説明

既設構造物直下の非開削土壌改良工法

【課題】作業スペースのスペース効率が良好で、地中の所望の位置に、土壌改良材を正確に注入することができる既設構造物直下の非開削土壌改良工法を提供する。
【解決手段】三次元計測器70を用いたドリルヘッド部材50の位置計測では、ロッド推進装置20が位置するドリリング終了位置で、ケーシングロッド部材17の後端部17aに、後続の他のケーシングロッド部材17の先端部17cを連結する延伸工程を行う前に、三次元計測器70を、ケーシングロッド部材17の後端部17a側から、内部の中空部に挿入して、ドリルヘッド部材50内の中空部内まで到達させる。計測により、所望の位置に到達したドリルヘッド部材50は、挿入された薬液注入パイプ部材80の先端部80aが、掘削プレート部材60の円柱状栓体61の後端面61aに突き当てられて、ドリルヘッド部材50からこの掘削プレート部材60が離脱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易に、既設構造物における直下の土壌を、改良出来、特に、汚染された土壌を浄化する為の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図27に示すように、建物等の既設構造物1の直下に位置する土壌2内の軟弱地盤層3を安定した地盤等に改良する既設構造物直下の非開削土壌改良工法が、知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このような従来のものでは、前記既設構造物1の一側面側1aの一地表面を発進側地表面4としている。
【0004】
この発進側地表面4には、ドリルロッド推進装置11が、載置されている。
【0005】
そして、このドリルロッド推進装置11は、この既設構造物1の他側面側1bで、反対側に位置する到達側地表面5に向けて、ドリルヘッド12が装着されたドリルロッド13を発進させるように構成されている。
【0006】
このドリルヘッド12内には、発信器14が内蔵されていて、この発信器14から発信される電波を、地上で受信して、このドリルヘッド12の先端の深度と、方向とが検出されるように構成されている。
【0007】
また、地上の方向制御装置から、このドリルヘッド12内部に設けられた受信機15を介して、方向制御機構に方向制御を行う信号が送出されるように構成されている。
【0008】
前記既設構造物1直下の軟弱地盤層3内を水平方向に推進した後、前記到達側地表面5に到達したドリルヘッド12は、ドリルロッド13の先端から取り除かれて、代わりに、このドリルロッド13の先端に、合成樹脂管等の可撓性を有する薬液注入管8の一端部が、連結される。
【0009】
そして、このドリルロッド13と一体に連結された薬液注入管6を、前記発進側地表面4に向けて、掘削推進された経路内を引き戻される。
【0010】
引き戻された薬液注入管6は、管中央部壁面に穿設形成された複数の注入孔6a…が、前記軟弱地盤層3内に位置する状態で停止されて、所望の位置に敷設される。
【0011】
次に、供給ホース7が用いられて、前記到達側地表面5に載置された薬液供給装置8から、薬液タンク9内のグラウト等の薬液10が、前記薬液注入管6内に圧力注入される。
【0012】
薬液10は、前記薬液注入管6に充満された後、前記既設構造物1の直下に位置する薬液注入管6の周囲の注入孔6a…から、前記軟弱地盤層3中に噴出される。
【0013】
次に、この従来例の既設構造物直下の非開削土壌改良工法の作用効果について説明する。
【0014】
このように構成された従来の既設構造物直下の非開削土壌改良工法では、前記軟弱地盤層3中に噴出された薬液10が、この軟弱地盤層3内の砂粒子等と混合した状態で硬化する。
【0015】
このため、既設構造物1を撤去等する必要が無く、この建物等の既設構造物1の直下に位置する土壌2内の軟弱地盤層3を安定した地盤等に改良することができる。
【特許文献1】特許3363099号公報(段落0017乃至0050、図1乃至図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このような従来の既設構造物直下の非開削土壌改良工法では、ドリルヘッド12内には、発信器14及び受信機15が内蔵されていて、これらの発信器14及び受信機15と、地上に設けられる方向制御装置等の送受信機との間で、電波等を用いて信号を送受信するように構成されている。
【0017】
このため、この既設構造物1の周囲の電磁波の外乱の影響を受けやすく、正確なドリルヘッド12の先端の深度と、方向とを特定することが困難であった。
【0018】
また、前記既設構造物1の一側面側1aの発進側地表面4に、前記ドリルロッド推進装置11を載置するスペースを確保すると共に、他側面側1bの到達側地表面5に、薬液供給装置8及び薬液タンク9を載置するスペースを設けなければならない。
【0019】
特に、薬液注入管6は、前記既設構造物1の規模によっては、全長が約50m程度となるものも知られていて、これらのドリルロッド推進装置11と、前記薬液供給装置8及び薬液タンク9とを、既設構造物1両側の発進側地表面4及び到達側地表面5に分散させて配置することは、作業を行うスペースも増大してしまい、スペース効率が良好であるとは言い難かった。
【0020】
そこで、この発明は、作業スペースのスペース効率が良好で、地中の所望の位置に、土壌改良材を正確に注入することができる既設構造物直下の非開削土壌改良工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、この請求項1に記載の発明は、内部を中空状とすると共に、一定長さに分割されて、連結により、延長可能となるケーシングロッド部材及び、該ケーシングロッド部材の掘削方向先端部に連結されて、掘削プレート部材の前端面が斜めとなるように装着される前端装着部が設けられたドリルヘッド部材とを用いて、前記ドリルヘッド部材の推進量に対する前記掘削プレート部材の向きを可変することにより、地中を掘削する該ドリルヘッド部材の進行方向を制御する掘削工程と、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程と、前記ドリルヘッド部材方向へ向けて、前記ケーシングロッド部材の内部に、挿入される薬液注入パイプ部材を用いて、土壌改良材を地中に注入する注入工程とを有する既設構造物直下の非開削土壌改良工法であって、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程では、連結作業に伴って、推進が一時停止された前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置を三次元計測器を用いて計測する既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴としている。
【0022】
また、請求項2に記載されたものは、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程では、前記ケーシングロッド部材の内部に、三次元計測器を挿入して、前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置を、逐次計測する請求項1記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴とする。
【0023】
更に、請求項3に記載されたものは、前記注入工程では、前記ケーシングロッド部材の内部に、挿入される薬液注入パイプ部材の先端部を、前記ドリルヘッド部材に装着された前記掘削プレート部材に突き当てて、該掘削プレート部材を、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱させることにより、直接、前記薬液注入パイプ部材の先端部から、地中内に薬液を注入する請求項1又は2記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴としている。
【0024】
また、請求項4に記載されたものは、前記注入工程では、前記掘削プレート部材を、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱させた後、前記ドリルヘッド部材及びケーシングロッド部材を、前記薬液注入パイプ部材の周囲から抜出させる請求項3記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴としている。
【0025】
そして、請求項5に記載されたものは、前記三次元計測器に設けられた撮像手段によって、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面の一部に設けられた角度確認用目印を、撮像することによりドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度を計測する請求項1乃至4のうち何れか一項記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴としている。
【0026】
また、請求項6に記載されたものは、前記三次元計測器の先端に、溝を設け、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面から凸設される角度確認用目印に、該溝を係合させることにより、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度を計測する請求項1乃至5のうち何れか一項記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
このように構成された請求項1記載の発明は、複数に分割されたケーシングロッド部材の延伸工程では、連結作業に伴って、推進が一時停止された前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置が、三次元計測器が用いられて、計測される。
【0028】
前記ケーシングロッド部材は、一定長さに分割されているので、前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置を、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する作業毎に行うことにより、推進方向では、略一定の進行方向寸法毎の三次元座標上の到達位置が、正確に検出される。
【0029】
また、請求項2に記載されたものは、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程で、前記ケーシングロッド部材の内部に、三次元計測器が、挿入されて、前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置が、逐次計測される。
【0030】
計測後、前記三次元計測器を、前記ケーシングロッド部材の内部から、抜出出来るので、前記ドリルヘッド部材による掘削工程を行う際に、該三次元計測器に、振動や電波の外乱による影響が与えられる虞が無い。
【0031】
このため、更に、正確に、到達位置が、検出される。
【0032】
更に、請求項3に記載されたものは、前記注入工程では、前記ケーシングロッド部材の内部に挿通された薬液注入パイプ部材の先端部が、前記ドリルヘッド部材に装着された前記掘削プレート部材に突き当てられて、該掘削プレート部材が、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱される。
【0033】
このため、前記薬液注入パイプ部材の先端部から、直接、地中内に薬液を注入することが出来、前記ケーシングロッド部材又はドリルヘッド部材の内部の中空状の空間部等に、薬液が残留する虞がない。
【0034】
また、前記薬液注入パイプ部材の先端部等、前記ケーシングロッド部材又はドリルヘッド部材の内部の中空状の空間部に、挿通されたパイプの先端を、地中に挿入して、引き戻すことにより、汚染土壌等、地中の土壌のサンプリングが可能となる。
【0035】
また、請求項4に記載されたものは、前記注入工程では、前記掘削プレート部材が、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱された後、前記ドリルヘッド部材及びケーシングロッド部材が、前記薬液注入パイプ部材の周囲から抜出される。
【0036】
前記ドリルヘッド部材及びケーシングロッド部材は、前記掘削プレート部材が、ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱しているので、前記薬液注入パイプ部材の先端部と、干渉することなく、円滑に、抜出き出来る。
【0037】
このため、前記ドリルヘッド部材及びケーシングロッド部材は、地上に回収して、再利用することができる。
【0038】
そして、請求項5に記載されたものは、前記三次元計測器に設けられた撮像手段によって、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面の一部に設けられた角度確認用目印が、撮像されて、ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度が、計測される。
【0039】
このため、該計測された回動角度に基づいて、前記ドリルヘッド部材の推進量に対する前記掘削プレート部材の向きが可変されることにより、地中を掘削する該ドリルヘッド部材の進行方向が、制御可能となる。
【0040】
また、請求項6に記載されたものは、前記三次元計測器の先端に設けられた溝を、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面から凸設される角度確認用目印に、係合させる。
【0041】
このため、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度と、前記三次元計測器の回動角度とが一致するので、この三次元計測器の回動角度を計測することにより、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度が、計測可能となる。
【0042】
