説明

施工機械

【課題】施工面に舗装材を均等に供給可能で、且つ舗装材の品質を保持できる施工機械を提供する。
【解決手段】施工機械100は、自走式の車両本体1と、施工方向に対して交差する幅方向に舗装材Pを敷き拡げると共に、敷き拡げられた舗装材Pを敷き均す第1敷き均し装置2と、敷き均された舗装材Pを締め固めるバイブレータ6と、締め固められた舗装材Pを所定の断面に成型するモールド7と、第1敷き均し装置2の上方に配置されたシュート3と、を備える。シュート3は、幅方向で互いに対向して配置され、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜した一対の側方傾斜面部31,31を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリップフォーム工法に用いられる施工機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自走式の施工機械に鋼製型枠(以下、「モールド」という)を取り付け、施工面に投入された舗装材を、施工機械を前進させながらその内部で締め固め成型を行い、同一断面の構造物を連続して構築するスリップフォーム工法が知られている。
そして、当該工法を行う際に用いられる施工機械は多数開発され、実用化に至っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、自走式の車両本体と、搬送装置から施工面に供給された舗装材を左右に敷き拡げると共に、敷き拡げられた舗装材を敷き均す敷き均し装置と、敷き均された舗装材を締め固めるバイブレータと、締め固められた舗装材を所定の断面に成型するモールドと、を備えた施工機械が開示されている。また、搬送装置は、施工面の外方に位置し、ダンプトラックなどの運搬車両から舗装材を受け取るホッパ部と、施工面の内方に位置し、施工面に舗装材を供給する供給部と、ホッパ部から供給部へ舗装材を搬送するベルト部と、を備えている。
【0004】
そして、搬送装置の供給部から施工面に供給された舗装材を、敷き均し装置により左右に敷き拡げ、且つ敷き均すと共に、バイブレータの振動により締め固め、モールドにより所定の断面に成型して、同一断面の構造物を構築している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−11347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の技術では、搬送装置の供給部を、施工面の幅方向の中央部分に位置させて舗装材の供給作業を行うため、施工面の幅方向の中央部分に舗装材が山積みとなっていた。そして、この局所的に堆積した舗装材を、敷き均し装置により前方に押し出しつつバイブレータにより締め固めることから、施工面に配設される鉄筋、メッシュ及び目地材などに局所的に大きな荷重が加わってしまい、これらの部材のズレが生じていた。
【0007】
また、従来の技術では、施工面の幅員に必要な量の舗装材を、施工面の幅方向の中央部分に山積みにするため、ホッパ部の位置よりも供給部の位置を高くする必要があり、舗装材の落下高さが高くなる上、搬送装置の供給部から施工面に舗装材を直接供給することから、舗装材のうち、粒径の大きい材料が落下の衝撃で分離してしまい、舗装材の品質が悪化していた。
【0008】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、施工面に舗装材を均等に供給可能で、且つ舗装材の品質を保持できる施工機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、自走式の車両本体と、施工方向に対して交差する幅方向に舗装材を敷き拡げると共に、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第1敷き均し装置と、敷き均された前記舗装材を締め固めるバイブレータと、締め固められた前記舗装材を所定の断面に成型するモールドと、前記第1敷き均し装置の上方に配置されたシュートと、を備えた施工機械であって、前記シュートは、幅方向で互いに対向して配置され、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜した一対の側方傾斜面部を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1敷き均し装置の上方にシュートが配置され、当該シュートが、幅方向で互いに対向して配置され、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜した一対の側方傾斜面部を有していることにより、搬送装置の供給部を、シュートの上方に配置させて舗装材の供給作業を行うと、舗装材が、一対の側方傾斜面部を伝って幅方向両側に振り分けられることになる。したがって、施工面に舗装材を均等に供給できるため、第1敷き均し装置による敷き均しやバイブレータによる締め固めを行ったときに、施工面に配設される鉄筋などに局所的に大きな荷重が加わるのを回避することが可能となり、これらの部材のズレを抑制できる。
