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新規検査方法及びそれに用いる検査キット
説明

新規検査方法及びそれに用いる検査キット

【課題】固相支持体を用いた、酵素サイクリング方法を利用した新規検査方法及びそれに用いる検査キットの提供。
【解決手段】下記成分をそれぞれ含有する試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3並びに固相支持体を用いて検体中の被検出物を検出する方法であって、固相支持体に試薬組成物R1を固相化し検出部を設け、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、次いで試薬組成物R3を固相支持体上の検出部に供給することを含み、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させ、検出部で酵素サイクリング反応を行わせる、検体中の被検出物を検出する方法。
試薬組成物R1: 脱水素酵素及び/又は電子伝達物質並びに及び被検出物捕捉試薬
試薬組成物R2: 被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬
試薬組成物R3: 脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)若しくはその還元型(NADPH)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相支持体を用いた、酵素サイクリング方法を利用した新規検査方法及びそれに用いる検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスや細菌等の病原体の感染の有無、妊娠の有無などの様々な検査を短時間のうちに行う簡易検査方法及び簡易検査試薬が知られている。簡易検査試薬は、病原体、ホルモンやC反応性タンパク質の人由来成分等の検出又は定量に用いられる。
【0003】
簡易検査試薬の多くは、特別な設備を必要とせず、操作も簡単で安価であるという特徴を有している。簡易検査試薬は、例えば、妊娠診断薬等として一般薬局でも販売されている。病原体の感染の有無を検査する簡易検査試薬は、大病院や医療検査センターだけでなく、一般の病院や診療所でも広く使用されている。このような簡易検査試薬を用いる検査は、ポイント・オブ・ケア・テスティング(POCT)と呼ばれ、医療の質の向上に大きく貢献している。
【0004】
簡易検査試薬としては、例えば標識にアルカリホスファターゼ(ALP)、基質に5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)/ニトロテトラゾリウムブルー(NTB)等を用いるメンブレンエンザイムイムノアッセイが知られている。この方法は、10〜15分間で高感度な測定ができるという特長がある(例えば特許文献1及び2並びに非特許文献1参照)。医療の現場では、更に反応時間を短縮し,高感度で測定することが望まれていた。
【0005】
固液分離(B/F分離ともいう)を必要とする一般的なエンザイムイムノアッセイにおいて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はその還元型(NADH)を、発光法や蛍光法と同等の高感度で検出する酵素サイクリング方法が知られている(非特許文献2及び3等参照)。
【0006】
酵素サイクリング方法を簡易検査方法に応用すると、高感度な検査方法になると期待されていた。しかし、酵素サイクリング方法は、試薬の長期安定性が悪く、短時間で自然発色してバックグラウンドが高くなるため、簡易検査試薬に適さないとされていた。
【0007】
【特許文献1】特開平11-153600号公報
【特許文献2】国際公開第WO2006/073153号パンフレット
【非特許文献1】Ono,T., et al: J. Immunol. Methods, 272, 211-218, 2003.
【非特許文献2】Johannsson A., et al: Clin. Chim. Acta, 148, 119-124, 1985.
【非特許文献3】Stanley C.J., et al: J. Immunol. Methods, 83, 89-95, 1985.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固相支持体を用いた、酵素サイクリング方法を利用した新規検査方法及びそれに用いる検査キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、酵素サイクリング方法を用いた簡易検査方法について鋭意検討を行った。本発明者は、メンブレン等の固相支持体を用いた検査方法において、固相支持体上での複合体形成反応及び酵素サイクリング反応に関与する試薬化合物を3種類の試薬組成物に分け、1つの試薬組成物中に保存中に互いに反応しない化合物を含め、さらに、1つの試薬組成物を固相支持体に固相化した。試薬化合物を3つの組成物に分け、1つの試薬組成物中に互いに反応する化合物を含まないため、長期間にわたって試薬が自然発色することなく、試薬の安定性が向上した。さらに、酵素サイクリング法を用いたため、従来の簡易検査方法に比べより高感度で被検出物を検出することができた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記成分をそれぞれ含有する試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3並びに固相支持体を用いて検体中の被検出物を検出する方法であって、固相支持体に試薬組成物R1を固相化し検出部を設け、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、次いで試薬組成物R3を固相支持体上の検出部に供給することを含み、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させ、検出部で酵素サイクリング反応を行わせる、検体中の被検出物を検出する方法。
試薬組成物R1: 脱水素酵素及び/若しくは電子伝達物質並びに被検出物捕捉試薬
試薬組成物R2: 被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬
試薬組成物R3: 脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)若しくはその還元型(NADPH)
[2] 脱水素酵素がアルコール脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素からなる群から選択される1種以上である、[1]の検体中の被検出物を検出する方法。
[3] 電子伝達物質がジアホラーゼである、[1]又は[2]の検体中の被検出物を検出する方法。
[4] 試薬組成物R2が界面活性剤0.2〜10(w/v)%及び動物由来血清アルブミン1〜10(w/v)%を含有する、[1]〜[3]のいずれかの検体中の被検出物を検出する方法。
[5] 試薬組成物R1を担体に結合させ、該担体を固相支持体に固相化する、[1]〜[4]のいずれかの検体中の被検出物を検出する方法。
[6] 担体が微小樹脂粒子である、[5]の検体中の被検出物を検出する方法。
[7] 被検出物捕捉試薬と被検出物が抗原抗体反応により結合する[1]〜[6]のいずれかの検体中の被検出物を検出する方法。
[8] フロースルー方式であり、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させ、次いで試薬組成物R3を固相支持体上の検出部に供給して酵素サイクリング反応を行わせる、[1]〜[7]のいずれかの検体中の被検出物を検出する方法。
[9] 試薬組成物R2を含み、濾過フィルターを有する検体添加用デバイスに検体を入れ、検体及び試薬組成物R2の混合物を調製し、固相支持体に供給する、[8]の検体中の被検出物を検出する方法。
[10] ラテラルフロー方式であり、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、次いで試薬組成物R3を固相支持体に供給し、検体及び試薬組成物R2の混合物を固相支持体上を展開させ、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させて酵素サイクリング反応を行わせる、[1]〜[7]のいずれかの検体中の被検出物を検出する方法。
[11] 下記成分をそれぞれ含有する試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3を別々に含む、請求項1に記載の方法により固相上で酵素サイクリング反応を行わせて検体中の被検出物を検出するための検査キットであり、試薬組成物R1が固相支持体上に固相化されている検査キット。
試薬組成物R1: 脱水素酵素及び/若しくは電子伝達物質並びに被検出物捕捉試薬
試薬組成物R2: 被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬
試薬組成物R3: 脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)若しくはその還元型(NADPH)
[12] 脱水素酵素がアルコール脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素からなる群から選択される1種以上である、[11]の検査キット。
[13] 電子伝達物質がジアホラーゼである、[11]又は[12]の検査キット。
[14] 試薬組成物R2が界面活性剤0.2〜10(w/v)%及び動物由来血清アルブミン1〜10(w/v)%を含有する、[11]〜[13]のいずれかの検査キット。
[15] 試薬組成物R1を担体に結合させ、該担体が固相支持体に固相化されている、[11]〜[14]のいずれかの検査キット。
[16] 担体が微小樹脂粒子である、[15]の検査キット。
[17] 被検出物捕捉試薬と被検出物が抗原抗体反応により結合する、[11]〜[16]のいずれかの検査キット。
[18] フロースルー方式である、[12]〜[17]のいずれかの検査キット。
[19] さらに、試薬組成物R2を含み、濾過フィルターを有する検体添加用デバイスを含む、[18]の検査キット。
[20] ラテラルフロー方式である、[11]〜[17]のいずれかの検査キット。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固相支持体を用いた、酵素サイクリング方法を利用した新規検査方法は、迅速かつ容易に検体中の被検出物の高感度検出を可能とする。また、本発明の検査方法においては、反応に関与する化合物を3つの試薬組成物に分けているので検査試薬が長期にわたって安定であり、自然発色を抑制することができるという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本明細書における部及び%は、特に断りがない場合は質量基準である。
【0014】
本発明は、検体中の被検出物を捕捉し得る被検出物捕捉試薬を含む試薬を固相化した固相支持体を用いて、検体中の被検出物を酵素サイクリング反応により検出する方法であって、フロースルー方式及びラテラルフロー方式を含む。フロースルー方式においては、検体が前記固相支持体を横切るように通過し、ラテラルフロー方式においては、検体が固相支持体に沿って展開移動する。
【0015】
酵素サイクリング反応とは、酵素反応を増幅して、被検出物を高感度に検出する方法である。本発明においては、アルカリホスファターゼ(ALP)を用いた酵素サイクリング方法を利用する。以下に、標識物質としてアルカリホスファターゼ(ALP)を用いた酵素サイクリング方法の原理を説明する。この説明では、脱水素酵素としてアルコール脱水素酵素(ADH)を、電子伝達物質として酵素ジアホラーゼ(DIA)を用いている。ALPの基質であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)の還元型(NADPH)は、ALPの酵素反応によりNADHと無機リン酸に分解される。
【0016】
NADHは、テトラゾリウム塩とその還元酵素であるジアホラーゼ(DIA)によりNADとなり、同時にテトラゾリウム塩が還元されてホルマザンが生じ発色シグナルが得られる。NADは、アルコール脱水素酵素(ADH)とその基質であるエタノールの存在下でADHによるエタノールからアセトアルデヒドへの反応に補酵素として作用し、その際にNADHへと還元される。NADHは、このような条件下で酸化還元を繰り返すため、発色シグナル強度が増幅される。
【0017】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)をALPの基質とする場合は、NADPはALPの酵素反応によりNADと無機リン酸に分解される。NADは、アルコール脱水素酵素(ADH)とその基質であるエタノールの存在下でADHによるエタノールからアセトアルデヒドへの反応に補酵素として作用し、その際にNADHへと還元される。以後、上記NADHと同じ原理で発色し、発色シグナル強度が増幅される。また、生成物であるホルマザンは不溶性の色素であり、固相支持体に沈着しやすいので、固相支持体上で酵素サイクリング反応が起こる本発明の方法に適している。
【0018】
本発明の方法においては、被検出物を含む検体及び酵素で標識した標識試薬を上記固相支持体に供給し、被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体を固相支持体上に形成させて、酵素反応により標識を検出することで被検出物を検出する。この酵素反応の際に、酵素サイクリング反応を利用し、酵素反応を増幅させる。
【0019】
検体を被検出物捕捉試薬を固相化した固相支持体上に供する前にアルカリホスファターゼ標識試薬(以下、単に「標識試薬」ともいう)と接触させ混合することにより、アルカリホスファターゼ標識試薬−被検出物の複合体が形成する。検体中に被検出物が含まれる場合、検体と標識試薬を接触させることにより、検体と標識試薬が混合し混合物ができる。検体と標識試薬の混合物は、被検出物と標識試薬の混合物を含み、さらに被検出物と標識試薬の複合体を含む。固相支持体は毛管現象により検体が吸収され流動し得るものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、固相支持体は不織布、紙、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、ナイロン6,6などのナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ガラス繊維、シリカ繊維、ポリオレフィン、セルロースやニトロセルロースとセルロースエステルの混合物等のこれらの混合物からなる人工ポリマーからなる群から選択される。ニトロセルロースから作られた微多孔性物質や、前記混合物が好適に用いられる。固相支持体の孔径又は保留粒子径は、1〜12μmであることが好ましく、3〜5μmが特に好ましい。固相支持体の厚さは特に限定されないが、通常、100〜200μm程度である。
【0020】
固相支持体は本発明の方法がフロースルー方式である場合は、任意の大きさのメンブレン状の支持体であり、メンブレンに被検出物捕捉試薬が固相化され、メンブレン上に被検出物捕捉試薬の固相化部位が設定される。本発明の方法がラテラルフロー方式の場合は、好ましくは短冊状のストリップの形状を有するメンブレン状の支持体である。
【0021】
次に前記被検出物に特異的に結合する被検出物捕捉試薬を固相化した固相支持体上に検体と標識試薬の混合物を供して、被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体を形成させる。この際、フロースルー方式においては、標識試薬−被検出物の複合体は、被検出物捕捉試薬が固相化された固相支持体を通過する際に被検出物捕捉試薬に捕捉され、被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成される。また、ラテラルフロー方式においては、被検出物捕捉試薬が固相化された固相支持体上を移動する際に被検出物捕捉試薬に捕捉され、被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成される。固相支持体に捕捉された標識試薬の存否を検出することで被検出物の存在を判定することができる。
【0022】
本発明の方法における被検出物は、被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成し得る物質又は微生物である。被検出物捕捉試薬は、被検出物と結合し得る物質である。被検出物と被検出物捕捉試薬の組合せとして、例えば抗原と抗体、レセプターとリガンド等が挙げられる。
【0023】
被検出物と被検出物捕捉試薬の組合せは逆でもよい。すなわち、被検出物を抗原とし、被検出物と結合する被検出物捕捉試薬を抗体としてもよく、逆に、被検出物を抗体とし、被検出物と結合する被検出物捕捉試薬を抗原としてもよい。また、被検出物をリガンドとし、被検出物と結合する被検出物捕捉試薬をそのリガンドに結合するレセプターとしてもよく、逆に、被検出物をレセプターとし、被検出物と結合する被検出物捕捉試薬をリガンドとしてもよい。
【0024】
被検出物が抗原の場合、被検出物としては、例えばA型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)、ライノウイルス、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、HAV、HBs、HCV、HIV、EBV等のウイルス抗原、クラミジア・トラコマティス、溶連菌、百日咳菌、ヘリコバクター・ピロリ、レプトスピラ、トレポネーマ・パリダム、トキソプラズマ・ゴンディ、ボレリア、レジオネラ属菌、炭疽菌、MRSA等の細菌抗原、細菌等が産生する毒素、マイコプラズマ脂質抗原、ヒト絨毛製ゴナドトロピン等のペプチドホルモン、ステロイドホルモン等のステロイド、エピネフリンやモルヒネ等の生理活性アミン類、ビタミンB類等のビタミン類、プロスタグランジン類、テトラサイクリン等の抗生物質、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等が挙げられる。
【0025】
被検出物が抗体の場合、被検出物は、上記のウイルスの抗原、細菌の抗原、毒素、ペプチドホルモン、ステロイド、生理活性アミン類、ビタミン類、抗生物質、各種腫瘍マーカー、農薬、環境ホルモン等の抗原と選択的に反応する抗体等が挙げられる。
【0026】
被検出物を抗原とし、被検出物と結合する被検出物捕捉試薬に抗体を用いる場合には、抗体としてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体が使用できる。
【0027】
本発明の方法において、固相支持体としてニトロセルロースメンブレン等のメンブレンを用いた場合、メンブレンエンザイムアッセイといい、さらに抗原抗体反応を利用する場合、メンブレンエンザイムイムノアッセイという。また、さらに、ラテラルフロー方式の場合、イムノクロマトグラフィーという。
【0028】
本発明の方法においては、試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3の3種類の試薬組成物を用いる。
【0029】
試薬組成物R1は脱水素酵素及び/若しくは電子伝達物質並びに被検出物捕捉試薬を含有する。脱水素酵素及び電子伝達物質は両方あるいはどちらか一方が含まれていればよい。これらの物質は固相支持体に固相化される。試薬組成物R1が固相化された固相支持体上の部位を検出部という。脱水素酵素は、アルコール脱水素酵素(ADH)、グルコース脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素等が用いられ、好ましくはアルコール脱水素酵素が用いられる。電子伝達物質は、例えばジアホラーゼ(DIA)、フェナジンメトサルフェート(PMS)、1−メトキシ −PMS(1-methoxy-5-methylphenazinium methylsulfate)、メルドラブルー、フラビンモノヌクレオチド (FMN/FMNH2) 、フラビンアデニンジヌクレオチド等のフラビン類、ユビキノン(UQ)、シトクロム (Cyt)等が使用可能である。この中でも、蛋白質でありメンブレン等の固相支持体に固相化しやすいジアホラーゼ(DIA)が好適に用いられる。
【0030】
試薬組成物R1の成分がすべて蛋白質の場合、固相支持体(メンブレン)へ容易に固相化できる。例えば、試薬組成物R1の被検出物捕捉試薬として蛋白質抗原又は抗体を用い、脱水素酵素としてアルコール脱水素酵素、電子伝達物質としてジアホラーゼを用いればよい。また、フラビン類やユビキノンのような低分子化合物はキャリア蛋白質と結合させることにより、容易に固相支持体(メンブレン)に固相化することができる。キャリア蛋白質としては、例えばアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等を用いることができる。固相支持体に複数の被検出物捕捉試薬を含ませてもよい。複数の被検出物捕捉試薬を含む場合、複数の被検出物を1つの検査装置で検出することができる。例えば、被検出物捕捉試薬として、抗A型インフルエンザウイルスNP抗体と抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を用いることにより、1つの検査装置でA型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの両方を検出することができる。複数の被検出物捕捉試薬は、例えば、固相支持体の異なる位置に固相化すればよい。
【0031】
試薬組成物R1の固相支持体への固相化は、吸着による方法、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を利用して化学的に結合させる方法等、公知の方法で行えばよい。
【0032】
また、試薬組成物R1を担体に結合させ、該担体を固相支持体に固相化してもよい。担体としては、例えば、シリカ粉末、ゼオライト、アエロジェル(アルミナ微粉末)、水酸化アルミニウム微粉末、ガラスビーズ等の無機粉末、ラテックス等の微小粒子等が使用可能であり、ラテックス粒子等の微小樹脂粒子が好適に用いられる。試薬組成物R1を担体に結合させることにより、固相支持体へ容易に確実に固相化される。この際、試薬組成物R1に含まれる化合物を別々に担体に結合させた後に、それぞれの化合物を結合させた担体を混合させてもよいし、試薬組成物R1に含まれる化合物を同時に担体に結合させてもよい。本発明においては、試薬組成物R1に含まれる化合物を結合させた担体をも試薬組成物R1という。
【0033】
試薬組成物R1中の脱水素酵素は0.5〜50単位/mL、好ましくは1〜10単位/mL、電子伝達物質はジアホラーゼ(DIA)を用いた場合は0.5〜50単位/mL、好ましくは1〜10単位/mLの溶液として調製し固相化することができる。
【0034】
また、被検出物捕捉試薬は、何を用いるかにより変わるが、0.2〜2mg/mLの溶液として調製し、固相支持体に固相化することができる。これらをすべて含む溶液を調製して固相化を行なってもよいし、別々の溶液として調製し、別々に固相化を行なってもよい。
固相化する場合の液量は支持体の材質、厚み、検出部の面積によって変わるが、この分野の技術を有する者にとって最適化は容易である。
【0035】
脱水素酵素及びジアホラーゼを上記範囲で固相化した場合、酵素サイクリング反応が円滑に進む。特に、脱水素酵素にアルコール脱水素酵素(ADH)、電子伝達物質にジアホラーゼ(DIA)を用いると、酵素サイクリング反応が迅速で、鮮やかに発色するため好ましい。
【0036】
脱水素酵素(例えばADH)の活性1単位とは、pH8、30℃で1分間あたりエタノールを1μmol酸化する酵素量と定義される。電子伝達物質(例えばDIA)の活性1単位とはpH8、30℃で1分間あたりp-ヨードニトロテトラゾリウムバイオレット(INT)を1μmol還元する酵素量と定義される。
【0037】
試薬組成物R2は、被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬を含有する。本発明において、試薬組成物R2を単に標識試薬ということがある。被検出物と結合する物質としては、被検出物と抗原抗体反応により結合する抗体又は抗原、被検出物とレセプターとリガンドの関係のあるレセプター物質又はリガンド物質が挙げられる。試薬組成物R2に含まれる被検出物を結合する物質は、試薬組成物R1に含まれる被検出物捕捉試薬と同じ物質であってもよい。ただし、被検出物中に被検出物捕捉試薬と結合する部位が一つしか存在しない場合は、被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成されない。従って、この場合被検出物捕捉試薬と標識試薬はそれぞれ被検出物の異なる部位に結合する必要がある。被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識するには、公知の酵素標識方法で行えばよく、例えば一般的に用いられているマレイミド結合やエステル結合を形成する方法が挙げられる。
【0038】
検体は最初に標識試薬である試薬組成物R2と接触し、検体中の被検出物と標識試薬が複合体を形成する。検体と標識試薬との接触は、標識試薬を液体試薬又は凍結乾燥品等の固体試薬として調製し、検体と混合することにより行うことができる。また、フロースルー方式の場合は、固相支持体の上層に試薬組成物R2を含むアダプターであって、固相支持体と分離可能なアダプターをセットし、該アダプター中に検体を添加することにより、アダプター中で検体と標識試薬が接触する。該アダプターの一例を図1及び図2に示す(図1a及び図2a)該アダプターには、検体と標識試薬の混合物を固相支持体に供給するための1つ又は複数の開口部があり、検体と標識試薬が接触した後に、検体と標識試薬の混合物は、該開口部を通って固相支持体に供給される。
【0039】
標識試薬と検体との接触は、検体添加用デバイス中で行ってもよい。検体添加用デバイスは、検査装置外の付属部品であり、採取した検体を入れ特定の処理を行うための容器である。該デバイスには、バイアル、シリンジ、チューブ等が含まれる。また、該デバイスは容器だけでなく、検体を検査装置に添加供給する際に検体を濾過するための濾過フィルター等の濾過手段を含んでいてもよい。検体添加用デバイスは、検体を収容する容器部分と容器内の検体を検査装置に添加供給する部分を含む。後者の検体を添加供給する部分は、検体を容器内から排出するためのノズル(開口部)を有する部分を有し、該部分は容器部分の蓋を兼ねることもできる。後者の検体を検査装置に添加供給する部分は、ノズル部分あるいは蓋部分ともいう。また、検体添加用デバイスが濾過手段を含む場合、検体添加用デバイスは濾過フィルターを含むフィルターハウジングからなるノズル部分と容器本体部の2つの部品から構成されていてもよい。この場合のフィルターハウジングは、検体をフィルターに通す開口部と濾過フィルターを通過した検体を排出する開口部を有し、両開口部の間に濾過フィルターが存在する。容器は、例えば、検体を濾過フィルターに圧力をかけて通すことができるチューブやシリンジ等を用いればよい。
【0040】
標識試薬は検体添加用デバイスに組み込んでおいてもよい。ここで組込むとは、標識試薬を検体添加用デバイスのいずれかの部分に含ませ、検体添加用デバイスに検体を入れてから検体を検査装置に供給するまでの間に検体と試薬組成物R2が接触し得るようにすることをいう。検体中の被検出物が標識試薬の組み込み位置に供されることによって被検出物と標識試薬が接触し、検体を試薬組成物R1を固相化した固相支持体に添加する操作を行うだけで被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体の形成を簡便且つ迅速に行うことができる。例えば、バイアル、シリンジ及びチューブ等の検体採取用容器(本体部)に必要量の標識試薬を入れておいて、該容器に必要量の検体を添加して混合すればよい。検体採取用容器(本体部)は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル等のフレキシブルな材質で作製するのが好ましい。検体添加用デバイスの一例を図3及び図4に示す。標識試薬は、液体でも凍結乾燥させたものでもよく、またガラス繊維、不織布、スポンジ等の適当な固体の多孔質材料に吸収させ、乾燥させ、該多孔質材料を裁断した切片(標識試薬パッド)を入れておいてもよい。本発明において、標識試薬を含浸させた固体を標識試薬部ともいう。この場合、液体検体と該切片が接触し、切片中の標識試薬が検体中に溶解する。検査装置を長期間の保存に対応させるためには液状よりも乾燥状態での提供がより好ましい。標識試薬の乾燥体を作製するには凍結乾燥法では製造法がバッチ法となり特殊な大規模設備が必要となる。一方、温風乾燥法ではロール紙(ロール形状の支持体)に試薬噴霧後、ドライヤー型の温風送風機で乾燥することで連続製造が可能となる。標識試薬の形態は、目的により使い分けることが可能である。この際、検体中の不純物を除去するために、検体又は検体と標識試薬の混合物を濾過することが望ましい。濾過は標識試薬-被検出物の複合体を検査装置に添加する際に行えばよい。上記検体添加用デバイスのノズル部分にフィルター等の濾過手段を含ませ、検体と標識試薬混合物をフィルターを通して添加すればよい。この際、濾過フィルター中に標識試薬を組込んで含ませてもよい。例えば、濾過フィルター自体に標識試薬を吸収させ乾燥させておいてもよいし、濾過フィルターと前述の標識試薬を含浸させ乾燥させた多孔質材料の切片とを接触させてもよい。また、濾過フィルターと標識試薬を含む多孔質材料とを、フィルター用ハウジングに組込んでもよい。この際、濾過フィルターと標識試薬を含む多孔質材料は接触していても、していなくてもよい。濾過フィルターは、検体中に含まれる凝集物や固形物等の不純物を除去できるものならば限定されず、ガラス繊維又はニトロセルロース製のメンブレンが好適に用いられる。濾過フィルターの孔径あるいは保留粒子径は、非特異的反応を低減するうえで重要である。濾過フィルターの好ましい孔径又は保留粒子径は0.1〜0.6μmである。孔径あるいは保留粒子径が大きいとメンブレン上で非特異的結合が起こって偽陽性を示す場合がある。逆に小さすぎると検体中に存在する粘性物質や凝集物質のために濾過フィルター自身が詰まりやすくなる場合がある。また、検体として全血を用いる場合には、濾過フィルターに赤血球を除去する機能を持たせてもよい。例えば、濾過フィルターに抗赤血球抗体を含ませることにより赤血球を除去することが可能である。なお、全血を用いる場合、濾過フィルターにより赤血球を除去した後に、検体と標識試薬が接触するのが望ましい。また、ラテラルフロー方式の場合は、固相支持体と標識試薬を含む多孔質支持体を接触させておき、標識試薬を含む多孔質支持体に検体を添加する。この場合、標識試薬を含む部位が検体を添加する検体供給部を兼ねる。検体供給部に検体を添加することにより、検体と標識試薬が接触し、検体と標識試薬の混合物が直ちに固相支持体に移動する。
【0041】
試薬組成物R3は、脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、該脱水素酵素の基質、テトラゾリウム、並びに、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPともいう)若しくはその還元型(NADPH)を含有する。試薬組成物R1に脱水素酵素及び電子伝達物質の両方が含まれる場合は、試薬組成物R3には脱水素酵素及び電子伝達物質は両方とも含まれず、試薬組成物R1に脱水素酵素及び電子伝達物質のうち脱水素酵素のみが含まれる場合、試薬組成物R3には電子伝達物質が含まれ、試薬組成物R1に脱水素酵素及び電子伝達物質のうち電子伝達物質のみが含まれる場合、試薬組成物R3には脱水素酵素が含まれる。
【0042】
テトラゾリウムは、テトラゾリウム、並びに、テトラゾリウムのナトリウム塩及びカリウム塩等の金属塩の総称である。本発明において、試薬組成物R3を発色試薬組成物ということがある。
【0043】
上記脱水素酵素の基質は、アルコール脱水素酵素の場合は、アルコールが挙げられる。アルコールは、1級アルコール、例えばエタノール、メタノール、プロピルアルコール等が使用可能であり、エタノールが好適に用いられる。また、グルコース脱水素酵素の場合はグルコースが、グリセロール脱水素酵素の場合はグリセロールが挙げられる。
【0044】
テトラゾリウムとしては、p-ヨードニトロテトラゾリウムバイオレット、ニトロテトラゾリウムブルー等のテトラゾリウム、並びに、これらのテトラゾリウム類の金属塩若しくはアンモニウム塩が挙げられる。
【0045】
試薬組成物R3は界面活性剤を含んでいてもよい。本発明においては、メンブレン上の上記の試薬組成物R1を固相化した部位が検出シグナルを発生する検出部として機能し、該検出部に検体、試薬組成物R2及び試薬組成物R3を添加することにより検出部上に被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成される。この場合、試薬組成物R3を検出部に添加した際に、界面活性剤の洗浄作用によって検体中の被検出物に結合していないフリーの標識試薬量が低減するので、バックグラウンドが高くなることなく正確に測定することが可能となる。界面活性剤としては、例えばTriton X−100(ポリエチレングリコールモノ−р−イソオクチルフェニルエーテルを主体)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを主体)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを主体)、Nonidet P−40(ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテルを主体)、ZWITTERGENT 3−14(n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネ−トを主体)、CHAPS(3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸を主体)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等を1種以上使用できる。試薬組成物R3に含ませる界面活性剤の濃度は1%以下が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましい。試薬組成物R3には、さらに必要に応じて蒸留水、生理食塩液、又は緩衝液等を添加してもよい。
【0046】
試薬組成物R3として、例えばトリス緩衝液、50〜200mM、pH8.4〜9.5に以下の成分を含有する混合物が好適に用いられる。
NADPH又はNADP 0.05〜0.4mM
アルコール 3〜8%
テトラゾリウムのナトリウム塩 0.6〜1.2mM
塩化マグネシウム 2〜6mM
界面活性剤 0.01〜0.5(w/v)%
【0047】
フロースルー方式及びラテラルフロー方式の方法では、まず、被検出物の測定時に、検体及び試薬組成物R2を固相支持体上の試薬組成物R1を固相化した検出部上で混ざるように検体及び試薬組成物R2を添加する。陽性であれば検出部で被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が生じる。更に試薬組成物R3を添加すると、検出部で酵素サイクリング反応が起こる。
【0048】
本発明においては、酵素サイクリング反応の必須成分が試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3に分かれており、検査時に検出部で酵素サイクリング反応に必要な各成分が最終的に混合されるため、検査試薬の副反応や自然発色を抑制することができる。これにより、自然発色によるバックグラウンド増加を抑制することができるとともに、測定を迅速且つ高感度に行うことができる。
【0049】
本発明の方法で用いる被検出物を含む検体は、生体由来の検体であり、生体から直接採取したもの、生体由来のものを生体外で処理したもの等を含む。例えば、患者の咽頭や鼻腔等から滅菌綿棒等の検体採取器具を使用して採取した咽頭や鼻腔等のぬぐい液、咽頭や鼻腔等の洗浄液、鼻腔吸引液、唾液、血清、血漿、全血、便懸濁液、尿、細菌等を含む可能性のある検体の培養液等を用いることができる。検体は、必要に応じて緩衝液や生理食塩液等で希釈してもよい。検体の希釈に用いる緩衝液としては、例えばトリス緩衝液、グッド緩衝液等が挙げられる。
【0050】
検体が患者の咽頭や鼻腔等から滅菌綿棒等の検体採取器具を使用して採取した咽頭や鼻腔等のぬぐい液、咽頭や鼻腔等の洗浄液などの粘性を有する液体である場合、検体を希釈する緩衝液等中に検体を浮遊させて検査を行う。検体を緩衝液等で希釈したものを検体浮遊液といい、本発明においては、検体浮遊液等の検体を処理したものも検体という。また、検体を浮遊させるのに用いる緩衝液を検体浮遊用緩衝液という。
【0051】
検体を希釈する緩衝液又は検体浮遊用緩衝液には、界面活性剤0.2〜10(w/v)%、ウシ血清アルブミン、ウマ血清アルブミン、ヤギ血清アルブミン、ヒツジ血清アルブミン等の動物由来血清アルブミン1〜10(w/v)%、及び/又は適当な濃度の無機塩等を添加してよい。検体を、界面活性剤と動物由来血清アルブミンを含有する緩衝液で希釈し、又は浮遊させることにより、被検出物以外の成分による偽陽性反応を抑制することができる。
【0052】
界面活性剤は、例えばTriton X−100(ポリエチレングリコールモノ−р−イソオクチルフェニルエーテルを主体)、Tween 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを主体)、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを主体)、Nonidet P−40(ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテルを主体)、ZWITTERGENT 3−14(n−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネ−トを主体)、CHAPS(3−〔(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕プロパンスルホン酸を主体)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等を1種以上使用できる。
【0053】
例えば、検体にインフルエンザウイルスが存在するかを検出する場合は、界面活性剤0.2〜10(w/v)%、ウシ血清アルブミン1〜10(w/v)%等を含む検体浮游用緩衝液で希釈した場合にウイルス粒子が破壊されて被検出物(NP抗原)が抽出されるため検出感度が上がる。このように、検体浮遊用緩衝液は、単に検体を希釈する効果だけでなく、ウイルス、細菌等から被検出物とする成分を抽出する効果を有している。
【0054】
本発明は、上記の固相支持体を用いた、酵素サイクリング方法を利用した検査方法に用いる検査装置及び検査キットを包含する。本発明において、検査装置に試薬を含め検査キットという。該キットは、さらに、検体添加用デバイスを別体として含んでいてもよい。
【0055】
フロースルー方式を利用するメンブレンエンザイムアッセイによる検査キットの例を図1及び図2に示す。
【0056】
図1はフロースルー方式検査キットの平面図であり、図2は、図1のI−I'切断断面図である。検査キットには、メンブレンbの表面をマスクするアダプター(a)が設置されており、アダプター(a)は開口部(O1)及び(O2)を有する。開口部(O1)及び(O2)の直下のメンブレン(b)には試薬組成物R1が固相化されており、固相化された部位が検出部となる。この例の場合、開口部(O1)と(O2)の直下のメンブレン(b)に異なる被検出物を捕捉し得る被検出物捕捉試薬を含む試薬組成物R1を固相化しておくことにより、1つの検査キットで複数の被検出物を検出することができる。メンブレン(b)の下側には液体を吸収する部材(液体吸収部材)(c)が設置されている。
【0057】
図3にチューブタイプの検体添加用デバイスを示す。デバイスの標識試薬部(g)には試薬組成物R2を含有するフィルターが設置されている。検体を標識試薬部(g)を通過させて濾過する。濾過液は図1のアダプター(a)の開口部(O1)、(O2)上に滴下する。アダプター(a)の底面部の検体が通過するための開口部の数を増やすことにより、更に多くの項目の同時試験に対応することができる。
【0058】
検体添加用デバイスを用いる場合のメンブレンの孔径又は保留粒子径は、検体添加用デバイスの濾過フィルターの孔径又は保留粒子径以上であり、かつ1〜12μmであることが好ましく、3〜5μmが特に好ましい。アダプター(a)の開口部(O1)又は開口部(O2)に滴下した検体及び試薬組成物R2の混合物はメンブレン上の検出部に到達する。開口部(O1)及び開口部(O2)の直下に設けられた検出部では、あらかじめメンブレンに固相化した試薬組成物R1、検体中の被検出物及び試薬組成物R2が反応し、効率的に被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体が生じる。次いで試薬組成物R3を供給すると、陽性であれば被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体と試薬組成物R3中のNADPが反応してNADが生成する。このNADと、試薬組成物R1中のアルコール脱水素酵素(ADH)及びジアホラーゼ(DIA)、並びに試薬組成物R3が反応し、検出部で酵素サイクリング反応が起こり、検出部が着色する。陰性の場合は被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体が形成されず、検出部にアルカリホスファターゼが残らず、試薬組成物R3を流した時にフリーの標識試薬が下流に流れて除去されるため、発色が起こらない。
【0059】
検体添加用デバイスの一実施態様の模式図を図3及び図4に示す。図3と図4の態様において、デバイスはチューブ状の検体添加用デバイスである。標識試薬部(g)は、試薬組成物R2を含浸させた固体が用いられている。検体添加用デバイスは、例えば図3に記載されるように先端部(d)と本体部(e)からなる形状であり、先端部(d)の内部に図4に示されるように標識試薬部(g)及び濾過フィルター(f)が備え付けられている。
【0060】
本体部(e)の内部に検体浮遊用緩衝液で希釈した検体浮遊液(検体)を入れ、本体部(e)に標識試薬部(g)並びに濾過フィルター(f)を備えた先端部(d)を取り付ける。検体で標識試薬部の試薬組成物R2を溶解した後、濾過フィルター(f)を通して検体を濾過し、濾液を検査キットのメンブレンに滴下する。
【0061】
本体部(e)がポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル等のフレキシブルな材質からなる場合、濾過フィルターを取り付けた状態で、手などにより容器外側を押し内部に圧力を加えることで、容易に且つ簡便に検体浮遊液を濾過することができる。
【0062】
標識試薬部(g)は、検体添加用デバイスの先端部(d)に図4のように検体が標識試薬部(g)に接触した後に、濾過フィルター(f)を通るように装着することが好ましい。図4に示す先端部(d)に濾過フィルターを備えた部分を濾過フィルターキット(h)という。
【0063】
試薬組成物R3は、成分の一種以上を別途乾燥状態として保存してもよい。例えば、NADPH/又はNADPを乾燥物として、エチルアルコール、テトラゾリウム、及び塩化マグネシウムを含むトリス緩衝液(50〜200mM、pH8.4〜9.5)で、NADPH/又はNADPの乾燥物を溶解して、メンブレンに供給する方法であってもよい。試薬組成物R3の成分の一部を乾燥物として使用する場合、使用時に他の成分と混合して溶解すればよい。
【0064】
ここで、本発明の検査キットにおいては、検体供給側から検出部に向かって溶液の流れが生じるが、その流れを基準に上流、下流という。すなわち、ある位置に対して、より検体供給側に近い位置を上流といい、より検出部に近い位置を下流という。
【0065】
試薬組成物R3の成分の一種以上をこのような乾燥物とすることにより、検査試薬の長期間保存が可能となるので、好ましい。
【0066】
以下に、フロースルー方式の検査キットを用いた本発明の検出方法の具体的な手順の一例を示す。
(1)試薬組成物R1をメンブレン上に固相化し、検出部とする。
(2)患者から採取した検体を検体浮遊用緩衝液で希釈し、濾過フィルター及び/又は標識試薬部を備えた検体添加用デバイスを用い、検体に試薬組成物R2を混合しながら濾過し、検出部上に滴下する。
(3)装置のアダプターを取り外す。
(4)試薬組成物R3を検出部に滴下し所定時間反応させる。
(5)所定反応時間後に検出部の発色の有無により判定する。
【0067】
所定の反応時間は、3〜10分である。
【0068】
所定の反応時間で判定できない場合は、反応停止液を滴下して反応を止めておき、後で判定してもよい。反応停止液は、0.5Mクエン酸水溶液が用いられる。
【0069】
次に、ラテラルフロー方式の検査キットを用いた本発明の検出方法の実施形態の一例を図5に基づき説明する。図5のキットも、濾過フィルターを備えた検体添加用デバイス(図3)をフロースルー方式の場合と同様に、別体として用いることが好ましい。プラスチック板(ト)上にメンブレン(イ)が固定されており、メンブレンの上流側に不織布を載置した発色試薬供給部(ヘ)、下流側に液体吸収部材(ホ)が固定されている。
【0070】
(1) 試薬組成物R1をメンブレン(イ)上に固相化して検出部(ロ)とする。この場合、例えば試薬組成物R1を図5に示すように線状に固相化する。異なる被検出物捕捉試薬を含む複数の試薬組成物R1をそれぞれ線状に固相化してもよく、この場合、1つの検査キットで複数の被検出物を検出することができる。また、試薬組成物R2を含有する標識試薬部(ハ)をメンブレン(イ)上に載置する。標識試薬部(ハ)は試薬組成物R2を乾燥状態で含むスポンジを含む。この際、あらかじめメンブレン上に試薬組成物R1を固相化し、かつ標識試薬部を設けておき、検出部、標識試薬部を有する装置を用いればよい。
【0071】
(2) 標識試薬部(ハ)の上面の検体供給部(ニ)に検体を検体浮遊用緩衝液で希釈した検体浮遊液を滴下する。検体浮遊液は、標識試薬部に含まれる試薬組成物R2を溶解して混ざりあい、毛管現象によりメンブレンに移動する。なお、標識試薬部(ハ)と検体供給部(ニ)は分離した部位ではなく、標識試薬部(ハ)が検体供給部(ニ)を兼ねるということもできる。
【0072】
(3) 次いで、試薬組成物R3を発色試薬供給部(ヘ)に滴下する。試薬組成物R3は試薬供給部からメンブレンへ向かって流れ、メンブレン中の検体と標識試薬の混合物と混ざりメンブレン上の検出部に到達する。すなわち、試薬組成物R3は検体と試薬の混合物をメンブレンに沿って展開させる。メンブレン上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成される。
【0073】
上記(2)の工程において、検体の液量が多ければ、試薬組成物R2を溶解した検体浮遊液の一部は、メンブレン上の検出部に到達し、検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成される。この場合は、試薬組成物R3を直接検出部に滴下してもよい。上記(3)の工程において試薬組成物R3を発色試薬供給部へ滴下することにより、試薬組成物R3がメンブレン中に残った検体及び試薬組成物R2をメンブレンに沿って展開させ、検出部に到達させる。
【0074】
検体が陽性であれば検出部で被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体が生じる。
【0075】
被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体形成に与らなかった成分、検体浮遊用緩衝液等(緩衝剤、血清アルブミン、界面活性剤、他)は液体吸収部材(ホ)に吸収される。試薬組成物R3は、被検出物捕捉試薬−被検出物−標識試薬の複合体が形成された後、検出部に到達する。この結果、酵素サイクリング反応に必要な各成分が最終的に検出部に集合するため検出部で酵素サイクリング反応が起こり発色反応する。陰性の場合は被検出物捕捉試薬−被検出物−アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体が形成されないので、試薬組成物R3を流した時にフリーの標識試薬が検出部に留まらず下流に流れるため、発色が起こらない。
【0076】
ラテラルフロー方式では、試薬組成物R3はあらかじめ全成分を混合しておいてもよく、成分の一部を使用直前、又は使用中に混合してもよい。試薬組成物R3を使用中に混合する方法としては、例えば成分の一部を乾燥状態として発色試薬供給部(へ)中に配置しておく方法が挙げられる。この場合、他の成分を展開溶剤とし、他の成分を含む液体を発色試薬供給部に供給すると、展開時に発色試薬供給部中に乾燥状態で組込んだ成分を溶解し、試薬組成物R3の成分総てが混合される。
【0077】
被検出物がウイルス又は細菌の場合には、フロースルー方式又はラテラルフロー方式を採用し、検出部の下流側に液体吸収部材(c、ホ)を設置しておくことが望ましい。この場合、検出部で捕捉されなかった被検出物は液体吸収部材(c、ホ)に吸収されるので、被検出物の装置の外への流出を抑えることができ、被検出物による感染を防止することができる。
【実施例】
【0078】
実施例1
1.抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の作製
(1)抗A型インフルエンザウイルスNP抗体
A型インフルエンザウイルス抗原をBALB/cマウスに免疫し、一定期間飼育したマウスから脾臓を摘出し、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))によりマウスミエローマ細胞(P3×63)と融合した。得られた融合細胞(ハイブリドーマ)は、37℃インキュベーター中で維持した。
【0079】
融合細胞の抗A型インフルエンザウイルス活性を、A型インフルエンザウイルスNP抗原を固相に固相化したプレートを用いたELISA法で確認した。融合細胞の培養液の上清の抗体活性を確認しながら細胞の純化(単クローン化)を行った。得られた融合細胞2株をそれぞれプリスタン処理したBALB/cマウスに腹腔投与し、約2週間後、抗体含有腹水を採取した。プロティンAカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー法により、マウスの腹水からそれぞれIgGを精製し、2種類の精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
【0080】
(2)抗B型インフルエンザウイルスNP抗体
B型インフルエンザウイルス抗原を用い、(1)と同様の方法で、2種類の精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を得た。
【0081】
2.酵素標識抗インフルエンザウイルス抗体の作製
(1)酵素標識抗A型インフルエンザウイルス抗体の作製
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体のうち1種類について45mgを0.1Mクエン酸緩衝液(pH3.6)で透析後、ペプシン10mgを添加し、37℃で1時間、Fab’消化処理を行った。処理液をウルトロゲルAcA34カラムで分画して抗A型インフルエンザウイルスNP抗体F(ab’)精製画分を得た。前記画分を約10mg/mLまで濃縮後、0.1Mメルカプトエチルアミンと10:1の体積比で混合し、37℃で90分間還元処理を行った。処理液をウルトロゲルAcA34カラムで分画して抗A型インフルエンザウイルスNP抗体Fab’精製画分を得た後、約1mLにまで濃縮した。
【0082】
10mg/mLのアルカリホスファターゼ1.5mLを1mM塩化マグネシウム及び0.1mM塩化亜鉛を含む50mMホウ酸緩衝液(pH7.6)に透析後、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド0.7mgを添加し、30℃で1時間処理した。処理後の溶液をセファデックスG−25カラムで分画し、最初のピークを回収してマレイミド−アルカリホスファターゼを得た後、約1mLにまで濃縮した。
【0083】
濃縮した抗A型インフルエンザウイルスNP抗体Fab’とマレイミド−アルカリホスファターゼを1:2.3の蛋白比で混合し、4℃で20時間穏やかに撹拌して反応させ、アルカリホスファターゼ標識抗A型インフルエンザウイルスNP抗体Fab’を得た。更に、反応液をウルトロゲルAcA34カラムで分画し、未反応物を除去して精製アルカリホスファターゼ標識抗A型インフルエンザウイルスNP抗体Fab’を得た。精製アルカリホスファターゼ標識抗A型インフルエンザウイルスNP抗体Fab’は、0.15M塩化ナトリウム、4%(W/V)ウシ血清アルブミン、1.5mM塩化マグネシウム、0.15mM塩化亜鉛、1%(W/V)Triton X−100、0.09%アジ化ナトリウムを含む25mMトリス緩衝液(pH8.0)の組成からなる標識抗体希釈液で希釈した。希釈液を0.22μm孔径の濾過フィルターで濾過し、酵素標識抗A型インフルエンザウイルス抗体(A型インフルエンザウイルス用の試薬組成物R2)を得た。
【0084】
(2)酵素標識抗B型インフルエンザウイルス抗体の作製
精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体のうち1種類について、(1)と同様の方法で、酵素標識抗B型インフルエンザウイルス抗体(B型インフルエンザウイルス用の試薬組成物R2)を得た。
【0085】
3.ADH及びDIAを結合したラテックス粒子の調製
(使用材料)
電子伝達物質:ジアホラーゼ(DIA、ユニチカ社製、市販品)
脱水素酵素:アルコール脱水素酵素(ADH、ロシュ社製、市販品)
被検出物捕捉試薬A:精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体
被検出物捕捉試薬B:精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体
【0086】
酵素は、ADH(ロシュ社)及びDIA(ユニチカ社)を使用した。
【0087】
ADH及びDIAを25mM MES緩衝液pH7.0に溶解し、粒子径0.046μmの白色ラテックス粒子(ポリスチレン系、カルボン酸タイプ、JSR社製)に共有結合で結合し、牛血清アルブミン0.04%を含む5mMトリス緩衝液(pH7.5)にラテックス粒子濃度が0.5%になるように浮遊した(ADH50単位/mL,DIA28単位/mL)。
【0088】
A型、B型インフルエンザウイルス検出用検査キットの作製
インフルエンザウイルス検出用検査キットは、図1及び図2に示すフロースルー型の構成のものを用いた。メンブレンは、孔径3μmを有するニトロセルロースメンブレン(サイズ2×3cm、厚さ125μm)を用いた。
【0089】
精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体を1mg/mL、ADH及びDIAを結合したラテックス粒子0.025%を含む5mMトリス緩衝液(pH7.5)を調製し、試薬組成物R1とした。キットの開口部(O1)に試薬組成物R1を5μLスポットした。B型インフルエンザの検出部は、精製抗A型インフルエンザウイルスNP抗体の代わりに精製抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を用いた点以外は同様とした(開口部(O2))。A型及びB型のスポットを有するメンブレンを減圧下で40分間乾燥し、それぞれA型、B型のインフルエンザ検出部とした。
【0090】
標識試薬部は、酵素標識抗A型インフルエンザウイルスNP抗体と酵素標識抗B型インフルエンザウイルスNP抗体を至適濃度に希釈、混合して150μLを直径9mm、厚さ4mmのポリビニルスポンジに含浸させて乾燥し、検体添加用デバイス先端部に取り付けて作製した。
【0091】
A型、B型インフルエンザウイルスの検出
検体として、ふ化鶏卵内で培養した下記ウイルスを使用した。
A型インフルエンザウイルス:A/Beijing/32/92(H3N2)、
B型インフルエンザウイルス:B/Shangdong/7/97
【0092】
検体は、下記の検体浮遊用緩衝液を用いて以下のような希釈系列を調製した。なお、陰性対照は、検体浮遊用緩衝液を用いた。
【0093】
検体浮遊用緩衝液
50mMトリス緩衝液、pH8.0を主体とし、界面活性剤Triton X-100を1(w/v)%、ウシ血清アルブミン3(w/v)%、正常マウス免疫グロブリン0.1(w/v)%、アジ化ナトリウム0.09(w/v)%となるよう調製した。
A型インフルエンザ/Beijing
1:1×104
1:2×104
1:4×104
1:6×104
1:8×104
B型インフルエンザ/Shangdong
1:1×10
1:2×10
1:4×10
1:6×10
1:8×10
【0094】
これらの検体は、検体浮遊用緩衝液が入った検体添加用デバイス本体部内で調製した。
【0095】
試験
調製した検体が入った検体添加用デバイス本体部に酵素標識試薬を含む標識試薬部を備えた検体添加用デバイス先端部を取り付け、検体で標識試薬を溶解した後、孔径0.5μmの濾過フィルターで濾過し、検査キットのアダプターに300μL滴下し、ニトロセルロースメンブレンの下部に備えられた液体吸収部材に液が完全に吸収されるまで静置した。
【0096】
次に、アダプターを取り外し、試薬組成物R3(下記組成)を300μL滴下し、発色反応を開始させた。5分間後に鉛直上方から観察し、開口部(O1)のメンブレンにのみ発色が認められた場合にはA型インフルエンザウイルス陽性、開口部(O2)のメンブレンにのみ発色が認められた場合にはB型インフルエンザウイルス陽性、両開口部(O1)及び(O2)のメンブレンとも発色が認められない場合には陰性と判定した。
試薬組成物R3(発色試薬):
トリス緩衝液(pH9.0) 100mM
p-ヨードニトロテトラゾリウムバイオレット 1mM
NADPH 0.1mM
エチルアルコール 4%
塩化マグネシウム 5mM
界面活性剤(ポリオキシエチレン系) 0.02(V/W)%
【0097】
比較例として、ADH及びDIA結合ラテックス粒子を固相化しない以外は、上記したと同様の方法で検査キットを作成した。
【0098】
発色試薬としてBCIP/NTB-Purple Liquid Substrate System for Membranes (B3679、SIGMA ALDRICH 社製)、
BCIP: 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルリン酸
NTB : ニトロテトラゾリウムブルー
を用いた点以外は、上記と同様に行い検出感度を評価した。判定は、5分間後に実施例1と同様にして行った。
【0099】
結果
表1及び表2に示すように、A/Beijing/32/92(H3N2)は、1:4×104希釈までA型検出部が陽性を示し、B型検出部は陰性で特異的にA型インフルエンザウイルスを検出しており、比較例の1:1×104と比べ4倍検出感度が高かった。
【0100】
B/Shangdong/7/97は、1:6×103希釈までB型検出部が陽性を示し、A型検出部は陰性で特異的にB型インフルエンザウイルスを検出しており、比較例の1:2×103と比べ3倍検出感度が高かった。
【0101】
陰性対照は、キットのすべてで陰性を示した。
【0102】
本実施例ではA型並びにB型ウイルスとも比較例よりもウイルス量が少ないが、ウイルスを検出した。本発明のADH、DIAを固相化した酵素サイクリング反応を用いることにより非特異がなかった。このように、実施例ではA型及びB型のインフルエンザウイルスを迅速且つ高感度に検出し、A型とB型を識別することができた。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
実施例2
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のペニシリン結合蛋白2'(PBP2')に対するモノクローナル抗体2種類(デンカ生研社製)をペプシン処理してF(ab')2精製画分(抗PBP2'精製画分)を得た。
【0106】
抗PBP2'精製画分の1種類を、アルカリホスファターゼで標識した酵素標識抗PBP2'抗体(試薬組成物R2)を得た。
【0107】
PBP2'検出用検査キットの作製
PBP2'検出用検査キットは、図5の構成のものを用いた。メンブレンは、ニトロセルロースメンブレン(Hiflow Plus HF120 ミリポア社製)を用いた。
【0108】
メンブレンの検出部(ロ)には,被検出物捕捉試薬として他方の抗PBP2'精製画分(抗PBP2'抗体)を1mg/mL、ADH及びDIAを結合したラテックス粒子(実施例1と同じもの)が0.025%に含まれるように、5mMトリス緩衝液(pH7.5)用いて希釈した試薬組成物R1を幅1mmのライン状に塗布し、減圧下で40分間乾燥を行い、PBP2'の検出部とした。試薬組成物R3は実施例1と同一の試薬を用いた。
【0109】
標識試薬部は、至適濃度に希釈した酵素標識抗PBP2'抗体(試薬組成物R2)をポリビニルスポンジに含浸させて乾燥し、メンブレン上に載置した。
【0110】
さらに、不織布を用いた発色試薬供給部、セルロースを用いた液体吸収部材を装着した、フロースルー型のPBP2'検出用検査キットを作製した。
【0111】
試験
黄色ブドウ球菌のPBP2'産生菌(菌株1、2、3)を培養し、アルカリ抽出法を用いてスライドラテックス凝集反応用試料を調製した。
【0112】
検体浮遊用緩衝液(実施例1と同組成)を用いて凝集反応用試料を2倍系列希釈して検体を調製した。検体は、25μLをPBP2'検出用検査キットの検体供給部に滴下した。次いで発色試薬130μLを発色試薬供給部に滴下した。
【0113】
発色試薬を滴下後10分間で検出部の着色ラインの有無を目視で観察して判定した。陽性と判定された終末希釈倍数を検出感度とした。
【0114】
なお、陰性対照は、検体浮遊用緩衝液を用いた。
【0115】
比較例2
比較例2として、MRSA-La「生研」(デンカ生研社製)を用いたスライドラテックス凝集反応により検出感度を評価した。
【0116】
スライドラテックス試薬は、ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩液に抗PBP2'抗体結合ポリスチレンラテックス粒子0.1(w/v)%を浮游したものである。
【0117】
ポリスチレンラテックス粒子上には抗PBP2'モノクローナル抗体が結合されている。
【0118】
結果
本発明法及びスライドラテックス法の検出下限濃度を表3に示す。
【0119】
表3に示すように、本発明による方法は、スライドラテックス凝集反応法と比べMRSAのPBP2'抗原を特異的に高感度で検出できることがわかる。
【0120】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の一実施態様であるフロースルー方式検査キットの平面図である。
【図2】図1のI−I’切断断面図である。
【図3】本発明において使用される検体添加用デバイスの一実施態様を示す図である。
【図4】図3の検体添加用デバイス先端部の透視図である。
【図5】本発明の一実施態様であるラテラルフロー方式検査キットの上面図及び切断断面図である。
【符号の説明】
【0122】
O1:開口部
O2:開口部
a:アダプター
b:メンブレン
c:液体吸収部材
d:先端部
e:本体部
f:濾過フィルター
g:標識試薬部
h:濾過フィルターキット
イ:メンブレン
ロ:検出部
ハ:標識試薬部
ニ:検体供給部
ホ:液体吸収部材
ヘ:発色試薬供給部
ト:プラスチック板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分をそれぞれ含有する試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3並びに固相支持体を用いて検体中の被検出物を検出する方法であって、固相支持体に試薬組成物R1を固相化し検出部を設け、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、次いで試薬組成物R3を固相支持体上の検出部に供給することを含み、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させ、検出部で酵素サイクリング反応を行わせる、検体中の被検出物を検出する方法。
試薬組成物R1: 脱水素酵素及び/若しくは電子伝達物質並びに被検出物捕捉試薬
試薬組成物R2: 被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬
試薬組成物R3: 脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)若しくはその還元型(NADPH)
【請求項2】
脱水素酵素がアルコール脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素からなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項3】
電子伝達物質がジアホラーゼである、請求項1又は2に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項4】
試薬組成物R2が界面活性剤0.2〜10(w/v)%及び動物由来血清アルブミン1〜10(w/v)%を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項5】
試薬組成物R1を担体に結合させ、該担体を固相支持体に固相化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項6】
担体が微小樹脂粒子である、請求項5記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項7】
被検出物捕捉試薬と被検出物が抗原抗体反応により結合する請求項1〜6のいずれか1項に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項8】
フロースルー方式であり、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させ、次いで試薬組成物R3を固相支持体上の検出部に供給して酵素サイクリング反応を行わせる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項9】
試薬組成物R2を含み、濾過フィルターを有する検体添加用デバイスに検体を入れ、検体及び試薬組成物R2の混合物を調製し、固相支持体に供給する、請求項8記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項10】
ラテラルフロー方式であり、試薬組成物R2及び検体の混合物を固相支持体に供給し、次いで試薬組成物R3を固相支持体に供給し、検体及び試薬組成物R2の混合物を固相支持体上を展開させ、固相支持体上の検出部で被検出物捕捉試薬-被検出物-アルカリホスファターゼ標識試薬の複合体を形成させて酵素サイクリング反応を行わせる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の検体中の被検出物を検出する方法。
【請求項11】
下記成分をそれぞれ含有する試薬組成物R1、試薬組成物R2及び試薬組成物R3を別々に含む、請求項1に記載の方法により固相上で酵素サイクリング反応を行わせて検体中の被検出物を検出するための検査キットであり、試薬組成物R1が固相支持体上に固相化されている検査キット。
試薬組成物R1: 脱水素酵素及び/若しくは電子伝達物質並びに被検出物捕捉試薬
試薬組成物R2: 被検出物と結合する物質をアルカリホスファターゼで標識したアルカリホスファターゼ標識試薬
試薬組成物R3: 脱水素酵素及び電子伝達物質のうち試薬組成物R1に含まれていないもの、脱水素酵素の基質、テトラゾリウム並びにニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)若しくはその還元型(NADPH)
【請求項12】
脱水素酵素がアルコール脱水素酵素、グルコース脱水素酵素、グリセロール脱水素酵素からなる群から選択される1種以上である、請求項11記載の検査キット。
【請求項13】
電子伝達物質がジアホラーゼである、請求項11又は12に記載の検査キット。
【請求項14】
試薬組成物R2が界面活性剤0.2〜10(w/v)%及び動物由来血清アルブミン1〜10(w/v)%を含有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項15】
試薬組成物R1を担体に結合させ、該担体が固相支持体に固相化されている、請求項11〜14のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項16】
担体が微小樹脂粒子である、請求項15記載の検査キット。
【請求項17】
被検出物捕捉試薬と被検出物が抗原抗体反応により結合する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項18】
フロースルー方式である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の検査キット。
【請求項19】
さらに、試薬組成物R2を含み、濾過フィルターを有する検体添加用デバイスを含む、請求項18記載の検査キット。
【請求項20】
ラテラルフロー方式である、請求項11〜17のいずれか1項に記載の検査キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−27(P2010−27A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160939(P2008−160939)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】