説明

新規抗IL13抗体およびその使用

【課題】副作用の少ない、炎症性疾患の処置のための新規生体活性化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、グリコシル化および非グリコシル化ヒトIL13の両方に高い親和性で特異的に結合し、マウスIL13を結合せず、そしてヒトIL13活性を約1:2(MAb:IL13)のモル比でヒトIL13活性を中和する抗IL13抗体に関する。本発明はまた、喘息、アレルギー性喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、じんま疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染、ブドウ膜炎、強皮症、または骨粗鬆症を含むアレルギー性疾患のような、IL13媒介疾患の処置におけるこれら抗体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
インターロイキン(IL)−13は、多形質発現性Tヘルパー細胞サブクラス2(Th2)サイトカインである。IL4と同様に、IL13は、4α−らせん疎水性バンドルコアによって規定される三次構造を共有するタイプIサイトカインのファミリーに属する。IL13は、IL4と約30%のアミノ酸配列相同性を有し、そしてIL4の多くの性質を共有する(非特許文献1)。IL4とIL13との機能的類似性は、IL13が、そのIL13レセプターα鎖−1(IL13Rα1)への結合に引き続き、IL4レセプターα鎖(IL4R−α)を結合し得るという事実に帰因する((非特許文献2)。IL4Rαは、IL4およびIL13によって活性化され、Jak1依存性SAT6リン酸化を生じる。IL4およびIL13の両方は、B細胞増殖を促進し、そしてCD40/CD40L同時刺激との組み合わせでIgG4およびIgEへのクラススイッチングを誘導する(非特許文献3および4)。
【0002】
しかし、IL4とは異なり、IL13は、ナイーブなT細胞のTh2細胞への分化には関与しない(非特許文献5)。IL13は、FcεRIを上方制御し、そしてそれ故、肥満細胞のIgEプライミングを支援する(非特許文献6)。単球/マクロファージにおいて、IL13は、CD23ならびにMHCクラスIおよびクラスII抗原の発現を上方制御し、FcγおよびCD14の発現を下方制御し、そして抗体依存性細胞傷害性を阻害する(非特許文献7および8)。IL13は、好酸球生存、活性化、および補充を促進するが、IL4はしない(非特許文献9、10および11)。IL13はまた、平滑筋細胞、上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞のような非造血性細胞に対し重要な機能を顕示する。IL13は、平滑筋の増殖およびコリン作用性の誘導収縮を増大する(非特許文献12)。上皮細胞において、IL13は、ケモカイン産生の潜在的なインデューサーである(非特許文献13)、粘膜繊毛分化を改変し(非特許文献14)、有繊毛上皮細胞の繊毛拍動頻度を低減し(非特許文献15)、そして杯状細胞異形成を生じる(非特許文献16および17)。内皮細胞において、IL13は、血管細胞接着分子1(VCAM−1)の潜在的なインデューサーであり、これは好酸球の補充に重要である(非特許文献18)。ヒト皮膚線維芽細胞において、IL13は、ヒト皮膚線維芽細胞における1型コラーゲン合成を誘導する(非特許文献19)。
【0003】
IL13およびIL4は、特定の機能的類似性を共有するが、疾患および遺伝子ノックアウトマウスの動物モデルにおける研究は、IL13は、IL4とは別個の特有のエフェクター機能を所有することを示し、そしてIL13は、その他のTh2サイトカインとは独立に、アレルギー性喘息のすべての特徴を誘導するために必要かつ十分である強力な証拠を提供している(非特許文献20および21)。IL13は、喘息の症状にともなうエフェクター機能においてその他のTh2サイトカインより重要な役割を演じ得る(非特許文献22)。この論点は、IL13レベルと、IL13遺伝子における遺伝子多形と、疾患相関との間の強い関連によりヒト疾患において支持されている(非特許文献23〜27)。出現するデータは、IL13が、好酸球およびIgE媒介事象を含む伝統的な経路を通じてよりも、粘膜性上皮細胞および平滑筋細胞に対するその作用を経由するアレルギー性応答の特徴を含むことを示唆している(非特許文献28)。
【0004】
喘息は、気道炎症、応答性亢進および閉塞を含む慢性肺疾患として記載されている。生理学的には、気道応答性亢進は、メタコリンまたはヒスタミンでの気管支刺激後の疾患気管支気流の減少によって証明されている。気道閉塞を誘発するその他の引き金は、冷気、運動、ウイルス上気道感染、喫煙、および呼吸アレルギーを含む。アレルゲンにともなう気管支応答性亢進は、多くの患者において、4〜8時間の気管支気流の減少をともなう後期IgE媒介反応が続く、気管支気道における迅速な初期免疫グロブリンE(IgE)−媒介性減少を誘導する。この初期応答は、ヒスタミン、PGD、ロイコトリエン、トリプターゼおよび血小板活性化因子(PAF)のような炎症性物質の急性放出によって引き起こされ、その一方、後期応答は、デノボ合成された前炎症性サイトカイン(例えば、TNFα、IL4、IL3)およびケモカイン(例えば、MCP−1およびMIP−1α)によって引き起こされる(非特許文献29)。慢性喘息患者では、持続する肺症状が、Th2細胞の高められた応答によって媒介される。Th2サイトカインは、この疾患において重要な役割を演じると考えられており(非特許文献30)、特に気道におけるNK表現型を備えたTh2細胞(NKT)によって産生されたIL13およびIL4が、げっ歯類における喘息のモデルで示されている(非特許文献31)。喘息気道の肉眼病理学は、肺高度膨張、平滑筋肥大、網状板厚化、粘膜浮腫、上皮細胞痂皮、繊毛細胞破壊、および粘液腺過分泌を示す。顕微鏡的には、喘息は、気管支組織、気管支分泌物、および粘液中の増加した数の好酸球、好中球、リンパ球、および形質細胞の存在によって特徴付けられる。初期には、活性化されたCD4+T−リンパ球による血流から気道への白血球の補充がある。この活性化されたT−リンパ球はまた、好酸球、肥満細胞、およびリンパ球からの炎症性メディエーターの放出を行う。さらに、Th2細胞は、IL4、IL5、IL9およびIL13を産生する。IL4は、IL13と組み合わさって、IgM抗体からIgE抗体へのスイッチを合図する。
【0005】
アレルゲンによる膜結合IgE分子の架橋は、肥満細胞を脱顆粒させ、ヒスタミン、ロイコトリエン、および気道炎症を永続させるその他のメディエーターを放出する。IL5は、好酸球の補充および活性化を活性化する。活性化された肥満細胞および好酸球はまた、炎症が永続化することを支援するそれらのサイトカインを生成する。肺組織への損傷、それに続く修復をともなう肺における炎症のこれらの繰り返しサイクルは、気道の長期間の構造的変化(「リモデリング」)を生成し得る。
【0006】
中程度の喘息は、現在、毎日吸入されるクロモリンナトリウムまたはネドクロミルのような抗炎症性コルチステロイドまたは肥満細胞インヒビター+必要に応じて(1日あたり3〜4回)吸入されるβ2−アゴニストで処置され、進展する症状またはアレルゲン喘息または運動誘導喘息を軽減する。クロモリンナトリウムおよびネドクロミルは、気管支痙攣および炎症をブロックするが、通常、アレルゲンまたは運動にともなう喘息についてのみ、そして代表的には、若年性喘息についてのみに有効である。吸引されたコルチコステロイドは、炎症、気道反応性亢進、および閉塞を改善し、そして多くの急性の悪化を低減する。しかし、これら影響が目に見えるまで少なくとも1ヶ月、そして顕著な改良が生じるまで1年までを要する。最も頻繁な副作用は、嗄声および口腔真菌感染、すなわち、カンジダ症である。より重篤な副作用が報告されており、例えば、部分的副腎抑制、成長阻害、および骨形成の低減があるが、より高用量の使用にのみともなう。ベクロメタゾン、トリアムシノロン、およびフルニソリドは、おそらく、類似の能力を有している;その一方、ブデソニドおよびフルチカゾンは、より強力でかつより少ない全身的副作用を有すると報告されている。
【0007】
軽度の疾患をもつ患者でさえ、活性化T細胞、肥満細胞、および好酸球での粘膜および上皮の浸潤を含む、気道炎症を示す。T細胞および肥満細胞は、好酸球成長ならびにIgE抗体の成熟および産生を促進するサイトカインを放出し、そして、これらは、次いで、微小血管透過性を増加し、上皮を破壊し、そして神経反射および粘液分泌腺を刺激する。結果は、常に、喘鳴、せき、および呼吸困難によって顕示される、気道反応性亢進、気管支狭窄、および過剰分泌である。
【0008】
伝統的には、喘息は、経口および吸入された気管支拡張薬で処置されている。これらの薬剤は喘息の症状を助けるが、基礎となる炎症にはなにもしない。喘息の病因における炎症の重要性の過去10年間の認識は、コルチコステロイドの増加した使用に至ったが、多くの患者は、制御されない喘息を患い続けている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Wynn、Ann.Rev.Immunol.、21:425(2003))
【非特許文献2】Hershey、J.Allergy Clin.Immunol.、111:677(2003)
【非特許文献3】Punnonenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:3730(1993)
【非特許文献4】Oettgenら、J.Allergy Clin.Immunol.、107:429(2001)
【非特許文献5】Zurawskiら、Immunol.Today、15:19(1994))
【非特許文献6】de Vries、Allergy Clin.Immunol.102:165(1998))
【非特許文献7】de Waal Malefytら、J.Immunol.、151:6370(1993)
【非特許文献8】Chomaratら、Int.Rev.Immunol.、17:1(1998)
【非特許文献9】Horieら、Intem、Med.、36:179(1997)
【非特許文献10】Luttmannら、J.Immunol.157:1678(1996)
【非特許文献11】Popeら、J.Allergy Clin.Immunol.、108:594(2001)
【非特許文献12】Wills−Karp、J.Allergy Clin.Immunol.、107:9(2001)
【非特許文献13】Liら、J.Immunol.、162:2477(1999)
【非特許文献14】Laoukiliら、J.Cli.Invest.、108:1817(2001)
【非特許文献15】Laoukliら、J.Clin.Invest.、108:1817(2001)
【非特許文献16】Zhuら、J.Clin.Invest.、103:779(1999)
【非特許文献17】Grunigら、Science、282:2261(1998))
【非特許文献18】Bochnerら、J.Immunol.、154:799(1995)
【非特許文献19】Rouxら、J.Invest.Dermatol.、103:444(1994))
【非特許文献20】Wills−Karpら、Science、282:2258(1998)
【非特許文献21】Walterら、J.Immunol.167:4668(2001)
【非特許文献22】Corry、Curr.Opin.Immunol.、11:610(1999)
【非特許文献23】Wills−Karp.ら、Respir.Res.1:19(2000)
【非特許文献24】Vercelliら、Cur.Opin.Allergy Clin.Immunol.、2:389(2002)
【非特許文献25】Heら、Genes Immunol.、4:385(2003)
【非特許文献26】Arimaら、J.Allergy Clin.Immunol.、109:980(2003)
【非特許文献27】Liuら、J.Clin.Allergy Immunol.、112:382(2003)
【非特許文献28】Wills−Karpら、Sci.、282:2258(1998)
【非特許文献29】Busseら:Allergy:Principles and Practice、Middleston編、1173(1998)
【非特許文献30】Larcheら、J.Allergy Clin.Immunol.、111:450(2003)
【非特許文献31】Akbariら、Nature Med.、9:582(2003)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒトにおける炎症性疾患、特に喘息を処置する重要性のために、より少ない副作用を有する新たな生物活性化合物が継続して求められている。喘息の気道に長期間投与されるとき活性なままである、IL13の強力および特異的なインヒビターの開発は、喘息、ならびにその他のIL13−媒介疾患およびIgE媒介疾患における処置に対する新規なアプローチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、グリコシル化ヒトIL13および非グリコシル化ヒトIL13の両方に特異的かつ高親和性で結合し;マウスIL13を結合せず、そして約1:2のモル比(MAb:IL13)でヒトLI13活性を中和する抗体に、少なくとも部分的に関連する。本発明にまた含まれるのは、上記抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域由来の抗原結合性領域を含む抗体である。本発明の抗体はモノクローナルであり得、そしてモノクローナル抗体は、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体であり得る。
【0012】
これらの抗体の例は、228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43である。これら抗体を産生するハイブリドーマは、2003年11月20日に、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas、VA20110−2209に、それぞれ、受託番号PTA−5657、PTA−5656、PTA−5654、およびPTA−5655の下で寄託された。
【0013】
本発明は、配列番号3に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号4に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する抗体;配列番号5に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号6に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する抗体;および配列番号7に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号8に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する抗体を含む。本発明はまた、組換え抗体分子、またはそのIL13結合性フラグメントを含み、これらは、マウス抗−IL13抗体由来の位置31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)および95〜102(CDR3)(Kabat番号付け)にある非ヒトCDRを含み、ここで、位置27〜30が、アミノ酸Gly26、Phe27、Ser28、Leu29、Asn30(配列番号18)を有する少なくとも1つの抗体重鎖、またはそのIL13結合性フラグメント;およびマウス抗−IL13抗体由来の位置24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)および89〜97(CDR3)にある非ヒトCDRを含む少なくとも1つの抗体軽鎖、またはそのIL13結合性フラグメント、ならびにヒトモノクローナル抗体からのフレームワーク領域を含む。
【0014】
本発明は、本発明の抗体のヒト抗原結合性抗体フラグメントを含み、このフラグメントとしては、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、VLまたはVHドメインのいずれかを含む単一ドメイン抗体を含む。scFvの1つの例は、図21中に描写され、配列番号152の配列を有する。
【0015】
本発明は、モノクローナル抗体228B/C−1のヒト化配列を含む。これらのヒト化組換え抗体分子は、式:FRL1−CDRL1−FRL2−CDRL2−FRL3−CDRL3−FRL4を有するアミノ酸配列を含む可変重鎖領域を含み、ここで、FRL1が配列番号20〜25のいずれか1つからなり;CDRL1が配列番号99〜103のいずれか1つからなり;FRL2が配列番号29からなり;CDRL2が配列番号104〜114のいずれか1つからなり;FRL3が配列番号30〜56のいずれか1つからなり;CDRL3が配列番号115〜116のいずれか1つからなり;そしてFRL4が配列番号57〜59からなり;そして式:FRH1−CDRH1−FRH2−CDRH2−FRH3−CDRH3−FRH4を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域を含み、ここで、FRH1が配列番号60〜66のいずれか1つからなり;CDRH1が配列番号117〜122のいずれか1つからなり;FRH2が配列番号67〜75のいずれか1つからなり;CDRH2が配列番号123〜134のいずれか1つからなり;FRH3が配列番号76〜90のいずれか1つからなり;CDRH3が配列番号135〜141のいずれか1つからなり;そしてFRH4が配列番号91〜92からなる。この可変重鎖領域は、定常領域の少なくともCH1ドメインまたは定常領域のCH1、CH2およびCH3ドメインをさらに含み得る。この重鎖定常領域は、IgG抗体を含み得、ここで、このIgG抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体である。
【0016】
本発明はまた、組換え抗体分子を含み得、ここで、この可変軽鎖は、配列番号3、5、7、93、95、97、142、144、および150のいずれか1つから選択され、そして可変重鎖は、配列番号4、6、8、94、95、96、98、143、145、146、147、148および149のいずれか1つから選択される。1つの特定の抗体は、配列番号142に提示される配列を有する可変軽鎖、および配列番号143に提示される配列を有する可変重鎖を含む。
【0017】
本発明は、モノクローナル抗体228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43を産生するハイブリドーマ細胞株を含む。本発明は、モノクローナル抗体228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43をコードする核酸、これら抗体またはその鎖をコードする核酸を含む細胞株、およびこれら抗体またはその鎖をコードする核酸を含むベクターを含む。
【0018】
本発明はまた、228B/C−1と同じエピトープを結合する抗体を含む。例示のポリペプチドは、配列番号1もしくはその改変体のすべてまたは一部分、またはアミノ酸13がグルタミン酸からリジンに変更されている配列番号2を含む。本発明はまた、本発明の抗体によって認識されるエピトープに関する。エピトープペプチドは、ESLINVSG(配列番号18)またはYCAALESLINVS(配列番号19)を本質的に含むか、またはそれらからなるペプチドを含む。
【0019】
本発明は、請求項に記載の本発明による抗体を、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤、または安定化剤と組み合わせて含む組成物を含む。
【0020】
本発明は、喘息症状を患う被験体を処置するための方法を含み、この喘息症状を低減するために有効な量の請求項に記載の本発明の抗体を、被験体(例えば、その必要のある被験体)に投与する工程を包含し、ここで、この抗体は、患者におけるIL13の活性を下方制御し得、この患者における気管支の応答性亢進を低減し、そして/または上記被験体の肺における好酸球増加症を低減する。本発明はまた、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の感染を阻害する方法を含み、この方法は、阻害量の請求項に記載の本発明の抗体を、被験体(例えば、その必要がある被験体)に投与する工程を包含する。
【0021】
本発明の抗体は、静脈内経路、腹腔内経路、吸入経路、筋肉内経路、皮下経路および経口経路を含む1つ以上の経路によって投与され得る。本発明は、患者に、治療的に有効な量の請求項に記載の抗体を送達する吸入デバイスを含む。
【0022】
本発明は、被験体、例えば、アレルギー性疾患を患う被験体において、インターロイキン−13タンパク質を検出するための方法を含み、この方法は、例えば、請求項に記載の抗体をサンプルに接触させる工程;および免疫反応の発生によりインターロイキン−13を検出する工程を包含する。被験体におけるIL13の過剰発現を診断するための方法もまた記載され、この方法は、(a)患者からサンプルを得る工程;(b)このサンプルを、IL13との免疫反応を可能にし得る条件下で、請求項に記載の抗体とを組み合わせる工程;および(c)IL13が、IL13の通常レベルの発現に対して過剰発現されるか否かを決定する工程を包含する。
【0023】
本発明は、請求項に記載の発明の抗体を産生する方法を含み、この方法は、:a)グリコシル化IL13部分および免疫原性部分を含む免疫原性化合物を産生する工程;b)この免疫原性化合物を含む注射可能な溶液をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)およびアジュバント中に調製する工程;c)静脈内注射および腹腔内注射の組み合わせによって、上記注射可能な溶液でマウスを免疫化する工程、d)上記免疫化マウスからの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合することによりハイブリドーマを産生する工程;e)請求項1に記載の抗体の特徴を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;およびf)この抗体を単離する工程を包含する。
【0024】
本発明は、患者においてIgE抗体産生を阻害するための方法を含み、この方法は、患者にIgE抗体産生を阻害する有効量の請求項に記載の発明による抗体を投与する工程を包含する。このIgE抗体産生の阻害は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚炎、およびアナフィラキシーを防ぎ得、そしてまた、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、じんま疹、およびアトピー性皮膚炎を処置し得る。
【0025】
本発明は、患者におけるIL13媒介障害を処置する方法を含み、この方法は、患者に、有効量の請求項に記載の発明による抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与する工程を包含し、ここで、この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、IL13のそのレセプターへの結合を阻害し、そして上記インターロイキンの上記レセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する。
【0026】
本発明は、患者においてIgE媒介障害を処置する方法を含み、この方法は、患者に有効量の請求項に記載の発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与する工程を包含し、ここで、この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、IL13のそのレセプターへの結合を阻害し、そして上記インターロイキンの上記レセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する。
【0027】
本発明は、哺乳動物において喘息の重篤度を低減する方法を含み、この方法は、哺乳動物に、以下の特徴の少なくとも1つを有する抗IL13モノクローナル抗体;約1×10と約1×1012Mとの間のKでIL13を結合する能力;インターロイキンIL13のIL13レセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する能力;およびこの抗体のマウスIL13を結合しない能力;の治療的に有効な量を投与する工程を包含する。
【0028】
本発明によって企図されるIL13によって媒介される疾患および/または症状としては、アレルギー性喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、じんま疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染、ブドウ膜炎、強皮症、または骨粗鬆症が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明はまた、以下を提供する。
(項目1)
グリコシル化ヒトIL13および非グリコシル化ヒトIL13の両方に特異的かつ高親和性で結合し、マウスIL13を結合せず、そして約1:2のモル比(MAb:IL13)でヒトLI13活性を中和する、抗体またはその抗原結合性フラグメント。
(項目2)
上記抗体が228B/Cであり、そしてPTA−5657で指定されるハイブリドーマによって産生される、項目1に記載の抗体。
(項目3)
項目2に記載の抗体と同じエピトープに結合する抗体。
(項目4)
上記抗体が228A−4であり、そしてPTA−5656で指定されるハイブリドーマによって産生される、項目1に記載の抗体。
(項目5)
上記抗体が227−26であり、そしてPTA−5654で指定されるハイブリドーマによって産生される、項目1に記載の抗体。
