説明

既設推進管撤去装置及び該装置を用いた既設推進管撤去工法

【課題】 曲線区間を含む推進管列を撤去すること。
【解決手段】 推進管に係合されるように係合手段3を配置し、立坑Gに牽引手段2を配置し、これらの係合手段3と牽引手段2とは、複数の長尺ユニット41とジョイント部40とからなる牽引力伝達手段4を推進管列内部に配置して連結する。各長尺ユニット4は、複数条のPC鋼棒410等から構成されているので牽引力は直線的に伝達されるだけであるが、ジョイント部40は長尺ユニット40を所望の角度に調整できるので、伝達方向を適宜屈曲させつつ、牽引力を前記牽引手段2から前記係合手段3まで伝えることができる。したがって、曲線区間Cを含む推進管列Aであっても撤去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲線区間を有する既設推進管列を撤去したり、撤去後埋め戻ししたりする際に使用するに好適な、既設推進管撤去装置及び該装置を用いた既設推進管撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、都市部では、下水道などの老朽化した推進管を撤去し埋め戻したり、撤去後に新しい推進管を敷設更新したりすることが検討されている。
【0003】
推進管の撤去工法としては、撤去すべき推進管列の最先端に、シールドを設け、該シールドを立坑側から牽引することにより、推進管を引っ張り出す方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、縁切り用のリングを、推進管列の外側を覆う形で、撤去すべき推進管列の全長に渡り推進させて、地山と推進管列との縁切りを行った後、推進管列を引き抜き撤去する方法も知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
更に、ワイヤソーを、撤去すべき推進管列外周部の全長に渡り設置し、該ワイヤソーにより、地山と推進管列との縁切りを行った後、推進管列を引き抜き撤去する方法も知られている(例えば、特許文献3)。
【0006】
また、別の方法としては、例えば円筒状の係合部材をアンカーボルト等により推進管の内壁に固定し、立坑には牽引ジャッキを設け、これらの係合部材と牽引ジャッキとを長尺状の牽引部材により連結しておいて、牽引ジャッキの駆動力により縁切りを行い、その後、推進管列の奥側端部の開口を閉塞するように隔壁(板状部材)を配置し、上述した牽引部材を隔壁に接続して前記牽引ジャッキにより該隔壁を牽引することにより推進管列を撤去するようにした方法も知られている(特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2001−262998号公報
【特許文献2】特開2001−262976号公報
【特許文献3】特開2001−262975号公報
【特許文献4】特願2004−278057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した各特許文献は、直線区間の推進管列を撤去するためのもので、曲線区間(図1の符号C参照)を含む推進管列を撤去するものについては、いまだ、確立した技術が無く、簡単な構成で、効率よく既設推進管を撤去することの出来る工法及び装置の開発が、急がれている。
【0009】
本発明は、上記した事情に鑑み、曲線区間を含む既設推進管列を撤去することの出来る装置及び該装置を用いた既設推進管撤去工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に例示するように、推進管を牽引するための牽引力を生じさせる牽引手段(2)と、少なくとも1つの推進管に係合される係合手段(3)と、これらの牽引手段(2)及び係合手段(3)の間に介装されて該牽引手段(2)から該係合手段(3)に牽引力を伝達する牽引力伝達手段(4)と、を備え、直列に接続された状態で地盤中に埋設された複数の推進管(…,Ai−1,A,Ai+1,…)からなる推進管列(A)を牽引し撤去するための既設推進管撤去装置(1)において、
前記牽引力伝達手段(4)は、牽引力を直線的に伝達するための複数の長尺ユニット(41)と、隣接される長尺ユニット(41)を所望の角度で連結するジョイント部(40)と、によって構成され、
