説明

易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープ

【課題】耐熱性に優れ、かつ剥離が容易な易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープを提供することである。
【解決手段】粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、前記粘着付与剤の軟化点が、140℃以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなり、該粘着剤層は、粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、前記粘着付与剤の軟化点温度が、140℃以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易剥離性を有する粘着シートおよび粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子(LED)やフラットパネルディスプレイ(FPD)等の製造工程において、ガラス、プラスチック等からなる基板の固定に粘着シートや粘着テープを用いれば、基板を効率よく加工することができてよいと考えられる。
【0003】
しかし、粘着シート等の粘着面が一般的なアクリル系粘着剤からなる場合には、耐熱性が十分でないという問題がある。そのため、従来の粘着シート等では、高温雰囲気下(例えば100℃以上)の工程において、基板の熱膨張に起因する反りや、粘着剤中の水分・残留溶剤等の揮発による反り・浮き応力等に対応することができず、粘着面と基板との間で剥離が生じてしまう。
【0004】
また、一般的なアクリル系粘着剤には、剥離し難いという問題もある。近時、前記基板は大型化および薄型化の傾向にあり、強度が低下している。そのため、一般的なアクリル系粘着剤では、剥離時に基板に掛かる負荷が大きく、該基板を破損してしまう。この問題は、粘着シート等とともに高温に曝された基板から粘着シート等を剥離する場合に顕著である。
【0005】
一方、本出願人は、粘着力を熱により可逆的に制御できる粘着テープとして、先に特許文献1に記載のような粘着テープを開発した。該粘着テープは、粘着剤層が側鎖結晶性ポリマーを含有しており、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度にまで冷却処理をすると、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。したがって、特許文献1に記載されている粘着テープを用いれば、剥離時に基板に掛かる負荷を小さくできる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている粘着テープを用いても、剥離時に基板を破損することがあった。また、特許文献1に記載されている粘着テープには、耐熱性が十分でないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−251923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、耐熱性に優れ、かつ剥離が容易な易剥離性粘着シートおよび易剥離性粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、前記粘着付与剤の軟化点が、140℃以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着シート。
(2)前記粘着付与剤が、重合ロジンエステルである前記(1)記載の易剥離性粘着シート。
(3)前記粘着付与剤を、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して10〜30重量部の割合で含有する前記(1)または(2)記載の易剥離性粘着シート。
(4)前記反応性フッ素化合物が、下記一般式(I)で表される化合物である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
【化1】

[式中、R1は基:CH2=CHCOOR2−またはCH2=C(CH3)COOR2−(式中、R2はアルキレン基を示す。)を示す。]
(5)金属キレート化合物をさらに含有する前記(1)〜(4)のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
(6)貼着した被着体を、100〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す前記(1)〜(5)のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
(7)基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなり、該粘着剤層は、粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、前記粘着付与剤の軟化点温度が、140℃以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着テープ。
なお、本発明における前記「シート」は、シート状のみに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限りにおいて、シート状ないしフィルム状をも含む概念である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軟化点150℃以上の粘着付与剤を含有するので、耐熱性に優れるという効果がある。また、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こす側鎖結晶性ポリマーを含有するので、粘着力を熱により可逆的に制御することができる。したがって、被着体から剥離する際には、粘着シートまたは粘着テープの温度を所定温度に冷却すれば、粘着力を低下させることができる。
【0011】
