説明

昇降床付コンテナの昇降床油圧構造

【課題】輸送車両の油圧装置の油量を変動させない、コンテナの昇降床油圧構造。
【解決手段】コンテナ12の昇降床油圧構造であって、輸送車両から供給される作動油により伸縮する油圧シリンダを含む、コンテナの油圧機構と、昇降床とを備え、複動式の第1の油圧シリンダ31を含み、昇降床の前部側を昇降作用する第1の油圧機構と、複動式で第1の油圧シリンダ31とシリンダ断面積が等しい第2の油圧シリンダ33を含み、昇降床の後部側を昇降作用する第2の油圧機構とを有し、第1の油圧機構は、第1の油圧シリンダ31の伸長により昇降床の前部側を上昇方向に作用させ、第1の油圧シリンダ31の短縮により昇降床の前部側を下降方向に作用させ、第2の油圧機構は、第2の油圧シリンダ33の短縮により昇降床の後部側を上昇方向に作用させ、第2の油圧シリンダ33の伸長により昇降床の後部側を下降方向に作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降床付きコンテナの昇降床油圧構造に関し、特に、昇降床付きコンテナを搭載する車両の油圧装置の油量の変動を抑えた、コンテナの昇降床油圧構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ専用車両と、これに搭載される昇降床付コンテナの一部切り欠き側面を示す側面図を図5に示す。図5に示すように、コンテナ輸送車両11は、コンテナ輸送車両に備えた油圧装置(図示せず)から供給する作動油の油圧により、昇降床付コンテナ12に備えた油圧シリンダ(図示せず)を伸縮させ、昇降床13の昇降動作を行っている。
【0003】
例えば、積荷を上下2段に積層して搭載するときは、昇降床13に積荷を搭載させた後に、コンテナ輸送車両11の油圧装置からコンテナ12の油圧シリンダに作動油を供給し、油圧シリンダを伸長させて昇降床13を上部に上昇させる。そして昇降床の下に位置する固定の下段床15に、さらに積荷を搭載させ、上下2段に積層搭載する。
【0004】
搬送先で積荷を降ろす作業は、先ず、下段床15に搭載した積荷を下ろし、次に、油圧シリンダを短縮させて上段の昇降床13を降下させて、搭載した積荷を下ろすことで完了する。このとき、油圧シリンダの短縮に伴い、油圧シリンダから作動油が輸送車両の油圧装置に戻ることになる。
【0005】
このように、コンテナ12の油圧シリンダは、コンテナ輸送車両11の油圧装置から作動油の供給を受け、また作動油を戻すことによって、昇降床の昇降動作を行い、コンテナ内の容積全体の有効利用を図っている。
【0006】
昇降床13を備えた2段床のコンテナと、コンテナ輸送車両11との間における従来の油圧回路を図6に示す。コンテナ輸送車両11の油タンク21に貯留された作動油を、油圧ポンプ22により加圧して、管路23、24内を通流させ、油圧配管用の継手25a、25bを介して昇降床付コンテナ12に供給する。昇降床付コンテナ12に供給された作動油は、昇降床13の前部側に昇降作用する油圧シリンダ101a、及び昇降床13の後部側に昇降作用する油圧シリンダ101bのそれぞれのシリンダヘッド側に注入され、それぞれのシリンダを伸長させて昇降床13を上昇させる。図6に示す油圧シリンダ101a、101bは、作動油の出入口がシリンダの一方の側(図6ではシリンダヘッド側)にのみ設けた単動式であり、昇降床の自重又はスプリング等の弾性力を利用してシリンダを短縮させて、昇降床を降下させる。シリンダが短縮されるときは、作動油は、シリンダヘッド側から、管路24を経て、コンテナ輸送車両11側に戻される。コンテナ輸送車両11に戻った作動油は、方向切換弁27a、27bにより、戻り管路26に分岐され、油タンク21に戻り、再び油圧ポンプにより加圧されて油圧シリンダ等に供給される。
【0007】
このように、コンテナ輸送車両の油圧装置から昇降床付コンテナに作動油を供給して、昇降床を上昇させ、そのまま昇降床付コンテナを貨車等に積み込むと、輸送車両から昇降床付コンテナに作動油を一方的に供給することなり、コンテナ輸送車両の油圧装置は、油量が減少してしまう。また、積荷の送り先で、貨車等から昇降床付コンテナを移載した輸送車両が、昇降床を下降して積荷を降ろす作業を行うときは、昇降床の下降により、作動油がコンテナ輸送車両の油圧装置に流入することになり、輸送車両の油圧装置の油量が増加することになってしまう。
