説明

昇降ワイヤ診断装置

【課題】 スタッカクレーンの稼動を停止させること無く、昇降ワイヤの内部の素線の断線状況を確実に検知することができる昇降ワイヤ診断装置を提供する。
【解決手段】 昇降ワイヤ診断装置23は、昇降ワイヤ12の導電性素線と接触するように配置され、昇降ワイヤ12に電流を流すための測定用電極ローラ27,28と、電圧源30の一方の端子と測定用電極ローラ27とを接続する電線31と、電圧源30の他方の端子と測定用電極ローラ28とを接続する電線32と、昇降ワイヤ12における測定用電極ローラ27,28間の部分に流れる電流値を測定する電流計34と、電流計34の計測値を用いて昇降ワイヤ12の抵抗値を計算し、この抵抗値の変化量に基づいて導電性素線の断線状態を判断するワイヤ断線診断部35とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動倉庫のスタッカクレーンに使用される昇降ワイヤを診断する昇降ワイヤ診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫のスタッカクレーンは、例えば、走行台の前後両側に立設された2本のマストと、各マストの上端部を連結する上部フレームと、各マストに昇降自在に支持され、ワークが載置されるキャリッジと、このキャリッジ上に設けられ、ワークを移載するためのスライドフォークと、キャリッジを吊り上げるための2本の昇降ワイヤとを備えている。
【0003】
このようなスタッカクレーンにおいて、昇降ワイヤの切断や破断はワークの損壊等に直結するため、定期点検時に昇降ワイヤの点検を行うようにしている。しかし、現状では、昇降設備にて点検個所まで上り、昇降ワイヤを外部から目視で点検することが一般的である。この場合には、マストの全高が高くなるほど、点検に工数がかかる。また、昇降ワイヤの点検時に、スタッカクレーンの稼動を停止させる必要がある。さらに、目視による点検では、昇降ワイヤの外側の素線しか点検できないため、昇降ワイヤの内部の素線の断線状況を確認することはできない。
【0004】
一方、例えば特許文献1に記載されているロープ診断装置を採用して、昇降ワイヤを診断することも考えられる。特許文献1に記載のロープ診断装置では、主ロープに含まれる素線を電源・ロープ端間接続電線を介して電源装置の一方の端子に接続し、電源装置の他方の端子を電源・シーブ間接続電線を介してシーブに接続することにより、一つの回路を形成している。主ロープの被覆体に損傷が生じることで剥き出しになった素線がシーブに接触すると、回路が閉じて電流が流れるようになる。よって、この時の電流値から被覆体の損傷を判定する。
【特許文献1】特開2002−348068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、被覆体が損傷して素線がシーブに接触すると、回路に電流が流れるため、被覆体の損傷を確認することはできるが、素線、特に昇降ワイヤの内部の素線のどの程度が断線したかどうかまでは分からない。
【0006】
本発明の目的は、スタッカクレーンの稼動を停止させること無く、昇降ワイヤの内部の素線の断線状況を確実に検知することができる昇降ワイヤ診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数本の導電性素線からなり、スタッカクレーンの昇降体を吊り上げるための昇降ワイヤを診断する昇降ワイヤ診断装置において、導電性素線と電気的に接続可能となるように配置された少なくとも1対の測定用電極を有し、昇降ワイヤに電流を流して昇降ワイヤの抵抗値を検出する抵抗検出手段と、昇降ワイヤの抵抗値の変化量に基づいて導電性素線の断線状態を判断する断線判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
