への組み込みの前に顆粒化または被覆するのが望ましい。
【0102】
本発明の洗浄剤組成物は、セルロース含有織物(例えば汚れた織物)と工業用および家庭用使用において、これらで通常用いられる温度、反応時間および溶液比でインキュベートされる。インキュベーション条件(即ち、本発明の洗浄剤組成物によるセルロース含有織物の処理に有効な条件)は当業者により容易に確認可能であろう。従って、本洗浄剤組成物による処理に有効な適切な条件は、既知のセルラーゼを含む同様の洗浄剤組成物で用いた条件に対応しているであろう。
【0103】
本発明に従った洗浄剤はさらに、所望の改良、柔軟化、脱ピリング、ピリング防止、表面繊維除去またはクリーニングを提供するための十分な活性が存在する適切な溶液中、中程度のpHでの前洗浄剤としても処方されるであろう。洗浄剤組成物が前浸漬(例えば、前洗浄または前処理)組成物である場合、液体、スプレー、ゲルまたはペースト組成物として、セルラーゼ酵素は前浸漬または前処理組成物の総重量に基づいて約0.0001から約1重量パーセントで一般的に用いられる。そのような組成物において、界面活性剤が随意に用いられており、用いられる場合は一般的に、前浸漬物の総重量に基づいて約0.005から約20重量パーセントの濃度で存在しているであろう。該組成物の残りには、前浸漬に使用される通常の成分、即ち、希釈剤、緩衝化剤、他の酵素(プロテアーゼ)などが通常の濃度で含まれている。
【0104】
本明細書で記載されたセルラーゼ酵素を含んでいる組成物は、退色した織物の色回復のための独立型組成物(例えば、米国特許第4,738,682号、全体が本明細書において援用される)として、ならびに斑点除去および脱ピリングおよび抗ピリング(ピリング防止)のために家庭用として使用できることが企図されている。
【0105】
本発明に従ったセルラーゼの使用は、飼料添加物としておよびパルプおよび紙の加工に特に有用であろう。これらの追加の工業的応用は各々、例えば、PCT出願第95/16360号およびフィンランド許可特許第87372号に開示されている。
【0106】
本発明およびその利点をさらに例示するため以下の特別の実施例が提供されるが、それらは本発明の例示のために提供されており、どのような意味でも本発明の範囲を制限すると解釈してはならない。
【実施例】
【0107】
実施例1
EGIII様セルラーゼをコード化しているゲノムDNAの調製
EGIII様セルラーゼが特定の生物体のDNAによりコード化されているかどうかを決定するPCR反応を行う目的のため、いくつかの異なった微生物でゲノムDNAが調製された。
【0108】
ゲノムDNAはアクレモニウム ブラキペニウム 寄託番号CBS 185.34;ケトミウム ブラシリエンス 寄託番号CBS 140.50;ケトミウム ビテリウム 寄託番号CBS 250.85;エメリセラ デセルトル 寄託番号CBS 653.73;フザリウム エキセチ 寄託番号CBS 185.34;グリオクラジウム ロゼウム 寄託番号CBS 443.65;フミコーラ グリセア 変異体サーモイジア 寄託番号CBS 225.63;ミセリオプトラ サーモフィラ 寄託番号 ATCC 48102−48104;ペニシリウム ノタツム 寄託番号 ATCC 9178,9179;およびファネロカエテ クリソスポリウム 寄託番号 ATCC 28326から得られ、標準法に従って単離された。
【0109】
PCRはMJ Research Inc.からのPCT−150 MicroCyclerのような標準PCR機で下記の条件で実施された:
1)98℃で1分 1サイクル;
2)94℃で1分
40℃で90秒
72℃で1分
3)工程2を30サイクル繰り返す
4)72℃で7分 1サイクル
5)保存およびさらなる分析のため15℃へ温度を下げる。
【0110】
種々の微生物から構築されたライブラリーからのEGIII様遺伝子の増幅に使用するため以下のDNAプライマーが構築された。タンパク質およびDNA配列において本明細書で使用されたすべての記号はIUPAC IUB 生化学命名委員会コードに対応している。
BOX1:(N/Q)NLWGをコードしているプライマー
正プライマー FRG001:AAY AAY YTN TGG GG
正プライマー FRG002:CAR AAY YTN TGG GG
BOX1’:NNN(F/L/Y/I/L/N/K)WGをコードしているプライマー
正プライマー FRG010:AAY AAY AAY HWI TGG GG
BOX2:ELMIWをコードしているプライマー
正プライマー FRG003:GAR YTN ATG ATH TGG
逆プライマー FRG004:CCA DAT CAT NAR YTC
BOX2’:YELMIWをコードしているプライマー
正プライマー FRG011:TAY GAR YTI ATG ATH TGG
逆プライマー FRG012:CCA DAT CAT IAR YTC RTA
BOX3:GTE(P/C)FTをコードしているプライマー
