説明

新規重合性化合物

【課題】重合性液晶材料の中間体として有用な、新規な重合性化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される新規重合性化合物。



(式(I)中、R1は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、R2は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、該アルキル基及びアルコキシ基中のアルキレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合またはエステル結合により中断されていてもよい。nは0〜14の整数であり、mは0または1である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶化合物の合成中間体等に有用な新規重合性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性官能基を有する液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物」ともいう)または該重合性液晶化合物を少なくとも一種含有する液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物」ともいう)を、液晶状態で配向させた後、その状態で紫外線等の活性エネルギー線を照射することで、液晶分子の配向状態構造を固定化した重合物を作成することが出来る。このようにして得られた重合物は、屈折率、誘電率、磁化率、弾性率、熱膨張率等の物理的性質の異方性を有していることから、例えば、位相差板、偏光板、偏光プリズム、輝度向上フィルム、ローパス・フィルター、各種光フィルター、光ファイバーの被覆材等の光学異方体として応用可能である。重合によって得られる上記の光学異方体(重合物)においては、異方性以外の特性も重要であり、該特性としては、重合速度、重合物の透明性、力学的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性、耐熱性等が挙げられる。
【0003】
重合性液晶化合物としては、(メタ)アクリル基を有する重合性化合物が提案されている。この重合性官能基が(メタ)アクリル基である重合性液晶化合物は、重合反応性が高く、得られた重合物は高い透明性を有するので、光学異方体としての利用が盛んに検討されている(例えば特許文献1〜10参照)。
【0004】
これに対し、本発明者らは、前記諸特性に優れた光学異方体(重合体)を得ることができる重合性液晶化合物を開発し、出願している(特願2005−315699)。これらの化合物は、重合性液晶材料としての諸特性に優れているため、その原料となる中間体が必要とされている。
また、重合性基とともに、反応性の官能基を有した化合物は、各種機能性の化合物と反応させることが容易であるため、各種機能性材料のモノマーや中間体として必要とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−116534号公報
【特許文献2】特表平11−130729号公報
【特許文献3】特表平11−513360号公報
【特許文献4】特許第3228348号公報
【特許文献5】特開2005−015473号公報
【特許文献6】特開2005−206579号公報
【特許文献7】特開2002−265421号公報
【特許文献8】特開2002−308831号公報
【特許文献9】特開2002−308832号公報
【特許文献10】特開2005−263789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、重合性液晶材料の中間体として有用な、新規重合性化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、新規な重合性化合物を見出した。
すなわち本発明は、下記一般式(I)で表される新規重合性化合物を提供するものである。
【0008】
【化1】

[式(I)中、R1は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、R2は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、該アルキル基及びアルコキシ基中のアルキレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合またはエステル結合により中断されていてもよい。nは0〜14の整数であり、mは0または1である。]
また本発明は、重合性液晶化合物の合成中間体であることを特徴とする前記新規重合性化合物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規重合性化合物は、合成中間体として、重合性液晶化合物を提供できるものであり、有用なものである。また、本発明の新規重合性化合物は、末端に反応性のフェノール性水酸基を有しているために、各種機能性の化合物と反応させることが容易であり、各種機能性材料のモノマーや中間体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、上記一般式(I)で表される本発明の新規重合性化合物について詳細に説明する。
【0011】
上記一般式(I)中、R1及びR2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、R2の、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基の例としては、メチル、クロロメチル、トリフルオロメチル、シアノメチル、エチル、ジクロロエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル等が挙げられ、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基の例としては、メチルオキシ、クロロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、シアノメチルオキシ、エチルオキシ、ジクロロエチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ等が挙げられ、例示したアルキル基及びアルコキシ基中のアルキレン基が、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合またはエステル結合によって中断されたものも挙げられる。
【0012】
上記、一般式(I)で表される本発明の新規重合性化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜22が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

【0023】
【化12】

【0024】
【化13】

【0025】
【化14】

【0026】
【化15】

【0027】
【化16】

【0028】
【化17】

【0029】
【化18】

【0030】
【化19】

【0031】
【化20】

【0032】
【化21】

【0033】
【化22】

【0034】
【化23】

【0035】
本発明の一般式(I)の化合物の合成方法については、以下の方法を挙げることができる。
一般式(I)の化合物の原料として、下記一般式(II)及び(III)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化24】

