説明

施療装置

【課題】 足裏の土踏まずを含むその近傍に適正な指圧を施し得る施療装置を提供する。
【解決手段】 施療装置は、被施療部を受け入れる凹溝が形成されたハウジングに組み込まれる施療子28を有する。施療子28は、凹溝内で該凹溝の長手方向に沿って移動可能でありかつ凹溝の底面からの突出量が制御可能である。凹溝の底面上に該凹溝の長手方向に沿って載せられた足裏への施療のために施療子28が凹溝の長手方向に移動するとき、足裏の土踏で施療子28の突出量が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッサージに用いられる施療装置に関し、特に、足裏の施療に好適な施療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の施療装置では、施療部に一般的に空気袋が用いられており、この空気袋の膨張および収縮の反復によってマッサージが行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、特許文献1に記載の施療装置では、被施療部を受け入れる凹溝の底面に設けられた施療子の動作によって、凹溝の底面に載せた足裏の土踏まずの部位を指圧施療することができる。
【特許文献1】特開2002−336319号公報(段落0047、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、土踏まずを指圧施療する場合、足裏の土踏まずは足裏の他の面よりも窪んでいるにも拘わらず、足裏をその長手方向に沿って受け入れる凹溝の底面に設けられた施療子の前記溝底面からの突出量は、この凹溝の伸長方向に沿った足裏の長手方向で変化することはない。そのため、施療子の突出量を土踏まずに適切な値に設定すると、足裏の土踏まずから外れた土踏まず以外の部位に過大な指圧力が作用することがあり、他方、突出量が少ないと、土踏まずに適正な指圧を施すことはできないことがある。そのため、土踏まずを適正に指圧できる施療装置が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、土踏まずに適正な指圧を施し得る施療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被施療部である足を載せる足載置部が上面に設けられたハウジングに組み込まれ、前記足載置部の前後方向に沿って移動可能でありかつ前記足載置部からの突出量が制御可能の施療子を有し、該施療子で足裏を施療する施療装置であって、足裏の土踏まずに対応した位置では他の位置より前記施療子の突出量を増大させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る施療装置によれば、足載置部の前後方向へ沿うように、該足載置部上に載せられた足裏のマッサージのために施療子が前記足載置部の前後方向に移動するとき、足裏の土踏まずに対応した位置では他の位置より施療子の突出量が増大することから、土踏まず以外の領域で過剰な押圧力を足裏に与えることなく、足裏の窪み部分である土踏まずに適正な押圧力で指圧を施すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の特徴を図示の実施例に沿って詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明に係る施療装置10を示し、仮想線で示されるように、足裏のマッサージに用いることができる。施療装置10は、矩形のベース11aおよび該ベースに嵌合されるハウジング本体11bから成るハウジング11を備える。ハウジング本体11bには、その上面に開放する一対の凹溝12が形成されている。各凹溝12は、図示の例ではU字状の横断面形状を有し、その両端で、ハウジング11の前端および後端にそれぞれに開放する。各凹溝12は、前記した足裏、腕或いはふくらはぎを受け入れるに十分な深さ寸法および幅寸法を有する。
【0010】
ハウジング本体11bの各凹溝12の底面12aには、凹溝12の長手方向に沿って施療子ユニット13の移動を許すスリット14がハウジング11の前後方向に形成されている。また、各凹溝12の両側面12bには、空気の供給を受ける空気袋15がそれぞれ保持されている。
【0011】
内部構造の説明のために、図1にはカバーが省略されているが、ハウジング本体11bおよびベース11aから成るハウジング11の外面を覆う従来よく知られた布製カバーが装着される。このカバーは、各凹溝12の底面12aに配置された施療子ユニット13の後述する作動および各凹溝12の両側面12bに配置された空気袋15の後述する膨張を許すように、弛みを以て、ハウジング11と共に施療子ユニット13および空気袋15を覆う。