逆プライマー FRG005:GTR AAN GGY TCR GTR CC
逆プライマー FRG006:GTR AAN GGY TCR GTY CC
逆プライマー FRG007:GTR AAN GGY TCY GTR CC
逆プライマー FRG008:GTR AAN GGY TCY GTY CC
逆プライマー FRG009:GTR AAR CAY TCN GTN CC
PWOポリメラーゼ(Boehringer Mannheim,カタログ番号1644−947)のためのPCR条件は、10マイクロリットルの10X反応緩衝液(10X反応緩衝液は100mMトリス HCl、pH8−8.5;250mM KCl;50 mM (NH4)2SO4;20mM MgSO4を含んでいる);各々0.2mM dATP、dTTP、dGTP、dCTP(最終濃度)、1マイクロリットルの100ナノグラム/マイクロリットル ゲノムDNA、1マイクロリットルのPWO マイクロリットル当たり1単位、500mMプライマー(最終濃度)および水で100マイクロリットルに、から作られた100マイクロリットル溶液から成っている。溶液には鉱物油が層積された。
【0111】
PCR法は以下のようである:所望のゲノムDNA試料を含む混合物中、BOX1およびBOX1’のための正プライマーとBOX3からの逆プライマーを併用し、ゲルで分離して400−1000塩基対範囲に断片を得た。得られた断片はプールし、プールしたものを二つのほとんど等量の部分に分割した。第一のプールはBOX1およびBOX1’からの正プライマーならびにBOX2からの逆プライマーと一緒にした。第二のプールはBOX2からの正プライマーならびにBOX3からの逆プライマーと一緒にした。遺伝子内のプライマーの位置を考え、EGIII様セルラーゼに関連した大体のサイズを持つ断片(この場合、250−500塩基対間のものに対応する)を単離し、配列決定した。
【0112】
配列決定された断片から、完全長遺伝子の配列を迅速に得るためにRAGE(ゲノム末端の迅速増幅)技術を使用することが可能であった。完全長遺伝子が得られ、いくつかの追加のEGIII様皿配列と図3に提供されている。図3に示されたように、ヒポクレア シュベイニッツイアスペルギルス アクレアタスアスペルギルス カワチイ(1)、アスペルギルス カワチイ(2)、アスペルギルス オリゼフミコーラ グリセアフミコーラ インソレンスケトミウム ブラシリエンスフザリウム エキセチフザリウム ジャパニクム(1)、フザリウム ジャパニクム(2)、グリオクラジウム ロゼウム(1)、グリオクラジウム ロゼウム(2)、グリオクラジウム ロゼウム(3)、グリオクラジウム ロゼウム(4)、メンノニエラ エキナータ、放線菌11AG8、ストレプトマイセス リビダンス CelBロドテルムス マリヌスエメリセラ デセルトルおよびエルウィニア カロトボーラから単離された完全長遺伝子はすべてトリコデルマ レーセイからのEGIIIと有意の相同性を含んでいる。
実施例2
EGIIIおよびEGIII様セルラーゼの温度安定性試験
EGIIIおよびフミコーラ グリセアフミコーラ インソレンスエメリセラ デセルトルフザリウム ジャパニクムおよびメンノニエラ エキナータから誘導されたEGIII様同族体が温度ストレス下での安定性を決定するために試験された。
【0113】
安定性は、固定した高温でのインキュベーションによる活性の消失速度を追跡することによりアッセイされた:0.1mg/mlおよび0.5mg/ml間で50mMクエン酸/リン酸緩衝液(pH8.0)中のEGIIIおよびEGIII様セルラーゼ溶液を48℃の水浴中でインキュベートした。計測時間点に100μlを採り、急速に冷却(または凍結)した。これらの試料中に残っている活性を以下に詳細に説明するようにアッセイした。不可逆的熱不活性化曲線を、残存活性vs時間をプロットすることにより得、データは単一指数関数減衰に適合した。この指数関数的減衰の半減期が熱安定性の尺度として決定された。
活性アッセイ:96ウェルマイクロプレートのウェルに、10μlの酵素試料を120μlの基質(4.2mg/ml o−ニトロフェニル セロビオシド)の50mMリン酸カリウム溶液(pH6.7)へ加えた。プレートは40℃で10分間インキュベートし、次に反応を70μlの0.2Mグリシンで停止させた。410nmでの吸光度(基質の酵素的切断により放出されたo−ニトロフェノールによる)をマイクロタイタープレートリーダーで測定した。この終点410nm読みとりは酵素試料中のセルラーゼ活性と比例した。
【0114】
安定度試験の結果は以下のようである:
EGIII様酵素 半減期(分)
H.グリセア 安定
H.インソレンス 安定
E.デセルトル 200
F.ジャパニクム 93
M.エキナータ 192
T.レーセイ(EGIII) 23
”安定”とは200分以内で活性の20%未満の消失を示した。
【0115】
