説明

新規CC−ケモカインアンタゴニスト

新規なCC−ケモカイン結合タンパク質をクリイロコイタマダニの唾液から分離した。本発明に従い調製される化合物は、CC−ケモカイン関連疾患の治療又は予防において、抗炎症化合物として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CC−ケモカインの新規なアンタゴニストとそれらの使用、特に抗炎症化合物としての使用と、CC−ケモカイン関連疾患の治療又は予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは小型の炎症促進性の分泌タンパク質であって、血液から損傷部位への白血球の指向性の遊動を媒介する。このタンパク質ファミリーを特徴付けている保存システインの位置に応じて、ケモカインファミリーは構造上C、CC、CXC、及びCX3Cケモカインに分類され、一連の膜受容体に結合する(Baggiolini M et al., 1997; Fernandez EJ and Lolis E, 2002)。これらの膜受容体は何れもヘプタヘリカル(heptahelical)G−タンパク質共役型受容体であり、その状態及び/又は種類に応じて特定の組み合わせの受容体を提示することがある標的細胞に対して、ケモカインがその生物学的活性を及ぼすのを可能としている。ケモカインの生理学的影響は、同時に生じる複数の相互作用からなる、複雑且つ統合された系によって生じる。これらの受容体のリガンド特異性は互いに重複する場合が多く、このため、一の受容体が異なるケモカインに結合する場合がある。同様に、一のケモカインが異なる受容体に結合する場合もある。
【0003】
構造と活性との関係に関する研究によれば、ケモカインはその受容体と相互作用する二つの主部位を有することが示されている。可動性アミノ末端領域と、2番目のシステインに続く立体構造上強固なループである。ケモカインはこのループ領域によって受容体にドッキングするものと考えられ、この接触によって容易にアミノ末端領域の結合が生じ、受容体の活性化を引き起こすものと考えられている。
【0004】
通常、ケモカインは損傷部位で産生され、白血球の遊走及び活性化を引き起こすもので、炎症、免疫、恒常性、造血、及び血管新生の過程において基礎的な役割を果たしている。よって、これらの分子は、このようなプロセスに関連する疾患に治療介入する場合に、優れた標的候補であると看做されている。ケモカイン或いはそれらの受容体を抑制することによって、白血球の成熟、動員、及び活性化を低減できると同時に、血管新生又は動脈硬化に関連する他の病理過程をも低減することができる(Baggiolini M, 2001; Loetscher P and Clark-Lewis I, 2001; Godessart N and Kunkel SL, 2001)。
【0005】
これらの受容体を遮断する、抑制性の変異ケモカイン、抗体、並びにペプチド及び小分子の抑制剤に加えて、有効なケモカインのアンタゴニストを探す試みは、ヒトや哺乳類の宿主と接触するとその宿主に強力な免疫調節活性を及ぼす、一群のウイルスや他の生物体にも及んでいる。
【0006】
サイトカイン、ケモカイン、及びそれらの受容体のウイルスによる擬態は、治療薬開発のための免疫調節の方策を示している(Alcami A, 2003; Lindow M et al., 2003)。最近では、吸血節足動物によって発現される免疫調節因子(例えば蚊、サシチョウバエ、ダニ等)が報告されている(Gillespie, RD et al., 2000)。
【0007】
特に、ダニの唾液腺は、特に抗炎症、抗止血、及び抗免疫活性を有する、生物活性分子の複合混合物を産生する。これらの中には、ヒスタミンを抑制し、免疫グロブリンと結合し、或いは代替補体カスケードや他のプロテアーゼを抑制する生物活性タンパク質が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多数の文献が存在するにも関わらず、様々なダニの組織及び/又は種から生成されたライブラリのランダムシークエンシング及びディファレンシャルスクリーンにより同定されたcDNA配列を挙げている論文は少数に過ぎない。しかしながら、これらの配列の大多数は生化学的又は機能的な特徴付けがなされておらず、多くの注釈付けは、例えば以前にダニの唾液腺中で酵素活性や抗体反応の誘導について同定されたもののように、基本的な細胞機能に関わる既知のタンパク質との配列類似性のみに基づいてなされている。特に、ダニのタンパク質がCC−ケモカイン結合タンパク質として作用し、CC−ケモカインのアンタゴニストとして機能することを示唆するものはない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus:イヌダニ)の唾液に含まれる、ChBP−59と名付けられた新規なタンパク質が、CC−ケモカインと結合してその活性を抑制することが見出された。ChBP−59はクリイロコイタマダニのcDNAライブラリからクローン化され、哺乳類細胞内で発現された。このタンパク質、並びにその誘導体、断片、又は模倣薬は、治療に使用することができ、例えば哺乳類生物におけるCC−ケモカインのアンタゴニストとして、或いは、ワクチン接種の標的、及び、ダニやダニ媒介病原体の抑制の標的として使用することができる。
【0010】
即ち、本発明の第1の要旨は、ChBP−59又はその断片又は類似体のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに関する。好ましい本発明ポリペプチドは、CC−ケモカインに結合し、その生物学的活性を抑制する。このようなポリペプチドの具体例としては、ChBP−59又はその断片が挙げられる。
【0011】
本発明の第2の要旨は、上に定義されたポリペプチドをコード化する核酸分子に関する。このような核酸には、これらから単離されたオリゴヌクレオチドや、当該分子を含有するベクター、特に発現ベクターも含まれる。
【0012】
本発明の第3の要旨は、上に定義されたポリペプチドに対して選択的に結合する抗体に存する。
【0013】
本発明の第4の要旨は、上に定義されたポリペプチドを発現する宿主細胞及びヒト以外のトランスジェニック動物、並びに、このような細胞及びヒト以外のトランスジェニック動物を製造するための方法に関する。
【0014】
本発明の第5の要旨は、上に定義されたポリペプチドを、主に組み換え技術を用いて調製する方法である。
【0015】
本発明の第6の要旨は、上に定義されたポリペプチド又は核酸分子と、医薬的に許容し得る担体又はビヒクルとを含んでなる医薬用(例えばワクチン又は免疫原性)組成物である。
【0016】
本発明の第7の要旨は、薬剤、特に哺乳類において免疫又は炎症反応を調節するための薬剤の調製における、上に定義されたポリペプチド又は核酸分子の使用と、対応する治療の方法に関する。
【0017】
本発明のその他の特徴や効果は、以下の詳細な記載から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ケモカイン活性を調節するための新規な組成物及び方法を提供する。より具体的には、本発明は、CC−ケモカイン結合特性を有し、ケモカイン作用の抑制に使用できる、新規なタンパク質に関する。実施例は、ダニの唾液に由来するこのタンパク質が、組み換え型として発現及び精製することができ、CC−ケモカインに有効に結合して、その作用、例えば、CC−ケモカインにより誘導される細胞の特異的な走化性反応等を抑制することを示している。
【0019】
従って、本発明の第1の態様は、ChBP−59ポリペプチド、即ち、ChBP−59のアミノ酸配列又はその断片若しくは類似体を含んでなる任意のポリペプチドに存する。好ましい本発明のポリペプチドは、CC−ケモカインに結合して、当該ケモカインの活性を抑制する。
【0020】
具体的な本発明のポリペプチドは、以下の群より選択される。
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を含んでなるタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を含んでなるタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を含んでなるタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を含んでなるタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質をコード化する核酸配列と、適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸分子であって、CC−ケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子により、コード化されるタンパク質;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質と少なくとも約70%のアミノ酸配列が同一であり、且つCC−ケモカインに結合するタンパク質;
g)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合して当該CC−ケモカインの活性を抑制する断片を含んでなるタンパク質;及び
h)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片、又は免疫調節活性を有するタンパク質の断片を含んでなるタンパク質。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、タンパク質は以下の群より選択される。
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を有するタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を有するタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を有するタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインと結合して当該CC−ケモカインの活性を抑制する断片を含んでなるタンパク質;及び
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、哺乳類に投与された場合に免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質。
【0022】
別の態様において、本発明は、上に定義されたタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失、又は置換されてなり、且つ、CXC−ケモカインに結合して当該ケモカインの活性を抑制する変異体に関する。
【0023】
本発明のポリペプチドは、1又は2以上の翻訳後修飾(例えばグリコシル化、リン酸化、シグナルペプチドを脱離するためのエンド−/エキソペプチダーゼによる修飾等)や、異種配列(例えば検出及び/又は精製を向上させるタグやドメイン)をコード化する配列のインフレーム付加を経て得られる成熟型であってもよい。例えば、ChBP−59は、組み換えヒスチジン融合タンパク質として、完全型(配列番号17)及び成熟型(配列番号18)の形態で、哺乳類及び昆虫細胞株の双方において発現された。
【0024】
本発明のポリペプチド又はそれらに対応する核酸は、組み換え又は合成のポリペプチド及び核酸のように、単離された状態(例えば、それらの自然状態とは異なる状態)であってもよい。
【0025】
実施例は、ChBP−59ポリペプチドがCC−ケモカインに結合すること、及び、それらの活性を抑制する(例えば低減する)ために使用し得ることを示している。この特徴決定には、一群の生化学分析法、例えば放射性CC−ケモカインの使用や、機能分析法、例えば細胞を用いた分析法や生体内動物疾患モデル等を利用して行なった。実施例で例証されているように、ChBP−59ポリペプチドは特に、CCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α(alpha:アルファ)、CCL2/MCP−1等のCC−ケモカインに対して、或いは一般的に、CCR1又はCCR5受容体と結合するCC−ケモカインに対して結合する。ChBP−59タンパク質は、その活性こそ様々ながら、TARC/CCL17、CCL18/PARC、CCL4/MIP−1β(beta:ベータ)、MDC/CCL22、MCP−3/CCL7、MCP−2/CCL7、エオタキシン(Eotaxin)/CCL11等の他のCC−ケモカインを認識する、広域性のCC−ケモカイン結合タンパク質であると考えられる。このような広域の活性ゆえに、本発明のChBP−59ポリペプチドは、以下に論じるように、幅広い治療有用性を有する。
【0026】
本発明の文脈において、ポリペプチドの断片とは、当該ポリペプチド配列の少なくとも5、7、7、8、9、又は10の連続したアミノ酸残基を含んでなる任意の断片を指す。本発明の特定の断片は、別途開示されるように、ChBP−59タンパク質の15、20、25、或いはそれ以上のアミノ酸残基を含んでなる。好ましい断片は、ケモカインに結合する能力、全長タンパク質の少なくとも1種の生物学的活性、例えば免疫原性活性や免疫調節活性を保持するものである。
【0027】
これに関連して、本発明の文脈において、「免疫調節活性」とは、生体外又は生体内で検出され、免疫反応に対して促進的又は抑制的に影響を及ぼす任意の活性を指す。このような活性の例としては、免疫化活性、免疫抑制活性、抗炎症活性、アポトーシス促進/抗アポトーシス活性、抗腫瘍活性等が挙げられる。
【0028】
また、この断片は、哺乳類に投与された場合に免疫化活性を発揮するものとしても同定することが可能である。これらの断片は、必要なときに免疫反応を引き起こすように、(例えば、ダニやダニ媒介病原生物に対する)適切な抗原性、免疫原性特性を有するべきである。文献には、このような機能配列をワクチン抗原の候補として同定し、アジュバントとともに、及び/又は、担体に架橋して最終的に投与する方法について、多くの例が開示されている(Mulenga A et al. 2000;WO01/80881;WO03/030931;WO01/87270)。ChBP−59において同定された特異抗原又は抗原群は、外部寄生虫による動物の感染又は疾患の予防又は低減に使用することが可能である。これにより、動物がその外部寄生虫に自然暴露されると、その外部寄生虫に対する動物の免疫が増大する(WO95/22603)。最後に、この断片は、スクリーニング又は診断用途において、タンパク質全体に特異的な抗体を産生させるために使用することも可能である。
【0029】
上に定義されたChBP−59の特性や、この配列の組み換え変種を用いてここに例示する特性は、活性変異体においても維持され、更には強められる場合さえある。この種類の分子としては、1又は2以上のアミノ酸残基の付加、欠失、又は置換を伴う当該配列の天然又は合成の類似体であって、本発明における特徴と同一の生物学的活性を、以下の実施例において開示される手段で測定した場合に、同等或いはそれ以上のレベルで示すものが挙げられる。
【0030】
特に、「活性」という語は、このような代替化合物において、ChBP−59によるCC−ケモカイン結合及び免疫調節特性が維持され、又は増強されていることを意味する。
【0031】
活性変異体分子の生成は、部位特異的突然変異生成技術、DNA配列コード化レベルの組み換え技術(例えばDNAシャッフリング、ファージディスプレイ/選択)、又はコンピュータ支援設計実験によって、或いはそれに適した他の任意の技術によって行なうことが可能である。これらの技術によって、実質的に対応する変異又は短縮型のペプチド又はポリペプチドの有限集合が得られる。当業者であればこれらの代替分子を、従来技術及び以下の実施例により与えられる教示に基づいて、常法にて取得及び試験することが可能である。
【0032】
本発明によれば、これらの活性変異体における改変としては、「保存的(conservative)」置換又は「安全な(safe)」置換として一般に知られるものが好ましく、また、重要でない(non-basic)残基に関するものが好ましい。保存的アミノ酸置換は、分子の構造や生物学的機能が保存されるように、化学的特性が十分類似したアミノ酸と置換するものである。当然ながら、上記定義の配列に、その機能を変化させないような、アミノ酸の挿入及び欠失が生じていてもよい。特にその挿入又は欠失は、関与するアミノ酸が数個程度、例えば10個未満、好ましくは3個未満に留まり、且つ、タンパク質又はペプチドの機能的立体構造に不可欠なアミノ酸を除去又は移動しないものが好ましい。
【0033】
天然タンパク質の配列及び/又は構造に関する統計的及び物理化学的研究に基づき、保存的アミノ酸置換の選択を行なうことが可能なモデルが、文献に多数記載されている(Rogov SI and Nekrasov AN, 2001)。タンパク質設計実験が示すところによれば、特定のアミノ酸のサブセットを使用することで、折り畳み可能な活性タンパク質を産生することができ、アミノ酸「同義(synonymous)」置換の分類の一助となる。これはタンパク質構造内への収容がより容易であり、且つ、ChBP−59の機能的及び構造的なホモログ及びパラログの検出に使用できる(Murphy LR et al., 2000)。置換可能な同義アミノ酸群、及び、より好ましい同義群は、表Iに定義する通りである。
【0034】
しかしながら、ChBP−59配列に関して言えば、特定の残基が特に重要である可能性がある。例えば、ChBP−59は公知のタンパク質の何れかと特に相同性が高い訳ではないが、成熟タンパク質内、特に配列番号5に示す全長ChBP−59上の32、49、53、66、85、90、95、及び104に相当する位置に、数組の(a pair number of)システイン残基を有している。更に、ChBP−59は、グリコシル化可能な部位を3つ、配列番号5に示す全長ChBP−59上のアスパラギン39、54、及び62に相当する位置に有している。これらの残基は、正常な折り畳み及び/又は活性にとって重要である可能性があるので、代替ポリペプチドにおいても対応する位置に保存されることが好ましい。或いは、欠失又は置換されたシステイン又はグリコシル化部位を、タンパク質内の別の位置に再建してもよい。
【0035】
また、哺乳類への投与時における当該CC−ケモカイン結合タンパク質の免疫原性を低減する配列変異によって、ChBP−59の活性変異体を得ることもできる。この目的で、或いは治療タンパク質(特にそれが非ヒト、非哺乳類、又は非天然タンパク質である場合)の安全且つ有効な投与を可能にするその他の機能最適化のために、設計及び導入することが可能な配列変異について、多数の例が文献に記載されている(Schellekens H, 2002)。これらの分子を実現する技術的アプローチの例としては、指向進化(Vasserot AP et al., 2003)、合理的設計(Marshall SA et al., 2003)、生物情報科学(Gendel SM, 2002)、CD4+T細胞エピトープの同定及び中和(WO03/104263;WO03/006047;WO02/98454;WO98/52976;WO01/40281)、他のタンパク質配列との融合(WO02/79415;WO94/11028)、又は他の化合物との結合(WO96/40792)等が挙げられる。
【0036】
活性なChBP−59由来配列は、特に他のダニ種から単離された、ChBP−59の天然類似体又はオルソログであってもよい。他のダニ種として、具体的にはマダニ科に属するもの、より具体的には、クリイロコイタマダニが属するコイタマダニ(Rhipicephalinae)亜科に加え、その他の亜科、例えばマダニ亜科(Ixodinae)(例えばスカプラリスマダニ(Ixodes scapularis)及びリシナスイクソデスマダニ(Ixodes ricinus)等)や、キララマダニ亜科(Amblyomminae)(例えばバリエガアムキララマダニ(Amblyomma variegatum)及びアメリカキララマダニ(Amblyomma americanum))等が挙げられる。或いは、オルソログは、ヒトやマウス等の哺乳類において同定されたものでもよい。