(項目6)
上記抗体が227−43であり、そしてPTA−5655で指定されるハイブリドーマによって産生される、項目1に記載の抗体。
(項目7)
抗体であって、項目1に記載の抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域由来の抗原結合性領域を含む、抗体。
(項目8)
上記抗体が配列番号3に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号4に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する、項目7に記載の抗体。
(項目9)
上記抗体が配列番号5に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号6に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する、項目7に記載の抗体。
(項目10)
上記抗体が配列番号7に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVL配列、および配列番号8に提示される抗体に少なくとも95%相同であるVH配列を有する、項目7に記載の抗体。
(項目11)
228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43からなり、そしてそれぞれATTC寄託番号PTA−5657、PTA−5656、PTA−5654、およびPTA−5655から指定される群から選択されるモノクローナル抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株。
(項目12)
項目1に記載の抗体をコードする核酸を含む、細胞株。
(項目13)
項目1に記載の抗体をコードする核酸を含む、ベクター。
(項目14)
上記抗体が、モノクローナル抗体である、項目1の抗体。
(項目15)
上記モノクローナル抗体が、ヒト抗体、キメラ抗体、またはヒト化抗体である、項目14の抗体。
(項目16)
項目1に記載の抗体、および生理学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤、または安定化剤を含む、組成物。
(項目17)
式:FRL1−CDRL1−FRL2−CDRL2−FRL3−CDRL3−FRL4を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域であって、ここで、FRL1が配列番号20〜25のいずれか1つからなり;CDRL1が配列番号99〜103のいずれか1つからなり;FRL2が配列番号29からなり;CDRL2が配列番号104〜114のいずれか1つからなり;FRL3が配列番号30〜56のいずれか1つからなり;CDRL3が配列番号115〜116のいずれか1つからなり;そしてFRL4が配列番号57〜59からなる、可変軽鎖領域。
(項目18)
配列番号3、5、7、93、95、97、142、144、および150のいずれか1つを含む、可変軽鎖領域。
(項目19)
定常領域をさらに含む、項目17に記載の可変軽鎖領域。
(項目20)
定常領域をさらに含む、項目18に記載の可変軽鎖領域。
(項目21)
式:FRH1−CDRH1−FRH2−CDRH2−FRH3−CDRH3−FRH4を有するアミノ酸配列を含む可変軽鎖領域であって、ここで、FRH1が配列番号60〜66のいずれか1つからなり;CDRH1が配列番号117〜122のいずれか1つからなり;FRH2が配列番号67〜75のいずれか1つからなり;CDRH2が配列番号123〜134のいずれか1つからなり;FRH3が配列番号76〜90のいずれか1つからなり;CDRH3が配列番号135〜141のいずれか1つからなり;そしてFRL4が配列番号91〜92からなる、可変重鎖領域。
(項目22)
配列番号4、6、8、94、96、98、143、145、146、147、148および149のいずれか1つを含む、可変重鎖領域。
(項目23)
定常領域の少なくともCH1ドメインをさらに含む、項目21に記載の可変重鎖領域。
(項目24)
定常領域のCH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインをさらに含む、項目23に記載の可変重鎖領域。
(項目25)
上記定常領域が、IgG抗体由来である、項目24に記載の可変重鎖領域。
(項目26)
上記IgG抗体が、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体である、項目25に記載の可変重鎖領域。
(項目27)
定常領域の少なくともCH1ドメインをさらに含む、項目22に記載の可変重鎖領域。
(項目28)
項目17の可変軽鎖領域を含む抗体またはその抗原結合性フラグルメントであって、ここで、その抗体がIL13に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性フラグメント。(項目29)
項目21の可変重鎖領域を含む抗体またはその抗原結合性フラグルメントであって、ここで、その抗体がIL13に特異的に結合する、抗体またはその抗原結合性フラグメント。(項目30)
項目21に記載の重鎖領域を含む、項目28に記載の抗体。
(項目31)
配列番号142に提示されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域、および配列番号143に提示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域を含む、項目30に記載の抗体。
(項目32)
配列番号150に提示されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域、および配列番号151に提示されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域を含む、項目30に記載の抗体。
(項目33)
上記抗体が、配列番号152に提示される配列を有する単鎖抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目34)
上記抗体が、単一ドメイン抗体である、項目1に記載の抗体。
(項目35)
上記抗体が、抗原結合性フラグメントである、項目1に記載の抗体。
(項目36)
上記抗原結合性フクラグメントが、Fabである、項目35に記載の抗体。
(項目37)
喘息症状を患う被験体を処置するための方法であって、その喘息症状を低減するために有効な量の項目1に記載の抗体を投与する工程を包含する、方法。
(項目38)
上記抗体が、上記患者におけるIL13の活性を下方制御する、項目37に記載の方法。(項目39)
上記抗体が、上記患者における気管支の応答性亢進を低減する、項目38に記載の方法。(項目40)
上記抗体が、上記被験体の肺における好酸球増加症を低減する、項目37に記載の方法。(項目41)
上記抗体が、静脈内、腹腔内、吸入、筋肉内、皮下および経口からなる群から選択される1つ以上の経路によって投与される、項目37に記載の方法。
(項目42)
上記抗体が、吸入によって投与される、項目41に記載の方法。
(項目43)
患者に、治療的に有効な量の項目1に記載の抗体を送達する吸入デバイス。
(項目44)
サンプル中のインターロイキン−13タンパク質を検出するための方法であって:項目30に記載の抗体をサンプルに接触させる工程;および免疫反応の発生によりインターロイキン−13を検出する工程を包含する、方法。
(項目45)
上記サンプルが、患者から収集される、項目44に記載の方法。
(項目46)
患者におけるIL13の過剰発現を診断するための方法であって:
(a)患者からサンプルを得る工程;(b)IL13との免疫反応を可能にし得る条件下で、そのサンプルと、項目1に記載の抗体とを組み合わせる工程;および(c)IL13が、IL13の通常レベルの発現に対して過剰発現されるか否かを決定する工程を包含する、方法。
(項目47)
項目1に記載の抗体を産生する方法であって:a)グリコシル化IL13部分および免疫原性部分を含む免疫原性化合物を産生する工程;b)その免疫原性化合物を含む注射可能な溶液をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)およびアジュバント中に調製する工程;c)静脈内注射および腹腔内注射の組み合わせによって、その注射可能な溶液でマウスを免疫化する工程、d)その免疫化マウスからの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合することによりハイブリドーマを産生する工程;e)項目1に記載の抗体の特徴を有する抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程;およびf)その抗体を単離する工程、を包含する、方法。(項目48)
組換え抗体分子、またはそのIL13結合性フラグメントであって:マウス抗−IL13抗体由来の位置31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)および95〜102(CDR3)(Kabat番号付け)にある非ヒトCDRを含み、ここで、位置27〜30が、アミノ酸Gly26、Phe27、Ser28、Leu29、Asn30を有する少なくとも1つの抗体重鎖、またはそのIL13結合性フラグメント;およびマウス抗−IL13抗体由来の位置24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)および89〜97(CDR3)にある非ヒトCDRを含む少なくとも1つの抗体軽鎖、またはそのIL13結合性フラグメント、ならびにモノクローナル抗体由来のフレームワーク領域を含む、組換え抗体分子、またはそのIL13結合性フラグメント。
(項目49)
項目30の抗体をコードするDNA配列。
(項目50)
項目49に記載のDNA配列を有するベクター。
(項目51)
項目50に記載のベクターを含む宿主細胞。
(項目52)
患者においてIgE抗体産生を阻害するための方法であって、その患者にIgE抗体産生を阻害する有効量の項目1に記載の抗体を投与する工程、を包含する、方法。
(項目53)
上記IgE抗体産生の阻害が、気管支喘息を予防すること、アレルギー性鼻炎を予防すること、アレルギー性皮膚炎を予防すること、気管支喘息を処置すること、アレルギー性鼻炎を処置すること、じんま疹を処置すること、アナフィラキシーを予防すること、またはアトピー性皮膚炎を処置することを意図される、項目52に記載の方法。
(項目54)
患者におけるIL13媒介障害を処置する方法であって、その患者に、有効量の項目1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与する工程を包含し、ここで、その抗体またはその抗原結合性フラグメントが、IL13のそのレセプターへの結合を阻害し、そしてそのインターロイキンのそのレセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する、方法。
(項目55)
上記障害が、アレルギー性喘息、非アレルギー性(内因性)喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、湿疹、じんま疹、食物アレルギー、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、RSV感染、ブドウ膜炎、強皮症、または骨粗鬆症である、項目54に記載の方法。
(項目56)
患者においてIgE媒介障害を処置する方法であって、その患者に有効量の項目1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメントを投与する工程を包含し、ここで、その抗体またはその抗原結合性フラグメントが、IL13のそのレセプターへの結合を阻害し、そしてそのインターロイキンのそのレセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する、方法。
(項目57)
哺乳動物において喘息の重篤度を低減する方法であって、その哺乳動物に、以下の特徴の少なくとも1つを有する抗IL13モノクローナル抗体;約1×10と約1×1012Mとの間のKでヒトIL13を結合する能力;インターロイキンIL13のIL13レセプターへの結合にともなう1つ以上の機能を阻害する能力;およびその抗体のマウスIL13を結合しない能力;の治療的に有効な量を投与する工程を包含する、方法。
(項目58)
上記抗IL13抗体が、吸入、全身的、ボーラス注射、または連続注入によって投与される、項目52に記載の方法。
(項目59)
上記抗IL13抗体が、吸入、全身的、ボーラス注射、または連続注入によって投与される、項目54に記載の方法。
(項目60)
アミノ酸配列ESLINVSG(配列番号18)から本質的になるペプチド。
(項目61)
アミノ酸配列YCAALESLINVS(配列番号19)から本質的になるペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ヒトIL13への抗IL13モノクローナル抗体の結合を示す。
【図2】図2は、抗IL13モノクローナル抗体変異体IL13−Fcの結合を示す。
【図3】図3は、MAb JES10−5A2(Pharmingen)による、ヒトIL13へのMAb 228B/C−1結合の阻害はないことを示す。
【図4】図4は、ホジキンリンパ腫L−1236細胞の増殖に対する抗IL13モノクローナル抗体の影響を示す。
【図5】図5は、ヒト単球におけるCD14発現のIL13誘導抑制に対する抗IL13モノクローナル抗体の影響を示す。
【図6】図6は、ヒト単球におけるCD23発現のIL13誘導上方調節に対する抗IL13モノクローナル抗体の影響を示す。
【図7】図7は、THP−1細胞におけるSTAT6リン酸化に対するに対する抗IL13モノクローナル抗体の影響を示す。
【図8】図8は、モノクローナル抗体228B/C−1のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列を示す。
【図9】図9は、モノクローナル抗体228A−4のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列を示す。
【図10】図10は、モノクローナル抗体227−26のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列を示す。
【図11−1】図11Aは、モノクローナル抗体228B/C−1のヒト化のための軽鎖可変領域の配列を示す。クローンB〜Rは、VKおよびマウスVHのためのヒトテンプレート2で試験されたクローンを表す。HT2−NEWおよびHT2−DP27クローンは、VKおよびVH両方についてヒトフレームワークで構築された。
【図11−2】図11Cは、モノクローナル抗体228B/C−1のヒト化のための軽鎖可変領域の配列を示す。
【図11−3】図11Bは、モノクローナル抗体228B/C−1のヒト化のための軽鎖可変領域の配列を示す。
【図11−4】図11Dは、モノクローナル抗体228B/C−1のヒト化のための軽鎖可変領域の配列を示す。
【図12−1】図12Aは、図11中のクローンの対応する重鎖配列を示す。
【図12−2】図12Cは、図11中のクローンの対応する重鎖配列を示す。
【図12−3】図12Bは、図11中のクローンの対応する重鎖配列を示す。
【図12−4】図12Dは、図11中のクローンの対応する重鎖配列を示す。
【図13−A】図13Aは、コンビナトリアルヒト化候補に対するELISAプロフィールを示す。
【図13−B】図13Bは、コンビナトリアルヒト化候補に対するELISAプロフィールを示す。
【図13−C】図13Cは、コンビナトリアルヒト化候補に対するELISAプロフィールを示す。
【図13−D】図13Dは、コンビナトリアルヒト化候補に対するELISAプロフィールを示す。
【図14−A】図14Aは、89 Vk/276Gに対するELISAプロフィールを示す。
【図14−B】図14Bは、構築物115 Vk/73VhFLに対するELISA結果を示す。
【図15】図15は、コンビナトリアルライブラリー候補の配列を示す。
【図16】図16は、IL−13への結合についてキメラ候補(228 B/C #3)と比較して示される、アッセイされた2つの候補(CL5およびCL−13)についての競合プロフィールを示す。無関係なFabは51であり、これは、競合する能力を示さない。
【図17】図17は、3つの親和性成熟候補の配列を示す。
【図18】図18は、ILタンパク質配列のアラインメントを示す。
【図19】図19は、Mab228B/C−1の結合性エピトープを示す。
【図20】図20は、CDR改変体とそれらの個々の配列番号を示す。
【図21−A】図21Aは、選択候補組換え抗体について可変軽鎖配列および可変重鎖配列を示す。
【図21−B】図21Bは、選択候補組換え抗体について可変軽鎖配列および可変重鎖配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
本発明は、本明細書中に記載される特定の方法、プロトコール、細胞株、ベクター、または試薬に限定されない。なぜなら、それらは変動し得るからである。さらに、本明細書中で用いられる用語法は、特定の実施形態のみを記載する目的のために用いられ、そして本発明の範囲を制限することは意図されない。本明細書および添付の請求項で用いられるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明瞭にそうでないことを指示しなければ、複数の参照を含み、例えば、「宿主細胞」への参照は、複数のこのような宿主細胞を含む。
【0031】
そうでないことが規定されなければ、本明細書中で用いられるすべての技術的用語および科学的用語および任意の頭文字は、本発明の分野の当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと類似または等価な任意の方法および材料が本発明の実施に用いられ得るが、例示の方法、デバイス、および材料が本明細書中に記載される。
【0032】
本明細書で述べられるすべての特許および刊行物は、本発明とともに用いられ得るそれらの中で報告された、タンパク質、酵素、ベクター、宿主細胞および方法を記載かつ開示する目的のために、法律によって許容される範囲まで参考として本明細書中に援用される。しかし、本明細書中のいかなるものも、本発明が、先行発明によるこのような開示に対して先立つ権利をもたないことの是認として解釈されるべきでない。
【0033】
(免疫原)
組換えIL13を用いてマウスを免疫化し、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成した。組換えIL13は、多くの供給元から市販される(例えば、R&D Systems、Minneapolis、MN、PetproTech、Inc.、NJ、およびSanofi Bio−Industries、Inc.、Tervose、PA.を参照のこと)。あるいは、IL13をコードする遺伝子またはcDNAは、プラスミドまたはその他の発現ベクター中にクローン化され、そして当業者に周知の方法に従って、多くの発現システムのいずれかで発現され得る。IL13およびIL13の核酸配列をクローニングし、そして発現するする方法は周知である(例えば、米国特許第5,652,123号を参照のこと)。遺伝子コードの縮重のため、IL13ポリペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列が産生され得る。可能なコドン選択に基づいて組み合わせを選択することにより、ヌクレオチド配列を改変し得る。これらの組み合わせは、天然に存在するIL13ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に適用されるような標準的なトリプレット遺伝子コードに従ってなされ得、そしてすべてのそのような改変が考慮されるべきである。これらポリペプチドの任意の1つが、IL13に結合する抗体を生成するために動物の免疫化において用いられ得る。
【0034】
この免疫原IL13ポリペプチドは、有益であるとき、融合セグメントに付着されたIL13ポリペプチドを有する融合タンパク質として発現され得る。この融合セグメントは、しばしば、タンパク質精製を支援する。これは、例えば、この融合タンパク質がアフィニティクロマトグラフィーにより単離および精製されることを可能にすることによる。融合タンパク質は、このタンパク質のカルボキシ末端および/またはアミノ末端のいずれかに付着された融合セグメントを含むタンパク質をコードする融合核酸配列で形質転換された組換え細胞を培養することにより産生され得る。融合セグメントとしては、免疫グロブリンFc領域、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、2価金属イオンに結合し得るポリ−ヒスチジンセグメント、およびマルトース結合性タンパク質が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0035】
例示のポリペプチドは、配列番号1またはその改変体のすべてまたは一部分、あるいは、アミノ酸13がXaaである配列番号2を含み、そして野生型(wt)から、例えば、グルタミン酸からリジンに変更され得る。
【0036】
ヒトIL13の変異体形態を含む融合タンパク質を用いて、本発明の抗体を生成した。IL13のこの変異体形態は、このタンパク質の不活性形態を生じる単一変異を含んでいた(Thompsonら、J.Biol.Chem.274:2994(1999))。高親和性をもつ中和抗体を生成するために、この融合タンパク質は、免疫グロブリンFc、詳細にはIgGに融合された変異体IL13を含み、そしてこの組換えタンパク質が自然にグリコシル化されるように哺乳動物細胞中で発現された。この融合タンパク質のFc部分は、鍵となるエピトープを剥き出した立体配座構造を提供し得た。グリコシル化は、このエピトープの免疫原性を増大し得、この特定のエピトープに対する抗体の生成を可能にしている。
【0037】
E.coli中で発現されたIL13ポリペプチドは、グリコシル化を欠き、そして試験された市販され入手可能な抗体は、このタンパク質を用いて生成されていた。本発明者らは、これら抗体(例えば、R&D SystemsおよびPharmingen)を試験し、そしてE.coli中で生成された免疫原で生成された抗体は、本発明の抗体によって結合されたエピトープと交差反応しないことを見出した。
【0038】
(抗体生成)
本発明の抗体は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって生成され得る。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体を含み得る。ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に公知である(Harlowら、Antibodies:a Laboratory Manual、(Cold spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988))、これは、その全体が参考として本明細書中に援用される)。
【0039】
例えば、上記に記載の免疫原は、種々の宿主動物に投与され得、この宿主動物としては、ウサギ、マウス、ラットなどが挙げられるが、これらに限定されない。上記抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導する。この免疫原の投与は、免疫剤、および所望される場合は、アジュバントの1つ以上の注射を必要とし得る。種々のアジュバントが、宿主の種に依存して免疫学的応答を増大するために用いられ得、そして、制限されずに、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのようなミネラルゲル、リゾレシチンのような表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリムペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なヒトアジュバント(例えば、BCG(カルメット−ゲラン杆菌)およびCorynebacterium pavum)が挙げられるが、これらに限定されない。採用され得るアジュバントのさらなる例としては、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコールは、当該技術分野で周知であり、そして選択された動物宿主で免疫応答を惹起する任意の方法によって実施され得る。アジュバントもまた当該分野で周知である。
【0040】
代表的には、免疫原(アジュバントありまたはなし)は、複数の皮下もしくは腹腔内注射、または筋肉内もしくはIVを通じて哺乳動物中に注射される。この免疫原は、IL13ポリペプチド、融合タンパク質またはその改変体を含み得る。ポリペプチドの性質(すなわち、疎水性%、親水性%、安定性、正味の電荷、等電点など)に依存して、免疫化されている哺乳動物中で免疫原性であることが知られるタンパク質にこの免疫原を結合することが有用であり得る。このような結合としては、免疫原および免疫原性タンパク質の両方を、共有結合が形成されるように活性な化学的官能基を誘導体化することによる化学的結合か、または融合タンパク質を基礎にした方法によるか、または当業者に公知のその他の方法のいずれかが挙げられる。このような免疫原性タンパク質の例としては、キーホールリムペットヘモシアニン、卵アルブミン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、大豆トリプシンインヒビター、および混合Tヘルパーペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。種々のアジュバントが、上記のように、免疫学的応答を増大するために用いられ得る。
