説明

昇降装置、および同昇降装置を備えた鍵盤楽器用椅子、補助台または補助ペダル装置

【課題】鍵盤楽器奏者の望む任意の位置に載置部の高さ位置を簡単な操作で調整可能とすることができ、載置部の高さ位置調整作業の労力的負担および時間的負担を軽減することができる昇降装置および同昇降装置を備えた補助台を提供する。
【解決手段】ピアノ用補助台10の載置部12は、昇降装置20によって支持されている。昇降装置20は、載置部12を昇降可能支持するリンク部材で構成されるパンタアーム23a,23bと、同パンタアーム23a,23bを伸張させる側に押圧するキックバネ29a,29bと、同パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差角を固定するための固定手段を備えている。固定手段は、パンタアーム23a,23bの昇降変位により変位するスライドプレート34を解除ロッド33の締め込みによる平ワッシャ35bの挟み込みでパンタアーム23a,23bの交差角を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器奏者の着座する鍵盤楽器用椅子、または同鍵盤楽器奏者の着座時における足の載せ台となる補助台または補助ペダル装置に用いられる昇降装置、および同昇降装置を備えた鍵盤楽器用椅子、補助台または補助ペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鍵盤楽器奏者の着座する鍵盤楽器用椅子、または同鍵盤楽器奏者の着座時における足の載せ台となる補助台または補助ペダル装置においては、臀部や足などの身体の一部を載置する載置部を基部に対して昇降させる昇降装置が備えられている。昇降装置は、鍵盤楽器奏者の身長に合わせて臀部や足などを載置する載置部を昇降させるものである。なお、この場合、補助台は、主として子供の鍵盤楽器奏者が鍵盤楽器用椅子に着座した際、床面上に浮いた足を安定させるための足の載せ台である。また、補助ペダル装置は、前記補助台に鍵盤楽器のフットペダルを操作するための補助ペダルが設けられたものである。
【0003】
従来、これらの鍵盤楽器用椅子、補助台および補助ペダル装置に用いられる昇降装置は、鍵盤楽器奏者による送りネジ機構の回転操作によって行われている。例えば、下記特許文献1には、送りネジ機構で構成される位置調整手段におけるグリップを鍵盤楽器奏者が回転させることにより載置部である足置き板を昇降させる補助ペダル装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−295855号公報
【0004】
しかしながら、このような昇降装置においては、載置部の高さ位置調整は鍵盤楽器奏者による送りネジ機構の回転操作によって行われるため、載置部の高さ位置調整作業が極めて煩雑な作業であるという問題がある。すなわち、これらの鍵盤楽器用椅子、補助台および補助ペダル装置における昇降装置においては、載置部の高さ位置をきめ細かく設定可能とするため、送りネジ機構における送りネジの回転量に対する載置部の変位量は小さく設定されている。このため、載置部の高さ位置を大きく変化させる場合、例えば、低学年の児童から高学年の児童に鍵盤楽器奏者が変わる場合などには、送りネジ機構における送りネジの回転数が増大して載置部の高さ位置調整作業の労力的負担および時間的負担が大きいという問題があった。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、鍵盤楽器奏者の望む任意の位置に載置部の高さ位置を簡単な操作で調整可能とすることができ、載置部の高さ位置調整作業の労力的負担および時間的負担を軽減することができる昇降装置、および同昇降装置を備えた鍵盤楽器用椅子、補助台または補助ペダル装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、鍵盤楽器奏者の着座する鍵盤楽器用椅子、または同鍵盤楽器奏者の着座時における足の載せ台となる補助台または補助ペダル装置に用いられ、鍵盤奏者の身体の少なくとも一部を載置する載置部を基部に対して昇降させるための昇降装置において、基部と載置部との間に配置され、外側アームと内側アームとをX字状に連結した交差角を変化させることにより載置部を基部に対して昇降させるパンタアームと、載置部を上昇させる側にパンタアームの交差角を変化させる力を外側アームおよび内側アームに付与する付勢手段と、パンタアームの交差角を任意の交差角で選択的に固定する固定手段とを備えたことにある。
【0007】
