説明

方位角を測定する地磁気センサ及びその方法

【課題】2軸フラックスゲートを用いて方位角を測定し、伏角による影響を補償して正確な方位角を算出できる地磁気センサを提供する。
【解決手段】地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する地磁気検出モジュール、所定の基準面上で傾いた程度を示すチルト角を検出するチルト検出モジュール、伏角による地磁気影響を反映するための定数値を毎方位角別に予め設定して記録したデータベースを保存するメモリ、及び定数値の初期値、電気的信号値、及びチルト角を用いて方位角を1次演算した後、1次演算された方位角に対応する定数値をメモリから検出して検出された定数値を用いて方位角を再演算する中央処理装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は方位角測定のための地磁気センサ及びその方法に係り、さらに詳しくは伏角を演算しない状態で傾きによる影響を補償して正確な方位角を測定するための地磁気センサ及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地磁気センサとは、人間が感じられない地球磁気の強度及び方向を測定する装置である。そのうち、フラックスゲート(fluxgate)を使用する地磁気センサをフラックスゲートセンサと呼ぶ。
フラックスゲートセンサはパーマロイ(permalloy)のような高透磁率材料よりなるフラックスゲートコア、コアを巻線した駆動コイル及び検出コイルで構成される。この場合、フラックスゲートコアの個数は2個または3個とすることができる。各フラックスゲートコアは互いに直交する形態に作製される。すなわち、2軸フラックスゲートセンサの場合、X軸及びY軸フラックスゲートで具現され、3軸フラックスゲートセンサの場合はX軸、Y軸及びZ軸フラックスゲートで具現される。これにより、各フラックスゲートコアを巻線した各駆動コイルに駆動信号を印加した後コアにより磁気が誘導されると、検出コイルを用いて外部磁場に比例する2次高調波成分を検出することによって外部磁場の大きさ及び方向を測定することができる。
【0003】
一方、磁気場は方向性を帯びるため、地磁気センサの利用姿勢によって測定値が相違する。
すなわち、所定角度に傾いた状態で地磁気センサを用いて方位角などを測定すれば、実際方位角と違う値が測定されるという問題点があった。このような問題点を解決するため、最近は加速度センサなどを用いてチルト角を測定した後、これを用いて傾きによる影響を補償して正確な方位角を演算するようにしている。この場合、3軸フラックスゲートを使用する地磁気センサの場合、伏角(dip angle : λ)による影響を考慮する必要がないが、2軸フラックスゲートを使用する地磁気センサの場合は伏角による影響を考慮しなければならない。なぜならば、2軸フラックスゲートセンサの場合、地表面上に置かれたX軸及びY軸フラックスゲートだけを備えるため、地表面に投射される実際の地磁気ベクトルの水平成分値だけを用いて方位角を測定するからである。すなわち、伏角とは地磁気が地表面に入射する角度を意味するので、フラックスゲートにより測定された実際地磁気ベクトル値にcosλを乗算すべきであり、2軸フラックスゲートセンサでは伏角に対する情報を必要とする。
【0004】
これにより、2軸フラックスゲートを用いていた従来の地磁気センサでは、伏角を任意に推定して使用するか、それともGPSのような外部装置から入力される伏角値を用いて方位角を演算した。しかし、任意に伏角を推定して使用する場合、正確な伏角を使用できないため、方位角情報が正確に検出できないという問題があった。一方、GPSのような外部装置から伏角値を入力する場合は、その外部装置との通信のための装備がさらに必要になるため、地磁気センサのサイズ及び製造コストがアップするという問題点がある。一方、伏角を自身で演算して使用するための構成が提案されたこともあって来たが、正確な伏角演算が難しく、また伏角演算による地磁気センサの演算負担が大きくなるとの問題点があった。一方、伏角を必要としない3軸フラックスゲート地磁気センサの場合、地表面に垂直方向に設けられるZ軸フラックスゲートをさらに必要とするため、それによるサイズ増加が避けられない。従って、小型携帯型電子機器に使用するには不向きであるとの問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述した問題点を解決するために案出されたもので、その目的は伏角の影響を補償するための定数値を変更しつつ方位角を所定回数以上繰り返して演算し、伏角を用いないながらも正確な方位角を測定することができる地磁気センサ及びその方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述したような目的を達成するための本発明の一実施形態による地磁気センサは、地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する地磁気検出モジュール、所定の基準面上における傾斜角度であるチルト角を検出するチルト検出モジュール、伏角による地磁気影響を反映するための定数値を毎方位角別に予め設定して記録したデータベースを保存するメモリ及び前記定数値の初期値、前記電気的信号値、及び前記チルト角を用いて方位角を1次演算した後、前記1次演算された方位角に対応する定数値を前記メモリから検出して前記検出された定数値を用いて前記方位角を再演算する中央処理装置を含む。
