説明

昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】昇華型感熱転写リボンへの加工性に優れ、さらに熱転写プリンターで高速で印画しても、シワが発生せず、かつ印画性に優れたリボンを作製するのに好適な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】縦方向の屈折率(Nx)と横方向の屈折率(Ny)との差(Nx−Ny)が0.00〜0.03であり、下記式(1)で定義する面配向度(AO)が0.160〜0.170であり、フィルム表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nmを超え2200nm以下であることを特徴とする昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム。
AO=(Nx+Ny)/2−Nz ・・・(1)
Nx:縦方向の屈折率、Ny:横方向の屈折率、Nz:厚み方向の屈折率

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、さらに詳細には、昇華型感熱転写プリンターで高速で印画してもインクのかすれがなく、かつヘッドと接触した際、シワまたはタルミが発生しにくいリボンを作製するのに好適な二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱転写記録方式は、基材フィルム表面に設けられたインク層を、サーマルヘッドの加熱状態に応じて受像紙などの表面に転写する記録方式であり、印画が鮮明であるとともに、装置の簡便さや低騒音の観点から広く普及しつつある。その中でも昇華型感熱転写法は、基材上に塗布されたインク層のインクをサーマルヘッドにより加熱・気化させることにより受像紙に転写するものである。昇華型感熱転写法は、溶融型感熱転写法に比べ階調性が優れていることから、ビデオプリンター、デジタルカメラやデジタルビデオなどのフルカラー映像コピー用を中心に需要が拡大しつつある。
【0003】
また、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、耐熱性、寸法安定性、耐薬品性など、多くの性能に優れており、コストパフォーマンスに優れているため、昇華型感熱転写リボン用基材フィルムとして一般に使用されている。
【0004】
感熱転写リボンに用いるポリエステルフィルムとして、平均屈折率を1.604〜1.607、かつ面配向度(AO)を0.170〜0.178に制御したポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このポリエステルフィルムから作製したリボンを用いて熱転写プリンターで印画させた場合、シワが発生しやすいという問題があった。
【0006】
また、昇華型感熱転写リボンに用いるポリエステルフィルムとして、印画性を改良するため、フィルム表面の10点平均粗さ(SRz)を700〜1500nmに制御したポリエステルフィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このフィルムは滑り性が悪く、フィルムを製造する際、および/または昇華型熱転写リボンを製造する際にシワが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2000−153676号公報
【特許文献2】特開平11−147377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点に鑑み、昇華型感熱転写リボンへの加工性に優れ、さらに熱転写プリンターで高速で印画しても、シワが発生せず、かつ印画性に優れたリボンを作製するのに好適な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のポリエステルフィルムは、縦方向の屈折率(Nx)と横方向の屈折率(Ny)との差(Nx−Ny)が0.00〜0.03であり、下記式(1)で定義する面配向度(AO)が0.160〜0.170であり、フィルム表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nmを超え2200nm以下であることを特徴とする。
AO=(Nx+Ny)/2−Nz ・・・(1)
Nx:縦方向の屈折率、Ny:横方向の屈折率、Nz:厚み方向の屈折率
【発明の効果】
【0010】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムはフィルム製造工程および/または昇華型感熱転写リボンへの加工工程でシワまたはタルミ等が発生しにくく、さらに本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの一方の面に熱転写インキ層を設け、他方の面に耐熱層を設けた昇華転写型感熱転写リボンは熱転写プリンターの印字速度の高速化に対応し、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下で印画させた際、シワやタルミや破断等が発生することなく、優れた印画性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主たる構成成分とすることが昇華型感熱転写リボンへの加工工程やリボンを熱転写プリンターで印画した際にシワやタルミや破断等を抑制する点で重要である。
【0012】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、その目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。使用できる上記のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のジカルボン酸およびそれらのエステル誘導体の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0013】
また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。ここで、使用できる他のグリコール成分の量は10モル%以下が好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。他のグリコール成分の使用量が10モル%を超えるとポリエステルの熱安定性が悪くなる。
【0014】
本発明では、ポリエステルフィルムの縦方向の屈折率(Nx)と横方向の屈折率(Ny)との差(Nx−Ny)が0.00〜0.03であり、面配向度(AO)が0.160〜0.170であることが熱転写プリンターの印字速度の高速化に対応し、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下で印字させた際、シワやタルミや破断等を抑制するために必要である。
【0015】