この場合、前記昇降装置において、パンタアームは、互いに対向配置された2つのパンタアームが載置部側および基部側でそれぞれ互いに連結体で連結されており、付勢手段は、載置部側および基部側の各連結体を互いに反対方向に押圧するキックバネで構成され、固定手段は、外側アームと内側アームとの交差角の変位に応じて往復変位する第1軸部または第1スリット部と、第1軸部または第1スリット部の変位を許容しつつ第1軸部が貫通する第2スリット部または第1スリット部に貫通する第2軸部と、第1軸部または第2軸部に設けられ、第1スリット部または第2スリット部を挟む一対の挟み部材と、第1軸部または第2軸部に設けられ、前記一対の挟み部材の少なくとも一方を変位させて第1スリット部または第2スリット部を押圧して挟む挟み部材変位手段とを備えるとよい。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、鍵盤楽器奏者の身体の一部を載置する載置部は、外側アームと内側アームとをX字状に交差させ可動的に連結させたパンタアームと、同パンタアームを伸張させる側に押圧する付勢手段と、同パンタアームにおける外側アームと内側アームとの交差角を固定する固定手段とを備えた昇降装置によって支持されている。すなわち、本発明に係る昇降装置は、載置部を上昇させる向きの押圧力をパンタアームに常時付与した状態で、同パンタアームの伸縮を選択的に固定するように構成されている。これにより、パンタアームの伸縮の固定を解除した場合においては、載置部は付勢手段による押圧力によって自動的または僅かな力の補助で上昇する。したがって、載置部の高さを調整する調整作業者は、パンタアームの伸縮の固定を解除することにより載置部が上昇側に付勢された状態で高さ方向の変位が自由となるため、載置部を所望する任意の高さ位置に簡単に調整することができる。この結果、載置部の高さ位置調整作業の労力的負担および時間的負担を軽減することができる。
【0009】
また、本発明は昇降装置の発明として実施できるばかりでなく、同昇降装置を備えた鍵盤楽器用椅子、補助台または補助ペダル装置の発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る昇降装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1(A)〜(C)は、本発明に係る昇降装置20を備えたピアノ補助台10を示しており、(A)は同ピアノ補助台10の平面図であり、(B)は同ピアノ補助台10の正面図であり、(C)は同ピアノ補助台10の右側面図である。なお、図1(A)〜(C)は、ピアノ補助台10に備えられる昇降装置20を実線または破線で示し、その他の部分を二点差線で示している。また、図1(C)および後掲する図2(C)においては、理解を助けるため必要な範囲で一部の構成部品を破線(隠れ線)で示している。このピアノ用補助台10は、ピアノの演奏時にピアノ用椅子に着座するピアノ奏者の足を載せることによりピアノ奏者の姿勢の安定化を図るためのものである。
【0011】
(昇降装置20の構成)
このピアノ用補助台10は、主として、昇降装置20と、同昇降装置20の周囲に配置されたベース部11および載置部12とで構成されている。ベース部11は、昇降装置20を収容するピアノ用補助台10の筐体であり、木製の板材を上面が開放した箱状に組み付けて構成されている。このベース部11は、本発明における基部に相当する。載置部12は、図示しないピアノ奏者の足が載置される載置台でありベース部11の上部に昇降装置20を介して配置される。
【0012】
昇降装置20は、ベース部11内に設けられており、同ベース部11に対して載置部12を昇降させるためのものである。この昇降装置20は、下側フレーム21を備えている。下側フレーム21は、断面形状が略L字状の2つの鋼製のL字フレーム21a,21bを互いに平行な状態で対向配置して連結板21c,21dで連結したものである。これら2つのL字フレーム21a,21bにおける一方(図1(C)において左側)の端部には、長孔状のスリット22a,22b(22bは図示せず)がそれぞれ形成されている。この下側フレーム21には、2つのパンタアーム23a,23bがそれぞれ連結されている。
【0013】
パンタアーム23a,23bは、それぞれ外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとをX字状に交差させた鋼製のリンク部材であり、下側フレーム21における2つのL字フレーム21a,21bごとに設けられている。これら2つのパンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bの各上端部および内側アーム25a,25bの各下端部には、外側に凸状に突出した軸部26a,26b,27a,27b(26b,27bは図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0014】