【0037】
吸血性節足動物のゲノム及びトランスクリプトームについて利用可能な情報は限られており、その多くはリボゾーム及びミトコンドリアの配列に関するものであって、それらの保存性に基づいて系統発生上の関係を研究したものである(Murrell A et al., 2001)。マダニのゲノムデータは、部分的且つ予備的なフォーマットでしか利用できないが(Ullmann AJ et al., 2002)、CC−ケモカイン結合タンパク質をコード化するダニ遺伝子の更なる分析は、マダニから抽出したゲノムDNAを用いて行なうことができる。この抽出は、特定の方法及び条件を適用することにより(Hill CA and Gutierrez, J A 2003)、具体的には、既に例証されているように(Wang H et al., 1999)、唾液腺タンパク質における著しい多型性を検出するための方法及び条件を用いることにより、行なうことができる。これらの生物のゲノム及びタンパク質配列は、これらを生理学的及び生物学的に理解する上で重要であり、ひいては、宿主、寄生虫、及び寄生虫媒介病原体の関係における本発明のタンパク質の役割を理解する上で、有用な情報を提供するものである(Valenzuela JG, 2002b)。
【0038】
本発明において、ChBP−59と相同なタンパク質について記述された、CC−ケモカイン結合活性の生物化学的及び生理学的性質の決定は、ダニ及びダニ媒介病原体の研究用に改良された最近の技術、例えば二次元ゲル電気泳動(Madden RD et al., 2004)やRNA干渉(Aljamali MN et al., 2003)を応用することにより行なうことができる。更に、これらのタンパク質上におけるCC−ケモカイン認識部位やCC−ケモカイン拮抗作用のメカニズムのマッピング(Seet BT et al., 2001;Beck CG et al., 2001;Burns JM et al., 2002;Webb LM et al., 2004)、或いは関連する翻訳後修飾の同定(Alarcon-Chaidez FJ et al., 2003)に向けて、更なる研究の余地がある。
【0039】
本発明の別の態様は、上に定義したような、異種のドメインと作動式に連結されたChBP−59ポリペプチドを含んでなる融合タンパク質である。異種のドメインとしては、例えば、以下から選択される1又は2以上のアミノ酸配列が挙げられる。膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部(Fc領域)、多量体化ドメイン、移行シグナル、及びタグ配列(例えば、親和性により精製を容易にするタグ:HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAAGペプチド、又はMBP)。
【0040】
融合タンパク質に関して「作動式に連結された」("operably linked")という表現は、ChBP−59ポリペプチドと別のアミノ酸配列とがペプチド結合により、直接又はスペーサ残基(例えばリンカー)を介して結び付いていることを指す。即ち、融合タンパク質は後述するように組み換えにより、これをコード化する核酸分子を宿主細胞内で直接発現させて産生することが可能である。また、必要であれば、融合タンパク質に含まれる別のアミノ酸配列を、産生/精製プロセスの最後に、或いは生体内において、後述するように、例えば適切なエンド/エキソペプチダーゼを用いて除去することも可能である。この異種部分が作動式に連結される部位は、ChBP−59ポリペプチドのN末端部位及びC末端部位の何れであってもよい。
【0041】
異種部分及び/又はリンカーの設計、並びに融合タンパク質の構築、精製、検出、成熟、及び使用のための方法及び戦略については、文献において様々な論述がなされている(Nilsson J et al., 1997;"Applications of chimeric gene and hybrid protein" Methods Enzymol. Vol. 326-328, Academic Press, 2000)。通常、これらの異種配列は、元のタンパク質の治療活性(例えばCC−ケモカイン結合性)を顕著に損なずに、別の特性を付与することを意図したものである。こうした別の特性の例としては、精製手順の容易化、体液中での半減期の延長、別の結合部分、内部タンパク質消化による成熟、組み換え産生時の安定性、細胞外局在化が挙げられる。この最後の特徴は、上記定義に含まれる特定の融合又はキメラタンパク質群を定義する場合に、特に重要である。これらのポリペプチドの単離及び精製が容易であり、且つ、CC−ケモカインが正常に活性となるような空間内に、ポリペプチドを局在化させることができるからである。
【0042】
これらの配列のうち1又は2以上を選択してChBP−59ポリペプチドに結合することは、当該タンパク質を組み換えタンパク質として特定の使用及び/又は精製プロトコルに供する場合に実用的である。例えば、実施例におけるChBP−59活性の試験は、ChBP−59の検出及び精製を共に容易にする、ヒスチジンタグ配列を含有する融合タンパク質を用いて行なった。これらの配列は、以下の3つの基本的な異種配列群から選択し得る。
【0043】
このような配列の第1の群は、組み換えDNA技術によりタンパク質の分泌や精製を助ける配列、例えばシグナルペプチドや移行シグナル(Rapoport TA et al., 1996)、又は親和性により精製を助けるタグ配列(HAタグ、ヒスチジンタグ、GST、FLAG、又はMBP)からなる群である。
【0044】
異種配列の第2の群は、タンパク質の安定性及び生物活性を向上することが可能な配列に代表される群である。
【0045】
タンパク質の半減期を延長する方策の代表的な例は、ヒト血清アルブミンとの融合、或いは循環ヒト血清アルブミンへの結合を可能とする、ペプチドや他の改変配列との(例えばミリストイル化による)融合である(Chuang VT et al., 2002;Graslund T et al., 1997;WO01/77137)。或いは、この別の配列は、特定の局在化、例えば脳での局在化のためのターゲティングを助けるものでもよい(WO03/32913)。
【0046】
対象への投与時における組み換えタンパク質の安定性を向上させる別の手法は、他のタンパク質から単離された、二量体、三量体等の形成を可能にするドメインを融合することにより、このタンパク質の多量体を生成するものである。本発明のポリペプチドの多量体化を可能にするタンパク質配列の例としては、hCG(WO97/30161)、コラーゲンX(WO04/33486)、C4BP(WO04/20639)、Erbタンパク質(WO98/02540)、又はコイルドコイルペプチド(WO01/00814)等のタンパク質から単離されたドメインが挙げられる。
【0047】
このような融合タンパク質のよく知られた例としては、ヒト免疫グロブリンにおいて通常にみられる二量体化を可能とする、ヒト免疫グロブリンタンパク質の定常/Fc領域が挙げられる。治療タンパク質と免疫グロブリン断片とを含んでなる融合タンパク質を生成するための方策が、文献には種々開示されている(WO91/08298;WO96/08570;WO93/22332;WO04/085478;WO01/03737、WO02/66514)。例として、成熟ChBP−59をコード化する核酸配列をクローン化する場合、本来のChBP−59シグナル配列(又は他の適切なシグナル/搬出配列)をコード化する核酸配列をその5’末端に、ヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1の定常部をコード化する核酸配列(NCBI Acc. no. CAA75302; segment 246-477)をその3’末端に融合させた発現ベクターを用いればよい。得られたベクターをCHO又はHEK293宿主細胞株に形質転換した上で、N末端にChBP−59を有し、C末端にIgG1配列を有する組み換え融合タンパク質を安定に発現及び分泌するクローンを選択する。続いて、このクローンを用いて産生をスケールアップし、得られた組み換え融合タンパク質を培地から精製する。或いは、ヒト免疫グロブリンλ重鎖IgG1の定常部及びChBP−59をコード化する核酸の位置を反転し、得られたタンパク質を同様に、ChBP−59の本来のシグナル配列、又は他の適切なシグナル/搬出配列を用いて発現及び分泌させてもよい。これらの技術を用いれば、ヘテロ二量体を生成することも可能である。即ち二つの異なるコンストラクトを用い、一方にはChBP−59−Fc融合タンパク質を、他方には別のFc系融合タンパク質(例えば他のCC−ケモカインアンタゴニスト)を、同一の宿主細胞中で共発現させればよい(WO00/18932)。
【0048】
更なる異種配列群は、ChBP−59が示す機能活性と相乗作用し、又はこの採用を増幅し得る、更に別の機能活性を付与する配列に代表される群である。これらの配列は、膜結合タンパク質(例えばCC−ケモカイン受容体)の細胞外ドメインから単離され、又は分泌タンパク質中に存在するものと予想されるが、CC−ケモカインアンタゴニストと同様に活性であって、主に免疫調節活性を有するものと考えられる。
【0049】
上述したように、必要に応じて、融合タンパク質に含まれる別の配列を、例えば産生又は精製プロセスの最後に、或いは生体内で、例えば適切なエンド/エキソペプチダーゼ等により除去してもよい。例えば、組み換えタンパク質に含有されるリンカー配列は、エンドペプチダーゼ(例えばカスパーゼ)の認識部位を提示するので、これを利用すれば、所望のタンパク質を異種配列から、生体内又は生体外の何れかにおいて、酵素処理により脱利することができる。或いは、発現されるタンパク質配列が開始メチオニンを有していない場合(例えばその配列が、シグナルペプチドを有さない、タンパク質の成熟配列のみをコード化している場合)でも、開始メチオニンを用いれば、本発明のタンパク質を宿主細胞内で正常に発現させることができる。その後、この付加アミノ酸を、得られた組み換えタンパク質内にそのまま残しておいてもよいが、メチオニンアミノペプチダーゼ等のエキソペプチダーゼを用いて、文献に開示されている方法により除去してもよい(Van Valkenburgh HA and Kahn RA, 2002;Ben-Bassat A, 1991)。
【0050】
本発明のポリペプチドの更なる変種又は類似体は、ペプチド模倣薬(peptide mimetics、別名peptidomimetics)の形態で得られる。これは、ペプチド又はポリペプチドの性質を、アミノ酸側鎖、アミノ酸キラリティー、及び/又はペプチド骨格のレベルで、化学的に修飾したものである。これらの改変は、アンタゴニストの精製、効力及び/又は薬物動態に関する特徴を改善する目的で行なわれるものである。例えばそのペプチドが、対象への注入後、ペプチダーゼにより開裂し易いという問題を有する場合には、特に感受性の高いペプチド結合を非開裂性のペプチド模倣薬で置換することにより、より安定な、ひいては治療においてより有用なペプチドを得ることができる。同様に、L−アミノ酸残基の置換は、ペプチドのタンパク質分解に対する感受性を低減し、最終的にはペプチド以外の有機化合物により類似したものとするための、標準的な手法である。同様に有用なものとしてアミノ末端封鎖基があり、例としてはt−ブチロキシカルボニル、アセチル、テイル(theyl)、スクシニル、メトキシスクシニル、スベリル、アジピル、アゼライル、ダンシル、ベンジロキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベリル、2,4−ジニトロフェニル等が挙げられる。他にも、効能の増強、活性の持続、精製の容易化、及び/又は半減期の延長を達成するための修飾が、本技術分野において多数知られている(WO02/10195;Villain M et al., 2001)。ペプチド模倣薬に含まれるアミノ酸誘導体を代替し得る「同義」の基としては、表IIに定義する基が好ましい。「アミノ酸誘導体」は、遺伝的にコード化されている20種の天然アミノ酸以外のアミノ酸又はアミノ酸様化学物質を意図するものである。具体的に、アミノ酸誘導体は、置換又は無置換の、直鎖若しくは分岐鎖状又は環状のアルキル部分を有していてもよく、1又は2以上のヘテロ原子を含有していてもよい。アミノ酸誘導体は新たに合成してもよく、市販の原料を利用してもよい(Calbiochem-Novabiochem AG, Switzerland; Bachem, USA)。ペプチド模倣薬の合成及び開発の技術は、非ペプチド模倣薬と同様、本技術分野ではよく知られている(Hruby VJ and Balse PM, 2000;Golebiowski A et al., 2001)。また、生体外及び生体内双方の翻訳系を用いて、非天然アミノ酸をタンパク質に導入することにより、タンパク質の構造及び機能を探索及び/又は改良するための方法論も、文献には種々開示されている(Dougherty DA, 2000)。
【0051】
以下に詳述するように、本発明のポリペプチドの調製には、組み換え技術や化学合成技術等、本技術分野で知られている手法の何れを用いてもよい。
【0052】
本発明の更なる目的は、上に定義したようなポリペプチドをコード化する核酸分子、即ち、ChBP−59又はその断片若しくは類似体のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドに存する。
【0053】
具体的に、本発明の核酸分子は以下からなる群より選択される。
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
e)a)、b)、c)、又はd)の核酸分子と、適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸分子であって、CC−ケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質と少なくとも約70%のアミノ酸配列が同一であり、且つCC−ケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
g)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)の核酸分子によりコード化されるタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;及び
h)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)の核酸分子の変性変異体。
【0054】
特に、この核酸分子は、以下からなる群より選択されるタンパク質をコード化する。
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を有するタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を有するタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を有するタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
g)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失、又は置換されてなり、且つ、CC−ケモカインに結合する変異体;及び
h)膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、移行シグナル、及びタグ配列から選択される1又は2以上のアミノ酸配列に対して作動式に連結された、a)、b)、c)、d)、e)、f)、又はg)のタンパク質を含んでなる融合タンパク質:
【0055】
本発明に関して「変性変異体」とは、遺伝コードの縮重のために、基準核酸として同一のアミノ酸配列をコードする、あらゆる核酸配列を指す。
【0056】
更に、「核酸分子」という語は、各種の核酸の全てを含む。例としては、これらに制限されるものではないが、デオキシリボ核酸(例えばDNA、cDNA、gDNA、合成DNA等)、リボ核酸(例えばRNA、mRNA等)、ペプチド核酸(PNA)等が挙げられる。好ましい実施形態によれば、核酸分子はDNA分子、例えば二本鎖DNA分子、特にcDNAである。
【0057】
実施例に開示されたChBP−59のDNA及びタンパク質配列に主に着目した場合、具体的な実施形態としては、適度にストリンジェントな条件(5×SSC、0.5%SDS、1.0mMEDTA(pH8.0)の予洗溶液、並びに、50℃、5×SSC、一晩のハイブリダイゼーション条件)の下、ChBP−59をコード化するDNA配列にハイブリダイズすることができ、且つ、CC−ケモカイン結合タンパク質をコード化する、一群のChBP−59関連配列、例えばDNAやRNA配列が挙げられる。
【0058】
例えば、本発明により、ChBP−59を発現するクリイロコイタマダニのcDNA配列(配列番号3)、関連するオープン・リーディング・フレーム(ORF;配列番号4)、ChBP−59をヒスチジンタグと融合した組み換えタンパク質の形で、哺乳類又は昆虫の宿主細胞において発現させる修飾cDNA配列(配列番号15)、及び関連するORF(配列番号16)が提供される。
【0059】
他の好ましい実施形態によれば、ChBP−59関連配列は、アミノ酸配列の少なくとも約70%、好ましくは80%、最も好ましくは90%がChBP−59と同一であるタンパク質をコード化するDNA分子である。この数値は、FASTA(Pearson WR, 2000)等の任意の専用プログラムを用いて算出することができる。また、断片や部分配列の場合は、その断片中に存在するChBP−59の部分に基づいて算出することができる。
【0060】
別の好ましい実施形態としては、上に定義したような、核酸分子の配列の領域と特異的にハイブリダイズする、或いはそのような断片を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。このようなオリゴヌクレオチドは通常、5から100ヌクレオチド長を有するものであって、例えば、少なくとも約20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、及び、少なくとも約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドからなる群より選択することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、サンプル中のChBP−59コード化転写物における非−/コード配列及び関連配列の(例えばPCRやサザンブロットによる)検出や、ChBP−59の組み換え変種の生成及びサブクローニングに使用することができる。これは実施例において、ChBP−59コード化配列をヒスチジンタグ融合変種としてサブクローニング及び修飾する際に、使用したプライマーの3’末端について示す通りである(59-attB1 forward及び59-attB2 reverse;SEQ ID NO: 7及び8)。
【0061】
更なる態様によれば、上に定義した核酸分子を、クローニング又は発現ベクターに含有させることも可能である。この点で、本発明の特定の目的の1つは、上に定義した核酸分子に作動式に結合されたプロモーター、特に組織特異的、構成的プロモーター、或いは調節(例えば誘導性)プロモーターを含んでなる発現ベクターに存する。このベクターは、他の任意の調節要素、例えばターミネーター、エンハンサー、複製起点、選択マーカー等を含んでいてもよい。このベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルスベクター、ファージ、人工染色体等の何れであってもよい。
【0062】
特定の実施形態によれば、このベクターは、
a)本発明のDNA;及び
b)発現カセット
を含んでなるとともに、当該DNA(a)が、配列(b)に含まれる組織特異的、構成的、又は誘導性プロモーターと、作動式に結合されてなるものであってもよい。
【0063】