縦方向の屈折率(Nx)と横方向の屈折率(Ny)との差(Nx−Ny)が0.00未満の場合、および/または面配向度(AO)が0.160未満の場合、熱転写プリンターで印画させた際、タルミが発生しやすいため好ましくない。逆に、屈折率差(Nx−Ny)が0.03を超える場合、および/または面配向度(AO)が0.170を超える場合、熱転写プリンターで印画させた際、シワや破断が発生しやすいため好ましくない。
【0016】
屈折率差(Nx−Ny)および面配向度(AO)を上記の範囲に制御するには、延伸方法として、まず横延伸(第1段目延伸)し、次いで縦延伸(第2段目延伸)を行う延伸方法が好ましい。この際、第1段目の横延伸では、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍延伸し、次いで第2段目の縦延伸では、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.2〜3.8倍延伸することが好ましい。
【0017】
本発明では、必要に応じて第3段目の延伸として、横方向に、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.1〜1.5倍で再延伸してもよい。
【0018】
本発明では、第2段目延伸または第3段目延伸の後、140〜230℃で公知の巾方向を一定長とした熱固定(例えば、フィルムの両端をクリップで把持して行う熱固定)を実施し、次いで、140〜230℃の温度範囲で巾方向に1〜8%緩和処理を実施して寸法安定性を高めることは好ましい。
【0019】
本発明では、ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nmを超え2200nm以下であることが、フィルム製造工程および/または昇華型感熱転写リボンへの加工工程での巻取り性や走行性を良化させ、かつ熱転写プリンターでのリボンの印画性を良化させるために重要である。
【0020】
ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nm以下の場合、フィルム製造工程および/または昇華型感熱転写リボンへの加工工程での巻取り性や走行性が劣るため好ましくない。逆に、2200nmを超える場合、熱転写プリンターでのリボンの印画性が低下する(かすれが発生する)ため好ましくない。
【0021】
ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)を上記範囲に制御するには、ポリエステルフィルムに平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を0.02〜0.08質量%と平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を0.10〜0.30質量%含有させることが好ましい。大粒径の粒子としてシリカ、小粒径の粒子として、炭酸カルシウムとカオリンの3種類を用いることがさらに好ましい。
【0022】
本発明では、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの極限粘度は、0.52〜0.65dl/gであるのが好ましい。極限粘度が0.52dl/g未満の場合、ポリエステルフィルム製造時や昇華型感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなる。一方、極限粘度が0.65dl/gを超える場合、所定の製品巾への裁断工程で寸法不良が起こりやすくなる。
【0023】
本発明では、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは2〜7μmであることが好ましく、3〜6μmであることがさらに好ましい。ポリエステルフィルムの厚みが2μm未満の場合、ポリエステルフィルム製造時や昇華型感熱転写リボンへの加工工程での破断が発生しやすくなる。逆に、ポリエステルフィルムの厚みが7μmを超える場合、熱の伝導が悪くなり、また熱が2次元的に拡散するので、高速印画する際、印画性能が悪化する。
【実施例】
【0024】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。まず、実施例および比較例に用いた評価方法について説明する。
【0025】
(1)ポリエステルの極限粘度(IV)
ポリエステル原料0.1gを、フェノール/テトラクロロエタン(容積比で3/2)の混合溶媒25ml中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0026】
(2)ポリエステルのガラス転移温度(Tg)
ポリエステル原料を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定し、接線法によりガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0027】
(3)粒子の平均粒径
粒子を水に分散させたスラリー化した後、レーザー回折式粒度分布計(リーズアンドノースラップ社製、マイクロトラックHRA)を用いて平均粒径を測定した。
【0028】
(4)ポリエステルフィルムの屈折率(Nx、Ny、Nz)
アッベ屈折率計の接眼側に偏光板アナライザーを取付け、NaD線を光源とし、ヨウ化メチレンを媒液に用いて25℃で縦方向の屈折率(Nx)、横方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。
【0029】
(5)ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)
JIS−B0602で定義される値であり、(株)小坂研究所の触針式表面粗さ計(SE−3AKとSPA−11)を用いて測定し、n=5の平均値をSRzとした。
【0030】
(測定条件)
触針先端半径:2μm
測定圧力 :30mg
カットオフ :0.25mm
測定長 :1mm
走査回数:150回
【0031】
(6)昇華型感熱転写リボンの作製
下記組成の耐熱性バックコート層用塗布液を塗膜の厚みが0.7μmになるようにグラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥した後巻取った。次いで、耐熱性バックコート層とは反対面に、易接着層用塗布液を塗膜の厚みが0.1μmになるようにグラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥した後、昇華型感熱転写インク層用塗液を塗膜厚みが1.0μmになるようにグラビアコーターで塗工し、100℃で乾燥させて昇華型感熱転写リボンを作製した。塗工条件は100m/分、張力49N/mで行い、巻取り時の接圧490N/mとした。
【0032】
(易接着層用塗布液組成)
・アクリル変性ポリエステル 2.78質量%
・エポキシ樹脂 0.02質量%
・ノニオン型界面活性剤 0.20質量%
・水 97.00質量%
【0033】
(耐熱性バックコート層用塗布液組成)
・ポリビニルブチラール樹脂 1.60質量部
・ポリイソシアネート 8.46質量部
・リン酸エステル系界面活性剤 1.36質量部
・タルク 0.32質量部
・メチルエチルケトン 38.43質量部