また、舗装材が、一対の側方傾斜面部を伝って幅方向両側に振り分けられるため、施工面の幅方向の中央部分に舗装材を山積みにする従来の技術に比較して、供給部の位置を低くすることが可能となり、舗装材の落下高さを低減できる。更に、搬送装置の供給部を、シュートの上方に配置させて舗装材の供給作業を行うと、舗装材が、シュート及び第1敷き均し装置を経て施工面に落下するため、施工面に舗装材を直接供給する従来の技術に比較して、舗装材の落下高さを低減できる。したがって、舗装材の落下の衝撃を緩和できるため、舗装材のうち、粒径の大きい材料が落下の衝撃で分離するのを抑制することが可能となり、舗装材の品質を保持できる。
【0011】
また、前記一対の側方傾斜面部の上端同士の間には、前記舗装材が通過できる通過部が設けられているように構成するのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、舗装材が、通過部を通過してシュートの下方の施工面にも供給されるため、施工面に舗装材を一層均等に供給できる。
【0013】
また、前記シュートは、幅方向に沿って延在すると共に、前記一対の側方傾斜面部の後端同士を繋ぐ後方傾斜面部を更に有しており、前記後方傾斜面部は、下方に向かうほど施工方向前方に位置するように傾斜しているように構成するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、シュートが、一対の側方傾斜面部の後端同士を繋ぐ後方傾斜面部を有していることにより、搬送装置の供給部から供給される舗装材が、第1敷き均し装置の後方にこぼれ難くなる。また、後方傾斜面部が、下方に向かうほど施工方向前方に位置するように傾斜していることにより、舗装材が、後方傾斜面部を伝って施工方向前方に流下し易くなる。
【0015】
また、前記第1敷き均し装置は、幅方向に沿って延在し、幅方向に前記舗装材を敷き拡げる第1オーガと、前記第1オーガの後方に設けられ、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第1スクリードと、前記第1スクリードの幅方向両端前部に設けられた一対の側方支持部と、前記第1スクリードの幅方向中央前部に設けられた中央支持部と、を有し、前記第1オーガは、幅方向で2分割された一方側オーガ及び他方側オーガからなり、前記一方側オーガは、前記一対の側方支持部のうち、一方の前記側方支持部と前記中央支持部との間に回転自在に軸支される一方側スクリュー軸部と、前記一方側スクリュー軸部の外周面に螺旋状に取り付けられた一方側スクリュー羽根部と、を有し、前記他方側オーガは、前記一対の側方支持部のうち、他方の前記側方支持部と前記中央支持部との間に回転自在に軸支される他方側スクリュー軸部と、前記他方側スクリュー軸部の外周面に螺旋状に取り付けられた他方側スクリュー羽根部と、を有しているように構成するのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、第1オーガが、幅方向で2分割された一方側オーガ及び他方側オーガからなることにより、一方側オーガの一方側スクリュー軸部の回転方向と、他方側オーガの他方側スクリュー軸部の回転方向とを個別に制御できると共に、一方側スクリュー羽根部の形状と、他方側スクリュー羽根部の形状とを個別に設定できる。したがって、施工面の幅方向一方側に舗装材が行き渡りやすいように、一方側スクリュー軸部の回転方向や一方側スクリュー羽根部の形状などを最適化でき、かつ施工面の幅方向他方側に舗装材が行き渡りやすいように、他方側スクリュー軸部の回転方向や他方側スクリュー羽根部の形状などを最適化できるため、舗装材を幅方向両側に確実に敷き拡げることができる。
そして、シュートの側方傾斜面部を伝って幅方向両側に振り分けられた舗装材が、第1オーガの一方側オーガ及び他方側オーガにより車幅方向両側に敷き広げられるため、施工面に舗装材をより一層均等に供給できる。
【0017】
