説明

方法、組成物および化合物

本発明は、式(1):
【化1】


(式中、
AおよびDは、それぞれ独立して、任意に置換されてよいアリールまたは任意に置換されてよいヘテロアリールを表し;
Eは任意に置換されてよいピラゾリルを表し;
Zは、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいアルコキシまたは任意に置換されてよいアリールオキシを表し;そして
pは0〜5の整数であり;
ただし、Eが、それに直接結合した式−CONRの任意に置換されてよいカーボンアミド基を有する場合、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、または任意に置換されてよいアリールである)
の化合物を提供する。また、該化合物を含むインク組成物、およびそのような組成物を用いて像を印刷する方法、好ましくはインクジェット印刷法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷、特に限定するものではないが、インクジェット印刷(“IJP”)における化合物、組成物およびそれらの使用に関する。IJPは、ノズルを基体と接触させることなく、インクの液滴を細いノズルを通じて基体に噴射する非衝撃印刷技術である。
【背景技術】
【0002】
IJPで使用される染料およびインクには多くの性能が求められる。例えば、それらは、良好な光学濃度、耐水堅牢度、耐光堅牢度、または酸化性空気汚染物質(例えば、オゾン)の存在下での退色抵抗性を有するシャープで不鮮明さのない像をもたらすことが望ましい。
【0003】
インクは、にじみを防止するために、基体に塗布したとき急速に乾燥することがしばしば要求されるが、インクジェットノズルの先端で固まりを形成してプリンターの作動を停止させてはならない。インクはまた、分解したりまたは細いノズルを塞ぐ可能性のある沈殿物を形成することなく、長期貯蔵に安定でなければならない。
【0004】
米国特許第2,428,130号(1947年発行)、米国特許第2,897,191号(1959年発行)および米国特許第3,450,689号(1969年発行)には、綿の染色に用いるためのピラゾリル基を有するアゾ染料が開示されている。
【発明の開示】
【0005】
本発明の1つの側面では、
式(1):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
AおよびDは、それぞれ独立して、任意に置換されてよいアリールまたは任意に置換されてよいヘテロアリールを表し;
Eは任意に置換されてよいピラゾリルを表し;
Zは、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいアルコキシ、任意に置換されてよいアリールオキシまたは任意に置換されてよいスルホンアミドを表し;そして
pは0〜5の整数であり;
ただし、Eが、それに直接結合した式−CONRの任意に置換されてよいカーボンアミド基を有する場合、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、または任意に置換されてよいアリールである)
の化合物を提供する。
【0008】
本発明の別の側面では、基体に像を印刷する方法であって、基体へ、液体媒質および式(1)の化合物を含むインク組成物を塗布することを含む方法を提供する。
基体に像を印刷する方法はIJP法であることが好ましい。つまり、その方法は、ノズルを基体と接触させることなく、インク組成物の液滴が細いノズルを通して基体へ噴出される印刷法であることが好ましい。従って、インク組成物は基体へインクジェットプリンターによって塗布されることが好ましい。ここで像という用語は、限定するものではないが、図形的な像(写真写実的な像を含む)および文字の配列を含む。
【0009】
式(1)は、プロトン付加された形および塩の形の化合物を包含する。例えば、スルホのような基が式中に存在する場合、式はプロトン付加された形(すなわち、−SOH)および塩の形(−SONa)のそれを包含する。誤解を避けるために、存在するならば、スルホ、カルボキシ、スルホンアミド、ホスファトおよび他の可能な塩の形の基は、プロトン付加された形または塩の形の化合物に存在しうるものとする。
【0010】
pは1または2であることが好ましい。好ましくは少なくとも1つのスルホ基はヒドロキシル基と同じナフチル基の環上に、より好ましくは3−位置に存在する(ヒドロキシ基は1−位置を示す位置にある)。pが2以上(特にpが2)の場合、好ましくは少なくとも1つのスルホ基はナフチル基の各環上に存在する。スルホ基は塩の形、特にアルカリ金属またはアンモニウムイオン塩の形で存在してもよい。
【0011】
AおよびDは、それぞれ独立して、任意に置換されてよいアリールまたは任意に置換されてよいヘテロアリール基である。好ましくは、AおよびDはそれぞれ独立して任意に置換されてよいアリールである。さらに好ましくは、AおよびDはそれぞれ独立して任意に置換されてよいフェニルまたはナフチルである。さらにより好ましくは、AおよびDはそれぞれ独立して任意に置換されてよいフェニルである。
【0012】
好ましくは、AおよびDは、それぞれ独立して、5以下の置換基で置換されている。さらに好ましくは、AおよびDは、それぞれ独立して、4以下の置換基で置換されている。
好ましくは、AおよびD上の任意の置換基は、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、任意に置換されてよいアルコキシ、任意に置換されてよいアリール、任意に置換されてよいヘテロアリール、任意に置換されてよいアリールオキシ、任意に置換されてよいアミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シリル、シリルオキシ、任意に置換されてよいウレイド、アゾ、スルホ、ホスファト、COOR、OCOOR、OCOR、COR、CONR、OCONR、SR、SONRまたはSOから独立して選択され、ここで、RおよびRは上で定義した通りである。スルホ、ホスファトおよびCOOH(すなわち、カルボキシ)のような基は塩の形で存在しうる。
【0013】
A上の2つの適した置換基および/またはD上の2つの適した置換基は一緒に結合して環、すなわち縮合環をAおよびD上に形成してもよい。そのような縮合環は脂肪族環または芳香族環(ヘテロ芳香族環を含む)でもよい。
【0014】
式CONRのE上のカーボンアミド基では、好ましくは、RおよびRはHおよび任意に置換されてよいアルキルから選択されることが好ましく、RおよびRの少なくとも1つ、より好ましくは両方ともHであることがより好ましい。
【0015】
好ましくは、Eは、式(2a)−(2d)のピラゾリル基およびそれらの互変異性体:
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、*1はナフチル基に結合する位置を表し、*2はアゾ結合に結合する位置を表す)
である。
【0018】
より好ましくは、Eは式(2a)または(2b)、最も好ましくは、Eは式(2a)の基である。
つまり、最も好ましくは、式(1)の化合物は式(1A)を有し、ここで、Eは式(2a):
【0019】
【化3】

