説明

新規糖転移酵素、及びそれを利用した配糖体の製造

【課題】1,6-glucosyltranseferase活性を有し、順次グルコースを抱合して糖鎖を伸長する作用を有する新規なグルコース転移酵素を提供する。また、当該糖転移酵素の製造方法、並びに当該製造方法に利用される糖転移酵素の遺伝子、この遺伝子を有するベクター及び形質転換体を提供する。さらに、当該糖転移酵素、または上記形質転換体から産生される組換え糖転移酵素を用いた配糖体の製造方法、ならびこれらの酵素を用いたグルコース配糖体の水溶性の向上方法を提供する。
【解決手段】グルコース転移酵素として、ニチニチソウ由来の、グルコース配糖体のグルコース残基にグルコシル基をβ1,6結合させる1,6-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な糖転移酵素に関する。より詳細には、本発明は、1,6-glucosyltranseferase活性を有し、順次グルコースを抱合して糖鎖を伸長する作用を有するグルコース転移酵素に関する。また本発明は、当該糖転移酵素の製造方法、並びに当該製造方法に利用される糖転移酵素の遺伝子、この遺伝子を有するベクター及び形質転換体に関する。さらに、本発明は当該糖転移酵素、または上記形質転換体から産生される組換え糖転移酵素を用いた配糖体の製造方法、ならびこれらの酵素を用いたグルコース配糖体の水溶性の向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物細胞のもつ特定の酵素機能を利用して、外来性の化合物の構造を修飾することを内容とする生物転換(バイオトランスフォーメーション)が、培養植物細胞による有用物質生産の一分野として研究されている。種々の天然・非天然化合物に糖を抱合して配糖体を生産する配糖化も、このようなバイオトランスフォーメーションの重要なターゲットである。配糖化は、しばしば、毒性、不安定性または難溶性ゆえに、有用性が認められながらもその有効利用が図られていない物質について、毒性減少、安定性増大または水溶性の増大のために、従来より試みられている手法である(非特許文献1及び2)。特に、一般的に配糖体を化学的に合成することは困難であるため、植物細胞の糖転移酵素を利用した配糖体の生産は注目されている研究分野である。
【0003】
これまでに植物化学者らによって、少なくとも70000種もの植物由来の天然配糖体が同定されている(非特許文献3)。それらの配糖体の生合成には、UDP(uridine 5’-diphosphate)によって活性化された糖を低分子基質に転位するUDP-glycosyltransferase(以下、「UGTase」という)が関わっている。当該UGTaseは植物内に多数存在し(例えば、Cazyデータベース参照、[http://afmb.cnrs-mrs.fr/CAZY/])、配糖体などの二次代謝産物の生合成、並びに植物ホルモンの放出制御(非特許文献4及び5)や、外来異物の代謝(非特許文献6及び7)など、植物組織の中で多くの役割を担っている。全ゲノム配列が解読されたシロイヌナズナのゲノム中には100を超えるUGTase遺伝子が存在していることが明らかにされているように(非特許文献8)、植物には多種多様のUGTaseが進化の過程で様々な基質特異性を獲得していると推察される。UGTaseの基質特異性を決定している機構についても研究が進められているが(非特許文献9及び10)、未だ未解明な部分が多い。
【0004】
ところで、科学の発展並びに国民の健康及び天然物指向に伴い、再評価されつつある化合物としてクルクミン(curcumin)がある。クルクミンはショウガ科ウコンの根茎に含まれるジアリルヘプタノイド構造を有する化合物であり、民間薬としてはアルコール性肝障害の予防や治療に用いられており(非特許文献11)、食品分野では黄色色素として利用されている。また、その抗酸化活性(非特許文献12及び13)、抗炎症活性(非特許文献14)、抗腫瘍活性(非特許文献15及び16)、抗リューシュマニア活性(非特許文献17)、血管新生阻害活性(非特許文献18)などについても研究されている。さらに、ラットの脳においてamyloid βによって誘導される酸化的障害を抑制することから、アルツハイマー病に対する薬物としての可能性も示唆されている(非特許文献19)。
【0005】
しかしながら、クルクミンはその生理活性が注目されながらも水に難溶性であり、しかも光や弱アルカリ条件下で分解され易い性質を有するため(非特許文献20及び21)、利用できる範囲が限られるといった問題を有している。
【0006】
水に難溶性のクルクミンを水溶化する技術として、Tφnnesenらによってイオン性や非イオン性のシクロデキストリンを用いることが提案されている(非特許文献22)。具体的には、当該文献には11%濃度のメチル化β-シクロデキストリンの添加によってクルクミンの水溶性(30pmol/mL)が26,000倍も上昇することが示されている。
【0007】
また、クルクミンは配糖化によって水溶性が向上することも知られている(例えば、非特許文献23及び24など)。具体的には、非特許文献23には、ルチンをcyclodextrin glucanotransferaseによって配糖化することによって水溶性が5000倍上昇することが記載されている。また、非特許文献24には、クルクミンをモノグルコシド体(curcumin 4’-O-β-D-glucoside(curcumin monoglucoside:Cmg))とすることで水溶性が240倍に、さらにモノゲンチオシド体(curcumin 4’-O-gentiobioside(curcumin monogentiobioside:Cmgen))はモノグルコシド体の約10,000倍、ジグルコシド体(curcumin4’,4”-O-β-D- diglucoside(curcumin diglucoside:Cdg))はモノグルコシド体の約50,000倍も水溶性が上昇することが記載されている。ラットにクルクミンを食餌すると、クルクミンは腸管壁にてcurcumin glucuronideに変換され、さらに肝臓において硫酸抱合を受けることが知られていることから(非特許文献25)、クルクミンの配糖体はクルクミンの水溶化だけでなく、クルクミンのプロドラッグとしての可能性を秘めるものである。
【0008】
クルクミンの配糖化方法としては、上記酵素的な方法の他、クルクミンとα-D-acetyl-bromo-glucoseとの縮合反応を利用した化学合成法が知られている(特許文献1)。しかし、その収率はクルクミンモノグルコシド(Cmg)については8%、クルクミンモノゲンチオビオシド (Cmgen)については3%と極めて低い。また、磯部らによってvanillin-O-tetraacetylglucosideを利用した効率的化学合成法が提案されているが、それでも収率は、クルクミンモノグルコシド(Cmg)については35%、クルクミンモノゲンチオビオシド (Cmgen)についても21%と、格段に向上したというものでもない(非特許文献26)。
【0009】
また本発明者らは、既にクルクミンの配糖化方法として、新たに見出したUGTaseを用いて、クルクミンの4’位にグルコシル基を導入してクルクミンのモノグルコシド体(curcumin 4’-O-β-D-glucoside:Cmg)を製造する方法、ならびに当該Cmgの4”位にさらにグルコシル基を導入してクルクミンのジグルコシド体(curcumin 4’,4”-O-β-D-giglucoside:Cdg)を製造する方法を報告している(特許文献2)。当該方法は、クルクミンの4’位またはcurcumin 4’-O-β-D-glucoside(Cmg)の4”位にグルコシル基を効率的に導入する方法として有効であるが、グルコシル基の伸長を行うことはできず、グルコシル基を伸長してクルクミンモノゲンチオビオシド (Cmgen)やクルクミンゲンチオビオシルグルコシド(Cmgenmg)、クルクミンジゲンチオビオシド(Cdgen)などの配糖体を製造する方法が求められている。
【非特許文献1】Takahashi T., et al., (1997) Taxol-sialyl conjugate. Bioorg Med Chem Lett. 8, 113-116
【非特許文献2】Kometani T., et al., (1993), Biosci Biotechnol and Biochem. 57, 2192-2193
【非特許文献3】Harborne JB., et al., (1988) in The Flavonoids: Advances in Research science 1980 (Harborne JB. ed) pp.303-328, Chapman and Hall Ltd., London
【非特許文献4】Szerszen JB., et al., (1994) Science 265, 1669-1701
【非特許文献5】Jackson RG., et al., (2001) J Biol Chem. 276, 4350-4356
【非特許文献6】Gaillard C., et al., FEBS Lett. 352, 219-212
【非特許文献7】Jones P., et al., (2001) Planta. 213, 164-174
【非特許文献8】Li Y., et al., (2001) J Biol Chem. 276, 4338-4343
【非特許文献9】Hefner T., et al., (2003) Eur J Biochem., 270, 533-538
【非特許文献10】Lim EK., et al., (2002), J Biol Chem. 277, 586-592
【非特許文献11】Nanji AA., (2003), Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 284, G321-327
【非特許文献12】Reddy AC., et al., (1994) Mol Cell Biochem, 137, 1-8
【非特許文献13】Das KC., et al., (2002) Biochem Biophys Res Commun, 295, 62-66
【非特許文献14】Bharti AC., (2003) Blood 101, 1053-1062
【非特許文献15】Ammon HPT., et al., Planta Med. 57, 1-7
【非特許文献16】Kawamori T., et al., (1999) Cancer Res. 99, 597-601
【非特許文献17】Gomes DCF., et al., (2002) Arzeim-Forschh. 52, 695-698
【非特許文献18】Gururaj AE., (2002) Molecular Mechamisms of anti-angiogenic effect of curcumin. 297, 934-942