【0041】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495(1975)および米国特許第4,376,110、Harlowらによる、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold spring Harbor Laboratory Press、第2版、補遣(1988))、Hammerlingらによる、Monoclonal Antiboiies and T−Cell Hybridomas(Elsevier、N.Y.、(1981))に記載のような記載のハイブリドーマ技法、またはその他の当業者に公知の方法を用いて調製され得る。モノクローナル抗体を産生するために採用され得る方法のその他の例としては、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosborら、1983、Immunology Today 4:72;Coleら、1983、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026〜2030)、およびEBVハイブリドーマ技法(Coleら、1985、Monoclonal
Antibodies And Cancer Therapy、Alan R.Liss、Inc.、77〜96頁)が挙げられるが、これらに限定されない。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラス、およびそれらの任意のサブクラスであり得る。本発明のMAbを生成するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養され得る。
【0042】
代表的なハイブリドーマ技法を用いて、マウス、ヒト化マウス、ヒト免疫系をもつマウス、ハムスター、ウサギ、ラクダまたは任意のその他の適切な宿主動物のような宿主は、代表的には免疫原で免疫化され、IL13に特異的に結合する抗体を生成、または生成し得るリンパ球を惹起する。あるいは、リンパ球は、インビトロで抗原を用いて免疫化され得る。
【0043】
一般に、抗体産生性ハイブリドーマを作製する際に、ヒト起源の細胞が所望される場合、末梢血リンパ球(「PBL」)用いられるか、または非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞の用いられるかのいずれかである。これらリンパ球は、次いで、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を用いて不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic
Press、(1986)、59〜103頁)。不死化細胞は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシまたはヒト起源の骨髄腫細胞である。代表的には、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が採用される。これらハイブリドーマ細胞は、好ましくは、非融合の不死化細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含む適切な培養培地中で培養され得る。例えば、親細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、このハイブリドーマのための培養培地は、代表的には、HGPRT欠損細胞の成長を防ぐ物質、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(「HAT培地」)。
【0044】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生性細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、そしてHAT培地のような培地に感受性である細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、マウス骨髄腫株であり、これは、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.およびAmerican Type Culture Collection、Manassas、Va.から得られ得る。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生のために用いられ得る(Kozbor、J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、Marcel Dekker、Inc.、New York、(1987)51〜63頁)。
【0045】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、次いで、IL13に対して惹起されたモノクローナル抗体の存在についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、例えば、免疫沈降により、またはラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイにより決定される。このような技法は、当該技術分野で公知であり、そして当業者の技術である。モノクローナル抗体のIL13に対する結合親和性は、例えば、Scatchard分析(Munsonら、Anal.Biochem.、107:220(1980))によって決定され得る。
【0046】
所望のハイブリドーマ細胞が識別された後、これらクローンは、限定希釈手順によってサブクローン化され、そして標準的な方法によって増殖される(Goding、上述)。この目的のための適切な培養培地としては、例えば、ダルベッコの改変イーグル培地およびRPMI−1640が挙げられる。これらサブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロースヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地から単離または精製され得る。
【0047】
モノクローナル抗体の産生のために当該分野には種々の方法が存在し、そしてそれ故、本発明は、それらの唯一のハイブリドーマの産生に限定されない。例えば、モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に記載のような組換えDNA法によって作製され得る。この文脈では、用語「モノクローナル抗体」は、単一の真核生物、ファージまたは原核クローン由来の抗体をいう。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来手順(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖、またはヒト、ヒト化、もしくはその他の供給源からのそのような鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)を用いて容易に単離かつ配列決定され得る。本発明のハイブリトーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。一旦単離されると、このDNAは、発現ベクター中に配置され得、これは、次いで、そうでなければ免疫グロブリンを産生しない、NS0細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質転換され、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。このDNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrisonら、上述)、または免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部分を共有結合することにより改変され得る。このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインを置換し得るか、または本発明の抗体の抗原結合性部位の可変ドメインを置換し得、キメラ2価抗体を生成する。
【0048】
上記抗体は一価抗体であり得る。一価抗体を調製するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および改変重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、一般に、重鎖架橋を防ぐようにFc領域中の任意の点で先欠けされ得る。あるいは、関係するシステイン残基は、別のアミノ酸残基で置換されるか、または架橋を防ぐように欠失される。
【0049】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技法によって生成され得る。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)フラグメントは、(Fabフラグメントを産生するための)パパインまたは(F(ab’)フラグメントを産生するための)ペプシンのような酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって産生され得る。F(ab’)フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
【0050】
ヒトにおける抗体のインビボ使用およびインビトロ検出アッセイを含むいくつかの使用のためには、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を用いることが好適であり得る。キメラ抗体は、抗体の異なる部分が、マウスモノクローナル抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体のような、異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を産生するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Morrison、Science 229:1202(1985);Oiら、BioTecniques 4:214(1986);Gilliesら、(1989)J.Immunol.Methods 125:191〜202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816397号を参照のこと。これらは、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0051】
ヒト化抗体は、非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子からのフレームワーク(FR)を有する所望の抗原を結合する非ヒト種中で生成される抗体分子である。しばしば、ヒトフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、抗原結合性を改変、好ましくは改善するためにCDRドナー抗体から対応する残基で置換される。これらのフレームワーク置換基は、当該技術分野で周知の方法により同定され得、例えば、抗原結合のために重要なフレームワーク残基を同定するためにCDRとフレームワーク残基との相互作用をモデリングすること、および特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較による。(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature 332:323(1988)を参照のこと。これらは、それらの全体が参考として本明細書中に援用される)。抗体は、当該技術分野で公知の種々の技法を用いてヒト化され得、この技法としては、例えば、CDRグラフト化(EP 239,400;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;同第5,585,089号)、被膜(veneering)または表面付け替え(resurfacing)(EP 592,106;EP 519,596;Padlan、Molecular Immunlogy 28(4/5):489〜498(1991);Studnickaら、Protein Engineering 7(6):805〜814(1994);Roguskaら、PNAS 91:969〜973(1994))、および鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)が挙げられる。
【0052】
一般に、ヒト化抗体は、それに、非ヒトである供給源からその抗体へ導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「輸入」残基と称され、これは、代表的には、「輸入」可変領域からとられる。ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法に従って(Jonesら、Nature、321:522〜525(1986);Reichmannら、Nature、332:323〜327(1988);Verhoeyenら、Science、239:1534〜1536(1988))、ヒト抗体の対応する配列にげっ歯類CDRまたはCDR配列を置換することにより実施され得る。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、ここで、インタクトより実質的に少ないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対応する配列によって置換される。実際、ヒト化抗体は、代表的には、いくつかのCDR残基および可能ないくつかのFR残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位から置換されているヒト抗体である。
【0053】
完全にヒト抗体が、ヒト患者の治療的処置のために特に所望される。ヒト抗体は、当該技術分野で公知の種々の方法によって作製され得、これには、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いる上記に記載のファージディスプレイ方法が含まれる。米国特許第4,444,887号および同第4,716,111号;およびPCT公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741;これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される。ColeらおよびBoerderらの技法もまたヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Riss、(1985);およびBoenerら、J.Immunol.、147(1):86〜95、(1991))。
【0054】
ヒト抗体はまた、機能的な内因性免疫グロブリンを発現することはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現し得るトランスジェニックマウスを用いて産生され得る。例えば、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、マウス胚性幹細胞中にランダムに、または相同的組換えにより導入され得る。あるいは、ヒト可変領域、定常領域、および多様性領域は、ヒト重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子に加え、マウス胚性幹細胞中に導入され得る。マウス重鎖免疫グロブリン遺伝子および軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同的組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別個に、または同時に非機能的にされ得る。特に、JH領域の同型接合的な欠失は、内因性の抗体産生を防ぐ。これら改変された胚性幹細胞は増殖され、そして胚盤胞中にマイクロインジェクトされ、キメラマウスを生成する。このキメラマウスは、次いで、繁殖されてヒト抗体を発現する同型接合型子孫を生成する。このトランスジェニックマウスは、通常の様式で、選択された抗原、例えば、本発明のポリペプチドのすべてまたは一部で免疫化される。この抗原に対して惹起されたモノクローナル抗体は、免疫化されたトランスジェニックマウスから、従来のハイブリドーマ技術を用いて得られ得る。このトランスジェニックマウスによって宿されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化の間に再配列し、そして次にクラススイッチングおよび体細胞変異を受ける。従って、このような技法を用いて、治療的に有用なIgG、IgA、IgMおよびIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技法の概説には、LonbergおよびHuszar、Int.Rev.Immunol.13:65〜93(1995)を参照のこと。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのこの技法、およびこのような抗体を産生するためのプロトコールの詳細な論議には、例えば、PCT公開公報WO98/24893;WO92/01047;WO96/34096;WO96/33735;欧州特許第0 598 877号;米国特許第5,413,923号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,569,825号;同第5,661,016号;同第5,545,806号;同第5,814,318号;同第5,885,793号;同第5,916,771号;同第5,939,598号を参照のこと。これらは、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。さらに、Abgenix、Inc.(Freemont、Calif.)、Genpharm(San Jose、Calif.)、およびMedarex、Inc.(Princeton、N.J.)のような会社か、上記に記載の技法と類似の技法を用いて選択された抗原に対して惹起されたヒト抗体を提供することに従事し得る。
【0055】
ヒトMAbもまた、ヒト末梢血白血球、脾細胞または骨髄が移植されたマウスを免疫化することにより作製され得る(例えば、XTLのTrioma技法)。選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体は、「案内された選択(guided selection)」と称される技法を用いて生成され得る。このアプローチでは、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体が、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択を案内するために用いられる。(Jesperら、Bio/technology 12:899〜903(1988))。
【0056】
さらに、本発明のポリペプチドに対する抗体は、次に、当業者に周知の技法(例えば、Greenspan&Bona、FASEB J.7(5):437〜444;(1989)およびNissioff、J.Immunol.147(8):2429〜2438(1991))を用いて、本発明のポペプチドを「模倣する」抗イディオタイプ抗体を生成するために利用され得る。例えば、本発明のポリペプチドに結合し、そして本発明のポリペプチドのマルチマー化および/またはリガンドへの結合を競争的に阻害する抗体は、ポリペプチドマルチマー化および/または結合ドメインを「模倣」し、結果として、ポリペプチドおよび/またはリガンドに結合および中和する抗イディオタイプを生成するために用いられ得る。このような中和性抗イディオタイプまたはこのような抗イディオタイプのFabフラグメントは、ポリペプチドリガンドを中和するための治療レジメンで用いられ得る。例えば、このような抗イディオタイプ抗体は、本発明のポリペプチドを結合するため、および/またはそのリガンド/レセプターを結合するために用いられ得、そしてそれによって、その生物学的活性をブロックする。
【0057】
本発明の抗体は、二重特異性抗体であり得る。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくは、ヒト抗体またはヒト化抗体である。本発明では、これら結合特異性の1つは、IL13に対して惹起され得、他方は、任意のその他の抗原に対してであり得、そして好ましくは、細胞表面タンパク質、レセプター、レセプターサブユニット、組織特異的抗原、ウイルス由来タンパク質、ウイルスにコードされるエンベロープタンパク質、細菌に由来するタンパク質、または細菌表面タンパク質などである。
【0058】
二重特異性抗体を作製する方法は周知である。伝統的には、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づき、ここで、この2つの重鎖は異なる特異性を有している(MilsteinおよびCuello、Nature、305:537〜539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダム組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、潜在的に10の異なる抗体分子の混合物を産生し、そのうちの1つのみが正確な二特異性構造を有する。この正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって達成される。類似の手順は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829中、およびTrauneckerら、EMBO J.、10:3655〜3659(1991)中に開示されている。
【0059】
所望の結合特異性を備えた抗体可変ドメインは(抗体−抗原結合部位)、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合され得る。この融合は、少なくともヒンジの部分、CH2、およびCH3領域を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとである。それは、この融合物の少なくとも1つ中に存在する軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)を有し得る。免疫グロブリン重鎖融合物、および所望であれば免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクター中に挿入され、そして適切な宿主生物中に同時形質転換される。二重特異性抗体を生成するさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Meth.In Enzym.、121:210(1986)を参照のこと。
【0060】
異質結合体抗体もまた、本発明によって企図される。異質結合体抗体は、2つの共有結合によって連結された抗体から構成される。このような抗体は、例えば、所望されない細胞に免疫系細胞を標的付けために提案されている(米国特許第4,676,980号)。これらの抗体は、架橋剤を含む方法のような、合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製されることが企図される。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエステル結合を形成することにより構築され得る。この目的のために適切な試薬の例としては、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、および例えば米国特許第4,676,980号中に開示の試薬が挙げられる。
【0061】
さらに、IL−13に対する単一ドメイン抗体を生成し得る。この技術の例は、Camelidae重鎖Ig由来の抗体についてWO9425591中に記載されており、同様にUS20030130496中では、ファージライブラリーから単一ドメインの完全なヒト抗体の単離が記載されている。
【0062】
(抗IL13抗体の同定)
本発明は、IL13の作用を阻害および中和するアンタゴニストモノクローナル抗体を提供する。特に、本発明の抗体は、IL13に結合し、そしてIL13レセプターα鎖−1(IL13α1)の活性化を阻害する。本発明の抗体としては、228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43と称される抗体が挙げられ、そして228B/C−1のヒト化クローンが開示される。本発明としてはまた、これらの抗体の1つと同じエピトープ、例えば、モノクローナル抗体228B/C−1のエピトープに結合する抗体が挙げられる。
【0063】
候補抗IL13抗体が、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、ウェスタンイムノブロッティング、またはその他の免疫化学的技法によって試験された。個々の抗体を特徴付けるために実施されるアッセイとしては:(1)ホジキンリンパ腫細胞株HDLM−2およびL−1236のIL−13自己分泌増殖の阻害;(2)THP−1細胞におけるIL13で誘導されるSTAT6リン酸化の阻害;および(3)原発性ヒト単球におけるIL13で誘導されるCD14発現の抑制;および(4)原発性ヒト単球におけるIL13で誘導されるCD23発現の上方制御の阻害が挙げられる。実験の詳細は、実施例中に記載されている。
【0064】
本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、一価抗体、二重特異性抗体、異種結合体抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗−Id抗体を含む)、ならびに上記の任意のエピトープ結合性フラグメントを含む。
【0065】
用語「抗体」は、本明細書で用いられるとき、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子をいう。本発明の免疫グロブリン分子は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)または免疫グロブリン分子のサブクラスであり得る。さらに、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(MAb)は、インタクトな分子、およびタンパク質に特異的に結合し得る(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメントのような)抗体フラグメントを含むことを意味する。FabおよびF(ab’)フラグメントは、インタクトな抗体のFcフラグメントを欠き、動物または植物の循環からより迅速にクリアされ、そしてインタクトな抗体に比べより少ない非特異的組織結合を有し得る(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316〜325(1983))。
【0066】
上記抗体は、本発明のヒト抗原結合性抗体フラグメントであり得、このフラグメントとしては、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、単鎖Fvs(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fvs(sdFv)、およびVLドメインまたはVHドメインのいずれかを含む単一ドメイン抗体が挙げられるが、これらに限定されない。単鎖抗体を含む抗原結合性抗体フラグメントは、単独、または以下の全体または部分と組み合わせて可変領域(単数または複数)を含み得る:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン。本発明にまた含まれるものは、可変領域(単数または複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインとの任意の組み合わせを含む抗原結合性フラグメントがある。本発明の抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源であり得る。好ましくは、これら抗体は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、マウスおよびラット)、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリ由来である。
【0067】
本明細書で用いられるとき、「ヒト抗体」は、以下、そして、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号に記載されるように、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を含み、そして1つ以上のヒト免疫グロブリンについてヒト免疫グロブリンライブラリーから、または動物トランスジェニックから単離され、しかも内因性免疫グロブリンを発現しない抗体を含む。
【0068】
本発明の抗体は、一特異性、二特異性、三特異性またはより多くの多特異性であり得る。多特異性抗体は、IL13の異なるエピトープに対して特異的であり得るか、またはIL13および異種ポリペプチドまたは固体支持体材料のような異種エピトープの両方に対して特異的であり得る。例えば、PCT公開WO93/17715;WO92/08802;WO91/00360;WO92/05793;Tuttら、J.Immunol.147:60〜69(1991);米国特許第4,474,893号;同第4,714,681号;同第4,925,648号;同第5,573,920号;同第5,601,819号;Kostelnyら、J.Immunol.148:1547〜1553(1992)を参照のこと。
【0069】
本発明の抗体は、それらが認識または特異的に結合するIL13のエピトープ(単数または複数)またはIL13の部分(単数または複数)に関して記載または特定され得る。エピトープ(単数または複数)またはポリペプチド部分(単数または複数)は、本明細書に記載されるように、例えば、N末端およびC末端位置、連続アミノ酸残基におけるサイズによって特定され得るか、または表および図に列挙される。
【0070】
本発明の抗体はまた、それらの交差反応性に関して記載または特定され得る。(当該技術分野で公知の方法および本明細書中に記載の方法を用いて算出されるとき)IL−13に対して少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%、および少なくとも50%の同一性を有するIL13を結合する抗体はまた、本発明に含まれる。抗IL13抗体もまた、この抗IL−13抗体が惹起されている種以外の種からのIL−13抗体のようなその他のタンパク質に、約10−7Mより少ない、約10−6Mより少ない、または約10−5Mより少ないKで結合し得る。
【0071】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、ヒトIL13のサルホモログおよびその対応するエピトープと交差反応する。特定の実施形態では、上記に記載の交差反応性は、本明細書に開示される、任意の単一の特異的抗原性または免疫原性ポリペプチド、または特異的抗原性および/または免疫原性ポリペプチドの組み合わせ(単数または複数)に関してである。
【0072】
本発明にさらに含まれるものとしては、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でIL13をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを結合する抗体が挙げられる。本発明の抗体はまた、本発明のポリペプチドへのそれらの結合親和性に関して記載または特定され得る。好ましい結合親和性は、10−8〜10−15M、10−8〜10−12M、10−8〜10−10M、10−10〜10−12Mの平衡解離定数またはKをともなうものを含む。本発明はまた、競争的結合を決定するために当該技術分野で公知の任意の方法、例えば、本明細書中に記載される免疫アッセイによって決定されるとき、本発明のエピトープへの抗体の結合を競争的に阻害する抗体を提供する。好ましい実施形態では、この抗体は、上記エピトープへの結合を、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%だけ競争的に阻害する。
【0073】
(ベクターおよび宿主細胞)
別の局面では、本発明は、本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むベクター構築物、およびこのようなベクターを含む宿主細胞を提供する。クローニングおよび形質転換のための標準的な技法が、本発明の抗体を発現する細胞株の調製で用いられ得る。
【0074】
本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターは、周知の技法を用いて調製され得る。これら発現ベクターは、哺乳動物、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子由来のヌクレオチド配列のような適切な転写または翻訳調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列を含む。制御配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、および/または転写および翻訳開始および終結を制御するその他の適切な配列を含む。ヌクレオチド配列は、上記調節配列が適切なポリペプチドに対してヌクレオチド配列に機能的に関するとき、「作動可能に連結」されている。従って、プロモーターヌクレオチド配列は、このプロモーターヌクレオチド配列が適切なヌクレオチド配列の転写を制御する場合、例えば、上記抗体重鎖配列に作動可能に連結されている。
【0075】
さらに、抗体重鎖および/または軽鎖配列と天然には会合していない適切なシグナルペプチドをコードする配列が、発現ベクター中に取り込まれ得る。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のためのヌクレオチド配列が、上記抗体がペリプラズム空間または培地中に分泌されるように、このポリペフチド配列にインフレームに融合され得る。意図される宿主細胞中で機能的であるシグナルペプチドは、上記適切な抗体の細胞外分泌を増大させる。このシグナルペプチドは、細胞からの抗体の分泌に際し、のポリペプチドから切断され得る。このような分泌シグナルの例は周知であり、そして、例えば、米国特許第5698435号、同第5698417号、および同第6204023号に記載のものを含む。
【0076】
本発明において有用な宿主細胞としては、抗体コード配列を含む、組換え細菌ファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されるかまたは抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で感染された植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスのゲノム由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を宿す哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
上記ベクターは、プラスミドベクター、一本鎖もしくは二本鎖ファージベクター、または一本鎖もしくは二本鎖RNAもしくはDNAウイスルベクターであり得る。このようなベクターは、細胞中にDNAおよびRNAを導入するための周知の技法によりポリヌクレオチドとして細胞中に導入され得る。ファージおよびウイルスベクターの場合には、ベクターはまた、感染および形質導入のための周知の技法によってパッケージ化またはカプセル化ウイルスとして細胞中に導入され得る。ウイルスベクターは、レプリコンコンピテントまたはレプリコン欠損であり得る。後者の場合には、ウイルス増殖は、一般に、相補性宿主細胞中でのみ起こる。細胞フリーの翻訳系がまた採用されて、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてタンパク質を産生する。このようなベクターとしては、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列が挙げられ得(例えば、PCT公開WO86/05807;PCT公開WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)、そして抗体の種々のドメインは、完全な重鎖または軽鎖の発現のために、このようなベクター中にクローン化され得る。
【0078】
本発明における宿主細胞として有用な原核生物としては、E.coli、およびB.subtilisのようなグラム陰性生物またはグラム陽性生物が挙げられる。原核宿主細胞における使用のための発現ベクターは、一般に、1つ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。表現型選択マーカー遺伝子は、例えば、抗生物質耐性を与えるかまたは栄養要求性を供給するタンパク質をコードする遺伝子である。原核生物宿主細胞のための有用な発現ベクターの例としては:pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals、Uppsala、Sweden)、pGEM1(Promega Biotec、Madison、Wisconsin.、USA)およびpET(Novagen、Madison、Wisconsin.、USA)およびpRSET(Invitrogen Corporation、Carlsbad、California、USA)シリーズのベクター(Studier、F.W.J.Mol.Biol.219:37(1991);Schoepfer、R.Gene 124:83(1993))のような市販のプラスミド由来のものが挙げられる。組換え原核生物宿主細胞発現ベクターのために一般に用いられるプロモーター配列としては、T7(Rosenbergら、Gene
56、125〜135(1987))、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275:615(1978);およびGoeddelら、Nature 281:544(1979)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl.Acids Res.8:4057(1980))、およびtacプロモーター(Sambrookら、1990、Molecular Cloning、A Labroratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring
Harbor、N.Y.)が挙げられる。
【0079】
本発明に有用な酵母としては、Sacchromyce、Pichia、ActinomycetesおよびKluyveromyces属由来の酵母が挙げられる。酵母ベクターは、しばしば、2μ酵母プラスミド由来の複製配列起点、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択マーカー遺伝子を含む。酵母ベクターのための適切なプロモーター配列としては、とりわけ、メタロチオネイン、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255:2073、(1980))またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼのような他の解糖酵素(Hollandら、Biochem.17:4900(1978))が挙げられる。酵母発現における使用のためのその他の適切なベクターおよびプロモーターは、Fleerら、Gene、107:285−195(1991)にさらに記載されている。酵母および酵母形質転換プロトコールのための他の適切なプロモーターおよびベクターは、当該技術分野で周知である。酵母形質転換プロトコールは周知である。1つのこのようなプロトコールは、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.、75:1929(1978)に記載されている。このHinnenのプロトコールは、選択培地中のTrp形質転換体を選択する。
【0080】
哺乳動物宿主細胞培養系または昆虫細胞培養系もまた、組換え抗体を発現するために採用され得、例えば、異種タンパク質の産生のためのバキュロウイルス系がある。昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が、外来遺伝子を発現するためのベクターとして用いられ得る。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。抗体コード配列は、このウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)中に個々にクローン化され得、そしてAcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御の下に配置される。
【0081】
本発明の抗体の哺乳動物発現のためにNS0またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が用いられ得る。哺乳動物宿主発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウイルスゲノムから切除され得る。一般に用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列は、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サルウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来である。SV40ウイルスゲノム由来のDNA配列は、哺乳動物細胞中の構造遺伝子配列の発現のための他の遺伝的要素を提供するために用いられ得、例えば、SV40複製起点、初期および後期プロモーター、エンハンサー、スプライス、およびポリアデニル化部位がある。ウイルス初期プロモーターおよび後期プロモーターが特に有用である。なぜなら、両者は、ウイルスの複製起点もまた含み得るフラグメントとしてウイルスゲノムから容易に得られ得るからである。哺乳動物宿主細胞における使用のための例示の発現ベクターは、市販されている。
【0082】
(抗体をコードするポリヌクレオチド)
本発明は、本発明の抗体およびそのフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドまたは核酸(例えば、DNA)をさらに提供する。例示のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列の1つ以上を含む抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明はまた、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドに、ストリンジェントまたはより低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。
【0083】
上記ポリヌクレオチドが得られ得、そしてポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、当該技術分野で公知の任意の方法によって決定される。例えば、抗体のヌクレオチドが既知である場合は、この抗体をコードするポリヌクレオチドは、(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242(1994)に記載のように)化学合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ得る。これは、要約すれば、この抗体をコードする配列の部分を含む重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、そして次に連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を包含する。
【0084】
あるいは、抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源からの核酸から生成され得る。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが利用可能ではないが、抗体分子の配列が既知の場合、この配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズする合成プライマーを用いるPCR増幅によるか、または、例えば、上記抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するための特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるクローニングにより、免疫グロブリンをコードする核酸が化学的に合成され得るか、または適切な供給源から得られ得る(例えば、本発明の抗体を発現するように選択されたハイブリドーマ細胞のような、この抗体を発現する任意の組織または細胞から単離された、抗体cDNAライブラリー、または生成されたcDNAライブラリー、または核酸、好ましくはポリARNA)。PCRにより生成された増幅核酸は、次いで、当該分野で周知の任意の方法を用いて複製可能なクローニングベクター中にクローン化され得る。
【0085】
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、この抗体のヌクレオチド配列は、当該技術分野で周知の操作方法、例えば、組換えDNA技法、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990、Molecular Cloning、A Laboratory Mannual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.およびAusubelら編、1998、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NYに記載される技法を参照のこと。これらは、両者ともそれらの全体が本明細書中に参考として援用される)を用いて操作され得、異なるアミノ酸配列を有する抗体を生成し、例えば、アミノ酸置換、欠失、および/または挿入を生成する。
【0086】
特定の実施形態では、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、周知の方法(例えば、配列超可変性の領域を決定するための、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列に対する比較)によってCDRの配列を同定するために検査され得る。慣用の組換えDNA技法を用いて、上述に記載のような非ヒト交代をヒト化するために、1つ以上のCDRがフレームワーク領域内(例えば、ヒトフレームワーク領域中)に挿入され得る。これらフレームワーク領域は、天然に存在するか、またはコンセンサスフレームワーク領域であり得、そして好ましくはヒトフレームワーク領域である(例えば、ヒトフレームワーク領域の列挙については、Chothiaら、J.Mol.Biol.278:457〜479(1988)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせにより生成されるポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドを特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上述で論議されたように、1つ以上のアミノ酸置換が、このフレームワーク領域内に作製され得、そして、好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成するために、鎖内ジスルフィド結合に参加する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために用いられ得る。上記ポリヌクレオチドへの他の改変が、本発明によって包含され、そして当該技術分野の技術である。
【0087】
さらに、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子ともに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライスすることによる「キメラ抗体」産生のために開発された技法(Morrisonoら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851〜855(1984);Neubergerら、Nature 312:604〜608(1984);Takedaら、Nature 314:452〜454(1985))が用いられ得る。上述に記載のように、キメラ抗体は、マウスMAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体(例えば、ヒト化抗体)のような、異なる部分が異なる動物種由来である分子である。
【0088】
あるいは、単鎖抗体の産生のために記載された技法(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423〜42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜5883(1988);およびWardら、Nature 334:544〜54)が、単鎖抗体を産生するために適合され得る。単鎖抗体は、アミノ酸架橋によりFv領域の重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントとを連結することにより形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coli中の機能的Fvフラグメントのアセンブリのための技法もまた用いられ得る(Skerraら、Science 242:1038〜1041(1988))。
【0089】
(抗IL13抗体を産生する方法)
本発明の抗体は、抗体の合成のための当該技術分野で公知の任意の方法、特に化学的合成または好ましくは、組換え発現技法により産生され得る。
【0090】
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、この抗体またはこの抗体のフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築を必要とする。一旦、抗体分子をコードするポリヌクレオチドが得られると、この抗体の産生のためのベクターは、組換えDNA技法によって産生され得る。発現ベクターは、抗体コード配列および適切な転写制御信号および翻訳制御信号を含んで構築される。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成技法、およびインビボ遺伝子組換えが挙げられる。
【0091】
この発現ベクターは、従来技法によって宿主細胞に移入され、そしてトランスフェクトされた細胞は、次いで、従来技法によって培養され、本発明の抗体を産生する。本発明の1つの局面では、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳細に記載されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞中で同時発現され得る。
【0092】
種々の宿主−発現ベクター系が、上記に記載のような本発明の抗体分子を発現するために利用され得る。このような宿主−発現系は、ビヒクル(それによって目的のコード配列が産生され得、そして次に精製される)を提示するが、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされるとき、本発明の抗体分子をインサイチュで発現し得る細胞をまた提示する。E.coliのような細菌細胞および真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現、特に完全な組換え抗体分子の発現のために一般に用いられる。例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要中間初期遺伝子プロモーター要素のようなベクターと組み合わせたチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のような哺乳動物細胞は、抗体のための有効な発現系である(Foeckingら、Gene 45:101(1986);Cockettら、Bio/Technology 8:2(1990))。
【0093】
さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または所望の特定の様式で遺伝子産物を改変および操作する宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のこのような改変(例えば、グリコシル化)および操作(例えば、切断)は、タンパク質の機能のために重要であり得る。異なる宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび改変のための特徴および特定の機構を有している。適切な細胞株または宿主系が、発現される外来タンパク質の正確な改変およびプロセシングを確実にするために選択され得る。この目的のために、一次転写物の適正なプロセシング、グリコシル化、および遺伝子産物のリン酸化の適正なプロセシングのための細胞装置を所有する真核生物宿主細胞が用いられ得る。このような真核生物細胞としては、CHO、COS、293、3T3、または骨髄腫細胞が挙げられるが、それらに限定されない。
【0094】
組換えタンパク質の長期間、高収率産生には、安定発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定に発現する細胞株が操作され得る。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを用いるよりむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるDNA、および選択マーカーで形質転換され得る。外来DNAの導入後、操作された細胞は、栄養培地中で1〜2日間増殖させられ得、そして次に選択培地にスイッチされる。組換えプラスミド中の選択マーカーは、選択への耐性を与え、そして細胞が、それらの染色体中にプラスミドを安定に組み込ませ、そして成長して増殖巣を形成することを可能にし、これが次にクローン化され、そして細胞株に増殖し得る。この方法は、抗体分子を発現する細胞株を操作するために有利に用いられ得る。このような操作された細胞株は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する化合物のスクリーニングおよび評価で特に有用であり得る。
【0095】
多くの選択系が用いられ得、その選択系としては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら、Cell 11:223(1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48:202(1992))、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817(1980))遺伝子(それぞれ、tk、hgprtまたはaprt−細胞で採用され得る)が挙げられるが、これらに限定されない。また、抗代謝産物耐性が、以下の遺伝子について選択の基礎として用いられ得る:メトトレキセートに対する耐性を与えるdhfr(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:357(1980);O’Hareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1527(1981));ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2072(1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を与えるneo(WuおよびWu、Biotherapy 3:87〜95(1991));およびヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro(Santerreら、Gene 30:147(1984))。組換えDNA技法の技術分野で一般に公知の方法が、所望の組換えクローンを選択するために慣用的に適用され得、そしてこのような方法は、例えば、Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression、A Laboratory Mannual、Stockton Press、NY(1990);およびDracopoliら(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley & Sons、NY(1994)、第12および13章;Colberre−Garapinら、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載されており、これらは、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0096】
抗体分子の発現レベルは、ベクター増幅によって増加され得(総説としては、BebbingtonおよびHentschel、「哺乳動物細胞におけるクローン化遺伝子の発現のための遺伝子増幅を基にしたベクターの使用」(DNA Cloning、第3巻、Academic Press、New York、1987)を参照のこと)。抗体を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能であるとき、宿主細胞の培養物中に存在するインヒビターのレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加する。増幅された領域は抗体遺伝子と関連するので、抗体の産生もまた増加する(Crouseら、Mol.Cell.Biol.3:257(1983))。
【0097】
宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター(重鎖由来のポリペプチドをコードする第1のベクター、および軽鎖由来のポリペプチドをコードする第2のベクター)で同時トランスフェクトされ得る。これら2つのベクターは、同一の選択マーカーを含み得、これは、重鎖および軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする。あるいは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードし、そして発現し得る単一のベクターが用いられ得る。このような状況では、軽鎖は、重鎖の前に配置されるべきであり、過剰の毒性遊離重鎖を避ける(Proudfoot、Nature 322:52(1986);Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:2197(1980))。重鎖および軽鎖のためのコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含み得る。
【0098】
一旦、本発明の抗体分子が動物により産生、化学的に合成、または組換えにより発現されると、それは、免疫グロブリン分子の精製のために当該分野で公知の任意の方法(例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特にプロテインA後の特異的抗原に対するアフィニティークロマトグラフィー、およびサイズ排除クロマトグラフィー)、遠心分離、差示的溶解度、またはタンパク質の精製のための任意のその他の標準的な技法)により精製され得る。さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、本明細書中に記載の、またはそうでなければ当該技術分野で公知の異種ポリペプチド配列に融合され得、精製を容易にする。
【0099】
本発明は、ポリペプチドに、組換えにより融合されるかまたは化学的に結合体化された(共有結合、および非共有結合の両方による結合体を含む)抗体を包含する。本発明の融合または複合体化された抗体は、精製における容易さのために用いられ得る(例えば、Harborら、前述、およびPCT公開WO93/21232;EP 439,095;Naramuraら、Immunol.Lett.39:91〜99(1994);米国特許第5,474,981号;Gilliesら、Proc.Natl.Acad.Sci.89:1428〜1432(1992);Fellら、J.Immunol.146:2446〜2452(1991)を参照のこと。これらは、それらの全体が参考として援用される。)。
【0100】
さらに、本発明の抗体またはそのフラグメントは、ペプチドのようなマーカー配列に融合され得、精製を容易にする。好ましい実施形態では、マーカーアミノ酸配列は、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)中に提供されるタグのような、6−ヒスチジンペプチドであり、とりわけ、その多くは市販されている。Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821〜824(1989)に記載れさるように、例えば、6−ヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。精製のために有用な他のペプチドタグとしは、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来のエピトープに対応する「HA」タグ(Wilsonら、Cell 37:767(1984))、および「flag」タグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
(抗IL13抗体のための診断使用)
本発明の抗体は、改変されている、すなわち、抗体への任意のタイプの分子の共有結合による誘導体を含み、この共有結合は、IL13への結合を妨害しない。例えば、制限するのではなく、この抗体誘導体としては、例えば、ビオチン化、HRP、または任意のその他の検出可能成分によって改変された抗体が挙げられる。
【0102】
本発明の抗体は、例えば、制限されずに、IL13を精製または検出するために用いられ得、インビトロおよびインビボ両方の診断方法を含む。例えば、これら抗体は、生物学的サンプル中のIL13のレベルを定性的および定量的に測定するための免疫アッセイにおける用途を有する。例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)(その全体は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0103】
以下により詳細に論議されるように、本発明の抗体は、単独か、またはその他の組成物と組み合わせてのいずれかで用いられ得る。これら抗体は、さらに、N末端またはC末端で異種ポリペプチドに組換えにより融合され得るか、またはポリペフチドまたはその他の組成物に化学的に結合体化され得る(共有結合体および非共有結合体を含む)。例えば、本発明の抗体は、検出アッセイにおける標識として有用な分子に組換えにより融合されるかまたは結合体化され得る。
【0104】
本発明は、診断試薬に結合体化された抗体またはそのフラグメントをさらに包含する。これら抗体は、診断的に、例えば、所定の処置レジメンの効果を測定するために、臨床試験手順の一部としてアレルギー応答の発症または進行をモニターするために用いられ得る。検出は、この抗体を検出可能な物質に連結することにより容易にされ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性物質、種々のポジトロン放射断層撮影を用いるポジトロン放射金属、および非放射活性常磁性金属イオンが挙げられる。この検出可能な物質は、抗体(またはそのフラグメント)に直接的に、または当該技術分野で公知の技法を用いて、(例えば、当該技術分野で公知のリンカーのような)中間体を通じて間接的に、いずれかで連結または結合体化され得る。例えば、本発明による診断薬としての使用のための抗体に結合体化され得る金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウムベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としてはルミノールが挙げられ;生体発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;そして適切な放射活性物質の例としては、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。
【0105】
抗体はまた、固体支持体に結合され得、これらは、標的抗原の免疫アッセイまたは精製のために特に有用である。このような固体支持体としては、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルクロライドまたはポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
IL13に特異的に結合する標識された抗体、ならびにその誘導体およびアナログは、IL13の異常発現および/または活性に関連する疾患、障害、および/または状態を検出、診断またはモニターする目的のために用いられ得る。本発明は、IL13の異常発現の検出を提供し、(a)IL13に特異的な本発明の1つ以上の抗体を用いて、細胞または個体の体液中のIL13の発現をアッセイする工程、および(b)標準的な遺伝子発現と、その遺伝子発現のレベルを比較するし、それによって、標準的な発現レベルと比較されたIL13発現のレベルにおける増加または減少を異常発現の指標とする工程を包含する。
【0107】
抗体は、サンプル(例えば、体液または組織サンプル)中のIL13の存在および/またはレベルを検出するために用いられ得る。この検出法は、上記サンプルをIL13抗体と接触させる工程、およびこのサンプルに結合される抗体の量を測定する工程を包含する。
【0108】
本発明は、障害を診断するための診断アッセイを提供し、(a)本発明の1つ以上の抗体を用いて細胞または個体の体液中のIL13の発現をアッセイする工程、および(b)標準の遺伝子発現と遺伝子発現のレベルを比較し、それによって、この標準的な発現レベルと比較されたアッセイされた遺伝子発現のレベルにおける増加または減少を、特定の障害の指標とする工程を包含する。
【0109】
本発明の抗体は、当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を用いて生物学的サンプル中のタンパク質レベルをアッセイするために用いられ得る(例えば、Jalkanenら、J.Cell.Biol.101:976〜985(1985);Jalkanenら、J.Cell.Biol.105:3087〜3096(1987)を参照のこと)。タンパク質遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体を基礎にした方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)のような免疫アッセイを含む。適切な抗体アッセイ標識は当該技術分野で公知であり、そしてグルコースオキシダーゼのような酵素標識;ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99Tc)のような放射性同位元素;ルミノールのような発光標識;およびフルオレセインおよびローダミンのような蛍光標識、ならびにビオチンが挙げられる。
【0110】
本発明の1つの局面は、動物(好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒト)におけるIL13の異常発現と関連する疾患または障害の検出および診断である。1つの実施形態では、診断は:a)被験体に、IL13に特異的に結合する標識された分子の有効量を投与(例えば、非経口、皮下または腹腔内)する工程;b)投与後にある時間間隔待ち、この標識された分子を、このポリペプチドが発現される被験体中の部位に優先的に濃縮させる(そして非結合標識分子がバックグラウンドレベルまで除去される)工程;c)バックグラウンドレベルを測定する工程;およびd)このバックグラウンドレベルの上の標識分子の検出が、被験体がIL13の異常発現に関連する特定の疾患または障害を有することを示すように、被験体中の標識分子を検出する工程を包含する。バックグラウンドレベルは、種々の方法によって決定され得、この方法は、特定の系について先に決定された標準値に、検出された標識分子の量を比較する工程を包含する。
【0111】
被験体のサイズおよび用いられる造影システムが診断イメージを生成するために必要な造影成分の量を決定することが、当該技術分野で理解される。放射性同位元素成分の場合には、ヒト被験体について、注入される放射活性の量は、通常、約5〜20ミリキューリーの99Tcの範囲である。標識された抗体または抗体フラグメントは、次いで、特異的タンパク質を含む細胞の位置で優先的に蓄積する。インビボ造影は、S.W.Burchielら、「放射標識された抗体およびそれらのフラグメントの免疫薬物同動態学」(Tumor Imaging中の第13章:The Radiochemical Detection of Cancer、S.W.BurchielおよびB.A.Rhodes編、Masson Publishing Inc.(1982))に記載されている。
【0112】
用いられる標識のタイプおよび投与の様式を含むいくつかの変数に依存して、標識された分子が被験体中の部位に優先的に濃縮すること、および非結合標識分子がバックグラウンドレベルまで除去されることを許容するための投与後の時間間隔は、6〜48時間または6〜24時間または6〜12時間である。別の実施形態では、投与後の時間間隔は、5〜20日または5〜10日である。
【0113】
ある実施形態では、疾患または障害のモニタリングは、上記疾患または障害を診断する方法を、例えば、初期診断の1ヶ月後、初期診断の6ヶ月後、初期診断の1年後などに繰り返すことによって実施される。
【0114】
標識分子の存在は、インビボ走査のための当該分野で公知の方法を用いて患者中で検出され得る。これらの方法は、用いられる標識のタイプに依存する。当業者は、特定の標識を検出するための適切な方法を決定し得る。本発明の診断方法で用いられ得る方法およびデバイスとしては、コンピューター断層撮影(CT)、ポジトロン放射断層撮影(PET)のような全身走査、磁気共鳴造影(MRI)、および超音波検査が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
特定の実施形態では、上記分子は、放射性同位元素で標識され、そして放射応答性外科用器具を用いて患者中で検出される(Thustonら、米国特許第5,441,050号)。別の実施形態では、上記分子は、蛍光化合物で標識され、そして蛍光応答性走査器具を用いて患者中で検出される。別の実施形態では、上記分子は、ポジトロン放射金属で標識され、そしてポジトロン放射断層撮影を用いて患者中で検出される。なお別の実施形態では、上記分子は、常時性標識で標識され、そして磁気共鳴造影(MRI)を用いて患者中で検出される。
【0116】
別の局面では、本発明は、サイトカインの非調節発現によって引き起こされる疾患を発症する患者の傾向を診断する方法を提供する。特定の患者細胞、組織または体液中の増加量のIL13は、この患者が特定の免疫疾患に対しかかりやすいことを示し得る。1つの実施形態では、この方法は、IL13の低レベルまたは通常レベルを有することが知られる被験体の細胞、組織または体液サンプルを収集する工程、この組織中のIL13の存在について上記組織または体液を分析する工程、および上記組織または体液中のIL13の発現のレベルを基に、特定の免疫疾患に対するこの患者の傾向を予測する工程を包含する。別の実施形態では、この方法は、患者からの規定されたレベルのIL13を含むことが知られる細胞、組織、または体液サンプルを収集する工程、IL13の量について組織または体液を分析する工程、および通常細胞、組織または体液について確立された規定または試験されたレベルに比較されたIL13の量における変化を基に、特定の免疫疾患に対する患者の傾向を予測する工程を包含する。IL13のこの規定されたレベルは、文献値に基づく既知量であり得るか、または通常細胞、組織、または体液中の量を測定することによって前もって決定され得る。詳細には、特定組織または体液中のIL13の測定は、特異的でかつ早期の(好ましくは、疾患が発症する前に)患者における免疫疾患の検出を許容する。本発明の方法を用いて診断され得る免疫疾患としては、本明細書中に記載される免疫疾患が挙げられるが、これに限定されない。好ましい実施形態では、上記組織または体液は、末梢血、末梢血白血球、肺または皮膚生検のような生検、および組織を含む。
【0117】
(抗IL13抗体の治療使用)
抗体に結合体化された治療成分と一緒にまたはなしで、抗体は、単独でまたは細胞傷害性因子(単数または複数)と組み合わせて、治療薬として用いられ得る。本発明は、抗体を基礎にした治療に関し、これは、本発明の抗体を、IL13が媒介する疾患、傷害、または状態を、動物、哺乳動物、またはヒトに投与する工程を含む。この動物または被験体は、特定の障害(例えば、IL13に関係する障害)をもつと診断された動物のような、特定の処置が必要な動物であり得る。IL13に対して惹起された抗体は、動物においてアレルギー反応を阻害するために有用であり、この動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、非ヒト霊長類など、およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、治療的に受容可能な用量の本発明の抗体(もしくは複数の抗体)または本発明の抗体のカクテル、または種々の供給源のその他の抗体との組み合わせを投与することにより、抗原に対するアレルギー応答が、処置された哺乳動物において減少またはなくされ得る。
【0118】
本発明の治療化合物としては、本発明の抗体(本明細書中に記載されるような、そのフラグメント、アナログおよび誘導体を含む)、ならびに以下に記載のような本発明の抗体(本明細書中に記載のような、そのフラグメント、アナログおよび誘導体および抗イディオタイプ抗体を含む)をコードする核酸が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗体は、IL13の異常発現および/または活性にともなう疾患、傷害または症状(本明細書中に記載される任意の1種以上の疾患、障害、または状態を含む)を処置、阻害または予防するために用いられ得る。IL13の異常発現および/または活性にともなう疾患、障害、または状態の処置および/または予防としては、これらの疾患、障害、または状態にともなう少なくとも1つの症状を軽減することが挙げれれるが、こらに限定されない。本発明の抗体は、当該分野で公知のような、または本明細書中に記載のような薬学的に受容可能な組成物で提供され得る。
【0119】
本発明の抗IL13抗体は、種々の疾患で治療的に用いられ得る。本発明は、哺乳動物においてIL13が媒介する疾患を予防または処置する方法を提供する。この方法は、哺乳動物に、疾患を予防する量または処置する量の抗IL13抗体を投与する工程を包含する。この抗IL13抗体は、IL13へ結合し、そしてサイトカインおよび細胞レセプター発現を調節し、非疾患状態に特徴的なサイトカインレベルを生じる。従って、処置に対する疾患としては、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、またはその他の炎症性疾患が挙げられる。その他のアレルギー疾患としては、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物過敏症および蕁麻疹が挙げられる;免疫媒介皮膚疾患としては、水疱性皮膚疾患、多形性紅斑および接触皮膚炎が挙げられる;自己免疫疾患としては、乾癬、慢性関節リウマチ、若年性慢性関節炎;炎症性大腸疾患(すなわち、潰瘍性大腸炎、クローン病)が挙げられる;その他のIL13にともなう疾患としては、特発性間質性肺炎、杯細胞化生、嚢胞性線維症のような炎症性肺疾患および線維性肺疾患、グルテン感受性腸炎、およびホウィップル病;好酸球性肺炎、特発性肺線維症および過敏性肺臓炎のような肺の炎症性疾患;慢性閉塞性肺疾患、RSV感染、子宮炎、強皮症、骨粗しょう症、およびホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0120】
IL13の異常発現および/または活性にともなう処置、阻害および予防に有効である量は、標準的な臨床技法によって決定され得る。上記抗体は、疾患に合致する処置レジメン、例えば、疾患状態を改善するための1〜数日に亘る単回または2〜3用量、またはアレルギーまたは喘息を防ぐための長期間に亘る周期的用量で投与され得る。さらに、インビトロアッセイが、最適用量範囲の同定を支援するために、必要に応じて採用される。この処方において採用されるべき正確な用量はまた、投与の経路、および疾患または障害の重篤度に依存し、そして実施医の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系からの用量応答曲線から外挿され得る。
【0121】
抗体について、患者に投与される用量は、代表的には、患者体重の0.1mg/kg〜100mg/kgである。好ましくは、患者に投与される用量は、患者体重の0.1mg/kg〜20mg/kg、より好ましくは、患者体重の1mg/kg〜10mg/kgである。一般に、ヒト抗体は、外来のポリペプチドに対する免疫応答に起因して、他の種からの抗体よりヒト身体内でより長い半減期を有する。従って、ヒト抗体のより低い用量およびより少ない頻度の投与がしばしば可能である。さらに、本発明の抗体の用量および投与の頻度は、例えば、脂質化のような改変によって、抗体の取り込みおよび組織貫通(例えば、脳中に)を増加することにより、減少され得る。
【0122】
本発明の抗体は、その他のモノクローナル抗体もしくはキメラ抗体、またはリンホカインもしくは造血性成長因子(例えば、IL−2、IL−3、IL−7、IFN)と組み合わせて有利に利用され得、例えば、上記抗体と相互作用するエフェクター細胞の数または活性を増加するために供される。
【0123】
本発明の抗体は、単独でかまたは他のタイプの処置(例えば、免疫療法、気管支拡張薬、抗IgE分子、抗ヒスタミン剤、または抗ロイコトリエン剤)と組み合わせて投与され得る。
【0124】
好ましい局面では、上記抗体は、実質的に精製されている(例えば、その影響を制限する物質または所望されない副作用を生成する物質が実質的にない)。
【0125】
種々の送達系が公知であり、そして本発明の抗体を投与するために用いられ得、注入、例えば、リポソーム中のカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、上記化合物を発現し得る組換え細胞、複合レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、J.Biol.Chem.262:4429〜4432(1987)を参照のこと)、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての核酸の構築などが挙げられる。
【0126】
上記抗IL13抗体は、任意の受容可能な様式で哺乳動物に投与され得る。導入の方法としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、吸入経路および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。上記抗体または組成物は、任意の従来経路によって(例えば、輸液またはボーラス注射により、上皮または皮膚および粘膜の裏打ち(例えば、口粘膜、直腸および腸管粘膜など)を通じる吸収により)投与され得、そして他の生物学的に活性な試薬とともに投与され得る。投与は、全身的または局所的であり得る。さらに、本発明の治療的抗体または組成物を、任意の適した経路(脳室内およびくも膜下内腔内注射を含む)によって中枢神経系中に導入することが所望され得;脳室内注射は、例えば、オマヤレザバー(Ommaya reservoir)のようなリザバーに取り付けられた、脳室内カテーテルによって促進され得る。
【0127】
肺投与もまた採用され得、例えば、吸入器または噴霧器の使用、およびエアロゾル化試薬との処方による。上記抗体はまた、乾燥粉末組成物(例えば、米国特許第6,514,496号を参照のこと)の形態で、患者の肺中に投与され得る。
【0128】
特定の実施形態では、本発明の治療的抗体または組成物を、処置の必要な領域に局所的に投与することが所望され得;これは、例えば、局所注入、局所塗布により、注射により、カテーテルにより、座薬により、またはインプラントにより達成され得るが、これらに限定されない。このインプラントは多孔性、非多孔性、またはゼラチン状材料であり、シアル酸(sialastic)膜のような膜、または繊維を含む。好ましくは、本発明の抗体を投与する場合、タンパク質が吸着されない材料を用いることに注意しなければならない。
【0129】
別の実施形態では、上記抗体は、小胞、特にリポソーム中で送達され得る(Langer、Science 249:1527〜1533(1990);Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer、Lopez−BeresteinおよびFidler(編)、Liss、New York、353〜365頁(1989);Lopez−Berestein、同書、317〜327頁;一般に同書を参照のこと;を参照のこと)。
【0130】
なお別の実施形態では、上記抗体は、徐放系で送達され得る。1つの実施形態では、ポンプが用いられ得る(Langer、前述;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)参照のこと)。別の実施形態では、ポリマー性材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla(1974);Controlled Drug Bioavailability、Drug Product Design and Performance、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York(1984);RagerおよびPeppas、J.、Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら、Science 228:190(1985);Duringら、Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら、J.Neurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。なお別の実施形態では、徐放系は、治療標的の近傍に配置され得る。
【0131】
本発明はまた、薬学的組成物を提供する。このような組成物は、治療的に有効な量の抗体、および生理学的に受容可能なキャリアを含む。特定の実施形態では、用語「生理学的に受容可能」は、連邦または州政府の監督官庁によって認可されているか、または米国薬局方、または動物(より詳細には、ヒト)における使用のために他に一般に認可された薬局方に列挙されていることを意味する。用語「キャリア」は、上記治療薬がそれとともに投与される希釈剤、アジュバント、賦型剤、またはビヒクルをいう。このような生理学的キャリアは、水およびオイルのような滅菌液体であり、このオイルとしては、石油、動物、植物または合成起源のオイル(例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油など)が挙げられる。水は、上記薬学的組成物が静脈内に投与される場合、好ましいキャリアである。生理食塩水溶液およびデキストロース溶液およびグリセロール溶液もまた液体キャリア、特に、注射用溶液のためにとして用いられ得る。適切な薬学的賦型剤としては、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、マルト、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。上記組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝化剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出処方物などの形態をとり得る。この組成物は、伝統的な結合剤およびトリグリセリドのようなキャリアとともに座薬として処方され得る。経口処方物は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的なキャリアを含み得る。適切なキャリアの例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、患者への適正な投与のための形態を提供するように、適切な量のキャリアとともに、好ましくは、精製形態にある有効量の抗体を含む。この処方物は、投与の様式に適合すべきである。
【0132】
1つの実施形態では、上記組成物は、慣用的な手順に従って、ヒトへの静脈内投与のために適合された薬学的組成物として処方され得る。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液にある溶液である。必要な場合、この組成物はまた、可溶化剤および注射の部位で痛みを和らげるリグノカインのような局所麻酔剤を含み得る。一般に、これら成分は、別個に、または単位用量形態中で一緒に混合されて(例えば、活性薬剤の量を示すアンプルまたはサチェット(sachette)のような密封シールされたコンテナ中の凍結乾燥粉末または水のない濃縮物としてのいずれかで供給される。この組成物が注入によって投与されるべきとき、それは、薬学的グレードの滅菌水または滅菌生理食塩水を含む注入瓶で分散され得る。この組成物が注射によって投与される場合、注射のための滅菌水または生理食塩水のアンプルが、上記成分が投与の前に混合され得るように提供され得る。
【0133】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で充填された1つ以上のコンテナを備える薬学的パックまたはキットを提供する。必要に応じて、このようなコンテナ(単数または複数)とともに、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府系機関により処方された形態の注意書があり得、この注意書は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売の、機関による認可反映する。
【0134】
さらに、本発明の抗体は、異種ポリペフチド、薬物、放射性ヌクレオチド、またはトキシンのような種々のエフェクター分子に結合体化され得る。例えば、PCT公開WO92/08495;WO91/14438;WO89/12624;米国特許第5,314,995号;およびEP396,387を参照のこと。抗体またはそのフラグメントは、細胞毒素のような治療成分(例えば、細胞静止剤または細胞破壊剤)、治療剤あるいは放射活性金属イオン(例えば、213Biのような)αエミッターと結合体化され得る。細胞毒素または細胞毒素剤は、細胞に有害である任意の薬剤を含む。例としては、パクリタキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブチラスチン、コルヒチン、ドクソルビシン、ダウノルビジン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびそれらのアナログまたはホモログが挙げられる。治療薬剤としては、制限されないで、抗代謝産物(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロソスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ステプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウロマシイン)およびドキソルビシン、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(正式には、アクチノマイシン))、ブレオマシン、ミトラマシイン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられる。
【0135】
このような治療成分を抗体に結合体化する技法は周知であり、例えば、Armonら「Monoclonal Antibodies For Immunotargetting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編)、243〜56(Alan R.Liss、Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編)、623〜53頁(Marcel Dekker、Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Rewviesw」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編)475〜506頁(1985);「Analysis、Results、And Further Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(編)、303〜16頁(Academic Press 1985)、およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.62:119〜58(1982)を参照のこと。あるいは、抗体は、第2の抗体に結合体化され得、抗体ヘテロ結合体を形成する(例えば、Segal、米国特許第4,676,980号を参照のこと)。
【0136】
本発明の結合体は、所定の生物学的応答を改変するために用いられ得、上記治療剤または薬物成分は、古典的な化学的治療剤に制限されると解釈されるべきではない。例えば、上記薬物成分は、所望の生物学的活性を所有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。このようなタンパク質としては、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素のようなトキシン;腫瘍壊死因子のようなタンパク質、αインターフェロン、βインターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲンアクチベーター、アポトーシス剤(例えば、TNF−α、TNF−β、AIM I(国際公開番号WO97/33899を参照のこと)、AIM II(国際公開番号WO97/34911を参照のこと)、Fasリガンド(Takahashiら、Int.Immuol.、6:1567〜1574(1994))、VEGI(国際公開番号WO99/23105を参照のこと)、血栓性薬剤または抗血管形成薬剤(例えば、アンギオスタチンまたはエンドスタチン);または、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、またはその他の成長因子のような生物学的応答改変剤が挙げられる。
【0137】
(抗体に基づく遺伝子治療)
本発明の別の局面において、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸が、遺伝子治療により、IL13の異常発現および/または活性にともなう疾患または障害を処置、阻害または予防するために投与される。遺伝子治療は、発現されるかまたは発現可能な核酸の被験体への投与によって実施される治療をいう。本発明のこの実施形態では、上記核酸は、治療効果を媒介するそれらのコードされたタンパク質を生成する。利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って用いられ得る。例示的な方法は、以下に記載される。
【0138】
遺伝子治療の方法の一般的な総説には、Goldspielら、Clinical Pharmacy 12:488〜505(1993);WuおよびWu、Biotherapy 3:87〜95(1991);Toistoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573〜596(1993)、Mulligan、Science 260:926〜932(1993);およびMorganおよびAnderson、Ann.Rev.Biochem.62:191〜217(1993);May、TIBTECH 11(5):155〜215(1993)を参照のこと。
【0139】
1つの局面では、上記化合物は、抗体をコードする核酸配列を含み、この核酸配列は、適切な宿主中で抗体またはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質またはそれらの重鎖もしくは軽鎖を発現する発現ベクターの一部である。特に、この様な核酸配列は、抗体コード領域に作動可能に連結されたプロモーターを有し、このプロモーターは、誘導性または構成性であり、そして必要に応じて組織特異的である。
【0140】
別の特定の実施形態では、核酸分子が使用され、その核酸分子において、抗体コード配列および任意のその他の所望の配列がゲノム中の所望の部位における相同的組換えを促進する領域によって隣接され、それにより、抗体をコードする核酸の染色体間発現を提供する(KollerおよびSmithies、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935(1989);Zijlstraら、Nature 342:435〜438(1989))。特定の実施形態では、発現される抗体分子は、単鎖抗体である;あるいは、上記核酸配列は、抗体の重鎖および軽鎖の両方、またはそれらのフラグメントをコードする配列を含む。
【0141】
患者中への核酸の送達は、直接的(この場合、患者が核酸または核酸を保持するベクターに直接曝される)か、または間接的(この場合、細胞は最初インビトロで核酸で形質転換され、次いで、患者に移植される)であり得る。これらの2つのアプローチは、インビボまたはエキソビボ遺伝子治療としてそれぞれ公知である。
【0142】
特定の実施形態では、核酸配列はインビボで直接投与され、ここで、それは発現されてコードされた産物を産生する。これは、当該分野で公知の任意の多くの方法により達成され得る。その方法は、例えば、それらを適切な核酸発現ベクターの一部として構築すること、およびそれが細胞内に入るように、それを投与することによる。これは、例えば、欠損もしくは弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルスベクターを用いる感染により(米国特許第4,980,286号)、または裸のDNAの直接注入により、または微粒子照射(例えば、遺伝子銃;Biolistic、Dupont)または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト剤でのコーティング、リポソーム、マイクロパーティクル、もしくはマイクロカプセル中のカプセル化により、あるいはそれら核内へ移行することが既知なペプチドと結合させて投与することにより、またはそれらをレセプター媒介エンドサイトーシスを受けるリガンドへの連結して投与すること(例えば、WuおよびWu、J.Biol.Chem.、262:4429〜4432(1987)を参照のこと)(これは、レセプターを特異的に発現する細胞型を標的にするために用いられ得る)などによって達成され得る。別の実施形態では、核酸−リガンド複合体が形成され得、リガンドが膜融合ウイルスペプチドを含んでエンドソームを破壊し、核酸がリソソーム分解するのを避けさせる。なお別の実施形態では、上記核酸は、特異的レセプターを標的にすることにより、細胞特異的取り込みおよび発現のためにインビボで標的にされ得る(例えば、PCT公開WO 92/06180;WO92/22635;WO92/20316;WO93/14188、WO93/20221を参照のこと)。あるいは、上記核酸は、相同的組換えにより発現のために細胞内に導入されるか、または宿主細胞DNA内に取り込まれ得る(KollerおよびSmithies、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8932〜8935(1989);Zijlstraら、Nature 342:435〜438(1989))。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の抗体をコードする核酸配列を含むウイルスベクターが用いられる。例えば、レトロウイルスベクターが用いられ得る(Millerら、Meth.Enzymol.217:581〜599(1993)を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムの正確なパッケージンクおよび宿主細胞DNA中への組込みのために必要な成分を含む。遺伝子治療で用いられるべき抗体をコードする核
酸配列は、1つ以上のベクター中のクローン化され、これは、患者中への遺伝子の送達を容易にする。レトロウイルスベクターのより詳細は、Boesenら、Biotherapy 6:291〜302(1994)中に見出され得、これは、幹細胞を化学療法により耐性にするために、造血性幹細胞にmdrl遺伝子を送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載している。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参考文献は:Clowesら、J.Clin.Invest.93:644〜651(1994);Klemら、Blood 83:1467〜1473(1994);SalmonsおよびGunzberg、Human Gene Therapy 4:129〜141(1993);ならびにGrossmanおよびWilson、Curr.Opin.Gen.and Dev.3:110〜114(1993)である。
【0144】
アデノウイルスもまた、本発明で用いられ得る。アデノウイルスは、呼吸上皮に抗体を送達するために、本発明において特に魅力的なビビクルである。アデノウイルスは、自然に呼吸上皮に感染する。アデノウイルスに基づく送達系のための他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、および筋肉である。アデノウイルスは、非分割細胞を感染し得る利点を有している。KozarskyおよびWilson、Curr.Opin.Gen.Dev.3:499〜503(1993)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の総説を提示している。Boutら、Human Gene Therapy 5:3〜10(1994)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を導入するためのアデノウイルスベクターの使用を示した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用の他の例は、Rosenfeldら、Science 252:431〜434(1991);Rosenfeldら、Cell 68:143〜155(1992);Matrangeliら、J.Clin.Invest.91:225〜234(1993);PCT公開WO94/12649;およびWangら、Gene Therapy 2:775〜783(1995)中に見出され得る。アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療における使用のために提案されている(Walshら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.204:289〜300(1993);米国特許第5,436,146号;同第6,632,670号;同第6,642,051号)。
【0145】
遺伝子治療への別のアプローチは、エレクトロポーレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、またはウイルス感染のような方法によって、組織培養中の細胞に遺伝子を移入することを含む。通常、移入の方法は、細胞への選択マーカーの移入を含む。細胞は、次いで、この移入された遺伝子を取り込み、そして発現しているような細胞を単離するための選択下に配置される。これらの細胞は、次いで、患者中に送達される。
【0146】
この実施形態では、上記核酸は、得られる組換え細胞のインビボ投与の前に細胞中に導入される。このような導入は、当該技術分野で公知の任意の方法によって実施され得、この方法としては、上記核酸配列を含むウイルスまたは細菌ファージベクターでのトランスフェクション、エレクトロポーレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージによる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、マイクロセル媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などが挙げられる。細胞中への外来遺伝子の導入のために当該技術分野で多くの技法が公知であり(例えば、LoefflerおよびBehr、Meth.Enzymol.217:599〜618(1993);Cohenら、Meth.Enzymol.217:618〜614(1993);Cline、Pharmac.Ther.29:69〜92m(1985)を参照のこと)、そしてレシピエント細胞の必要な発生機能および生理学的機能が破壊されないことを条件に、本発明に従って用いられ得る。この技法は、上記核酸が細胞によって発現可能であり、そして好ましくはその細胞の子孫に伝播可能で、かつ発現可能であるように、この核酸の細胞への安定な移入を提供する。
【0147】
得られる組換え細胞は、患者に、当該分野で公知の種々の方法によって送達され得る。組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞または前駆体細胞)は、好ましくは、静脈内に投与される。使用のために想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、そして当業者によって決定され得る。
【0148】
遺伝子治療の目的のために核酸が導入される細胞は、任意の所望の利用可能な細胞型を包含し、そして、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、メガケラチノサイト、顆粒球のような血液細胞;種々の幹細胞または前駆体細胞、特に、例えば、骨髄、臍帯血、末梢血、胎性肝臓などから得られるような、造血性幹細胞または前駆体細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
1つの実施形態では、遺伝子治療のために用いられる細胞は、患者に対し自系である。本発明の抗体をコードする核酸配列は、細胞中に、それらが細胞またはそれらの子孫によって発現可能であるように導入され、そしてこれら組換え細胞は、次いで、治療効果のためにインビボで投与される。特定の実施形態では、幹細胞または前駆体細胞が用いられる。インビトロで単離および維持され得る任意の幹細胞および/または前駆体細胞が、本発明のこの実施形態に従って潜在的に用いられ得る(例えば、PCT公開WO94/08598;SempleおよびAnderson、Cell 71:973〜985(1992);Rheinwald、Meth.Cell.Bio.21A:229(1980);およびPittelkowおよびScott.Mayo Clinic Proc.61:771(1986)を参照のこと)。
【実施例】
【0150】
(実施例1:IL13免疫グロブリンの調製:変異された不活性ヒトIL13/Fc(MT−IL13/Fc))
(A.MT−IL13/Fcのための発現プラスミドのクローニングおよび構築)
等しいかまたはより高い親和性をもつ、IL13Rα1に結合したアミノ酸残基番号13における変異(グルタミン酸からリンジンへ)をもつヒトIL13は、しかし、IL13Rα1保持細胞を活性化する能力を失ったことが報告された(Thompsonら、J.Biol.Chem.、274:29944(1999))。この変異した不活性なIL13(MT−IL13と示される)を、ヒト胎児腎細胞293−T中で発現した。この精製された組換えタンパク質を、本発明における免疫原として用い、抗IL−13モノクローナル抗体を生成した。2つのオリゴヌクレオチドプライマーは:
【0151】
【化1】

である。
MT−IL13遺伝子に対応するオリゴヌクレオチド配列を合成し、そしてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)におけるテンプレートとして用い、このIL13遺伝子をヒト精巣cDNAライブラリー(BD Biosciences Clontech、Palo Alto、CA)からクローニングした。IL13の推定されたシグナルペプチド配列を欠いたPCRフラグメント(342塩基対)を、pSecTag/FRTベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)中に連結した。このpSecTag/FRTベクターは、5’末端に分泌シグナルペプチドを、そして3’末端にヒトFcγ1(ヒンジ領域および定常領域CH2およびCH3)配列を含んだ。この構築物の組成は、配列決定により確認した。
【0152】
(B.トランスフェクトされた293T細胞からのMT−IL13/Fcの産生)
MT−IL13/Fcの一時的発現のために、精製されたプラスミドDNAを、製造業者のプロトコールに従って、Lipofectamine 2000(Invitrogen)によって293T細胞中にトランスフェクトした。トランスフェンション72時間後、トランスフェクトされた細胞からの培養上清液を精製のために収集した。MT−IL13/Fcの安定な発現のために、細胞株を、Flp−In 293T細胞株(Invitrogen)を用いて樹立した。発現を確認するために、細胞上清液を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって分析した。分離されたタンパク質を、ニトロセルロースメンブレンに移し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化マウス抗ヒトIgG(Fc)モノクローナル抗体(Sigma、St.Louis、MO)またはポリクローナルヤギ抗−IL13抗体(R&D Systems、Minneapolis、MN)との反応より検出し、これらは次いでHRP−ロバ抗ヤギIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)で検出された。免疫反応性タンパク質を、増幅化学発光検出(Supersignal West Pico Chemiluminescent Substrate、Pierce、Rockford、IL)を用いて、フィルム上で同定した。
【0153】
(C.MT−IL13/Fcの精製)
MT−IL13/Fcは、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で平衡化されたハイパー−DプロテインAアフィニティーカラム(Invitrogen)で精製した。このカラムに細胞培養上清液を付与した後、樹脂を20カラム容量を超える量のPBSで洗浄した。次いで、この樹脂をSCC緩衝液(0.05Mクエン酸ナトリウム、0.5M塩化ナトリウム、pH6.0)で洗浄し、非結合のタンパク質を除去した。IL13融合タンパク質を、次いで、溶出し(005Mクエン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム、pH3.0)、そしてPBS中で透析した。
【0154】
MT−IL13/Fcを含むアフィニティーカラムからの画分を、SDS−PAGEで分析した。これらタンパク質の純度を、クマシーブルー染色により分析し、そしてこれらタンパク質の同一性を、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(Sigma)および抗ヒトIL13抗体(R&D Systems)を用いるウェスタンイムノブロッティングにより分析した。
【0155】
(実施例2:抗IL13モノクローナル抗体の生成)
雄のA/Jマウス(Harlan、Indianapolis、IN)、8〜12週齢に、200μLのPBS(pH7.4)で完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI)中の20μgのMT−IL13/Fcを皮下注射した。2週間の間隔で、マウスを、不完全フロイントアジュバント中の20μgのMT−IL13/Fcで2度皮下注射した。次いで、2週間後、そして屠殺の3日前に、マウスに、PBS中の20μgの同じ免疫原で腹腔内注射した。1匹以上の抗原免疫化マウスから単離された脾臓細胞を、融合のために用いた。免疫化および融合の類似の手順もまた、免疫原としてのE.coli発現ヒトIL13(R&D Systems)とともに用いた。
【0156】
抗IL13 MAb 228B/C−1の生成に至る融合では、2匹の免疫化マウスからの26.4×10脾臓細胞および58.8×10脾臓細胞が合わせられた。各融合には、単一細胞の懸濁液を、免疫化マウスの脾臓から調製し、そしてSp2/0骨髄腫細胞との融合のために用いた。1:1の比でSp2/0および脾臓細胞を、50%ポリエチレングリコール(M.W.1450)(Kodak、Rochester、NY)および5%ジメチルスルホキシド(Sigma)を含む培地中で融合した。細胞を、次いで、10%ウシ胎仔血清、100単位/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.1mMのヒポキサンチン、0.4μMのアミノプテリン、および16μMのチミジンを補充したDMEM培地(Invitrogen、CA)における250μlの懸濁液あたり1.5×10脾臓細胞の濃度に調整した。250μlの細胞懸濁液を、約50の96ウェルのマイクロカルチャープレートの各ウェルに添加した。約10日後、培養上清液を、ELISAにおけるMT−IL13/Fcと反応性についてのスクリーニングのために抜き出した。
【0157】
Immulon 2(Dynatech Laboratories、Chantilly、VA)マイクロテストプレートのウェルを、精製MT−IL13/Fc(0.1μg/mL)を室温で一晩添加することによりコーティングした。このコーティング溶液を、プレートをはじいて除去した後、200μLのブロッキング/希釈緩衝液(2%ウシ血清アルブミンおよび0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS)を各ウェルに1時間添加し、非特異的部位をブロックした。1時間後、次いでウェルをPBST緩衝液(0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS)で洗浄した。50マイクロリットルの培養上清液を各融合ウェルから集め、50μLのブロッキング/希釈緩衝液と混合し、そして次に、マイクロテストプレートの個々のウェルに添加された。1時間のインキュベーションの後、これらウェルをPBSTで洗浄した。次いで結合したマウス抗体を、HRP結合体化ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的)(Jackson ImmunoResearch Lab、West Grove、PA)との反応により検出し、そしてブロッキング/希釈緩衝液で1:2,000に希釈した。0.1%の3,3,5,5テトラメチルベンジジン(Sigma、St.Louis、MO)および0.003%過酸化水素(Sigma)を含むペルオキシダーゼ基質溶液を、発色のために30分間ウェルに添加した。反応を、ウェルあたり、50μLの2M HSOの添加により終結した。反応混合物のOD450を、BioTek ELISA Reader(BioTek Instruments、Winooski、VM)で測定した。
【0158】
MT−IL13/Fcスクリーニングの陽性ウェルからの培養上清液を、次いで、無関係のFγ1融合タンパク質への陰性結合について試験した。最終的な陽性ウェルを、次いで、限界希釈による単一細胞クローニングのために選択した。モノクローナル抗体からの培養上清液を再試験し、ELISAによりそれらの反応性を確認した。選択されたハイブリドーマを、撹拌フラスコ中で増殖し、そして使用した培養上清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによる抗体精製のために収集した。
【0159】
精製された抗体は、4つのアッセイによって試験された:i)293T細胞発現MT−IL13/FcとE.coli発現マウスIL13との交差反応性;ii)HDLM−2およびL−1236細胞のIL13−自己分泌増殖の阻害;iii)THP−1細胞中のIL−13誘導STAT6リン酸化の阻害;およびiv)ヒト単球上のIL−13制御CD14およびCD23発現の阻害である。
【0160】
73の抗IL13MAbを、MT−IL13/FcおよびIL13免疫化マウスに対して実施された融合から得た。これらのMAbの39を、ELISAおよび細胞に基づくアッセイによる特徴付けのために精製した。これらの39のMAbのうち13が、HDLM−2およびL−1236細胞の自己分泌IL13誘導増殖を阻害した(実施例5におけるアッセイの説明および結果を参照のこと)。これらMAbの4つが、ELISAにおいてヒトIL13と非常に強く反応することを見出し、そして機能的細胞に基づくアッセイでヒトIL13に対して中和性であった。これらのMAbを、228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43と称した。これらの抗体は、すべて、免疫原としてグリコシル化MT−IL13/Fcを用いて生成した。
【0161】
(実施例3:ELISAにおける、抗IL13モノクローナル抗体とヒトおよびマウスIL13との反応性)
種々の抗IL13モノクローナル抗体の反応性を、ELISAによって試験した。96ウェルマイクロテストプレートの異なるウェルを、E.coli発現非グリコシル化ヒトIL13(R&D Systems)、293T細胞発現グリコシル化MT−IL13/Fc、またはE.coli発現マウスIL13(R&D Systems)のいずれかで、PBS中の100μLの0.1μg/mL IL13タンパク質の添加によりコーティングした。室温で一晩インキュベーション後、これらウェルを、PBSTB(2%BSAを含むPBST)で処理し、残りの結合部位を飽和した。これらウェルを次いでPBSTで洗浄した。
【0162】
100マイクロリットルの2倍で系列希釈された抗IL13MAb(0.5μg/mL(3.33nM)〜0.05ng/mL(0.00033nM))を、上記ウェルに室温で1時間添加した。抗IL13MAb(BD Biosciences−Pharmingen、San Diego、CA製)をまた、陽性コントロールとして試験した。この抗体は、免疫原としてE.coli発現ヒトIL13を用いることにより生成した。アイソタイプが一致したマウス抗HIV−1 gp120 MAbを、無関係の陰性コントロールとして用いた。上記ウェルを、次いで、PBSTで洗浄した。結合された抗体は、希釈されたHRP−ヤギ抗マウスIgG(Fc)(Jackson ImmunoResearch)との室温での1時間のインキュベーションにより検出した。ペルオキシダーゼ基質溶液を、次いで、上記のように発色のために添加した。ELISAリーダーを用いてOD450を測定した。
【0163】
図1は、ELISAにおける、抗IL13MAbの228B/C−1、228A−4、227−26、および227−43、および陰性コントロールの用量依存性結合を示す。これらのMAbの中で、228B/C−1が、最も強い反応性を示した。図2は、ELISAにおける抗IL13MAbのMT−IL13/Fcに対する用量依存性結合を示す。228B/C−1および228A−4が、MT−IL13/Fcとの最も強い反応性を示し、その一方、227−26および227−43は、中程度の反応性を示した。
【0164】
図1および2は、228B/C−1が、試験されたすべての抗IL13MAbの中で、グリコシル化および非グリコシル化両方のヒトIL13に対して最も高い親和性を有することを示す。これらすべての抗IL13MAbは、ELISAにおいてマウスIL13と交差反応しなかった(データは示さず)。
【0165】
(実施例4)
(JES10−5A2によるヒトIL13への228B/C−1−Hrp結合の競合の欠如)
JES10−5A2および228B/C−1が、ヒトIL13上の同じエピトープに結合するか否かを取り扱うために、競合ELISAを用いて、E.coli発現ヒトIL13への228B/C−1−HRP結合に対するJES10−5A2の影響を試験した。96ェルマイクロテストプレートの96ウェルの各ウェルを、100μLのPBS中0.1μg/mLのIL13タンパク質とともにインキュベートした。室温で一晩のインキュベーションの後、これらウェルを、PBSTB(2%BSAを含むPBST)で処理し、残りの結合部位を飽和した。これらウェルを、次いで、PBSTで洗浄した。50マイクロリットルの2倍系列希釈の228B/C−1およびJES10−5A2(最終濃度20μg/mL〜9.76ng/mL)を、50μLの予備滴定した228B/C−1−HRPと(1:6,400希釈で)混合した。その混合物を、次いで、ウェルに添加し、そして室温で1時間インキュベートした。次いで、上記のように、発色のためにペルオキシダーゼ基質溶液を添加した。OD450を、ELISAリーダーを用いて測定した。
【0166】
図3は、JES10−5A2が228B/C−1−HRPのヒトIL13への結合と競合しないことを示し、228B/C−1およびJES10−5A2がヒトIL13の異なる部位に結合することを示す。
【0167】
(実施例5)
(L−1236およびHDLM−2細胞を用いるIL13自己分泌依存性増殖アッセイによる抗IL13中和モノクローナル抗体のスクリーニング)
L−1236およびHDLM−2は、German Collection of Miroorganisms and Cell Culture(DSMZ、Brauschweig、Germany)から得られるホジキンリンパ腫細胞株である。これら細胞株はIL13を産生し、これは、次いで、自己分泌様式でそれらの細胞増殖を活性化する(Kapp Uら、J.Exp.Med.189:1939(1999))。
【0168】
細胞を、異なる抗IL13MAb(0.2、0.02および0.002μg/mL)の存在または不在下で、5%CO中37℃で3〜5日間培養した(25,000細胞/ウェル)。次いで、細胞増殖を、テトラゾリウム化合物MTS(Promega、Madison、WI)を用いるアッセイによるか(OD490における読み取り値)、またはH−チミジン(Amersham Bioscience、Piscataway、NJ)の取り込みによるかいずれかにより測定した。
【0169】
これら細胞株の培養への抗IL13中和MAbの添加は、これら細胞により産生されるIL13の結合および不活性化により、それらの増殖を阻害することが期待された。図4に示された結果は、L−1235細胞の増殖についての、本発明の抗IL13MAbの効果を示す。MAb 228B/C−1は、試験された中和抗体の中で、用量依存性様式でL−1236細胞の増殖の最も高い阻害能力を示す。TA1−37(免疫原としてE.coli発現ヒトIL13を用いて生成された抗IL13 MAb)は、0.2μg/mLもの高い用量でさえ、いずれの阻害活性も有さなかった。類似の結果を、HDLM−2細胞から得た。
【0170】
(実施例6)
(原発性ヒト単球上のIL13制御CD14およびCD23発現に対するアッセイ)
IL13は、ヒト単球におけるCD14発現の抑制およびCD23発現の上方制御を誘導する(de Waal Malefytら、J.Immunol.、151:6370(1993)、Chomaratら、Int.Rev.Immunol.、17:1(1998))。末梢血白血球(PBL)を、健常なヒトドナーの新鮮に収集したヘパリン処理全血から、Histopaque−1077(Sigma)中の密度勾配遠心分離によって単離した。5%ウシ胎仔血清を含むRPMI−1640培地(Invitrogen)中に懸濁されたPBL(1.5×10)を、組換えIL13(最終10ng/mL=0.813nM)および抗IL13モノクローナル抗体または無関係の抗体(3倍系列希釈、最終12μg/mL=80nMから)を含む96ウェルの組織培養プレートの各ウェルに添加した。単球上のCD14発現またはCD23発現は、イキュベートする培地に0.813nMのヒトIL13の添加により、それぞれ抑制または上方制御された。培地のコントロールは、組換えIL13なしのRPMI−1640/FBS培地を含んだ。
【0171】
これら細胞を、5%CO中37℃で2日間培養した。これら細胞を、抗CD14−FITCまたは抗CD23−PE(BD Biosciences−Pharmingen)での染色のために回収した。単球集団におけるCD14およびCD23の発現レベルは、フローサイトメトリーによって測定され、そして中間値蛍光強度(MFI)によって表した。
【0172】
ヒト単球上のIL13抑制CD14発現に対する抗IL13MAbの影響は、図5に示される。試験されたすべての抗IL13MAbの中で、228B/C−1は、CD14発現に対するIL13の影響を阻害することで最も高い能力を有していた。IL13の影響の完全な阻害は、0.33nMで達成された。MAb227−26および228A−4の阻害活性は中程度であり、一方で、JES10−5A2の阻害活性は弱かった。IL13のこの影響は、80nMでさえ、JES10−5A2によって完全には阻害されなかった。
【0173】
ヒト単球上のIL13誘導CD23の上方制御に対する抗IL13MAbの効果は、図6に示される。CD14発現に対する結果(図5)と同様に、228B/C−1は、試験された抗IL13MAbの中でCD23発現に対するIL13の効果を阻害することで最も能力があった。228B/C−1による完全な阻害は、0.33nMで達成された。JES10−5A2の阻害能力は弱かった。
【0174】
図5および6に提示された結果を基に、228B/C−1によるIL13の完全な阻害は、1:2(MAb:IL13)比のモル化学量論量で達成され得、そしてそれ故、228B/C−1はヒトIL13に対し非常に高い親和性の中和MAbである。
【0175】
(実施例7)
(THP−1細胞におけるIL13誘導STAT6リン酸化アッセイ)
IL13は、骨髄細胞株THP−1(ATCC、Manassas、VA)を活性化し得、IL13のシグナル伝達経路における重要なステップであるSTAT6のリン酸化を誘導する(Murata Tら、Int.Immunol.10:1103〜1110(1998))。上記抗IL13MAbを、このアッセイでIL13の阻害について試験した。
【0176】
THP−1細胞を、5%のウシ胎仔血清を補充したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中で維持した。実験のその日に、細胞を洗浄し、そして血清を含まないDMEM中、37℃で5%COにおいて2時間インキュベートした。80μLの血清を含まない培地中の0.3×10細胞を、次いで、96ウェルの丸底プレートの各ウェルに添加した。120マイクロリットルの培地は、ヒトIL13(10ng/mL=0.813nMの最終濃度)および抗IL13MAb(5倍系列希釈、0.5μg/mL=3.33nMの最終濃度から)を含む。陰性コントロールウェルは、IL13がないか、またはIL13およびアイソタイプ一致の無関係のマウスMAbのいずれかを含んだ。
【0177】
これら混合物を、37℃にて5%CO下で10分間インキュベートした。プレートを、次いで、300×gで3分間、4℃で遠心分離した。上清を捨てた後、細胞ペレットを100μLのLaemmliの非還元性サンプル緩衝液(SDS−PAGEローディング緩衝液、BioRad、CA)中に再懸濁し、そして次に微量遠心分離チューブに移した。そのチューブを95℃で5分間加熱し、次いで、10,000×gで、10分間室温で遠心分離した。上清を集め、そして4〜20%の勾配SDS−PAGEによって分析した。分離されたタンパク質を、PVDFメンブレンに写し、これを、次に、希釈マウス抗ヒトStat6(Y641、リン特異的)MAb(BD Biosciences Pharmingen)とインキュベートした。
【0178】
結合した抗体を、HRP結合体化ヤギ抗マウスIgG(Fc)抗体(Jackson ImmunoReserach Laboratories)によって検出した。免疫反応性タンパク質は、増幅化学発光検出(Supersignal West Pico Chemiluminescent Substrate、Pierece)を用いて、フィルム上で同定した。図7は、THP−1細胞におけるStat6のIL13誘導リン酸化に対する抗IL13MAbの効果の結果を示す。Stat6は、0.813nMのヒトIL13で処理されたTHP−1細胞において、リン酸化される。用量依存性のStat6リン酸化阻害を、細胞が228B/C−1、228A−4、227−26、227−43およびJES10−5A2で処理されたときに見出された。MAb 228B/C−1は、試験された抗IL13MAbの中で最も能力のある中和抗体である。228B/C−1による完全阻害は、0.667nMと0.133nMとの間の濃度で達成された。完全阻害のための228B/C−1とIL13との間のおおよそのモル化学量論量比は、1:2であった。これは、図5および6に示されたデータと一致している。
【0179】
(実施例8)
(抗IL13モノクローナル抗体をコードする重鎖および軽鎖遺伝子の分子クローニング)
QIAGENキット(Valencia、CA)を用いて、総RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。逆転写(第1鎖cDNA)反応を、以下のように実施した:1〜1.5mgの総RNAを、1mlの10mM dNTP、50ngのランダムヘキサマー、およびRNaseを含まない12mLの最終容量の水と混合した。
【0180】
この反応混合物を、65℃で5分間インキュベートし、そして直ちに1分間氷上に置いた。簡単に遠心分離した後、以下の試薬を添加した:4mLの5×第1鎖緩衝液(250mM Tris−HCl、pH8.3、375mM KCl、15mM MgCl)、2mLの0.1mM DTT、および1mLのRNaseOUT RNaseインヒビター(40U/ml)。混合後、この反応物を室温で2分間インキュベートした。次いで、1ミリリットルのSuperscript II RT(50U/ml)を、25℃で10分間、次いで50分42℃でのインキュベーションのためにこの混合物に添加された。簡単に遠心分離した後、この反応物を15分間75℃でインキュベートし、逆転写酵素を不活性化した。次いで1マイクロリットルのRNaseH(2U/ml)を添加し、そして反応物を20分間37℃でインキュベートし、RNAを破壊した。
【0181】
重鎖および軽鎖の種々の領域を増幅するために、O’BrienおよびJones(O’Brien S.およびJones T.、「Humanizing antibodies by CDR grafting」、Antibody Engineering、Springer Lab manual、Eds.KontermannおよびDuble、S(2001))に記載の方法を用いた。簡単に述べれば、5’プライマーを、シグナルペプチド領域から選択し(軽鎖について11セットおよび重鎖について12セットの縮重プライマー)、そして3’プライマーを、軽鎖または重鎖いずれかの定常領域から選択した。5’プライマーおよび3’プライマー(10mMの1.5mL)が、5mLの10×PCR緩衝液(250mM Tris−HCl、pH8.8、20mM MgSO、100mM KCl、100mM (NHSO、1% Triton X−100、1mg/mL ヌクレアーゼを含まないBSA)、1mLの先のように調製されたcDNA、1mLのTurbo pfu(Stratagene)および水と混合されて、この反応物を50mLの総容量に調節した。PCRは以下のように実施した:94℃で4分の1サイクル;94℃で30秒、53℃で30秒、および72℃で45秒の25サイクル;および72℃で7分の1サイクル。反応混合物を、1%のアガロースゲル中で電気泳動により分離した。
【0182】
増幅されたDNAフラグメントを精製し、そしてpcDNA3.1ベクター中にクローニングした。クローニングは、製造業者が示唆したプロトコール(Invitrogen)に従って、Invitrogen TOPOクローニングキットを用いて実施した。形質転換されたE.coliの15〜20のコロニーを、プラスミド精製のために用いた。プラスミドは、T7プライマーを用いて配列決定した。重鎖および軽鎖についての優性な配列を、ハイブリダイゼーション変異誘発(Glaser S.ら、Antibody Engineering(Oxford University Press、New York(1995))、Near RI、BioTechniques 12:88(1992))により、M13 Fab発現ベクター中にクローン化した。発現されたFabの結合特性を、ELISAにより確認した。図8〜10は、それぞれ、228B/C、228A−4、および227−26に対するVHおよびVL鎖アミノ酸配列を示す。
【0183】
(実施例9)
(クローン228B/Cのヒト化)
(A.一般的プロトコール)
マウス抗体228B/Cの可変領域をクローニングし、そして実施例8に記載のように配列決定した。ファージベクター中のキメラFabを、マウス228B/Cの可変領域、およびヒトκ鎖の定常領域、およびヒトIgGのCH1部分を組み合わせたコントロールとして構築した。
【0184】
ヒト化プロセスを開始するために、公知のヒト生殖系列遺伝子配列から選択された適切なv遺伝子配列を、1〜3のフレームワーク領域(FM1〜FM3)を提供するために選択し、そしてWO04/070010(本明細書中に参考として援用される)に記載される規準に従って、適切なJ遺伝子をフレームワーク4(FM4)を提供するために選択した。このテンプレートは、例えば、匹敵する全体長さ、CDRのサイズ、フレームワークとCDTとの間の接続部に位置するアミノ酸残基、全体の相同性などに基づき選択され得る。選択されたこのテンプレートは、1以上の配列の混合物であり得るか、またはコンセンサステンプレートであり得る。
【0185】
発現ベクターの構築は、以下の式を含んで生成された重鎖および/または軽鎖改変体を含む:
【0186】
【化2】

ここで、FRH1、FRH2、FRH3、FRH4、FRL1、FRL2、FRL3およびFRL4は、生殖系列テンプレートから選択されたフレームワークテンプレート重鎖配列およびフレームワークテンプレート軽鎖配列の改変体を表し、そしてCDRは、親抗体のそれらを表す。マウス親抗体と選択されたヒトテンプレート配列との間の差異を決定し、抗体Fabのライブラリーを生成するための基礎として機能させた。このライブラリーは、軽鎖について個々に生成し得、そして次に、または同時に重鎖について生成し得る。CDR領域の親和性成熟もまた、フレームワークのヒト化と同時に、または逐次的に分析し得る。
【0187】
改変体Fabのライブラリーを、(1)マウスアミノ酸残基、(2)選択されたヒト生殖系列遺伝子からのアミノ酸残基、または必要に応じて(3)マウスフレームワーク配列とは異なることが見出された選択された位置の各々で、ランダムに選択されたアミノ酸を含んで生成した。所望の改変体は、重複するオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより、そして次に目的であったフレームワーク位置で選択された残基を取り込むことにより生成した。アニールされた産物の増幅は、2つのプライマー(そのうちの1つがビオチン標識されていた)を用いて行った。このビオチンタグは、プライマーの一本鎖の精製のために用い、そしてこれは、Uテンプレートフォーマットにある目的のベクターを用いるKunkelに基づく変異誘発反応中の変異誘発オリゴとして用いた(Rosok、M.J.ら、(1996)Journal of Biological Chemistry 271:22611〜22618)。アニーリングおよびプラスミドの伸長の後、反応物を、当初のテンプレートは切断するが、新たに合成された鎖は切断しない、唯一の制限酵素XbaIでの消化させた。このプラスミドは、増幅のためにコンピテント細胞にエレクトロポーレーションし、そしてファージ粒子の生成のために、ファージコンピテントE.coli細胞型と混合した。このプラスミド構築物は、Fabを合成し得、それは、上清液中に分泌される。個々のプラークを選択し、そして抗体を分析のために溶出した。
【0188】
このライブラリーを、質および完全性について分析した。このライブラリーのランダムサンプリングを配列決定する際に、Vk(またはVh)領域の正確な挿入を有した選択された多くの候補を決定した。この数を用い、ライブラリーの全体の効率を決定した。一旦、ライブラリーを構築すると、これら候補を、機能的ELISAを基礎にしたアッセイを用いてスクリーニングし、どの候補がIL13に特異的な機能的なFabを産生したかを決定した。キメラクローンに匹敵するIL13の活性を示すような候補を、再現性についてさらにアッセイした。いくつかの候補を配列決定して、上記標的とされたフレームワーク位置がヒト化のために如何に耐性であるかを決定した。
【0189】
ライブラリーが代表的であると見出された後、改変体を結合親和性について分析し、そしてキメラコントロール抗体に匹敵するかまたはそれより大きい結合親和性を有することが見出された改変体を、配列決定した。分析された単離物が、フレームワーク中の選択された位置でヒト生殖系列遺伝子からの残基を含まなかった場合、このヒトアミノ酸残基は、その位置で耐性ではなかったと結論付けた。この時点で、マウスおよびヒトアミノ酸のみを試験した場合、別のFabライブラリーを、ヒトテンプレート残基が見出されなかった位置でアミノ酸をランダム化して作製し得た。次いで適切な置換残基(非マウス)を有するFabを選択し、そして完全MAbに転換し得る。さらに、コンセンサステンプレートを、開始フレームワークとして用い得る。
【0190】
(B.IL13モノクローナル抗体Vkヒト化)
軽鎖(Vk)の可変領域のヒト化を最初に実施した。しかし、いずれかの鎖で開始し得るか、または両方の鎖を同時にヒト化し得る。選択されたヒトテンプレートは、ヒトテンプレート2であり、そしてそれらが機能的活性の損失なくしてヒト化され得るか否かを決定するために軽鎖内のCDRに近接する9残基に関する効果の研究に関与した。第2ラウンドのスクリーニングのために研究された軽鎖上の位置は、4、9、12、73、81、82、83、84、および109であった。
【0191】
マウステンプレート残基またはヒトテンプレート残基のいずれかでこれらの位置の各々を変動させて、ライブラリーを生成した。約860の改変体を、機能的ELISAアッセイを用いてスクリーニングした。18の候補のみが、キメラクローンに匹敵する機能を示した。これらの候補を、さらにアッセイした。18のうち6の候補が、キメラクローンと比較して抗原に対してより大きな親和性を示し、そしてこれら6つを配列決定した。配列決定結果を図11AおよびBに提示し、そしてこれらの結果から、位置4、12および81はマウス残基を好む。
【0192】
(C.Vhヒト化)
候補抗体の全体の機能に対する重鎖フレームワーク残基の寄与を評価するために、ライブラリーを、マウスの軽鎖を維持しながら、親マウスとは異なるヒトDP27テンプレートフレームワーク内の10の位置を変動して構築した。このライブラリーは、Vhについて合成された重複するオリゴヌクレオチド、およびPCRを用いるマウスVkの生成を用いて生成した。このVkおよびVhを、次いで、変異誘発を用いてFab発現ベクター中
に挿入し、そしてこのライブラリーを、次いで、機能的Fabについてスクリーニングした。ライブラリーの複雑度は、(210/70%)×3=3840であった。
【0193】
合計1056の候補を、96ウェル形式のELISAアッセイを用いてスクリーニングした。配列決定のために選択されたこのライブラリーからの候補は、スクリーニング結果から最も高い値を生成した候補であった。これらの高活性候補の5つを配列決定し、それらのヒト化のレベルを決定した。それらの配列は、図12AおよびBに提示されている。これらの結果から、重鎖上のフレームワーク残基の3つが、マウス残基を好んだ(番号24、68および94)。
【0194】
第2のフレームワーク研究は、ヒトテンプレートNEWであった。VkおよびVhの両方が同時にヒト化されたコンビナトリアルライブラリーを生成した。Vk上の9の残基をマウス残基とヒト残基との間で変動し、そして9の残基をまた、Vhについて選択した。約5200の候補(55個の96ウェルプレート)を、このライブラリーからスクリーニングした。このスクリーニングから、約300の候補が、キメラクローンに匹敵する結果を得た。この群から、30の候補を配列決定し、これらの機能的クローンのヒト化レベルを決定した。
【0195】
軽鎖に対する配列決定結果が、図11AおよびBに提示される。重鎖配列は、図12AおよびBに提示される。Vk上の位置83は、マウス残基を保持する高い発生率を有し、その一方、Vhテンプレート中の数個の位置は、マウス残基を好んだ。特に、位置94は、スクリーニングされた30の候補のうち29でマウス残基を保持した。いずれの候補も完全にヒト化されたフレームワークを有するようには見えないが、VkまたはVhのいずれかで高度にヒト化されていた数個の可変領域を、さらなるヒト化のために用いる。最もヒト化されたVkを、最もヒト化されたVhと組み合わせ、機能的活性をアッセイした。(図13を参照のこと)。
【0196】
目的のVkおよびVhのフレームワーク残基を組み合わせた第2のライブラリーを、重鎖テンプレートとしてDP27を、そして軽鎖テンプレートとしてHT2を用いて生成した。上記のように、問題の各位置でヒトまたはマウス残基のいずれかを有するヒトフレームワークを含んだ重複するオリゴヌクレオチドを合成した。これらのオリゴを混合し、次いでアニールして完全な可変領域を生成した。これら領域をPCRにより増幅し、次いで一本鎖フラグメントにした。これらフラグメントをリン酸化し、次いで変異誘発反応を用い、これら可変領域をM13を基礎にするベクター中に取り込んだ。このライブラリーを次いで、ELISAを基礎にするアッセイにおいて、IL13に特異的であった機能的Fabについてスクリーニングした。軽鎖よび重鎖についての配列を図11CおよびD、ならびに12CおよびDにそれぞれ示す。
【0197】
これらの配列決定結果から、Vk鎖は、全体がヒト残基に耐え得、そしてそれ故、この鎖は完全にヒト化されていた。重鎖について、2つの位置:位置24および94がヒト残基に耐えなかった。従って、重鎖可変領域は、約98%がヒト化された。
【0198】
(D.コンビナトリアルヒト化候補の生成)
いずれのライブラリーのスクリーニングから選ばれた候補も完全にヒト化されなかったので、ヒト化を操作した。所望のヒト化レベルが得られた一連の候補を生成した。HT2ライブラリーからの最もヒト化されたVkを、上記NEWまたはDP27ライブラリーからの最もヒト化されたVhと組み合わせた。次いでこれらのコンビナトリアル候補をアッセイし、最も高いヒト化レベルを保持しながらどれが特異的機能を維持したかを決定した。HT2−NEWから選択された候補は、重鎖についてHT2−NEW番号73および軽鎖についてHT2−NEW番号115であった。HT2−DP27軽鎖から選択された候補は、HT2−DP27番号89およびHT2−DP27番号144であり、そして重鎖についての候補は、HT2−DP27番号123およびHT2−DP27番号276であった。HT2−DP27については、構築物を、以下のように作成した:番号276Vhとの番号89Vkおよび番号123Vhとの番号89Vk;番号276Vhとの番号144Vkおよび番号123Vhとの番号144Vk。さらに、1つの構築物を、番号73Vh NEWとの番号144Vk DP27で作製し、HT2軽鎖とのNEWおよびDP27相互作用が異なるか否かを決定した。
【0199】
これらの組み合わせを、ELISAによって試験し、さらなるヒト化に際し、機能のさらなる損失があるか否かを決定した。これらのアッセイのために、抗原IL13が、限定された量でプレート上に捕獲された。抗IL13Fabを次いで、既知の濃度でプレートに添加し、そしてプレートに1:3希釈で滴定した。結合は、Fabに特異的な二次抗体で検出した。図13は、機能的アッセイ結果を示す。図13A−115Vk/73Vh;図13B−89Vk/276Vh;図13C−144Vk/276Vh;図13D−144Vk/123Vh;および図13E−144Vk/73Vh。これらのデータから、この観察された結果は、ヒト化可変領域の操作された組み合わせが、Fabの抗原への結合に逆に影響しなかったことを示唆した。
【0200】
図11および12中の結果は、HT2軽鎖が完全にヒト化され得、そしてDP27中2つの位置(27および94)を除くすべてはヒト化され得ることを示唆しているので、2つのマウス残基のみが残った理想的なヒト化候補を操作した。この特定の候補の生成に際し、上記クローンを、その親および他の候補と比較してアッセイし、機能の任意の損失が存在したか否かを決定した。図14Aに提示されるデータから、このヒト化された候補は、この高い程度のヒト化(89Vk/276G)とともに機能の有意な損失を示さない。ヒト化はまた、HT2−NEWフレームワーク候補についても実施した。この候補は、重鎖上に残る2つのマウス残基が存在するので、98%のヒト化レベルを有している。図14Bは、この構築物についてELISA結果を示す(115Vk/73Vh FL)。
【0201】
2つの残存するマウス残基を置換することにより、89Vk/276Gをさらにヒト化するための試みがなされた。これらの位置をヒト残基に変異するに際し、候補クローンを、ELISAによってアッセイし、そして親と比較した。しかし、上記マウス残基を選択されたテンプレートの残基で置換する際に、それらを機能の有意な損失が観察された。従って、Vh上の2つの位置がランダム化され、これら2つの位置ですべての可能なアミノ酸を可能にする別のライブラリーを生成した。これらの候補を機能的ELISAアッセイを用いてスクリーニングし、そして親クローン(89Vk/276G)に匹敵する結果を生じた30の候補を配列決定し、どのアミノ酸が標的とした位置に存在するのかを決定した。候補のリストとこの2つの位置のアミノ酸を以下に示す。
【0202】
【表1】

従って、このスクリーニングから、指定された位置で明らかに耐えられ、そしてなお機能の有意な損失を生じない数個のアミノ酸が存在する。従って、このフレームワーク残基を、マウス配列またはヒトフレームにいずれにも見出されないアミノ酸に変更することにより、完全に機能的なFabが標的抗原への結合に対する有害な影響なしで生成された。このランダムライブラリーからさらに試験された候補は、RL−19およびRL−36であった。
【0203】
(実施例10)
(CDR最適化)
候補の抗IL13抗体の最適フレームワーク配列を決定する際に、CDRの最適化を実施した。このプロセスのために、CDRアミノ酸配列をランダム化し、次いで上記ライブラリーをスクリーニングして親クローンと等しいか、親クローンより良好な機能的活性を有するような候補を同定した。このライブラリーについては、親の候補はRL−36(上記を参照のこと)であった。6つのCDRをランダム化し、一度に1つの位置を、そして上記ライブラリーを機能的ELISAを用いてスクリーニングした。強く反応する候補を、親CDRとの比較のために配列決定した。以下の表に列挙されるすべての特有の配列がまた、適切な配列番号識別子とともに図20に見られることに注意されたい。
【0204】
(A.CDR−L1最適化)
CDR−L1は15アミノ酸を含んでいた。これらの位置の各々を、変異誘発反応中で用いられるべく、当モル量で混合された合成オリゴヌクレオチドを用いてランダム化した。変異誘発オリゴヌクレオチドの取り込みの効率は、40%であると決定された。この%を用い、スクリーニングされることが必要な候補の数は3600であった。これらクローンは、機能的ELISAを用いてアッセイし、そして匹敵し得る機能的活性を生じたようなクローンを配列決定した。スクリーニングされた多くの候補から、166の陽性クローンを同定した。このグループから、10の候補を配列決定し、CDR内の変化を決定した。以下に示される配列決定結果から、改良された親和性に至る位置11および14は、NからQおよびMからLであることを得る。
【0205】
【表2】

(B.CDR2−L2最適化)
CDR−L2は7アミノ酸を含んでいた。このライブラリーは、上記に記載のように調製した。このライブラリーの効率は80%であり、そして840クローンがアッセイされた。このアッセイから同定された陽性クローンの番号75および11を配列決定した。以下に示される結果から、位置および置換アミノ酸はランダムのようであったが、このCDR内の数個の位置が改良された活性を生じた。この結果は、CDR−L2は、抗原結合部位から最も遠く、そしてそれ故、抗原結合の際に最も少ない影響を奏するという知見を支持する。
【0206】
【表3】

(C.CDR−L3最適化)
CDR−L3は9アミノ酸から構成されていた。このライブラリーは、生成に際し、50%の効率を生じ、約1700のクローンがスクリーニングされることが必要であった。このスクリーニングから、257の陽性候補を同定し、そして10を配列決定した。これらの結果から、1つの位置のみが、親配列からの変化を生じた。数個の候補が、この位置変化が高度に好ましかったこと(NからA)を示唆した同じ配列を実証した。
【0207】
【表4】

(D.CDR−H1最適化)
CDR−H1は5アミノ酸を含んでいた。このライブラリーの効率は80%であり、約600の候補のみがスクリーニングされることを必要とした。このクスリーニングから、138の陽性クローンが存在し、そしてこれらクローンの11を配列決定した。以下に列挙される結果から、このCDR内の第2の位置が、抗原結合の改良の最大の機会を与えるようであった。しかし、数個のアミノ酸が有利に結合に影響した。
【0208】
【表5】

(E.CDR−H2最適化)
CDR−H2は16のアミノ酸を含んでいた。このライブラリーの効率は70%であり、これは、2100を超える候補がスクリーニングされる必要があることを意味した。このスクリーニングから、192の陽性候補を同定し、そして13を配列決定して、このCDR内で生じた変化を決定した。以下に列挙する配列決定結果から、いくつかの位置が結合親和性を改良したが、親と有意に異なるように見えたアミノ酸変化はなかった。
【0209】
【表6−1】

【0210】
【表6−2】

(F.CDR−H3最適化)
CDR−H3は10アミノ酸を含んでいた。このCDRは、一般に、抗原結合に最も大きい影響を課す1つであると考えられている。なぜなら、このループは、結合部位のほぼ中央にあるからである。このライブラリーは40%の効率を有し、そして2400の候補がスクリーニングされる必要があった。これらのうち、174の陽性クローンを同定し、そして10を配列決定し、このCDR内の変化を決定した。以下に列挙される結果は、第3の位置におけるYからRへの変化が、結合における改善のために重要な1つであり得ることを示した。
【0211】
【表7】

(G.コンビナトリアルライブラリー)
一旦、抗原結合において最も大きい全体の改善を生じたCDR内の変化を決定すると、最良の候補が次に組み合わせられて、これらの変更が、結合を改善したか否かを見た。従って、候補は、すべての好ましいアミノ酸置換を組み合わせるように操作した。
【0212】
このコンビナトリアルライブラリーを生成するために、初期クローンは、CDR−L1−59における改変(NからQ)を取り込んだものであった。このクローンに、CDR−L3についてNからAに(位置4)、CDR−H1についてYからR、H、KまたはSいずれかに(位置2)、CDR−H3についてYからRに(位置3)およびDからKまたはSのいずれかに(位置9)、他の変化を作製した。CDR−l2またはCDR−H2には、変化を作製しなかった。このライブラリーからの1100を超える候補を、機能的ELISAアッセイを用いてスクリーニングした。合計120の候補を、親クローンより大きい活性を有するとして同定した。これらクローンの配列を図15に示す。
【0213】
これらのコンビナトリアル候補が機能を維持していたことを確認するために、競合アッイを実施した。このアッセイのために、IL13がELISAプレート上に捕獲された。精製されたFabである候補は、変化する濃度で、一定濃度の標識されたキメラ抗IL13Fabに予備混合された。この混合物を上記ELISAプレートに添加した。プレートに結合したIL13に結合し得る標識されたキメラ抗IL13を検出した。
【0214】
この競合の結果から、アッセイされた2つの候補が、IL13への結合についてキメラ候補(228 B/C番号3)と競合する等価な能力を示した(図16)。無関係なFabは5Iであり、これは、競合する能力のないことを示す。図17は、3つの親和性が成熟した候補の配列を示す。
【0215】
(実施例11)
(エピトープマッピング)
抗IL13 MAb 228B/C−1は、立体配座エピトープに結合し、そしてカニクイザルIL13に、それがヒトIL13に結合するのと同じ高い親和性で結合する。しかし、228B/Cは、マウスIL13には結合しない。そこで、エピトープマッピングのために工夫された戦略は、このサルIL13の小部分を、対応するマウスIL13配列と交換することであった。重複するオリゴヌクレオチドを図18に示されるように合成した。2ラウンドのPCRを実施し、IL13ハイブリッド構築物を、サルIL13の一部が、マウスIL13からの対応する配列によって置換されるようにアセンブルした(図18)。最終のPCR増幅されたIL13コード領域を、TOPOクローニングキット(Invitrogen)を用いて、pcDNA3.1ベクター中にV5タグとインフレームでクローニングした。すべてのPCR増幅された領域は、配列決定により、所望のドメインがスワップしている変異のみを含み、そしてこの発現ベクター中にさらなる所望されない変異が含まれないことが確認された。
【0216】
抗IL13MAb結合エピトープは、アミノ酸番号49から56の8マーのペプチドESLINVSG(配列番号18)として同定した。このエピトープは、ヒトIL13中のHelix−Bおよびループ−BC中に位置している。cyno−IL13由来のエピトープを用いてマウスIL13中の対応する配列をスワップしたとき、得られるハイブリッドIL13分子は、当初のcynoIL13のそれと類似親和性で228B/Cを結合し得、さらに、このペプチドにおいて残基番号49〜56間でcynoまたはヒトIL13への228B/C MAb結合を確認した。ヒト、cyno、およびマウスIL13間の配列比較は、ヒトIL13中の3つの残基Ile52、Val54、Gly56のみが保存されておらず、この8マーペプチドによるIL13と抗IL13 MAbとの相互作用のための重要な残基は、これら3つの残基の1つ、または特定の組み合わせによって決定されることを示唆している。
【0217】
このエピトープは、ペプチドスポット分析によってさらに確認された。完全なヒトIL13ペプチドが、セルロースメンブレン上でSPOTを経由して合成された一連の重複する12マーペプチドで走査した。唯一の抗IL13反応性ペプチドを、アミノ酸番号44〜56の12マー、YCAALESLINVS(配列番号19)として同定した。これは、ドメインスワッピング実験により同定された領域と重複している。
【0218】
(寄託)
以下の培養物は、American Type Culture Collection、10801 University Boulevard、Manassas Va.20110−2209 USA(ATCC)に寄託されている:
【0219】
【表8】

この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定、およびそれに基づく規則(ブタペスト条約)の下になされた。これは、寄託の日から30年間の生存培養の維持を保証する。この生物は、ブタペスト条約の条項の下、ATCCによって利用可能にされ、これは、関連する米国特許の発行に際し、公衆のこの培養の子孫の永久的かつ制限されない利用可能性を保証する。
【0220】
本出願の譲受人は、寄託に関するこの培養物が、適切な条件下で培養されたとき、死滅または損失または破壊される場合、それが同じ培養物の生存標品での届出で迅速に置換されることに同意した。寄託された株の利用可能性は、任意の政府の当局の下で認可された権利に違反して本発明を実施するライセンスとして解釈されるべきではない。
【0221】
先行する書面明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするに十分であると考えられる。本発明は、寄託された培養物によって範囲は制限されるべきではない。なぜなら、この寄託された実施形態は、本発明の1つの局面の例示として、そして機能的な等価である任意の培養が本発明の範囲内にあることが意図されるからである。本明細書中の材料の寄託は、本明細書中に含まれる書面の記載が本発明の任意の局面の実施を、そのベストモードを含んで可能にするに不十分であること、またはそれが提示する詳細な例示に請求項の範囲を限定すると解釈されるべきことの是認を構成するものではない。実際に、本明細書中に示されおよび記載されるものに加え、本発明の種々の改変が、先行する説明から当業者に明らかになり、そして添付の請求項の範囲内に入る。
【0222】
当業者は、慣用を超えない実験を用いて、本明細書に記載される本発明の詳細な実施形態に対する多くの等価物を認識、または確実にし得る。そのような等価物は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図13−A】
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【図13−B】
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【図13−C】
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【図13−D】
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【図14−A】
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【図14−B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21−A】
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【図21−B】
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【公開番号】特開2011−200242(P2011−200242A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−111913(P2011−111913)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【分割の表示】特願2006−547431(P2006−547431)の分割
【原出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】