これら各2つの軸部26a,26b,27a,27bのうち、軸部27a,27bは、前記L字フレーム21a,21bにおける一方(図1(C)において左側)の端部に設けられたスリット22a,22b(22bは図示せず)内に摺動可能な状態で嵌められている。すなわち、パンタアーム23a,23bにおける内側アーム25a,25bの下端部は、L字フレーム21a,21bに沿ってスリット22a,22b内を摺動しながら変位する。一方、パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bの各下端部は、L字フレーム21a,21bの他方の(図1(C)において右側)の端部に回転摺動可能な状態で連結されている。
【0015】
2つのパンタアーム23a,23bは、互いに対向する外側アーム24a,24b同士および内側アーム25a,25b同士が5つの棒状の連結体28a,28b,28c,28d,28eによって互いに連結されている。これら5つの連結体28a〜28eのうち、連結体28aは、外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差点上において2つのパンタアーム23a,23bを連結している。また、連結体28bは互いに対向する内側アーム25a,25bの下端部同士を連結しており、連結体28cは互いに対向する外側アーム24a,24bの下端部同士を連結しており、連結体28dは互いに対向する内側アーム25a,25bの上端部同士を連結しており、連結体28eは互いに対向する外側アーム24a,24bの上端部同士を連結している。すなわち、2つのパンタアーム23a,23bは、一体的に変形するように連結されている。
【0016】
連結体28aの両端部には、キックバネ29a,29bがそれぞれ設けられている。キックバネ29a,29bは、捻る力に反発するバネ体であり、線状のバネ鋼の中央部をコイル状に巻き回すとともに同バネ鋼の両端部を直線状に延ばした形状に形成されている。このキックバネ29a,29bは、一方(図1(C)において上側)の端部が前記連結体28eの下面を押圧するとともに、他方(図1(C)において下側)の端部が前記連結体28bの上面を押圧するように連結体28aの外周部にそれぞれ配置されている。これにより、外側アーム24a,24bの上端部側は図示上側に常に押圧(付勢)された状態となっている。
【0017】
パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bおよび内側アーム25a,25bの各上端部には、上側L字フレーム30a,30bがそれぞれ固定されている。上側L字フレーム30a,30bは、それぞれ断面形状が略L字状に形成されており、一方(図1(C)において左側)の端部には、長孔状のスリット31a,31bがそれぞれ形成されている。これら2つの上側L字フレーム30a,30bにおける他方(図1(C)において右側)の端部には、パンタアーム23a,23bにおける2つの内側アーム25a,25bの各上端部が回転摺動可能な状態でそれぞれ連結されている。
【0018】
一方、上側L字フレーム30a,30bにおける一方の(図1(C)において左側)の端部には、同端部に設けられたスリット31a,31b内にパンタアーム23a,23bの外側アーム24a,24bの各上端部に形成された軸部26a,26bが摺動可能な状態でそれぞれ嵌められている。すなわち、パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bの各上端部は、上側L字フレーム30a,30bに沿ってスリット31a,31b内をそれぞれ変位するように組み付けられている。
【0019】
上側L字フレーム30bの中央部外側には、六角ナット32が固着されている。そして、この上側L字フレーム30bに固着された六角ナット32には、上側L字フレーム30a,30bの中央部を貫通した状態で解除ロッド33の一端部が噛み合わされている(以下、「螺合」という)。この解除ロッド33における他端部(上側L字フレーム30a側の端部)には回転ノブ33aが固着されている。この解除ロッド33と前記連結体28eとの間には、6つのスライドプレート34がそれぞれ掛け渡されている。
【0020】
スライドプレート34は、帯状の鋼材で構成された板状体であり、一方(図1(C)において左側)の端部が連結体28eの両端部にそれぞれ3枚ずつの平ワッシャ35aを介して略水平な状態で固着されている。スライドプレート34における他方(図1(C)において右側)の端部には、上側L字フレーム30a,30bに平行な長孔状のスリット34aが形成されており、同スリット34a内に解除ロッド33が貫通している。すなわち、スライドプレート34における他方(図1(C)において右側)の端部は、解除ロッド33の両端部にそれぞれ3枚ずつの平ワッシャ35bを介して略水平な状態でかつ、スリット34a内において解除ロッド33を摺動可能に貫通した状態で同解除ロッド33に支持されている。
【0021】
