説明

昇圧型DC−DCコンバータおよび電源駆動用半導体集積回路

【課題】昇圧した電圧が発生していない場合にも起動が円滑に行なえるとともに、消費電流の増加を抑制して電池を入力電源とする場合に電池の消耗を遅くすることができる昇圧型DC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】電圧入力端子と出力端子との間にインダクタと整流素子が直列形態に接続され、インダクタに電流を流す駆動素子(SW1)と出力側からのフィードバック電圧に応じて駆動素子を制御する信号を生成し出力する制御回路(10)とを備えた昇圧型DC−DCコンバータにおいて、電圧入力端子にアノード端子が接続されカソード端子が制御回路の電源電圧端子に接続された第1ダイオード(D2)と出力端子にアノード端子が接続されカソード端子が制御回路の電源電圧端子に接続された第2ダイオード(D3)とを有する電源切替え回路(30)を設け、入力電圧または出力電圧のうち高い方の電圧を制御回路へ電源電圧として供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧型のDC−DCコンバータに関し、特に電池を電源とするスイッチングレギュレータ形式のDC−DCコンバータに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器には、電源として電池が用いられている。このような携帯用電子機器では、モータを回転させたり電子部品を駆動したりするため、電池電圧よりも高い電圧が必要になることがある。そのような場合、一般には、昇圧型のDC−DCコンバータが使用される。
【0003】
従来、昇圧型のDC−DCコンバータとしては、例えば図3に示すようなスイッチングレギュレータが知られている。このスイッチングレギュレータは、スイッチングトランジスタM1をオンさせてコイルL1に電流を流してエネルギーを蓄積し、M1をオフさせることでコイルからエネルギーを放出させ、ダイオードD1で整流して出力端子に接続されているコンデンサに電荷を供給して昇圧した電圧を発生する。
【0004】
さらに、出力電圧Voutを抵抗R1,R2で分圧してPWM(パルス幅変調)コンパレータなどを有する制御回路CNTへフィードバックし、制御回路CNTは出力電圧Voutが下がると制御パルスのパルス幅を広げてM1がオンされる時間を長くし、出力電圧Voutが上がると制御パルスのパルス幅を狭めてM1がオンされる時間を短くすることで出力電圧Voutを一定にするというものであり、入力電圧Vinの数倍の出力電圧Voutを得ることが可能である。
【特許文献1】特開2000−102244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯用電子機器によっては、1本の電池を電源として使用しそれを昇圧して制御回路や電子部品を動作させるように構成されるものがある。かかる機器においては、電池が消耗して電圧が下がったとしてもスイッチングレギュレータを安定して動作させることができるようにするため、スイッチングレギュレータの制御回路に出力側の昇圧した電圧を供給して動作させるように構成することがある。
【0006】
しかしながら、図3に示すようなスイッチングレギュレータにおいては、コイルL1−ダイオードD1を介して入力電圧が制御回路CNTに供給されるため、まだ昇圧した電圧が発生していない起動開始時には、ダイオードD1の順方向電圧およびコイルL1の電圧降下分だけ低い電圧しか制御回路CNTに供給されないため、スイッチングレギュレータの起動が円滑に行なえないおそれがある。
【0007】
なお、昇圧型のDC−DCコンバータにおいて、入力直流電圧と出力直流電圧との電圧値を比較し、入力直流電圧が出力直流電圧よりも大きい昇圧動作以前は昇圧回路に入力直流電圧を供給して昇圧回路を起動し、出力直流電圧が入力直流電圧以上となる昇圧動作後には入力直流電圧に代えて出力直流電圧を昇圧回路に供給して昇圧動作を継続させる供給電源切り替え手段を設けるようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1に開示されている発明は、供給電源切り替え手段として一対のスイッチMOSFETを使用するとともに、このスイッチMOSFETをオン/オフ制御するために電圧比較回路や論理回路を設けている。そのため、制御回路のチップサイズが増大しコストアップを招くとともに、これらの付加回路の消費電流分だけ制御回路全体の消費電流が増加するため、電池を入力電源とするスイッチングレギュレータでは電池の消耗が早くなるという不具合がある。
【0009】
この発明は上記のような背景の下になされたもので、その目的とするところは、昇圧した電圧が発生していない場合にも起動が円滑に行なえる安価な昇圧型DC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、直流電圧が入力される電圧入力端子と負荷が接続される出力端子との間に、インダクタと整流素子が直列形態に接続され、前記インダクタと整流素子との接続ノードに結合され前記インダクタに電流を流す駆動素子と、出力側からのフィードバック電圧に応じて前記駆動素子を制御する信号を生成し出力する制御回路と、を備えた昇圧型DC−DCコンバータであって、前記電圧入力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第1ダイオードと、前記出力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第2ダイオードと、を有する電源切替え回路を備え、前記電源切替え回路は、前記電圧入力端子の電圧または前記出力端子の電圧のうち高い方の電圧を前記制御回路へ電源電圧として供給するように構成したものである。
【0011】
上記のような構成によれば、制御回路を起動して昇圧動作を開始する前は出力電圧よりも電位の高い入力電圧が電源電圧として制御回路に供給されるため、制御回路の起動が円滑に行なえる。また、制御回路の起動が円滑に行なえるため、電池を入力電源とする場合には電池電圧が下がっても起動できるとともに、入力電源に電池以外の直流電源を使用する場合にも、入力電圧の低電圧化が可能となる。
【0012】
