説明

施肥作業機

【課題】施肥作業とともに畝成形作業を行うにあたり、所定の畝の容易に形成せしめることが可能で且つ畝立器を必ずしも必要としない歩行型の施肥作業機を提供すること課題としている。
【解決手段】本発明は、ロータリ軸53を介して機体1に対して回転駆動可能に支持された複数の爪54からなる左右方向のロータリ6と、該ロータリ6前方に配置されて圃場に粒状肥料を吐出する吐出部4aと、該吐出部4aに粒状肥料を供給する供給部3とを備え、吐出部4aによって粒状肥料が散布された圃場の土をロータリ6によって攪拌させる歩行型の施肥作業機であって、所定形状の爪54をそれぞれロータリ軸53の所定箇所に配置することにより、圃場の土を内盛りながら攪拌させて2条分の畝37を成形するように前記ロータリ6を構成し、各畝37の頂点部37cに粒状肥料が施肥されるように正面視畝37成形部分上方に吐出部4aを配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒状肥料が散布された圃場の土をロータリによって攪拌させる施肥作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
単一のロータリ軸を介して機体に対して回転駆動可能に支持された複数の爪からなる左右方向のロータリと、該ロータリ前方に配置されて圃場に粒状肥料を吐出する吐出部と、該吐出部に粒状肥料を供給する供給部とを備え、吐出部によって粒状肥料が散布された圃場の土をロータリによって攪拌させる特許文献1に示す施肥作業機が公知になっている。
【特許文献1】特開2006−166863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献の施肥作業機は、施肥作業とともに畝成形作業を行うためには、ロータリの前方又は後方に畝立器を設ける必要があるという課題がある他、畝立器をある程度高精度に組付ける等をしないと所望(所定)の畝を成形せしめることが困難であるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、施肥作業とともに畝成形作業を行うにあたり、所定の畝の容易に形成せしめることが可能で且つ畝立器を必ずしも必要としない歩行型の施肥作業機を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の施肥作業機は上記課題を解決するため、第1に、ロータリ軸53を介して機体1に対して回転駆動可能に支持された複数の爪54からなる左右方向のロータリ6と、該ロータリ6前方に配置されて圃場に粒状肥料を吐出する吐出部4aと、該吐出部4aに粒状肥料を供給する供給部3とを備え、吐出部4aによって粒状肥料が散布された圃場の土をロータリ6によって攪拌させる歩行型の施肥作業機であって、所定形状の爪54をそれぞれロータリ軸53の所定箇所に配置することにより、圃場の土を内盛りながら攪拌させて2条分の畝37を成形するように前記ロータリ6を構成し、各畝37の頂点部37cに粒状肥料が施肥されるように正面視畝37成形部分上方に吐出部4aを配置したことを特徴としている。
【0005】
第2に、ロータリ6によって成形される2つの畝37,37の内側側部37a,37aを押均す一対の成形体36,36をロータリ6の中央部後方に配置したことを特徴としている。
【0006】
第3に、ロータリ6により成形された一対の畝37,37の外側溝部37b,37bをそれぞれ踏均す左右一対のゲージ輪10,10を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の施肥作業機によれば、ロータリによって畝成形作業が行われるため、従来のように畝成形体を有する畝立器を補助的にロータリ後方に設けることにより、所望の畝を成形せしめることがより容易になるとともに、従来のような畝立器を設けることなく畝を成形することも可能になるという効果がある。くわえて、歩行型の施肥作業機なため、トラクタ等の牽引車に連結された施肥作業機と比べて、小回りが利くようになり、狭い圃場での施肥作業を効率的に行うことが可能になるという効果がある。
【0008】
また、ロータリによって成形される2つの畝の内側側部を押均す一対の成形体をロータリの中央部後方に配置すれば、より形の整った畝が容易に成形できるという効果がある他、2つの畝の内側側面のみを押均すため、走行抵抗もそれほど大きくならないという効果がある。
【0009】