【0008】
このようなコンテナ輸送車両の油圧装置における油量の一方的な減少、あるいは一方的な増加という不都合を解消するために、昇降床の上昇、下降の動作のいずれにおいても、コンテナ輸送車両から昇降床付コンテナへの作動油の供給量と、昇降床付コンテナからの作動油の戻り量とを同じくして、コンテナ輸送車両の油圧装置の油量が変動しない自動車輸送コンテナのデッキ昇降用油圧装置が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3477491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の自動車輸送コンテナのデッキ昇降用油圧装置は、デッキの昇降に際して、デッキ昇降用油圧シリンダと同一の面積比を有する油量保持用油圧シリンダを介して、輸送車両の油圧装置の油タンクに、供給された作動油と同一量の作動油を戻す構成としたので、デッキを上昇若しくは降下させる操作を連続して繰り返しても、輸送車両の油圧装置の油量を一定に保つことができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のデッキ昇降用油圧装置は、デッキ昇降用油圧シリンダのほかに、油量保持用シリンダと、この油量保持用油圧シリンダとデッキ昇降用油圧シリンダ及び外部の油タンクとの間で延びる管路の接続を切り換える切換弁とを設けるもので、配管を含む装置構成が複雑となり、また装置の制御も煩雑となっている。
【0012】
本発明は、昇降床付コンテナの昇降床の昇降動作において、複雑な装置構成を必要とせずに、輸送車両の油圧装置の油量を変動させない、昇降床付コンテナの昇降床油圧構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明が提供するのは、コンテナ輸送車両に搭載される昇降床付コンテナの昇降床油圧構造であって、コンテナ輸送車両の油圧装置から供給される作動油により伸縮する油圧シリンダを含む、前記昇降床付コンテナの油圧機構と、該油圧機構により昇降する前記昇降床付コンテナの昇降床と、を備え、前記油圧機構は、複動式の第1の油圧シリンダを含み、前記昇降床の前部側を昇降作用する第1の油圧機構と、複動式で前記第1の油圧シリンダとシリンダ断面積が等しい第2の油圧シリンダを含み、前記昇降床の後部側を昇降作用する第2の油圧機構とを有し、前記第1の油圧機構は、前記第1の油圧シリンダの伸長により前記昇降床の前部側を上昇方向に作用させると共に、前記第1の油圧シリンダの短縮により前記昇降床の前部側を下降方向に作用させ、前記第2の油圧機構は、前記第2の油圧シリンダの短縮により前記昇降床の後部側を上昇方向に作用させると共に、前記第2の油圧シリンダの伸長により前記昇降床の後部側を下降方向に作用させることを特徴とする昇降床付コンテナの昇降床油圧構造である。
【0014】
このように、第1の油圧シリンダと第2の油圧シリンダとは、シリンダ断面積が等しい複動式の油圧シリンダであり、さらにシリンダの伸長と短縮とによる昇降床の昇降動作の向きを逆にしたので、昇降床の昇降動作において、一方の油圧シリンダにコンテナ輸送車両の油圧装置から供給される作動油の量と、他方の油圧シリンダからコンテナ輸送車両に戻る作動油の量とが等しくなり、コンテナ輸送車両の油圧装置の油量の変動を抑えることができる。
【0015】
例えば、昇降床を長さX上昇させるには、第1の油圧シリンダを長さY伸長させる必要がある場合、第1の油圧シリンダのシリンダヘッド側へ供給される作動油の湯量をAとし、シリンダロッド側から排出される作動油の油量をBとする。同様に、第2の油圧シリンダにより昇降床を同じ長さX上昇させるには、第2の油圧シリンダを長さY短縮させることになる。このとき第2の油圧シリンダは、第1の油圧シリンダとシリンダ断面積が等しいので、第1の油圧シリンダのシリンダロッド側に供給される作動油の油量は、第1の油圧シリンダのロッド側から排出される作動油の油量と等しいBとなり、双方で相殺される。また、第2の油圧シリンダのシリンダヘッド側から排出される作動油の油量は、第1の油圧シリンダのシリンダヘッド側に供給された油量Aと等しくなる。
【0016】
したがって、コンテナ輸送車両から昇降床付コンテナに、作動油が量A供給されると共に、昇降床付コンテナから作動油が同じく量Aコンテナ輸送車両に戻されるので、コンテナ輸送車両の油圧装置の油量は変化しない。
【0017】
以上、昇降床の上昇の場合の作動油の流れを説明したが、昇降床を降下させるときも、コンテナ輸送車両からの作動油の供給量と、コンテナ輸送車両へ戻す作動油の油量は同一となり、コンテナ輸送車両の油圧装置における油量は変化しない。
【0018】
すなわち、第1の油圧機構と第2の油圧機構により、昇降床が昇降され、水平位置から別の高さの水平位置となる場合、コンテナ輸送車両の油圧装置の油量は変動せず、一定のままである。
【0019】
また、前記第1の油圧機構は、前記昇降床の前部側に固着される第1の支持部材と、該第1の支持部材に一端が係止され、他端が前記昇降床付コンテナの本体に係止される第1のワイヤ部材とを有し、前記第2の油圧機構は、前記昇降床の後部側に固着される第2の支持部材と、該第2の支持部材に一端が係止され、他端が前記昇降床付コンテナの本体に係止される第2のワイヤ部材とを有し、前記第1の油圧シリンダの伸長により、滑車を介して前記第1のワイヤ部材を引っ張り、前記第1の油圧シリンダの短縮により前記第1のワイヤ部材を送り出すことにより、前記第1の支持部材を、前記昇降床の昇降動作を案内するガイドレール上を走行させ、前記第2の油圧シリンダの短縮により、滑車を介して前記第2のワイヤ部材を引っ張り、前記第2の油圧シリンダの伸長により前記第2のワイヤ部材を送り出すことにより、前記第2の支持部材を、前記昇降床の昇降動作を案内するガイドレール上を走行させる機構とすることができる。
【0020】
簡便な機構により、油圧シリンダの伸縮動作を、昇降床の昇降動作として効率よく伝達することができる。
【0021】
また、前記第1の支持部材は、前記昇降床の前部側を載置して固着する載置部と、前記第1のワイヤ部材が固着され、前記ガイドレール上を係合して走行する係合部とを有し、前記第2の支持部材は、前記昇降床の後部側を載置して固着する載置部と、前記第2のワイヤ部材が固着され、前記ガイドレール上を係合して走行する係合部とを有している。ワイヤ部材の引っ張り、送り出しにより昇降床を円滑に昇降動作させるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンテナ輸送車両の油圧装置から供給される作動油により、昇降床付コンテナの昇降床を昇降させるときに、輸送車両の油圧装置の油量を変動させない、簡便な構成からなる、昇降床油圧構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る昇降床付コンテナの昇降床油圧構造の油圧機構の一部を示す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示す第1の油圧シリンダを含む、第1の油圧機構の一部の拡大図であり、図2(b)は、図1に示す第2の油圧シリンダを含む、第2の油圧機構の一部の拡大図である。
【図3】図3(a)は、本発明に係る昇降床付コンテナの前後方向の縦断面概略図であり、図3(b)は、ガイドドレールを走行する支持部材の正面図であり、図3(c)は、図3(b)のA−A矢視図である。
【図4】図4は、本発明に係る昇降床付コンテナの昇降床油圧構造の油圧系統を示す油圧回路図である。
【図5】図5は、コンテナ専用車両と、これに搭載される昇降床付コンテナの一部切り欠き側面との側面図である。
【図6】図6は、昇降床付コンテナとコンテナ専用車両との間における従来の油圧系統を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0025】
図1から図3に示すように、昇降床付コンテナ12の昇降床油圧構造は、主として、第1の油圧シリンダ31を含む第1の油圧機構32と、第2の油圧シリンダ33を含む第2の油圧機構35と、第1の油圧機構32及び第2の油圧機構35により昇降される昇降床13とを備えた構成である。
【0026】
図1及び図2に示すように、第1の油圧機構32及び第2の油圧機構35に含まれる第1の油圧シリンダ31及び第2の油圧シリンダ33と、第1の油圧シリンダ31及び第2の油圧シリンダ33により引っ張り、あるいは送り出すことで昇降床を昇降するワイヤ37(37a、37b、37c、37d)及び38(38a、38b、38c、38d)の一部と、ワイヤ37、38を支持する滑車の一部とが、昇降床付コンテナ12の床部の縦梁43及び横梁45に設けられている。
【0027】
昇降床付コンテナ12の前部側において隣り合う横梁45a、45b間に、第1の油圧シリンダ31と、第1の油圧シリンダ31の伸縮によりスライド移動するスライド部材47aと、スライド部材47aがスライド走行する一対のスライドレール48a、48bとが設けられている。
【0028】
スライド部材47aは、第1の油圧シリンダ31のロッド50aの端部に固着されており、第1の油圧シリンダ31の伸縮によるロッド50aの移動によって、スライドレール48a、48b上をスライド走行する構造となっている。スライド走行するスライド部材47aには、一対の可動滑車52a、52bが併設されている。
【0029】
第1の油圧シリンダ31のシリンダヘッド31a側は、縦梁43bに固着されており、シリンダヘッドの両側の位置に、ワイヤ止め具53a、53bが縦梁43bに固着されている。
【0030】
ワイヤ37a、37bは、その一端を昇降床の前部側に固着された支持部材に係止され、他端がワイヤ止め具53aに係止されている。ワイヤ止め具53aに端部が係止されたワイヤ37a、37bは、スライド部材47aの可動滑車52aを介した後に、一方のワイヤ37aが固定滑車55a(図2)、55b(図1)、55c(図1)を経由して、昇降床13の前部側右前位置に向けて、他方のワイヤ37bは固定滑車55d(図2)、55e(図1)、55f(図1)を経由して、昇降床13の前部側左前位置に向けて、それぞれ分岐、配置されている。可動滑車52a、及び固定滑車55a、55b、55d、55eは、回転軸が垂直であり、固定滑車55c、55fは、回転軸が水平となっている。
【0031】
回転軸が垂直である可動滑車52a、及び固定滑車55a、55b、55d、55eは、ワイヤ37a、37bの水平方向の動きを支持するものであり、回転軸が水平である固定滑車55c、55fは、ワイヤ37a、37bを水平方向から垂直方向に(又は垂直方向から水平方向に)、その動きを変換、支持する役割を有する。
【0032】
また、ワイヤ37c、37dは、その一端を昇降床に固着された支持部材に係止され、他端がワイヤ止め具53bに係止されている。ワイヤ止め具53bに端部が係止されたワイヤ37c、37dは、スライド部材47aの可動滑車52bを介した後に、ワイヤ37cが固定滑車55g、55h、55iを経由して、昇降床13の前部側右後位置に向けて、ワイヤ37dは固定滑車55j、55k、55mを経由して、昇降床13の前部側左後位置に向けて、それぞれ分岐、配置されている。可動滑車52b、及び固定滑車55g、55h、55j、55kは、回転軸が垂直であり、固定滑車55i、55mは、回転軸が水平となっている。前述したように、回転軸が垂直である滑車は、ワイヤの水平方向の動きを支持するものであり、回転軸が水平である滑車は、ワイヤを水平方向から垂直方向に(又は垂直方向から水平方向に)、その動きを変換、支持する役割を有する(以下、同様)。
【0033】
一方、昇降床付コンテナ12の後部側において隣り合う横梁45a、45b間に、第2の油圧シリンダ33と、油圧シリンダ31の伸縮によりスライド移動するスライド部材47bと、スライド部材47bがスライド走行する一対のスライドレール48c、48dとが設けられている。
【0034】
スライド部材47bは、第2の油圧シリンダ33のロッド50bの端部に固着されており、第2の油圧シリンダ33の伸縮によるロッド50bの移動によって、スライドレール48c、48d上をスライド走行する構造となっている。走行するスライド部材47bには、一対の可動滑車52c、52dが併設されている。
【0035】
第2の油圧シリンダ33のシリンダヘッド33a側は、縦梁43bに固着されており、縦梁43bと反対側に位置する縦梁43aには、ワイヤ止め具53c、53dが併設して固着されている。
【0036】
ワイヤ38a、38bは、その一端を昇降床の後部側に固着された支持部材に係止され、他端がワイヤ止め具53cに係止されている。ワイヤ止め具53cに端部が係止されたワイヤ38a、38bは、スライド部材47bの可動滑車52c、固定滑車56a、56bを介した後に、ワイヤ38aが固定滑車56c、56dを経由して、昇降床13の後部側右前位置に向けて、ワイヤ38bは固定滑車56e、56f、56gを経由して、昇降床13の後部側左前位置に向けて、それぞれ分岐、配置されている。可動滑車52c、及び固定滑車56a、56b、56c、56e、56fは、回転軸が垂直であり、固定滑車56d、55gは、回転軸が水平となっている。
【0037】
また、ワイヤ38c、38dは、その一端を昇降床の後部側に固着された支持部材に係止され、他端がワイヤ止め具53dに係止されている。ワイヤ止め具53dに端部が係止されたワイヤ38c、38dは、スライド部材47bの可動滑車52d、固定滑車56h、56iを介した後に、一方のワイヤ38cが固定滑車56j(図2)、56k(図1)、56m(図1)を経由して、昇降床13の後部側右後位置に向けて、他方のワイヤ38dは、固定滑車56n(図2)、56p(図1)、56q(図1)を経由して、昇降床13の後部側左後位置に向けて、それぞれ分岐、配置されている。可動滑車52d、及び固定滑車56h、56i、56j、56k、56n、56pは、回転軸が垂直であり、固定滑車56m、56qは、回転軸が水平となっている。
【0038】
図1に示されているように、昇降床付コンテナ12の床中央部において隣り合う横梁45e、45f間には、コンテナルーフを昇降させるルーフ油圧機構57の油圧シリンダ58を含む主要部が設けられている。この油圧シリンダ58は、シリンダヘッド側にのみ作動油が供給される単動式の油圧シリンダであり、管路59(図1中鎖線で示す)がシリンダヘッド側に連結されている。
【0039】
第1の油圧シリンダ31及び第2の油圧シリンダ33は、シリンダヘッド31a、33a側とロッド側との双方に作動油が供給される複動式の油圧シリンダであり、第1の油圧シリンダ31のシリンダヘッド31a側には管路60a(図1、図2中鎖線で示す)が接続され、第1の油圧シリンダ31のロッド側には管路60b(図1、図2中鎖線で示す)が接続され、コンテナ輸送車両11(図5参照)との間で作動油の通流が行われる。
【0040】
第2の油圧シリンダ33のシリンダヘッド33a側には管路60c(図1、図2中鎖線で示す)が接続され、第2の油圧シリンダ33のロッド側には管路60d(図1、図2中鎖線で示す)が接続され、コンテナ輸送車両11(図5参照)との間で作動油の通流が行われる。
【0041】
次に、図2を参照して、第1の油圧機構32及び第2の油圧機構35の装置構成による動作の相違を説明する。図2(a)に図示する第1の油圧シリンダ31は、シリンダが最も短縮した状態にあって、ロッド50aが図において最下端に位置している。
【0042】
図2(b)に図示の第2の油圧シリンダ33は、シリンダが最も伸長した状態にあって、ロッド50bが図において最上端の位置にある。第1の油圧シリンダ31と第2の油圧シリンダ33とが、それぞれ図示の位置にあるとき、昇降床13(図示せず)は昇降床付コンテナ12内の最下端位置にある。
【0043】
図2(a)に図示の状態にある第1の油圧シリンダ31のシリンダヘッド31a側に、作動油が管路60aより供給されると、シリンダの伸長によりロッド50aは、縦梁43側に向けてスライド部材47aを移動させる(移動後のスライド部材47aを鎖線で示す)。スライド部材47aの移動により、ワイヤ止め具53a、53bと可動滑車52a、52b間の距離が長くなり、ワイヤ37a、37b、37c、37dが昇降床13側からスライド部材47a側に向けて引っ張られることになり、第1の油圧シリンダ31は、昇降床13の前部側を上昇させる向きに作用する(矢印61方向)。
【0044】
逆に、第1の油圧シリンダ31のシリンダの伸長により移動したスライド部材47a(鎖線で示す)を縦梁43b側に移動させる場合は、ロッド側に作動油を管路60bから供給し、シリンダを短縮させる。このとき、スライド部材47aの縦梁43b側への移動により、ワイヤ止め具53a、53bと可動滑車52a、52b間の距離が短縮されて、ワイヤ37a、37b、37c、37dを緩め、送り出すことになり、第1の油圧シリンダ31は昇降床13の前部側を下降させる向きに作用する(矢印62方向)。このように、第1の油圧シリンダ31は、シリンダの伸長により昇降床13の前部側を上昇させる向きに作用し、シリンダの短縮により昇降床13の前部側を下降させる向きに作用することになる。
【0045】
一方、図2(b)に図示の第2の油圧シリンダ33のロッド側に、作動油が管路60dより供給され、シリンダが短縮すると、ロッド50bは縦梁43b側に向けてスライド部材47bを移動させる(移動後のスライド部材47bを鎖線で示す)。スライド部材47bの移動により、ワイヤ止め具53c、53dと可動滑車52c、52d間の距離が長くなり、ワイヤ38a、38b、38c、38dが昇降床13側からスライド部材47b側に向けて引っ張られることになり(矢印63方向)、第2の油圧シリンダ33は昇降床13の後部側を上昇させる向きに作用する。
【0046】
逆に、第2の油圧シリンダ33のシリンダの短縮により移動したスライド部材47b(鎖線で示す)を縦梁43a側に移動させる場合は、シリンダヘッド33a側に作動油を管路60cから供給し、シリンダを伸長させる。このとき、スライド部材47bの縦梁43a側への移動により、ワイヤ止め具53c、53dと可動滑車55c、55d間の距離が短縮されて、ワイヤ38a、38b、38c、38dが緩み、送り出されることになり、第2の油圧シリンダ33は昇降床13の後部側を下降させる向きに作用する(矢印65方向)。
【0047】
このように、第2の油圧シリンダ33は、シリンダの短縮により昇降床13の後部側を上昇させる向きに作用し、シリンダの伸長により昇降床13の後部側を下降させる向きに作用することになる。
【0048】
上述のように、第1の油圧シリンダ31と第2のシリンダ33とでは、それぞれシリンダの伸縮により昇降床の昇降に作用する向きが反対となっている。
【0049】
図3(a)に示すように、昇降床付コンテナ12内部の右側面の前部側には、2本のガイドレール65a、65bが垂設されており、さらに左側面の前部側には2本のガイドレール65c、65d(図示せず)が垂設されている。これら4本のガイドレール65(「65a、65b、65c、65d」を総括して、「65」と略示する)のそれぞれに沿って案内され、上下動する同じ構造の支持部材68(支持部材は全て同一構造であるので、同じ符号で示す)に、第1の油圧機構32の4本のワイヤ37a、37b、37c、37d(図1、図2参照)の端部がそれぞれ係止されている。
【0050】
昇降床付コンテナ12内部の右側面の後部側には、2本のガイドレール66a、66bが垂設されており、さらに左側面の前部側に2本のガイドレール66c、66d(図示せず)が垂設されている。これら4本のガイドレール66(「66a、66b、66c、66d」を総括して、「66」と略示する)のそれぞれに案内され、上下動する同じ構造の支持部材68(支持部材は全て同一構造であるので、同じ符号で示す)に、第2の油圧機構35の4本のワイヤ38a、38b、38c、38d(図1、図2参照)の端部がそれぞれ係止されている。
【0051】
図3(b)及び(c)には、ガイドレール65aに、係合する支持部材68を図示しているが、他のガイドレール65b、65c、65d、66a、66b、66c、66dに係合する支持部材68も、上述したように、図3(b)及び(c)と示すものと同一構造である。
【0052】
図3(b)及び(c)に示すように、ガイドレール65aは、断面が略C字形状の柱状部材であり、左右の側面には所定ピッチで設けられた円形の孔70が複数、形成されている。この円形の孔70に、ロックピン71を挿入することで、支持部材68を所定の位置に設定することができる。
【0053】
支持部材68は、ガイドレール65aに係合して上下に走行する係合部68aと、昇降床を固着、載置する載置部68bと、からなる略直角に屈曲した小片状部材であり、係合部68aに、ワイヤ37aの端部が係止されている。
【0054】
図3(b)及び(c)に示すように、係合部68aに一端が係止されたワイヤ37aは、昇降付コンテナ12の天井部に設けた滑車(図示せず)へと伸長し、その滑車を介して、さらに床部に伸長され、第1の油圧機構32の滑車を介して、ワイヤ止め具53aに他端が係止されている(図1、図2参照)。一端が支持部材68に係止された他のワイヤ37b、37c、37d、38a、38b、38c、38dも同様に伸長され、それぞれワイヤ止め具53b、53c、53dに他端が係止されている。
【0055】
次に、本発明に係る昇降床付コンテナの昇降床油圧構造の油圧回路図である図4を参照して、コンテナ輸送車両11と昇降床付コンテナ12との間における作動油の流れを説明する。
【0056】
図4に示すように、本発明に係る昇降床付コンテナの昇降床油圧構造において、コンテナ輸送車両の油タンク21に貯留されている作動油を油圧ポンプ22で加圧し、管路23から切換弁27aを経て、コンテナ輸送車両11側と昇降床付コンテナ12側との油圧配管用の連結具である継手75から、昇降床付コンテナ12側の管路60a又は管路60bにより、第1の油圧シリンダ31へ供給する。
【0057】
また第1の油圧シリンダ31から戻る作動油は、管路60a又は60bを通り、継手75を経て、切換弁27aにより管路26に通り、油タンク21に戻り、貯留される。
【0058】
第2の油圧シリンダ33には、作動油を油圧ポンプ22で加圧し、管路23から切換弁27aを経て、継手75から管路60c又は管路60dを通って供給する。第2の油圧シリンダ33から戻る作動油は、管路60c又は60dを通り、継手75を経て、切換弁27bにより管路26に通り、油タンク21に戻り、貯留される。
【0059】
ここで、管路60aは、第1の油圧シリンダ31のシリンダヘッド31a側に接続され、管路60bは、第1の油圧シリンダ31のロッド60b側に接続されている。一方、管路60cは、第2の油圧シリンダ33のシリンダヘッド33a側に接続され、管路60dは、第2の油圧シリンダ33のロッド50b側に接続されている。
【0060】
次に、図4を中心に、適宜図2及び図3を参照して、昇降床13の昇降動作における作動油の具体的な流れを説明する。昇降床13は、最下端に位置するものとする。したがって、図2(a)に示すように、第1の油圧シリンダ31のシリンダは最も短縮した位置にあり、一方、図2(b)に示すように、第2の油圧シリンダ33のシリンダは、最も伸長した位置にある。
【0061】
作動油の流れの説明のために、上記の最下端に位置する昇降床13を長さX上昇させる場合で説明する。昇降床13を長さX上昇させるためには、第1の油圧シリンダ31を伸長させる必要があり、このときのシリンダが伸長する長さをYとする。第1の油圧シリンダ31を伸長させるには、作動油をシリンダヘッド31a側に管路60aから供給する。このときの作動油の供給量を油量Aとし、シリンダロッド50a側から管路60bに排出される作動油の油量をBとする。
【0062】
昇降床13を長さX上昇させるには、第2の油圧シリンダ33も同じ長さYだけシリンダを短縮させる必要がある。第2の油圧シリンダ33を短縮させるには、作動油をロッド50b側に管路60dから供給する。第2の油圧シリンダ33は、シリンダ断面積が第1の油圧シリンダ31と等しいので、このときの作動油の供給量は油量Bとなり、第1の油圧シリンダ31から排出された作動油の油量Bと等しくなり、双方、相殺されることになる。一方、シリンダヘッド33a側から管路60cに排出される作動油の量はAとなる。
【0063】
したがって、昇降床13を長さX上昇させるために、コンテナ輸送車両11から作動油を油量A供給し、昇降床付コンテナ12からコンテナ輸送車両11に作動油が油量A戻ることになり、昇降床を上昇させても、コンテナ輸送車両11の作動油の総量は変動しないことになる。
【0064】
また、長さX上昇した昇降床13を、上記とは逆に、長さX下降させる場合には、第1の油圧シリンダ31を短縮させる必要があり、このときのシリンダが短縮する長さは上記したようにYとなる。第1の油圧シリンダ31を短縮させるには、作動油をロッド50a側に管路60bから供給する。このときの作動油の供給量は油量Bとなり、シリンダヘッド31a側から管路60aに排出される作動油の油量はAとなる。
【0065】
一方、昇降床13を長さX下降させるには、第2の油圧シリンダ33も同じ長さY、シリンダを伸長させる必要がある。第2の油圧シリンダ33を伸長させるには、作動油をシリンダヘッド33a側に管路60cから供給する。第2の油圧シリンダ33は、シリンダ断面積が第1の油圧シリンダ31と等しいので、このときの作動油の供給量は油量Aとなり、第1の油圧シリンダ31から排出された作動油の油量Aと等しくなり、双方、相殺されることになる。一方、ロッド50b側から管路60dに排出される作動油の油量はBとなる。
【0066】
以上、本発明によれば、コンテナ輸送車両の油圧装置から供給される作動油により、昇降床付コンテナの昇降床を昇降させるときに、輸送車両の油圧装置の油量を変動させない、簡便な構成からなる、昇降床油圧構造を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
11 コンテナ輸送車両
12 昇降床付コンテナ
13 昇降床
15 固定床
31 第1の油圧シリンダ
33 第2の油圧シリンダ
37、38 ワイヤ
47a、47b スライド部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ輸送車両に搭載される昇降床付コンテナの昇降床油圧構造であって、
コンテナ輸送車両の油圧装置から供給される作動油により伸縮する油圧シリンダを含む、前記昇降床付コンテナの油圧機構と、
該油圧機構により昇降する前記昇降床付コンテナの昇降床と、
を備え、
前記油圧機構は、複動式の第1の油圧シリンダを含み、前記昇降床の前部側を昇降作用する第1の油圧機構と、複動式で前記第1の油圧シリンダとシリンダ断面積が等しい第2の油圧シリンダを含み、前記昇降床の後部側を昇降作用する第2の油圧機構とを有し、
前記第1の油圧機構は、前記第1の油圧シリンダの伸長により前記昇降床の前部側を上昇方向に作用させると共に、前記第1の油圧シリンダの短縮により前記昇降床の前部側を下降方向に作用させ、
前記第2の油圧機構は、前記第2の油圧シリンダの短縮により前記昇降床の後部側を上昇方向に作用させると共に、前記第2の油圧シリンダの伸長により前記昇降床の後部側を下降方向に作用させることを特徴とする昇降床付コンテナの昇降床油圧構造。
【請求項2】
前記第1の油圧機構は、前記昇降床の前部側に固着される第1の支持部材と、該第1の支持部材に一端が係止され、他端が前記昇降床付コンテナの本体に係止される第1のワイヤ部材とを有し、
前記第2の油圧機構は、前記昇降床の後部側に固着される第2の支持部材と、該第2の支持部材に一端が係止され、他端が前記昇降床付コンテナの本体に係止される第2のワイヤ部材とを有し、
前記第1の油圧シリンダの伸長により、滑車を介して前記第1のワイヤ部材を引っ張り、前記第1の油圧シリンダの短縮により前記第1のワイヤ部材を送り出すことにより、前記第1の支持部材を、前記昇降床の昇降動作を案内するガイドレール上を走行させ、
前記第2の油圧シリンダの短縮により、滑車を介して前記第2のワイヤ部材を引っ張り、前記第2の油圧シリンダの伸長により前記第2のワイヤ部材を送り出すことにより、前記第2の支持部材を、前記昇降床の昇降動作を案内するガイドレール上を走行させることを特徴とする請求項1に記載の昇降床付コンテナの昇降床油圧構造。
【請求項3】
前記第1の支持部材は、前記昇降床の前部側を載置して固着する載置部と、前記第1のワイヤ部材が固着され、前記ガイドレール上を係合して走行する係合部とを有して成り、前記第2の支持部材は、前記昇降床の後部側を載置して固着する載置部と、前記第2のワイヤ部材が固着され、前記ガイドレール上を係合して走行する係合部とを有して成ることを特徴とする請求項2に記載の昇降床油圧構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11747(P2011−11747A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154618(P2009−154618)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(390039723)株式会社パブコ (39)
【Fターム(参考)】