解除ロッド33におけるスライドプレート34が設けられた各両側には、スライド筒36a,36b,36cが設けられている。スライド筒36a,36b,36cは、解除ロッド33の外径より大きい内径に形成されるとともに、平ワッシャ35bの外径と略同じ外径に形成された筒体であり、解除ロッド33に摺動自在な状態で嵌合している。また、解除ロッド33には、スライド筒36aに隣接して押圧筒37が固着されている。また、上側L字フレーム30a,30bの各上面には、前記載置部12が固定されている。
【0022】
(昇降装置20の作動)
次に、このように構成された昇降装置20を備えたピアノ用補助台10の作動について説明する。なお、この作動説明においては、ピアノ用補助台10の載置部12の高さ位置調整を行う者を「作業者」と称する。また、ピアノ用補助台10における載置部12は、当初、最も低い位置に位置決めされているものとして説明する(図1参照)。まず、作業者は、ピアノ用補助台10を所定の位置に設置する。このピアノ用補助台10を設置する所定の位置は、ピアノ奏者がピアノ用椅子(図示せず)に着座した際における同ピアノ奏者の足の下方の位置である。
【0023】
次に、作業者は、ピアノ用補助台10における載置部12の高さを調整する。具体的には、作業者は、回転ノブ33aを回転操作することにより六角ナット32に螺合した解除ロッド33の締め付けを緩める。この回転ノブ33aの回転操作により、解除ロッド33に固着された押圧筒37は解除ロッド33とともに図1(A),(B)における図示右側に変位する。これにより、押圧筒37がスライド筒36a,36b,36cを押圧する押圧力が解除される。この結果、スライドプレート34を平ワッシャ35bを介して挟むスライド筒36a,36b,36cがフリーの状態となり、スライドプレート34内を解除ロッド33が摺動可能な状態となる。すなわち、パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差角が変位可能な状態となる。
【0024】
この場合、パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bの各上端部は、キックバネ29a,29bにより図示上側に常に押圧された状態となっている。このため、パンタアーム23a,23bは、図示上方に向かって伸張する側に外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差角が変化する。これにより、上側L字フレーム30a,30bに固定された載置部12は自動的に上昇を開始する。
【0025】
この場合、外側アーム24a,24bの軸部26a,26bおよび内側アーム25a,25bの軸部27a,27bは、上側L字フレーム30a,30bのスリット31a,31bおよびL字フレーム21a,21bのスリット22a,22b内を図示右側に向って摺動しながら変位する。また、解除ロッド33が貫通するスリット34aが形成されたスライドプレート34も図示右側に向って摺動しながら変位する。これらの軸部26a,26b,27a,27bおよびスライドプレート34の変位可能範囲、すなわち、載置部12の昇降範囲は、スリット31a,31b,22a,22b,34aの長さに対応する。
【0026】
作業者は、ピアノ用補助台10の載置部12を図1(C)に示す矢印方向に手などで押さえながら載置部12の高さ位置を所望する位置に位置決めする。載置部12の高さ位置を所望する位置に位置決めした作業者は、図2(A)〜(C)に示すように、回転ノブ33aを回転操作することにより解除ロッド33を六角ナット32に再び締め付ける。この回転ノブ33aを回転操作による解除ロッド33の締め付けにより、解除ロッド33に固着された押圧筒37は解除ロッド33とともに図2(A),(B)における図示左側に変位する。
【0027】
これにより、スライドプレート33を平ワッシャ34bを介して挟むスライド筒35a,35b,35cは押圧筒37に押圧される。この結果、スライドプレート34は、平ワッシャ35bを介してスライド筒36a,36b,36cによって圧迫された状態で挟まれ、スライドプレート34内を解除ロッド33が摺動不可能な状態となる。すなわち、パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差角が変位不可能な状態となる。これにより、載置部12の高さ位置は固定される。
【0028】
すなわち、スライドプレート34におけるスリット34aが本発明に係る固定手段における第1スリット部に相当し、解除ロッド33が本発明に係る固定手段における第2軸部に相当する。また、スライドプレート34を挟む平ワッシャ35bおよびスライド筒36a,36b,36cが本発明に係る固定手段における挟み部材に相当し、解除ロッド33および六角ナット32が本発明に係る固定手段における挟み部材変位手段に相当する。
【0029】
