説明

新規膜貫通蛋白質をコードする遺伝子

【課題】躁うつ病の原因遺伝子の塩基配列ならびにその塩基配列がコードする蛋白質のアミノ酸配列を提供する。
【解決手段】ヒト21番遺伝子から単離し、その塩基配列がコードする特定のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ膜貫通蛋白質であるポリペプチド、前記ポリペプチドを含有する躁うつ病患者の治療のための組成物、および前記ポリペプチドの存在を分析することからなる躁うつ病の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトの新規遺伝子に関するものであり、より詳細には躁うつ病の原因遺伝子と考えられる、新規膜貫通蛋白の遺伝子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
躁うつ病は、主として20歳頃から初老期に至る間に発病する疾患で、精神分裂病と並ぶ2大内因性精神病の1つである。その精神症状の中心は感情障害であり、周期的な経過をとり、病相を反復しても普通の精神状態に復し、精神荒廃(欠陥状態)を残さないという特徴がある。病相は、感情の高揚や意欲の促進を示す躁状態と、感情の抑うつ状態があり、それぞれの病相(数週〜数カ月)の繰り返し、あるいは両病相の交互の出現をみるが、時に1回だけの病相で終わることもある。本病の治療には、抗うつ薬、抗精神病薬が用いられ、リチウム塩の登場により、薬物療法が最も重要な位置を占めるようになっている。
【0003】
本病の罹病危険率は、大まかなところ、一般人口の0.4%前後とされているが、医療を受けなくて済むような軽症例をも入れると、この数字をかなり上回るものと思われる。昭和38年の厚生省の実態調査による有病率は0.02%であるが、もちろんこれには調査時の非顕現例は含まれていない。人種や分化、地域によるある程度の差があり、分化の高い民族、また上級の社会階層に出現頻度が高い傾向が指摘されている。女性の方が男性よりも多いといわれているが、わが国では必ずしも明確ではない。
【0004】
また、本病はその病態により単極型unipolar type(うつ病相のみ示す型)と双極型bipolar type(両病相あるいは躁病相のみを示す型)に分類されるが、単極型と双極型を比べてみると、1:6〜10で単極型が圧倒的に多い。特に中年以降にこの傾向が著明である。
【0005】
躁うつ病の診断は、感情障害を中心とした臨床症状により下される。感情障害に伴いセロトニンやノルアドレナリンの量が変動しているという報告もあり、血液、尿、あるいは髄液におけるモノアミン代謝関連物質などの動態が注目されている。また、甲状腺や副腎皮質等の内分泌機能の障害や、神経伝達機構に影響を与える電解質代謝異常も注目されているが、診断に利用できるような臨床検査法は確立していない。
【0006】
躁うつ病の発病には遺伝素質が重要な役割を演じていると考えられている。家系研究(経験的遺伝予後)によると、発端者の家族内の罹病危険率は一般人のそれに比しはるかに高い。発端者の同胞、両親、子供の間には大差がなく、ほぼ10〜15%の危険率とされている。ただ、最近の研究では、躁うつ病とされている単位が遺伝的に必ずしも単一なのもではなく、一般に双極型の躁うつ病が単極型のうつ病に比し家族内の罹病危険率が高く、また双極型の発端者の家系には双極型の患者が、単極型のそれには単極型の患者が多い傾向が示されている。
【0007】
双生児法の研究によっても遺伝素質の関与が明らかであり、一卵性双生児の一致率は二卵性双生児に比し著しく高率である。但し、不一致例が少なくないので、精神分裂病の場合と同じように、躁うつ病の遺伝子も環境によってその表現がかなり影響を受けるものと考えられる[1]。
【0008】
躁うつ病の遺伝様式は、家族要因がきわめて濃厚なごく一部の家系を除いて、単一遺伝子によるメンデル遺伝では説明できず、大多数の症例は、複数の遺伝子と環境要因とが関与する多因子・ポリジーン遺伝であると考えられている。また、躁うつ病がいわゆる内因性、すなわち、疾患に特異的な器質性変化、生物学的マーカー、発症機序などが明らかにされていないために、遺伝子研究はさらに困難なものとなっている。
【0009】
1987年にEgelandらは、11番染色体のq15の遺伝子HRAS1INSと双極型躁うつ病との間に強い連鎖があることを報告した[2]。同じ頃Baronらは、双極性障害の多発家系におけるX染色体のq28上の色盲とGP6Dをマーカーとした研究で、双極性障害との間に強い連鎖があることを報告している[3]。しかし、これらの報告はその後の研究では連鎖を否定する結果も出ており確定した知見ではない。このほかに躁うつ病との連鎖が高いという報告がなされた染色体の領域は、Xq26−27[4]、4q16[5]、18q22−23[6]、18centro[7]、および21q22.3[8]等があげられる。
【0010】
しかしながら、躁うつ病の連鎖研究では、連鎖を示唆する所見が多数得られている一方で、それらを否定する結果も多く[9]、混沌とした状態が続いている。結果として、一つも確定した知見とはなっていないし、躁うつ病の遺伝子としてクローニングされたものは未だにないのが現状である[10]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】精神医学 三浦貞則編 日本医事新報社
【非特許文献2】Nature 325:783−787(1987)
【非特許文献3】Nature 326:289−292(1987)
【非特許文献4】Lancet i:1230−1232(1987)
【非特許文献5】Nature Genet.12:427−430(1996)
【非特許文献6】Nature Genet.12:436−441(1996)
【非特許文献7】Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5918−5921(1994)
【非特許文献8】Nature Genet.8:291−296(1994)
【非特許文献9】Nature Genet.12:431−435(1996)
【非特許文献10】脳の科学 20:253−257(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決すべき課題は、躁うつ病の原因遺伝子の塩基配列ならびにその塩基配列がコードする蛋白質のアミノ酸配列を決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題の解決のために鋭意検討を行った結果、ヒト21番染色体のq22.3領域から新たな遺伝子を単離し、その塩基配列を決定した。この塩基配列をもとにプライマーを設定し、躁うつ病患者の遺伝子をPCRにより増幅し解析した結果、双極型躁うつ病患者検体20例中10例でこの遺伝子のexon5に欠失があることが確認された。したがって、この遺伝子は躁うつ病の原因遺伝子であると考えられる。
【0014】
TRPC7と命名されたこの遺伝子のオープンリーディングフレームは、1,503残基からなる分子量171,217の蛋白質をコードしていて、7つの膜貫通領域を持つことが判明した。また、データベースに対してホモロジー検索を行った結果、カルシウムチャンネルであるDrosophilaTRP(Transient Receptor Potential)蛋白質やヒトTRP蛋白質と相同性を示した。
【0015】
本発明の一つの目的は、ポリペプチド、とりわけDrosophila TRP蛋白質やヒトTRP蛋白質のような公知アミノ酸配列の間の相同性によってTRPC7と命名された配列番号2に示すポリペプチドを提供することである。TRPC7は他のTRPと同様に7カ所の膜貫通領域を有していて、カルシウムチャンネルとして作用すると推測される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、TRPC7をコードするポリヌクレオチド、特に、本明細書でTRPC7と命名するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供するものである。本発明のこの態様の特に好ましい具体例は、配列番号1に示す配列におけるヒトTRPC7をコードする領域からなるポリヌクレオチドである。
【0017】
本発明のこの態様によれば、mRNA、cDNA、ゲノムDNAおよびそのフラグメントを含むヒトTRPC7をコードする単離された核酸分子が提供され、この態様のさらなる具体例では、生物学的、診断的、臨床的または治療的に有用なそれらの変種、類縁体または誘導体あるいは変種、類縁体または誘導体のフラグメントを含むこれらのフラグメントが提供される。本発明のこの態様の特に好ましい具体例は、ヒトTRPC7の天然の対立遺伝子変種である。
【0018】
本発明の目的は、躁うつ病の治療に使用できるTRPC7ポリペプチド、特に、ヒトTRPC7ポリペプチドを提供することである。本発明のこの態様に従い、本明細書でTRPC7と称されるヒト由来の新規ポリペプチドならびにその生物学的、診断的または治療的に有用なフラグメント、変種および誘導体、フラグメントの変種および誘導体、これらの類縁体が提供される。本発明のこの態様の特に好ましい具体例は、ヒトTRPC7遺伝子の天然の対立遺伝子によってコードされるヒトTRPC7の変種である。本発明の他の態様においては、本発明のポリペプチドと結合し、それを活性化するかまたは抑制する化合物のスクリーニング法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、前記のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、変種および誘導体、変種および誘導体のフラグメントならびに類縁体の産生法を提供することである。この態様の好ましい具体例においては、発現可能に組み込まれた外因的に誘導されたヒトTRPC7をコードする塩基配列を含む宿主細胞を、宿主中でのヒトTRPC7の発現のための条件下で培養し、発現された該ポリペプチドを回収することからなる前記のTRPC7ポリペプチドの産生法が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の目的により、前記ポリペプチドおよびポリヌクレオチドを、とりわけ、研究、生物学的、臨床的および治療目的に利用する生産物、組成物、プロセスおよび方法が提供される。
【0021】
本発明のこの態様の好ましい具体例によれば、とりわけ、TRPC7ポリペプチドまたはTRPC7 mRNAの測定による細胞におけるTRPC7発現の評価;本明細書に開示されるTRPC7ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに細胞を曝すことによる、躁うつ病のin vitro、ex vivoまたはin vivoにおける処置;TRPC7遺伝子における欠損のような遺伝的変形および欠陥の分析;および生物にTRPC7ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを投与するTRPC7機能の増大またはTRPC7機能不全の改善のための生産物、組成物および方法が提供される。本発明のさらに別の具体例により、TRPC7の過少発現に関連する症状の治療に、本発明のレセプターポリペプチドを刺激するための活性化化合物を用いる方法が提供される。本発明のさらに別の態様により、TRPC7の過剰発現に伴う症状の治療に、そのための抑制化合物を用いる方法が提供される。
【0022】
本発明のさらに別の態様により、診断、治療および/または研究用に用いられる、合成または組み換えTRPC7ポリペプチド、その保存的置換および誘導体、それに対する抗体、抗イディオタイプ抗体が提供される。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、サブタイプとして種々のTRPC7またはそのフラグメントを抑制または模倣するように設計された、合成、単離または組換えポリペプチドを提供することである。本発明のこれらの、またさらに別の態様の具体例により、ヒトTRPC7配列にハイブリダイズするプローブが提供される。本発明のこの態様のさらなる好ましい態様においては、TRPC7ポリペプチドに対する抗体を提供する。この点で特に好ましい具体例においては、抗体はヒトTRPC7に対して非常に選択的である。本発明のもう一つ別の態様においては、TRPC7アゴニストが提供される。好ましいアゴニストは、TRPC7を模倣する分子、TRPC7結合分子およびTRPC7誘発応答の引き出しまたは増大をする分子である。また、好ましいアゴニストは、TRPC7またはTRPC7ポリペプチド、またはTRPC7活性の他のモジュレーターと相互反応し、それによりTRPC7の1つの効果またはTRPC7の1つ以上の効果を発効または増大させる分子である。本発明の他の態様によれば、TRPC7アンタゴニストが提供される。好ましいアンタゴニストは、TRPC7を模倣し、TRPC7結合分子に結合するが、1つまたは1つ以上のTRPC7誘発応答を引き出さないものである。また、好ましいアンタゴニストは、TRPC7と結合し、または相互反応し、1つまたは1つ以上のTRPC7の効果を阻害するか、TRPC7の発現を防止する分子である。本発明のさらなる態様においては、細胞にin vitro、ex vivoおよびin vivoで、あるいは多細胞生物に投与するTRPC7ポリヌクレオチドまたはTRPC7ポリペプチドからなる組成物を提供する。本発明のこの態様の特に好ましい具体例においては、該組成物は、疾患の治療のために宿主生物においてTRPC7ポリペプチドを発現させるためのTRPC7ポリヌクレオチドからなる。この点で特にこのましいのは、躁うつ病患者における発現である。