なお、コード核酸(即ち配列(a))が開始メチオニンのコドンを含有していない場合(例えばこの配列が、シグナルペプチドを有さない、タンパク質の成熟配列のみをコード化するものである場合)には、このベクター又は発現カセットの配列の5’にATG配列をクローン化して、開始メチオニンにより正常に発現されるようにしてもよい。その後、この付加アミノ酸を、得られた組み換えタンパク質内にそのまま残しておいてもよいが、メチオニンアミノペプチダーゼ等の酵素を用いて、文献記載の方法により除去してもよい(Van Valkenburgh HA and Kahn RA, 2002;Ben-Bassat A, 1991)。
【0064】
このベクターによれば、組織培養条件下のみならず生体内においても、実験的な理由か治療的な理由かを問わず、本発明のタンパク質を発現させることが可能となるであろう。例えば、本発明のタンパク質を過剰発現する細胞を動物モデルに導入(例えば被包)することにより、その細胞を最終的にヒトに投与する前に、本タンパク質の定常投与による生理学的影響を調べることも可能である。また、このベクターは、レトロウイルスによる遺伝子導入への使用や、ベクターや単離されたDNAコード配列を動物内に導入し、内在性プロモーターの制御下で発現させる、他の任意の技術への使用も可能である。このアプローチによれば、本発明のタンパク質を構成的に、又は調節下において(例えば、特定の組織において、及び/又は、特定の化合物による誘導後に)発現する、ヒト以外のトランスジェニック動物を生成することができる。同様のアプローチは、他の非哺乳類のケモカイン結合タンパク質にも適用され、発生や病理学的に様々な効果を挙げている(Jensen KK et al., 2003; Pyo R et al., 2004; Bursill CA et al., 2004)。
【0065】
本発明の別の目的は、上に示されたクローニング又は発現を用いて形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞である。これらのベクターは、本発明のポリペプチドを調製するプロセスにおいて使用することができる。この点において、本発明の目的は、上に定義したChBP−59ポリペプチドを調製する方法であって、発現を許容又は促進する条件下で、上に定義した組み換え細胞を培養する工程と、ChBP−59ポリペプチドを回収する工程とを含んでなる。ベクターが発現したポリペプチドがタンパク質として細胞外間隙に分泌される場合は、その後の処理を考えると、培養細胞からのタンパク質の収集及び精製がより容易である。
【0066】
ベクター及び原核又は真核の宿主細胞を用いて組み換えタンパク質をクローニング及び産生する方法については、多数の書籍や総説で説明されている。例としては、Oxford University Press 発行“A Practical Approach”シリーズの中の数巻("DNA Cloning 2: Expression Systems", 1995; "DNA Cloning 4: Mammalian Systems", 1996; "Protein Expression", 1999; "Protein Purification Techniques", 2001)が挙げられる。また、特に実施例では、クリイロコイタマダニのcDNAライブラリをスクリーニングしてChBP−59をコード化するDNA配列を一旦同定した上で、ORFの適用、修正、及び発現ベクターへの挿入を行ない、対応する組み換えタンパク質を得る方法を示す。
【0067】
通常、これらのベクターは、エピソーム性であっても、非−/相同的に組み込まれたベクターであってもよく、また、任意の適切な手法(形質転換、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、電気穿孔法、リン酸カルシウム沈殿、直接マイクロインジェクションする、等)を用いて形質転換することにより、適切な宿主細胞に導入することができる。特定のプラスミド、ウイルス、又はレトロウイルスベクターを選択する際に重要な因子としては、ベクターを含む受容細胞の認識及びベクターを含まない受容細胞からの選択の容易性、個々の宿主において所望されるベクターのコピー数、ベクターを異なる種の宿主細胞間で「シャトル(shuttle)」させることを所望するか否か、等が挙げられる。これらのベクターによって、単離された本発明のタンパク質、又はこれらを含んでなる融合タンパク質を、原核又は真核の宿主細胞中、適切な転写開始/終止調節配列の制御下に発現することができる。これらの調節配列は、当該細胞内で構成的に活性又は誘導性となるように選択される。このような細胞を十分に増殖させた細胞株を単離すれば、安定な細胞株を得ることができる(HEK293及びTN5細胞株を用いた実施例で示す。)。
【0068】
真核宿主細胞(例えば酵母、昆虫又は哺乳類細胞)の場合、宿主の性質に応じて異なる転写及び翻訳調節配列を使用してもよい。これらの配列はアデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サルウイルス等のウイルス源に由来するものであってもよい。これらにおいては調節シグナルが、高レベルの発現を示す特定の遺伝子と結び付いている。例としては、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、SV40早期プロモーター、酵母gal4遺伝子プロモーター等が挙げられる。転写開始調節シグナルとして、抑制及び活性化が可能なものを選択してもよく、これにより遺伝子発現の調節が可能となる。導入DNAによって安定的に形質転換された細胞を選択するためには、発現ベクターを含む宿主細胞の選択を可能とする1又は2以上のマーカーを導入すればよい。このマーカーは更に、栄養要求性宿主に対する光栄養性、抗生物質等の殺生物剤耐性、又は銅等の重金属を付与するものであってもよい。この選択用マーカー遺伝子は、発現すべきDNA遺伝子配列に直接結合させてもよく、共トランスフェクションにより同一細胞内に導入してもよい。本発明のタンパク質を最適合成するには、追加の成分が必要な場合もある。
【0069】
組み換え産生用の宿主細胞は、原核細胞でも真核細胞でもよい。特に好適な原核細胞としては、組み換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された、細菌(例えば枯草菌(Bacillus subtilis)や大腸菌(E. coli))が挙げられる。好ましくは真核宿主細胞であり、例としては哺乳類細胞、例えばヒト、サル、マウス、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。これらの細胞によれば、正常な折り畳みや正常な部位のグリコシル化等、タンパク質分子の翻訳後修飾が可能となるからである。別の真核宿主細胞としては、酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞が挙げられる。酵母細胞もまた、グリコシル化等の翻訳後ペプチド修飾を行なう。強力なプロモーター配列や高コピー数のプラスミドを用いた組み換えDNA戦略は多数存在し、これらを利用すれば所望のタンパク質を酵母で産生することが可能である。酵母 は、クローニングされた哺乳類遺伝子産物中のリーダー配列を認識し、リーダー配列を有するペプチド(即ち前ペプチド)を分泌する。
【0070】
組み換えポリペプチドを長期に亘り、高収率で産生するためには、発現が安定であることが好ましい。例えば、所望のポリペプチドを安定に発現する細胞株を得るには、ウイルス性の複製起点及び/又は内在性発現素、並びに選択用マーカー遺伝子を同一又は別個のベクター上に含有する発現ベクターを用いて、形質転換を行なえばよい。ベクターの導入に続いて、細胞を富栄養培地で1〜2日培養してから、選択培地に変更すればよい。選択用マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与する点にある。選択用マーカーの存在により、導入配列を首尾よく発現した細胞の生育及び回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞種に適した組織培養技術を用いて増殖させればよい。このような細胞を十分に増殖させた細胞株を単離すれば、安定な細胞株を得ることができる。
【0071】
本発明の組み換えポリペプチドを高収率で産生するためのとりわけ好ましい方法としては、US4,889,803記載のように、メトトレキサート濃度の連続的上昇を用いた、DHFR欠損CHO細胞中でのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)増幅法が挙げられる。得られたポリペプチドはグリコシル化型であってもよい。
【0072】
発現用宿主として使用可能な哺乳類細胞株は本技術分野では公知であり、American Type Culture Collection(ATCC)から多数の不死化細胞株が入手可能である。例としては、これらに制限されるものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、ベビーハムスター腎臓(BHK)、サル腎臓(COS)、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowesメラノーマ、及びヒト肝細胞ガン(例えばHepG2)細胞、並びに他の多数の細胞株が挙げられる。バキュロウイルス系においては、バキュロウイルス/昆虫細胞発現系の材料がキットの形で、特にInvitrogenから市販されている。
【0073】
或いは、本発明のポリペプチドは、人工合成により調製してもよい。これに関して、化学合成技術の例としては、固相合成及び液相合成が挙げられる。固相合成としては、例えば、合成対象のペプチドのカルボキシ末端に対応するアミノ酸を、有機溶媒に溶解し得る支持体に結合させた上で、アミノ基及び側鎖官能基を適切な保護基で保護したアミノ酸を1つずつ、カルボキシ末端からアミノ末端へと順に縮合させる反応と、樹脂に結合したアミノ酸又はペプチドのアミノ基の保護基を遊離させる反応とを交互に繰り返すことにより、ペプチド鎖を延長することができる。固相合成法は、使用される保護基の種類に応じて、大まかにtBoc法とFmoc法とに分類される。一般に使用される保護基としては、アミノ基用として、tBoc(t−ブトキシカルボニル)、Cl−Z(2−クロロベンジロキシカルボニル)、Br−Z(2−ブロモベンジロキシカルボニル)、Bzl(ベンジル)、Fmoc(9−フルオレニルメトキシカルボニル)、Mbh(4,4’−ジメトキシジベンズヒドリル)、Mtr(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル)、Trt(トリチル)、Tos(トシル)、Z(ベンジロキシカルボニル)、及びCl2−Bzl(2,6−ジクロロベンジル);グアニジノ基用として、NO2(ニトロ)及びPmc(2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル);並びに、ヒドロキシル基用としてtBu(t−ブチル)が挙げられる。所望のポリペプチドの合成後、これを脱保護反応に供し、更に固相支持体から切り離す。このペプチド切離反応は、Boc法の場合はフッ化水素又はトリフルオロメタンスルホン酸により、また、Fmoc法の場合はTFAにより行なうことができる。ChBP−59に匹敵するサイズの完全合成タンパク質が文献に開示されている(Brown A et al., 1996)。
【0074】
本発明のポリペプチドは、所望の使用及び/又は製造法に従い、他の好ましい代替形態として、製造、製剤、投与、又は遺伝的使用することができる。また、本発明のタンパク質は翻訳後に修飾することも可能であり、その例としては、実施例に示すように、グリコシル化が挙げられる。
【0075】
通常、本発明のタンパク質は、活性分画、前駆体、塩、誘導体、コンジュゲート、又は複合体の形態で提供される。
【0076】
上に示すように、「活性な」又は「生物学的に活性な」という語は、ChBP−59のCC−ケモカイン結合性及び/又は免疫調節特性が、このような代替化合物において維持され、或いは強められていることを指す。
【0077】
「分画」という語は、化合物自体のポリペプチド鎖の任意の断片を、その断片単独で、或いはそれに結合する関連分子又は残基(例えば糖やリン酸の残基)との組み合わせで指す言葉である。また、こうした分子は、通常は一次配列を改変しないその他の修飾を受けたものでもよく、例えば、生体外におけるペプチドの化学的誘導体化(アセチル化又はカルボキシ化)や、タンパク質の翻訳後修飾、例えばリン酸化(ホスホチロシン、ホスホセリン、又はホスホトレオニン残基の導入)やグリコシル化(グリコシル化作用を有する酵素、例えば哺乳類のグリコシル化又は脱グリコシル化酵素に、ペプチドを接触させる)等の処理を、その合成中及び/又は更なる処理工程中に受けて得られたものでもよい。特に、ChBP−59は、ダニ唾液内においても、また、本明細書に開示した組み換え型の何れにおいても、程度の差こそあれ、グリコシル化されていることが明らかとなっている。この修飾は、生体外で、適切な修飾酵素を用いることにより、或いは生体外で、組み換え産生用の適切な宿主細胞を選択することにより行なってもよい。
【0078】
「前駆体」とは、細胞や身体への投与の前又は後に、代謝や酵素処理により、本発明の化合物に変換され得る化合物をいう。
【0079】
本明細書において「塩」という語は、本発明のペプチド、ポリペプチド、又はそれらの類似体のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸添加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、本技術分野で知られている手法で形成することができる。例としては、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第二鉄、又は亜鉛等との塩や、有機塩基との塩、例えばアミン、例えばトリエタノールアミン、アルギニン又はリジン、ピペリジン、プロカイン等との塩が挙げられる。酸添加塩の例としては、塩酸や硫酸等の鉱酸との塩や、酢酸やシュウ酸等の有機酸との塩が挙げられる。これらの塩は何れも、本発明のペプチド及びポリペプチド、又はそれらの類似体と、実質的に同様の活性を有するはずである。
【0080】
本明細書において「誘導体」という語は、アミノ酸部分の側鎖に存在する官能基、或いはアミノ又はカルボキシ末端基から、公知の方法により調製可能な誘導体を指す。このような誘導体としては、例えば、カルボキシル基のエステル又は脂肪族アミド、遊離アミノ基のN−アシル誘導体、又は遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体が挙げられる。これらはアシル基により、例えばアルカノイル又はアロイル基として形成される。
【0081】
本発明のタンパク質は、放射性標識、ビオチン、蛍光標識、細胞毒性薬、及び薬物送達剤から選択される分子と、活性コンジュゲート又は複合体の形態とすることもできる。有用なコンジュゲートや複合体は、本技術分野で公知の、各種目的用の分子及び方法を用いて生成可能である。例としては、CC−ケモカイン又は他のタンパク質との相互作用の検出(放射性又は蛍光標識、ビオチン)、治療効能(細胞毒性薬)、又は薬物送達能の面で薬物を改善する目的で、例えばポリエチレングリコールや他の天然又は合成ポリマーが挙げられる(Harris JM and Chess RB, 2003;Greenwald RB et al., 2003;Pillai O and Panchagnula R, 2001)。
【0082】
これらのChBP−59由来の化合物を製造する際には、内部又は末端部位において、適切な残基を部位特異的に修飾してもよい。残基は、ポリマーと結合可能な側鎖(即ち、官能基を有するアミノ酸側鎖、例えばリジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、ヒスチジン等)を有するものであれば、結合に用いることができる。或いは、これらの部位の残基を、ポリマーと結合可能な側鎖を有するアミノ酸に置換してもよい。
【0083】
例えば、成熟タンパク質配列のN又はC末端に、組み換えDNA技術又は酵素処理によってシステインを付加することにより、直接PEG化を行なうことが可能となる。或いは、例えばグリコシル化部位に相当する残基を置換することにより、システインをタンパク質内に組み入れてもよい。
【0084】
更には、遺伝的にコード化されているアミノ酸の側鎖を、ポリマーと結合できるように化学的に修飾したり、適切な側鎖官能基を有する非天然アミノ酸を用いたりすることも可能である。ポリマーは、アンタゴニストの特定部位に存在する天然由来のアミノ酸側鎖や、アンタゴニストの特定部位に存在する天然由来のアミノ酸を置換した天然又は非天然アミノ酸の側鎖に対して結合させるだけでなく、標的部位においてアミノ酸側鎖に結合している炭化水素やその他の部分に対して結合させてもよい。
【0085】
これらの目的に好適なポリマーは、生体適合性を有するもの、即ち、生体系に対して毒性を示さないものであり、このようなポリマーは多数知られている。こうしたポリマーはその性質として、疎水性でも親水性でもよく、生分解性でも非生分解性でもよく、更にはそれらの組み合わせでもよい。このようなポリマーとしては、天然ポリマー(例えばコラーゲン、ゼラチン、セルロース、ヒアルロン酸等)や、合成ポリマー(例えばポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物等)が挙げられる。疎水性非分解性ポリマーの例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。親水性非分解性ポリマーの例としては、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、及びこれらのコポリマーが挙げられる。好ましいポリマーとしては、規則的な繰り返し単位からなるエチレンオキシド、例えばポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0086】
結合のための方法としては、ペプチド合成と化学的な連結との組み合わせを用いることが好ましい。水溶性ポリマーは、特にタンパク質のアミノ末端領域に、生分解性リンカーを介して結合可能である、という利点を有する。こうした修飾によって、タンパク質を前駆体(又は「プロドラッグ」)の形態で提供することが可能となる。この前駆体は、ポリマーを修飾しなくとも、リンカーを分解することによりタンパク質を放出する。
【0087】
別の態様によれば、本発明は、本発明のタンパク質に選択的に結合する抗体に関する。
【0088】
本明細書で使用される「抗体」という語は、以下に詳しく説明するように、モノクローナル及びポリクローナル抗体、キメラ、ヒト化、完全ヒト、二重特異性又は多重特異性の各抗体、及びそれらの断片、例えば単鎖抗体(scFv)又はドメイン抗体を包含する。
【0089】
本発明に関して、「選択的」結合という語は、抗体が標的ポリペプチド又はエピトープに対して優先的に結合する、即ち、他の如何なる抗原又はエピトープに対する親和性よりも高い親和性を持って結合することを示す。換言すれば、標的ポリペプチドに対する結合は、他の抗原に対する非特異的な結合とは区別することが可能である。本発明に係る抗体は、標的ポリペプチド又はエピトープに対して、106-1以上、好ましくは107-1以上、より好ましくは108-1以上、最も好ましくは109-1以上の結合親和性(Ka)を示すことが好ましい。抗体の結合親和性は、当業者であれば、例えばScatchard解析(Scatchard G., 1949)により、容易に決定することが可能である。
【0090】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、或いは、実質的に同じ抗原特異性を有する、それらの断片又は誘導体でもよい。
【0091】