従って、更に、簡便に該計測された回動角度に基づいて、前記ドリルヘッド部材の推進量に対する前記掘削プレート部材の向きが可変されることにより、地中を掘削する該ドリルヘッド部材の進行方向が、制御可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための最良の実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法について説明する。
【0044】
図1乃至図21は、この発明の実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法を示すものである。なお、前記従来と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0045】
まず、構成から説明すると、この実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法では、建物等の既設構造物1の直下に位置する土壌2内の地盤15の改良で、特に、地盤15に、汚染土壌16が含まれる場合の地盤を改良する既設構造物直下の非開削土壌改良工法である。
【0046】
図1に示すように、既設構造物1の一側面側1aの一地表面が、発進側地表面4として用いられて、この発進側地表面4には、ドリルロッド推進装置11が、載置されている。
【0047】
このドリルロッド推進装置11は、図3に示すように、キャタピラ11a等からなる走行装置によって、地表面を走行可能な台車18を有している。
【0048】
この台車18の上面側には、左,右側面部にラック19a,19aを有するスライドレール部材19が、この台車18の前後方向の略全長に渡り、長手方向を沿わせて設けられている。
【0049】
このスライドレール部材19には、主に、ロッド推進装置20及び引き抜きキャリッジ装置30が、長手方向に沿って、スライド可能に装着されている。
【0050】
このうち、図4に示すように、前記ロッド推進装置20には、略中空ボックス状の移動箱体20a内には、スライドレール部材19の上,下両面に転動可能に接触するガイドローラ部材22,22が設けられている。
【0051】
また、この移動箱体20aの内部には、左,右一対の移動モータ23,23が、設けられている。
【0052】
この移動モータ23,23には、図示省略の制御部が接続されていて、この制御部からの制御出力信号によって、モータ軸部23a,23aを回転駆動させるように構成されている。
【0053】
また、この移動モータ23,23のモータ軸部23a,23aには、前記スライドレール部材19のラック19a,19aと各々噛み合うピニオンギヤ24,24が、設けられている。
【0054】
そして、前記移動モータ23,23のモータ軸部23a,23aの回転駆動により、前記ロッド推進装置20が、前記スライドレール部材19に沿わせて、スライド移動されるように構成されている。
【0055】
また、このロッド推進装置20には、有底略円筒状のロッド受け部材25が、回動可能に設けられている。このロッド受け部材25には、内部を中空状とすると共に、一定長さに分割されて、連結により、延長可能となるケーシングロッド部材17…が装着される。
【0056】
すなわち、このロッド受け部材25は、図7に示すような前記ケーシングロッド部材17の後端部17aを突入させる擂り鉢状の凹部25aを有している。
【0057】
この凹部25aの内側壁面には、前記ケーシングロッド部材17の先端部17cに形成された雌ネジ部17dと螺合することにより、複数のケーシングロッド部材17…を連結して延長可能とする前記テーパー状の後端部17aの外周面に形成された雄ネジ部17bが螺合されて、固定される雌ネジ部25bが、設けられている。
【0058】
また、このロッド受け部材25の外周面には、環状ラック部25cが、全周に渡り形成されている。
【0059】
更に、この移動箱体20aの内部には、図4に示すように、回転駆動モータ26が、設けられている。
【0060】
この回転駆動モータ26は、図示省略の制御部からの回動角度制御出力信号によって、モータ軸部26aを回転駆動させるように構成されている。
【0061】
また、この回転駆動モータ26のモータ軸部26aには、前記ロッド受け部材25の外周面に形成された環状ラック部25cと噛み合うピニオンギヤ27が、設けられている。
【0062】
そして、前記回転駆動モータ26のモータ軸部26aの回転駆動により、前記ロッド推進装置20に対して、前記ケーシングロッド部材17の掘削方向先端部17cに連結されるドリルヘッド部材50の軸廻りの回動角度が、回転駆動されながら、調整されると共に、前記ロッド推進装置20を、前記スライドレール部材19に沿わせて移動させることによって、これらのケーシングロッド部材17の前記後端部17aが、押圧されて、地中を推進させるように構成されている。
【0063】
なお、この実施の形態では、図7に示すように、前記ケーシングロッド部材17の長手方向の長さ寸法L1が、L1=約3mに設定されている。また、前記先端部17c及び後端部17aの外径寸法D1が、各々約200mmであると共に、中空部の内径寸法D2が、約65mmとなるように設定されている。
【0064】
また、前記引き抜きキャリッジ装置30は、図5及び図6に示すように、前記スライドレール部材19の上面部に、このスライドレール部材19に沿って、スライド移動可能に装着されるキャリッジ本体31と、このキャリッジ本体31の両側面に沿って、各々設けられるガイドプレート部材32,32と、これらのガイドプレート部材32,32に各々上,下二対づつ、転動自在に設けられて、スライドレール部材19の上,下両面に、転動可能に接触するガイドローラ部材22,22が設けられている。
【0065】
このキャリッジ本体31の上部には、左,右一対のスラスト油圧モータ34,34が、設けられている。
【0066】
このスラスト油圧モータ34,34には、図示省略の制御部が接続されていて、この制御部からの制御出力信号によって、モータ軸部34a,34aを回転駆動させるように構成されている。
【0067】
また、このスラスト油圧モータ34のモータ軸部34a,34aには、前記スライドレール部材19のラック19a,19aと各々噛み合うピニオンギヤ35,35が、設けられている。
【0068】
そして、前記スラスト油圧モータ34のモータ軸部34a,34aの回転駆動により、前記引き抜きキャリッジ装置30が、前記スライドレール部材19に沿わせて、スライド移動されるように構成されている。
【0069】
更に、この引き抜きキャリッジ装置30には、キャリッジ本体31の前方でガイドプレート部材32,32間には、板状台座37の上面に載置されて、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aを、接続して、前記引き抜きキャリッジ装置30の移動と共に、前記ケーシングロッド部材17…を地中から引き抜くギヤボックス部材36が、設けられている。
【0070】
すなわち、このギヤボックス部材36は、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aに形成された雄ネジ部17bを螺合する雌ネジ部37aが形成されている受け口部材37に対して、中心軸を共通として一体に形成された回転筒部材38を有している。
【0071】