【0007】
望ましくは、前記中央処理装置は前記方位角再演算作業が完了した後、前記定数値の初期値を前記検出された定数値にアップデートする。
これにより、前記中央処理装置は、前記地磁気検出モジュール及び前記チルト検出モジュールで前記電気的信号値及び前記チルト角をそれぞれ検出する毎に、前記アップデートされた定数値を用いて前記方位角1次演算作業及び再演算作業を行なうように構成できる。
【0008】
さらに望ましくは、前記中央処理装置は前記方位角再演算作業を予め設定された所定回数行うように構成できる。
一方、前記地磁気検出モジュールは互いに直交する形態に作製され、所定の駆動信号に応じて誘導される磁気に対応する所定大きさの電気的信号をそれぞれ出力するX軸及びY軸フラックスゲートを含む。
【0009】
この場合、本地磁気センサは、前記X軸及び前記Y軸フラックスゲートから出力される前記電気的信号をそれぞれ所定範囲の値にマッピングする正規化作業を行なう正規化部及び前記再演算された方位角を表示するディスプレー部をさらに含み、前記中央処理装置は前記正規化部で正規化された電気的信号値を用いて前記方位角1次演算及び再演算作業を行なう構成とすることができる。
【0010】
一方、前記チルト検出モジュールは互いに直交する形態に作製され、前記基準面に対する傾斜角度に対応する所定大きさの電気的信号を出力するX軸及びY軸加速度センサ、前記X軸及び前記Y軸加速度センサからそれぞれ出力される前記電気的信号を所定大きさの値にマッピングする正規化作業を行なうチルト正規化部、及び前記チルト正規化部で正規化された値を用いてピッチ角及びロール角を演算した後、前記ピッチ角及び前記ロール角を前記チルト角として出力するチルト演算部を含むのが望ましい。
【0011】
また、前記中央処理装置は、所定数式を用いて仮想のZ軸フラックスゲートの出力値を演算した後、演算された結果値を用いて前記方位角を1次演算及び再演算することが望ましい。
一方、本発明の一実施形態によれば、伏角による地磁気影響を反映するための定数値を毎方位角別に予め設定して記録したデータベースを保存したメモリを含む地磁気センサにおける方位角測定方法は、(a)地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する段階、(b)前記電気的信号値の大きさを所定範囲にマッピングして正規化する段階、(c)前記地磁気センサが所定の基準面に対する傾斜角度であるチルト角を検出する段階、(d)前記定数値の初期値、前記正規化された電気的信号値、及び前記チルト角を用いて方位角を1次演算する段階、(e)前記1次演算された方位角に対応する定数値を前記メモリから検出する段階、及び(f)前記検出された定数値、前記正規化された電気的信号値、及び前記チルト角を用いて前記方位角を再演算する段階を含む。
【0012】
望ましくは、前記方位角再演算作業が完了した後、前記定数値の初期値を前記検出された定数値にアップデートする段階をさらに含む構成とすることが好ましい。
また望ましくは、前記電気的信号値及び前記チルト角が検出される毎に、前記アップデートされた定数値を用いて前記方位角1次演算作業及び再演算作業を行なう段階をさらに含む構成とすることが好ましい。
【0013】
さらに望ましくは、前記(e)ないし(f)段階を予め設定された所定回数だけ繰り返す構成とすることが好ましい。
一方、前記(a)段階は、互いに直交する形態に作製されたX軸及びY軸フラックスゲートに所定の駆動信号を印加する段階、及び前記駆動信号に応じて前記X軸及びY軸フラックスゲートに誘導される磁気に対応する所定大きさの電気的信号値をそれぞれ検出する段階とを含む。
【0014】
望ましくは、前記(c)段階は互いに直交する形態に作製されたX軸及びY軸加速度センサから、前記基準面に対傾斜角度に対応する所定大きさの電気的信号を検出する段階、前記X軸及び前記Y軸加速度センサからそれぞれ検出された前記電気的信号の大きさを所定範囲にマッピングして正規化する段階、前記正規化された値を所定数式に代入して前記ピッチ角及び前記ロール角を演算する段階、及び前記ピッチ角及び前記ロール角を前記チルト角として出力する段階を含める。
【0015】
また望ましくは、前記(d)段階及び前記(f)段階は、所定数式を用いて仮想のZ軸フラックスゲートの出力値を演算する段階をさらに含むことができる。
さらに望ましくは、前記(d)段階及び前記(f)段階は、前記Z軸フラックスゲートの出力値を所定数式に代入して前記方位角を演算する段階をさらに含むこともできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば伏角を個別に測定する必要がなく、また、外部から伏角を受信することなく伏角による影響を考慮した正確な方位角を演算できるようになる。これにより、3軸フラックスゲートを使用した場合と類似した効果を2軸フラックスゲートセンサで得られるので、超小型高性能の地磁気センサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面に基づき本発明に対してさらに詳述する。
【実施例】