げっ歯類、霊長類、馬等の様々な生物種からポリクローナル抗体を調製する方法が、例えばVaitukaitis et al (1971)等に記載されている。ポリクローナル抗体を哺乳類に産生させるには、例えば、哺乳類に対して免疫剤と、所望によりアジュバントとを、1回又は2回以上投与すればよい。通常、免疫剤及び/又はアジュバントの哺乳類への投与は、複数回の皮下又は腹膜腔内注射により行なわれる。免疫剤は、上述した配列番号5、6、17、18のポリペプチド、又は上述したそれらの変種、或いはそれらの融合タンパク質を含有する。免疫する対象の哺乳類に免疫原性を示すことが知られているタンパク質に、免疫剤をコンジュゲートする。このような免疫原性タンパク質の例としては、これらに制限されるわけではないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及び、大豆トリプシン抑制因子が挙げられる。使用可能なアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバントやMPL−TDMアジュバント(一リン酸化リピドA、合成トレハロースジコリノミコラート)が挙げられる。投与を繰り返し行なってもよい。血液を採取し、免疫グロブリン又は血清を分離する。
【0092】
或いは、抗体はモノクローナル抗体であってもよい。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という語は、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体を指す。即ち、その集団に含まれる個々の抗体は、微量に生じ得る自然変異を別とすれば同一である。モノクローナル抗体は特異性が極めて高く、単一の抗原部位に対する特異性を有する。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体集団から得られたという抗体の特性を示すものであり、その抗体が特性の方法により製造されることを要求するものではない。
【0093】
モノクローナル抗体を製造する方法は、例えば、Kohler et al(Nature 256 (1975) 495)に記載されている。本文献は引用により本明細書に組み込まれる。
【0094】
ハイブリドーマ方法によれば、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を、通常は免疫剤(この免疫剤は通常、上述したような、配列番号5、6、17、18のポリペプチド、又はそれらの変種、或いはそれらの融合タンパク質を含有する)を用いて免疫化し、免疫剤に対して特異的に結合する抗体を産生し、又は産生する能力を有するリンパ球を誘発する。或いは、リンパ球を生体外で免疫化してもよい。一般に、ヒト由来細胞が所望される場合は末梢血リンパ球(「PBL」)が使用され、非ヒト哺乳類原料が所望される場合は脾臓細胞又はリンパ節細胞が使用される。続いて、ポリエチレングリコール等の適切な融剤を用いて、このリンパ球を不死化細胞株と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding 1986)。不死化細胞株としては通常、形質転換された哺乳類細胞、特にげっ歯類、ウシ、及びヒト由来の骨髄腫細胞が挙げられる。通常はラット又はマウスの骨髄腫細胞株が使用される。このハイブリドーマ細胞を、適切な培地で培養すればよい。この培地は、未融合不死化細胞の増殖又は生存を抑制する、1又は2以上の物質を含有することが好ましい。例えば、親細胞がヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)という酵素を欠いている場合には、ハイブリドーマ用の培地としては通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含有する培地(「HAT培地」)を使用する。これらの成分によって、HGPRT欠損細胞の増殖が妨げられる。不死化細胞株としては、融合効率に優れ、選択された抗体産生細胞により抗体を安定的且つ高レベルで発現させることができ、且つ、HAT培地等の培地に感受性を示すものが好ましい。特に好ましい不死化細胞株としては、マウス骨髄腫株が挙げられる。これは例えば、カリフォルニア州サンディエゴ市のthe Salk Institute Cell Distribution Centerや、バージニア州マナサス市のthe American Type Culture Collectionから入手できる。ヒトモノクローナル抗体の産生には、ヒト骨髄腫やマウス−ヒト異種骨髄腫細胞株も挙げることができる。
【0095】
続いて、ハイブリドーマ細胞を培養している培地中に、免疫化したペプチドに対する特異性を有するモノクローナル抗体が存在するか否かをアッセイすればよい。ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法により、或いは生体外結合アッセイ、例えば放射免疫アッセイ(radioimmunoassay:RIA)や酵素免疫吸着測定法(enzyme-linked immunoabsorbent assay:ELISA)によって決定することが好ましい。このような技術やアッセイは、本技術分野では公知である。
【0096】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、このクローンを更に限界希釈法によってサブクローン化してから、標準法により増殖させてもよい(Goding, supra)。この目的に好適な培地としては、例えば、ダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)や、RPMI−1640培地が挙げられる。或いは、このハイブリドーマ細胞を哺乳類の腹水中等、生体内で増殖させてもよい。
【0097】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製法により、培地や腹水から単離又は精製してもよい。精製法としては、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
【0098】
また、モノクローナル抗体は、例えば米国特許第4,816,567号記載のように、組み換えDNA方法によって得ることもできる。本発明のモノクローナル抗体をコード化するDNAは、従来の手法を用いることにより、容易に単離及び配列決定することが可能である(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコード化する遺伝子に対して特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用すればよい)。本発明のハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの原料としても好ましい。単離されたDNAを発現ベクター中に導入し、このベクターを宿主細胞にトランスフェクトさせればよい。宿主細胞としては、単独では免疫グロブリンタンパク質を産生しない細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞等が挙げられる。以上により、モノクローナル抗体を組み換え宿主細胞中で合成させることができる。
【0099】
また、「モノクローナル抗体」は、Clackson et al., 1991やMarks et al, 1991に記載の技術により、ファージ抗体ライブラリから単離されたものであってもよい。
【0100】
抗体は、一価抗体であってもよい。一価抗体を調製する方法は、本技術分野ではよく知られている。例えば、免疫グロブリンの軽鎖及び修飾重鎖を組み換え発現させる方法が挙げられる。重鎖の架橋を防ぐために、通常は重鎖をFc領域中の任意の位置でトランケートする。或いは、架橋を防ぐために、関連するシステイン残基を他のアミノ酸残基で置換するか、又は欠失させる。
【0101】
また、生体外での方法も、一価抗体を調製するには好適である。抗体消化による断片、特にFab断片の作成は、本技術分野で公知の常法を用いて実施することができる。
【0102】
また、例えばWard et al(1989)記載のように、免疫グロブリンの組み換えライブラリの選択により、抗体を作成することも可能である。
【0103】
本発明の抗体は更に、ヒト化された抗体、又はヒト抗体を含んでいてもよい。ヒト化された形態の非ヒト(例えばマウス)抗体とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はそれらの断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はその他の抗原結合性抗体サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するものである。ヒト化抗体には、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、ウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されているものも含まれる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が対応する非ヒト残基で置換される。
【0104】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、本技術分野ではよく知られている。ヒト化は基本的に、Winterと共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986))に従って、げっ歯類のCDR又はCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、行なうことができる。従って、このような「ヒト化」抗体はキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)であり、実質的に無傷ではないヒト可変ドメイン(substantially less than an intact human variable domain)が、非ヒト種由来の対応配列によって置換された抗体である。
【0105】
また、ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ等(Hoogenboom and Winter, (1991))、本技術分野で知られている種々の技術を用いて作製することも可能である。同様に、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的に又は完全に不活性化されたマウス等のトランスジェニック動物に、ヒト免疫グロブリン座位を導入することにより、ヒト抗体を作製することも可能である。抗原暴露によりヒト抗体の産生が観察され、それはヒトにおいて観察されるものと、遺伝子再編成、構築、抗体レパートリー等のあらゆる面で極似している。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,661,016号に記載されている。
【0106】
また、本発明は、細胞毒性薬、標識、薬剤、又はその他の治療剤等の異種部分に対し、共有結合によるか否かを問わず、直接或いはアップリング剤やリンカー等を用いて連結された抗体を含んでなる免疫コンジュゲートにも関する。細胞毒性薬としては、化学治療剤、毒素(例えば、細菌、菌、植物、又は動物由来の、酵素的に活性な毒素、或いはそれらの断片)、又は放射性同位体(即ち放射性コンジュゲート)が挙げられる。
【0107】
使用可能な酵素的に活性な毒素及びそれらの断片としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソ毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)抑制剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(saponaria officinalis)抑制剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセン類が挙げられる。様々な放射性核種が、放射性コンジュゲートの作製に利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y、186Re等が挙げられる。
【0108】
別の実施形態によれば、腫瘍前標的(tumor pretargeting)への利用のために、抗体を「受容体」(例えばストレプトアビジン)と結合させてコンジュゲートにしてもよい。この抗体−受容体コンジュゲートを患者に投与し、続いて除去剤(clearing agent)を用いて非結合コンジュゲートを循環から除去した後、細胞毒性薬(例えば放射性核種)に結合する「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0109】
更に、本発明の抗体又は抗体断片を、当該技術分野の方法や本明細書記載の方法を用いてPEG化してもよい。また、本明細書記載の抗体を、免疫リポソームとして製剤してもよい。循環時間が増大したリポソームが、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0110】
また、本発明は、無傷抗体の一部分、好ましくは無傷抗体の抗原結合又は可変領域を含んでなる「抗体断片」にも関する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;二重特異性抗体(diabodies);リニア(linear)抗体;一本鎖(single-chain)抗体分子;一重特異性抗体(monobodies);二重特異性抗体(diabodies);変異型一重特異性抗体(camelized monobodies);抗体断片から形成されるドメイン抗体及び多重特異性抗体が挙げられる。
【0111】
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を有する最小抗体断片である。この領域は、1の重鎖及び1の軽鎖の可変ドメインが、非共有結合により強固に対合してなる二量体である。この立体配置内において、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。これら合計6つのCDRが、抗体に対して抗原結合特異性を付与している。しかしながら、単一の可変ドメイン(或いは、抗原特異的なCDRを3つのみ有する、Fvの半分)であっても、結合部位全体に比べればその親和性は低いものの、抗原を認識しこれに結合する能力を有する。
【0112】
Fab断片も、軽鎖の定常ドメイン、及び、重鎖の第1定常ドメイン(CH1)を有している。Fab断片とFab’断片との違いは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体のヒンジ領域由来の1又は2以上のシステインを含む少数の塩基が付加されている点である。本明細書においてFab’−SHは、定常ドメインの1又は複数のシステイン残基がフリーのチオール基を有するFab’を指す呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元は、ヒンジシステインを間に有するFab’断片のペアとして作製された。抗体断片の化学的カップリングとしては、他のものも知られている。如何なる脊椎動物種の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、明確に区別された二つの型、それぞれκ(カッパ)及びλ(ラムダ)と呼ばれる型の何れかに割り当てられる。
【0113】
「一本鎖抗体分子」は、抗体のVH及びVLドメインを含んでなる当該抗体の断片であって、それらのドメインが単一のポリペプチド鎖内に存在しているものをいう。このFvポリペプチドは、更に、VH及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーを含んでなることが好ましい。これによって一本鎖抗体分子が、所望の抗原結合用構造を形成することが可能となる。
【0114】
「二重特異性抗体」という語は、2つの抗原結合部位を有する抗体の小断片であって、重鎖可変ドメイン(VH)とこれに結合した軽鎖可変ドメイン(VL)とを、同一のポリペプチド鎖(VH−VL)内に含んでなるものをいう。同一鎖内の2つのドメインがペアを形成できない程度に短いリンカーを用いることによって、これらのドメインは他の鎖の相補性ドメインとのペア形成を強いられ、抗原結合部位を2つ生成することになる。二重特異性抗体のより詳しい説明は、例えばEP404,097、WO93/11161に記載されている。
【0115】
本明細書において「一重特異性抗体」という語は、重鎖可変ドメインを有し、軽鎖可変ドメインを有さない抗原結合分子を指す。一重特異性抗体は、軽鎖の不在下でも抗原と結合することができ、通常は、それぞれCDRH1、CDRH2、及びCDRH3と呼ばれる、3つのCDR領域を有する。重鎖IgG一重特異性抗体は、ジスルフィド結合により連結された、2つの重鎖抗原結合分子を有する。その重鎖可変ドメインは、1又は2以上のCDR領域、好ましくはCDRH3領域を含んでなる。
【0116】
「変異型(camelized)一重特異性抗体」とは、ラクダ科(camelid family)の動物、例えば2つの蹄と皮革様足底(leathery soles)を有する脚を持った動物を起源とする、一重特異性抗体又はその抗原結合部分を指す。ラクダ科の動物としては、ラクダ、ラマ、アルパカ等が挙げられる。ラクダ(ヒトコブラクダ(Camelus dromedaries)及びフタコブラクダ(Camelus bactrianus))には、その血清中のIgG様物質の分析によって、可変軽鎖ドメインの欠落がしばしば見られることが報告されており、VHドメイン(3つのCDRループ)単独でも十分な抗体特異性及び親和性を発揮すると見られている。
【0117】
また、本発明には単一ドメイン抗体も含まれる。単一ドメイン抗体は、ドメイン抗体又はdAbと呼ばれる場合もあるが、抗体の最小の機能的結合単位であり、ヒト抗体の重鎖(VH)又は軽鎖(VL)の何れかの可変領域に対応するものである。ドメイン抗体は、その分子量が約13kDaと、完全な抗体の10分の1未満のサイズである。従来の抗体とは対照的に、ドメイン抗体は細菌、酵母、及び哺乳類の細胞系で良好な発現を示す。加えて、ドメイン抗体の多くは安定性に優れ、凍結乾燥や熱変性等の過酷な条件に晒した後でも活性を保持しているので、広範囲の医薬製剤条件及び製造プロセスに適用できる可能性がある。
【0118】
本発明のタンパク質は、程度の差こそあれ、精製された形態で提供することができる。実施例には、組み換えChBP−59を発現するために必要なクローン核酸をクローンする方法、組み換え又は天然のChBP−59を、CC−ケモカインに対する親和性及びクロマトグラフィー技術を利用して精製する方法、並びに、CC−ケモカイン結合活性を検出するアッセイ技術を利用して、このタンパク質を適切に発現する細胞を選択する方法が示されている。
【0119】
特に、本発明の天然、合成、又は組み換えアンタゴニストの精製は、本目的について知られている方法、即ち、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、電気泳動等の任意の従来の手法のうち、何れかを用いて実施することができる。本発明のタンパク質を精製する上で好ましく使用される更なる精製手法としては、モノクローナル抗体又は親和性基を用いたアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。これらのモノクローナル抗体又は親和性基は標的タンパク質に結合するものであって、カラム内に含有されるゲルマトリックス上に産生後固定される。タンパク質を含有する不純調製物を、このカラムに導入する。ヘパリン又は特異抗体によってタンパク質がカラムに結合するのに対し、不純物は通過してしまう。洗浄後、pH又はイオン強度を変化させることにより、タンパク質をゲルから溶出させる。或いは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー:High Performance Liquid Chromatography)を使用することもできる。溶出は、タンパク質精製に一般に使用される、水−アセトニトリル系溶媒を用いて行なうことができる。本明細書において、精製された本発明のタンパク質の調製物とは、当該タンパク質を(乾燥重量当たり)少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%含有する調製物を指す。
