新規線維芽細胞成長因子及びその使用方法
本発明は、卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチ)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)さまざまな症状の治療用の組成物及び方法に関する。より詳細には、本発明は、線維芽細胞成長因子ファミリーの成員、FGF−CX(CG53135−05又はFGF−20としても知られている)、その関連ポリペプチド、かかるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、及び卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチ)といった(ただしこれらに限定されるわけではない)症状を治療するためのそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、全体が本明細書に参考により援用されている2003年5月9日付けの米国仮出願第60/469,353号明細書の利益を請求している。
【0002】
技術分野
本発明は、卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチ)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)さまざまな症状の治療用の組成物及び方法に関する。より詳細には、本発明は、線維芽細胞成長因子ファミリーの成員、FGF−CX(CG53135−05又はFGF−20としても知られている)、その関連ポリペプチド、かかるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、及び卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチといった(ただしこれらに限定されるわけではない)症状を治療するためのそれらの使用に関する。
【0003】
背景技術
その原型的成員として酸性FGF(FGF−1)及び塩基性FGF(FGF−2)が含まれるFGFタンパク質ファミリーは、4つの関連するレセプタチロシンキナーゼに結合する。これらのFGFレセプタは、組織培養中の細胞の大部分のタイプの中で発現される。リガンド結合時点でのFGFレセプタ単量体の2量体化が、レセプタトランスリン酸化反応を導くキナーゼドメインの活性化にとっての1つの必要条件であることが報告されてきた。4つのFGFレセプタの中で最も広い発現パターンを示すFGFレセプタ−1(FGFR−1)は少なくとも7つのチロシンリン酸化反応部位を含んでいる。これらのリン酸化反応部位に対し異なる親和力で結合することによって数多くのシグナル変換分子が影響を受ける。
【0004】
周産期の及び成体のマウスの脳内におけるFGF及びそのレセプタの発現が調査されてきた。FGF−4を除いて全てのFGF遺伝子のメッセンジャRNAがこれらの組織内で検出され、FGF−3、FGF−6、FGF−7及びFGF−8遺伝子が、出生後期よりも後期胚形成期においてさらに高い発現を示し、これらの成員が脳の発達の後期に関与していることを示唆している。これとは対照的に、FGF−1及びFGF−5の発現は、出生後に増大した。特に、周産期マウスにおけるFGF−6の発現は、中枢神経系及び骨格筋に限定されており、生後5日目の新生児の小脳を除き胚内の発達中の大脳において強力なシグナルを伴うことが報告されてきた。FGF−6の同族レセプタであるFGF−レセプタ−(FGFR)−4は、類似の時空的発現を示し、FGF−6R及びFGFR−4が、リガンド−レセプタ系として神経系の成熟において有意な役割を果たすことを示唆している。オザワ(Ozawa)らによると、これらの結果はさまざまなFGF及びそのレセプタが、ニューロン前駆細胞の増殖及び遊走、ニューロン及びグリア分化、神経突起拡張及びシナプス形成といったような脳のさまざまな発達プロセスの調節に関与するということを強く示唆している。例えばオザワ(Ozawa)ら、脳研究、分子的脳研究(Brain Res.Mol.Brain Res.)1996、41(1−2):279−88を参照のこと。
【0005】
FGFポリペプチドファミリーのその他の成員としては、FGFレセプタチロシンキナーゼ(FGFRTK)ファミリー及びFGFレセプタヘパラン硫酸プロチオグリカン(FGFRHS)ファミリーが含まれている。これらの成員は、活性でかつ特異的なFGFRシグナル変換複合体を調節するように相互作用する。これらの調節活性は、哺乳動物の体内で広範囲の器官及び組織全体を通して、かつ正常な組織と腫瘍組織の両方において多様化する。変異体サブドメインの調節された代替的メッセンジャRNA(mRNA)スプライシング及び組合せは、多種多様なFGFRTK単量体を発生させる。2価のカチオンがFGFRHSと協同してFGFRTKトランス−リン酸化反応を立体配座的に限定し、これがキナーゼ活性の不振をひき起こし、FGFによるFGFRの適切な活性化を容易にする。例えば、FGFRTK内の異なる点突然変異が一般に全FGFR複合体のFGF非依存性活性の段階的増大による段階的重度の頭がい顔面及び骨格の異常をひき起こすことがわかっている。FGFファミリーが重大な効果を及ぼすその他のプロセスとしては、肝臓の成長及び機能、及び前立腺腫瘍の進行がある。
【0006】
もう1つのFGFファミリー成員であるグリア活性化因子(GAF)は、ヒトグリオーマ細胞系列の培養上清から精製されたヘパリン結合成長因子である。ミヤモト(Miyamoto)ら、1993、分子細胞生物学(Mol.Cell.Biol.)13(7):4251−4259を参照のこと。GAFは、その他の既知の成長因子のものとはわずかに異なる活性スペクトルを示し、FGF−9と呼称される。ヒトFGF−9cDNAは、208個のアミノ酸のポリペプチドをコードする。FGFファミリーのその他の成員との配列類似性は、30%前後と推定された。その他のファミリー成員内で発見された2つのシステイン残基及びその他のコンセンサス配列は、FGF−9配列内でも充分保存されていた。FGF−9は、酸性FGF及び塩基性FGF内のものと同様、そのN末端にいかなる標準的シグナル配列ももたないことがわかった。酸性FGF及び塩基性FGFは、細胞から従来の要領では分泌されないものとして知られている。しかしながら、FGF−9は、標準的シグナル配列の欠如にもかかわらずcDNAでトランスフェクトされたCOS細胞から効率良く分泌されることがわかった。それは、細胞の培地内でのみ専ら検出できた。分泌されたタンパク質は、開始メチオニンを除いて、cDNA配列によって予測されるものに比べてN末端でいかなるアミノ酸残基も欠如していなかった。ラットのFGF−9cDNAも同じくクローニングされ、構造分析はFGF−9遺伝子が高度に保存されていることを示した。
【0007】
FGFは、ニューロンの萌芽を誘発することが示されてきた。米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)1997、94(15):8179−84を参照のこと。カワマタ(Kawamata)ら、脳血流及び代謝ジャーナル(Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism)、16:542−547、1996は、18kDaで154アミノ酸の長さのポリペプチドである塩基性FGFが多種多様な脳ニューロンの生存及び増生を支持するということを提案した。米国特許出願第2002/0151496A1号明細書は、FGF−20が神経栄養性因子であり、ニューロン由来の細胞の生存を刺激することを示唆している。
【0008】
2.1. 炎症:骨関節炎及び関節リウマチ
骨関節炎(「OA」)は、退行変性関節疾患であり、広範かつ増大する集団が罹患している関節痛の原因となることが多い。OAは、成人における身体障害の最も一般的な原因であると推定されている。該疾患は標準的に、20代〜30代で現われ、40代を超える大部分の人が体重支持関節の病的変化を幾分か示すものの、変化は無症候であり得る。英国における55才を超える人々についての膝のOAの発生率及び有病率の系統的な再調査は、一年に25パーセントの発生率、10パーセントの身体障害有病率及び約2〜3パーセントの重症身体障害を報告した。The National Health and Nutrition Examination Survey (Center for Health Statistics, Centers for Disease Control and Prevention)は、この疾病の有病率が、25才〜34才では0.1パーセント未満であったのに対し、55才を超える人々においては80パーセントを上回ることを発見した。OAは、関節無欠性、遺伝的特徴、局所的炎症、機械力及び細胞及び生化学プロセスを含めた多数の因子の複雑な相互作用の結果である。該疾病に特徴的な特長は、関節軟骨の劣化、周縁部での骨の肥大及び標準的に関節の疼痛と剛化を伴う滑膜の変化である。大部分の患者について、OAは加齢、職業、外傷及び経時的な反復的で小さい損傷といったような1つ以上の因子に結びつけられる。OAの病態生理学的プロセスはほぼつねに進行性である。
【0009】
CG53135−05及びその変異体は、増殖を調節するFGFファミリーに属する(全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第10/174,394号明細書を参照のこと)。ヒトの体内でのFGF20様のタンパク質、CG53135−01をコードする遺伝子内の多型(CG53135−12)の同定及びOAについての遺伝的リスク改変因子のキャリヤである個体を同定する方法が、全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第10/702,126号明細書(「’126出願」)の中で記述されてきた。’126出願は、OA及び結果としての筋骨格合併症のリスクが増加した個体を同定するためのDNAベースの診断試験について記述している。
【0010】
OAの充分に立証済みの治療様式は、非薬学的な介入から薬学的介入に至るまで複数存在している。非薬学的介入としては、行動修正、減量、運動、歩行補助、悪化させる活動の回避ならびに関節洗浄及び関節鏡視下手術及び外科手術がある。現行の薬学的介入としては、非ステロイド系抗炎症薬、関節内注射によるコルチコステロイド及びコルヒチンがある。さらに、FGF−18は、OA用のラット半月板裂傷モデルにおいて損傷した軟骨を修復することが示されてきた(論文第0199号、整形外科研究会第50回年次総会(50th Annual Meeting of the Orthopaedic Research Society)、カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco CA)、2004)を参照のこと)。
【0011】
しかしながら、既存の治療法は、疾病の発生率又は重症度を抑えるのに成功していないことから、OAの満足のいく治療は、また満たされていない医療上のニーズである。従って、骨関節炎をうまく治療できる治療法は、観血的外科手術、身体障害及び補足的な介助サービスに付随するコスト中何百万ドルもの金額を健康医療制度に潜在的に節約させる一方で罹患率を減少させるという有利な効果を有する。
【0012】
本明細書中の引用又は論述は、それが本発明に対する先行技術であるということの是認としてみなされるべきものではない。
【0013】
発明の開示
本発明は、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質に対して相同性をもつFGF−CXポリペプチドを、それを必要としている対象に投与することを含む、疾病(例えば卒中、関節疾患及び外傷)を予防又は治療する方法を提供する。本発明は同様に、FGF−CXポリヌクレオチド配列及びこれらの核酸配列によりコードされるFGF−CXポリペプチド及びそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体をも包含する。
【0014】
本発明に従うと、予防又は治療すべき疾病としては、関節疾患(限定的な意味のない例は、関節炎、骨関節炎、関節病変、靭帯及び腱の損傷及び半月板損傷である)、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(限定的な意味のない例はアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病である)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
1つの態様においては、該発明は、FGF−CXポリペプチドをコードする単離されたFGF−CX核酸(表Aに示されている通りの配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35)又はそのフラグメント、相同体、類似体又は誘導体を包含する。該核酸には、表Aのアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36)を含むポリペプチドと少なくとも85%の同一性をもつポリペプチドをコードする核酸配列が含まれ得るがこれらに限定されるわけではない。該発明は、同様に、配列番号37、38、39、40を含むCG5313−05(配列番号2)のタンパク質開裂の結果としてもたらされるポリペプチドをも包含する。該核酸は、ゲノムDNAフラグメント及びcDNA分子であり得るがこれらに限定されるわけではない。
【0016】
本発明は同様に、本書に記述されている核酸のうちの1つ以上のものを含有するベクター、及び本書で記述されるベクター又は核酸を含有する細胞をも包含する。
【0017】
本発明はさらに、上述の核酸分子のいずれかを含む組換え型発現ベクターで形質転換された宿主細胞を包含する。
【0018】
一実施形態においては、該発明は、FGF−CX核酸及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。もう1つの実施形態においては、該発明は、実質的に精製されたFGF−CXポリペプチド、例えばFGF−CX核酸によりコードされたFGF−CXポリペプチドのいずれか及びそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体を提供する。該発明は同様に、FGF−CXポリペプチド及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物をも提供する。
【0019】
もう1つの実施形態においては、該発明は、FGF−CXポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。該抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体又はそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体であり得るがこれらに限定されるわけではない。該発明は同様にFGF−CX抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物をも提供する。該発明は同様に、上述に核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチド上のエピトープに結合する単離された抗体をも包含する。
【0020】
本発明はさらに、上述の核酸分子のいずれによってコードされるポリペプチドに結合する抗体及び負の対照抗体を含むキットを提供している。
【0021】
該発明は、FGF−CXポリペプチドを産生するための方法を包含する。該方法は、例えばFGF−CX核酸を含むベクターといったFGF−CX核酸を含有する細胞を提供すること、及び核酸によりコードされるFGF−CXポリペプチドを発現するのに充分な条件下で細胞を培養することを含む。該発現されたFGF−CXポリペプチドは、次に細胞から回収される。好ましくは、該細胞は内因性FGF−CXポリペプチドをほとんど又は全く産生しない。該細胞は、例えば、原核細胞又は真核細胞であり得る。
【0022】
本発明は、免疫応答を誘発するのに充分な量のポリペプチドを哺乳動物に投与することによって以上で開示した核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチドに対する対象の中での免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0023】
本発明は同様に、FGF−CXポリペプチドを1つの化合物と接触させ、その化合物がFGF−CXポリペプチドに結合するか否かを判定することによってFGF−CXポリペプチドに結合する化合物を同定する方法をも提供している。
【0024】
該発明は、該対象を骨関節炎にかかりやすくする傷害が発生しても軟骨を無傷にする、FGF−CXポリペプチドでの予防的処置を提供する。
【0025】
該発明は同様に、内在性又は外在性因子(それぞれ例えば遺伝的素因又は半月板損傷)が骨関節炎的変化及び軟骨損傷をひき起こした場合の、FGF−CXポリペプチドでの治療的処置をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、対象の体内の関節疾患(例えば、骨関節炎、その他の関連する関節病変、例えば限定的な意味なく、靭帯及び腱自体の内部又はそれぞれの挿入部位内の靭帯及び腱の傷害、半月板裂傷、マトリクス被着が発生するその他の関節障害、リモデリング及び修復が必要とされる関節障害及び炎症性疾患の結果として発生した軟骨及び関節病変(例えば関節リウマチ))を予防又は治療する方法において、該対象に対しFGF−CXポリペプチドを含む組成物を投与することを含む方法を提供している。
【0027】
本発明は同様に、ラットの体内での中大脳動脈(MCA)閉塞後の機能的回復を改善するべくFGF−CXを使用する方法をも包含している。卒中は、運動力及び運動神経、感覚分別、視覚機能、言語、記憶又はその他の知的能力の混乱を結果としてもたらす可能性があることから、本発明は、これらのパラメータを評価する1つのモデルにおいてFGF−CXの効能及び安全性を評価している。本発明に従うと、FGF−CXの投与は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化性、ハンチントン病)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)病的条件の治療において有利なものとなる。
【0028】
FGF−CXポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、及びかかるポリペプチドを作る方法が、共に全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第09/494,585号明細書及び同第10/174,394号明細書の中で記述されている。FGF−CXは「CG53185」、「CG53135−05」及び「FGF−20」といった語と互換的に使用される。
【0029】
該発明中に含まれているのは、FGF−CX核酸、FGF−CXポリペプチド又はその一部分をコードする単離された核酸、FGF−CXポリペプチド、これらの核酸を含有するベクター、FGF−CX核酸で形質転換された宿主細胞、抗FGF−CX抗体及び医薬組成物である。同様に開示されているのは、FGF−CXポリペプチドを作る方法ならびにこれらの化合物を用いて症状をスクリーニング、診断及び治療する方法、及びFGF−CXポリペプチド活性を変調させる化合物のスクリーニング方法である。表Aは、FGF−CX核酸及びそのコード化されたポリペプチドの要約を提供している。
【0030】
【表1】
【0031】
本書で使用されている該「対象」という用語は、動物好ましくは非霊長類(例えば乳牛、ブタ、馬、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)及び霊長類(例えばカニクイザルなどのサル、チンパンジー及びヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを意味する。いくつかの実施形態においては、該対象は、関節疾患(例えば骨関節炎、その他の骨関節炎関連障害)、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(非限定的な例はアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化性、ハンチントン病)を患う哺乳動物、好ましくはヒトである。もう1つの実施形態においては、該対象は、関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患のリスクのある哺乳動物、好ましくはヒトである。一実施形態においては、該対象は、関節疾患を患うものの卒中又は神経変性疾患は患っていない哺乳動物、好ましくはヒトである。該「対象」という用語は、本発明では「患者」と互換的に用いられる。
【0032】
本書で使用されるように、該「治療上有効な量」という用語は、疾病(例えば関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患)の重症度を低減させ、疾病の持続時間を削減し、疾病の進行を防ぎ、疾病の退行をひき起こし、疾病に付随する1つ以上の症候を改善するか又はもう1つの療法の治療効果を増強又は改善させるのに充分な療法(例えばFGF−CXポリペプチド)の量を意味する。
【0033】
FGF−CXを含む組成物は、疾病(例えば関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患)又はその1つ以上の症候を防止、治療又は改善するため1つ以上のその他の療法と組合せて投与することもできる。好ましい実施形態においては、FGF−CXを含む組成物は、関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患といった疾病又はその1つ以上の症候を防止、治療又は改善する上で使用されるものとして知られている1つ以上のその他の療法と組合わせて投与される。
【0034】
一実施形態においては、組合せ療法の間、FGF−CXポリペプチド及び/又はもう1つの療法は、例え当該技術分野において既知の方法により決定される通り、単独で投与された場合検出可能な治療上の利点を示さない量といった最適より少ない量で投与される。かかる方法においては、FGF−CXポリペプチドともう1つの療法の同時投与は結果として治療の有効性の全体的改善をもたらす。
【0035】
一実施形態においては、FGF−CXポリペプチド及び1つ以上のその他の療法は、患者の同一診察時に投与される。もう1つの実施形態において、FGF−CXポリペプチドは1つ以上のその他の療法の投与に先立って投与される。さらにもう1つの態様では、FGF−CXポリペプチドは1つ以上のその他の療法の投与の後に投与される。特定の一実施形態においては、FGF−CXポリペプチド及び1つ以上のその他の療法は、1人の対象に対し周期的に投与される。周期療法には、一定の期間のFGF−CXポリペプチドの投与とそれに続く一定期間の1つ以上のその他の療法の投与及びこの逐次的投与の反復が関与する。周期療法は、1つ以上の療法に対する耐性の発生を低減させ、療法の1つに付随する副作用を回避又は低減させかつ/又は治療の効能を改善することができる。
【0036】
該発明の組成物の毒性的及び治療的効能(例えばFGF−CXポリペプチド)は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療上有効である用量)を判定するための細胞培養又は実験動物内における、標準的な薬学的手順により判定可能である。毒性及び治療効果の間の該用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比として表わすことができる。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。毒性副作用を示す組成物も使用し得るが、感染を受けていない細胞に対する潜在的損傷を最小限におさえかくして副作用を低減させるため、感染を受けた組織の部位にかかる組成物をターゲティングする送達系を設計するよう配慮すべきである。
【0037】
1つの実施形態においては、細胞培養検定及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための一投薬量範囲を処方する上で使用することができる。複合体の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全く無いED50を含む一範囲の循環濃度内にある。該投薬量は、利用される剤形、利用される投与経路、疾病の重症度、対象の年令及び体重及び医療専門家(例えば医師)が通常考慮に入れるその他の因子に応じて、この範囲内で変動し得る。該発明の方法において使用されるあらゆる組成物について、最初に細胞培養検定から、治療上有効な用量を推定することができる。細胞培養中で判定される通りのIC50(すなわち症状の半最大阻害を達成するテスト化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデル内で1用量を処方することができる。かかる情報は、ヒトの体内での有用な用量をより正確に判定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィによって測定することができる。[ここに好ましい投薬量範囲を挿入する]。
【0038】
化学療法剤、放射線療法及び生物剤/免疫療法剤例えばサイトカインといったような治療方法用の適切な及び推奨される投薬量、処方及び投与経路は当該技術分野において既知であり、医師用卓上参考書(Physician’s Desk Reference)(第58版、2004年)といったような文献において記述されている。
【0039】
さまざまな送達系が知られており、該発明の組成物を投与するために使用することができる。かかる送達系には、リポゾーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内への封入、組換え型細胞による発現、レセプタを媒介としたエンドサイトーシス、レトロウイルス又はその他のベクターなどの一部としての該発明の核酸の構築などが含まれるがこれらに限定されるわけではない。導入方法には、皮内、筋内、腹腔内、髄腔内、脳室内、硬膜外、静脈内、皮下、鼻腔内、腫瘍内、経皮、直腸内及び経口投与が含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明の組成物は、例えば輸液又はボーラス注入法、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、膣粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通した吸収などのあらゆる便利な経路によって投与され得、その他の生物学的に活性な作用物質と合わせて投与可能である。投与は全身的でも局所的でもあり得る。
【0040】
いくつかの実施形態においては、治療を必要とする部域に局所的に該発明の医薬組成物を投与することが望ましい可能性がある。これは、例えば外科手術中の局所的輸液によってか又は例えば外科手術後の創傷包帯剤と併用した局所施用によって、又は注入によって、又はカテーテル、坐薬又はインプラント(このインプラントは、シラスチック(sialastic)膜といった膜又は繊維を含む多孔質、非多孔質又はゼラチン様材料でできている)を用いて達成可能である。一実施形態においては、投与は、放射線、化学療法又は化学兵器といったような傷害に最も敏感な急速に増殖する組織の部位(又は元の部位)での直接的注射によるものであり得る。
【0041】
該発明の組成物が予防又は治療剤をコードする核酸であるいくつかの実施形態において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部として核酸を構築しそれが細胞内のものとなるような形で例えばレトロウイルスベクタの使用によってか又は直接注入によってか又は微粒子ボンバード(例えば遺伝子銃)の使用によってか又は脂質又は細胞表面レセプタ又はトランスフェクション剤でのコーティングによってそれを投与するか、又は核内などに進入するものとして知られているホメオボックス様のペプチドに対する連結においてそれを投与することによって、そのコードされたタンパク質(例えばFGF−CXポリペプチド)の発現を促進するべくインビボで投与することができる。代替的には、本発明の核酸は、相同的組換えにより、細胞内に導入され発現のため宿主細胞DNA内に取込まれ得る。