【0024】
本発明の他の目的、特徴、利点および態様は本明細書の以下の記載から当業者に自明である。しかし、以下の記載、実施例は本発明の好ましい具体例であり、例示だけのものである。以下の記載および本明細書の他の開示から、本明細書に記載の範囲内において、種々の変形および修正ができることは当業者に自明であろう。図面も本発明の具体例を示すもので、例示であり、本明細書に開示の発明をそれに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】21番染色体q22.3の領域から構築したコスミドコンティグを示す。
【図2】TRPC7の遺伝子構造を示す。
【図3】各種TRP蛋白質の膜貫通領域のアミノ酸配列の比較を示す。
【図4】各種ヒト組織におけるTRPC7遺伝子発現のノーザンブロット解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のポリヌクレオチドは、mRNAのようなRNAまたは、例えば、クローニング、化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAおよびゲノムDNAを包含するDNAの形態でよい。DNAは二本鎖でも、一本鎖でもよい。一本鎖DNAは、センス鎖としても知られるコーディング鎖でも、アンチセンス鎖とも称される非コーディング鎖でもよい。ポリヌクレオチドをコードするコーディング鎖は配列番号1に示すポリヌクレオチドのコーディング配列と同じでよい。また、遺伝コードの重複性(縮重)の結果として、配列番号2のポリペプチドをコードする異なる配列を有するポリヌクレオチドでもよい。
【0027】
配列番号2のポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドは、限定するものではないが、それ自体がマチュア・ポリペプチドのコーディング配列;プレ−、プロ−またはプレプロ−蛋白質配列のような、マチュア・ポリペプチドのコード配列と、リーダーまたは分泌配列をコードする配列のような、付加的コーディング配列;ならびに上記の付加的配列を有するか、または有しないマチュア・ポリペプチドのコーディング配列と、限定するものではないが、転写、スプライシングやポリアデニレーション・シグナルを包含するmRNAのリボソーム結合および安定性についてのmRNAプロセッシングにおいて役割を果たす、転写される非翻訳配列のようなイントロンおよび非コーディング5’および3’配列を包含する付加的な非コーディング配列とからなる配列を包含する。さらなる機能性を与えるコーディング配列も該ポリペプチドに組み込んでよい。すなわち、例えば、ポリペプチドは、融合ポリペプチドの精製を容易にするような、ペプチドのごときマーカー配列と融合させてもよい。本発明のこの態様のある種の好ましい具体例において、マーカー配列はpQEベクター(Qiagen,Inc.)に付与されたタグのようなヘキサヒスチジンペプチドである。例えば、ヘキサヒスチジンは融合蛋白質の都合よい精製を提供する[11]。HAタグはインフルエンザ赤血球凝集蛋白質から由来するエピトープで[12]、他の多くのタグが商業的に入手できる。
【0028】
上記に従って、本明細書で使用する「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」なる語は、遺伝コードの重複性から、本発明のポリペプチド、特に、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するヒトTRPC7をコードするいずれかの配列を含むポリヌクレオチドを包含する。この用語はまた、該ポリペプチドをコードする単一の連続領域または不連続領域(例えば、イントロンで中断されている)と、コーディングおよび/または非コーディング配列を含んでいてよい付加的領域とを含むポリヌクレオチドも包含する。本発明はさらに、配列番号2の推定アミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメント、アナログおよび誘導体をコードする上記ポリヌクレオチドの変種にも関する。該ポリヌクレオチドの変種は、天然の対立遺伝子変種のような天然の変種でも、天然には知られていない変種でもよい。そのような非天然のポリヌクレオチドの変種は、ポリヌクレオチド、細胞または生物に適用されるものを含め、突然変異誘発技術により作出できる。
【0029】
この点で、変種には、上記ポリヌクレオチドとは、塩基の置換、欠失または付加によって異なる変種がある。この置換、欠失または付加には、1つ以上の塩基が含まれ得る。変種は、コーディングまたは非コーディング領域あるいは両方において変化してよい。コーディング領域における変化は、保存または非保存アミノ酸置換、欠失または付加を生じ得る。この点で、本発明の特に好ましい具体例は、配列番号2に示すTRPC7のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、その変種、アナログ、誘導体およびフラグメントおよび該変種、アナログおよび誘導体のフラグメントである。さらに、この点で特に好ましいものは、配列番号2のTRPC7ポリペプチドのアミノ酸配列において、数個、5〜10、1〜5、1〜3、2、1または0個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加あるいはそれらの何れかの組み合わせであるTRPC7変種、アナログ、誘導体およびフラグメントならびにフラグメントの変種、アナログおよび誘導体をコードするポリヌクレオチドである。これらのうちで、特に好ましいものは、TRPC7の性質および活性を変化させないサイレント置換、付加および欠失である。また、この点で保存置換も特に好ましい。最も好ましくは、置換のない配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0030】
本発明のさらに好ましい具体例は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するTRPC7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと少なくとも約70%の同一性であるポリヌクレオチド、およびそのようなポリヌクレオチドに相補性のポリヌクレオチドである。この点で、該ポリヌクレオチドに対して少なくとも90%の同一性を有するものが非常に好ましく、少なくとも95%の同一性を有するものが殊に好ましい。さらにまた、少なくとも97%がより好ましく、少なくとも95〜99%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性を有するものである。さらにまた、この点で特に好ましい具体例は、配列番号2のcDNAによってコードされるマチュア・ポリペプチドと、実質的に同じ生物学的機能または活性を保持するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0031】
本発明はまた、上記の配列とハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。この点で、本発明は、特に、上記のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本明細書で使用する「ストリンジェントな条件」とは、配列間に少なくとも95%、好ましくは少なくとも97%の同一性がある場合にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。本発明のポリヌクレオチド分析に関してさらに検討するように、例えば、上記の本発明のポリヌクレオチドは、TRPC7をコードする完全長cDNAおよびゲノムクローンを単離するため、また、ヒトTRPC7遺伝子に対して高い配列類似性を有する他の遺伝子のcDNAおよびゲノムクローンを単離するためのcDNAおよびゲノムDNA用のハイブリダイゼーション・プローブとして使用できる。そのようなプローブは一般に少なくとも15塩基からなる。好ましくは、そのようなプローブは、少なくとも30塩基を有し、少なくとも50塩基を有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50塩基の範囲である。
【0032】
例えば、TRPC7遺伝子のコーティング領域は、公知の配列をオリゴヌクレオチドプローブ合成に使用してスクリーニングすることにより単離できる。ついで、本発明の遺伝子の配列に相補性を有するラベルしたオリゴヌクレオチドを使用し、ヒトcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAライブラリーをスクリーニングし、プローブがハイブリダイズするものを決定する。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、本明細書において、ポリヌクレオチドに関して検討したとおり、ヒトの疾患の治療および診断用の研究試薬および材料として使用できる。ポリヌクレオチドは、マチュア蛋白質に、付加的アミノまたはカルボキシル末端アミノ酸またはマチュア・ポリペプチドに対する内部アミノ酸(例えば、マチュア形が2つ以上のポリペプチド鎖を有する場合)が加わったポリペプチドをコードしてよい。このような配列は、とりわけ、蛋白質を前駆体からマチュア形へプロセッシングする際に役割を果たし得、蛋白質トラフィッキングを容易にし得、蛋白質の半減期を延長または短縮し得、あるいは分析または製造のために蛋白質の操作を容易にし得る。ここで、一般的には、付加的アミノ酸配列はin situで細胞酵素によりマチュア蛋白質から外れるようにプロセッシングされ得る。
【0033】
1つ以上のプロ配列に融合したポリペプチドのマチュア形を有する前駆体蛋白質は、該ポリペプチドの不活性形であってよい。プロ配列を除去すると、一般に、不活性前駆体は活性化される。プロ配列のいくつか、または全部は、活性化前に除去してよい。一般に、そのような前駆体をプロ蛋白質と言う。総じて、本発明のポリヌクレオチドはマチュア蛋白質、マチュア蛋白質とリーダー配列(プレ蛋白質とも称することができる)、プレ蛋白質のリーダー配列ではない1つ以上のプロ配列を有するマチュア蛋白質の前駆体、または、ポリペプチドの活性形もしくはマチュア形を製造するプロセッシング工程の間に除去されるリーダー配列および1つ以上のプロ配列を有するプロ蛋白質の前駆体であるプレプロ蛋白質をコードできる。
【0034】
本発明はさらに、配列番号2の推定アミノ酸配列を有するヒトTRPC7ポリペプチドに関する。また、本発明はこれらのポリペプチドのフラグメント、アナログおよび誘導体にも関する。配列番号2のポリペプチドに言及する場合、「フラグメント」、「誘導体」および「アナログ」なる用語は、実質的にこのようなポリペプチドと同じ生物学的機能または活性、すなわちTRPC7としての機能を有するポリペプチドを意味する。アナログは、例えば、プロ蛋白質部の開裂により活性化され、活性なマチュア・ポリペプチドを産生しうるプロ蛋白質を包含する。本発明のポリペプチドは、組み換えポリペプチド、天然のポリペプチドまたは合成ポリペプチドでよく、好ましくは組み換えポリペプチドである。配列番号2のポリペプチドのフラグメント、誘導体またはアナログは、(i)1またはそれ以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ残基)で置換されていて、このような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードされているかまたはコードされていないもの;(ii)1またはそれ以上のアミノ酸残基が置換基を包含するもの、(iii)マチュア・ポリペプチドが他の化合物、例えば、ポリペプチドの半減期を増加させるような化合物(例えば、ポリエチレングリコール)と融合しているもの、または(iv)リーダーまたは分泌配列またはマチュア・ポリペプチドまたはプロ蛋白質配列の精製に使用される配列のような付加的のアミノ酸がマチュア・ポリペプチドと融合したものであり得る。このようなフラグメント、誘導体およびアナログは本明細書の記載から当業者の範囲内と考えられる。