【0120】
本発明の別の要旨は、上に定義したChBP−59ポリペプチドを(タンパク質の形で、或いはそれらの上述した代替形で)活性成分として含んでなるとともに、好適な希釈剤又は担体を含んでなる医薬組成物である。
【0121】
本発明の別の要旨は、上に定義したChBP−59ポリペプチドをコード化する核酸分子、又は対応するベクター又は組み換え宿主細胞と、好適な希釈剤又は担体とを含んでなる医薬組成物である。
【0122】
本発明の更に別の要旨は、対象中で免疫反応を調節する薬剤の製造における、上に定義したChBP−59ポリペプチド、或いはこれをコード化する核酸の使用である。
【0123】
これらの組成物は、薬剤として、特に、哺乳類において免疫又は炎症反応を調節するための薬剤として、より具体的には、抗炎症化合物として使用することができる。
【0124】
一般的に、多くのヒト及び家畜の障害にCC−ケモカインが関与していることを考慮すると、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質は、CC−ケモカイン(例えばCCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、又はCCL2/MCP−1)のアンタゴニストとして、動物におけるCC−ケモカイン関連障害の治療又は予防のために使用することができる。網羅するものではないが、CC−ケモカイン関連障害の例を列記すると、炎症疾患、自己免疫疾患、免疫疾患、感染、アレルギー性疾患、心血管系疾患、代謝疾患、胃腸疾患、神経疾患、敗血症、移植拒絶関連疾患、線維疾患等が挙げられる。限定するものではないが、これらの疾患の例を挙げると、関節炎、関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)、乾癬性関節炎、乾癬、関節リウマチ、再狭窄、敗血症、骨関節炎、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)、全身性硬化症、強皮症、多発性筋炎、糸球体腎炎、線維症、アレルギー性又は過敏性疾患、皮膚炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)、クローン病、線維腫、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、敗血症性ショック、ウイルス感染、ガン、子宮内膜症、移植、移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)、心及び腎再灌流傷害、虚血、アテローム硬化等が挙げられる。
【0125】
本発明のタンパク質又は特定の断片は、哺乳類における免疫又は炎症反応の調節用の医薬組成物、例えば抗炎症組成物の製造において、活性成分として使用することができる。或いは、本発明のタンパク質又は特定の断片は、寄生虫、ウイルス、又は細菌に対する哺乳類のワクチン接種用の医薬組成物の製造において、活性成分として使用することができる。このような医薬組成物を調製する方法は、ChBP−59を、医薬的に許容し得る希釈剤又は担体と一緒に組み合わせる工程を含んでなる。
【0126】
本発明のタンパク質を活性成分として含有する医薬組成物を使用して、生体内でCC−ケモカインと結合させることにより、CC−ケモカインが対応する細胞表面受容体に結合するのを阻止し、結果として抗炎症効果等の治療効果を得ることが可能である。また、本発明のタンパク質を活性成分として含有する医薬組成物を使用して、ウイルス、細菌、又は寄生虫中に存在するCC−ケモカイン類似体に結合させることにより、該ウイルス、細菌、又は寄生虫の細胞への侵入を阻止することも可能である。寄生虫、ウイルス、又は細菌に対する哺乳類のワクチン接種用の医薬組成物は、本発明のタンパク質の断片を活性成分として含んでなる。以上説明した組成物は更に、その他の免疫抑制剤又は抗炎症性物質を含んでいてもよい。
【0127】
この医薬組成物は、活性成分である本発明のタンパク質との組み合わせで、好適な医薬的に許容し得る希釈剤、担体、動物への投与に好適な生物学的適合性ビヒクル及び添加剤(例えば生理食塩水)を含んでいてもよく、更には、活性化合物の調製物への加工を容易とする、医薬的に使用可能な助剤(例えば賦形剤、安定化剤、アジュバント等)を、最終的に含んでいてもよい。この医薬組成物は、投与方法の必要に応じて、許容し得る任意の手法により、製剤することが可能である。例えば、生体材料及び他のポリマーの薬物送達への使用、並びに、特定の投与方法を有効に行なうための様々な技術やモデルが、文献に記載されている(Luo B and Prestwich GD, 2001; Cleland JL et al., 2001)。
【0128】
「医薬的に許容し得る」とは、上記活性成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、且つ、投与対象の宿主に対して毒性を有しない、任意の担体を包含する意である。例えば、非経口投与の場合、上記の活性成分は、食塩水、ブドウ糖溶液、血清アルブミン、リンゲル液等のビヒクル中、注射用の単位投与量形態に製剤してもよい。また、担体は、デンプン、セルロース、タルク、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、穀粉、石灰粉、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール、並びに種々の油、例えば石油由来、動物性、植物性、又は合成の油(ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油)等から選択してもよい。
【0129】
許容される投与方法であれば、活性成分を所望の血中レベルとするために、任意の方法を使用することができ、当業者が決定することができる。例えば、様々な非経口経路、例えば皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹膜腔内、鼻腔内、経皮、直腸、口内、頬内等の経路で、投与を行なうことができる。また、本発明の医薬組成物は、本ポリペプチドを所定の濃度で長期的に投与するために、持続又は放出制御製剤、例えば蓄積注射、浸透圧ポンプ等の形態で、好ましくは正確な用量での単回投与に適した単位投与量形態で、投与することも可能である。
【0130】
非経口投与は、ボーラス注入により行なってもよく、漸次灌流により時間をかけて行なってもよい。非経口投与用調製物としては、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁液、及び乳液が挙げられる。これらは、本技術分野で知られている助剤又は賦形剤を含んでいてもよく、また、定型的な方法で調製することができる。更には、活性化合物の懸濁液を、適切な油状注入懸濁液として投与してもよい。好適な親油性の溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油、合成脂肪酸エステル、例えばゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルやトリグリセリド等が挙げられる。懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてもよい水性注入懸濁液としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランが挙げられる。また、この懸濁液は任意で安定化剤を含有していてもよい。医薬組成物としては、注入による投与に好適な溶液が挙げられ、約0.01から99.99パーセント、好ましくは約20から75パーセントの活性化合物を、賦形剤とともに含有する。
【0131】
投与される用量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態、及び体重、並行して処置を行なっている場合はその種類及びその頻度、並びに所望の効果の性質に依存すると解される。投与量は、個々の対象に応じて調整される。これは、当業者であれば理解し、決定することが可能であろう。各処置に必要な総投与量を、複数回に分割して投与してもよく、一回で投与してもよい。本発明の医薬組成物の投与は、単独で行なってもよく、同じ病気に対する他の治療法、或いはその病気の別の症状に対する治療法と組み合わせて行なってもよい。通常、活性成分は毎日の投与量中に、一日当たり体重1キログラムに対して0.01から100ミリグラムの範囲で含有される。通常は一日当たり体重1キログラムに対して1から40ミリグラムを、複数回の投与に分割して、或いは持続放出形態で投与するのが、所望の効果を得る上で有効である。二度目以降の投与の量は、その個体に対する最初又は直前の投与の量と比べて、同じであってもよく、少なくてもよく、多くてもよい。
【0132】
本発明の別の要旨は、本発明のDNAによってコード化されているタンパク質の、薬剤としての使用、特に哺乳類において免疫又は炎症反応を調節するための組成物の調製における使用である。
【0133】
本発明の更なる要旨は、吸血性の外部寄生虫に対して動物を免疫化する方法、或いは、所要の動物において免疫又は炎症反応を調節する方法であって、当該動物に対して本発明のタンパク質を、当該免疫反応を調節するのに十分な時間及び条件において投与する工程を含んでなる方法。
【0134】
本発明の別の目的は、CC−ケモカイン関連疾患を治療又は予防する方法であって、本発明の化合物を有効量投与する工程を含んでなる方法である。
【0135】
「有効量」とは、疾患の経過や重症度に影響を及ぼし、その病態を減少又は鎮静させるのに十分な、活性成分の量を指す。有効量は、投与経路や患者の病態に応じて異なる。
【0136】
「CC−ケモカイン関連疾患」という語は、CC−ケモカインの過剰産生又は非制御的な産生による単球/マクロファージ/好中球/T細胞の集合的な湿潤(massive monocyte / macrophage / neutrophil / T-cell infiltration)に起因する任意の疾患であって、ChBP−59の投与によって有益な影響が得られ得る疾患を示す。このような慢性、急性、又は遺伝疾患の例については、網羅的にではないが、上に列記した。
【0137】
本発明のCC−ケモカインアンタゴニスト及び関連試薬の治療への応用は、(安全性、薬物動態、及び性能については)哺乳類細胞、組織、及びモデルを利用した生体内又は生体外アッセイによって評価することが可能である(Coleman R et al., 2001; Li A, 2001; Methods Mol. Biol vol. 138, "Chemokines Protocols", edited by Proudfoot A et al., Humana Press Inc., 2000; Methods Enzymol, vol. 287 and 288, Academic Press, 1997)。アッセイの例としては、これらに制限されるものではないが、カルシウム動員、脱顆粒、炎症促進性サイトカインの発現上昇、プロテアーゼの発現上昇、生体外及び生体内における細胞動員の抑制等が列挙される。
【0138】
本発明の更なる態様は、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質に関連して開示されている化合物の何れかを含有する検査キットである。例えば、CC−ケモカイン又は類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質又は受容体、CC−ケモカインとCC−ケモカイン結合タンパク質との相互作用、或いは当該相互作用のアンタゴニスト又はアゴニストを検出するためのキットであって、検出試薬と、本発明のCC−ケモカイン結合タンパク質に由来する
a)核酸分子(例えばDNA);
b)オリゴヌクレオチド;
c)タンパク質;及び
d)抗体;
からなる群より選択される化合物とを少なくとも含んでなる。
【0139】
これらのキットは、サンプルをこれらの化合物の何れかと接触させるための、生体外又は生体内に適用可能な方法に使用することができる。これらの化合物は標識してもよく、固相支持体に固定化してもよい。
【0140】
本発明について特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、本明細書の内容には、特許請求の範囲の意義及び目的を逸脱しない範囲で、当業者が実施可能なあらゆる変更や置換が含まれる。
【実施例】
【0141】
以下、本発明について下記の実施例を用いて説明するが、これらが本発明を限定するものであるとは、決して解釈すべきではない。上に詳述した図を、実施例でも参照する。
【0142】
実施例1:クリイロコイタマダニ唾液及びcDNAライブラリのCC−ケモカイン結合活性に関するスクリーニングと、ChBP−59のクローニング
【0143】
材料及び方法
a.クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus:common brown dog tick))の唾液におけるケモカイン結合活性のスクリーニング
【0144】
刊行物記載のプロトコルに従って、未精製のクリイロコイタマダニの唾液を得た(Ferreira BR and Silva JS, 1998)。クリイロコイタマダニ唾液(RSs)をアリコットに分け、異なるアッセイに供した。アッセイにおける負の対照としては、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)を、正の対照としては、奇肢症ウイルス由来のCC−ケモカイン結合タンパク質を用いた(別名vCCl又はp35)。
【0145】
RSs及びvCClを様々な量でニトロセルロースフィルター上に並行にスポットし、これらのフィルターを、異なる放射性標識を付した組み換えCC−及びCXC−ケモカインに暴露した。
【0146】
文献の記載に従って、シンチレーション近接アッセイ(SPA)により、ケモカイン/ケモカイン受容体相互作用分子と干渉する分子の検出を試みた(Alouani S, 2000)。要約すると、コムギ胚芽凝集素SPAビーズを、特定のケモカイン受容体(例えばCCR1又はCCR5)を安定に発現するCHO細胞株から単離された細胞膜で被覆した後、対応する放射性標識CC−ケモカイン単独、或いはCC−ケモカインとの組み合せとともに培養した。
【0147】
b.クリイロコイタマダニcDNAライブラリの構築、及び、vCClを発現する対照プラスミドの構築
【0148】
成体ダニ(クリイロコイタマダニ)100個体から唾液腺を摘出し、すぐに氷冷RNAlater(登録商標)溶液(Ambion)内に移して、後の使用まで保存した。TRIzol(登録商標)法(Invitrogen)を用いて、メーカーの使用説明書に従い、全RNAを抽出した。cDNAライブラリをSMART cDNAライブラリ構築キット(Clontech)を用いて、ファージミドベクターλTriplEX2内に構築した。ChromaSpin 400カラム(Clontech)を用いて、メーカーの使用説明書に従い、cDNAをサイズ分画した後に、ベクターに連結した。ライブラリ中のクローン化されたcDNA挿入断片のサイズは、約0.6kbから1.5kbの範囲であり、挿入断片の頻度は凡そ80%であった。
【0149】
pTriplEX2中のクリイロコイタマダニ唾液腺cDNAライブラリ由来のcDNA挿入断片を制限酵素SfiIで切除し、哺乳類細胞発現ベクターpEXP−lib(Clontech)にサブクローン化した。pEXP−libベクターは、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の主要最初期プロモーター/エンハンサーと、それに続いて現れる多重クローニング部位;脳心筋炎ウイルス(encephalomyocarditis virus:ECMV)の配列内リボソーム進入部位(internal ribosome entry site:IRES);ピューロマイシン耐性(ピューロマイシン−N−アセチル−トランスフェラーゼ)をコード化する遺伝子;及び、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルを含んでなる発現カセットを含有する。多重クローニング部位は、二つの別個のSfiI部位(SfiIA及びSfiIB、これらはその回文間配列(interpalindromic sequences)が異なる。)を有するため、cDNA挿入断片をpTriplEX2ベクターからpEXPIIに定向サブクローニングすることが可能である。
【0150】
対照タンパク質であるvCCl(NCBI Acc. no. CAC05575;配列番号1)の発現は、このタンパク質をコード化するcDNA(NCBI Acc. no. AJ277111;配列番号2)を、上述した手法によりpEXP−libにクローニングし、pEXP−lib vCClを生成して行なった。
【0151】
c.HEK293細胞の上澄みを用いたライブラリスクリーニング
ヒト胎児由来腎臓細胞293(HEK293細胞;ATCC Cat. No. CRC-1573)を、DMEM/F12培地(DMEM-F12 Nut Mix)、10%熱不活性化ウシ胎児血清、2mMのL−グルタミン、及び100ユニット/mlのペニシリン−ストレプトマイシン溶液中に保持した。
【0152】
クリイロコイタマダニcDNAライブラリを発現するpEXP−libプラスミドを複数のプールに分け、GenePorter2トランスフェクションキット(Gene Therapy Systems)を用いて、メーカーのプロトコルに従い、HEK293細胞にトランスフェクトさせた。対照タンパク質vCClを発現するpEXP−libプラスミドについても、同様の手法によりHEK293にトランスフェクトさせた。
【0153】
3日間の培養後、トランスフェクトされたHEK293細胞が培地全体に増殖した培養物から、培地を採取した。この条件培地を遠心分離して細胞片を取り除き、上澄を架橋又はSPAアッセイに供した。
【0154】
架橋実験用の培地サンプルは、平底96ウェルプレート(Costar)に移送した。各上澄サンプル50μlに対して、放射性標識CC−ケモカイン(125I−CCL3/MIP−1α)を、最終濃度が0.23nMとなるように加えた後、振盪しながら室温で2時間培養した。続いて、各ウェルから25μlのアリコットを、5μlの50mMBS3(架橋試薬)を入れた別のウェルに移し、振盪しながら更に2時間培養した。その後、5μlの10Xサンプルバッファー(125mMトリスを主とし、pH6.8、10%SDS、5mMEDTA、20%グリセロール、0.2%w/wブロモフェノールブルー、1MDTTを含有)を各ウェルに加えて架橋反応を停止させた。続いて、サンプルを5分間沸騰させ、10%ビス−トリス−SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行なった(Invitrogen NuPAGE, catalog no. NP0301BOX)。電気泳動後、ゲルをサランラップ(登録商標)で密封し、Biorad社製K型蓄燐光イメージングスクリーン(K-type storage phosphoimaging screen:Biorad)に8時間暴露した。このイメージングスクリーンを、Biorad社製小型FX燐光撮像装置(Biorad Personal FX phosphoimager)を用いて、100μmの解像度で走査した。
【0155】
結果
ダニクリイロコイタマダニの唾液について、これまで免疫調節活性、例えばIgG及びサイトカイン産生の抑制(Matsumoto K et al., 2003)や、T細胞増殖の抑制(Ferreira BR and Silva JS, 1998)等の特徴付けはなされているが、CC−ケモカインに特異的な活性は知られていなかった。
【0156】