一般式(II)中、R1は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表す。nは0〜14の整数である。Aは下記、一般式(III)で表される化合物の−OH基とのエステル反応により、エステル結合を形成する基であればよく、カルボン酸(−COOH)、カルボン酸ハライド(−COX、(XはF、Cl、Br、I等のハロゲンを表す))、カルボン酸塩(−COOM、(MはNa、K、Li等のアルカリ金属を表す))が挙げられ、更には、p−トルエンスルホン酸エステル(−CO−O−TS、(TSはトシル基を表す))、メタンスルホン酸エステル(−CO−O−MS、(MSはメシル基を表す))等が挙げられる。一般式(II)中のR1及びnは、それぞれ、一般式(I)の化合物のR1と、nに対応する。
【0037】
【化25】

一般式(III)中、R2は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、該アルキル基及びアルコキシ基中のアルキレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合またはエステル結合により中断されていてもよい。一般式(III)中のR2は、一般式(I)の化合物のR2に対応する。
一般式(III)中、Bは、フェノール性水酸基の保護基を表す。フェノール性水酸基の保護基としては、通常使用されるものでよく、例としては、ベンジル基、p−メトキシベンジル(MPM)基、トリメチルシリル(TMS)基、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、メトキシメチル(MOM)基、メトキシエトキシメチル(MEM)基等が挙げられ、特にベンジル基が好ましい。
【0038】
一般式(I)の化合物を得るための反応のステップとしては、ステップ1として、一般式(II)の化合物と一般式(III)の化合物のエステル化反応を行い、下記一般式(IV)の化合物を得、その後、ステップ2として、保護基Bを脱保護して、一般式(I)の化合物を得ることができる。一般式(IV)中の、R1及びR2は、それぞれ、一般式(II)及び一般式(III)由来のものであり、得られる一般式(I)の化合物に対応する。Bは一般式(III)由来のものである。ステップ2の脱保護の方法は、保護基によって好適な方法を選択すればよい。
【0039】
【化26】

【0040】
本発明の新規重合性化合物は、その末端に、反応性基であるフェノール性水酸基を有することに特徴があり、このフェノール性水酸基を他の化合物と反応させることにより、各種重合性液晶化合物を得ることができ、これにより各種重合性液晶化合物の中間体として有用である。
【0041】
得られる重合性液晶の例としては、例えば、一般式(V)、(VI)等の重合性液晶が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
【化27】

一般式(V)中、R1、R2、nは、一般式(I)の化合物と同様であり、R3は、水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1であり、pは1〜14の整数である。
【0043】
【化28】

一般式(VI)中、R1、R2、nは、一般式(I)の化合物と同様であり、R4は、水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0または1であり、qは1〜14の整数である。
【0044】
得られた重合性液晶化合物は、重合または共重合することにより、(共)重合物(光学異方体)とすることができ、該(共)重合物は、液晶ディスプレイの位相差フィルム、液晶ディスプレイの光学補償板(位相差板)、液晶ディスプレイの配向膜、偏光板、視野角拡大板、反射フィルム、カラーフィルター、ホログラフィー素子、光偏光プリズム、光ヘッド等の光学素子、ローパス・フィルター、輝度向上フィルム、偏光ビームスプリッター等の光学異方体として使用できる。
【0045】
また、本発明の新規重合性化合物は、末端に反応性のフェノール性水酸基を有しているために、各種機能性の化合物と反応させることが容易であり、前記液晶化合物の中間体以外にも、各種機能性材料、例えば、光学異方体、色相補正板、波長変換素子、非線形光学材料、有機半導体、接着剤、高機能性インク、塗料、半導体レジスト、カラーフィルター用着色レジスト、光感応性素子、高誘電膜材料、各種シールド材、樹脂基板材等のモノマーや中間体として有用である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例(合成例)により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の実施例(合成例)において、化合物の構造は、核磁気共鳴(1H−NMR)スペクトル、赤外吸収(IR)スペクトル等で確認した。
また、重合性液晶化合物の熱転移挙動は、DSC及び偏光顕微鏡を用いて観察し、Cは結晶を、Nはネマチック相を、Iは等方性液体相をそれぞれ表す。
【0047】
〔実施例1〕化合物No.2の合成
本発明の化合物No.2を以下のステップ1〜2の手順に従って合成した。
<ステップ1>
下記反応式に従い、ベンジルエーテル化合物を以下のように合成した。
【0048】
【化29】