しかも、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性フッ素化合物を含む共重合体からなるので、側鎖結晶性ポリマーによる粘着力の低下に加えて、フッ素化合物に起因する離型性も加わる。したがって、本発明によれば、粘着力を十分に低下させて被着体から容易に剥離することができるという効果がある。さらに、側鎖結晶性ポリマーの相変化を利用するものであるため、繰り返し使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<易剥離性粘着シート>
本発明にかかる易剥離性粘着シート(以下、「粘着シート」と言うことがある。)は、粘着付与剤と側鎖結晶性ポリマーとを含有する。側鎖結晶性ポリマーは、融点未満の温度で結晶化しかつ融点以上の温度で流動性を示すポリマーである。すなわち、側鎖結晶性ポリマーは、温度変化に対応して結晶状態と流動状態とを可逆的に起こすポリマーである。
【0013】
前記粘着シートは、前記融点未満の温度で側鎖結晶性ポリマーが結晶化した際に粘着力が低下する割合で側鎖結晶性ポリマーを含有する。つまり、前記粘着シートは、側鎖結晶性ポリマーを主成分として含有する。これにより、被着体から粘着シートを剥離する際には、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによって粘着力が低下する。また、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度に加熱すれば、側鎖結晶性ポリマーが流動性を示すことによって粘着力が回復するので、繰り返し使用することができる。
【0014】
前記融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態となる温度を意味し、示差熱走査熱量計(DSC)により10℃/分の測定条件で測定して得られる値である。前記融点としては0℃以上、好ましくは10〜60℃であるのがよい。前記融点を所定の値とするには、側鎖結晶性ポリマーの組成等を変えることによって任意に行うことができる。
【0015】
前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。したがって、粘着シートを側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度に冷却すれば、側鎖結晶性ポリマーが結晶化することによる粘着力の低下に加えて、フッ素化合物に起因する離型性も加わるので、粘着力を十分に低下させることができ、被着体から容易に剥離することができる。
【0016】
前記反応性フッ素化合物とは、反応性を示す官能基を有するフッ素化合物のことを意味する。前記反応性を示す官能基としては、例えばビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロキシ基等のエチレン性不飽和二重結合を有する基;エポキシ基(グリシジル基およびエポキシシクロアルキル基を含む)、メルカプト基、カルビノール基、カルボキシル基、シラノール基、フェノール基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0017】
前記反応性フッ素化合物の具体例としては、前記一般式(I)で表される化合物等が挙げられる。前記一般式(I)中、R1は基:CH2=CHCOOR2−またはCH2=C(CH3)COOR2−(式中、R2はアルキレン基を示す。)を示し、前記アルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖または分枝したアルキレン基等が挙げられる。
【0018】
また、前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、下記式(Ia),(Ib)で表される化合物等が挙げられる。
【化2】

【0019】
反応性フッ素化合物は、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えばいずれも大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート3F」、「ビスコート3FM」、「ビスコート4F」、「ビスコート8F」、「ビスコート8FM」、共栄社化学(株)製の「ライトエステルM−3F」等が挙げられる。
【0020】
側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとしては、例えば炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、極性モノマー等が挙げられる。
【0021】
前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
側鎖結晶性ポリマーの組成としては、前記反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する前記他のモノマーとを、重量比で1:99〜20:80、好ましくは1:99〜10:90の割合で重合させた共重合体がよい。
【0023】
また、側鎖結晶性ポリマーの組成としては、前記反応性フッ素化合物を1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを10〜99重量部、好ましくは20〜99重量部、前記炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを0〜70重量部、および前記極性モノマーを0〜10重量部の割合で重合させた共重合体が好ましい。特に、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの割合を多くすると、易剥離性が向上する傾向にあるので好ましい。
【0024】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。例えば溶液重合法を採用する場合には、前記で例示したモノマーを溶剤に混合し、40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌することによって前記モノマーを重合させることができる。