奇肢症ウイルス、別名p35由来のCC−ケモカイン結合タンパク質である、vCClを用いて検出されたもの(Burns JM et al., 2002)に匹敵する、CC−ケモカイン特異的結合活性が、クリイロコイタマダニの唾液から検出された。これは、ニトロセルロースフィルターに唾液をスポットし、異なる放射性標識CC−/CXC−ケモカインに暴露した場合でも、また、分子相互作用を極めて高い精度で測定することができるハイスループットなスクリーニング技術である、シンチレーション近接アッセイ(Scintillation Proximity Assay:SPA)を用いた場合でも同様であった。
【0157】
続いて、クリイロコイタマダニのCC−ケモカイン結合活性が、クリイロコイタマダニ唾液腺から作成されたcDNAライブラリ中で、DNA/タンパク質配列レベルで同定された。このライブラリ由来のcDNAのプールを使用して、哺乳類細胞にトランスフェクトさせた(HEK293)。
【0158】
シグナルペプチド含有ポリペプチドをコード化する、トランスフェクトされたcDNAを発現するクローンは、媒地中にこのタンパク質を分泌する。この上澄みを、異なる希釈の下で、上述したSPAアッセイ、又は、放射性標識CC−ケモカイン(125I−CCL3/MIP−1α)を用いた架橋アッセイにより、直接検査した。特に、架橋試薬を放射性標識CC−ケモカイン/CC−ケモカイン結合タンパク質に加えることにより、二つの分子が共有結合で連結され、タンパク質複合体が安定化する。得られた複合体は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)と、それに続くオートラジオグラフィーにより、バンドのシフトとして同定される。この架橋法は極めて感度が高く、名のグラム量のタンパク質を検出することが可能である。
【0159】
得られたシグナルを、正の対照(vCCl)としたタンパク質を発現するクローンから得られた上澄、組み換えvCClを加えた上澄、及びトランスフェクトされていない細胞の上澄みと比較することにより、アッセイを実施した。
【0160】
CC−ケモカイン結合活性の存在を示す、トランスフェクトされたHEK293クローンのプールを用いて、スクリーニング及び逆重畳を繰り返し行なうことにより、CC−ケモカイン結合活性を分泌する、単一のトランスフェクトされたHEK293クローンが同定された。これをChBP−59と名付けた(図1)。
【0161】
ChBP−59をコード化するcDNA(配列番号3)は、オープン・リーディング・フレーム(ORF;配列番号4)を有し、これは114のアミノ酸からなるタンパク質(配列番号5)をコード化していた。このタンパク質は分泌可能なシグナルペプチド配列(残基1−20)を有し、これによって得られる成熟タンパク質は94のアミノ酸からなり(配列番号6)、既知のタンパク質と有意な相同性を有しないものであった。
【0162】
ChBP−59の更なる特徴は、グリコシル化可能な3つの部位(全長タンパク質に付した番号によれば、39、54、及び62番目のアスパラギン部位)と、対合してジスルフィド架橋を形成し得る一群のシステイン(全長タンパク質に付した番号によれば、32、49、53、66、85、90、95、及び104番目の残基)である。
【0163】
実施例2:HEK293 EBNA細胞培養上澄及びTN5昆虫細胞培養上澄中においてHisタグ化組み換えタンパク質として発現されたChBP−59の精製及び確認
【0164】
材料及び方法
a.Gateway(登録商標)クローニングプロセスを用いた、発現ベクターpDEST8及びpEAK12dへのChBP−59cDNAのサブクローニング
【0165】
Gatewayクローニングプロセスの第1ステージは、二工程のPCR反応(PCR1及びPCR2)により、5’末端にattB1組み換え部位及びコザック(Kozak)配列を配置し、3’末端にインフレーム6ヒスチジン(6His)タグをコード化する配列、停止コドン、及びattB2組み換え部位を配置したChBP−59のORFを生成するものである(Gateway compatible cDNA;図2)。PCR1反応は(最終量50μl中)1μl(40ng)のプラスミドpEXP−Lib−ChBP−59、1.5μlのdNTP(10mM)、10μlの10XPfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各々0.5μlの遺伝子特異プライマー(100μM)(59-attB1 forward及び59-attB2 reverse;配列番号7及び8)、及び0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含有する。PCR1反応としては、最初に95℃で2分間の変性ステップを行ない、続いて12サイクルの94℃で15秒、55℃で30秒、及び68℃で2分間のサイクルを12サイクル行ない、次に4℃の保持サイクルを行なった。増幅産物をそのまま、Promega社製Wizard PCR産物DNA精製システム(Wizard PCR Preps DNA Purification System:Promega)を用いて、メーカーの使用説明書に従い精製し、50μlの無菌水中に回収した。
【0166】
PCR2反応は(最終量50μl中)10μlの精製PCR1産物、1.5μlのdNTP(10mM)、5μlの10XPfxポリメラーゼバッファー、1μlのMgSO4(50mM)、各々0.5μlのGateway変換プライマー(100μM)(GCP forward及びGCP reverse;配列番号9及び10)、及び0.5μlのPlatinum Pfx DNAポリメラーゼを含有する。PCR2反応の条件としては、95℃で1分間;94℃で15秒、50℃で30秒、及び68℃で2分間のサイクルを4サイクル;94℃で15秒、55℃で30秒、及び68℃で2分間のサイクルを25サイクル;4℃の保持サイクルの順に実施した。得られたPCR産物を1XTAEバッファー中0.8%アガロースゲルで可視化し(Invitrogen)、分子量(430bp)から予想される移動位置のバンドを、Promega社製Wizard PCR産物DNA精製システム(Wizard PCR Preps DNA Purification System:Promega)を用いて、メーカーの使用説明書に従い、ゲルから精製して50μlの無菌水に回収した。
【0167】
Gatewayクローニングプロセスの第2ステージは、Gateway 修飾PCR産物を、GatewayエントリーベクターpDONR221にサブクローニングするものである。PCR2の精製産物5μlを、1.5μlのpDONR221ベクター(0.1μg/μl)、2μlのBPバッファー、及び1.5μlのBPクロナーゼ酵素ミックス(Invitrogen)と合わせ、最終量を10μlとし、室温で1時間培養した。プロテナーゼK1μl(2 μg/μl)を加えて反応を停止させ、37℃で更に10分間培養した。この反応のアリコット(1μl)を用いて、大腸菌(E. coli)DH10B細胞に対して、以下の手順で電気穿孔法により形質転換を行なった。DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコット25μlを氷上で解凍し、1μlのBP反応ミックスを加えた。この混合物を冷却された0.1cmの電気穿孔用キュベットに移送し、BioRad Gene-Pulser(登録商標)を用いて、メーカーの推奨するプロトコルに従い、細胞に電気穿孔を行なった。予め室温に暖めておいたSOC培地(0.5ml)を電気穿孔直後に加えた。この混合物を15mlのスナップ式キャップ付(snap-cap)試験管に移送し、振盪下(220rpm)において37℃で1時間培養した。続いて、形質転換混合物のアリコット(10μl及び50μl)を、カナマイシン(40μg/ml)を含有するLB(L-broth)プレート上に蒔き、37℃で一晩培養した。
【0168】
得られたコロニーのうち6つから培養物5mlずつを用いて、Qiaprep Turbo 9600 robotic system(Qiagen)により、プラスミドミニプレップDNAを調製した。プラスミドDNA(150〜200ng)について、21M13及びM13Revプライマーを用い、BigDyeTerminator system(Applied Biosystems cat. no. 4336919)により、メーカーの使用説明書に従いDNA塩基配列決定を行なった。配列決定用の反応物を、Montage SEQ 96クリーンアッププレート(Millipore cat. no. LSKS09624)を用いて精製した後、Applied Biosystems社製3700シークエンサーにより分析した。
【0169】
正しい配列(pDONR221 ChBP−59−HIS)を有していた1つのクローンからのプラスミド溶出液(2μl、約150ng)を、1.5μlのpDEST8ベクター又はpEAK12dベクター(0.1μg/μl)、2μlのLRバッファー、及び1.5μlのLRクロナーゼ(Invitrogen)を有する組み換え反応液に加え、最終量を10μlにした。この混合物を室温で1時間培養した。プロテナーゼK(2μg)を加えて反応を停止させ、37℃で更に10分間培養した。各反応物のアリコット(1μl)を用いて、大腸菌DH10B細胞に対し、以下の手順で電気穿孔法により形質転換を行なった。DH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen)のアリコット25μlを氷上で解凍し、1μlのLR反応ミックスを加えた。この混合物を冷却した0.1cmの電気穿孔用キュベットに移送し、BioRad Gene-Pulser(登録商標)を用いて、メーカーの推奨するプロトコルに従い、細胞に電気穿孔を行なった。予め室温に暖めておいたSOC培地(0.5ml)を電気穿孔直後に加えた。この混合物を15mlのスナップ式キャップ付(snap-cap)試験管に移送し、振盪下(220rpm)において37℃で1時間培養した。形質転換混合物のアリコット(10μl及び50μl)を、アンピシリン(100μg/ml)を有するLB(L-broth)プレート上に蒔き、37℃で一晩培養した。
【0170】
各ベクターにサブクローン化されたこれらのコロニーのうち、6つのコロニーから播種された培養物5mlより、Qiaprep Bio Robot 8000(Qiagen)を用いてプラスミドミニプレップDNAを調製した。pEAK12dベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)について、pEAK12F及びpEAK12Rプライマー(配列番号11及び12)を用いてDNA塩基配列決定を行なった。同様に、pDEST8ベクター中のプラスミドDNA(200〜500ng)について、pDEST8F及びpDEST8Rプライマー(配列番号13及び14)を用いて、上述のようにDNA塩基配列決定を行なった。
【0171】
CsCl勾配精製マキシプレップ(maxi-prep)DNAを、配列確認済クローン(pEAK12d ChBP−59−HIS及びpDEST8 ChBP−59−HIS)の培養物500mlから、Sambrook J. et al., 1989による方法(Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)に従って調製した。プラスミドDNAを無菌水(又は10mMTris−HCl、pH8.5)中に濃度1μg/μlとなるように再懸濁させ、−20℃で保存した。
【0172】
各(サブ)クローニング工程で使用したプライマー配列を表IIIにまとめた。
【0173】
b.HEK293細胞にて発現した組み換えChBP−59−HISの精製
pEAK12d-ChBP−59−HISによるトランスフェクションから6日後、HEK293−EBNA細胞からの細胞培養上澄(450ml)を採取し、0.3MNaCl及び10%(vol/vol)グリセロールを含有する2倍体積量の50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)を用いて希釈した。このサンプルを0.22μmのフィルター膜で濾過した後、5mlのNi2+−NTAアガロース(Catalogue No: 30250; Qiagen)を有するSX16/10カラムに対し、Akta purifier system(Amersham Biosciences)を用いて、4℃において、1.7ml/minで供給した。非特異的結合物質を除去するため、カラムを1.5ml/minで洗浄した。洗浄には、0.3MNaCl、10%グリセロール(Catalogue No: 49781;Fluka)を含有する50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)5カラム体積(Column Volume:CV)、次いで1%Tween−20(Catalogue No: 93773;Fluka)を含有する同バッファー50CV、そして最後にTween−20を含有しない同バッファー30CVを用いた。このカラムを2.5ml/minで、各5mlの分画に溶出した。溶出は0.3MNaCl、10%グリセロール、及び12.5mMイミダゾール(Catalogue No: 56749;Fluka)を含有する50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)10CVを用い、その後の10CVで最大濃度250mMまでイミダゾール勾配をかけ、これを更に5CV維持した。
【0174】
ChBP−59−HIS含有分画をプールし、10kDaのカットオフを有する遠心分離フィルター装置(Amicon Ultra-15, Catalogue No: UFC901096, Millipore)を用いて、10倍に濃縮した。濃縮プールを、精製の第2工程として、サイズ排除クロマトグラフィーに供した。SX200 10/300 GLカラム(床体積25ml;catalogue No: 17-5175-01;Amersham Biosciences)を、まずPBS(phosphate buffered saline:リン酸緩衝食塩水)中で平衡化してから、これに450μlの濃縮ChBP−59−HIS含有タンパク質溶出液を注入した。タンパク質を2.5ml/minで各0.5mlの分画に溶出した。ChBP−59−HISタンパク質を含有する分画をプールし、アリコットに分け、−80℃で保存した。
【0175】
c.昆虫細胞中で発現した組み換えChBP−59−HISの精製
イラクサギンウワバ(Trichoplusa ni)昆虫細胞の市販株HighFive(Catalogue No: 10486;Invitrogen)を、Excell405培地(Catalogue No: 24405;JRH Biosciences)で培養した。この細胞に、発現プラスミドpDEST8-ChBP−59−HISから作成された、組み換えバキュロウイルスを感染させた。この培養上澄を採取し、500gで30分間遠心分離し、清澄化した。これらの細胞から総量で1200mlの上澄を採取し、0.3MNaCl及び10%グリセロールを含有する氷冷50mMNaPO4バッファー(pH7.5)7倍体積量を用いて希釈した後、続いて0.22μmフィルターにより濾過した。濾過及び希釈したサンプルを、15mlのNi2+NTAアガロース樹脂(Catalogue No: 30250;Qiagen)に通過させ、4℃にて、SX 26/10カラムに7ml/minで供給した。このカラムを2.5ml/minで洗浄した。洗浄には、0.3MNaCl及び10%グリセロールを含有する50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)5CV、続いて1%Tween20(Catalogue No: 93772;Fluka)を含有する同バッファー50CV、そして最後にTween20を含有しない同バッファー30CVを用い、洗浄剤の残跡を全て除去した。非特異的結合物質を除去するべく、0.3MNaCl、10%グリセロール、及び12.5mMイミダゾールを含有する50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)10CVを用いて、2.5ml/minでカラムを洗浄した。続いて、このカラムを2.5ml/minで、10CVで12.5mMから250mMまでイミダゾール濃度の線形勾配をかけながら溶出した。このカラムを250mMイミダゾールにより更に5CV溶出した。選択された分画を、SDS−PAGE、及び、抗ヒスチジンタグ抗体を用いたウエスタンブロッティングにより分析した。
【0176】
ChBP−59−HIS含有分画をプールし、アニオン交換クロマトグラフィーを用いた第2精製工程に供した。Ni2+アフィニティークロマトグラフィー後のプールされた分画を、0.03MNaClを含有する25mMTris−HClバッファー(pH8)を用いて10倍に希釈し、15mlのQセファロースを充填したSX 16/10カラムに、4℃にて、5ml/minで供給した。その後、このカラムを10CVのバッファーで洗浄し、続く10CVにおいてNaCl含有バッファーを用い、0.03Mから1MまでNaClの塩濃度勾配をかけながら溶出した。7mlの分画を採取し、SDS−PAGEで分析した。ChBP−59−HIS含有分画をプールし、このプールを半分ずつ2つに分割し、一方は100倍体積の25mMTris−HClバッファー(pH8)中で透析し、他方はPBS中で透析した。プールのタンパク質濃度を280nmのUV分光測定によって決定し、プールされたタンパク質分画をアリコットに分け、−80℃で保存した。
【0177】
d.組み換えChBP−59−HISのウエスタンブロット及び架橋分析
カラム溶出液を、100mMDTTを含有する2×サンプルバッファー(Invitrogen)を用いて1:1で希釈し、5分間沸騰させた。このサンプルを、HISタグ化分子量標準(Catalogue No: LC5606;Invitrogen)とともに、10%ビス−トリスゲルを用い、MESバッファー中で、200V、35分間の電気泳動に供した。電気泳動されたタンパク質を、0.45μmニトロセルロース膜(Catalogue No: LC2001;Invitrogen)に対し、トランスファーバッファー(39mMグリシン、48mMトリス塩基、及び20%メタノール、pH8.3)中、室温で50分間かけて、290mAの定電流を用いて電気的に転写した。この膜を、20mlのブロッキング溶液(PBS中に0.1%Tween20、5%粉乳を含有)中で1時間、室温で揺動プラットホームを用いて培養することにより、ブロッキングを行なった。続いてこの膜を、一次抗ヒスチジンタグ抗体を含有する溶液(PBS中に0.1%Tween20、2.5%粉乳を含有する溶液で1:1000に希釈)15ml中で、室温にて振盪下で2時間培養した。ここで使用した一次抗体は、His−プローブH−15(sc-803; Santa Cruz Biotechnology)、又はHis−プローブG−18(sc-804; Santa Cruz Biotechnology)であった。この膜をウォッシュバッファー(PBS中0.1%Tween20)で濯ぎ、ウォッシュバッファーを3回換えて洗浄した(各10分)。続いて、この膜をHRP−結合二次抗体(PBS中に0.1%Tween20、2.5%粉乳を含有する溶液で1:3000に希釈)中、室温で振盪下、2時間培養した。この膜を上述した手順で再度洗浄した。最後に、膜を吸取乾燥し(blotted dry)、抗体染色の可視化を、ECL(登録商標)ウエスタンブロッティング検出試薬キット(Catalogue No: RPN2106;Amersham Pharmacia)を用いて、メーカーの使用説明書に従い行なった。
【0178】
結果
ChBP−59をコード化するORFをプラスミドに導入することにより、哺乳類又は昆虫細胞において、市販のキット(Gateway(登録商標))を用い、ヒスチジン融合組み換えタンパク質(ChBP−59−HIS;図2)の高レベル産生が可能であった。
【0179】
クローン59(pEXP−Lib ChBP−59)のORFを含有するプラスミドをPCRテンプレートとして用い、Gatewayクローニングシステムに適合する6ヒスチジンタグ化型のChBP−59cDNA(配列番号15)を作成した。ChBP−59−HIS用のORF(配列番号16)は、120のアミノ酸からなる配列(配列番号17)をコード化しており、ここからシグナル配列を除去することにより成熟し、100のアミノ酸からなる配列(配列番号18)となる。GatewayエントリーベクターpDONR221 ChBP−59−HIS、並びに、発現コンストラクトpDEST8 ChBP−59−HIS及びpEAK12d ChBP−59−HISを生成した(図3)。