そして、作業者は、調整した載置部12の高さ位置が適切であるか否かを確認し、載置部12の高さ位置が不適切である場合には、前記した手順にて再度載置部12の高さ位置を調整する。この場合、載置部12の高さ位置を下げる場合には、解除ロッド33を緩めた状態で載置部12をキックバネ29a,29bの押圧力に抗して押し下げて高さ位置を調整して解除ロッド33を締め付ける。また、載置部12の高さ位置を調整する際、解除ロッド33の緩め(締め)具合を調整することにより載置部12を徐々に上昇させることができるとともに、載置部12をキックバネ29a,29bの押圧力に抗して押し下げることにより同載置部12を徐々に上昇させることもでき、載置部12の高さ位置を容易に微調整することができる。これらにより、載置部12の高さ位置を無段階で所望する任意の位置に調整することができる。一方、載置部12の高さ位置が適切である場合には、作業者は、載置部12の高さ位置の調整作業を終了する。この後、ピアノ用補助台10はピアノ奏者の使用に供される。
【0030】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、鍵盤楽器奏者の身体の一部を載置する載置部12は、外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとをX字状に交差させて可動的に連結したパンタアーム23a,23bと、同パンタアーム23a,23bを伸張させる側に押圧するキックバネ29a,29bと、同パンタアーム23a,23bにおける外側アーム24a,24bと内側アーム25a,25bとの交差角を固定する解除ロッド33などからなる固定手段とを備えた昇降装置20によって支持されている。すなわち、本発明に係る昇降装置20は、載置部12を上昇させる向きの押圧力をパンタアーム23a,23bに常時付与した状態で、同パンタアーム23a,23bの伸縮を選択的に固定するように構成されている。これにより、パンタアーム23a,23bの伸縮の固定を解除した場合においては、載置部12はキックバネ29a,29bによる押圧力によって自動的に上昇する。したがって、載置部12の高さを調整する調整作業者は、パンタアーム23a,23bの伸縮の固定を解除することにより載置部12が上昇側に付勢された状態で高さ方向の変位が自由となるため、載置部12を所望する任意の高さ位置に簡単に調整することができる。この結果、載置部12の高さ位置調整作業の労力的負担および時間的負担を軽減することができる。
【0031】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態においては、本発明に係る付勢手段としてキックバネ29a,29bを用いた。しかし、本発明に係る付勢手段は、載置部12を上昇させる側にパンタアーム23a,23bの交差角を変化させる力を外側アーム24a,24bおよび内側アーム25a,25bに付与するものであれば、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、板バネなどの他の形態のバネや空気圧または油圧を用いてパンタアーム23a,23bの交差角を変化させる力を外側アーム24a,24bおよび内側アーム25a,25bに付与するようにしてもよい。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0033】
また、上記実施形態においては、解除ロッド33を緩めることにより自動的に載置部12を上昇させる押圧力を発生するキックバネばね29a,29bを用いた。しかし、必ずしも載置部12を自動的に上昇させる必要はなく、解除ロッド33を緩めることにより作業者による僅かな力の補助により載置部12を上昇させることができる程度の押圧力を発生するキックバネ29a,29bを用いてもよいことは当然である。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。
【0034】
また、上記実施形態においては、スライドプレート34を連結体28eに固定してスリット34aを解除ロッド33に対して変位させるように構成した。しかし、スライドプレート34を解除ロッド33に固定するとともに、スライドプレート34に設けたスリット34aに連結体28eを貫通させて構成してもよい。この場合、スライドプレート34に設けたスリット34a内を連結体28eが変位する。すなわち、スライドプレート34におけるスリット34aが本発明に係る固定手段における第2スリット部に相当し、連結体28eが本発明に係る固定手段における第1軸部に相当する。なお、この場合、スリット34a内における連結体28eの変位を固定する固定手段(六角ナット32、解除ロッド33、平ワッシャ35b、スライド筒36、押圧筒27)は、連結体28eに設けることになる。これによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。また、この場合、スライドプレート34に設けたスリット34aに代えてスリット31a,31b本発明に係る固定手段における第2スリット部とすることができる。これによれば、スライドプレート34が不要となり昇降装置20の構成を簡単にすることができる。
