説明

新規4,5,6,7−テトラヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン系化合物

本発明は、p90リボソームS6キナーゼ1(RSK1)のキナーゼ活性を直接的に増進させる新規化合物、それを有効成分として含有する、薬学組成物、肝繊維症または肝硬変症の予防または治療のためのその用途及びその治療学的有効量を、哺乳動物に投与することを含む肝繊維症または肝硬変症を予防または治療する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な4,5,6,7−テトラヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン系化合物に関するものである。特に、本発明は、p90リボソームS6キナーゼ1(RSK1)のキナーゼ活性を直接的に増進させる下記一般式(I)の化合物、それを有効成分として含有する薬学組成物、肝繊維症または肝硬変症の予防または治療のためのその使用、及びその治療学的有効量を哺乳動物に投与することを含む肝繊維症または肝硬変症を予防または治療する方法に関するものである:
【化1】

式中、上記置換基の定義は明細書の記載と同義である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、新規な4,5,6,7−テトラヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン系化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物に関するものである。特に、本発明の上記4,5,6,7−テトラヒドロ−[1,2]ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン系化合物は、p90リボソームS6キナーゼ1(RSK1)を直接的に活性化させてキナーゼ活性を増進し、これによって、CCAAT−エンハンサー結合タンパク質β(C/EBPβ)の特定残基のリン酸化を生じさせて活性型C/EBPβが形成される。上記活性型C/EBPβは遺伝子発現を調節するので、肝細胞の再生を促進する。また、活性型C/EBPβは肝繊維症の核心因子である転換成長因子β(TGFβ)の遺伝子発現を抑制して肝繊維症、肝硬変を予防及び治療することができる。
【0003】
肝臓は体外及び体内物質を新陳代謝する中枢的な役割を果し、持続的に酵素反応及びエネルギー代謝が起こる生体器官である。現在、韓国内の慢性疾患の中で肝炎、肝硬変及び肝癌は循環器系疾患と共にとても頻繁なものであり、また、疾患による死亡原因の大きな一部分を占めている。特に、先進国に比べて飲酒人口が相対的に多く、また、暴飲による肝損傷の可能性が高いので、肝臓に関する関心が高い。ウイルス感染や飲酒による持続的な肝組織の損傷は肝硬変症や肝癌に発展する慢性複合性疾患を引き起こす。肝組織の生理的特性及び重要性を考慮するとき、肝疾患の治療及び予防は非常に重要である。したがって、肝組織損傷を低減し、窮極的に肝細胞再生によって肝機能を正常化させることができる薬物の治療作用点を発掘及び活用する技術を開発することが求められている。
【0004】
本発明者は、先行研究を通じてC/EBPの活性が肝硬変症治療及び肝組織再生において必須核心転写因子であることを既に明らかにした(大韓民国特許出願番号第2000−18134号及び大韓民国特許第0377789号)。本発明者らは肝繊維化、肝硬変症と関連した主要遺伝子発現の変化を媒介する細胞信号を持続的に鋭意研究した。その結果、驚くほどに、一般式(I)の化合物がRSK1のキナーゼ活性を直接的に増進し、そのような直接的なRSK1の活性増進が肝繊維症、肝硬変症を治療することができることを見出した。したがって、本発明者らはRSK1のキナーゼ活性を直接的に増進しうる新規な一般式(I)の化合物、及びそれを含有する薬学組成物を発明するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、RSK1のキナーゼ活性を直接的に増進させる新規化合物を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、 有効成分として、上記新規化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を含有する肝繊維症または肝硬変症の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、肝繊維症または肝硬変症の予防または治療のための上記新規化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物の使用を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、治療学的有効量の上記組成物を哺乳動物に投与して肝繊維症または肝硬変症を予防または治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は下記一般式(I)の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を提供する:
【化2】