【0018】
図1は本発明の一実施形態による地磁気センサの構成を示すブロック図である。同図によれば、本地磁気センサ100は地磁気検出モジュール110、チルト検出モジュール120、中央処理装置130、メモリ140、及びディスプレー部150を含む。
地磁気検出モジュール110は外部地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する役割を果たす。
【0019】
チルト検出モジュール120は地磁気センサ100の傾いた程度を示すチルト角(tilt angle)を検出する役割を果たす。この場合、チルト角はピッチ角及びロール角とすることができる。これについては後述する。
メモリ140には毎方位角別に設定された所定の定数値が記録されたデータベースが保存される。このようなデータベースは地磁気センサ100の製造メーカ、あるいはユーザが予め作成して保存することができる。望ましくは、水平状態を正確に合わせられるジグ(jig)、周辺磁気場の影響を遮断するためのシールド(shield)などの装備を備えた地磁気センサ100の製造メーカが製品開発過程で地磁気センサ100を回転させながら、方位角別に最適定数値を演算してデータベースを作成してメモリ140に保存することが好ましい。
【0020】
中央処理装置130は地磁気検出モジュール110及びチルト検出モジュール120でそれぞれ検出した電気的信号値、及びチルト角を用いて方位角を演算する。この場合、方位角を最初に演算する場合であれば、データベースに記録された定数値の初期値を方位角の演算過程に用いることとなる。これにより、方位角を1次演算した後、メモリ140に保存されたデータベースから演算された結果値に対応する定数値を読み出す。これにより、中央処理装置130は読み出された定数値、1次演算過程で使用した電気的信号値及びチルト角を用いて方位角を2次演算する。すなわち方位角1次演算過程で使用された他の変数値は固定し、定数値だけ変更して2次演算を行なうようにする。これにより、中央処理装置130は2次演算された方位角を表示するようディスプレー部150を制御する。
【0021】
このような状態で、地磁気検出モジュール110及びチルト検出モジュール120で再び所定大きさの電気的信号値及びチルト角を出力すれば、中央処理装置130は定数値の初期値を方位角再演算過程で使用された定数値にアップデートして使用する。すなわち、方位角再演算過程で使用された定数値、新たに検出された電気的信号値及びチルト角を用いて方位角を1次演算した後、再び1次演算された方位角に対応する定数値をデータベースから読み出して2次方位角演算を行なう。
【0022】
一方、中央処理装置130は電気的信号値及びチルト角を検出する毎に行われる方位角再演算作業は地磁気センサ100の製造メーカまたはユーザが設定した回数だけ反復的に行うように構成できる。すなわち、3次演算、または4次演算まで行なって、さらに正確な方位角を表示することができる。
図2は本発明の他の実施形態による地磁気センサの構成を示すブロック図である。図2によれば、本地磁気センサ200は地磁気検出モジュール210、チルト検出モジュール220、中央処理装置230、メモリ240、ディスプレー部250、及び正規化部260を含む。
【0023】
地磁気検出モジュール210は前述したように地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する役割を果たす。図2によれば、本地磁気検出モジュール210は駆動信号生成部210a、2軸フラックスゲート213、及び信号処理部210bを含む。駆動信号生成部210aは、X軸及びY軸フラックスゲート213のそれぞれに巻線された駆動コイルに、それぞれ駆動信号を供給する役割を果たす。このため、駆動信号生成部210aはパルス信号を生成するパルス生成部211及び生成されたパルス信号を増幅及び反転増幅してパルス波及び反転パルス波を出力するパルス増幅部212を備える。
【0024】
一方、2軸フラックスゲート213は互いに直交するX軸及びY軸フラックスゲートで作製され、各フラックスゲートは駆動信号に応じて発生された磁気によって誘導される所定大きさの起電力を出力する。
一方、信号処理部210bは2軸フラックスゲート213から出力された誘導起電力に対して一連の処理を施してそれぞれ所定大きさのデジタル値に変換して出力する。このため、信号処理部210bは、数個のスイッチを用いて誘導起電力をチョッピングするチョッピング回路部214、チョッピングされた電気的信号を差動増幅する第1増幅部215、増幅された電気的信号を一定範囲にフィルタリングするフィルタ216、フィルタリングされた信号を2次増幅する第2増幅部217、及び2次増幅された信号をデジタル値に変換するA/Dコンバータ218を備えている。
【0025】
一方、信号処理部210bにより所定大きさの値に変換出力された電気的信号値の大きさは、地磁気の強度によっては中央処理装置230が処理できる範囲を越える場合がある。これを防止するため、地磁気検出モジュール210から出力される電気的信号値の大きさを所定範囲にマッピングする正規化(normalizing) 作業を行なう。
正規化部260はこのような正規化作業を行なう役割を果たす。望ましくは、次の数式を用いて正規化作業を行うことができる。
【0026】
【数1】