各長尺ユニット(41)は、前記推進管列(A)の内壁に沿うように並設された複数条の長尺部材(410)と、これら複数条の長尺部材(410)と前記ジョイント部(40)とが係止される係止部材(411)と、により構成された、ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ジョイント部(40)は、一対の前記係止部材(411)の間に並設された複数の油圧シリンダ(400)を有し、各油圧シリンダのロッド突出長が調整されることに基づき、連結された長尺ユニット(41)の相対角度を調整するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記各長尺部材(410)の端部にはナット(412)が螺合され、
前記係止部材(411)は、各長尺部材(410)の端部が挿入される貫通孔と、該端部に螺合されてなる前記ナット(412)に当接されて該ナット(412)から前記牽引力が伝達される当接面(411a)と、を有し、
前記ジョイント部(40)は、前記当接面(411a)と前記長尺部材(410)との為す角度(θ)が約90度になるように調整される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記係合手段(3)は、前記推進管列(A)の端部開口を閉塞するように配置された板状部材である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、直列に接続された状態で地盤中に埋設された複数の推進管にて構成されて少なくとも一部に曲線区間(C)を有する推進管列(A)を牽引し撤去するための既設推進管撤去工法において、
少なくとも1つの推進管に係合される係合手段(3)と、牽引力を生じさせる牽引手段(2)とを、前記曲線区間(C)を挟む位置にそれぞれ配置する工程と、
複数条の長尺部材(410)が略平行となるように係止部材(411)に係止されて構成された複数の長尺ユニット(41)と、各長尺ユニット(41)の係止部材(411)に連結されてこれら複数の長尺ユニット(41)を順次連結するジョイント部(40)とにより牽引力伝達手段(4)を構成すると共に、一の長尺ユニット(41)を前記牽引手段(2)に連結し、他の長尺ユニット(41)を前記係合手段(3)に連結し、各長尺部材(410)が前記推進管列(A)の内壁に沿い、さらに、少なくとも1つの前記ジョイント部(40)が少なくとも前記曲線区間(C)に配置されるように、前記牽引力伝達手段(4)を前記推進管列内部に配置する工程と、
前記牽引手段(2)を駆動し、少なくとも前記一の長尺ユニット(41)、前記ジョイント部(40)、前記他の長尺ユニット(41)及び前記係合手段(3)を介して牽引力を推進管に伝達して前記推進管列(A)を牽引する工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明において、前記牽引手段(2)による牽引を開始する前において、該牽引手段(2)と前記曲線区間(C)との間に配置されている長尺ユニット(41)における長尺部材(410)の条数が、前記曲線区間(C)と前記係合手段(3)との間に配置されている長尺ユニット(41)における長尺部材(410)の条数よりも少ない、ことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の符号等は、図面と対照するためのものであり、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであって、特許請求の範囲に何等影響を及ぼすものではない。以下の発明の効果についても同様である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び5に係る発明によれば、隣接される長尺ユニット(41)はジョイント部(40)によって所望の角度で連結されるため、ジョイント部(40)によって伝達方向を適宜屈曲させながら牽引力を伝達させることができ、曲線区間(C)を有する既設推進管列(A)であっても牽引し撤去することができる。また、各長尺部材(410)は前記推進管列(A)の内壁に沿うように配置されているので、牽引作業中でも長尺部材(410)が邪魔にならず、作業者は推進管内部を移動することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、長尺ユニット(41)の相対角度の調整は、油圧を制御するだけで簡単に行うことができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、ナット等だけで牽引力を伝達することができ、その牽引力伝達構造を簡素化できる。