・トルエン 38.43質量部
【0034】
(昇華型感熱転写インク層用塗布液組成)
・マゼンタ染料(MSRedG) 3.5質量%
・ポリビニルアセトアセタール樹脂 3.5質量%
・メチルエチルケトン 46.5質量%
・トルエン 46.5質量%
【0035】
(7)昇華型感熱転写リボンの印画性評価
印画性受像シートVY・200((株)日立製作所製 標準ペーパー 商品名)に、プリンター日立VY・200((株)日立製作所製 商品名)を用いて光学濃度が最大になるように印画した。なお、○を実用性ありと評価した。
○:鮮明に印画できる
△:リボンのタルミにより印画濃度が均一とならない
×:リボンに皺が入り印画が乱れる
××:印画抜け(かすれ)が発生する
【0036】
実施例および比較例に用いた粒子の含有率、延伸倍率、緩和温度と緩和率、ポリエステルフィルムの縦方向と横方向との屈折率差(Nx−Ny)と面配向度(AO=(Nx+Ny)/2−Nz)、ポリエステルフィルム表面の10点平均粗さ(SRz)、昇華型感熱転写リボンの印画性を表1に示す。
【0037】
実施例および比較例に用いたポリエステル原料A〜D(いずれもガラス転移温度が74℃、固有粘度が0.58dl/gで粒子の含有量が異なるポリエステル原料)は、下記に示すものを使用した。
【0038】
(1)ポリエステルA
ポリエステルAは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを500ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを800ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを1500ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0039】
(2)ポリエステルB
ポリエステルBは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを300ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを500ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを1900ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0040】
(3)ポリエステルC
ポリエステルCは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを100ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを200ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを2300ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0041】
(4)ポリエステルD
ポリエステルDは、平均粒径が3.5μmの凝集シリカを900ppm、平均粒径が0.8μmのカオリンを1700ppm、平均粒径が0.8μmの合成炭酸カルシウムを500ppm含有するポリエチレンテレフタレートである。
【0042】
[実施例1]
ポリエステルAを120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)し、単軸押出機を用いて280℃で溶融させた後、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして未延伸シートを得た。なお、キャストの際に、冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させた。
【0043】
該未延伸シートをテンターで予熱温度92℃、延伸温度86℃で横方向に3.2倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.6倍延伸し(第2段目延伸)、150℃で1.30倍再横延伸し(第3段目延伸)、225℃で定長巾熱処理した後、225℃で横方向に2.5%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0044】
本実施例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1770nm、Nx−Nyが0.021であり、AOが0.164であり、昇華型感熱転写リボンの印画性に優れており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0045】
[実施例2]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度82℃、延伸温度85℃で横方向に3.5倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.4倍延伸し(第2段目延伸)、150℃で1.20倍再横延伸し(第3段目延伸)、225℃で定長巾熱処理した後、225℃で横方向に5.0%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0046】
本実施例2で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1720nm、Nx−Nyが0.004であり、AOが0.166であり、昇華型感熱転写リボンの印画性に優れており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0047】
[実施例3]
ポリエステルBを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本実施例3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1530nm、Nx−Nyが0.021であり、AOが0.164であり、昇華型感熱転写リボンの印画性に優れており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適であった。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度101℃、延伸温度94℃で横方向に3.85倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.85倍延伸し(第2段目延伸)、224℃で1.05倍再横延伸し(第3段目延伸)、225℃で定長巾熱処理した後、225℃で横方向に3.3%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0049】
本比較例1で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1790nm、Nx−Nyが0.033であり、AOが0.169であり、昇華型感熱転写リボンの印画性が劣っており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0050】