ここで、望ましくは、前記制御回路は半導体チップ上に半導体集積回路として形成され、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは外部素子として前記半導体集積回路に接続されるように構成する。これにより、電源切替え回路を備えていない従来の制御回路を使用したシステムにおいても自動的に高い方の電圧を電源電圧として供給することができる。
【0013】
前記制御回路は半導体チップ上に半導体集積回路として形成され、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは前記半導体チップと同一のチップ上に形成したものを使用するように構成しても良い。これにより、コンバータを構成する部品点数を減らしシステムの小型化およびコストダウンが可能となる。
【0014】
また、望ましくは、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは、ショットキダイオードとする。ショットキダイオードは順方向電圧が小さいため、電圧降下の少ない電圧を電源電圧として制御回路に供給することができる。
【0015】
さらに、前記駆動素子は、前記半導体チップと同一のチップ上に形成したものを使用するのが望ましい。これにより、コンバータを構成する部品点数をさらに減らし、システムのより一層の小型化およびコストダウンが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、昇圧した電圧が発生していない場合にも起動が円滑に行なえる安価な昇圧型DC−DCコンバータを実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明を適用した昇圧型のDC−DCコンバータの一実施形態を示す。
【0019】
本実施形態のDC−DCコンバータは、電池20からの直流電圧Vinが入力される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に直列形態に接続されたコイル(インダクタ)L1および整流用ダイオードD1、前記コイルL1とダイオードD1との接続ノードと接地点GNDとの間に接続されたNチャネルMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)からなる駆動用スイッチングトランジスタSW1、該駆動用スイッチングトランジスタSW1をオン、オフ制御するスイッチング制御回路10、出力端子OUTと接地点との間に接続された平滑コンデンサC1などによって、昇圧型のスイッチングレギュレータとして構成されている。
【0020】
ここで、特に限定されるものではないが、スイッチング制御回路10は、1つの半導体チップ上に半導体集積回路として構成されている。また、出力端子OUTと接地点との間には、上記平滑コンデンサC1と並列に、直列形態の抵抗R1,R2からなる抵抗分圧回路が接続され、抵抗R1,R2によって分圧された電圧がスイッチング制御回路10のフィードバック端子FBに印加されるように構成されている。
【0021】
この実施形態のDC−DCコンバータには、アノード端子が各々電圧入力端子INと出力端子OUTに接続されカソード端子が上記スイッチング制御回路10の電源電圧端子に接続された一対のダイオードD2,D3からなる電源切り替え回路30が設けられており、昇圧動作開始前のように入力電圧Vinの方が出力電圧Voutよりも高い状態では、入力電圧Vinがスイッチング制御回路10の電源電圧端子に供給される。
【0022】
そして、スイッチング制御回路10が起動されてコンバータの昇圧動作によって出力電圧Voutの方が入力電圧Vinよりも高くなると、自動的に電源供給パスが切り替わってダイオードD3を通して出力電圧Voutがスイッチング制御回路10の電源電圧端子に供給されるようになる。電源切り替え回路30を構成するダイオードD2,D3としては、順方向電圧の小さな例えばショットキダイオードが適している。この実施形態では、ダイオードD2,D3としてディスクリートの素子を使用しているが、スイッチング制御回路10が形成されている半導体チップ上に形成された素子を用いることも可能である。
【0023】
本実施形態のDC−DCコンバータは、入力電源として0.9〜1.5Vのような電圧の電池を想定しており、この電池電圧を昇圧して5Vのような出力電圧として出力するように構成される。この場合、整流用ダイオードD1も電源切替え用のダイオードD2,D3も5V以上の耐圧が必要である。上述したように、D2,D3としてオンチップのダイオードを使用するようにしたとしても、そのような耐圧の素子は実現可能である。
【0024】
コイルL1と直列に接続されている整流用ダイオードD1は、PN接合ダイオードでもショットキダイオードでもよい。出力端子OUTに接続される負荷の抵抗が小さい場合、整流用ダイオードD1には数mAの電流が流れることがあるが、スイッチング制御回路10の消費電流は数μAのオーダーである。また、ショットキダイオードの順方向電圧は流れる電流に比例する。
【0025】
そのため、整流用ダイオードD1に電源切替え用のダイオードD2,D3と同様にショットキダイオードを使用したとしても、図3のように整流用ダイオードD1を通して入力電圧Vinをスイッチング制御回路10に電源として供給する場合よりも、本実施例のように電源切替え用のダイオードD2を通して入力電圧Vinをスイッチング制御回路10に電源として供給する方が、電圧降下量を小さくしてその分高い電源電圧を供給することが可能である。
【0026】
なお、スイッチング制御回路10は、例えば図2に示すように、上記フィードバック端子FBの電圧と参照電圧Vrefとの電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプERR−AMPや、誤差アンプの出力と所定の周波数の三角波もしくは鋸波を入力とし前記駆動用スイッチングトランジスタSW1を制御する駆動パルスを生成するPWM(パルス幅変調)コンパレータPWM−CMP、PWMパルスに応じてトランジスタSW1の駆動パルスを生成し出力するドライバDRVなどを備え、フィードバック電圧に応じて出力電圧が高いときは出力駆動パルスのパルス幅を狭くしフィードバック電圧が低いときはパルス幅を広くするような制御を行なうように構成される。
【0027】