【0035】
この点で、本発明の特に好ましい具体例は、配列番号2に示すTRPC7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、その変種、アナログ、誘導体およびフラグメント、ならびにフラグメントの変種、アナログおよび誘導体である。さらに、この点で特に好ましい本発明の具体例は、TRPC7のアミノ酸配列を有するポリペプチド、TRPC7の活性/機能を保持するその変種、アナログおよび誘導体、ならびにフラグメントの変種、アナログおよび誘導体である。好ましい変種は、保存アミノ酸置換によって対象物と変化しているものである。かかる置換は、同様な特性の他のアミノ酸によってポリペプチドの所定アミノ酸が置換されているものである。典型的な保存置換は、脂肪族アミノ酸Ala、Val、LeuおよびIle相互の置換、ヒドロキシル残基SerおよびThrの相互交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGln間の置換、塩基残基LysおよびArg間の交換ならびに芳香族残基PheおよびTyr間の置換である。
【0036】
さらに、この点で特に好ましいものは、配列番号2のTRPC7ポリペプチドのアミノ酸配列において、数個、5〜10、1〜5、1〜3、2、1または0個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加あるいはそれらの何れかの組み合わせであるTRPC7変種、アナログ、誘導体およびフラグメントならびにフラグメントの変種、アナログおよび誘導体である。これらのうちで、特に好ましいものは、TRPC7の性質および活性を変化させないサイレント置換、付加および欠失である。また、この点で保存置換も特に好ましい。最も好ましくは、置換のない配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは、単離された形で、好ましくは均質に精製された形で提供される。
【0037】
本発明のポリペプチドは、配列番号2のポリペプチド(特に、マチュア・ポリペプチド)ならびに、配列番号2のポリペプチドと少なくとも約70%の同一性を有するポリペプチド、さらに好ましくは配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも80〜90%の類似性(さらに好ましくは、少なくとも90%の同一性)を有するポリペプチド、さらに好ましくは配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも95%の類似性(さらに好ましくは、少なくとも95%の同一性)を有するポリペプチドを包含し、また、そのようなポリペプチドの、一般に、少なくとも30アミノ酸、より好ましくは少なくとも50アミノ酸を含有する部分も包含する。2つのポリペプチド間の類似性は、上記したごとく定義され、測定される。
【0038】
本発明のポリペプチドのフラグメントまたは部分はペプチド合成による対応する完全長ポリペプチドの産生に用いられる。したがって、フラグメントは完全長ポリペプチドを産生するための中間体として用いられる。本発明のポリヌクレオチドのフラグメントまたは部分は本発明の完全長ポリヌクレオチドの合成に用いられる。フラグメントは、「自立」、すなわち、他のアミノ酸またはポリペプチドの一部またはそれに融合したものでなくても、大きなポリペプチド内に含まれ、その一部または領域を形成しているものでもよい。より大きなポリペプチド内に含まれる場合、ここで議論するフラグメントは、最も好ましくは、単一の連続した領域を形成する。しかし、数個のフラグメントが、単一のより大きいポリペプチドに含まれていてもよい。例えば、ある好ましい具体例は、宿主中での発現用に設計された前駆体ポリペプチド内に含まれ、TRPC7フラグメントのアミノ末端に融合した異種プレおよびプロポリペプチド領域と、当該フラグメントのカルボキシ末端に融合した付加的領域を有する本発明のTRPC7ポリペプチドのフラグメントである。したがって、本明細書で意図する意味の1つの態様におけるフラグメントは、TRPC7から由来する融合ポリペプチドまたは融合蛋白質の部分を言う。
【0039】
本発明のポリペプチドフラグメントの代表的な例としては、長さが約5〜15、10〜20、15〜40、30〜55、41〜75、41〜80、41〜90、50〜100、75〜100、90〜115、100〜125および110〜113個のアミノ酸のものが挙げられる。ここに、「約」には、特に、言及した範囲が、一方または両方の極限で、数個、5、4、3、2または1アミノ酸残基だけ大きいまたは小さい範囲を含むことである。例えば、約40〜90アミノ酸とは、40±数個、5、4、3、2または1アミノ酸残基〜90±数個、5、4、3、2または1アミノ酸残基、すなわち、広くは40−数個のアミノ酸〜90+数個のアミノ酸の範囲から、狭くは40+数個のアミノ酸〜90−数個のアミノ酸の範囲を意味する。この点で非常に好ましいのは、一方または両方の極限で、言及した範囲の5アミノ酸だけ+または−のものである。特に好ましいものは、一方または両方の極限で、言及した範囲の3アミノ酸だけ+または−のものである。特に非常に好ましいものは、一方または両方の極限で、言及した範囲の1アミノ酸だけ+または−のものである。これら全ての点から、最も好ましいものは、長さ、約5〜15、10〜20、15〜40、30〜55、41〜75、41〜80、41〜90、50〜100、75〜100、90〜115、100〜125および110〜113個のアミノ酸のものである。
【0040】
本発明の特に好ましいフラグメントは、TRPC7のトランケーション変異体である。トランケーション変異体には、配列番号2のアミノ酸配列を有するTRPC7ポリペプチド、あるいはその変種または誘導体が包含される。ただし、ダブルトランケーション変異体におけるような、アミノ末端を含む連続した一連の残基(すなわち、連続領域、部分、部位)、またはカルボキシ末端を含む連続した一連の残基のような欠失、1つがアミノ末端を含み、他のものがカルボキシ末端を含むような2つの連続した一連の残基の欠失は除かれる。本発明の膜結合レセプターの特に好ましいフラグメントには、付属したトランスメンブランドメインおよび細胞質ドメインのない細胞外ドメインからなるレセプターの可溶形またはトランスメンブラン領域の欠失により、細胞外ドメインが細胞質ドメインと直接融合したレセプターが包含される「13]。上記の範囲のサイズを有するフラグメントもトランケーションフラグメントの好ましい具体例であり、一般に、フラグメントのうちで特に好ましい。
【0041】
また、本発明のこの態様で好ましいものは、TRPC7の構造的または機能的特質により特徴付けられるフラグメントである。この点で、本発明の好ましい態様には、TRPC7のα−ヘリックスおよびα−ヘリックス形成領域(α−領域)、β−シートおよびβ−シート形成領域(β−領域)、ターンおよびターン形成領域(ターン領域)、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、フレキシブル領域、表面形成領域および高抗原性インデックス領域が包含される。この点で特に好ましいフラグメントは、上記した特徴の幾つかのごとき、幾つかの構造的特徴を組み合わせたTRPC7の領域からなるフラグメントである。この点で、いずれも、ターン領域、親水性領域、フレキシブル領域、表面形成領域および高抗原性インデックス領域の特徴を有するアミノ酸組成によって特徴付けられる、配列番号2の約10〜20、約40〜50、約70〜90および約100〜113の残基によって規定される領域が、特に好ましい領域である。このような領域は、より大きいポリペプチドに含まれるか、上記したように、それ自体、本発明の好ましいフラグメントである。ここにおける「約」なる語は、フラグメントについて上記で一般的に記載したと同様な意味で使用する。
【0042】
さらに好ましい領域は、TRPC7の活性を伝達するものである。この点で最も好ましいものは、同様なまたは向上した活性あるいは望ましくない活性の低下したものを含め、TRPC7の化学的、生物学的またはその他の活性を有するフラグメントである。この点で好ましいものは、TRPおよびヒトTRPのような関連するポリペプチドの活性領域に対し、配列または位置または配列および位置の両方におけるホモログである領域を含むフラグメントである。この点での特に好ましいフラグメントは、上記したトランケーション変異体または細胞質、トランスメンブランまたは細胞外ドメインからなるフラグメントである。本発明のフラグメントには、トランスメンブランドメインのみ欠失し、少なくともそれ自体の細胞質ドメインが保持されているか、少なくとも別の細胞質ドメインと融合していることにより形成されるフラグメントが包含される[14]。とりわけ、本発明は、上記のフラグメントをコードするポリヌクレオチド、該フラグメントをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、特に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドおよびPCRプライマーのような、該フラグメントを増幅するポリヌクレオチドも関する。この点で、好ましいポリヌクレオチドは、上記の好ましいフラグメントに対応するフラグメントである。
【0043】
本発明はまた、ポリヌクレオチドまたは本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクターで遺伝子操作される宿主細胞および組み換え技法による本発明のポリペプチドの製造にも関する。宿主細胞を遺伝子操作して、本発明のポリヌクレオチドを組み込み、本発明のポリペプチドを発現させることができる。例えば、ポリヌクレオチドは、よく知られたインフェクション、トランスダクション、トランスフェクション、トランスベクションおよびトランスフォーメーションの技術を用いて宿主細胞に組み込むことができる。ポリヌクレオチドは、単独でも他のポリヌクレオチドと共に組み込むことができる。このような他のポリヌクレオチドは独立して組み込むことも、一緒または本発明のポリヌクレオチドに連結して組み込むこともできる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、他の、選択可能なマーカーをコードする別のポリヌクレオチドと共に、例えば、哺乳動物細胞における共トランスフェクションおよび選択のための標準的な方法を用いて宿主細胞にトランスフェクションできる。この場合、ポリヌクレオチドは一般に、宿主細胞ゲノムに安定に組み込むことができる。
【0044】
別法として、ポリヌクレオチドは、宿主中で、増殖用の選択可能なマーカーを含むベクターと連結できる。該ベクター構築物は、上記の技術によって宿主細胞に組み込むことができる。一般に、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物中または荷電脂質との複合体のDNAとしてプラスミドベクターに組み込まれる。ポリヌクレオチドを宿主中に組み込むために、電気穿孔法も使用できる。ベクターがウイルスの場合、in vitroでパッケージするか、パッケージ細胞に組み込み、パッケージしたウイルスを細胞にトランスダクションすることができる。本発明のこの態様に従って、ポリヌクレオチドを作成し、ポリヌクレオチドを細胞に組み込むために適した種々の技術がよく知られており、当業者に日常的の仕事となっている。そのような技術は[15]に詳細に説明されており、これはこれらの技術の詳細を示す多くの実験室マニュアルを説明している。本発明のこの態様によれば、ベクターは、例えば、プラスミドベクター、一本鎖もしくは二本鎖ファージベクターまたは一本鎖もしくは二本鎖RNAもしくはDNAウイルスベクターでよい。そのようなベクターは、DNAおよびRNAを細胞に組み込むためによく知られている技術により、ポリヌクレオチド、好ましくはDNAとして細胞中に組み込むことができる。ファージおよびウイルスベクターの場合、ベクターは、インフェクションおよびトランスダクションのためのよく知られた技術によりパッケージまたはカプセル化ウイルスとして細胞に組み込みことができ、好ましい。ウイルスベクターは複製成分または複製欠損でもよい。後者の場合、ウイルス増殖は、一般に、宿主細胞を相補した場合のみ起こる。
【0045】