【0042】
該発明の組成物には、単位剤形の調製のために使用可能である医薬組成物の製造において有用なバルク製剤組成物が含まれる。好ましい実施形態においては、該発明の組成物は医薬組成物である。かかる組成物は、該発明の1つ以上の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)を予防上又は治療上有効な量と、薬学的に受容可能な担体を含んでいる。好ましくは、該医薬組成物は、対象に対する投与経路にとって適切であるように処方される。
【0043】
一実施形態においては、「薬学的に受容可能な」という語は、動物そしてより詳細にはヒトの体内で使用するため連邦又は州政府の管理機関により承認されているか又は、米国薬局方又はその他の一般的に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という語は、予防又は治療用作用物質と共に投与される希釈剤、アシュバント(例えばフロインドアシュバンド(完全及び不完全)、賦形剤又はビヒクルを意味する。かかる薬学的担体は、水又は油といった無菌液体(例えば、石油、動物、植物又は合成由来の油例えばピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)又は希釈剤、芳香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤又はカプセル封入材料としても作用しうる1つ以上の物質といったような固体担体であり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好ましい担体である。食塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も同様に、特に注射剤のための液体担体としても利用可能である。適切な薬学賦形剤としては、でんぷん、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール又はその組合せが含まれるがこれらに限定されるわけではない。該組成物は、望まれる場合、少量の湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤をも含有し得る。
【0044】
本発明の組成物は、液状シロップ、錠剤、カプセル、ジェルカプセル、ソフトジェル、ピル、粉剤、浣腸剤、持続放出製剤などを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)数多くの考えられる剤形のいずれかの形に処方され得る。本発明の組成物は同様に、水性、非水性又は混合培地中の懸濁液としても処方可能である。水性懸濁液はさらに、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどを含む懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有し得る。懸濁液は同様に安定化剤も含有し得る。組成物は同様に、トリグリセリドといった従来の結合剤及び担体と共に坐薬として処方することもできる。経口処方は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどといった標準的な担体を含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、発泡体として処方され使用されてよい。薬学的発泡体には、例えばエマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリー及びリポゾームといったような(ただしこれらに限定されるわけではない)処方が含まれる。性質的に基本的に類似しているものの、これらの処方は、最終生成物の成分及びコンシステンシーという点で異なっている。かかる組成物及び製剤の調製は、薬学及び処方技術の当業者にとっては一般に既知であり、本発明の組成物の処方に適用可能である。
【0046】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と相容性のあるものとなるように処方されている。特定の実施形態においては、該組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋内、経口、鼻腔内、腫瘍内又は局所投与に適合された医薬組成物として、規定通りの手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、該組成物は同様に、注入部位における痛みを和げるためリドカインといったような局所麻酔剤及び可溶化剤も含み得る。
【0047】
該発明の組成物を局所施用する場合には、該組成物を経皮性パッチ、軟こう、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体及び粉末の形で処方することができる。従来の薬学的担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤などが必要であるか又は望ましい可能性がある。コーティングされたコンドーム、手袋なども有用であり得る。好ましい局所的処方には、該発明のポリペプチドが、脂質、リポゾーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤及び界面活性剤といった(ただしこれらに限定されるわけではない)局所送達剤との混和状態にある処方が含まれる。好ましい脂質及びリポゾームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、マイナス(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)、及び陽イオン(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAP及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明のポリペプチドはリポゾーム内にカプセル封入されていてもよいし、或いは又リポゾーム特にカチオン性リポゾームに対する複合体を形成してもよい。代替的には、ポリペプチドは脂質特にカチオン脂質に対し複合体形成され得る。好ましい脂肪酸及びエステルには、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、l−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1−10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリスタートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、又はその薬学的に受容可能な塩が含まれるがこれらに限定されるわけではない。非噴霧局所用剤形については、局所施用と相容性ある1つ以上の賦形剤又は担体を含み、好ましくは水より高い動的粘度を有する、粘性乃至半固体又は固体形態が標準的に利用される。その他の適切な局所的剤形としては、好ましくは固体又は液体不活性担体と組合せた形の活性成分が、加圧揮発性物質(例えばフレオンといったような気体高圧ガス)との混合物中又はスクイズボトル中に包装されている噴霧可能なエアゾル調製物が含まれる。所望の場合には、医薬組成物及び剤形に付して、保湿剤又は湿潤剤も添加することができる。かかる添加成分の例は、当該技術分野において周知である。
【0048】
該発明の方法に1つの組成物の鼻腔内投与が含まれている場合、該組成物は、エアゾル形態、スプレー、霧又は液滴の形で処方可能である。特に、本発明に従った使用のための予防又は治療剤は、適切な高圧ガス(例えばジクロロジフルオロロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他の適切な気体)を使用して、加圧パック又はネブライザからエアゾルスプレーの体裁で適切に送達され得る。加圧エアゾルの場合、投薬量単位は、計算された量を送達するためのバルブを具備することによって決定可能である。ラクトース又はでんぷんといったような適切な粉末と該化合物の粉末混合物を収納する、吸入器又は吸気器内で使用するための(例えばゼラチンで構成された)カプセル及びカートリッジを処方することが可能である。
【0049】
該発明の方法が経口投与を含む場合、組成物は、粉末、顆粒、微粒子、ナノ粒子、懸濁液又は水溶液又は非水性媒質中溶液、カプセル、ジェルカプセル、小袋、錠剤又はミニ錠剤の形で処方可能である。増粘剤、芳香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましいかもしれない。錠剤又はカプセルは、結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);錠剤分割物質(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリルリン酸ナトリウム)といった薬学的に受容可能な賦形剤と共に従来の手段により調製可能である。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によりコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン、又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は精留植物油);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)といったような薬学的に受容可能添加剤と共に従来の手段によって調製され得る。該調製物は同様に、緩衝塩、芳香剤、着色剤及び甘味料を適宜含有し得る。経口投与のための調製物は、予防用又は治療用作用物質の徐放、制御放出又は持続放出のために適切に処方可能である。
【0050】
一実施形態においては、本発明の組成物は、例えば界面活性剤及びキレート剤といった1つ以上の浸透エンハンサと併用して経口投与される。好ましい界面活性剤としては、脂肪酸及びそのエステル又は塩、胆汁酸及びその塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態においては、浸透エンハンサの組合せ、例えば胆汁酸/塩と組合せた形の脂肪酸/塩が用いられる。特定の一実施形態においては、ラウリン酸、カプリン酸のナトリウム塩が、UDCAと組合わせて用いられる。さらなる浸透エンハンサとしては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明の組成物は、噴霧された乾燥粒子を含む(ただしこれに限定されるわけではない)顆粒形態で経口投与されてもよいし、又は、複合体化して微粒子又はナノ粒子を形成することもできる。該発明のペプチド(例えばFGF−CXポリペプチド)と複合体化するのに用いることのできる複合体化剤としては、ポリ−アミノ酸、ポリイミン、ポリアクリラート、ポリアルキルアクリラート、ポリオキシエタン(polyoxethanes)、ポリアルキルシアノアクリラート、カチオン化ゼラチン、アルブミン、アクリラート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアルキルシアノアクリラート、DEAE−誘導体化ポリイミン、ポルラン、セルロース、及びデンプンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。特に好ましい複合体化剤としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリラート)、ポリ(エチルシアノアクリラート)、ポリ(ブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリラート)、DEAE−メタクリラート、DEAE−ヘキシルアクリラート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミン及びDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリラート、ポリヘキシルアクリラート、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギナート、及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0051】
該発明の方法は、エアゾル化剤と共に処方された組成物の、例えば吸入器又はネブライザを用いた肺投与を含み得る。
【0052】
該発明の方法は、(例えばボーラス注入又は持続注入といった)注入による非経口投与用に処方された組成物の投与を含み得る。注入用処方は、付加された防腐剤を伴う単位剤形(例えばアンプル又は多重用量容器)の体裁をとり得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンといった形態をとり得、又懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤といった処方剤を含有し得る。代替的には、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば無菌で発熱物質を含まない水)で構成するように粉末形態をしていてよい。
【0053】
好ましい実施形態においては、該組成物は、ヒトに対する静脈投与のために適合された医薬組成物として規定通りの手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、該組成物は同様に、注入の部位における痛みを和げるためリグノカインといったような局所麻酔剤及び可溶化剤も含み得る。一般に、成分は、例えば活性作用物質の数量を示すアンプル又は小袋といった密封した容器に入った凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として単位剤形の形で混合された状態で又は別々に供給される。組成物を輸液により投与する場合には、それを無菌の薬学グレードの水又は食塩水の入った輸液びんで送り出すことができる。組成物を注射により投与する場合、投与に先立って成分を混合できるように注射用滅菌水又は食塩水のアンプルが提供され得る。
【0054】
該発明の組成物は、中性形態又は塩形態として処方可能である。薬学的に受容可能な塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されたものといった遊離アミノ酸で形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたものといったような遊離カルボキシル基で形成されたものが含まれるがこれらに限定されるわけではない。薬学的に受容可能な塩の非限定的な例としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、酢酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グルカプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシナート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、ヒドロキシナフトアート、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩メシル酸塩、臭化メチル、窒化メチル、硫化メチル、ムカート、ナプシル酸、硝酸塩、パモアート(エンボナート)、パントテン酸塩、ホスファテルジホスファート、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオジド、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛がある。
【0055】
上述の処方に加えて、該組成物は同様に、デポー製剤としても処方可能である。かかる長時間作用性処方は、移植(例えば皮下又は筋内)又は筋内注射により投与可能である。かくして例えば、該組成物を適切な重合体又は疎水性材料(例えば受容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又は例えばやや溶けにくい塩といったようなやや溶けにくい誘導体として処方することができる。リポゾーム及びエマルジョンは、親水性薬物のための送達ビヒクル又は担体の周知の例である。
【0056】
1つの実施形態においては、該発明の組成物(例えばFGF−CX)の成分は、かかる組成物のレシピエントと同じ種の起源又は種の反応性である対象から誘導される。
【0057】
該発明は同様に、該発明の治療計画を実施するためのキットをも提供する。かかるキットは、薬学的に受容可能な形態で予防上又は治療上有効な量の該発明の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)を1つ以上の容器内に収納している。該発明のキットの小びん中に入った組成物は、例えば無菌生理食塩水、デキストロース溶液又は緩衝溶液又はその他の薬学的に受容可能な無菌流体と組合せた状態の薬学的に受容可能な溶液の形をとり得る。代替的には、該組成物を凍結乾燥又は乾燥させることができる。この場合、キットは、任意にはさらに、注入目的の溶液を形成するため組成物を再構成するべく、好ましくは無菌である、薬学的に受容可能な溶液(例えば生理食塩水、デキストロース溶液等)を容器内に含んでいる。
【0058】
もう1つの実施形態では、該発明のキットはさらに、処方を注入するための好ましくは無菌形態で包装された針又は注射器及び/又は包装されたアルコールパッドを含む。臨床医又は患者による該発明の処方の投与のための使用説明書が任意に含まれている。
【0059】
いくつかの実施形態においては、本発明は、単回投与に充分な該発明の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)の用量を含む薬学的処方又は組成物を各々含む複数の容器を含むキットを提供する。
【0060】
あらゆる医薬品についてそうであるように、包装材料及び容器は、保管及び出荷中の製品の安定性を保護するように設計されている。1つの実施形態においては、該発明の組成は、レシチン、タウロコール酸及びコレステロールを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)生体適合性のある洗浄剤;又はガンマグロブリン及び血清アルブリンを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)その他のタンパク質と共に容器内に保管されている。さらに、該発明の製品には、使用説明書、又は医師、技師又は患者に対し問題の疾病又は障害をいかにして適切に予防又は治療するかについて助言を与えるその他の情報材料が含まれている。
【0061】
本発明について、さらに、以下の実施例を用いて例示する。
【実施例】
【0062】
5.1. 実施例1:配列分析
各々のFGF−CXについての配列の関連性及びドメイン分析の詳細が、表1Aに提示されている。FGF−CX1クローンが分析され、ヌクレオチド及びコードされたポリペプチド配列が表1Aに示されている。
【0063】
【表2】
【0064】
上述のタンパク質配列のクラスタルダブル(ClustalW)比較が、表1Bに示されている以下の配列アラインメントを生成する。
【0065】
【表3】
【0066】
FGF−CX1aタンパク質のさらなる分析が、表1Cに示された以下の特性を生成した。
【0067】
【表4】
【0068】
特許及び特許広報で公示された配列を含む専有のデータベースであるジンシーク(Geneseq)データベースに対するFGF−CX1aタンパク質の探索は、表1Dに示された複数の相同性タンパク質を生成した。
【0069】
【表5】
【0070】
公開配列データベースのBLAST探索において、FGF−CX1aタンパク質は、表1E内のBLASTPデータ中に示されたタンパク質に対する相同性をもつことが発見された。
【0071】
【表6】
【0072】
PFam分析は、FGF−CX1aタンパク質が表1Fに示されたドメインを含むことを予測している。
【0073】
【表7】
【0074】
5.2. 実施例2:CG53135−05(FGF−20)のタンパク質分解による分割産物
CG53135−05の液体クロマトグラフィ、質量分析法及びN末端配列決定の結果、増殖検定において高い活性をもつ変異体がもたらされた。かくして、このセクションで詳述されるこれらの変異体は、CG53135−05と同じ有用性をもつものと期待されている。
【0075】
CG53135−05の液体クロマトグラフィ(LC)及び質量分析法(MS)
精製されたCG53135−05を、アセトニトリル、水及びトリフルオロ酢酸を含む移動相中の標準HPLCシステム(アジレント(Agilent)1100、アジレント(Agilent))を用いて、フェニル−ヘキシルカラム(ルナ(Luna)5mm、250mm×3mm、フェノメネックス(Phenomenex))上に注入した。結果としての分析は、CG53135−05(図1)に関連する1つの大ピーク(#3)と3つの小ピーク(#1、2、4及び5)を示す、検出可能なレベルの微小不均一性を明らかにした。これらの種を特徴づけするため、自動化された画分収集装置(アジレント1100)を用いて、画分を収集し、液体クロマトグラフィエレクトロスプレーイオン化イオントラップ質量分光法(LC/ESI/MS)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法(MALDI−TOF−MS)及びN末端アミノ酸配列決定を用いて画分を特徴づけした。
【0076】
ピーク0はタンパク質ではなく、製品関連のものではなく、又、残留プロセス不純物でもない(すなわち、DNA、内毒素、カナマイシン又はIPTGではない)。CG53135−05に関連する種(ピーク1、2、3及び4)は、36%のアセトニトリル、63%の水及び0.1%のトリフルオロ酢酸の移動相を溶出した。類似の画分を次にプールし、4℃の遠心機内でアミコン(Amicon)10,000ダルトンカットオフフィルター(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford、MA))を用いて試料を濃縮した。試料を200mMのアルギニン、40mMの酢酸ナトリウム及び3%のグリセロール中で16倍に希釈し、次に約500μlの体積になるまで濃縮した。プールした画分の濃度を、アミノ酸分析を用いて決定した。
【0077】
トリプシンを用いて4つのCG53135−05関連種(ピーク1、2、3及び4)の全てをタンパク質分解により消化し、質量分析検出を伴う液体クロマトグラフィを用いてペプチドを分析した。究極ナノフロークロマトグラフィシステム(LCパッキングス(LC Packings)、オランダアムステルダム(Amsterdam、Netherlands))とインタフェースされたXP DECA ナノスプレー/イオントラップ器具(サーモフィンガン(ThermoFinnigan)、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose、CA))を用いて質量分析を実施した。自動化MS−MS/MSスイッチングを用いてエクスカリバー(Xcalibur)ソフトウエア(サーモフィンガン)を介してデータを収集した。インスツルメント・メソッド(Instrument Method)ファイル内で、400〜1400m/zの間の全MS走査とそれにつづく先行MS走査からの最上位3つのイオンの400〜2000m/zの間の全MS/MS走査を獲得するようにXPDECAをセットした。ターボシークエスト(TurboSequest)(サーモフィンガン)を用いてデータを処理した。MASCOT(マトリックスサイエンシーズ(Matrix Sciences)、英国マンチェスター(Manchester、UK))を用いてデータベース探索とタンパク質の同定を実施した。MASCOTは、ペプチドの分子質量、MS/MS配列情報、質量精度及び検出されたペプチド数に基づいて、同定されたタンパク質についての確率ベースのMOWSE評点及びカバレージ百分率を報告する。表2は、CG53135−05関連種についてのピーク番号、MASCOTにより提供される信頼度評点及びMS/MSスペクトルから得たカバレージ百分率を含んでいる。
【0078】
【表8】
NA= データ入手不可
【0079】
CG53135−05関連種の同一性を決定するため、収集された画分を、MALDI−TOF及びN末端配列決定によって分析した。精製したCG53135−05のN末端アミノ酸を定性的に決定した。CG53135−05タンパク質をSDS−PAGEにより解像し、ポリフッ化ビニリデン膜に電気泳動によって移送した。膜からクマシー染色した約23kDaの主要バンドを切除し、自動エドマン(Edman)シーケンサ(プロサイズ(Procise)、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、カリフォルニア州フォスター市(Foster City、CA))により分析した。表3は、各々の種について得られた分子量及びN末端配列決定(ここでN=全長CG53135)により決定された変異体を提示している。
【0080】
【表9】
NA=データ入手不可。タンパク質でなく製品関連でもない。
【0081】
MALDI−TOF及びN末端配列決定により決定された分子量は、4つの種を同定することができる。ピーク1については、N末端配列決定を介して4つの異なる種が検出され、そのうちの2つが同じくMALDI−TOFによって検出された。これらの結果は同様に、LC/MSを用いて得られたカバレージとも一致している。N末端配列決定により誘導された各々の種のポリペプチド配列は、表4に示されている。
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
多重アラインメント
【0084】
全アミノ酸分析
CG53135−05のアミノ酸組成物を決定した。内部標準として2nmolのノルロイシンを含有する0.2%のフェノール、100mLの6NHCl中で115℃で16時間CG53135−05の試料を加水分解した。試料を高速Vac濃縮器(Speed Vac Concentrator)内で乾燥させ、内部標準として2nmolのホモセリンを含有する試料緩衝液100mL中に溶解させた。各試料中のアミノ酸を、ベックマン(Beckman)7300型イオン交換計器上で分離した。CG53135−05のアミノ酸組成物は、理論上のアミノ酸組成物と一貫性を有していた。
【0085】
UV吸光度を介した濃度の推定(ブラッドフォード方法を用いたタンパク質の推定)の中で使用される消光係数を導出するために、実験用アミノ酸組成物を使用した。λmaxにおける消光散係数は、0.97mL/mg・cmである。
【0086】
【表12】
A 処方中の余剰のargのため未判定。
B 分析中に酸加水分解においてcysが破壊されることから未判定。
C 分析中に酸加水分解においてtrpが破壊されることから未判定。
D 酸加水分解中asnはaspに、glnはglu酸に転換されることになる。従って、asxはasnとaspの和を表わし、一方glxはglnとgluの和を表わす。
【0087】
ペプチドマッピング
精製済みCG53135−05(25mg)を変性させ、50℃で尿素とジチオトレイトール中で還元させ、ヨードアセタートでアルキル化させた。尿素の濃度を低下させた後、試料を20℃で40時間トリプシンで処理した。結果として得たペプチドフラグメントを、(トリフルオロアセテート中のアセトニトリル勾配を伴うC−18カラムを用いることによって)RP−HPLCにより分離してペプチドマップ(図2A及び2B)を得た。図2A中のクロマトグラムはトリプシンでのCG53135−05の消化から予想された20個のペプチドと一貫性をもつものであり、図2B中のクロマトグラムは、CG53135−05内の単一トリプトファン残基について予想された通りの単一のピークを明らかにしている。
【0088】
生物学的検定