昇降ワイヤの導電性素線が断線すると、その断線した導電性素線には電流が流れないので、昇降ワイヤの抵抗値が増加する。本発明は、かかる事実に着目して為されたものである。即ち、少なくとも1対の測定用電極を導電性素線と電気的に接続可能となるように配置し、これらの測定用電極を介して昇降ワイヤに電流を流し、昇降ワイヤの抵抗値を検出する。そして、昇降ワイヤの抵抗値が増加したときは、その増加量に応じた数だけ導電性素線が断線したものと判定する。このように昇降ワイヤの抵抗値の変化量に基づいて導電性素線の断線状態を判断することにより、目視では確認することができない昇降ワイヤの内部の導電性素線の断線状況を確実に検知することができる。また、上記のような測定用電極を設け、昇降ワイヤに電流を流すようにしたので、スタッカクレーンの稼動を停止させずに、導電性素線の断線状況の確認を行うことができる。
【0009】
好ましくは、測定用電極は、ローラを含み、導電性素線に対して接触状態となるように配置されている。この場合には、昇降体が昇降動作する際に、昇降ワイヤはローラ状の測定用電極を回転させながら動くことになるため、摩擦によって昇降ワイヤの寿命が短くなることが防止される。
【0010】
また、好ましくは、スタッカクレーンの一方側には、昇降ワイヤを下側に取り回すワイヤガイド部と、ワイヤガイド部の下方に位置し、昇降ワイヤが巻き付けられるワイヤ巻き上げ部とが設けられており、測定用電極は、ワイヤガイド部とワイヤ巻き上げ部との間に配置されている。この場合には、ワイヤガイド部とワイヤ巻き上げ部との間の空いているスペースを有効利用して、測定用電極を設置することができる。また、昇降ワイヤにおいてワイヤガイド部を頻繁に通る部分の導電性素線が特に摩耗しやすいため、その部分の診断を重点的に行う必要があるが、昇降体を上昇させることで、その導電性素線の摩耗しやすい部分が1対の測定用電極の間に位置するようになるため、当該部分の診断を確実に実施することができる。
【0011】
さらに、好ましくは、断線判断手段は、抵抗検出手段により検出された昇降ワイヤの抵抗値と予め取得された昇降ワイヤの初期抵抗値とを比較して、導電性素線の断線状態を判断する。この場合には、昇降ワイヤの初期抵抗値、例えば昇降ワイヤの購入時や設置時の抵抗値を予め取得しておくことで、導電性素線の断線状態の判断を自動的に容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スタッカクレーンの稼動を停止させること無く、昇降ワイヤの内部の素線の断線状況を確実に検知することができる。これにより、入出庫作業等を円滑に行いつつ、昇降ワイヤの状態を高精度に診断することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係わる昇降ワイヤ診断装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる昇降ワイヤ診断装置の一実施形態を備えた自動倉庫用スタッカクレーンを示す斜視図であり、図2は、図1に示した自動倉庫用スタッカクレーンの側面図である。各図において、スタッカクレーン1は、荷物等のワーク2を図示しないラック(保管棚)に対して出し入れするための昇降装置である。
【0015】
スタッカクレーン1は、床Sの上に設置された走行レール3に沿って走行可能な車輪(図示せず)を有する走行台4と、この走行台4の前後両側に立設されたマスト5,6と、各マスト5,6の上端部を連結する上部フレーム7とを備えている。走行レール3の直上位置には、上部フレーム7を案内する上部ガイドレール8が設置されている。走行台4は、走行モータ9によって走行レール3上を走行する。マスト5,6には、ワーク2が載置されるU字状のキャリッジ10が昇降自在に支持されている。キャリッジ10上には、自動倉庫の入出庫口やラックに対してワーク2を移載するための2つのスライドフォーク11が設けられている。
【0016】
また、スタッカクレーン1は、キャリッジ10をマスト5,6に対して昇降自在に吊り上げるための昇降ワイヤ12A,12Bを備えている。昇降ワイヤ12A,12Bの一端は、キャリッジ10の前後上端部にそれぞれ連結されている。マスト5の外側下部には巻き上げドラム14A,14Bが配置されており、この巻き上げドラム14A,14Bには、昇降ワイヤ12A,12Bの他端がそれぞれ巻き付けられている。巻き上げドラム14A,14Bは、昇降モータ15によって同時に回転駆動される。