この点で、好ましいベクターは本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチド発現用のベクターである。一般に、そのようなベクターは、発現させるべきポリヌクレオチドに機能できるように連結した、宿主細胞における発現に有効なシス−作用調節領域からなる。適当な、トランス−作用因子は宿主から供給されるか、相補ベクターによって供給されるか、宿主に組み込んだ場合にベクター自体によって供給される。この点の好ましい具体例においては、ベクターは特異的発現に供される。そのような特異的発現は、誘導発現またはある種のタイプの細胞のみでの発現あるいは誘導および細胞特異的発現の両方であり得る。誘導ベクターのうちで、特に好ましいものは、温度や、栄養添加剤のような、操作の容易な環境因子によって発現が誘導できるベクターである。本発明のこの態様に適した種々のベクターは、原核および真核宿主において使用するための構成性および誘導性発現ベクターを含め、よく知られており、当業者に日常的に使用されている。
【0046】
操作した宿主細胞は、通常の栄養培地で培養でき、培地は、とりわけ、プロモーターを活性化するため、形質転換体を選択するため、また、遺伝子を増幅するために適宜修飾することができる。発現のための宿主細胞の選択に使用した、温度、pH等の培養条件が、一般に、本発明のポリペプチドの発現に適当であり、当業者に自明である。本発明のポリペプチドの発現には種々の発現ベクターが使用できる。このようなベクターには、染色体、エピソームおよびウイルス誘導ベクター、例えば、細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメントから誘導されるベクター、バキュロウイルス、パポーバウイルス、SV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルスのようなウイルスならびにプラスミドとバクテリオファージの遺伝エレメントから誘導されるベクター、コスミドおよびファージミドのようなこれらの組み合わせから誘導されるベクターが包含される。一般に、ポリヌクレオチドを維持し、増殖し、発現させてポリペプチドを製造するのに適したいずれのベクターも発現ベクターとして使用できる。
【0047】
適当なDNA配列を、種々の公知の、日常的な操作によりベクター中に挿入できる。一般に、発現用のDNA配列は、DNA配列および発現ベクターを1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで切断し、T4DNAリガーゼを使用して制限フラグメントを一緒に連結することにより発現ベクターに連結される。この目的に使用される制限および連結用の操作は当業者によく知られており、日常的である。発現ベクター中のDNA配列を、例えば、mRNA翻訳を指示するプロモーターを包含する適当な発現調節配列に操作可能に結合させる。このようなプロモーターの代表例として、λファージPLプロモーター、大腸菌lac、trpおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、レトロウイルスLTRが挙げられる。本発明において有用な多くの他のプロモーターは、よく知られており、本明細書および実施例に説明する方法に、当業者が日常的に使用できる。
【0048】
一般に、発現構築物は、転写開始および終止部位を有し、翻訳領域には、翻訳のためのリボソーム結合部位を有する。該構築物によって発現されるマチュア転写物のコーディング部分は、翻訳されるポリペプチドの始めに翻訳開始AUGおよび終わりに適当に位置する翻訳終止コドンを含む。加えて、構築物は発現を調節し、起こさせる制御領域を含んでよい。一般に、多くの共通して実施される操作に従い、そのような配列は、転写を制御することにより操作される。例として、とりわけ、リプレッサー結合部位およびエンハンサーが挙げられる。増殖および発現ベクターには、一般に、選択可能なマーカーが含まれる。選択可能なマーカーは、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型特徴を与える。好ましいマーカーには、限定するものではないが、真核細胞培養についてジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性、および大腸菌およびその他の細菌におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性などが挙げられる。 前記した適当なDNA配列、ならびに適当なプロモーターまたは調節配列を有するベクターを用い、適当な宿主を形質転換させ、宿主が蛋白質を発現させるようにしてもよい。このようなマーカーは、増幅にも適している。別法として、この目的に、さらなるマーカーを含んでもよい。
【0049】
本明細書に記載した適当なDNA配列、ならびに適当なプロモーターおよび他の適当な制御配列は、所望のポリペプチドをその中で発現させるのに適した種々のよく知られた方法を用いて適当な宿主中に導入される。適当な宿主の代表例には、大腸菌、ストレプトマイセスおよびサルモネラ・チフィムリウム細胞などの細菌細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ショウジョウバエS2およびシロナヨトウSf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COSまたはBowes黒色腫細胞などの動物細胞;および植物細胞が挙げられる。種々の発現構築物の宿主は、よく知られており、当業者であれば、本明細書の記載から、本発明の態様に従ってポリペプチドの発現に日常的に選択することができる。
【0050】
特に、本発明はすでに広範囲にわたり記載したよりな1またはそれ以上の配列を含む発現構築物のような組換え構築物も包含する。構築物は、本発明の配列が正または逆の向きでその中に挿入される、プラスミドまたはウイルスベクターなどのベクターを有している。本発明の好ましい態様において、構築物はさらに、例えば、該配列に操作可能に結合したプロモーターを含む調節配列を有している。多数の適当なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、商業的に入手可能である。以下に、商業的に入手可能なベクターを例示のために挙げる。細菌において使用するのに好ましいベクターは、pQE70、pQE60、pQE−9(Qiagen製)、pBSベクター、ファージスクリプトベクター、ブルースクリプトベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratagene製);ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia製)である。好ましい真核細胞用ベクターは、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene製)、pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia製)である。これらは、多くの商業的に入手可能な、本発明に使用できるよく知られたベクターの単なる例示であり、他のプラスミドまたはベクターも、例えば、宿主に導入でき、維持、増殖または本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現するのに適しておれば、本発明に使用できる。
【0051】
プロモーター領域は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)転写ユニット、候補プロモーターフラグメント導入用の制限部位の下流、すなわち、プロモーターを含むことのできるフラグメントのような、プロモーター領域を欠く、レポーター転写ユニットを含むベクターを用いて、望ましいいずれの遺伝子からも選択できる。よく知られるごとく、CAT遺伝子の制限部位上流にプロモーターを含有するフラグメントのベクターを導入すると、CAT活性の産生が起こり、標準的なCAT分析で検出できる。この目的に適したベクターは、よく知られており、容易に入手できる。このようなベクターの2つの適当な例はpKK232−8およびpCM7である。すなわち、本発明のポリヌクレオチドの発現用のプロモーターは、よく知られていて、容易に入手可能なものであるばかりでなく、レポーター遺伝子を用いて上記の方法によって容易に得られるものでもよい。本発明に従って、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に適した公知の細菌性プロモーターは、大腸菌lacIおよびlacZプロモーター、T3およびT7プロモーター、gptプロモーター、λPR、PLプロモーターおよびtrpプロモーターである。
【0052】
この点で適当な公知の真核細胞プロモーターは、CMV即時初期型プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRのようなレトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−Iプロモーターのようなメタロチオネインプロモーターである。宿主での発現に適当なベクターおよびプロモーターの選択は、よく知られた操作であり、発現ベクター、ベクターの宿主への導入および宿主での発現に必要な技術は当業者の日常的なものである。本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞にも関する。宿主細胞は、哺乳動物細胞のような高等真核細胞、酵母細胞のような下等真核細胞または細菌細胞のような原核細胞とすることができる。構築物の宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、カチオン性リピド介在トラスフェクション、電気穿孔法、トランスダクション、インフェクション等により行うことができる。これらの方法は[16]のような、多くの標準的実験室マニュアルに記載されている。
【0053】
宿主細胞中の構築物を常法にて用い、組換え体配列によりコードされる遺伝子産物を産生することができる。別法として、本発明のポリペプチドは通常のペプチド・シンセサイザーにより合成できる。マチュア蛋白質は哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞において適当なプロモーターの調節下で発現できる。無細胞翻訳系もまた使用して、本発明のDNA構築物由来のRNAを用いてこのような蛋白質を産生することができる。原核および真核宿主について用いられる適当なクローニングおよび発現ベクターは、[15]に記載されている。
【0054】
一般に、組換え体発現ベクターは複製の開始点、下流構造配列の転写を指令する高度発現遺伝子から由来するプロモーターおよびベクターへの暴露後、ベクター含有細胞の単離を可能にする選択可能なマーカーを含む。適当なプロモーターは、3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、α−ファクター、酸ホスファターゼまたは熱ショック蛋白質などの解糖酵素をコードする遺伝子から誘導できる。適当なマーカーには、大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子およびサッカロミセス・セレビシアエのtrp1遺伝子が包含される。高等な真核細胞による本発明のポリペプチドをコードするDNAの転写はエンハンサー配列をベクター中に挿入することで増加できる。エンハンサーはDNAシス−作用エレメントで、通常約10ないし300bpの、所定の宿主細胞で作用してプロモーターの転写活性を増加させるものである。例えば、複製開始点の100ないし270bpの後側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0055】