また、前記当接面(411a)と前記長尺部材(410)との為す角度(θ)は約90度に保持されるため、ナット(412)と当接面(411a)とが面接触することとなり、それらの摩耗を低減することができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、板状部材だけで牽引力を適確に伝えることができ、装置の構成が簡単となり、装置のコストも低く抑えることができる。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、前記牽引手段(2)による牽引を開始する前において該牽引手段(2)と前記曲線区間(C)との間に配置される長尺ユニット(41)における長尺部材(410)の条数を少なくし、長尺部材(410)をセットする作業を簡素化できる。また、前記曲線区間(C)と前記係合手段(3)との間に配置されている長尺ユニット(41)における長尺部材(410)の条数を多くするので、前記牽引手段(2)からの牽引力を前記係合手段(3)に適確に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1乃至図5に沿って説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る既設推進管撤去装置の全体構成の一例を示す水平断面図であり、図2は、牽引力伝達手段の構造の一例を示す拡大水平断面図であり、図3は、図2のE−E端面図であり、図4は、図2のF−F端面図である。また、図5は、曲線区間における推進管の敷設状態の一例を示す水平断面図である。
【0024】
以下、本発明に係る既設推進管撤去装置について詳述する。
【0025】
本発明に係る既設推進管撤去装置は、既設のトンネルを埋め戻したり、古い推進管を新しい推進管と交換したり等する際に、地盤中に埋設されている既設推進管列(例えば、図1の符号A参照)を非開削で軸心Bに沿って牽引し撤去するために使用されるものである(以下、このようにトンネルを埋め戻すために既設の推進管を撤去する現場、古い推進管を新しい推進管に交換するために既設の推進管を撤去する現場、及びその他の目的のために既設の推進管を撤去する現場を、本明細書では“推進管撤去現場”と称することとする)。なお、この推進管撤去現場においては、所定長さ(例えば、2.5m程度)の複数の円筒状推進管(図2の符号Ai−1,A,Ai+1参照)が直列に接続されて推進管列Aが構成されている。また、この推進管撤去現場においては、撤去しようとする推進管列の区間の一端又は両端に向けて地表から立坑が掘られていて(図1の符号G,G参照)、立坑の壁面には、推進管列の端部が開口された状態となっている。
【0026】
本発明に係る既設推進管撤去装置1は、図1に示すように、推進管を牽引するための牽引力を生じさせる牽引手段2と、少なくとも1つの推進管に係合される係合手段3と、これらの牽引手段2及び係合手段3の間に介装されて該牽引手段2から該係合手段3に牽引力を伝達する牽引力伝達手段4と、を備えている。
【0027】
このうち、前記牽引力伝達手段4は、牽引力を直線的に伝達するための複数の長尺ユニット41と、隣接される長尺ユニット41,41を所望の角度で連結するジョイント部40と、によって構成されている。これにより、曲線区間Cを有する既設推進管列Aであっても、ジョイント部40によって伝達方向を適宜屈曲させながら牽引力を伝達させることができ、該推進管列Aを撤去することができる。
【0028】
そして、各長尺ユニット41は、図2に詳示するように、複数条の長尺部材410と、これら複数条の長尺部材410を係止する少なくとも1つの係止部材411と、によって構成されている。ここで、長尺部材410には、PC鋼棒を用いると良く、直列に複数連結して用いると良い。また、前記係止部材411は、前記長尺部材410との間で牽引力(軸力)をやり取りできるように各長尺部材410を係止すると共に、前記推進管列Aの内壁に沿って並設される位置に前記複数条の長尺部材410を保持している(詳細は後述する)。なお、各長尺部材410が前記推進管列Aの内壁に沿うように配置されているので、牽引作業中でも長尺部材410が邪魔にならず、作業者は推進管内部を移動することができる。また、前記係止部材411は、長尺部材相互の離間距離(図2に符号dで示す距離であって、推進管の軸心Bに略直交する方向の距離)を規定し、各長尺部材410に牽引力が伝達された際に、前記複数条の長尺部材410が近づいたり遠ざかったりすることを防止して、前記牽引手段2から前記係合手段3に牽引力が適正に伝達されるように構成されている。