式中、Rは水素、C1−7アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−7ハロアルキル、C1−7アルコキシ、C3−7シクロアルコキシ、C1−7アルキルチオ、C3−7シクロアルキルチオ、C1−7アルキルスルホニル、C1−7アルキルアミノカルボニル、ヒドロキシル、チオール、ハロゲン、カルボキシル、ニトロ、シアノ、C1−7アルキルカルボニル、C1−7アルコキシカルボニル、C1−7アルキルカルボニルオキシ、アミノ、C1−7アルキルアミノ、C1−7アルキルカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルホンアミノ、フェニル、ヘテロアリール、フェニルC1−4アルキル及びヘテロアリールC1−4アルキルよりなる群から選択され、
ここで、上記フェニルは置換されていてもよく、
上記ヘテロアリールは窒素、硫黄及び酸素よりなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する置換されていてもよい5−または6−員環を示す。
【0010】
また、本発明は、有効成分として、上記一般式(I)の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を含有する肝繊維症または肝硬変症の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、肝繊維症または肝硬変症の予防または治療のための上記一般式(I)の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物の使用を提供する。
【0012】
また、本発明は、有効成分として、上記一般式(I)の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を含有する組成物の治療学的有効量を、哺乳動物に投与することを含む肝繊維症または肝硬変症を予防または治療する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
別に言及されない限り、上記定義は下記通りに使われる。
−ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードの一般名であり;
−C1−4アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖飽和炭化水素ラジカル、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、1−メチルエチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチルなどであり;
−C1−7アルキルは、C1−4アルキル(上記定義と同義)を含み、5または7個の炭素原子を有する高級同族体、例えば、2−メチルブチル、n−ペンチル、ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチルなどであり;
−C3−7シクロアルキルは、3〜7個の炭素を有する環状炭化水素、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどであり;及び
−C1−7アルコキシは、直鎖または分枝鎖アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどである。
【0014】
上記化合物において、好ましい置換基は、制限するものではないが、ハロゲン(例、塩素、臭素、フッ素及びヨード)、好ましくは、アルキル、アルコキシ、アラルキル、またはハロアルキル(例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルなど)、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、シアノ、ホルミル、アシル、アミノアルキル、モノ−またはジ−アルキルアミノアルキル、アジド、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アルキルカルバモイルなどが挙げられる。
【0015】
薬剤学的に許容される付加塩は、薬剤学的に許容される酸付加塩及び薬剤学的に許容される塩基付加塩を含む。本明細書で言及される薬剤学的に許容される酸付加塩は、一般式(I)の化合物が形成しうる治療的に活性である非毒性酸付加塩形態を含む。塩基性性質を有する一般式(I)の化合物は、好適な酸で上記塩基形を処理することによって、その薬剤学的に許容される酸付加塩に転換することができる。好適な酸は、例えば、塩酸または臭化水素酸のようなハロゲン化水素酸;硫酸;硝酸;リン酸などの無機酸;または、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸(即ち、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノ−サリチル酸、ネギモー酸などの有機酸を含む。
【0016】
酸性の性質を有する一般式(I)の化合物は好適な有機または無機塩基で上記酸性形を処理することによって、その薬剤学的に許容される塩基付加塩に転換することができる。好適な塩基塩形は、例えば、アンモニウム塩、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など;ベンザチン、N−メチル−D−グルカミン、ヒヒドラバミン(hydrabamine)塩のような有機塩基との塩;及びアルギニン、リジンのようなアミノ酸との塩を含む。
【0017】
また、本発明は一般式(I)の化合物が形成しうる水和物及び溶媒和物を含む。上記水和物及び溶媒和物は常法で製造することができる。
【0018】
本発明において、上記一般式(I)の化合物の中で、好ましい化合物は、5−ベンジル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオンまたは3-チオキソ−6,7−ジヒドロ−3H,4H−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−5−カルボン酸エチルエステルである。
【0019】
本発明はRSK1を直接的に活性化させる一般式(I)の化合物が肝組織の再生促進及び転換成長因子の発現抑制に有効であることを新たに見出したことに基づいている。実際に、下記実験例によれば、一般式(I)の化合物による直接的なRSK1の活性増加は、細胞再生の核心因子であるC/EBPβのセリン105番残基を選択的にリン酸化しており、これによって活性化されたC/EBPβは標的遺伝子の活性を増加または抑制することによって、肝硬変症の治療効能を増加させる。
【0020】
本発明に係る技術は、転換成長因子の抑制及び肝細胞再生に有効であるので、肝繊維化症及び肝硬変症を治療する進歩した技術である。さらに、RSK1の活性増進による副作用はほとんどないため、本技術を治療目的だけでなく予防目的の技術にも活用することができる。さらにまた、特定遺伝子を欠損させる技術とは違って、RSK1の活性を一般式(I)の化合物によって増加させているので、一般式(I)の化合物の投与を中止するときにはRSK1の活性を所望の水準に低くすることができる。したがって、治療が完了された時点には、本発明の技術はRSK1の活性を再調節することができる。
【0021】