数式1において、Xf及びYfはそれぞれX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfmax及びXfminはそれぞれXfの最大値及び最小値、Yfmax及びYfminはそれぞれYfの最大値及び最小値、αは固定定数を意味する。この場合、αはX軸及びY軸フラックスゲート出力値が水平状態で±1の範囲内の値にマッピングされうるように1より小さい値を使用する。望ましくは、地磁気センサ200が使われる地域の代表的な伏角値を用いてαを設定することができる。韓国の伏角は約53°程度なので、cos53°≒0.6をαとすることができる。一方、Xfmax、Xfmin、Yfmax、Yfminは予め地磁気センサ200を所定回数以上回転させながらその出力値を測定した後、そのうち最大値及び最小値を選択して保存しておくことによって得られる。
【0027】
チルト検出モジュール220は地磁気センサ200の重力加速度を測定してピッチ角(pitch angle)及びロール角(roll angle)を演算した後、チルト角として出力する役割を果たす。このため、2軸フラックスゲートセンサ213と同一軸方向に形成される2軸加速度センサで具現できる。
図3はピッチ角及びロール角を測定する基準になるX軸及びY軸を示す模式図である。図3によれば、地磁気センサ200上でX軸フラックスゲート及びX軸加速度センサはX軸方向に設けられ、Y軸フラックスゲート及びY軸加速度センサはY軸方向に設けられる。この状態で、Y軸フラックスゲート及びY軸加速度センサの方向軸であるY軸を基準にして地磁気センサ200を回転させた場合、基準面との間角がピッチ角になる。そして、X軸フラックスゲート及びX軸加速度センサの方向軸であるX軸を基準にして地磁気センサ200を回転させた場合、基準面との間角がロール角になる。基準面とはX軸及びY軸がなす平面であって、地表面と平行な面を意味する。
【0028】
一方、ピッチ角及びロール角を測定するためのチルト検出モジュールの構成の一例が図4に示されている。図4によれば、チルト検出モジュールは2軸加速度センサ221、チルト正規化部222、及びチルト演算部223を含む。
2軸加速度センサ221は前述したように互いに直交する方向に設けられたX軸及びY軸加速度センサで構成される。X軸及びY軸加速度センサは地磁気センサ200の傾いた程度によって所定大きさの電気的信号を出力する。
【0029】
チルト正規化部222は2軸加速度センサ221からそれぞれ出力される電気的信号を所定大きさの値にマッピングする正規化作業を行なう。正規化作業は次の数式によってなされうる。
【0030】
【数2】