【0017】
上部フレーム7の一方の側面には、図1〜図3に示すように、キャリッジ10のマスト6側上端部に固定された昇降ワイヤ12Aをマスト6の外側に取り回すためのシーブ16と、このシーブ16により向きが変えられた昇降ワイヤ12Aをマスト6の内側に折り返すように取り回すためのシーブ17と、このシーブ17により向きが変えられた昇降ワイヤ12Aを巻き上げドラム14Aに向けて下側に取り回すためのシーブ18,19とが取り付けられている。
【0018】
上部フレーム7の他方の側面には、図1〜図3に示すように、キャリッジ10のマスト5側上端部に固定された昇降ワイヤ12Bをマスト5の外側に取り回すためのシーブ20と、このシーブ20により向きが変えられた昇降ワイヤ12Bを巻き取りドラム14Bに向けて下側に取り回すためのシーブ21とが取り付けられている。シーブ20,21は、上記のシーブ18,19に対応する位置に設けられている。
【0019】
また、スタッカクレーン1は、走行モータ9及び昇降モータ15を含むスタッカクレーン1の各部を制御するクレーンコントローラ22を更に備えている。クレーンコントローラ22は、走行台4におけるマスト6の外側(巻き上げドラム14A,14Bの反対側)の端部に取り付けられている。
【0020】
本実施形態の昇降ワイヤ診断装置23(図5参照)は、上記のスタッカクレーン1に搭載され、昇降ワイヤ12A,12B(以下、総称して昇降ワイヤ12ということがある)を診断する装置である。
【0021】
昇降ワイヤ12は、例えば図4に示すように、複数本の導電性素線24からなっている。昇降ワイヤ12は、これらの導電性素線24が露出した(剥き出し)状態となっており、導電性素線24を樹脂等で被覆した構造にはなっていない。具体的には、昇降ワイヤ12は、ワイヤ心線25と、このワイヤ心線25を中心にして撚り合わされてなる6本のストランド26とからなっている。ワイヤ心線25は、細径の導電性素線24からなる複数の撚り線を更に撚り合わせた構造を有している。各ストランド26は、径の異なる複数種類の導電性素線24を多層(ここでは4層)に撚り合わせた構造を有している。導電性素線24は、鋼線(鉄を含む)等で形成されている。昇降ワイヤ12の外径は、例えば6mm程度である。
【0022】
なお、1本の昇降ワイヤ12を形成する導電性素線24の径、本数及び撚り合わせ構造は、特に図4に示すものには限られず、例えばワイヤ心線25を1本の鋼線で形成しても良い。また、ワイヤ心線25と各ストランド26との間は、図4に示すように単なる空間であっても良いし、或いは繊維等を充填させても良い。
【0023】
ところで、シーブ16〜21において昇降ワイヤ12が両側から引っ張られ、昇降ワイヤ12に荷重がかかると、ストランド26同士が圧縮して潰れ合うため、昇降ワイヤ12の内部の導電性素線24が擦れて切断しやすくなる。昇降ワイヤ診断装置23は、そのような昇降ワイヤ12を形成する各導電性素線24の断線状況を診断するものである。
【0024】
図1〜図3に戻り、昇降ワイヤ診断装置23は、マスト5の外側において昇降ワイヤ12Aの導電性素線24と接触するようにシーブ19と巻き上げドラム14Aとの間に配置され、昇降ワイヤ12Aに電流を流すための測定用電極ローラ27A,28Aと、マスト5の外側において昇降ワイヤ12Bの導電性素線24と接触するようにシーブ21と巻き上げドラム14Bとの間に配置され、昇降ワイヤ12Bに電流を流すための測定用電極ローラ27B,28Bとを有している。
【0025】
測定用電極ローラ27A,27B(以下、総称して測定用電極ローラ27ということがある)は、マスト5の外側面の同じ高さ位置において支持板29を介して回転可能に支持されている。測定用電極ローラ28A,28B(以下、総称して測定用電極ローラ28ということがある)は、マスト5の外側面における測定用電極ローラ27A,27Bの下方の同じ高さ位置において支持板29を介して回転可能に支持されている。