また、本発明の化合物は薬剤学的な分野で通常的な方法によって経口投与に好適な単位投与形の製剤及び注射剤に剤形化して投与できる。このような目的に好適な経口投与用剤形には硬質及び軟質カプセル剤、錠剤、散剤、懸濁剤、シロップ剤などが含まれる。このような経口投与用製剤には2種類またはその以上の薬物学的活性成分の外に一つまたはそれ以上の薬剤学的に不活性の通常的な担体、例えば、でんぷん、ラクトース、カルボキシメチルセルロース、カオリンなどの賦形剤、水、ゼラチン、アルコール、グルコース、アラビアゴム,トラガカントゴムなどの結合剤、でんぷん、デキストリン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、流動パラフィンなどの滑剤のような添加剤成分がさらに含まれ得る。また、本発明に溶解のための溶解助剤などが添加され得る。
【0022】
本発明の組成物の1日投与量は、投与しようとする対象の疾患の進行程度、発病時期、年齢、健康状態、合併症などの様々な要因によって異なるが、成人を基準にするとき、一般的には上記組成物1〜500mg/kg、好ましくは30〜200mg/kgを1日数回分割して投与することができる。
【0023】
本発明は下記実施例及び実験例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例に制限されるものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1
5−ベンジル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン(化合物1)の合成
カリウムt−ブトキシド 0.69g(6.15mmol)をテトラヒドロフラン 10mL及びジメチルホルムアミド 2mLの混合溶媒に懸濁し、1−ベンジル−4−ピペリドン 0.5mL(2.80mmol)を加え、常温で15分間、攪拌した。二硫化炭素 0.19mL(3.16mmol)を加え、常温で15分間、攪拌した後、ヘキサメチルジシラチアン(hexamethyldisylathian)0.89mL(4.22mmol)を加え、15分間、攪拌した。反応液を0℃に冷却し、ヘキサクロロエタン 0.73g(3.08mmol)を加え、同温度で30分間、攪拌した。メタノール 5mLを入れて常温で15分間、攪拌して反応を終結し、減圧蒸留して溶媒を除去した。残留物を水 30mLで希釈し、CHCl 30mLで抽出し、塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次ぎに、溶媒を減圧蒸留し、得られた残留物をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ノルマルヘキサン/アセトン=20/1)で精製して260mgの目的化合物を固体で得た(33.3%)。
HNMR(400MHz,CDCl)2.65(t,J=3Hz,2H),2.85(t,J=3Hz,2H),3.50(s,2H),3.70(s,2H),7.20−7.30(m,5H)
Mass(FAB)280.0(M+1
【0025】
実施例2
3−チオキソ−6,7−ジヒドロ−3H,4H−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(化合物2)
カリウムt-ブトキシド 0.82g(7.31mmol)をテトラヒドロフラン 10mL及びジメチルホルムアミド 2mLの混合溶媒に懸濁し、エチル4−オキソ−1−ピペリジンカルボキシレート 0.5mL(3.31mmol)を加え、常温で15分間攪拌した。二硫化炭素 0.22mL(3.66mmol)を加え、常温で15分間攪拌した後、ヘキサメチルジシラチアン 1.05mL(4.98mmol)を加え、15分間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、ヘキサクロロエタン 0.86グラム(3.63mmol)を加え、同温度で30分間攪拌した。メタノール 5mLを入れて常温で15分間、攪拌して反応を終結し、減圧蒸留して溶媒を除去した。残留物を水 30mLで希釈し、CHCl 30mLで抽出し、塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次ぎに、溶媒を減圧蒸留し、得られた残留物をシリカゲル上でカラムクロマトグラフィー(溶離剤:酢酸エチル/ノルマルヘキサン=1/10)で精製して390mgの目的化合物を固体で得た(45.0%)。
HNMR(400MHz,CDCl)1.25(t,J=7Hz,3H),2.55(q,J=7Hz,2H),2.85(m,1H),3.70−3.75(m,3H),4.15−4.20(m,2H)
Mass(EI)261.0(M
【0026】
実験例
化合物1及び化合物2によるC/EBPβ活性化、及びC/EBPβ活性化によるGSTA誘導発現
本実験例では、上記実施例で合成された化合物1及び化合物2を用いてC/EBPβ活性化及びC/EBPβ活性化によって誘導される代表的遺伝子であるグルタチオン S−トランスフェラーゼ A(GSTA ;Glutathione S-transferase A)の増加程度を検索した。まず、新規合成された化合物中で細胞を死滅しない化合物を選択するために、肝細胞株に各合成された化合物(30μM)を加え、24時間、培養した。0.7mg/mLのMTT(イエローテトラゾリウム塩)を加え、さらに4時間、培養した。生存細胞でMTTは水に溶けないホルマザン結晶に還元されるので、生成された結晶をDMSO溶媒で溶かし、595nmで吸光度を測定した。細胞を死滅する化合物を除いた新規合成された化合物、即ち、化合物1及び化合物2(各30μM)を細胞と共に24時間、培養し、処置した細胞から得られた核画分または全細胞画分(lysates)でC/EBPβ活性化とGSTA発現を免疫化学的方法により測定した。
【0027】
C/EBPβの活性化測定方法及び結果
動物で、C/EBPβ遺伝子を欠損したときには、肝組織の再生が不可能である(Greenbaum et al., J Clin Invest. 1998; 102(5): 996-1007)。C/EBPβの活性化は肝繊維症媒介因子である転換成長因子(TGF−β)遺伝子発現を抑制する(Kang et al., FASEB J. 2002; 16(14): 1988-90)。したがって、C/EBPβの活性化は肝組織の再生及び肝繊維症の抑制に核心的な役割を遂行する。C/EBPβ活性化過程はC/EBPβの特定アミノ酸残基、即ち、セリン105番リン酸化を媒介して発生する(Buck et al., Mol Cell. 1999; 4(6): 1087-92)。このような背景下で、本発明の化合物による直接的なRSK1の活性増加がC/EBPβのセリン105番リン酸化を誘導するか否かを観察した。細胞に化合物1及び化合物2をそれぞれ処置し、一定時間、共に培養したとき、C/EBPβのセリン105番リン酸化は培養後、3時間以後から増加した。化合物1及び化合物2によって細胞質画分から量的に増加したp−C/EBPβ(SeR105)は6時間以後からは核画分に移動した。その一方、C/EBPβのトレオニン残基188番リン酸化程度は、全く変化しなく、小分子有機化合物によるRSK1活性化によってC/EBPβのリン酸化がC/EBPβ分子の特定残基から選択的に発生することを確認した。上記実験例で、比較例としてオルティプラッツ(oltipraz)を使用した。化合物1及び化合物2は下記表1に示されるように、C/EBPβを活性化することを示した(+、オルティプラッツと類似な程度の活性効能;++、オルティプラッツより強い活性効能)。C/EBPβ活性化を起こすこれらの新規化合物は、予測通りに、C/EBPβ活性化によってGSTA発現を顕著に向上させた(○、オルティプラッツと同等な酵素誘導;○○、オルティプラッツより強い酵素誘導)。
【表1】