【0025】
前記側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は100,000以上、好ましくは300,000〜900,000であるのがよい。前記重量平均分子量があまり小さいと、被着体から粘着シートを剥離する際に粘着シートが被着体上に残る、いわゆる糊残りが多くなるおそれがある。また、前記重量平均分子量があまり大きいと、側鎖結晶性ポリマーを融点未満の温度にしても結晶化し難くなるので、粘着力が低下し難くなる。前記重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0026】
一方、上述した側鎖結晶性ポリマーとともに粘着シートが含有する前記粘着付与剤は、軟化点が140℃以上、好ましくは150℃以上である。これにより、粘着シートが耐熱性に優れたものになる。これに対し、粘着付与剤の軟化点が140℃未満であると、粘着シートの耐熱性を十分に向上させることができない。また、粘着力が低下し難くなる傾向にもある。軟化点の上限値としては、特に限定されないが、あまり高軟化点の粘着付与剤は調製困難であることから、通常、170℃以下、好ましくは165℃以下である。前記軟化点は、JIS K 5902に規定される環球法に従って測定される値である。
【0027】
粘着付与剤の組成としては、軟化点が140℃以上である限り、特に限定されないが、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、炭化水素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。例示したこれらの粘着付与剤のうち、上述した側鎖結晶性ポリマーとの相溶性に優れる上で、ロジン系樹脂が好ましい。
【0028】
前記ロジン系樹脂としては、例えばロジン誘導体等が挙げられ、該ロジン誘導体としては、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン)をアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物や、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等の変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物等のロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等のロジン類の金属塩;未変性ロジン、変性ロジンや、各種ロジン誘導体等にフェノールを酸触媒で付加させて熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等が挙げられる。
【0029】
例示したこれらのロジン誘導体のうち、重合ロジンエステルが特に好ましい。該重合ロジンエステルは、市販のものを用いることができ、具体例としては、例えば荒川化学工業(株)製の「ペンセルD−160」等が挙げられる。
【0030】
粘着付与剤の含有量としては、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して10〜30重量部であるのが好ましい。粘着付与剤の含有量があまり少ないと、粘着付与剤による効果が得られ難く、粘着シートの耐熱性を十分に向上できないおそれがある。また、粘着付与剤の含有量があまり多いと、相対的に側鎖結晶性ポリマーの割合が少なくなり、粘着シートの凝集力が低下して、耐熱性が低下するおそれがある。
【0031】
一方、前記粘着シートは、架橋剤を含有するのが好ましく、該架橋剤としては、例えば金属キレート化合物、アジリジン化合物等が挙げられ、特に金属キレート化合物が好ましい。架橋剤として金属キレート化合物を採用すると、粘着シートの耐熱性がより向上する傾向にある。
【0032】
前記金属キレート化合物としては、例えば多価金属のアセチルアセトン配位化合物、アセト酢酸エステル配位化合物等が挙げられ、前記多価金属としては、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、チタン、亜鉛、コバルト、マンガン、ジルコニウム等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。例示したこれらの金属キレート化合物のうち、アルミニウムのアセチルアセトン配位化合物またはアセト酢酸エステル配位化合物が好ましく、アルミニウムトリスアセチルアセトナートが好適である。
【0033】
架橋剤の含有量としては、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して0.1〜5重量部程度が適当である。
【0034】
ここで、本発明の粘着シートは、貼着した被着体を100〜220℃、好ましくは150〜220℃、より好ましくは200〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す粘着シートとして使用するのがよい。すなわち、粘着シートは、その用途によっては、被着体を貼着した状態で100〜220℃の温度に曝されることがある。このような高い温度に粘着シートを曝すと、粘着シートが柔軟になって被着体表面に存在する凹凸形状によく追従するようになる。その結果、雰囲気温度が下がった際に、いわゆるアンカー効果が発現し、粘着シートの粘着力が初期粘着力よりも高くなる。それゆえ、粘着シートが一般的なアクリル系粘着剤からなる場合には、剥離不良を生じることが多い。
【0035】
本発明の粘着シートは、100〜220℃の温度に曝されることで粘着力が初期粘着力より高くなったとしても、前記融点未満の温度にまで冷却すれば、上述した理由から粘着力が十分に低下するので、被着体を簡単に取り外すことができる。しかも、上述した理由から耐熱性にも優れているので、高温雰囲気下の工程では被着体を確実に固定することができる。前記被着体としては、特に限定されないが、LEDやFPD等における大型化および薄型化されたガラス、プラスチック等からなる基板が好適である。
【0036】