また、前記シュートの前記側方傾斜面部は、前記中央支持部上に配置されており、前記中央支持部には、前記シュートの前記通過部に対して上下に対応する位置に上下方向に沿って貫通する貫通部が形成されているように構成するのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、中央支持部には、シュートの通過部に対して上下に対応する位置に上下方向に沿って貫通する貫通部が形成されていることにより、シュートの側方傾斜面部を中央支持部上に配置したとしても、舗装材が、シュートの通過部及び中央支持部の貫通部を通過して、中央支持部の下方の施工面にも供給されるため、施工面に舗装材を一層均等に供給できる。また、第1スクリードの幅方向中央前部に設けられた中央支持部上に、シュートを配置することにより、施工面の幅方向一方側への舗装材の供給量と、施工面の幅方向他方側への舗装材の供給量とを均等にできる。
【0019】
また、上端側が前記車両本体に取り付けられると共に、下端側が前記第1敷き均し装置に取り付けられ、前記車両本体に対して前記第1敷き均し装置を上下に移動させる移動装置を更に備えるように構成するのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、移動装置で第1敷き均し装置を上下方向に沿って移動させることにより、第1敷き均し装置の上下位置を調節できるため、舗装材の敷き均し面の高さを自由に設定できる。
【0021】
また、前記第1敷き均し装置に対して後方に離間して配置され、幅方向に前記舗装材を敷き拡げると共に、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第2敷き均し装置を更に備えるように構成するのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、第1敷き均し装置による舗装材の敷き均しと、第2敷き均し装置による舗装材の敷き均しの合計2回、舗装材の敷き均し作業を行うため、単一の敷き均し装置を備える構造に比較して、幅方向両側に舗装材を確実に敷き拡げ、且つ敷き均すことができると共に、各敷き均し装置に加わる負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、施工面に舗装材を均等に供給可能で、且つ舗装材の品質を保持できる施工機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る施工機械を示す斜視図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る施工機械を示す平面図であり、(b)は、実施形態に係る施工機械を示す側面図である。
【図3】図1の部分拡大斜視図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】実施形態に係る施工機械を使用して構造物を構築する工程を示す側面図である。
【図6】シュートの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。なお、方向については、施工機械の前後(施工方向)、左右(幅方向)、上下を基準として説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る施工機械100を示す斜視図である。図2(a)は、実施形態に係る施工機械100を示す平面図であり、(b)は、実施形態に係る施工機械100を示す側面図である。
施工機械100は、図1及び図2に示すように、車両本体1と、第1敷き均し装置2と、シュート3と、移動装置4と、第2敷き均し装置5と、バイブレータ6と、モールド7と、搬送装置8と、を主に備えて構成されている。なお、施工面Sには、図示しない鉄筋、メッシュ及び目地材などが配設されている。
【0027】
車両本体1は、フレーム10と、前後左右に離間して配置された4つのクローラ走行体12,12…と、フレーム10上に配置された操縦台14(図2(b)参照)と、を有している。なお、操縦台14には、クローラ走行体12を駆動するためのエンジン(図示省略)や第1敷き均し装置2などを制御する制御装置(図示省略)などが設置されている。
【0028】
フレーム10は、図1に示すように、施工機械100の骨組み部材となる金属製部材であり、一対の第1フレーム10a,10aと、一対の第2フレーム10b,10bと、一対の第3フレーム10c,10cと、第4フレーム10dと、を有している。
【0029】
一対の第1フレーム10a,10aは、幅方向に互いに離間して配置された中空四角柱状の部材である。第1フレーム10aは、前後方向に沿って延在しており、その両端が、クローラ走行体12に取り付けられた略円柱状の支柱部材10eに連結されている。
【0030】
一対の第2フレーム10b,10bは、前後方向に互いに離間して配置された中空四角柱状の部材である。第2フレーム10bは、幅方向に沿って延在しており、第1フレーム10a,10aの間に配置されている。