本発明のポリペプチドのヘテロローガスな構造配列をコードする本発明のポリヌクレオチドは、一般に、発現のために操作可能にプロモーターに連結するように、標準的な技術を使用してベクターに挿入される。ポリヌクレオチドは、転写開始部位がリボソーム結合部位に対して適当な5’に存在するように位置される。リボソーム結合部位は、発現されるべきポリペプチドの翻訳を開始するAUGに対して5’にある。一般に、通常AUGである開始コドンと共に始まり、リボソーム結合部位と開始コドンの間に存在する、他のオープンリーディングフレームはない。また、一般に、ポリペプチドの最後には翻訳終止コドンがあり、ポリアデニレーションシグナルおよび転写終止シグナルが転写領域の3’末端に適宜に配置される。翻訳蛋白質を、小胞体内腔、ペリプラズム腔または細胞外環境へ分泌するために、適当な分泌シグナルを発現するポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルはポリペプチドに対して内在性であってもよく、あるいは異種性のシグナルでもよい。ポリペプチドは、融合蛋白質のような修飾形で発現されてもよく、また、分泌シグナルのみならず、さらなるヘテロローガスな機能性領域を含んでいてもよい。すなわち、例えば、付加的なアミノ酸、特に、荷電アミノ酸の領域とポリペプチドのN−末端に付加して、精製の間またはその後の取り扱いおよび貯蔵における宿主細胞での安定性および持続性を改善することができる。精製を容易にするために領域をポリペプチドに付加することもできる。そのような領域は、ポリペプチドの最終製造前に除去できる。とりわけ、ポリペプチドへペプチド部分を付加して分泌を起こさせ、安定性を向上させ、精製を容易にすることは、当該分野でよく知られており、日常的な技術である。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの増殖、維持または発現用の適当な原核宿主としては、大腸菌(Escherichia coli)、Bacillus subtiisおよびSalmonella typhimuriumが挙げられる。Pseudomonas属、Streptomyces属およびStaphylococcus属の種々の種も、この点で適当な宿主である。さらに、当業者に公知の他の宿主も使用できる。限定するものではないが、代表的な例として、有用な、細菌用の発現ベクターは、選択可能なマーカーと、よく知られたクローニングベクターであるpBR322(ATCC37017)の遺伝的エレメントからなる商業的に入手できるプラスミドから由来する細菌性複製開始点からなる。そのような商業的なベクターとしては、例えば、pKK223−3(Pharmacia Fine Chemicals,Uppsala,Sweden)およびGEM1(Promega Biotec,Madions,WI,USA)が挙げられる。これらのベクターにおいて、pBR322「主鎖」部分と、適当なプロモーターおよび発現させるべき構造配列とを組み合わす。適当な宿主株の形質転換についで、宿主株を適当な細胞密度まで増殖させる。選択したプロモーターを導入できる場合は、適当な手段(例、温度シフトまたは化学的導入剤への暴露)で導入し、細胞をさらなる期間、培養する。ついで、典型的には、細胞を遠心分離で収集し、物理的または化学的手段で破壊し、得られた粗抽出物を、さらに精製するために保持する。蛋白質の発現に使用した微生物細胞は、凍結−解凍の繰り返し、超音波処理、機械的破壊または細胞溶解剤の使用を含む、いずれの通常の方法によっても破壊できる。そのような方法も当業者によく知られている。
【0057】
種々の哺乳動物細胞培養系も同様に発現に使用できる。哺乳動物発現系の例としては、限定するものではないが、C127、3T3、CHO、HeLa、ヒト腎臓293およびBHKセルラインや、サル腎臓線維芽細胞のCOS−7ラインが挙げられる[17]。哺乳動物発現ベクターは、複製開始点、適当なプロモーターおよびエンハンサー、ならびにいずれかの必要なリボソーム結合部位、ポリアデニレーション部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位、転写終止配列および発現に必要な5’フランキング非転写配列からなる。好ましい具体例においては、SV40スプライス部位およびSV40ポリアデニレーション部位から由来するDNA配列が必要な非転写遺伝エレメントとして使用される。TRPC7ポリペプチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーのようなよく知られた方法により、組み換え細胞培養から回収および精製できる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を精製に用いるのが最も好ましい。ポリペプチドが単離および/または精製中に変性した場合、再び活性な立体配座にするために、蛋白質再生のための周知の技法を用いることができる。本発明のポリペプチドには、天然の精製ポリペプチド、化学合成法により得られたポリペプチドおよび、例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫および哺乳動物細胞のような原核または真核宿主から組み換え技術で製造されたポリペプチドが包含される。組み換え製造操作において用いた宿主により、本発明のポリペプチドは、グリコシル化または非グリコシル化され得る。さらに、本発明のポリペプチドには、宿主介在方法の結果、いくつかの場合には開始の修飾メチオニン残基を含んでよい。TRPC7ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、本発明により、種々の用途、特に、TRPC7を化学的および生物学的に使用する用途に使用できる。さらなる用途は、細胞、組織および器官の障害の診断および治療である。
【0058】
本発明はまた、例えば、診断試薬として使用するための、相補性ポリヌクレオチド検出のためのTRPC7ポリヌクレオチドの使用に関する。機能不全に伴うTRPC7の突然変異形の検出は、TRPC7の発現不足、過剰発現または変更発現からもたらされる躁うつ病の診断または診断に加えることのできる診断道具を提供する。ヒトTRPC7遺伝子に突然変異を有する個々の人々が、種々の技術によりDNAレベルで検出できる。診断用の核酸は、血液、尿、唾液、組織生検または剖検材料のような患者の細胞から得ることができる。ゲノムDNAは直接的に検出するのに使用できるか、または分析の前にPCR[18]もしくはその他の増幅法を用いることにより酵素的に増幅できる。同様に、RNAまたはcDNAも使用できる。例えば、欠失および挿入は、正常遺伝子型と比較して増幅生成物の大きさの変化により検出できる。点突然変異は、増幅DNAを放射線標識TRPC7 RNAまたは放射線標識アンチセンスDNA配列に対してハイブリダイゼーションすることにより同定できる。完全に対合した配列はRNase A消化または融解温度の差により、誤対合二重螺旋から区別できる。
【0059】
対照遺伝子と突然変異を有する遺伝子の配列相違も直接DNAシーケンシングで示すことができる。さらに、クローンしたDNAセグメントをプローブとして、特定的DNAセグメントを検出できる。これらの方法の感度はPCRまたは他の増幅方法の適当な使用により大いに増強できる。例えば、シーケンシングプライマーは、修飾PCRにより生じた二本鎖PCR生成物または一本鎖鋳型分子と共に使用する。配列決定は、放射線標識核酸を用いる常法または蛍光タグを用いる自動シーケンシング操作によって行うことができる。DNA配列の差に基づく遺伝的テストは、変性剤と共にまたは無しでゲル中のDNAフラグメントの電気泳動の移動度の変化により検出できる。小さな配列の欠失および挿入は、高分離ゲル電気泳動で明視化できる。異なる配列のDNAフラグメントは、異なるDNAフラグメントの移動度が、それらの特異的または部分的溶融温度に従って、異なる位置のゲル中で遅滞する変性ホルムアミドグラディエントゲルによって区別できる[19]。特異的な位置での配列の変化はまた、ヌクレアーゼ保護分析、例えば、RNaseおよびS1保護または化学的切断法によっても明らかにすることができる[20]。かくして、特定のDNA配列の検出は、ハイブリダイゼーション、RNase保護、化学的切断、直接シーケンシングまたは制限酵素の使用(例、制限断片長多形(RFLP))およびゲノムDNAのサザンブロッティングにより行うことができる。
【0060】
本発明はまた、細胞および組織におけるTRPC7蛋白質の発現レベルを検出するための診断分析にも関する。そのような分析は、定量的でも、定性的でもよい。すなわち、例えば、正常な対照組織試料に対してTRPC7蛋白質の過剰発現を検出する本発明の診断分析は、躁うつ病の存在を検出するために使用できる。宿主から由来する試料中の、本発明のTRPC7蛋白質のような蛋白質のレベルの測定に使用できる分析技術は、当業者によく知られている。そのような分析方法には、ラジオイムノアッセイ、競合的結合アッセイ、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイが包含される。とりわけ、ELISAアッセイが好ましい。ELISAアッセイは、まず、TRPC7蛋白質に特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体の調製を含む。さらに、該モノクローナル抗体と結合する標識抗体が一般に調製される。該リポーター抗体は、放射能、蛍光または酵素試薬、例えば、ここでは西洋ワサビパーオキシダーゼのような検出可能な試薬と結合させる。
【0061】
ELISAを行うには、宿主からTRPC7蛋白質を含むと考えられる試料を取り出し、例えば、96穴マイクロプレートのような、試料中の蛋白質と結合する固体担体上でインキュベーションしてプレートのウェルに吸着させる。ウェルのいずれの遊離蛋白質結合部位も、ウシ血清アルブミンのような非特異性蛋白質と共にインキュベーションして被覆する。ついで、モノクローナル抗体をウェル内でインキュベーションする。この間に、モノクローナル抗体は、マイクロプレートのウェルに結合したTRPC7蛋白質と結合する。結合しないモノクローナル抗体を緩衝液で洗い流す。西洋ワサビパーオキシダーゼに結合した標識抗体をウェルに入れ、TRPC7蛋白質と結合したモノクローナル抗体と結合させる。ついで、結合しなかった標識抗体を洗い流す。次いで、比色測定用の基質を含むパーオキシダーゼ活性測定用の試薬をウェルに加える。一次および二次抗体を介してTRPC7蛋白質に結合した、固定化されたパーオキシダーゼは呈色反応生成物を生成する。所定の時間内に発色した色の量が試料中に存在するTRPC7蛋白質の量の指標となる。定量的結果は、典型的には、標準曲線との対比により得られる。競合分析も使用でき、TRPC7蛋白質に特異的な抗体を固体担体に結合させ、標識したTRPC7蛋白質および宿主から由来する試料を固体担体に加える。固体担体に結合した標識の量は試料中のTRPC7蛋白質の量と相関させることができる。
【0062】
本発明のポリペプチド、それらのフラグメントまたはその他の誘導体、またはそれらのアナログ、またはそれらを発現する細胞は、これらに対する抗体を産生する免疫原として用いることができる。これらの抗体は、例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体である。本発明にはまた、キメラ、一本鎖およびヒト化抗体、ならびにFabフラグメントまたはFab発現ライブラリーの生成物が包含される。当該分野に公知の種々の方法がこのような抗体およびフラグメントの製造に使用できる。本発明の配列に対応するポリペプチドに対して生じる抗体は、好ましくはヒト以外の動物に、該ポリペプチドを直接注射するか、投与することにより得ることができる。得られた抗体はポリペプチドそのものと結合する。このようにして、ポリペプチドのフラグメントのみをコードする配列でさえも、全体の天然ポリペプチドと結合する抗体の産生に使用できる。そのような抗体は、そのポリペプチドを発現する組織から該ポリペプチドを単離するのに使用できる。連続的セルライン培養により産生きれる抗体を提供する当業者によく知られた技術を用いて、モノクローナル抗体を調製することができる。モノクローナル抗体産生法としては、ハイブリドーマ法[21]、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法[22]、およびEBV−ハイブリドーマ法[23]が挙げられる。
【0063】
一本鎖抗体の製造のために記載された技術[24]を用いて、本発明のポリペプチドに対する一本鎖抗体を産生することができる。また、トランスジェニックマウスまたはその他の生物、例えばその他の哺乳動物を用いて、本発明のヒト化抗体を発現させることができる。上記の抗体を用いて該ポリペプチドを発現するクローンを単離または同定することができ、アフィニティークロマトグラフィーにより、単離および/または精製用の固体担体に抗体を結合させて本発明のポリペプチドを精製することができる。TRPC7蛋白質に対する抗体は、限定するものではないが、躁うつ病の抑制に使用できる。
【0064】
TRPC7は、相互反応する蛋白質の単離に使用でき、この相互反応を、干渉の標的とすることができる。TRPC7と他の因子との間の蛋白質−蛋白質相互反応の阻害剤は、TRPC7活性調節用の医薬の開発に通じる。かくして、本発明はまた、TRPC7への結合分子の同定方法も提供する。TRPC7に結合する分子についての蛋白質をコードする遺伝子は、例えば、リガンドパンニングおよびFACSソーティングのような多くの公知の方法により同定できる。そような方法は、例えば、[25]のような多くの実験室マニュアルに記載されている。例えば、酵母ハイブリッドシステムは、転写アクチベーターの活性の再構築を使用する、第一のテスト蛋白質と第二のテスト蛋白質のin vivoにおける相互反応検出のための方法を提供する。この方法は[26]に開示されており、試薬はClontech社およびStratagene社から入手できる。要約すると、TRPC7 cDNAをGal4転写因子DNA結合ドメインと融合させ、酵母細胞で発現させる。関心のある細胞から得られたcDNAライブラリーメンバーをGal4のトランス活性化ドメインに融合させる。TRPC7と相互反応できる蛋白質を発現するcDNAクローンは、Gal4の再構築およびGal1−lacZのようなリポーター遺伝子のトランス活性化をもたらす。