【0049】
すなわち、6−アクリロイルオキシ−2−ナフトエ酸1.90g(7.86mmol)をTHF10gに溶解し、氷水冷下、メタンスルホニルクロリド0.99g(8.65mmol)を加え、トリエチルアミン(TEA)1.91g(18.87mmol)を滴下した。1時間攪拌した後、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)10mg(0.08mmol)を加え、4−ベンジルオキシ−2−n−プロピルフェノール2.00g(8.25mmol)をTHF7gに溶解したものを滴下し、1時間攪拌した。室温に戻した後、析出物をろ別し、ろ液を水洗した。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン、SiO2)により精製した後、アセトン溶媒で再結晶し、白色固体として目的物であるベンジルエーテルを得た(収量2.27g、収率61.9%)。
【0050】
<ステップ2>
ステップ1で得られたベンジルエーテル化合物を用いて、下記反応式に従い以下のようにして化合物No.2を合成した。
【0051】
【化30】

【0052】
すなわち、無水塩化アルミニウム2.01g(15.08mmol)をアニソール9gに溶解し、氷水冷下で、ステップ1で得られたベンジルエーテル化合物2.27g(4.87mmol)をアニソール9gに溶解したものを滴下した。1時間攪拌した後、室温に戻し、塩酸を滴下して析出物を溶解させ、水洗を行った。溶媒を留去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/トルエン=1/5、SiO2)により精製した後、アセトン/メタノール混合溶媒で再結晶し、白色固体を得た(1.20g、収率65.6%)。
得られた白色個体について分析を行ったところ、該白色固体は目的物である化合物No.2であることが確認された。分析結果を下記に示す。
【0053】
(分析結果)
(1)IR〔KBr錠剤法〕(cm-1
3379,2954,2927,2870,1724,1628,1601,1501,1474,1450,1400,1373,1339,1277,1172,1142,1111,1057
(2)1H−NMR〔CDCl3〕(ppm)
0.9(t;3H),1.5−1.8(m;2H),2.4−2.6(t;2H),4.9(s;1H),6.0−7.4(m;7H),7.7−8.3(m;4H),8.8(s;1H)
(3)融点
149.3℃(DSC,5℃/min)
【0054】
〔実施例2〕重合性液晶の合成
実施例1で得られた化合物No.2を中間体原料として、下記、反応式に従い、重合性液晶化合物−1を合成した。
【0055】
【化31】

【0056】
すなわち、6−(6−アクリロイルオキシ−ヘキシルオキシ)−2−ナフトエ酸1.04g(3.04mmol)をTHF12gに溶解し、氷水冷下で、メタンスルホニルクロリド0.38g(3.34mmol)を加え、トリエチルアミン0.74g(7.29mmol)を滴下した。一時間攪拌した後、DMAP4mg(0.03mmol)を加え、実施例1で得られた化合物No.2の1.20g(3.19mmol)をTHF8gに溶解したものを滴下し、1時間攪拌した。室温に戻した後、析出物をろ別して、ろ液を水洗し、溶媒を留去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/トルエン=1/5、SiO2)により精製した後、酢酸エチル/ヘキサンの混合溶媒で再結晶し、白色固体を得た(0.67g、収率31.5%)。得られた白色固体について分析を行ったところ、該白色固体は目的物である重合性液晶化合物−1であると確認された。分析結果を下記に示す。
【0057】
(分析結果)
(1)IR(cm-1
2936,2866,1624,1474,1404,1339,1273,1246,1200,1169,1150,1065,1022
(2)1H−NMR(ppm)
0.9(t;3H),1.5−1.9(m;10H),2.6(q;2H),3.9−4.3(m;4H),5.7−6.6(m;6H),7.1−7.5(m;6H),7.7−8.3(m;7H),8.7(s;1H),8.9(s;1H)
(3)熱転移挙動
下記〔化32〕に、熱転移挙動を示す。
【0058】
【化32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される新規重合性化合物。
【化1】

[式(I)中、R1は水素原子、メチル基またはハロゲン原子を表し、R2は、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、該アルキル基及びアルコキシ基中のアルキレン基は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合またはエステル結合により中断されていてもよい。nは0〜14の整数であり、mは0または1である。]
【請求項2】
重合性液晶化合物の合成中間体であることを特徴とする請求項1記載の新規重合性化合物。































【公開番号】特開2007−186430(P2007−186430A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3724(P2006−3724)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】