【0031】
一対の第3フレーム10c,10cは、第1フレーム10aの幅方向内側であって、幅方向に互いに離間して配置された中空四角柱状の部材である。第3フレーム10cは、前後方向に沿って延在しており、その両端側が、第2フレーム10bに連結されている。第3フレーム10cは、第2フレーム10bの下方に配置されている。
【0032】
第4フレーム10dは、図2(a)に示すように、搬送装置8を支持するための部材である。第4フレーム10dは、前後方向に沿って延在しており、その後端及び中間部が第2フレーム10bに連結されると共に、前端が搬送装置8に連結されている。
【0033】
図3は、図1の部分拡大斜視図である。
第1敷き均し装置2は、シュート3を介して搬送装置8から供給された舗装材P(図5参照)を、幅方向に敷き拡げると共に、敷き拡げられた舗装材Pを敷き均すための荒均し用の装置である。
第1敷き均し装置2は、図3に示すように、第1スクリード20と、一対の側方支持部22a,22bと、中央支持部24と、第1オーガ26と、を有している。
【0034】
第1スクリード20は、幅方向に沿って延在し、第1オーガ26により敷き拡げられた舗装材Pを敷き均す中空四角柱状の金属製部材である。第1スクリード20は、図2(b)に示すように、施工面Sに対して上方に離間して配置されており、下面が水平面に形成されている。第1スクリード20の両端側内部には、図3に示すように、第1オーガ26を回転させるための一対の駆動部20a,20aが配置されている。駆動部20aは、例えば油圧モータなどで構成されており、駆動部20aの出力軸20bには、主動側スプロケット20cが取り付けられている。
【0035】
一対の側方支持部22a,22bは、第1オーガ26を回転自在に支持する箱状の金属製部材である。側方支持部22a,22bは、幅方向に互いに離間して配置されており、第1スクリード20の幅方向両端前部に設けられている。側方支持部22a,22bの後端は、第1スクリード20の両端前部と連通している。
【0036】
中央支持部24は、側方支持部22a,22bと共に、第1オーガ26を回転自在に支持する正面視下向きコ字状の金属製部材である。中央支持部24は、第1スクリード20の幅方向中央部に設けられる部材であって、幅方向に互いに離間して配置され、上下方向に沿って延在する一対の側壁部24a,24bと、側壁部24a,24bの上端同士を繋ぐ上壁部24cと、を有している。上壁部24cには、上下方向に沿って貫通する矩形状の貫通部24dが形成されている。なお、貫通部24dの形状は、適宜変更してよい。
【0037】
第1オーガ26は、幅方向に沿って延在して、搬送装置8からシュート3を介して供給された舗装材Pを、左右に敷き拡げる金属製部材である。
第1オーガ26は、幅方向で2分割されており、一方側オーガ26aと、他方側オーガ26bと、の2部材で構成されている。一方側オーガ26a及び他方側オーガ26bは、シュート3の側方傾斜面部31の左右両側に配置されており、夫々独立して回転制御が可能なように構成されている。
【0038】
一方側オーガ26aは、施工面Sのうち、幅方向一方側の部分に、舗装材Pを敷き拡げる部材である。
一方側オーガ26aは、一方側スクリュー軸部26cと、一方側スクリュー羽根部26dと、を有している。
【0039】
一方側スクリュー軸部26cは、円柱状を呈しており、その両端が、側方支持部22aと中央支持部24の側壁部24aとに回転自在に軸支されている。一方側スクリュー軸部26cの一端には、従動側スプロケット26eが取り付けられている。一方側スクリュー羽根部26dは、円環状を呈する複数の連結部材26i,26iを介して、一方側スクリュー軸部26cの外周面に螺旋状に取り付けられている。
【0040】
他方側オーガ26bは、施工面Sのうち、幅方向他方側の部分に、舗装材Pを敷き拡げる部材である。
他方側オーガ26bは、他方側スクリュー軸部26fと、他方側スクリュー羽根部26gと、を有している。
【0041】
他方側スクリュー軸部26fは、円柱状を呈しており、その両端が、側方支持部22bと中央支持部24の側壁部24bとに回転自在に軸支されている。他方側スクリュー軸部26fは、一方側スクリュー軸部26cと同軸状に設けられており、その一端には、従動側スプロケット26hが取り付けられている。他方側スクリュー羽根部26gは、円環状を呈する複数の連結部材26j,26jを介して、他方側スクリュー軸部26fの外周面に螺旋状に取り付けられている。一方側スクリュー羽根部26dと他方側スクリュー羽根部26gは、左右対称形状を呈している。
【0042】