【0029】
上述したジョイント部40は、互いに隣接される長尺ユニット41の間に配置され、各長尺ユニット41の各係止部材411にそれぞれ連結されると共に、それらの長尺ユニット41の相対角度を調整できるように構成されている。このジョイント部40は、例えば、一対の係止部材411L,411Rの間に並設された複数の油圧シリンダ400により構成すると良い。例えば、各油圧シリンダのロッド400aを一側の係止部材411Lに固定し、シリンダ本体400bを他側の係止部材411Rに固定すると良い。ジョイント部40にこのような油圧シリンダを用いた場合には、隣接される長尺ユニット41,41の相対角度の調整は、油圧を制御して各油圧シリンダ400のロッド突出長を調整するだけで簡単に行うことができる。なお、このジョイント部にはセンターホールジャッキを用いても良い。ところで、各係止部材411は、上述のようにジョイント部40が連結されるものであるため、各ジョイント部40に近接するように、各長尺ユニット41の端部に配置しておくと良い。
【0030】
本発明に係る既設推進管撤去装置1においては、各長尺部材410は推進管列の内壁に沿って並設されているので、推進管列の曲線区間Cにおいては、図1に示すように、カーブ外側の牽引力伝達長さLの方が、カーブ内側の牽引力伝達長さLよりも長くなってしまうが、前記ジョイント部40により長尺ユニット相互の相対角度を調整できるように構成されているため、それらの牽引力伝達長さの差(L−L)を吸収させることができ、これによって、前記牽引手段2から前記係合手段3に牽引力を適正に伝達し、曲線区間を有するにもかかわらず、推進管列を牽引し撤去することができる。
【0031】
なお、前記長尺部材410を前記係止部材411に係止させるための構造としては様々なものを挙げることができるが、端部にナット(図2の符号412参照)が螺合されるような構造の長尺部材410を使用する場合には、各係止部材411には、各長尺部材410の端部が挿入される貫通孔と、該端部に螺合されてなる前記ナット412に当接されて該ナット412から前記牽引力が伝達される当接面411aと、を形成しておくと良い。さらに、前記ジョイント部40により、前記当接面411aと前記長尺部材410との為す角度θが約90度になるように調整しておくと良い。この場合、係止部材411と長尺部材410との間の牽引力の伝達はナット等だけで達成することができ、牽引力伝達構造を簡素化できる。また、前記当接面411aと前記長尺部材410との為す角度θが約90度に保持されるため、ナット412と当接面411aとが面接触することとなり、それらの摩耗を低減することができる。
【0032】
前記係止部材411は様々な形状にすることができるが、図3及び図4に示すように、推進管Aの内壁に沿うようなドーナッツ形状とした場合には、作業者は該係止部材411を通り抜けて推進管内部を自由に移動することができる。この係止部材411には、前記推進管の内壁の側に突出可能なグリッパージャッキ50を配置しておいて、前記牽引手段2からの牽引力が作用するときに、前記ジョイント部40や前記長尺部材410が前記推進管の内壁に接触してしまわないように係止部材411の中心が軸心Bからずれないようにしても良い。なお、符号50aは押圧板を示す。
【0033】
図1の例では、牽引手段2は立坑Gの内部に配置されているが、推進管の内部(直線区間或いは曲線区間)に配置しても良い。また、図1の例では、前記係合手段3は、推進管列の端部開口を閉塞する板状部材であるので、牽引力を適確に伝えることができ、装置の構成が簡単となり、装置のコストも低く抑えることができる。
【0034】
なお、撤去される推進管列は、いわゆるセンプラカーブシステムにより敷設されたものが好ましい。このセンプラカーブシステムでは、曲線区間であっても、図5に示すように湾曲していない推進管A,…を用い、推進管列としての湾曲状態は、カーブ内側の隙間(推進管相互の隙間)をカーブ外側の隙間(推進管相互の隙間)より小さくすることにより実現させている。各隙間にはクッション材(不図示)が介装されている。また、各推進管は、曲線区間であっても地山と干渉することなく引き抜かれることとなる。
【0035】
ところで、図1の符号6は、筒状のグリッパ装置を示す。このグリッパ装置6は、アンカーボルトや油圧ジャッキ等(不図示)によって推進管内壁に係合されるように構成されており、前記長尺部材410を適宜連結して前記牽引手段2にて牽引することにより推進管の縁切りを行えるようになっている。このグリッパ装置6を推進管列Aの全長に亘って複数配置しておいて、推進管列Aの全体を縁切りできるようにしておくと良い。
【0036】
次に、本発明に係る既設推進管撤去工法について説明する。
【0037】
本発明に係る既設推進管撤去工法は、図1及び図2に示すように、少なくとも一部に曲線区間Cを有する推進管列(上述したように、直列に接続された状態で地盤中に埋設された複数の推進管にて構成されたもの)Aを牽引し撤去するためのものであって、
・ 少なくとも1つの推進管に係合される係合手段3と、牽引力を生じさせる牽引手段2とを、前記曲線区間Cを挟む位置にそれぞれ配置する工程と、
・ 複数条の長尺部材410が略平行となるように係止部材411に係止されて構成された複数の長尺ユニット41と、各長尺ユニット41の係止部材411に連結されてこれら複数の長尺ユニット41を順次連結するジョイント部40とにより牽引力伝達手段4を構成すると共に、一の長尺ユニット41を前記牽引手段2に連結し、他の長尺ユニット41を前記係合手段3に連結し、各長尺部材410が前記推進管列の内壁に沿い、さらに、少なくとも1つの前記ジョイント部40が少なくとも前記曲線区間Cに配置されるように、前記牽引力伝達手段4を前記推進管列内部に配置する工程と、
・ 前記牽引手段2を駆動し、少なくとも前記一の長尺ユニット41、前記ジョイント部40、前記他の長尺ユニット41及び前記係合手段3を介して牽引力を推進管に伝達して前記推進管列Aを牽引する工程と、
を有する。本工法によれば、ジョイント部40によって伝達方向を適宜屈曲させながら牽引力を伝達させることができ、曲線区間Cを有する既設推進管列Aであっても牽引し撤去することができる。また、各長尺部材410は前記推進管列Aの内壁に沿うように配置されているので、牽引作業中でも長尺部材410が邪魔にならず、作業者は推進管内部を移動することができる。さらに、曲線区間Cにおける牽引力伝達長さの差(L−L)は、上述のようにジョイント部40にて吸収させることができ、牽引力を適正に伝達させることができる。
【0038】
なお、ジョイント部40は、前記曲線区間Cには少なくとも1つ配置されている必要がある。図1では、曲線区間Cが長いので、ジョイント部40は2カ所に設けてあるが、さらに曲線区間が長いような場合には3カ所以上に設けるようにしても良い。また、ジョイント部40は、前記牽引手段2から前記曲線区間Cまでの直線区間(曲線区間が複数の場合には、前記牽引手段2から最初の曲線区間までの直線区間)には配置しておかなくても良い。該直線区間の推進管は前記牽引手段2の側に牽引されるだけであって、曲線区間を通過しないからである。しかしながら、前記曲線区間Cより奥の直線区間(つまり、前記曲線区間Cから前記係合手段3までの直線区間)には一定間隔毎にジョイント部40を配置しておく方が良い(不図示)。この直線区間の推進管は、前記牽引手段2の側に牽引される際に上述した曲線区間Cを通過しなければならず、ジョイント部40による長尺部材410の角度調整を行わなければ、長尺部材410等が推進管内壁に接触してしまうおそれがあるからである。
【0039】
各長尺ユニット41における長尺部材410の条数(複数条配置される長尺部材の“条”の数の意である。本明細書にて同じ。)は等しくしても良いが、異ならせても良い。直線区間だけを通過することとなる長尺部材(具体的には、前記牽引手段2による牽引が開始される前において前記牽引手段2と前記曲線区間Cとの間に配置される長尺ユニット41における長尺部材410)は、軸力としての牽引力だけを伝達すれば足り、スラスト力はほとんど受けないので、条数を比較的少なくしても良い。これにより、長尺部材をセットする作業を簡素化できる。反対に、曲線区間を通過することとなる長尺部材(つまり、前記曲線区間Cと前記係合手段3との間に配置されている長尺ユニット41における長尺部材)は、曲線区間Cを通過する際は、軸力だけでなくスラスト力も受けることとなるので条数を多くすると良い。これにより、前記牽引手段2からの牽引力を前記係合手段3に適確に伝えることができる。
【0040】
なお、前記係合手段3に前記長尺ユニット41を連結する前に前記グリッパ装置(図1の符号6参照)に前記長尺ユニット41を連結し、前記牽引手段2を駆動して各推進管の縁切りを行っておく必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明に係る既設推進管撤去装置の全体構成の一例を示す水平断面図である。
【図2】図2は、牽引力伝達手段の構造の一例を示す拡大水平断面図である。