前記粘着シートの厚さとしては、10〜400μmであるのが好ましい。粘着シートの厚さがあまり薄いと、粘着力が低下し、加工時に被着体を固定し難くなるので好ましくない。また、粘着シートの厚さがあまり大きいと、粘着シートの厚さにバラツキを生じるおそれがあるので好ましくない。
【0037】
粘着シートの両面には、離型処理を施したフィルム、すなわち離型フィルムを設けるのが好ましい。離型フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等からなるフィルム表面に、シリコーン等の離型剤を塗布したものが挙げられる。粘着シートの両面に離型フィルムを設けるには、例えば側鎖結晶性ポリマーと粘着付与剤とを溶剤に加えた塗布液を、離型フィルム上に塗布して乾燥させて粘着シートを得、この粘着シートの表面に離型フィルムを配置すればよい。
【0038】
前記塗布液には、例えば可塑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を添加することができる。前記塗布は、一般的にナイフコーター、ロールコーター、カレンダーコーター、コンマコーター等により行うことができる。また、塗工厚みや塗布液の粘度によっては、グラビアコーター、ロッドコーター等により行うこともできる。なお、粘着シートは、前記塗布の他、例えば押し出し成形やカレンダー加工によってシート状に成形することもできる。
【0039】
<易剥離性粘着テープ>
本発明にかかる易剥離性粘着テープ(以下、「粘着テープ」と言うことがある。)は、基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなる。該粘着剤層は、粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する。そして、前記粘着付与剤は、その軟化点が140℃以上であり、前記側鎖結晶性ポリマーは、反応性フッ素化合物と側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなる。したがって、本発明の粘着テープは、上述した本発明の粘着シートと同様の効果を奏するとともに、基材フィルムを含む分、粘着シートよりも剛性が高く、取り扱い性に優れるという効果を奏する。
【0040】
前記基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0041】
前記基材フィルムは、単層体または複層体からなるものであってもよく、厚さは、通常、25〜250μm程度である。基材フィルムの表面には、粘着剤層に対する密着性を向上させるため、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、ブラスト処理、ケミカルエッチング処理、プライマー処理等の表面処理を施すことができる。
【0042】
基材フィルムの片面に粘着剤層を設けるには、上述した側鎖結晶性ポリマーを溶剤に加えた塗布液を、基材フィルムの片面に塗布して乾燥させればよい。粘着剤層の厚さはとしては、5〜60μmであるのが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、10〜40μmであるのがさらに好ましい。
【0043】
前記粘着テープは、基材フィルムの他面にも粘着剤層を設けて両面粘着テープの形態で使用することができる。他面の粘着剤層としては、特に限定されるものではなく、例えば片面の粘着剤層と同様に、前記粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有する粘着剤層を用いることもできる。この場合、片面の粘着剤層と他面の粘着剤層とは、その組成や厚さが互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明で「部」は重量部を意味する。
【0045】
(合成例)
ステアリルアクリレートを28部、メチルアクリレートを62部、アクリル酸を5部、および反応性フッ素化合物(前記式(Ia)で表される大阪有機化学工業(株)製の「ビスコート3F」)を5部の割合で、それぞれ酢酸エチル:トルエン=8:2(重量比)の混合溶媒200部に加えて混合し、55℃で4時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は658,000、融点は25℃であった。
【0046】
(比較合成例)
ステアリルアクリレートを30部、メチルアクリレートを65部、およびアクリル酸を5部の割合で、それぞれ酢酸エチル:トルエン=8:2(重量比)の混合溶媒200部に加えて混合し、55℃で4時間撹拌して、これらのモノマーを重合させた。得られた共重合体である側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量は690,000、融点は28℃であった。
【0047】
前記合成例および比較合成例の各共重合体を表1に示す。なお、前記重量平均分子量は、共重合体をGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。前記融点は、DSCを用いて10℃/分の測定条件で測定した値である。
【0048】
【表1】

【0049】
[実施例1〜4および比較例1]
<粘着シートの作製>
まず、前記合成例で得た共重合体を、酢酸エチルを用いて固形分が30%になるよう調整して共重合体溶液を得た。ついで、この共重合体溶液100部に対して固形分換算で粘着付与剤(荒川化学工業(株)製の軟化点150℃以上の重合ロジンエステル「ペンセルD−160」)を表2に示す割合で添加し、さらにアルミニウムトリスアセチルアセトナート(川研ファインケミカル社製)を0.5部の割合で添加して塗布液を得た。
【0050】
この塗布液を離型フィルム上に塗布し、100℃で10分間加熱して架橋反応を行わせて、厚さ25μmの粘着シートを得た。なお、前記離型フィルムには、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にシリコーンを塗布した厚さ50μmのものを用いた。
【0051】
<評価>
