説明

新規植物ウイルス粒子及びその不活性化の方法

本発明は一般に、ワクチン等としての使用のための、植物によって生産される植物ウイルスに関する。より詳細には、本発明は、簡単な不活性化方法及びそれによって得られる植物ウイルス粒子に関する。本明細書で述べる本発明は、不活性化植物ウイルス様粒子の表面での病原体由来エピトープのエピトープ提示に基づく安全なワクチンを生産するための手段及び方法を提供する。本発明は、キメラ植物ウイルス粒子の不活性化及びウイルス粒子精製手順への不活性化工程の組込みを教示する。不活性化方法は、ウイルスを植物に感染することができないようにし、ウイルス粒子の完全性は保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
本発明は、一部が、国立衛生研究所によって授与された認可番号1U01AI054641−01の下での政府援助を得て為された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の交差参照
本出願は、開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2005年12月2日出願の米国特許仮出願第60/742,197号の優先権を主張する。
【0003】
発明の分野
本発明は、一般に、ワクチン等としての使用のための、植物によって生産される植物ウイルスに関する。より詳細には、本発明は、ウイルス不活性化方法及びワクチン等としての植物ウイルス粒子に関する。
【0004】
発明の背景
ワクチン接種は、個体及び個体群全体を感染因子から保護する。安全で有効なワクチンを開発することは、しかしながら、有効な抗原の同定から開発されたワクチンに関する安全上の懸念にまで及ぶ多くの理由から、必ずしも容易ではない。外来性ペプチドの担体としてのウイルスの使用は、複合ウイルスワクチンの分野で研究されてきた。そのようなワクチンは、異なる動物ウイルス成分の雑種である、キメラウイルスに基づく。通常そのような雑種の主要成分は、無害であるか又は無害にしたウイルスに由来し、重要でない少量の成分は、病原性ウイルスの選択された抗原成分である。例えばワクシニアなどのポックスウイルス又は弱毒化ポリオウイルスは、ヒトウイルスを含む他の動物ウイルスの免疫原性成分のためのベクターとして使用され得る。
【0005】
しかし、上述したような手法は不都合であり得る。そのようなワクチンは細胞培養系で増殖されたウイルスから生産され、細胞培養系は、設計し、実施するのに費用がかかり得る。複合ウイルスアプローチは、突然変異が変化した感染性、抗原性及び/又は病原性を有する新規形態のウイルスを生じさせ得る危険性を伴う、動物感染性生存ウイルスの遺伝子操作を含む。加えて、ベクターとして使用される動物ウイルスは、動物が既に暴露された可能性があるウイルスであり得、動物が既にそのベクターに対する抗体を産生している可能性がある。従ってベクターは、2番目のウイルスの組み込まれた抗原部位が免疫応答を誘導する前に免疫系によって破壊され得る。
【0006】
多くの方法が哺乳動物ウイルス不活性化のために使用されてきた。これらは、UV照射、UV/ソラレン照射、Pentose Pharmaceuticalsの化学物質、マイクロ波、ホルマリン、BPL、pH、温度、及び塩化アンモニウム中でのインキュベーションを含む。UV照射は組換え植物ウイルスを不活性化するために使用されてきた。例えばLangeveld et al. (2001) 「Inactivated Recombinant Plant Virus Protects Dogs from a Lethal Challenge with Canine Parvovirus」, Vaccine 19:3661-3670参照。
【0007】
粒子を生産する方法及び、特にワクチンとしての、粒子の使用に関する特許は、ウイルスのコートタンパク質の一部として所定の外来性ペプチドを含む植物ウイルスの集合粒子を論じた、米国特許第6,110,466号及びウイルスのコートタンパク質内に外来性ペプチド挿入物を含有し、挿入部位が、好ましくは挿入物に隣接する直列反復配列を含まない、植物ウイルスの集合粒子を論じている、米国特許第6,884,623号を含む。
【0008】
米国特許第5,602,242号は、異種の、好ましくは桿状コートタンパク質キャプシドへの遺伝子操作されたウイルス配列のキャプシド化のための組換えRNAウイルスに関する。本特許はまた、特に植物において遺伝子型及び表現型変化を生じさせるための植物のトランスフェクションに関して、そのような組換えウイルスを作製し、使用する方法に関する。ウイルスコートタンパク質遺伝子を欠失させる又は不活性化するための手段は、Ahlquist et al. (1981) 「Complete Nucleotide Sequence of Brome Mosaic Virus RNA3」, J. Mol. Biol. 153:23-38に述べられている。
【0009】
Burge et al., 「Effect of Heat on Virus Inactivation by Ammonia」, Appl. Environ. Microbiology, Aug. 46(2):446-51, 1983は、塩化アンモニウムによるウイルス不活性化への熱の影響を論じている。バクテリオファージf2及びポリオウイルス1(エンベロープを持つ哺乳動物ウイルス)が検討された。40℃以上の温度は、本明細書で試験されたウイルスを損傷することが認められた。Cramer WN, et al. 「Kinetics of virus inactivation by ammonia」, Appl Environ Microbiology, Mar 45(3):760-5, 1983は、Burge et al.と同様に、ウイルスを不活性化する試みにおいて下水を処理するために塩化アンモニウムを様々なpHで使用した。やはり、バクテリオファージf2及びポリオウイルス1(CHAT菌株)が検討された。それらの試験の結果は、ポリオウイルスの不活性化率はNH4+濃度の作用によって、皆無ではないにせよ、f2の不活性化率が受けるよりもはるかに低い影響しか受けなかったことを示すと報告されている。論文は、特にエンテロウイルス群のメンバーに関して、塩素に代わる可能性のあるものとして廃水処理施設における前記方法論の可能な適用を論じている。
【0010】
発明の概要
本発明は、不活性化ウイルス様粒子(VLP)を生成するために8.0を上回るpHで植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択される植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及び植物材料から不活性化VLPを採取することによって植物ウイルスを不活性化するための方法を含む。これらの方法は、ウイルスへの外来性ペプチドの組込みを含み得る。ウイルスは、エンベロープを有さないRNAウイルスであり得る。不活性化VLPは、異種生物活性ペプチドを提供し得る。硫酸アンモニウムは0.5M〜1.0Mの濃度で、一般に0.7Mで投与される。pHは一般に9.0であり、植物材料は室温でインキュベートされ得る。VLPは、植物ウイルス中に存在するRNAの少なくとも一部を欠くので、非感染性である。加えて、接種後に感染を開始することができず、複製することができない。
【0011】
本発明はまた、キメラ植物ウイルス粒子の不活性化及びウイルス粒子精製手順への不活性化工程の組込みを含み得る。不活性化方法は、ウイルスを植物に感染することができないようにする。ウイルス粒子の内部に存在する感染性ウイルスゲノムRNAは破壊されるが、ウイルス粒子の完全性は維持される。これらの方法は拡大可能であり、精製工程に組み込むことができる。
【0012】
本発明はまた、8.0を上回るpHで、植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択され、及び植物ウイルス中に存在するRNAの少なくとも一部を欠く植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及び植物材料から、複製することができない不活性化VLPを採取することによって非感染性VLPを生産する方法を含む。
【0013】
加えて、本発明の実施形態はワクチンを含むことができ、前記ワクチンはウイルスを含み、前記ウイルスは組み込まれた外来性ペプチドを含み、前記ワクチンは、不活性化VLPを生成するために8.0を上回るpHで植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択される植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及びその後植物材料から不活性化VLPを採取することを含む方法によって生産される。提供されるVLPペプチドは、VLPを哺乳動物に投与したとき免疫応答を惹起することができる。ワクチンは、インフルエンザウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、イヌパルボウイルス又は炭疽菌のために使用できる。加えて、ワクチンは、ペプチドが抗原の部分であり、前記部分がワクチンとして有効であるサブユニットワクチンであり得る。