LC及びMSにより同定された4つのピークから収集されたCG53135−05関連種の生物活性を、さまざまな用量の単離されたCG53135−05関連種での血清欠乏培養NIH3T3マウス胚線維芽細胞の処理及びDNA合成中のブロモデオキシウリジン(BrdU)取込みの測定によって、測定した。この検定のためには、10%のウシ胎児血清で補足されたダルベッコの修正イーグル培地の中で細胞を培養した。10%CO2/空気中で37℃で集密性に至るまで96ウェル平板内で細胞を成長させ、次に24〜72時間、ダルベッコ修正イーグル培地内で欠乏させた。CG53135−05関連種を添加し、37℃で18時間、10%CO2/空気中でインキュベートした。BrdU(10mMの最終濃度)を添加し、10%CO2/空気中で2時間37℃で細胞と共にインキュベートさせた。BrdUの取込みを、メーカーの仕様書(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis、IN))に従って、酵素免疫吸着法により測定した。
【0089】
ピーク4は、不充分な材料しか収集されなかったため(ピーク4はCG53135−05についての合計ピーク面積の3%未満である)、この検定には内含されなかった。CG53135−05及び3つの残りの画分(すなわちピーク1、2及び3)全てから収集した材料が、NIH3T3マウス線維芽細胞内で用量依存的にDNA合成を誘発した(表7)。PI200は、背景の2倍でのBrdUの取込みを結果としてもたらしたタンパク質の濃度として定義された。3つの測定可能なピーク全てから回収したCG53135−05やCG53135−05関連種は、0.7〜11ng/mLのPI200で類似の生物活性を実証した(表9)。
【0090】
【表13】
【0091】
5.3. 実施例3:CG53135のレセプタ結合特異性(研究L−116.01)
FGFファミリー成員は、細胞表面免疫グロブリン(Ig)ドメイン含有チロシンキナーゼFGFレセプタ(FGFR)との高親和性相互作用を介して、細胞内部でシグナルを変換する。4つの全く異なるヒト遺伝子がFGFRをコードする(パワーズ(Powers)ら、エンドクリン関連癌(Endocr Relat Cancer)2000、7:165−97;クリント(Klint)及びクリーソン・ウェルシュ(Claesson−Welsh)、生命科学の最先端(Front Biosci)1999、4:D165−77;シュー(Xu)ら、細胞及び組織研究(Cell Tissue Res)1999、296:33−43)。キナーゼドメインの欠如した関連する第5のヒト配列が最近になって同定され、FGFR−5と命名された(キム(Kim)ら、生物化学と生物物理学(Biochim Biophys Acta)2001、1518:152−6)。これらのレセプタは各々このファミリーの複数の異なる成員を結合させることができる(キムら、生物化学と生物物理学2001、1518:152−6;オルニス(Ornitz)ら、生物化学ジャーナル(J Biol Chem)1996、271:15292−7)。FGFは同様に、低い親和性しかもたないにもかかわらず、大部分の細胞表面及び細胞外マトリクス(ECM)上に存在するヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合する。FGF及びHSPGの間の相互作用は、FGF/FGFR相互作用を安定化させ、FGFを封鎖しそれを分離から保護するのに役立つ(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97;セベニ(Szebenyi)及びファロン(Fallon)、国際細胞学評論(Int Rev Cytol)1999、185:45−106)。レセプタトランスリン酸化を導くキナーゼドメインの活性化のためには、リガンド結合時点のFGFレセプタ単量体の2量体化が必要条件であると報告されている。4つのFGFレセプタの最大の発現パターンを示すFGFレセプタ−1(FGFR−1)は、少なくとも7つのチロシンリン酸化部位を含んでいる。これらのリン酸化部位に対して異なる親和力で結合することにより、数多くのシグナル変換分子が影響を受ける。
【0092】
FGFR−1、FGFR−2及びFGFR−3は各々FGF−1、FGF−2、FGF−4及びFGF−8を認識する。さらに、FGFR−1とFGFR−2はFGF−3、FGF−5、FGF−6、FGF−10及びFGF−17に結合する(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97)。さまざまなFGFリガンドの結合は各々のレセプタスプライス形態と共に変動し、かくして、限定された数のレセプタコーディング遺伝子を通して広いレパートリのFGF媒介されたシグナリング事象を可能にする。組織特異的な交互のスプライシングにより、単一のFGFR遺伝子を発現する細胞が、異なるリガンド特異性及び機能を示し得る全く異なるレセプタイソ型を生成することによってその生物学的応答を著しく多様化させることが可能となる。FGFR−4はFGF−1、FGF−2、FGF−4、FGF−6、FGF−8及びFGF−9に結合するもののFGF−3、FGF−5又はFGF−7に結合しない。FGF−7つまりケラチノサイト成長因子−1(KGF−1)は、FGFR−2によってのみ認識され、一方FGF−9はFGFR−2、FGFR−3及びFGFR−4に結合する。FGF11〜FGF19のレセプタ特異性は充分に理解されていない(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97;オルニス(Ornitz)ら、生物化学ジャーナル1996、271:15292−7)。
【0093】
主要な器官系由来の正常なヒト成人組織内の免疫組織学研究(ヒューズ(Hughes)、組織化学及び細胞化学ジャーナル(J Histochem Cytochem)1997、45:1005−19)は、FGFR−1、FGFR−2及びFGFR−3が広く発現されることを示しており、これは、組織ホメオスタシスにおける重要な機能的役割を示唆している。組織特異的イソ型についてのタンパク質発現パターンはまだ判定されていない。FGFR−4は、その他の3つのレセプタの全てが主に発現されている組織である、肺、卵管、胎盤、睾丸、前立腺、甲状腺、副甲状腺及び交感神経節では著しく欠如しているより限定されたパターンを有している(ヒューズ、組織化学及び細胞化学ジャーナル1997、45:1005−19)。
【0094】
CG53135のレセプタ結合特異性を判定するために、我々は、大腸菌(E.coli)内で産生された組換え型CG53135−01によるNIH3T3細胞内のDNA合成の誘発に対する可溶性FGFRの効果を調査した。
【0095】
材料と方法
大腸菌(Escherichia coli)由来のタンパク質の精製:大腸菌(E.coli)の産生のためには、大腸菌発現宿主BL21内にプラスミドpETMY−hFGF20Xを形質転換し(ノバゲン(Novagen)、ウィスコンシン州マジソン(Madison、WI))、タンパク質CG53135発現の誘発をメーカーの指示事項に従って実施した。37℃でLB培地内においてpETMYhFGF20X/BL21大腸菌の細菌を成長させた。0.6のODで、最終的な感染多重度が5になるまでバクテリオファージラムダ(CE6)を添加した。3時間27℃で、感染した培地をさらにインキュベートした。誘発の後、全細胞を収穫し、抗HisGly抗体(インビトロジェン(Invitrogen)を用いて、ウェスタンブロット法によりタンパク質を分析した。低速遠心分離(4℃で15分間GS−3回転子内で5000rpm)により細胞を収穫し、0.5MのNaCl及び1Mのアルギニンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に懸濁させ、ミクロフルイダイザに2回通して分断させた。細胞残屑を低速遠心分離により除去し、0.2ミクロンの低タンパク質結合膜を通したろ過により、可溶性タンパク質画分(上清)を清澄化させた。その後タンパク質試料を金属キレート化カラム(硫酸ニッケルが予め充填されているもの)上に投入した。ニッケルカラムをPBS/0.5MNaCl+1MのL−アルギニンで洗浄し、結合したタンパク質をイミダゾールの線形勾配(0−0.5M)で溶出させた。CG53135(100−150mMイミダゾール)を含有する画分をプールし、1MのL−アルギニンを含む1×106倍体積のPBSpH8.0に対して透析させた。タンパク質の試料を−80℃で保管した。
【0096】
レセプタ特異性:NIH3T3細胞を96ウェルの平板に約100%の集密性に至るまで培養し、洗浄し、補足無しのDMEM(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)を補給し、24時間インキュベートした。次に組換え型CG53135−01又は対照タンパク質を次に18時間細胞に添加した。使用される対照タンパク質はaFGF(正の対照)及び血小板由来の成長因子−BB(PDGFBB)(負の対照)であった。CG53135活性に対する可溶性FGFRの効果を分析するために、組換え型CG53135−01、aFGF、又はPDGF−BB(それぞれ10、5及び3ng/mLの最終濃度)を可溶性レセプタ(0.2、1及び5μg/mLの最終濃度)と混合し、血清欠乏NIH3T3細胞への添加の前に37℃で30分間インキュベートした。因子濃度は、NIH3T3細胞中半値BrdU応答を生成するのに必要とされるリガンドの量を表わす。可溶性FGFRは、以下のレセプタ形態(FGFR1β(IIIc);FGFR2β(IIIb);FGFR2α(IIIb);FGFR2α(IIIc);FGFR3α(IIIc);FGFR4)のFcキメラであり、R&Dシステムズ(R&D Systems)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis、MN))から得られた。BrdU検定は、メーカーの仕様書(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナ州インディアナポリス)に従って、4時間のBrdU取込み時間を用いて実施された。
【0097】
結果と結論
CG53135のレセプタ結合特異性を決定するために、我々は、大腸菌内で産生された組換え型CG53135−01によるNIH3T3細胞中でのDNA合成の誘発に対する可溶性FGFRの効果について調査した。FGFR1β(IIIc)、FGFR2β(IIIb)、FGFR2α(IIIb)、FGFR2α(IIIc)、FGFR3α(IIIc)及びFGFR4のための可溶性レセプタが利用された。我々は、これらのFGFRの各々の可溶性形態がCG53135の生物活性を特異的に阻害できるということを発見した(図3)。
【0098】
可溶性FGFR2α(IIIb)、FGFR2β(IIIb)、FGFR2α(IIIc)及びFGFR3α(IIIc)で完全又はほぼ完全な阻害が得られ、一方可溶性FGFR1β(IIIc)及びFGFR4で部分阻害が達成された。可溶性レセプタ試薬のいずれもPDGF−BBによるDNA合成の誘発と干渉せず(図2)、かくしてそれらの特異性を実証した。分析中のFGFRの全てと相互作用するものとして知られる1つの因子であるaFGFによるDNA合成の誘発を阻害するその能力を示すことにより、各々の可溶性レセプタ試薬の無欠性を実証した(図3)。
【0099】
5.4. 実施例4:卒中の治療
30匹の雄のスプラーグダウエルラットを、以下の表8の研究設計の中に示したとおりの治療グループに帰属た。
【0100】
【表14】
*投与用量及び体積は、330gの平均体重に基づくものである。
【0101】
実験手順
中大脳動脈(MCA)外科手術及び槽内注入:外科手術に先立ち7日間動物を処理した。外科手術の前日及び手術直後にセファゾリンナトリウム(40mg/kg、腹腔内)を投与した。外科手術の時点で、ラットを2:1のN2O:O2混合物中の2%ハロタンで麻酔した。体温は37±0.50℃に維持した。近位右側MCAを嗅索のすぐ近位から下大脳静脈まで電気凝固し、次に離断した。槽内注入のためには、上述の通りに動物を再度麻酔し、定位枠内に置いた。ラットに対しCG53135−05又はビヒクル[40mMの酢酸塩、200mMマンニトール(pH5.3)]を、MCAから1日目(約24時間)に1回と3日目(約72時間)に1回、大槽内への皮内注射により与えた。動物にテスト品(2用量グループ)又はビヒクル処置を研究設計に従って与えた。
【0102】
臨床的観察事実/徴候
注射後直ちに1時間にわたり、(おりの回りの激しい動きと震えにより示される)発作、(大きな発声により示される)苦痛及び昏睡の徴候について、動物を観察した。毎日、死亡数及び頻死数についても動物を観察した。
【0103】
体重:動物を1日目、3日目、7日目、14日目及び21日目に計量した。
【0104】
四肢置き直し試験:四肢置き直し試験を全ての動物について、−1日目(術前)、1日目(注射直前)、3日目及びその後7日毎(7日目、14日目、21日目)行なった。
【0105】
前肢置き直し試験評価評点:前肢置き直し試験は、動物が、視覚、触覚及び自己受容刺激に応答してテーブル上面に肢を置くにつれて、各々の前肢内の感覚運動機能を測定する。前肢置き直し試験は、以下の評価及び評点から成り、ここで前肢置き直し試験についての組合せ合計評点は、0(機能障害無し)から10(最大の機能障害)までの範囲を反映する。
視覚性置き直し(前方向、横方向):0〜4
触覚性置き直し(背面、側面):0〜4
自己受容的置き直し:0〜2
全前肢試験についての合計評点:0〜10
【0106】
後肢置き直し試験評価評点:同様に、後肢置き直し試験は、動物が、触覚及び自己受容刺激に応答してテーブル上面に後肢を置くにつれて、後肢の感覚運動機能を測定する。後肢置き直し試験は、以下の評価及び評点から成り、ここで後肢置き直し試験についての組合せ合計評点は、0(機能障害無し)から6(最大の機能障害)までの範囲を反映する。
触覚性置き直し(背面、側面):0〜4
自己受容的置き直し:0〜2
全後肢試験についての合計評点:0〜6
【0107】
ボディスイング試験:ボディスイング試験を、全ての動物について、−1日目(術前)、1日目(注射の直前)、3日目及びその後7日毎(7日目、14日目、21日目)に実施した。
【0108】
ボディスイング試験は、動物をテーブルの表面より約1インチ上に保持し右側又は左側に揺動するにつれての側方選好性を検査する。30回の揺動を計数し、次に右への揺動の百分率に基づいて評点を計算する。(評点範囲=約50%の右方揺動(機能障害無し)−0%の右方揺動(最大の機能障害))。
【0109】
シリンダ試験:シリンダ試験を、−1日目(術前)及び術後7日目(7日目、14日目、21日目)に全ての動物について実施した。シリンダ試験は、前肢の自発運動活性を測定する。動物を狭いガラスシリンダ(16.5×25cm)の中に入れ、卒中手術の前日に5分間そしてその後毎週の間隔で5分間ビデオテープに録画する。その後ビデオテープを、1人の経験豊かなオブザーバにより独立して評定させ、最高50回の自発運動を計数することになる(一日ラット一匹につき約5分)。自発運動には、立上がりを開始し、着地又はシリンダの壁に沿って側方に移動するため、又は立上がりの後床に着地するため各々の前肢により行なわれるものが含まれる。
【0110】
肉眼検査及び組織形態学:予定された終結日(3日目)において、動物を抱水クロラール(500mg/kg)の腹腔内注射により安楽死させた。脳を肉眼で検査し取り出し、ホルマリン内でポストフィックスし、脱水し、パラフィン内に包埋した。ガラススライドに取りつけたマイクロトーム上で冠状断面(5mm)をカットし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色することになる。7つのスライス(プレグマ(Bregma))と比べ+4.7、+2.7、+0.7、−1.3、−3.3、−5.3及び−7.3mm)の各々の上の脳梗塞の部域を、処理中の脳収縮に対し補正するべく間接的方法を用いるコーピュータインタフェース撮像システムを使用して決定した(無傷の対側半球の部域−無傷の同側半球の部域)。次に、無傷の対側半球体積の百分率として、硬塞体積を表わした。これらの同じ方法を用いて別々に、皮質及び線条体中の硬塞形成体積も決定した。H&E染色切片を、出血、膿瘍又は腫瘍形成といったような組織学的変化について検査した。
【0111】
統計的分析:各動物の治療帰属については、ブラインド状態にされた治験責任医師が、全ての槽内注射、行動試験及びその後の組織学的分析を行なった。このとき、データは平均±SEMとして表わされ、1つ又は2つの方法(ANOVA)とそれに続く、多数の比較についての補正を伴う適切な対になったポストホック検定によって分析されることになる。
【0112】
結果
前肢置き直し試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、視覚、触覚及び自己受容刺激に応答した前肢内の感覚運動機能を評価するため四肢置き直し試験を使用することによって動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。12が最大機能障害を表わすものとして、0〜12の潜在的合計評点範囲を得るべく、視覚性置き直し(0〜4で評定)、触覚性置き直し(0〜4で評定)及び自己受容置き直し(0〜2で評定)を合計した(図4)。
【0113】
後肢置き直し試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、触覚及び自己受容刺激に応答した後肢内の感覚運動機能を評価するため四肢置き直し試験を使用することによって動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。6が最大機能障害を表わすものとして、0〜6の潜在的合計評点範囲を得るべく、触覚性置き直し(0〜4で評定)及び自己受容置き直し(0〜2で評定)を合計した(図5)。
【0114】
ボディスイング試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、動物がテーブルの表面より上約1インチに保持され右側又は左側に揺動するにつれての側方選好性を評価するべくボディスイング試験を用いることにより動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)、G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。30回の揺動を計数し、右への揺動の百分率に基づいて評点を計算する(図6)。
【0115】
シリンダ試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、前肢の自発運動活性を評価するために、シリンダ試験により動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)、G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。簡単にいうと、動物を狭いガラスシリンダ(16.5×25cm)の中に入れ、卒中手術の前日に5分間そしてその後毎週の間隔で5分間ビデオテープに録画する。その後ビデオテープを、1人の経験豊かなオブザーバにより独立して評定させ、最高50回の自発運動を計数することになる(一日ラット一匹につき約5分)。自発運動には、立上がりを開始し、着地又はシリンダの壁に沿って側方に移動するため、又は立上がりの後床に着地するため各々の前肢により行なわれるものが含まれる(図7)。
【0116】
体重:MCA閉塞との関係において、−1、1、3、7、14及び21日目に動物を計量した。結果は、ビヒクルとCG53135−05治療の間の有意な差異を全く示していない(図8)。
【0117】
結論
MCA閉塞後のCG53135−05の投与は、低い及び高い用量の両方共が、対側(罹患)四肢についての前肢(図4)及び後肢(図5)置き直し試験での回復の有意な増強、及びボディスイング試験での改善(図6)を生み出すということを示唆した。このモデルにおけるその他の療法でのこの活動パターンは、それぞれ大脳皮質及び皮質下(線条体)の機能の改善を反映することが一般に示されてきた(ダイクハウゼン(Dijkhuizen)RM、レン(Ren)J、マンデビル(Mandeville)JB、ウー(Wu)O、オズダッグ(Ozdag)FM、モスコウィツ(Moskowitz)MA、ローゼン(Rosen)BR、フィンックルスタイン(Finklestein)SP.2001、米国科学アカデミー紀要98(22):12766−71)。自発的四肢使用のシリンダ試験(図7)又は動物の体重(図8)については、いかなる明白な差異もみられなかった。
【0118】
従って、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病など)を含めた病的条件の治療において、CG53135−05の投与が有用となる。
【0119】
5.5. 実施例5:マトリックス金属プロテイナーゼ産生検定
マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)は、骨及び軟骨内で細胞外マトリックスを分解させる関連酵素の1ファミリーである。これらの酵素は、組織の分化及びリモデリングにおける正常な発達中に作用する。骨関節炎(OA)及び関節リウマチ(RA)といった関節病においては、これらの酵素の発現の上昇が不可逆的マトリックス分解に貢献する。かくしてMMP産生に対するCG53135−05の効果が評価された。
【0120】
マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)の産生に対するCG53135の活性は、SW1353軟骨肉腫細胞系列(ATCC HTB−94)を用いて評価された。この細胞系列は、マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)のための確立した軟骨細胞モデルである。DMEM培地−10%FBS中1×105細胞/ml(1ml)で24ウェルの平板中にSW1353細胞を平板固定した。一晩のインキュベーションの後、培地をDMEM+0.2%のラクトアルブミン血清で置換した。0.5mlの最終体積までIL−1ベータ(0.1〜1ng/ml、R&Sシステムズ、ミネソタ州ミネアポリス)、TNF−アルファ(10ng/ml、R&Dシステムズ)又はビヒクル対照の不在下又は存在下で10〜5000ng/mlの範囲内の用量でウェルに対しCG53135−05を添加した。IL−1ベータ及びTNF−アルファは両方共MMP活性の強力な刺激物質である。全ての処置は、トリプリケートウェル内で行なった。24時間後に、上清を収集し、MMP活性の天然の阻害物質であるプローMMP−1及び−13ならびにTIMP−1(マトリックス金属プロテイナーゼの組織阻害物質)をELISA(R&Dシステムズ)により測定した。測定値をMTS検定により細胞数に正規化した。
【0121】
結果
CG53135−05は、それぞれ図14及び図15で実証されているようにIL−1ベータ又はTNF−アルファのいずれかの存在下でMMP−13産生を著しく減少させた。IL−1ベータ及びTNF−アルファは両方共、MMP活性の強力な刺激物質である。OA内で分解される主要コラーゲンであるII型コラーゲンに対するMMP−13親和力はMMP−1のものより10倍高い。MMP−13発現はOA及びRA内で増大することから、CG53135−05の付加に伴って観察されるMMP−13の減少は、OA及びRA療法剤として該タンパク質を使用できるということを示している(図10)。さらに、CG53135−05は、MMP活性の天然の阻害物質であるTIMP−1の産生をアップレギュレートした(図11)。CG53135−05によるTIMP−1産生のこの増強は、OA及びRAにおいて観察されたMMP−1及びMMP−13によるマトリックス破壊を低減する上で有益である。さらに、CG53135−05は、構成的に又はIL−1誘発の後(データ示さず)MMP−3産生に対し全く効果をもたなかった。同様にして、CG53135−05(FGF−20)は、SW1353細胞内でのMMP−1の基底発現の増大を示した(データ示さず)。
【0122】
5.6. 実施例6:正常なラットに対するCG53135−05の効果:半月板裂傷モデルに対する概念の検証
正常なラットに対するCG53135−05の効果を、疾病モデル(例えば、ラットにおける骨関節炎の半月板裂傷モデル)におけるさらなる研究を押し進めるための概念の検証として研究した。滑膜及び軟骨に対するCG53135−05の効果を、正常な雄のルイスラット内にタンパク質を注射することによって評価した。
【0123】
正常なラットにおけるCG53135−05の関節内注射の効果
ビヒクル溶液(約1%のヒアルロン酸中の8mMの酢酸塩、40mMのアルギニン、及び0.6%のグリセロール(pH5.3))、10μgのCG53135−05又は100μgのCG53135−05を2週間、1週間に3回ずつラットの関節内に注射した。
【0124】
研究の設計:0日目に体重293−325グラムの雄のルイスラットをハーラン・スプラーグ・ダウレイ(Harlan Sprague Dawley)インディアナ州インディアナポリス (Indianapolis、Indiana))から入手し、8日間馴化させた。ラットを、各々3匹の動物を含む3つの処置グループに分けた。2つのグループはCG53135を、1つのグループはビヒクル対照のみを受けた。ラットをイソフルランで麻酔し、両膝の十字付着の部域内に膝蓋腱を通して注射した。CG53135は、0.1mg/ml(関節1つあたり0.01mg)又は1.0mg/ml(関節1つあたり0.1mg)の用量で注射した。上述の通りに、ビヒクル溶液を対照に注射した。注射は、2週間、月、水及び金曜日に行なった。15日目に動物を処分し、その時点で、増殖中の細胞をパルス標識するべくBRDU(100mg/kg)を腹腔内に注射した。
【0125】
病変マーカーの観察及び分析
相対的観察。異常な膨れ又は歩行変化について毎日ラットを観察し、毎週体重測定した。
【0126】
組織病理学的に保存し脱灰した(5%蟻酸)膝を2つのおおよそ等しい長手方向(足首)又は前方(膝)半分へとトリミングし、段階アルコール及び清浄剤を通して処理し、浸潤させてパラフィン内に包埋し、切断し、トルイジンブルー(膝)で染色した。以下で列挙する問題のパラメータに注意しながら、右膝の多数の切片(3レベル)を顕微鏡で分析した。各パラメータを正常、最小、軽度、中度、高度又は重度として段階付けした。タンパク質の反復的注射により生成される改変のタイプを理由として、骨関節炎モデル内で一般的に用いられる評定基準よりもむしろ描写的パラメータを用いて軟骨の評価を行なった。動物は処分する前にBRDUの注射を受けたものの、増殖変化は、トルイジンブルーで染色した切片内に容易に見られた。
【0127】
結果
【表15】
【0128】
研究全体を通して、生存段階パラメータ体重は、ビヒクル及びタンパク質を注射した動物のいずれにおいても類似していた(表12)。100μgのタンパク質を注射した膝は、3番目の注射で始まって注射プロセス中に臨床的に幾分かの線維症の証拠を有していた。
【0129】
形態学的病理ビヒクルの注射を受けたラットは、線維化した滑膜内のマトリックス被着が全く乃至は最小限しかない状態で、最小乃至は軽度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、いかなるプロテオグリカン損失もフィブリル化も有していなかった。十字が付着しその中に関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、全く乃至は最小限の線維増殖及び軟骨/骨損傷しか有していなかった。いかなる辺縁軟骨形成も存在しなかった。
【0130】
10μgのCG53135−05の注射を受けた膝は、線維化した滑膜内のマトリックス被着が最小限乃至は中度ある状態で、最小限乃至は中度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、いかなるプロテオグリカンの損失もフィブリル化も有していなかった。十字が付着しその中に関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、全く乃至は最小限の線維増殖及び軟骨/骨損傷しか有していなかった。1つの膝は、辺縁帯の最小限の軟骨形成を有していた。
【0131】