【0020】
の基である。
AおよびD上の任意の置換基については、好ましい任意に置換されてよいアルキルは任意に置換されてよいC1−4アルキルであり、より好ましくは、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたC1−4アルキルであり;好ましい任意に置換されてよいC1−4アルコキシは任意に置換されてよいC1−4アルコキシであり、より好ましくは、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたC1−4アルコキシであり;好ましい任意に置換されてよいアリールは任意に置換されてよいフェニルまたはナフチル(特に、フェニル)であり、より好ましくは、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたフェニルまたはナフチル(特に、フェニル)であり;好ましい任意に置換されてよいヘテロアリールは任意に置換されてよいピリジル、ピリドン、ピラゾリルまたは1,2,4−トリアゾールであり;好ましい任意に置換されてよいアミノは、1つまたは2つの任意に置換されてよいアリール基、1つまたは2つの任意に置換されてよいC1−4アルキル基またはアシル基を有するアミノであり;好ましいアゾ基は任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ、アルケニルアゾであり、これらの中でより好ましいのは任意に置換されてよいアリールアゾまたは任意に置換されてよいヘテロアリールアゾであり、ここで、これらのアゾ基の好ましい任意の置換基は、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、任意に置換されてよいアルコキシ、任意に置換されてよいアリール、任意に置換されてよいヘテロアリール、任意に置換されてよいアリールオキシ、任意に置換されてよいアミノ、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意に置換されてよいウレイド、任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ、スルホ、ホスファト、COOR、OCOOR、OCOR、COR、CONR、OCONR、SR、SONRまたはSONRから選択され、より好ましいのは、これらのアゾ基が少なくとも1つのスルホ、カルボキシまたはホスファト基で置換されているものである。
【0021】
Dの好ましい置換基は、スルホ、カルボキシ、ホスファト、ヒドロキシ、ニトロ、任意に置換されてよいC1−4アルキル、任意に置換されてよいC1−4アルコキシ、アゾ(特に、任意に置換されてよいアリールアゾまたはヘテロアリールアゾ、さらに特に、任意に置換されてよいスルホ、カルボキシおよび/またはホスファトで置換されたアリールまたはヘテロアリールアゾ)、ハロゲンおよびシアノから選択される。Dのより好ましい置換基は、スルホ、カルボキシ、任意に置換されてよいC1−4アルキルおよび任意に置換されてよいアリールアゾ(特に、スルホおよび/またはカルボキシで置換されたアリールアゾ、さらに特に、スルホおよび/またはカルボキシで置換されたフェニルアゾ)から選択される。
【0022】
Aは、好ましくは1〜4個、より好ましくは2〜4個、さらにより好ましくは2〜3個、最も好ましくは3個の置換基で置換されている。
好ましくは、Aは、1つ以上、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは2つの、C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OH、最も好ましくは−O−(CH1−4−OHから選択される基で少なくとも置換されている。−O−(CH1−4−OHは−O−C−OHであることが好ましい。Aが2つの−O−C−OHで少なくとも置換されているのが特に好ましい。
【0023】
好ましくは、Aは、少なくとも1つの任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ、より好ましくは少なくとも1つの任意に置換されてよいアリールアゾまたは任意に置換されてよいヘテロアリールアゾ、最も好ましくは少なくとも1つの任意に置換されてよいアリールアゾで少なくとも置換されている。好ましい任意に置換されてよいアリールアゾは任意に置換されてよいフェニルまたはナフチルアゾ(特に、フェニルアゾ)である。好ましい任意に置換されてよいヘテロアリールアゾは任意に置換されてよいピリジル、ピリドン、ピラゾリルまたは1,2,4−トリアゾールアゾ(特に、ピラゾリルアゾ)である。アゾ基の好ましい任意の置換基は、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、任意に置換されてよいアルコキシ、任意に置換されてよいアリール、任意に置換されてよいヘテロアリール、任意に置換されてよいアリールオキシ、任意に置換されてよいアミノ、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意に置換されてよいウレイド、任意に置換されてよい炭素環式アゾもしくは任意に置換されてよい複素環式アゾ、スルホ、ホスファト、COOR、OCOOR、OCOR、COR、CONR、OCONR、SR、SONR、またはSONRから選択される。より好ましい態様では、アゾ基は、少なくとも1つのスルホ、カルボキシまたはホスファト基で置換されている。Aが、少なくとも1つの任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾで置換されている場合、A基はアゾ基の窒素原子に結合している。
【0024】
さらに好ましくは、Aは、上記のようなC1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OHから選択される基の少なくとも1つ、より好ましくは2つで、および上記のような任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ基の少なくとも1つで置換されている。従って、特に好ましくは、Aは、少なくとも1つ、より好ましくは2つの、C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OH(特に、Aは2つの−O−C−OHで置換されている)から選択される基で、および任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ基(特に、任意に置換されてよいアリールアゾ、さらに特に、任意に置換されてよいフェニルアゾ)で置換されている。従って、特に好ましくは、Aは、C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OHから選択される2つの置換基で置換され(特にAは2つの−O−C−OHで置換され)、そして任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ(特に、任意に置換されてよいアリールアゾ、さらに特に、任意に置換されてよいフェニルアゾ)で置換されている。
【0025】
従って、最も特別に好ましい態様では、Aは式(2e):
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、*2はアゾ結合に結合する位置を表し、Gはここで定義する通りの任意に置換されてよいアリールアゾを表す)
の基である。
【0028】
好ましくは、式(1)の化合物は少なくとも2つの水可溶化基を有する。好ましくは、少なくとも1つの水可溶化基はAおよび/またはD上に存在する。
水可溶化基は式(1)の化合物の水溶性を高めることができるどのような基でもよい。従って、例えば、それはイオン化しうる陰イオンもしくは陽イオン基または非イオン性基でもよい。
【0029】
好ましくは、水可溶化基はイオン化しうる陰イオン基を含む。より好ましくは、水可溶化基は、カルボキシ、スルホおよびホスファトよりなる群から選択される基を含む。水可溶化基の好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは全てがカルボキシ、スルホおよびホスファトから選択される。さらに好ましくは、水可溶化基は少なくとも1つのスルホ基を含む。特に、好ましくは、式(1)の化合物は少なくとも2つのスルホ基、より好ましくは、2つまたは3つのスルホ基を有する。
【0030】
好ましくは、25℃の水における式(1)の化合物の溶解度は少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2.5%である。特に好ましくは、25℃の水におけるの式(1)の化合物の溶解度は少なくとも5%である。
【0031】
1つの態様では、Zはヒドロキシではない。
別の態様では、Zはアミノではない。
さらに別の態様では、Zはヒドロキシまたはアミノではない。
【0032】
好ましくは、ZはHまたはハロゲン(特に、塩素)である。最も好ましくは、ZはHである。
好ましくは、式(1)の化合物は、Dが式(3a)または(3b):
【0033】
【化5】