【図3】図3は、図2のE−E端面図である。
【図4】図4は、図2のF−F端面図である。
【図5】図5は、曲線区間における推進管の敷設状態の一例を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 既設推進管撤去装置
2 牽引手段
3 係合手段
4 牽引力伝達手段
40 ジョイント部
41 長尺ユニット
400 油圧シリンダ
410 長尺部材
411 係止部材
411a 当接面
412 ナット
A 推進管列
C 曲線区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進管を牽引するための牽引力を生じさせる牽引手段と、少なくとも1つの推進管に係合される係合手段と、これらの牽引手段及び係合手段の間に介装されて該牽引手段から該係合手段に牽引力を伝達する牽引力伝達手段と、を備え、直列に接続された状態で地盤中に埋設された複数の推進管からなる推進管列を牽引し撤去するための既設推進管撤去装置において、
前記牽引力伝達手段は、牽引力を直線的に伝達するための複数の長尺ユニットと、隣接される長尺ユニットを所望の角度で連結するジョイント部と、によって構成され、
各長尺ユニットは、前記推進管列の内壁に沿うように並設された複数条の長尺部材と、これら複数条の長尺部材と前記ジョイント部とが係止される係止部材と、により構成された、
ことを特徴とする既設推進管撤去装置。
【請求項2】
前記ジョイント部は、一対の前記係止部材の間に並設された複数の油圧シリンダを有し、各油圧シリンダのロッド突出長が調整されることに基づき、連結された長尺ユニットの相対角度を調整するように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の既設推進管撤去装置。
【請求項3】
前記各長尺部材の端部にはナットが螺合され、
前記係止部材は、各長尺部材の端部が挿入される貫通孔と、該端部に螺合されてなる前記ナットに当接されて該ナットから前記牽引力が伝達される当接面と、を有し、
前記ジョイント部は、前記当接面と前記長尺部材との為す角度が約90度になるように調整される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の既設推進管撤去装置。
【請求項4】
前記係合手段は、前記推進管列の端部開口を閉塞するように配置された板状部材である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の既設推進管撤去装置。
【請求項5】
直列に接続された状態で地盤中に埋設された複数の推進管にて構成されて少なくとも一部に曲線区間を有する推進管列を牽引し撤去するための既設推進管撤去工法において、
少なくとも1つの推進管に係合される係合手段と、牽引力を生じさせる牽引手段とを、前記曲線区間を挟む位置にそれぞれ配置する工程と、
複数条の長尺部材が略平行となるように係止部材に係止されて構成された複数の長尺ユニットと、各長尺ユニットの係止部材に連結されてこれら複数の長尺ユニットを順次連結するジョイント部とにより牽引力伝達手段を構成すると共に、一の長尺ユニットを前記牽引手段に連結し、他の長尺ユニットを前記係合手段に連結し、各長尺部材が前記推進管列の内壁に沿い、さらに、少なくとも1つの前記ジョイント部が少なくとも前記曲線区間に配置されるように、前記牽引力伝達手段を前記推進管列内部に配置する工程と、
前記牽引手段を駆動し、少なくとも前記一の長尺ユニット、前記ジョイント部、前記他の長尺ユニット及び前記係合手段を介して牽引力を推進管に伝達して前記推進管列を牽引する工程と、
を有する既設推進管撤去工法。
【請求項6】
前記牽引手段による牽引を開始する前において、該牽引手段と前記曲線区間との間に配置されている長尺ユニットにおける長尺部材の条数が、前記曲線区間と前記係合手段との間に配置されている長尺ユニットにおける長尺部材の条数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項5に記載の既設推進管撤去工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−9424(P2007−9424A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188065(P2005−188065)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】