100μgのCG53135−05の注射を受けた膝は、線維化した滑膜内に中度のマトリックス被着ある状態で、中度乃至は高度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、全く乃至は最小限しかプロテオグリカンの損失又はフィブリル化を有していなかった。十字が付着し中で関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、最小限乃至は高度の線維増殖及び軟骨/骨損傷を有していた。全ての膝は、軽度乃至中度の辺縁帯軟骨形成を有していた。1匹の動物は、関節軟骨に結びつけられた部域内に軟骨形成を有していた。
【0132】
結論
これらの結果はCG53135−05の反復的関節内注射が滑膜線維増殖を誘発することを実証している。ビヒクル注射は結果として軽度の炎症及び線維増殖をもたらし、かくして、このビヒクルが幾分かの刺激性潜在能力をもつことを示唆した。タンパク質の注射を受けた動物において、滑膜増殖性応答の濃度応答性増加と辺縁帯軟骨成分が発生した。注射が行なわれた十字付着の部域は、それ自体滑膜炎症と同様にタンパク質の濃度増加に伴って重症度が増大する骨再吸収及び線維増殖の部域を有していた。観察された滑膜線維増殖及び骨再吸収の潜在的に不利な効果は、タンパク質を処方するのに使用された非臨床等級のヒアルロン酸内部のFGF−20活性又は内毒素レベルのいずれかに起因するものであったと考えられる。さらに関節内の炎症は骨再吸収及び辺縁帯軟骨形成を誘発し得、従ってこれらの結果は、タンパク質注射に対する炎症性応答が増殖性応答に貢献した可能性に照らし合わせて解釈される必要がある。増殖性変化及び軟骨形成の形態学的外見は、明らかに、このタンパク質(CG53135−05)の生物活性が応答を生成する上で重要であることを示している。
【0133】
本書で報告されている実験の結果は、CG53135−05の反復的な関節内注射が滑膜線維増殖及び軟骨形成を誘発することを示している。
【0134】
5.7. 実施例7:ラット骨関節炎の半月板裂傷モデルにおけるCG53135−05の関節内注射:予防及び治療的投薬
実施例6は、組織形態計測解析により関連する細胞集団に対する効果を同定するため、正常なラットの関節内へのCG53135−05の投与を利用した。関節1つあたり100μgの用量で、CG53135−05は、TGF−ベータといったようなその他の成長因子で見られるものに類似した有意な辺縁帯軟骨形成を誘発し、辺縁帯内部での多能性幹細胞に対する効果を示唆した。関節の成熟軟骨部域内の応答の欠如により証明されるように、成熟軟骨細胞に対する明らかな効果は全く存在しなかった。観察された滑膜線維増殖及び骨再吸収の潜在的に不利な効果は、タンパク質を処方するのに使用された非臨床的等級のヒアルロン酸内部のFGF−20活性又は内毒素レベルのいずれかに起因するものであったと考えられる。
【0135】
実施された骨関節炎の動物におけるさらなる研究は、以下のことに関するものであった。1)抗炎症薬との相乗効果(骨関節炎患者についての標準的アプローチ)、2)CG53135−05(FGF−20)が関節軟骨層の機能的修復又は保護を誘発できるか否か及び3)滑膜線維増殖及び骨再吸収がFGF−20誘発されたか又は処方内部の汚染性内毒素に起因するものであったか。
【0136】
かくしてこの研究の1つの側面は、ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内の骨関節炎における関節損傷に対するCG53135−05の関節内注射の保護的及び治療的効果を評価することにあった。OAのこの比較的新しいモデルは、その他の種における突発的疾病及び外科手術によって誘発された疾病において発生する変化に似た軟骨変性及び骨棘形成の形態的改変を有することが示されてきた(ベンデーレ(Bendele)A.M.、変形性関節症の動物モデル(Animal Models of Osteoarthritis)、J.Musculoskel.Neuron Interact.2001;1:363−376、ベンデーレ(Bendele)A.M.及びハルマン(Hulman)J.F.、テンジクネズミにおける突発性軟骨変性(Spontaneous cartilage degeneration in guinea pigs)、関節炎とリューマチ(Arthritis Rheum)、1988;31:561−565)。該モデルは、抗変性ならびに再生療法の潜在的に有益な効果を評価するために使用することができる。
【0137】
実験的設計
おり1個に2匹の割合で収容した動物(1グループにつき10匹)をイソフルランで麻酔し、右膝部域を外科手術のために前処理した。膝の内側面全体にわたり皮膚切開を行ない、鈍的切開により内側側副靭帯を露出させ、次に離断させた。内側半月を次に細いハサミで内側対称移動させ、完全な裂傷をシミュレートするべく全厚みにわたりカットを行なった。皮膚を縫合により閉じた。
【0138】
予防的投薬:外科手術の日に右膝関節の関節内投薬(CG53135−05)を開始し、ラットがイソフルラン麻酔下にある状態で、外科手術後2週間にわたり木曜、土曜及び月曜(0、2、4、7、9及び11日目)に関節内注射することによってこれを継続した。非ステロイド系抗炎症薬であるインドメタシンを、外科手術の日から始めて経口経路で毎日投薬(1mg/kg/日)して、注射に起因するあらゆる潜在的炎症を低減させた。0日、7日及び14日目に体重を記録した。外科手術から14日目に動物を処分した後、両方の膝を組織病理的評価のために収集した。研究設計は、表10に示されている。
【0139】
【表16】
a 毎週3回で2週間の投与(100μg/関節、関節内)
b 毎日で、2週間の投与(0.5mg/kg、PO)
【0140】
治療的投薬:外科手術から21日目に右膝関節の関節内投薬(CG53135−05)を開始し、ラットがイソフルラン麻酔下にある状態で、2週間にわたり金曜、日曜及び火曜(22、25、27、29、32、及び34日目)に関節内注射することによってこれを継続する。インドメタシンを、外科手術の日から始めて経口経路で毎日投薬する。0日、7日、14日、21日、28日及び35日目に体重を記録する。35日目に両方の膝を組織病理的評価のために収集する。研究設計は、表11に示されている。
【0141】
【表17】
a 毎週3回で2週間の投与(100μg/関節、関節内)
b 毎日で、2週間の投与(0.5mg/kg、PO)
【0142】
予防的投薬研究の結果:行なわれた観察には、このモデルのために従った標準が含まれている。右膝の多数の切片(3レベル)を顕微鏡により分析し、以下の方法に従って評定した。3つの切片を評定するにあたっては、3つのレベルを表わす3枚のスライドの各々の上の2個の半分について最悪の場合の筋書きを、軟骨の変性及び骨棘の形成について判定した。各スライドについての各パラメータのこの値を次に平均して、脛骨及び大腿骨についての全体的な主観的軟骨変性評点及び脛骨についての骨棘評点を決定した。
【0143】
以下の基準を用いて深さ及び面積(表面積を3分したもの)について無から重度(数値で0〜5)の評点で軟骨変性を評定した。
0=変性無し
1=表面ゾーンが関与するフィブリル化を伴う又は伴わない、最低限の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失
2=上3分の1が関与するフィブリル化を伴うか又は伴わない軽度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカンの損失
3=フィブリル化が中央ゾーン内に充分拡がり一般に全軟骨厚みの1/2に影響を与えている、中度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失。
4=完全なマトリックス損失(最高到達点まで)は無いが、フィブリル化が深層ゾーン内へ充分に拡がっている状態の、高度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失、
5=重度の変性、最高到達点までのマトリックス損失。
【0144】
この評定方法においては、ゾーン(外側、中央、内側の3分の1)に対する厳密な注意を遵守した。合計評点は、脛骨変性の重症度の包括的合計を反映している。
【0145】
軟骨変性のこの全体的な主観的分析に加えて、脛骨プラトーを横断しての特定の領域的差異に注意を払いながら、変性重症度を評価するため類似の基準を用いて付加的な主観的評価を行なった。このOAモデルでは、一般に、外科手術後3週間までに病巣が往々にして最高到達点まで拡がっている状態で、脛骨の外側1/3が半月板裂傷傷害を最も重症で患っている。中央の1/3は、通常、重度又は高度の変化が中度又は軽度になる遷移ゾーンであり、内部の1/3は、軽度又は最小限よりも大きい変化を有している。外側1/3の重度病巣対中間1/3及び内側1/3のより軽度の病巣について潜在的な治療の差異を判定しようとして、これらの領域を各々別々に評定した。領域の値の合計を計算し、3つのゾーンの合計として表現した。
【0146】
上述の主観的評定に加えて、表面を横断して接線層及び下にある軟骨が組織学的に正常に見える点に至るまでの隣接する軟骨変性(外側1/3)に伴っていかなる骨棘も存在しなかった場合、骨棘又は辺縁帯の起点から拡がるあらゆる重症度の変性を患う脛骨プラトーの全範囲のマイクロメートル測定(全脛骨軟骨変性幅μm)が行われた。
【0147】
付加的な測定(有意な軟骨変性幅μm)は、軟骨細胞及びマトリックスの損失が軟骨厚みの50%超にわたって拡がっていた脛骨軟骨変性の部域を反映していた。
【0148】
最後に、変化した部域の深さと最高到達点までの深さの比率として表わされたあらゆるタイプの病巣のマイクロメートル深さ(細胞/プロテオグリカン損失、メタクロマジア変化、ただしコラーゲンマトリックスの優れた保持を有しフィブリル化は無いかもしれない)が含み入れられ、脛骨表面上の4つの等間隔の点全体にわたって取られた。これらの測定は(No.1)骨棘に隣接するマトリックス、(No.2)脛骨プラトーを横断する距離の1/4、(No.3)脛骨プラトーを横断する距離の1/2、(No.4)脛骨プラトーを横断する距離の3/4、のところで行われた。この測定は、存在するあらゆるタイプの顕微鏡的変化の最も重大な分析であった。最高到達点(分母)までの深さは同様に、脛骨プラトーを横断する軟骨厚みの標示をも提供し、従って、肥大又は過形成が発生したか否かを判定しようとする場合に、グループを横断した比較を可能にする。
【0149】
切片の非接線平面内の全体的厚みを最も良く表わすものと思われている部域内で各切片について単一の成長脛骨板測定を行なった。
【0150】
接眼マイクロメータを用いて、骨棘の評定及び小中大分類を行なった。
無=0、辺縁帯に測定可能な増殖性応答は全く存在しない。
小骨棘=1(最高299μm)
中骨棘=2(300〜399μm)
大骨棘=3(>400μm)
【0151】
評点(0−3)は全体的関節評点の中に含み入れられた。さらに、実際の骨棘測定(平均3つの切片について)のための平均±SEも同様に決定された。
【0152】
一般に、外科手術を行なう上で、半月板が大腿骨に向かって近位に対称移動する結果となる場所で側副靭帯を離断させる試みがなされた。その後、脛骨ではなく大腿骨に向かってハサミの先端を挿入することにより、カットを行なった。このとき大腿骨の顆状軟骨内で幾分かの機械的損傷を検出し得るものの、脛骨上には稀にしか見られず、かくして脛骨は軟骨保護の評価のための最も適切な部位となっている。
【0153】
大腿骨軟骨に対する物理的外傷の結果である可能性が高かったプロテオグリカン及び細胞損失の小さな焦点部域は記述されたものの、脛骨について記述された方法に従って主観的評点を受けるより大きくより広範な部域についての評点内には含み入れられなかった。これらのより大きい部域は、非外傷性変性とより強い一貫性をもっていた。大腿骨上に医原性病巣の可能性があるため、全体的関節評点は、大腿骨軟骨変性評点を伴うものと伴わないものの両方で表現された。
【0154】
以下の基準を用いて、石灰化された軟骨層と軟骨下骨に対する損傷を評定した。
0=変化無し
1=最高到達点における好塩基球増加症の増大:最高到達点の断片化又は骨髄変化無し。
2=最高到達点における好塩基性増加症の増大:最高到達点の石灰化軟骨の最小限乃至は軽度の断片化、骨髄内の間葉変化には合計部域の1/4が関与しているが、一般に病巣下の軟骨下領域に限定されている。
3=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の軽度乃至高度の断片化、骨髄中の間葉変化は合計部域の最高3/4であり、骨髄軟骨形成の部域は明白であり得るが、骨端骨内への関節軟骨の崩壊は全く無い。
4=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の高度乃至重度の断片化、骨髄間葉変化には最高3/4の部域が関与し、関節軟骨は、骨端内に最高到達点から250μm以下の深さまで崩壊していた。
5=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の高度乃至重度の断片化、骨髄間葉変化には最高3/4の部域が関与し、間節軟骨は、骨端内に最高到達点から250μmを超える深さまで崩壊していた。
【0155】
滑膜炎、滑膜線維症、辺縁帯軟骨形成、骨再吸収、軟骨形成/既存軟骨への取込みを伴うか又は伴わない線維性発育過度の度合について記述的コメントがなされた。
【0156】
統計的分析:組織病理学的パラメータの統計的分析が、有意性がP≦0.05に設定された状態でスチューデント両側t−検定を用いて、グループ平均を比較することによって行なわれた。データの性格のため、評定されたパラメータを分析するのに、非パラメトリックANOVA(クラスカル・ウォリス(Kruskal Wallis)検定を使用し、測定値を分析するのにパラメトリックANOVAを使用した。使用された適切な事後試験は、パラメトリックデータについてのダネット多重比較検定であり、非パラメータデータについてはダン検定が用いられた。有意性は、全てのパラメータについてP≦0.05に設定された。
【0157】
結果:同時インドメタシン投与を伴う又は伴わない100μgのCG53135−05の間節内注射は、中間1/3上で脛骨軟骨変性の有意な阻害(39%)(ゾーン1については40〜43%)、そして41%という合計3ゾーンの全体的に有意でない阻害を結果としてもたらした(図12)。合計軟骨変性幅は有意に35〜37%減少し(図13)、有意な変性は70〜89%減少し、この阻害はタンパク質及びインドメタシン処理したグループ内でのみ有意である(図14)。
【0158】
予防的投薬研究の結果:記述されたデータは、内側半月裂傷を伴うラットの膝関節の中に100μgのCG53135−05を関節内投与すると、軟骨変性の阻害と軟骨修復の刺激の両方の結果としての軟骨保護効果がもたらされるということを示している。一部の関節は、既存の正常とみえる又は損傷した軟骨全体にわたる増殖した新しい軟骨の層状化を有していた。この観察事実は、それが表面再建の発生の可能性を実証することから、特に興味深いものである。
【0159】
これらの有益な効果はつねに、広汎性滑膜線維増殖、骨再吸収及び滑膜炎の増加と結びついていた。同時インドメタシン処置(1mg/kg/日)は、シンビスク(Synvisc)単独の注射を受けた膝における疾病プロセス又はタンパク質を含有するシンビスクの注射を受けた膝におけるタンパク質に対する反応及び疾病プロセスに対して、何らかの効果があったにせよ、それは最小限のものであった。この供述に対する単一の例外は、タンパク質及びビヒクルpoで処置されたグループを除いて全てのグループが類似の測定値を有していた骨棘測定についてのデータの中に反映されている。前記グループは、より大きい測定値を有し、かくして、炎症のある関節においては、普通の出来事であるより大きい辺縁帯刺激を示唆していた。
【0160】
このタンパク質100μgの注射により誘発された形態学的変化は、軟骨修復プロセスにおいてCG53135−05が有効である可能性を実証している。それは、軟骨への分化を伴う線維組織の増殖と、重要なことにその新しく増殖した組織の組込みを誘発する能力を有している。増殖性プロセスは、辺縁帯及び軟骨下骨といったような部域内では幾分かまとまりがなく反生産的である。しかしながら、ゲッ歯類は、炎症性媒介を含むさまざまな刺激から辺縁帯、骨膜及び骨髄の増殖を示すはるかに大きな傾向を確実に有しており、そのためラットにおいて見られる過度の及び反生産的な応答の一部分は、イヌ又は霊長類では起こらない可能性がある。同様に、抗体応答のいくらかの誘発が存在し、かくして抗体応答をもたなかったヒト又はその他の動物においては発生しないと思われる膝の炎症の増強が導かれた可能性がある。
【0161】
骨関節炎におけるCG53135−05の潜在的効能を描写する上で有用な付加的な研究としては、以下のものが含まれる。
【0162】
1. OAのイヌモデルにおける評価−これはヒトにより類似している軟骨及び骨の構造を伴うより大きい関節の中で評価を可能にすると思われ、これは、ゲッ歯類において発生するものといったような超増殖性応答を示す傾向が比較的低い種である。
【0163】
2. 可能な場合にはより攻撃的な抗炎症性全身的療法及びそれに続く新しい組織がいかにリモデリングするかを見るための回復期間を伴う、3〜4週間の関節内注射の評価が有利であると思われる。さらなる増殖性刺激が全く無い状態で関節をリモデリングさせることが、より好ましい形態学的評価項目という結果をもたらすことになるかもしれない。リモデリング期間を伴う処置サイクルは、最も満足のいく修復を達成する方法であるかもしれない。これらのような研究は、同様に、修復組織が長期間持ちこたえるか否かの問題にも答えることになるだろう。一般に、線維軟骨はこれを行なう傾向が少ない。
【0164】
結果:同時経口インドメタシン投与を伴う又は伴わない100μgのCG53135−05の関節内注射は、脛骨軟骨変性評点の有意な阻害を結果としてもたらさなかった(図15)。合計又は有意軟骨変性幅は減少しなかった(図16、17)。
【0165】
治療的投薬研究の結果:記述されたデータは、関節内投与されたCG53135−05の潜在的軟骨増殖的活性を実証した。しかしながら、タンパク質を注射した関節は著しく増大した炎症、線維増殖及び結合組織再吸収プロセスを有していた。
【0166】
予防的投薬と治療的投薬の間の最も重要な差異は、投薬開始時点におけるOA病巣の性質であった。治療的投薬研究におけるラットは、軟骨の外側乃至中間の1/3において重度のマトリックス損失の部域を有し、かくして石灰化軟骨/軟骨下骨をタンパク質に暴露した。かくして有効な修復には、辺縁帯又は暴露された骨髄多能性(pleuripotential)細胞に由来する新たに増殖した組織でこの欠陥を充填することが必要であった。予防的投薬研究においては、有益な効果には、マトリックス分解の阻害及び辺縁帯のみに由来する修復組織での変性足場上の修復の刺激が必要であった。欠陥の充填は損傷を受けた足場の修復よりもはるかにむずかしいと思われることから、有益な効果を得るためには治療的モデルにおいてより長い処置時間が必要となるかもしれない。
【0167】
インドメタシン処置は、炎症変化を削減する上で有効ではなく、骨の中で発生しつつある再吸収プロセスを阻害する上でも有益な効果を全くもたなかった。炎症及び組織破壊が無い状態で軟骨への有効な増殖及び分化を達成するために、治療的投薬研究に対する以下の修正を試みることができる。すなわち、投薬間隔を週1回又は2回まで増大させること及び/又は増殖性組織がこの疾病プロセスによって誘発された大きな軟骨欠陥を充填することのできる時間を与えるべく研究の持続時間を延長すること、である。イヌはゲッ歯類に比べてさまざまな刺激に応えて結合組織を増殖させ骨を再吸収する傾向が少ないことから、イヌといったようなより大きい種においてCG53135−05の効果を調査することが、もう1つの可能性である。
【0168】
本書で詳述されている結果(予防的及び治療的の両方の投薬研究)は、CG53135−05が、関節置換術を目的とした重度の骨関節炎を患う関節において特に有用であることを示している。これらのタイプの作用物質は、わずかしか又は全く正常な軟骨が残っておらず表面再建を必要とする関節内に注射されることになる。この状況下では、修復は、辺縁帯又は骨髄内の多能性細胞を源とする可能性がある。これらの場所を出発点とする修復は、ヒアリン軟骨よりもむしろ線維軟骨の産生を結果としてもたらす確率が高くなる。しかしながら、一部の軟骨は、全く軟骨が無いよりは好ましいと思われ、修復を持続させるために経時的に治療をくり返さなくてはならない確率が高いとしても、軟骨表面を維持する注射可能な方法が受容可能であるかもしれない。注射用同化剤での処置には、持続性能動的耐負荷運動よりもむしろ連続的な受動的運動と併用した或る種の周期的プロセスが必要となる確率が高い。
【0169】
6. 等価物及び引用参考文献
本書で引用されている全ての参考文献は、各々個々の刊行物又は特許又は特許出願が全ての目的で全体として参考により援用されるべく特定的かつ個別に指示された場合と同じ程度で、全ての目的で全体が本明細書に参照により援用されている。
【0170】
当業者にとっては明白となるように、本発明の数多くの修正及び変更を、その精神及び範囲から逸脱することなく加えることが可能である。本書中に記述されている特定の実施形態は、例示のみを目的として提供されている。従って、本発明者らはここで記されている精確な用語に限定されることを望む者ではなく、本発明をさまざまな用途及び条件に適合させるために行なうことのできるような変化及び改変を利用できることを望む者である。かかる改変及び変化には、対象に対する本発明に従ったポリペプチドの投与のための異なる組成物;異なるポリペプチド量;異なる投与回数及び投与手段;例えば異なるペプチドの組合せ又は異なる生物学的に活性な化合物とペプチドの組合せを含む投与用量内に含まれる異なる材料が含まれるが、これらに限定されるわけではない。かかる変化及び改変は同様に、かかる変化がポリペプチドの機能性を変更せず、対象に投与すべき組成物中のペプチドの可溶性、身体によるペプチドの吸収、保管寿命中の又は体内でペプチドの生物学的活動が所望の効果をもたらすことのできる時までのポリペプチドの保護及びこのような類似の修飾を変更するような形で配列を改変する、本書中で記述されている特定のポリペプチドのアミノ酸配列中の修飾を含むように意図されている。従ってかかる変化及び改変は、本発明の等価物の全範囲内に入るものとして適切に意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】CG53135−05の液体クロマトグラフィ及び質量分析法を示す。CG53135−05は、95%の水、5%のアセトニトリル及び0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する水系移動相中のフェニル−ヘキシルカラム上に注入された。その後タンパク質を、95%のアセトニトリル、5%の水、及び0.085%のトリフルオロ酢酸を含有する有機移動相での非線形勾配を用いることによって溶出させた。4つのピークの各々は、LC/ESI/MS、MALDI−TOF MS及びN−末端アミノ酸配列決定を用いて特徴づけした。
【図2A】CG53135−05のペプチドマップを表わす。各図版内の上部のトレースは、CG53135−05のペプチドマップを表し、各図版内の下部のトレースは、同様の要領で、ただしCG53135−05無しで処置された同一の試料を表わしている。CG53135ペプチドを監視するための214nmでの検出。
【図2B】CG53135−05のペプチドマップを表わす。各図版内の上部のトレースは、CG53135−05のペプチドマップを表し、各図版内の下部のトレースは、同様の要領で、ただしCG53135−05無しで処置された同一の試料を表わしている。トリプトファン含有ペプチドを監視するための295nmでの検出。
【図3】CG53135のレセプタ結合特異性を示す。NIH3T3細胞を血清欠乏させ、指示された因子(緑色正方形=血小板由来の成長因子;青色三角形=FGF−1;赤色円=CG53135)を単独で又は指示された可溶性FGFRと共に用いてインキュベートし、CG53135に応答するDNA合成をBrdU取込み検定の中で測定した。データの点数は、トリプリケートウェルから得た平均を表わし、因子を単独で受ける細胞に関するBrdU取込みパーセントとして表わされている。
【図4】前肢置き直し試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図5】後肢置き直し試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図6】ボディスイング試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。右方への約50%の揺動の評点範囲は、いかなる機能障害も無いことを表し、一方右方への0%揺動は最大の機能障害を表す。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図7】シリンダ試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。
【図8】体重試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて体重の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。
【図9】IL−1ベータの存在下でのSW1353細胞中のPro−MMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図10】TNF−アルファの存在下でのSW1353細胞中のPro−MMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図11】SW1353細胞内のTIMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図12】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の効果(予防的投薬)対内側脛骨軟骨変性の関係を示す。
【図13】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果:(予防的投薬)対全軟骨変性幅の関係を示す。
【図14】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果:(予防的投薬)対有意な脛骨軟骨変性幅の関係を示す。
【図15】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対内側脛骨変性の関係を示す。
【図16】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対全軟骨変性幅の関係を示す。
【図17】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対有意な脛骨軟骨変性幅の関係を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、全体が本明細書に参考により援用されている2003年5月9日付けの米国仮出願第60/469,353号明細書の利益を請求している。
【0002】
技術分野
本発明は、卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチ)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)さまざまな症状の治療用の組成物及び方法に関する。より詳細には、本発明は、線維芽細胞成長因子ファミリーの成員、FGF−CX(CG53135−05又はFGF−20としても知られている)、その関連ポリペプチド、かかるポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、及び卒中、創傷治ゆ及び関節疾患(例えば骨関節炎及び関節リウマチといった(ただしこれらに限定されるわけではない)症状を治療するためのそれらの使用に関する。
【0003】
背景技術
その原型的成員として酸性FGF(FGF−1)及び塩基性FGF(FGF−2)が含まれるFGFタンパク質ファミリーは、4つの関連するレセプタチロシンキナーゼに結合する。これらのFGFレセプタは、組織培養中の細胞の大部分のタイプの中で発現される。リガンド結合時点でのFGFレセプタ単量体の2量体化が、レセプタトランスリン酸化反応を導くキナーゼドメインの活性化にとっての1つの必要条件であることが報告されてきた。4つのFGFレセプタの中で最も広い発現パターンを示すFGFレセプタ−1(FGFR−1)は少なくとも7つのチロシンリン酸化反応部位を含んでいる。これらのリン酸化反応部位に対し異なる親和力で結合することによって数多くのシグナル変換分子が影響を受ける。