【0180】
組み換えChBP−59−HISの精製は、pEAK12d−ChBP−59によりトランスフェクトしたHEK293 EBNA細胞上澄(Ni2+−アフィニティークロマトグラフィーに続いてサイズ排除クロマトグラフィーを実施)、又は、pDEST8−ChBP−59−HISを感染させたTN5昆虫細胞(Ni2+−アフィニティークロマトグラフィーに続いてアニオン交換クロマトグラフィーを実施)から行なった。精製タンパク質を導入したSDS−PAGEのクーマシーブルー染色から、ChBP−59−HISが異なる翻訳後修飾型の混合物として、発現及び精製されたことが示唆される。この修飾は昆虫細胞において発現される他のダニタンパク質にも見られるように、グリコシル化によって行なわれた可能性がある(Alarcon-Chaidez FJ et al., 2003)。実際、このタンパク質はスメアなバンドとして現れ、HEK293及びTN5細胞において発現した組み換えタンパク質の平均分子量は、約20〜25Kdであった(図4)。
【0181】
HEK293及び昆虫細胞の双方の上澄を異なる精製工程に供し、存在していた組み換えChBP−59−HISを、抗ヒスチジンタグを一次抗体としたウエスタンブロットに供した。精製された成熟配列のN末端の配列を決定したところ、配列EDDEDYGDLGが成熟タンパク質のN末端を形成していることが確認された。
【0182】
ChBP−59−HISの最終調製物のCC−ケモカイン結合活性を、正の対照(ウイルスCC−ケモカイン結合タンパク質vCCl)又はクリイロコイタマダニ由来の唾液を用いて観察された活性と比較した。比較には、最初にダニ唾液中の活性を評価するのに使用された架橋アッセイを用いた。
【0183】
SDS−PAGE中において、遊離型の125I標識CC−ケモカインCCL3/MIP−1αは、8kDaバンドとして移動する。架橋剤を加えた場合、組み換えChBP−59を含有するサンプル及びダニ唾液中のサンプルの何れにおいても、その放射活性の一部は、分子量28〜40kDaのタンパク質複合体中に保持される。これはシフトしたバンドに基づいて概ね決定することができる(図5)。シフトしたバンドの分子量は、これら3つのサンプル間で微妙に異なっているが、これはおそらく、各型の宿主細胞におけるタンパク質の翻訳後修飾(特にグリコシル化)の種類及びレベルが異なるためであると思われる。
【0184】
成熟ChBP−59−HISポリペプチド(100アミノ酸)の分子量が約11Kdであることを考慮すると、この組み換えタンパク質は、真核宿主細胞中で発現される場合には翻訳後に修飾されてイソ型となるため、活性であると考えられる。これらの修飾は最大10〜20Kdを占め(これは図4のクーマシー染色によっても示唆される)、おそらくは主に別のグリコシル化によるものと思われる。
【0185】
本実験は、他の放射性標識CC−ケモカイン(CCL5/RANTES及びCCL2/MCP−1)によっても裏付けられており、ChBP−59(天然タンパク質として、及びヒスチジン融合組み換えタンパク質として)がCC−ケモカイン結合タンパク質としての活性を有することを示すものである。
【0186】
実施例3:組み換えChBP−59のCC−ケモカインに対する抑制活性の評価
【0187】
材料及び方法
a.SPAアッセイ
【0188】
SPAアッセイは、文献記載(Alouani S, 2000)や上記記載(実施例1)にも述べられているような、ケモカイン/ケモカイン受容体相互作用と干渉する分子を検出するために計画された。
【0189】
b.CC−ケモカイン誘導走化性
走化性実験は、ヒトケモカイン受容体5(CCR5)を安定的に発現するL1.2細胞(マウス前B細胞株)を用いて行なった。L1.2/CCR5細胞を、10%FCS(ウシ胎児血清;TerraCell, catalogue no: CS-C08-1000-A)、2mML−グルタミン(Invitrogen catalogue no: 25030-024)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sigma, catalogue no: S8636)、及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Invitrogen catalogue no: 15140-148)を追加したRPMI 1640培地(Invitrogen, catalogue no: 31870-025)中に保持した。
【0190】
走化性アッセイを実施する24時間前に、細胞を5mM酪酸(Sigma catalogue no: B-5887)中で処理した。翌日、細胞を15分間、230×gで遠心分離して採取し、細胞濃度が1×106細胞/mlとなるよう、RPMI 1640培地中に再懸濁した。培地にはフェノールレッド指示薬(Invitrogen catalogue no: 32404-014)は加えず、10%FCSを追加した。CCL3/MIP−1αを0.01mg/mlとなるように同培地に懸濁させ、4倍ずつ11段階の希釈液を調製した。同様に、TN5細胞から精製された組み換えChBP−59−HISを、316ng/mlから出発して5倍ずつ段階的に希釈し、2nMのCCL3/MIP−1αを含有する培地に同量ずつ混合した。連続的に希釈されたケモカイン溶液、又はケモカイン−ChBP−59−HIS溶液のアリコット(32ml)を3つ(in triplicate)、走化性チャンバーの下側コンパートメントに加え、ポアサイズ8μmのフィルターユニット(Neuroprobe ChemoTx System, catalogue no: 101-8)を、下側コンパートメントの上部に慎重に設置した。L1.2/CCR5細胞懸濁液(20μl)を走化性チャンバーの上側コンパートメントに加え、37℃で2時間、5%CO2の加湿培養器内で培養した。
【0191】
その後、走化性チャンバーの蓋を取り外して廃棄した。96ウェルの漏斗プレート(Neuroprobe ChemoTx System catalogue No: FP1)を、走化性チャンバーの下側コンパートメントの上部に、上下が逆となるように配置した。続いて、ブラックマトリックスプレート(Vitaris catalogue no: 3915)を、漏斗プレートの上部に、上下が逆となるように配置し、この走化性チャンバー/漏斗プレート/ブラックマトリックスプレートアセンブリを引っ繰り返した。続いて、700×gで2分間遠心分離することにより、走化性チャンバーの下側コンパートメント中の培地を、ブラックマトリックスプレート内に移送させた。遊走した細胞を含有するブラックマトリックスプレートを密封し、−80℃で2時間冷凍した。走化性チャンバーの下側コンパートメントに遊走した細胞の数を、CyQUANT細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes catalogue no: C7026)を用いて間接的に決定した。ブラックプレートを解凍し、得られた細胞を、キット添付の染料を含有する200mlの細胞リシスバッファー中に、メーカーの使用説明書に従いよく再懸濁させた。蛍光の測定は、Wallac Victorプレートリーダーを用いて、480nm/520nm励起/発光波長により行なった。
【0192】
結果
ChBP−59−HISのCC−ケモカイン結合特性を、SPA(Scintillation Proximity Assay)及びCC−ケモカイン誘導細胞遊走アッセイにより調べた。
【0193】
SPAによれば、特定のケモカイン/ケモカイン受容体ペアを検証する(challenging)組み換えChBP−59−HISの段階希釈によって、この相互作用が抑制され得ることが示された。実際に、ケモカイン受容体により得られる、ビーズと放射性標識ケモカインとの相互作用に起因するSPAシグナルは、ChBP−59−HISのモル濃度が低い場合には顕著に減少していた(図6)。本アプローチで決定されるように、ChBP−59−HIS親和性は、CCL3/MIP−1α(抑制のためのEC50は12pMであった。)の方が、CCL2/MCP−1及びCCL5/RANTES(これらのCC−ケモカインの何れについても、抑制のためのEC50はマイクロモルの範囲であった。)に比べてより高かった。これは、ChBP−59が一部のCC−ケモカインに対して優先して結合する可能性があることを示している。
【0194】
最後に、ChBP−59−HISは、CC−ケモカイン誘導走化性、特にL1.2−CCR5のCCL3/MIP−1α誘導及びCCL5/RANTES誘導走化性を、効率的に抑制する可能性がある。また、CC−ケモカイン暴露後の遊走細胞数は、本アッセイで加えたChBP−59−HIS濃度に比例して減少し、結果として細胞とCC−ケモカインとの相互作用を抑制した。この効果は、ChBP−59−HISが低モル濃度(10-10M未満;図7)の場合に達成されることから、特に重要である。
【0195】
実施例4:生体内でのChBP−59活性の評価
【0196】
材料及び方法
a)動物
【0197】
これらの実験では何れも、オスBalb/c又はC57B6マウス(18〜22g)を使用した。動物は温度制御室内で飼育し、水及び食料の摂取は自由とした。
【0198】
b)腹膜細胞動員
8から12週齢のオスBalb/c又はC57B6マウスに、200μlのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)、又は200μlのPBSで希釈したヒトMIP−1α(0.5mg/Kg)を腹膜腔内注射した。抑制試験のために、0.15から5mg/kgまでの範囲のChBP−59を200μlPBS中に含む投与分を、ヒトMIP−1α投与の45分前に皮下投与した(腹膜腔内0.5mg/kg)。注射後18時間経過時にマウスを屠殺し、腹膜腔を3mLの氷冷PBSで2度洗浄し、全洗浄液を個々のマウス毎にプールした。全細胞計数(total cell counts)は、改良ノイバウエルチャンバー内で、チュルク染色液を用いて行なった。示差細胞計数(differential cell counts)は、サイトスピン調製(Shandon III)により、メイ・グリュンワルド・ギムザ(May Grunwald-Giemsa)で染色し、細胞型の同定には標準的な形態学的基準を用いて行なった。結果は腹膜腔当たりの細胞数で示した(図8及び図9)。
【0199】
c)生体内顕微鏡観察
各実験について、臓器露出(exteriorization)の1時間前に、0.15mg/KgのヒトMIP−1αを0.1mLのPBS中に含む液を、30Gの針を用い、皮下注射によって右陰嚢の皮膚下に局所投与した。抑制試験のために、ChBP−59(0.5mg/kg)及びMIP−1α(0.15mg/Kg)を100μlのPBS中に含む溶液を、陰嚢内注射による投与の15分前に調製した。その後、左挙睾筋を生体内顕微鏡観察用に調製した。要約すると、陰嚢の皮膚を切開して左精巣挙筋を露出させ、周囲の筋膜を慎重に取り除いた。焼灼機を用いて、精巣挙筋の腹側表面を長軸方向に切開した。睾丸及び精巣上体を下層筋肉から分離し、腹腔内に移動させた。続いて、筋肉を視野の開けた台座上に拡げ、端に沿って4−0縫合糸で固定した。露出した組織を、保温した重炭酸緩衝食塩水(pH7.4)で表面灌流した。20×対物レンズ及び10×接眼レンズを備えた生体内顕微鏡(Olympus BX50F4;Japan)を用いて挙睾筋の微小循環を観察した。ビデオカメラ(5100 HS;Panasonic, Osaka, Japan)を用いて画像をモニターに映し出し、後に再生して分析するために、従来のビデオカセットレコーダーに記録した。
【0200】
未分岐の単一の挙睾筋小静脈(直径25〜40μm)を選択し、変動を最小とするために、実験を通じて挙睾筋小静脈の同一断面を観察した。ローリング、粘着、及び遊走白血球数を、オフラインでビデオ再生分析により決定した。ローリング(rolling)白血球は、所定の血管内で赤血球の速度未満の速度で移動している白血球細胞と定義した。ローリング細胞の流量(the flux of rolling cells)は、静脈の所定の点を一分間当たり通過するローリング細胞の数として測定した。白血球が少なくとも30秒間、静止したまま留まっている場合には、粘着性であると判断し、総白血球粘着(total leukocyte adhesion)は、静脈100μm長当たりの粘着細胞の数として評価した。白血球の遊走は、静脈から50μm以内の領域に存在する血管外空隙内の細胞数として定義した。観察時において粘着性であり、且つ、明らかに細胞外に存在する細胞のみを、遊走として計数した。各実験の最後に心臓を穿刺し、全血液を抜き出した。全細胞計数(total cell counts)は、改良ノイバウエルチャンバー内で、チュルク染色液を用いて行なった。結果を図10に示した。
【0201】
d)感作及び肺へのTh2細胞動員の誘発
プロトコルの0日目及び7日目に、単離されたマンソン住血吸虫(S. mansoni)の卵2500個を、マウスの腹膜腔内に投与して免疫化した。14日目に、マウスの鼻腔内に10μgの抗原を10μLのPBS中に含む液を投与して抗原暴露し、反応を気道に局在化させた。続いて6日後に、マウスを再度抗原暴露すべく、10μgの抗原を25μLのPBS中に含む液、又はPBS単独(ビヒクル)を気管内投与した。抑制試験のために、抗原暴露の45分前及び24時間後に、ChBP−59(0.5mg/kg)を皮下投与した。注射から48時間後にマウスを屠殺し、気管カニューレを通じて0.3mLの無菌PBSを肺に原位置で充満させた。穏やかにマッサージして細胞を取り除いた後、肺から液体を抜き出し、氷上のプラスチック製試験管内に採集した。この手順を3度繰り返し、各動物から回収された細胞懸濁液をマウス個体毎にプールした。全細胞計数(total cell counts)は改良ノイバウエルチャンバー内で、チュルク染色液を用いて行なった。示差細胞計数(differential cell counts)はサイトスピン調製(Shandon III)により、メイ・グリュンワルド・ギムザ(May Grunwald-Giemsa)で染色し、細胞型の同定には標準的な形態学的基準を用いて行なった。結果は肺当たりの細胞数で示した(図11参照)。
【0202】
e)OVA誘発気道炎症
OVAに対する気道反応を誘発すべく、10μgのOVAを2mgの水酸化アルミニウム(2%)で沈殿させた総量200μlの液を皮下投与することにより、マウスを感作した。感作の14日後、マウスに対してPBS、又はOVA1%のPBS希釈溶液を、20分間噴霧した。抑制試験のために、抗原暴露の45分前及び抗原暴露後12時間おきに、CbBP−59(0.5mg/kg)を皮下投与した。注射から48時間後、マウスを屠殺し、肺に原位置で0.3mLの無菌PBSを気管カニューレを通じて満たした。穏やかにマッサージして細胞を取り除いた後、肺から液体を抜き出し、氷上のプラスチック製試験管内に採集した。この手順を3度繰り返し、各動物から回収された細胞懸濁液をマウス個体毎にプールした。全細胞計数(total cell counts)は改良ノイバウエルチャンバー内で、チュルク染色液を用いて行なった。示差細胞計数(differential cell counts)はサイトスピン調製(Shandon III)により、メイ・グリュンワルド・ギムザ(May Grunwald-Giemsa)で染色し、細胞型の同定には標準的な形態学的基準を用いて行なった。結果は肺当たりの細胞数で示した(図12参照)。
【0203】
f)ブレオマイシン誘発肺損傷
麻酔下(マウス1個体当たりケタミン3.2mg及びキシラジン0.16mg)、0.125Uのブレオマイシン(Bonar, Laboratorio Sintetica, Brasil)を30μlのPBS中に含む液を、マウスの気管軟骨輪間に挿入した25Gの針を通じて、マウスの気管内に導入した。対照動物には食塩水のみを投与した。気管開口部位を縫合し、動物を回復させた。抑制試験のために、ブレオマイシン注入の45分前及び注入後12時間おきに、ChBP−59(0.5mg/kg)を皮下投与した。注入から2日又は8日目にマウスを屠殺し、肺に原位置で0.3mLの無菌PBSを気管カニューレを通じて満たした。穏やかにマッサージして細胞を取り除いた後、肺から液体を抜き出し、氷上のプラスチック製試験管内に採集した。この手順を3度繰り返し、各動物から回収された細胞懸濁液をマウス個体毎にプールした。全細胞計数(total cell counts)は改良ノイバウエルチャンバー内で、チュルク染色液を用いて行なった。示差細胞計数(differential cell counts)はサイトスピン調製(Shandon III)により、メイ・グリュンワルド・ギムザ(May Grunwald-Giemsa)で染色し、細胞型の同定には標準的な形態学的基準を用いて行なった。結果は肺当たりの細胞数で示した(図13参照)。
【0204】
g)統計分析
全ての結果を平均±SEMで表わす。規格化したデータを一元配置(one-way)分散分析で分析し、各群間の差異をステューデント・ニューマン・キュールズ(Student-Newman-Keuls)事後テストにより評価した。p値が<0.05の場合に有意と判断した。
【0205】
結果
MIP−1αの腹膜腔投与により誘発される細胞動員に対し、ChBP−59の抑制能を調べた。1.5mg/kgの単回投与の場合、最も顕著な抑制が観察されたのは顆粒球についてであったが、これはヒトの系において、MIP−1αが主に単球を動員するのとは異なっている。2番目の実験では、投与量を0.15〜5mg/kgの範囲に広げ、2つのマウス株、Balb/C及びC57B6に対して投与した。Balb/cマウスにおいて動員された好酸球の数は、それらの抑制を定量化するには不十分であったが、何れの細胞株においても、全ての投与量において優れた好中球抑制作用が観察された。続く実験では0.5mg/kgを選択した。生体内顕微鏡観察により、ChBP−59が、動員プロセスに関わる3つの工程である、ローリング、粘着、及び遊走の全てを抑制していることが確認された。
【0206】
ChBP−59が、その強力な好酸球動員抑制作用により、これらの細胞の肺への動員を抑制する能力を有するか否かを、Th2感作モデルにおいて検証するとともに、オバルブミン誘発肺炎症においても調べた。何れの場合にも、好酸球動員の強力な抑制作用が観察され、単核細胞への影響は殆ど見られなかった。ブレオマイシン誘発肺炎症は顆粒好中球によって媒介されることから、これについても本モデルで検証したところ、感作の2日後及び8日後の何れにおいても、有意な好中球の抑制作用が観察された。
【0207】
これらの結果から、ヒトにおいて単核動員を抑制する傾向があるものと解釈される。
【0208】
従って、結論としては、ChBP−59はCC−ケモカイン結合特性を有し、これによりケモカインの作用を抑制する、新規なタンパク質である。本タンパク質はヒト医薬において抗炎症化合物として有効に利用できるとともに、ダニの寄生に関連する医学及び獣医学的徴候、例えばダニ媒介感染因子等の問題にも利用できる。本発明のタンパク質に基づく分子であって、こうしたタンパク質の機能と干渉する分子を用いれば、ダニの生活環を崩壊させ、外部寄生虫及びそれらの病原体を抑制し、或いはダニの病原生物運搬能力を低減させることができる。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
【表3】

【0212】
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【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】ChBP−59のcDNA配列と、関連するオープン・リーディング・フレーム(ORF)によりコード化される、ChBP−59タンパク質配列の配列表(alignment)。シグナル配列(残基1〜20、アルゴリズムSIGNALJにより予測)を下線で示す。予測されたポリアデニル化部位を囲み線で示す。成熟タンパク質に存在するシステイン残基を強調して示す。予測されたN結合グリコシル化部位を太字で示す。