数式2においてXt及びYtはそれぞれX軸及びY軸加速度センサの出力値、Xtnorm及びYtnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸加速度センサ出力値、Xtmax及びXtminはそれぞれXtの最大値及び最小値、Ytmax及びYtminはそれぞれYtの最大値及び最小値を意味する。Xtmax、Xtmin、Ytmax、Ytminは地磁気検出モジュール210と同様に予め測定して保存しておいた値を用いられる。
【0031】
チルト演算部223は、チルト正規化部222で正規化された2軸加速度センサ221の出力値を用いてピッチ角及びロール角を演算する役割を果たす。この場合、次の数式を用いて演算できる。
【0032】
【数3】

数式3において、θはピッチ角、φはロール角を意味し、前述したようにXtnorm及びYtnormは正規化されたX軸及びY軸加速度センサ出力値を意味する。
再び図2に対する説明に戻って、中央処理装置230は地磁気検出モジュール210及びチルト検出モジュール220でそれぞれ所定大きさの出力値が検出されれば、方位角を1次演算する。この場合、地磁気検出モジュール210の出力値は正規化部260を用いて正規化して使用する。
【0033】
一方、方位角は3つの軸で表現される3次元空間値であるので、X軸及びY軸がなす平面に垂直するZ軸の出力値も方位角演算過程に必要になる。従って、中央処理装置230は方位角1次演算の前にZ軸フラックスゲートの正規化された出力値を先に演算すべきである。これは次の数式に基づいて演算される。
【0034】
【数4】

【0035】
【数5】

【0036】
【数6】


数式4ないし6において、Zfnormは仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値(以下、Z軸出力値と称する)、βは定数値、θはピッチ角、φはロール角、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値を意味する。数式4ないし5はロール角を0°にして簡略化した。すなわち、地磁気センサ200が携帯電話、PDAのような携帯端末機に適用された場合、ユーザは携帯端末機のディスプレー画面を地表面に水平に置いたまま用いるのが一般的であるが、このような姿勢ではロール角値がほぼ0°であると見ても構わない。一方、数式4ないし6は全てZ軸出力値を演算するための数式なので、中央処理装置230は実施形態によってこのうち1つの数式を用いられる。望ましくは、演算負担の最小化が可能な数式6を用いてZ軸出力値を演算することができる。
【0037】
数式4ないし5で使用されたβは伏角の影響を補償するために導入した定数値を意味する。すなわち、伏角の影響を考慮するため、従来はsinλを演算してZ軸出力値演算式に反映したが、前述したように伏角を正確に測定し難かった。しかし、水平状態で伏角による影響は一定した定数値に現れ、傾いても一定に変わるので実験によって適切な定数値を推定できるようになる。これにより、地磁気センサ200の製造者は傾きを一定に変化させながら方位角、及びその状態におけるβ値を測定して所定形態のデータベースを作成することができる。作成されたデータベースはメモリ240に保存される。
【0038】
図5はメモリ240に保存されたデータベースの構成の一例を示す模式図である。同図によれば、0°ないし360°の方位角それぞれに対してβが設定され記録されている。この場合、メモリ240容量を効率よく使用するため、5°ずつあるいは10°ずつ方位角を区分して記録することもできる。
中央処理装置230はZ軸出力値を最初に演算する場合、予め設定されたβの初期値を使用する。βの初期値はsinλを用いて設定できる。すなわち韓国の場合、sin53°≒0.8を用いてZ軸出力値を最初に演算することができる。
【0039】
これにより、Z軸出力値を演算すれば、中央処理装置230は演算されたZ軸出力値、正規化されたX軸及びY軸出力値、ピッチ角、ロール角を次の数式に代入して方位角(azimuth)を1次演算することができる。
【0040】
【数7】