【0004】
周産期の及び成体のマウスの脳内におけるFGF及びそのレセプタの発現が調査されてきた。FGF−4を除いて全てのFGF遺伝子のメッセンジャRNAがこれらの組織内で検出され、FGF−3、FGF−6、FGF−7及びFGF−8遺伝子が、出生後期よりも後期胚形成期においてさらに高い発現を示し、これらの成員が脳の発達の後期に関与していることを示唆している。これとは対照的に、FGF−1及びFGF−5の発現は、出生後に増大した。特に、周産期マウスにおけるFGF−6の発現は、中枢神経系及び骨格筋に限定されており、生後5日目の新生児の小脳を除き胚内の発達中の大脳において強力なシグナルを伴うことが報告されてきた。FGF−6の同族レセプタであるFGF−レセプタ−(FGFR)−4は、類似の時空的発現を示し、FGF−6R及びFGFR−4が、リガンド−レセプタ系として神経系の成熟において有意な役割を果たすことを示唆している。オザワ(Ozawa)らによると、これらの結果はさまざまなFGF及びそのレセプタが、ニューロン前駆細胞の増殖及び遊走、ニューロン及びグリア分化、神経突起拡張及びシナプス形成といったような脳のさまざまな発達プロセスの調節に関与するということを強く示唆している。例えばオザワ(Ozawa)ら、脳研究、分子的脳研究(Brain Res.Mol.Brain Res.)1996、41(1−2):279−88を参照のこと。
【0005】
FGFポリペプチドファミリーのその他の成員としては、FGFレセプタチロシンキナーゼ(FGFRTK)ファミリー及びFGFレセプタヘパラン硫酸プロチオグリカン(FGFRHS)ファミリーが含まれている。これらの成員は、活性でかつ特異的なFGFRシグナル変換複合体を調節するように相互作用する。これらの調節活性は、哺乳動物の体内で広範囲の器官及び組織全体を通して、かつ正常な組織と腫瘍組織の両方において多様化する。変異体サブドメインの調節された代替的メッセンジャRNA(mRNA)スプライシング及び組合せは、多種多様なFGFRTK単量体を発生させる。2価のカチオンがFGFRHSと協同してFGFRTKトランス−リン酸化反応を立体配座的に限定し、これがキナーゼ活性の不振をひき起こし、FGFによるFGFRの適切な活性化を容易にする。例えば、FGFRTK内の異なる点突然変異が一般に全FGFR複合体のFGF非依存性活性の段階的増大による段階的重度の頭がい顔面及び骨格の異常をひき起こすことがわかっている。FGFファミリーが重大な効果を及ぼすその他のプロセスとしては、肝臓の成長及び機能、及び前立腺腫瘍の進行がある。
【0006】
もう1つのFGFファミリー成員であるグリア活性化因子(GAF)は、ヒトグリオーマ細胞系列の培養上清から精製されたヘパリン結合成長因子である。ミヤモト(Miyamoto)ら、1993、分子細胞生物学(Mol.Cell.Biol.)13(7):4251−4259を参照のこと。GAFは、その他の既知の成長因子のものとはわずかに異なる活性スペクトルを示し、FGF−9と呼称される。ヒトFGF−9cDNAは、208個のアミノ酸のポリペプチドをコードする。FGFファミリーのその他の成員との配列類似性は、30%前後と推定された。その他のファミリー成員内で発見された2つのシステイン残基及びその他のコンセンサス配列は、FGF−9配列内でも充分保存されていた。FGF−9は、酸性FGF及び塩基性FGF内のものと同様、そのN末端にいかなる標準的シグナル配列ももたないことがわかった。酸性FGF及び塩基性FGFは、細胞から従来の要領では分泌されないものとして知られている。しかしながら、FGF−9は、標準的シグナル配列の欠如にもかかわらずcDNAでトランスフェクトされたCOS細胞から効率良く分泌されることがわかった。それは、細胞の培地内でのみ専ら検出できた。分泌されたタンパク質は、開始メチオニンを除いて、cDNA配列によって予測されるものに比べてN末端でいかなるアミノ酸残基も欠如していなかった。ラットのFGF−9cDNAも同じくクローニングされ、構造分析はFGF−9遺伝子が高度に保存されていることを示した。
【0007】
FGFは、ニューロンの萌芽を誘発することが示されてきた。米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.)1997、94(15):8179−84を参照のこと。カワマタ(Kawamata)ら、脳血流及び代謝ジャーナル(Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism)、16:542−547、1996は、18kDaで154アミノ酸の長さのポリペプチドである塩基性FGFが多種多様な脳ニューロンの生存及び増生を支持するということを提案した。米国特許出願第2002/0151496A1号明細書は、FGF−20が神経栄養性因子であり、ニューロン由来の細胞の生存を刺激することを示唆している。
【0008】
2.1. 炎症:骨関節炎及び関節リウマチ
骨関節炎(「OA」)は、退行変性関節疾患であり、広範かつ増大する集団が罹患している関節痛の原因となることが多い。OAは、成人における身体障害の最も一般的な原因であると推定されている。該疾患は標準的に、20代〜30代で現われ、40代を超える大部分の人が体重支持関節の病的変化を幾分か示すものの、変化は無症候であり得る。英国における55才を超える人々についての膝のOAの発生率及び有病率の系統的な再調査は、一年に25パーセントの発生率、10パーセントの身体障害有病率及び約2〜3パーセントの重症身体障害を報告した。The National Health and Nutrition Examination Survey (Center for Health Statistics, Centers for Disease Control and Prevention)は、この疾病の有病率が、25才〜34才では0.1パーセント未満であったのに対し、55才を超える人々においては80パーセントを上回ることを発見した。OAは、関節無欠性、遺伝的特徴、局所的炎症、機械力及び細胞及び生化学プロセスを含めた多数の因子の複雑な相互作用の結果である。該疾病に特徴的な特長は、関節軟骨の劣化、周縁部での骨の肥大及び標準的に関節の疼痛と剛化を伴う滑膜の変化である。大部分の患者について、OAは加齢、職業、外傷及び経時的な反復的で小さい損傷といったような1つ以上の因子に結びつけられる。OAの病態生理学的プロセスはほぼつねに進行性である。
【0009】
CG53135−05及びその変異体は、増殖を調節するFGFファミリーに属する(全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第10/174,394号明細書を参照のこと)。ヒトの体内でのFGF20様のタンパク質、CG53135−01をコードする遺伝子内の多型(CG53135−12)の同定及びOAについての遺伝的リスク改変因子のキャリヤである個体を同定する方法が、全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第10/702,126号明細書(「’126出願」)の中で記述されてきた。’126出願は、OA及び結果としての筋骨格合併症のリスクが増加した個体を同定するためのDNAベースの診断試験について記述している。
【0010】
OAの充分に立証済みの治療様式は、非薬学的な介入から薬学的介入に至るまで複数存在している。非薬学的介入としては、行動修正、減量、運動、歩行補助、悪化させる活動の回避ならびに関節洗浄及び関節鏡視下手術及び外科手術がある。現行の薬学的介入としては、非ステロイド系抗炎症薬、関節内注射によるコルチコステロイド及びコルヒチンがある。さらに、FGF−18は、OA用のラット半月板裂傷モデルにおいて損傷した軟骨を修復することが示されてきた(論文第0199号、整形外科研究会第50回年次総会(50th Annual Meeting of the Orthopaedic Research Society)、カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco CA)、2004)を参照のこと)。
【0011】
しかしながら、既存の治療法は、疾病の発生率又は重症度を抑えるのに成功していないことから、OAの満足のいく治療は、また満たされていない医療上のニーズである。従って、骨関節炎をうまく治療できる治療法は、観血的外科手術、身体障害及び補足的な介助サービスに付随するコスト中何百万ドルもの金額を健康医療制度に潜在的に節約させる一方で罹患率を減少させるという有利な効果を有する。
【0012】
本明細書中の引用又は論述は、それが本発明に対する先行技術であるということの是認としてみなされるべきものではない。
【0013】
発明の開示
本発明は、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質に対して相同性をもつFGF−CXポリペプチドを、それを必要としている対象に投与することを含む、疾病(例えば卒中、関節疾患及び外傷)を予防又は治療する方法を提供する。本発明は同様に、FGF−CXポリヌクレオチド配列及びこれらの核酸配列によりコードされるFGF−CXポリペプチド及びそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体をも包含する。
【0014】
本発明に従うと、予防又は治療すべき疾病としては、関節疾患(限定的な意味のない例は、関節炎、骨関節炎、関節病変、靭帯及び腱の損傷及び半月板損傷である)、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(限定的な意味のない例はアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病である)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
1つの態様においては、該発明は、FGF−CXポリペプチドをコードする単離されたFGF−CX核酸(表Aに示されている通りの配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35)又はそのフラグメント、相同体、類似体又は誘導体を包含する。該核酸には、表Aのアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36)を含むポリペプチドと少なくとも85%の同一性をもつポリペプチドをコードする核酸配列が含まれ得るがこれらに限定されるわけではない。該発明は、同様に、配列番号37、38、39、40を含むCG5313−05(配列番号2)のタンパク質開裂の結果としてもたらされるポリペプチドをも包含する。該核酸は、ゲノムDNAフラグメント及びcDNA分子であり得るがこれらに限定されるわけではない。
【0016】
本発明は同様に、本書に記述されている核酸のうちの1つ以上のものを含有するベクター、及び本書で記述されるベクター又は核酸を含有する細胞をも包含する。
【0017】
本発明はさらに、上述の核酸分子のいずれかを含む組換え型発現ベクターで形質転換された宿主細胞を包含する。
【0018】
一実施形態においては、該発明は、FGF−CX核酸及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。もう1つの実施形態においては、該発明は、実質的に精製されたFGF−CXポリペプチド、例えばFGF−CX核酸によりコードされたFGF−CXポリペプチドのいずれか及びそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体を提供する。該発明は同様に、FGF−CXポリペプチド及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物をも提供する。
【0019】
もう1つの実施形態においては、該発明は、FGF−CXポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。該抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体又はそのフラグメント、相同体、類似体及び誘導体であり得るがこれらに限定されるわけではない。該発明は同様にFGF−CX抗体及び薬学的に受容可能な担体を含む医薬組成物をも提供する。該発明は同様に、上述に核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチド上のエピトープに結合する単離された抗体をも包含する。
【0020】
本発明はさらに、上述の核酸分子のいずれによってコードされるポリペプチドに結合する抗体及び負の対照抗体を含むキットを提供している。
【0021】
該発明は、FGF−CXポリペプチドを産生するための方法を包含する。該方法は、例えばFGF−CX核酸を含むベクターといったFGF−CX核酸を含有する細胞を提供すること、及び核酸によりコードされるFGF−CXポリペプチドを発現するのに充分な条件下で細胞を培養することを含む。該発現されたFGF−CXポリペプチドは、次に細胞から回収される。好ましくは、該細胞は内因性FGF−CXポリペプチドをほとんど又は全く産生しない。該細胞は、例えば、原核細胞又は真核細胞であり得る。
【0022】
本発明は、免疫応答を誘発するのに充分な量のポリペプチドを哺乳動物に投与することによって以上で開示した核酸分子のいずれかによりコードされるポリペプチドに対する対象の中での免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0023】
本発明は同様に、FGF−CXポリペプチドを1つの化合物と接触させ、その化合物がFGF−CXポリペプチドに結合するか否かを判定することによってFGF−CXポリペプチドに結合する化合物を同定する方法をも提供している。
【0024】
該発明は、該対象を骨関節炎にかかりやすくする傷害が発生しても軟骨を無傷にする、FGF−CXポリペプチドでの予防的処置を提供する。
【0025】
該発明は同様に、内在性又は外在性因子(それぞれ例えば遺伝的素因又は半月板損傷)が骨関節炎的変化及び軟骨損傷をひき起こした場合の、FGF−CXポリペプチドでの治療的処置をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、対象の体内の関節疾患(例えば、骨関節炎、その他の関連する関節病変、例えば限定的な意味なく、靭帯及び腱自体の内部又はそれぞれの挿入部位内の靭帯及び腱の傷害、半月板裂傷、マトリクス被着が発生するその他の関節障害、リモデリング及び修復が必要とされる関節障害及び炎症性疾患の結果として発生した軟骨及び関節病変(例えば関節リウマチ))を予防又は治療する方法において、該対象に対しFGF−CXポリペプチドを含む組成物を投与することを含む方法を提供している。
【0027】
本発明は同様に、ラットの体内での中大脳動脈(MCA)閉塞後の機能的回復を改善するべくFGF−CXを使用する方法をも包含している。卒中は、運動力及び運動神経、感覚分別、視覚機能、言語、記憶又はその他の知的能力の混乱を結果としてもたらす可能性があることから、本発明は、これらのパラメータを評価する1つのモデルにおいてFGF−CXの効能及び安全性を評価している。本発明に従うと、FGF−CXの投与は、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化性、ハンチントン病)を含む(ただしこれらに限定されるわけではない)病的条件の治療において有利なものとなる。
【0028】
FGF−CXポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、及びかかるポリペプチドを作る方法が、共に全体が本明細書に参考により援用されている米国特許出願第09/494,585号明細書及び同第10/174,394号明細書の中で記述されている。FGF−CXは「CG53185」、「CG53135−05」及び「FGF−20」といった語と互換的に使用される。
【0029】
該発明中に含まれているのは、FGF−CX核酸、FGF−CXポリペプチド又はその一部分をコードする単離された核酸、FGF−CXポリペプチド、これらの核酸を含有するベクター、FGF−CX核酸で形質転換された宿主細胞、抗FGF−CX抗体及び医薬組成物である。同様に開示されているのは、FGF−CXポリペプチドを作る方法ならびにこれらの化合物を用いて症状をスクリーニング、診断及び治療する方法、及びFGF−CXポリペプチド活性を変調させる化合物のスクリーニング方法である。表Aは、FGF−CX核酸及びそのコード化されたポリペプチドの要約を提供している。
【0030】
【表1】
【0031】
本書で使用されている該「対象」という用語は、動物好ましくは非霊長類(例えば乳牛、ブタ、馬、ネコ、イヌ、ラット及びマウス)及び霊長類(例えばカニクイザルなどのサル、チンパンジー及びヒト)を含む哺乳動物、より好ましくはヒトを意味する。いくつかの実施形態においては、該対象は、関節疾患(例えば骨関節炎、その他の骨関節炎関連障害)、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(非限定的な例はアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化性、ハンチントン病)を患う哺乳動物、好ましくはヒトである。もう1つの実施形態においては、該対象は、関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患のリスクのある哺乳動物、好ましくはヒトである。一実施形態においては、該対象は、関節疾患を患うものの卒中又は神経変性疾患は患っていない哺乳動物、好ましくはヒトである。該「対象」という用語は、本発明では「患者」と互換的に用いられる。
【0032】
本書で使用されるように、該「治療上有効な量」という用語は、疾病(例えば関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患)の重症度を低減させ、疾病の持続時間を削減し、疾病の進行を防ぎ、疾病の退行をひき起こし、疾病に付随する1つ以上の症候を改善するか又はもう1つの療法の治療効果を増強又は改善させるのに充分な療法(例えばFGF−CXポリペプチド)の量を意味する。
【0033】
FGF−CXを含む組成物は、疾病(例えば関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患)又はその1つ以上の症候を防止、治療又は改善するため1つ以上のその他の療法と組合せて投与することもできる。好ましい実施形態においては、FGF−CXを含む組成物は、関節疾患、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、又は神経変性疾患といった疾病又はその1つ以上の症候を防止、治療又は改善する上で使用されるものとして知られている1つ以上のその他の療法と組合わせて投与される。
【0034】
一実施形態においては、組合せ療法の間、FGF−CXポリペプチド及び/又はもう1つの療法は、例え当該技術分野において既知の方法により決定される通り、単独で投与された場合検出可能な治療上の利点を示さない量といった最適より少ない量で投与される。かかる方法においては、FGF−CXポリペプチドともう1つの療法の同時投与は結果として治療の有効性の全体的改善をもたらす。
【0035】
一実施形態においては、FGF−CXポリペプチド及び1つ以上のその他の療法は、患者の同一診察時に投与される。もう1つの実施形態において、FGF−CXポリペプチドは1つ以上のその他の療法の投与に先立って投与される。さらにもう1つの態様では、FGF−CXポリペプチドは1つ以上のその他の療法の投与の後に投与される。特定の一実施形態においては、FGF−CXポリペプチド及び1つ以上のその他の療法は、1人の対象に対し周期的に投与される。周期療法には、一定の期間のFGF−CXポリペプチドの投与とそれに続く一定期間の1つ以上のその他の療法の投与及びこの逐次的投与の反復が関与する。周期療法は、1つ以上の療法に対する耐性の発生を低減させ、療法の1つに付随する副作用を回避又は低減させかつ/又は治療の効能を改善することができる。
【0036】
該発明の組成物の毒性的及び治療的効能(例えばFGF−CXポリペプチド)は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療上有効である用量)を判定するための細胞培養又は実験動物内における、標準的な薬学的手順により判定可能である。毒性及び治療効果の間の該用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比として表わすことができる。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。毒性副作用を示す組成物も使用し得るが、感染を受けていない細胞に対する潜在的損傷を最小限におさえかくして副作用を低減させるため、感染を受けた組織の部位にかかる組成物をターゲティングする送達系を設計するよう配慮すべきである。
【0037】
1つの実施形態においては、細胞培養検定及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための一投薬量範囲を処方する上で使用することができる。複合体の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全く無いED50を含む一範囲の循環濃度内にある。該投薬量は、利用される剤形、利用される投与経路、疾病の重症度、対象の年令及び体重及び医療専門家(例えば医師)が通常考慮に入れるその他の因子に応じて、この範囲内で変動し得る。該発明の方法において使用されるあらゆる組成物について、最初に細胞培養検定から、治療上有効な用量を推定することができる。細胞培養中で判定される通りのIC50(すなわち症状の半最大阻害を達成するテスト化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデル内で1用量を処方することができる。かかる情報は、ヒトの体内での有用な用量をより正確に判定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば高性能液体クロマトグラフィによって測定することができる。[ここに好ましい投薬量範囲を挿入する]。
【0038】
化学療法剤、放射線療法及び生物剤/免疫療法剤例えばサイトカインといったような治療方法用の適切な及び推奨される投薬量、処方及び投与経路は当該技術分野において既知であり、医師用卓上参考書(Physician’s Desk Reference)(第58版、2004年)といったような文献において記述されている。
【0039】
さまざまな送達系が知られており、該発明の組成物を投与するために使用することができる。かかる送達系には、リポゾーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内への封入、組換え型細胞による発現、レセプタを媒介としたエンドサイトーシス、レトロウイルス又はその他のベクターなどの一部としての該発明の核酸の構築などが含まれるがこれらに限定されるわけではない。導入方法には、皮内、筋内、腹腔内、髄腔内、脳室内、硬膜外、静脈内、皮下、鼻腔内、腫瘍内、経皮、直腸内及び経口投与が含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明の組成物は、例えば輸液又はボーラス注入法、上皮層又は皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、膣粘膜、直腸及び腸粘膜など)を通した吸収などのあらゆる便利な経路によって投与され得、その他の生物学的に活性な作用物質と合わせて投与可能である。投与は全身的でも局所的でもあり得る。
【0040】
いくつかの実施形態においては、治療を必要とする部域に局所的に該発明の医薬組成物を投与することが望ましい可能性がある。これは、例えば外科手術中の局所的輸液によってか又は例えば外科手術後の創傷包帯剤と併用した局所施用によって、又は注入によって、又はカテーテル、坐薬又はインプラント(このインプラントは、シラスチック(sialastic)膜といった膜又は繊維を含む多孔質、非多孔質又はゼラチン様材料でできている)を用いて達成可能である。一実施形態においては、投与は、放射線、化学療法又は化学兵器といったような傷害に最も敏感な急速に増殖する組織の部位(又は元の部位)での直接的注射によるものであり得る。
【0041】
該発明の組成物が予防又は治療剤をコードする核酸であるいくつかの実施形態において、核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部として核酸を構築しそれが細胞内のものとなるような形で例えばレトロウイルスベクタの使用によってか又は直接注入によってか又は微粒子ボンバード(例えば遺伝子銃)の使用によってか又は脂質又は細胞表面レセプタ又はトランスフェクション剤でのコーティングによってそれを投与するか、又は核内などに進入するものとして知られているホメオボックス様のペプチドに対する連結においてそれを投与することによって、そのコードされたタンパク質(例えばFGF−CXポリペプチド)の発現を促進するべくインビボで投与することができる。代替的には、本発明の核酸は、相同的組換えにより、細胞内に導入され発現のため宿主細胞DNA内に取込まれ得る。
【0042】
該発明の組成物には、単位剤形の調製のために使用可能である医薬組成物の製造において有用なバルク製剤組成物が含まれる。好ましい実施形態においては、該発明の組成物は医薬組成物である。かかる組成物は、該発明の1つ以上の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)を予防上又は治療上有効な量と、薬学的に受容可能な担体を含んでいる。好ましくは、該医薬組成物は、対象に対する投与経路にとって適切であるように処方される。
【0043】
一実施形態においては、「薬学的に受容可能な」という語は、動物そしてより詳細にはヒトの体内で使用するため連邦又は州政府の管理機関により承認されているか又は、米国薬局方又はその他の一般的に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という語は、予防又は治療用作用物質と共に投与される希釈剤、アシュバント(例えばフロインドアシュバンド(完全及び不完全)、賦形剤又はビヒクルを意味する。かかる薬学的担体は、水又は油といった無菌液体(例えば、石油、動物、植物又は合成由来の油例えばピーナツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など)又は希釈剤、芳香剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤又はカプセル封入材料としても作用しうる1つ以上の物質といったような固体担体であり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好ましい担体である。食塩溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も同様に、特に注射剤のための液体担体としても利用可能である。適切な薬学賦形剤としては、でんぷん、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール又はその組合せが含まれるがこれらに限定されるわけではない。該組成物は、望まれる場合、少量の湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝剤をも含有し得る。
【0044】