【図2】PCRによる2段階の連続周回(two successive rounds)により得られた、隣接attB部位を有するGateway適合ChBP−59cDNAの配列表(alignment)。矢印は関連するPCRプライマーの位置及び意味を示す(概要は表III参照)。開始及び停止コドンを太字で示す。シグナル配列を形成するアミノ酸を下線で示す。
【図3】(A)Gatewayクローニングシステム用pDONR221 ChBP−59−HISエントリーベクターのマップ。(B)昆虫(TN5)細胞での発現用pDEST8 ChBP−59−HIS発現ベクターのマップ。(C)哺乳類(HEK293/EBNA)細胞での発現用pEAK12d ChBP−59−HIS発現ベクターのマップ。
【図4】HEK293及びバキュロウイルス感染TN5(図4の符号BV)細胞から、Ni2+親和性及びアニオン交換クロマトグラフィーを用いて精製されたChBP−59−HISの分子量を示す、クーマシーブルー溶液で染色した10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)。分子量標準を左側に示す(MR)。
【図5】125I標識CC−ケモカインCCL3/MIP−1αと、HEK293(HEK)又はTN5昆虫細胞(TN5)で発現された組み換えChBP−59−HISタンパク質、ウイルスCC−ケモカイン結合タンパク質(vCCl、正の対照)、クリイロコイタマダニ由来の天然ダニ唾液(RSs)、又は、ウシ血清アルブミン(BSA、負の対照)とを架橋させて形成された複合体を表わすSDS−PAGEのオートラジオグラフィー。架橋剤(BS3)の存在(+)又は不在(−)下で、未標識タンパク質を放射性標識CC−ケモカイン(125I−CCL3/MIP−1α)に加えた。分子量標準(単位Kd)を左側に示す(M)。
【図6】バキュロウイルス感染昆虫細胞から精製された組み換えChBP−59−HISのCC−ケモカイン結合活性。ChBP−59−HISの抑制効果は、段階希釈した組み換えタンパク質を、一定量のSPAビーズ固定化(bead-immobilized)ケモカイン受容体(CCR5)及び放射性標識CCL5/RANTES(A)、CCL3/MIP−1α(B)、又はCCL2/MCP−1(C)に加えることにより測定した。
【図7】CC−ケモカイン受容体CCR5を発現するマウスL1.2細胞におけるCCL3/MIP−1α誘発及びCCL5/RANTES誘発走化性を測定するアッセイにおける、ChBP−59−HISによる抑制効果。一定濃度(1.0nM)のCC−ケモカインを、ChBP−59−HISモル濃度(対数(Log)表示)を段階的に増加させた種々のサンプルに加えた。蛍光ユニットは遊走細胞数に比例している。
【図8】CCL3/MIP−1α誘発腹膜動員に対するChBP−59−6Hisの抑制効果。0.15mg/kgのCCL3/MIP−1αを腹腔内投与する45分前に、ChBP−59−6Hisを用量1.5mg/kgで皮下投与した。18時間後にマウスを屠殺し、腹膜腔に動員された細胞数を数えた。
【図9】2種のマウス株におけるCCL3/MIP−1α誘発腹膜動員に対するChBP−6Hisの抑制効果の用量反応。CCL3/MIP−1αを0.5mg/kgで腹腔内投与する45分前に、ChBP−59−6Hisを様々な用量で皮下投与した。18時間後、腹膜腔に動員された顆粒球数を数えた。A)はBalb/c、B)はC57B6マウス株。
【図10】生体内顕微鏡観察による細胞動員プロセスの可視化。MIP−1α(0.15mg/kg)、又は、ChBP−59(0.5mg/kg)及びMIP−1a(0.15mg/kg)の組み合わせを、陰嚢内に投与した。1時間後、精巣挙筋を取り除き、循環を生体内顕微鏡で観察し、記録してオフライン分析に供した。A)ローリング。B)粘着。C)遊走。
【図11】Th2細胞の肺への動員に対するChBP−59−6Hisの抑制効果。1日目及び7日目に、2,500個のマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)の卵を、マウスに腹腔内投与して感作した。7日後に、これらのマウスに住血吸虫卵(SEA)を鼻腔内投与し、抗原暴露した。6日後、ChBP−6Hisを0.5mg/kgで皮下投与し、その45分後に再度、気管内にSEAを投与し、抗原暴露した。24時間後に、2度目のChBP−6Hisの投与を、0.5mg/kgで行なった。48時間後、BAL液体を除去し、細胞数を数えた。A)総細胞。B)好酸球。C)単核細胞。
【図12】オバルブミン誘発肺炎症に対するChBP−59−6Hisの抑制効果。マウスをオバルブミン含有Al(OH)3(alum)を用いて免疫化した。14日後、1%オバルブミンのエアロゾル噴霧により20分間抗原暴露した。エアロゾル噴霧の45分前及び噴霧後12時間おきに、ChBP−59−6Hisを0.5mg/kgで皮下投与した。エアロゾル噴霧の2日後にBALを取り、細胞計数に供した。A)総細胞。B)好酸球。C)単核細胞。
【図13】ブレオマイシン誘発肺炎症に対するChBP−59−6Hisの抑制効果。0日目に、マウスに0.125ユニットのブレオマイシンを気管内投与し、感作した。感作に先立ち、ブレオマイシン投与の45分前に、これらのマウスに対してChBP−59−6Hisを0.5mg/kgで皮下注射し、その後も同用量を12時間おきに12日間連続して投与した。感作後2日目に分析したマウスは、3用量の(3 doses of)ChBP−59−6Hisで処理した。2日目及び8日目にBALを取り、細胞計数に供した。A)総細胞。B)好酸球。C)単核細胞。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を含んでなるタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を含んでなるタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を含んでなるタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を含んでなるタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質をコード化する核酸配列と、適度にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸分子であって、CC−ケモカインに結合するタンパク質をコード化する核酸分子により、コード化されるタンパク質;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質と少なくとも約70%のアミノ酸配列が同一であり、且つCC−ケモカインに結合するタンパク質;
g)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;及び
h)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片、又は免疫調節活性を有するタンパク質の断片を含んでなるタンパク質:
からなる群より選択されるポリペプチド。
【請求項2】
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を有するタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を有するタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を有するタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインと結合する断片を含んでなるタンパク質;及び
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質:
からなる群より選択される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失又は置換されてなり、且つ、CC−ケモカインに結合する変異体。
【請求項4】
a)配列番号5において、ChBP−59の残基32、49、53、66、85、90、95、及び104に相当する位置に、システイン残基を有し;
b)配列番号5において、ChBP−59のアスパラギン39、54、及び62に相当する位置に、グリコシル化部位を有することを特徴とする、請求項3記載のタンパク質の活性変異体。
【請求項5】
アミノ酸の付加、欠失又は置換により、哺乳類への投与時における当該ポリペプチドの免疫原性が低減された、請求項3又は4に記載のタンパク質の活性変異体。
【請求項6】
膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部、多量体化ドメイン、ヘテロ二量体タンパク質ホルモン、シグナルペプチド、移行シグナル(export signal)、及びタグ配列から選択される1又は2以上のアミノ酸配列に対して作動式に連結された(operably linked)、請求項1から5の何れかに記載のタンパク質を含んでなる、融合タンパク質。
【請求項7】
当該ポリペプチドが翻訳後に修飾されてなることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載のタンパク質。
【請求項8】
当該タンパク質がグリコシル化されてなることを特徴とする、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
当該タンパク質が、活性分画、前駆体、塩、誘導体、コンジュゲート(conjugate)、複合体(complex)の形態であり、或いはPEG化されてなることを特徴とする、請求項1から8の何れかに記載のタンパク質。
【請求項10】
請求項1から8の何れかに記載のポリペプチドをコード化する核酸分子。
【請求項11】
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;
e)a)、b)、c)、又はd)の核酸分子と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸分子であって、CC−ケモカインと結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質と少なくとも約70%のアミノ酸配列が同一であり、且つCC−ケモカインと結合するタンパク質をコード化する核酸分子;
g)a)、b)、c)、d)、e)、又はf)の核酸分子によってコード化されるタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質をコード化する核酸分子;及び
h)a)、b)、c)、d)、e)、f)、又はg)の核酸分子の変性変異体(degenerate variant):
からなる群より選択される、請求項10記載の核酸分子。
【請求項12】
a)ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号5)を有するタンパク質;
b)成熟ChBP−59のアミノ酸配列(配列番号6)を有するタンパク質;
c)ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号17)を有するタンパク質;
d)成熟ChBP−59−HISのアミノ酸配列(配列番号18)を有するタンパク質;
e)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、CC−ケモカインに結合する断片を含んでなるタンパク質;
f)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の断片であって、免疫調節活性を有する断片を含んでなるタンパク質;
g)a)、b)、c)、又はd)のタンパク質の活性変異体であって、1又は2以上のアミノ酸残基が付加、欠失、又は置換されてなり、且つ、CC−ケモカインに結合する変異体;及び
h)膜結合タンパク質の細胞外ドメイン、免疫グロブリン定常部、多量体化ドメイン、シグナルペプチド、移行シグナル、及びタグ配列から選択される1又は2以上のアミノ酸配列に対して作動式に連結された、a)、b)、c)、d)、e)、f)、又はg)のタンパク質を含んでなる融合タンパク質:
からなる群より選択されるタンパク質をコード化してなる、請求項11記載の核酸分子。
【請求項13】
前記CC−ケモカインが、CCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、及び/又はCCL2/MCP−1であることを特徴とする、請求項10から12の何れかに記載の核酸分子。
【請求項14】
当該分子がDNA分子、特にcDNA分子であることを特徴とする、請求項10から13の何れかに記載の核酸分子。
【請求項15】
当該分子が配列番号3又は15のDNA配列を含んでなり、或いは当該DNA配列である、請求項10記載の核酸分子。
【請求項16】
当該分子が配列番号4又は16のDNA配列を含んでなり、或いは当該DNA配列である、請求項10記載の核酸分子。
【請求項17】
請求項11又は12に記載の核酸の断片を含んでなるオリゴヌクレオチドであって、少なくとも約20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチド、及び少なくとも約50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドからなる群より選択されるオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項10から16の何れか一項に記載の核酸分子を含んでなるクローニング又は発現ベクター。
【請求項19】
当該核酸分子に作動式に結合された(operably associated)プロモーター、特に組織特異的、構成的、又は誘導性プロモーターを更に含んでなる、請求項18記載の発現ベクター。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の発現ベクターにより形質転換又はトランスフェクトされてなる宿主細胞。
【請求項21】
請求項1から8の何れか一項に記載のタンパク質を産生するように遺伝子操作されてなる細胞。
【請求項22】
ポリペプチドを調製する方法であって、発現を許容又は促進する条件下で、請求項20又は21に記載の宿主細胞を培養する工程を含んでなる方法。
【請求項23】
前記タンパク質を精製する工程を更に含んでなる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質をヒト投与のために製剤する工程を更に含んでなる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
CC−ケモカイン結合タンパク質を発現する、ヒト以外のトランスジェニック動物であって、当該動物の細胞が、単離又は組み換えされた、請求項10から16の何れか一項に記載の核酸分子、又は、請求項18若しくは19に記載の発現ベクターを含有することを特徴とする動物。
【請求項26】
請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
【請求項27】
モノクローナル抗体である請求項26記載の抗体。
【請求項28】
キメラの、ヒト化の、又はヒトの抗体、又は、Fab、F(ab)2、scFv若しくはドメイン抗体等の抗体断片である、請求項26又は27に記載の抗体。
【請求項29】
請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド、又は請求項10から19の何れか一項の核酸、又は請求項20若しくは21に記載の細胞と、医薬的に許容し得る希釈剤又は担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項30】
薬剤として使用される、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
哺乳類における免疫又は炎症反応の調節に使用される、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
動物におけるCC−ケモカイン関連障害の治療又は予防に使用される、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド、又は、請求項29記載の組成物。
【請求項33】
哺乳類の免疫又は炎症障害を治療又は予防するための医薬組成物の製造において、活性成分として使用される、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項34】
前記免疫又は炎症障害が、CCL5/RANTES、CCL3/MIP−1α、又はCCL2/MCP−1に起因するものであることを特徴とする、請求項33記載の使用。
【請求項35】
前記免疫又は炎症障害が、自己免疫疾患、感染、アレルギー性疾患、心血管疾患、代謝疾患、胃腸疾患、神経疾患、敗血症、移植拒絶関連疾患、又は線維疾患である、請求項33又は34に記載の使用。
【請求項36】
寄生虫、ウイルス、又は細菌に対する哺乳類へのワクチン接種のための医薬組成物の調製における、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項37】
請求項10から16の何れか一項に記載の核酸分子によってコード化されるタンパク質の薬剤としての使用。
【請求項38】
哺乳類における免疫又は炎症反応の調節のための組成物の調製における、請求項10の核酸分子の使用。
【請求項39】
動物を吸血性の外部寄生虫に対して免疫化するための方法であって、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドを当該動物に対して投与する工程を含んでなる方法。
【請求項40】
所要の動物において免疫又は炎症反応を調節する方法であって、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドを治療上有効な量、当該動物に投与する工程を含んでなる方法。
【請求項41】
CC−ケモカイン関連疾患を治療又は予防する方法であって、請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチドを有効量、所要の対象に投与することを含んでなる方法。
【請求項42】
CC−ケモカイン若しくは類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質若しくは受容体、CC−ケモカインとCC−ケモカイン結合タンパク質との相互作用、又は当該相互作用のアンタゴニスト若しくはアゴニストを検出するためのキットであって、検出試薬と、少なくとも
a)請求項10記載の核酸分子;
b)請求項17記載のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド;及び
d)請求項26、27、又は28に記載の抗体:
からなる群より選択される化合物とを含んでなるキット。
【請求項43】
CC−ケモカイン若しくは類似体、CC−ケモカイン結合タンパク質若しくは受容体、CC−ケモカインとCC−ケモカイン結合タンパク質との相互作用、又は当該相互作用のアンタゴニスト若しくはアゴニストを、生体外又は生体内で検出する方法であって、
a)請求項10記載の核酸分子;
b)請求項17記載のオリゴヌクレオチド;
c)請求項1から9の何れか一項に記載のポリペプチド;及び
d)請求項26、27、又は28に記載の抗体:
からなる群より選択される化合物にサンプルを接触させる工程を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−523838(P2008−523838A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547478(P2007−547478)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056929
【国際公開番号】WO2006/067124
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(504320031)ラボラトワール セローノ ソシエテ アノニム (14)
【Fターム(参考)】