【0065】
別法として、組み換えTRPC7によるλgt11またはλZAP(Stratagene)または均等なcDNA発現ライブラリーのスクリーニングがある。組み換えTRPC7蛋白質またはそのフラグメントを、FLAG、HSVまたはGSTのような小さなペプチドタグと融合させる。該ペプチドタグは、心筋クレアチンキナーゼのようなキナーゼに対する好都合なホスホリル化部位を有することができ、または、ビオチニル化できる。組み換えTRPC7は、32Pでホスホリル化でき、また、ラベルなしで使用して、ストレプトアビジンまたはタグに対する抗体で検出できる。λgt11 cDNA発現ライブラリーは、関心ある細胞から作成され、組み換えTRPC7と共にインキュベーションし、洗浄し、TRPC7と相互反応するcDNAクローンを単離する。このような方法は当業者に日常的である[15]。他の方法は、哺乳動物の発現ライブラリーのスクリーニングである。この方法では、cDNAを、哺乳動物プロモータとポリアデニレーション部位の間でベクターにクローンし、一時的にCOSまたは293細胞にトランスフェクトする。48時間後、固定化し、洗浄した細胞をラベルしたTRPC7と共にインキュベーションし、結合する蛋白質を検出する。好ましい具体例では、TRPC7をヨウ素化し、結合したTRPC7をオートラジオグラフィーで検出する[27][28]。この方法においては、関心ある結合蛋白質をコードするcDNAを含むcDNAのプールを選択し、さらに各プールを分割し、ついで一時的なトランスフェクション、結合およびオートラジオグラフィーのサイクルを繰り返し、関心あるcDNAを単離できる。別法として、全cDNAライブラリーを哺乳動物細胞にトランスフェクションし、プレートに結合したTRPC7を含む皿で細胞をパンニングすることにより関心あるcDNAを単離できる。洗浄後に結合している細胞を溶解し、プラスミドDNAを単離し、細菌中で増幅し、単一のcDNAクローンが得られるまで、トランスフェクションおよびパンニングのサイクルを繰り返す[29][30]。結合蛋白質が分泌される場合、一旦、結合または中和分析が一時的なトランスフェクション細胞からの上澄液の分析ように確立されたら、そのcDNAを同様なプール法で得ることができる。上澄液のスクリーニングの一般的な方法は[31]に開示されている。
【0066】
もう一つの他の方法には、細胞からのTRPC7と直接、相互反応する蛋白質の単離が包含される。TRPC7とGSTまたは小さいタグとの融合蛋白質を作成し、ビーズに固定化する。関心ある細胞からの生合成的にラベルした、またはラベルしない蛋白質の抽出物を調製し、ビーズと共にインキュベーションし、緩衝液で洗浄する。TRPC7と相互反応した蛋白質をビーズから特異的に溶出し、SDS−PAGEで分析する。結合相手の一次アミノ酸配列データはマイクロシーケンシングによって得られる。所望により、細胞蛋白質のチロシンホスホリレーションのような機能的応答を導く試薬で細胞を処理してもよい。そのような試薬の例は、成長因子またはインターロイキン−2のようなサイトカインである。他の方法は、イムノアフィニティー精製である。組み換えTRPC7をラベルした、またはしない細胞抽出物と共にインキュベーションし、抗TRPC7抗体で免疫沈降させる。免疫沈降物をプロテインA−セファロースで回収し、SDS−PAGEで分析する。ラベルしない蛋白質は、ビオチニル化によりラベルし、ストレプトアビジンでSDSゲル上で検出する。結合相手の蛋白質を、マイクロシーケンシングで分析する。さらに、公知の標準的な生化学精製工程をマイクロシーケンシング前に使用してもよい。
【0067】
さらに別の方法は、ペプチドライブラリーにおける結合相手のスクリーニングである。タグを付すか、ラベルした組み換えTRPC7を用い、ペプチドまたはホスホペプチドライブラリーから、TRPC7と相互反応するペプチドを選択する。ペプチドのシーケンシングで、相互反応蛋白質に見いだされ得るコンセンサスペプチド配列の同定ができる。これらの方法または他の公知の方法のいずれかで同定されたTRPC7結合分子ならびに上記した推定結合相手は本発明の分析方法に使用できる。TRPC7/結合相手複合体の存在の分析は、例えば、酵母ハイブリッドシステム、ELISAまたは該複合体に特異的な抗体を使用するイムノアッセイにより行うことができる。TRPC7/結合相手複合体の形成を妨害または阻害する試験物質の存在下、試験物質を欠く対照に対する複合体の量の減少を測定する。遊離TRPC7または結合相手の分析は、例えば、ELISAまたは特異抗体を用いるイムノアッセイにより、または、放射ラベルされたTRPC7を細胞または細胞膜と共にインキュベーションし、ついで遠心分離またはフィルター分離することにより行える。TRPC7/結合相手複合体の形成を妨害または阻害する試験物質の存在下、試験物質を欠く対照に対する遊離TRPC7または遊離結合相手の量の増加を測定する。本発明のポリペプチドはまた、細胞中または無細胞調製物中のTRPC7結合分子のTRPC7結合能の評価にも使用できる。
【0068】
本発明のTRPC7はカルシウムチャンネル作用を併せ持つが、TRPC7カルシウムチャンネル作用を活性化(アゴニスト)または阻害(アンタゴニスト)する化合物をスクリーニングする方法にも使用できる。一般に、そのようなスクリーニング操作には、その表面に本発明のカルシウムチャンネルポリペプチドを発現する適当な細胞の製造を包含する。そのような細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエまたは大腸菌からの細胞が包含される。特に、本発明のカルシウムチャンネルをコードするポリヌクレオチドは、細胞にトランスフェクトし、それによりTRPC7を発現させるために使用できる。カルシウムチャンネルを発現する細胞を、試験化合物と接触させ、結合、刺激または機能性応答の抑制を観察する。そのようなスクリーニング操作の一つには、本発明のTRPC7発現のためにトランスフェクトされるメラニン細胞の使用が含まれる。そのようなスクリーニング技術は[32]に記載されている。一つの具体例において、この技術は、カルシウムチャンネルを発現するメラニン細胞をリガンドとスクリーニングすべき化合物との両方と接触させて、本発明のカルシウムチャンネルポリペプチドの活性化を阻害する化合物のスクリーニングに使用される。リガンドによるシグナル発生の阻害は、化合物がカルシウムチャンネルに対する潜在的なアンタゴニストであること、すなわち、カルシウムチャンネルの活性化を阻害することを示す。この技術はまた、そのような細胞をスクリーニングすべき化合物と接触させ、そのような化合物がシグナルを発生するか、否か、すなわち、カルシウムチャンネルを活性化するか、否かを測定することにより、カルシウムチャンネルを活性化する化合物のスクリーニングにも使用できる。
【0069】
他のスクリーニング技術には、カルシウムチャンネルの活性化によって起こった細胞外pH変化を測定するシステムにおけるTRPC7を発現する細胞(例えば、トランスフェクトされたCHO細胞)の使用が包含される[33]。この技術においては、化合物を、本発明のカルシウムチャンネルポリペプチドを発現する細胞と接触させることができる。ついで、第二メッセンジャー応答、例えば、シグナルトランスダクションまたはpH変化を測定し、該潜在的化合物がカルシウムチャンネルを活性化するか阻害するかを測定する。もう一つのスクリーニング技術には、TRPC7をコードするRNAをアフリカツメガエル卵母細胞へ導入し、一時的にカルシウムチャンネルを発現させることが包含される。ついで、卵母細胞をリガンドおよびスクリーニングすべき化合物と接触させる。カルシウムチャンネルの活性化阻害を、例えば、カルシウムチャンネルの活性化を阻害すると考えられる化合物のスクリーニングの場合には、カルシウム、プロトンまたは他のイオンのようなシグナルの検出により測定する。他のスクリーニング技術には、TRPC7の発現が包含され、カルシウムチャンネルはホスホリパーゼCまたはDと結合する。そのような細胞の代表的な例には、限定するものではないが、内皮細胞、平滑筋細胞、胎児性腎臓細胞がある。このスクリーニングは、上記のごとく、ホスホリパーゼ第二シグナルからカルシウムチャンネルの活性化またはカルシウムチャンネル活性化の阻害を検出することにより行うことができる。
【0070】
他の方法には、表面にカルシウムチャンネルを有する細胞に対するラベルしたリガンドの結合の阻害を測定することによる、アンタゴニストであり、したがって、本発明のカルシウムチャンネルポリペプチドの活性化を阻害する化合物のスクリーニングが包含される。そのような方法には、真核細胞にTRPC7をコードするDNAでトランスフェクトし、細胞がその表面にカルシウムチャンネルを発現できるようにすることが包含される。細胞をラベルした公知のリガンドの存在下で化合物と接触させる。リガンドは、例えば、放射能でラベルできる。カルシウムチャンネルと結合したラベルしたリガンドの量は、例えば、トランスフェクトした細胞またはそれからの膜に伴う放射能を測定する。化合物がカルシウムチャンネルに結合すると、ラベルしたリガンドのカルシウムチャンネルへの結合は、ラベルしたリガンドの減少により測定されるように、阻害される。他の方法には、TRPC7介在cAMPおよび/またはアデニレートサイクラーゼの蓄積の阻害または刺激を測定することによるTRPC7阻害剤のスクリーニングが包含される。このような方法は、真核細胞にTRPC7遺伝子をトランスフェクトし、カルシウムチャンネルを細胞表面に発現させることが包含される。ついで、細胞をTRPC7の存在下、潜在的アンタゴニストに暴露し、cAMP蓄積量を測定する。潜在的アンタゴニストがカルシウムチャンネルと結合すると、すなわち、TRPC7の結合を阻害すると、TRPC7介在cAMPまたはアデニレートサイクラーゼ活性のレベルが減少または増加する。
【0071】
本発明のカルシウムチャンネルについてのアゴニストまたはアンタゴニストを検出する他の方法には、酵母をベースとする技術が包含される[34]。本発明はまた、TRPC7カルシウムチャンネルに対する結合能が未知のリガンドがそのようなカルシウムチャンネルに結合するか、否かを測定する方法を提供する。この方法は、TRPC7カルシウムチャンネルを発現する哺乳動物細胞を、リガンドがTRPC7カルシウムチャンネルに結合できる条件下に、リガンドと接触させ、カルシウムチャンネルに結合したリガンドの存在を検出し、それにより、リガンドがTRPC7カルシウムチャンネルと結合するか、否かを測定することからなる。アゴニストおよび/またはアンタゴニストを測定する上記したシステムはまた、カルシウムチャンネルへ結合するリガンドの測定にも使用できる。潜在的TRPC7カルシウムチャンネルアンタゴニストの例には、カルシウムチャンネルに結合するが、第二メッセンジャー応答によりカルシウムチャンネルの活性化を妨げない抗体または、いくつかの場合には、オリゴヌクレオチドが包含される。また、潜在的アンタゴニストには、TRPC7カルシウムチャンネルのリガンドに密接に関係する蛋白質、すなわち、リガンドのフラグメントも包含され、このような蛋白質は、生物学的機能を失い、TRPC7カルシウムチャンネルと結合しても、何の応答も生じない。
【0072】
潜在的アンタゴニストには、アンチセンス技術を使用して調製したアンチセンス構築物も包含される。アンチセンス技術は、三重螺旋形成またはアンチセンスDNAまたはRNAにより遺伝子発現を調節するのに用いることができ、両方法ともポリヌクレオチドのDNAまたはRNAに対する結合に基づく。例えば、本発明のマチュアポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’コーディング領域は約10ないし40bpの長さのアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドをデザインするのに用いられる。DNAオリゴヌクレオチドは、転写に関与する遺伝子の領域に相補的になるようにデザインされ(三重螺旋)[35][36][37]、これによりTRPC7カルシウムチャンネルの転写および産生を防止する。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、in vivoでmRNAとハイブリッド形成し、mRNA分子のTRPC7カルシウムチャンネル中への転写をブロックする(アンチセンス)[38][39]。上記オリゴヌクレオチドはまた、細胞から誘導でき、アンチセンスRNAまたはDNAを、TRPC7カルシウムチャンネルの産生を抑制するようにin vivoで発現できる。他の潜在的アンタゴニストは、TRPC7カルシウムチャンネルと結合してリガンドと接近しにくくなるようにして正常な生物学的活性を防止する小分子である。小分子の例は、限定するものではないが、小ペプチドまたはペプチド様分子である。他の潜在的アンタゴニストには、可溶性形態のTRPC7カルシウムチャンネル、例えば、カルシウムチャンネルのフラグメントが含まれ、リガンドと結合させ、リガンドが膜結合TRPC7カルシウムチャンネルと相互反応するのを防止する。
【0073】
TRPC7カルシウムチャンネルは哺乳動物宿主において遍在し、多くの病理を含む多くの生物学的機能に関与する。したがって、一方でTRPC7カルシウムチャンネルを刺激し、他方でTRPC7カルシウムチャンネルの機能を抑制できる化合物および試薬を見出すことが望ましい。一般に、TRPC7カルシウムチャンネルのアゴニストは、躁うつ病の治療または予防に使用できる。TRPC7のアンタゴニストは、躁うつ病の種々の治療および予防に使用できる。本発明はさらに過剰のTRPC7活性と関連した異常な状態の治療法であって、患者に上記阻害化合物(アンタゴニスト)を医薬上許容される担体とともに、リガンドのTRPC7カルシウムチャンネルとの結合をブロックすることによるか、または第二のシグナルを抑制することにより活性化を抑制するのに有効な量で投与し、それにより異常な症状を軽減することからなる方法を提供する。本発明はまたTRPC7およびその活性の発現不足と関連した異常な症状の治療法であって、患者に有効量の上記の本発明のカルシウムチャンネルポリペプチドを活性化する化合物(アゴニスト)を医薬上許容される担体とともに投与して、異常な症状を軽減することからなる方法も提供する。
【0074】
可溶性形態のTRPC7、およびこのようなカルシウムチャンネルを活性化または抑制する化合物を適当な医薬担体と組み合わせて用いることができる。このような組成物は治療上有効量のポリペプチドまたは化合物と医薬上許容される担体または賦形剤とを含んでなる。このような担体は、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせを包含するが、これに限定されない。処方は投与方法に適合するものでなければならない。投与方法に合った適当な担体の選択は当業者が日常行うことである。本発明はまた、1またはそれ以上の上記した本発明の医薬組成物の成分を充填した1またはそれ以上の容器からなる医薬パックまたはキットを提供する。
【0075】
本発明のポリペプチドおよびその他の化合物は、単独で、または薬効を有する他の化合物と組み合わせて使用できる。該医薬組成物は、とりわけ、局所、経口経肛門、経膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内または皮内経路によるなどを包含する、有効で、都合のよい方法で投与される。医薬組成物は、一般に、具体的な適応症の治療および予防に有効な量で投与される。一般に、医薬組成物は、少なくとも10μg/体重kgの量で投与され、ほとんどの場合、一日あたり約8mg/体重kgを超えない量で投与される。好ましくは、ほとんどの場合、用量は、投与経路、症状などを考慮して毎日約10μgないし約1mg/体重kgである。明らかなごとく、最適用量は、適応症、その重篤度、投与経路、合併症などを考慮し、個々の治療モダリティーおよび適応症のための標準的な方法によって決定される。
【0076】
TRPC7ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ポリペプチドであるアゴニストおよびアンタゴニストは、しばしば「遺伝子療法」と称される治療モダリティーにおいてそのようなポリペプチドを発現させることにより本発明に従って使用できる。すなわち、例えば、患者からの細胞をex vivoでポリペプチドをコードする、DNAまたはRNAのようなポリヌクレオチドで遺伝子操作する。遺伝子操作した細胞をついで、ポリペプチドで治療すべき患者に与える。この具体例においては、例えば、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターを使用することにより、細胞をex vivoで遺伝子操作できる。このような方法は当該分野でよく知られており、本発明におけるそれらの使用は、本明細書の記載から明らかであろう。同様に、細胞をin vivoで遺伝子操作して、当該分野で公知の操作によりin vivoでポリペプチドを発現できる。例えば、本発明のポリヌクレオチドは、上記のごとく、複製欠損レトロウイルスベクター中で発現するように操作できる。レトロウイルス発現構築物を単離し、本発明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターを形質導入したパッケージング細胞に入れ、パッケージング細胞が関心のある遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を新たに産生できるようにする。このような産生細胞を、患者に投与し、in vivoで細胞を操作し、in vivoでポリペプチドを発現させる。本発明のポリペプチドを投与するためのこれら、および他の方法は、本発明の教示から当業者に明らかであろう。
【0077】
上記のレトロウイルスプラスミドベクターを誘導できるレトロウイルスには、限定するものではないが、モロニーネズミ白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ハーベイ肉腫ウイルス、ニワトリ白血病ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、アデノウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳癌ウイルスが包含される。好ましい態様においては、レトロウイルスプラスミドベクターは、モロニーネズミ白血病ウイルスから誘導される。そのようなベクターは、該ポリペプチド発現用の1つ以上のプロモーターを含む。使用できる適当なプロモーターには、限定するものではないが、レトロウイルスLTR、SV40プロモーターおよびヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター[40]が包含される。限定するものではないが、ヒストン、RNAポリメラーゼIIIおよびβ−アクチンプロモーターを包含する真核細胞プロモーターのような細胞プロモーターも使用できる。さらに、使用できるウイルスプロモーターには、限定するものではないが、アデノウイルスプロモーター、チミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびB19パルボウイルスプロモーターが包含される。適当なプロモーターの選択は本明細書の教示から当業者に明らかであろう。
【0078】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、適当なプロモーターの制御下に置かれる。使用できる適当なプロモーターには、限定するものではないが、アデノウイルス主後期プロモーターのようなアデノウイルスプロモーター;サイトメガロウイウス(CMV)プロモーターのようなヘテロローガスプロモーター;RSウイルス(RSV)プロモーター;MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーターのような誘導できるプロモーター;ヒートショックプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoAIプロモーター;ヒトグロビンプロモーター;単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモーターのようなウイルス性チミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスLTR(上記した修飾レトロウイルスLTRを含む);β−アクチンプロモーターおよびヒト成長ホルモンプロモーターが包含される。プロモーターはまた、ポリペプチドのコード遺伝子を制御できる天然のプロモーターでもよい。レトロウイルスプラスミドベクターを、パッケージングセルラインの形質導入に使用して産生セルラインを形成する。トランスフェクトできるパッケージング細胞の例としては、限定するものではないが、PE501、PA317、Ψ−2、Ψ−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、ΨCRE、ΨCRIP、GP+E−86、GP+envAm12および[41]に記載されるDNAセルラインが挙げられる。ベクターは、公知のいずれかの方法によりパッケージング細胞に形質導入できる。そのような方法には、限定するものではないが、電気穿孔法、リポソームの使用およびCaPO沈殿が包含される。別法の1つとして、レトロウイルスプラスミドベクターは、リポソームに封入するか、脂質に結合させ、ついで宿主に投与できる。
【0079】
産生セルラインは、該ポリペプチドをコードする核酸配列を含む感染性のレトロウイルスベクター粒子を生じさせる。そのようなレトロウイルスベクター粒子を使用してin vitroまたはin vivoで真核細胞に形質導入できる。形質導入された真核細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸配列を発現させる。形質導入される真核細胞には、限定するものではないが、胎児性幹細胞、胎児性癌細胞ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、角化細胞、内皮細胞および気管支上皮細胞が包含される。
【0080】
以下の実施例により、本発明をさらに説明する。以下の実施例は、特定の具体例による例示目的のみである。これらの例示は、本発明の、ある種の具体的な態様を説明するものであるが、本発明の範囲をなんら制限するものではない。全ての実施例は、特に詳細に説明しない限り、当業者によく知られた、日常的な標準的技術を用いて行われる。以下の実施例における全ての部または量は、特に断らない限り、重量基準である。特に断らない限り、以下の実施例におけるフラグメントのサイズ分離は、アガロースおよびポリアクリルアミドゲルを用いる標準的な技術を用いて行う[15][42]。
【実施例1】
【0081】
コンティグ作成のためのライブラリーおよびスクリーニング
異なる2つのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングに使った。つまり、21番染色体特異的KU21コスミドライブラリー、BAC(bacterial artificial chromosome)ライブラリーである。
【0082】
10,624クローンからなる21番染色体特異的KU21コスミドライブラリー(21番染色体を6倍カバーしている)は、ソーティングした単一のヒト21番染色体から作製したものを使用した[43][44][45]。このライブラリーのスクリーニングのために、96穴プレート16枚分の1,536クローンを1枚のフィルターに含むHigh Density Replica(HDR)フィルターを作製し、HDRフィルターに対してハイブリダイゼーションによるスクリーニングを行った。大腸菌からのコスミドDNAの単離には、自動プラスミド抽出ロボットPI−100を用いた。ゲルから切り出したDNAフラグメントはコスミドコンティグを作成するためのプローブとして使用した。44個のコスミドクローンを単離し、これらのクローンを次のウォーキングに使用した。結果として86個のコスミドクローンが得られ、これらのクローンを仕分けすることにより2つのコンティグを得た。HindIIIの制限酵素地図によって作られた同じ領域の405kbコスミドコンティグ[46]のマップを参考にして、コンティグの長さおよびコンティグ間のギャップの長さを推定した。コンティグ間のギャップをLLNLコスミドクローンQ1B4,Q5B10で埋めた。
【0083】
コンティグを伸ばすために、コスミド系より長いDNA断片をクローニングできるBACベクター系を利用した[47]。このライブラリーは平均インサートサイズが110kbであり、全ゲノムを3倍カバーしている。3,072クローンを1枚のフィルターに含むHigh Density Replica(HDR)フィルターを作製し、HDRフィルターに対してハイブリダイゼーションによるスクリーニングを行った。BACライブラリーからは5個のBACクローンが得られ、最終的に520kbのコスミド/BACコンティグを構築した(図1)。
【実施例2】
【0084】
エキソントラッピング