本発明の組成物は、液状シロップ、錠剤、カプセル、ジェルカプセル、ソフトジェル、ピル、粉剤、浣腸剤、持続放出製剤などを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)数多くの考えられる剤形のいずれかの形に処方され得る。本発明の組成物は同様に、水性、非水性又は混合培地中の懸濁液としても処方可能である。水性懸濁液はさらに、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどを含む懸濁液の粘度を増大させる物質をさらに含有し得る。懸濁液は同様に安定化剤も含有し得る。組成物は同様に、トリグリセリドといった従来の結合剤及び担体と共に坐薬として処方することもできる。経口処方は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどといった標準的な担体を含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物は、発泡体として処方され使用されてよい。薬学的発泡体には、例えばエマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリー及びリポゾームといったような(ただしこれらに限定されるわけではない)処方が含まれる。性質的に基本的に類似しているものの、これらの処方は、最終生成物の成分及びコンシステンシーという点で異なっている。かかる組成物及び製剤の調製は、薬学及び処方技術の当業者にとっては一般に既知であり、本発明の組成物の処方に適用可能である。
【0046】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路と相容性のあるものとなるように処方されている。特定の実施形態においては、該組成物は、ヒトへの静脈内、皮下、筋内、経口、鼻腔内、腫瘍内又は局所投与に適合された医薬組成物として、規定通りの手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、該組成物は同様に、注入部位における痛みを和げるためリドカインといったような局所麻酔剤及び可溶化剤も含み得る。
【0047】
該発明の組成物を局所施用する場合には、該組成物を経皮性パッチ、軟こう、ローション、クリーム、ジェル、ドロップ、坐薬、スプレー、液体及び粉末の形で処方することができる。従来の薬学的担体、水性、粉末又は油性基剤、増粘剤などが必要であるか又は望ましい可能性がある。コーティングされたコンドーム、手袋なども有用であり得る。好ましい局所的処方には、該発明のポリペプチドが、脂質、リポゾーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤及び界面活性剤といった(ただしこれらに限定されるわけではない)局所送達剤との混和状態にある処方が含まれる。好ましい脂質及びリポゾームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルDOPEエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルコリンDMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)、マイナス(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロールDMPG)、及び陽イオン(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAP及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明のポリペプチドはリポゾーム内にカプセル封入されていてもよいし、或いは又リポゾーム特にカチオン性リポゾームに対する複合体を形成してもよい。代替的には、ポリペプチドは脂質特にカチオン脂質に対し複合体形成され得る。好ましい脂肪酸及びエステルには、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレイン酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、l−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリン、又はC1−10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリスタートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリド、又はその薬学的に受容可能な塩が含まれるがこれらに限定されるわけではない。非噴霧局所用剤形については、局所施用と相容性ある1つ以上の賦形剤又は担体を含み、好ましくは水より高い動的粘度を有する、粘性乃至半固体又は固体形態が標準的に利用される。その他の適切な局所的剤形としては、好ましくは固体又は液体不活性担体と組合せた形の活性成分が、加圧揮発性物質(例えばフレオンといったような気体高圧ガス)との混合物中又はスクイズボトル中に包装されている噴霧可能なエアゾル調製物が含まれる。所望の場合には、医薬組成物及び剤形に付して、保湿剤又は湿潤剤も添加することができる。かかる添加成分の例は、当該技術分野において周知である。
【0048】
該発明の方法に1つの組成物の鼻腔内投与が含まれている場合、該組成物は、エアゾル形態、スプレー、霧又は液滴の形で処方可能である。特に、本発明に従った使用のための予防又は治療剤は、適切な高圧ガス(例えばジクロロジフルオロロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他の適切な気体)を使用して、加圧パック又はネブライザからエアゾルスプレーの体裁で適切に送達され得る。加圧エアゾルの場合、投薬量単位は、計算された量を送達するためのバルブを具備することによって決定可能である。ラクトース又はでんぷんといったような適切な粉末と該化合物の粉末混合物を収納する、吸入器又は吸気器内で使用するための(例えばゼラチンで構成された)カプセル及びカートリッジを処方することが可能である。
【0049】
該発明の方法が経口投与を含む場合、組成物は、粉末、顆粒、微粒子、ナノ粒子、懸濁液又は水溶液又は非水性媒質中溶液、カプセル、ジェルカプセル、小袋、錠剤又はミニ錠剤の形で処方可能である。増粘剤、芳香剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤が望ましいかもしれない。錠剤又はカプセルは、結合剤(例えば、アルファー化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、又はヒドキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、又はシリカ);錠剤分割物質(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は湿潤剤(例えば、ラウリルリン酸ナトリウム)といった薬学的に受容可能な賦形剤と共に従来の手段により調製可能である。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によりコーティングされ得る。経口投与のための液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、又は水素化食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチン、又はアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、又は精留植物油);及び防腐剤(例えば、メチル又はプロピル−p−ヒドロキシベンゾアート又はソルビン酸)といったような薬学的に受容可能添加剤と共に従来の手段によって調製され得る。該調製物は同様に、緩衝塩、芳香剤、着色剤及び甘味料を適宜含有し得る。経口投与のための調製物は、予防用又は治療用作用物質の徐放、制御放出又は持続放出のために適切に処方可能である。
【0050】
一実施形態においては、本発明の組成物は、例えば界面活性剤及びキレート剤といった1つ以上の浸透エンハンサと併用して経口投与される。好ましい界面活性剤としては、脂肪酸及びそのエステル又は塩、胆汁酸及びその塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態においては、浸透エンハンサの組合せ、例えば胆汁酸/塩と組合せた形の脂肪酸/塩が用いられる。特定の一実施形態においては、ラウリン酸、カプリン酸のナトリウム塩が、UDCAと組合わせて用いられる。さらなる浸透エンハンサとしては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。該発明の組成物は、噴霧された乾燥粒子を含む(ただしこれに限定されるわけではない)顆粒形態で経口投与されてもよいし、又は、複合体化して微粒子又はナノ粒子を形成することもできる。該発明のペプチド(例えばFGF−CXポリペプチド)と複合体化するのに用いることのできる複合体化剤としては、ポリ−アミノ酸、ポリイミン、ポリアクリラート、ポリアルキルアクリラート、ポリオキシエタン(polyoxethanes)、ポリアルキルシアノアクリラート、カチオン化ゼラチン、アルブミン、アクリラート、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアルキルシアノアクリラート、DEAE−誘導体化ポリイミン、ポルラン、セルロース、及びデンプンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。特に好ましい複合体化剤としては、キトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリラート)、ポリ(エチルシアノアクリラート)、ポリ(ブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリラート)、DEAE−メタクリラート、DEAE−ヘキシルアクリラート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミン及びDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリラート、ポリヘキシルアクリラート、ポリ(DL−乳酸)、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギナート、及びポリエチレングリコール(PEG)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0051】
該発明の方法は、エアゾル化剤と共に処方された組成物の、例えば吸入器又はネブライザを用いた肺投与を含み得る。
【0052】
該発明の方法は、(例えばボーラス注入又は持続注入といった)注入による非経口投与用に処方された組成物の投与を含み得る。注入用処方は、付加された防腐剤を伴う単位剤形(例えばアンプル又は多重用量容器)の体裁をとり得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンといった形態をとり得、又懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤といった処方剤を含有し得る。代替的には、活性成分は、使用前に適切なビヒクル(例えば無菌で発熱物質を含まない水)で構成するように粉末形態をしていてよい。
【0053】
好ましい実施形態においては、該組成物は、ヒトに対する静脈投与のために適合された医薬組成物として規定通りの手順に従って処方される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、該組成物は同様に、注入の部位における痛みを和げるためリグノカインといったような局所麻酔剤及び可溶化剤も含み得る。一般に、成分は、例えば活性作用物質の数量を示すアンプル又は小袋といった密封した容器に入った凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として単位剤形の形で混合された状態で又は別々に供給される。組成物を輸液により投与する場合には、それを無菌の薬学グレードの水又は食塩水の入った輸液びんで送り出すことができる。組成物を注射により投与する場合、投与に先立って成分を混合できるように注射用滅菌水又は食塩水のアンプルが提供され得る。
【0054】
該発明の組成物は、中性形態又は塩形態として処方可能である。薬学的に受容可能な塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導されたものといった遊離アミノ酸で形成されたもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導されたものといったような遊離カルボキシル基で形成されたものが含まれるがこれらに限定されるわけではない。薬学的に受容可能な塩の非限定的な例としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、酢酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グルカプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシナート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、ヒドロキシナフトアート、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩メシル酸塩、臭化メチル、窒化メチル、硫化メチル、ムカート、ナプシル酸、硝酸塩、パモアート(エンボナート)、パントテン酸塩、ホスファテルジホスファート、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トリエチオジド、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛がある。
【0055】
上述の処方に加えて、該組成物は同様に、デポー製剤としても処方可能である。かかる長時間作用性処方は、移植(例えば皮下又は筋内)又は筋内注射により投与可能である。かくして例えば、該組成物を適切な重合体又は疎水性材料(例えば受容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、又は例えばやや溶けにくい塩といったようなやや溶けにくい誘導体として処方することができる。リポゾーム及びエマルジョンは、親水性薬物のための送達ビヒクル又は担体の周知の例である。
【0056】
1つの実施形態においては、該発明の組成物(例えばFGF−CX)の成分は、かかる組成物のレシピエントと同じ種の起源又は種の反応性である対象から誘導される。
【0057】
該発明は同様に、該発明の治療計画を実施するためのキットをも提供する。かかるキットは、薬学的に受容可能な形態で予防上又は治療上有効な量の該発明の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)を1つ以上の容器内に収納している。該発明のキットの小びん中に入った組成物は、例えば無菌生理食塩水、デキストロース溶液又は緩衝溶液又はその他の薬学的に受容可能な無菌流体と組合せた状態の薬学的に受容可能な溶液の形をとり得る。代替的には、該組成物を凍結乾燥又は乾燥させることができる。この場合、キットは、任意にはさらに、注入目的の溶液を形成するため組成物を再構成するべく、好ましくは無菌である、薬学的に受容可能な溶液(例えば生理食塩水、デキストロース溶液等)を容器内に含んでいる。
【0058】
もう1つの実施形態では、該発明のキットはさらに、処方を注入するための好ましくは無菌形態で包装された針又は注射器及び/又は包装されたアルコールパッドを含む。臨床医又は患者による該発明の処方の投与のための使用説明書が任意に含まれている。
【0059】
いくつかの実施形態においては、本発明は、単回投与に充分な該発明の組成物(例えばFGF−CXポリペプチド)の用量を含む薬学的処方又は組成物を各々含む複数の容器を含むキットを提供する。
【0060】
あらゆる医薬品についてそうであるように、包装材料及び容器は、保管及び出荷中の製品の安定性を保護するように設計されている。1つの実施形態においては、該発明の組成は、レシチン、タウロコール酸及びコレステロールを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)生体適合性のある洗浄剤;又はガンマグロブリン及び血清アルブリンを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)その他のタンパク質と共に容器内に保管されている。さらに、該発明の製品には、使用説明書、又は医師、技師又は患者に対し問題の疾病又は障害をいかにして適切に予防又は治療するかについて助言を与えるその他の情報材料が含まれている。
【0061】
本発明について、さらに、以下の実施例を用いて例示する。
【実施例】
【0062】
5.1. 実施例1:配列分析
各々のFGF−CXについての配列の関連性及びドメイン分析の詳細が、表1Aに提示されている。FGF−CX1クローンが分析され、ヌクレオチド及びコードされたポリペプチド配列が表1Aに示されている。
【0063】
【表2】
【0064】
上述のタンパク質配列のクラスタルダブル(ClustalW)比較が、表1Bに示されている以下の配列アラインメントを生成する。
【0065】
【表3】
【0066】
FGF−CX1aタンパク質のさらなる分析が、表1Cに示された以下の特性を生成した。
【0067】
【表4】
【0068】
特許及び特許広報で公示された配列を含む専有のデータベースであるジンシーク(Geneseq)データベースに対するFGF−CX1aタンパク質の探索は、表1Dに示された複数の相同性タンパク質を生成した。
【0069】
【表5】
【0070】
公開配列データベースのBLAST探索において、FGF−CX1aタンパク質は、表1E内のBLASTPデータ中に示されたタンパク質に対する相同性をもつことが発見された。
【0071】
【表6】
【0072】
PFam分析は、FGF−CX1aタンパク質が表1Fに示されたドメインを含むことを予測している。
【0073】
【表7】
【0074】
5.2. 実施例2:CG53135−05(FGF−20)のタンパク質分解による分割産物
CG53135−05の液体クロマトグラフィ、質量分析法及びN末端配列決定の結果、増殖検定において高い活性をもつ変異体がもたらされた。かくして、このセクションで詳述されるこれらの変異体は、CG53135−05と同じ有用性をもつものと期待されている。
【0075】
CG53135−05の液体クロマトグラフィ(LC)及び質量分析法(MS)
精製されたCG53135−05を、アセトニトリル、水及びトリフルオロ酢酸を含む移動相中の標準HPLCシステム(アジレント(Agilent)1100、アジレント(Agilent))を用いて、フェニル−ヘキシルカラム(ルナ(Luna)5mm、250mm×3mm、フェノメネックス(Phenomenex))上に注入した。結果としての分析は、CG53135−05(図1)に関連する1つの大ピーク(#3)と3つの小ピーク(#1、2、4及び5)を示す、検出可能なレベルの微小不均一性を明らかにした。これらの種を特徴づけするため、自動化された画分収集装置(アジレント1100)を用いて、画分を収集し、液体クロマトグラフィエレクトロスプレーイオン化イオントラップ質量分光法(LC/ESI/MS)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析法(MALDI−TOF−MS)及びN末端アミノ酸配列決定を用いて画分を特徴づけした。
【0076】
ピーク0はタンパク質ではなく、製品関連のものではなく、又、残留プロセス不純物でもない(すなわち、DNA、内毒素、カナマイシン又はIPTGではない)。CG53135−05に関連する種(ピーク1、2、3及び4)は、36%のアセトニトリル、63%の水及び0.1%のトリフルオロ酢酸の移動相を溶出した。類似の画分を次にプールし、4℃の遠心機内でアミコン(Amicon)10,000ダルトンカットオフフィルター(ミリポア(Millipore)、マサチューセッツ州ベッドフォード(Bedford、MA))を用いて試料を濃縮した。試料を200mMのアルギニン、40mMの酢酸ナトリウム及び3%のグリセロール中で16倍に希釈し、次に約500μlの体積になるまで濃縮した。プールした画分の濃度を、アミノ酸分析を用いて決定した。
【0077】
トリプシンを用いて4つのCG53135−05関連種(ピーク1、2、3及び4)の全てをタンパク質分解により消化し、質量分析検出を伴う液体クロマトグラフィを用いてペプチドを分析した。究極ナノフロークロマトグラフィシステム(LCパッキングス(LC Packings)、オランダアムステルダム(Amsterdam、Netherlands))とインタフェースされたXP DECA ナノスプレー/イオントラップ器具(サーモフィンガン(ThermoFinnigan)、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose、CA))を用いて質量分析を実施した。自動化MS−MS/MSスイッチングを用いてエクスカリバー(Xcalibur)ソフトウエア(サーモフィンガン)を介してデータを収集した。インスツルメント・メソッド(Instrument Method)ファイル内で、400〜1400m/zの間の全MS走査とそれにつづく先行MS走査からの最上位3つのイオンの400〜2000m/zの間の全MS/MS走査を獲得するようにXPDECAをセットした。ターボシークエスト(TurboSequest)(サーモフィンガン)を用いてデータを処理した。MASCOT(マトリックスサイエンシーズ(Matrix Sciences)、英国マンチェスター(Manchester、UK))を用いてデータベース探索とタンパク質の同定を実施した。MASCOTは、ペプチドの分子質量、MS/MS配列情報、質量精度及び検出されたペプチド数に基づいて、同定されたタンパク質についての確率ベースのMOWSE評点及びカバレージ百分率を報告する。表2は、CG53135−05関連種についてのピーク番号、MASCOTにより提供される信頼度評点及びMS/MSスペクトルから得たカバレージ百分率を含んでいる。
【0078】
【表8】
NA= データ入手不可
【0079】
CG53135−05関連種の同一性を決定するため、収集された画分を、MALDI−TOF及びN末端配列決定によって分析した。精製したCG53135−05のN末端アミノ酸を定性的に決定した。CG53135−05タンパク質をSDS−PAGEにより解像し、ポリフッ化ビニリデン膜に電気泳動によって移送した。膜からクマシー染色した約23kDaの主要バンドを切除し、自動エドマン(Edman)シーケンサ(プロサイズ(Procise)、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、カリフォルニア州フォスター市(Foster City、CA))により分析した。表3は、各々の種について得られた分子量及びN末端配列決定(ここでN=全長CG53135)により決定された変異体を提示している。
【0080】
【表9】
NA=データ入手不可。タンパク質でなく製品関連でもない。
【0081】
MALDI−TOF及びN末端配列決定により決定された分子量は、4つの種を同定することができる。ピーク1については、N末端配列決定を介して4つの異なる種が検出され、そのうちの2つが同じくMALDI−TOFによって検出された。これらの結果は同様に、LC/MSを用いて得られたカバレージとも一致している。N末端配列決定により誘導された各々の種のポリペプチド配列は、表4に示されている。
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
多重アラインメント
【0084】
全アミノ酸分析
CG53135−05のアミノ酸組成物を決定した。内部標準として2nmolのノルロイシンを含有する0.2%のフェノール、100mLの6NHCl中で115℃で16時間CG53135−05の試料を加水分解した。試料を高速Vac濃縮器(Speed Vac Concentrator)内で乾燥させ、内部標準として2nmolのホモセリンを含有する試料緩衝液100mL中に溶解させた。各試料中のアミノ酸を、ベックマン(Beckman)7300型イオン交換計器上で分離した。CG53135−05のアミノ酸組成物は、理論上のアミノ酸組成物と一貫性を有していた。
【0085】
UV吸光度を介した濃度の推定(ブラッドフォード方法を用いたタンパク質の推定)の中で使用される消光係数を導出するために、実験用アミノ酸組成物を使用した。λmaxにおける消光散係数は、0.97mL/mg・cmである。
【0086】
【表12】
A 処方中の余剰のargのため未判定。
B 分析中に酸加水分解においてcysが破壊されることから未判定。
C 分析中に酸加水分解においてtrpが破壊されることから未判定。
D 酸加水分解中asnはaspに、glnはglu酸に転換されることになる。従って、asxはasnとaspの和を表わし、一方glxはglnとgluの和を表わす。
【0087】
ペプチドマッピング
精製済みCG53135−05(25mg)を変性させ、50℃で尿素とジチオトレイトール中で還元させ、ヨードアセタートでアルキル化させた。尿素の濃度を低下させた後、試料を20℃で40時間トリプシンで処理した。結果として得たペプチドフラグメントを、(トリフルオロアセテート中のアセトニトリル勾配を伴うC−18カラムを用いることによって)RP−HPLCにより分離してペプチドマップ(図2A及び2B)を得た。図2A中のクロマトグラムはトリプシンでのCG53135−05の消化から予想された20個のペプチドと一貫性をもつものであり、図2B中のクロマトグラムは、CG53135−05内の単一トリプトファン残基について予想された通りの単一のピークを明らかにしている。
【0088】
生物学的検定
LC及びMSにより同定された4つのピークから収集されたCG53135−05関連種の生物活性を、さまざまな用量の単離されたCG53135−05関連種での血清欠乏培養NIH3T3マウス胚線維芽細胞の処理及びDNA合成中のブロモデオキシウリジン(BrdU)取込みの測定によって、測定した。この検定のためには、10%のウシ胎児血清で補足されたダルベッコの修正イーグル培地の中で細胞を培養した。10%CO2/空気中で37℃で集密性に至るまで96ウェル平板内で細胞を成長させ、次に24〜72時間、ダルベッコ修正イーグル培地内で欠乏させた。CG53135−05関連種を添加し、37℃で18時間、10%CO2/空気中でインキュベートした。BrdU(10mMの最終濃度)を添加し、10%CO2/空気中で2時間37℃で細胞と共にインキュベートさせた。BrdUの取込みを、メーカーの仕様書(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)、インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis、IN))に従って、酵素免疫吸着法により測定した。
【0089】
ピーク4は、不充分な材料しか収集されなかったため(ピーク4はCG53135−05についての合計ピーク面積の3%未満である)、この検定には内含されなかった。CG53135−05及び3つの残りの画分(すなわちピーク1、2及び3)全てから収集した材料が、NIH3T3マウス線維芽細胞内で用量依存的にDNA合成を誘発した(表7)。PI200は、背景の2倍でのBrdUの取込みを結果としてもたらしたタンパク質の濃度として定義された。3つの測定可能なピーク全てから回収したCG53135−05やCG53135−05関連種は、0.7〜11ng/mLのPI200で類似の生物活性を実証した(表9)。
【0090】
【表13】
【0091】
5.3. 実施例3:CG53135のレセプタ結合特異性(研究L−116.01)