[比較例2]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度101℃、延伸温度94℃で横方向に3.85倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に4.2倍延伸し(第2段目延伸)、224℃で1.08倍再横延伸し(第3段目延伸)、225℃で定長巾熱処理した後、225℃で横方向に4.8%緩和処理して、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0051】
本比較例2で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1830nm、Nx−Nyが0.055であり、AOが0.172であり、昇華型感熱転写リボンの印画性が劣っており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0052】
[比較例3]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを、テンターで予熱温度92℃、延伸温度86℃で横方向に3.2倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度105℃で縦方向に3.1倍延伸し(第2段目延伸)、150℃で1.3倍再横延伸し、225℃で定長巾熱処理した後、225℃で横方向に3.3%緩和処理して厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0053】
本比較例3で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1770nm、Nx−Nyが−0.023であり、AOが0.159であり、昇華型感熱転写リボンの印画性が劣っており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0054】
[比較例4]
ポリエステルCを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得ようとしたが、緩和処理後にフィルムを巻取る際にシワが入り、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
本比較例4で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが1150nm、Nx−Nyが0.021であり、AOが0.164であった。
【0055】
[比較例5]
ポリエステルDを用いた以外は実施例1と同様にして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
本比較例5で得られた二軸延伸ポリエステルフィルムは、表1に示すとおり、SRzが2350nm、Nx−Nyが0.021であり、AOが0.164であり、昇華型感熱転写リボンの印画性が劣っており、昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムとして好ましくなかった。
【0056】
【表1】

【0057】
以上、本発明の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムについて、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲において、明細書に開示した材料、製造条件を適宜組み合わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムを用いて作製した昇華型感熱転写リボンは、熱転写プリンターの印画速度の高速化に対応し、サーマルヘッドによる印加エネルギーが高い条件下で印画させた際、シワやタルミや破断等が発生することなく、優れた印画性を示すため極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の屈折率(Nx)と横方向の屈折率(Ny)との差(Nx−Ny)が0.00〜0.03であり、下記式(1)で定義する面配向度(AO)が0.160〜0.170であり、フィルム表面の10点平均粗さ(SRz)が1500nmを超え2200nm以下であることを特徴とする昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム。
AO=(Nx+Ny)/2−Nz ・・・(1)
Nx:縦方向の屈折率、Ny:横方向の屈折率、Nz:厚み方向の屈折率
【請求項2】
ポリエステルフィルムに平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を0.02〜0.08質量%と平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を0.10〜0.30質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
粒子(大)がシリカ、粒子(小)が炭酸カルシウムまたはカオリンの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記フィルムが横方向、縦方向の順に延伸して得られた二軸延伸ポリエステルフィルムであって、第1段目の横延伸を、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍延伸し、次いで第2段目の縦延伸では、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.2〜3.8倍延伸して得られた請求項1〜3のいずれかに記載の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステルの未延伸シートを、横方向、縦方向の順に延伸して得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法であって、ポリエステルフィルムには平均粒径2.0〜5.0μmの粒子(大)を0.02〜0.08質量%と平均粒径0.1〜1.5μmの粒子(小)を0.10〜0.30質量%含有し、第1段目の横延伸を、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍延伸し、次いで第2段目の縦延伸を、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.2〜3.8倍に延伸することを特徴とする請求項1記載の昇華型感熱転写リボン用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2007−223202(P2007−223202A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48262(P2006−48262)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】