また、このギヤボックス部材36の前後壁面部36a,36bには、軸孔部36c,36dが各々形成されていて、挿通される前記回転筒部材38の略中央部及び後端部が、回動自在となるように摺接されて、支持されていると共に、前記受け口部材37を、このギヤボックス部材36の前壁面部36aから、前方に向けて突設させている。
【0072】
更に、この回転筒部材38の外周面には、減速ギヤ部材40が、一体に設けられていて、この回転筒部材38の回転と共に、回転するように構成されている。
【0073】
また、前記ギヤボックス部材36には、前記前壁面部36aの軸孔部36cの上方に、回転油圧モータ39が設けられている。
【0074】
この回転油圧モータ39は、図示省略の制御部からの回転駆動出力信号によって、モータ軸部39aが回転駆動されるように構成されている。
【0075】
また、この回転油圧モータ39のモータ軸部39aには、前記減速ギヤ部材40と、噛み合うピニオンギヤ41が、設けられている。
【0076】
そして、この回転油圧モータ39のモータ軸部39aの回転駆動により、前記ケーシングロッド部材17及びドリルヘッド部材50の軸廻りの回動駆動が行われながら、この引き抜きキャリッジ装置30が、前記スライドレール部材19に沿わせて移動されることによって、これらのケーシングロッド部材17及びドリルヘッド部材50を、地中から地上に引き抜き可能となるように構成されている。
【0077】
次に、この実施の形態の前記ドリルヘッド部材50の構成について、図8乃至図12を用いて詳述する。
【0078】
まず、全体の構成を説明すると、この実施の形態のドリルヘッド部材50では、図9に示すように、このドリルヘッド部材50の長手方向の長さ寸法が、L2=約1.8mに設定されている。
【0079】
また、このドリルヘッド部材50の外径寸法D3は、前記ケーシングロッド部材17の先端部17c及び後端部17aの外径寸法D1と略同一となるように、約200mmに設定されている。
【0080】
そして、この後端部50aは、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aのテーパー形状と略同様のテーパー形状を呈して、外周面に雄ネジ部50bが形成されることにより、先端のケーシングロッド部材17の掘削方向先端部17cの雌ネジ部17dに螺合されることにより、連結可能に構成されている。
【0081】
更に、前記ドリルヘッド部材50の内部の中空部の内径寸法D4が、約65mmとなるように設定されている。
【0082】
また、このドリルヘッド部材50は、中心軸が、前端部50dに向けて、所定の角度α=約1〜1.2°を有するように湾曲されて形成されている。
【0083】
そして、このドリルヘッド部材50の前端部50dには、掘削プレート部材60が装着されている。
【0084】
この掘削プレート部材60は、平面視略楕円形状の平板状のプレート本体62と、円柱状栓体61とを有して、主に構成されている。
【0085】
そして、このプレート本体62の前端面62aが、斜めとなるように、前記ドリルヘッド部材50の前端部50dの前端装着部50eが、軸方向に直交する端面を傾斜(傾斜角度=約45〜50°)させて、斜めに形成されている。
【0086】
このため、このドリルヘッド部材50を地中内で推進させると、土圧が、この前端面60aを押圧して、ドリルヘッド部材50の推進方向を変更可能である。
【0087】
従って、掘削工程では、前記ロッド推進装置20により、ドリルヘッド部材50の推進量に対する前記掘削プレート部材60の向きを、前記回転駆動モータ26の回動駆動で、可変することにより、地中を掘削するこのドリルヘッド部材50の進行方向を制御することが可能である。
【0088】
また、この掘削プレート部材60には、前記ドリルヘッド部材50の内部に形成される中空部内に、前端開口部50fから嵌着される円柱状栓体61が設けられていて、前記プレート本体62が、締結具63,63によって、一体に固定されている。
【0089】
この円柱状栓体61には、泥水逆止弁64が設けられている。
【0090】
泥水逆止弁64は、図11に示すように、この円柱状栓体61及び前記プレート本体62を貫通して形成される潤滑液通路64aを介して、出口側開口部64bを外部に連通させると共に、前記ケーシングロッド部材17及び、このドリルヘッド部材50の内部の中空空間に臨ませた入口側開口部64cを設けている。
【0091】
また、この泥水逆止弁64は、これらの出口側開口部64b及び入口側開口部64c間に形成された室64e内で、遊動可能に設けられた弁体64dの作動によって、掘進作業に伴って、入口側開口部64cから流入される潤滑液を、前記出口側開口部64bから外部に放出可能で、しかも、外部泥水の前記出口側開口部64bからの浸入が阻止されるように構成されている。
【0092】
また、この円柱状栓体61の周囲には、リング状シール部材65,65が、二重となるように設けられている。
【0093】
このリング状シール部材65,65によって、前記ドリルヘッド部材50の内部の中空空間内の潤滑液が、外部に漏れないようにシールされている。
【0094】
更に、この実施の形態では、前記前端開口部50fの周縁に位置する前端装着部50eには、複数のピン受け孔50g…が、一定の間隔を置いて、凹設形成されている。
【0095】
このピン受け孔50g…には、各々割ピン66…が、半挿入状態で、嵌着されている。
【0096】
また、前記掘削プレート部材60のうち、これらのピン受け部材50g…に対応する位置には、ピン孔62b…が、形成されている。
【0097】
そして、図9及び図10に示すように、前記割ピン66…の各突出部分が、前記ピン孔62b…に各々挿通係止されることにより、前記掘削プレート部材60のプレート本体62の前端面62aが、前記前端装着部50e端面に対して平行で、しかも、掘削方向に対して、所定の角度、例えば、25°〜45°で斜めとなるように、この掘削プレート部材60が、着脱可能に装着されている。
【0098】
このため、後述する掘削工程では、このドリルヘッド部材50の推進量に対する前記掘削プレート部材60の向きを、前記ロッド推進装置20を用いた推進時に、前記ロッド受け部材25を回動させて、連結される前記ケーシングロッド部材17…と共に、このドリルヘッド部材50の軸廻りの回転角度を可変することにより、この前端面62aの土圧反力の方向を可変させて、地中を掘削するこのドリルヘッド部材50の進行方向が、制御可能となるように構成されている。
【0099】
次に、この実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法の作用効果について、図17に示すフローチャート図、及び図18乃至図23に示す模式的な作業図を用いて、施工工程に沿って説明する。
【0100】
まず、図17中、Step1で、図18に示すように、既設構造物1の一側面側1aに存在する発進側地表面4に、ドリルユニットとしてのドリルロッド推進装置11を設置する。
【0101】
Step2では、前記ドリルヘッド部材50の後端部50aに形成された雄ネジ部50bに、前記ケーシングロッド部材17の先端部17cに形成された雌ネジ部17dを螺合させると共に、推進方向の長さに応じて、適宜、前記後続のケーシングロッド部材17の先端部17cに形成された雌ネジ部17dを、先行するケーシングロッド部材17の後端部17aに形成された雄ネジ部17bに螺合させて、連結させる。