数式7において、ψは方位角を意味する。中央処理装置230は1次演算された結果値を図5のようなデータベースに代入して対応するβ値を読取る。
中央処理装置230は前述した数式4ないし6のうち1つに新たなβ値を代入してZ軸出力値を再演算する。この場合、β値以外の他の変数値は1次演算過程と同一の値に固定する。これにより、中央処理装置230は再演算されたZ軸出力値を数式7に代入して方位角を再演算する。同様に、Z軸出力値以外の他の変数値は1次演算過程と同一の値に固定する。
【0041】
中央処理装置230はZ軸出力値及び方位角を演算する作業を予め設定された所定回数だけ繰り返して行なう。すなわち、2回に設定されている場合には、2次演算された方位角を表示し、3回に設定されている場合、2次演算された方位角に対応するβ値をデータベースから再び読み出した後、これを用いてZ軸出力値を3次演算し、再び方位角を3次演算して、その結果値を表示する。
【0042】
中央処理装置230は最終演算された結果値をディスプレー画面上に表示するようにディスプレー部250を制御する。ディスプレー部250はLCDパネル、またはLEDなどを用いて方位角を表示する。
一方、中央処理装置230は地磁気検出モジュール210及びチルト検出モジュール220で次の出力値が検出されると、βの初期値を直前に使用したβ値によりアップデートする。すなわち、Z軸出力値を1次演算する過程において、直前方位角検出過程で使用したβ値を代入し演算することにより、方位角演算を行うたびにさらに最適のβ値が用いられるので、正確な方位角が測定できる。
【0043】
図6は本発明の一実施形態による方位角測定方法を説明するためのフローチャートである。図6によれば、まず地磁気検出モジュール210で地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を検出する(S610)。
これにより、正規化部260で所定範囲の値にマッピングする正規化作業を行なう(S615)。正規化作業は、前述した数式1を用いてなされる。
【0044】
次いで、チルト検出モジュール220でピッチ角及びロール角を検出する(S620)。ピッチ角及びロール角を検出するために、チルト検出モジュール220はX軸及びY軸角速度センサの出力値を数式2を用いて正規化した後、数式3を用いてピッチ角及びロール角を演算することができる。
また、正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、ピッチ角、及びロール角を用いて仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値を1次的に演算する(S625)。この場合、前述した数式4〜6のうち1つを用いて演算することができるが、演算負担を軽減するために最も簡単な数式である数式6を用いるのが望ましい。一方、Z軸出力値演算過程で使用されるβ値は既に設定された初期値を用いる。この場合、初期値は韓国の伏角値にsin関数を取った値に設定することができる。約0.8が使用可能である。
【0045】
次いで、演算されたZ軸出力値を用いて方位角を1次的に演算するようになる(S630)。方位角演算のために前述した数式7が用いられる。
中央処理装置230は1次演算された方位角をメモリ240に保存されたデータベースに代入して対応するβ値を読み出す(S635)。このため、地磁気センサ200の製造メーカは方位角別に測定した最適β値を記録したデータベースを作製して、メモリ240に予め保存して置くべきである。
【0046】
中央処理装置230は読み出されたβ値を用いてZ軸出力値を再演算する(S640)。この場合、β値以外の変数値はそのまま固定する。
次いで、再演算されたZ軸出力値を用いて方位角を再演算する(S645)。同様に、Z軸出力値以外の変数値はそのまま固定する。
これにより、方位角再演算作業が製造メーカまたはユーザが既に設定した所定回数だけ実行されたかを確かめて(S650)、設定回数を超えたと判断した場合、最終演算された結果値をディスプレー画面上に表示させる(S655)。3回以上に設定した場合なら、2次演算された方位角に対応するβ値をメモリ240から再び読み出して(S635)、Z軸出力値及び方位角を3次演算する (S640、S645)。
【0047】
一方、方位角の測定が完了していないと判断した場合(S660)、中央処理装置230はβの初期値を最終使用したβ値にアップデートする(S665)。これにより、地磁気検出モジュール210及びチルト検出モジュール220から出力される次の出力値を用いてZ軸出力値を1次演算するにあたって、アップデートされたβ初期値が用いられる。これにより、方位角測定を継続するほど正確なβ値を使って方位角を演算することができる。
【0048】
以上では本発明の望ましい実施形態について示しかつ説明したが、本発明は前述した特定の実施形態に限らず、請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱せず当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって多様な変形実施が可能であることは勿論、このような変形実施は本発明の技術的思想や展望から個別的に理解されてはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態による地磁気センサの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施形態による地磁気センサの構成を示すブロック図である。
【図3】ピッチ角及びロール角を測定するための基準軸を示す模式図である。
【図4】図3の地磁気センサで使用されたチルト検出モジュールの構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図3のメモリに保存されたデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態による方位角測定方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
110、 210 : 地磁気検出モジュール
120、 220 : チルト検出モジュール
130、 230 : 中央処理装置
140、 240 : メモリ
150、 250 : ディスプレー部
260 : 正規化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する地磁気検出モジュールと、
所定の基準面上における傾斜角度であるチルト角を検出するチルト検出モジュールと、
伏角による地磁気影響を反映するための定数値を毎方位角別に予め設定して記録したデータベースを保存するメモリと、
前記定数値の初期値、前記電気的信号値、及び前記チルト角に基づいて方位角を1次演算した後、前記1次演算された方位角に対応する定数値を前記メモリから検出して前記検出された定数値に基づいて前記方位角を再演算する中央処理装置と、
を含むことを特徴とする地磁気センサ。
【請求項2】
前記中央処理装置は、
前記方位角再演算作業が完了した後、前記定数値の初期値を前記検出された定数値にアップデートすることを特徴とする請求項1に記載の地磁気センサ。
【請求項3】
前記中央処理装置は、
前記地磁気検出モジュール及び前記チルト検出モジュールにおいて前記電気的信号値及び前記チルト角をそれぞれ検出する毎に、前記アップデートされた定数値に基づいて前記方位角1次演算作業及び再演算作業を行なうことを特徴とする請求項2に記載の地磁気センサ。
【請求項4】
前記中央処理装置は、
前記方位角再演算作業を予め設定された所定回数行なうことを特徴とする請求項3に記載の地磁気センサ。
【請求項5】
前記地磁気検出モジュールは、
互いに直交する形態に作製され、所定の駆動信号に応じて誘導される磁気に対応する所定大きさの電気的信号をそれぞれ出力するX軸及びY軸フラックスゲートを含むことを特徴とする請求項1に記載の地磁気センサ。
【請求項6】
前記X軸及び前記Y軸フラックスゲートから出力される前記電気的信号をそれぞれ所定範囲の値にマッピングする正規化作業を行なう正規化部と、
前記再演算された方位角を表示するディスプレー部をさらに含み、
前記中央処理装置は、前記正規化部で正規化された電気的信号値に基づいて前記方位角1次演算及び再演算作業を行うことを特徴とする請求項5に記載の地磁気センサ。
【請求項7】
前記正規化部は、
【数1】