エキソントラッピングはExon Trapping System(GIBCO BRL社製)を使用した。コスミド/BACクローンをSau3AIで部分分解した後、BACクローンについてはBamHIで切ったpSPL3に、コスミドクローンについてはBamHIで切ったpSPL3Cpにサブクローニングした。大腸菌DH10Bに形質転換後、BACクローンについてはアンピシリンの入ったLBプレートで、コスミドクローンについてはクロラムフェニコールの入ったLBプレートで一晩培養した。これらのクローンを集め、プラスミドDNAを抽出した。プラスミドDNAはLipofectAMINE(GIBCO BRL社製)を用いてCOS−7細胞に形質導入した。36時間後、COS−7細胞からの全RNAの抽出、逆転写酵素を用いたcDNA合成、ベクター特異的プライマーを用いたPCRを行った。PCR産物は、pAMP10ベクターへウラシルDNAグリコシダーゼ(UDG)によるサブクローニングを行ない、大腸菌DH10Bに導入した。最終的に22個のエキソンが得られ、これらのエキソンはベクター特異的プライマーを用いたPCRによりエキソンを増幅しシーケンシングを行った。
【実施例3】
【0085】
エキソンのシーケンシング
トラップされたエキソンは、それぞれのコロニーから直接ベクター特異的プライマーを用いたPCRにより増幅した。シーケンシング反応はDye Deoxy Terminator Cycle Sequencing Kit(Perkin Elmer社製)を用い、ジデオキシターミネーター法を利用して決定した。反応後、未反応のダイデオキシターミネーターを除去するため、QIAquick Nucleotide Removable Kit(QIAGEN社製)を使用して精製した。DNA塩基配列は自動蛍光DNAシーケンサー(ABI社製モデル373A)を使用した。これらのエキソンのサイズは36bpから240bpであった。
【実施例4】
【0086】
ホモロジー検索
決定したエキソンの塩基配列は全てワークステーション(SUN社製 SPARC Station)に入力し、データベース内の各々のエキソンをFASTAプログラム[48]を用いた相同性検索にかけて、エキソンの重複を調べた。重複を除いた塩基配列及びそれから予測されるアミノ酸配列の相同性は、GenBank/EMBL/DDBJに対してBLASTN、BLASTX検索[49]を用いて解析した。DNAデータベースに対するホモロジー検索により、6個のエキソンがこの領域に存在する既知遺伝子由来(PFKL、TMEM1)であることがわかった。2個のエキソン(HC21EXc2、HC21EXc13)はPFKL遺伝子のエキソン2およびエキソン3と一致し[50]、4個のエキソン(HC21EXb9、HC21EXb22、HC21EXb37、HC21EXb68)はTMEM1遺伝子のcDNAと一致した[51]。他の16個のエキソンは新規遺伝子に由来するものと考えられた。
【実施例5】
【0087】
cDNAライブラリーのPCRスクリーニング
エキソン特異的オリゴDNAのペアをPCRのプライマーに使った。6個の異なるヒトcDNAライブラリー胎児脳(HL3003a)、胎児肝(HL1005)、肝(HL1001b)、胎児心臓(HL3018a)、網膜(HL1132a)、海馬(HL1028b)(Clontech社製)をスクリーニングした。
【0088】
約10ファージ粒子(約2×10−2×10クローン相当)を適当な宿主(E.coli株)に感染させ増やし、ファージDNAをliquid lysate法で単離した[15]。約4×10ファージに相当する20ngのファージDNAを以下の条件でPCR反応に使用した。10mlの反応系に1×buffer[50mM KCl、10mM Tris−HCl pH8.3、1.5mM MgCl、0.001%(w/v)gelatin]、0.2mMのdNTPs、0.25UのAmpliTaq DNAポリメラーゼ(Perkin−Elmer社製)、0.5mMのエキソン特異的プライマーを加え、35サイクルのPCRを94℃30秒、55−65℃(エキソン特異的プライマーの至適温度)30秒、72℃30秒の条件で行った。増幅したエキソン断片は2%アガロースゲルを用いて電気泳動した。結果は表1に示した。
【0089】
【表1】

【実施例6】
【0090】
新規遺伝子のcDNAの単離
表1に示したように16個のエキソンのうちHC21EXc132は、エキソン特異的プライマーを用いた種々のcDNAライブラリーのPCRスクリーニングにより、胎児脳、海馬、および網膜cDNAライブラリーで発現していた。このエキソンを含むcDNAを単離するため、エキソンHC21EXc132をプローブとして用い、ヒト胎児脳cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、クローン7−1がヒト胎児脳cDNAライブラリーから得られた。
【0091】
一方で2つのコスミド(D99F9、D107C4)と1つのBAC(KB68A7)のゲノムシーケンシングを行った。TRPC7遺伝子が含まれるBAC DNA(KB68A7)およびコスミドDNA(D99F9、D107C4)のゲノムはショットガン法により塩基配列を決定した。全塩基配列から反復配列を除き、残りの塩基配列をGenbank/EMBL/DDBJに対して、BLASTN検索を行うことにより相同性の解析を行った。
【0092】
シークエンスデータはエキソン予測プログラムであるGRAILを用いて解析し、そのデータをもとにPCRプライマーを設計した。尾条核のcDNAライブラリーから調製したDNAを鋳型としPCRを行い、3つのPCR産物P2、P3、P4を得た。さらにcDNAの3’領域を伸ばすために、PCR産物P4をプローブとして用いヒト胎児脳と尾条核のcDNAライブラリーをスクリーニングした。また、6.で得られたクローン7−1上にあるメチオニンが翻訳開始点であるか確かめるため、プライマーをクローン7−1の上流に作った。このPCRによって尾条核のcDNAライブラリーからPCR産物P1が得られた。これらの結果より、全部で10個のcDNAクローンとPCR産物が得られた(図2D)。
【0093】
これらのcDNAクローンの塩基配列を決定した結果6,220bpのcDNAの配列が得られ、TRPC7と名付けた。TRPC7 cDNAの塩基配列と推定されるアミノ酸配列を配列番号1に示す。nt446に見られる最初のメチオニンはKozakのルールに従っていなかったが[53]、同じ読み枠でメチオニンから81bp上流にストップコドンがあったので、開始コドンであると決定した。TRPC7のORFは1,503アミノ酸をコードしており、7.26の等電点を持つ分子量171,217の蛋白質であった。
【実施例7】
【0094】
TRPC7の遺伝子構造
2つのコスミド(D99F9、D107C4)と1つのBAC(KB68A7)をゲノムシーケンシングした結果、TRPC7の転写の方向はセントロメアからテロメアであることがわかった(図2B)。エキソン・イントロン構造を表2に示す。それぞれのイントロンは共通のスプライスサイトag:gtが保存されていた。以上の結果よりTRPC7遺伝子は32エキソンからなり、そのサイズは95kbであった(図2C)。
【0095】
【表2】

【実施例8】
【0096】
膜貫通領域の解析
アミノ酸配列から膜貫通領域を予測するプログラムを用いて7つの膜貫通部位を予測した(図3)。蛋白質データベースに対してホモロジー検索をした結果、Ca2+チャンネル蛋白質であるDrosophila TRP蛋白質やヒトTRP蛋白質と相同性を示した[54][55][56][57]。図3にはTRPC7蛋白質の推定された膜貫通領域2から7と、Drosophila TRP蛋白質およびヒトTRP蛋白質の膜貫通領域の比較を示した。TRPC7のそれぞれのドメインはヒトTRP蛋白質(Htrp−1、Htrp−2)と似ており、ドメイン2、3、4、5、6、7は、それぞれ8.3%、24.0%、12.0%、16.0%、12.5%、20.0%の相同性があった。また、類似したアミノ酸を入れると、20.8%、40.0%、36.0%、32.0%、41.7%、52.0%となる。ヒトTRP蛋白質にはTRPC7のドメイン1に相当する配列は無かった。
【0097】
Drosophila TRP蛋白質には6つの膜貫通ドメインS1〜S6があることが知られている。Drosophila TRP蛋白質(Dtrp、Dtrpl)における6つの膜貫通ドメインの分布はTRPC7蛋白質のそれと比較的一致した。以上より、TRPC7の膜貫通領域は他のTRP蛋白質と同様にCa2+チャンネルとして働くことが示唆された。
【実施例9】
【0098】
ノーザンブロット解析
TRPC7遺伝子発現の臓器特異性をノーザンブロット解析により調べた。プローブは、TRPC7.5267プライマー(5’−ACGAGGCTGCAGAAGCTCT−3’)とλgt10ベクタープライマー(5’−CTTCCAGGGTAAAAAGCAAAAG−3’)を用いcDNAクローンCN1−13からPCRによって増幅した(probe A)。約6.5kbの転写産物が胎児脳、成人脳で観察され、また胎盤で弱く観察された(図4上)。脳の中では、大脳皮質、後頭葉極、前頭葉、小脳扁桃、尾条核、海馬で比較的多く発現していた(図4下)。また、6.5kbと5.5kbの転写産物が尾条核と被殻に見られた。probe Aを用い、EcoRI、HindIII、BamHIで消化した全ヒトDNAあるいはKB68A7のブロットに対してサザンハイブリダイゼーションを行った。この結果、同一のハイブリダイゼーションパターンが観察され、probe Aは単一コピーの配列であることが示唆された。すなわち、5.5kb産物はalternative splicing産物であると考えられた。脳特異的な発現パターンを示していることから、TRPC7は神経系の機能に重要な役割を果たしていると推測できる。
【実施例10】
【0099】
躁うつ病患者の遺伝子解析
躁うつ病患者におけるTRPC7遺伝子の変異をPCRによって解析した。exon5を含むすべてのexon領域を増幅するためのプライマーを設定し(表2に示した配列を含む)、これらを用いて双極性の躁うつ病患者末梢血のリンパ球より調製したDNAをPCRにより増幅した。患者検体20例中10例においてTRPC7のexon5に欠失変異があることが確認された。この欠失変異は対照である健常者検体では確認されなかった。このことからTRPC7は躁うつ病の原因遺伝子であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明により、従来から遺伝的要因が疑われていた躁うつ病の原因遺伝子を特定することができた。これにより躁うつ病の診断、治療の分野において大きな進歩が期待できる。まず、診断分野においては、従来臨床症状からしか診断できなかった躁うつ病の臨床検査が確立できることになる。検査法の一つは患者組織におけるTRPC7を測定することによる躁うつ病の診断である。また、TRPC7遺伝子の変異を測定することによる躁うつ病の遺伝子診断も可能になる。これらの診断方法は躁うつ病の治療に際して治療効果の判定や治療経過のモニタリングにも有用である。
【0101】
また、本発明は躁うつ病の治療にも有用である。TRPC7蛋白はそれ自身が躁うつ病の治療薬となるばかりではなく、in vitroにおいて躁うつ病の治療薬のスクリーニングや効果判定に有用であると考えられる。さらにTRPC7遺伝子を適当なベクターに組み込んだものを患者の体内に導入することで躁うつ病の遺伝子治療も可能になると考えられる。
【0102】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ膜貫通蛋白質であるポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【請求項3】
請求の範囲第1または2項記載のポリペプチドに対する抗体。
【請求項4】
治療上有効量の請求の範囲第1または2項記載のポリペプチドを含有する、躁うつ病患者の治療のための組成物。
【請求項5】
宿主から由来する試料中の請求の範囲第1または2項記載のポリペプチドの存在を分析することからなる躁うつ病の検出方法。
【請求項6】
請求の範囲第1または2項記載のポリペプチドに結合し、それを活性化または阻害する化合物の同定法であって、化合物の結合に応じて検出可能なシグナルを提供できる第二の成分を伴う該ポリペプチドを表面に発現している細胞を、スクリーニングすべき化合物と接触させてポリペプチドと結合させ、該化合物とポリペプチドとの相互反応から生じるシグナルの存在または不存在を検出して、化合物がポリペプチドと結合し、活性化するか、阻害するかを測定することからなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−47588(P2010−47588A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236275(P2009−236275)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【分割の表示】特願2000−582555(P2000−582555)の分割
【原出願日】平成11年11月11日(1999.11.11)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】