【非特許文献19】Frauschy SA., et al., (2001), Neurobiol Aging. 22, 993-1005
【非特許文献20】坂元史歩ら、(1998)、日本食品化学学会誌、5,57-63
【非特許文献21】Wang YJ., et al., (1997),”Stability of curcumin in buffer solutions and characterization of its degradation products” J Pharm Biomed Anal
【非特許文献22】Tφnnesen HH., et al., (2002) Int J Pharm. 244, 127-135
【非特許文献23】Suzuki Y., et al., (1991) Agric Biol Chem.55, 181-187
【非特許文献24】Yasuhisa Kaminaga, et al., (2003) FEBS Letter 555, 311-316
【非特許文献25】Asai A, et al., (2000) Life Sci. 67, 2785-2793
【非特許文献26】Mohri K., et al., (2003) Chem Pharm Bull.51, 1268-1272
【特許文献1】ドイツ国特許出願、(2002) DE2337
【特許文献2】特開2005−312325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、新規な糖転移酵素、特に本発明は、1,6-glucosyltranseferase活性を有し、順次グルコースを抱合して糖鎖を伸長する作用を有するグルコース転移酵素、及びその遺伝子を提供することである。さらに本発明は、当該糖転移酵素を生産する方法、並びに当該酵素の生産に使用される、糖転移酵素の遺伝子を含む発現ベクターや形質転換体を提供することを目的とする。さらに本発明は、上記糖転移酵素を利用したグルコース配糖体の配糖化方法、ならびにグルコース配糖体の水溶性の向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決を目指して日夜研究を進めていたところ、ニチニチソウ培養細胞のcDNAライブラリーからPCRクローニングによって単離した糖転移酵素(UDP-Glycosyltransferase(以下、単に「UGTase」という))のcDNAの発現生成物が、グルコース配糖体、特にモノグルコース配糖体を基質として、当該配糖体のグルコース残基に、さらにグルコシル基を特異的にβ1,6結合させる作用があることを見いだし、当該糖転移酵素を利用することによってグルコース配糖体のグルコシル基を伸長することができ、これによってグルコース配糖体の水溶化の向上を図ることができることを確認した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を包含する。
【0012】
(I)糖転移酵素
項1.配列番号1に記載するアミノ酸配列からなり、グルコース配糖体のグルコース残基にグルコシル基をβ1,6結合させる1,6-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
項2.配列番号2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質である、項1に記載するタンパク質。
項3.配列番号3に記載する塩基配列を有するDNAによってコードされるタンパク質である、項2に記載するタンパク質。
項4.配列番号4に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質である、項1に記載するタンパク質。
項5.配列番号5に記載する塩基配列を有するDNAによってコードされるタンパク質である、項4に記載するタンパク質。
【0013】
(II)糖転移酵素の遺伝子
項6.項1に記載するタンパク質をコードする遺伝子。
項7.配列番号2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号3に記載する塩基配列を有するDNAからなる項6に記載する遺伝子。
項8.配列番号4に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号5に記載する塩基配列を有するDNAからなる項6に記載する遺伝子。
【0014】
(III)組換えベクター、および当該組換えベクターを含む形質転換体
項9.項6乃至8のいずれかに記載する遺伝子を含有する組換えベクター。
項10.項9に記載する組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
【0015】
(IV)新規糖転移酵素の製造方法
項11.項10に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から、グルコース配糖体のグルコース残基にグルコシル基をβ1,6結合させる1,6-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質の製造方法。
項12.下記の工程を有することを特徴とする、グルコース配糖体のグルコース残基に1〜3のグルコシル基がβ1,6結合してなるオリゴグルコース配糖体の製造方法:
−グルコース配糖体を、グルコシル基供与体の存在下、項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質、項10に記載する形質転換体、または当該形質転換体の培養物若しくはその処理物と反応させる工程。
項13.上記グルコース配糖体がモノグルコース配糖体である項12に記載する製造方法。
項14.グルコース配糖体が、クルクミンモノグルコシド、クルクミン4’,4”-ジグルコシド、またはイソクエルシトリン(クエルセチンモノグルコシド)である項13に記載する製造方法。
項15.上記オリゴグルコース配糖体が、グルコース配糖体のグルコース残基に1つのグルコシル基がβ1,6結合してなるゲンチオビオース配糖体である項12に記載する製造方法。
項16.ゲンチオビオース配糖体が、クルクミンモノゲンチオビオシド、クルクミンジゲンチオビオシド、またはクエルセチンジグルコシドである項15に記載する製造方法。
【0016】
(V)グルコース配糖体の水溶性向上方法
項17.グルコース配糖体の水溶性向上方法であって、グルコース配糖体を、グルコシル基供与体の存在下、項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質、項10に記載する形質転換体、または当該形質転換体の培養物若しくはその処理物と反応させてゲンチオビオース配糖体に変換する工程を有する、上記方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、グルコース配糖体の配糖化、特にグルコース配糖体のグルコシル基の伸長に好適に利用することができる新規な糖転移酵素(1,6−グルコシルトランスフェラーゼ)、並びにその遺伝子を提供することができる。さらに本発明は、その糖転移酵素の工業的な生産を可能とする遺伝子工学的な製造方法を提供することができる。
【0018】
本発明によって提供される糖転移酵素によれば、クルクミンモノグルコシド、クルクミン4’,4”-ジグルコシドまたはイソクエルシトリン(クエルセチンモノグルコシド)などのグルコース配糖体のグルコシル基を、順次伸長させることができ、その結果、これらのグルコース配糖体の水溶性を増大させることができる。また、前述する特許文献2で開示するフェノール性水酸基に糖を転移する活性を有する糖転移酵素(UDP-glucose:curcumin glucosyltransferase)(以下、単に「UCGT」ともいう)と組み合わせて使用することによって、特に食品や医薬分野において有用でありながらも難溶性ゆえに用途が限られていたクルクミンやクエルセチンを、種々の長さのグルコース鎖を有する配糖体として調製することができ、それによってその水溶性を増大させることができる。
【0019】
ゆえに、本発明は、クルクミン配糖体やクエルセチン配糖体を包含する、2以上のグルコース鎖を有する配糖体の効率のよい製造方法、言い換えれば水性クルクミン配糖体や水性クエルセチン配糖体の効率のよい製造方法を提供するものである。
【0020】
よって斯くして調製される配糖体は、例えば水を原料の1つとして用いて調製される飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料などといった水性製品の成分として有効に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(1)用語の説明
本発明において「遺伝子」または「DNA」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨で用いられる。またその長さは特に制限されるものではない。従って、本明細書でいう「遺伝子」または「DNA」とは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)及び該正鎖に対して相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖、逆鎖)、並びに合成DNAが含まれ、さらに「遺伝子」にはRNAも含まれる。また「遺伝子」または「DNA」は、本発明の効果を保有する限りにおいて、コード領域以外に、例えば発現制御領域、シグナル領域、エキソン、イントロンを含むことができる。
【0022】
また、特に言及しない限り、本発明でいう「遺伝子」または「DNA」には、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」だけでなく、これらによりコードされるタンパク質と生理学的機能が同等であるタンパク質(例えば、同族体、変異体または誘導体など、本明細書では「機能的同等物」ともいう)をコードする「遺伝子」または「DNA」が含まれる。本明細書では、かかる「遺伝子」または「DNA」を、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の「ホモログ」ともいう。かかる「ホモログ」としては、特定の塩基配列で示される「遺伝子」または「DNA」の相補鎖に対して、ストリンジェントな条件で、ハイブリダイズする塩基配列を有する「遺伝子」または「DNA」を挙げることができる。例えば、同族体をコードする遺伝子(ホモログ)としては、本発明の遺伝子の由来生物であるキョウチクトウ科ニチニチソウ(Catharanthus roseus)以外の他の植物や他の生物種に由来する対応の遺伝子を例示することができる。
【0023】