【0026】
このようにマスト5の外側(巻き上げドラム14A,14B側)の空いているスペースを有効利用して測定用電極ローラ27,28を配置することにより、キャリッジ10を昇降させる際にワーク2との干渉を発生させること無く、省スペース化を図ることができる。なお、測定用電極ローラ27,28間の距離は、昇降ワイヤ12の一撚り(後述)以上であるのが望ましい。
【0027】
測定用電極ローラ27,28は、鉄等の導電性材料で形成されている。これにより、昇降ワイヤ12は、測定用電極ローラ27,28と電気的に接続されることとなる。また、巻き上げドラム14A,14Bを回転させることで昇降ワイヤ12の巻き取り・繰り出しを行うと、昇降ワイヤ12は測定用電極ローラ27,28を回転させながら動くことになるため、昇降ワイヤ12の擦れや摩耗が防止され、昇降ワイヤ12の長寿命化を図ることができる。
【0028】
また、昇降ワイヤ診断装置23は、図5に示すように、電圧源30と、この電圧源30の一方の端子と測定用電極ローラ27とを接続する電線31(図1及び図2では不図示)と、電圧源30の他方の端子と測定用電極ローラ28とを接続する電線32(図1及び図2では不図示)と、電線31に接続された抵抗測定用スイッチ33と、電線32に接続された電流計34とを有している。電圧源30、抵抗測定用スイッチ33及び電流計34は、クレーンコントローラ22に設けられ、測定用電極ローラ27,28及び昇降ワイヤ12の一部と共に一つの回路を形成している。
【0029】
抵抗測定用スイッチ33は、昇降ワイヤ12における測定用電極ローラ27,28間の部分の抵抗値の測定を指示するための手動操作スイッチである。抵抗測定用スイッチ33を起動(ON)すると、電圧源30から測定用電極ローラ27、昇降ワイヤ12及び測定用電極ローラ28を通って回路に電流が流れる。電流計34は、昇降ワイヤ12における測定用電極ローラ27,28間の部分に流れる電流値を測定する計測器である。
【0030】
また、クレーンコントローラ22は、昇降ワイヤ診断装置23の一部を構成するワイヤ断線診断部35及びメモリ36を有している。ワイヤ断線診断部35は、CPU等からなるマイクロコンピュータを主要構成としている。
【0031】
ワイヤ断線診断部35は、抵抗測定用スイッチ33の操作信号(ON/OFF信号)、電流計34の測定値及びメモリ36の情報を入力し、所定の計算処理を行い、昇降ワイヤ12の導電性素線24の断線状態を診断する。ワイヤ断線診断部35には、作業者がスタッカクレーン1の動作に関する操作を行ったり、スタッカクレーン1の動作に関する警告等の表示を行うためのクレーン操作盤37が接続されている。
【0032】
メモリ36には、昇降ワイヤ12の購入時の抵抗値(初期抵抗値)Rのデータと、昇降ワイヤ12の購入時における各導電性素線24の総断面積(初期総断面積)Sのデータとが記憶されている。これらの初期抵抗値R及び初期総断面積Sのデータは、昇降ワイヤ12を設置または交換した直後に予め測定し、メモリ36に登録しておく。
【0033】
図6は、ワイヤ断線診断部35により実行されるワイヤ断線診断処理の手順を示すフローチャートである。
【0034】
同図において、まず抵抗測定用スイッチ33がONされたかどうかを判断し(手順S101)、抵抗測定用スイッチがONされると、測定用電極ローラ27,28を通って昇降ワイヤ12に電流が流れるため、その時の電流計34の計測値を用いて昇降ワイヤ12の抵抗値Rを計算する(手順S102)。具体的には、電圧源30の電圧値は予め決まっており、昇降ワイヤ12に流れる電流値は電流計34によって得られるため、これらの電圧値及び電流値から昇降ワイヤ12の抵抗値(実測抵抗値)Rが求められる。
【0035】
続いて、昇降ワイヤ12の測定用電極ローラ27,28間の部分において断線せずに繋がっている導電性素線24の総断面積(実測総断面積)Sを計算する(手順S103)。ここで、導電性素線24が断線することで、繋がっている各導電性素線24の総断面積が減少すると、昇降ワイヤ12の抵抗値が増加するから、以下の関係式が成り立つ。