上記の結果から見ることができるように、EGIII様同族体はT.レーセイからのEGIIIと比較的密接な相同性を持っているにもかかわらず、著しく改良された安定度を持っていた。従って、これらの残基の相違がEGIII同族体の改良された安定性に決定的であることが明らかであり、そういうものとして、これらの残基の修飾によるEGIII様セルラーゼさらなる改良はEGIII様酵素の安定性の改良をさらに増強するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異体EGIIIセルラーゼであって、
該変異体EGIIIはトリコデルマ レーセイ(Trichoderma reesei)からのEGIII中の残基T2、S3、A8、F10、S18、A24、S25、F30、G31、V36、L38、A42、A46、D47、Q49、Q61、Q64、I65、A66、Q69、A83、S86、S90、V109、T110、Y111、K123、D126、S133、Q134、G135、V139、T145、Q162、N164、T166、Y168、N174、R180、K183、N186、A188、G189、V192、L193、S205、G206、N209、A211、T214またはI217に対応する1箇所から3箇所の位置での置換または欠失を含む、
変異体EGIIIセルラーゼ。
【請求項2】
該セルラーゼが真菌、細菌または放線菌類に由来している請求項1に記載のセルラーゼ。
【請求項3】
該セルラーゼがエンドグルカナーゼである請求項1に記載のセルラーゼ。
【請求項4】
該真菌が糸状菌である請求項1に記載のセルラーゼ。
【請求項5】
該糸状菌が真正子嚢菌類に属している請求項4に記載のセルラーゼ。
【請求項6】
該真正子嚢菌類がアスペルギルスspp.、グリオクラディウムspp.、フザリウムspp.、アクレモニウムspp.、ミセリオフトラspp.、ベルチシリウムspp.、ミロセシウムspp.、ペニシリウムspp.である請求項5に記載のセルラーゼ。
【請求項7】
請求項1に記載のセルラーゼをコードしているDNA。
【請求項8】
請求項7のDNAを含んでいるベクター。
【請求項9】
請求項8のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
以下の工程から成るセルラーゼの製造法:(a)セルラーゼを製造するのに適した条件下、適した培養培地中で請求項9に記載の宿主細胞を培養し;(b)該製造されたセルラーゼを得る;および任意に(c)精製されたセルラーゼ製造物を提供するために該セルラーゼを精製する。
【請求項11】
界面活性剤およびセルラーゼを含んでいる洗浄剤組成物であって、但し該セルラーゼは界面活性剤感受性残基に置換を含んでいる変異体EGIIIセルラーゼから成っている。
【請求項12】
変異体EGIIIが、トリコデルマ レーセイ(Trichoderma reesei)からのEGIII中の残基T2、S3、A8、F10、S18、A24、S25、F30、G31、V36、L38、A42、A46、D47、Q49、Q61、Q64、I65、A66、Q69、A83、S86、S90、V109、T110、Y111、K123、D126、S133、Q134、G135、V139、T145、Q162、N164、T166、Y168、N174、R180、K183、N186、A188、G189、V192、L193、S205、G206、N209、A211、T214またはI217に対応する1箇所から3箇所の位置での置換または欠失を含む、
変異体EGIIIセルラーゼを含む、請求項11に記載の洗浄剤組成物。
【請求項13】
該洗浄剤がランドリー洗浄剤である請求項12に記載の洗浄剤組成物。
【請求項14】
該洗浄剤が皿洗浄剤である請求項12に記載の洗浄剤組成物。
【請求項15】
セルロース含有織物の処理における請求項1に記載の変異体EGIIIセルラーゼの使用。
【請求項16】
飼料添加物としての請求項1に記載のEGIIIセルラーゼの使用。
【請求項17】
木材パルプの処理における請求項1に記載のEGIIIセルラーゼの使用。
【請求項18】
グルコースへのバイオマスの減少における請求項1に記載のEGIIIセルラーゼの使用。
【請求項19】
ストーンウォッシングまたはインジゴ染色デニムにおける請求項1に記載のEGIIIセルラーゼの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2011−87582(P2011−87582A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250662(P2010−250662)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【分割の表示】特願2000−589670(P2000−589670)の分割
【原出願日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【出願人】(398056506)ダニスコ・ユーエス・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】