(ただし、Xf及びYfはそれぞれX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfmax及びXfminはそれぞれXfの最大値及び最小値、Yfmax及びYfminはそれぞれYfの最大値及び最小値、αは固定定数である)
に基づいて前記正規化作業を行なうことを特徴とする請求項6に記載の地磁気センサ。
【請求項8】
前記チルト検出モジュールは、
互いに直交する形態に作製され、前記基準面に対する傾きに応じた所定大きさの電気的信号を出力するX軸及びY軸加速度センサと、
前記X軸及び前記Y軸加速度センサからそれぞれ出力される前記電気的信号を所定大きさの値にマッピングする正規化作業を行なうチルト正規化部と、
前記チルト正規化部で正規化された値を用いてピッチ角及びロール角を演算した後、前記ピッチ角及び前記ロール角を前記チルト角として出力するチルト演算部と、
を含むことを特徴とする請求項5に記載の地磁気センサ。
【請求項9】
前記チルト演算部は、
【数2】

(ただし、θはピッチ角、φはロール角、Xtnormは正規化されたX軸加速度センサ出力値、Ytnormは正規化されたY軸加速度センサ出力値である)
に基づいて前記ピッチ角及び前記ロール角を演算することを特徴とする請求項8に記載の地磁気センサ。
【請求項10】
前記中央処理装置は、
【数3】