FGFファミリー成員は、細胞表面免疫グロブリン(Ig)ドメイン含有チロシンキナーゼFGFレセプタ(FGFR)との高親和性相互作用を介して、細胞内部でシグナルを変換する。4つの全く異なるヒト遺伝子がFGFRをコードする(パワーズ(Powers)ら、エンドクリン関連癌(Endocr Relat Cancer)2000、7:165−97;クリント(Klint)及びクリーソン・ウェルシュ(Claesson−Welsh)、生命科学の最先端(Front Biosci)1999、4:D165−77;シュー(Xu)ら、細胞及び組織研究(Cell Tissue Res)1999、296:33−43)。キナーゼドメインの欠如した関連する第5のヒト配列が最近になって同定され、FGFR−5と命名された(キム(Kim)ら、生物化学と生物物理学(Biochim Biophys Acta)2001、1518:152−6)。これらのレセプタは各々このファミリーの複数の異なる成員を結合させることができる(キムら、生物化学と生物物理学2001、1518:152−6;オルニス(Ornitz)ら、生物化学ジャーナル(J Biol Chem)1996、271:15292−7)。FGFは同様に、低い親和性しかもたないにもかかわらず、大部分の細胞表面及び細胞外マトリクス(ECM)上に存在するヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合する。FGF及びHSPGの間の相互作用は、FGF/FGFR相互作用を安定化させ、FGFを封鎖しそれを分離から保護するのに役立つ(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97;セベニ(Szebenyi)及びファロン(Fallon)、国際細胞学評論(Int Rev Cytol)1999、185:45−106)。レセプタトランスリン酸化を導くキナーゼドメインの活性化のためには、リガンド結合時点のFGFレセプタ単量体の2量体化が必要条件であると報告されている。4つのFGFレセプタの最大の発現パターンを示すFGFレセプタ−1(FGFR−1)は、少なくとも7つのチロシンリン酸化部位を含んでいる。これらのリン酸化部位に対して異なる親和力で結合することにより、数多くのシグナル変換分子が影響を受ける。
【0092】
FGFR−1、FGFR−2及びFGFR−3は各々FGF−1、FGF−2、FGF−4及びFGF−8を認識する。さらに、FGFR−1とFGFR−2はFGF−3、FGF−5、FGF−6、FGF−10及びFGF−17に結合する(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97)。さまざまなFGFリガンドの結合は各々のレセプタスプライス形態と共に変動し、かくして、限定された数のレセプタコーディング遺伝子を通して広いレパートリのFGF媒介されたシグナリング事象を可能にする。組織特異的な交互のスプライシングにより、単一のFGFR遺伝子を発現する細胞が、異なるリガンド特異性及び機能を示し得る全く異なるレセプタイソ型を生成することによってその生物学的応答を著しく多様化させることが可能となる。FGFR−4はFGF−1、FGF−2、FGF−4、FGF−6、FGF−8及びFGF−9に結合するもののFGF−3、FGF−5又はFGF−7に結合しない。FGF−7つまりケラチノサイト成長因子−1(KGF−1)は、FGFR−2によってのみ認識され、一方FGF−9はFGFR−2、FGFR−3及びFGFR−4に結合する。FGF11〜FGF19のレセプタ特異性は充分に理解されていない(パワーズら、エンドクリン関連癌2000、7:165−97;オルニス(Ornitz)ら、生物化学ジャーナル1996、271:15292−7)。
【0093】
主要な器官系由来の正常なヒト成人組織内の免疫組織学研究(ヒューズ(Hughes)、組織化学及び細胞化学ジャーナル(J Histochem Cytochem)1997、45:1005−19)は、FGFR−1、FGFR−2及びFGFR−3が広く発現されることを示しており、これは、組織ホメオスタシスにおける重要な機能的役割を示唆している。組織特異的イソ型についてのタンパク質発現パターンはまだ判定されていない。FGFR−4は、その他の3つのレセプタの全てが主に発現されている組織である、肺、卵管、胎盤、睾丸、前立腺、甲状腺、副甲状腺及び交感神経節では著しく欠如しているより限定されたパターンを有している(ヒューズ、組織化学及び細胞化学ジャーナル1997、45:1005−19)。
【0094】
CG53135のレセプタ結合特異性を判定するために、我々は、大腸菌(E.coli)内で産生された組換え型CG53135−01によるNIH3T3細胞内のDNA合成の誘発に対する可溶性FGFRの効果を調査した。
【0095】
材料と方法
大腸菌(Escherichia coli)由来のタンパク質の精製:大腸菌(E.coli)の産生のためには、大腸菌発現宿主BL21内にプラスミドpETMY−hFGF20Xを形質転換し(ノバゲン(Novagen)、ウィスコンシン州マジソン(Madison、WI))、タンパク質CG53135発現の誘発をメーカーの指示事項に従って実施した。37℃でLB培地内においてpETMYhFGF20X/BL21大腸菌の細菌を成長させた。0.6のODで、最終的な感染多重度が5になるまでバクテリオファージラムダ(CE6)を添加した。3時間27℃で、感染した培地をさらにインキュベートした。誘発の後、全細胞を収穫し、抗HisGly抗体(インビトロジェン(Invitrogen)を用いて、ウェスタンブロット法によりタンパク質を分析した。低速遠心分離(4℃で15分間GS−3回転子内で5000rpm)により細胞を収穫し、0.5MのNaCl及び1Mのアルギニンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に懸濁させ、ミクロフルイダイザに2回通して分断させた。細胞残屑を低速遠心分離により除去し、0.2ミクロンの低タンパク質結合膜を通したろ過により、可溶性タンパク質画分(上清)を清澄化させた。その後タンパク質試料を金属キレート化カラム(硫酸ニッケルが予め充填されているもの)上に投入した。ニッケルカラムをPBS/0.5MNaCl+1MのL−アルギニンで洗浄し、結合したタンパク質をイミダゾールの線形勾配(0−0.5M)で溶出させた。CG53135(100−150mMイミダゾール)を含有する画分をプールし、1MのL−アルギニンを含む1×106倍体積のPBSpH8.0に対して透析させた。タンパク質の試料を−80℃で保管した。
【0096】
レセプタ特異性:NIH3T3細胞を96ウェルの平板に約100%の集密性に至るまで培養し、洗浄し、補足無しのDMEM(ライフ・テクノロジーズ(Life Technologies)を補給し、24時間インキュベートした。次に組換え型CG53135−01又は対照タンパク質を次に18時間細胞に添加した。使用される対照タンパク質はaFGF(正の対照)及び血小板由来の成長因子−BB(PDGFBB)(負の対照)であった。CG53135活性に対する可溶性FGFRの効果を分析するために、組換え型CG53135−01、aFGF、又はPDGF−BB(それぞれ10、5及び3ng/mLの最終濃度)を可溶性レセプタ(0.2、1及び5μg/mLの最終濃度)と混合し、血清欠乏NIH3T3細胞への添加の前に37℃で30分間インキュベートした。因子濃度は、NIH3T3細胞中半値BrdU応答を生成するのに必要とされるリガンドの量を表わす。可溶性FGFRは、以下のレセプタ形態(FGFR1β(IIIc);FGFR2β(IIIb);FGFR2α(IIIb);FGFR2α(IIIc);FGFR3α(IIIc);FGFR4)のFcキメラであり、R&Dシステムズ(R&D Systems)(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis、MN))から得られた。BrdU検定は、メーカーの仕様書(ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ、インディアナ州インディアナポリス)に従って、4時間のBrdU取込み時間を用いて実施された。
【0097】
結果と結論
CG53135のレセプタ結合特異性を決定するために、我々は、大腸菌内で産生された組換え型CG53135−01によるNIH3T3細胞中でのDNA合成の誘発に対する可溶性FGFRの効果について調査した。FGFR1β(IIIc)、FGFR2β(IIIb)、FGFR2α(IIIb)、FGFR2α(IIIc)、FGFR3α(IIIc)及びFGFR4のための可溶性レセプタが利用された。我々は、これらのFGFRの各々の可溶性形態がCG53135の生物活性を特異的に阻害できるということを発見した(図3)。
【0098】
可溶性FGFR2α(IIIb)、FGFR2β(IIIb)、FGFR2α(IIIc)及びFGFR3α(IIIc)で完全又はほぼ完全な阻害が得られ、一方可溶性FGFR1β(IIIc)及びFGFR4で部分阻害が達成された。可溶性レセプタ試薬のいずれもPDGF−BBによるDNA合成の誘発と干渉せず(図2)、かくしてそれらの特異性を実証した。分析中のFGFRの全てと相互作用するものとして知られる1つの因子であるaFGFによるDNA合成の誘発を阻害するその能力を示すことにより、各々の可溶性レセプタ試薬の無欠性を実証した(図3)。
【0099】
5.4. 実施例4:卒中の治療
30匹の雄のスプラーグダウエルラットを、以下の表8の研究設計の中に示したとおりの治療グループに帰属た。
【0100】
【表14】
*投与用量及び体積は、330gの平均体重に基づくものである。
【0101】
実験手順
中大脳動脈(MCA)外科手術及び槽内注入:外科手術に先立ち7日間動物を処理した。外科手術の前日及び手術直後にセファゾリンナトリウム(40mg/kg、腹腔内)を投与した。外科手術の時点で、ラットを2:1のN2O:O2混合物中の2%ハロタンで麻酔した。体温は37±0.50℃に維持した。近位右側MCAを嗅索のすぐ近位から下大脳静脈まで電気凝固し、次に離断した。槽内注入のためには、上述の通りに動物を再度麻酔し、定位枠内に置いた。ラットに対しCG53135−05又はビヒクル[40mMの酢酸塩、200mMマンニトール(pH5.3)]を、MCAから1日目(約24時間)に1回と3日目(約72時間)に1回、大槽内への皮内注射により与えた。動物にテスト品(2用量グループ)又はビヒクル処置を研究設計に従って与えた。
【0102】
臨床的観察事実/徴候
注射後直ちに1時間にわたり、(おりの回りの激しい動きと震えにより示される)発作、(大きな発声により示される)苦痛及び昏睡の徴候について、動物を観察した。毎日、死亡数及び頻死数についても動物を観察した。
【0103】
体重:動物を1日目、3日目、7日目、14日目及び21日目に計量した。
【0104】
四肢置き直し試験:四肢置き直し試験を全ての動物について、−1日目(術前)、1日目(注射直前)、3日目及びその後7日毎(7日目、14日目、21日目)行なった。
【0105】
前肢置き直し試験評価評点:前肢置き直し試験は、動物が、視覚、触覚及び自己受容刺激に応答してテーブル上面に肢を置くにつれて、各々の前肢内の感覚運動機能を測定する。前肢置き直し試験は、以下の評価及び評点から成り、ここで前肢置き直し試験についての組合せ合計評点は、0(機能障害無し)から10(最大の機能障害)までの範囲を反映する。
視覚性置き直し(前方向、横方向):0〜4
触覚性置き直し(背面、側面):0〜4
自己受容的置き直し:0〜2
全前肢試験についての合計評点:0〜10
【0106】
後肢置き直し試験評価評点:同様に、後肢置き直し試験は、動物が、触覚及び自己受容刺激に応答してテーブル上面に後肢を置くにつれて、後肢の感覚運動機能を測定する。後肢置き直し試験は、以下の評価及び評点から成り、ここで後肢置き直し試験についての組合せ合計評点は、0(機能障害無し)から6(最大の機能障害)までの範囲を反映する。
触覚性置き直し(背面、側面):0〜4
自己受容的置き直し:0〜2
全後肢試験についての合計評点:0〜6
【0107】
ボディスイング試験:ボディスイング試験を、全ての動物について、−1日目(術前)、1日目(注射の直前)、3日目及びその後7日毎(7日目、14日目、21日目)に実施した。
【0108】
ボディスイング試験は、動物をテーブルの表面より約1インチ上に保持し右側又は左側に揺動するにつれての側方選好性を検査する。30回の揺動を計数し、次に右への揺動の百分率に基づいて評点を計算する。(評点範囲=約50%の右方揺動(機能障害無し)−0%の右方揺動(最大の機能障害))。
【0109】
シリンダ試験:シリンダ試験を、−1日目(術前)及び術後7日目(7日目、14日目、21日目)に全ての動物について実施した。シリンダ試験は、前肢の自発運動活性を測定する。動物を狭いガラスシリンダ(16.5×25cm)の中に入れ、卒中手術の前日に5分間そしてその後毎週の間隔で5分間ビデオテープに録画する。その後ビデオテープを、1人の経験豊かなオブザーバにより独立して評定させ、最高50回の自発運動を計数することになる(一日ラット一匹につき約5分)。自発運動には、立上がりを開始し、着地又はシリンダの壁に沿って側方に移動するため、又は立上がりの後床に着地するため各々の前肢により行なわれるものが含まれる。
【0110】
肉眼検査及び組織形態学:予定された終結日(3日目)において、動物を抱水クロラール(500mg/kg)の腹腔内注射により安楽死させた。脳を肉眼で検査し取り出し、ホルマリン内でポストフィックスし、脱水し、パラフィン内に包埋した。ガラススライドに取りつけたマイクロトーム上で冠状断面(5mm)をカットし、ヘマトキシリン/エオシン(H&E)で染色することになる。7つのスライス(プレグマ(Bregma))と比べ+4.7、+2.7、+0.7、−1.3、−3.3、−5.3及び−7.3mm)の各々の上の脳梗塞の部域を、処理中の脳収縮に対し補正するべく間接的方法を用いるコーピュータインタフェース撮像システムを使用して決定した(無傷の対側半球の部域−無傷の同側半球の部域)。次に、無傷の対側半球体積の百分率として、硬塞体積を表わした。これらの同じ方法を用いて別々に、皮質及び線条体中の硬塞形成体積も決定した。H&E染色切片を、出血、膿瘍又は腫瘍形成といったような組織学的変化について検査した。
【0111】
統計的分析:各動物の治療帰属については、ブラインド状態にされた治験責任医師が、全ての槽内注射、行動試験及びその後の組織学的分析を行なった。このとき、データは平均±SEMとして表わされ、1つ又は2つの方法(ANOVA)とそれに続く、多数の比較についての補正を伴う適切な対になったポストホック検定によって分析されることになる。
【0112】
結果
前肢置き直し試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、視覚、触覚及び自己受容刺激に応答した前肢内の感覚運動機能を評価するため四肢置き直し試験を使用することによって動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。12が最大機能障害を表わすものとして、0〜12の潜在的合計評点範囲を得るべく、視覚性置き直し(0〜4で評定)、触覚性置き直し(0〜4で評定)及び自己受容置き直し(0〜2で評定)を合計した(図4)。
【0113】
後肢置き直し試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、触覚及び自己受容刺激に応答した後肢内の感覚運動機能を評価するため四肢置き直し試験を使用することによって動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。6が最大機能障害を表わすものとして、0〜6の潜在的合計評点範囲を得るべく、触覚性置き直し(0〜4で評定)及び自己受容置き直し(0〜2で評定)を合計した(図5)。
【0114】
ボディスイング試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、動物がテーブルの表面より上約1インチに保持され右側又は左側に揺動するにつれての側方選好性を評価するべくボディスイング試験を用いることにより動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)、G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。30回の揺動を計数し、右への揺動の百分率に基づいて評点を計算する(図6)。
【0115】
シリンダ試験:MCA閉塞との関係において−1、1、3、7、14及び21日目に、前肢の自発運動活性を評価するために、シリンダ試験により動物を検査した(カワマタ(Kawamata)T.、ディートリッヒ(Dietrich)W.D.、シャレート(Schallert)T.、ゴッツ(Gotts)E.、コック(Cocke)R.R.、ベノウィッツ(Benowitz)L.I.及びフィンクルスタイン(Finklestein)S.P.(1997)米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)94、8179−8184;デリック(De Ryck)M.、ファン・リンプツ(Van Reempts)J.、デュイチェバー(Duytschaever)H.、ファン・デウレン(Van Deuren)B.及びクリンケ(Clincke)、G.(1992)脳研究(Brain Res.)573、44−60)。簡単にいうと、動物を狭いガラスシリンダ(16.5×25cm)の中に入れ、卒中手術の前日に5分間そしてその後毎週の間隔で5分間ビデオテープに録画する。その後ビデオテープを、1人の経験豊かなオブザーバにより独立して評定させ、最高50回の自発運動を計数することになる(一日ラット一匹につき約5分)。自発運動には、立上がりを開始し、着地又はシリンダの壁に沿って側方に移動するため、又は立上がりの後床に着地するため各々の前肢により行なわれるものが含まれる(図7)。
【0116】
体重:MCA閉塞との関係において、−1、1、3、7、14及び21日目に動物を計量した。結果は、ビヒクルとCG53135−05治療の間の有意な差異を全く示していない(図8)。
【0117】
結論
MCA閉塞後のCG53135−05の投与は、低い及び高い用量の両方共が、対側(罹患)四肢についての前肢(図4)及び後肢(図5)置き直し試験での回復の有意な増強、及びボディスイング試験での改善(図6)を生み出すということを示唆した。このモデルにおけるその他の療法でのこの活動パターンは、それぞれ大脳皮質及び皮質下(線条体)の機能の改善を反映することが一般に示されてきた(ダイクハウゼン(Dijkhuizen)RM、レン(Ren)J、マンデビル(Mandeville)JB、ウー(Wu)O、オズダッグ(Ozdag)FM、モスコウィツ(Moskowitz)MA、ローゼン(Rosen)BR、フィンックルスタイン(Finklestein)SP.2001、米国科学アカデミー紀要98(22):12766−71)。自発的四肢使用のシリンダ試験(図7)又は動物の体重(図8)については、いかなる明白な差異もみられなかった。
【0118】
従って、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、外傷、脊髄損傷、重金属又は毒素中毒、及び神経変性疾患(例えばアルツハイマー、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病など)を含めた病的条件の治療において、CG53135−05の投与が有用となる。
【0119】
5.5. 実施例5:マトリックス金属プロテイナーゼ産生検定
マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)は、骨及び軟骨内で細胞外マトリックスを分解させる関連酵素の1ファミリーである。これらの酵素は、組織の分化及びリモデリングにおける正常な発達中に作用する。骨関節炎(OA)及び関節リウマチ(RA)といった関節病においては、これらの酵素の発現の上昇が不可逆的マトリックス分解に貢献する。かくしてMMP産生に対するCG53135−05の効果が評価された。
【0120】
マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)の産生に対するCG53135の活性は、SW1353軟骨肉腫細胞系列(ATCC HTB−94)を用いて評価された。この細胞系列は、マトリックス金属プロテイナーゼ(MMP)のための確立した軟骨細胞モデルである。DMEM培地−10%FBS中1×105細胞/ml(1ml)で24ウェルの平板中にSW1353細胞を平板固定した。一晩のインキュベーションの後、培地をDMEM+0.2%のラクトアルブミン血清で置換した。0.5mlの最終体積までIL−1ベータ(0.1〜1ng/ml、R&Sシステムズ、ミネソタ州ミネアポリス)、TNF−アルファ(10ng/ml、R&Dシステムズ)又はビヒクル対照の不在下又は存在下で10〜5000ng/mlの範囲内の用量でウェルに対しCG53135−05を添加した。IL−1ベータ及びTNF−アルファは両方共MMP活性の強力な刺激物質である。全ての処置は、トリプリケートウェル内で行なった。24時間後に、上清を収集し、MMP活性の天然の阻害物質であるプローMMP−1及び−13ならびにTIMP−1(マトリックス金属プロテイナーゼの組織阻害物質)をELISA(R&Dシステムズ)により測定した。測定値をMTS検定により細胞数に正規化した。
【0121】
結果
CG53135−05は、それぞれ図14及び図15で実証されているようにIL−1ベータ又はTNF−アルファのいずれかの存在下でMMP−13産生を著しく減少させた。IL−1ベータ及びTNF−アルファは両方共、MMP活性の強力な刺激物質である。OA内で分解される主要コラーゲンであるII型コラーゲンに対するMMP−13親和力はMMP−1のものより10倍高い。MMP−13発現はOA及びRA内で増大することから、CG53135−05の付加に伴って観察されるMMP−13の減少は、OA及びRA療法剤として該タンパク質を使用できるということを示している(図10)。さらに、CG53135−05は、MMP活性の天然の阻害物質であるTIMP−1の産生をアップレギュレートした(図11)。CG53135−05によるTIMP−1産生のこの増強は、OA及びRAにおいて観察されたMMP−1及びMMP−13によるマトリックス破壊を低減する上で有益である。さらに、CG53135−05は、構成的に又はIL−1誘発の後(データ示さず)MMP−3産生に対し全く効果をもたなかった。同様にして、CG53135−05(FGF−20)は、SW1353細胞内でのMMP−1の基底発現の増大を示した(データ示さず)。
【0122】
5.6. 実施例6:正常なラットに対するCG53135−05の効果:半月板裂傷モデルに対する概念の検証
正常なラットに対するCG53135−05の効果を、疾病モデル(例えば、ラットにおける骨関節炎の半月板裂傷モデル)におけるさらなる研究を押し進めるための概念の検証として研究した。滑膜及び軟骨に対するCG53135−05の効果を、正常な雄のルイスラット内にタンパク質を注射することによって評価した。
【0123】
正常なラットにおけるCG53135−05の関節内注射の効果
ビヒクル溶液(約1%のヒアルロン酸中の8mMの酢酸塩、40mMのアルギニン、及び0.6%のグリセロール(pH5.3))、10μgのCG53135−05又は100μgのCG53135−05を2週間、1週間に3回ずつラットの関節内に注射した。
【0124】
研究の設計:0日目に体重293−325グラムの雄のルイスラットをハーラン・スプラーグ・ダウレイ(Harlan Sprague Dawley)インディアナ州インディアナポリス (Indianapolis、Indiana))から入手し、8日間馴化させた。ラットを、各々3匹の動物を含む3つの処置グループに分けた。2つのグループはCG53135を、1つのグループはビヒクル対照のみを受けた。ラットをイソフルランで麻酔し、両膝の十字付着の部域内に膝蓋腱を通して注射した。CG53135は、0.1mg/ml(関節1つあたり0.01mg)又は1.0mg/ml(関節1つあたり0.1mg)の用量で注射した。上述の通りに、ビヒクル溶液を対照に注射した。注射は、2週間、月、水及び金曜日に行なった。15日目に動物を処分し、その時点で、増殖中の細胞をパルス標識するべくBRDU(100mg/kg)を腹腔内に注射した。
【0125】
病変マーカーの観察及び分析
相対的観察。異常な膨れ又は歩行変化について毎日ラットを観察し、毎週体重測定した。
【0126】
組織病理学的に保存し脱灰した(5%蟻酸)膝を2つのおおよそ等しい長手方向(足首)又は前方(膝)半分へとトリミングし、段階アルコール及び清浄剤を通して処理し、浸潤させてパラフィン内に包埋し、切断し、トルイジンブルー(膝)で染色した。以下で列挙する問題のパラメータに注意しながら、右膝の多数の切片(3レベル)を顕微鏡で分析した。各パラメータを正常、最小、軽度、中度、高度又は重度として段階付けした。タンパク質の反復的注射により生成される改変のタイプを理由として、骨関節炎モデル内で一般的に用いられる評定基準よりもむしろ描写的パラメータを用いて軟骨の評価を行なった。動物は処分する前にBRDUの注射を受けたものの、増殖変化は、トルイジンブルーで染色した切片内に容易に見られた。
【0127】
結果
【表15】
【0128】
研究全体を通して、生存段階パラメータ体重は、ビヒクル及びタンパク質を注射した動物のいずれにおいても類似していた(表12)。100μgのタンパク質を注射した膝は、3番目の注射で始まって注射プロセス中に臨床的に幾分かの線維症の証拠を有していた。
【0129】
形態学的病理ビヒクルの注射を受けたラットは、線維化した滑膜内のマトリックス被着が全く乃至は最小限しかない状態で、最小乃至は軽度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、いかなるプロテオグリカン損失もフィブリル化も有していなかった。十字が付着しその中に関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、全く乃至は最小限の線維増殖及び軟骨/骨損傷しか有していなかった。いかなる辺縁軟骨形成も存在しなかった。
【0130】
10μgのCG53135−05の注射を受けた膝は、線維化した滑膜内のマトリックス被着が最小限乃至は中度ある状態で、最小限乃至は中度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、いかなるプロテオグリカンの損失もフィブリル化も有していなかった。十字が付着しその中に関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、全く乃至は最小限の線維増殖及び軟骨/骨損傷しか有していなかった。1つの膝は、辺縁帯の最小限の軟骨形成を有していた。
【0131】
100μgのCG53135−05の注射を受けた膝は、線維化した滑膜内に中度のマトリックス被着ある状態で、中度乃至は高度の滑膜過形成、炎症、線維増殖を有していた。関節軟骨は、全く乃至は最小限しかプロテオグリカンの損失又はフィブリル化を有していなかった。十字が付着し中で関節内注射が行なわれる関節の中央部域は、最小限乃至は高度の線維増殖及び軟骨/骨損傷を有していた。全ての膝は、軽度乃至中度の辺縁帯軟骨形成を有していた。1匹の動物は、関節軟骨に結びつけられた部域内に軟骨形成を有していた。
【0132】
結論
これらの結果はCG53135−05の反復的関節内注射が滑膜線維増殖を誘発することを実証している。ビヒクル注射は結果として軽度の炎症及び線維増殖をもたらし、かくして、このビヒクルが幾分かの刺激性潜在能力をもつことを示唆した。タンパク質の注射を受けた動物において、滑膜増殖性応答の濃度応答性増加と辺縁帯軟骨成分が発生した。注射が行なわれた十字付着の部域は、それ自体滑膜炎症と同様にタンパク質の濃度増加に伴って重症度が増大する骨再吸収及び線維増殖の部域を有していた。観察された滑膜線維増殖及び骨再吸収の潜在的に不利な効果は、タンパク質を処方するのに使用された非臨床等級のヒアルロン酸内部のFGF−20活性又は内毒素レベルのいずれかに起因するものであったと考えられる。さらに関節内の炎症は骨再吸収及び辺縁帯軟骨形成を誘発し得、従ってこれらの結果は、タンパク質注射に対する炎症性応答が増殖性応答に貢献した可能性に照らし合わせて解釈される必要がある。増殖性変化及び軟骨形成の形態学的外見は、明らかに、このタンパク質(CG53135−05)の生物活性が応答を生成する上で重要であることを示している。
【0133】
本書で報告されている実験の結果は、CG53135−05の反復的な関節内注射が滑膜線維増殖及び軟骨形成を誘発することを示している。
【0134】
5.7. 実施例7:ラット骨関節炎の半月板裂傷モデルにおけるCG53135−05の関節内注射:予防及び治療的投薬