得られた粘着シートについて、180°剥離強度を評価した。評価方法を以下に示すとともに、その結果を表2に示す。
【0052】
(180°剥離強度)
得られた粘着シートについて、50℃、200℃および23℃の各雰囲気温度における180°剥離強度をJIS Z0237に準拠して測定した。具体的には、まず、剥離フィルムを取外した粘着シートを介して、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製の「100H」)を以下の条件でガラス製の台座上に貼着した。ついで、貼着したポリイミドフィルムを、ロードセルを用いて300mm/分の速度で180°剥離した。
【0053】
(50℃)
50℃の雰囲気温度で粘着シートを介してポリイミドフィルムを台座に貼着して20分間静置した後、180°剥離した。
【0054】
(200℃)
50℃の雰囲気温度で粘着シートを介してポリイミドフィルムを台座に貼着し、雰囲気温度を200℃に上げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。
【0055】
(23℃)
50℃の雰囲気温度で粘着シートを介してポリイミドフィルムを台座に貼着し、雰囲気温度を200℃に上げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、雰囲気温度を23℃に下げ、この雰囲気温度で20分間静置した後、180°剥離した。
【0056】
また、各雰囲気温度における破壊状態を目視にて評価した。表2中、「界面破壊」は、粘着シートと台座との間で剥離したことを示す。また、「転写」は、ポリイミドフィルムと粘着シートとの間で剥離したことを示す。「凝集破壊」は、粘着シートが破壊されたことを示す。
【0057】
[比較例2]
粘着付与剤として、軟化点150℃以上の重合ロジンエステルに代えて、軟化点120〜130℃のロジンエステル(荒川化学工業(株)製の「スーパーエステルA−125」)を用いた以外は、前記実施例1〜4と同様にして塗布液を得、この塗布液を離型フィルム上に塗布し、100℃で10分間加熱して架橋反応を行わせて、厚さ25μmの粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、前記実施例1〜4と同様にして180°剥離強度を評価した。その結果を、表2に示す。
【0058】
[比較例3,4]
共重合体として、前記合成例で得た共重合体に代えて、前記比較合成例で得た共重合体を用い、粘着付与剤の割合を表2に示す割合にした以外は、前記実施例1〜4と同様にして塗布液を得、この塗布液を離型フィルム上に塗布し、100℃で10分間加熱して架橋反応を行わせて、厚さ25μmの粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、前記実施例1〜4と同様にして180°剥離強度を評価した。その結果を、表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2から明らかなように、実施例1〜4は、200℃の180°剥離強度において、比較例1〜3よりも高い値を示しており、耐熱性に優れているのがわかる。特に、粘着付与剤の含有量を10〜30重量部にした実施例2〜4では、200℃の180°剥離強度が、より高い値を示しているのがわかる。また、実施例1〜4は、側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度である23℃の180°剥離強度において、比較例2〜4よりも粘着力が低下しているのがわかる。なお、反応性フッ素化合物を含有している比較例2において、23℃の180°剥離強度が若干高い結果を示したが、これは含有している粘着付与剤の軟化点が120〜130℃であること等に起因すると推察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下する粘着シートであって、
前記粘着付与剤の軟化点が、140℃以上であり、
前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着シート。
【請求項2】
前記粘着付与剤が、重合ロジンエステルである請求項1記載の易剥離性粘着シート。
【請求項3】
前記粘着付与剤を、側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して10〜30重量部の割合で含有する請求項1または2記載の易剥離性粘着シート。
【請求項4】
前記反応性フッ素化合物が、下記一般式(I)で表される化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
【化3】

[式中、R1は基:CH2=CHCOOR2−またはCH2=C(CH3)COOR2−(式中、R2はアルキレン基を示す。)を示す。]
【請求項5】
金属キレート化合物をさらに含有する請求項1〜4のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
【請求項6】
貼着した被着体を、100〜220℃の温度に曝した後、前記融点未満の温度で取り外す請求項1〜5のいずれかに記載の易剥離性粘着シート。
【請求項7】
基材フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を設けてなり、
該粘着剤層は、粘着付与剤および側鎖結晶性ポリマーを含有し、該側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度で粘着力が低下し、
前記粘着付与剤の軟化点温度が、140℃以上であり、
前記側鎖結晶性ポリマーが、反応性フッ素化合物と、側鎖結晶性ポリマーを構成する他のモノマーとの共重合体からなることを特徴とする易剥離性粘着テープ。

【公開番号】特開2012−102212(P2012−102212A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250966(P2010−250966)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】