図4は、図3のX−X線断面図である。なお、一方側オーガ26aと他方側オーガ26bは、左右対称となっているため、以下の説明においては一方側オーガ26aと駆動部20aとの関係のみを説明し、他方側オーガ26bと駆動部20aとの関係の説明は省略する。
図4に示すように、主動側スプロケット20cと、従動側スプロケット26eには、駆動チェーン28が巻き掛けられている。これにより、駆動部20aの回転が、駆動チェーン28を介して、一方側スクリュー軸部26cに伝達されることとなる。駆動チェーン28は、第1スクリード20と側方支持部22aとに跨って配置されている。
【0043】
図1に戻り、シュート3は、搬送装置8から供給される舗装材Pを、幅方向両側に振り分けるための金属製部材である。シュート3は、第1敷き均し装置2の上方であって、施工面Sの幅方向中央に配置されている。
シュート3は、図3に示すように、一対の側方傾斜面部31,31と、後方傾斜面部32と、一対のリブ33,33と、を有している。
【0044】
一対の側方傾斜面部31,31は、前後方向に沿って延在する板状の部分である。側方傾斜面部31,31は、幅方向で対向して配置されており、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜している。換言すると、側方傾斜面部31,31は、上方から下方に向かうにつれて互いに離間するように傾斜している。側方傾斜面部31,31の上端同士の間には、所定の間隙を有する通過部31aが形成されており、この通過部31aは、中央支持部24の貫通部24dに上下に対応する位置に設けられている。これにより、搬送装置8から供給される舗装材Pが、通過部31a及び貫通部24dを通過して、施工面Sの幅方向の中央部分に供給されるようになっている。側方傾斜面部31は、中央支持部24上に配置されており、下端が中央支持部24の側壁部24a,24bの上面(貫通部24dの開口縁)に溶接により固定されている。側方傾斜面部31は、後端が後方傾斜面部32の前端に溶接により固定されている。
【0045】
後方傾斜面部32は、幅方向に沿って延在して、側方傾斜面部31,31の後端同士を繋ぐ板状の部分である。これにより、搬送装置8から供給された舗装材Pが後方にこぼれ難くなっている。後方傾斜面部32は、下方に向かうほど施工方向前方に位置するように傾斜しており、搬送装置8から供給された舗装材Pが前方に(第1オーガ26に)流下し易くなっている。後方傾斜面部32は、第1スクリード20の上方に配置されており、両端が側方傾斜面部31よりも幅方向外方に突出している。
【0046】
一対のリブ33,33は、後方傾斜面部32を補強支持するための板状の部分である。リブ33,33は、図2(b)及び図3に示すように、幅方向に互いに離間しており、後方傾斜面部32の後端及び第1スクリード20の上端に跨るように配置されている。リブ33は、前端が後方傾斜面部32の後端に溶接により固定されると共に、下端が第1スクリード20の上端に溶接により固定されている。
【0047】
移動装置4,4は、図3に示すように、車両本体1に対して第1敷き均し装置2を上下に移動させる装置であり、幅方向に互いに離間して配置されている。
移動装置4は、外筒部材41と、内筒部材42と、油圧シリンダ43と、を有している。
【0048】
外筒部材41は、後端が第3フレーム10cの前端にボルトなどの締結部材(図示省略)で固定される四角筒状の部材である。
内筒部材42は、外筒部材41よりも寸法が小さい四角筒状の部材である。内筒部材42は、外筒部材41内にスライド自在に挿入されており、下端が第1スクリード20にボルトなどの締結部材で固定されている。
【0049】
油圧シリンダ43は、公知の油圧シリンダの中から適宜選択して用いられるものであり、外筒部材41の外面に固定されたシリンダ43aと、下端が第1スクリード20の上端に固定され、シリンダ43aに対して上下方向に進退可能なシリンダロッド43bと、から主に構成されている。シリンダ43aは、油圧ホース(図示省略)を介して油圧ポンプ(図示省略)に接続されている。
【0050】
図1に戻り、第2敷き均し装置5は、第1敷き均し装置2に対して後方に離間して配置されており、第1敷き均し装置2により敷き均された舗装材Pを、左右に敷き拡げると共に、敷き拡げられた舗装材Pを敷き均すための本均し用の装置である。すなわち、本実施形態では、第1敷き均し装置2による敷き均し(荒均し)と、第2敷き均し装置5による敷き均し(本均し)の合計2回の敷き均しが可能なように構成されている。
第2敷き均し装置5は、第2スクリード50と、第2オーガ52と、を有している。
【0051】
第2スクリード50は、幅方向に沿って延在し、第2オーガ52により敷き拡げられた舗装材Pを敷き均す中空四角柱状の金属製部材である。第2スクリード50は、図2(b)に示すように、施工面Sに対して上方に離間して配置されており、下面が水平面に形成されている。第2スクリード50の一端側内部には、第2オーガ52を回転させるための単一の駆動部(図示省略)が配置されている。駆動部は、例えば油圧モータなどで構成されており、駆動部の出力軸には、主動側スプロケット(図示省略)が取り付けられている。
【0052】
第2オーガ52は、図1に示すように、幅方向に沿って延在して、舗装材Pを左右に敷き拡げる金属製部材である。
第2オーガ52は、第2スクリュー軸部52aと、第2スクリュー羽根部52bと、を有している。
【0053】
第2スクリュー軸部52aは、円柱状を呈しており、その両端が、モールド7,7の内側面に設けられた支持部52d,52dに回転自在に軸支されている。第2スクリュー軸部52aの一端には、従動側スプロケット(図示省略)が取り付けられている。第2スクリュー羽根部52bは、円環状を呈する複数の連結部材52c,52cを介して、第2スクリュー軸部52aの外周面に螺旋状に取り付けられている。なお、第1敷き均し装置2と同様に、主動側スプロケットと、従動側スプロケットには、駆動チェーン(図示省略)が巻き掛けられている。これにより、駆動部の回転が、駆動チェーンを介して、第2スクリュー軸部52aに伝達されることとなる。
【0054】
バイブレータ6は、公知のバイブレータの中から適宜選択して用いられるものであり、振動により舗装材Pを締め固める装置である。バイブレータ6は、図2(b)に示すように、上端側が車両本体1の操縦台14に取り付けられると共に、下端側がモールド7,7間に介設される円柱状の支持部材61に取り付けられている。バイブレータ6は、図2(a)に示すように、第2敷き均し装置5の前方近傍(直前)であって、幅方向に間隔を空けて複数設けられている。本実施形態では、第2敷き均し装置5による本均しと同時に、バイブレータ6による締め固めを行うように構成されている。
【0055】
図1に戻り、モールド7は、公知のモールドの中から適宜選択して用いられるものであり、バイブレータ6により締め固められた舗装材Pを、所定の断面に成型する(構造物の幅を規定する)部材である。モールド7は、前後方向に沿って延在する板状の金属製部材である。モールド7は、上端が第2フレーム10bに連結されており、幅方向に互いに離間して配置されている。
【0056】
搬送装置8は、ダンプトラックなどの運搬車V(図5参照)から施工面Sに舗装材Pを搬送(供給)するための装置である。搬送装置8は、図3に示すように、第4フレーム10dに対して水平方向に回転可能に連結されている。搬送装置8は、当該搬送装置8の骨格部材となるフレーム81と、フレーム81の一端部に設けられ、運搬車Vから舗装材Pを受け取るホッパ部(図示省略)と、他端部に設けられ、舗装材Pをシュート3に供給するための開口である供給口82と、供給口82からシュート3へ供給される舗装材Pを案内するゴム製の円筒体からなる案内部83と、ホッパ部から供給口82へ舗装材Pを搬送するベルト部84と、を有している。
【0057】
本発明の実施形態に係る施工機械100は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図1乃至図5を適宜参照しつつ、本実施形態に係る施工機械100を使用して、構造物を構築する方法について説明する。なお、図5は、実施形態に係る施工機械100を使用して構造物を構築する工程を示す側面図である。
【0058】
はじめに、施工面Sの外側方に配置した運搬車Vから搬送装置8のホッパ部へ舗装材Pを供給する。
続いて、搬送装置8のベルト部84によってホッパ部から供給口82へ舗装材Pを搬送して、供給口82からシュート3の側方傾斜面部31に供給する。このとき、舗装材Pが、側方傾斜面部31を伝って左右に振り分けられる。
【0059】
続いて、搬送装置8からの舗装材Pの供給と同時に、施工機械100を前進させて、運搬車Vと共に走行させる。
【0060】
続いて、施工機械100を前進させながら、第1敷き均し装置2の第1オーガ26によってシュート3の側方傾斜面部31を伝って流下してきた舗装材Pを、施工面Sの幅方向両側に敷き拡げると共に、第1スクリード20によって敷き拡げられた舗装材Pを敷き均す。なお、移動装置4で第1敷き均し装置2を上下方向に沿って移動させ、舗装材Pが所望の高さとなるように第1敷き均し装置2の上下位置を予め調節しておく。
【0061】
続いて、第2敷き均し装置5の第2オーガ52によって舗装材Pを幅方向両側に敷き拡げると共に、第2スクリード50によって敷き拡げられた舗装材Pを敷き均すと同時に、バイブレータ6によって舗装材Pを締め固める。
そして、モールド7によって締め固められた舗装材Pを所定の断面に成型すると、同一断面の構造物が構築される。
【0062】
以上説明した本実施形態によれば、第1敷き均し装置2の上方に配置されたシュート3は、幅方向で互いに対向して配置され、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜した一対の側方傾斜面部31,31を有していることにより、搬送装置8の供給口82を、シュート3の上方に配置させて舗装材Pの供給作業を行うと、舗装材Pが、一対の側方傾斜面部31,31を伝って幅方向両側に振り分けられることになる。
したがって、施工面Sに舗装材Pを均等に供給できるため、第1敷き均し装置2による敷き均しやバイブレータ6による締め固めを行ったときに、施工面Sに配設される鉄筋などに局所的に大きな荷重が加わるのを回避することが可能となり、これらの部材のズレを抑制できる。
【0063】
特に、本実施形態では、シュート3の側方傾斜面部31を伝って幅方向両側に振り分けられた舗装材Pは、第1敷き均し装置2の第1オーガ26により車幅方向両側に敷き広げられるため、施工面Sに舗装材Pを一層均等に供給できる。
また、舗装材Pは、シュート3の通過部31a及び中央支持部24の貫通部24dを通過して、施工面Sの幅方向の中央部分にも供給されるため、施工面Sに舗装材Pをより一層均等に供給できる。
更に、シュート3は、施工面Sの幅方向中央に配置されていることにより、幅方向一方側への舗装材Pの供給量と、幅方向他方側への舗装材Pの供給量とを均等にできる。
【0064】
また、シュート3は、側方傾斜面部31,31の後端同士を繋ぐ後方傾斜面部32を有していることにより、搬送装置8の供給口82から供給される舗装材Pが、第1敷き均し装置2の後方にこぼれ難くなる。
また、後方傾斜面部32は、下方に向かうほど施工方向前方に位置するように傾斜していることにより、舗装材Pが、後方傾斜面部32を伝って施工方向前方に流下し易くなる。
【0065】
また、第1オーガ26は、幅方向で2分割された一方側オーガ26a及び他方側オーガ26bからなることにより、一方側スクリュー軸部26cの回転方向と、他方側スクリュー軸部26fの回転方向とを個別に制御できると共に、一方側スクリュー羽根部26dの形状と、他方側スクリュー羽根部26gの形状とを個別に設定できる。
したがって、施工面Sの幅方向一方側の部分に、舗装材Pが行き渡りやすいように、一方側スクリュー軸部26cの回転方向や一方側スクリュー羽根部26dの形状などを最適化でき、かつ施工面Sの幅方向他方側の部分に、舗装材Pが行き渡りやすいように、他方側スクリュー軸部26fの回転方向や他方側スクリュー羽根部26gの形状などを最適化できるため、舗装材Pを幅方向両側に確実に敷き拡げることができる。
【0066】
また、第1敷き均し装置2による舗装材Pの敷き均しと、第2敷き均し装置5による舗装材Pの敷き均しの合計2回、舗装材Pの敷き均し作業を行うため、単一の敷き均し装置を備える構造に比較して、幅方向両側に舗装材Pを確実に敷き拡げ、且つ敷き均すことができると共に、第1敷き均し装置2及び第2敷き均し装置5に加わる負荷を軽減できる。
【0067】
また、舗装材Pは、側方傾斜面部31,31を伝って幅方向両側に振り分けられるため、施工面Sの幅方向の中央部分に舗装材Pを山積みにする従来の技術に比較して、供給口82の位置を低くすることが可能となり、舗装材Pの落下高さを低減できる。
更に、搬送装置8の供給口82を、シュート3の上方に配置させて舗装材Pの供給作業を行うと、舗装材Pは、シュート3及び第1敷き均し装置2を経て施工面Sに落下するため、施工面Sに舗装材Pを直接供給する従来の技術に比較して、舗装材Pの落下高さを低減できる。
したがって、舗装材Pの落下の衝撃を緩和できるため、舗装材Pのうち、粒径の大きい材料が落下の衝撃で分離するのを抑制することが可能となり、舗装材Pの品質を保持できる。
【0068】
また、移動装置4で第1敷き均し装置2を上下方向に沿って移動させることにより、第1敷き均し装置2の上下位置を調節できるため、舗装材Pの敷き均し面の高さを自由に設定できる。
【0069】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0070】
例えば、図6に示すように、シュート3は、側方傾斜面部31,31の上端同士を繋ぐ上壁部34を更に有し、この上壁部34に上下方向に沿って貫通する矩形状の開口部34aを形成してもよい。シュート3が上壁部34を有することにより、側方傾斜面部31の剛性が高まり、舗装材Pの落下時の衝撃荷重による側方傾斜面部31の変形を抑制できる。なお、通過部たる開口部34aの形状は、適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0071】
100 施工機械
1 車両本体
2 第1敷き均し装置
20 第1スクリード
22a,22b 側方支持部
24 中央支持部
24d 貫通部
26 第1オーガ
26a 一方側オーガ
26b 他方側オーガ
26c 一方側スクリュー軸部
26d 一方側スクリュー羽根部
26f 他方側スクリュー軸部
26g 他方側スクリュー羽根部
3 シュート
31 側方傾斜面部
31a 通過部
32 後方傾斜面部
33 リブ
34 上壁部
34a 開口部(通過部)
4 移動装置
5 第2敷き均し装置
50 第2スクリード
52 第2オーガ
6 バイブレータ
7 モールド
8 搬送装置
82 供給口
84 ベルト部
S 施工面
P 舗装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式の車両本体と、
施工方向に対して交差する幅方向に舗装材を敷き拡げると共に、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第1敷き均し装置と、
敷き均された前記舗装材を締め固めるバイブレータと、
締め固められた前記舗装材を所定の断面に成型するモールドと、
前記第1敷き均し装置の上方に配置されたシュートと、
を備えた施工機械であって、
前記シュートは、幅方向で互いに対向して配置され、下方に向かうほど幅方向外方に位置するように傾斜した一対の側方傾斜面部を有していることを特徴とする施工機械。
【請求項2】
前記一対の側方傾斜面部の上端同士の間には、前記舗装材が通過できる通過部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の施工機械。
【請求項3】
前記シュートは、幅方向に沿って延在すると共に、前記一対の側方傾斜面部の後端同士を繋ぐ後方傾斜面部を更に有しており、
前記後方傾斜面部は、下方に向かうほど施工方向前方に位置するように傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の施工機械。
【請求項4】
前記第1敷き均し装置は、
幅方向に沿って延在し、幅方向に前記舗装材を敷き拡げる第1オーガと、
前記第1オーガの後方に設けられ、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第1スクリードと、
前記第1スクリードの幅方向両端前部に設けられた一対の側方支持部と、
前記第1スクリードの幅方向中央前部に設けられた中央支持部と、
を有し、
前記第1オーガは、幅方向で2分割された一方側オーガ及び他方側オーガからなり、
前記一方側オーガは、
前記一対の側方支持部のうち、一方の前記側方支持部と前記中央支持部との間に回転自在に軸支される一方側スクリュー軸部と、
前記一方側スクリュー軸部の外周面に螺旋状に取り付けられた一方側スクリュー羽根部と、
を有し、
前記他方側オーガは、
前記一対の側方支持部のうち、他方の前記側方支持部と前記中央支持部との間に回転自在に軸支される他方側スクリュー軸部と、
前記他方側スクリュー軸部の外周面に螺旋状に取り付けられた他方側スクリュー羽根部と、
を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の施工機械。
【請求項5】
前記シュートの前記側方傾斜面部は、前記中央支持部上に配置されており、
前記中央支持部には、前記シュートの前記通過部に対して上下に対応する位置に上下方向に沿って貫通する貫通部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の施工機械。
【請求項6】
上端側が前記車両本体に取り付けられると共に、下端側が前記第1敷き均し装置に取り付けられ、前記車両本体に対して前記第1敷き均し装置を上下に移動させる移動装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の施工機械。
【請求項7】
前記第1敷き均し装置に対して後方に離間して配置され、幅方向に前記舗装材を敷き拡げると共に、敷き拡げられた前記舗装材を敷き均す第2敷き均し装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の施工機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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