実施例6は、組織形態計測解析により関連する細胞集団に対する効果を同定するため、正常なラットの関節内へのCG53135−05の投与を利用した。関節1つあたり100μgの用量で、CG53135−05は、TGF−ベータといったようなその他の成長因子で見られるものに類似した有意な辺縁帯軟骨形成を誘発し、辺縁帯内部での多能性幹細胞に対する効果を示唆した。関節の成熟軟骨部域内の応答の欠如により証明されるように、成熟軟骨細胞に対する明らかな効果は全く存在しなかった。観察された滑膜線維増殖及び骨再吸収の潜在的に不利な効果は、タンパク質を処方するのに使用された非臨床的等級のヒアルロン酸内部のFGF−20活性又は内毒素レベルのいずれかに起因するものであったと考えられる。
【0135】
実施された骨関節炎の動物におけるさらなる研究は、以下のことに関するものであった。1)抗炎症薬との相乗効果(骨関節炎患者についての標準的アプローチ)、2)CG53135−05(FGF−20)が関節軟骨層の機能的修復又は保護を誘発できるか否か及び3)滑膜線維増殖及び骨再吸収がFGF−20誘発されたか又は処方内部の汚染性内毒素に起因するものであったか。
【0136】
かくしてこの研究の1つの側面は、ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内の骨関節炎における関節損傷に対するCG53135−05の関節内注射の保護的及び治療的効果を評価することにあった。OAのこの比較的新しいモデルは、その他の種における突発的疾病及び外科手術によって誘発された疾病において発生する変化に似た軟骨変性及び骨棘形成の形態的改変を有することが示されてきた(ベンデーレ(Bendele)A.M.、変形性関節症の動物モデル(Animal Models of Osteoarthritis)、J.Musculoskel.Neuron Interact.2001;1:363−376、ベンデーレ(Bendele)A.M.及びハルマン(Hulman)J.F.、テンジクネズミにおける突発性軟骨変性(Spontaneous cartilage degeneration in guinea pigs)、関節炎とリューマチ(Arthritis Rheum)、1988;31:561−565)。該モデルは、抗変性ならびに再生療法の潜在的に有益な効果を評価するために使用することができる。
【0137】
実験的設計
おり1個に2匹の割合で収容した動物(1グループにつき10匹)をイソフルランで麻酔し、右膝部域を外科手術のために前処理した。膝の内側面全体にわたり皮膚切開を行ない、鈍的切開により内側側副靭帯を露出させ、次に離断させた。内側半月を次に細いハサミで内側対称移動させ、完全な裂傷をシミュレートするべく全厚みにわたりカットを行なった。皮膚を縫合により閉じた。
【0138】
予防的投薬:外科手術の日に右膝関節の関節内投薬(CG53135−05)を開始し、ラットがイソフルラン麻酔下にある状態で、外科手術後2週間にわたり木曜、土曜及び月曜(0、2、4、7、9及び11日目)に関節内注射することによってこれを継続した。非ステロイド系抗炎症薬であるインドメタシンを、外科手術の日から始めて経口経路で毎日投薬(1mg/kg/日)して、注射に起因するあらゆる潜在的炎症を低減させた。0日、7日及び14日目に体重を記録した。外科手術から14日目に動物を処分した後、両方の膝を組織病理的評価のために収集した。研究設計は、表10に示されている。
【0139】
【表16】
a 毎週3回で2週間の投与(100μg/関節、関節内)
b 毎日で、2週間の投与(0.5mg/kg、PO)
【0140】
治療的投薬:外科手術から21日目に右膝関節の関節内投薬(CG53135−05)を開始し、ラットがイソフルラン麻酔下にある状態で、2週間にわたり金曜、日曜及び火曜(22、25、27、29、32、及び34日目)に関節内注射することによってこれを継続する。インドメタシンを、外科手術の日から始めて経口経路で毎日投薬する。0日、7日、14日、21日、28日及び35日目に体重を記録する。35日目に両方の膝を組織病理的評価のために収集する。研究設計は、表11に示されている。
【0141】
【表17】
a 毎週3回で2週間の投与(100μg/関節、関節内)
b 毎日で、2週間の投与(0.5mg/kg、PO)
【0142】
予防的投薬研究の結果:行なわれた観察には、このモデルのために従った標準が含まれている。右膝の多数の切片(3レベル)を顕微鏡により分析し、以下の方法に従って評定した。3つの切片を評定するにあたっては、3つのレベルを表わす3枚のスライドの各々の上の2個の半分について最悪の場合の筋書きを、軟骨の変性及び骨棘の形成について判定した。各スライドについての各パラメータのこの値を次に平均して、脛骨及び大腿骨についての全体的な主観的軟骨変性評点及び脛骨についての骨棘評点を決定した。
【0143】
以下の基準を用いて深さ及び面積(表面積を3分したもの)について無から重度(数値で0〜5)の評点で軟骨変性を評定した。
0=変性無し
1=表面ゾーンが関与するフィブリル化を伴う又は伴わない、最低限の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失
2=上3分の1が関与するフィブリル化を伴うか又は伴わない軽度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカンの損失
3=フィブリル化が中央ゾーン内に充分拡がり一般に全軟骨厚みの1/2に影響を与えている、中度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失。
4=完全なマトリックス損失(最高到達点まで)は無いが、フィブリル化が深層ゾーン内へ充分に拡がっている状態の、高度の変性、軟骨細胞及びプロテオグリカン損失、
5=重度の変性、最高到達点までのマトリックス損失。
【0144】
この評定方法においては、ゾーン(外側、中央、内側の3分の1)に対する厳密な注意を遵守した。合計評点は、脛骨変性の重症度の包括的合計を反映している。
【0145】
軟骨変性のこの全体的な主観的分析に加えて、脛骨プラトーを横断しての特定の領域的差異に注意を払いながら、変性重症度を評価するため類似の基準を用いて付加的な主観的評価を行なった。このOAモデルでは、一般に、外科手術後3週間までに病巣が往々にして最高到達点まで拡がっている状態で、脛骨の外側1/3が半月板裂傷傷害を最も重症で患っている。中央の1/3は、通常、重度又は高度の変化が中度又は軽度になる遷移ゾーンであり、内部の1/3は、軽度又は最小限よりも大きい変化を有している。外側1/3の重度病巣対中間1/3及び内側1/3のより軽度の病巣について潜在的な治療の差異を判定しようとして、これらの領域を各々別々に評定した。領域の値の合計を計算し、3つのゾーンの合計として表現した。
【0146】
上述の主観的評定に加えて、表面を横断して接線層及び下にある軟骨が組織学的に正常に見える点に至るまでの隣接する軟骨変性(外側1/3)に伴っていかなる骨棘も存在しなかった場合、骨棘又は辺縁帯の起点から拡がるあらゆる重症度の変性を患う脛骨プラトーの全範囲のマイクロメートル測定(全脛骨軟骨変性幅μm)が行われた。
【0147】
付加的な測定(有意な軟骨変性幅μm)は、軟骨細胞及びマトリックスの損失が軟骨厚みの50%超にわたって拡がっていた脛骨軟骨変性の部域を反映していた。
【0148】
最後に、変化した部域の深さと最高到達点までの深さの比率として表わされたあらゆるタイプの病巣のマイクロメートル深さ(細胞/プロテオグリカン損失、メタクロマジア変化、ただしコラーゲンマトリックスの優れた保持を有しフィブリル化は無いかもしれない)が含み入れられ、脛骨表面上の4つの等間隔の点全体にわたって取られた。これらの測定は(No.1)骨棘に隣接するマトリックス、(No.2)脛骨プラトーを横断する距離の1/4、(No.3)脛骨プラトーを横断する距離の1/2、(No.4)脛骨プラトーを横断する距離の3/4、のところで行われた。この測定は、存在するあらゆるタイプの顕微鏡的変化の最も重大な分析であった。最高到達点(分母)までの深さは同様に、脛骨プラトーを横断する軟骨厚みの標示をも提供し、従って、肥大又は過形成が発生したか否かを判定しようとする場合に、グループを横断した比較を可能にする。
【0149】
切片の非接線平面内の全体的厚みを最も良く表わすものと思われている部域内で各切片について単一の成長脛骨板測定を行なった。
【0150】
接眼マイクロメータを用いて、骨棘の評定及び小中大分類を行なった。
無=0、辺縁帯に測定可能な増殖性応答は全く存在しない。
小骨棘=1(最高299μm)
中骨棘=2(300〜399μm)
大骨棘=3(>400μm)
【0151】
評点(0−3)は全体的関節評点の中に含み入れられた。さらに、実際の骨棘測定(平均3つの切片について)のための平均±SEも同様に決定された。
【0152】
一般に、外科手術を行なう上で、半月板が大腿骨に向かって近位に対称移動する結果となる場所で側副靭帯を離断させる試みがなされた。その後、脛骨ではなく大腿骨に向かってハサミの先端を挿入することにより、カットを行なった。このとき大腿骨の顆状軟骨内で幾分かの機械的損傷を検出し得るものの、脛骨上には稀にしか見られず、かくして脛骨は軟骨保護の評価のための最も適切な部位となっている。
【0153】
大腿骨軟骨に対する物理的外傷の結果である可能性が高かったプロテオグリカン及び細胞損失の小さな焦点部域は記述されたものの、脛骨について記述された方法に従って主観的評点を受けるより大きくより広範な部域についての評点内には含み入れられなかった。これらのより大きい部域は、非外傷性変性とより強い一貫性をもっていた。大腿骨上に医原性病巣の可能性があるため、全体的関節評点は、大腿骨軟骨変性評点を伴うものと伴わないものの両方で表現された。
【0154】
以下の基準を用いて、石灰化された軟骨層と軟骨下骨に対する損傷を評定した。
0=変化無し
1=最高到達点における好塩基球増加症の増大:最高到達点の断片化又は骨髄変化無し。
2=最高到達点における好塩基性増加症の増大:最高到達点の石灰化軟骨の最小限乃至は軽度の断片化、骨髄内の間葉変化には合計部域の1/4が関与しているが、一般に病巣下の軟骨下領域に限定されている。
3=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の軽度乃至高度の断片化、骨髄中の間葉変化は合計部域の最高3/4であり、骨髄軟骨形成の部域は明白であり得るが、骨端骨内への関節軟骨の崩壊は全く無い。
4=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の高度乃至重度の断片化、骨髄間葉変化には最高3/4の部域が関与し、関節軟骨は、骨端内に最高到達点から250μm以下の深さまで崩壊していた。
5=最高到達点における好塩基性増加症の増大:石灰化軟骨の高度乃至重度の断片化、骨髄間葉変化には最高3/4の部域が関与し、間節軟骨は、骨端内に最高到達点から250μmを超える深さまで崩壊していた。
【0155】
滑膜炎、滑膜線維症、辺縁帯軟骨形成、骨再吸収、軟骨形成/既存軟骨への取込みを伴うか又は伴わない線維性発育過度の度合について記述的コメントがなされた。
【0156】
統計的分析:組織病理学的パラメータの統計的分析が、有意性がP≦0.05に設定された状態でスチューデント両側t−検定を用いて、グループ平均を比較することによって行なわれた。データの性格のため、評定されたパラメータを分析するのに、非パラメトリックANOVA(クラスカル・ウォリス(Kruskal Wallis)検定を使用し、測定値を分析するのにパラメトリックANOVAを使用した。使用された適切な事後試験は、パラメトリックデータについてのダネット多重比較検定であり、非パラメータデータについてはダン検定が用いられた。有意性は、全てのパラメータについてP≦0.05に設定された。
【0157】
結果:同時インドメタシン投与を伴う又は伴わない100μgのCG53135−05の間節内注射は、中間1/3上で脛骨軟骨変性の有意な阻害(39%)(ゾーン1については40〜43%)、そして41%という合計3ゾーンの全体的に有意でない阻害を結果としてもたらした(図12)。合計軟骨変性幅は有意に35〜37%減少し(図13)、有意な変性は70〜89%減少し、この阻害はタンパク質及びインドメタシン処理したグループ内でのみ有意である(図14)。
【0158】
予防的投薬研究の結果:記述されたデータは、内側半月裂傷を伴うラットの膝関節の中に100μgのCG53135−05を関節内投与すると、軟骨変性の阻害と軟骨修復の刺激の両方の結果としての軟骨保護効果がもたらされるということを示している。一部の関節は、既存の正常とみえる又は損傷した軟骨全体にわたる増殖した新しい軟骨の層状化を有していた。この観察事実は、それが表面再建の発生の可能性を実証することから、特に興味深いものである。
【0159】
これらの有益な効果はつねに、広汎性滑膜線維増殖、骨再吸収及び滑膜炎の増加と結びついていた。同時インドメタシン処置(1mg/kg/日)は、シンビスク(Synvisc)単独の注射を受けた膝における疾病プロセス又はタンパク質を含有するシンビスクの注射を受けた膝におけるタンパク質に対する反応及び疾病プロセスに対して、何らかの効果があったにせよ、それは最小限のものであった。この供述に対する単一の例外は、タンパク質及びビヒクルpoで処置されたグループを除いて全てのグループが類似の測定値を有していた骨棘測定についてのデータの中に反映されている。前記グループは、より大きい測定値を有し、かくして、炎症のある関節においては、普通の出来事であるより大きい辺縁帯刺激を示唆していた。
【0160】
このタンパク質100μgの注射により誘発された形態学的変化は、軟骨修復プロセスにおいてCG53135−05が有効である可能性を実証している。それは、軟骨への分化を伴う線維組織の増殖と、重要なことにその新しく増殖した組織の組込みを誘発する能力を有している。増殖性プロセスは、辺縁帯及び軟骨下骨といったような部域内では幾分かまとまりがなく反生産的である。しかしながら、ゲッ歯類は、炎症性媒介を含むさまざまな刺激から辺縁帯、骨膜及び骨髄の増殖を示すはるかに大きな傾向を確実に有しており、そのためラットにおいて見られる過度の及び反生産的な応答の一部分は、イヌ又は霊長類では起こらない可能性がある。同様に、抗体応答のいくらかの誘発が存在し、かくして抗体応答をもたなかったヒト又はその他の動物においては発生しないと思われる膝の炎症の増強が導かれた可能性がある。
【0161】
骨関節炎におけるCG53135−05の潜在的効能を描写する上で有用な付加的な研究としては、以下のものが含まれる。
【0162】
1. OAのイヌモデルにおける評価−これはヒトにより類似している軟骨及び骨の構造を伴うより大きい関節の中で評価を可能にすると思われ、これは、ゲッ歯類において発生するものといったような超増殖性応答を示す傾向が比較的低い種である。
【0163】
2. 可能な場合にはより攻撃的な抗炎症性全身的療法及びそれに続く新しい組織がいかにリモデリングするかを見るための回復期間を伴う、3〜4週間の関節内注射の評価が有利であると思われる。さらなる増殖性刺激が全く無い状態で関節をリモデリングさせることが、より好ましい形態学的評価項目という結果をもたらすことになるかもしれない。リモデリング期間を伴う処置サイクルは、最も満足のいく修復を達成する方法であるかもしれない。これらのような研究は、同様に、修復組織が長期間持ちこたえるか否かの問題にも答えることになるだろう。一般に、線維軟骨はこれを行なう傾向が少ない。
【0164】
結果:同時経口インドメタシン投与を伴う又は伴わない100μgのCG53135−05の関節内注射は、脛骨軟骨変性評点の有意な阻害を結果としてもたらさなかった(図15)。合計又は有意軟骨変性幅は減少しなかった(図16、17)。
【0165】
治療的投薬研究の結果:記述されたデータは、関節内投与されたCG53135−05の潜在的軟骨増殖的活性を実証した。しかしながら、タンパク質を注射した関節は著しく増大した炎症、線維増殖及び結合組織再吸収プロセスを有していた。
【0166】
予防的投薬と治療的投薬の間の最も重要な差異は、投薬開始時点におけるOA病巣の性質であった。治療的投薬研究におけるラットは、軟骨の外側乃至中間の1/3において重度のマトリックス損失の部域を有し、かくして石灰化軟骨/軟骨下骨をタンパク質に暴露した。かくして有効な修復には、辺縁帯又は暴露された骨髄多能性(pleuripotential)細胞に由来する新たに増殖した組織でこの欠陥を充填することが必要であった。予防的投薬研究においては、有益な効果には、マトリックス分解の阻害及び辺縁帯のみに由来する修復組織での変性足場上の修復の刺激が必要であった。欠陥の充填は損傷を受けた足場の修復よりもはるかにむずかしいと思われることから、有益な効果を得るためには治療的モデルにおいてより長い処置時間が必要となるかもしれない。
【0167】
インドメタシン処置は、炎症変化を削減する上で有効ではなく、骨の中で発生しつつある再吸収プロセスを阻害する上でも有益な効果を全くもたなかった。炎症及び組織破壊が無い状態で軟骨への有効な増殖及び分化を達成するために、治療的投薬研究に対する以下の修正を試みることができる。すなわち、投薬間隔を週1回又は2回まで増大させること及び/又は増殖性組織がこの疾病プロセスによって誘発された大きな軟骨欠陥を充填することのできる時間を与えるべく研究の持続時間を延長すること、である。イヌはゲッ歯類に比べてさまざまな刺激に応えて結合組織を増殖させ骨を再吸収する傾向が少ないことから、イヌといったようなより大きい種においてCG53135−05の効果を調査することが、もう1つの可能性である。
【0168】
本書で詳述されている結果(予防的及び治療的の両方の投薬研究)は、CG53135−05が、関節置換術を目的とした重度の骨関節炎を患う関節において特に有用であることを示している。これらのタイプの作用物質は、わずかしか又は全く正常な軟骨が残っておらず表面再建を必要とする関節内に注射されることになる。この状況下では、修復は、辺縁帯又は骨髄内の多能性細胞を源とする可能性がある。これらの場所を出発点とする修復は、ヒアリン軟骨よりもむしろ線維軟骨の産生を結果としてもたらす確率が高くなる。しかしながら、一部の軟骨は、全く軟骨が無いよりは好ましいと思われ、修復を持続させるために経時的に治療をくり返さなくてはならない確率が高いとしても、軟骨表面を維持する注射可能な方法が受容可能であるかもしれない。注射用同化剤での処置には、持続性能動的耐負荷運動よりもむしろ連続的な受動的運動と併用した或る種の周期的プロセスが必要となる確率が高い。
【0169】
6. 等価物及び引用参考文献
本書で引用されている全ての参考文献は、各々個々の刊行物又は特許又は特許出願が全ての目的で全体として参考により援用されるべく特定的かつ個別に指示された場合と同じ程度で、全ての目的で全体が本明細書に参照により援用されている。
【0170】
当業者にとっては明白となるように、本発明の数多くの修正及び変更を、その精神及び範囲から逸脱することなく加えることが可能である。本書中に記述されている特定の実施形態は、例示のみを目的として提供されている。従って、本発明者らはここで記されている精確な用語に限定されることを望む者ではなく、本発明をさまざまな用途及び条件に適合させるために行なうことのできるような変化及び改変を利用できることを望む者である。かかる改変及び変化には、対象に対する本発明に従ったポリペプチドの投与のための異なる組成物;異なるポリペプチド量;異なる投与回数及び投与手段;例えば異なるペプチドの組合せ又は異なる生物学的に活性な化合物とペプチドの組合せを含む投与用量内に含まれる異なる材料が含まれるが、これらに限定されるわけではない。かかる変化及び改変は同様に、かかる変化がポリペプチドの機能性を変更せず、対象に投与すべき組成物中のペプチドの可溶性、身体によるペプチドの吸収、保管寿命中の又は体内でペプチドの生物学的活動が所望の効果をもたらすことのできる時までのポリペプチドの保護及びこのような類似の修飾を変更するような形で配列を改変する、本書中で記述されている特定のポリペプチドのアミノ酸配列中の修飾を含むように意図されている。従ってかかる変化及び改変は、本発明の等価物の全範囲内に入るものとして適切に意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】CG53135−05の液体クロマトグラフィ及び質量分析法を示す。CG53135−05は、95%の水、5%のアセトニトリル及び0.1%のトリフルオロ酢酸を含有する水系移動相中のフェニル−ヘキシルカラム上に注入された。その後タンパク質を、95%のアセトニトリル、5%の水、及び0.085%のトリフルオロ酢酸を含有する有機移動相での非線形勾配を用いることによって溶出させた。4つのピークの各々は、LC/ESI/MS、MALDI−TOF MS及びN−末端アミノ酸配列決定を用いて特徴づけした。
【図2A】CG53135−05のペプチドマップを表わす。各図版内の上部のトレースは、CG53135−05のペプチドマップを表し、各図版内の下部のトレースは、同様の要領で、ただしCG53135−05無しで処置された同一の試料を表わしている。CG53135ペプチドを監視するための214nmでの検出。
【図2B】CG53135−05のペプチドマップを表わす。各図版内の上部のトレースは、CG53135−05のペプチドマップを表し、各図版内の下部のトレースは、同様の要領で、ただしCG53135−05無しで処置された同一の試料を表わしている。トリプトファン含有ペプチドを監視するための295nmでの検出。
【図3】CG53135のレセプタ結合特異性を示す。NIH3T3細胞を血清欠乏させ、指示された因子(緑色正方形=血小板由来の成長因子;青色三角形=FGF−1;赤色円=CG53135)を単独で又は指示された可溶性FGFRと共に用いてインキュベートし、CG53135に応答するDNA合成をBrdU取込み検定の中で測定した。データの点数は、トリプリケートウェルから得た平均を表わし、因子を単独で受ける細胞に関するBrdU取込みパーセントとして表わされている。
【図4】前肢置き直し試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図5】後肢置き直し試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図6】ボディスイング試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。右方への約50%の揺動の評点範囲は、いかなる機能障害も無いことを表し、一方右方への0%揺動は最大の機能障害を表す。アスタリスクは、一方向ANOVAによって評価される通りのビヒクル対照からの有意な差異を示している。
【図7】シリンダ試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて評点の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。
【図8】体重試験の結果を示す。ビヒクル(菱形)、注射1回あたり1.0μgのCG53135−05(正方形)及び2.5μgのCG53135−05(三角形)を受けるグループについて体重の平均及び標準誤差が経時的に表わされている。
【図9】IL−1ベータの存在下でのSW1353細胞中のPro−MMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図10】TNF−アルファの存在下でのSW1353細胞中のPro−MMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図11】SW1353細胞内のTIMP産生に対するCG53135−05の効果を示す。
【図12】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の効果(予防的投薬)対内側脛骨軟骨変性の関係を示す。
【図13】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果:(予防的投薬)対全軟骨変性幅の関係を示す。
【図14】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果:(予防的投薬)対有意な脛骨軟骨変性幅の関係を示す。
【図15】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対内側脛骨変性の関係を示す。
【図16】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対全軟骨変性幅の関係を示す。
【図17】ラット骨関節炎の半月板裂傷モデル内のCG53135−05の関節内注射の結果(治療的投薬)対有意な脛骨軟骨変性幅の関係を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象における骨関節炎関連障害の治療方法。
【請求項2】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予防上有効な用量の前記ポリペプチドが対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療上有効な用量の前記ポリペプチドが対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが非経口経路により投与される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与経路が、関節内、静脈内、筋内、皮下、又は皮内投与から成る請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療上有効な量の前記ポリペプチドが医薬組成物の形で処方される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の体内で軟骨変性を低減させる方法。
【請求項9】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の体内で軟骨修復を刺激する方法。
【請求項1】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象における骨関節炎関連障害の治療方法。
【請求項2】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予防上有効な用量の前記ポリペプチドが対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療上有効な用量の前記ポリペプチドが対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが非経口経路により投与される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与経路が、関節内、静脈内、筋内、皮下、又は皮内投与から成る請求項5に記載の方法。
【請求項7】
治療上有効な量の前記ポリペプチドが医薬組成物の形で処方される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の体内で軟骨変性を低減させる方法。
【請求項9】
CG53135−05ポリペプチドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象の体内で軟骨修復を刺激する方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−516223(P2007−516223A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532928(P2006−532928)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/014623
【国際公開番号】WO2004/100892
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/014623
【国際公開番号】WO2004/100892
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(301062363)キュラジェン コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
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