さらに、ロータリにより成形された一対の畝の外側溝部をそれぞれ踏均す左右一対のゲージ輪を設けることにより、走行抵抗の増大を抑えて形の整った畝を成形せしめることがより容易になる。くわえて、歩行型の施肥作業機なため、作業者の踏代が溝部に形成される他、機体の左右バランスが向上するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1,2は、本発明を適用した歩行型施肥作業機の全体側面図及び全体平面図である。本歩行型施肥作業機は、走行機体(機体)1と、左右一対の肥料タンク2と、各肥料タンク2の底部に設置された肥料供給装置(供給部)3と、一端が肥料供給装置3に接続され他端側に吐出口4a(吐出部,散布部)が形成された施肥パイプ4と、圃場を耕耘する左右方向のロータリ6と、上記ロータリ6の左右方向中央部後方に配置された畝立器7と、圃場面に接地して前後回転する接地輪8と、走行機体1から後方に延設されたハンドル9(操向操作部)と、左右一対のゲージ輪10とを備えている。
【0011】
上記走行機体1は、主フレーム11と、主フレーム11の前半部上面側に載置固定された伝動ケース12及びエンジン13と、主フレーム11下方に設置されて主フレーム11を支持する左右一対の車輪(走行部)14と、主フレーム11前端部の左右方向中央部上面に固設されて前方が開放された側面視コの字状の取付ブラケット16と、取付ブラケット16上面に溶着等で固設されて取付ブラケット16から前方に突出する左右一対の連接プレート17と、この左右一対の連接プレート17前端部に固着されて連接プレート17から左右に突出する横フレーム18と、横フレーム18の左右の各端部から後方に延設された前後方向の支持フレーム19と、横フレーム18の左部又は右部から後方に延設された前後方向の支持ブラケット21と、主フレーム11から後方に延びて前端部が主フレーム11に強固に固定されるリアフレーム20とを備えている。
【0012】
左右の車輪14は、主フレーム11の下方位置に回転自在に支持され且つエンジン12の動力が伝動ケース12内の伝動機構を介して伝動される左右方向の車軸22によって、駆動される。
【0013】
取付ブラケット16には、必要に応じてバランスウェイト23が取付固定され、本歩行型施肥作業機の前後バランスを調整することが可能になっている。具体的には、直方体状のバランスウェイト23の一部を取付ブラケット16の内面側に挿入した状態で、バランスウェイト23を取付ブラケット16にボルト固定する。
【0014】
上記左右の各肥料タンク2は、上方が開放されるとともに上部開口端からから底部に向かって次第に狭くなり底部の一箇所に収束するような形状に成形されている。このため、肥料タンク2内の粒状肥料(肥料)は自重により底部に集まるようになっており、この底部には排出口(図示しない)が形成されている。くわえて、各肥料タンク2は、平面視で後端が車輪14の前方に位置するように配置されており、対応する左右の支持フレーム19の後半部にそれぞれ支持固定されている。
【0015】
上記肥料供給装置3は左右の肥料タンク2,2の上記排出口にそれぞれ設置されている。各肥料供給装置3は、内部のローラ(図示しない)が回転駆動させることにより、肥料タンク2の排出口から排出された肥料を、肥料供給装置3下面に形成された供給口3aから施肥パイプ4に供給するように構成されている。
【0016】
肥料供給装置3の単位時間当たりの肥料供給量はローラの回転速度に比例する。このローラは、両端部が左右の肥料供給装置3にそれぞれ挿入される左右方向のローラ軸(繰出軸)24によって回転駆動される。すなわち、単一のローラ軸24を前後回転させることにより、左右の肥料供給装置3、3のローラがそれぞれ回転作動し、対応する肥料タンク2から肥料が繰出される。
【0017】
上記接地輪8は、後方斜め下方に延びるチェーンケース26の下端部に前後回転自在に支持されており、側面視で車輪14と重複するように前述の支持ブラケット21を設けた側の車輪14外側方に配置されている。上記チェーンケース26の上端部は支持ブラケット21の前端部に前後揺動可能に支持されている。くわえて、このチェーンケース26の上端部には前述したローラ軸24が挿通支持されており、接地輪8の前後回転動力は、チェーンケース26内のチェーン(図示しない)を介して、ローラ軸24に伝動される。
【0018】
支持ブラケット21後端部には前方斜め下方に延びる支持ロッド27が軸方向にスライド自在に支持されており、この支持ロッド27の下端部はチェーンケース26の中途部に前後回動自在に支持されている。支持ロッド27外周には支持ロッド27を下方スライド方向に常時付勢するスプリング28が設けられ、チェーンケース26が下方揺動側に弾力的に常時付勢されるため、接地輪8は圃場面に弾力的に接地した状態になり、接地輪8の圃場面(接地面)に対する滑り(空転)が防止される。このことにより、本歩行型施肥作業機による圃場での施肥作業中、走行速度に比例した速度でロータ軸24が前後回転作動し、走行速度に対応した適量の肥料が、吐出口4aから圃場に散布される。
【0019】
なお、接地輪8は、支持ブラケット21後端部に基端部が上下揺動自在に支持された係止アーム31の先端部のフック部29aに係止させることにより、圃場面から離間した姿勢で保持させることが可能になる。ちなみに、係止アーム31は、上下方向を向いて接地輪8を係止する係止姿勢と、左右方向を向いてフック部29aが支持ブラケット21上面に載置収納される収納姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。
【0020】
上記施肥パイプ4は、肥料供給装置3の供給口3a毎に設けられ、基端部が供給口21に接続固定され、先端部がプレート状の保持体31によって係合保持されて支持されている。保持体31は、上下方向の基端部に対して中途部及び先端部が後方斜め下方に延びて、先端部で、施肥パイプ4の先端部を保持している。保持体31における施肥パイプ4保持位置が変更可能且つ横フレーム18における保持体31の固定位置を変更可能に、保持体31が構成されている。該構成により、吐出口4aの位置を微調整することが可能になる。
【0021】
上記畝立器7は、リアフレーム20後端部に支持ホルダ32によって上下スライド調整可能に支持固定された上下方向の支持杆33の下端部に、固定ブラケット34を介して取付固定されている。畝立器7は、左右一対の畝成形板(成形体)36によって構成されている。一対の畝成形板36は、前端部から後端部に向かって互いが離間するように平面視ハの字状をなし、後述する左右一対の畝37,37の内側側部37a,37a(図2における左側畝37の右側部37a,右側畝37の左側部37a)を押均すように構成されている。
【0022】
上記ハンドル9は左右一対のハンドル杆38からなり、各ハンドル杆38の前端部(基端部)は走行機体1の前後方向中央部分から後方斜め上方に突設されたハンドルフレーム39に取付固定されている。左右のハンドル杆38は平面視互いが離間するように広がるハの字状に形成されるとともに、各ハンドル杆38は後方斜め上方に延びる基端部及び中途部に対して先端部が下方に屈曲形成されている他、各ハンドル杆38の先端部にはグリップ41が設けられている。
【0023】
作業者は、左右のグリップ41を把持して操向操作を行うとともに、ハンドル9を車軸22を支点に上方揺動させてロータリ6、畝立器7及びゲージ輪10を圃場から離間させた状態で、機体旋回操作を行う。
【0024】
上記ゲージ輪10は、リアフレーム20後部における上記支持杆33の前方に支持ホルダ42を介して上下スライド調整可能に支持固定された上下方向の支柱43の下端部に溶着等で取付固定された左右方向のツールバー44を介して、走行機体1に支持されている。具体的には、ツールバー44の左右方向中央部に支柱43下端が固着され、走行機体1から突出するツールバー44の左右の各端部に取付ホルダ46がツールバー44軸方向にスライド調整可能に取付固定されている。
【0025】
各取付ホルダ46には、横杆47が軸方向にスライド位置調整可能に挿通固定されている。各横杆47の後端部には上下方向の支持筒48の下端部外周が溶着等で固着されており、各支持筒48には外周にネジが形成された支持軸49が挿入係合されている。左右の各支持軸49は、支持軸49上端部に設置された調整ハンドル51を把持して支持軸49を軸回りに回転させることにより、支持軸49を支持筒48に対して軸方向に移動させるように構成されており、各支持軸49を下端部にはゲージ輪10が接地されている。
【0026】
この左右一対のゲージ輪10は、後述する左右の畝37の外側に位置する溝部37b(図2における左側畝37の左側溝部37b,右側畝37の右側溝部37b)をそれぞれ踏均すように構成されている。
【0027】
上記ロータリ6は、リアフレーム20の前部に固設された上下方向のロータリチェーンケース52の下端部に前後回転可能に支持された左右方向ロータリ軸53と、ロータリ軸54に軸装されてロータリ軸54と一体回転する爪(耕耘爪,攪拌爪)54(図3参照)とを備えている。
【0028】
図3は、ロータリの構成を示す要部背面図である。ロータリ軸53は、左右方向中央部がロータリチェーンケース52の下端部によって支持されており、エンジン13の動力がロータリチェーンケース52内のチェーン(図示しない)を介して、ロータリ軸53に伝動され、ロータリ6を駆動させる。
【0029】
ロータリ軸53の左半部に設置した複数の爪54によって1つの畝を形成するとともに、右半部に設置した複数の爪54によって1つの畝を形成する。すなわち、このロータリ6によって左右に並列された2条文の畝を同時成形していく。各爪54は側面視円弧状に成形されるとともに、基端部及び中途部に対して各爪54の先端部は成形対象畝37の中央部(左右方向中央部)に向かって湾曲形成されており、複数の爪54はロータリ軸53の左半部と右半部にそれぞれ略等間隔(所定間隔)で並列配置されている。爪54は、上記形状及び配置によって、圃場の土を攪拌しながら畝37中央側に盛る(内盛りする)して畝37を成形するように構成されている。
【0030】
前述した施肥パイプ4の各吐出口4aは、ロータリ6により成形される各畝37の頂点部(頂点部予定箇所)37cに上方から肥料を散布するように、正面視で畝(37)成形部分の中央部上方に配置されている。そして、該吐出口4aから圃場に散布された肥料はロータリ6によって圃場の土と攪拌され、これと同時に圃場にはロータリ6の爪54によって畝37が成形されていく。
【0031】
この左右の畝37,37は、前述したように、対向する側面37a,37aが畝立器7によって補助的に押均される他、外側溝部37b,37bが左右のゲージ輪10によってそれぞれ踏均されるため、畝37の形状が所定の形状に整えられる(図2参照)。
【0032】
この際、この畝37内の土のみが、爪54によって集中的に肥料と攪拌混合された状態になる。肥料が圃場の土と攪拌されているため、局所施肥と比べて肥料障害が少ない他、根元にのみ必要な肥料が施肥されるため、圃場全体に万遍無く(無作為に)肥料を散布する場合と比べて、必要な肥料量を少なくすることが可能になる。
【0033】
以上のように構成される歩行型施肥作業機は、機体1の前部に肥料タンク2やエンジン13を配置するとともに、機体1の後部にロータリ6や畝立器7やゲージ輪10を配置するため、前後バランスが良好に保たれ、本歩行型施肥作業機の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した歩行型施肥作業機の全体側面図である。
【図2】本発明を適用した歩行型施肥作業機の全体平面図である。
【図3】ロータリの構成を示す要部背面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 走行機体(機体)
3 肥料供給装置(供給部)
4a 吐出口4a(吐出部,散布部)
6 ロータリ
10 ゲージ輪
36 畝成形板(成形体)
37 畝
37a 内側側部(側面)
37b 外側溝部(溝部)
37c 頂点部(頂点部予定箇所)
53 ロータリ軸
54 爪(耕耘爪,攪拌爪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のロータリ軸(53)を介して機体(1)に対して回転駆動可能に支持された複数の爪(54)からなる左右方向のロータリ(6)と、該ロータリ(6)前方に配置されて圃場に粒状肥料を吐出する吐出部(4a)と、該吐出部(4a)に粒状肥料を供給する供給部(3)とを備え、吐出部(4a)によって粒状肥料が散布された圃場の土をロータリ(6)によって攪拌させる歩行型の施肥作業機であって、所定形状の爪(54)をそれぞれロータリ軸(53)の所定箇所に配置することにより、圃場の土を内盛りながら攪拌させて2条分の畝(37)を成形するように前記ロータリ(6)を構成し、各畝(37)の頂点部に粒状肥料が施肥されるように正面視畝(37)成形部分上方に吐出部(4a)を配置した施肥作業機。
【請求項2】
ロータリ(6)によって成形される2つの畝(37),(37)の内側側部(37a),(37a)を押均す一対の成形体(36),(36)をロータリ(6)の中央部後方に配置した請求項1の施肥作業機。
【請求項3】
ロータリ(6)により成形された一対の畝(37),(37)の外側溝部(37b),(37b)をそれぞれ踏均す左右一対のゲージ輪(10),(10)を設けた請求項1又は2の施肥作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−41933(P2010−41933A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206497(P2008−206497)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】