(ただし、Zfnormは仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値、βは定数値、θはピッチ角、φはロール角、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値である)
のうち1つの式を用いて仮想のZ軸フラックスゲートの出力値を演算した後、演算された結果値を用いて前記方位角を1次演算及び再演算することを特徴とする請求項1に記載の地磁気センサ。
【請求項11】
前記中央処理装置は前記Z軸フラックスゲートの出力値を、
【数4】

(ただし、ψは方位角、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Zfnormは仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値、θはピッチ角、それからφはロール角である)
に代入して前記方位角を1次演算及び再演算することを特徴とする請求項10に記載の地磁気センサ。
【請求項12】
伏角による地磁気影響を反映するための定数値を毎方位角別に予め設定して記録したデータベースを保存したメモリを含む地磁気センサの方位角測定方法において、
(a) 地磁気に対応する所定大きさの電気的信号値を出力する段階と、
(b) 前記電気的信号値の大きさを所定範囲にマッピングして正規化する段階と、
(c) 前記地磁気センサが所定の基準面に対して傾いた程度を示すチルト角を検出する段階と、
(d) 前記定数値の初期値、前記正規化された電気的信号値及び前記チルト角を用いて方位角を1次演算する段階と、
(e) 前記1次演算された方位角に対応する定数値を前記メモリから検出する段階と、
(f) 前記検出された定数値、前記正規化された電気的信号値、及び前記チルト角を用いて前記方位角を再演算する段階と、
を含むことを特徴とする地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項13】
前記方位角再演算作業が完了した後、前記定数値の初期値を前記検出された定数値にアップデートする段階をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項14】
前記電気的信号値及び前記チルト角を検出する毎に、前記アップデートされた定数値を用いて前記方位角1次演算作業及び再演算作業を行なう段階をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項15】
前記(e)ないし(f)段階を予め設定された所定回数だけ繰り返すことを特徴とする請求項14に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項16】
前記(a)段階は、
互いに直交する形態に作製されたX軸及びY軸フラックスゲートに所定の駆動信号を印加する段階と、
前記駆動信号に応じて前記X軸及びY軸フラックスゲートに誘導される磁気に対応する所定大きさの電気的信号値をそれぞれ検出する段階と、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項17】
前記(b)段階は、
【数5】


(ただし、Xf及びYfはそれぞれX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Xfmax及びXfminはそれぞれXfの最大値及び最小値、Yfmax及びYfminはそれぞれYfの最大値及び最小値、αは定数である)
に基づいて前記正規化作業を行なうことを特徴とする請求項16に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項18】
前記(c)段階は、
互いに直交する形態に作製されたX軸及びY軸加速度センサから前記基準面に対する傾きに対応する所定大きさの電気的信号を検出する段階と、
前記X軸及び前記Y軸加速度センサからそれぞれ検出された前記電気的信号の大きさを所定範囲にマッピングして正規化する段階と、
前記正規化された値を
【数6】


(前記数式において、θはピッチ角、φはロール角、Xtnormは正規化されたX軸加速度センサ出力値、Ytnormは正規化されたY軸加速度センサ出力値である)
に代入して前記ピッチ角及び前記ロール角を演算する段階と、
前記ピッチ角及び前記ロール角を前記チルト角として出力する段階と、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項19】
前記(d)段階及び前記(f)段階は、
【数7】


(ただし、Zfnormは仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値、βは定数値、θはピッチ角、φはロール角、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値である)
のうち1つの式に基づいて仮想のZ軸フラックスゲートの出力値を演算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の地磁気センサの方位角測定方法。
【請求項20】
前記(d)段階及び前記(f)段階は、
前記Z軸フラックスゲートの出力値を、
【数8】


(ただし、ψは方位角、Xfnorm及びYfnormはそれぞれ正規化されたX軸及びY軸フラックスゲート出力値、Zfnormは仮想のZ軸フラックスゲートの正規化された出力値、θはピッチ角、それからφはロール角である)
に代入して前記方位角を演算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の地磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−170997(P2006−170997A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359610(P2005−359610)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】