【0034】
(式中、*2はアゾ結合に結合する位置を表し、Jは任意に置換されてよいアリールを表す)
である化合物ではない。Jは任意に置換されてよいアリールアゾ基で置換されたアリールであることが好ましい。
【0035】
上記の点から、本発明の特に好ましい態様では、化合物は、
pが1または2(好ましくは1)であり;
ZがHであり;
Aが、(i)C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OH、より好ましくは−O−(CH1−4−OH、最も好ましくは−O−C−OHから選択されるの2つの基を有し、そして(ii)スルホ、カルボキシおよび/またはホスファト基から選択される少なくとも1つの水可溶化基、好ましくは少なくとも1つのスルホおよび/またはカルボキシ基、より好ましくは少なくとも1つのスルホ基を持つ任意に置換されてよいフェニルアゾ基を有する、任意に置換されてよいフェニルであり;
Eが、前に定義した通りの式(2a)の基であり;そして
Dが、好ましくはスルホ、カルボキシおよび/またはホスファト基から選択される少なくとも1つの水可溶化基、好ましくは少なくとも1つのスルホおよび/またはカルボキシ基、より好ましくは少なくとも1つのスルホ基を有する任意に置換されてよいフェニルである、
式(1)の化合物である。
【0036】
従って、上記と一致する本発明のより好ましい態様では、化合物は、
pが1であり;
ZがHであり;
Aが、2つの−O−C−OH、および少なくとも1つの水可溶化基、好ましくは少なくとも1つのスルホ基を持つ任意に置換されてよいフェニルアゾ基を有する、任意に置換されてよいフェニルであり;
Eが、前に定義した通りの式(2a)の基であり;そして
Dが、少なくとも1つの水可溶化基、好ましくは少なくとも1つのスルホ基を有する任意に置換されてよいフェニルである、
式(1)の化合物である。
【0037】
本発明のさらにより好ましい態様では、化合物は式(1B):
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されてよいアルキル(特に、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたC1−4アルキル)、任意に置換されてよいシクロアルキル、任意に置換されてよいアルコキシ(特に、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたC1−4アルコキシ)、任意に置換されてよいアリール(特に、スルホ、カルボキシ、ホスファト、C1−4アルコキシ、アミノおよびヒドロキシの少なくとも1つで置換されたフェニル)、任意に置換されてよいヘテロアリール、任意に置換されてよいアリールオキシ、任意に置換されてよいアミノ(特に、1つまたは2つの任意に置換されてよいアリール基、1つまたは2つの任意に置換されてよいC1−4アルキルまたはアシル基を有するアミノ)、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、任意に置換されてよいウレイド、アゾ(特に、任意に置換されてよいフェニルアゾ)、スルホ、ホスファト、COOR、OCOOR、OCOR、COR、CONR、OCONR、SR、SONR、またはSONRを表す)
の化合物である。
【0040】
式(1B)の化合物の例は、式(1C)および(1D):
【0041】
【化7】

【0042】
の化合物である。
本明細書では、どのような置換基もそれ自体任意に置換されてよると定義される場合、該置換基はここに記載の1つ以上のどのような置換基でも置換されてよい。
【0043】
本明細書では、特に断りがなければ、好ましいアリール基はフェニルおよびナフチルであり、好ましいへテロアリール基はピリジル、ピラゾリルおよび1,2,4−トリアゾールである。
【0044】
ここで用いられる用語「アルキル」には、異なる飽和度および/または原子価を有する部分構造、例えば、アルケニルまたはアルキニルのような二重結合または三重結合を含む部分構造が含まれる。本明細書では、特に断りがなければ、好ましいアルキル基はC1−4アルキルである。
【0045】
ここで用いられる用語「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを示す。本明細書では、特に断りがなければ、好ましいハロゲン基はフルオロ、クロロおよびブロモである。
【0046】
特に断りがなければ、ここにおける3つ以上の原子鎖を含む基は、鎖の全体または一部が線状、分枝状であってもよく、さらに/または環(スピロおよび/または縮合環を含む)を形成してもよい基を示す。
【0047】
式(1)の化合物は、式A−NH(Aは上で定義した通りである)の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩にし、そして得られたジアゾニウム塩を式(4):
【0048】
【化8】

【0049】
の化合物とカップリングすることによって製造しうる。
ジアゾ化は5℃以下、より好ましくは−10〜5℃、さらに好ましくは0〜5℃の温度で行うことが好ましい。
【0050】
式(4)の化合物は、式HN−D(Dは上で定義した通りである)の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩にし、そして得られたジアゾニウム塩を式(5):
【0051】
【化9】

【0052】
の化合物とカップリングすることによって製造しうる。
式(5)の化合物は、式(6)
【0053】
【化10】

【0054】
の化合物をジアゾ化してジアゾニウム塩にし、ジアゾニウム塩を相当するヒドラジン化合物に還元し、そしてそれをジエチルオキサルアセテート(ナトリウム塩)と反応させて、エステル官能基を有するピラゾリルを形成することによって製造しうる。アンモニアまたはアミンとのアミノリシスで式(4)の化合物のピラゾリル基Eが得られる。
【0055】
式(1)の化合物は塩の形で提供しうる。好ましい塩はアルカリ金属塩、特に、リチウム、ナトリウムおよびカリウム塩、アンモニウムおよび置換されたアンモニウム塩である。特に好ましい塩は、アンモニアおよび揮発性アミン、リチウムおよびナトリウムとの塩である。化合物は公知の技術を用いて塩に変えうる。
【0056】
式(1)の化合物は本明細書に示すもの以外の互変異性体の形で存在しうる。それゆえ、式(1)には化合物の可能な全ての互変異性体形が含まれる。従って、全ての他の互変異性体形は本発明の範囲および請求の範囲に含まれる。
【0057】
好ましくは、式(1)の化合物はブラックである。より好ましくは、式(1)の化合物はブラック染料である。
本発明の別の側面では、
(a)式(1)の化合物 0.01〜30部;および
(b)液体媒質または低融点固体媒質 70〜99.99部
(ここで、全ての部は重量に基づき、(a)+(b)の部の数=100である)
を含むインク組成物を提供する。
【0058】
成分(a)の部の数は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.5〜15、特に1〜5部である。成分(b)の部の数は、好ましくは99.9〜80、より好ましくは99.5〜85、特に99〜95部である。
【0059】
媒質が液体であるとき、成分(a)は 成分(b)に完全に溶解することが好ましい。成分(a)は 成分(b)中の溶解度が20℃で少なくとも10%であることが好ましい。これによって、さらに希薄なインクの製造に用いうる濃縮物の製造が可能となり、液体媒体の蒸発が貯蔵中に生じても化合物が沈殿する可能性は少なくなる。
【0060】
好ましい液体媒質には、水、水と有機溶媒との混合物、および水を含有しない有機溶媒が含まれる。液体媒質は水と有機溶媒との混合物であるのが最も好ましい。
液体媒質が水と有機溶媒との混合物を含むとき、水対有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:9、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0061】
水と有機溶媒との混合物中に存在する有機溶媒は水混和性有機溶媒またはそのような溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水混和性有機溶媒には、C1−6アルカノール、好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノール、およびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくはジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくはアセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくはテトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールコール、ペンチレングリコールコール、へキシレングリコールおよびチオジグリコール並びにオリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくはグリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エタノールおよびエチレングリコールモノアルキルエーテル;環状アミド、好ましくは2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシドおよびスルホランが含まれる。液体媒質は、水および2種以上、特に2〜8種の水溶性有機溶媒を含むのが好ましい。
【0062】
特に好ましい水溶性有機溶媒は環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチルピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;並びにジオールのモノ−C1−4アルキルおよびC1−4アルキルエーテル、より好ましくは2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノC1−4アルキルエーテル、特に2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0063】
好ましい液体媒質は:
(a)水 75〜95部;および
(b)ジエチレングリコール、2−ピロリドン、チオジグリコール、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノール、カプロラクトン、カプロラクタムおよびペンタン−1,5−ジオールから選択される1種以上の溶媒の合計 25〜5部
(ここで、部は重量に基づき、部(a)および(b)の合計=100である)
を含む。
【0064】
別の好ましい液体媒質は:
(a)水 60〜80部;
(b)ジエチレングリコール 2〜20部;および
(c)2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノール、カプロラクトン、カプロラクタム、ペンタン−1,5−ジオールおよびチオジグリコールから選択される1種以上の溶媒の合計 0.5〜20部
(ここで、部は重量に基づき、部(a)、(b)および(c)の合計=100である)
を含む。
【0065】
水および1種以上の有機溶媒の混合物を含む別の適した液体媒質の例は、US4,963,189、US4,703,113、US4,626,284およびEP4,251,50Aに記載されている。
【0066】
液体媒質が水を含有しない有機溶媒(すなわち、水が1重量%未満)を含むとき、溶媒の沸点は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃、特に50〜125℃である。有機溶媒は水非混和性、水混和性またはそのような溶媒の混合物でもよい。好ましい水混和性有機溶媒は、ここに記載の水混和性有機溶媒およびそれらの混合物である。好ましい水非混和性有機溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;およびエーテル、好ましくはジエチルエーテル;並びにそれらの混合物である。
【0067】
液体媒質が水非混和性有機溶媒を含むとき、化合物の液体媒質への溶解度を高めるので極性溶媒が含まれるのが好ましい。極性溶媒の例は、C1−4−アルコールである。上記の好ましいものを考慮すると、液体媒質が水を含有しない有機溶媒である場合、それはケトン(特に、メチルエチルケトン)および/またはアルコール(特に、C1−4−アルカノール、さらにとりわけ、エタノールまたはプロパノール)を含むことが特に好ましい。
【0068】
水を含有しない有機溶媒は単一有機溶媒または2種以上の有機溶媒の混合物でもよい。液体媒質が水を含有しない有機溶媒である場合、それは2〜5種の異なる有機溶媒であることが好ましい。これによって、インク組成物の乾燥特性および貯蔵安定性をうまく調整することができる媒質を選択することができる。
【0069】
水を含有しない有機溶媒を含む液体媒質は、速く乾燥することが必要な場合、特に疎水性および非吸収性基体、例えばプラスチック、金属およびガラス上に印刷するとき特に有用である。
【0070】
好ましい低沸点固体媒質の融点は60〜120℃である。好適な低沸点固体には長鎖脂肪酸またはアルコール、好ましくはC18−24鎖のもの、およびスルホンアミドが含まれる。式(1)の化合物は低沸点固体に溶解しうるか、あるいはそれに細かく分散しうる。
【0071】
インク組成物はまた、インクジェット印刷インクに用いられる公知のさらなる成分、例えば粘度および表面張力調節剤、腐蝕防止剤、殺生物剤、コゲ−ション減少剤、およびイオンまたは非イオン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0072】
一般に、液体媒体は1種以上の界面活性剤、例えば陰イオンおよび/または非イオン界面活性剤をさらに含む。陰イオン界面活性剤の例は、スルホネート、例えばスルホスクシネート(CYTECから入手しうるAerosol(登録商標)OT,A196;AYおよびGP)およびスルホネート(CYTECから入手しうるAerosol(登録商標)DPOS−45,OS;WITCOから入手しうるWitconate(登録商標)C−50H;DOWから入手しうるDowfax(登録商標)8390);およびフルオロ界面活性剤(3Mから入手しうるFluorad(登録商標)FC99C)である。非イオン界面活性剤の例は、フルオロ界面活性剤(3Mから入手しうるFluorad(登録商標)FC170C);アルコキシレート界面活性剤(ユニオン・カーバイトから入手しうるTergitol(登録商標)シリーズ15S−5、15S−7および15S−9);並びに有機シリコーン界面活性剤(WITCOから入手しうるSilwet(登録商標)L−77およびL−76−9)である。界面活性剤のSurfynol(登録商標)(エアー・プロダクツから入手しうる)も適している。
【0073】
1つの態様では、本発明のインクのpHは約3〜約5、好ましくは約3.5〜約4.5である。別の態様では、組成物のpHは、好ましくは約4〜約11、より好ましくは約7〜約10である。インク組成物はバッファーを含んでいてもよい。
【0074】
インクのpHを調節するために、1種以上のバッファーが液体媒質中に含まれていてもよい。バッファーは有機系生物バッファーでも、無機系バッファーでもよく、有機系が好ましい。好ましいバッファーの例は、アルドリッチ・ケミカル(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手しうるトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、4−モルホリンエタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、およびβ−ヒドロキシ−4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPSO)である。さらに、用いられるバッファーは本発明の実施の際にpHを3〜10にするものが好ましい。
【0075】
インクジェットインクに一般に用いられる1種以上の殺生物剤、例えばハルス・アメリカ(ニュージャージー州ピスキャタウェーから入手しうるNuosept(登録商標));アーチ・ケミカルズ社(コネチカット州ノーウォーク)から入手しうるProxel(登録商標)GXL;およびUcarcide250の登録商標でユニオン・カーバイド社(ニュージャージー州バウンドブルック)から入手しうるグルタルアルデヒドをインクに用いてもよい。
【0076】
本発明のインクは1種以上の金属キレート化剤を含んでいてもよい。そのようなキレート化剤はインク中に存在する遊離遷移金属陽イオンを結合するのに用いられる。好ましい金属キレート化剤の例は、エチレンジアミンテトラ酢酸(「EDTA」)、ジエチレンジアミンペンタ酢酸(「DPTA」)、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸(「CDTA」)、エチレンジニトリロテトラ酢酸(「EGTA」)である。他のキレート化剤をさらにあるいは別に用いてもよい。
【0077】
25℃でのインクの粘度は、好ましくは50cP未満、より好ましくは20cP未満、特に5cP未満である。
インクジェットプリンターに用いるのに適した本発明のインク組成物は、2価および3価金属イオン(式(1)の化合物または他のインク成分に結合した2価および3価金属イオン以外)を合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満含有する。
【0078】
好ましくは、インクジェットプリンターに用いるのに適した本発明のインク組成物は、平均細孔サイズが10μm未満、より好ましくは3μm未満、特に2μm未満、さらに特に1μm未満のフィルターに通した。この濾過は、多くのインクジェットプリンターに見られる細いノズルを塞ぐ粒状物質を除去する。
【0079】
本発明のインクをインクジェット印刷に用いるとき、インクの濃度は、ハロゲン化物イオン百万部当たり、好ましくは500部未満、より好ましくは100部未満である。
式(1)の化合物は、魅力的なブラックの色彩であるので、インク組成物中に唯一の着色剤として用いうる。しかしながら、、ノズルの閉塞を減じる(溶解度を改善することによる)ために、あるいは特定の使用目的のために少し異なる色彩が必要ならば、式(1)の化合物を必要に応じて1種以上のさらなる着色剤と組み合わせてもよい。従って、本発明のインクは少なくとも1種のさらなる着色剤を含んでいてもよい。さらなる着色剤は染料であることが好ましい。さらなる着色剤が組成物中に含まれるとき、これらは、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー、レッド、グリーン、ブルーおよびオレンジ着色剤並びにそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。この目的に適したブラック、マゼンタ、シアン、イエロー、レッド、グリーン、ブルーおよびオレンジ着色剤は本技術分野で知られている。いくつかの例を以下に示す。
【0080】
好適なブラック着色剤の例は、C.I.Food Black 2、C.I.Direct Black 19、C.I.Reactive Black 31、PRO−JET(登録商標) Fast Black 2、C.I.Direct Black 195;C.I.Direct Black 168;レックスマーク、セイコー・エプソン、キャノンおよびヒューレット−パッカードを含む他社ブランド製品製造業者(OEM)または富士写真フィルム、日本化薬および三菱を含む着色剤製造業者によって製造または販売されている他のブラック着色剤、並びに上記レックスマーク(例えば、EP 0 539,178 A2、実施例1、2、3、4および5)、オリエント・ケミカルズ(例えば、EP 0 347 803 A2、5〜6頁、アゾ染料3、4、5、6、7、8、12、13、14、15および16)、キャノン、ヒューレット−パッカードおよびセイコー・エプソンを含むOEMによる並びに富士写真フィルム、日本化薬および三菱による特許および特許出願に記載の他のブラック着色剤である。
【0081】
好適なマゼンタ着色剤の更なる例は、PRO−JET(登録商標) Fast Magenta 2、並びにレックスマーク、セイコー・エプソン、キャノンおよびヒューレット−パッカードを含むOEMまたは富士写真フィルム、日本化薬および三菱を含む着色剤製造業者によって製造、販売されているまたはそれらによる特許および特許出願に記載されている他のマゼンタ着色剤である。
【0082】
好適なイエロー着色剤の更なる例は、C.I.Direct Yellow 142;C.I.Direct Yellow 132;Direct Yellow 86;PRO−JET(登録商標) Yellow OAM;PRO−JET(登録商標) Yellow Fast Yellow 2;C.I.Direct Yellow 85;C.I.Direct Yellow 173;およびC.I.Acid Yellow 23、並びにレックスマーク、セイコー・エプソン、キャノンおよびヒューレット−パッカードを含むOEMまたは富士写真フィルム、日本化薬および三菱を含む着色剤製造業者によって製造、販売されているまたはそれらによる特許および特許出願に記載されている他のイエロー着色剤である。
【0083】
好適なシアン着色剤の更なる例は、フタロシアニン着色剤、C.I.Direct Blue 199およびC.I.Acid Blue 9、並びにレックスマーク、セイコー・エプソン、キャノンおよびヒューレット−パッカードを含むOEMまたは富士写真フィルム、日本化薬および三菱を含む着色剤製造業者によって製造、販売されているまたはそれらによる特許および特許出願に記載されている他のシアン着色剤である。
【0084】
像を印刷する方法に用いられるインク組成物は、本発明の上記側面で定義したようなインク組成物であることが好ましい。
インク組成物はインクジェットプリンターを使用して基体へ塗布することが好ましい。その場合、インクジェットプリンターは基体にインクを、小さいオリフィスを通して基体上に噴出される液滴の形で塗布することが好ましい。好ましいインクジェットプリンターは圧電インクジェットプリンターおよび熱インクジェットプリンターである。熱インクジェットプリンターでは、プログラムされた熱パルスを貯蔵室中のインクへオリフィスに隣接した抵抗体によって加え、それによってインクを、基体とオリフィスとの間の相対運動の最中に基体に向けて小さい液滴の形で噴出させる。圧電インクジェットプリンターでは、小さい結晶の振動によってオリフィスからインクを噴出させる。
【0085】
基体は、好ましくは紙、プラスチック、布地、金属またはガラス、より好ましくは紙、オーバーヘッドプロジェクタースライドまたは布地材料、特に紙である。
好ましい紙は、酸性、アルカリ性または中性の紙である。商業的に入手しうる紙の例は、HP Premium Coated Paper(登録商標)、HP Photopaper(登録商標)、HP Printing Paper(登録商標)(ヒューレット−パッカード社から入手しうる);Stylus Pro 720 dpi Coated Paper(登録商標)、Epson Photo Quality Glossy Film(登録商標)、Epson Photo Quality Glossy Paper(登録商標)(セイコー・エプソン社から入手しうる);Canon HR 101 High Resolution Paper(登録商標)、Canon GP201 Glossy Paper(登録商標)、Canon HG 101およびHG201 High Glossy Film(登録商標)、Canon PR101(登録商標)(キャノンから入手しうる);Kodak Premium Photopaper、Kodak Premium Inkjetpaper(登録商標)(コダックから入手しうる);Konica Inkjet Paper GP(登録商標)Professional Photo Glossy、Konica Inkjet Paper QP(登録商標)Professional Photo 2−sided Glossy、Konica Inkjet Paper QP(登録商標) Premium Photo Glossy、Konica Inkjet Paper QP(登録商標) Premium Photo Silky(登録商標)(コニカから入手しうる)およびXerox Acid Paper(これは普通(plain)紙である)(ゼロックスから入手しうる)である。
【0086】
本発明の式(1)の化合物およびインク組成物は、像(字句を含む)のインクジェット印刷に特にふさわしい魅力的な中間黒色をもたらす。インク組成物は良好な貯蔵安定性を有し、そしてインクジェットプリンターに用いられる非常に細いノズルが閉塞する傾向を低下させている。さらに、得られる像は、良好な光学濃度、耐光堅牢度、耐湿潤堅牢度、および酸化性空気汚染物質(例えば、オゾン)の存在下での退色抵抗性を有する。
【0087】
本発明のさらに別の側面では、像が、前に定義した通りの本発明の方法によって印刷された基体を提供する。好ましくは、基体は、紙、オーバーヘッドプロジェクタースライドまたは布地材料を含む。
【0088】
基体が布地材料であるとき、像を印刷する方法は、好ましくは:
i)インクジェットプリンターを用いてインク組成物を布地材料へ塗布すること;そして
ii)得られた印刷された布地材料を50〜250℃の温度で加熱すること
をふくむ。
【0089】
好ましい布地材料の例は、天然、合成および半合成材料である。好ましい天然の布地材料には、羊毛、絹、毛織物およびセルロース材料、特に、綿花、ジュート、アサ、アマおよびリンネルである。好ましい合成および半合成材料の例は、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリルおよびポリウレタンである。
【0090】
布地材料は、上記工程i)の前に、増粘剤並びに、任意成分として、水溶性塩基およびヒドロトロープ剤を含む水性前処理組成物で処理し、そして乾燥しておくことが好ましい。
【0091】
前処理組成物は、好ましくは、増粘剤を含有する水中の塩基およびヒドロトロープ剤からなる溶液を含む。特に好ましい前処理組成物についてはヨーロッパ特許出願第534660A1号にさらに詳しく記載されている。
【0092】
本発明のさらに別の側面では、1つ以上の室およびインク組成物を含む、任意に再充填可能な、インクジェットプリンターカートリッジを提供し、ここで、インク組成物は少なくとも1つの室中に存在し、インク組成物は、ここで定義するような本発明のインク組成物である。
【0093】
本発明の別の側面では、少なくともブラックインク、マゼンタインク、シアンインクおよイエローインクを含み、そしてブラックインクが前に定義した通りの式(1)の化合物および/または前に定義した通りのインク組成物を含むインクセットを提供する。
【0094】
本発明のさらに別の側面では、良好な光学濃度、耐光堅牢度、耐湿潤堅牢度、および酸化性ガスの存在下での退色抵抗性を有する印刷された像を得るために、前に定義した通りの式(1)の化合物を用いることを提示する。
【0095】
本発明のさらに別の側面では、前に定義した通りの式(1)の化合物またはその塩を提供する。
この明細書では、特に断りがなければ、ここで用いるように、用語の複数形は単数形を含むと解釈すべきであり、逆の場合も同じである。
【0096】
本明細書の記載および請求の範囲を通して、特に断りがなければ、「含む」および「含有する」並びにそれらのバリエーションは、「限定的にではなく、包含する」という意味であり、他の成分を除外することを意味するものではない。
【0097】
本発明の上記態様の変更は本発明の範囲内で行うことができることは理解されるであろう。この明細書で開示された各特徴は、特に断りがなければ、同じ、同等また類似の別の特徴に置き換えうる。従って、特に断りがなければ、開示された各特徴は、一般的な一連の同等のまたは類似した特徴の一例にすぎない。
【0098】
この明細書に開示された全ての特徴は、そのような特徴および/または工程の少なくともいくつかが相互に排他的であるような組み合わせを除けば、どのように組み合わせてもよい。特に、本発明の好ましい特徴は、本発明の全ての側面に適用可能であり、そしてどのような組み合わせで用いてもよい。同様に、本質的ではない組み合わせに記載された特徴は別個に(一体にすることなく)用いうる。
【0099】
上記の特徴の多く、特に好ましい態様の多くは、それ自体に発明性があり、本発明の態様の単なる一部にすぎないということはない。現在請求されている発明に加えてまたは別に、これらの特徴に対して独立した保護を求める可能性もある。
【0100】
本発明を次の実施例によってさらに説明する。実施例では特に断りがなければ全ての部および%は重量に基づく。実施例は本発明を説明するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0101】
実施例1
構造:
【0102】
【化11】

【0103】
の染料化合物の製造
段階1−以下の化合物の製造:
【0104】
【化12】

【0105】
6−アミノ−1−ナフトール−3−スルホン酸(J−酸)(212g)を、ブリリアントイエロー指示薬紙に対してアルカリ性になるまで苛性アルカリ液を加えながら、水(2L)に溶解した。次に、亜硝酸ナトリウム(55.2g)を加え、溶液を氷と塩酸(400ml)との攪拌混合物へ入れた。0〜5℃で1時間攪拌した後、過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることによって分解した。塩化スズ(II)(400g)を反応混合物へ添加した。添加完了後、スラリーを室温で一晩攪拌した。生成物を濾過により単離し、変性エタノール(2×1L)で洗浄し、その後、濾過により再度単離し、乾燥した。ベージュ色の固体226gが得られた。
【0106】
段階2−以下の化合物の製造:
【0107】
【化13】

【0108】
段階1からの生成物(100g)を水(220ml)中で攪拌し、希水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHを3.5に調整した。ジエチルオキサルアセテートナトリウム塩(76g)を加え、攪拌混合物を50〜60℃で6時間加熱した。室温に冷却した後、10%w/v塩化ナトリウムを加え、沈殿した生成物を濾過により単離した。固体をアンモニア溶液(d=0.88、400ml)中で再構成し、24時間攪拌した。その間にTLCはエステルの完全な変換を示した。pHを2に下げ、回収した沈殿をアセトン(2L)で洗浄した。固体を水(500ml)に再溶解し、低導電率に透析した。乾燥後、ベージュ色の固体42.6gを回収した。
【0109】
段階3−以下の化合物の製造:
【0110】
【化14】

【0111】
5−ニトロ−オルタニル酸(11g)を水(200ml)に溶解し、希水酸化リチウムを用いてブリリアントイエロー指示薬紙に対してアルカリ性溶液になるまでpHを調整した。次に、亜硝酸ナトリウム(2.8g)を加え、混合物を塩酸(15ml)と氷との攪拌混合物へ0〜5℃で加えた。さらに30分間攪拌した後、過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることによって分解した。次に、このジアゾニウム塩溶液を、段階2からの生成物(14g)と酢酸ナトリウムの水中の溶液へ加えた。0〜5℃で30分間攪拌した後、混合物を室温に温め、一晩攪拌した。反応の間に沈殿した生成物を濾過により単離し、60℃のオーブンで乾燥した。オレンジ色の固体17.1gが得られた。
【0112】
段階4−以下の化合物の製造:
【0113】
【化15】

【0114】
この中間体は、5−ニトロ−2−アミノベンゼンスルホン酸を5−アセチルアミノ−アミノベンゼンスルホン酸の代わりに用いた以外は、WO2003106572の実施例1、段階(B)に記載のように製造した。
【0115】
段階5−以下の化合物の製造:
【0116】
【化16】

【0117】
段階4からの生成物(6.4g)をN−メチルピロリドン(NMP、100ml)中で攪拌し、亜硝酸ナトリウム(1.2g)、次いで塩酸(10ml)を水(70ml)に含む溶液を加えた。発熱反応が生じて温度は〜40℃に上昇し、初めは均質な溶液が生じ、数分後にジアゾニウム塩が沈殿した。懸濁液を2時間攪拌し、その後、0〜5℃に冷却し、過剰の亜硝酸を、スルファミン酸を加えることによって分解した。
【0118】
段階3からの生成物(8g)を水(100ml)に溶解し、希水酸化リチウム溶液を加えることによってpHを8.5に調整し、0〜5℃に冷却し、そしてpHを8.5に維持しながら、上で製造されたジアゾニウム塩懸濁液をゆっくり加えた。2時間後、反応を室温に温め、一晩攪拌した。反応混合物をアセトン(5L)に入れ、濾過によって固体を回収した。固体を水(300ml)に再溶解し、水酸化リチウム(10g)を加え、さらに2時間攪拌を続けた。TLCは、エステル官能基が完全に加水分解されたことを示した。次に、pHを7.5に調整し、反応混合物をアセトン(2.5L)に入れた。生成物は濾過によって単離し、脱イオン水中で再構成し、低導電率に透析し、その後、60℃で蒸発乾燥した。収量は2.6g、λmax=590nmであった。
【0119】
実施例2〜6
実施例1と同じ方法を繰り返して、表1に示す化合物を得た。
表 1
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
実施例7:インク配合物
インクは、染料が上記実施例からの染料または2種以上の染料混合物である、次の配合物に従って製造しうる:
2−ピロリドン 5部
チオジグリコール 5部
SurfynolTM465 1部(米国、エアー・プロダクツ社から入手)
染料 3部
水 86部
表2および3に記載のさらなるインクを製造することができ、ここで、第1欄に記載の染料は同じ番号の上記実施例で製造された化合物または混合物である。第2欄以後に示す数は関係成分の重量部の数である。インクは、例えば熱または圧電インクジェット印刷によって、紙に塗布しうる。
【0124】
次の略語を表2および3で用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
MEOH=メタノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2、3−ジオール
CET=セチルアンモニウムブロミド
PHO=NaHPO
TBT=t−ブタノール
TDG=チオジグリコール
表 2
【0125】
【表4】

【0126】
表 3
【0127】
【表5】

【0128】
印刷試験および評価
インク1〜3の製造
試験および評価のためのインクは、上記実施例2からの染料3gを、2−ピロリドン 5部;チオジエチレングリコール 5部;SurfynolTM465 1部;および水 89部よりなる液体媒質97mlに溶解し、水酸化ナトリウムでpHを8〜9に調整することによって製造した。インク1は、粘度が25℃で20cP未満;表面張力が25℃で20〜65ダイン/cm;2価および3価金属イオン(式(1)の化合物または他のインク成分に結合した2価および3価金属イオン以外)の合計が500ppm未満;ハロゲン化物イオンの合計が500ppm未満であった。
【0129】
インク2および3は、表4に示す染料を実施例2で入手した染料の代わりに用いる以外は、インク1と同じ方法で製造された。
比較インクC1の製造
比較インクC1は、実施例2で入手した染料の代わりに、WO03/106572の実施例2の方法に従って製造された比較染料D1を用いた以外は、インク1と同じ方法で製造された。
【0130】
表 4
【0131】
【表6】

【0132】
インクジェット印刷および評価
上記のように製造されたインク1〜3および比較インクC1を0.45ミクロンナイロンフィルターに通して濾過し、次に、注入器を使用して空のプリントカートリッジへ加えた。これらのインクをキャノン・プレミアムPR101感光紙(PR101)およびHPプレミアム・プラス感光紙(HPPP)に印刷した。
【0133】
光学濃度測定は、次のパラメーターに設定されたGretagスペクトロリノ分光光度計を使用して、70%印刷濃度で印刷した正方形について行った:
測定配置: 45°/0°
スペクトル範囲: 380〜730nm
スペクトル間隔: 10nm
光源: D65
オブザーバー: 2°(CIE1931)
濃度: Anis A
外部フィラー: なし
プリントは良好な光学濃度を示した。印刷された像の耐光堅牢度は、印刷された像をアトラスCi5000ウェザロメーターで100時間退色させ、そして光学濃度変化を測定することによって調べた。耐光堅牢度試験結果は表5に示す。小さい数字ほど、耐光堅牢度は高い。
【0134】
表 5
【0135】
【表5】

【0136】
表5に示す結果は、本発明によるインク1〜3を用いたプリントが比較インクC1を用いたプリントよりも高い耐光堅牢度を有することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、
AおよびDは、それぞれ独立して、任意に置換されてよいアリールまたは任意に置換されてよいヘテロアリールを表し;
Eは任意に置換されてよいピラゾリルを表し;
Zは、H、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいアルコキシまたは任意に置換されてよいアリールオキシを表し;そして
pは0〜5の整数であり;
ただし、Eが、それに直接結合した式−CONRの任意に置換されてよいカーボンアミド基を有する場合、RおよびRは、それぞれ独立して、H、任意に置換されてよいアルキル、任意に置換されてよいシクロアルキル、または任意に置換されてよいアリールである)
の化合物。
【請求項2】
Eが、式(2a)または(2b)およびそれらの互変異性体:
【化2】

(式中、*1は、ナフチル基に結合する位置を表し、*2はアゾ結合に結合する位置を表す)
から選択されるピラゾリル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Aが、C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OHから選択される2つの基で少なくとも置換されている、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが、少なくとも1つの任意に置換されてよい炭素環式アゾまたは任意に置換されてよい複素環式アゾ基で少なくとも置換されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
pが1または2であり;
ZがHであり;
Aが、(i)C1−4アルコキシおよび−O−(CH1−4−OHから選択される2つの基を有し、そして(ii)少なくとも1つのスルホ、カルボキシおよび/またはホスフェート基を持つ任意に置換されてよいフェニルアゾ基を有する、任意に置換されてよいフェニルであり;
Eが、式(2a)の基であり;そして
Dが、少なくとも1つのスルホ、カルボキシおよび/またはホスファト基を有する任意に置換されてよいフェニルである、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
塩の形の、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
基体に像を印刷する方法であって、基体へ、液体媒質および請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(1)の化合物を含むインク組成物を塗布することを含む方法。
【請求項8】
インク組成物が基体へインクジェット印刷によって塗布される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(1)の化合物 0.01〜30部;および
(b)液体媒質または低融点固体媒質 70〜99.99部
(ここで、全ての部は重量に基づき、(a)+(b)の部の数=100である)
を含むインク組成物。
【請求項10】
像が請求項7に記載の方法によって印刷された基体。
【請求項11】
1つ以上の室およびインク組成物を含み、インク組成物が少なくとも1つの室に存在し、そしてインク組成物が請求項9に記載のようなインク組成物である、任意に最充填可能なインクジェットプリンターカートリッジ。
【請求項12】
少なくともブラックインク、マゼンタインク、シアンインクおよイエローインクを含み、ブラックインクが請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(1)の化合物を含む、インクセット。
【請求項13】
良好な光学濃度、耐光堅牢度、耐湿潤堅牢度、または酸化性ガスの存在下での退色抵抗性をもたらす、請求項1〜6のいずれか一項に記載の式(1)の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−504832(P2009−504832A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525614(P2008−525614)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002863
【国際公開番号】WO2007/017632
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】