R=(S/S)*R
【0036】
これにより、導電性素線24の実測総断面積Sは、下記式で表される。この導電性素線24の実測総断面積Sから、何本の導電性素線24が断線しているかどうかが分かる。
S=S*(R/R)
【0037】
次いで、昇降ワイヤ12が交換時期であるかどうかを判断する(手順S104)。厚生労働省の労働安全衛生法においては、図7に示すようなワイヤ一撚り(ストランド38が1回転するときの長さ)Lで素線数の10%以上が断線しているワイヤを使用してはならないとされている。そこで、これを満足すべく、R/R=S/S<0.9であるかを判断することにより、昇降ワイヤ12が交換時期であるかどうかを判断する。
【0038】
/R=S/S<0.9であると判断されると、導電性素線24の断線数が規定よりも多いために昇降ワイヤ12が交換時期であるとして、クレーン操作盤37に警告を表示させるようにする(手順S105)。これにより、作業者は、昇降ワイヤ12の交換が必要であることを直ちに知ることができる。
【0039】
以上において、測定用電極ローラ27,28、電圧源30、電線31,32、抵抗測定用スイッチ33、電流計34及びワイヤ断線診断部35の手順S101,S102は、昇降ワイヤ12に電流を流して昇降ワイヤ12の抵抗値を検出する抵抗検出手段を構成する。ワイヤ断線診断部35の手順S103,S104及びメモリ36は、昇降ワイヤ12の抵抗値の変化量に基づいて導電性素線24の断線状態を判断する断線判断手段を構成する。
【0040】
以上のように本実施形態にあっては、測定用電極ローラ27,28の外周面が昇降ワイヤ12と接触するように測定用電極ローラ27,28を設置し、その状態で測定用電極ローラ27,28を通して昇降ワイヤ12に電流を流し、その時の昇降ワイヤ12の抵抗値の変化を求めることにより、昇降ワイヤ12の導電性素線24の断線状況を自動的に判断する。これにより、スタッカクレーン1の稼動をいちいち停止させなくても、目視だけでは確認することができない昇降ワイヤ12の内部の導電性素線24の断線状況を確実に確認することができる。
【0041】
また、ワーク2を入出庫する際には、所定の入出庫移載定位置(例えば図2に示す高さ位置)で必ずワーク2を移載する。このため、キャリッジ10が入出庫移載定位置に停止した時に昇降ワイヤ12においてシーブ16〜21に掛かる部分が最も損傷しやすくなるため、その部分を重点的に点検するのが望ましい。本実施形態では、巻き上げドラム14A,14Bとシーブ19,21との間に測定用電極ローラ27,28をそれぞれ配置している。従って、キャリッジ10を上昇させるべく、巻き上げドラム14A,14Bにより昇降ワイヤ12A,12Bを巻き上げると、キャリッジ10が入出庫移載定位置に停止した時に昇降ワイヤ12Aにおいてシーブ18,19に掛かる部分が測定用電極ローラ27A,28A間の位置に達し、キャリッジ10が入出庫移載定位置に停止した時に昇降ワイヤ12Bにおいてシーブ20,21に掛かる部分が測定用電極ローラ27B,28B間の位置に達するようになる。これにより、昇降ワイヤ12において最も損傷が激しくなると予想される部分の抵抗値が測定されることになるため、当該部分の導電性素線24の断線状態を確認することができる。
【0042】
以上により、作業者は、シーブ16〜21に掛かっている昇降ワイヤ12を定期的に点検するためにマスト5,6の上部まで上る必要が無い。従って、昇降ワイヤ12の点検に必要な工数を大幅に削減しつつ、昇降ワイヤ12の導電性素線24の断線状態を高精度に診断することが可能となる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、昇降ワイヤ12を流れる電流値を電流計34で計測し、この電流値と所定の電圧値とから昇降ワイヤ12の抵抗値を求めるようにしたが、昇降ワイヤ12を流れる電流値が一定の場合には、測定用電極ローラ27,28間の電位差を電圧計で計測し、この計測値を用いて昇降ワイヤ12の抵抗値を求めても良い。
【0044】
