説明

昇降装置

【課題】様々な昇降高さに容易に対応して下部床面から上部床面まで被搬送体を昇降させることが可能な昇降装置を提供する。
【解決手段】昇降装置1は、下部床面Gから昇降方向Xに沿って延設される少なくとも一つの第一のガイド21と、第一のガイド21と略平行に延設される少なくとも一つの第二のガイド23と、第二のガイド23を、第一のガイド21に沿って上方へ移動させることが可能な移動手段8と、被搬送体Mが載置される載置台2と、載置台2を第一のガイド21で移動可能に支持することが可能な第一の支持部31、32と、載置台2を第二のガイド23で移動可能に支持することが可能な第二の支持部32、33と、載置台2に、昇降方向Xに推進力を与える推進手段42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部床面から上部床面へ対象となる被搬送体を搬送する昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、旅客機等において、地面から上方に位置する乗降口へ乗客を乗降させる手段として昇降ステップが使用されている。従来の昇降ステップでは、地面である下部床面と乗降口である上部床面とを繋ぐ階段を有しており、乗客は、この階段を昇降して旅客機等の乗降を行っていた。しかし、このような昇降ステップでは、自力での昇降が困難な乗客は、複数の人間に担がれるなどして昇降を行う必要があった。
【0003】
このため、階段部が駆動手段によって上端を中心に回動可能であるとともに、階段部を構成する踏板及び階段部の下端に設けられた載置板のそれぞれが常に水平となるように平行リンクを構成している昇降装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この昇降装置によれば、載置板上に、乗客が載置された状態で駆動手段を駆動して階段部を上方に向かって回動させれば、乗客は、載置板とともに上方へ搬送される。この際、載置板と踏板とは常に水平であるので、階段部全体を水平となるまで回動させることで、乗客は、水平な状態で階段部を上部床面まで移動できるとされている。
【0004】
また、階段部に沿って配置されているガイドと、乗客を支持する載置台と、載置台をガイドに沿って移動させる推進手段とを備える昇降装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この昇降装置によれば、推進手段によって階段部に配置されたガイドに沿って載置台を移動させることで、載置台上の乗客を昇降させることができるとされている。
【特許文献1】特開平9−194198号公報
【特許文献2】特公昭61−29741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の昇降装置では、階段部によって決定される昇降高さにしか対応することができなかった。特許文献2の昇降装置でも同様に、階段部に沿って配置されたガイドによって移動するため、ガイドによって決定される昇降高さにしか対応することができなかった。このため、例えば上記のように旅客機の乗降に使用するためには、大型機から小型機まで様々な大きさの旅客機と対応して、様々な昇降高さの昇降装置を用意する必要があった。あるいは、昇降高さの小さいタイプに対応させるとともに、昇降高さが大きくなった場合には、ガイドを継ぎ足すように増設して使用する必要があった。
【0006】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、様々な昇降高さに容易に対応して下部床面から上部床面まで被搬送体を昇降させることが可能な昇降装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明は、下部床面から上部床面まで被搬送体を昇降させる昇降装置において、前記下部床面から昇降方向に沿って延設される少なくとも一つの第一のガイドと、該第一のガイドと略平行に延設される少なくとも一つの第二のガイドと、該第二のガイドを、前記第一のガイドに沿って上方へ移動させることが可能な移動手段と、前記被搬送体が載置される載置台と、該載置台を前記第一のガイドで移動可能に支持することが可能な第一の支持部と、前記載置台を前記第二のガイドで移動可能に支持することが可能な第二の支持部と、前記載置台に、前記昇降方向に推進力を与える推進手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
この発明に係る昇降装置によれば、推進手段によって載置台に推進力を与えることで、載置台は、第一の支持部によって支持された状態で第一のガイドに沿って昇降方向に移動することが可能である。このため、載置台に載置された被搬送体は、載置台とともに、下部床面から第一のガイドの延長によって決定される昇降高さまで自在に昇降させることができる。また、移動手段によって第二のガイドを第一のガイドに沿って移動させて、第二のガイドが第一のガイドの上方に張り出すように配設させる。この状態で推進手段によって載置台に推進力を与えれば、載置台は、第一のガイドが延設された範囲では第一の支持部によって支持された状態で第一のガイドに沿って移動することが可能であり、また、第二のガイドが延設された範囲では第二の支持部によって支持された状態で第二のガイドに沿って移動することが可能である。また、第一のガイドと第二のガイドとが重なる範囲では、第一の支持部及び第二の支持部のそれぞれによって支持された状態で移動することが可能である。このため、移動手段によって第一のガイドに対して第二のガイドを進退させることで、昇降可能な高さを自在に変更して、載置台を昇降させることができる。
【0009】
また、上記の昇降装置は、前記第一のガイド及び第一の支持部と、第二のガイド及び第二の支持部とをそれぞれ複数組備えることがより好ましい。
この発明に係る昇降装置によれば、載置台が、複数組の第一のガイド及び第一の支持部と、第二のガイド及び第二の支持部とによって支持されて昇降方向に移動可能であることで、より安定した状態で下部床面から上部床面まで載置台を昇降させることができる。
【0010】
また、上記の昇降装置は、前記第一のガイド及び前記第二のガイドのそれぞれと対応して、前記第一の支持部及び前記第二の支持部をそれぞれ複数備えることがより好ましい。
この発明に係る昇降装置によれば、載置台が、第一のガイドに対して複数の第一の支持部によって支持され、また、第二のガイドに対して複数の第二の支持部によって支持されることで、より安定した状態で下部床面から上部床面まで載置台を昇降させることができる。
【0011】
また、上記の昇降装置は、前記第一の支持部及び前記第二の支持部は、対応する前記第一のガイドまたは前記第二のガイドを転動可能なローラであることがより好ましい。
この発明に係る昇降装置によれば、第一の支持部及び第二の支持部がローラであることで、載置台を支持した状態でそれぞれ対応する第一のガイドまたは第二のガイドを転動して、載置台を移動させることができる。
【0012】
また、上記の昇降装置は、前記下部床面から前記昇降方向に沿って延設される第一の階段部と、該第一の階段部と略平行となるように延設された第二の階段部とを備え、前記移動手段は、前記第二のガイドとともに前記第二の階段部を前記第一のガイドに沿って上方へ移動させることが可能であることがより好ましい。
【0013】
この発明に係る昇降装置によれば、載置台を昇降させて被搬送体を搬送するとともに、第一の階段部と第二の階段部とによって自力歩行によっても昇降することができる。ここで、移動手段によって第二のガイドとともに第二の階段部も第一のガイドに沿って移動可能であることで、昇降高さを自在に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の昇降装置によれば、載置台が第一の支持部によって第一のガイドに、また、第二の支持部によって第二のガイドに移動可能に支持され、また、移動手段によって第二のレールが第一のレールに沿って移動可能であることで、様々な昇降高さに容易に対応して被搬送体を下部床面から上部床面まで昇降させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1から図4は、この発明に係る実施形態を示している。図1及び図3は、昇降装置に一例として、パッセンジャステップ車の全体図を示している。また、図2は、図1において、載置台部分の詳細図を示している。また、図4は、図1及び図3において、切断線A−Aでの断面図示している。図1及び図3に示すように、本実施形態のパッセンジャステップ車1は、下部床面である地面Gから上部床面である旅客機の乗降口Pの床面P1まで乗客Mを昇降させるもので、乗客Mが、自力歩行によって昇降可能であるとともに、車椅子M1に乗車した状態で載置台2に位置して機械駆動によって昇降可能なものである。以下に、その詳細を示す。
【0016】
図1から図4に示すように、本実施形態のパッセンジャステップ車1は、車輪3によって走行可能な車台4と、車台4上で所定の昇降方向Xに配設される第一の階段部10及び第二の階段部11とを備える。第一の階段部10は、中央部が段状に形成された本体を構成するとともに、両端部がフレーム10aを構成している。両端部を構成するフレーム10aには、それぞれ第一の側部フレーム12が立設されていて、第一の階段部10の上方を覆う第一のフード13を支持している。また、第二の階段部11も同様に、中央部が段状に形成された本体を構成するとともに、両端部がフレーム11aを構成している。そして、フレーム11aのそれぞれには第二の側部フレーム14が立設されていて、第二の階段部11の上方を覆う第二のフード15を支持している。なお、第二の側部フレーム14及び第二のフード15は、それぞれ第一の側部フレーム12及び第二のフード13よりも外側に配設されている。
【0017】
また、パッセンジャステップ車1は、車台4から上方に延びる油圧ジャッキ5と、後端が車台4の後端部に支持されるともに前端が油圧ジャッキ5の先端部に支持されて昇降方向Xに配設される第一の下部フレーム6と、第一の下部フレーム6の内部に収容されて第一の下部フレーム6をガイドとして昇降方向X上方へ進出可能な第二の下部フレーム7とを備える。第二の階段部11は、フレーム11aが第二の側部フレーム14を介して第二の下部フレーム7に支持されていて、昇降方向Xに延設された状態に保持されている。また、第一の階段部10は、フレーム10aの前端がガイドローラ10bを介して第二の階段部11のフレーム11aに支持されているとともに、フレーム10aの後端が車台4の後端部に支持されていて、昇降方向Xに延設された状態に保持されている。
【0018】
ここで、第一の下部フレーム6の後端内部には、移動手段である油圧シリンダ8が設けられ、この油圧シリンダ8によって第一の下部フレーム6に対して第二の下部フレーム7を進退させることが可能である。そして、第一の下部フレーム6に対して第二の下部フレーム7を進出させることで、第二の下部フレーム7と一体となっている第二の階段部11、第二の側部フレーム14及び第二のフード15を、車台4と一体となって固定された第一の階段部10、第一の側部フレーム12及び第一のフード13に対して昇降方向X上方へ進出させることが可能となっている。
【0019】
また、第二の階段部11の前端には、乗降口Pに出入りするための水平床16と、鉛直方向に立設する支持柱17が固定されている。なお、水平床16の上方は上部フード18で囲まれている。また、第二の下部フレーム7及び第二の階段部11の上方には、略平行に補助フレーム20が配設されている。補助フレーム20の前端は、支持柱17に固定されている。また、第一の階段部10のフレーム10aには、複数のガイドローラ10cが所定の間隔を有して設けられている。そして、補助フレーム20の下縁端20aは、ガイドローラ10cに支持されている。さらに、第一の側部フレーム12において、補助フレーム20の下縁端20aと対向する位置にも所定の間隔でガイドローラ12aが設けられていて、補助フレーム20の側面にガイドローラ12aが当接している。また、補助フレーム20の上縁端20bには、所定の間隔を有してガイドローラ20cが設けられている。そして、補助フレーム20のガイドローラ20cは、第一の階段部10と略平行として第一の側部フレーム12に延設された断面略コノ字形の補助ガイド12bに嵌合されていて、補助ガイド12bに沿って転動可能とされている。このため、補助フレーム20は、ガイドローラ10c、12a、及び、補助ガイド12bに案内されて昇降方向Xに走行可能となっている。
【0020】
また、第一の階段部10の上方には、第一のガイドとして、第一の上部ガイド21と、第一の下部ガイド22とが、第一の階段部10と略平行に、すなわち昇降方向Xに延設されている。第一の上部ガイド21及び第一の下部ガイド22は、ともに断面正方状に形成されていて、第一の上部ガイド21は対角方向が鉛直となるように配設されている一方、第一の下部ガイド22は辺方向が鉛直となるように配設されている。第一の上部ガイド21は、補助フレーム20よりも上方の位置において第一の側部フレーム12から所定の間隔で突出する支持部材21aによって支持されている。また、第一の下部ガイド22は、補助フレーム20よりも下方の位置において第一の側部フレーム12から所定の間隔で突出する支持部材22aによって支持さている。
【0021】
また、第二の階段部11の上方には、第二のガイドとして、第二の上部ガイド23と、第二の下部ガイド24とが、第二の階段部11と略平行に、すなわち昇降方向Xに延設されている。第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24は、とも断面正方状に形成されていて、第二の上部ガイド23は、対角方向が鉛直となるように配設されている一方、第二の下部ガイド24は辺方向が鉛直となるように配設されている。第二の上部ガイド23は、補助フレーム20の上縁端20bから所定の間隔で突出する支持部材23aによって支持されている。また、第二の下部ガイド24は、補助フレーム20の下縁端20aから所定の間隔で突出する支持部材24aによって支持されている。これにより、第一の上部ガイド21と、第二の上部ガイド23と、第二の下部ガイド24と、第一の下部ガイド22とは、上方から下方に向かって順に鉛直方向に配列し、また、昇降方向Xに沿って互いに略平行となるようにして延設されている。
【0022】
載置台2は、昇降させる乗客Mなどが載置される載置板25と、載置板25の縁端から上方に向かって配設された側板26とを備える。なお、図2において、載置板25の前端及び後端には回動可能な案内板25a、25bがそれぞれ設けられており、略水平状態とすることで、後述するように、地面Gから載置板25まで、また、載置板25から水平床16までの案内となり、また、起立状態とさせることで載置板25上の乗客Mの落下防止手段となる。
【0023】
図2及び図4に示すように、側板26において、載置板25が取り付けられた側と反対側の外面には、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33と、第一の下部ローラ34及び第二の下部ローラ35とが設けられている。なお、本実施形態では、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32、第三の上部ローラ33、第一の下部ローラ34及び第二の下部ローラ35のそれぞれは、二つずつ設けられている。
【0024】
ここで、第一の上部ローラ31と、第二の上部ローラ32と、第三の上部ローラ33とは、昇降方向Xと略直交する方向に配列されていて、ともに第一の階段部10及び第二の階段部11と略直交する面内で回転可能に載置台2の側板26に取り付けられている。また、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32、及び、第三の上部ローラ33には、ともに周方向に第一の上部ガイド21及び第二の上部ガイド23と適合するV字形の溝が形成されている。そして、第一の上部ローラ31と第二の上部ローラ32とによって第一の支持部を構成し、第一の上部ガイド21に嵌合可能であるとともに、第二の上部ローラ32と第三の上部ローラ33とによって第二の支持部を構成し、第二の上部ガイド23に嵌合可能となっている。
【0025】
また、第一の下部ローラ34及び第二の下部ローラ35は、ともに第一の階段部10及び第二の階段部11と略並行な面内で回転可能に載置台2の側板26に取り付けられている。そして、第一の下部ローラ34によって他の第一の支持部を構成して、第一の下部ガイド22に当接可能であるとともに、第二の下部ローラ35によって他の第二の支持部を構成して、第二の下部ガイド24に当接可能となっている。
【0026】
そして、載置台2は、後述するようにその使用状況によって、第一の支持部を構成する第一の上部ローラ31及び第二の上部ローラ32と、他の第一の支持部を構成する第一の下部ローラ34との組み合わせ、または、第二の支持部を構成する第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33と、他の第二の支持部を構成する第二の下部ローラ35との組み合わせ、少なくともいずれか一方の組み合わせによって、第一の階段部10及び第二の階段部11の上方で支持されている。
【0027】
また、水平床16の上方には、支持柱17に回転可能に支持された回動フレーム40が設けられている。回動フレーム40には、第三の上部ガイド41が設けられている。第三の上部ガイド41は、回動フレーム40が支持柱17を中心に回転することにより、第二の上部ガイド23の上端から昇降方向X上方へ延びるように配設された状態から、第二の階段部11の幅方向と平面視略直交する状態まで略90度回転可能である。また、回動フレーム40には、推進手段として電動ウインチ42が取り付けられている。電動ウインチ42から延びる牽引ワイヤ43は、第二の上部ガイド23と第二の下部ガイド24との間に配設されて、先端が載置台2の側板26に固定されている。
【0028】
ここで、図4に示すように、載置台2の側板26において、牽引ワイヤ43の先端が固定された位置よりも昇降方向X上方には、落下防止機構45が設けられている。落下防止機構45は、第一の階段部10及び第二の階段部11と略直交する面内で回転可能に支持された係止部材45aと、係止部材45aの回転軸に設けられたバネ部材45bとを有する。係止部材45aは、バネ部材45bによって回転軸回りに付勢されて、第一の下部ガイド22の支持部材22a及び第二の下部ガイド24の支持部材24aのそれぞれと係合可能な位置に保持されている。一方、係止部材45aの上端には、牽引ワイヤ43が取り付けられていて、係止部材45aは、牽引ワイヤ43を牽引することで、支持部材24a、25aと係合しない位置まで回転することが可能となっている。
【0029】
次に、この実施形態のパッセンジャステップ車1の作用について説明する。まず、小型旅客機など地面Gから乗降口Pまでの高さが低い場合について、図1から図4に基づいて説明する。図1に示すように、第二の下部フレーム7を第一の下部フレーム6の内部に収容させた状態とする。これにより、第二の階段部11は、第一の階段部10の下方に収容され、また、第二の上部ガイド23、第二の下部ガイド24、及び、補助フレーム20は、第一の上部ガイド21及び第一の下部ガイド22と鉛直方向に重なった状態となり、また、水平床16は、第一の階段部10の上端に位置することとなる。このため、乗客Mは、第一の階段部10を歩行することによって、第一の階段部10によって決定される昇降高さを昇降し、水平床16から乗降口Pに乗降することができる。
【0030】
また、車椅子M1に乗車した乗客Mの場合は、図1に示すように、まず、乗客Mを地面G上に配置した載置台2に搭乗させ、案内板25aを回転させて起立状態にさせる。ここで、図2に示すように、載置台2は、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32、及び、第三の上部ローラ33によって、第一の上部ガイド21及び第二の上部ガイド23上で支持されているとともに、第一の下部ローラ34及び第二の下部ローラ35によって第一の下部ガイド22及び第二の下部ガイド24に支持されている。
【0031】
そして、図1に示すように、電動ウインチ42を駆動させて、載置台2の側板26に接続された牽引ワイヤ43を巻き取る。これにより載置台2は、推進力が与えられ、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33が、第一の上部ガイド21及び第二の上部ガイド23をそれぞれ転動することにより、また、第一の下部ローラ34及び第二の下部ローラ35が、第一の下部ガイド22及び第二の下部ガイド24を転動することにより昇降方向Xに沿って上昇することとなる。そして、載置台2の載置板25が水平床16と略等しい高さになった状態で、載置板25の後端に取り付けられた案内板25bを略水平状態となるまで回転させて、載置板25と水平床16との間に掛け渡す。これにより車椅子M1に搭乗した乗客Mは、案内板25b上を移動することで、水平床16を経由して乗降口Pまで移動することができる。なお、さらに載置台2を上昇させて、第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33が、第二の上部ガイド23から第三の上部ガイド41に受け渡された状態、すなわち載置台2が水平床16の上方に位置した後に、回動フレーム40を回転させることにより、載置台2を水平板16上の収納位置に待機させることができる。
【0032】
また、載置台2の移動中において、万一牽引ワイヤ43が破断等してしまったとしても落下防止機構45が作用することにより、乗客Mを搭乗させた載置台2が最下端まで降下してしまうのを防ぐことができる。すなわち、図4に示すように、牽引ワイヤ43を牽引して載置台2を移動させている際には、係止部材45aは、回動して支持部材22a、24aと接触しない状態となり、載置台2の移動の支障とならない。一方、牽引ワイヤ43が破断するなどして弛んだ場合には、バネ部材45bによる付勢力によって係止部材45aは瞬時に回転し、直近の支持部材22a、24aに係止されることとなり、これにより載置台2は停止することとなる。
【0033】
次に、中型旅客機や大型旅客機など、地面Gから乗降口Pまでの高さが、第一の階段部10による昇降可能高さによりも高い場合について、図3及び図4に基づいて説明する。図3に示すように、この場合、図1に示す状態から油圧シリンダ8を駆動させて、第一の下部フレーム6に対して第二の下部フレーム7を昇降方向X上方へ進出させる。この際、第二の下部フレーム7と一体となっている第二の階段部11、第二の側部フレーム14、第二のフード15、水平床16、支持柱17、第二の上部ガイド23、第二の下部ガイド24、及び、補助フレーム20も追従して昇降方向X上方へ進出することとなる。
【0034】
ここで、第二の階段部11と第一の階段部10との間には、ガイドローラ10bが介装されていることで、ガイドローラ10bが転動することで、第二の階段部11は、第一の階段部10に対して円滑にスライドさせることができる。また、図3及び図4に示すように、補助フレーム20は、第一の階段部10、第一の側部フレーム12、及び、補助フレーム20自身に設けられたガイドローラ10c、12a、20cによって支持されているので、これらが転動することで、第一の階段部10及び第一の側部フレーム12に対して円滑にスライドさせることができる。また、補助フレーム20に支持された第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24は、第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33、並びに、第二の下部ローラ35によって載置台2を支持しているのみなので、これらが転動することで円滑にスライドすることができる。そして、油圧シリンダ8による移動量を調整して、水平床16の高さを調整することで、様々な高さの乗降口Pに対応することができる。
【0035】
そして、図3に示すように、水平床16を最適な高さに設定したら、歩行によって昇降する場合には、第一の階段部10及び第二の階段部11を利用して昇降することが可能となる。一方、載置台2に搭乗させて昇降する場合には、上記同様に電動ウインチ42を駆動させる。すなわち、載置台2が地面G上に位置する場合には、電動ウインチ42によって牽引ワイヤ43を巻き取る。これにより載置台2は、第一の上部ローラ31及び第二の上部ローラ32、並びに、第一の下部ローラ34が、第一の上部ガイド21並びに第一の下部ガイド22を転動することによって、昇降方向X上方へ移動することとなる。また、第一の上部ガイド21と第二の上部ガイド23とが、また、第一の下部ガイド22と第二の下部ガイド24とが重なり合う中間範囲においては、さらに第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33、並びに、第二の下部ローラ35も、第二の上部ガイド23並びに第二の下部ガイド24を転動することとなる。そして、第一の上部ガイド21及び第一の下部ガイド22の前端より上方では、載置台2は、第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24に受け渡されて、さらに昇降方向X上方へ移動することが可能となり、乗客Mを水平床16の位置まで搬送することが可能となる。
【0036】
以上のように、本実施形態のパッセンジャステップ車1では、載置台2が、第一の支持部である第一の上部ローラ31及び第二の上部ローラ32によって第一の上部ガイド21に、さらに他の第一の支持部である第一の下部ローラ34によって第一の下部ガイド22にそれぞれ移動可能に支持され、また、第二の支持部である第二の上部ローラ32及び第三の上部ローラ33によって第二の上部ガイド23に、さらに他の第二の支持部である第二の下部ローラ35によって第二の下部ガイド24にそれぞれ移動可能に支持されている。このため、第一の上部ガイド21及び第一の下部ガイド22に対して、第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24を移動手段である油圧シリンダ8によって昇降方向Xに沿って移動させることで、様々な昇降高さに容易に対応して、載置台2上の乗客Mを搬送することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、第一の上部ガイド21及び第一の下部ガイド22の二つのガイドに対して、第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24の二つのガイドが昇降方向Xに移動可能としたが、これに限るものでは無い。少なくとも下部床面から延びる一つの第一のガイドに対して、略平行に延設された少なくとも一つの第二のガイドが油圧シリンダ8を例とする移動手段によって移動可能であれば良い。しかしながら、本実施形態のように、載置台2の上部と下部とで複数組設けることで、より安定した状態で載置台2を昇降させることができる。また、一つの第一のガイドに対して、複数の第二のガイドを備えるものとし、各第二のガイドに対して移動可能に第二の支持部をそれぞれ設けるものとしても良い。このようにすることで、複数の第二のガイドによって複数段で昇降高さを調整することができる。
【0038】
また、本実施形態では、第一の上部ガイド21、第一の下部ガイド22、第二の上部ガイド23、第二の下部ガイド24に対して、第一の上部ローラ31、第二の上部ローラ32、第三の上部ローラ33、第一の下部ローラ34、第二の下部ローラ35をそれぞれ二つずつ設けるものとしたが、これに限るものでは無く、少なくとも一つ設けるものとすれば良い。しかしながら、各ガイドに対して支持部となる構成を複数とすることで、載置台2をより安定した状態で支持し、また、搬送することができる。
【0039】
また、本実施形態では、第一の支持部及び第二の支持部となる構成は、転動可能なローラによって構成されているがこれに限るものでは無く、ガイド側にコロを多数設けて移動可能とするものでも良く、あるいは、ガイドに対して単に摺動可能なものとしても良い。
【0040】
また、本実施形態では、昇降装置としてパッセンジャステップ車1を例に挙げたがこれに限るものでは無く、第一の階段部10及び第二の階段部11を有していない構成としても良い。これによっても乗客Mなどを含む搬送体を昇降高さを自在として好適に昇降させることができる。また、本実施形態では、載置台2を昇降方向Xに推進させる推進手段として電動ウインチ42を例に挙げ、また、第二の上部ガイド23及び第二の下部ガイド24を進退させる移動手段として油圧シリンダ8を例に挙げたが、これに限るものでは無い。公知の様々な手段を適用可能であり、例えば、推進手段としては油圧ウインチや油圧モータなどとしても良い。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施形態のパッセンジャステップ車の側面図である。
【図2】この発明の実施形態のパッセンジャステップ車において、載置台の詳細を示す側面図である。
【図3】この発明の実施形態のパッセンジャステップ車の昇降高さを変化させた場合の側面図である。
【図4】この発明の実施形態の図1及び図3の切断線A−Aにおける断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 パッセンジャステップ車(昇降装置)
2 載置台
8 油圧シリンダ(移動手段)
10 第一の階段部
11 第二の階段部
21 第一の上部ガイド(第一のガイド)
22 第一の下部ガイド(第一のガイド)
23 第二の上部ガイド(第二のガイド)
24 第二の下部ガイド(第二のガイド)
31 第一の上部ローラ(第一の支持部)
32 第二の上部ローラ(第一の支持部、第二の支持部)
33 第三の上部ローラ(第二の支持部)
34 第一の下部ローラ(第一の支持部)
35 第二の下部ローラ(第二の支持部)
42 電動ウインチ(推進手段)
G 地面(下部床面)
P1 昇降口の床面(上部床面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部床面から上部床面まで被搬送体を昇降させる昇降装置において、
前記下部床面から昇降方向に沿って延設される少なくとも一つの第一のガイドと、
該第一のガイドと略平行に延設される少なくとも一つの第二のガイドと、
該第二のガイドを、前記第一のガイドに沿って上方へ移動させることが可能な移動手段と、
前記被搬送体が載置される載置台と、
該載置台を前記第一のガイドで移動可能に支持することが可能な第一の支持部と、
前記載置台を前記第二のガイドで移動可能に支持することが可能な第二の支持部と、
前記載置台に、前記昇降方向に推進力を与える推進手段とを備えることを特徴とする昇降装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降装置において、
前記第一のガイド及び第一の支持部と、第二のガイド及び第二の支持部とをそれぞれ複数組備えること特徴とする昇降装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の昇降装置において、
前記第一のガイド及び前記第二のガイドのそれぞれと対応して、前記第一の支持部及び前記第二の支持部をそれぞれ複数備えることを特徴とする昇降装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の昇降装置において、
前記第一の支持部及び前記第二の支持部は、対応する前記第一のガイドまたは前記第二のガイドを転動可能なローラであることを特徴とする昇降装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の昇降装置において、
前記下部床面から前記昇降方向に沿って延設される第一の階段部と、
該第一の階段部と略平行となるように延設された第二の階段部とを備え、
前記移動手段は、前記第二のガイドとともに前記第二の階段部を前記第一のガイドに沿って上方へ移動させることが可能であることを特徴とする昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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