【0014】
配列の簡単な説明
配列番号1は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA1のペプチド配列である。
配列番号2は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA2のペプチド配列である。
配列番号3は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA3のペプチド配列である。
配列番号4は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA3Eのペプチド配列である。
配列番号5は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA4のペプチド配列である。
配列番号6は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA5のペプチド配列である。
配列番号7は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA6のペプチド配列である。
配列番号8は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA7のペプチド配列である。
配列番号9は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA7Eのペプチド配列である。
配列番号10は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA8のペプチド配列である。
配列番号11は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA9のペプチド配列である。
配列番号12は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA10のペプチド配列である。
配列番号13は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA11のペプチド配列である。
配列番号14は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA12のペプチド配列である。
配列番号15は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA13のペプチド配列である。
配列番号16は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA14のペプチド配列である。
配列番号17は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA15のペプチド配列である。
配列番号18は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA16のペプチド配列である。
配列番号19は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA17のペプチド配列である。
配列番号20は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA18のペプチド配列である。
配列番号21は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA19のペプチド配列である。
配列番号22は、本発明の実施例3に従って使用されるエピトープPA20のペプチド配列である。
配列番号23は、本発明の炭疽ワクチンの防御抗原(PA)のアミノ酸配列である。
配列番号24は、インフルエンザウイルスエピトープM2eのアミノ酸配列である。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本発明を以下でより詳細に説明する。本発明は、しかし、多くの異なる形態で具体化でき、本明細書で示す実施形態に限定されると解釈されるべきではない。
【0016】
本発明は、一部には、ワクチン等としての使用のための新規植物ウイルス様粒子を作製するための新規ウイルス不活性化方法に関する。ウイルス不活性化のための方法を本明細書で述べる。本発明は、キメラ植物ウイルス粒子の不活性化及びウイルス粒子精製手順への不活性化工程の組込みの例を提供する。不活性化方法は、ウイルスを植物に感染することができないようにする。本発明の実施形態は、不活性化植物ウイルス様粒子の表面での病原体由来エピトープのエピトープ提示に基づく安全なワクチンを生産するための手段及び方法を含み得る。
【0017】
本発明の実施形態は、ウイルスの完全な感染性ゲノムを欠くウイルス様粒子(VLP)を生産するためのウイルスの不活性化についての効率的で拡大可能な手順を含む。そのような実施形態は、初期抽出緩衝液として、一般にpH9で、硫酸アンモニウム緩衝液を使用することを含む。硫酸アンモニウムは非毒性であるとみなされ、規制当局によって許容されている。
【0018】
本発明の実施形態は、約9.0のpH範囲内の硫酸アンモニウムによるウイルス不活性化を含む。ウイルス不活性化はRNAの切断と分解を通して起こり得る。ウイルス粒子は透過性となり得、アンモニウムイオンのウイルス内への侵入を許容し得る。従って、アンモニウムイオンとのインキュベーションはpH8.0を上回って実施されるべきであり、これは、このpHレベルでウイルスは「膨張」してその構造を「開放」し、その結果ウイルスコートを通しての低分子の浸透を許容するからである。
【0019】
本発明はまた、典型的に結合しているRNAを欠く、新規RNAウイルス様粒子を提供することができ、前記ウイルス様粒子は適切に提示される抗原を含む。
【0020】
本発明の実施形態は、他の精製操作と継ぎ目のない方法での粒子の不活性化の組込みのための方法を含む。これらの方法は、植物組織が、pH9の0.7M硫酸アンモニウムである抽出緩衝液中で収集され、均質化されて、室温で約20時間インキュベートされる場合を含み得る。インキュベーション後、粒子はもはや植物に対して感染性ではなく、接種後に感染を開始することができない。pH7.0の同じ条件はウイルスを不活性化せず、より高い温度、すなわち40℃はウイルス構造を損傷すると思われた。
【0021】
付加的な処理工程及びパラメータ
本発明の実施形態はまた、不活性化緩衝液中で植物材料を摩砕/均質化すること、摩砕されたスラリーを、ウイルスゲノムRNAを分解するために不活性化緩衝液中でインキュベートすること、及び生じたウイルス粒子を精製することを含み得る。摩砕された材料は、不活性化緩衝液中でのインキュベーションの前に遠心分離/ろ過によってさらに清澄化することができる。インキュベーション後、粒子を、PEGによって又は硫酸アンモニウムのモル濃度を、粒子を溶液から沈殿させるレベルまで上昇させることによって沈殿させ得る。通常、不活性化工程に続いて緩衝液交換及びクロマトグラフィー工程を実施する。不活性化工程は、いかなる時点でも精製手順に組み込むことができる。例えば一部の手順では、不活性化を以下のように過程に組み込んだ。0.7M(NH42SO4、pH7中でのHICカラムへのCPMV結合。0.7M(NH42SO4、pH9での結合CPMVの洗浄。0.7M(NH42SO4、pH9でのCPMVの溶出。以下の範囲が使用できる。0.5〜1.0M(NH42SO4、8.0を上回るpH及び10〜40℃の温度。
【0022】
VLPを作製するために使用できるウイルスの種類と選択
本発明のワクチンは、抗原の形態であり得、エンベロープを有さないRNAウイルス(+、−及び/又は二本鎖)のコートタンパク質に融合できる。本発明の実施形態は、正二十面体植物RNAウイルスと共に植物RNAウイルスを含み得る。本明細書ではササゲモザイクウイルスを例示するが、本発明の方法は他の類似ウイルスにも適用できる。例えば、本発明に従った使用のための、一部の好ましいウイルスは以下の通りである。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明はいかなるRNA植物ウイルスにも適用できる。このシステムを明らかにするため、植物ウイルス、ササゲモザイクウイルス(CPMV)を選択した。CPMVの三次元構造は公知であり、これは、粒子構造の破壊を伴わない修飾に適した部位の同定を可能にする。現在まで、少なくとも9の植物ウイルス属からのウイルス及び3つの亜型2ssRNAサテライトウイルスが、高分解能でそれらの三次及び四次構造が解明されている。これらの一部を上記の表1に列挙する。
【0025】
ベクターとしての使用のための植物ウイルスの1つの例示的な群は、そのコートタンパク質がβバレル構造を有するものである。βバレル構造を有するウイルスを使用することの利点は、βシートの個々の鎖間のループが外来性ペプチドの挿入のために好都合な部位を提供することである。1又はそれ以上のループの修飾は、本発明に従った外来性ペプチドの発現のための1つの戦略であり得る。コートタンパク質の他の領域への挿入、例えばN末端及び/又はC末端への挿入も可能である。
【0026】
その構造が解明されている正二十面体対称性を有するすべての植物ウイルスは、CPMVに例示される8本鎖βバレルフォールドに適合し、これがすべての正二十面体ウイルスにおける共通構造である可能性が高い。そのようなウイルスはすべて、β鎖の間のループ及び/又はN末端及び/又はC末端で起こり得る、外来性ペプチド配列の提示のための本発明における使用に適する。
【0027】
異種又は外来性配列を挿入するためにDNA配列を修飾する方法は当分野で周知である。一般にウイルスRNA配列は、完全長cDNA転写産物に変換し、ベクターにクローニングして、その後外来性DNAセグメントを、RNA複製、粒子形成を破壊することなく、又は感染性を妨げることなくそのような挿入を認容することができる領域に挿入することによって修飾される。
【0028】
コモウイルスは、主としてマメ科植物に感染する少なくとも14の植物ウイルスの群である。それらのゲノムは、直径約28nmの同寸法の粒子内に別々にキャプシド化された、異なる大きさの一本鎖プラス‐センスRNAの2個の分子からなる。2種類のヌクレオタンパク質粒子は、塩化セシウム密度勾配でのそれらの行動の結果として中間(middle:M)及び底部(bottom:B)成分と称され、粒子内のRNAはそれぞれM及びB RNAとして知られる。どちらの型の粒子も、高分子(VP37)及び低分子(VP23)コートタンパク質の各々60コピーからなる同じタンパク質組成物を有する。ヌクレオタンパク質粒子に加えて、コモウイルス試料は、上部(top:T)成分として知られる可変量の空の(タンパク質のみの)キャプシドを含有する。
【0029】
コモウイルス群のタイプメンバーであるササゲモザイクウイルス(CPMV)の場合、M及びB RNAの両方がポリアデニル化され、それらの5’末端に共有結合された低分子タンパク質(VPg)を有することが知られている。他のコモウイルスに関するより限られた試験は、これらの特徴が群のすべてのメンバーのRNAによって共有されることを示唆する。CPMVからの両方のRNAが配列決定され、ポリ(A)尾部を除いて、3481(M)及び5889(B)ヌクレオチドからなることが示された(van Wezenbeek et al. 1983; Lomonossoff and Shanks, 1983)。両方のRNAが、1つの長いオープンリーディングフレームを含有する。ウイルス遺伝子産物の発現は、大きな前駆体ポリペプチドの合成とその後の切断を通して起こる。両方のRNAが植物全体の感染のために必要である。より大きなB RNAはプロトプラスト中で独立して複製することができるが、この場合ウイルス粒子は生成されない(Goldbach et al., 1980)。この所見は、より早期の遺伝学的試験と合わせて、コートタンパク質がM RNAによってコードされること、及び感染性ウイルス粒子の形成がB及びMの両方のウイルスゲノムRNAの存在に依存することを確証した。
【0030】
コモウイルス科の利点は、キャプシドが、個別に操作できる3つの異なるβバレルの各々60コピーを含有することである。上記に列挙した他のすべてのウイルス科及び属は、類似の三次元構造を有するが、1種類のβバレルを備える。(CPMVの場合は、例えば、外来性挿入物は低分子キャプシドタンパク質(VP23)のβB−βCループ内のプロリン23(Pro23)残基の直前に作製できる。米国特許第6,884,623号参照。
【0031】
本発明はまた、その結晶構造がまだ決定されていない正二十面体植物ウイルス(βバレル構造を有するものを含有する)にも適用できる。結晶構造が未知のウイルスと結晶構造が公知である第二のウイルスの間でコートタンパク質遺伝子内に有意の配列相同性が存在する場合、一次構造のアラインメントはβ鎖の間のループの位置を推測することを可能にする[Dolja, V. V. and Koonin, E. V. (1991) J. Gen. Virol., 72, pp 1481-1486参照]。加えて、ウイルスが、結晶構造が決定されているウイルスに対してごくわずかなコートタンパク質配列相同性を有する場合、潜在的挿入部位の位置の決定を可能にするために、一次構造アラインメントを適切な二次及び三次構造予測アルゴリズムと共に使用し得る。
【0032】
CPMV及びインゲンポッドモトルウイルス(bean pod mottle virus)(BPMV)は、BPMVとCPMVの三次元構造が非常に類似し、一般にコモウイルス科に特有であることを示す。
【0033】
CPMVは、2つのサブユニット、低分子(S)及び高分子(L)コートタンパク質を含み、ウイルス粒子当たりその各々60コピーが存在する。外来性ペプチド配列は、L又はSタンパク質のいずれかから又は同じビリオン上で両方のコートタンパク質から発現され得る。
【0034】
CPMVは二分節RNAウイルスである。何らかのRNAウイルスのゲノムを、外来性ペプチドを発現するように操作するために、RNAのcDNAクローンが使用できる。両方のCPMV RNA分子の完全長cDNAクローンが使用可能であり、外来性ペプチドをコードするオリゴヌクレオチド配列を挿入するために操作できる。植物RNAウイルスからのゲノムのcDNAクローンは、植物に接種したとき感染性であるインビトロ転写産物を生成するために使用できる。
【0035】
本発明のさらなる態様では、植物中で感染性転写産物を生成するためにウイルスcDNAの5’末端に連結されたキャッサバ葉脈モザイク(CsVMV)プロモーター配列を利用する、CPMV RNA M及びBのcDNAクローンを構築し、そのうちM RNAのcDNAクローンは、外来性ペプチドをコードする挿入オリゴヌクレオチド配列を含む。この手法は、インビトロで生成される転写産物の使用に伴って遭遇する問題のいくつかを克服し、すべての植物RNAウイルスに適用できる。
【0036】
他のウイルスは、様々なブロモウイルス、特にササゲクロロティックモトルウイルス(CCMV)及びソベモウイルス、特に南部インゲンモザイクウイルス(SBMV)を含み得る。三分節ウイルスのRNAセグメントも使用できる。そのような有用なウイルスの例は、正二十面体キャプシドにパッケージングされた、ブロモウイルス科の三分節ウイルス、例えばブロムモザイクウイルス(BMV)及びササゲクロロティックモトルウイルス(CCMV)である。
【0037】
BMVのゲノムは、それぞれ3.2、2.9及び2.1kbのメッセンジャーセンスRNAの1、2及び3に分けられる。コートタンパク質は、RNA3から形成されるサブゲノムRNA4によってコードされる。細胞がBMV RNA3に感染するためには、BMV RNA1及び2によってコードされるタンパク質が存在しなければならない。これら3つのBMV RNAは同一粒子内に別々にキャプシド化されている。各々の粒子は180のコートタンパク質を含有する。コートタンパク質は、ペプチド挿入物を担持するように修飾できる。
【0038】
表1に示す多くのウイルスのコートタンパク質を比較した。二次構造エレメント及びそれらの空間構成の類似性が、米国特許第6,884,623号の図10に示されている。β鎖の間に存在するループのいずれもが外来性エピトープの挿入のため使用できる。しかし、挿入は、付加物がウイルスの内側又は外側表面に暴露されるように、及びコートタンパク質サブユニットの構築とウイルスの感染性が破壊されないように行われる。特定ループの選択は、挿入がウイルス集合を妨げる可能性が低いように、結晶構造によって示される、個々のコートタンパク質サブユニットの構造及びそれらの互いの相互作用についての知識を用いて実施できる。正確な挿入部位の選択は、最初に結晶構造の検査、次いで最適部位を同定するためのインビボ実験によって実施できる。
【0039】
そこで、特にウイルス表面で暴露され、従って潜在的に挿入のための良好な部位であるコートタンパク質の部分を同定するために、植物ウイルスの三次元構造を検討することができる。コートタンパク質の暴露部分のアミノ酸配列も、α−へリックス構造を破壊するアミノ酸に関して検討することができ、なぜなら、これらもまた挿入のための潜在的に良好な部位であるからである。適切なアミノ酸の例は、ポリペプチド鎖においてα−へリックスを中断し、構造内に堅固なねじれ又は屈曲を創造する、プロリン及びヒドロキシプロリンである。コートタンパク質のN及びC末端も挿入のための魅力的な部位である。
【0040】
抗原及びエピトープの種類
本発明の実施形態は、サブユニット型ワクチンのための方法を含み得る;すなわち、提示される抗原は、有効であることが公知の抗原のセグメントだけである。そのようなワクチン(抗原)は、感染過程又は疾患の病理に関連するすべての機能性を欠くので、本質的に全生物又は全タンパク質ワクチンよりも安全であり得る。
【0041】
本発明の実施形態は、炭疽菌(Bacillus anthracis)感染の作用に対するサブユニットワクチンのための方法を含み得る。この炭疽ワクチンにおいて、サブユニット抗原、配列番号23は、いわゆる防御抗原又はPAに由来する約25アミノ酸のセグメントである。このタンパク質は、炭疽菌に対する免疫を惹起する上で有効であることが公知であり、新生代の炭疽菌ワクチンのための基剤である。
【0042】
イヌパルボウイルスワクチンも生産できる。例えばLangeveld et al. (2001) 「Inactivated Recombinant Plant Virus Protects Dogs from a Lethal Challenge with Canine Parvovirus」, Vaccine 19:3661-3670及びLangeveld et al. (1995) 「Full Protection in Mink Against Mink Enteritis Virus with New Generation Canine Parvovirus Vaccines Based on Synthetic Peptide or Recombinant Protein」, Vaccine 13:1033-1037参照。これらのウイルス粒子に基づくサブユニットワクチンは、ウイルス病原体(Parvovirus)に対して有効であることが既に証明され、感染因子による致死的攻撃誘発から動物を保護した。キメラ粒子は、現在、植物を予め操作された組換えウイルスRNA又はDNAに感染させることによって、ササゲ植物において生産されている。接種後、組換えウイルスは細胞から細胞へと長い距離を伝播する。これは植物の全身感染を生じさせる。感染植物組織を収集し、キメラウイルス粒子を抽出して、製剤し、ワクチンとして使用する。本発明の実施形態によれば、環境保護についての必要条件を満たすためにワクチン候補物質を不活性化することは好都合であり得る。
【0043】
本発明の不活性化方法は、その後ワクチンとして使用される抗原エピトープを提示する粒子だけでなく、他の有用なペプチド、例えばターゲティングペプチド、抗菌ペプチド等を提示する粒子にも適用できる。この技術はまた、その後粒子表面への様々な部分の共有結合のために使用される野生型又は修飾粒子にも適用できる。これは、抗原タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、核酸、検出試薬(蛍光染料など)、放射性物質、ターゲティングリガンド等を含むタンパク質の結合を含む。粒子複合体は、ワクチンとして並びに標的組織への結合薬剤の送達のため等に使用できる。この技術も、その後投与のため及びカプセル化された物質の送達のために使用される、粒子の内部への様々な物質、例えば薬剤、外来性遺伝子の発現のための外来性核酸、毒素等のカプセル化に先立って適用できる。
【0044】
本発明に従って使用でき、キャプシドの表面で発現され得る多くのペプチドエピトープの中には、インフルエンザウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス及び炭疽菌からのものを含む、ウイルス及び細菌病原体及び癌からのペプチドエピトープが含まれる。
【0045】
植物ウイルスに組み込み得る外来性ペプチドは(例えばWO92/18618参照)、極めて多様な種類であり得る。外来性ペプチドの性質と大きさ及びウイルス粒子内で又はウイルス粒子上でそれが位置する部位の故に、いくつかの制限が存在し得る。ペプチド配列は、インビボで培養したとき修飾ウイルスが集合する能力を妨げてはならない。本明細書において、ペプチド又はそれをコードする核酸に適用するとき、「外来性」という用語は、ベクターとして使用される植物ウイルスにとって天然ではないペプチド又は核酸配列を意味する。そのような配列は、選択的に、外因性又は異種配列とも表わされ得る。「ペプチド」という用語は、低分子ペプチド及びポリペプチドを含む。ペプチドは、一般に6以上のアミノ酸残基を含有する。
【0046】
修飾ウイルス粒子は、何らかの生物学的有用なペプチドから形成され得る。そのようなペプチドの例は、ペプチドホルモン;酵素;増殖因子;原生動物、ウイルス、細菌、真菌又は動物起源の抗原;抗イディオタイプ抗体を含む抗体;免疫調節剤及びサイトカイン、例えばインターフェロン及びインターロイキン;受容体;付着因子;及び前記種類のペプチドのいずれかの部分又は前駆体である。
【0047】
植物ウイルスベクター上で提示される広範囲の生物活性ペプチド配列の中で(例えばWO92/18618による)、特に重要なのは、ワクチンの基剤である抗原ペプチド、特に動物(ヒトを含む)ウイルス及び細菌ウイルスである。ワクチンは予防的(すなわち疾患予防)又は治療的(すなわち疾患治療)適用を有し得ることに留意すべきである。ワクチン適用のために、特に魅力的なエピトープ提示系が提供される。そのような適用のために使用するとき、抗原ペプチド成分は、例えばウイルスのコートタンパク質の暴露部分に位置することによって、免疫系によって容易に認識されるようにウイルス粒子上に適切に位置づけられる。そこで、本発明の一部の実施形態では、植物ウイルスのコートタンパク質の表面の暴露部分に組み込まれた、病原体、例えば動物ウイルス又は細菌病原体に由来する抗原を含有する修飾植物ウイルスの集合粒子が提供される。集合修飾植物ウイルス粒子は、ワクチンの免疫原成分として使用できる。抗原ペプチドを提示するそのような集合修飾植物ウイルス粒子はまた、例えば動物(ヒトを含む)病原体及び疾患の検出のための、免疫診断アッセイの抗原提示成分としての適用を有する。
【0048】
本発明の実施形態では、抗原性VLPは、抗原の完全性を維持しながら不活性化される及び/又は非感染性にされる。従ってこれは、それらが植物ウイルスである場合でも、感染性ウイルス粒子の意図しない伝播の危険性を排除する。これは、規制懸念を大きく削減することができる。そこで、植物への植物ウイルスの伝播と拡大は、治療される人間又は動物に投与された後、大きく低下する。この系は、ウイルスコートタンパク質に挿入され得る外来性ペプチドの大きさに関して極めて融通性がある。すなわち、38まで又はそれ以上のアミノ酸を含有するペプチドが本発明に従って使用できる。
【0049】
投与方法
これらの、今や組換え体であるウイルスのための投与方法は、粘膜に投与されるエーロゾルを含み得る。しかし、様々な投与方法が本発明に従って使用できる。これらは、注射投与(IP、IM、SC)、あるいは経皮、鼻内又は経口投与を含む。
【0050】
候補ウイルス、そのキャプシド形態学、及びその中への抗原/エピトープの挿入
外来性ペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントは、ウイルスが複製し、宿主に感染する能力に干渉せず、及びペプチドの適切な生産と修飾ウイルス粒子上でのペプチドの提示を可能にする、もとのウイルスのコートタンパク質内の適切な位置に挿入され得る。一般に、外来性ポリヌクレオチドは、コートタンパク質の一部として又はコートタンパク質との融合物として生産されるように挿入される。
【0051】
RNA転写産物は、当分野で公知のように、インビボで、例えば細菌宿主において、又はインビトロで調製され、適切な植物宿主又は植物組織に接種するために使用される。キャプシド化は宿主生物内で起こるので、RNAはキャプシド化形態で又は溶液中で使用され得る。あるいは、DNA依存性RNAポリメラーゼプロモーターに融合したウイルスDNAが、植物宿主においてインビボでウイルスRNAの転写を開始させるために使用できる。転写されたRNAは、その後、植物宿主においてウイルス感染を開始することができる。
【0052】
当業者に理解されるように、所与のウイルスは、シス又はトランスで作用する遺伝子の存在を含む、最適の感染性及び複製のために特別の条件を必要とすることがあり、植物又は植物組織に感染するときにはそれらのすべてが存在すべきである。例えばBMV RNA3の感染性のためには、BMV RNA1及び2の存在が必要である。さらに、所与の宿主に関して必要な宿主特異性遺伝子を有するウイルスによる感染は、一部の状況では、通常はその宿主に影響を及ぼさない第二のウイルスによる宿主の感染を可能にすることがあり、例えばBMV単独ではタバコに感染せず、TMV単独ではオオムギに感染しないが、TMVとBMVウイルスの混合物はオオムギとタバコの両方に感染する(Hamilton and Nichols (1977) Phytopathology, 67:484-489)。
【0053】
植物は、圃場及び/又は温室条件下でトランスフェクトされ得る。通常、葉組織の表皮剥離がトランスフェクションのために必要である。植物は、成長周期の間のいずれの時点でも接種することができ、好ましくは植物が幼若であるときに接種する。ウイルスの選択及び修飾の詳細は、当業者に公知であり、理解されているパラメータに依存する自由選択事項である。
【0054】
コートタンパク質を修飾することに加えて、他の適切な遺伝子を宿主植物における発現のためにもとのウイルスゲノムに挿入し得る。これらは、植物における商業的に有用なペプチド、タンパク質、薬剤又は他の何らかの有用なポリペプチドの生産のための遺伝子を含む。一般に、その発現産物が植物細胞において機能性である異種遺伝子は、ここで述べるウイルス発現系に挿入することができる。
【0055】
修飾されたコートタンパク質自体を異種ウイルスのゲノムに挿入することができる。異種コートタンパク質遺伝子の翻訳の忠実性を確実にするためには、もとのコートタンパク質についての翻訳開始ATGコドンを、それが欠失されていない場合は、修飾する必要があり得、これは当分野で公知の手段によって、例えばオリゴヌクレオチド指定置換によって達成され得る。付加されるコートタンパク質配列がそれ自体の翻訳開始コドンを有する場合は、もとのタンパク質についての開始コドンの欠失又は不活性化が必要である;あるいは、しかしながら、それによって導入されるアミノ酸配列変化がRNAパッケージング及びキャプシド形成を妨げないことを条件として、前記開始コドンは保持されてもよく、付加されるコートタンパク質配列の翻訳を開始するために使用され得る。
【0056】
広い範囲の感受性植物宿主及び植物細胞が使用できる。これらは、双子葉及び単子葉植物、植物の組織並びに懸濁培養で増殖する又はカルスを形成する植物細胞を含む。
【0057】
さらなる処理工程
修飾植物ウイルス粒子を作製するために、外来性ペプチド(動物ウイルス又は細菌抗原など)をコードするヌクレオチド配列を、コートタンパク質をコードする植物ウイルスゲノムの部分との融合物として導入し、植物又は植物細胞を修飾ウイルス核酸に感染させて、修飾ウイルスの集合粒子を採取することにより、植物ウイルス核酸を修飾することができる。単離ウイルスを、その後、本発明に従って不活性化する。
【0058】
外来性ペプチドをコードする核酸配列は、典型的には、コートタンパク質の暴露部分をコードする植物ウイルスゲノムの部分で導入される。この手順は、RNAウイルスのRNAに対応するcDNAの操作によって実施できる。RNAウイルスの場合は、修飾ウイルスの集合粒子の採取の前に操作段階を達成するために、通常、修飾DNAのRNA転写産物を植物細胞、又は好ましくは全植物の接種のために調製する。あるいは、ウイルスコートタンパク質をコードする配列の5’末端が植物宿主において活性なプロモーターの転写開始部位に直接融合されるように、RNAウイルスのcDNAクローンをプラスミドにおいて構築し得る。外来性ペプチドは、最初にキャプシドタンパク質の部分として発現され、それにより全ウイルス粒子の部分として生産される。ペプチドは、従って、それ自体での使用が意図された複合体分子として生産され得る。あるいは、ウイルス粒子からの開裂を生じさせる適切な試薬の適用によってウイルス粒子から所望ペプチドの放出を可能にするために、ウイルスの遺伝子修飾を設計し得る。これは、酸加水分解に感受性である対象ペプチドに隣接するアミノ酸を挿入することによって達成され得る。例えばasp−proアミノ酸を挿入ペプチドに隣接するように操作することができ、ペプチドは、弱酸での処理によって粒子から放出され得る。
【0059】
商業規模で修飾ウイルスを生産するために、ウイルス生産の各バッチについて無効な接種剤(DNA又はRNA転写産物)を調製する必要はない。その代わりに、初期接種剤を、植物を感染させるために使用し得る;生じた修飾ウイルスを植物において増幅して、全ウイルス又はウイルスRNAをその後のバッチのための接種剤として生産し得る。
【0060】
外来性RNA又はDNAは、様々な立体配置で植物ウイルスゲノムに挿入し得る。例えばコートタンパク質をコードする既存の核酸への付加物として又はコートタンパク質をコードする既存配列の一部の置換物として挿入し得る。この選択は、一部には、コートタンパク質の構造及び遺伝的に修飾されたウイルスが植物中で粒子へと集合する能力を妨げずに付加又は置換を実施し得ることの容易さによって決定され得る。本発明のための付加又は欠失の許容される最も適切な大きさの決定は、各々特定の場合に、おそらく多少の付加的な実験を伴って、本開示に照らして実施され得る。付加挿入物の使用は、一部の場合には、置換挿入物よりも大きな柔軟性を提供すると思われる。
【0061】
植物における修飾ウイルスの増殖は有意の収量を生産することができる。上述したように、挿入される異種ヌクレオチド配列は、容易に切断されるアミノ酸をコードするものを含み得るので、増殖段階後に、所望物質をウイルス粒子から分離し得る。例えば2個のペプチドをコートタンパク質に挿入することができ、1個は、例えばアフィニティー精製による修飾粒子の精製のために使用されて、精製後に切断除去される;他方は、粒子上に保持され、ワクチン接種のために使用される抗原ペプチドであり得る。ペプチドの全体切断に代わるものとして、一部の場合には、キャプシドの主要部分内が無傷のままである形態でペプチドを放出することが可能であり、望ましいと考えられる。
【0062】
本発明のもう1つの態様によれば、2つの異なる制限酵素部位を、コートタンパク質をコードするウイルス核酸内で選択してもよく、適切な制限酵素を用いて核酸を制限する。ウイルスコートタンパク質に挿入することが望まれる外来性ペプチドをコードする相補的オリゴヌクレオチドの対を合成する。オリゴヌクレオチドは制限酵素部位と適合性の末端で終結し、従って制限ウイルス核酸への挿入を可能にする。この手順は、コートタンパク質配列内への、外来性ペプチドをコードするヌクレオチド配列の導入を生じさせる。
【0063】
本明細書で使用するとき、「ハイブリッドRNAウイルス」又は「修飾RNAウイルス」という用語は、RNAウイルスに由来する感染性ウイルス配列と、もう1つ別の供給源に由来するエピトープ/抗原/ペプチドについてのポリヌクレオチドセグメントを含む、組換えウイルスRNA配列を指す。従って、不活性化の前には、本発明のハイブリッド又は修飾ウイルスRNAは、1個のRNAウイルスに由来する感染性ウイルス配列と、もう1つ別のウイルス、細菌又は他の供給源に由来するエピトープ/抗原/ペプチドについてのポリヌクレオチドセグメントを含むRNA配列である。「ハイブリッドRNAビリオン」又は「ハイブリッドウイルス粒子」という用語は、そのようなウイルスのキャプシド化形態を指すために使用され得る。挿入されるペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントを受け入れるのに適したもとのウイルスRNA配列は、RNAウイルスのものに対応する配列の一例である。これらの配列は、挿入又は別の方法によって修飾されたとき、もとの/天然に生じるウイルス配列「に由来する」。
【0064】
そのようなウイルス配列は、最小限、宿主における複製能力及び宿主に感染する能力の機能を有さなければならない。そのような機能の決定因子は、シスで必要とされるか、又は別の場合にはトランスで供給され得る。トランスでの複製に十分である条件の一例は、BMV RNA3が宿主において複製するのを可能にするための、BMV RNA1及び2によってコードされるタンパク質の存在の必要性である。これに対し、RNA1及び2により感染細胞で誘導される機構によってRNA3誘導体を複製させるには、ある種の複製シグナルがシスで(すなわちRNA3誘導体に直接結合して)存在しなければならない。トランス機能のもう1つの例は、CPMV RNA2が宿主において複製することを可能にするための、CPMV RNA1によってコードされるタンパク質である。これに対し、RNA1によって感染細胞において誘導される機構によるRNA2誘導体の複製を可能にするためには、ある種の複製シグナルがシスで(すなわちRNA2誘導体に直接結合して)存在しなければならない。
【0065】
また、もとのウイルス配列が外来性又は異種ペプチドをコードするポリヌクレオチドの付加のために適切な部位を有することも望ましいと考えられる。これらのポリヌクレオチドセグメント及び配列に関する「外来性」及び「異種」という用語は、天然でもとのウイルスにはない配列を意味する。同様に、外来性又は異種ペプチド及びポリペプチドは、本明細書ではウイルス発現/産生系に付加された抗原又はエピトープを指す。そのような外来性ポリヌクレオチド又は配列は、もとのウイルス配列に必要な機能、すなわち複製し、宿主に感染する能力に干渉しない位置で挿入され得る。宿主における発現に関して、「異種」又は「単離」ポリヌクレオチドは、それが配置された宿主内の位置に天然では存在しないポリヌクレオチドである。異種ペプチドをコードするセグメントの配置は、もとのウイルス配列の必要な機能に干渉しないことが望ましい。
【0066】
挿入される核酸セグメントは、天然に生じる必要はなく、修飾されていてもよく、2個以上のコードセグメントの複合物であってもよく、又は2個以上のペプチド/ポリペプチドをコードしてもよい。RNAもまた、修飾RNA分子の全長又は他の性質を制御するために挿入と欠失を組み合わせることによって修飾され得る。
【0067】
挿入される外来性RNA配列は、非ウイルス又はウイルス起源であり得、本来はRNA又はDNAのいずれかに相当し得る。それらは、受容細胞の翻訳機構によって直接翻訳され得るか又はさもなければそれらの機能、構造又は調節機能のために認識され、利用され得る形態である限り、原核生物又は真核生物起源であり得る。
【0068】
いかなる植物も、当業者に明らかなように、適切な宿主特異性と複製機能を与えることにより、本発明のRNA配列に感染させ得る。適切な構築物により、他の真核生物も、単細胞及び組織培養物と同様に感染させ得る。本発明は、宿主の所与のクラス又はRNAウイルスの型に限定されない。
【0069】
「全身感染」という用語は、最初の接種部位の細胞より多くを含むように宿主生物系を通して感染が拡大することを意味する。宿主生物全体が感染する必要はない;ある種の組織が感染の標的であり得る。好ましい組織は葉組織である。
【0070】
宿主生物に適用される「トランスフェクトされた」という用語は、その内部で複製されるような方法で生物細胞内に本発明のウイルス配列を組み込むことを意味する。トランスフェクトさせるために、生物を全身感染させる必要はないが、全身感染させ得る。しかし、ウイルスの全身拡大は本発明のために必要ではない。
【0071】
宿主生物の感染を開始するための方法は当分野において周知であり、いかなる適切な方法も使用し得る。植物の感染のための好ましい方法は、ウイルスがその内部で複製するか又は植物に感染するように、傷つけた植物をウイルス又はウイルスRNAを含有する溶液と接触させることである。
【0072】
本発明の実施形態は、植物において及び植物によってワクチン様ポリペプチド及び他のポリペプチドを生産するためのベクター系として植物ウイルスを利用することができる。本発明の1つの態様は、RNAが本発明の方法を用いて除去された又は非感染性にされた、ウイルスのコートタンパク質の部分として所定の外来性ペプチドを含有する植物RNAウイルスの集合粒子に関する。本発明はまた、内部提示が可能である、外来性ペプチドを提示する植物ウイルスの集合粒子を含み得る。本発明はまた、感染性RNAを欠くウイルスを含む。
【0073】
ワクチンの製剤に適用されるとき、本発明は、従来のワクチン、動物ウイルス又は細菌に基づく組換えワクチン、及びペプチドワクチンに比べて利点を有すると考えられ、それらは以下を含む:1)純粋なウイルス粒子の非常に高い収量が感染植物から入手可能であり、組織培養生産工程を必要としないので、より低い生産コスト;2)植物ウイルスは動物において感染及び複製することができず、従って、従来のワクチンや組換え動物ウイルスワクチンの場合のように毒性形態に突然変異することができないので、改善された安全性;3)有効性を失わずに精製製剤を乾燥して、何年間も保存することができるので、コモウイルスとして例外的な安定性;4)免疫原性の上昇を生じさせ、従って粒子の表面でのペプチドの提示をもたらす、ペプチドの複合の欠如;及び5)インビボでの相同的組換え(トランスフェクション)と異なり、インビトロでの操作によるキメラ遺伝子の導入を可能にする、より低分子のウイルス。
【0074】
異なる指示がない限り、本明細書で使用する「1つの」(「a」、「an」)及び「その」(「the」)は、少なくとも1つを指す。
【0075】
本明細書で言及する又は引用するすべての特許、特許出願、特許仮出願及び刊行物は、本明細書の明白な教示と矛盾しない範囲でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
以下は、本発明を実施するための手順を説明する実施例である。これらの実施例は限定と解釈されるべきではない。異なる記載がない限り、すべてのパーセンテージは重量比であり、すべての溶媒混合物の割合は容積比である。
【実施例】
【0077】
実施例1
CPMV粒子の不活性化の要旨
17以上の異なるCPMV粒子(異なるエピトープを担持する)ならびに野生型CPMVウイルスを、この手順を用いて不活性化した。RNAを不活性化ウイルスから単離し、RNAが分解されているかどうかを判定するためゲル上で泳動させた。また不活性化粒子を、感染を誘導する能力に関して試験するために植物に接種した。接種した植物のいずれも、ウイルス感染を生じなかった。不活性化ウイルス粒子から単離したRNAは、試験したいずれの場合にも分解された(一例として図1参照)。
【0078】
実施例2
CPMV不活性化のさらなる例
0.8M硫酸アンモニウムが、CPMVの完全性を保存しながらCPMVを不活性化できるかどうかを測定するための試験を設計した。0.8M硫酸アンモニウムを本発明の精製過程の一部として使用した。過程の間のpH上昇はウイルスの透過性を上げるが、同時に遊離NH3の濃度も上昇させる。
【0079】
この試験からの結論は、22℃及び40℃でpH9及びpH7の0.8M硫酸アンモニウムはウイルスの完全性を保存し、ウイルスの感染性はpH9でのみ失われるというものであった。CPMVを22℃及び40℃にて30mMトリス−HCl中でインキュベートした対照実験は、完全に感染性のCPMV粒子を生産した。これらの結果から、不活性化を生じさせるために必要であるのは0.8M硫酸アンモニウムとpH9の組合せであり、温度又は硫酸アンモニウム単独ではないとさらに結論された。この試験では、適切な硫酸アンモニウム濃度とpHに調整した摩砕細胞汁液に関して実験を実施し、植物スラリー中の化合物が不活性化を生じさせている(例えばソラレン)懸念があった。これを立証する又は反証するため、精製CPMV粒子が硫酸アンモニウムとpH9の組合せを用いて不活性化され得るかどうかを判定するための2番目の試験を設計した。化学物質中の何らかの不純物が不活性化の原因であるかどうかを判定するために様々な純度グレードの化学物質を使用した。実験マトリックスを設定し、すべての条件を表1に示すように試験した。容易な組込みが可能であるように、本発明者らの再最適化過程の一部であるので0.7M硫酸アンモニウムを使用した。
【表2】

【0080】
pH9で0.5M及び0.7M(NH42SO4の濃度はCPMVを不活性化したが、pH9で0.1M(NH42SO4はCPMVを不活性化しなかった。図1は、活性及び不活性化ウイルスから抽出し、1.2%アガロースゲル上を泳動させて、EtBrで染色したRNAを示す。結果は、活性ウイルス中のCPMVゲノムRNA1及び2の存在、及び不活性ウイルス調製物中の分解されたRNAを示す。15超の他のキメラウイルス粒子及び野生型ウイルスについても同じ結果が得られた。
【0081】
実施例3
不活性化実験において使用したキメラCPMV粒子
炭疽菌の防御抗原(「PA」)タンパク質に由来するペプチドを発現するキメラCPMV粒子を構築した。米国特許第5,874,087号、同第5,958,422号及び同第6,110,466号に述べられている方法を使用して、CPMVの高分子及び/又は低分子コートタンパク質上でペプチドを発現させた。以下のペプチドが発現された。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例4
植物におけるキメラCPMV粒子の生産
Ferry MorseからのCowpea California No.5種子、カタログ番号1450をぬらしたペーパータオルにおいて室温で一晩発芽させた。発芽した種子を土壌に移した。発芽後7日目に、実生苗にWT又はキメラCPMV粒子を接種した。接種後、植物を25℃にて、明16時間、暗8時間の光周期で2〜3週間成長させた。症状を示した葉を採取し、精製の前に−80℃で凍結した。
【0084】
実施例5
キメラCPMV粒子の不活性化及び不活性化キメラCPMVウイルス様粒子の精製
CPMV感染葉組織40gを−80℃で凍結した。凍結葉組織を手で破砕し、Waring高速混合機、カタログ番号8011Sに注ぎ入れた。低温不活性化緩衝液120ml(0.5M硫酸アンモニウム、0.03Mトリス塩基、pH9.00、0.2mM PMSF)を破砕した葉に注いだ。葉を高速で3秒間、2回粉砕した。溶液を500ml遠心管中に傾瀉した。混合機を低温不活性化緩衝液30mlで洗い、洗浄液を500ml遠心管に注ぎ入れた。植物細胞デブリを除去するために溶液を15,000Gで30分間遠心分離した。上清をメスシリンダー中に傾瀉し、ウイルスを不活性化するために室温で20時間インキュベートした。CPMVウイルスを沈殿させるため、低温PEG6000溶液(20%PEG6000、1M NaCl)を上清に添加して、最終PEG濃度を4%PEG6000、0.2M NaClとし、溶液を静かに混合した。溶液を氷上で1時間沈殿させた。ウイルス沈殿物溶液を、次に、15,000Gで30分間遠心分離して、CPMVウイルスペレットを収集した。上清を廃棄し、ウイルスを直ちに陰イオン交換結合緩衝液(30mMトリス塩基、pH7.50)に再懸濁した。ウイルス様粒子をさらに精製するため、タンパク質混合物を、Applied BiosystemsからのPOROS 50 HQ強陰イオン交換樹脂、カタログ番号1−2559−11を使用した陰イオン交換クロマトグラフィーによって分画した。20カラム容量勾配は、緩衝液A、30mMトリス塩基、pH6.75から緩衝液B、30mMトリス塩基、pH6.75及び1M NaClまでであった。クロマトグラフィーは、Amersham BiosciencesからのAKTAexplorer、カタログ番号18−1112−41で実施した。図2は、PA7EのAIECクロマトグラムを示す。実施例3で列挙したすべての試料を、本実施例で述べる方法を用いて処理し、同様の結果を得た。2つの主要ピークが検出された。青色のトレースは280の吸光度、赤色トレースは260の吸光度、緑色トレースは緩衝液Bパーセント、及び褐色トレースは伝導率である。クロマトグラムの下部の赤色の目盛は画分である。所望ウイルス様粒子を含有する勾配上の最初のピークを、100kDaカットオフ膜のMilliporeスピン濃縮機、カタログ番号UFC910096を使用してPBS緩衝液、pH7.4中に緩衝液交換した。その後試料を−80℃で保存した。2番目のピークは切断された粒子夾雑物を含有した。PA7E PEG沈殿物のAIEC負荷物、WT CPMV標準品、及びAIEC PA7E分画に関して、SDS−PAGEゲルを調製した。SDS−PAGEをInvitrogen Nupage 4〜12%ビス−トリス、12ウェルゲル、カタログ番号NP0322で実施した。泳動緩衝液は、Invitrogen Nupage MES SDS泳動緩衝液、カタログ番号NP0002であった。ゲルを200Vの電圧低下で35分間泳動させた。レーン1は、Invitrogen SeeBlue Plus2 ラダー、カタログ番号LC5925を含有した。レーン2は、AIECカラムに負荷した再懸濁PEG沈殿物PA7Eを含有した。レーン3は、WT CPMVを含有した。レーン4〜8は、AIECピーク1に対応する標的精製PA7E粒子を含有し、それらを収集して、さらに処理した。レーン9〜10は、AIECピーク2に対応する切断PA7E粒子夾雑物を含有した。
【0085】
実施例6
不活性化キメラCPMVウイルス様粒子の分析−ウイルスゲノムRNA抽出
Ambion RNAqueous、カタログ番号1912のキットを、PEG精製不活性化CPMV試料からウイルスゲノムRNAを抽出するために使用した。不活性化されなかったCPMVウイルス粒子を対照として使用した(活性試料)。図3〜5は、PA9、PA10、PA11、PA12及びPA18についてのRNA不活性化の結果を示す。実施例3で列挙したすべての試料を、実施例6で述べる方法を用いて処理し、同様の結果を得た。InvitrogenからのPrecast 1.2% E−Gels、カタログ番号G501801を、図1〜3に関して抽出RNAを視覚化するために使用した。図3〜5のすべてのラダーは、1KB PLUS Ladder、カタログ番号10787−026の1ul負荷であった。図3において、レーン1はラダー1μlである。レーン2は活性PA9である。レーン3は不活性化PA9である。レーン4はラダーである。レーン5は活性PA10、レーン6は不活性PA10である。レーン7はラダーである。図4では、レーン1はラダー1ulである。レーン2は活性PA11である。レーン3は不活性化PA11である。レーン4はラダーである。レーン5は活性PA12、レーン6は不活性PA12である。レーン7はラダーである。図5において、レーン1はラダー1ulである。レーン2は活性PA18である。レーン3は不活性化PA18である。不活性化試料では、「スミア」の検出によって指示されたようにウイルスゲノムRNAは分解されたが、不活性化を受けなかった試料では完全長CPMVゲノムRNA1及びRNA2が検出された。
【0086】
実施例7
不活性化キメラCPMVウイルス様粒子の分析−SDS−PAGEによる安定性
低分子及び高分子コートタンパク質の安定性をSDS−PAGEで検定した。図6は、一例としてPA1Sについての5日間の温度安定性アッセイのSDS−PAGEゲルを示す。SDS−PAGEを、Invitrogen Nupage 4〜12%ビス−トリス、12ウェルゲル、カタログ番号NP0322で実施した。ゲルを150Vの電圧低下で60分間泳動させた。泳動緩衝液は、Invitrogen Nupage MES SDS泳動緩衝液、カタログ番号NP0002であった。Invitrogen Benchmark Unstained Protein Ladder、カタログ番号10747−012 7ulを含有した。レーン2は、室温で5日間インキュベートした不活性化PA1Sウイルス粒子を含有した。レーン3は、4℃で5日間インキュベートした不活性化PA1Sウイルス粒子を含有した。レーン4は、−20℃で5日間インキュベートした不活性化PA1Sウイルス粒子を含有した。タンパク質分解は検出されなかった。
【0087】
実施例8
不活性化キメラCPMVウイルス様粒子の分析−SECによる安定性
集合ウイルス様粒子の完全性を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて検定した。実施例3で列挙したすべての試料を、SECを使用して分析し、同様の結果を得た。使用したSECカラムは、10ミクロンビーズサイズの、Supelcoからの30cm×7.8mm Tosoh TskGel G5000分析用SECカラム、カタログ番号08023であった。SECの移動相は、0.1M NaPO4、pH7.00であった。集合ウイルス粒子に対応する単一ピークが検出された。集合CPMV粒子は14.0分の保持時間でカラムから溶出した。
【0088】
実施例9
不活性化キメラCPMVウイルス様粒子の分析−植物における感染性
実施例3で列挙した不活性化キメラCPMV粒子を、植物に感染するそれらの能力に関して試験した。Ferry MorseからのCowpea California No.5種子、カタログ番号1450をぬらしたペーパータオルにおいて室温で一晩発芽させた。発芽した種子を土壌に移した。発芽後7日目に、10の実生苗に不活性化及び活性WT又はキメラCPMV粒子を接種した。接種後、植物を25℃にて、明16時間、暗8時間の光周期で2〜3週間成長させ、症状形成を観察した。不活性化WT又はキメラCPMV粒子を接種した植物は症状を示さなかったが、活性WT又はキメラCPMV粒子を接種した植物はCPMV感染の典型的な症状を示した。不活性化WT又はキメラCPMV粒子を接種した葉を採取し、ウイルス粒子単離のために処理した。葉組織40gを−80℃で凍結した。凍結葉組織を手で破砕し、Waring高速混合機、カタログ番号8011Sに注ぎ入れた。低温30mMトリス塩基、pH7.50 120ml、0.2mM PMSFを破砕した葉に注いだ。葉を高速で3秒間、2回粉砕した。溶液を500ml遠心管中に傾瀉した。混合機を低温緩衝液30mlで洗い、洗浄液を500ml遠心管に注ぎ入れた。植物細胞デブリを除去するために溶液を15,000Gで30分間遠心分離した。上清をメスシリンダー中に傾瀉した。CPMVウイルスを沈殿させるため、低温PEG6000溶液(20%PEG6000、1M NaCl)を上清に添加して、最終PEG濃度を4%PEG6000、0.2M NaClとし、溶液を静かに混合した。溶液を氷上で1時間沈殿させた。ウイルス沈殿物溶液を、次に、15,000Gで30分間遠心分離して、ペレット中のウイルス粒子を収集した。上清を廃棄し、ペレットを直ちにPBS緩衝液、pH7.4に再懸濁した。試料を、SDS−PAGEでウイルス粒子の存在に関して検定した。SDS−PAGEを、Invitrogen Nupage 4〜12%ビス−トリス、12ウェルゲル、カタログ番号NP0322で実施した。ゲルを150Vの電圧低下で60分間泳動させた。泳動緩衝液は、Invitrogen Nupage MES SDS泳動緩衝液、カタログ番号NP0002であった。ウイルス粒子は検出されなかった。
【0089】
実施例10
PAエピトープを含有する不活性化CPMV粒子によるマウスの免疫
7週齢の雌性Balb/cマウスに、アジュバントの存在下で精製不活性化CPMV−PA100μgを腹腔内に3回注射した。対照マウスには、無関係なペプチドを含む不活性化CPMV粒子又はPBS、pH7.0中のアジュバントだけを投与した。試料100μlと混合したRibiアジュバント(R−700;Ribi Immunochem Research,Hamilton,Montana)100μlを使用した。投与の総容量は200μlであった。注射は3週間の間隔を置いて実施した。
【0090】
鼻内免疫のために、不活性化CPMV−PAを、アジュバントを伴わずに、麻酔したマウスに投与した。総容量100μlを2つの外鼻孔に投与した(各々の外鼻孔につき50μl)。対照マウスには、無関係なペプチドを含む不活性化CPMV又はPBS、pH7.0だけを投与した。
【0091】
最初の投与の1日前及びその後の2回の投与の各々2週間後に血液試料を採取した。
【0092】
マウス免疫試験の要旨を以下に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
実施例11
PAエピトープを含有する不活性化CPMV粒子による非ヒト霊長動物の免疫
PAエピトープを含む不活性化CPMV粒子を、アカゲザルに投与したときの共発現炭疽菌ペプチドに対する抗体応答を生じさせるそれらの能力に関して試験した。4匹のサルを不活性化CPMV−PAペプチド構築物で及び1匹のサルを不活性化野生型CPMV対照で筋肉内経路によって免疫した。各々の免疫用量は、16のPA−CPMV構築物すべてのウイルス−ペプチド混合物2mgからなった。動物を0、7、14及び28日目にワクチン接種した。
【0095】
IgG及びIgA抗体を、PAタンパク質を標的としてELISAアッセイを用いて観測した。各々の免疫日に血液3〜5mlをヘパリン中に採取した。細胞と血漿を分離し、凍結保存した。ケタミン麻酔したサルを0、14及び28日目に気管支鏡検査し、気管支洗浄液標本を採取して、凍結保存した。気管支洗浄液と血漿を解凍し、IgG及びIgA抗体力価をELISAアッセイにおいて測定した。IgG及びIgA抗体の両方の高い力価が血漿及び気管支洗浄液中で検出された。結果を図7及び8に示す。
【0096】
実施例12
インフルエンザウイルスエピトープM2eを含有する不活性化CPMV粒子によるマウスの免疫
7週齢の雌性Balb/cマウスに、アジュバントの存在下でインフルエンザペプチドM2eを発現する精製不活性化CPMV100μgを腹腔内に3回注射した。配列は、SLLTEVETPIRNEGCRCNDSSD(配列番号24)である。対照マウスには、無関係なペプチドを含む不活性化CPMV粒子又はPBS、pH7.0中のアジュバントだけを投与した。試料100μlと混合したRibiアジュバント(R−700;Ribi Immunochem Research,Hamilton,Montana)100μlを使用した。投与の総容量は200μlであった。注射は3週間の間隔を置いて実施した。
【0097】
鼻内免疫のために、インフルエンザペプチドM2eを含有する不活性化CPMVを、アジュバントを伴わずに、麻酔したマウスに投与した。総容量100μlを2つの外鼻孔に投与した(各々の外鼻孔につき50μl)。対照マウスには、無関係なペプチドを含む不活性化CPMV又はPBS、pH7.0だけを投与した。
【0098】
最初の投与の1日前及びその後の2回の投与の各々2週間後に血液試料を採取した。
【0099】
マウス免疫試験の要旨を以下に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
上記は本発明の例示であり、その限定と解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びその中に含まれる特許請求の範囲の等価物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】臭化エチジウムで染色した1.2%アガロースゲル上で泳動させたPA10活性及びPA10不活性化ウイルスから抽出したRNAを示し、活性ウイルス中のCPMVゲノムRNA1及び2、及び不活性化ウイルス製剤中の分解されたRNAを明らかにする。
【図2】PA7EのAIECクロマトグラムを示す。
【図3】PA9、PA11及びPA18のRNA不活性化を示す。
【図4】PA9、PA11及びPA18のRNA不活性化を示す。
【図5】PA9、PA11及びPA18のRNA不活性化を示す。
【図6】PA1Sについての5日間の温度安定性アッセイのSDS−PAGEゲルを示す。
【図7】ELISAによって検出されたCPMV−PA免疫サルにおける抗PA抗体を示す。
【図8】140日目の血清及び気管支洗浄液中の抗PA抗体(IgG)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8.0を上回るpHで、植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択される、ウイルス様粒子を発現する植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、
不活性化ウイルス様粒子(VLP)を生成するために植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及び
植物材料から不活性化VLPを採取すること
を含む、植物ウイルスを不活性化する方法。
【請求項2】
ウイルスに組み込まれた少なくとも1つの外来性ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスがエンベロープを有さないRNAウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性化VLPが異種生物活性ペプチドを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドがエピトープである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
硫酸アンモニウムが0.5M〜1.0Mの濃度で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
pHがpH9.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
植物材料が10℃〜40℃でインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記植物ウイルスをpH7の0.7M(NH42SO4中の疎水性相互作用クロマトグラフィーに結合すること、結合したウイルスをpH9の0.7M(NH42SO4で洗浄すること、及び前記ウイルスをpH9の0.7M(NH42SO4で溶出することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスが、正二十面体であるキャプシドを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ウイルスが、ブロモウイルス科(Bromoviridae)、コモウイルス科(Comoviridae)及びトンブスウイルス科(Tombusviridae)からなる群より選択される科のウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ウイルスが、ブロモウイルス属(Bromovirus)、コモウイルス属(Comovirus)、トンブスウイルス属(Tombusvirus)、アルファモウイルス属(Alfamovirus)及びソベモウイルス属(Sobemovirus)からなる群より選択される属のウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ウイルスが、ササゲモザイクウイルス(cowpea mosaic virus)、ササゲクロロティックモトルウイルス(cowpea chlorotic mottle virus)、トマトブッシースタントウイルス(tomato bushy stunt virus)、アルファルファモザイクウイルス(alfalfa mosaic virus)、ブロムモザイクウイルス(brome mosaic virus)及び南部インゲンモザイクウイルス(southern bean mosaic virus)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ウイルスがコートタンパク質を含み、及びペプチドがコートタンパク質に融合した抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ペプチドが、ペプチドホルモン、酵素、増殖因子、抗体、免疫調節剤及びサイトカインからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、ウイルスRNA配列を完全長cDNA転写産物に変換すること、前記cDNAをベクターにクローニングすること、及び外来性DNAセグメントを、RNA複製、粒子形成又は感染性を破壊することなくそのような挿入を認容することができる領域に挿入することによって前記cDNAを修飾することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスに組み込まれた外来性ペプチドが、インフルエンザウイルスのサブユニット、東部ウマ脳脊髄炎ウイルスのサブユニット、イヌパルボウイルスのサブユニット及び炭疽菌(Bacillus anthracis)のサブユニットからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
8.0を上回るpHで、植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択され、及び植物ウイルス中に存在するRNAの少なくとも一部を欠く植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、
植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及び
植物材料から、複製することができない不活性化VLPを採取すること
を含む、非感染性VLPを生産する方法。
【請求項20】
VLPを含むワクチンであって、ウイルスに組み込まれた少なくとも1つの外来性ペプチドを含む植物ウイルスを含み、及び不活性化VLPを生成するために8.0を上回るpHで植物、植物組織、植物細胞及びプロトプラストからなる群より選択される植物材料に硫酸アンモニウムを投与すること、植物材料を少なくとも10時間インキュベートすること、及び植物材料から不活性化VLPを採取することを含む方法によって生産される、ワクチン。
【請求項21】
提供されるVLPペプチドが、前記VLPを哺乳動物に投与したとき免疫応答を惹起する、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
ワクチンが、インフルエンザウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、イヌパルボウイルス及び炭疽菌のためである、請求項20に記載のワクチン。
【請求項23】
ペプチドがエピトープである、請求項20に記載のワクチン。
【請求項24】
エピトープが、ウイルス病原体、細菌病原体又は癌である、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
前記ワクチンが、前記ペプチドが抗原の部分であり、前記部分がワクチンとして有効である、サブユニットワクチンである、請求項20に記載のワクチン。
【請求項26】
前記外来性ペプチドが配列番号23を含む、請求項20に記載のワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−524699(P2009−524699A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553230(P2008−553230)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/046160
【国際公開番号】WO2008/085147
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】