【0035】
また、上記実施形態においては、本発明に係る昇降装置20をピアノ用補助台10に適用した例について説明した。しかし、本発明に係る昇降装置20は、ピアノ以外の鍵盤楽器、例えば、電子ピアノやオルガン用の補助台としても実施できることは当然である。また、本発明に係る昇降装置20は、ピアノなどの鍵盤楽器に用いられる補助台以外の機器、例えば、図3に示すペダル補助装置40や図4に示す鍵盤楽器用椅子50などの昇降装置20としても適用することができる。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が期待できる。なお、補助ペダル装置は、前記補助台10に鍵盤楽器のフットペダルを操作するための補助ペダルが設けられたものである。また、鍵盤楽器用椅子は、鍵盤楽器奏者が演奏する際に着座する椅子である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(A)〜(C)は、本発明に係る昇降装置を備えたピアノ補助台を示しており、(A)は同ピアノ補助台の平面図であり、(B)は同ピアノ補助台の正面図であり、(C)は同ピアノ補助台の右側面図である。
【図2】(A)〜(C)は、図1に示すピアノ補助台において載置部を上昇させた状態を示しており、(A)は同ピアノ補助台の平面図であり、(B)は同ピアノ補助台の正面図であり、(C)は同ピアノ補助台の右側面図である。
【図3】本発明に係る他の実施形態に係るペダル補助装置を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る他の実施形態に係る鍵盤楽器用椅子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
10…ピアノ用補助台、11…ベース部、12…載置部、20…昇降装置、21…下側フレーム、21a,21b…L字フレーム、22a,22b、31a,31b,34a…スリット、23a,23b…パンタアーム、24a,24b…外側アーム、25a,25b…内側アーム、26a,26b,27a,27b…軸部、28a,28b,28c,28d,28e…連結体、29a,29b…キックバネ、30a,30b…上側L字フレーム、32…六角ナット、33…解除ロッド、34…スライドプレート、35a,35b…平ワッシャ、36a,36b,36c…スライド筒、37…押圧筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤楽器奏者の着座する鍵盤楽器用椅子、または同鍵盤楽器奏者の前記着座時における足の載せ台となる補助台または補助ペダル装置に用いられ、前記鍵盤奏者の身体の少なくとも一部を載置する載置部を基部に対して昇降させるための昇降装置において、
前記基部と前記載置部との間に配置され、外側アームと内側アームとをX字状に連結した交差角を変化させることにより前記載置部を前記基部に対して昇降させるパンタアームと、
前記載置部を上昇させる側に前記パンタアームの交差角を変化させる力を前記外側アームおよび前記内側アームに付与する付勢手段と、
前記パンタアームの交差角を任意の交差角で選択的に固定する固定手段とを備えたことを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載した昇降装置において、
前記パンタアームは、互いに対向配置された2つのパンタアームが前記載置部側および前記基部側でそれぞれ互いに連結体で連結されており、
前記付勢手段は、前記載置部側および前記基部側の各連結体を互いに反対方向に押圧するキックバネで構成され、
前記固定手段は、
前記外側アームと前記内側アームとの交差角の変位に応じて往復変位する第1軸部または第1スリット部と、
前記第1軸部または前記第1スリット部の変位を許容しつつ前記第1軸部が貫通する第2スリット部または前記第1スリット部に貫通する第2軸部と、
前記第1軸部または前記第2軸部に設けられ、前記第1スリット部または前記第2スリット部を挟む一対の挟み部材と、
前記第1軸部または前記第2軸部に設けられ、前記一対の挟み部材の少なくとも一方を変位させて前記第1スリット部または前記第2スリット部を押圧して挟む挟み部材変位手段とを備えたことを特徴とする昇降装置。
【請求項3】
鍵盤楽器奏者の着座する鍵盤楽器用椅子、または同鍵盤楽器奏者の前記着座時における足の載せ台となる補助台または補助ペダル装置において、
前記請求項1または前記請求項2に記載の昇降装置を備えることを特徴とする鍵盤楽器用椅子、補助台、または補助ペダル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate