説明

旅行時間算出装置、プログラム、および記録媒体

【課題】旅行時間の時間変動モデルの算出精度を向上することができる旅行時間算出装置、プログラム、および記録媒体を提供する。
【解決手段】旅行時間算出部3は、所定の時間帯に所定の道路区間を走行した車両から取得した情報に基づいて、その時間帯の道路区間における車両の旅行時間を算出する。時間変動モデル算出部4は、時間帯毎の旅行時間および品質情報(サンプル数)に基づいて、旅行時間の時間変動を近似するNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を構成するパラメータの値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の道路区間における車両の旅行時間を算出する旅行時間算出装置に関する。また、本発明は、この旅行時間算出装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、およびこのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が所定の道路区間を走行するのに要する旅行時間を道路利用者に通知する情報提供サービスが存在する。この情報提供サービスでは、センサを搭載した車両(プローブ車両)からセンサの測定値を収集し、収集した測定値から旅行時間の時間変動モデルを算出することが行われている(例えば非特許文献1参照)。さらに、算出した時間変動モデルを用いることによって、今後の旅行時間の予測値を算出することが可能である。
【非特許文献1】T. Fujita, E. Yao, Y. Sugisaki, J. Takeuchi, K. Hirabayashi, T. Nakata,“TRAVEL TIME PREDICTION USING PROBE-CAR DATA”,"13th World Congress on Intelligent Transport Systems, London"(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、全車両に対するプローブ車両の割合が元々小さい上に、プローブ車両の通過頻度が道路区間毎および時間毎によって異なるため、プローブ車両の通過頻度が低い場合には、旅行時間の時間変動モデルの算出精度に影響を及ぼすという問題があった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、旅行時間の時間変動モデルの算出精度を向上することができる旅行時間算出装置、プログラム、および記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、所定の時間帯に所定の道路区間を走行した車両から取得した情報に基づいて、前記時間帯の前記道路区間における前記車両の旅行時間を算出する旅行時間算出手段と、時間帯毎の前記旅行時間と、該旅行時間の品質を示す品質情報とを関連付けて記憶する旅行時間記憶手段と、時間帯毎の前記旅行時間および前記品質情報に基づいて、前記旅行時間の時間変動を近似するNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を構成するパラメータの値を算出するパラメータ算出手段と、を備えたことを特徴とする旅行時間算出装置である。
【0006】
また、本発明の旅行時間算出装置は、前記NURBS曲線のパラメータに基づいて前記旅行時間の予測対象モデル値を算出する予測対象モデル値算出手段と、前記旅行時間の第1の状態値から前記旅行時間の第2の状態値を予測するための自己回帰係数を、前記予測対象モデル値に基づいて算出する自己回帰係数算出手段と、前記旅行時間算出手段によって算出された前記旅行時間と前記第1の状態値の関係を記述する観測方程式に基づいて、前記旅行時間から前記第1の状態値を算出する第1の状態値算出手段と、前記第1の状態値と前記第2の状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式に基づいて、前記第1の状態値および前記自己回帰係数から前記第2の状態値を算出する第2の状態値算出手段と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の旅行時間算出装置において、前記品質情報は、時間帯毎の前記旅行時間のサンプル数であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、所定の時間帯に所定の道路区間を走行した車両から取得した情報に基づいて、前記時間帯の前記道路区間における前記車両の旅行時間を算出する旅行時間算出手段と、時間帯毎の前記旅行時間と、該旅行時間の品質を示す品質情報とを関連付けて記憶する旅行時間記憶手段と、前記時間帯毎の前記旅行時間および前記品質情報に基づいて、前記旅行時間の時間変動を近似するNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を構成するパラメータの値を算出する近似曲線算出手段と、としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0009】
また、本発明のプログラムは、前記NURBS曲線のパラメータに基づいて前記旅行時間の予測対象モデル値を算出する予測対象モデル値算出手段と、前記旅行時間の第1の状態値から前記旅行時間の第2の状態値を予測するための自己回帰係数を、前記予測対象モデル値に基づいて算出する自己回帰係数算出手段と、前記旅行時間算出手段によって算出された前記旅行時間と前記第1の状態値の関係を記述する観測方程式に基づいて、前記旅行時間から前記第1の状態値を算出する第1の状態値算出手段と、前記第1の状態値と前記第2の状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式に基づいて、前記第1の状態値および前記自己回帰係数から前記第2の状態値を算出する第2の状態値算出手段と、としてさらにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のプログラムにおいて、前記品質情報は、時間帯毎の前記旅行時間のサンプル数であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、時間帯毎の旅行時間および品質情報に基づいて、旅行時間の時間変動を近似するNURBS曲線を構成するパラメータの値を算出することによって、旅行時間の時間変動モデルの算出精度を向上することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態による旅行時間算出装置の構成を示している。まず、図1に示した構成の概略機能を説明する。
【0014】
記憶部1はメモリやハードディスクドライブ等で構成され、各種情報を一時的または長期的に記憶する。受信部2は、時刻、位置、速度等の測定情報をプローブ車両から受信する。旅行時間算出部3は、測定情報に基づいて、所定の道路区間を走行した車両の旅行時間(観測値)を算出する。時間変動モデル算出部4は、算出された旅行時間(観測値)に基づいて、同じ道路区間における車両の旅行時間の時間変動モデルを表す近似曲線(時刻と旅行時間の対応関係を示す近似曲線)を構成するパラメータの値を算出する。
【0015】
予測対象モデル値算出部5は、近似曲線のパラメータから時間帯毎の旅行時間の予測対象モデル値を算出する。自己回帰係数算出部6は、特定の時刻での旅行時間の状態値からそれ以降の時刻での旅行時間の状態値を予測(推定)するための多変量自己回帰モデルを表す多変量自己回帰係数を算出する。第1の状態値算出部7は、旅行時間の予測対象モデル値と状態値(真値)の関係を記述する観測方程式に基づいて、旅行時間の予測対象モデル値から特定の時刻での旅行時間の状態値(真値)を算出する。第2の状態値算出部8は、旅行時間の状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式に基づいて、特定の時刻での旅行時間の状態値および自己回帰係数からそれ以降の時刻での旅行時間の状態値の予測値(推定値)を算出する。
【0016】
次に、本実施形態による旅行時間算出装置の動作を説明する。受信部2はプローブ車両から測定情報を受信する。受信された測定情報は記憶部1に格納される。旅行時間算出部3は、記憶部1から測定情報を読み出し、測定情報に基づいた公知の手法により、所定の道路区間における旅行時間を車両毎に算出する。これによって、例えば道路区間Aにおける車両a1,a2,・・・の旅行時間がそれぞれb1,b2,・・・と算出される。
【0017】
さらに、旅行時間算出部3は、算出した旅行時間を所定の時間帯毎に分別し、各時間帯に属する旅行時間の平均値を算出する。算出された平均値が、各時間帯における旅行時間の観測値として以降の処理で用いられる。また、旅行時間算出部3は、各時間帯に属する旅行時間の数(あるいは各時間帯に所定の道路区間を走行したプローブ車両の数)であるサンプル数(本発明の品質情報に対応)を計上する。旅行時間算出部3は、算出した旅行時間の観測値(平均値)と、その算出に用いた旅行時間のサンプル数とを関連付けて、記憶部1に格納する。
【0018】
図2は、所定の道路区間における旅行時間の観測値(平均値)の様子の一例を示している。矢印Tの長さが1つの時間帯の長さ(時間)を示している。旅行時間の観測値のプロットを示す丸印の大きさは、その観測値を算出するのに用いた旅行時間のサンプル数を示している。折れ線200は旅行時間の観測値の時間変動を示している。プローブ車両の走行頻度が少ないために、測定情報が得られず、観測値が欠損している時間帯もある。
【0019】
破線201は、本来の予測対象であるべき旅行時間の母集団の期待値の変動を示している。中心極限定理により、サンプル数が多いと、観測値は母集団の期待値に近づき(例えば観測値202)、サンプル数が少ないと、観測値は母集団の期待値から遠ざかる(例えば観測値203)。すなわち、サンプル数は観測値の品質(信頼度)を示すことになる。
【0020】
続いて、時間変動モデル算出部4は、旅行時間の観測値の時間変動モデルを表す近似曲線のパラメータの値を算出する。本実施形態では、過去の所定期間(数週間〜数ヶ月)に蓄積された測定情報から算出された旅行時間の観測値の時間変動を、なるべく少ない数の制御点(曲線の代表通過点)で規定されるNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線で近似する(図3参照)。以下、図4を参照しながら、最良の近似曲線の決定手順を説明する。まず、時間変動モデル算出部4は制御点の数nを所定の値に設定する(ステップS100)。
【0021】
続いて、時間変動モデル算出部4は、近似曲線と旅行時間の観測値との乖離が最も小さくなるNURBS曲線のパラメータ(階数m、n個の制御点の位置、m+n個のノット(ノットベクトル))を数値探索で求める。すなわち、時間変動モデル算出部4は、旅行時間の観測値およびサンプル数の情報を記憶部1から読み出し、以下の(1)式で規定される重み付き二乗誤差Eが最小になるNURBS曲線のパラメータの値を算出する(ステップS110)。(1)式において、サンプル数による重み付けがなされており、観測値の品質がNURBS曲線に反映されるようになっている。算出されたパラメータの値は、NURBS曲線を識別する情報と共に記憶部1に格納される。
【0022】
【数1】

【0023】
続いて、時間変動モデル算出部4は、所定の数のNURBS曲線が得られたか否かを判定する(ステップS120)。所定の数のNURBS曲線が得られていない場合には、時間変動モデル算出部4は制御点の数を変更し(ステップS130)、ステップS110の処理を再度実行する。
【0024】
また、所定の数のNURBS曲線が得られた場合には、時間変動モデル算出部4は、求めたNURBS曲線の中から、できるだけ少ない制御点で規定され、かつ近似が良好なNURBS曲線を決定する。すなわち、時間変動モデル算出部4は、各NURBS曲線のパラメータ等の情報を記憶部1から読み出し、以下の(2)式で規定される赤池情報量基準(AIC)をNURBS曲線毎に算出する。時間変動モデル算出部4は、AICが最小となるNURBS曲線を、旅行時間の観測値の時間変動モデルを表す近似曲線に決定する(ステップS140)。
【0025】
【数2】

【0026】
以下、旅行時間算出装置の動作の続きを説明する。予測対象モデル値算出部5は、旅行時間の観測値の時間変動モデルを表すNURBS曲線のパラメータの値を記憶部1から読み出し、各時間帯における旅行時間の予測対象モデル値を算出する。この予測対象モデル値は、NURBS曲線上の値として算出される。算出された予測対象モデル値は記憶部1に格納される。
【0027】
続いて、予測対象モデル値から、未来の旅行時間の予測値を求めるための自己回帰係数が算出され、現在までの旅行時間の観測値と、すでに求めた自己回帰係数を組み込んだカルマンフィルタ(詳細は後述する)とによって、未来の旅行時間の予測値が算出される。以下、自己回帰係数算出部6、第1の状態値算出部7、および第2の状態値算出部8の動作をまとめて説明する。まず、予測値を算出するための原理を説明する。
【0028】
本実施形態では、直近の過去の旅行時間から未来の旅行時間を予測するため、多変量自己回帰分析を行う。2つの変量x,xの予測を個別の自己回帰モデルで行う場合、以下の(3)式と(4)式により、予測対象のx(0)およびx(0)を求めることになる。ただし、x(−1),・・・,x(−m),x(−1),・・・,x(−m)は直近の状態量であり、a11,・・・,a1m,a21,・・・,a2mは自己回帰係数である。
(0)=a11(−1)+・・・+a1m(−m) ・・・(3)
(0)=a21(−1)+・・・+a2m(−m) ・・・(4)
【0029】
これに対して、本実施形態では、2つの変量x,xの予測を多変量自己回帰モデルで同時に行う。また、2つの変量x,xとして2つの空間近傍の状態量を用いる(図5参照)。空間近傍とは、例えば隣接する道路区間である。空間近傍の状態量には相関性がある。多変量自己回帰モデルで2つの変量x,xの予測を行うことによって、(3)式および(4)式に示した個別の自己回帰モデルによる予測と比較して、より多くの情報を利用して予測を行うことになり、予測精度が向上する。
【0030】
以下の(5)式は、多変量自己回帰モデルで2つの変量x,xを予測する式である。a111,a121,a211,a221等が自己回帰係数であり、2変量間の相関性を意味する係数であるa121,a211等が加わることによって、より多くの情報を利用して予測を行っていることになる。
【0031】
【数3】

【0032】
上記では、2変量の自己回帰モデルの例を示したが、より一般的なm次の多変量自己回帰モデルの式は以下の(6)式〜(9)式となる。ただし、X(t)は、予測対象となる時刻tでの状態値ベクトルを示し、X(t−i)は、既に求まっている時刻t−iでの状態値ベクトルを示している。また、A(t)は多変量自己回帰係数行列であり、U(t)は時刻tでのシステムノイズベクトル(ガウス雑音)である。
【0033】
【数4】

【0034】
連続した時系列データが与えられたとき、最適な多変量自己回帰係数の値は、ユール・ウォーカー法等の、既に確立されたアルゴリズムを利用して求めることができる。また、モデルの次数mについては、前述した赤池情報量基準(AIC)により、最適な値を選択する。
【0035】
NURBS曲線で近似された旅行時間の母集団の時間変動モデルが示す状態量は、直接観測できる状態量ではない。このため、時間変動モデルを用いて導出した自己回帰モデルへの入力値((6)式のX(t−i))が得られていない。観測できるのは、旅行時間算出部3が算出した旅行時間の観測値であるが、この観測値には、サンプル数が偏ることに起因する観測誤差がある。この観測誤差の大きさは(誤差分散)は、サンプル数に応じて異なる。また、プローブ車両が対象の道路区間を全く走行しなかった時間帯では観測値が欠損する。
【0036】
そこで、本実施形態では、以下のようにして多変量自己回帰モデルとカルマンフィルタを組み合わせて旅行時間の予測値を算出する。カルマンフィルタは、白色ノイズ誤差を含む観測値から状態値の真値を予測するアルゴリズムであり、観測値と状態値の関係を記述する観測方程式と、状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式とで構成される。
【0037】
また、カルマンフィルタでは、後述する観測誤差分散の大きさを変えることによって、観測値の品質の大小を考慮することができる。例えば、サンプル数が少ない時間帯の観測値に対しては、誤差分散を大きく設定すればよい。また、観測値が欠損している場合には、何らかの観測値を与えた上で誤差分散が無限大であると考えて計算を行えばよい。
【0038】
以下、カルマンフィルタの一般形を示す。(10)式は状態遷移方程式を示し、(11)式は観測方程式を示している。(10)式のX(t)は、時刻tでの状態値(真値)で構成される状態値ベクトルを示し、Fは、多変量自己回帰係数行列で構成される状態遷移行列を示している。また、X(t−1)は、時刻t−1での状態値(真値)で構成される状態値ベクトルを示し、U(t)はシステムノイズベクトルを示している。(11)式のY(t)は、既に求まっている観測値で構成される観測値ベクトルを示し、Hは観測行列(この場合は単位行列)を示している。また、V(t)は、観測誤差(ガウス雑音)で構成される観測誤差ベクトルを示している。
X(t)=FX(t−1)+U(t) ・・・(10)
Y(t)=HX(t)+V(t) ・・・(11)
【0039】
(10)式および(11)式を定式化すると以下の(12)式〜(16)式となる。このような定式化がなされた場合、カルマンフィルタアルゴリズムは、観測方程式によって時刻tまでの観測値から時刻tでの状態量予測値を与え、状態遷移方程式によって時刻tでの状態量予測値から時刻t+1での状態量予測値を与える。
【0040】
【数5】

【0041】
(16)式に含まれる観測誤差は以下の(17)式で与えられる。ただし、s(t)は、時刻tにおける道路区間jの旅行時間の観測値の分散を示し、q(t)は、時刻tにおける道路区間jのサンプル数を示している。(17)式に含まれるs(t)/(q(t)−1)は、カルマンフィルタの計算に必要な観測誤差分散値を示している。(17)式は、観測方程式に含まれる観測誤差を、正規分布に従って算出することを示している。
【0042】
【数6】

【0043】
以下、上記の原理に従った演算を行う自己回帰係数算出部6、第1の状態値算出部7、および第2の状態値算出部8の動作を説明する。自己回帰係数算出部6は、記憶部1に蓄積された予測対象モデル値を読み出し、ユール・ウォーカー法等のアルゴリズムを用いて、予測対象モデル値から多変量自己回帰係数を算出する。算出された多変量自己回帰係数は記憶部1に格納される。
【0044】
続いて、第1の状態値算出部7は、旅行時間の観測値(旅行時間算出部3によって算出された旅行時間の観測値)を記憶部1から読み出し、(17)式に従って観測誤差を算出すると共に、(13)式に従って観測値と観測誤差から時刻tでの状態値を算出する。算出された状態値は記憶部1に格納される。第2の状態値算出部8は、多変量自己回帰係数および時刻tでの状態値を記憶部1から読み出し、(12)式に従って多変量自己回帰係数および時刻tでの状態値から時刻t+1での状態値を算出する。算出された状態値は記憶部1に格納される。この時刻t+1での状態値が所望の旅行時間の予測値である。
【0045】
上述したように、本実施形態によれば、時間帯毎の旅行時間およびサンプル数(品質情報)に基づいて、旅行時間の時間変動を近似するNURBS曲線を構成するパラメータ(階数、制御点、ノット)の値を算出することによって、旅行時間の時間変動モデルの算出精度を向上することができる。
【0046】
また、多変量自己回帰モデルとカルマンフィルタを組み合わせて旅行時間の予測値を算出することによって、より多くの情報を利用して旅行時間の予測値の算出精度を向上することができると共に、観測誤差を含む観測値から旅行時間の予測値の真値を算出することができる。さらに、サンプル数に応じた観測誤差分散値を与えることによって、旅行時間の予測精度を向上することができる。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上述した旅行時間算出装置の動作および機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させてもよい。
【0048】
ここで、「コンピュータ」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0049】
また、上述したプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータから、伝送媒体を介して、あるいは伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように、情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上述したプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能を、コンピュータに既に記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態による旅行時間算出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態において算出された旅行時間の観測値の様子を示す参考図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるNURBS曲線の決定方法を説明するための参考図である。
【図4】本発明の一実施形態における最良近似曲線の決定手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における多変量自己回帰モデルを説明するための参考図である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・記憶部、2・・・受信部、3・・・旅行時間算出部、4・・・時間変動モデル算出部、5・・・予測対象モデル値算出部、6・・・自己回帰係数算出部、7・・・第1の状態値算出部、8・・・第2の状態値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間帯に所定の道路区間を走行した車両から取得した情報に基づいて、前記時間帯の前記道路区間における前記車両の旅行時間を算出する旅行時間算出手段と、
時間帯毎の前記旅行時間と、該旅行時間の品質を示す品質情報とを関連付けて記憶する旅行時間記憶手段と、
時間帯毎の前記旅行時間および前記品質情報に基づいて、前記旅行時間の時間変動を近似するNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を構成するパラメータの値を算出するパラメータ算出手段と、
を備えたことを特徴とする旅行時間算出装置。
【請求項2】
前記NURBS曲線のパラメータに基づいて前記旅行時間の予測対象モデル値を算出する予測対象モデル値算出手段と、
前記旅行時間の第1の状態値から前記旅行時間の第2の状態値を予測するための自己回帰係数を、前記予測対象モデル値に基づいて算出する自己回帰係数算出手段と、
前記旅行時間算出手段によって算出された前記旅行時間と前記第1の状態値の関係を記述する観測方程式に基づいて、前記旅行時間から前記第1の状態値を算出する第1の状態値算出手段と、
前記第1の状態値と前記第2の状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式に基づいて、前記第1の状態値および前記自己回帰係数から前記第2の状態値を算出する第2の状態値算出手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の旅行時間算出装置。
【請求項3】
前記品質情報は、時間帯毎の前記旅行時間のサンプル数であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の旅行時間算出装置。
【請求項4】
所定の時間帯に所定の道路区間を走行した車両から取得した情報に基づいて、前記時間帯の前記道路区間における前記車両の旅行時間を算出する旅行時間算出手段と、
時間帯毎の前記旅行時間と、該旅行時間の品質を示す品質情報とを関連付けて記憶する旅行時間記憶手段と、
前記時間帯毎の前記旅行時間および前記品質情報に基づいて、前記旅行時間の時間変動を近似するNURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲線を構成するパラメータの値を算出する近似曲線算出手段と、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項5】
前記NURBS曲線のパラメータに基づいて前記旅行時間の予測対象モデル値を算出する予測対象モデル値算出手段と、
前記旅行時間の第1の状態値から前記旅行時間の第2の状態値を予測するための自己回帰係数を、前記予測対象モデル値に基づいて算出する自己回帰係数算出手段と、
前記旅行時間算出手段によって算出された前記旅行時間と前記第1の状態値の関係を記述する観測方程式に基づいて、前記旅行時間から前記第1の状態値を算出する第1の状態値算出手段と、
前記第1の状態値と前記第2の状態値の時間遷移を記述する状態遷移方程式に基づいて、前記第1の状態値および前記自己回帰係数から前記第2の状態値を算出する第2の状態値算出手段と、
としてさらにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記品質情報は、時間帯毎の前記旅行時間のサンプル数であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれかに記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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