スイッチングトランジスタSW1は上記駆動パルスによって間歇的にオンされてコイルL1に電流を流してエネルギーを蓄積し、SW1がオフされるとコイルからエネルギーを放出させ、ダイオードD1で整流して出力端子に接続されているコンデンサC1に電荷を供給して、電池からの入力電圧を昇圧した出力電圧Voutを発生させる。また、分圧抵抗R1,R2からの電圧に基づくフィードバック制御により、負荷が変動しても出力電圧Voutを一定に保持することができる。
【0028】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1のDC−DCコンバータにおいては、フィードバック電圧を生成する分圧抵抗R1,R2として外部素子を使用しているが、スイッチング制御回路10が形成されている半導体チップ上に形成された素子を用いることも可能である。
【0029】
また、前記実施形態では、誤差アンプERR−AMPの後段にPWMコンパレータPWM−CMPを設けて、スイッチング制御回路10がPWM制御で駆動用スイッチングトランジスタSW1の制御パルスを生成すると説明したが、PFM(パルス周波数変調)制御で制御パルスを生成するものであっても良い。
【0030】
さらに、前記実施形態においては、駆動用スイッチングトランジスタSW1を外付け素子として制御用ICに接続するように構成したものを示したが、スイッチング制御回路10が形成されたICのチップ内に形成した素子を使用するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の説明では、本発明を、コイルと直列に接続される整流素子としてダイオードを使用したダイオード整流型のDC−DCコンバータに適用したものを説明したが、ダイオードの代わりにMOSFETを使用した同期整流型のDC−DCコンバータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した昇圧型DC−DCコンバータの一実施形態を示す回路構成図である。
【図2】図1のDC−DCコンバータを構成するスイッチング制御回路の一例を示す回路構成図である。
【図3】従来の昇圧型DC−DCコンバータの一例を示す回路構成図である。
【符号の説明】
【0033】
10 スイッチング制御回路
20 入力電源(電池)
30 電源切替え回路
L1 コイル(インダクタ)
D1 整流用ダイオード
D2,D3 電源切替え用ダイオード
C1 平滑コンデンサ
SW1 コイル駆動用スイッチングトランジスタ
R1,R2 出力の分圧抵抗
ERR−AMP 誤差アンプ
PWM−CMP PWMコンパレータ
DRV ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と負荷が接続される出力端子との間に、インダクタと整流素子が直列形態に接続され、前記インダクタと整流素子との接続ノードに結合され前記インダクタに電流を流す駆動素子と、出力側からのフィードバック電圧に応じて前記駆動素子を制御する信号を生成し出力する制御回路と、を備えた昇圧型DC−DCコンバータであって、
前記電圧入力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第1ダイオードと、前記出力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第2ダイオードと、を有する電源切替え回路を備え、
前記電源切替え回路は、前記電圧入力端子の電圧または前記出力端子の電圧のうち高い方の電圧を前記制御回路へ電源電圧として供給するように構成されていることを特徴とする昇圧型DC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は半導体チップ上に半導体集積回路として形成され、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは外部素子として前記半導体集積回路に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の昇圧型DC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御回路は半導体チップ上に半導体集積回路として形成され、前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは前記半導体チップと同一のチップ上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の昇圧型DC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1ダイオードおよび第2ダイオードは、ショットキダイオードであることを特徴とする請求項2または3に記載の昇圧型DC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記駆動素子は、前記半導体チップと同一のチップ上に形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の昇圧型DC−DCコンバータ。
【請求項6】
直流電圧が入力される電圧入力端子と負荷が接続される出力端子との間に直列形態に接続されたインダクタと整流素子との接続ノードに結合され前記インダクタに電流を流す駆動素子を制御する信号を生成し出力する制御回路を備えた電源駆動用半導体集積回路であって、
前記電圧入力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第1ダイオードと、前記出力端子にアノード端子が接続されカソード端子が前記制御回路の電源電圧端子に接続された第2ダイオードと、を有する電源切替え回路を備え、
前記電源切替え回路は、前記電圧入力端子の電圧または前記出力端子の電圧のうち高い方の電圧を前記制御回路へ電源電圧として供給するように構成されていることを特徴とする電源駆動用半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−254110(P2009−254110A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98407(P2008−98407)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】