【0012】
ベース11a上には、図2に示すように、ベース11aの中央部で凹溝12(図1参照)の長手方向に沿って配置されたスクリューシャフト16が一対の軸受17を介して回転可能に支持されている。ベース11a上には電気モータ18が配置されている。電気モータ18の出力軸にはピニオンギヤ19が固定され、該ピニオンギヤにはスクリューシャフト16に固定された従動ギヤ20が噛合する。従って、電気モータ18の駆動により、その駆動方向に応じてスクリューシャフト16が時計回りおよび反時計回りに回転する。
【0013】
スクリューシャフト16の両側には、各凹溝12のスリット14(図1参照)に対応して各スリット14に平行に伸びるガイドロッド21がそれぞれ軸受22で固定的に支持されている。相互に平行なスクリューシャフト16および一対のガイドロッド21上を横切って、スライダ23が配置されている。スライダ23の下面の中央部には、スクリューシャフト16のねじ溝に螺合する雌ねじ部24が設けられており、またスライダ23の下面の両側部には、ガイドロッド21に嵌合する軸受部25が設けられている。
【0014】
従って、電気モータ18が作動すると、スクリューシャフト16に螺合する雌ねじ部24の運動変換機能と、ガイドロッド21に嵌合する軸受部25の案内作用とにより、スクリューシャフト16の回転方向に応じて、スライダ23がハウジング本体11b内の凹溝12の下方で、該凹溝の底面12aに形成されたスリット14の伸長方向に沿って往復運動する。
【0015】
電気モータ18の作動制御のために、該電気モータには、その回転状態を検出するエンコーダ26が設けられている。エンコーダ26は、例えば、電気モータ18の前記回転軸に固定された円形スリット板26aと、該円形スリット板に関連して設けられるフォトカプラ26bとで構成することができる。フォトカプラ26bは、図示しないが従来よく知られているように、円形スリット板26aの両側に相互に対向して配置される発光ダイオードのような発光素子と、フォトダイオードのような受光素子とからなり、前記受光素子が前記発光素子からの照射光を円形スリット板26aのスリットを通して断続的に受光する。エンコーダ26は、前記受光素子が受光する電気モータ18の回転に応じた断続的な受光信号を電気モータ18の回転情報として出力する。
【0016】
電気モータ18の駆動によってスリット14に沿って往復運動するスライダ23上には、各スリット14に対応して前記施療子ユニット13が固定されている。
【0017】
各施療子ユニット13は、図3(a)〜図3(b)に示すように、下端が閉鎖され、上端が開放する円筒状のケーシング27と、先端をケーシング27の開放端に設けられた環状案内部27aから突出させてケーシング27内に摺動可能に収容されたもみ玉から成る施療子28と、ケーシング27内で施療子28とケーシング27の閉鎖端27bとの間に配置された蛇腹構造を有する一対の空気袋29a、29bとを有する。両空気袋29a、29bは、施療子28とケーシング27の閉鎖端27bとの間で相互に重ね合わせて多段に配置されており、それぞれが空気の供給を受ける。
【0018】
図3(a)は、両空気袋29a、29bに空気が供給されていない状態を示す。図3(b)は、一方の空気袋29aに空気が供給された状態を示し、図3(c)は両空気袋29a、29bに空気が供給された状態を示す。
【0019】
空気袋29a、29bが共に収縮状態にある場合、施療子28が図3(a)に示す最小突出位置に保持される。この最小突出位置では、施療子28の先端は凹溝12の底面12aから突出することはない。一方の空気袋29aが空気の供給を受けて膨張した図3(b)に示す状態では、一方の空気袋29aの膨張によって施療子28はその先端が凹溝12内に突出する中間位置に保持される。また、両空気袋29a、29bが空気の供給を受けて膨張した図3(c)に示す状態では、施療子28はその先端が凹溝12内に大きく突出する最大突出位置に保持される。
【0020】
図4は、本発明に係る施療装置10の動作機構のブロック図を示す。施療装置10は、凹溝12の両側面12bに設けられた前記空気袋15および施療子ユニット13の空気袋29a、29bに空気を供給するための空気ポンプ30を備え、該空気ポンプから分岐配管31が各空気袋15、29a、29bに向けて伸びる。
【0021】
分岐配管31には、各空気袋15への空気の供給を断続するために管路の連通を断続する開閉バルブ32が設けられている。また分岐配管31には、各空気袋29aへの空気の供給を断続するために管路の連通を断続する開閉バルブ33aと、各空気袋29bへの空気の供給を断続するために管路の連通を断続する開閉バルブ33bとが設けられている。
【0022】
また、分岐配管31には、空気袋15と開閉バルブ32との間で各空気袋15を大気開放させるためのリリーフバルブ34が設けられている。また、分岐配管31には、空気袋29aと開閉バルブ33aとの間で各空気袋29aを大気開放させるためのリリーフバルブ35aおよび空気袋29bと開閉バルブ33bとの間で各空気袋29bを大気開放させるためのリリーフバルブ35bがそれぞれ設けられている。
【0023】
開閉バルブ32、33a、33bおよびリリーフバルブ34、35a、35bは、回転検出機構であるエンコーダ26からの出力信号および操作部36からの操作信号等を受ける制御部37からの制御信号に基づいて、開閉制御を受ける。
【0024】
すなわち、操作部36の操作に応じて制御部37がリリーフバルブ34を閉鎖位置に保持し、空気袋15のための開閉バルブ32を開放位置に作動させると、この空気袋15に空気が導入されることにより、各空気袋15が膨張する。図1に示すように凹溝12の底面12aに足裏が載せられた状態で空気袋15が膨張すると、この空気袋15の膨張によって施療部である足が適正に凹溝12内に保持される。また、開閉バルブ32が閉鎖位置に作動され、リリーフバルブ34が開放位置に作動されると、空気袋15が収縮し、この空気袋15の収縮動作によって施療部である足が凹溝12から解放される。
【0025】
また、操作部36の操作およびエンコーダ26からの出力信号に基づいて制御部37が各空気袋29a、29bのためのリリーフバルブ35a、35bを開放位置に保持し、空気袋29a、29bのための開閉バルブ33a、33bを閉鎖位置に保持すると、両空気袋29a、29bは図3(a)に示した収縮状態に保持され、各施療子ユニット13の施療子28が前記した最小突出位置に保持される。
【0026】
また、両リリーフバルブ35a、35bのうちの一方のリリーフバルブ35aが閉鎖位置に作動され、両開閉バルブ33a、33bのうちの一方の開閉バルブ33aが開放位置に作動されると、図3(b)に示したように、一方の空気袋29aが膨張し、施療子28が前記した中間位置に保持される。
【0027】
さらに、両リリーフバルブ35a、35bが閉鎖位置に作動され、両開閉バルブ33a、33bが開放位置に作動されると、図3(c)に示したように、両空気袋29a、29bが膨張し、施療子28が前記した最大突出位置に保持される。
【0028】
制御部37は、また、エンコーダ26からの検出信号をスライダ23の移動方向に沿った位置信号として受け、この位置信号と操作部36からの操作信号に基づいてスライダ23を往復運動させ、このスライダ23の往復運動と一体的に該スライダに固定された各施療子ユニット13が各凹溝12のスリット14に沿って往復運動する。
【0029】
本発明に係る施療装置10では、制御部37は、施療子ユニット13がスリット14に沿って往復運動するとき、往復経路の両端では各施療子ユニット13の施療子28が図3(a)に示した最小突出位置に保持され、図3(b)に示した中間位置を経て、土踏まずが位置するスリット14のほぼ中央部で施療子28が図3(c)に示した最大突出位置に保持されるように、開閉バルブ33a、33bおよびリリーフバルブ35bの動作を制御する。
【0030】
この制御部37による施療子28の突出位置の制御は、制御部37に設けられたメモリー37aに格納されたデータに基づいて行うことができる。メモリー37aには、例えば足サイズに応じた土踏まずの大きさについての標準的データが格納される。操作部36の操作によって足サイズが選択されると、この選択された足サイズに応じた土踏まずの大きさのデータがメモリー37aから読み出され、このデータに沿って土踏まずに対応した位置で施療子28の突出量が増大するように制御部37が施療子28の突出量を制御する。
【0031】
従って、本発明に係る施療装置10によれば、凹溝12の底面12a上に凹溝12の長手方向に沿って載せられた足裏への施療のために施療子28が凹溝12の長手方向に移動するとき、足裏の土踏まずに対応した位置で他の位置よりも施療子28の突出量が増大することから、土踏まず以外の領域で過剰な押圧力を足裏に与えることなく、足裏の窪み部分である土踏まずに適正な押圧力で指圧を施すことが可能となる。
【0032】
また、ハウジング11内に空気袋29a、29bを設け、この空気袋29a、29bへの空気の給排気により、空気袋29a、29bを膨張および収縮させて施療子28の突出量の制御を行うことにより、適切な弾性力でもって適正な指圧効果を得ることができる。
【0033】
さらに、互いに重ね合わされた複数の空気袋29a、29bを用いることにより、比較的単純な構成でもって施療子28の最小突出量、中間突出量および最大突出量を正確に制御することができる。
【0034】
図3に示した例では、多段配置された空気袋29a、29bの膨張させる個数を選択することにより、施療子28の突出量を制御した例を示したが、図5(a)〜図5(c)に示すように、各施療子ユニット13に多段に設けられる空気袋をそれぞれ単一の空気袋29で構成することができる。この場合、図示しないが、各空気袋29への空気の供給を制御するための開閉バルブ33a、33bと同様な開閉バルブの開閉制御により、空気袋29への空気の供給量を制御することにより、施療子28の突出量を図5(a)に示す最小突出位置、図5(b)に示す中間突出位置および図5(c)に示す最大突出位置に変化させることができる。
【0035】
従って、各施療子ユニット13に単一の空気袋29を用いても、前記したと同様に施療子ユニット13のスリット14に沿った往復運動に伴って土踏まずおよびその近傍での施療子28の突出量を他の位置での突出量よりも増大させるように施療子28の突出量を制御することができる。
【0036】
前述したところでは、施療子28の突出量を空気袋29、29a、29bの膨張、収縮動作によって制御した例を示したが、このような流体制御に代えて機械機構で施療子28の突出量を機械的に制御することができる。しかしながら、適切な弾性を伴う適正な指圧効果を得る上で、前述したような空気制御を採用することが望ましい。
【0037】
また、本発明に係る施療装置10は、ふくらはぎのような部位のマッサージにも使用することができ、この場合、凹溝12の両側面12bに設けられた空気袋15でふくらはぎのような被施療部位をその両側からもみほぐすように空気袋15が膨張および収縮を繰り返すように作動される。また、この場合、必要に応じて施療子ユニット13の施療子28の突出量を一定値に保持させることができ、あるいは施療子ユニット13の往復運動を停止させることができる。
【0038】
なお実施例では、足載せ位置決め手段として凹溝12を採用し、この凹溝12の底面12aを足載置部とした例を示したが、施療子28が設けられる足載置部をハウジング11の平坦面とし、この平坦面の足載置部上に足裏が載せられたとき、足裏が前記足載置部上に適正に保持できるように前記足載置部の前後方向もしくは左右方向の少なくともどちらか一方の位置決めの役割を果たす手段であれば、凹溝12に代えて、種々の位置決め手段を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る施療装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した施療装置の施療子ユニットの動作機構を示す斜視図である。
【図3】図2に示した施療子ユニットの内部構造を示す断面図であり、図3(a)、図3(b)および図3(c)は施療子がそれぞれ最小突出位置、中間位置および最大突出位置にある状態を示す。
【図4】図1に示した施療装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す図3と同様な図面である。
【符号の説明】
【0040】
10 施療装置
11 ハウジング
12 足載せ位置決め手段(凹溝)
12a 足載せ部(凹溝の底面)
28 施療子(もみ玉)
29a、29b 空気袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足載置部が上面に設けられたハウジングに組み込まれ、前記足載置部の前後方向に沿って移動可能でありかつ前記足載置部からの突出量が制御可能の施療子を有し、該施療子で足裏を施療する施療装置であって、足裏の土踏まずに対応した位置では他の位置より前記施療子の突出量を増大させることを特徴とする施療装置。
【請求項2】
前記ハウジングは空気の給排気により膨張および収縮する空気袋を有し、前記施療子は、前記空気袋への空気の供給およびその排気により、突出量の制御を受ける請求項1に記載の施療装置。
【請求項3】
前記空気袋は、複数の空気袋を前記施療子の突出方向に多段に重ね合わせられており、前記施療子は膨張する該空気袋の個数により突出量の制御を受ける請求項2に記載の施療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−87475(P2006−87475A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273305(P2004−273305)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】