【0102】
この際、前記ドリルロッド推進装置11の前記ロッド推進装置20を、図3中二点鎖線で示すように、スライドレール部材19の左側寄りに設けられた引き抜きキャリッジ装置30に近接させて、待避させた待避位置で、図4に示すように、前記最後端に位置するケーシングロッド部材17の後端部17aに形成された雄ネジ部17bを、このロッド推進装置20のロッド受け部材25に形成された雌ネジ部25bに、螺合させて固定する。
【0103】
Step3では、地中に向けて、前記ドリルヘッド部材50を貫入させると共に、Step4では、前記移動箱体20a内の移動モータ23,23を、回転駆動させて、スライドレール部材19の上,下両面に転動可能に接触するガイドローラ部材22,22を転動させながら、前記ロッド推進装置20を、図3中実線で示す位置までスライド移動させると共に、前記回転駆動モータ26のモータ軸部26aを回転駆動させて、前記ロッド受け部材25を回転駆動させることにより、ドリリングが行われる。
【0104】
この実施の形態では、前記ロッド推進装置20が、図3中実線で示す位置までスライド移動される際に、ケーシングロッド部材17の後端部17aが、前記ロッド受け部材25によって、押圧されて、地中内への掘削に必要とされる推進力が与えられると共に、前記回転駆動モータ26の回転駆動によって、前記ケーシングロッド部材17…に連結された前記ドリルヘッド部材50も、回転する。
【0105】
このため、地中内で、前記ドリルヘッド部材50を容易に、推進させることが出来る。
【0106】
Step5では、推進が3m進むまでは、Step4に戻り、ドリリングを継続する。
【0107】
この実施の形態では、前記スライドレール部材19の全長長さのうち、前記ロッド推進装置20の移動長さが、前記ケーシングロッド部材17の長手方向長さ寸法L1=約3mと一致していて、前記移動箱体20aが、図3中二点鎖線で示す待避位置から、実線で示す最も、図中右側に位置するドリリング終了位置まで、推進されることにより、3m進んだことが分かる。
【0108】
そして、推進が3m進んだ場合には、次のStep6に進み、ドリリングが停止されると共に、Step7では、連結作業に伴って、推進が一時停止されたドリルヘッド部材50の三次元計測が開始される。
【0109】
この実施の形態では、前記ドリルヘッド部材50の推進した経路の三次元計測に、図13乃至図16に示すような三次元計測器70が用いられる。
【0110】
この実施の形態の三次元計測器70を用いたドリルヘッド部材50の位置計測では、図3中右側に、前記ロッド推進装置20が位置するドリリング終了位置で、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aに、後続の他のケーシングロッド部材17の先端部17cを連結する延伸工程を行う前に、前記三次元計測器70を、前記ケーシングロッド部材17の後端部17a側から、内部の中空部に挿入して、図19に示すように、前記ドリルヘッド部材50内の中空部内まで到達させる。
【0111】
この際、前記図1若しくは図13に示されるように、この三次元計測器70の先端面に設けられたCCDカメラ71が、周囲に設けられたLEDライド72,72によって、照光が行われ、前記ドリルヘッド部材50の内側壁に設けられた角度確認用目印100が撮像される(図1,2参照)。
【0112】
撮像された画像データは、ケーブル76及びデータロガー77を介して、PC78上のモニタ79に表示される(図1参照)。
【0113】
作業者は、図2に示すような画像データが表示された前記PC78上のモニタ79の画像を見て、前記角度確認用目印100が表示された場合には、前記三次元計測器70が、ドリルヘッド部材50の内部の中空部まで、到達したことを視認により確認できる。
【0114】
次に、このドリルヘッド部材50の位置が、前記三次元計測器70によって、測定される。
【0115】
この実施の形態の三次元計測器70では、図14に示すように、直径約60mm、全長約1.5mの外径寸法を呈し、鉛直方向回転軸であるZ軸廻りのヨー角θ2を計測するヨー角度センサ73と、水平方向回転軸であるZ1軸廻りのピッチ角θ1を計測するピッチ角度センサ74と、ロール角αを検出するロール角センサ75とが加速度センサ等を用いて構成されている。
【0116】
そして、基準点101に対して、これらの計測された3つのヨー角θ2,ピッチ角θ1及びロール角αを用いて、先端部70aの位置を計算し、経路内を引き抜きながら、1.5m毎に計測を繰り返すことにより、掘削された経路の曲がりを検出することができる。
【0117】
また、この実施の形態では、前記三次元計測器70に設けられたCDDカメラ71によって、前記ケーシングロッド部材17の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材50に形成された中空状の内部内側壁の周面のうち、先端のカッタ刃67aが装着されている角度と一致する一部に設けられた角度確認用目印100が、撮像されることにより、ドリルヘッド部材50の軸を回動中心とする回動角度を容易に計測することができる。
【0118】
このため、前記後続のケーシングロッド部材17を連結後、再度、掘削を行う際に、所望の方向に向けて、前記ドリルヘッド部材50が掘進するように、前記ロッド推進装置20に設けられた回転駆動モータ26を回転駆動して、前記プレート本体62の前端面62aが、斜めに傾斜している方向を、正確に変更することが可能となる。
【0119】
Step8では、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aに、後続の他のケーシングロッド部材17の先端部17cが、連結される延伸工程が、前記ドリルヘッド部材50が、前記既設構造物1直下の汚染された土壌16内の目標位置に到達するまで、繰り返されて、掘削推進が行われる。
【0120】
Step9では、ドリルビットが離脱される。すなわち、目標位置に、前記ドリルヘッド部材50が到達すると、、図20に示すように、前記最も後続のケーシングロッド部材17の後端側から、薬液注入パイプ部材80が、挿入されて、図10に示すように先端部80aが、前記ドリルヘッド部材50に装着された前記掘削プレート部材60の円柱状栓体61の後端面61aに突き当てられて、この掘削プレート部材60を、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱させる。
【0121】
このため、Step10では、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80aは、直接、汚染土壌16内に臨ませて挿入されて、後述する注入工程では、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80aから、この地中内に、例えば、汚染土壌を中和する薬液(土壌改良材)を注入することができる。
【0122】
Step11では、前記ドリルロッド推進装置11の引き抜きキャリッジ装置30が用いられて、前記ケーシングロッド17…及び、前記掘削プレート部材60が離脱されたドリルヘッド部材50のみの回収が行われる。
【0123】
すなわち、図3に示すドリルロッド推進装置11のスライドレール部材19上を、図中右側のロッド推進装置20方向に近接させて、前記引き抜きキャリッジ装置30を移動させて、図5及び図6に示すように、最も後続のケーシングロッド部材17の後端部17aに形成された雄ネジ部17bを、前記受け口部材37の雌ネジ部37aに螺着させて固定する。
【0124】
次に、前記スラスト油圧モータ34,34を回転駆動させて、図3中左方向へ向けて、前記引き抜きキャリッジ装置30を前記スライドレール部材19に沿わせて移動させることにより、図21に示されるように、前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17…が、前記薬液注入パイプ部材80の周囲から抜出される。
【0125】
前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17…は、前記掘削プレート部材60が、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱しているので、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80aと、干渉することなく、円滑に、抜出き出来る。
【0126】
この際、前記回転油圧モータ39を回転駆動させて、前記ケーシングロッド部材17…及びドリルヘッド部材50に回転力を与えることにより、更に容易に引き抜き作業を行わせることができる。
【0127】
このため、前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17…が、地上に回収されて、再利用される。
【0128】
この実施の形態では、広範囲の汚染土壌16を改良する為、図22に示すような地中に置き去りにされた前記薬液注入パイプ部材80…を、複数本、埋設して、Step12にて、図23に示すように、供給ホース7を介して、前記発進側地表面4に載置された薬液供給装置8から、薬液タンク9内の土壌改良材としての薬液10が、前記薬液注入パイプ部材80…内に圧力注入されて、Step13で、土壌改良施工が完了する。
【0129】
この実施の形態では、前記ドリルヘッド部材50により、掘削されて形成される経路が、正確に推進されて形成されるので、複数本の薬液注入パイプ部材80…を、予め設定された間隔及び本数で、埋設する場合でも、良好な薬液注入効率で、土壌改良を行うことが出来る。
【0130】
上述してきたように、この実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法では、複数に分割されたケーシングロッド部材17…の延伸工程では、連結作業に伴って、推進が一時停止された前記ドリルヘッド部材50の地中における到達位置が、三次元計測器70が用いられて、計測される。
【0131】
前記ケーシングロッド部材17は、一定長さに分割されているので、前記ドリルヘッド部材50の地中における到達位置を、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aに、後続の他のケーシングロッド部材17の先端部17cを連結する作業毎に行うことにより、推進方向では、略一定の進行方向寸法毎の三次元座標上の到達位置が、正確に検出される。
【0132】
また、前記ケーシングロッド部材17の後端部17aに、後続の他のケーシングロッド部材17の先端部17cを連結する延伸工程で、前記ケーシングロッド部材17の内部に、三次元計測器70が、挿入されて、前記ドリルヘッド部材50の地中における到達位置が、逐次計測される。
【0133】
計測後、前記三次元計測器70を、前記ケーシングロッド部材17の内部から、抜出出来るので、前記ドリルヘッド部材50による掘削工程を行う際に、この三次元計測器70に、振動や電波の外乱による影響が与えられる虞が無い。
【0134】
このため、更に、正確に、到達位置が、検出される。
【0135】
更に、前記注入工程では、前記ケーシングロッド部材17の内部に挿通された薬液注入パイプ部材80の先端部が、前記ドリルヘッド部材50に装着された前記掘削プレート部材60の円柱状栓体61の後端面61aに突き当てられて、この掘削プレート部材60が、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱される。
【0136】
このため、到達位置近傍で、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80aから、直接、地中内に、薬液10を注入することが出来、前記ケーシングロッド部材17又はドリルヘッド部材50の内部の中空状の空間部等に、薬液10が残留する虞がない。
【0137】
また、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80a等、前記ケーシングロッド部材17又はドリルヘッド部材50の内部の中空状の空間部に、挿通されたパイプの先端が、地中に挿入されて、再び引き戻されれば、汚染土壌等、地中の土壌のサンプリングが可能となる。
【0138】
さらに、前記注入工程では、前記掘削プレート部材60が、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱された後、前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17が、前記薬液注入パイプ部材80の周囲から抜出される。
【0139】
前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17は、前記掘削プレート部材60が、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱しているので、前記薬液注入パイプ部材80の先端部80aと、干渉することなく、円滑に、抜出き出来る。
【0140】
このため、前記ドリルヘッド部材50及びケーシングロッド部材17は、容易に地上に回収されて、再利用することができる。
【0141】
そして、前記三次元計測器70に設けられたCCDカメラ71によって、前記ケーシングロッド部材17の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材50に形成された中空状の内部内側壁の周面の一部に設けられた角度確認用目印100が、撮像されて、ドリルヘッド部材50の軸を回動中心とする回動角度が、計測される。
【0142】
このため、この計測された回動角度に基づいて、前記ドリルヘッド部材50の推進量に対する前記掘削プレート部材60の向きが可変されることにより、地中を掘削するドリルヘッド部材50の進行方向が、制御可能となる。
【0143】
そして、既設構造物1の一側面側の発進側地表面4のみで、前記ドリルロッド推進装置11及び、薬液供給装置8等を載置出来て、薬液注入パイプ80を、同じく長尺物である前記ケーシングロッド部材17…等と同じ作業スペースを用いて施工出来る。
【0144】
このため、スペース効率が良好で、しかも、既設構造物1を撤去する必要がなく、地中の所望の位置に、土壌改良材を正確に注入することができる既設構造物直下の非開削土壌改良工法が提供される。
【実施例1】
【0145】
図24乃至図26は、この発明の実施の形態の実施例1の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられる三次元計測器170を示すものである。
【0146】
なお、前記実施の形態の三次元計測器70と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0147】
まず、構成上の相違点を中心として説明すると、この実施例1の三次元計測器170では、先端部70に、前端面から外側周面に渡り、一条の溝70bが凹設形成されている。
【0148】
この溝70bは、図26に示すように、前記ドリルヘッド部材50の中空状の内部内側壁の周面から凸設された角度確認用目印100に、係合するように構成されている。
【0149】
そして、係合状態で、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度が、この三次元計測器170の回動角度と一致するように構成されている。
【0150】
次に、この実施の形態の実施例1の作用効果について説明する。
【0151】
この実施例1の三次元計測器170では、前記実施の形態の作用効果に加えて、更に、前記ドリルヘッド部材50の地中の位置を確認する為、図26に示すように、前記ケーシングロッド部材17と接続される前記ドリルヘッド部材50の内部空間に、前記三次元計測器170を挿入する。
【0152】
そして、この三次元計測器170の先端部70aに形成された溝70bを、前記内側壁の周面から、内側に向けて凸設された角度確認用目印100に係合させる。
【0153】
このため、前記ドリルヘッド部材50の回動角度と、前記三次元計測器170の回動角度とが一致するので、この三次元計測器170の回動角度を計測することにより、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度が、容易に計測可能である。
【0154】
従って、更に、簡便に該計測された回動角度に基づいて、前記ドリルヘッド部材50の推進量に対する掘削プレート部材60の向きを可変して、地中を掘削するこのドリルヘッド部材50の進行方向を制御することができる。
【0155】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので、説明を省略する。
【0156】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0157】
即ち、前記実施の形態では、土壌改良材として、汚染土壌を中和して土壌を改良する土壌改良材を薬液10として、用いたものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、前記軟弱地盤層3を改良するグラウト等の薬液10であってもよいことは当然である。
【0158】
また、前記実施の形態では、前記薬液注入パイプ部材80が、挿入されて、図10に示すように先端部80aが、前記ドリルヘッド部材50に装着された前記掘削プレート部材60の円柱状栓体61の後端面61aに突き当てられて、この掘削プレート部材60を、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから離脱させるように構成されているが、特にこれに限らず、三次元計測器70の先端部或いは、他の棒状部材の先端部を前記ドリルヘッド部材50に装着された前記掘削プレート部材60の円柱状栓体61の後端面61aに突き当てられて、ドリルヘッド部材50の前端装着部50eから、前記掘削プレート部材60を離脱させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】この発明の最良の実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、全体の構成を説明する一部断面図、及び三次元計測器の拡大断面図である。
【図2】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、モニタ画面の一例を示す平面図である。
【図3】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルロッド推進装置の構成を説明する側面図である。
【図4】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルロッド推進装置のうち、ロッド推進装置の構成を説明する内部透過一部断面側面図である。
【図5】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルロッド推進装置のうち、引き抜きキャリッジ装置の構成を説明する上面図である。
【図6】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルロッド推進装置のうち、引き抜きキャリッジ装置の構成を説明する一部断面側面図である。
【図7】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるケーシングロッド部材の構成を説明する一部断面側面図である。
【図8】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルヘッド部材の正面図である。
【図9】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルヘッド部材の縦方向断面図である。
【図10】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルヘッド部材で、掘削プレート部材が離脱する様子を説明する縦方向断面図である。
【図11】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルヘッド部材で、要部の構成を説明し、掘削プレート部材が装着された前端装着部近傍の縦方向断面図である。
【図12】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられるドリルヘッド部材で、要部の構成を説明し、掘削プレート部材が装着された前端装着部近傍の下面図である。
【図13】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられる三次元計測器の側面図である。
【図14】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられる三次元計測器の構成を説明する模式図である。
【図15】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられる三次元計測器の計測原理を説明する模式図である。
【図16】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いられる三次元計測器の計測原理を説明する模式図である。
【図17】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、施工手順を説明するフローチャート図である。
【図18】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、ドリルヘッドによる掘削を行う様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図19】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、ドリルヘッドの位置を三次元計測器で計測する様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図20】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、薬液注入パイプの先端部で、掘削プレート部材を離脱させる様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図21】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、ドリルヘッド部材及び、ケーシングロッド部材を引き抜く様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図22】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、薬液注入パイプ部材が、地中内に埋設された様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図23】実施の形態の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、薬液注入パイプ部材を用いて、薬液を注入する様子を説明する模式的な地中断面図である。
【図24】実施の形態の実施例1の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いる三次元計測器の構成を説明する全体の側面図である。
【図25】実施の形態の実施例1の既設構造物直下の非開削土壌改良工法に用いる三次元計測器で、先端部の構成を説明する拡大上面図である。
【図26】実施の形態の実施例1の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、ドリルヘッド部材内に三次元計測器を挿入した様子を示す縦断面図である。
【図27】従来例の既設構造物直下の非開削土壌改良工法で、既設構造物の両側に、作業スペースを必要とする全体の構成を説明した模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0160】
11 ドリルロッド推進装置
15 地盤
16 汚染土壌
17 ケーシングロッド部材
20 ロッド推進装置
30 引き抜きキャリッジ装置
50 ドリルヘッド部材
60 掘削プレート部材
70 三次元計測器
71 撮像手段
80 薬液注入パイプ部材
80a 先端部
100 角度確認用目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を中空状とすると共に、一定長さに分割されて、連結により、延長可能となるケーシングロッド部材及び、該ケーシングロッド部材の掘削方向先端部に連結されて、掘削プレート部材の前端面が斜めとなるように装着される前端装着部が設けられたドリルヘッド部材とを用いて、前記ドリルヘッド部材の推進量に対する前記掘削プレート部材の向きを可変することにより、地中を掘削する該ドリルヘッド部材の進行方向を制御する掘削工程と、前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程と、前記ドリルヘッド部材方向へ向けて、前記ケーシングロッド部材の内部に、挿入される薬液注入パイプ部材を用いて、土壌改良材を地中に注入する注入工程とを有する既設構造物直下の非開削土壌改良工法であって、
前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程では、連結作業に伴って、推進が一時停止された前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置を三次元計測器を用いて計測することを特徴とする既設構造物直下の非開削土壌改良工法。
【請求項2】
前記ケーシングロッド部材の後端部に、後続の他のケーシングロッド部材の先端部を連結する延伸工程では、前記ケーシングロッド部材の内部に、三次元計測器を挿入して、前記ドリルヘッド部材の地中における到達位置を、逐次計測することを特徴とする請求項1記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法。
【請求項3】
前記注入工程では、前記ケーシングロッド部材の内部に、挿入される薬液注入パイプ部材の先端部を、前記ドリルヘッド部材に装着された前記掘削プレート部材に突き当てて、該掘削プレート部材を、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱させることにより、直接、前記薬液注入パイプ部材の先端部から、地中内に薬液を注入することを特徴とする請求項1又は2記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法。
【請求項4】
前記注入工程では、前記掘削プレート部材を、該ドリルヘッド部材の前端装着部から離脱させた後、前記ドリルヘッド部材及びケーシングロッド部材を、前記薬液注入パイプ部材の周囲から抜出させることを特徴とする請求項3記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法。
【請求項5】
前記三次元計測器に設けられた撮像手段によって、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面の一部に設けられた角度確認用目印を、撮像することにより、ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度を計測することを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法。
【請求項6】
前記三次元計測器の先端に、溝を設け、前記ケーシングロッド部材の中空状の内部と連通する前記ドリルヘッド部材に形成された中空状の内部内側壁の周面から凸設される角度確認用目印に、該溝を係合させることにより、前記ドリルヘッド部材の軸を回動中心とする回動角度を計測することを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか一項記載の既設構造物直下の非開削土壌改良工法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公開番号】特開2008−156995(P2008−156995A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350172(P2006−350172)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】