本発明でいう「酵素」または「タンパク質」には、特定のアミノ酸配列で示される「酵素」または「タンパク質」だけでなく、これらと同等な生理学的機能を有する「酵素」または「タンパク質」(例えば、同族体、変異体または誘導体などの「機能的同等物」)が含まれる。例えば、同族体(機能的同等物)としては、本発明の「酵素」または「タンパク質」の由来生物であるキョウチクトウ科ニチニチソウ(Catharanthus roseus)以外の他の植物や他の生物種に由来する対応の「酵素」または「タンパク質」を例示することができる。また、変異体(機能的同等物)には、天然に存在するアレル変異体、天然に存在しない変異体、及び人為的に欠失、置換、付加または挿入等されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変異体が含まれる。なお、かかる同族体や変異体等の「機能的同等物」としては、特定のアミノ酸配列(配列番号2、3)で特定される酵素またはタンパク質と、アミノ酸配列において、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上相同なものを挙げることができる。
【0024】
(2)糖転移酵素
本発明は、新規な糖転移酵素、より詳細には、UDP-glycosyltransferase(以下、「UGTase」という)に関する。本願発明が対象とする糖転移酵素(UGTase)には、グルコース配糖体をアクセプター基質として、当該グルコース配糖体のグルコース残基に、グルコースを転移してグルコシル基を付加する活性を有するグルコース転移酵素、ガラクトースを転移してガラクトシル基を付加する活性を有するガラクトース転移酵素、N-アセチルグルコサミンを転移してN-アセチルグルコサミン鎖を付加する活性を有するN-アセチルグルコサミン転移酵素、N-アセチルガラクトサミンを転移してN-アセチルガラクトサミン鎖を付加する活性を有するN-アセチルガラクトサミン転移酵素、またはグルクロン酸を転移してグルクロン酸基を付加する活性を有するグルクロン酸転移酵素が含まれる。なかでも好ましくは、グルコース配糖体をアクセプター基質として、当該グルコース配糖体のグルコース残基にさらにグルコースを転移してグルコシル基を付加する活性を有するグルコース転移酵素である。
【0025】
なお、アクセプター基質として好適なグルコース配糖体としては、水酸基またはカルボン酸基を有する芳香環を有する低分子化合物であり、その水酸基またはカルボン酸基にグリコシド結合またはエステル結合によってグルコースが結合した化合物を挙げることができる。
【0026】
本発明が対象とする糖転移酵素(UGTase)は、実施例で示すように、上記作用に基づいて、少なくとも、下式:
【0027】
【化1】

【0028】
で示されるクルクミンのモノグルコシド体(curcumin 4’-O-β-D-glucoside:Cmg)の4’位にさらにグルコシル基を1またはそれ以上導入して、クルクミンのゲンチオビオシド体(curcumin 4’-O-β-D-gentiobioside:Cmgen)や3以上のグルコース残基が伸長したクルクミンのグルコース配糖体を生成する活性を有している(かかる酵素活性を、以下「UCGGT活性」(UCGGTとは、UDP-glucose:curcumin glucoside 1,6-glucosyltransferaseの略である)ともいう。)。
【0029】
また、本発明が対象とする糖転移酵素(UGTase)は、上記作用に基づいて、少なくとも、イソクエルシトリン(クエルセチンモノグルコシド)のグルコース残基にさらにグルコシル基を1またはそれ以上導入して、クエルセチンのゲンチオビオシド体や3以上のグルコース残基が伸長したクエルセチンのグルコース配糖体を生成する活性を有している。
【0030】
なお、本発明の糖転移酵素は、好ましくは前述するように少なくともグルコースを導入する活性を有するものであればよく、他の糖鎖を導入する活性の有無を特に問うものではない。他の糖鎖としては、ガラクトース、グルクロン酸、またはN-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、好ましくはガラクトースを挙げることができる。
【0031】
上記酵素による糖転移には、糖供与体として、ヌクレオチドの結合によって活性化された糖ヌクレオチドが使用される。具体的には、グルコースの供与体してUDP-グルコース(Uridine 5’-diphospho-α-D-glucose)、ガラクトースの供与体してUDP-ガラクトース(Uridine 5’-diphospho-α-D-galactose)、N-アセチルグルコサミンの供与体としてUDP-N-アセチルグルコサミン(Uridine 5’-diphospho-α-D-N-acetylglucosamine)、N-アセチルガラクトサミンの供与体としてUDP-N-アセチルガラクトサミン(Uridine 5’-diphospho-α-D-N-acetylgalactosamine)、グルクロン酸の供与体としてUDP-グルクロン酸を、それぞれ挙げることができる。
【0032】
かかる特性を有する本発明の糖転移酵素として、好ましくは配列表:配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、これを「CaUGT3」ともいう)、および配列表:配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、これを「CaUGT4」ともいう)を挙げることができる。好ましくはCaUGT3である。また、本発明の糖転移酵素は、かかる特定のアミノ酸配列を有するものに制限されず、その機能的同等物であってもよい。ここで機能的同等物としては、配列番号2または4に示すアミノ酸配列において1または複数個のアミノ酸配列が欠失、置換または付加してなるアミノ酸配列を有し、少なくとも前述するUCGGT活性を有するタンパク質を挙げることができる。より好ましくは配列番号2および4に示すアミノ酸配列とアミノ酸配列において75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、よりさらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有し、且つUCGGT活性を有するタンパク質を挙げることができる。かかる機能的同等物としては、より具体的には配列表:配列番号1で示すアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。かかるタンパク質は、CaUGT3とCaUGT4のアミノ酸配列のアライメントを示す図3からわかるように、CaUGT3とCaUGT4とで共通するアミノ酸配列を保存領域として共通に有するタンパク質である。配列番号1中、Xaaは任意のアミノ酸であり、任意に選択することができる。但し、配列番号1に示すアミノ酸配列中のXaaのうち、下記番号に位置するアミノ酸は下記に記載するいずれかのアミノ酸であることが好ましい。
【0033】
【表1】

【0034】
なお、下記のアミノ酸群は相互に類似することが知られている。従って、上記アミノ酸に代えて、同一群に属するアミノ酸残基を用いることもできる。
(1)アスパラギン酸(Asp)−グルタミン酸(Glu)−アスパラギン(Asn)−グルタミン(Gln)
(2)アラニン(Ala)−イソロイシン(Ile)−ロイシン(Leu)−バリン(Val)
(3)フェニルアラニン(Phe)−ヒスチジン(His)−チロシン(Tyr)
(4)アスパラギン(Asn)−グルタミン(Gln)−アルギニン(Arg)−リジン(Lys)
(5)システイン(Cys)−セリン(Ser)−スレオニン(Thr)。
【0035】
また、本発明の糖転移酵素には、配列表:配列番号3または5で示される塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質、並びにその機能的同等物が含まれる。ここで機能的同等物としては、配列番号3または5で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA(ホモログ)によってコードされるタンパク質であって、且つUCGGT活性を有するタンパク質を挙げることができる。
【0036】
なお、ここで配列番号3または5に示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする「ストリンジェントな条件」は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol.152, Academic Press, San Diego CA)に教示されるように、複合体或いはプローブを結合する核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えば、ハイブリダイズ後の洗浄条件(いわゆるこれが「ストリンジェントな条件」)として、通常「2×SSC、0.1%SDS、室温」程度の条件を挙げることができる。かかる条件で洗浄しても、上記配列番号2に示される塩基配列の相補鎖とハイブリダイズ状態を維持するものは、上記本発明でいうホモログに含まれる。特に制限されないが、厳しいハイブリダイズ条件として「1×SSC、0.1%SDS、45℃」程度、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.2×SSC、0.1%SDS、60℃」、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。斯くして得られるホモログは、配列番号3または5に示される塩基配列と少なくとも75%、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するものである。
【0037】
なお、本発明の糖転移酵素は、本発明で開示するアミノ酸配列に基づいて化学的または遺伝子工学的手法によって製造することができる。遺伝子工学的手法による製造方法の詳細については、後述する。また、アミノ酸配列における改変は、当業界において既に公知な方法、例えば部位特異的変異導入法(Current Protocols In Molecular Biology edit. Ausubel et al.,(1987) Publish, John Wily & Sons Section 8.1-8.5)等を用いて、改変しようとするアミノ酸配列に、適宜、置換、欠失、挿入、付加などの変異を導入することによって行うことができる。
【0038】
(3)糖転移酵素の遺伝子
本発明はまた、上記糖転移酵素の遺伝子を提供する。なお、ここでいう遺伝子には、ゲノムDNA、cDNA、合成DNAならびにRNAが含まれる。
【0039】
当該遺伝子は、前述する糖転移酵素をコードする塩基配列を有するものであればよい。具体的には、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するCaUGT3をコードする塩基配列、好ましくは配列番号4に示す塩基配列からなるDNA;および配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するCaUGT4をコードする塩基配列、好ましくは配列番号5に示す塩基配列からなるDNA;並びにこれらのホモログを挙げることができる。ここでホモログとしては、上記CaUGT3またはCaUGT4と機能的に同等なタンパク質をコードする遺伝子を挙げることができる。なお、機能的に同等とは、配列番号3または配列番号5で示される塩基配列からなるDNAによってコードされる糖転移酵素(CaUGT3またはCaUGT4)と同じく、少なくともUCGGT活性を有することを意味する。かかるホモログとして、具体的には、配列番号3または5で示される塩基配列に対して相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。ストリンジェントな条件としては、前述のものを同様に挙げることができる。かかる遺伝子としてより具体的には、UCGGT活性を有する配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる糖転移酵素をコードする塩基配列を有する遺伝子を挙げることができる。
【0040】
なお、本発明の遺伝子は、実施例で示すように、本発明で開示する塩基配列を参考にしてニチニチソウ等の植物やその他の生物から単離取得することもできるが、それ以外の方法として、化学的な合成、または長鎖DNAの合成方法として知られている藤本らの方法(藤本英也、合成遺伝子の作製法、植物細胞工学シリーズ7、植物のPCR実験プロトコール、1997、秀潤社、p.95-100)などを採用することによって、調製することができる。
【0041】
(4)組換えベクター
本発明は、上記糖転移酵素をコードする遺伝子を含有する組換えベクターを提供する。当該組換えベクターは、上記糖転移酵素をコードする遺伝子を、所望の宿主細胞内で発現可能な状態で含んでおり、当該宿主細胞を形質転換するために使用される。ゆえに、本発明の組換えベクターは、かかる宿主細胞の形質転換が達成できる形態を有するものであればよく、例えばプラスミド、バクテリオファージ、レトロトランスポゾンの形態を有するものであってもよい。
【0042】
本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、宿主として大腸菌や枯草菌などの細菌を使用する場合、一般に、少なくともプロモーター−オペレーター領域(プロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合領域(SD領域)を含む)、開始コドン、本発明の糖転移酵素をコードするDNA、終止コドン、ターミネーター領域、及び複製可能単位を有する。また、酵母等の真菌細胞または動物細胞を宿主細胞として用いる場合は、一般に、少なくともプロモーター、開始コドン、シグナルペプチド及び本発明の糖転移酵素をコードするDNA、及び終止コドンを有する。また、本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、必要に応じて、エンハンサーなどのシスエレメント、本発明の糖転移酵素をコードするDNAの5’側または3’側の非翻訳領域、スプライシング接合部、ポリアデニレーション部位、複製可能単位、相同領域、選択マーカーを含むことができる。これらのエレメントは、本発明の糖転移酵素をコードする遺伝子の発現に用いられる宿主に対応したものであれば、特に制限されず、当業界の技術常識に基づいて選択することができる。
【0043】
なお、選択マーカーとしては、特に制限されず、例えば遺伝子発現に使用される宿主が細菌の場合は、薬剤抵抗性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、シクロヘキシミド耐性遺伝子、テトラマイシン耐性遺伝子など)、宿主が細菌以外の例えば酵母などの場合は、栄養要求性遺伝子(例えば、HIS4、URA3、LEU2、ARG4など)などを始めとする公知の各種選択マーカーを利用することができる。
【0044】
本発明の組換えベクター(発現ベクター)は、簡便には、上記本発明の糖転移酵素をコードするDNAを、公知の発現用ベクターに、目的の糖転移酵素が発現可能な状態で導入することによって、具体的にはプロモーターの下流に導入することによって作成することができる。かかる導入は、DNA組換えの一般的な方法、例えばMolecular Cloning. (3rd. ed., 2001)(Cold Spring Harbor Lab.)に記載の方法に従って行うことができる。
【0045】
発現用ベクターとしては、プラスミドベクターとして、例えばpRS413、pRS415、pRS416、YCp50、pAUR112またはpAUR123などのYCp型大腸菌-酵母シャトルベクター;pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pAUR101またはpAUR135などのYIp型大腸菌-酵母シャトルベクター;大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322、pBR325、pUC18、pUC19、pUC119、pTV118N、pTV119N、pBluescript、pHSG298、pHSG396またはpTrc99AなどのColE系プラスミド;pACYC177またはpACYC184などのp1A系プラスミド;pMW118、pMW119、pMW218またはpMW219などのpSC101系プラスミドなど);枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110、pTP5など)を挙げることができる。またファージベクターとして、λファージ(Charon 4A, Charon21A, EMBL4, λgt100, gt11, zap)、ψX174、M13mp18、M13mp19などを挙げることができる。レトロトランスポゾンとしてはTy因子などを挙げることができる。また、融合タンパク質として発現する発現ベクター、例えばpGEXシリーズ(ファルマシア製)、pMALシリーズ(New England Biolabs社製)を使用することもできる。
【0046】
(5)形質転換体
本発明はまた、宿主細胞に上記組換えベクターを導入して形質転換されてなる形質転換体を提供する。
【0047】
組換えベクターの宿主細胞への導入(形質転換)方法は、特に制限されず、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、コンピテント細胞法(J.Mol.Biol.,53,154,1970)、Kushner法、接合法、プロトプラスト融合(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,X75,1929,1970)、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム沈澱法(Science, 221, 551, 1983)、DEAEデキストラン法(Science, 215, 166, 1982)、アグロバクテリウム法、ウイルスベクター法(Cell, 37, 1053, 1984)、PEG法、インビトロパッケージング法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,72,581,1975)、マイクロインジェクション法(Exp. Cell. Res., 153, 347, 1984)など、導入する宿主細胞の種類や組換えベクターの形態に応じて、適宜選択することができる。
【0048】
宿主細胞としては、大腸菌(E.coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などの細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母、sf9やsf21などの昆虫細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)などの動物細胞、ニチニチソウ、サツマイモやタバコなどの植物細胞を挙げることができる。好ましくは、大腸菌や枯草菌などの細菌、及び酵母である。より好ましくは大腸菌である。
【0049】
なお、発現ベクターの宿主細胞内での存在様式は、特に制限されず、染色体中に挿入されて、あるいは置換されて組み込まれてもよいし、またプラスミド状態で存在していてもよい。
【0050】
(6)糖転移酵素の製造方法
斯くして得られた形質転換体は、宿主に応じて適切な培地中で培養されることによって、本発明の糖転移酵素を産生することができる。本発明は、かかる形質転換体を利用した糖転移酵素の製造方法を提供するものである。当該方法は、具体的には、上記の形質転換体を培地で培養し、得られた培養物から、糖転移酵素を採取することによって実施することができる。
【0051】
培地には上記形質転換体の生育に必須な炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン、薬剤などが含有される。炭素源としてはグルコース、グリセリン、マンニトール、フルクトース、ラクトースが;窒素源としては硫酸アンモニウムや塩化アンモニウムなどの無機窒素、並びにカゼイン分解物、酵母抽出物、ポリペプトン、バクトトリプトン及びビーフ抽出物などの有機窒素源;無機塩としては例えば二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等;ビタミンとしてはビタミンB1を始めとする各種のビタミン;薬剤としてはアンピシリン、ネオマイシン、シクロヘキシミド、テトラマイシンなどの各種抗生物質を挙げることができる。なお、これらは一例であり、これらに制限はされない。また、必要に応じて、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)などの発現誘導物質を用いることもできる。
【0052】
培地の一例としては、宿主が大腸菌などのグラム陰性菌、または枯草菌などのグラム陽性菌といった細菌の場合は、LB培地(日水製薬)、M9培地(J. Exp. Mol. Genet., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1972. p.431)などが;また宿主が酵母の場合、YPD培地(1% Bacto Yeast Extract, 2% Bacto Peptone, 2% Glucose)、YPG培地(1% Bacto Yeast Extract, 2% Bacto Peptone, 2% Glycerol )、YPM培地(1% Bacto Yeast Extract, 2% Bacto Peptone, 2% Methanol)、YPDM培地(1%Bacto Yeast Extract, 2% Bacto Peptone, 2% Dextrose,2% Methanol)、0.1〜5%メタノールを含有したYNB液体培地〔0.7% Yeast NitrogenBase(Difco社)〕、及び0.01〜5%メタノールを含有したYP培地〔1% Bacto Yeast Extract(Difco社) , 2% Poly Peptone(大五栄養社)〕、及びSMM培地 (2% Methanol,0.5% CH 3 COONH 4 -synthetic medium)などが例示される。
【0053】
培養は、通常10〜45℃の温度範囲で数〜360時間程度実施され、必要に応じて通気、攪拌を加えることもできる。培養温度は、宿主に応じて設定できるため、特に制限されないが、好ましくは18〜42℃、より好ましくは25〜40℃の範囲で実施することができる。
【0054】
本発明の糖転移酵素の製造方法は、さらに、斯くして得られる培養物から目的の糖転移酵素(タンパク質)を採取することによって実施される。目的タンパク質の採取は、培養後、培養上清中または形質転換体(菌体)中に蓄積された、目的のタンパク質をUCGGT活性を指標として、公知の方法で抽出し、また必要に応じて精製することによって行うことができる。分離精製は、例えば、塩析法、溶媒沈澱法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳動法、あるいはゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の手法を組み合わせて行うことができる。
【0055】
なお、制限はされないが、UCGGT活性の検出方法として、具体的には下記の方法を例示することができる。
【0056】
<UCGGT活性の検出方法>
(1) 下記組成からなる反応液全量50μlを、0.6mlチューブに調製し、30℃で30分間インキュベートし、メタノール100μlを加えて反応を停止させる。
【0057】
−反応液−
酵素含有成分(Crude Enzyme) 45μl
10mM Cmg in DMSO 2.5μl
100mM UDPG in 50mM Tris-HCl 2.5μl
合計 50μl。
【0058】
(2)上記で得られた反応液を12,000rpmで10分間遠心分離し、上清を下記条件のHPLCに供して、生成物を、標準品を用いて定性し、Cmgenの生成を確認する。
【0059】
−HPLC条件−
固定相:COSMOSIL 5C18-ARII column 4.6 x 150mm (ナカライテスク)
移動相:0-14min:40-79% MeOH、14-15min:79-100% MeOH、15-20min:100% MeOH、20-22min:100-80% MeOH、22-25min:80-60% MeOH、25-28min:60-40% MeOH、28-30min:40% MeOH、
流速:1.0 mL/min
測定波長:UV 423nm。
【0060】
<上記条件でのCmgおよびCmgenの定性および定量値>
Cmg:[保持時間:12.1min、濃度(nmol/ml)=1.9 x Area x 10-4
Cmgen:[保持時間:10.5min、濃度(nmol/ml)=3.9 x Area x 10-4]。
【0061】
なお、UCGGTの比活性は、上記Cmgenの生成物量とタンパク質濃度から求めることができる。ここでタンパク質の定量は、定法のBradford法に従って行うことができる。具体的には精製水で5倍希釈したプロテインアッセイ染色液(Bio Rad)を用いて、BSAを標準物質として595nmの吸光度を測定することで、タンパク質濃度を算出することができる。
【0062】
(7)配糖体の製造方法
本発明はさらにグルコース配糖体の配糖化方法、言い換えればグルコース配糖体のグルコース残基に1またはそれ以上のグルコシル基がβ1,6結合してなるオリゴグルコース配糖体の製造方法を提供する。
【0063】
ここでアクセプター基質となるグルコース配糖体とは、グルコース基を有する配糖体を広く意味するものであるが、好ましくはモノグルコシル基を有する配糖体であり、具体的には、下式で示されるクルクミンのモノグルコシド体(curcumin 4’-O-β-D-glucoside:Cmg);
【0064】
【化2】

【0065】
並びに、フラボノール3位glucose配糖体 (kaempferol 3-O-glucoside、quercetin 3-O-glucoside、myricetin 3-O-glucoside)、フラボン7位glucose配糖体 (luteolin 7-O-glucoside)、フェノール性化合物のglucose配糖体 (esculin、p-nitrophenylglucoside、vanillin glucoside、salicin、arbutin)、および青酸配糖体prunasinを挙げることができる(図9参照)。なお、かかるグルコース配糖体は一例であって、本発明の方法で使用するアクセプター基質(グルコース配糖体)には、上記以外のクルクミン4’位グルコース配糖体、フラボノイド3位グルコース配糖体、フラボン7位グルコース配糖体、フェノール性化合物のglucose配糖体、および青酸配糖体などが含まれる。
【0066】
本発明のオリゴグルコース配糖体の製造方法は、具体的には糖供与体の存在下で、上記グルコース配糖体を本発明の糖転移酵素と反応することによって実施することができる。なお、ここで用いる糖転移酵素は、UCGGT活性を有するものであれば、その精製度を問うものではなく、粗精製物であってもよい。粗精製物としては、本発明の糖転移酵素を発現するように調製された前述の形質転換体の培養物、またはその培養物の処理物を挙げることができる。ここで培養物の処理物には、例えば目的の糖転換酵素が培養液中に放出される場合は、形質転換体を培養して得られる培養物を濾過または遠心することによって得られる培養濾液または培養上清(粗酵素溶液)、及び当該培養濾液または培養上清を精製処理して得られる精製酵素もしくは粗精製酵素が含まれる。また、目的の糖転換酵素が形質転換体のペリプラズム及び細胞質内に蓄積する場合は、培養物から当該形質転換体を回収し、当該形質転換体の細胞膜または細胞壁を超音波またはライソザイムなどで処理して得られる処理物が含まれる。また、本発明の製造方法で用いられる糖転移酵素は、例えばアクリルアミド、グラスビーズ、樹脂などに常法により固定化した状態で使用することもできる。
【0067】
なお、本発明の配糖体の製造方法は、本発明の形質転換体が糖転移酵素を発現し産生する条件であれば、糖供与体の存在下、上記糖転移酵素(粗精製酵素を含む)に代えて、本発明の形質転換体を用いて行うこともできる。
【0068】
反応に用いる糖供与体としては、糖ヌクレオチドを挙げることができる。具体的には、グルコースの供与体してUDP-グルコース(Uridine 5’-diphospho-α-D-glucose)、ガラクトースの供与体してUDP-ガラクトース(Uridine 5’-diphospho-α-D-galactose)、N-アセチルグルコサミンの供与体としてUDP-N-アセチルグルコサミン(Uridine 5’-diphospho-α-D-N-acetylglucosamine)、N-アセチルガラクトサミンの供与体としてUDP-N-アセチルガラクトサミン(Uridine 5’-diphospho-α-D-N-acetylgalactosamine)、グルクロン酸の供与体としてUDP-グルクロン酸を、それぞれ挙げることができる。好ましくはUDP-グルコース、及びUDP-ガラクトースであり、より好ましくはUDP-グルコースである。
【0069】
すなわち、本発明は、糖供与体として、UDP-グルコースを用いることによって、グルコース配糖体のグルコース残基に1以上のグルコシル基をβ1,6結合で付加して、糖鎖を伸長するために好適に使用することができる。言い換えれば、本発明は、グルコース配糖体のグルコース残基に1以上、好ましくは1〜3のグルコシル基がβ1,6結合で結合してなるオリゴグルコース配糖体の製造方法として好適に使用することができる。
【0070】
例えば、グルコース配糖体に1〜3のグルコシル基がβ1,6結合で結合してなる配糖体としては、クルクミンモノグルコシド(curcumin 4’-O-β-D-glucoside:Cmg)のグルコース残基に1つのグルコシル基が結合したクルクミンモノゲンチオビオシド(curcumin 4’-O-β-D-gentiobioside:Cmgen);フラボノール3位glucose配糖体 (kaempferol 3-O-glucoside、quercetin 3-O-glucoside、myricetin 3-O-glucoside) のグルコース残基に1つのグルコシル基が結合したフラボノール3位gentiobiose配糖体 (kaempferol 3-O-gentiobioside、quercetin 3-O- gentiobioside、myricetin 3-O- gentiobioside);フラボン7位glucose配糖体 (luteolin 7-O-glucoside)のグルコース残基に1つのグルコシル基が結合したフラボン7位gentiobiose配糖体 (luteolin 7-O-gentiobioside)、フェノール性化合物のglucose配糖体 (esculin、p-nitrophenylglucoside、vanillin glucoside、salicin、arbutin) のグルコース残基に1つのグルコシル基が結合したフェノール性化合物のgentiobioside配糖体、および青酸配糖体prunasinのグルコース残基に1つのグルコシル基が結合した配糖体を挙げることができる。
【0071】
本発明の配糖体の製造方法は、配糖化する対象(アクセプター基質)のグルコース配糖体を、糖供与体の存在下、本発明の糖転移酵素(または形質転換体)と反応させることにより実施することができる。この反応は、通常、水または緩衝液のような水性媒体の中で実施することができる。当該水性媒体(反応液)のpH、反応温度、反応時間、アクセプター基質(グルコース配糖体)の濃度などといった各種の反応条件は、配糖化する対象のグルコース配糖体の種類や、反応に使用する糖転移酵素(または形質転換体)の状態などによって変わり得る。一般に、反応は、pH6〜10、好ましくはpH7〜9;5〜40℃、好ましくは15〜40℃、より好ましくは25〜35℃;0.5〜50時間、好ましくは0.5〜10時間程度、を目安として実施することができる。
【0072】
反応混液中、アクセプター基質としてのグルコース配糖体の濃度は、制限はされないが、通常0.1〜5 μmol/mlの範囲で適宜調整することができる。また糖供与体である糖ヌクレオチドの濃度は、制限されないが、通常0.6〜2.5 μmol/mlの範囲で適宜調整することができる。
【0073】
斯くして製造されるオリゴグルコース配糖体は、さらに上記反応混液から慣用の方法、例えば逆相カラムなどを装着した液体クロマトグラフィーなどを利用して単離し、精製されてもよい。
【0074】
かかる方法で調製されるオリゴグルコース配糖体は、アクセプター基質として使用したグルコース配糖体よりも高い水溶性を有し、水または水溶液に高い溶解度をもって可溶性である。従って、本発明で提供する配糖体の製造方法は、別の角度から、グルコース配糖体の水溶性の向上方法ということができる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。
【0076】
実施例1 ニチニチソウ由来UDT-glycosyltransferase (UGTase)cDNAのクローニング(図1参照)
ニチニチソウmRNAを材料として、λZAP-cDNA Synthesis Kit/ Gigapack II Gold packaging Extract (Stratagene) を用いて作成したニチニチソウλZAP-II-cDNAライブラリー(Kaminaga,Y.,et. Al., FEBS Lett 567, 197-202 (2004))を鋳型として、PCR法によりクローニングを行った。
【0077】
具体的には、糖転移酵素における特異的な保存領域のアミノ酸配列をもとに、表2に示すdegenerate primerを設計した。
【0078】
【表2】

【0079】
まず上記ニチニチソウλZAP-II-cDNAライブラリーを鋳型として、HC-Reverse primer(配列番号6)とT3 Forward primer(配列番号8)を用いてPCRを行った後、そのPCR産物を鋳型としてGC-Reverse primer(配列番号7)とT3 Forward primer(配列番号8)とで、nested-PCRを行った。なお、PCR反応にはTaq DNA polymerase (Roche) を用いた。反応液の一部をアガロース電気泳動し、DNA増幅を確認した後、ゲル抽出を行った。ゲル抽出は、Wizard(登録商標)SV Gel and PCR Clean-Up System (Promega) を用い、添付のプロトコールに従って行った。
【0080】
上記PCRの結果、得られたPCR産物(DNA断片)を、pCR(登録商標)2.1-TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)に、プロトコールに従ってサブクローニングした。次いで得られたクローンのうち、無作為に選択したクローンについてシークエンスを行い、得られた塩基配列についてBlastXを用いてデータベース検索を行った。その結果、2個のクローンが植物由来のUGTaseに近似した塩基配列を有していることが分かった(断片1および2)。
【0081】
これらの配列をもとにprimerを設計し、ニチニチソウλZAP-II-cDNAライブラリーを鋳型としてPCRを行った。さらに、そのPCR産物を鋳型としてnested-PCRを行った。この際、プライマーとして、3’側はT7 Revese primerと各cDNA断片特異的primer、5’側は各cDNA断片特異的primerとT3 Forward primerを使用した(表3)。このとき、断片1の3’側を増幅するにあたり、類似配列もクローニングされた(断片1a)。
【0082】
【表3】

【0083】
反応液の一部をアガロースゲル電気泳動し、DNA増幅を確認した後、目的のサイズのバンドをゲル精製により回収し、配列を決定した。
【0084】
斯くして得られた配列情報をもとに、ニチニチソウcDNAを用いて3つの全長ORFを含むクローンを単離して、それぞれCaUGT3(断片1由来)、CaUGT4(断片1a由来)およびCaUGT5(断片2由来)と命名した。CaUGT3のcDNA塩基配列(配列番号3)とアミノ酸配列(配列番号2)を図1に、CaUGT4のcDNA塩基配列(配列番号5)とアミノ酸配列(配列番号4)を図2に、それぞれ示す。
【0085】
図1および2に示すように、CaUGT3は454個のアミノ酸残基からなるタンパク質で、推定分子量は51.0kDa、CaUGT4は468個のアミノ酸残基からなるタンパク質で、推定分子量は52.7kDaであった。両者のアライメントを図3に示す。これからわかるように、CaUGT3とCaUGT4のアミノ酸配列の同一性は73%であり、その配列は配列全体を通して非常に類似していた。ホモロジー検索の結果、CaUGT3とCaUGT4はともに、パメロ(Citrus maxima)由来flavanone 7-O-glucoside 1,2-rhamnosyltransferaseのアミノ酸配列と相同性がたかく、それぞれ43%と42%の同一性を有していた。
【0086】
これらのことから、ニチニチソウから単離されたCaUGT3とCaUGT4は、いずれも従来公知のUGTaseとは異なり、新規なUGTaseであることがわかった。
【0087】
実施例2 植物由来UGT分子系統樹解析
高等植物UGTの分子系統樹では、各酵素が触媒する反応の性質と分子系統樹での位置が比較的よく一致していることが知られている(Vogt T. et al., (2000) Trends Plant Sci. 5, 380-386)。そこで実施例1で単離したCaUGT3およびCaUGT4、並びにいくつかの植物二次代謝に関連する他のUGTaseについて、その分子系統樹を構築した。なお、分子系統樹の構築には、Clastal W(http://www-igbmc.u-strasbg.fr/BioInfo/ClustalW/Top.html)及びPHYLIP解析ソフト(http://evolution.genetics.washington.edu/phylip.html)を用いた。
【0088】
構築した分子系統樹を図4に示す。その結果、CaUGT3とCaUGT4は、いずれも糖転移酵素系統樹の中ではgroup Aに属していた。ここ数年で相次いでクローニングされた低分子配糖体(フラボノイド配糖体)の糖部にさらに糖を抱合して糖鎖を伸長する糖転移酵素の多くは、group Aに分類されることが知られている(Bowles, D., et al., Curr Poin Plant Biol 8, 254-263 (2005))。このことから、CaUGT3とCaUGT4は、フラボノイド配糖体の糖伸長反応を触媒するUCGGT活性を有することが期待された。
【0089】
実施例3 CaUGT3およびCaUGT4の大腸菌での発現
全長の塩基配列が確認された糖転移酵素(CaUGT3およびCaUGT4)の先端配列と末端配列に制限酵素サイトを付加したprimerを設計し(表4)、High Fidelity PCR用polymeraseであるKOD -Plus- (TOYOBO) を用いてPCR反応を行い、全長DNAを得た。
【0090】
【表4】

【0091】
KOD-Plus-で増幅したPCR産物は平滑末端であるため、TaqDNA Polymeraseのterminal deoxynucleotidyl transferase (TdT) 活性を利用して、PCR産物の末端にA塩基を付加した。この産物をTOPO(登録商標)vectorにライゲーションし、さらにE. coli JM109にトランスフォーメーションした。
【0092】
コロニーPCRによりTOPO(登録商標)vectorへのDNA断片挿入を確認したクローンと、pQE-30 vectorまたはpQE-31 vectorをそれぞれ50 μg/ml carbenicillinを含むMMIB液体培地で37℃、終夜培養した後、プラスミド抽出を行った。プラスミド抽出はQIAprep(登録商標) Spin Miniprep Kit (QIAGEN) を用い、添付のプロトコールに従った。
【0093】
インサートをサブクローニングしたプラスミドと発現用vectorのプラスミドをそれぞれ2種類の制限酵素で処理し、ゲル精製を行った。CaUGT3とCaUGT4はいずれもpQE-30 vectorを用い、制限酵素はBam HI (Roche) とSal I (Roche) で切断した。
【0094】
ライゲーションはLigaFast(商標)Rapid DNA Ligation System (Promega) を用い、添付のプロトコールに従って行った。なお、インサート量とベクター量のモル比 (ng/kb) が3 : 1となるように混合した。16℃で1時間インキュベートした後、プロトコールに従って大腸菌JM109株にトランスフォーメーションした。発現ベクターへの挿入は、コロニーPCRにより確認し、シークエンスにより6xHisタグ融合タンパク質として翻訳される領域の配列を確認した。
【0095】
シークエンスにより配列を確認したクローンが導入された大腸菌を、50 μg/ml carbenicillinを含むLB液体培地に植菌し、37℃にて終夜培養した後、新たな培地10 mlに対して培養液200μlとなるように添加し、対数増殖期に達するまで2 時間程度、37℃で振とう培養した。その後、18℃で一晩振とう培養した。培養後、菌液を3,500 rpm、10分間遠心分離し、得られた沈殿を菌体として回収した。
【0096】
得られた菌体に、その1 gに対し2 mlとなるように50 mM Tris-HCl (pH 7.5)を加え、菌体を懸濁した。その後、液体窒素により再凍結し、30℃の水浴により融解した。超音波破砕機 (TOMY UD-200) を用いて、氷上においてoutput 2で6 秒間の破砕を8回行った後、10,000´g、4℃で20分間遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。また、得られた粗酵素液をNi-NTA agaroseを用いて精製した。
【0097】
実施例3 組換えCaUGT3の発現と活性評価
(1)組換えCaUGT3の発現
組換えpQE-CaUGT3の発現を、SDS-PAGEにより確認した。
【0098】
SDS-PAGEは、Laemmliらの方法(Laemmli UK (1970), Nature. 227, 127-135)に従って行った。上記粗酵素液80mLをサンプル緩衝液20mLに溶解して、10分間95℃で煮沸後、SDS-PAGEに供し、パワーサプライ(ATTO社製AE-3113)を用いて電気泳動を行った(泳動条件:10%T ポリアクリルアミドゲル、C.V.150Voltage,1hr)。電気泳動後、ゲルをクマーシーブルー染色した。O/N脱色後、3時間乾燥して電気泳動像を撮影した。なお、サイズマーカーとして、SDS-PAGE MOLECULAR WEIGHT STANDARDS Low range (BIO-RAD)を用いた。
【0099】
結果を図5に示す。図5からわかるように、予想された分子サイズを有する組換えpQE-CaUGT3が発現していることが確認された(図5、Lane1:分子量マーカー、Lane2:組換えpQE-CaUGT3粗酵素液、Lane3:組換えpQE-CaUGT3精製酵素液)。
【0100】
(2)組換えCaUGT3による配糖化反応
実施例2において、CaUGT3を発現させた大腸菌から調製した精製酵素液について、UDP-glucose存在下で、クルクミンおよびクルクミンモノグルコサイドを基質として配糖化活性を調べた。具体的には、5mMの基質(クルクミン、クルクミンモノグルコサイド)2.5μl、100mMのUDP-glucose2.5μl、及び粗酵素液(タンパクとして20μg)を含む1M Tris-HCl (pH7.5) 45μl(合計50μl)を、30℃で5〜60分間反応させて、その後にメタノール100μl入れて反応を停止し、12,000gで10分間遠心分離して得た上清を、下記条件のHPLCにかけて、反応液中の反応生成物の量を、各標準品(クルクミン(C)、クルクミンモノグルコサイド(Cmg)、クルクミンジグルコサイド(Cdg)、クルクミンゲンチオビオサイド(Cmgen)、クルクミンジゲンチオビオサイド(Cdgen)、クルクミンゲンチオビオシルグルコサイド(Cmgenmg))を用いて作成した検量線から算出した。
【0101】
<HPLC条件>
固定相:COSMOSIL 5C18-ARII column 4.6 x 150mm (ナカライテスク)
移動相:0-14min:40-79% MeOH、14-15min:79-100% MeOH、15-20min:100% MeOH、20-22min:100-80% MeOH、22-25min:80-60% MeOH、25-28min:60-40% MeOH、28-30min:40% MeOH、
流速:1.0 mL/min
測定波長:UV 423nm。
【0102】
<上記条件でのクルクミン配糖体の定性および定量値>
クルクミンモノグルコシド(Cmg):[保持時間:12.1min、濃度(nmol/ml)=1.9 x Area x 10-4
クルクミンゲンチオビオサイド(Cmgen):[保持時間:10.5min、濃度(nmol/ml)=3.9 x Area x 10-4
クルクミンジクルコサイド(Cdg):[保持時間:7.6min、濃度(nmol/ml)=3.7x Area x 10-4
クルクミンゲンチオビオシルグルコシド(Cmgenmg):[保持時間:6.0min、濃度(nmol/ml)=4.2 x Area x 10-4]。
【0103】
この結果、クルクミンを基質とした反応では生成物は認められなかったが、クルクミンモノグルコシド(Cmg)(ピーク2)を基質とした反応ではより極性の高い生成物が確認された。その結果を図6に示す。図6中、Aは標準品(ピーク1.C、ピーク2. Cmg、ピーク3. Cmgen、ピーク4. Cdg、ピーク5. Cmgenmg、ピーク6. Cdgen)のクロマトグラム;BおよびCは、CaUGT3の精製酵素液7μgを用いてそれぞれ5分および30分間酵素反応させた反応液のクロマトグラム;Dは、CaUGT3の精製酵素液14μgおよび2倍量のUDP-glucoseと基質(Cmg)を用いて60分間酵素反応させた反応液のクロマトグラムを示す。標品との保持時間との比較から、反応生成物は、Cmgen(ピーク3)と推定され、クルクミングルコシドのグルコース残基に糖を転移し、ゲンチオビオース配糖体を生成する反応を触媒する酵素(UCGGT:UDP-glucose: curcumin glucoside 1,6-glucosyltransferase)活性を有していると考えられた。
【0104】
しかし、UCGGTとは異なり、酵素反応時間を延長すると、Cmgen(ピーク3)よりもさらに極性の高い生成物(ピークI)が検出され(図6C)、さらに酵素とUDP-glucoseを2倍量加えて長時間反応させると、ピークIの生成量が増し、さらに高極性側にピークIIが検出された(図6D)。またピークI が生成するにつれてCmgenのピーク(ピーク3)が減少することから、ピークIはCmgenの2つの糖鎖にさらに3つ目の糖を伸長した化合物である可能性が示唆された。つまり、CaUGT3はUCGGTとは異なり、糖鎖伸長を2つだけに留めず、3つ以上の糖転移を触媒すると考えられた。
【0105】
次いで、このピーク IとIIを生成したサンプルを用いてLC-ESI-MS を行い、negative ion modeで各生成物の分子量を分析した (図7および8)。
【0106】
その結果、ピーク2、3、I、IIにおいてそれぞれm/z 529、m/z 691、m/z 853、m/z1015の質量イオンピークを検出した。基質であるピーク 2(Cmg)は分子量、保持時間ともにCmg-Hと一致し、すべてのピークにおいてクルクミン-Hの分子量と等しい367のフラグメントイオンを検出したことから、いずれの生成物もクルクミン誘導体であることを確認した。また、ピーク3の分子量と保持時間もCmgen-Hと一致したことから、ピーク3はCmgのグルコース残基にもう1分子のグルコースを1,6結合させたCmgenであると考えられた。Peak 2と3、3とI、IとIIの各ピークの分子量差は162であり、これはグルコース1つ分と等しいことから、ピークIはCmgenにグルコース1分子が付加したもの、ピークIIはピークIにさらにグルコース1分子が付加されたものと考えられた。
【0107】
以上のことから、CaUGT3は、1,6-glucosyltransferaseの機能を持ち、順次グルコースを抱合して糖鎖を伸長する反応を触媒すると考えられた。従来、このような1,6-glucosyltransferase活性を有する植物糖転移酵素は報告がなく、CaUGT3が初の報告である。
【0108】
実施例4 CaUGT3の基質特異性の検討
CaUGT3の基質特異性をより詳しく検討した。具体的には、種々の低分子配糖体を基質として、精製と酵素反応を行い、HPLCにより反応生成物を分析した。基質として、図9に示すフラボノール3位glucose配糖体 (kaempferol 3-O-glucoside、quercetin 3-O-glucoside、myricetin 3-O-glucoside) およびgalactose配糖体 (kaempferol 3-O-galactoside)、フラボン7位glucose配糖体 (luteolin 7-O-glucoside)、フェノール性化合物のglucose配糖体 (esculin、p-nitrophenylglucoside、vanillin glucoside、salicin、arbutin)、さらに、青酸配糖体prunasinを用いた。
【0109】
得られた酵素反応産物を上記条件のHPLCで分析した結果、フラボノール3位glucose配糖体とluteolin 7-O-glucosideを基質とした反応では、それぞれ基質より極性の高い新たな生成物が確認された。また、相対的に分子量の小さいフェノール性化合物のglucose配糖体と青酸配糖体prunasinについてもわずかな糖転移産物が確認された。Curcumin配糖体に対するCaUGT3の機能から、これらの新たに生成した反応生成物はゲンチオビオース配糖体と考えられた。なおクエルセチン 3-O-ガラクトシドとの反応では新たな生成物は確認されなかった (データ示さず)。
これらの結果より、CaUGT3はUCGGTと同様に、フラボノイド3位グルコース配糖体や7位グルコース配糖体の糖鎖を伸長する活性を有すると考えられた。
【0110】
また、UCGGTでは活性が検出されなかった他の低分子グルコース配糖体との反応でも生成物がわずかに確認されたが、その活性はフラボノイドglucose配糖体に対するものに比べ非常に弱いものであり、CaUGT3の酵素活性が強いためにわずかな糖転移反応が検出できたと考えられ、CaUGT3はある程度のサイズがあるglucose配糖体を認識していることが明らかとなった。しかし、フェノール性化合物の配糖体ではないprunasinも基質として認識し、わずかな活性を示すことから、CaUGT3のグルコース部分以外の基質認識はそれほど厳密ではないと考えられた。また、フラボノイド3位ガラクトース配糖体であるケルセチン3-O-ガラクトシドを基質として反応させた場合には生成物が見られなかったことから、CaUGT3もUCGGT同様にグルコース配糖体に特異的な糖転移活性を有することが確認された。
【0111】
実施例5 組換えCaUGT4の発現と活性評価
組換えpQE-CaUGT4タンパク質は大腸菌の不溶性画分に大量に発現していた。一方、SDS-PAGEではほとんどその発現を確認できなかった可溶性画分をNi-NTA agaroseを用いて精製し、精製酵素を得たが、CaUGT4のタンパク量は少なかった。
【0112】
不溶性画分から精製した酵素を用いてCmgを基質としてUDP-glucose存在下で酵素反応を行い、HPLCにより生成物を分析した。その結果、Cmgenと保持時間の一致するピークがわずかに検出され、CaUGT4もUCGGT活性を持っていると考えられた (図10)。
【0113】
実験例1 クルクミン配糖体の水溶性評価
下記に示すクルクミンとその各種配糖体(curcumin、Cmg、Cmgen、Cdg、Cmgenmg、Cdgen)の、室温における飽和水溶液濃度を比較した。具体的には、クルクミンと上記各クルクミン配糖体を、少量の水とともに24時間、暗黒下、25℃で振盪した後、12,000g×15分間遠心し、得られた上清を下記条件のHPLCに供して、上記化合物について室温における飽和水溶液濃度を換算した。
【0114】
<HPLC条件>
固定相:COSMOSIL 5C18-ARII column 4.6 x 150mm (ナカライテスク)
移動相:0-14min:40-79% MeOH, 14-15min:79-100% MeOH, 15-20min:100% MeOH,流速:1.0 mL/min
測定波長:UV 423nm
Rt: クルクミン−15.8min、CG1−4.9min、CG2−6.0min、CG3−7.4min、CG4−10.2min、CG5−11.8min。
【0115】
結果を表5に示す。なお、表中「水溶性」には、各化合物の水溶液中における飽和濃度を示す。また本試験ではクルクミンの飽和水溶液濃度が検出限界以下で測定できなかったので、表1にはクルクミンの飽和水溶液濃度として文献値を記載する(Tφnnessen H., et al., (2002) Int.J. pharma. 244, 127-135)
【0116】
【表5】

【0117】
これからわかるように、クルクミンにグルコースが1分子結合したCmgは、クルクミンより約230倍も高い水溶性を有しており、グルコースが2分子結合したCmgen及びCdgは、それぞれクルクミンより約240万倍及び1200万倍も高い水溶性を備えていた。またクルクミンにグルコースが3つまたは4つ結合したCmgenmg及びCdgenは、それぞれクルクミンより約1500万倍及び2200万倍も高い水溶性を備えていた。このことは、クルクミンの配糖化がクルクミンの水溶化に、極めて有効な手段であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】CaUGT3のcDNA塩基配列とアミノ酸配列を示す。図中、下線部はPSPG-boxの配列を示す。
【図2】CaUGT4のcDNA塩基配列とアミノ酸配列を示す。図中、下線部はPSPG-boxの配列を示す。
【図3】CaUGT3のアミノ酸配列とCaUGT4のアミノ酸配列を対比した図である。黒の網掛けは一致したアミノ酸残基、グレーの網掛けは一致したアミノ酸残基を意味する。
【図4】実施例2において構築した植物由来UGT分子系統樹を示す。
【図5】実施例3(1)において組換えpQE-CaUGT3の発現をSDS-PAGEにより確認した結果を示す。図中、Lane1は分子量マーカー、Lane2は組換えpQE-CaUGT3粗酵素液、Lane3は組換えpQE-CaUGT3精製酵素液の結果を示す。
【図6】実施例3(2)において組換えpQE-CaUGT3精製酵素液を用いて、配糖化反応を行った結果を示す。各ピークは次の通りである。1:クルクミン(C)、2:クルクミンモノグルコサイド(Cmg)、3:クルクミンゲンチオビオサイド(Cmgen)、4:クルクミンジグルコサイド(Cdg)、5:クルクミンゲンチオビオシルグルコサイド(Cmgenmg)、6:クルクミンジゲンチオビオサイド(Cdgen)。図6のAは標準品のクロマトグラム、BおよびCは精製酵素液7μgを用いて、それぞれ5分および30分酵素反応させた反応液のクロマトグラム、Dは精製酵素液14μgと2倍量のUDP-glucoseを用いて60分酵素反応させた反応液のクロマトグラムを示す。
【図7】実施例3(2)における配糖化反応によって生じた各ピーク(反応生成物)について、LC-ESI-MS(negative ion mode)を用いて分子量分析を行った結果を示す。Aは、LC-MSの条件で溶出したサンプルのUVスペクトルを、Bは各ピークのマススペクトルを示す。B(a):ピークIIに相当する保持時間3.6分のマススペクトル、B(b):ピークIに相当する保持時間4.7分のマススペクトル、B(c):ピーク3(Cmgen)に相当する保持時間6.2分のマススペクトル、B(d):ピーク2(Cmg)に相当する保持時間10.9分のマススペクトル。
【図8】実施例3(2)における配糖化反応によって生じた各ピーク(反応生成物)について、分析した分子量のイオンの経時的変化を追った結果を示す(SIR mode)。
【図9】フラボノール3位glucose配糖体 (kaempferol 3-O-glucoside、quercetin 3-O-glucoside、myricetin 3-O-glucoside)、フラボン7位glucose配糖体 (luteolin 7-O-glucoside)、フェノール性化合物のglucose配糖体 (esculin、p-nitrophenylglucoside、vanillin glucoside、salicin、arbutin)、および青酸配糖体prunasinの構造式を示す。
【図10】実施例5において組換えpQE-CaUGT4精製酵素液を用いて、配糖化反応を行った結果を示す。各ピークは次の通りである。1:クルクミン(C)、2:クルクミンモノグルコサイド(Cmg)、3:クルクミンゲンチオビオサイド(Cmgen)、4:クルクミンジグルコサイド(Cdg)、5:クルクミンゲンチオビオシルグルコサイド(Cmgenmg)、6:クルクミンジゲンチオビオサイド(Cdgen)。Aは標準品のクロマトグラム、Bは反応物のクロマトグラムを示す。
【配列表フリーテキスト】
【0119】
配列番号6は、degenerate primer (HC-Reverse)の塩基配列を示す。
配列番号7は、degenerate primer (GC-Reverse)の塩基配列を示す。
配列番号8は、degenerate primer (T3-Forward)の塩基配列を示す。
配列番号9は、T3 Forward primerの塩基配列を示す。
配列番号10は、T7 Reverse primerの塩基配列を示す。
配列番号11は、cDNA断片特異的primer (CaUGT3 11R1)の塩基配列を示す。
配列番号12は、cDNA断片特異的primer (CaUGT3 11R2)の塩基配列を示す。
配列番号13は、cDNA断片特異的primer (CaUGT3 11F1)の塩基配列を示す。
配列番号14は、cDNA断片特異的primer (CaUGT3 11F2)の塩基配列を示す。
配列番号15は、cDNA断片特異的primer (CaUGT4 41R1)の塩基配列を示す。
配列番号16は、cDNA断片特異的primer (CaUGT4 41R2)の塩基配列を示す。
配列番号17は、cDNA断片特異的primer (CaUGT4 41R3)の塩基配列を示す。
配列番号18は、cDNA断片特異的primer (CaUGT4 41R4)の塩基配列を示す。
配列番号19は、cDNA断片特異的primer (CaUGT4 41F1)の塩基配列を示す。
配列番号20は、CaUGT3の先端配列と末端配列に制限酵素(Bam)サイトを付加したプライマー(Bam-CaUGT3 primer)の塩基配列を示す。
配列番号21は、CaUGT3の先端配列と末端配列に制限酵素(Sal)サイトを付加したプライマー(Sal-CaUGT3 primer)の塩基配列を示す。
配列番号22は、CaUGT4の先端配列と末端配列に制限酵素(Bam)サイトを付加したプライマー(Bam-CaUGT4 primer)の塩基配列を示す。
配列番号23は、CaUGT4の先端配列と末端配列に制限酵素(Sal)サイトを付加したプライマー(Sal-CaUGT4 primer)の塩基配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に記載するアミノ酸配列からなり、グルコース配糖体のグルコース残基にグルコシル基をβ1,6結合させる1,6-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
配列番号2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1に記載するタンパク質。
【請求項3】
配列番号3に記載する塩基配列を有するDNAによってコードされるタンパク質である、請求項2に記載するタンパク質。
【請求項4】
配列番号4に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1に記載するタンパク質。
【請求項5】
配列番号5に記載する塩基配列を有するDNAによってコードされるタンパク質である、請求項4に記載するタンパク質。
【請求項6】
請求項1に記載するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項7】
配列番号2に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号3に記載する塩基配列を有するDNAからなる請求項6に記載する遺伝子。
【請求項8】
配列番号4に記載するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であって、配列番号5に記載する塩基配列を有するDNAからなる請求項6に記載する遺伝子。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載する遺伝子を含有する組換えベクター。
【請求項10】
請求項9に記載する組換えベクターを用いて宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項11】
請求項10に記載する形質転換体を培地で培養し、得られる培養物から、グルコース配糖体のグルコース残基にグルコシル基をβ1,6結合させる1,6-グルコシルトランスフェラーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質の製造方法。
【請求項12】
下記の工程を有することを特徴とする、グルコース配糖体のグルコース残基に1〜3またはそれ以上のグルコシル基がβ1,6結合してなるオリゴグルコース配糖体の製造方法:
−グルコース配糖体を、グルコシル基供与体の存在下、請求項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質、請求項10に記載する形質転換体、または当該形質転換体の培養物若しくはその処理物と反応させる工程。
【請求項13】
上記グルコース配糖体がモノグルコシル基を有する配糖体である請求項12に記載する製造方法。
【請求項14】
グルコース配糖体が、クルクミンモノグルコシド、クルクミン4’,4”-ジグルコシド、またはクエルセチンモノグルコシド(イソクエルシトリン)である請求項13に記載する製造方法。
【請求項15】
上記オリゴグルコース配糖体が、グルコース配糖体のグルコース残基に1つのグルコシル基がβ1,6結合してなるゲンチオビオース配糖体である請求項12に記載する製造方法。
【請求項16】
ゲンチオビオース配糖体が、クルクミンモノゲンチオビオシド、ケルセチンモノゲンチオビオシド、またはクルクミンジゲンチオビオシドである請求項15に記載する製造方法。
【請求項17】
グルコース配糖体の水溶性向上方法であって、グルコース配糖体を、グルコシル基供与体の存在下、請求項1乃至5のいずれかに記載するタンパク質、請求項10に記載する形質転換体、または当該形質転換体の培養物若しくはその処理物と反応させてゲンチオビオース配糖体に変換する工程を有する、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−34080(P2009−34080A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203666(P2007−203666)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ▲1▼ 発行者名 名古屋市立大学大学院薬学研究科 刊行物名 名古屋市立大学大学院薬学研究科 博士前期課程論文内容要旨集 発行年月日 2007年3月2日 ▲2▼ 研究集会名 平成18年度 名古屋市立大学大学院薬学研究科 博士前期課程 論文発表会 主催者名 名古屋市立大学 開催日 2007年3月7日
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】