【0028】

上記の成分を混合し、通常の錠剤の製造方法に従って打錠して錠剤を製造した。
【0029】

上記の成分を混合し、通常のでんぷんの製造方法に従って打錠して錠剤を製造した。
【0030】

上記の成分を混合し、常法のカプセル剤の製造方法に従って硬ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0031】

上記の成分を密に混合し、ポリエチレンがコーディングされたパックに充填し、密封して散剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上から分かるように、本発明に係る一般式(I)の化合物による直接的なRSK1の活性増加は転換成長因子の遺伝子発現を抑制する効能があり、また、分子水準で独特な薬理効能を示し、肝硬変症治療はもちろん、肝組織の再生を促進するので、RSK1を活性化する本化合物は肝繊維症、肝硬変症の予防及び治療剤として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物:
【化1】

式中、Rは水素、C1−7アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−7ハロアルキル、C1−7アルコキシ、C3−7シクロアルコキシ、C1−7アルキルチオ、C3−7シクロアルキルチオ、C1−7アルキルスルホニル、C1−7アルキルアミノカルボニル、ヒドロキシル、チオール、ハロゲン、カルボキシル、ニトロ、シアノ、C1−7アルキルカルボニル、C1−7アルコキシカルボニル、C1−7アルキルカルボニルオキシ、アミノ、C1−7アルキルアミノ、C1−7アルキルカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルホンアミノ、フェニル、ヘテロアリール、フェニルC1−4アルキル及びヘテロアリールC1−4アルキルよりなる群から選択され、
ここで、上記フェニルは置換されていてもよく、
上記ヘテロアリールは窒素、硫黄及び酸素よりなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有する置換されていてもよい5−または6−員環を示す。
【請求項2】
上記化合物が、5−ベンジル−4,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−3−チオン、または3−チオキソ−6,7−ジヒドロ−3H,4H−1,2−ジチオロ[4,3−c]ピリジン−5−カルボン酸エチルエステルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
有効成分として、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を含有する肝繊維症または肝硬変症の予防または治療用薬学組成物。
【請求項4】
肝繊維症または肝硬変症の予防または治療のための請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物の使用。
【請求項5】
有効成分として、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容しうる塩、またはそれらの溶媒和物または水和物を含有する組成物の治療学的有効量を、哺乳動物に投与することを含む肝繊維症または肝硬変症を予防または治療する方法。

【公表番号】特表2008−515880(P2008−515880A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535617(P2007−535617)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003369
【国際公開番号】WO2006/080745
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(500437371)シージェイ コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】CJ Corporation
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】