また、上記実施形態では、昇降ワイヤ12A,12Bに電流を流して昇降ワイヤ12A,12Bの抵抗値を測るようにしたが、マスト6側まで延びる昇降ワイヤ12Aの抵抗値を測る場合には、例えば上部フレーム7におけるシーブ16,18間に測定用電極ローラ27A,28Aを設けても良い。
【0045】
さらに、上記実施形態では、測定用電極ローラ27,28によって昇降ワイヤ12に電流を流すようにしたが、測定用電極ローラ27,28の代わりに、例えばブラシ状の測定用電極を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係わる昇降ワイヤ診断装置の一実施形態を備えた自動倉庫用スタッカクレーンを示す斜視図である。
【図2】図1に示した自動倉庫用スタッカクレーンの側面図である。
【図3】図1に示した昇降ワイヤの取り回し状態を示す概略図である。
【図4】図1に示した昇降ワイヤの拡大断面図である。
【図5】本発明に係わる昇降ワイヤ診断装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図6】図5に示したワイヤ断線診断部により実行されるワイヤ断線診断処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】一般的な昇降ワイヤの側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…自動倉庫用スタッカクレーン、10…キャリッジ(昇降体)、12,12A,12B…昇降ワイヤ、14A,14B…巻き上げドラム(ワイヤ巻き上げ部)、18〜21…シーブ(ワイヤガイド部)、22…クレーンコントローラ、23…昇降ワイヤ診断装置、24…導電性素線、27,27A,27B…測定用電極ローラ(測定用電極、抵抗検出手段)、28,28A,28B…測定用電極ローラ(測定用電極、抵抗検出手段)、30…電圧源(抵抗検出手段)、31,32…電線(抵抗検出手段)、33…抵抗測定用スイッチ(抵抗検出手段)、34…電流計(抵抗検出手段)、35…ワイヤ断線診断部(抵抗検出手段、断線判断手段)、36…メモリ(断線判断手段)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導電性素線からなり、スタッカクレーンの昇降体を吊り上げるための昇降ワイヤを診断する昇降ワイヤ診断装置において、
前記導電性素線と電気的に接続可能となるように配置された少なくとも1対の測定用電極を有し、前記昇降ワイヤに電流を流して前記昇降ワイヤの抵抗値を検出する抵抗検出手段と、
前記昇降ワイヤの抵抗値の変化量に基づいて前記導電性素線の断線状態を判断する断線判断手段とを備えることを特徴とする昇降ワイヤ診断装置。
【請求項2】
前記測定用電極は、ローラを含み、前記導電性素線に対して接触状態となるように配置されていることを特徴とする請求項1記載の昇降ワイヤ診断装置。
【請求項3】
前記スタッカクレーンの一方側には、前記昇降ワイヤを下側に取り回すワイヤガイド部と、前記ワイヤガイド部の下方に位置し、前記昇降ワイヤが巻き付けられるワイヤ巻き上げ部とが設けられており、
前記測定用電極は、前記ワイヤガイド部と前記ワイヤ巻き上げ部との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の昇降ワイヤ診断装置。
【請求項4】
前記断線判断手段は、前記抵抗検出手段により検出された前記昇降ワイヤの抵抗値と予め取得された前記昇降ワイヤの初期抵抗値とを比較して、前記導電性素線の断線状態を判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の昇降ワイヤ診断装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−220940(P2009−220940A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66461(P2008−66461)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】